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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/477 20210101AFI20240802BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20240802BHJP
   H01M 50/474 20210101ALI20240802BHJP
   H01M 50/166 20210101ALI20240802BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240802BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240802BHJP
【FI】
H01M50/477
H01M10/04 Z
H01M50/474
H01M50/166
H01M50/103
H01M50/15
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021207509
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2023092349
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 喜紀
【審査官】佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-066319(JP,A)
【文献】特開2014-038706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40-50/497
50/50-50/598
50/10-50/198
10/00-10/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体内に電極体が収容された蓄電デバイスであって、
上記缶体内に配置されており、
上記電極体の外表面のうち、上記電極体をなす電極板の厚み方向の外側に位置する厚み方向外側面の少なくとも一部をなす固定面に固着された電極体固着部と、
上記電極体固着部から延び、上記缶体に固定され、上記缶体内における上記電極体の移動を規制する缶体固定部と、を有する
移動規制部材を備え
上記缶体は、
開口を有する有底筒状で、上記電極体及び上記移動規制部材を収容する缶本体部材と、上記缶本体部材の上記開口を閉塞する缶蓋部材と、を有し、
上記移動規制部材の上記缶体固定部は、
上記電極体固着部から上記缶本体部材と上記缶蓋部材のなす缶体角部に向けて延びて、上記缶体角部において上記缶本体部材と上記缶蓋部材とに固定されており、
上記缶本体部材は、
上記缶体角部をなす缶本体角部に、上記移動規制部材の上記缶体固定部に係合する係合部を有しており、
上記缶本体部材と上記缶蓋部材とは、
上記缶本体部材の上記開口を上記缶蓋部材で閉塞すると共に、上記缶本体角部の上記係合部と上記缶蓋部材との間に、直接または間接に上記移動規制部材の上記缶体固定部を固定してなる
蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶体内に電極体が収容された蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池やキャパシタなどの蓄電デバイスとして、円筒状や直方体箱状の缶体内に電極体が収容された蓄電デバイスが知られている。蓄電デバイスの正負の端子は、それぞれ、缶体と電気的に絶縁された状態で缶体に固設されると共に、缶体内で電極体に電気的に接続されている。例えば、特許文献1(図1等を参照)に、このような形態の電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-150052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような蓄電デバイスを搭載した車両が物体に衝突した場合など、蓄電デバイスに外部から強い衝撃が掛かった場合、缶体内に収容されている電極体が大きく移動する場合がある。すると、電極体と正負の端子との接続部分が損傷したり、電極体が、缶体の内壁面や、電流遮断機構などを構成して缶体内に配置された内在部材に衝突して、電極体自体が変形したり損傷したりするおそれがある。また缶体が変形したり、内在部材が損傷するおそれもある。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、蓄電デバイスに外部から衝撃が掛かっても、缶体内の電極体が移動して電極体や缶体等に損傷が生じるのを防止できる蓄電デバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、缶体内に電極体が収容された蓄電デバイスであって、上記缶体内に配置されており、上記電極体の外表面のうち、上記電極体をなす電極板の厚み方向の外側に位置する厚み方向外側面の少なくとも一部をなす固定面に固着された電極体固着部と、上記電極体固着部から延び、上記缶体に固定され、上記缶体内における上記電極体の移動を規制する缶体固定部と、を有する移動規制部材を備え、上記缶体は、開口を有する有底筒状で、上記電極体及び上記移動規制部材を収容する缶本体部材と、上記缶本体部材の上記開口を閉塞する缶蓋部材と、を有し、上記移動規制部材の上記缶体固定部は、上記電極体固着部から上記缶本体部材と上記缶蓋部材のなす缶体角部に向けて延びて、上記缶体角部において上記缶本体部材と上記缶蓋部材とに固定されており、上記缶本体部材は、上記缶体角部をなす缶本体角部に、上記移動規制部材の上記缶体固定部に係合する係合部を有しており、上記缶本体部材と上記缶蓋部材とは、上記缶本体部材の上記開口を上記缶蓋部材で閉塞すると共に、上記缶本体角部の上記係合部と上記缶蓋部材との間に、直接または間接に上記移動規制部材の上記缶体固定部を固定してなる蓄電デバイスである。
【0007】
上述の蓄電デバイスは、上述の電極体固着部と缶体固定部とを有する移動規制部材を備える。このため、この蓄電デバイスでは、蓄電デバイスに外部から衝撃が掛かっても、缶体内の電極体が移動することが規制されるため、電極体が缶体の内壁面や缶体内の電流遮断機構などを構成する部材に衝突するのを防止し、電極体や缶体、缶体内の部材が損傷するのを防止できる。
更に上述の蓄電デバイスでは、移動規制部材の缶体固定部が、缶蓋部材と缶本体部材のなす缶体角部で缶本体部材と缶蓋部材とに固定されているため、当該缶体固定部は、缶体角部において移動しない。このため、移動規制部材及びこれに固着した電極体が缶体内を移動するのを効果的に抑制できる。
更に上述の蓄電デバイスでは、缶本体部材の開口を缶蓋部材で閉塞すると共に、缶本体部材の缶本体角部の係合部と缶蓋部材との間に、移動規制部材の缶体固定部を固定している。このように、この蓄電デバイスでは、缶本体部材の係合部と缶蓋部材との間に缶体固定部を固定する簡単な固定構造により、缶体に缶体固定部を固定できる。
【0008】
なお、「移動規制部材」は、蓄電デバイスに外部から強い衝撃が掛かった場合でも、容易には変形しない剛性や厚みなど寸法を有するものが好ましく、その材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET等の絶縁性樹脂などが挙げられる。
また、「蓄電デバイス」の形態としては、例えば、直方体箱状の缶体内に、直方体状の電極体が収容された角型の蓄電デバイスや、円筒状の缶体内に、円筒状の電極体が収容された円筒型の蓄電デバイスなどが挙げられる。更に直方体状の電極体としては、例えば、複数の矩形状の電極板をセパレータを介して交互に複数層積層した積層型の電極体や、帯状の電極板を帯状のセパレータを介して扁平状に捲回した扁平状捲回型の電極体などが挙げられる。また蓄電デバイスとして、缶体内に1つの電極体が収容された蓄電デバイスのほか、缶体内に複数の電極体が収容された蓄電デバイスも挙げられる。
また「電極板」としては、例えば、集電箔の両主面上に正極活物質層を設けた正極板や、集電箔の両主面上に負極活物質層を設けた負極板のほか、集電箔の一方の主面上に正極活物質層を、他方の主面上に負極活物質層を設けたバイポーラ電池用の電極板などが挙げられる。
【0009】
電極体の「外表面」としては、積層型電極体の場合には、積層された電極板の厚み方向の外側に位置する一対の主平面(厚み方向外側面)と、この一対の主平面の間を結ぶ端面とが含まれる。捲回型電極体の場合には、捲回軸の周囲に位置する外周面(厚み方向外側面)のほか、捲回軸の軸線方向の両側にそれぞれ位置する軸線方向端面が含まれる。
また、外表面のうち「厚み方向外側面」は、電極板の厚み方向の外側に位置する面を指す。積層型電極体の場合には、上述の一対の主平面がそれぞれ厚み方向外側面が該当し、捲回型電極体においては、上述の外周面が厚み方向外側面に該当する。捲回型電極体が扁平状の場合には、外周面(厚み方向外側面)には、一対の主平面と、これらの間を結ぶ一対の半円筒面とが含まれる。
厚み方向外側面のうち「固定面」は、移動規制部材の電極体固着部が固着する部位であり、厚み方向外側面の全面のほか、厚み方向外側面の一部でも良い。
【0014】
更に上記の蓄電デバイスであって、前記移動規制部材の前記缶体固定部と前記缶本体角部の前記係合部との間に介在する第1スペーサと、上記缶体固定部と前記缶蓋部材との間に介在する第2スペーサと、を備え、上記缶本体部材と前記缶蓋部材とは、上記缶本体角部の上記係合部と上記缶蓋部材との間に、上記第1スペーサ及び第2スペーサを介して上記移動規制部材の上記缶体固定部を固定してなる蓄電デバイスとするのが好ましい。
【0015】
上述の蓄電デバイスでは、缶本体部材の係合部と缶蓋部材との間に、第1スペーサ及び第2スペーサを介して移動規制部材の缶体固定部を固定している。このように第1スペーサ及び第2スペーサを介在させることで、缶体に缶体固定部をより確実に固定できる。
【0016】
更に上記のいずれかに記載の蓄電デバイスであって、前記電極体は、前記電極板同士の間に介在するセパレータを有し、前記電極板と上記セパレータとを接着してなる蓄電デバイスとするのが好ましい。
【0017】
上述の蓄電デバイスでは、電極体をなす電極板とセパレータが接着して一体化しているため、蓄電デバイスに外部から衝撃が掛かったときに、缶体内の電極体は一体の電極体として移動し易い。このため、移動規制部材により電極体の移動を規制することで得らえる前述の効果が特に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る電池の縦方向及び横方向に沿う断面図であり、図2におけるA-A矢視断面図である。
図2】実施形態に係る電池の横方向及び厚み方向に沿う、図1におけるB-B矢視断面図である。
図3】実施形態に係る電池の、図1における缶体角部近傍の拡大断面図である。
図4】実施形態に係る移動規制部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。図1図3に本実施形態に係る電池(蓄電デバイス)1の断面図を示す。なお、以下では、電池1の縦方向AH、横方向BH及び厚み方向CHを、図1図3に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0020】
電池1は、缶体10と、この缶体10の内部に収容された一対の電極体20A,20B及び1つの移動規制部材30と、缶体10に支持された正極端子40及び負極端子50等から構成される。また缶体10内には、電解液60も収容されており、その一部は電極体20A,20B内に含浸され、一部は缶体10の底部に溜まっている。また電極体20A,20B及び移動規制部材30は、縦方向AHの一方側AH1に開口した袋状の絶縁フィルム65に覆われている。
【0021】
このうち缶体10は、直方体箱状で金属(本実施形態ではアルミニウム)からなる。この缶体10は、縦方向AHの一方側AH1に開口11cを有する有底角筒状の缶本体部材11と、この缶本体部材11の開口11cを閉塞する形態で溶接された矩形板状の缶蓋部材13とから構成される。缶本体部材11は、絶縁フィルム65で覆われた電極体20A,20B及び移動規制部材30を収容する。一方、缶蓋部材13には、缶体10の内圧が所定圧力に達した際に破断開弁する安全弁(不図示)が設けられている。また缶蓋部材13には、缶体10の内外を連通する注液孔(不図示)が形成されており、封止部材(不図示)で気密に封止されている。
【0022】
更に缶蓋部材13には、複数のアルミニウムの部材から構成される正極端子40が、缶蓋部材13と絶縁された状態で固設されている。この正極端子40は、缶体10の内部で電極体20A,20Bの正極タブ20Ae,20Be(後述する)にそれぞれ接続し導通する一方、缶蓋部材13を貫通して電池外部まで延びている。また缶蓋部材13には、複数の銅の部材から構成される負極端子50が、缶蓋部材13と絶縁された状態で固設されている。この負極端子50は、缶体10の内部で電極体20A,20Bの負極タブ20Af,20Bf(後述する)にそれぞれ接続し導通する一方、缶蓋部材13を貫通して電池外部まで延びている。
【0023】
一対の電極体20A,20Bは、後述する移動規制部材30を間に挟んで厚み方向CHに重なった状態で、缶体10内に収容されている。各々の電極体20A,20Bは、扁平な直方体状であり、複数の矩形状の正極板(電極板)21と、複数の矩形状の負極板(電極板)23とを、樹脂製の多孔質膜からなる矩形状のセパレータ25を介して交互に積層した積層型の電極体である。厚み方向DHに重なる正極板21とセパレータ25、負極板23とセパレータ25とは、それぞれ接着剤で接着されており、電極体20A,20Bがそれぞれ一体化されている。
【0024】
電極体20A,20Bは、上述のようにいずれも直方体状であり、その外表面20Am,20Bmは、それぞれ概ね6つの平面から構成される。即ち、外表面20Am,20Bmは、正極板21及び負極板23の厚み方向DHの外側DH1に位置する一対の面積の広い第1厚み方向外側面20Am1,20Bm1及び第2厚み方向外側面20Am2,20Bm2と、これら第1厚み方向外側面20Am1,20Bm1及び第2厚み方向外側面20Am2,20Bm2の間を結ぶ4つの面(上面20Am3,20Bm3、下面20Am4,20Bm4、第1狭側面20Am5,20Bm5及び第2狭側面20Am6,20Bm6)とからなる。
【0025】
一方の電極体20Aの外表面20Amの第2厚み方向外側面20Am2のうち、周囲部を除いた中央部(固定面20Amh)に、後述する移動規制部材30の電極体固着部31の一方の主面31aが固着している。また、他方の電極体20Bの外表面20Bmの第1厚み方向外側面20Bm1のうち、周囲部を除いた中央部(固定面20Bmh)に、同じ移動規制部材30の電極体固着部31の他方の主面31bが固着している。
【0026】
正極板21は、矩形状のアルミニウム箔からなる正極集電箔(不図示)の両主面上にそれぞれ正極活物質層(不図示)を有する。正極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質粒子と、導電粒子と、結着剤とから構成される。正極板21のうち、縦方向AHの一方側AH1に延びる延出部は、厚み方向DHに正極活物質層が存在せず、正極集電箔が厚み方向DHに露出した正極露出部21pとなっており、各々の正極露出部21p同士が厚み方向DHに重なって前述の正極タブ20Ae,20Beを形成している。これらの正極タブ20Ae,20Beは、前述のように正極端子40と電気的に接続している。
【0027】
負極板23は、矩形状の銅箔からなる負極集電箔(不図示)の両主面上にそれぞれ負極活物質層(不図示)を有する。負極活物質層は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質粒子と、結着剤とから構成される。負極板23のうち、縦方向AHの一方側AH1に延びる延出部は、厚み方向DHに負極活物質層が存在せず、負極集電箔が厚み方向DHに露出した負極露出部23pとなっており、各々の負極露出部23p同士が厚み方向DHに重なって前述の負極タブ20Af,20Bfを形成している。これらの負極タブ20Af,20Bfは、前述のように負極端子50と電気的に接続している。
【0028】
次に、移動規制部材30について説明する(図1図3のほか、図4も参照)。この移動規制部材30は、平板状であり、絶縁性樹脂(本実施形態ではポリプロピレン)からなる。移動規制部材30は、矩形板状の電極体固着部31と、この電極体固着部31から延びる2つの缶体固定部33A,33Bとから構成される。具体的には、一方の缶体固定部33Aは、電極体固着部31のうち横方向BHの一方側BH1かつ縦方向AHの一方側AH1に位置する角部31rAから、缶本体部材11と缶蓋部材13とのなす缶体角部10rのうち、横方向BHの一方側BH1に位置する一方側缶体角部10r1に向けて、横方向BHの一方側BH1かつ縦方向AHの一方側AH1に延びている。また他方の缶体固定部33Bは、電極体固着部31のうち横方向BHの他方側BH2かつ縦方向AHの一方側AH1に位置する角部31rBから、上記缶体角部10rのうち、横方向BHの他方側BH2に位置する他方側缶体角部10r2に向けて、横方向BHの他方側BH2かつ縦方向AHの一方側AH1に延びている。
【0029】
電極体固着部31の両主面31a,31bには、それぞれ電極体20A,20Bが固着している。具体的には、前述のように、電極体固着部31の主面31aには、一方の電極体20Aの外表面20Amのうち第2厚み方向外側面20Am2の固定面20Amhが固着し、電極体固着部31の主面31bには、他方の電極体20Bの外表面20Bmのうち第1厚み方向外側面20Bm1の固定面20Bmhが固着している。これにより、電極体固着部31は、厚み方向CHに並ぶ2つの電極体20A,20Bの間に介在すると共に、これらと一体となっている。
【0030】
一方、缶体固定部33A,33Bは、缶体10に固定され、缶体10内における電極体20A,20Bの移動を規制する。即ち、一方の缶体固定部33Aは、前述のように電極体固着部31の角部31rAから缶体角部10rの一方側缶体角部10r1に向けて延びており、一方側缶体角部10r1において缶本体部材11と缶蓋部材13とに固定されている。また他方の缶体固定部33Bは、前述のように電極体固着部31の角部31rBから缶体角部10rの他方側缶体角部10r2に向けて延びており、他方側缶体角部10r2において缶本体部材11と缶蓋部材13とに固定されている。
【0031】
具体的には、缶本体部材11のうち缶体角部10rをなす缶本体角部11rには、移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bにそれぞれ係合する係合部11rkA,11rkBが設けられている。一方の係合部11rkAは、缶本体部材11の缶本体角部11rのうち、横方向BHの一方側BH1に位置する一方側缶本体角部11r1に設けられており、横方向BHの他方側BH2に段差状に突出して、縦方向AHの他方側AH2から移動規制部材30の缶体固定部33Aに係合している。また他方の係合部11rkBは、缶本体部材11の缶本体角部11rのうち、横方向BHの他方側BH2に位置する他方側缶本体角部11r2に設けられており、横方向BHの一方側BH1に段差状に突出して、縦方向AHの他方側AH2から移動規制部材30の缶体固定部33Bに係合している。
【0032】
また移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bと缶本体部材11の係合部11rkA,11rkBとの間には、それぞれ絶縁性樹脂(本実施形態ではポリプロピレン)からなる第1スペーサ37A,37Bが介在する。更に移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bと缶蓋部材13との間にも、絶縁性樹脂(本実施形態ではポリプロピレン)からなる第2スペーサ39A,39Bが介在する。そして、缶本体部材11と缶蓋部材13とは、缶本体部材11の開口11cを缶蓋部材13で閉塞すると共に、缶本体角部11rの係合部11rkA,11rkBと缶蓋部材13との間に、それぞれ第1スペーサ37A,37B及び第2スペーサ39A,39Bを介して、移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bを固定している。
【0033】
このように移動規制部材30は、電極体20A,20Bの固定面20amh,20bmhに固着された電極体固着部31と、これから延びて缶体10に固定され、缶体10内における電極体20A,20Bの移動を規制する缶体固定部33A,33Bとを有する。このため、この移動規制部材30を備える電池1では、電池1に外部から衝撃が掛かっても、缶体10内の電極体20A,20Bが移動することが規制されるため、電極体20A,20Bが缶体10の内壁面に衝突するのを防止し、電極体20A,20B自体や、電極体20A,20Bと正極端子40または負極端子50との接続部分(正極タブ20Ae,20Be、負極タブ20Af,20Bfなど)、缶体10が損傷するのを防止できる。
【0034】
更に本実施形態では、移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bは、缶体角部10rで缶本体部材11と缶蓋部材13とに固定されているため、当該缶体固定部33A,33Bは、缶体角部10rにおいて縦方向AHにも横方向BHにも移動しない。このため、移動規制部材30及びこれに固着した電極体20A,20Bが、缶体10内を縦方向AHや横方向BHに移動するのを効果的に抑制できる。
【0035】
また本実施形態では、缶本体部材11の開口11cを缶蓋部材13で閉塞すると共に、缶本体部材11の係合部11rkA,11rkBと缶蓋部材13との間に、移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bを固定している。このように電池1では、缶本体部材11の係合部11rkA,11rkBと缶蓋部材13との間に缶体固定部33A,33Bを固定する簡単な固定構造により、缶体10に缶体固定部33A,33Bを固定している。
更に缶本体部材11の係合部11rkA,11rkBと缶蓋部材13との間に、第1スペーサ37A,37B及び第2スペーサ39A,39Bを介して移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bを固定している。このように第1スペーサ37A,37B及び第2スペーサ39A,39Bを介在させることで、缶体10に缶体固定部33A,33Bをより確実に固定できる。
【0036】
また本実施形態では、電極体20A,20Bをなす正極板21及び負極板23とセパレータ25とが接着して一体化しているため、電池1に外部から衝撃が掛かったときに、缶体10内の電極体20A,20Bはぞれぞれ一体の電極体として移動し易い。このため、移動規制部材30により電極体20A,20Bの移動を規制することで得らえる前述の効果が特に大きい。
【0037】
次いで、上記電池1の製造方法について説明する。まず缶蓋部材13を用意し、これに正極端子40及び負極端子50を固設する(図1参照)。また移動規制部材30を用意し、その電極体固着部31の両主面31a,31bに、別途形成した2つの電極体20A,20Bを接着剤で接着する。次に、缶蓋部材13に固設した正極端子40及び負極端子50を、移動規制部材30に固着された電極体20A,20Bの正極タブ20Ae,20Be及び負極タブ20Af,20Bfにそれぞれ溶接する。その後、電極体20A,20B及び移動規制部材30を袋状の絶縁フィルム65で包む。
【0038】
次に、缶本体部材11を用意し、上述の絶縁フィルム65で覆われた電極体20A,20B及び移動規制部材30を、缶本体部材11内に挿入すると共に、缶本体部材11の開口11cを缶蓋部材13で塞ぐ。その際、缶本体部材11の係合部11rkA,11rkBと移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bとの間に、それぞれ第1スペーサ37A,37Bを配置すると共に、移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bと缶蓋部材13との間に、それぞれ第2スペーサ39A,39Bを配置する。これにより、缶本体角部11rの係合部11rkA,11rkBと缶蓋部材13との間に、それぞれ第1スペーサ37A,37B及び第2スペーサ39A,39Bを介して、移動規制部材30の缶体固定部33A,33Bを固定する。その後、缶本体部材11と缶蓋部材13とを、缶蓋部材13の全周にわたり溶接して缶体10を形成する。
次に、電解液60を缶蓋部材13の注液孔(不図示)を通じて缶体10内に注液し、その後、この注液孔を封止部材(不図示)で封止する。その後は、この電池1について、初充電や各種検査等を行う。かくして、電池1が完成する。
【0039】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、2つの電極体20A,20Bを1つの移動規制部材30に固着した形態を例示したが、これに限られない。移動規制部材を2つ用意し、電極体20A,20B毎にそれぞれ移動規制部材を固着した形態としてもよい。
また、実施形態では、2つの電極体20A,20B同士の間に移動規制部材30を介在させたが、電極体20A,20Bと缶体10の間にそれぞれ移動規制部材を介在させてもよい。
また、実施形態では、接着剤を用いて移動規制部材30を電極体20A,20Bに固着したが、固着方法はこれに限定されない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような熱可塑性樹脂を用い、加熱プレスで熱溶着させることにより、移動規制部材30を電極体20A,20Bに固着してもよい。
【0040】
また、実施形態では、2つの電極体20A,20Bを缶体10内に収容する電池1を例示したが、電極体の数は単数でもよいし、3つ以上でもよい。
また、実施形態では、積層型の電極体20A,20Bを缶体10内に収容した電池1を例示したが、これらに代えて扁平状捲回型の電極体を缶体内に収容して電池を構成してもよい。
また、実施形態では、直方体状の電極体20A,20Bを直方体箱状の缶体10内に収容した電池1を例示したが、これに限られない。円筒状の捲回型電極体の周囲面(厚み方向外側面)に、移動規制部材を固着し、これらを円筒状の缶体内に収容して電池を構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電池(蓄電デバイス)
10 缶体
10r 缶体角部
11 缶本体部材
11c 開口
11r 缶本体角部
11rkA,11rkB 係合部
13 缶蓋部材
20A,20B 電極体
20Am,20Bm 外表面
20Am1,20Bm1 第1厚み方向外側面
20Am2,20Bm2 第2厚み方向外側面
20Amh,20Bmh 固定面
21 正極板(電極板)
23 負極板(電極板)
25 セパレータ
30 移動規制部材
31 電極体固着部
33A,33B 缶体固定部
37A,37B 第1スペーサ
39A,39B 第2スペーサ
40 正極端子
50 負極端子
DH (電極板の)厚み方向
DH1 (厚み方向の)外側
図1
図2
図3
図4