(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20240802BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240802BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240802BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240802BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60K1/04 Z
B60L15/20 K
B60L50/60
(21)【出願番号】P 2021213172
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
(72)【発明者】
【氏名】山中 之史
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 一人
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-143704(JP,A)
【文献】特開2014-117026(JP,A)
【文献】特開2012-011936(JP,A)
【文献】特開平10-248104(JP,A)
【文献】特開2011-046300(JP,A)
【文献】特開2021-000957(JP,A)
【文献】特開2014-009078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
B60K 1/04
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に搭載されるバッテリと、
前記バッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータにより変換された前記交流電力により駆動するモータと、
前記モータの回転数を示す回転数情報を取得する回転数情報取得部と、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記モータにより駆動される作業装置用のPTO軸と、
前記モータに要求する要求回転数を変更する操作具と、
前記回転数情報と前記要求回転数とに応じて前記インバータを駆動して、前記モータを流れる電流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モータの負荷が予め設定された負荷より高くなった場合に、前記要求回転数にかかわらず、前記モータの駆動を停止
し、前記モータの駆動を停止した場合に、前記インバータの駆動が規制される規制状態となり、前記規制状態は、オペレータからの解除指示情報の入力に応じて解除され、
前記規制状態の解除は、前記解除指示情報の入力があり、且つ、前記解除指示の際に、前記走行装置が走行状態とならないもしくは前記PTO軸が回転しない処理が予めなされていないと前記規制状態が解除されない電動作業車。
【請求項2】
機体に搭載されるバッテリと、
前記バッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータと、
前記インバータにより変換された前記交流電力により駆動するモータと、
前記モータの回転数を示す回転数情報を取得する回転数情報取得部と、
前記モータにより駆動される走行装置と、
前記モータにより駆動される作業装置用のPTO軸と、
前記モータに要求する要求回転数を変更する操作具と、
前記回転数情報と前記要求回転数とに応じて前記インバータを駆動して、前記モータを流れる電流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記モータの負荷が予め設定された負荷より高くなった場合に、前記要求回転数にかかわらず、前記モータの駆動を停止し、前記モータの駆動を停止した場合に、前記インバータの駆動が規制される規制状態となり、前記規制状態は、オペレータからの解除指示情報の入力に応じて解除され、
前記規制状態の解除は、前記解除指示情報の入力があり、且つ、前記機体の状態が前記規制状態が解除された際に前記負荷がかからない状態である場合に行われる電動作業車。
【請求項3】
前記モータを流れる電流の電流値を検出する電流センサと、
前記電流値に基づいて前記モータが出力するトルクを算定するトルク算定部と、を備え、
前記制御部は、前記モータが出力するトルクが予め設定されたトルク値よりも大きくなった場合に、前記モータの駆動を停止する請求項
1又は2に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータの回転数が予め設定された回転数以下となった場合に、前記要求回転数にかかわらず、前記モータの駆動を停止する請求項
1から3のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記制御部は、前記モータの回転数が前記予め設定された回転数以下となった状態が、所定の間に亘って継続した場合に、前記モータの駆動を停止する請求項
4に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記制御部は、前記モータの負荷の増大に伴って、前記モータの回転数が前記要求回転数よりも低いアイドリング回転数以下になった場合に、前記モータの駆動を停止する請求項1から
5のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項7】
前記制御部は、前記モータの負荷が前記予め設定された負荷より高くなった原因が前記走行装置に起因するものである場合に、前記走行装置が有する静油圧式無段変速機における油圧をリリーフ弁を駆動して低下させ、当該リリーフ弁の駆動後、前記モータの負荷が継続して高い状態が続いた場合は前記モータの駆動を停止する請求項1から
6のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項8】
前記制御部は、前記解除指示情報の入力があった場合に、前記走行装置が有する静油圧式無段変速機を初期状態にする請求項
1から7のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項9】
前記制御部は、前記規制状態が解除された場合に、前記機体を走行させないようにする請求項
1から8のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項10】
前記要求回転数にかかわらず前記モータの駆動が停止された場合に、前記モータの駆動が停止されたことを報知する報知部を更に備える請求項1から9のいずれか一項に記載の電動作業車。
【請求項11】
前記モータの負荷が増大して、前記モータの回転数が、前記要求回転数よりも低い第1の回転数になった場合に、前記モータの負荷が増大していることを報知する報知部を更に備え、
前記制御部は、前記報知部が報知してから所定時間が経過した場合及び前記報知部が報知してから前記モータの回転数が前記第1の回転数よりも低い第2の回転数になった場合の少なくともいずれか一方の場合に、前記モータの駆動を停止する請求項1から10のいずれか一項に記載の電動作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーで走行する電動作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギーを動力源として走行する電動作業車が利用されてきた。このような電動作業車として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、バッテリと、当該バッテリから供給される電力により駆動するモータと、当該モータにより駆動される走行装置とを備えた電動作業車について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車には、上述した電動作業車の他に、エンジンを動力源とする作業車もある。電動作業車の動力源であるモータは、エンジンに比べて低い回転数でも高トルクを出力可能に構成される。一方、エンジンにあっては、例えば低い回転数の状態で高トルクを得ようとすると、エンジンが停止する(所謂、エンスト)場合がある。例えば、エンジンを動力源とする作業車から、電動作業車に乗り換えたユーザによっては、エンジンではエンストが生じるような低回転数高トルクの状態でも、モータは停止することなく継続して駆動するため違和感を持つことがある。また、モータは低回転数高トルクの状態でも停止しないため、高負荷状態が継続することでモータに負担がかかる可能性もある。
【0006】
そこで、低回転数高トルクの状態において、エンジンを動力源とする作業車と同様の挙動となる電動作業車が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電動作業車の特徴構成は、機体に搭載されるバッテリと、前記バッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータにより変換された前記交流電力により駆動するモータと、前記モータの回転数を示す回転数情報を取得する回転数情報取得部と、前記モータにより駆動される走行装置と、前記モータにより駆動される作業装置用のPTO軸と、前記モータに要求する要求回転数を変更する操作具と、前記回転数情報と前記要求回転数とに応じて前記インバータを駆動して、前記モータを流れる電流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記モータの負荷が予め設定された負荷より高くなった場合に、前記要求回転数にかかわらず、前記モータの駆動を停止し、前記モータの駆動を停止した場合に、前記インバータの駆動が規制される規制状態となり、前記規制状態は、オペレータからの解除指示情報の入力に応じて解除され、前記規制状態の解除は、前記解除指示情報の入力があり、且つ、前記解除指示の際に、前記走行装置が走行状態とならないもしくは前記PTO軸が回転しない処理が予めなされていないと前記規制状態が解除されない点にある。
【0008】
モータは、エンジンに比べて低回転時に出力可能なトルクが高いものが多い。このような特徴構成とすれば、モータに対する負荷が予め設定された負荷よりも高くなった場合にモータを停止することができる。これにより、モータの挙動を、低回転数で負荷が高くなり過ぎたときに、駆動を停止するエンジンと同様の挙動とすることが可能となる。したがって、例えばエンジンを動力源とする作業車から、モータを動力源とする電動作業車に乗り換えた場合であっても、オペレータが違和感を持つことなく電動作業車を運転することが可能となる。
又、例えばエンジンが停止した後、エンジンを再始動する場合には、エンジンキーを操作したり、スタートボタンを押下したりする必要がある。そこで、このような構成とすれば、モータが要求回転数にかかわらず停止された後、再始動する場合に、オペレータからの解除指示情報の入力が必要となるので、再始動時の操作においてもエンジンで駆動する作業車と同様にすることができる。したがって、よりエンジンを動力源とする作業車の挙動に近づけることが可能となる。
本発明に係る電動作業車の特徴構成は、機体に搭載されるバッテリと、前記バッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータと、前記インバータにより変換された前記交流電力により駆動するモータと、前記モータの回転数を示す回転数情報を取得する回転数情報取得部と、前記モータにより駆動される走行装置と、前記モータにより駆動される作業装置用のPTO軸と、前記モータに要求する要求回転数を変更する操作具と、前記回転数情報と前記要求回転数とに応じて前記インバータを駆動して、前記モータを流れる電流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記モータの負荷が予め設定された負荷より高くなった場合に、前記要求回転数にかかわらず、前記モータの駆動を停止し、前記モータの駆動を停止した場合に、前記インバータの駆動が規制される規制状態となり、前記規制状態は、オペレータからの解除指示情報の入力に応じて解除され、前記規制状態の解除は、前記解除指示情報の入力があり、且つ、前記機体の状態が前記規制状態が解除された際に前記負荷がかからない状態である場合に行われる点にある。
モータは、エンジンに比べて低回転時に出力可能なトルクが高いものが多い。このような特徴構成とすれば、モータに対する負荷が予め設定された負荷よりも高くなった場合にモータを停止することができる。これにより、モータの挙動を、低回転数で負荷が高くなり過ぎたときに、駆動を停止するエンジンと同様の挙動とすることが可能となる。したがって、例えばエンジンを動力源とする作業車から、モータを動力源とする電動作業車に乗り換えた場合であっても、オペレータが違和感を持つことなく電動作業車を運転することが可能となる。
又、例えばエンジンが停止した後、エンジンを再始動する場合には、エンジンキーを操作したり、スタートボタンを押下したりする必要がある。そこで、このような構成とすれば、モータが要求回転数にかかわらず停止された後、再始動する場合に、オペレータからの解除指示情報の入力が必要となるので、再始動時の操作においてもエンジンで駆動する作業車と同様にすることができる。したがって、よりエンジンを動力源とする作業車の挙動に近づけることが可能となる。
【0009】
また、前記モータを流れる電流の電流値を検出する電流センサと、前記電流値に基づいて前記モータが出力するトルクを算定するトルク算定部と、を備え、前記制御部は、前記モータが出力するトルクが予め設定されたトルク値よりも大きくなった場合に、前記モータの駆動を停止すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、モータが出力しているトルクを容易に算定することができる。したがって、制御部が、算定されたトルクに応じて、負荷が高いか否かを容易に判定することができるので、モータの負荷が予め設定された負荷より高いか否かを適切に判定することが可能となる。また、モータに対して過大な負荷が作用することを防止できるので、モータの劣化を良くすることが可能となる。
【0011】
また、前記制御部は、前記モータの回転数が予め設定された回転数以下となった場合に、前記要求回転数にかかわらず、前記モータの駆動を停止すると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、例えば発進時のように、モータの回転数が予め設定された回転数以下となった場合には、所謂エンストを擬似的に生じさせることができる。したがって、オペレータがエンジンを動力源とする作業車と同様に、電動作業車を運転することが可能となる。
【0013】
また、前記制御部は、前記モータの回転数が前記予め設定された回転数以下となった状態が、所定の間に亘って継続した場合に、前記モータの駆動を停止すると好適である。
【0014】
このような構成とすれば、例えば一時的にモータの回転数が予め設定された回転数以下となった状況である場合にはモータの駆動が停止されないので、継続して電動作業車を駆動させることが可能となる。
【0015】
また、前記制御部は、前記モータの負荷の増大に伴って、前記モータの回転数が前記要求回転数よりも低いアイドリング回転数以下になった場合に、前記モータの駆動を停止すると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、よりエンジンを動力源とする作業車の挙動に近づけることが可能となる。
【0017】
また、前記制御部は、前記モータの負荷が前記予め設定された負荷より高くなった原因が前記走行装置に起因するものである場合に、前記走行装置が有する静油圧式無段変速機における油圧をリリーフ弁を駆動して低下させ、当該リリーフ弁の駆動後、前記モータの負荷が継続して高い状態が続いた場合は前記モータの駆動を停止すると好適である。
【0018】
このような構成とすれば、例えば電動作業車が、泥地でスタックした場合等のように走行装置の負荷が増大した際は、走行装置が有する静油圧式無段変速機の油圧を開放し、モータの負荷が高くなくなった場合にはモータの駆動が停止されないので電動作業車が走行を継続することができる。一方、走行装置が有する静油圧式無段変速機の油圧を開放した後、モータの負荷が高い状態が継続した場合には、モータの駆動を停止させ、よりエンジンを動力源とする作業車の挙動に近づけることが可能となる。
【0019】
【0020】
【0021】
また、前記制御部は、前記解除指示情報の入力があった場合に、前記走行装置が有する静油圧式無段変速機を初期状態にすると好適である。
【0022】
このような構成とすれば、走行装置が有する静油圧式無段変速機の負荷を軽減することで、電動作業車が走行し易くできる。
【0023】
また、前記制御部は、前記規制状態が解除された場合に、前記機体を走行させないようにすると好適である。
【0024】
このような構成とすれば、制御部が例えば変速装置を中立状態にしたり、アクセルペダルを初期位置に戻して機体を走行させないようにすることで、意図せず走行するといった状況の発生を防止できる。
【0025】
また、前記規制状態の解除は、前記解除指示情報の入力があり、且つ、前記機体の状態が予め設定された状態である場合に行われると好適である。
【0026】
このような構成とすれば、規制状態が解除された場合に、意図せず走行するといったことを防止できる。
【0027】
また、前記要求回転数にかかわらず前記モータの駆動が停止された場合に、前記モータの駆動が停止されたことを報知する報知部を更に備えると好適である。
【0028】
モータは停止中はもちろん、駆動中も動作音が小さいため、状況(例えば走行している路面の状況に応じて生じる音が大きい場合や、作業ユニットから生じる音が大きい場合や、作業に起因して生じる音が大きい場合)によっては、オペレータが停止中であるか駆動中であるか把握し難い場合がある。そこで、要求回転数にかかわらずモータの駆動が停止された場合に、報知部が報知することで、オペレータにモータが停止されたことを把握させることができる。
【0029】
また、前記モータの負荷が増大して、前記モータの回転数が、前記要求回転数よりも低い第1の回転数になった場合に、前記モータの負荷が増大していることを報知する報知部を更に備え、前記制御部は、前記報知部が報知してから所定時間が経過した場合及び前記報知部が報知してから前記モータの回転数が前記第1の回転数よりも低い第2の回転数になった場合の少なくともいずれか一方の場合に、前記モータの駆動を停止すると好適である。
【0030】
このような構成とすれば、モータの回転数が増大してからモータの駆動を停止するまでの間に、オペレータに対してモータの負荷が増大していることを報知することができる。
したがって、モータの駆動が停止されるまでの間に、オペレータにモータの負荷を軽減できる対応を取らせる時間を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図5】操作具の操作量とモータに対する要求回転数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る電動作業車は、モータの低回転時にエンジンを動力源とする作業車と同様の挙動となるように構成される。以下、本実施形態の電動作業車について説明する。尚、以下では、電動作業車がトラクタである場合の例を挙げて説明する。
【0033】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0034】
〔トラクタの全体構成〕
以下では、本実施形態のトラクタについて説明する。
図1に示すように、トラクタは、左右の前車輪10、左右の後車輪11、カバー部材12を備えている。
【0035】
また、トラクタは、機体フレーム2及び運転部3を備えている。機体フレーム2は、左右の前車輪10及び左右の後車輪11に支持されている。
【0036】
カバー部材12は、機体前部に配置されている。そして、運転部3は、カバー部材12の後方に設けられている。言い換えれば、カバー部材12は、運転部3の前方に配置されている。
【0037】
運転部3は、保護フレーム30、運転座席31、ステアリングホイール32を有している。オペレータは、運転座席31に着座可能である。これにより、オペレータは、運転部3に搭乗可能である。ステアリングホイール32の操作によって、左右の前車輪10は操向操作される。オペレータは、運転部3において、各種の運転操作を行うことができる。
【0038】
トラクタは、走行用バッテリ4を備えている。また、カバー部材12は、機体左右方向に沿う開閉軸芯Q周りに揺動可能に構成されている。これにより、カバー部材12は、開閉可能に構成されている。カバー部材12が閉状態であるとき、走行用バッテリ4は、カバー部材12に覆われている。
【0039】
図2に示すように、トラクタは、インバータ14及びモータMを備えている。走行用バッテリ4は、インバータ14へ電力を供給する。インバータ14は、走行用バッテリ4からの直流電力を交流電力に変換してモータMへ供給する。そして、モータMは、インバータ14から供給される交流電力により駆動する。
【0040】
図2及び
図3に示すように、トラクタは、静油圧式無段変速機15及びトランスミッション16を備えている。
図3に示すように、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15a及び油圧モータ15bを有している。
【0041】
油圧ポンプ15aは、モータMからの回転動力により駆動する。油圧ポンプ15aが駆動することにより、油圧モータ15bから回転動力が出力される。尚、静油圧式無段変速機15は、油圧ポンプ15aと油圧モータ15bとの間で回転動力が変速されるように構成されている。また、静油圧式無段変速機15は、変速比を無段階に変更可能に構成されている。
【0042】
油圧モータ15bから出力された回転動力は、トランスミッション16に伝達される。
トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16の有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動する。
【0043】
また、
図2及び
図3に示すように、トラクタは、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18を備えている。モータMから出力された回転動力は、油圧ポンプ15a、ミッドPTO軸17、リヤPTO軸18へ分配される。これにより、ミッドPTO軸17及びリヤPTO軸18が回転する。
【0044】
ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18に作業装置が接続されていれば、ミッドPTO軸17またはリヤPTO軸18の回転動力により、作業装置が駆動することとなる。
例えば、
図2に示すように、本実施形態では、ミッドPTO軸17に草刈装置19が接続されている。ミッドPTO軸17の回転動力により、草刈装置19が駆動する。
【0045】
〔モータの制御〕
図4は、モータMの駆動にかかる機能部を示すブロック図である。
図4のブロック図には、バッテリ(走行用バッテリ)4、インバータ14、モータM、回転数情報取得部41、走行装置42、操作具43、制御部44、電流センサ51、トルク算定部52、報知部57が示される。各機能部は、モータMの駆動を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0046】
バッテリ4は、上述したようにカバー部材12に覆われた状態で、機体に搭載される。
また、バッテリ4に蓄えられた電気エネルギーは、モータMの駆動に利用される。
【0047】
インバータ14は、バッテリ4の直流電力を交流電力に変換する。本実施形態では、インバータ14は、第1の電源ラインL1と第2の電源ラインL2との間に設けられた、第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2とが直列に接続された3本のアーム部Aを有して構成される。第1の電源ラインL1とは、バッテリ4の2つの出力端子のうちの正端子に接続される電源ラインであって、第2の電源ラインL2とは、バッテリ4の2つの出力端子のうちの負端子に接続される電源ラインである。インバータ14は、この第1の電源ラインL1と第2の電源ラインL2との間に、3本のアーム部Aを設けている。以下では、3本のアーム部Aの夫々を区別する場合には、夫々、アーム部A1、アーム部A2、アーム部A3として示す。本実施形態では、第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2は、共に、P型のIGBTが用いられる。第1のスイッチング素子Q1のコレクタ端子が第1の電源ラインL1に接続され、第1のスイッチング素子Q1のエミッタ端子と第2のスイッチング素子Q2のコレクタ端子とが接続される。また、第2のスイッチング素子Q2のエミッタ端子は、第2の電源ラインL2に接続される。第1のスイッチング素子Q1のエミッタ端子とコレクタ端子との間には、アノード端子がエミッタ端子に接続され、カソード端子がコレクタ端子に接続されたダイオードD1が設けられる。また、第2のスイッチング素子Q2のエミッタ端子とコレクタ端子との間には、アノード端子がエミッタ端子に接続され、カソード端子がコレクタ端子に接続されたダイオードD2が設けられる。第1のスイッチング素子Q1及び第2のスイッチング素子Q2の夫々のゲート端子は、後述する制御部44に接続される。インバータ14は、制御部44により、3つのアーム部Aにおける1つのアーム部Aの第1のスイッチング素子Q1と、他の2つのアーム部Aのうちの一方のアーム部Aの第2のスイッチング素子Q2とがPWM制御により通電される。これにより、バッテリ4の直流電力は、PWM制御信号の周波数に応じた交流電力に変換される。
【0048】
モータMは、インバータ14により変換された交流電力により駆動する。モータMの3つの端子は、夫々、アーム部A1における第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2とが接続される第1のノードn1と、アーム部A2における第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2とが接続される第2のノードn2と、アーム部A3における第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2とが接続される第3のノードn3とに接続される。アーム部A1における第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2とが接続される第1のノードn1とは、アーム部A1を構成する第1のスイッチング素子Q1のエミッタ端子と第2のスイッチング素子Q2のコレクタ端子とが接続される部分である。アーム部A2における第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2とが接続される第2のノードn2とは、アーム部A2を構成する第1のスイッチング素子Q1のエミッタ端子と第2のスイッチング素子Q2のコレクタ端子とが接続される部分である。アーム部A3における第1のスイッチング素子Q1と第2のスイッチング素子Q2とが接続される第3のノードn3とは、アーム部A3を構成する第1のスイッチング素子Q1のエミッタ端子と第2のスイッチング素子Q2のコレクタ端子とが接続される部分である。
図4では、モータMのコイルはデルタ結線で構成されている場合の例を挙げているが、モータMのコイルはスター結線で構成されていても良い。
【0049】
回転数情報取得部41は、モータMの回転数を示す回転数情報を取得する。モータMの回転数とは、モータMが有するロータの回転数である。このような回転数は、例えばホール素子を有する回転センサ41Aを用いて検出することが可能である。また、回転センサ41Aに代えて、モータMを流れる電流の大きさに基づき、モータMの回転数を算定することも可能である。この場合には、後述する電流センサ51の検出結果に基づき算定すると良い。回転センサ41AによるモータMの回転数の検出結果は、回転数情報として回転数情報取得部41に伝達される。
【0050】
走行装置42は、モータMにより駆動される。本実施形態では、走行装置42とは、上述した静油圧式無段変速機15、トランスミッション16、左右の前車輪10、及び左右の後車輪11の総称である。上述したように、モータMの回転動力が、静油圧式無段変速機15を介して、トランスミッション16に伝達される。トランスミッション16に伝達された回転動力は、トランスミッション16が有するギヤ式変速機構によって変速され、左右の前車輪10及び左右の後車輪11へ分配される。これにより、上述したように、左右の前車輪10及び左右の後車輪11が駆動され、トラクタが走行可能となる。
【0051】
操作具43は、モータMに要求する要求回転数を変更する。モータMに要求する要求回転数とは、オペレータがモータMから出力してほしい回転動力の回転数の指令値、所謂、指令回転数にあたる。本実施形態では、操作具43は、運転座席31の側部において、前後方向に揺動可能に構成されたレバーが相当する。操作具43を、前方側へ傾倒するように操作される程、要求回転数が増大して、モータMが高速で回転するように構成されており、操作された位置で安定的に位置保持されるように構成されている。
図5には、操作具43の操作量とモータMに対する要求回転数との関係が示される。
図5では、縦軸がモータMに要求される要求回転数であり、横軸が操作具43の操作量である。
図5の例では、操作量が10〔%〕の時の要求回転数がN1〔rpm〕であり、操作量が90〔%〕の時の要求回転数がN2〔rpm〕である。操作量が10〔%〕から90〔%〕までの間は、要求回転数は操作量に比例するように設定されている。なお、操作量は%で示されているが、これは、操作具43が最も手前側にある状態が0〔%〕であり、最も前方側へ傾倒した状態が100〔%〕である。また、詳細は後述するが、本例では、操作量が10〔%〕未満では、要求回転数が0〔rpm〕となり、操作量が90〔%〕以上では、要求回転数がN2〔rpm〕となるように構成されている。本例では、このような関係に基づき、操作具43の操作量に応じて、モータMの要求回転数を設定することが可能となる。回転数がN1〔rpm〕の状態をアイドリング状態、この回転数をアイドリング回転数とする。
【0052】
図4に戻り、本実施形態では、操作具43の操作量、すなわち上記前後方向における位置は、位置検出部43Aにより検出される。したがって、位置検出部43Aにより検出された操作具43の位置により、モータMに要求された要求回転数を特定することが可能となる。
【0053】
制御部44は、回転数情報と要求回転数とに応じてインバータ14を駆動して、モータMを流れる電流を制御する。回転数情報は、回転数情報取得部41から制御部44に伝達される。要求回転数は、位置検出部43Aから操作具43の位置の検出結果が伝達され、この検出結果に基づき特定可能である。モータMを流れる電流とは、インバータ14から出力された電流であって、モータMのコイルに流れる電流である。したがって、制御部44は、回転数情報により示される現在のモータMの回転数が、位置検出部43Aの検出結果により特定された要求回転数となるように、インバータ14を制御してモータMのコイルに流れる電流を制御する。これにより、操作具43の操作に応じて、モータMから出力される回転動力を制御することが可能となる。
【0054】
ここで、本トラクタは、モータMの回転動力により走行する電動トラクタであるが、トラクタには、エンジンの回転動力により走行するものもある。このようなトラクタに搭載されるエンジンは、エンジンの回転数に応じて出力可能なトルク(出力トルク)が決まっている。エンジンは、当該エンジンの回転数により出力可能なトルクよりも過大なトルクがエンジンに作用すると停止する(所謂、エンストする)。一方、モータMも、回転数に応じて出力可能なトルクが決まっているが、当該出力可能なトルクよりも過大なトルクがモータMに作用しても、モータMの場合には回転数が次第に減少してゼロになり、エンジンのような急に停止することは少ない。このため、例えばエンジンを動力源とするトラクタから、電動トラクタに乗り換えた場合、オペレータが違和感を持つ可能性がある。そこで、本トラクタでは、オペレータが上記のような違和感を持つことがないように構成される。
【0055】
具体的には、制御部44は、モータMの負荷が予め設定された負荷より高くなった場合に、要求回転数にかかわらず、モータMの駆動を停止する。モータMの負荷とは、モータMに作用するトルクである。予め設定された負荷とは、当該負荷がモータMに作用した場合に、モータMの駆動を停止させたい負荷である。例えばエンジンがエンストする際にエンジンに作用する負荷に基づいて設定すると良い。要求回転数にかかわらずとは、モータMの回転数を、操作具43により要求される要求回転数に追従させることがないことを意味する。モータMの駆動を停止するとは、インバータ14からモータMのコイルに電流が流れないようにすることをいう。したがって、制御部44は、モータMに作用するトルクが、予め設定されたモータMの駆動を停止させたい負荷よりも高くなった場合に、モータMの回転数を、操作具43により要求される要求回転数に追従させることなく、インバータ14からモータMのコイルに電流が流れないようにしてモータMを停止させる。
具体的には、要求回転数が2000〔rpm〕で、モータMの負荷が高くなりモータMの実回転数が1500〔rpm〕となった場合に、モータMの駆動を停止するように設定するとよい。よりエンジンを動力源とするトラクタとフィーリングを近づけるために、要求回転数がアイドリング回転数以上であり、モータMの負荷が高くなりモータMの実回転数がアイドリング回転数以下となった場合に、モータMの駆動を停止するように設定してもよい。
【0056】
モータMのトルクは、モータMを流れる電流に基づいて算定することが可能である。モータMを流れる電流の電流値は、電流センサ51により検出される。モータMを流れる電流は、第1のノードn1とモータMとを接続するケーブル、第2のノードn2とモータMとを接続するケーブル、第3のノードn3とモータMとを接続するケーブルを流れる電流とほぼ同じであるので、電流センサ51はこれらのケーブルを流れる電流に基づき、モータMを流れる電流の電流値を検出しても良い。また、電流センサ51は、これらのケーブルを断線することなく測定するホール素子を利用して検出するものであっても良いし、これらのケーブルの夫々と基準電位(例えば接地電位)との間に抵抗器を設けて、当該抵抗器における電圧降下により検出するものであっても良い。電流センサ51による電流値の検出結果は、トルク算定部52に伝達される。なお、この電流値の検出結果を、制御部44に伝達し、制御部44はモータMを流れる電流も考慮して、インバータ14をPWM制御しても良い。
【0057】
トルク算定部52は、電流値に基づいてモータMが出力するトルクを算定する。すなわち、モータMを流れる電流の電流値と、モータMが出力するトルクとの間には、所定の関係がある。トルク算定部52に、予めこのような関係を示すマップを記憶しておき、当該マップに基づいてモータMを流れる電流の電流値に対応する出力トルクを算定すると良い。
【0058】
この場合には、制御部44は、モータMが出力するトルクが予め設定されたトルク値よりも大きくなった場合に、モータMの駆動を停止すると良い。モータMが出力するトルクとは、トルク算定部52により算定されたトルクである。制御部44は、このトルクを、予め設定されたトルク値と比較し、当該トルク値よりも大きくなった場合に、モータMの負荷が予め設定された負荷よりも高くなっているとして、モータMの駆動を停止すると良い。
【0059】
また、制御部44は、モータMの回転数が予め設定された回転数以下となった場合に、要求回転数にかかわらず、モータMの駆動を停止するように構成すると良い。モータMの回転数は、回転数情報取得部41により取得される。予め設定された回転数とは、例えば1分間の回転数が数百回転とすることが可能である。また、目標回転数から30%下がった回転数、もしくは目標回転数から数百回転下がった回転数といった設定をすることも可能である。したがって、制御部44は、回転数情報取得部41により取得されたモータMの回転数が、予め設定された回転数である、数百回転(rpm)、あるいは目標回転数から30%下がった回転数、目標回転数から数百回転下がった回転数となった場合に、モータMの駆動を停止すると良い。
このとき、すぐにモータMの駆動を停止するのではなくモータMの回転数が予め設定された回転数以下となった状態が数秒程度などしばらく継続した後、モータMの駆動を停止するようにしてもよい。
また、モータMの負荷が高くなった原因が走行装置42に起因するものであった場合、静油圧式無段変速機15の油圧をリリーフ弁により下げ、それでもモータMの負荷が変わらず高い状態が続いた場合はモータMの駆動を停止するようにしてもよい。走行装置42による負荷の原因としては、例えば泥地でスタックした場合が挙げられる。
【0060】
以上のように構成することで、例えばエンジンを搭載したトラクタのエンストを擬似的に発生させることが可能となる。これにより、例えばエンジンを搭載したトラクタから乗り換えたオペレータが違和感を持つことなく当該モータMを搭載するトラクタを利用することが可能となる。
【0061】
ここで、本実施形態では、制御部44は、上述したように、要求回転数にかかわらずモータMの駆動を停止した場合に、インバータ14の駆動が規制される規制状態となる。要求回転数にかかわらずモータMの駆動を停止した場合とは、モータMが出力するトルクが予め設定されたトルク値よりも大きくなった際のモータMの駆動停止や、モータMの回転数が予め設定された回転数以下となった際のモータMの駆動停止等のように、モータMの負荷が予め設定された負荷よりも高くなってモータMの駆動が停止された場合である。インバータ14の駆動が規制されるとは、インバータ14に対する通電を行うことができなくされることを意味する。このような状態は、規制状態と称される。したがって、制御部44は、モータMの負荷が予め設定された負荷よりも高くなってモータMの駆動が停止された場合に、インバータ14に対する通電を行うことができない状態となる。
【0062】
本実施形態では、この規制状態は、オペレータからの解除指示情報の入力に応じて解除することが可能である。解除情報指示とは、制御部44の規制状態を解除するための指示であって、例えばオペレータによる運転部3のフロントパネル部に設けられるスタートボタン61の押下や、操作具43による要求回転数を零とするオペレータによる操作とすることが可能である。スタートボタン61の押下は、解除指示情報受付部55が受け付けるように構成すると良い。また、操作具43による要求回転数を零とする操作は、操作具43の位置を位置検出部43Aが検出し、この検出結果を解除指示情報受付部55が受け付けるように構成すると良い。
【0063】
解除指示情報受付部55が、このような解除指示を受け付けると制御部44に解除指示があったことを示す情報を伝達すると良い。これにより、制御部44の規制状態を解除することが可能となる。
【0064】
図6には、モータMの制御状態を示す状態遷移図が示される。モータMを駆動する場合には、オペレータにより操作具43が操作される。この時の操作具43の位置が位置検出部43Aにより検出され、要求回転数として制御部44に伝達される。制御部44は、この要求回転数が伝達されると、インバータ14に対する通電指示があったとして、インバータ14に対して通電する(#1)。これにより、インバータ14を介してモータMが通電状態となる(#2)。モータMが通電状態にある時に、モータMの負荷が予め設定された負荷より高くなると、制御部44はインバータ14に対する通電を停止する。これにより、モータMが停止する(#3)。このモータMの停止は、操作具43により要求回転数として0〔rpm〕が要求された結果によるものではないため、制御部44は規制状態とされる(#4)。
【0065】
制御部44が規制状態である場合において、オペレータによりスタートボタン61が押下されたり、操作具43が一旦、操作量が0〔%〕となる位置に戻された場合、解除指示情報受付部55がこれらを検出し、制御部44に対して解除指示情報が伝達される(#5)。制御部44は、解除指示情報が伝達されると、規制状態が解除され、解除状態となる(#6)。規制状態が解除されると、制御部44は通電指示待ちの状態となる(#7)。
この通電指示待ちの状態において、オペレータにより操作具43が操作され、モータMの要求回転数が入力されると、制御部44は要求回転数に応じてインバータ14を通電し、モータMが通電状態となる(#2)。本実施形態では、このような状態遷移図に基づきモータMの制御状態が遷移する。
【0066】
なお、#2のモータMに対する通電中に、オペレータによる操作具43の操作に応じてモータMに対する通電が停止された場合には(#3)、制御部44は規制状態とならずに、#7の通電指示待ちの状態となる。
また、#5の解除指示の際に、走行装置42の静油圧式無段変速機15を初期状態にするようにしてもよい。例えば、静油圧式無段変速機15を中立状態にして初期状態にする。これは、オペレータがスイッチなどで初期状態にするようにしてもよく、自動で静油圧式無段変速機15内のリリーフ弁により圧力を下げて中立にするようにしてもよい。
その他にも、規制状態が解除された際にトラクタが走行しないような処理を行うことができる。例えば、#5の解除指示の際に、トランスミッション16に副変速を含む場合は、副変速をニュートラルとすることや、アクセルペダルを初期状態に戻すことも可能である。また、#5の解除指示の際に、PTOが回転しないような処理、例えばミッドPTO軸17、リヤPTO軸18の回転を、クラッチを切断するなどの方法で停止させ、規制状態が解除された際に負荷がかからない状態となるようにしてもよい。
【0067】
ここで、上述したように、要求回転数にかかわらずモータMの駆動が停止された場合に、オペレータが、モータMの負荷が予め設定された負荷よりも高くなってモータMの駆動が停止されたのか否かを把握することができるように、報知部57が要求回転数にかかわらずモータMの駆動が停止された場合に、モータMの駆動が停止されたことを報知すると良い。すなわち、要求回転数にかかわらずモータMの駆動が停止された場合に、
図7に示されるように、トラクタの運転部3に設けられる表示装置58の表示画面に、「モータが停止中です。規制を解除してください。」というようなメッセージを表示したり、スピーカ59から「モータが停止中です。規制を解除してください。」というような音声を出力するように構成すると良い。これにより、オペレータが、モータMの負荷が予め設定された負荷よりも高くなってモータMの駆動が停止されたのか否かを把握することが可能となる。
また、#5の解除指示の際に、トラクタが走行しないような処理やPTOが回転しないような処理が予めなされていないと解除できないようにしてもよい。例えば、トラクタが走行しないような処理として静油圧式無段変速機15を中立状態に自動で行う処理を#4の規制状態になった後に加えたり、手動で行うようにする。
【0068】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、電動作業車がトラクタである場合の例を挙げて説明したが、電動作業車はトラクタ以外の作業車、すなわち田植機、コンバイン、建設機械、芝刈り機などであっても良い。
【0069】
上記実施形態では、モータMが三相モータであって、インバータ14が3本のアーム部Aを備えているとして説明したが、モータMは三相モータでなくても良く、この場合、インバータ14のアーム部Aの本数はモータMの相数に応じて設けると良い。
【0070】
上記実施形態では、電動作業車が、電流センサ51とトルク算定部52とを備え、制御部44は、トルク算定部52が電流センサ51により検出された電流値に基づいて算定したトルクに応じてモータMの駆動を制御するとして説明した。しかしながら、電動作業車は電流センサ51とトルク算定部52とを備えずに構成することも可能である。この場合、制御部44は、上記実施形態で説明したようにモータMの負荷に応じてモータMの駆動を制御すると良い。
【0071】
【0072】
上記実施形態では、要求回転数にかかわらずモータMの駆動が停止された場合に、報知部57が、モータMの駆動が停止されたことを報知するとして説明した。しかしながら、要求回転数にかかわらずモータMの駆動が停止された場合に、モータMの駆動が停止されたことを報知しないように構成することも可能である。また、報知部57は、表示装置58の表示画面に所定の表示を行って報知したり、スピーカ59から音声を出力して報知するように構成されているとして説明したが、報知部57はオペレータが所持する携帯端末の表示画面に表示したり、携帯端末のスピーカから音声を出力したりするように構成することも可能である。また、報知部57が、機体に設けられるブザーやランプを用いてモータMの駆動が停止されたことを報知するように構成することも可能である。
【0073】
上記実施形態では、モータMの駆動が停止された後に報知部57が、モータMの駆動が停止されたことを報知するとして説明した。しかしながら、モータMが要求回転数よりも一定程度下がった場合に、報知部57が「モータが過負荷です。負荷を軽減してください。」というようなメッセージを表示したり、スピーカ59から「モータが過負荷です。負荷を軽減してください。」というような音声を出力するように構成すると良い。また、ブザーやランプを用いて報知してもよい。この場合、例えば要求回転数が2000〔rpm〕で、モータMの負荷が高くなりモータMの実回転数が1500〔rpm〕となった場合に報知し、その後一定時間経過後、あるいは実回転数が1000〔rpm〕となった場合にモータMの駆動を停止するように設定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、電気エネルギーで走行する電動作業車に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
4:バッテリ
14:インバータ
15:静油圧式無段変速機
17,18:PTO軸
41:回転数情報取得部
42:走行装置
43:操作具
44:制御部
51:電流センサ
52:トルク算定部
57:報知部
M:モータ