(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】歯周炎の治療における使用のためのケイ酸
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20240802BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240802BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240802BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240802BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240802BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240802BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240802BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A61K33/00
A61K9/08
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K47/18
A61K47/24
A61P1/02
(21)【出願番号】P 2021543570
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2019076944
(87)【国際公開番号】W WO2020070300
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-08-24
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521149677
【氏名又は名称】バイオ・ミネラルズ・エヌ・ヴェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリオ・レミ・イヴォンヌ・カロメ
(72)【発明者】
【氏名】キャスリーン・ヨーゼフ・イングリット・スザンネ・ファン・ホーフ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-519068(JP,A)
【文献】特表2005-535549(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133781(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0303737(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体利用可能なケイ素化合物を含む、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防、阻害及び/又は治療のための胃腸管経由吸収用経口剤であって、前記生体利用可能なケイ素化合物が、ケイ酸又はそのオリゴマーであり、且つ、コリン化合物である安定化剤で安定化されている、経口剤。
【請求項2】
前記ケイ素化合物が、オルトケイ酸及び/又はそのオリゴマーである、請求項1に記載の経口剤。
【請求項3】
前記コリン化合物が、コリン、水酸化コリン、アセチルコリン、グリセロホスホリルコリン、ホスファチジルコリン、又はこれらの塩を含む群から選ばれ、前記コリン化合物の塩が、塩化コリン、重酒石酸コリン、クエン酸二水素コリン、コリン2-4-ジクロロフェノキシアセタート(2,4-Dコリン塩)、酢酸コリン、炭酸コリン、クエン酸コリン、酒石酸コリン、乳酸コリン、コリンジブチルホスファート、コリンO,O'-ジエチルジチオホスファート、リン酸二水素コリン、リン酸コリンを含む群から好ましくは選ばれる、請求項1または2に記載の経口剤。
【請求項4】
前記ケイ素化合物が、カプセル剤、錠剤、液体剤又は顆粒剤の形態で投与される、請求項1から3のいずれか一項に記載の経口剤。
【請求項5】
前記ケイ素化合物が、1日当たり1~50mg Si、好ましくは1日当たり5~20mg Si、例えば、1日当たり8~15mg Si、例として1日当たり10mg Siの量で投与される、請求項1から4のいずれか一項に記載の経口剤。
【請求項6】
前記ケイ素化合物が、少なくとも3カ月の期間にわたり、好ましくは少なくとも6カ月の期間にわたり、更により好ましくは少なくとも1年の期間にわたり、毎日投与される、請求項5に記載の経口剤。
【請求項7】
前記ケイ素化合物が、プロービング時出血(BOP)及び/又はプロービングポケット深さ(PPD)の低減における使用のためのものである、請求項1から6のいずれか一項に記載の経口剤。
【請求項8】
前記ケイ素化合物が、1本又は複数本の歯牙におけるプロービングポケット深さ(PPD)値が少なくとも4mmである患者においてPPDを低減するためのものである、請求項7に記載の経口剤。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の経口剤と、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤とを含む、
歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防、阻害及び/又は治療のための胃腸管経由吸収用の経口投与用医薬組成物。
【請求項10】
マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、ホウ素及びセレンの群から好ましくは選ばれる微量元素、並びに/又は、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンKの群から選ばれるビタミンを更に含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の経口剤又は請求項9若しくは10に記載の医薬組成物と、消毒剤、抗微生物剤、プロバイオティクス、プレバイオティクス並びに/又は、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、ホウ素及びセレンの群から好ましくは選ばれる微量元素並びに/又は、ビタミンC、ビタミンD及びビタミンKの群から選ばれるビタミンとを含む
、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防、阻害及び/又は治療のための胃腸管経由吸収用の経口投与用医薬組合せ物(pharmaceutical combination)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防、阻害及び/又は治療における使用のための化合物及び医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周炎及びインプラント周囲炎は、歯科疾患である。歯周炎における歯周破壊は、歯牙上に蓄積されたままになっている病原細菌に対する宿主応答がきっかけで生じる。最初は歯茎の炎症を引き起こし、最終的には歯根膜(periodontal ligament)及び支持骨の破壊に至る。歯根膜及び支持骨の破壊に至ると、歯牙の動揺及び将来的な歯牙喪失を招くおそれがある。インプラント周囲炎においては、歯科インプラント周囲の硬組織が退縮する結果、骨喪失、及び、将来的なインプラント喪失の可能性を招く。この2つの疾患はいずれも歯周病原菌が原因で発生し、深いプロービング深さ(probing depth)及び出血を含め、双方類似した臨床像を有する。双方から培養された微生物系(microbiology)が類似している場合でも、組織学的及び病理学的には、2つの疾患には違いがある。臨床家にとって最も重要なことは、この2つの疾患は治療に対して同じようには反応しない、ということである。現時点では、これらの疾患のいずれにも、適切な非侵襲的治療は存在しない。十分な理解のために、以下、この2つの疾患についてより詳細に説明する。
【0003】
歯周炎
歯周炎は、歯牙支持組織である歯周組織が大抵は無痛のうちに破壊される結果をもたらす感染性疾患である。実際、正常な歯周組織は、歯牙が機能を維持するために必要な支持を担っている。歯周組織は、4つの主要な構成要素、すなわち、歯肉、歯根膜、セメント質及び歯槽骨から成る。これら4つの構成要素すべてにおいて、コラーゲン線維は重要な構造的役割を有する。コラーゲン線維は組織の生体力学的特性を決定するからである。歯周炎では歯牙周囲の歯槽骨も進行性に喪失し、未治療のまま放置されると、歯牙の動揺及びそれに続く歯牙喪失に至る可能性がある。歯周炎は、更に、アテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳卒中及び出生時低体重児を含め、さまざまな全身性疾患のリスクを高める。こうした歯周組織の破壊は、歯周ポケット内の微生物の混合物(プラーク(plaque)と呼ばれる)により、直接的な形及び/又は間接的な形で引き起こされる。プラークは、歯根と歯肉との間に存在する微生物の生息場所である。直接的な形には、病原種由来の酵素の効果が関与している。間接的な形には、細菌性抗原に対する宿主の炎症性応答が関与している。
【0004】
歯周疾患は7つの主要なカテゴリーに分類され、そのうち2~6は破壊性歯周疾患と称されるが、その理由は、損傷が本質的に不可逆的なものだからである。上記7つのカテゴリーとは、1.歯肉炎、2.慢性歯周炎、3.侵襲性歯周炎、4.全身性疾患の症状発現としての歯周炎、5.壊死性潰瘍性歯肉炎/歯周炎、6.歯周組織の膿瘍、7.複合型の歯周-歯内病変である。口内部位のうち影響が及んでいるのが30%以下であれば、症状発現は「限局型」に分類され、30%超の場合は「広汎型」という用語が使用される。
【0005】
疾患の「重症度」は、「臨床的アタッチメントロス」及び「ポケット」の存在を生じる、喪失したコラーゲン性の歯根膜線維の量に関連している。米国歯周病学会によれば、重症度は、軽度、中等度及び重度に細分される。ここで、軽度とは、アタッチメントロスが1~2mmであることを意味し、中等度とは、アタッチメントロスが3~4mmであることを意味し、重度とは、アタッチメントロスが≧5mm(0.20インチ)であることを意味する。
【0006】
歯周炎の発現は、デンタルプラーク(dental plaque)がきっかけで生じる炎症から始まる。歯茎の近辺及び下部に位置する歯牙にデンタルプラーク又はバイオフィルムが蓄積するのに伴い、本質的にストレプトコッカスであったものからアクチノマイセス優位のプラークへと、バイオフィルムの組成に移行が生じる。運動性細菌も、より高頻度に見られるようになる。こうしたことが起きるのに伴い、歯肉において炎症の準備が整う。最初、炎症は歯肉炎の形態をとる。歯肉炎は、骨レベルより上の軟部組織に限られた炎症のことである。歯肉の炎症は長期にわたり歯肉炎レベルにとどまることが可能であり歯周炎には進行しないものであるが、その部位の病態又は全身性の宿主感受性の存在下では別である。この場合、プラーク蓄積に対する免疫系の応答は、主に好中球が介在する応答から、リンパ球及び形質細胞が介在する応答へと移行する。臨床的には、歯肉は、腫脹、発赤及び出血傾向を呈する。このことが生息環境を改変し、バイオフィルム自体の組成の変化をもたらす。こうしたことが起きるのに伴い、グラム陰性菌優位の生息環境が確立されて、歯周病原菌が出現する。歯周病原菌としては、A.アクチノミセテムコミタンス(A.actinomycetemcomitans)、レッドコンプレックス細菌[P.ジンジバリス(P.gingivalis)、T.フォーサイシア(T.Forsythia)、T.デンチコラ(T.denticola)]、及び、これらよりは病原性の低いオレンジコンプレックス細菌[F.ヌクレアタム(F.nucleatum)、P.ミクロス(P.micros)、P.インターメディア(P.intermedia)、P.ニグレセンス(P.nigrecens)、E.ノダタム(E.nodatum)及びS.コンステラタス(S.constellatus)が挙げられる。慢性歯周炎をもたらす最も強力な細菌群叢は、P.ジンジバリスが存在する群叢である。この病原菌については、多数の病原性因子が同定されている。これらの病原性因子により、P.ジンジバリスは防御機構を逃れ歯周組織内部の炎症を永続化することが可能になる。歯周組織における炎症が長期にわたると、歯肉の歯牙へのアタッチメントが根尖方向に移行して、ポケットの深化及び歯牙周囲の骨喪失を生じる。無治療の歯周炎は、時間の経過に伴い一様ではない形で(unevenly)進行するが、結果的には機能喪失、組織破壊及び歯牙喪失を招く。
【0007】
歯周炎の初期治療は、細菌性プラーク及びこれが硬化した歯石(calculus)(「歯せき(tartar)」)の除去に重点が置かれる。頻繁なブラッシング及びフロッシング等の適正衛生指導(good hygiene instruction)はプラーク蓄積の防止を助けるが、硬化したプラークを除去するには、歯科医による専門的クリーニング(professional cleaning)が必要である。すなわち、「スケーリング」は、歯肉縁(gumline)の上下から歯せきを削り取ることを意味し、「ルートプレーニング」では、根面に沿う頑固な歯石及び細菌堆積物を局所麻酔下で除去する特殊な機器が用いられる。これらの治療を行っても、患者には深い残存ポケットが残ることがある。現時点では、深い残存ポケットの原因となっている結合組織喪失の治療に非侵襲的治療は利用できない。ポケット深さの減少に適用されるのは侵襲的な歯茎手術のみであり、多くの場合この手術には、骨又は歯茎組織を置換する又はそれらの新たな成長を刺激するための骨若しくは組織移植片又は特殊な材料が併用される。
【0008】
Teughels等、J. of Clinical Periodontology、40(2013)、1025~1035頁には、慢性歯周炎患者の口内細菌叢を改善する目的で、ある種の「有益」細菌の組成物を投与(admission)したことが開示されている。この有益細菌株とは、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)である。著者らによれば、臨床結果から、L.ロイテリのロゼンジ剤をスケーリング・ルートプレーニング(scaling and root planing)(SRP)及び口腔衛生指導の補助として使用した場合には、「疾患進行のリスク」及び「追加手術の必要性」というアウトカム尺度で表される患者にとって臨床的に意義のある利益が有意により良好であることが示された。著者らは、更に、細菌叢における病原菌の数はSRPにより最初は大きく減少させることができるものの、歯周病原菌は、口腔内の処置された陥凹部(niche)に素早く再コロニー形成することを観察している。
【0009】
インプラント周囲炎
長年にわたり、歯科インプラントは、1本又は複数本の歯牙が失われている場合の優れた代用品であることを実証している。インプラントの生存率という点では臨床的成功率は高いものの、すでにオッセオインテグレーションしている(osseo-integrated)インプラントの周囲に炎症が生じるという問題が高頻度に報告されている。この炎症過程がインプラント周囲の軟部組織に限定されているときは、インプラント周囲粘膜炎という。これに対して、インプラント周囲炎では、インプラントを取り囲む硬組織が変性しており、結果として骨喪失及びポケット形成を伴う。インプラント周囲炎への罹患は、インプラントを配置してすぐには認められず、その後数年が経過して初めて明らかになる。インプラント配置の5~10年後には、患者5名のうち1名がインプラント周囲炎に罹患する。
【0010】
インプラント周囲炎は、高頻度なだけでなく深刻な合併症である。インプラントは高価であるが、患者の生涯にわたって使い続けられる潜在的可能性を有する。しかしながら、インプラント周囲炎が生じると、インプラント及びそれを支持する補綴装置の崩壊及び早期喪失につながりかねない。
【0011】
インプラント周囲炎を治療するには、歯周炎と同様にアプローチすることが可能である。これら2つの疾患は、多くの特徴を共有しているからである。この2つの疾患は、いずれも歯周病原菌が原因で発生する可能性があり、深いプロービング深さ及び出血を含め、双方類似した臨床像を有する。双方から培養された微生物系が類似している場合でも、組織学的及び病理学的には、2つの疾患には違いがある。インプラント周囲炎の微生物系は、歯周炎のものより多様性に富む。組織学的には、インプラント周囲炎の方が歯槽頂近辺への浸潤性がはるかに高く、歯周炎では通常みられる、骨を覆う組織の保護層を、インプラント周囲炎ではしばしば欠損する。しかし、臨床家にとって最も重要なことは、この2つの疾患は治療に対して同じようには反応しない、ということである。
【0012】
インプラント周囲炎病変は、歯周炎と同様、口腔衛生の改善及び専門的クリーニングに対してあまりよく反応しない。このことによりインプラント周囲炎の予防における口腔衛生及び専門的メンテナンスの重要性が軽視されるものではない。しかし、インプラント周囲炎がいったん発現すると、保存療法は効果がないようである。レーザーやエア・アブレイシブシステムを用いたインプラント周囲炎の非外科的治療は、十分な結果を示せずにいる。化学療法薬及び機械的デブライドメントを評価する試験では、最低レベルの回復度が示されている。インプラント周囲炎病変を治療するために光線力学的療法の使用を試みる最近の試験も不首尾であった。要約すれば、非外科的治療では、インプラント周囲炎を予測どおりに阻止することはこれまでできていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【非特許文献】
【0014】
【文献】Teughels等、J. of Clinical Periodontology、40(2013)、1025~1035頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、改善された非侵襲的な非外科的療法が必要とされている。その理由は、専門的クリーニング(口腔の殺菌)及び特定のプロバイオティクス細菌の使用は、治癒的ではないことが示されているから、すなわち、これらの治療では、感染の原因は少なくとも部分的には取り除かれるが、歯肉及び歯槽骨の再生は達成されないからである。更に、先述の著者らは、彼らが得た結果は特定の細菌に当てはまるにすぎないことを観察している。明らかなのは、そのような細菌のコロニー形成は、個々人の食生活及び口腔の発達の双方に大きく依存しうるということである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の目的は、歯周炎のための及びインプラント周囲炎のための改善された非侵襲的、非外科的な予防、阻害及び/又は治療であって、ある種の細菌のコロニー形成の成功に依存しないものを提供することである。更なる目的は、歯周炎及びインプラント周囲炎の予防、阻害及び/又は治療における使用のための化合物及び医薬組成物を提供することである。
【0017】
第1の態様によれば、本発明は、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防、阻害及び/又は治療における経口使用のための生体利用可能なケイ素化合物を提供する。第2の態様によれば、本発明は、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防、阻害及び/又は治療における使用のための生体利用可能なケイ素化合物を含む経口投与用医薬組成物を提供する。第3の態様によれば、本発明は、生体利用可能なケイ素化合物を経口投与することを含む、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の治療の方法を提供する。
【0018】
この生体利用可能なケイ素化合物は、特に、式YxSi(OH)4-xの化合物[式中、Yは、置換されていてもよい(C1~C4)-アルキル、(C2~C5)-アルケニル、(C1~C4)-アルコキシ、アミノであり、xは、0~2である]及び/又はそのオリゴマーである。より好ましくは、x=0である。
【0019】
驚くべき且つ予想外なことに、生体利用可能なケイ素化合物の経口投与は、歯周炎及びインプラント周囲炎の臨床症状を低減できることが見出された。より詳細には、錠剤、顆粒剤、カプセル剤又は液体剤の形態でケイ素化合物を経口投与すると、歯周炎においてはプロービングポケット深さ(PPD)及びプロービング時出血(BOP)が改善し、インプラント周囲炎においては骨再生が観察された。生体利用可能なケイ素化合物の投与は、進行性のみならず慢性歯周炎の阻害及び治療に有効と判明した。生体利用可能なケイ素化合物の投与は、更に、インプラント周囲炎の治療に有効とも判明した。実験では、インプラント喪失のリスクを冒さないようにプロービングポケット深さは測定しなかったが、骨再生の著しい改善が観察されX線写真により記録してある。
【0020】
本発明のケイ素化合物の経口投与は、1本又は複数本の歯牙に深さ4mm超の深いポケットを有する歯周炎患者において、それが深い残存ポケットの場合でも、プロービングポケット深さ及びプロービング時出血の低減に成功をもたらすことが見出された。残存ポケットとは、スケーリング・ルートプレーニング実施後も存在し続けるポケットを意味する。深い残存ポケットの場合、歯牙又はインプラントがやがて完全に抜けたり外れたりして喪失しかねないという、時間の経過に伴う相当大きなリスクがある。ケイ素化合物の投与は歯周炎及びインプラント周囲炎がそのように進行した状態でも有効であることは、驚くべきことと思われる。現代の臨床医(歯科医等)は、そのように進行した状態はかなり治療困難であると判断するからである。
【0021】
歯周炎及びインプラント周囲炎の、特に、進行した状態で得られた驚くべき結果からみて、生体利用可能なケイ素化合物の経口投与は、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎を発現するリスクがある患者にとって、及び/又は、前記疾患が初期段階にある患者にとって、同様に有益である。特に、インプラント術を受ける任意の患者に対して、治療期間、例えば6カ月以上又は好ましくは12カ月以上の期間にわたって、生体利用可能なケイ素化合物の経口投与が処方された場合には、インプラント周囲炎を発現する全般的なリスクが低減されると思われる。ケイ酸にコリン性安定化剤(choline stabilizer)をプラスした形態の生体利用可能なケイ素化合物の投与は、更により好都合であると思われる。コリンは、インプラントが組織にうまく被包されるために必要なコラーゲンにとって有益と思われるからである。
【0022】
好ましい一実施形態では、ケイ素化合物は、最初の非外科的歯周治療法を受ける前の段階でのアタッチメントロスが5mm以上、更により好ましくはアタッチメントロスが6mm以上である重度広汎型歯周炎患者の治療に使用される。用語「広汎型歯周炎」は、大半の歯牙に影響が及んでいる、例えば、14本の歯牙が存在するとき、8本以上、特に10本以上、又は更には14本以上の歯牙に影響が及んでいる状況を表すために使用される。歯牙の本数が14本未満の場合は、8~14本に影響が及んでいるものとする。この治療は、各象限に天然歯を最低3本有する患者に特に有用である。生体利用可能なケイ素化合物の使用は、本発明においては、消毒剤の局所適用と好ましくは組み合わされる。更に、特にこのような広汎型歯周炎に関しては、抗生物質及びプロバイオティクス菌株のうち1つ以上を局所適用することが有益と思われる。
【0023】
生体利用可能なケイ素化合物の経口投与は、侵襲性歯周炎患者にも特に有利である。用語「侵襲性歯周炎」は、ほとんどの場合それ以外は健康に見え高レベルのプラークを有さない人に歯周炎が現れた状態を指す。侵襲性歯周炎は、家族集積性を有する傾向があり、急速な疾患進行がみられる。侵襲性歯周炎は、限局型及び広汎型の形態で生じる。侵襲性歯周炎は、細菌の存在に起因しうる。したがって、治療には、生体利用可能なケイ素化合物の経口投与が抗生物質の投与と組み合わせて行われることが好ましい。
【0024】
代替的な一実施形態では、本発明のケイ素化合物は、インプラント周囲炎患者の治療に使用される。インプラント周囲炎の治療の場合、良好な結果を達成するためには、また、骨再生及び個人差を考慮すると、1年以上にわたる投与がきわめて好ましい。この投薬レジメは、実験結果に基づいている。患部の口腔内レントゲン写真で測定した骨喪失量が3mm超であった非喫煙インプラント周囲炎患者では、ケイ素化合物を1年間毎日(daily)経口投与したところ、骨喪失の進行が止まり、更には、影響が及んでいたインプラント部位における骨レベルが改善されることが見出された。加えて、歯茎の色は、血管新生の改善及び歯周の健康状態の改善が得られ炎症もないことを示していた。
【0025】
また更なる実施形態において、本発明のケイ素化合物は、外科手術が行われた後の治療において使用される。外科手術は、より詳細には、歯牙又はインプラントを取り囲む組織に切開を施すことであり、切開後に例えば消毒薬を用いてそれぞれの歯牙又はインプラントのクリーニングを行う目的で必要になる。こうした外科的な工程は、ポケットが深い場合には特に必要である。そのようなポケットは、他の手段では適切にクリーニングできない。本発明のケイ素化合物は、骨の刺激及び再生、並びに組織の治癒に寄与すると思われる。この応用例において、ケイ素化合物をコリン性安定化剤と一緒に経口投与することは、きわめて有利と思われる。コリンは、組織治癒にプラスの影響を与えると思われるからである。
【0026】
また更なる実施形態において、本発明のケイ素化合物は、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防に使用される。特に、但し限定するものではないが、予防的な使用の場合は、生体利用可能なケイ素化合物の投与は、1つ又は複数のビタミン及び微量元素の投与と好適に組み合わされる。歯周炎及びインプラント周囲炎の双方にとって意義のあるビタミン及び微量元素は、ビタミンC、亜鉛、銅及びセレンを含む。追加的なビタミン及び微量元素としては、ビタミンD、ビタミンK、ホウ素、カルシウム及びマグネシウムが挙げられる。これらの追加的なビタミン及び/又は微量元素のうち1つ又は複数の投与は、インプラント周囲炎に特に意義があると思われる。
【0027】
本発明のケイ素化合物は、経口使用のために投与される。より詳細には、経口使用は、胃腸管経由での吸収を目的としている。前記吸収は、経腸使用としても知られる。こうした使用により、ケイ素化合物は、局所的、局部的な投与ではなく全身投与されることになる。
【0028】
本発明のケイ素化合物は、経口剤形、且つ、1日当たり1~50mg Siの範囲の用量で、好ましくは1日当たり3~20mg Si、例えば1日当たり5~15mg Si、例として1日当たり10mg Siで、好ましくは投与される。予防的治療において使用される場合、用量は、好適には治癒的治療の場合より低用量とする。好適には、予防的治療の投与量は、治癒的治療の投与量の約30~60%である。例えば、予防の場合は1日当たり3~6mg Siが有効と思われるが、これに対して治療の場合は1日当たり6~15mg Siが好ましい。特に、治癒的治療の場合は、ケイ素化合物を1日2回投与することが好ましいと思われる。口腔内の組織に効果を有するのに十分な量がそのように少量の1日投与量であったとは、驚くべきことである。投与量は、経口投与であることを考慮すると、きわめて少量である。実際は、ケイ素化合物が胃腸管からヒトの体に吸収されたとき、体はこれを利用できるようになる。
【0029】
より好ましくは、本発明のケイ素化合物は、歯周炎の場合は3カ月以上の期間にわたり毎日投与される。改善は、3カ月後にはすでに認められた。しかしながら、達成された結果を維持及び向上させるために、また、ヒトの体には個人差があるという観点から、歯周炎の場合は6カ月以上の期間にわたる毎日の投与が有益と考えられる。
【0030】
好ましい患者群は、成人の女性及び男性患者である。第1の特定の患者群は、骨代謝回転が亢進している患者で構成される。骨代謝回転の亢進は、骨粗鬆症リスクのマーカーとして知られる。別の特定の患者群は、妊婦である。これらの患者群は歯周炎に罹りやすく、その原因は、衛生状態の悪さにではなく、体内のケイ素含有量の減少及び/又はその不足に求める必要がある。別の特定の患者群は、喫煙者及び/又は糖尿病患者である。これらの患者は、歯茎の血管新生が減少している場合がある。
【0031】
用語「生体利用可能なケイ素化合物」は、本発明の文脈においては、ケイ素(好ましくはケイ酸の形態である)が胃腸管経由で血液循環中に吸収されるようなすべてのケイ素化合物を指す。体内へのケイ素の投与は厄介である。その理由は、吸収はモノケイ酸として起こるのが一般的であるが、このモノマー(ダイマー、トリマーも同様である)のケイ酸は固有の傾向として重合しやすく、その結果生じることになるシリカは、もはや水に溶解せず、胃腸管経由で吸収することができないからである。経口投与を目的とした組成物中のケイ素化合物は、モノマーである必要はないが、少なくとも、胃腸管中でモノマー及び/又はオリゴマー形態のケイ酸になりうるような形態のものである。好ましくは、この用途のために、本発明の生体利用可能なケイ素化合物は、安定化剤で安定化される。
【0032】
こうした治療における使用のための好ましいケイ素化合物は、ケイ酸である。ケイ酸は、胃腸管から血液中への吸収が可能であるという意味で、直接的又は間接的に生体利用可能なケイ素の形態である。ケイ酸の生体利用可能な形態は、より詳細には、そのモノマーであるオルトケイ酸である。但し、ダイマー、トリマー及びより重合度の高いオリゴマーも吸収される可能性があることは排除されない。更に、そのようなより重合度の高いオリゴマーは、縮合されてより重合度の低いオリゴマー(ダイマー、トリマー等)、更には、胃内に在るという条件下(低pH)ではモノマーになる場合がある。ケイ酸から形成できる究極的なポリマーは、シリカ(SiO2)である。しかし、シリカでは、もはや生体利用できない。
【0033】
別の好ましいケイ素化合物群は、アルキル及びヒドロキシル置換されたシラノール類、例えばモノメチルトリシラノールである。オルトケイ酸と同様、これらの化合物は、シラノール(Si-OH)基間の分子間反応により重合しうる。
【0034】
ケイ素化合物の重合を防止するためには、安定化剤を添加することが公知である。安定化剤は、ケイ素化合物、より詳細には、ケイ酸の錯化剤として作用すると思われる。典型的な安定化剤としては、アミノ酸、サリチル酸、ソルビトール酸、アスコルビン酸、乳酸、カプロン酸、ペプチド類、カルニチン、フェノール又はポリフェノール化合物、例えばバニリン(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド)、ベタイン及びコリンが挙げられる。アミノ酸はタンパク質加水分解産物の形態で存在することが可能であり、これには例えば動物又は植物由来のものがある。そのようなタンパク質は、完全加水分解されて得られたアミノ酸であることが好ましいが、部分加水分解により得られた、ポリペプチド類及びペプチド類と広く称されるものも排除されない。適用される安定化剤は、1つ以上のアミノ基を好ましくは含有し、このアミノ基としては、(荷電した)第四級アンモニウム基が挙げられる。これは、アンモニウム基の正電荷と、ケイ素化合物、より好ましくはケイ酸の、やや負に荷電している双極子の酸素原子(dipolar oxygen atom)との間に極性引力(polar attraction)が存在しうることを考慮してのことである。また、アンモニウム基は、ケイ酸の実質的に四面体的に配列されたシラノール基に近接してうまく適合しうる。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明のケイ素化合物は、コリン又はコリン誘導体を用いて安定化され、又はそれらと組み合わされる。コリンは、細胞膜の必須成分であるリン脂質の前駆体であり、細胞情報伝達(例えば、神経伝達物質であるアセチルコリン)、脂質代謝、骨及び他の結合組織におけるホモシステイン介在性のコラーゲン線維崩壊に対する防御、並びに、炎症及び酸化ストレスの抑制にも関与している。コリンは、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎に罹患している患者の治療の肯定的なアウトカムに寄与すると考えられる。
【0036】
コリン化合物は、ケイ素化合物と別々に投与されてもよく、又は、ケイ素化合物の安定化剤として同一組成物中に組み入れられてもよい。好ましくは、コリンは、同一組成物中に組み入れられる。コリン化合物は、コリン、アセチルコリン、ベタイン、グリセロホスホリルコリン、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、レシチン及びこれらの塩の群から選ばれうる。好ましい形態は、コリン及び/又はその塩の使用である。さまざまなコリン塩が知られており、中でも、塩化コリン、重酒石酸コリン、水酸化コリン、クエン酸二水素コリン、コリン2-4-ジクロロフェノキシアセタート(2,4-Dコリン塩)、酢酸コリン、炭酸コリン、クエン酸コリン、酒石酸コリン、乳酸コリン、コリンジブチルホスファート、コリンO,O'-ジエチルジチオホスファート、リン酸二水素コリン、リン酸コリンが好ましい。他のコリン塩は、薬学的に許容される成分の要件を満たす限り排除されない。最も好ましくは、コリン又はその塩は、ケイ素化合物の安定化剤として使用される。この場合において、ケイ素化合物のための更なる安定化剤が追加的に使用されることは排除されない。
【0037】
更なる一実施形態において、本発明の調製物は、微量元素を更に含む。微量元素の例としては、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、銅、ホウ素及びセレンが挙げられる。これらの元素、特にマグネシウム及び/又はカルシウムは、骨形成に有益な強い影響を持つものであり、インプラント周囲炎の予防及び/又は治療においてきわめて有用と思われる。これらの微量元素は、ケイ酸を含む調製物中に、コリン等の安定化剤と共に組み込むことができる。また更なる実施形態において、本発明の調製物は、ビタミンを更に含む。ビタミンの例は、ビタミンD、ビタミンK及びビタミンCである。これらのビタミンは、骨代謝及び/又はコラーゲン生合成を刺激することによって結合組織形成を促進する。ビタミン及び/又は微量元素は、同一調製物の一部としてではなく、ケイ素化合物の調製物とは別に、更に投与してもよい。但し、コンプライアンスを可能にするためには、ビタミン及び/又は微量元素を同一調製物中に含むことが有利と思われる。患者はビタミンC摂取の必要性については認識していることが多いので、ビタミンD及びビタミンKを含むことが最も好ましい。
【0038】
本発明の調製物は、液体製剤又は固体製剤でありうる。固体製剤として、押出し-球形化法(extrusion-spheronisation)によって調製されたカプセル封入ペレット(encapsulated pellet)を用いることが可能である。代替的には、出願人名による非前公開出願(non-prepublished application)EP18164045に記載されている、ヒドロキシアルキルセルロース又はヒドロキシアルキルアルキルセルロース、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むカプセルシェルを用いた液体充填カプセル(filled liquid capsule)を用いることが可能であり、同文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。同文献中で開示されているカプセル・イン・カプセルの概念は、本発明の生体利用可能なケイ素化合物に加え第2の医薬又は栄養素の経口投与を単一剤形の形態で可能にするために好適でありうる。第2の医薬又は栄養素は、更に、本発明の生体利用可能なケイ素化合物と化学的に相容性がないものであってもよい。
【0039】
別の実施形態において、治療には、好ましくはケイ酸としての生体利用可能なケイ素化合物と、任意選択で、安定化剤、微量元素及び抗炎症剤を含む群のうち1つ以上との組合せの経口投与が用いられる。歯周炎及びインプラント周囲炎のいずれにおいても、歯肉の炎症が起きる結果、歯茎の発赤、腫脹及び圧痛を生じる。抗炎症剤はこれらの症状を速やかに緩和するであろうし、一方でケイ素化合物は、歯周軟組織及び硬組織構造の再生を助けるであろう。
【0040】
別の実施形態において、治療には、好ましくはケイ酸としての生体利用可能なケイ素化合物と、任意選択で、前記安定化剤、微量元素及びビタミン、並びにプロバイオティクス菌株及び/又はプレバイオティクス組成物のうち1つ又は複数との組合せの経口投与が用いられる。プロバイオティクスの生菌株の使用は、歯牙及びインプラントの周囲に蓄積する歯周病原細菌を減少させる口内細菌叢のバランスを改善し、それにより、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の隠れた原因を少なくとも部分的に予防することが公知である。プレバイオティクスは、有益な細菌の成長を刺激する非消化性繊維である。プロバイオティクス菌株及び/又はプレバイオティクスの使用は、ケイ素の吸収を高めうる、バランスのよい健康な腸内細菌叢をもたらす一因になるとも考えられる。
【0041】
更なる一実施形態において、治療には、好ましくはケイ酸としての生体利用可能なケイ素化合物であって任意選択で前記安定化剤、微量元素及びビタミンのうち1つ又は複数を含む該化合物の経口投与が、抗微生物剤、合成消毒剤及び/又は天然消毒剤の局所使用と組み合わせて用いられる。局所使用は、詳細には口中投与であり、例えば、口を洗浄する若しくはすすぐための液体調製物を用いて、又はペースト、マイクロスフェア、ゲル、チップ、繊維の成分として、又は他の手段によって、行われる。抗微生物剤は、代替的に又は追加で、全身投与されてもよい。抗生物質は、経口的に、又はポケット内部に局所的に、そのいずれかで好ましくは適用される。抗生物質を用いた治療の継続期間は、更なる好適例によれば(by further preference)、3~10日の間で、例えば、1日1回、1日2回、1日3回又は1日4回適用される。好適な抗生物質剤としては、ペニシリン、アモキシシリン、オーグメンチン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、テトラサイクリン、メトロニダゾール又は他のニトロイミダゾール類、トリアムシノロン、クリンダマイシン、アジスロマイシン又は他のマクロライド、モキシフロキサシン、シプロフロキサシン又は他のキノロン類、アジスロマイシン又は他のリンコマイシン誘導体、これらの任意の薬学的に許容される塩、及びこれらの組合せが挙げられる。前記抗生物質剤は、例えば、最大25wt%の濃度で適用される。最も好ましい適用においては、抗微生物剤は、例えばゲル剤、又は、ゲル担体中に懸濁している生体利用可能なマイクロスフェア中にカプセル封入された形態で、歯肉縁下に施用される。経口用の生体利用可能なケイ素化合物、全身性抗生物質及び局所用の消毒用すすぎ剤(antiseptic rinse)をそれぞれ組み合わせることも可能である。
【0042】
消毒剤は、口中殺菌及び患部の注水洗浄(irrigation)に適している。好適な消毒剤は、クロルヘキシジン、及び/又は、その薬学的に許容される塩のうち任意のもの、例えばジグルコン酸クロルヘキシジン等である。スケーリング・ルートプレーニングの補助として、クロルヘキシジン溶液剤は、口すすぎ、歯周ポケットの注水洗浄及びインプラントのクリーニングそれぞれに使用することができ、これに対してクロルヘキシジンゲル剤は、歯牙及び/又はインプラント及び舌それぞれのブラッシングに適用される。クロルヘキシジン溶液剤及びゲル剤は、0.5~1.5%、好ましくは1wt%の濃度で慣用的に適用されるが、それより低い濃度、例えば0.1~0.5wt%等も排除されない。代替的な消毒剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨウ素及び過酸化水素が挙げられる。歯周組織及び/又はインプラントの下方部分に固着している歯肉縁下の細菌性及び非細菌性残渣の除去を容易にする目的で、アクセスフラップを創出するために外科的介入が必要になることがある。そのような外科的介入は、骨喪失が進行している場合は、除タンパク骨ミネラル(de-proteinized bone mineral)、骨移植片又は他の代用骨等の骨成長を促進する生物活性物質の局所適用と組み合わせて、コラーゲン膜を用い又は用いずに、行うことができる。
【0043】
ポケットの注水洗浄、インプラント若しくは歯牙のクリーニング及び殺菌、並びに/又は、局所及び経口での抗微生物剤の使用、並びに/又は、歯肉縁下での生物活性物質の使用それぞれによる同時的な口中殺菌を、生体利用可能なケイ酸の経口投与と一緒に行うと最良の結果に至ることが見出された。
【0044】
実施例及び図面を参照して、本発明のさまざまな態様を以下に更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】経口用の生体利用可能なケイ酸の投与と組み合わせた標準治療を6カ月間実施した歯周炎患者のBOPスコアの変化を標準治療のみの場合(対照群)と比較して示すグラフである。
【
図2A】残存ポケット(標準治療後)を有する歯周炎患者(n=10)のPPDスコアを示すグラフであり、生体利用可能なケイ酸の経口投与開始前(ベースライン)、並びに、生体利用可能なケイ酸の投与開始から3カ月及び6カ月経過後のデータを示す。
*p<0.05、対ベースライン。
【
図2B】残存ポケット(標準治療後)を有する歯周炎患者(n=10)のBOPスコアを示すグラフであり、生体利用可能なケイ酸の経口投与開始前(ベースライン)、並びに、生体利用可能なケイ酸の投与開始から3カ月及び6カ月経過後のデータを示す。*p<0.05、対ベースライン。
【
図3A】患者DA(♂):56歳、非喫煙者について、歯周炎の段階を模式的に示す図である。ベースライン、並びに、生体利用可能なケイ酸の経口投与により3カ月及び6カ月にわたり治療を実施した後の状況を歯周組織検査表(map of dents)の形で示す。
【
図3B】患者10872(♀):36歳、非喫煙者について、歯周炎の段階を模式的に示す図である。ベースライン、並びに、生体利用可能なケイ酸の経口投与により3カ月及び6カ月にわたり治療を実施した後の状況を歯周組織検査表の形で示す。
【
図4A】インプラント周囲炎に罹患している女性患者のインプラントのX線写真であり、生体利用可能なケイ酸の経口投与による1年間の治療実施前の写真を示す。
【
図4B】インプラント周囲炎に罹患している女性患者のインプラントのX線写真であり、生体利用可能なケイ酸の経口投与による1年間の治療実施後の写真を示す。
【
図5A】インプラント周囲炎に罹患し重度の骨喪失(A)及び歯肉損傷がみられた女性患者のインプラントのX線写真であり、生体利用可能なケイ酸の経口投与による治療のベースライン時の写真を示す。
【
図5B】インプラント周囲炎に罹患し重度の骨喪失(A)及び歯肉損傷がみられた女性患者のインプラントのX線写真であり、生体利用可能なケイ酸の経口投与による治療を6カ月間実施した後の写真を示す。
【
図5C】インプラント周囲炎に罹患し重度の骨喪失(A)及び歯肉損傷がみられた女性患者のインプラントのX線写真であり、生体利用可能なケイ酸の経口投与による治療を12カ月間実施した後の写真を示す。
【
図6】本発明の化合物を用いた治療を実施した後の状態を示す、インプラント使用患者の口の写真である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0046】
(実施例1)
臨床試験は、歯周炎患者を対象として歯科医院において実施した。40名の歯周炎患者を無作為に選抜した。40名の患者は全員、スケーリング・ルートプレーニングの標準治療を受けた。この40名を各20名の2つの治療群に分けた。第1の治療群の患者には、生体利用可能な形態のケイ素の固体(生体利用可能なケイ酸)を経口投与用として1日2回投与した。生体利用可能な(biological)形態のケイ素は、Bio Minerals N.V.社、Destelbergen、ベルギーからBioSil(登録商標)の商品名で市販されているものであった。この製剤は、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))を含有する。この製剤は、担体として結晶セルロースを更に含有する。この固体のカプセル封入製剤は、押出し法により調製されており、磁石で密封される高密度ポリエチレンボトルにパッケージングされて一定の湿度レベルが確保されている。残りの患者20名は対照群であった。患者には、1個につき5mg Siを含有するカプセル剤を1日当たり2個、6カ月にわたり摂取するよう指導した。治療の評価は、プロービングポケット深さ(PPD)、PPD及びプロービング時出血(BOP)を有する歯牙の比率(%)を、治療の開始前(t=0)及び治療後(t=6カ月)時点でそれぞれ測定することにより行った。ポケット深さのプロービングは、目盛り付きプローブ(North Carolina periodontal probe、Hu-Friedy社、Chicago、IL、USA)を用いて実施した。
【0047】
治療の結果をプロービングポケット深さ(PPD)についてTable 1(表1)に要約する。これらの結果から、ケイ素製品を標準治療法への上乗せ薬(add-on)として使用したところ、深いポケット、すなわち、ポケット>4mmの場合にはより良好な改善が得られ、ポケット>5mmの場合には統計的有意性に達したことが実証される(Table 1(表1):対照群の変化対治療群の変化を参照のこと)。経口的なケイ素治療を6カ月間実施すると、深いポケットを有する歯牙の比率(%)は、対照群と比較して10%超減少した(治療群における変化:-70%、対照群における変化:-60%)。6カ月間の治療を経てもたらされたBOPの改善も、
図1に示すように、標準治療法を生体利用可能なケイ酸の投与と組み合わせた場合の方が大きかった。
【0048】
【0049】
(実施例2)
臨床試験は、残存ポケットを有する歯周炎患者を対象として歯科医院において実施した。標準治療(スケーリング・ルートプレーニング)を受けたが標準治療にもかかわらず深いポケットが残ったままである歯周炎患者10名を無作為に選抜した。
【0050】
標準治療に続いて、10名の患者全員に、生体利用可能な形態のケイ素の固体を、Bio Minerals N.V.社、Destelbergen、ベルギーからBioSil(登録商標)の商品名で市販されているものとして経口投与した。この製剤は、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))を含有する。この製剤は、担体として結晶セルロースを更に含有する。この固体のカプセル封入製剤は、押出し法により調製されており、磁石で密封される高密度ポリエチレンボトルにパッケージングされて一定の湿度レベルが確保されている。治療の評価は、プロービングポケット深さ(PPD)及びプロービング時出血(BOP)を、治療の開始前(t=0)及び治療後(t=6カ月)時点でそれぞれ測定することにより行った。ポケット深さのプロービングは、目盛り付きプローブ(North Carolina periodontal probe、Hu-Friedy社、Chicago、IL、USA)を用いて実施した。
【0051】
結果を
図2A及び
図2Bに視覚化する。経口のch-OSA補給を実施しただけの結果として、PPD及びBOPはいずれも3カ月後にはすでに減少した。治療を6カ月間実施した後では、BOPに更なる利益が見られた。経口のch-OSA補給開始から3カ月後及び6カ月後のPPDは、ベースラインに対して統計的有意に低かった。
【0052】
(実施例3)
慢性歯周炎患者2名個々に、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、生体利用可能なケイ酸を投与した。第1の患者は、56歳の非喫煙男性患者であった。第2の患者は、36歳の非喫煙女性患者であった。結果を
図3A及び
図3Bに示す。ここでは、色によりポケット深さを示している。実際の深さも各歯牙に表示してある。データは、口中で各歯牙の周囲のポケット深さを6回測定することにより得た。どちらの症例でも、歯周炎は有意に低減した。治療前の時点では、患者らは非常に深いポケットを有していた。治療後、ポケットの深さは低度(3mm未満)まで減少した。
【0053】
(実施例4)
女性のインプラント周囲炎患者は66歳の非喫煙者であり、2本のインプラント部位に重度の骨喪失がみられた(
図4Aに示すとおりである)。この患者は、BioSil(登録商標)液体剤5滴を1日2回、1年にわたって摂取した。この製剤は、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))を含有する。この製剤は、希釈剤としてグリセロールを更に含有する。1年後、当該インプラント部位において骨レベルは有意に増加した(
図4Bを参照のこと)。
【0054】
第2のインプラント周囲炎患者は73歳の非喫煙者であり、インプラント部位における重度の骨喪失、及び歯肉損傷がみられ(
図5A)、BioSil(登録商標)液体剤5滴を1日2回、1年にわたって摂取した。1年後、この患者の場合も、当該インプラント部位において骨レベルは有意に増加した(
図5Bは6カ月後、
図5Cは12カ月後)。
図6は、歯肉が本来の正常な外観を取り戻したことを示し、良好な色は、1年間の治療を通じて血管新生が改善したことを表している。
【0055】
以下の治療例は、適正口中衛生、スケーリング・ルートプレーニングの補助として使用できる。
【0056】
(実施例5)
歯周炎の予防のための併用治療
- 生体利用可能なケイ酸5mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、例えばカプセル剤の形態で毎日経口投与する。
- ビタミンC 200mg、セレン150マイクログラム、亜鉛10mg、銅1mgを含有する錠剤を毎日投与する。
【0057】
(実施例6)
インプラント周囲炎の予防のための併用治療
- 生体利用可能なケイ酸5mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、例えばカプセル剤の形態で毎日経口投与する。
- カルシウム1000mg、ビタミンD 6マイクログラム、ビタミンK 50マイクログラムを、好ましくは、錠剤等の製剤2種類の形態で、毎日投与する。
- ビタミンC 200mg、セレン100マイクログラム、亜鉛10mg、銅1mg、ホウ素0.5mg、マグネシウム200mgを、例えば、錠剤等の単一製剤の形態で、毎日投与する。
【0058】
(実施例6)
歯周炎の治療における使用のための組合せ
- 生体利用可能なケイ素化合物1日当たり10mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、6カ月間経口投与する。生体利用可能なケイ素10mgは、生体利用可能なケイ素5mgを例えば錠剤としてそれぞれ含有する投与単位2単位分として、好ましくは投与する。
- クロルヘキシジン1%溶液で1日2回、4週間にわたり口すすぎを行う。
本実施例においては、生体利用可能なケイ酸の投与及び口すすぎは同時に開始することが好ましい。
【0059】
(実施例7)
歯周炎の治療における使用のための組合せ
- 最初に、口中全体の第1段階の殺菌を、0.12%クロルヘキシジン溶液で2分間すすぐことにより行う。
- 生体利用可能なケイ酸10mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、好適には、生体利用可能なケイ素5mgをそれぞれ含有する投与単位2単位の形態で6カ月間、経口投与する。
- ラクトバチルス・ロイテリの生菌株2種類(1 108CFU)、例えばDSM17938及びATCC PTA5289をそれぞれ含有するプロバイオティクス・ロゼンジ剤2種類を、6カ月にわたり毎日投与する。
本実施例においては、生体利用可能なケイ酸の投与及びプロバイオティクス・ロゼンジ剤の投与は同時に開始することが好ましい。代替的には、生体利用可能なケイ酸の投与は、プロバイオティクス・ロゼンジ剤の投与に先行して、例えば3日間から14日間までの、例えば1週間の予備期間中に行ってもよい。
【0060】
(実施例8)
侵襲性歯周炎の治療における使用のための組合せ
- 生体利用可能なケイ酸1日当たり10mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、6カ月間経口投与する。
- アモキシシリン(250mg、1日3回)とメトロニダゾール(250mg、1日3回)とを1週間にわたり経口投与する。更に、
- クロルヘキシジン1%溶液で1日2回、4週間にわたり口すすぎを行う。
【0061】
(実施例9)
侵襲性歯周炎治療
- 生体利用可能なケイ酸1日当たり10mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、例えば投与単位2単位の形態で、6カ月間経口投与する。
- アモキシシリン(250mg、1日3回)とメトロニダゾール(250mg、1日3回)とを1週間にわたり併用経口投与する。更に、
- グルコン酸クロルヘキシジン2.5mgを含有する加水分解ゼラチンマトリックスチップ(PerioChip)を歯肉縁下に配置する。このチップは、7~10日以内に分解する。
本実施例においては、生体利用可能なケイ酸の投与及び抗生物質の投与は同時に開始し、歯肉縁下へのチップ配置も並行して行うことが好ましい。但し、代替的なプロトコールも排除されない。
【0062】
(実施例10)
侵襲性歯周炎治療
- 生体利用可能なケイ酸1日当たり10mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、好ましくは、錠剤等の投与単位2単位の形態で、6カ月間経口投与する。
- テトラサイクリンを含有する(9インチ当たり12.7mg)エチレン/酢酸ビニルコポリマー繊維を、影響が及んでいる歯周ポケットに10日間局所適用する。
- クロルヘキシジン1%溶液で1日2回、4週間にわたり口すすぎを行う。
【0063】
(実施例11)
インプラント周囲炎の治療における組合せ
- 生体利用可能なケイ酸1日当たり10mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、好ましくは、カプセル剤等の投与単位2単位の形態で、12カ月間経口投与する。
- カルシウム1000mg、ビタミンD 6マイクログラム、ビタミンK 50マイクログラムを、好ましくは、錠剤等の投与単位2単位の形態で、毎日投与する。
- ビタミンC 200mg、セレン100マイクログラム、亜鉛10mg、銅1mg、ホウ素0.5mg、マグネシウム200mgを、好ましくは錠剤の形態で、毎日投与する。
- 歯周ポケットを注水洗浄し、クロルヘキシジン1%溶液でインプラントをクリーニングする。
- クロルヘキシジン1%溶液で1日2回、4週間にわたり口すすぎを行う。
【0064】
(実施例12)
インプラント周囲炎の治療における使用のための組合せ
- 生体利用可能なケイ酸1日当たり10mgを、ケイ酸が塩化コリンで安定化されているコリン安定化オルトケイ酸(ch-OSA(登録商標))の形態で、例えば、カプセル剤等の投与単位2単位の形態で、12カ月間経口投与する。
- 外科的介入によりアクセスフラップを創出し、歯肉縁下の細菌性及び非細菌性残渣を除去し、歯周ポケットを注水洗浄し、クロルヘキシジン1%溶液でインプラントをクリーニングする。除タンパク骨ミネラルをコラーゲン膜上で使用する。
- クロルヘキシジン1%溶液で1日2回、4週間にわたり口すすぎを行う。
- カルシウム1000mg、ビタミンD 6マイクログラム、ビタミンK 50マイクログラムを、例えば、錠剤等の投与単位2単位の形態で、毎日投与する。
- ビタミンC 200mg、セレン100マイクログラム、亜鉛10mg、銅1mg、ホウ素0.5mg、マグネシウム200mgを、例えば錠剤の形態で、毎日投与する。
【0065】
消毒薬及び/又は抗生物質の使用を生体利用可能なケイ素化合物の経口投与と組み合わせる先述の実施例のいずれにおいても、ケイ素化合物の投与は、消毒薬及び/又は抗生物質の使用と同時に開始することが好ましい。但し、代替的には、生体利用可能なケイ酸の投与は、消毒薬及び/又は抗生物質の投与に先行して、例えば3日間から14日間までの、例えば1週間の予備期間中に行ってもよい。
【0066】
要約すれば、これらの実施例は、ケイ酸等の生体利用可能なケイ素化合物を3カ月以上の期間にわたって毎日経口投与することは、歯周炎及びインプラント周囲炎の阻害をもたらし、ひいては、治療効果のある非侵襲的、非外科的治療となることを示している。この治療は、1つ又は複数の消毒薬及び/又は抗微生物剤による適切な口のクリーニングと組み合わせるのに特に好適である。プラークが歯肉縁下にあり到達が困難な場合には、アクセスフラップの外科的創出が必要になることがある。この治療は、ビタミン、例えばビタミンC、ビタミンD、ビタミンK、及び/又は微量元素、例えばマグネシウム、カルシウム、セレン、ホウ素及び銅の同時投与により、並びに、プロバイオティクス(probioticum)の投与又は歯肉縁下への生物活性物質の使用により、更に効果が高められうる。慢性歯周炎についての肯定的な結果は、本発明の大きな利益を示している。インプラント周囲炎についての肯定的な結果は、この疾患に非侵襲的治療をもたらす。2つの肯定的な結果は、生体利用可能なケイ酸の毎日の投与が、すでに進行した状態にある当該疾患を阻害し、更には治癒しうると考えれば、それぞれ単独でもきわめて驚くべきことである。本発明は、更に、生体利用可能なケイ酸を経口投与することを含む、歯周炎及び/又はインプラント周囲炎の予防、阻害又は治療の方法にも関する。