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特許7531502in situハイブリダイゼーションによって、核酸をマルチプレックス検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】in situハイブリダイゼーションによって、核酸をマルチプレックス検出する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6841 20180101AFI20240802BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240802BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240802BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240802BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20240802BHJP
【FI】
C12Q1/6841 Z
C12N15/11 Z
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
C12Q1/6844 Z ZNA
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021548194
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 US2020018241
(87)【国際公開番号】W WO2020168162
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】62/806,574
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521361338
【氏名又は名称】アドヴァンスド セル ダイアグノスティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マ,シャオ-チュン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ピンチン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リ-チョン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ハン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リ
(72)【発明者】
【氏名】ヅォン,ヘイリン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/038403(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0094305(US,A1)
【文献】J. Mol. Diagn.,2012年,Vol.14, No.1,pp.22-29
【文献】Proc. Natl. Acad. Sci.,2016年,Vol.113, No.39,pp.11046-11051
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00- 3/10
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の標的核酸の検出方法であって、
(A)複数の核酸を含む細胞を含む試料を、複数の標的プローブセットと接触させることであって、前記標的プローブセットのそれぞれが、前記標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含む、前記接触させることと、
(B)その試料をプレ増幅剤セットと接触させることであって、前記プレ増幅剤セットが、複数のプレ増幅剤を含み、前記複数のプレ増幅剤が、前記標的プローブセットのそれぞれに特異的なプレ増幅剤を含み、前記プレ増幅剤のそれぞれが、前記標的プローブセットの1つにおける前記標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含む、前記接触させることと、
(C)その試料を増幅剤セットと接触させることであって、前記増幅剤セットが、前記プレ増幅剤のそれぞれに特異的な複数の増幅剤サブセットを含み、前記増幅剤サブセットのそれぞれが、増幅剤を複数含み、前記増幅剤サブセットの前記増幅剤が、前記標的プローブセットに特異的な前記プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む、前記接触させることと、
(D)その試料を第1の標識プローブセットと接触させることであって、前記第1の標識プローブセットが、第1の標識プローブサブセットを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識と、を含み、前記第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第1の標識プローブセットが、前記複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する、前記接触させることと、
(E)前記標的核酸に結合した前記第1の標識プローブセットの前記標識プローブを検出することによって、前記第1の標的核酸サブセットを検出することと、
(F)前記第1の標的核酸サブセットから前記標識を除去するために、前記第1の標的核酸サブセットに結合した前記第1の標識プローブセットから、前記標識を切断することと、
(G)その試料を第2の標識プローブセットと接触させることであって、前記第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記第2の標識プローブサブセットが、前記第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識であって、前記第1の標識プローブセットに対して用いられた前記標識と同じ標識である標識と、を含み、前記第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第2の標識プローブセットが、前記第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識する、前記接触させることと、
(H)前記標的核酸に結合した前記第2の標識プローブセットの前記標識プローブを検出することによって、前記第2の標的核酸サブセットを検出することと、
を含み、
前記複数の標的核酸を検出する前記方法。
【請求項2】
(I)前記第2の標的核酸サブセットから前記標識を除去するために、前記第2の標的核酸サブセットに結合した前記第2の標識プローブセットから、前記標識を切断することと、
(J)その試料を第3の標識プローブセットと接触させることであって、前記第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記第3の標識プローブサブセットが、前記第1及び前記第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識であって、前記第1の標識プローブセットまたは前記第2の標識プローブセットに対して用いられた前記標識と同じ標識である標識と、を含み、前記第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第3の標識プローブセットが、前記第1及び前記第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識する、前記接触させることと、
(K)前記標的核酸に結合した前記第3の標識プローブセットの前記標識プローブを検出することによって、前記第3の標的核酸サブセットを検出することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(I)~(K)を1回以上繰り返すことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記標的プローブセットのそれぞれが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的核酸が独立して、DNAまたはRNAである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
RNAである前記標的核酸が独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(A)複数の標的核酸を含む少なくとも1つの固定及び/または浸透化細胞と、
(B)複数の標的プローブセットであって、前記標的プローブセットのそれぞれが、前記標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む前記複数の標的プローブセットと、
(C)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、前記複数のプレ増幅剤が、前記標的プローブセットのそれぞれに特異的なプレ増幅剤を含み、前記プレ増幅剤のそれぞれが、前記標的プローブセットの1つにおける前記標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、前記プレ増幅剤が、それぞれの特異的な前記標的プローブ対にハイブリダイゼーションされている前記プレ増幅剤セットと、
(D)前記プレ増幅剤のそれぞれに特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、前記増幅剤サブセットのそれぞれが、増幅剤を複数含み、前記増幅剤サブセットの前記増幅剤が、前記標的プローブセットに特異的な前記プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、前記増幅剤が、前記標的プローブセットに特異的なそれぞれの前記プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記増幅剤セットと、
(E)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識と、を含み、前記第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第1の標識プローブセットが、それぞれの前記増幅剤にハイブリダイゼーションして、前記複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する前記第1の標識プローブセットと、
を含む、固定及び/または浸透化細胞の試料であって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記第1の標的核酸サブセット上に供給され
前記試料は、第2の標識プローブセットをさらに含み、前記第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記第2の標識プローブサブセットが、前記第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識であって、前記第1の標識プローブセットに対して用いられた前記標識と同じ標識である標識と、を含み、前記第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第2の標識プローブセットが、前記第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記第2の標的核酸サブセット上に供給される前記試料。
【請求項11】
前記第1の標的核酸サブセットに結合した前記第1の標識プローブセットの前記標識が、切断されて除去される、請求項10に記載の試料。
【請求項12】
前記第2の標的核酸サブセットに結合した前記第2の標識プローブセットの前記標識が、切断されて除去される、請求項10または11に記載の試料。
【請求項13】
前記試料が、第3の標識プローブセットを含み、前記第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記第3の標識プローブサブセットが、前記第1及び前記第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識であって、前記第1の標識プローブセットまたは前記第2の標識プローブセットに対して用いられた前記標識と同じ標識である標識と、を含み、前記第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第3の標識プローブセットが、それぞれの前記増幅剤にハイブリダイゼーションして、前記第1及び前記第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記第3の標的核酸サブセット上に供給される、請求項12に記載の試料。
【請求項14】
前記標的プローブセットのそれぞれが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項10~13のいずれか1項に記載の試料。
【請求項15】
前記標的核酸が独立して、DNAまたはRNAである、請求項10~14のいずれか1項に記載の試料。
【請求項16】
RNAである前記標的核酸が独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている、請求項15に記載の試料。
【請求項17】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項10~16のいずれか1項に記載の試料。
【請求項18】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項10~16のいずれか1項に記載の試料。
【請求項19】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項10~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
(A)標的核酸を含む固定及び/または浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定及び/または浸透化細胞を含む試料と、
(B)複数の標的プローブセットであって、前記標的プローブセットのそれぞれが、前記標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む前記複数の標的プローブセットと、
(C)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、前記複数のプレ増幅剤が、前記標的プローブセットのそれぞれに特異的なプレ増幅剤を含み、前記プレ増幅剤のそれぞれが、前記標的プローブセットの1つにおける前記標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、前記プレ増幅剤が、それぞれの特異的な前記標的プローブ対にハイブリダイゼーションされている前記プレ増幅剤セットと、
(D)前記プレ増幅剤のそれぞれに特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、前記増幅剤サブセットのそれぞれが、増幅剤を複数含み、前記増幅剤サブセットの前記増幅剤が、前記標的プローブセットに特異的な前記プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、前記増幅剤が、前記標的プローブセットに特異的なそれぞれの前記プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている前記増幅剤セットと、
(E)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識と、を含み、前記第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第1の標識プローブセットが、それぞれの前記増幅剤にハイブリダイゼーションして、前記複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する前記第1の標識プローブセットと、
を含むスライドであって、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記第1の標的核酸サブセット上に供給され
前記スライドが、第2の標識プローブセットをさらに含み、前記第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記第2の標識プローブサブセットが、前記第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識であって、前記第1の標識プローブセットに対して用いられた前記標識と同じ標識である標識と、を含み、前記第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第2の標識プローブセットが、それぞれの前記増幅剤にハイブリダイゼーションして、前記第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記第2の標的核酸サブセット上に供給される前記スライド。
【請求項21】
前記第1の標的核酸サブセットに結合した前記第1の標識プローブセットの前記標識が、切断されて除去される、請求項20に記載のスライド。
【請求項22】
前記第2の標的核酸サブセットに結合した前記第2の標識プローブセットの前記標識が、切断されて除去される、請求項20または21に記載のスライド。
【請求項23】
前記スライドが、第3の標識プローブセットを含み、前記第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に特異的であり、前記第3の標識プローブサブセットが、前記第1及び前記第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、前記標識プローブサブセットのそれぞれが、標識プローブを複数含み、前記標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識プローブが、前記増幅剤サブセットの1つにおける前記増幅剤に対する結合部位と、リンカーによって前記標識プローブにコンジュゲートされる標識であって、前記標識プローブから当該標識を切断可能な切断部位を有する標識であって、前記第1の標識プローブセットまたは前記第2の標識プローブセットに対して用いられた前記標識と同じ標識である標識と、を含み、前記第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける前記標識が、前記第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、前記第3の標識プローブセットが、それぞれの前記増幅剤にハイブリダイゼーションして、前記第1及び前記第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、
前記ハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が前記第3の標的核酸サブセット上に供給される、請求項22に記載のスライド。
【請求項24】
前記標的プローブセットのそれぞれが、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む、請求項2023のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項25】
前記標的核酸が独立して、DNAまたはRNAである、請求項2024のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項26】
RNAである前記標的核酸が独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている、請求項25に記載のスライド。
【請求項27】
前記試料が、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである、請求項2026のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項28】
前記試料が、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである、請求項2026のいずれか1項に記載のスライド。
【請求項29】
前記試料が、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである、請求項2026のいずれか1項に記載のスライド。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2019年2月15日に出願した米国特許仮出願第62/806,574号に基づく利益を主張するものであり、この仮出願の内容の全体は、参照により、本明細書に援用される。
【0002】
本願においては、2020年2月12日に作成した、サイズが1,312バイトの「12790-059-228_SL.txt」という名称のASCIIテキストファイルとしての配列表が、参照により本明細書に援用される。
[背景技術]
【0003】
本発明は、広くは、核酸の検出、より具体的には、核酸のマルチプレックス検出に関するものである。
【0004】
RNA in situハイブリダイゼーション(ISH)は、循環腫瘍細胞(CTC)のような細胞または組織切片内において、その細胞及び組織の内容物を保持したまま、所定のRNA配列、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)及びマイクロRNA(miRNA)を測定し、その位置を特定する目的で広く用いられている分子生物学的技法である。すなわち、RNA ISHでは、細胞及び組織内の遺伝子発現を時空間的に可視化し、その発現を定量する。RNA ISHには、研究及び診断における広範な用途がある(Hu et al.,Biomark.Res.2(1):1-13,doi:10.1186/2050-7771-2-3(2014)、Ratan et al.,Cureus 9(6):e1325.doi:10.7759/cureus.1325(2017)、Weier et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.2(2):109-119(2002))。蛍光RNA ISHでは、RNAの標識の際に蛍光色素を使用し、RNAの検出の際に蛍光顕微鏡を使用する。蛍光RNA ISHでは典型的には、マルチプレックスが4~5個の標的配列に限られる。マルチプレックス能が限られている原因は主に、スペクトルの異なる蛍光色素であって、蛍光顕微鏡の光学システムによって識別できる蛍光色素の数が少ないことである。特にヒトの健康状態及び疾患において、複雑な生体系を理解する目的で、細胞及び組織のマップを作成するような領域では、より高いマルチプレックスレベルが非常に望ましい。
【0005】
別個の標的へのハイブリダイゼーション、イメージング、標識の除去及び再ハイブリダイゼーションの連続的ラウンドを用いるいくつかのアプローチが導入されてきており、理論的には、これにより、同じ細胞または組織切片において、4~5の倍数分の数の標的がイメージングされる(Shah et al.,Neuron 92(2):342-357(2016)、Codeluppi et al.,Nature Methods 15(11):932-935(2018))。しかしながら、実際には、上記のシーケンシャル蛍光ISH(FISH)法では、ハイブリダイゼーション及び検出の逐次的なラウンドにおいて、核酸検出感度、特にはRNA検出感度、及び細胞の形態が相当失われかねない。加えて、この方法は、全体的な標的プローブのハイブリダイゼーション及び標識検出の工程を繰り返す必要性から、時間と労力を要する。したがって、より多くの標的配列を同時に可視化可能にする、より実践的で高感度な方法は、依然として技術的課題である。
【0006】
すなわち、より多くの標的核酸をマルチプレックス検出するためのin situ検出方法に対するニーズが存在する。本発明は、このニーズに対応するとともに、関連する利点も提供する。
[発明の概要]
【0007】
本発明は、複数の標的核酸の検出方法であって、(A)複数の核酸を含む細胞を含む試料を、複数の標的プローブセットと接触させることであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含むことと、(B)その試料をプレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ増幅剤セットが、複数のプレ増幅剤を含み、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(C)その試料を増幅剤セットと接触させることであって、その増幅剤セットが、各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含み、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を第1の標識プローブセットと接触させることであって、その第1の標識プローブセットが、第1の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第1の標識プローブセットが、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(E)標的核酸に結合した第1の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第1の標的核酸サブセットを検出することと、(F)第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットから、標識を切断することと、(G)その試料を第2の標識プローブセットと接触させることであって、その第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(H)標的核酸に結合した第2の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第2の標的核酸サブセットを検出することを含み、複数の標的核酸を検出する方法を提供する。
【0008】
一実施形態では、その方法は、(I)第2の標的核酸セットに結合した第2の標識プローブセットから、標識を切断することと、(J)その試料を第3の標識プローブセットと接触させることであって、その第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットが、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第3の標識プローブセットが、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(K)標的核酸に結合した第3の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第3の標的核酸サブセットを検出することをさらに含む。一実施形態では、その方法は、工程(I)~(K)を1回以上繰り返すことを含む。
【0009】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0010】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。特定の実施形態では、RNAである標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0011】
上記のような方法の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のような方法の一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のような方法の一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0012】
加えて、本発明は、(A)複数の標的核酸を含む少なくとも1つの固定及び/または浸透化細胞と、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(D)各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(E)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給される第1の標識プローブセットを含む、固定及び/または浸透化細胞の試料を提供する。
【0013】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0014】
上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0015】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0016】
本発明の上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0017】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0018】
本発明の試料の一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。いくつかの実施形態では、RNAである標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0019】
本発明の試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。本発明の試料の一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。本発明の試料の一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0020】
加えて、本発明は、(A)標的核酸を含む固定及び/または浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定及び/または浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(D)各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(E)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給されるスライドを提供する。
【0021】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0022】
本発明のスライドの一実施形態では、そのスライドは、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0023】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0024】
本発明のスライドの一実施形態では、そのスライドは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0025】
上記のようなスライドの一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0026】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。いくつかの実施形態では、RNAである標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0027】
本発明のスライドのいくつかの実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。本発明のスライドのいくつかの実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。本発明のスライドのいくつかの実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、標的核酸をin situで検出するためのキットであって、(A)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤セットと、(B)各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む増幅剤セットと、(C)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第1の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第1の標識プローブセットと、(D)第2の標識プローブサブセットを複数含む第2の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる第2の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第2の標識プローブセットを含むキットを提供する。
【0029】
一実施形態では、そのキットは、第3の標識プローブセットをさらに含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、第3の標識プローブセットは、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる第3の標的核酸サブセットを特異的に標識できる。
【0030】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを1つ以上含み、その各標的プローブセットは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含む。上記のようなキットの一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上含む。上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、切断可能な標識を標識プローブから切断する切断剤を含む。上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、複数の核酸の検出方法であって、(A)複数の核酸を含む細胞を含む試料を、複数の標的プローブセットと接触させることであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含むことと、(B)その試料をプレ-プレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、プレ-プレ増幅剤対を複数含み、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、そのプレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むことと、(C)その試料をプレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ増幅剤セットが、複数のプレ増幅剤を含み、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を増幅剤セットと接触させることであって、その増幅剤セットが、各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を第1の標識プローブセットと接触させることであって、その第1の標識プローブセットが、第1の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第1の標識プローブセットが、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(F)標的核酸に結合した第1の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第1の標的核酸サブセットを検出することと、(G)第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットから、標識を切断することと、(H)その試料を第2の標識プローブセットと接触させることであって、その第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(I)標的核酸に結合した第2の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第2の標的核酸サブセットを検出することを含み、複数の標的核酸を検出する方法を提供する。
【0032】
一実施形態では、その方法は、(J)第2の標的核酸セットに結合した第2の標識プローブセットから、標識を切断することと、(K)その試料を第3の標識プローブセットと接触させることであって、その第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットが、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第3の標識プローブセットが、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(L)標的核酸に結合した第3の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第3の標的核酸サブセットを検出することをさらに含む。一実施形態では、工程(J)~(L)を1回以上繰り返す。
【0033】
上記のような方法の一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0034】
上記のような方法の一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。いくつかの実施形態では、RNAである標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0035】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。本発明の方法のいくつかの実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。本発明の方法のいくつかの実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、(A)複数の標的核酸を含む少なくとも1つの固定及び/または浸透化細胞と、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)プレ-プレ増幅剤対を複数含むプレ-プレ増幅剤セットであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、プレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれのプレ-プレ増幅剤対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含み、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給される、固定及び/または浸透化細胞の試料を提供する。
【0037】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0038】
本発明の上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0039】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0040】
本発明の上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0041】
上記のような試料の一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0042】
上記のような試料の一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。上記のような試料のいくつかの実施形態では、RNAである標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0043】
本発明の試料のいくつかの実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。本発明の試料のいくつかの実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。本発明の試料のいくつかの実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0044】
加えて、本発明は、(A)標的核酸を含む固定及び/または浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定及び/または浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)プレ-プレ増幅剤対を複数含むプレ-プレ増幅剤セットであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、そのプレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれのプレ-プレ増幅剤対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給されるスライドを提供する。
【0045】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0046】
上記のようなスライドの一実施形態では、そのスライドは、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0047】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0048】
上記のようなスライドの一実施形態では、そのスライドは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0049】
上記のようなスライドの一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0050】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。いくつかの実施形態では、RNAである標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0051】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0052】
別の実施形態では、本発明は、標的核酸をin situで検出するためのキットであって、(A)プレ-プレ増幅剤対を複数含むプレ-プレ増幅剤セットであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、そのプレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むプレ-プレ増幅剤セットと、(B)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤セットと、(C)各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む増幅剤セットと、(D)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第1の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第1の標識プローブセットと、(E)第2の標識プローブサブセットを複数含む第2の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる第2の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第2の標識プローブセットを含むキットを提供する。
【0053】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、第3の標識プローブセットは、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる第3の標的核酸サブセットを特異的に標識できる。
【0054】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを1つ以上含み、その各標的プローブセットは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含む。上記のようなキットの一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上含む。
【0055】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、切断可能な標識を標識プローブから切断する切断剤を含む。一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0056】
一実施形態では、本発明は、複数の標的核酸の検出方法であって、(A)複数の核酸を含む細胞を含む試料を、複数の標的プローブセットと接触させることであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含むことと、(B)その試料をプレ-プレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、複数のプレ-プレ増幅剤を含み、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(C)その試料をプレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ増幅剤セットが、各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含み、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を増幅剤セットと接触させることであって、その増幅剤セットが、各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含み、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を第1の標識プローブセットと接触させることであって、その第1の標識プローブセットが、第1の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第1の標識プローブセットが、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(F)標的核酸に結合した第1の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第1の標的核酸サブセットを検出することと、(G)第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットから、標識を切断することと、(H)その試料を第2の標識プローブセットと接触させることであって、その第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(I)標的核酸に結合した第2の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第2の標的核酸サブセットを検出することを含み、複数の標的核酸を検出する方法を提供する。
【0057】
上記のような方法の一実施形態では、その方法は、(J)第2の標的核酸セットに結合した第2の標識プローブセットから、標識を切断することと、(K)その試料を第3の標識プローブセットと接触させることであって、その第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットが、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第3の標識プローブセットが、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(L)標的核酸に結合した第3の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第3の標的核酸サブセットを検出することをさらに含む。上記のような方法の一実施形態では、その方法は、工程(J)~(L)を1回以上繰り返すことを含む。
【0058】
上記のような方法の一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0059】
上記のような方法の一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0060】
上記のような方法の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0061】
一実施形態では、本発明は、(A)複数の標的核酸を含む少なくとも1つの固定及び/または浸透化細胞と、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含むプレ増幅剤セットであって、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットとを含む、固定及び/または浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給される試料を提供する。
【0062】
上記のような試料の一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0063】
上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0064】
上記のような試料の一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0065】
上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0066】
上記のような試料の一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0067】
上記のような試料の一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0068】
上記のような試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のような試料の別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0069】
一実施形態では、本発明は、(A)標的核酸を含む固定及び/または浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定及び/または浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含むプレ増幅剤セットであって、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットとを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給されるスライドを提供する。
【0070】
上記のようなスライドの一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0071】
上記のようなスライドの一実施形態では、そのスライドは、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0072】
上記のようなスライドの一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、切断される。
【0073】
上記のようなスライドの一実施形態では、そのスライドは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0074】
上記のようなスライドの一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0075】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0076】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。上記のようなスライドの別の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。さらに別の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0077】
一実施形態では、本発明は、標的核酸をin situで検出するためのキットであって、(A)複数のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤セットと、(B)各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含むプレ増幅剤セットであって、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤セットと、(C)各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む増幅剤セットと、(D)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第1の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第1の標識プローブセットと、(E)第2の標識プローブサブセットを複数含む第2の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる第2の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第2の標識プローブセットを含むキットを提供する。
【0078】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、第3の標識プローブセットをさらに含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識は、切断可能であり、第3の標識プローブセットは、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる第3の標的核酸サブセットを特異的に標識できる。
【0079】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを1つ以上含み、その各標的プローブセットは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含む。
【0080】
上記のようなキットの一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上含む。
【0081】
上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、切断可能な標識を標識プローブから切断する切断剤を含む。上記のようなキットの一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0082】
一実施形態では、本発明は、複数の標的核酸の検出方法であって、(A)複数の核酸を含む細胞を含む試料を、複数の標的プローブセットと接触させることであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含むことと、(B)その試料をプレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ増幅剤セットが、複数のプレ増幅剤を含み、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(C)その試料を増幅剤セットと接触させることであって、その増幅剤セットが、各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含み、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を第1の標識プローブセットと接触させることであって、その第1の標識プローブセットが、第1の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、その標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第1の標識プローブセットが、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(E)標的核酸に結合した第1の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第1の標的核酸サブセットを検出することと、(F)その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつその標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットから、標識を除去することと、(G)その試料を第2の標識プローブセットと接触させることであって、その第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、その標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(H)標的核酸に結合した第2の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第2の標的核酸サブセットを検出することを含み、複数の標的核酸を検出する方法を提供する。
【0083】
一実施形態では、その方法は、(I)標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、試料をインキュベートすることによって、第2の標的核酸セットに結合した第2の標識プローブセットから、標識を除去することと、(J)その試料を第3の標識プローブセットと接触させることであって、その第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットが、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、その標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第3の標識プローブセットが、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(K)標的核酸に結合した第3の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第3の標的核酸サブセットを検出することをさらに含む。一実施形態では、その方法は、工程(I)~(K)を1回以上繰り返すことを含む。
【0084】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0085】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0086】
上記のような方法の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0087】
加えて、本発明は、(A)複数の標的核酸を含む少なくとも1つの固定及び/または浸透化細胞と、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(D)各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(E)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、その標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含む、固定及び/または浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給される試料を提供する。
【0088】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0089】
上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0090】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつその標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0091】
本発明の上記のような試料の一実施形態では、その試料は、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0092】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0093】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0094】
本発明の試料の一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0095】
加えて、本発明は、(A)標的核酸を含む固定及び/または浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定及び/または浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(D)各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(E)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、その標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給されるスライドを提供する。
【0096】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつその標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、試料をインキュベートすることによって、その標識を除去することによって除去する。
【0097】
一実施形態では、そのスライドは、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0098】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつその標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去することによって除去する。
【0099】
一実施形態では、そのスライドは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0100】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0101】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0102】
上記のようなスライドの一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0103】
本発明は、標的核酸をin situで検出するためのキットであって、(A)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含み、各プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤セットと、(B)各プレ増幅剤に特異的な複数の増幅剤サブセットを含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、その増幅剤サブセットの増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む増幅剤セットと、(C)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、その標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第1の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第1の標識プローブセットと、(D)第2の標識プローブサブセットを複数含む第2の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、その標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる第2の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第2の標識プローブセットを含むキットも提供する。
【0104】
一実施形態では、そのキットは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第3の標識プローブセットは、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる第3の標的核酸サブセットを特異的に標識できる。
【0105】
一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを1つ以上含み、その各標的プローブセットは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含む。一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上含む。
【0106】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0107】
本発明は、複数の核酸の検出方法であって、(A)複数の核酸を含む細胞を含む試料を、複数の標的プローブセットと接触させることであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含むことと、(B)その試料をプレ-プレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、プレ-プレ増幅剤対を複数含み、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、そのプレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むことと、(C)その試料をプレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ増幅剤セットが、複数のプレ増幅剤を含み、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を増幅剤セットと接触させることであって、その増幅剤セットが、各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を第1の標識プローブセットと接触させることであって、その第1の標識プローブセットが、第1の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第1の標識プローブセットが、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(F)標的核酸に結合した第1の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第1の標的核酸サブセットを検出することと、(G)その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、試料をインキュベートすることによって、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットから、標識を除去することと、(H)その試料を第2の標識プローブセットと接触させることであって、その第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(I)標的核酸に結合した第2の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第2の標的核酸サブセットを検出することを含み、複数の標的核酸を検出する方法も提供する。
【0108】
一実施形態では、その方法は、(J)標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、試料をインキュベートすることによって、第2の標的核酸セットに結合した第2の標識プローブセットから、標識を除去することと、(K)その試料を第3の標識プローブセットと接触させることであって、その第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットが、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第3の標識プローブセットが、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(L)標的核酸に結合した第3の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第3の標的核酸サブセットを検出することをさらに含む。
【0109】
一実施形態では、その方法は、工程(J)~(L)を1回以上繰り返すことを含む。
【0110】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0111】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0112】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0113】
本発明は、(A)複数の標的核酸を含む少なくとも1つの固定及び/または浸透化細胞と、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)プレ-プレ増幅剤対を複数含むプレ-プレ増幅剤セットであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、そのプレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれのプレ-プレ増幅剤対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含む、固定及び/または浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給される試料も提供する。
【0114】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0115】
一実施形態では、その試料は、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0116】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0117】
一実施形態では、その試料は、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0118】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0119】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0120】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0121】
本発明は、(A)標的核酸を含む固定及び/または浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定及び/または浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)プレ-プレ増幅剤対を複数含むプレ-プレ増幅剤セットであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、そのプレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、それぞれのプレ-プレ増幅剤対にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給されるスライドも提供する。
【0122】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0123】
一実施形態では、そのスライドは、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0124】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0125】
一実施形態では、そのスライドは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0126】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0127】
上記のようなスライドの一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0128】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0129】
加えて、本発明は、標的核酸をin situで検出するためのキットであって、(A)プレ-プレ増幅剤対を複数含むプレ-プレ増幅剤セットであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、標的プローブセットの標的プローブ対のそれぞれに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含み、そのプレ-プレ増幅剤対の各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの標的プローブ対の標的プローブの1つに対する結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、プレ増幅剤に対する結合部位を複数含むプレ-プレ増幅剤セットと、(B)複数のプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットであって、その複数のプレ増幅剤が、各プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤を含み、その各プレ増幅剤が、プレ-プレ増幅剤セットのプレ-プレ増幅剤対の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤セットと、(C)各プレ-プレ増幅剤対に特異的な各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ-プレ増幅剤対に特異的なプレ増幅剤の1つに対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む増幅剤セットと、(D)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第1の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第1の標識プローブセットと、(E)第2の標識プローブサブセットを複数含む第2の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識が、切断可能であり、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる第2の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第2の標識プローブセットを含むキットを提供する。
【0130】
一実施形態では、そのキットは、第3の標識プローブセットをさらに含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第3の標識プローブセットは、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる第3の標的核酸サブセットを特異的に標識できる。
【0131】
一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを1つ以上含み、その各標的プローブセットは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含む。一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上含む。
【0132】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
【0133】
本発明は、複数の標的核酸の検出方法であって、(A)複数の核酸を含む細胞を含む試料を、複数の標的プローブセットと接触させることであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含むことと、(B)その試料をプレ-プレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ-プレ増幅剤セットが、複数のプレ-プレ増幅剤を含み、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(C)その試料をプレ増幅剤セットと接触させることであって、そのプレ増幅剤セットが、各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含み、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むことと、(D)その試料を増幅剤セットと接触させることであって、その増幅剤セットが、各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含み、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含むことと、(E)その試料を第1の標識プローブセットと接触させることであって、その第1の標識プローブセットが、第1の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第1の標識プローブセットが、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(F)標的核酸に結合した第1の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第1の標的核酸サブセットを検出することと、(G)その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットから、標識を除去することと、(H)その試料を第2の標識プローブセットと接触させることであって、その第2の標識プローブセットが、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(I)標的核酸に結合した第2の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第2の標的核酸サブセットを検出することを含み、複数の標的核酸を検出する方法も提供する。
【0134】
一実施形態では、その方法は、(J)標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、試料をインキュベートすることによって、第2の標的核酸セットに結合した第2の標識プローブセットから、標識を除去することと、(K)その試料を第3の標識プローブセットと接触させることであって、その第3の標識プローブセットが、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットが、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第3の標識プローブセットが、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識することと、(L)標的核酸に結合した第3の標識プローブセットの標識プローブを検出することによって、第3の標的核酸サブセットを検出することをさらに含む。
【0135】
一実施形態では、その方法は、工程(J)~(L)を1回以上繰り返すことを含む。
【0136】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0137】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0138】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0139】
一実施形態では、加えて、本発明は、(A)複数の標的核酸を含む少なくとも1つの固定及び/または浸透化細胞と、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含むプレ増幅剤セットであって、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含む、固定及び/または浸透化細胞の試料であって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給される試料を提供する。
【0140】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0141】
一実施形態では、その試料は、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0142】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0143】
一実施形態では、その試料は、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0144】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0145】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0146】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0147】
一実施形態では、加えて、本発明は、(A)標的核酸を含む固定及び/または浸透化細胞を少なくとも1つ含む複数の固定及び/または浸透化細胞が上に固定化されているスライドと、(B)複数の標的プローブセットであって、その各標的プローブセットが、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションした標的プローブ対を含む複数の標的プローブセットと、(C)複数のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的標的プローブ対にハイブリダイゼーションされているプレ-プレ増幅剤セットと、(D)各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含むプレ増幅剤セットであって、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含み、そのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なそれぞれのプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションされているプレ増幅剤セットと、(E)各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含み、その増幅剤が、それぞれのプレ増幅剤にハイブリダイゼーションされている増幅剤セットと、(F)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第1の標識プローブセットが、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第1の標的核酸サブセットを特異的に標識する第1の標識プローブセットを含むスライドであって、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第1の標的核酸サブセット上に供給されるスライドを提供する。
【0148】
一実施形態では、第1の標的核酸サブセットに結合した第1の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0149】
一実施形態では、そのスライドは、第2の標識プローブセットを含み、その第2の標識プローブセットは、第2の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットは、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第2の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第2の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第2の標的核酸サブセット上に供給される。
【0150】
一実施形態では、第2の標的核酸サブセットに結合した第2の標識プローブセットの標識は、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度よりも高く、かつ標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低い温度で、その試料をインキュベートすることによって除去する。
【0151】
一実施形態では、そのスライドは、第3の標識プローブセットを含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、その第3の標識プローブセットは、それぞれの増幅剤にハイブリダイゼーションして、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる複数の標的プローブセットにハイブリダイゼーションした第3の標的核酸サブセットを特異的に標識し、そのハイブリダイゼーションにより、検出可能な標識が第3の標的核酸サブセット上に供給される。
【0152】
一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。
【0153】
一実施形態では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAである。一実施形態では、RNAであるその標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択されている。
【0154】
一実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。一実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。
【0155】
一実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0156】
一実施形態では、加えて、本発明は、標的核酸をin situで検出するためのキットであって、(A)複数のプレ-プレ増幅剤を含むプレ-プレ増幅剤セットであって、その複数のプレ-プレ増幅剤が、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤を含み、各プレ-プレ増幅剤が、標的プローブセットの1つにおける標的プローブ対に対する結合部位と、プレ増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ-プレ増幅剤セットと、(B)各プレ-プレ増幅剤に特異的なプレ増幅剤サブセットを複数含むプレ増幅剤セットであって、各プレ増幅剤サブセットが、複数のプレ増幅剤を含み、プレ増幅剤サブセットのプレ増幅剤が、標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤の1つに対する結合部位と、増幅剤に対する複数の結合部位を含むプレ増幅剤セットと、(C)各プレ増幅剤サブセットに特異的な増幅剤サブセットを複数含む増幅剤セットであって、その各増幅剤サブセットが、複数の増幅剤を含み、増幅剤サブセットの増幅剤が、プレ増幅剤サブセットの1つにおけるプレ増幅剤に対する結合部位と、標識プローブに対する複数の結合部位を含む増幅剤セットと、(D)第1の標識プローブサブセットを複数含む第1の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、その標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第1の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第1の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第1の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第1の標識プローブセットと、(E)第2の標識プローブサブセットを複数含む第2の標識プローブセットであって、その各標識プローブサブセットが、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第2の標識プローブサブセットが、第1の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットが、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブが、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第2の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識が、第2の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度が、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第2の標識プローブセットが、第1の標的核酸サブセットとは異なる第2の標的核酸サブセットを特異的に標識できる第2の標識プローブセットを含むキットを提供する。
【0157】
一実施形態では、そのキットは、第3の標識プローブセットをさらに含み、その第3の標識プローブセットは、第3の標識プローブサブセットを複数含み、その各標識プローブサブセットは、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に特異的であり、その第3の標識プローブサブセットは、第1及び第2の標識プローブサブセットとは異なる増幅剤サブセットの増幅剤に特異的であり、その各標識プローブサブセットは、標識プローブを複数含み、各標識プローブサブセットの標識プローブは、標識と、増幅剤サブセットの1つにおける増幅剤に対する結合部位を含み、第3の標識プローブサブセットのそれぞれにおける標識は、第3の標識プローブサブセット間で識別可能であり、その標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度は、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低く、第3の標識プローブセットは、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる第3の標的核酸サブセットを特異的に標識できる。
【0158】
一実施形態では、そのキットは、標的プローブセットを1つ以上含み、その各標的プローブセットは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を含む。一実施形態では、各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上含む。
【0159】
一実施形態では、そのキットは、細胞を浸透化するための試薬を少なくとも1つ含む。
[図面の簡単な説明]
【0160】
図1]マルチプレックスアッセイの概略図を示している。このようなアッセイの、ある特定の実施形態は、本明細書では、RNAscope(商標)HiPlex Probe Hybridization and Amplification Systemと称する。示されている実施形態では、標的核酸のマルチプレックス検出のために、元来のRNAscope(商標)のプローブデザイン及び分岐状のDNA様シグナル増幅法(例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、WO2007/001986、WO2007/002006、Wang et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.2(2):109-119(2002)を参照されたい)をRNAscope(商標)HiPlexに取り入れた。図1に示されている実施形態では、12個の標的配列が、12個の垂直方向のシグナル増幅システム(異なる色の標識プローブによって示されている)に結合するプローブ対(ダブルZ型プローブとして示されている)と、同時にハイブリダイゼーションする。
図2]マルチプレックスアッセイのワークフロー(RNAscope(商標)HiPlex Assay Workflow)の概略図を示している。図2に示されている実施形態では、12個の標的配列が、標的プローブ(ダブルZ型プローブとして示されている)にハイブリダイゼーションし、シグナルが、RNAscope(商標)のような増幅システムによって、同時に増幅される。示されている実施形態では、非スペクトルな重なり合った蛍光色素にコンジュゲートした4種のオリゴ(標識プローブ)を介して、第1の4つの標的を検出し、従来の蛍光顕微鏡またはスキャナーを用いてイメージングする。続いて、フルオロフォアを標識プローブから切断し、次の4つの標的を標識し、同じ方法を用いてイメージングする。1ラウンドあたり4つの標的を検出するラウンドをL回(例えば3回)行った後、画像レジストレーションソフトウェアのアルゴリズムを用いて、画像をレジストレーションして、重ね合わせた画像の最終合成物をシングルセルの解像度で作成する。
図3A]標的核酸を垂直方向で標識する概略図である。図3Aに示されているのは、RNAscope(商標)アッセイに基づき、標的核酸を垂直方向で標識することである。図3Aに示されているのは、3つの例示的な標的核酸を、それぞれのシグナル生成複合体(SGC)で標識することである。図3Aには、標的プローブ対1(TP1a及びTP1b)が標的核酸1に結合しているのが示されている。プレ増幅剤(PA1)が、標的プローブ対(TP1a及びTP1b)に結合しているのが示されている。複数の増幅剤(AMP1)が、PA1に結合しているのが示されている。複数の標識プローブ(LP1)が、増幅剤に結合しているのが示されている。図3Aには、標的2及び3についても、同様の構成が示されており、SGCの成分(標的プローブ、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)は、対応する標的のそれぞれに特異的である。
図3B]標的核酸を垂直方向で標識する概略図である。図3Aに示されている構成の修正形態を示している。図3Bに示されているのは、2つの例示的な標的核酸を、それぞれのシグナル生成複合体(SGC)で標識することである。図3Bには、標的プローブ対1(TP1a及びTP1b)が標的核酸1に結合しているのが示されている。プレ-プレ増幅剤(PPA1)が、標的プローブ対(TP1a及びTP1b)に結合しているのが示されている。複数のプレ増幅剤(PA1)が、PPA1に結合しているのが示されている。複数の増幅剤(AMP1)が、PA1に結合しているのが示されている。簡略化のために、増幅剤は、1つのプレ増幅剤に結合しているように示されているが、増幅剤は、すべてのプレ増幅剤に結合できることが理解される。複数の標識プローブ(LP1)が、増幅剤に結合しているのが示されている。図3Bには、標的2についても、同様の構成が示されており、SGCの成分(標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)は、対応する標的のそれぞれに特異的である。
図3C]標的核酸を垂直方向で標識する概略図である。図3Cに示されているのは、Basescope(商標)アッセイに基づき、標的核酸を垂直方向で標識することである。図3Cに示されているのは、2つの例示的な標的核酸を、それぞれのシグナル生成複合体(SGC)で標識することである。図3Cには、標的プローブ対1(TP1a及びTP1b)が標的核酸1に結合しているのが示されている。プレ-プレ増幅剤対(PPA1a及びPPA1b)が、それぞれの標的プローブ対(TP1a及びTP1b)に結合しているのが示されている。プレ増幅剤(PA1)が、プレ-プレ増幅剤対(PPA1a及びPPA1b)に結合しているのが示されている。複数の増幅剤(AMP1)が、PA1に結合しているのが示されている。簡略化のために、増幅剤は、1つのプレ増幅剤に結合しているように示されているが、増幅剤は、すべてのプレ増幅剤に結合できることが理解される。複数の標識プローブ(LP1)が、増幅剤に結合しているのが示されている。図3Cには、標的2についても、同様の構成が示されており、SGCの成分(標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)は、対応する標的のそれぞれに特異的である。
図4A]3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出した結果を示している。ホルマリン固定パラフィン包埋切片として調製したHeLa細胞に、12個の異なる標的に対するプローブ対をハイブリダイゼーションさせ、プレ増幅剤及び増幅剤の配列との逐次的なハイブリダイゼーションラウンドによって、ハイブリダイゼーションシグナルを併せて増幅した。図4Aは、標的核酸、すなわち、RNAポリメラーゼIIサブユニットA(POLR2A)遺伝子、ペプチジルプロリルイソメラーゼB(PPIB)遺伝子、ユビキチンC(UBC)遺伝子及びヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)遺伝子に結合した標識を可視化した1回目のラウンドの検出結果を示している。POLR2A、PPIB、UBC、及びHPRT1は、フルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750で標識した。別のスライドで、同じ蛍光標識を用いた、細菌のジヒドロジピコリン酸レダクターゼ(dapB)遺伝子に対するネガティブコントロールプローブを使用して、非特異的なバックグラウンドを評価した。核は、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)(青色)で染色した。
図4B]3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出した結果を示している。1回目のラウンドで結合した標識を切断後、標的核酸、すなわち、クラスIのβチューブリン(TUBB)、リボソームタンパク質L28(RPL28)、リボソームタンパク質L5(RPL5)、及びβ-2ミクログロブリン(B2M)に結合した標識を、それぞれフルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750を用いて可視化した2回目のラウンドの検出結果を示している。
図4C]3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出した結果を示している。2回目のラウンドで結合した標識を切断後、標的核酸、すなわち、βアクチン(ACTB)、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)、リボソームタンパク質ラテラルストークサブユニットP0(RPLP0)、及びグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に結合した標識を、フルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750を用いて可視化した3回目のラウンドの検出結果を示している。
図5]新鮮な凍結マウス脳におけるニューロンマーカーの検出及び画像レジストレーションの結果を示している。3ラウンドの標識プローブハイブリダイゼーションを行って、Alexa488、ATTO550、ATTO647N及びAlexa750というフルオロフォアを用いて、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体7(Htr7)、プロトカドヘリン8(Pcdh8)、Meisホメオボックス1(Meis1)、チロシンヒドロキシラーゼ(Th)、クリスタリンμ(Crym)、シナプトポリン(Synpr)、ドーパミン受容体D1(Drd1a)、カンナビノイド受容体1(脳)(Cnr1)、ウォルフラミンER膜貫通糖タンパク質(Wfs1)、ドーパミン受容体D2(Drd2)及びカルビンジン1(Calb1)を検出した後、ATTO550を用いて、NeuN(RNA結合タンパク質fox-1ホモログ(C.elegans)3によってコードされる)に対する抗体によって免疫蛍光検出を行い、4枚からなる画像セットを得てから、画像解析ソフトウェアを用いることによってレジストレーションを行って、同じ個別細胞上の12個の標的シグナルを重ね合わせた。
図6]A~Cは、シグナル生成複合体(SGC)を用いて、核酸標的を検出する上記方法の概略図を示している。PPAはプレ-プレ増幅剤、PAはプレ増幅剤、AMPは増幅剤、LPは標識プローブである。
[発明を実施するための形態]
【0161】
本発明は、例えばin situハイブリダイゼーションによって、核酸のマルチプレックス解析を行う方法に関するものである。本発明の方法により、同じ試料内及び同じ細胞内の複数の標的核酸を検出することが可能になる。
【0162】
核酸の検出方法の1つでは、RNAscope(商標)というRNA ISH技術を利用し、この技術は、分岐状のDNA様シグナル増幅システムと組み合わせて、特別に設計されたオリゴヌクレオチドプローブ(「ダブルZ」またはZZプローブと称する場合もある)を使用して、標準的な明視野顕微鏡下で、1キロベースほどの小ささのRNAを確実に、単分子の感度で検出するものである(Anderson et al.,J.Cell.Biochem.117(10):2201-2208(2016)、Wang et al.,J.Mol.Diagn.14(1):22-29(2012))。このようなプローブデザインは、シグナル増幅の特異性を大きく改善させる。それぞれの対における両方のプローブが、それらの想定標的に結合した場合のみに、シグナルの増幅が可能になるからである。RNAscope(商標)技術は、蛍光検出を用いて、最大で4個または5個のRNA標的を同時に識別できる。しかしながら、5個または6個以上の標的を検出するために、RNAscope(商標)を使用する方法は、これまで説明されたことはない。
【0163】
本明細書に記載されているのは、RNAscope(商標)のシグナル増幅システムのような検出システムと、一般的なスペクトルプロファイルを持つ蛍光色素を用いて、2つ以上の標的核酸配列を反復形式で、シングルセルの解像度で特異的に検出する、アッセイ及び検出の方策である。この方策は、すべての標的配列の標的ハイブリダイゼーションと増幅を同時に行ってから、概ね3~5個の核酸標的を逐次的なラウンドで反復して検出することによって実現するものである。反復的な検出工程を行う能力を得るために、蛍光色素のような標識は、切断可能、例えば、化学的に切断可能であり、それにより、それ以降、1回目のラウンドと同じ標識を用いた検出ラウンドが可能になる。ラウンド内においては、従来の蛍光顕微鏡を用いて分光できる蛍光色素コンジュゲートを利用する。その後、蛍光色素を切断する。例示的な切断剤の1つは、還元剤であるトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)である。蛍光色素のような検出可能な標識を切断後、標的を検出してイメージングを行う次のラウンドを実施する。このアッセイ策により、前のラウンドの標識プローブを除去する目的で、残りの標的と会合した既存のシグナル増幅複合体を破壊し得る過酷な条件を用いる必要がなくなるうえに、組織及びRNAの完全性も保持され、検出が最大化されるようになる。
【0164】
本発明は、高い感度及び高い特異性で、細胞内の核酸配列を検出可能にする方法に関するものである。本発明の方法には、研究及び診断において多くの実用的用途がある(Hu et al.,Biomark.Res.2(1):1-13,doi:10.1186/2050-7771-2-3(2014)、Ratan et al.,Cureus 9(6):e1325.doi:10.7759/cureus.1325(2017)、Weier et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.2(2):109-119(2002))。本発明の方法は例えば、神経系及び腫瘍微小環境のような非常に複雑な組織内の空間的構造をマッピングしたり、既知の種類の細胞及び新たな種類の細胞を特定したり、細胞の状態を特定したり、罹患細胞及び罹患組織内の遺伝子発現の変化を検出したり、所定の種類の細胞内で、遺伝子発現が変化した位置を特定したり、腫瘍の不均一性を解析したり、がんの診断及び予後またはその他の疾患の状態に関するバイオマーカーを検出したり、コンパニオン診断の際にバイオマーカーを検出したり、ならびに病原体(例えば、細菌、ウイルス、真菌、微生物寄生虫)を検出及び特定したりする目的で用いることができる。
【0165】
本発明は、RNAscope(商標)技術の要であるプローブデザインの原理及び分岐状のDNA様シグナル増幅(Wangらによる2012年の上記文献)を拡張して、同じ細胞及び/または同じ組織切片内で、複数の核酸標的の配列を高い感度及び高い特異性で検出する(2つ以上の標的核酸を反復形式で検出する)ようにしたものである。RNAscope(商標)のプローブと同様に、各標的プローブは、標的核酸内の特異的な配列に結合する標的結合セグメント(標的結合部位)を含む。そのプローブは、本明細書に記載されているように、シグナル増幅分子に結合する「テール」配列も含む。2つのプローブが、1つの対として、標的核酸配列内の隣接部位に結合する。両方のプローブが、それぞれの標的部位に結合した場合にのみ、シグナル増幅分子(例えば、図3Aにおけるようなプレ増幅剤、または図3B及び3Cにおけるようなプレ-プレ増幅剤)に対する完全な結合部位を形成可能となり、それにより、シグナルの増幅及び検出が達成される。異なる標的配列に対するプローブは、対応する垂直方向の増幅分子に対する結合配列が、独立した別個のものとなるように設計する。上記のような配列は、プローブのハイブリダイゼーションと、複数の標的のシグナル増幅を並行して行えるように、適切なアルゴリズムを用いて容易に設計できる(図1及び3を参照されたい)。標的は、各ラウンドにおいて、スペクトルの異なる検出可能な標識(フルオロフォアなど)を用いて、複数回のラウンドで検出する。
【0166】
同じ反復的なアッセイデザインの方策は、Basescope(商標)のシグナル増幅システム(Baker et al.,Nat.Commun.8(1):1998,doi:10.1038/s41467-017-02295-5(2017))でも利用でき、このシステムは、短い配列を検出するのに適用できる。本発明の方法は、複数の標的のDNAを検出するのにも適用できる。本発明の方法は、ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)(Choi et al.,Development 145(12),pii:dev165753,doi:10.1242/dev.165753(2018))のように、当該技術分野において知られている他のシグナル増幅法にも適用できる。最新のHCR(HCR v3.0)では、RNAscope(商標)と同様の対にしたプローブデザインが用いられている(Choiらによる上記の2018年の文献)。本発明の方法を適用できる他のシグナル増幅システムとしては、ローリングサイクル型増幅(Larsson et al.,Nature Methods7(5):395-397(2010)、clampFISH(Rouhanifard et al.,BioRxiv,222794(doi.org/10.1101/222794)(2018))及びSABER(Kishi et al.,Nat.Methods 16:533-544(2019))が挙げられるが、これらに限らない。
【0167】
本発明の方法は、RNAscope(商標)の技術と同じ感度レベル及び特異性レベルで、1つの細胞及び/または組織切片内の複数の遺伝子標的を標識するのに用いることができる。本発明の方法は、組織微小環境の空間的状況において数多くのバイオマーカーを検出するために、蛍光ベースの検出、及びイメージングマスサイトメトリーの両方(Schulz et al.,Cell Syst.6(1):25-36(2018))とともに使用できる。本発明の方法は、研究及び診断の用途で使用できる。
【0168】
図1~3及び6では、標的プローブは、例えば米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、ならびにWO2007/001986及びWO2007/002006に記載されているように、「Z型」の構成で示されている。図1~3及び6に示されているZ型の構成は、その標的プローブのプレ増幅剤(図3A及び6A)またはプレ-プレ増幅剤(図3B、3C、6B及び6C)との結合部位の5’側に標的結合部位を有する。図1~3及び6に記載されているようなこのような構成は、例示的なものに過ぎず、その配向は、逆であることができ、すなわち、標的結合部位は、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤との結合部位の3’側であることができることが理解される。標的プローブ対は独立して、いずれの配向であることもでき、すなわち、標的プローブ対の一方のメンバーは、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤との結合部位の5’側または3’側に標的結合部位を有することができ、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤の5’側または3’側に結合部位を有する第2のプローブと対をなすことができることが理解される。
【0169】
本明細書で使用する場合、「標識プローブ」という用語は、標的分子に直接または間接的に、概ね間接的に結合して、標的を検出可能にする物体を指す。標識プローブ(または「LP」)は、直接または間接的に検出可能なシグナルを供給する標識を1つ以上含む、典型的には1本鎖のポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである核酸結合部分を含む。その標識が、そのポリヌクレオチドに共有結合していることもできるし、またはそのポリヌクレオチドが、その標識に結合するように構成されていることもできる。例えば、ビオチン化ポリヌクレオチドは、ストレプトアビジン結合標識と結合できる。標識プローブは例えば、標的核酸に直接ハイブリダイゼーションできる。概して、標識プローブは、標的核酸に逐次にハイブリダイゼーションしている核酸、または標的核酸にハイブリダイゼーションしている1つ以上の他の核酸に逐次にハイブリダイゼーションしている核酸にハイブリダイゼーションできる。すなわち、標識プローブは、標的核酸のポリヌクレオチド配列、特に、標的核酸の一部分と相補的であるポリヌクレオチド配列を含むことができる。あるいは、標識プローブは、本明細書に記載されているように、増幅剤、プレ増幅剤、プレ-プレ増幅剤、シグナル生成複合体(SGC)などにおけるポリヌクレオチド配列と相補的であるポリヌクレオチド配列を少なくとも1つ含むことができる。概して、本発明の実施形態では、標識プローブは、増幅剤に結合する。本明細書で使用する場合、酵素標識を含む標識プローブは、オリゴヌクレオチドのような核酸結合部分と、その核酸結合部分にカップリングした酵素とを含む標識プローブを指す。本明細書で開示されているように、酵素の核酸結合部分へのカップリングは、共有結合であるか、またはビオチン/アビジンのような高親和性結合相互作用もしくはその他の類似の高親和性結合分子によるものであることができる。
【0170】
本明細書で使用する場合、「標的プローブ」は、標的核酸にハイブリダイゼーションして、標識プローブまたはシグナル生成複合体(SGC)の成分、例えば、増幅剤、プレ増幅剤もしくはプレ-プレ増幅剤をその標的核酸に捕捉または結合させることができるポリヌクレオチドである。標的プローブは、標識プローブに直接ハイブリダイゼーションできるか、または標識プローブに逐次にハイブリダイゼーションする1つ以上の核酸にハイブリダイゼーションでき、例えば、標的プローブは、SGCにおける増幅剤、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤にハイブリダイゼーションできる。すなわち、標的プローブは、標的核酸のポリヌクレオチド配列と相補的である第1のポリヌクレオチド配列と、標識プローブ、増幅剤、プレ増幅剤、プレ-プレ増幅剤などのポリヌクレオチド配列と相補的である第2のポリヌクレオチド配列を含む。概して、本発明の実施形態では、標的プローブは、図3A及び6Aにおけるように、プレ増幅剤に結合するか、または図3B、3C、6B及び6Cにおけるように、プレ-プレ増幅剤に結合する。標的プローブは概して1本鎖であり、上記の相補的配列が、対応する標的核酸、標識プローブ、増幅剤、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤とハイブリダイゼーションするのに利用可能なようになっている。本発明の実施形態では、標的プローブは、対として供給される。
【0171】
本明細書で使用する場合、「増幅剤」は、複数の標識プローブにハイブリダイゼーションできる分子、典型的にはポリヌクレオチドである。典型的には、増幅剤は、複数の同一の標識プローブにハイブリダイゼーションする。増幅剤は、標的核酸、標的プローブ対の標的プローブの少なくとも1つ、標的プローブ対の標的プローブの両方、または標的プローブに結合した核酸(増幅剤、プレ増幅剤もしくはプレ-プレ増幅剤など)にハイブリダイゼーションすることもできる。例えば、増幅剤は、少なくとも1つの標的プローブ及び複数の標識プローブ、またはプレ増幅剤及び複数の標識プローブにハイブリダイゼーションできる。概して、本発明の実施形態では、増幅剤は、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションできる。増幅剤は例えば、直鎖状、フォーク状、櫛状または分岐状の核酸であることができる。すべてのポリヌクレオチドについて本明細書で記載されているように、増幅剤は、修飾ヌクレオチド及び/または非標準的なヌクレオチド間結合、ならびに標準的なデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/またはホスホジエステル結合を含むことができる。好適な増幅剤は例えば、米国特許第5,635,352号、同第5,124,246号、同第5,710,264号、同第5,849,481号及び同第7,709,198号、ならびに米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により援用される。概して、本発明の実施形態では、増幅剤は、プレ増幅剤及び標識プローブに結合する(図3及び6を参照されたい)。
【0172】
本明細書で使用する場合、「プレ増幅剤」は、1つ以上の標的プローブと1つ以上の増幅剤の間の中間結合成分としての役割を果たす分子、典型的にはポリヌクレオチドである。典型的には、プレ増幅剤は、1つ以上の標的プローブ及び複数の増幅剤に同時にハイブリダイゼーションする。例示的なプレ増幅剤は例えば、米国特許第5,635,352号、同第5,681,697号及び同第7,709,198号、ならびに米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号及び同第2017/0101672号に記載されており、これらはそれぞれ、参照により援用される。概して、本発明の実施形態では、プレ増幅剤は、標的プローブ対のメンバーの両方(図3A及び6Aを参照されたい)、標的プローブ対に結合できるプレ-プレ増幅剤(図3B及び6B)、または標的プローブ対に結合できるプレ-プレ増幅剤対のメンバーの両方(図3C及び6Cを参照されたい)に結合する。プレ増幅剤は、増幅剤にも結合する(図3及び6を参照されたい)。
【0173】
本明細書で使用する場合、「プレ-プレ増幅剤」は、1つ以上の標的プローブ及び1つ以上のプレ増幅剤の間の中間結合成分としての役割を果たす分子、典型的にはポリヌクレオチドである。典型的には、プレ-プレ増幅剤は、1つ以上の標的プローブ及び複数のプレ増幅剤に同時にハイブリダイゼーションする。例示的なプレ-プレ増幅剤は例えば、2017/0101672に記載されており、これは、参照により援用される。概して、本発明の実施形態では、プレ-プレ増幅剤は、標的プローブ対(図3B及び6Bを参照されたい)または標的プローブ対のメンバー(図3C及び6Cを参照されたい)、及びプレ増幅剤に結合する。
【0174】
本明細書で使用する場合、「複数」という用語は、2以上を意味するものとして理解する。すなわち、複数とは例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、28以上、29以上、30以上、31以上、32以上、33以上、34以上、35以上、36以上、37以上、38以上、39以上、40以上、41以上、42以上、43以上、44以上、45以上、46以上、47以上、48以上、49以上、50以上、55以上、60以上、65以上、70以上、75以上、80以上、85以上、90以上、95以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上もしくは1000以上、または特定の用途で望ましい場合には、これを上回る数を指すことができる。
【0175】
本明細書に記載されているように、本発明は、標的核酸のマルチプレックス検出に関するものであり、その方法では、これまで説明されてきたin situハイブリダイゼーション法よりも多くの標的核酸の検出が実現する。例示的な実施形態は、図1に示されており、この図では、12個の標的核酸の検出が示されている。具体的には、この方法は、垂直方向の増幅システムを用いて、反復的な検出ラウンドで、複数の標的核酸を識別して検出できる。
【0176】
図2に示されているように、一実施形態では、本発明の方法では、標的核酸を検出するために、複数の標的核酸に対する標的プローブの同時ハイブリダイゼーションと、増幅システムを用いる。しかしながら、すべての標的核酸を一度に検出するのではなく、標的核酸の標識及び検出は、反復的なラウンドで行い、その際には、1回目のラウンドでは、標的プローブが結合した標的核酸サブセットのみを検出する。このことは、標的1~4を1回目のラウンドで検出するものとして、図2に概略的に示されている。切断可能な標識を用いることによって、1回目のラウンドで、標的核酸(図2では、標的1~4)に結合した検出可能な標識をイメージング後、標識を試料から除去する(図2における「フルオロフォアの切断」)。1回目のラウンドで標的核酸に結合した標識を切断したら、概ね、異なる標的核酸サブセット(図2に標的5~8として示されているような標的)を検出する第2の標識群を付加することによって、2回目の検出ラウンドを適用する。1回目のラウンドの標識を標的核酸から切断することによって、1回目のラウンドと同じ検出可能な標識(図2では、フルオロフォアとして示されている)を2回目のラウンドで使用することができる。標的核酸に結合した標識を切断して、新たな標的核酸サブセットを検出するための標識を付加する上記のようなサイクルにより、これまでに説明されてきた方法よりも多くの核酸標的を、同じ試料及び同じ細胞内で検出可能になる。
【0177】
本発明の方法では、I個(I=2、3、4…)の標的を蛍光標識した後、その標識をイメージング及び切断する(図2では、フルオロフォアの切断として示されている)ラウンドを反復的にL回(L=1、2、3…)行うこと(図2では、「N回のサイクル」と示されている)を利用する。反復的な検出方法により、1ラウンドのハイブリダイゼーション及び増幅工程から、L×I個(N個)の別々の標的配列が同時に可視化される。「N」は、検出される標的の総数を示し、上記の「I」は、L回のラウンドの各回における1反復当たりの標的の数を示す。概して、各回の反復標識ラウンドにおける標的数(I)は、2個以上、3個以上、4個以上などから、本明細書で開示されているように、1ラウンドで、識別して標識して、検出できる最大数となる。望ましい場合には、1ラウンドで1個の標的核酸(I=1)を検出できる。いくつかの実施形態では、Iの標的数は、ラウンドごとに異なることができる。例えば、それぞれのラウンドにおけるIが4、4及び1である3回の検出ラウンドでは、合わせて9個の標的が検出されることになる。すなわち、標的数N=sum(i1,i2,i3...iL)であり、式中、i1、i2、i3は、各反復ラウンドで検出される標的数であり、これらの数は、同じであることも異なることもでき、Lは、総ラウンド数である。各ラウンドの数「i」が同じである場合には、N=L×Iである。
【0178】
概して、標的核酸のマルチプレックス検出のために、別個かつ識別可能な標識を用いる場合には、同時に識別できる別個の標識の数には制限がある。例えば、蛍光標識の場合には、複数の標識を同時に検出するには、フルオロフォアからの複数の発光線のスペクトルを分離して、蛍光顕微鏡が、フルオロフォアを同時に識別できるようにしなければならない。フルオロフォアからの発光線のスペクトルを分離する必要性により、同時に可視化できるフルオロフォアの数が制限される。本発明は、逐次的なラウンドで、同じフルオロフォアを使用して、異なる標的核酸を検出できるように、標識を反復的に検出することによって、この制限を解消する。
【0179】
本発明の方法で使用できる検出システムの垂直性が、図3に示されている。図3Aには、本発明の一実施形態が示されており、3つの例示的な標的核酸と、それに対応する垂直方向の検出システム(本発明では、シグナル生成複合体(SGC)とも称する)が示されている。図3Aに示されているように、各標的核酸は、特異的な標的プローブ対(TP1a及びTP1b、TP2a及びTP2b、TP3a及びTP3b)にハイブリダイゼーションし、続いて、それぞれの特異的なプレ増幅剤(PA1、PA2、PA3)にハイブリダイゼーションし、その次に、それぞれの特異的な複数の増幅剤(AMP1、AMP2、AMP3)にハイブリダイゼーションし、その後、それぞれの特異的な複数の標識プローブ(LP1、LP2、LP3)にハイブリダイゼーションする。図3Bには、本発明の別の実施形態が示されており、2つの例示的な標的核酸と、それに対応する垂直方向の検出システムが示されている。図3Bに示されているように、各標的核酸は、特異的な標的プローブ対(TP1a及びTP1b、TP2a及びTP2b)にハイブリダイゼーションし、続いて、それぞれの特異的なプレ-プレ増幅剤(PPA1、PPA2)にハイブリダイゼーションし、その次に、それぞれの特異的な複数のプレ増幅剤(PA1、PA2)にハイブリダイゼーションし、その後、それぞれの特異的な複数の増幅剤(AMP1、AMP2)にハイブリダイゼーションした後、それぞれの特異的な複数の標識プローブ(LP1、LP2)にハイブリダイゼーションする。図3Cには、本発明の別の実施形態が示されており、2つの例示的な標的核酸と、それに対応する垂直方向の検出システムが示されている。図3Cに示されているように、各標的核酸は、特異的な標的プローブ対(TP1a及びTP1b、TP2a及びTP2b)にハイブリダイゼーションし、続いて、それぞれの特異的なプレ-プレ増幅剤対(PPA1a及びPPA1b、PPA2a及びPPA2b)にハイブリダイゼーションし、その次に、両方のプレ-プレ増幅剤が、それぞれの特異的なプレ増幅剤(PA1及びPA2)にハイブリダイゼーションし、その後、それぞれの特異的な増幅剤(AMP1及びAMP2)にハイブリダイゼーションした後、それぞれの特異的な標識プローブ(LP1及びLP2)にハイブリダイゼーションする。簡略化のために、複数の増幅剤が、プレ増幅剤のうちの1つに結合しているように示されているが、増幅剤は、各プレ増幅剤に結合できることが理解される。図3に示されているように、各核酸標的は、特異的な検出システムを有し、そのシステムの成分の結合は、1つの特異的な複合体には結合させるが、他の複合体には結合させない固有の結合部位によって媒介される。SGCの成分が、特異的な標的核酸にハイブリダイゼーションするためのこのような固有の結合部位は、当該技術分野で周知なように、かつ本明細書に記載されているように、所望の特異性が得られるように、結合部位(核酸配列)を設計することによって実現できる。固有の標識を各標的に付加するこの垂直方向の検出システムにより、同じ試料内の複数の標的核酸を検出することが可能になる。
【0180】
したがって、本発明は、標的核酸のさらに高度なマルチプレックス検出を実現するために、複数の核酸標的に固有の標識を付加するとともに、標的核酸サブセットを反復的に検出するのを利用することに関するものである。反復的なラウンドで、標的核酸のマルチプレックス検出を行う本発明の方法の有効性は、実施例に記載されているように、本発明で実証されている。
【0181】
いくつかの実施形態では、各ラウンドで、1つの標的核酸を検出する。このような場合には、試料と、複数の標的核酸に対する複数の標的プローブセットとを接触させるのではなく、試料は、1つの標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブセットと接触させる。
【0182】
本発明は、垂直方向の増幅システムを用いて、標的核酸に固有の標識を付加して、同じ試料内、及びさらには同じ細胞内で、複数の標的核酸を解析できるようにすることに基づくものである。本発明では、特定の標的核酸に特異的であるシグナル生成複合体(SGC)の構築を利用して、各標的核酸を個別に特定できるようにする。一実施形態では、試料は、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を含む標的プローブセットと接触させる。試料は、各標的プローブセットに特異的なプレ増幅剤を含むとともに、それぞれの標的核酸にハイブリダイゼーションする標的プローブ対にハイブリダイゼーションできるプレ増幅剤セットとも接触させる。このような実施形態は、図3Aに概略が示されている。試料は、増幅剤とも接触させ、その増幅剤は、標的核酸に特異的である標的プローブ対に特異的である各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを含む。すなわち、各標的核酸は、標的核酸間の判別を行う、SGCの固有の成分、すなわち、標的プローブ対(複数可)、プレ増幅剤及び増幅剤からなるアセンブリーを有する。追加の実施形態では、プレ-プレ増幅剤が、標的プローブ対及びプレ増幅剤の間の追加の増幅層として、標的プローブ対に結合できる(図3B及び6Bを参照されたい)。
【0183】
別の実施形態では、試料は、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を含む標的プローブセットと接触させる。試料は、各標的プローブセットに特異的なプレ-プレ増幅剤対を含むとともに、それぞれの標的核酸にハイブリダイゼーションする標的プローブ対にハイブリダイゼーションできるプレ-プレ増幅剤セットとも接触させる。このような実施形態は、概略が図3Cに示されている。試料は、標的核酸に特異的である標的プローブ対に特異的である両方のプレ-プレ増幅剤対に特異的に結合できるプレ増幅剤を含むプレ増幅剤セットとも接触させる。試料は、増幅剤とも接触させ、その増幅剤は、標的核酸に特異的である標的プローブ対に特異的であるプレ-プレ増幅剤対に特異的である各プレ増幅剤に特異的な増幅剤サブセットを含む。すなわち、各標的核酸は、標的核酸間の判別を行う、SGCの固有の成分、すなわち、標的プローブ対、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤及び増幅剤からなるアセンブリーを有する。
【0184】
標的核酸を検出するために、標識プローブセットを試料と接触させる。試料と、すべての標的核酸を検出できる標識プローブとを接触させる代わりに、試料は、標的核酸サブセットを検出できる標識プローブセットと接触させる。すなわち、すべての標的核酸を一度に検出するのではなく、反復的な検出ラウンドで、標的核酸を検出する。1ラウンド内では、1回目のラウンドの適用標識プローブと関連付けられたすべての標的核酸を同時に検出できるように、それぞれの標的核酸に特異的な標識プローブは、互いに識別可能なものである。
【0185】
1ラウンドで同時に検出できる標的核酸の数は、標識プローブで用いられる標識の種類と、その標識を識別できる方法によって決まることになる。例えば、蛍光標識を使用する場合には、1ラウンドで用いるフルオロフォアは、識別可能である必要があるので、フルオロフォアの発光線のスペクトルが分離されなければならない。同時に識別できるフルオロフォアの数は、検出システム、ならびに重複する発光線を持つフルオロフォアを識別する目的で使用できるフィルター及び/またはソフトウェアの可用性に応じて、最大10個であり、当該技術分野において周知なように、フルオロフォアを識別できる場合には、スペクトルが分離されるとみなされる。複数の蛍光標識を検出するためのイメージングシステムは、当該技術分野において周知である(例えば、Vectra Polaris,Perkin Elmer,Waltham MA)。
【0186】
一実施形態では、本発明の方法は、1ラウンドにつき1つ以上の標的核酸を検出するのに適用し、例えば、各ラウンドにおいて、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはこれを上回る数の標的核酸を検出する。本明細書で開示されているように、当業者は、試料内で所望の数の標的核酸が検出可能になるように、好適な別個の標識及び好適な検出ラウンド数を選択できる。
【0187】
1回目の検出ラウンドで用いた標識の識別可能な特徴を、以降のラウンドでも利用するために、いくつかの実施形態では、標識プローブ上の標識は、切断可能である。すなわち、標的核酸サブセットを検出する1回目のラウンドを実施したら、標的核酸に結合している標識を切断して、第1の標的核酸サブセットから標識を除去する。標識プローブに対する標識の例示的な切断可能なコンジュゲート体は、本明細書に記載されている。標識が切断されたら、試料と、概して1回目のラウンドで検出した標的核酸とは異なる標的核酸に特異的な第2の標識プローブセットとを接触させることによって、2回目の検出ラウンドを実施する。1回目のラウンドの標識は、その対応する標的核酸から切断されているので、2回目の検出ラウンドの標識プローブでも、同じ識別可能な標識を使用できる。標的核酸サブセットの反復的な検出ラウンドにおいて、同じ標識を使用できるが、以降の検出ラウンドでは、同一ラウンドで用いる標識が識別可能である限りは、同じ標識を使用する必要は必ずしもないことが理解される。
【0188】
標的核酸サブセットを検出する2回目のラウンドを実施したら、任意に、1回以上の追加の切断ラウンド、標識ラウンド及び検出ラウンドを試料に対して適用することができる。例えば、第2の標的核酸サブセットを検出後、第2の標的核酸サブセット上にアセンブルしたSGCから、標識を切断でき、3回目の標識及び検出ラウンドを実施して、第1及び第2の標的核酸サブセットとは異なる第3の標的核酸サブセットを検出できる。標的核酸のこのような反復的な検出ラウンドは、検出の反復を所望の回数行うことを利用して、複数の標的核酸を所望の数、検出する目的で実施することができる。最後の反復的な検出ラウンドでは、標識プローブは、切断可能な標識を含む必要はないことが理解される。さらなる検出ラウンドを実施することはないからである。したがって、最後の反復的な検出ラウンドでは、切断可能な標識を含む標識プローブを使用するのは任意であり、すなわち、標識プローブは、切断可能な標識を含むことも、含まないこともできる。概して、検出ラウンドは、ラウンドごとに異なる標的核酸が検出されるように実施する。しかしながら、いくつかの実施形態では、2回目以降の検出ラウンドは、前のラウンドと重複する標的核酸(複数可)の検出を含むことができることが理解される。ただし、それぞれの逐次的なラウンドで検出される標的核酸サブセットが、互いに異なることを条件とする。別の実施形態では、望ましい場合には、同じ標的核酸に対して、逐次的な検出ラウンドを行うことができる。すなわち、いくつかの実施形態では、1回以上の逐次的なラウンドで、同じ標的核酸または重複する標的核酸を検出できる。このように、逐次的なラウンドで、同じ標的核酸または重複する標的核酸を検出するのを利用して、各ラウンドで、所定の色配列で、同じ標的核酸が検出された時に、各標的核酸に対して一過性のバーコードを生成できる。このような方法は以前に、例えば、逐次的バーコード蛍光in situハイブリダイゼーション(seqFISH)として説明されている(Shah et al.,Neuron 92(2):342-357(2016)を参照されたい)。
【0189】
本発明の方法は、標的核酸のマルチプレックス検出に適用する。本明細書で開示されているように、本発明の方法は、標的核酸サブセットの反復的な検出ラウンドで実施する。また、本明細書で開示されているように、1ラウンドで検出できる標的核酸の数は、使用する標識プローブの種類と、同時に検出する際に、それぞれ異なる標的核酸に特異的な標識プローブを識別する能力によって決まる。反復的な検出ラウンドによって、さらに高レベルのマルチプレックスが実現する。例えば、図2に示されている例示的な実施形態では、1回の標識及び検出ラウンドにより、4個の標的核酸が検出され、2回目の標識及び検出ラウンドにより、8個の標的核酸が検出され、3回目の標識及び検出ラウンドにより、12個の標的核酸が検出される。当業者は、本発明のアッセイで検出する標的核酸の望ましい数を容易に判定できる。いくつかの実施形態では、本発明の方法において、2回の標識及び検出ラウンドを使用する。いくつかの実施形態では、3回の標識及び検出ラウンドを使用する。いくつかの実施形態では、各標的核酸に固有の標識を付加して、各標的核酸を検出する十分な数のSGCを利用可能であるとともに、そのSGCが、標的核酸を検出するためのアッセイ条件下の間、標的核酸に十分に結合した状態である限りは、4回、5回、6回、7回、8回、9回もしくは10回、またはこれを上回る回数の標識及び検出ラウンドを使用できる。当業者は、本発明の方法で適用できる標識及び検出ラウンドの回数を容易に判定でき、その際には、ラウンドごとに、標的核酸を検出できる。
【0190】
2回目以降の検出ラウンドを試料に適用するので、2回目以降に得られた、標的核酸の検出結果を、その前に検出されたラウンド(複数可)の標的核酸検出結果にレジストレーションでき、同じ試料内、及びさらには同じ細胞内で、検出されたすべての標的核酸の発現を割り出すことができる(図2を参照されたい)。標的核酸の検出ラウンドの結果のレジストレーションは、それぞれ異なるラウンドで検出された標的核酸の画像を重ね合わせる画像解析ソフトウェアを用いて行うことができる。複数の画像の位置合わせと重ね合わせを行うための上記のようなレジストレーションアルゴリズムは、当該技術分野において周知であり、例えば、Scale-Invariant Feature Transform(SIFT)というアルゴリズム(Lowe“Distinctive Image Features from Scale-Invariant Keypoints”,Internat.J.Computer Vision 60(2):91-110(2004))である。本質的に、これらのアルゴリズムでは、入力画像と参照画像を比較して、移動及び回転に対応するための変換マトリックスを生成する。ツールは例えば、このタスクを自動で実施できるImageJに存在する(imagej.net/Registration)(Schneider et al.,Nature Methods 9(7):671-675(2012)、Schindelin et al.,Mol.Reprod.Dev.82(7-8):518-529(2015))。
【0191】
異なる標的核酸に対する異なる標的プローブセットを含む以外は同じSGCアセンブリーを用いることによって、追加のマルチプレックスを行うことができる。このような場合には、標的核酸サブセットを標識する反復的なラウンドで、SGC複合体を有する最初の標的核酸セットを検出後、そのSGCの標的核酸へのハイブリダイゼーションを変性させるのに適切な条件を用いて、そのSGC複合体をその標的核酸から除去できる。SGC複合体を試料から除去したら、同じプレ増幅剤/増幅剤/標識プローブ、または同じプレ-プレ増幅剤/プレ増幅剤/増幅剤/標識プローブを、1回目のSGC検出ラウンドで検出した標的核酸セットとは異なる標的核酸セットに特異的となるように設計した標的プローブセットとともに使用できる。この方法で、追加の標的核酸の検出を行うことができる。
【0192】
さらに別の実施形態では、本発明の方法は、2本鎖核酸及び1本鎖核酸の同時検出、例えば、同じ試料内のDNA及びRNAの検出に適用できる。このような場合には、プローブは、RNAのような1本鎖核酸を検出するように(例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号及び同第2017/0101672号を参照されたい)、かつ2本鎖核酸を検出するように設計して、同じ試料内で、2本鎖核酸及び1本鎖核酸の両方(DNA及びRNAなど)を検出できるようにできる。
【0193】
本発明のいくつかの実施形態では、標的核酸に特異的である各標的プローブセットは、同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションする標的プローブ対を2対以上含む。このような場合には、標的核酸に特異的な標的プローブセットにおける標的プローブ対は、標的核酸のうちの異なる非重複配列に結合する。同じ標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションできる標的プローブ対を2対以上有する標的プローブセットを使用する場合には、それらの標的プローブ対に結合する分子、すなわち、プレ増幅剤(図1、3A及び6Aを参照されたい)またはプレ-プレ増幅剤(図3B、3C、6B及び6Cを参照されたい)のいずれかは、同じ標的プローブセットにおける標的プローブ対において、概ね同じである(図1を参照されたい。図1には、同じプレ-プレ増幅剤が、同じ標的に対する複数の標的プローブ対に結合しているのが示されている)。すなわち、同じ標的核酸に結合する標的プローブ対は、それらの標的プローブ対に結合する、SGCにおける上記分子、すなわち、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤に対する同じ結合部位を含むように設計できる。このような実施形態は、図1に例示されており、図1には、それぞれの標的核酸に、4対の標的プローブ対が結合しているのが概略的に示されているとともに、標的核酸に結合している5対目以降が示されている(「…」によって表されている)。標的核酸を検出するために、複数の標的プローブ対を使用することにより、同じ標的核酸上で、複数のSGCからなるアセンブリーと関連付けられたさらに高度なシグナルが得られる。いくつかの実施形態では、同じ標的核酸に結合させるのに使用する標的プローブ対の数は、1つの標的当たり1~10対、1~20対、1~30対、1~40対、1~50対、1~60対、1~70対、1~80対、1~90対、1~100対、1~110対、1~120対、1~130対、1~140対、1~150対、1~160対、1~170対、1~180対、1~190対、1~200対の範囲もしくはこれを上回る数の対であるか、またはこれらの間のいずれかの整数分の対、例えば、1対、2対、3対、4対、5対、6対、7対、8対、9対、10対、11対、12対、13対、14対、15対、16対、17対、18対、19対、20対、21対、22対、23対、24対、25対、26対、27対、28対、29対、30対、31対、32対、33対、34対、35対、36対、37対、38対、39対、40対、41対、42対、43対、44対、45対、46対、47対、48対、49対、50対、51対、52対、53対、54対、55対、56対、57対、58対、59対、60対、61対、62対、63対、64対、65対、66対、67対、68対、69対、70対、71対、72対、73対、74対、75対、76対、77対、78対、79対、80対、81対、82対、83対、84対、85対、86対、87対、88対、89対、90対、91対、92対、93対、94対、95対、96対、97対、98対、99対、100対、101対、102対、103対、104対、105対、106対、107対、108対、109対、110対、111対、112対、113対、114対、115対、116対、117対、118対、119対、120対、121対、122対、123対、124対、125対、126対、127対、128対、129対、130対、131対、132対、133対、134対、135対、136対、137対、138対、139対、140対、141対、142対、143対、144対、145対、146対、147対、148対、149対、150対、151対、152対、153対、154対、155対、156対、157対、158対、159対、160対、161対、162対、163対、164対、165対、166対、167対、168対、169対、170対、171対、172対、173対、174対、175対、176対、177対、178対、179対、180対、181対、182対、183対、184対、185対、186対、187対、188対、189対、190対、191対、192対、193対、194対、195対、196対、197対、198対、199対、200対などである。
【0194】
本発明の方法を用いて、所望の標的核酸の検出を実現できる。一実施形態では、複数の標的プローブ対によって標的核酸を検出する。このような場合には、複数のSGCからなるアセンブリーが、標的核酸上に得られるように、標的プローブ対は、2つ以上の標的核酸領域に結合するように設計する。複数の標的プローブ対を用いて、同じ標的核酸に結合する場合には、ある1つの標的プローブ対の標的結合部位は、別の標的プローブ対の標的結合部位と重複しないことが理解される。
【0195】
本発明の実施形態では、本発明の方法によって検出する標的核酸は、細胞試料に存在するいずれかの核酸であることができ、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA、ノンコーディングRNAなどを含むRNA、またはDNAなどが挙げられるが、これらに限らない。特定の実施形態では、その核酸は、RNAである。核酸のマルチプレックス検出のための本発明の方法では、標的核酸は独立して、DNAまたはRNAであることができることが理解される。換言すると、検出対象の標的核酸は、同じ種類の核酸であることができるが、それは必須ではない。すなわち、本発明のアッセイにおける検出対象の標的核酸は、DNA及びRNAであることができる。標的核酸がRNAである場合には、標的核酸は独立して、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ミトコンドリアRNA及びノンコーディングRNAからなる群から選択できることが理解される。すなわち、標的核酸は独立して、DNA、またはいずれかの種類のRNAであることができる。
【0196】
本明細書に記載されているように、本発明の方法は概して、標的核酸のin situ検出に関するものである。核酸のin situ検出法は、当業者には周知である(例えば、US2008/0038725、US2009/0081688、Hicks et al.,J.Mol.Histol.35:595-601(2004)を参照されたい)。本明細書で使用する場合、「in situハイブリダイゼーション」または「ISH」とは、直接または間接的に標識した相補的なDNA鎖またはRNA鎖(プローブなど)を用いて、試料、具体的には、組織または細胞の一部または切片(in situ)における所定の核酸(DNAまたはRNAなど)に結合して、その核酸の位置を特定するタイプのハイブリダイゼーションを指す。そのプローブの種類は、2本鎖DNA(dsDNA)、1本鎖DNA(ssDNA)、1本鎖相補的RNA(sscRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA、ミトコンドリアRNA及び/または合成オリゴヌクレオチドであることができる。「蛍光in situハイブリダイゼーション」または「FISH」という用語は、蛍光標識を利用するタイプのISHを指す。「発色in situハイブリダイゼーション」または「CISH」という用語は、発色標識を用いるタイプのISHを指す。ISH、FISH及びCISHの方法は、当業者には周知である(例えば、Stoler,Clinics in Laboratory Medicine 10(1):215-236(1990);In situ hybridization.A practical approach,Wilkinson,ed.,IRL Press,Oxford(1992)、Schwarzacher and Heslop-Harrison,Practical in situ hybridization,BIOS Scientific Publishers Ltd,Oxford(2000)を参照されたい)。
【0197】
細胞内の核酸標的のin situ検出のための本発明の方法(in situハイブリダイゼーションまたはフローサイトメトリーが挙げられるが、これらに限らない)では、標的プローブをハイブリダイゼーションさせる前に、細胞を任意に固定及び/または浸透化する。細胞を固定及び浸透化することで、核酸標的が細胞内に留まるように促すとともに、標的プローブ、標識プローブ、増幅剤、プレ増幅剤、プレ-プレ増幅剤などが細胞内に入って、標的核酸分子に到達するようにできる。その細胞を任意に洗浄して、核酸標的にキャプチャーされなかった物質を除去する。様々な工程のうちのいずれの後も、例えば、未結合の標的プローブを除去するために、標的プローブを核酸標的にハイブリダイゼーションさせた後や、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤及び/または標識プローブを標的プローブにハイブリダイゼーションさせた後などに、細胞を洗浄することができる。核酸のin situ検出のために、細胞を固定及び浸透化する方法、ならびに標的核酸をハイブリダイゼーション、洗浄及び検出する方法も、当該技術分野において周知である(例えば、US2008/0038725、US2009/0081688、Hicks et al.,J.Mol.Histol.35:595-601(2004)、Stoler,Clinics in Laboratory Medicine 10(1):215-236(1990)、In situ hybridization.A practical approach,Wilkinson,ed.,IRL Press,Oxford(1992)、Schwarzacher and Heslop-Harrison,Practical in situ hybridization,BIOS Scientific Publishers Ltd,Oxford(2000)、Shapiro,Practical Flow Cytometry 3rd ed.,Wiley-Liss,New York(1995)、Ormerod,Flow Cytometry,2nd ed.,Springer(1999)を参照されたい)。例示的な固定剤としては、アルデヒド(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなど)、アセトン、アルコール(メタノール、エタノールなど)が挙げられるが、これらに限らない。例示的な浸透化剤としては、アルコール(メタノール、エタノールなど)、酸(氷酢酸など)、洗浄剤(Triton、NP-40、Tween(商標)20など)、サポニン、ジギトニン、Leucoperm(商標)(BioRad,Hercules,CA)、ならびに酵素(例えば、リゾチーム、リパーゼ、プロテアーゼ及びペプチダーゼ)が挙げられるが、これらに限らない。浸透化は、組織薄切片におけるように、機械的破砕によって行うこともできる。
【0198】
2本鎖核酸のin situ検出の際には、概して、試料を処理して、試料中の2本鎖核酸を変性させ、標的プローブを到達可能にして、標的プローブが、ハイブリダイゼーションによって、標的2本鎖核酸のうちの1本の鎖に結合するようにする。2本鎖核酸を変性させる条件は、当該技術分野において周知であり、熱及び化学物質、例えば、塩基(NaOH)、ホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどによる変性が挙げられる(Wang et al.,Environ.Health Toxicol.29:e2014007(doi:10.5620/eht.2014.29.e2014007)2014、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)を参照されたい)。例えば、NaOH、LiOHもしくはKOH、またはその他の高pH緩衝剤(pH11超)を用いて、DNAのような2本鎖核酸を変性させることができる。加えて、熱による変性方法と、化学物質による変性方法を併用することができる。
【0199】
このようなin situ検出法は、ガラススライドに固定化した組織標本、血液試料から単離した末梢血単核細胞(PBMC)のような懸濁状のシングルセルなどに対して用いることができる。組織標本としては例えば、組織生検試料が挙げられる。血液試料としては例えば、診断目的で採取した血液試料が挙げられる。血液試料の場合、血液塗抹標本におけるように、血液を直接解析でき、あるいは、血液を処理して、例えば、赤血球細胞の溶解、PBMCまたは白血球の単離、標的細胞の単離などを行って、試料中の細胞のうち、本発明の方法によって解析する細胞が、血液試料中に存在するように、または血液試料から抽出されるようにできる。同様に、組織検体の処理を行うことができ、例えば、組織検体を細かく切断し、物理的または酵素的に処理して、組織を破壊して、個々の細胞または細胞クラスターの状態にすることができる。加えて、望ましい場合には、細胞学的試料を処理して、細胞を単離するか、または細胞クラスターを破壊することができる。したがって、当該技術分野において周知の方法を用いて、組織、血液及び細胞学的試料を入手及び処理することができる。本発明の方法は、病態を示すバイオマーカーである核酸標的の有無に基づき、病的細胞の有無を確認する診断用途で用いることができる。
【0200】
本発明の方法を用いて標的核酸を検出する際には、いずれかの数の好適な試料を使用できることが、当業者には理解される。本発明の方法で用いる試料は概して、生体試料または組織試料となる。このような試料は、生体対象から得ることができ、個体または何らかの他の生体物質源(生検体、剖検体または鑑定物質など)から採取される生体組織または体液由来の試料が挙げられる。生体試料には、前がん細胞、がん細胞、前がん組織もしくはがん組織を含むか、またはその細胞もしくは組織を含む疑いのある、生体対象の領域から得た試料、例えば組織生検体(細針吸引物、血液試料または細胞学的検体が挙げられる)も含まれる。このような試料は、哺乳動物のような生物から単離した器官、組織、組織断片及び/または細胞であることができるが、これらに限らない。例示的な生体試料としては、細胞培養物(初代細胞培養物を含む)、細胞株、組織、器官、細胞小器官、生体液などが挙げられるが、これらに限らない。追加の生体試料としては、皮膚試料、組織生検体(細針吸引物を含む)、細胞学的試料、便、体液(血液及び/または血清の試料、唾液、精液を含む)などが挙げられるが、これらに限らない。このような試料は、医学または獣医学における診断目的で用いることができる。試料は、他の供給源、例えば、食物、土壌、物体表面など、及び標的核酸の検出が望まれるその他の物質から得ることができる。したがって、本発明の方法は、個体またはその他の供給源から採取した生体試料から、1つ以上の病原体(ウイルス、細菌、真菌、寄生虫のような単細胞生物など)を検出するのに用いることができる。
【0201】
本発明の方法による解析用の細胞学的試料を採取することは、当該技術分野において周知である(例えば、Dey,“Cytology Sample Procurement,Fixation and Processing”in Basic and Advanced Laboratory Techniques in Histopathology and Cytology pp.121-132,Springer,Singapore(2018)、“Non-Gynocological Cytology Practice Guideline”American Society of Cytopathology,Adopted by the ASC executive board March 2,2004を参照されたい)。子宮頸部組織の解析用に、試料(組織生検体及び細胞学的試料を含む)を処理する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Cecil Textbook of Medicine,Bennett and Plum,eds.,20th ed.,WB Saunders,Philadelphia(1996)、Colposcopy and Treatment of Cervical Intraepithelial Neoplasia:A Beginner’s Manual,Sellors and Sankaranarayanan,eds.,International Agency for Research on Cancer,Lyon,France(2003)、Kalaf and Cooper,J.Clin.Pathol.60:449-455(2007)、Brown and Trimble,Best Pract.Res.Clin.Obstet.Gynaecol.26:233-242(2012)、Waxman et al.,Obstet.Gynecol.120:1465-1471(2012)、Cervical Cytology Practice Guidelines TOC,Approved by the American Society of Cytopathology(ASC)Executive Board,November10,2000を参照されたい)。一実施形態では、細胞学的試料は、子宮頸部試料、例えばパップスメアである。一実施形態では、その試料は、細針吸引物である。
【0202】
本発明の特定の実施形態では、試料は、組織検体であるか、または組織検体から抽出したものである。本発明の別の特定の実施形態では、試料は、血液試料であるか、または血液試料から抽出したものである。本発明のさらに別の特定の実施形態では、試料は、細胞学的試料であるか、または細胞学的試料から抽出したものである。
【0203】
本発明は、標的核酸を検出可能な標識で標識するために、標的核酸との間で複合体を構築することに基づくものである。このような複合体は、シグナル生成複合体(SGC、例えばUS20170101672を参照されたい)と称する場合がある。このような複合体、すなわちSGCは、多数の標識を標的核酸に結合させる分子の層を構築することによって実現する。
【0204】
本発明の方法では、シグナル生成複合体(SGC)を利用でき、そのSGCは、1つの分子ではなく、複数の分子を含む。このようなSGCは、検出可能なシグナルを増幅して、標的核酸のさらに高感度な検出を行うのに特に有用である。シグナルを増幅するためのこのような方法は例えば、米国特許第5,635,352号、同第5,124,246号、同第5,710,264号、同第5,849,481号及び同第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、ならびにWO2007/001986及びWO2012/054795に記載されており、これらの各々は、参照により、本明細書に援用される。SGCの生成は、RNAscope(商標)アッセイの原理である(米国特許第7,709,198号、同第8,658,361号及び同第9,315,854号、米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号及び同第2016/0201117号、ならびにWO2007/001986及びWO2012/054795(これらの各々は、参照により、本明細書に援用される)を参照されたい)。
【0205】
基本的なシグナル生成複合体(SGC)は、図6Aに示されている(US2009/0081688(参照により、本明細書に援用される)も参照されたい)。図6に「Z」の対として示されている標的プローブ対は、「標的」と表示されている相補的な分子配列にハイブリダイゼーションする。各標的プローブは、プレ増幅剤分子(PA)と相補的な追加の配列を含み、このPAは、安定して結合するためには、標的プローブ対の両方のメンバーに同時にハイブリダイゼーションしなければならない。プレ増幅剤分子は、各標的プローブにハイブリダイゼーションする領域を有する1つのドメインと、増幅剤分子(Amp)上の配列とそれぞれ相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメインという2つのドメインから構成される。この配列において複数のリピートが存在することで、1つのプレ増幅剤に複数の増幅剤分子がハイブリダイゼーション可能になり、それにより、全体のシグナル増幅が増大する。各増幅剤分子は、プレ増幅剤にハイブリダイゼーションする領域を有する1つのドメインと、標識プローブ(LP)上の配列とそれぞれ相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメインという2つのドメインから構成され、このことにより、複数の標識プローブが各増幅剤分子にハイブリダイゼーション可能になり、それにより、全体のシグナル増幅がさらに増大する。各標識プローブは、2つの成分を含む。1つの成分は、標識プローブをハイブリダイゼーションさせるように、増幅剤分子上のリピート配列と相補的なヌクレオチド配列から構成される。このヌクレオチド配列は、第2の成分に連結されており、この第2の成分は、いずれのシグナル生成物であることもでき、そのシグナル生成物としては、本明細書に記載されているように、直接可視化するための蛍光標識もしくは発色標識、直接検出可能な金属同位体、または蛍光、発色もしくはその他の検出可能なシグナルを生成する化学反応を促進できる酵素もしくはその他の化学物質が挙げられる。図6Aでは、標識プローブは、核酸成分を表す線と、シグナル生成成分を表す星印として描かれている。総称して、標的プローブから標識プローブまでのアセンブリーをシグナル生成複合体(SGC)という。
【0206】
図6Bには、増幅分子層、このケースでは、プレ-プレ増幅剤分子(PPA)を加えることによって増強されたSGCが示されている。PPAは、一方のドメインでは、両方の標的プローブに結合し、もう一方のドメインでは、複数のプレ増幅剤(PA)に結合する。
【0207】
図6Cには、プレ増幅剤レベルで連携的ハイブリダイゼーションを利用する異なるSGC構造が示されている(US2017/0101672(参照により、本明細書に援用される)を参照されたい)。図6A及び6Bで形成されるSGCと同様に、標的プローブ対は、標的分子配列にハイブリダイゼーションする。各標的プローブは、固有のプレ-プレ増幅剤分子(PPA-1、PPA-2)と相補的な追加の配列を含む。2つの独立した分子を使用することで、連携的ハイブリダイゼーションを必要にできる土台が確立される。各プレ-プレ増幅剤分子は、標的プローブのうちの1つにハイブリダイゼーションする領域を有する1つのドメインと、プレ増幅剤分子(PA)内の配列と相補的な配列を両方がそれぞれ含む1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメイン配列という2つのドメイン、ならびにPPAとPAの結合効率を促進するスペーサー配列から構成される。成長していくSGCに安定して結合するように、各PAは、両方のPPA分子に同時にハイブリダイゼーションしなければならない。各プレ増幅剤分子は、ハイブリダイゼーションできるように、両方のプレ-プレ増幅剤と相補的な配列を含む1つのドメインと、増幅剤分子(AMP)上の配列とそれぞれ相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含む1つのドメインという2つのドメインから構成される。増幅剤ハイブリダイゼーション配列の複数のリピートにより、複数の増幅剤分子が各プレ増幅剤にハイブリダイゼーション可能になり、それにより、シグナルの増幅がさらに増大する。図の簡略化のために、増幅剤分子は、1つのプレ増幅剤分子にハイブリダイゼーションするように示されているが、増幅剤が、各プレ増幅剤に結合できることが理解される。各増幅剤分子は、標識プローブ(LP)内の配列と相補的な1連のヌクレオチド配列リピートを含み、これにより、数個の標識プローブが、各増幅剤分子にハイブリダイゼーション可能になる。各標識プローブは、シグナルを検出させるためのシグナル生成エレメントを含む。
【0208】
上記のように、図3A、3B、6Aもしくは6Bに示されている構成、または図3C及び6Cに示されている構成を用いるかにかかわらず、SGCを構築するには、両方の標的プローブの結合が必要となるように、SGCの成分を設計する。図3A、3B、6Aまたは6Bの構成の場合には、プレ増幅剤(または図3B及び6Bのプレ-プレ増幅剤)は、安定な結合を実現させるには、標的プローブ対のメンバーの両方に結合しなければならない。このことは、標的プローブの両方とプレ増幅剤(またはプレ-プレ増幅剤)との結合の融解温度(Tm)が、1つの標的プローブとプレ増幅剤(またはプレ-プレ増幅剤)との結合のTmよりも高くなるように、かつ1つの標的プローブが結合している状態が、アッセイ条件下では不安定になるように、標的プローブとプレ増幅剤(またはプレ-プレ増幅剤)との結合部位を設計することによって実現する。このデザインは例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、WO2007/001986、WO2007/002006、Wangらによる上記の2012年の文献、Andersonらによる上記の2016年の文献で以前に説明されている。SGCの成分をこの方法で構成させることによって、両方の標的プローブが標的核酸及びプレ増幅剤に結合すると、SGCのアセンブルが行われ、それによって、SGCが偽陽性としてアセンブルされるのが最小限に抑えられることに起因して、バックグラウンドノイズが軽減される。
【0209】
図3C及び6Cの構成の場合には、それぞれ標的プローブ対の両方のメンバーに逐次に結合しているプレ-プレ増幅剤の両方にプレ増幅剤が結合することを必要とすることによって、標的プローブ対のメンバーの両方が標的核酸に結合した場合のみに、SGCが形成されなければならないという要件が実現する。両方のプレ-プレ増幅剤とプレ増幅剤との結合の融解温度(Tm)が、いずれかのプレ-プレ増幅剤単独の融解温度よりも高くなるように、かつプレ-プレ増幅剤のうちの1つがプレ増幅剤に結合している状態が、アッセイ条件下では不安定になるように、プレ-プレ増幅剤とプレ増幅剤との結合部位を設計することによって、上記の要件が実現する。このデザインは、例えば、US20170101672、WO2017/066211及びBakerらによる上記の2017年の文献で以前に説明されている。プレ増幅剤が、両方のプレ-プレ増幅剤に結合しない限り、増幅剤及び標識プローブは、標的核酸に結合したSGCにアセンブルできず、それによって、SGCが偽陽性としてアセンブルされるのが最小限に抑えられることに起因して、バックグラウンドノイズが軽減される。
【0210】
本明細書で開示されているように、本発明の方法は、細胞内の標的核酸の存在を検出するために、標的核酸に結合したシグナル生成複合体(SGC)を構築することに基づくことができる。核酸のハイブリダイゼーション反応を利用して、SGCの成分を標的核酸に結合させるように、SGCを構築するための成分は概して、核酸を含む。適切な領域を選択して、標的核酸に結合する特異的かつ選択的な試薬、具体的には、標的核酸に特異的かつ選択的に結合するオリゴヌクレオチドまたはプローブ、またはSGCの他の成分を設計する方法は、当業者には周知である(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(2001)、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)を参照されたい)。標的プローブは、標的核酸に特異的にハイブリダイゼーションするように設計する。適切な選択の標的核酸領域、及び適切な長さの結合剤(オリゴヌクレオチドまたはプローブなど)を用いて、所望の特異性を実現でき、このような選択方法は、当業者には周知である。当業者は、1つの特異的な標的核酸を、別の標的核酸もしくは非標的核酸よりも高度に標的化したり、SGCの成分に結合させたりするのに使用できる適切な試薬(オリゴヌクレオチドまたはプローブなど)を容易に把握するとともに、容易に判定できる。すなわち、「特異的にハイブリダイゼーションする」、「特異的に標識する」及び「特異的に結合する」(またはこれらの文法的な変形状態)とは、標的核酸にハイブリダイゼーション、標識または結合するが、非標的核酸、例えば、標的化の対象となるのが望ましくない別の標的核酸または核酸にはハイブリダイゼーション、標識または結合しないことを指すことが理解される。標的特異的SGCの所定の成分(例えば、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)が、それぞれの成分に結合して、その標的特異的SGCが、特異的標的には結合し、別の標的核酸には結合しないように、適切な選択の固有配列を用いることによって、標的特異的SGCにおいて、同様の特異性を実現できる(図3を参照されたい)。
【0211】
本明細書に記載されているように、本発明の実施形態は、標的プローブ対の使用を含む。標的プローブ対が、同じプレ増幅剤(図3A及び6A)またはプレ-プレ増幅剤(図3B及び6B)に結合する場合には、「Z型」構成と称する場合があるプローブ構成を使用できる。感度を上昇させ、バックグラウンドを軽減するためのこのような構成及びその利点は例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、ならびにWO2007/001986及びWO2007/002006で説明されており、これらの各々は、参照により、本明細書に援用される。米国特許第7,709,198号、ならびに米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号には、加えて、標的プローブ対のような標的プローブの特徴(長さ、配向、ハイブリダイゼーション条件などを含む)の選択に関する詳細が記載されている。当業者は、本明細書、ならびに例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号、同第2009/0081688号、WO2007/001986及びWO2007/002006の教示に基づき、好適な構成を容易に特定できる。
【0212】
本明細書に記載されているように、標的プローブ対における標的プローブの標的結合部位は、いずれかの所望の配向及び組み合わせであることができる。例えば、標的プローブ対のメンバーの1つの標的結合部位は、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤の結合部位の5’または3’側であることができ、標的プローブ対のもう一方のメンバーは独立して、プレ増幅剤またはプレ-プレ増幅剤の結合部位の5’または3’側に標的結合部位を有する配向にできる。
【0213】
別の実施形態では、標的核酸の存在を検出するのに用いるSGCは、SGCの1つ以上の成分が連携的にハイブリダイゼーションすることに基づくものである(US20170101672及びWO2017/066211(それぞれ、参照により本明細書に援用される)を参照されたい)。このような連携的ハイブリダイゼーションは、本明細書ではBaseScope(商標)ともいう。連携的ハイブリダイゼーションの作用では、SGCの2成分間の結合は、2つの結合部位によって媒介され、その2つの部位が同時に結合した場合の融解温度は、1つの部位が単独で結合した場合の融解温度よりも高い(US20170101672及びWO2017/066211を参照されたい)。連携的ハイブリダイゼーションの作用は、US20170101672及びWO2017/066211に記載されているような標的プローブセット構成によって増強できる。
【0214】
本発明の方法及び関連する組成物では、連携的ハイブリダイゼーションを用いて、核酸標的のin situ検出(複雑な生理化学的環境及び圧倒的な数の非標的分子の存在により、ノイズが高くなり得る)において、特異性を向上させるとともに、バックグラウンドを軽減することができる。このような連携的ハイブリダイゼーション法を用いて、SGCが標的核酸に結合した場合のみに、標識プローブを結合させる。US20170101672及びWO2017/066211に記載され、その図1に図示されているように、この方法は、SGCの1つ以上の成分における連携的ハイブリダイゼーションの回数を増やすことによって、所望のシグナルノイズ比となるように容易に修正できる。
【0215】
別の実施形態では、連携的ハイブリダイゼーションは、SGCの様々な成分に適用できる。例えば、SGCの成分間の結合は、本明細書に記載されているように、安定な反応にでき、あるいは、その結合は、これも本明細書に記載されているように、連携的ハイブリダイゼーションを必要とする構成にできる。このような場合には、連携的ハイブリダイゼーションが想定される結合成分は、別の成分に結合する2つのセグメントを含むように設計する。
【0216】
すなわち、標的核酸を検出する方法では、標的核酸に特異的に結合するSGCをもたらす検出システムにおける成分のいずれか1つまたは全部の結合反応に、連携的ハイブリダイゼーションを用いることができる。いくつの成分かつどの成分に連携的ハイブリダイゼーションを適用するかは、所望のアッセイ条件、アッセイする試料の種類、所望のアッセイ感度などに基づいて選択できる。連携的ハイブリダイゼーション結合反応のいずれか1つまたはそれらを組み合わせたものを使用して、アッセイの感度及び特異性を向上できる。本発明の実施形態では、連携的ハイブリダイゼーションは、プレ-プレ増幅剤及びプレ増幅剤の間、プレ増幅剤及び増幅剤の間、増幅剤及び標識プローブの間、またはこれらの組み合わせであることができる(例えば、US20170101672及びWO2017/066211を参照されたい)。
【0217】
本明細書で開示されているように、これらの成分は概して、互いに直接結合する。核酸を含む成分の場合、結合反応は概して、ハイブリダイゼーションによるものである。ハイブリダイゼーション反応の場合には、成分間の結合は、直接的な結合である。望ましい場合には、ある1つの成分と別の成分との結合が間接的な結合になるように、中間成分を含めることができ、例えば、中間成分は、2つの他の成分を架橋するための相補的な結合部位を含む。
【0218】
本明細書に記載されているように、各種成分の構成は、所望の安定的または連携的ハイブリダイゼーション結合反応をもたらすように選択できる(例えばUS20170101672を参照されたい)。本明細書において、結合反応が安定な反応として例示されていても、または連携的ハイブリダイゼーションにおけるように、不安定な反応として例示されていても、そのいずれの結合反応も、標的核酸が検出される限りは、所望に応じて改変できることが理解される。さらに、使用するアッセイ条件及びハイブリダイゼーション条件に応じて、構成を変更及び選択できることが理解される。概して、結合反応が安定的であることが望ましい場合には、上記成分間の相補的な核酸配列のセグメントは概して、10~50ヌクレオチド以上、例えば16~30ヌクレオチドの範囲(10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、20ヌクレオチド、21ヌクレオチド、22ヌクレオチド、23ヌクレオチド、24ヌクレオチド、25ヌクレオチド、26ヌクレオチド、27ヌクレオチド、28ヌクレオチド、29ヌクレオチド、30ヌクレオチド、31ヌクレオチド、32ヌクレオチド、33ヌクレオチド、34ヌクレオチド、35ヌクレオチド、36ヌクレオチド、37ヌクレオチド、38ヌクレオチド、39ヌクレオチド、40ヌクレオチド、41ヌクレオチド、42ヌクレオチド、43ヌクレオチド、44ヌクレオチド、45ヌクレオチド、46ヌクレオチド、47ヌクレオチド、48ヌクレオチド、49ヌクレオチドまたは50ヌクレオチド以上など)である。連携的ハイブリダイゼーション結合反応を用いる場合のように、結合反応が、比較的不安定であることが望ましい場合には、上記成分間の相補的な核酸配列のセグメントは概して、5~18ヌクレオチドの範囲(例えば、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチドまたは18ヌクレオチドなど)である。このヌクレオチド長は、安定または不安定なハイブリダイゼーションのためには、アッセイで用いる配列(例えばGC含有率)及び条件に応じて、上記よりも若干短いことも長いことも可能であることが理解される。さらに、本明細書で開示されているように、ロックト核酸(LNA)または架橋型核酸(BNA)のような修飾ヌクレオチドを用いて、修飾塩基において結合強度を向上させることによって、結合セグメントの長さを短縮させることができるのが理解される。すなわち、他の核酸セグメントと相補的である核酸セグメントの長さについては、望ましい場合には、本明細書に記載されている長さをさらに短縮できることが理解される。当業者は、核酸成分間の相互作用が所望のものとなるように、長さ、修飾ヌクレオチドの存在などを含む適切なプローブデザインを容易に判断できる。
【0219】
相補的な配列を含む2つの核酸配列間の結合部位を設計する際には、その相補的な配列は任意に、融解温度差(dT)が最大になるように設計できる。この設計は、当該技術分野において知られている融解温度算出アルゴリズムを用いることによって行うことができる(例えば、SantaLucia,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:1460-1465(1998)を参照されたい)。加えて、ロックト核酸(LNA)または架橋型核酸(BNA)のような人工的な修飾塩基、及び天然の2’-O-メチルRNAは、相補対間の結合強度を高めることが知られている(Petersen and Wengel,Trends Biotechnol.21:74-81(2003)、Majlessi et al.,Nucl.Acids Res.26:2224-2229(1998))。これらの修飾塩基は戦略的に、所望に応じて、SGC成分間の結合部位に導入できる。
【0220】
アプローチの1つは、修飾ヌクレオチド(LNA、BNAまたは2’-O-メチルRNA)を用いることである。各修飾塩基は、融解温度を上昇させることができるので、2つの核酸配列(すなわち、相補的な配列)間の結合領域の長さを実質的に短縮できる。修飾塩基とその相補体との結合強度は強くなり、融解温度差(dT)は大きくなる。さらに別の実施形態は、例えば、ハイブリダイゼーションすることになるシグナル生成複合体(SGC)の核酸成分の相補的な配列内、または2つの核酸成分間で、3つの修飾塩基(例えば、3つのLNA、BNAもしくは2’-O-メチルRNA塩基、または2つもしくは3つの異なる修飾塩基を組み合わせたもの)を用いることである。このような成分は例えば、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブまたは標的プローブ対であることができる。
【0221】
LNAまたはBNAのような修飾塩基は、SGCの所定成分のセグメント、具体的には、核酸成分間の結合を媒介するセグメントで用いることができ、それにより、その塩基と、その相補的塩基との結合強度を向上して、その相補的なセグメントの長さを短縮可能にする(例えば、Petersen and Wengel,Trends Biotechnol.21:74-81(2003)、米国特許第7,399,845号を参照されたい)。Artificially Expanded Genetic Information System(AEGIS、Yang et al.,Nucl.Acids Res.34(21):6095-6101(2006))のように、天然の4つのアルファベットの塩基を拡張させる人工塩基を、SGCの相互作用成分の中の結合部位に組み込むことができる。これらの人工塩基は、この相互作用成分の特異性を向上でき、ひいては、より低ストリンジェントなハイブリダイゼーション反応を可能にして、より高度なシグナルを生成できる。
【0222】
標的プローブ対に関しては、標的核酸の直接隣接するセグメント、または標的プローブ対の標的プローブ結合部位の間に、1個から相当数の塩基を有するセグメントに結合するように、標的プローブ対を設計できる。概して、標的プローブ対は、標的核酸に結合して、概して、標的核酸上の結合部位間に、0~500塩基、例えば、5塩基、10塩基、15塩基、20塩基、25塩基、30塩基、35塩基、40塩基、45塩基、50塩基、60塩基、70塩基、80塩基、90塩基、100塩基、120塩基、140塩基、160塩基、180塩基、200塩基、220塩基、240塩基、260塩基、280塩基、300塩基、320塩基、340塩基、360塩基、380塩基、400塩基、420塩基、440塩基、460塩基、480塩基もしくは500塩基、またはこれらの間のいずれかの整数の塩基長が存在するように設計する。特定の実施形態では、標的プローブ対に対する結合部位は、0~100塩基長、0~200塩基長もしくは0~300塩基長、またはこれらの間のいずれかの整数の塩基長である。標的プローブセットにおいて、2つ以上の標的プローブ対を用いて、RNAまたは1本鎖DNAである同じ標的核酸に結合し、かつ標的プローブ対の間において、結合部位にギャップがある場合には、異なる標的プローブ対の結合部位は重複しないことが理解される。DNAのような2本鎖核酸を検出する場合には、標的プローブ対が、2本鎖標的核酸のそれぞれの結合部位に同時に結合できる限りは、異なる標的プローブ対間で、ある程度重複し得る。
【0223】
SGCは、複数の標識プローブ(LP)も含む。各LPは、検出可能であるセグメントを含む。検出可能な成分は、LPに直接結合でき、あるいは、LPは、検出可能な成分、すなわち標識を含む別の核酸にハイブリダイゼーションできる。本明細書で使用する場合、「標識」とは、分子の検出を促す部分である。本発明の文脈における一般的な標識には、蛍光標識、発光標識、光散乱標識及び/または比色標識が含まれる。好適な標識としては、酵素部分、蛍光部分、発色部分、放射性核種、基質、補因子、阻害剤、化学発光部分、磁性粒子、希土類金属、金属同位体などが挙げられる。本発明の特定の実施形態では、標識は、酵素である。例示的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなど、及び各種プロテアーゼが挙げられるが、これらに限らない。他の標識としては、フルオロフォア、ジニトロフェニル(DNP)などが挙げられるが、これらに限らない。標識は、例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)、ならびに米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号及び同第4,366,241号に記載されているように、当業者には周知である。検出可能な酵素/基質の組み合わせ(Pierce,Rockford IL、Santa Cruz Biotechnology,Dallas TX、Life Technologies,Carlsbad CA)を含め、多くの標識が市販されており、本発明の方法及びアッセイで使用できる。本発明の特定の実施形態では、酵素は、発色基質または蛍光基質を利用して、本明細書に記載されているように、検出可能なシグナルを生成できる。例示的な標識は、本明細書に記載されている。
【0224】
酵素活性標識または非酵素標識が、それぞれ検出できるものである限りは、いずれの数の酵素標識または非酵素標識も使用できる。本酵素は、検出可能なシグナルを生成し、そのシグナルを利用して、標的核酸を検出できる。特に有用である検出可能なシグナルは、発色シグナルまたは蛍光シグナルである。したがって、標識として用いるのに特に有用な酵素には、発色基質または蛍光基質が利用可能である酵素が含まれる。このような発色基質または蛍光基質を酵素反応によって容易に検出可能な発色生成物または蛍光生成物に変換し、この生成物は、顕微鏡法または分光法を用いて、容易に検出及び/または定量できる。このような酵素は、当業者に周知であり、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどが挙げられるが、これらに限らない(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照されたい)。周知の発色基質または蛍光基質を有する他の酵素には、様々なペプチダーゼが含まれ、その発色ペプチド基質または蛍光ペプチド基質を用いて、タンパク質切断反応を検出できる。発色基質及び蛍光基質の利用は、細菌の診断でも周知であり、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、6-ホスホ-β-D-ガラクトシド6-ホスホガラクトヒドロラーゼ、β-グルコシダーゼ、α-グルコシダーゼ、アミラーゼ、ノイラミニダーゼ、エステラーゼ、リパーゼなどの利用が挙げられるが、これらに限らず(Manafi et al.,Microbiol.Rev.55:335-348(1991))、既知の発色基質または蛍光基質を有するこのような酵素は、本発明の方法で用いるのに容易に適合させることができる。
【0225】
検出可能なシグナルを生成させるための様々な発色基質または蛍光基質は、当業者に周知であり、市販されている。検出可能なシグナルを生成させるのに利用できる例示的な基質としては、西洋ワサビペルオキシダーゼに対する3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、クロロナフトール(4-CN)(4-クロロ-1-ナフトール)、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)及び3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)、アルカリホスファターゼに対する5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-1-リン酸(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、ファストレッド(ファストレッドTR/AS-MX)及びp-ニトロフェニルリン酸(PNPP)、β-ガラクトシダーゼに対する1-メチル-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド及び2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-ガラクトピラノシド、β-グルコシダーゼに対する2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-グルコピラノシドなどが挙げられるが、これらに限らない。例示的な蛍光基質としては、アルカリホスファターゼに対する4-(トリフルオロメチル)ウンベリフェリルリン酸、ホスファターゼに対する4-メチルウンベリフェリルリン酸ビス(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、4-メチルウンベリフェリルリン酸ビス(シクロヘキシルアンモニウム)及び4-メチルウンベリフェリルリン酸、西洋ワサビペルオキシダーゼに対するQuantaBlu(商標)及びQuantaRed(商標)、β-ガラクトシダーゼに対する4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド、フルオレセインジ(β-D-ガラクトピラノシド)及びナフトフルオレセインジ-(β-D-ガラクトピラノシド)、β-グルコシダーゼに対する3-アセチルウンベリフェリルβ-D-グルコピラノシド及び4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシド、ならびにα-ガラクトシダーゼに対する4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシドが挙げられるが、これらに限らない。検出可能なシグナルを生成させる例示的な酵素及び基質は例えば、米国公開第2012/0100540号にも記載されている。発色基質または蛍光基質を含む様々な検出可能な酵素基質は、周知であり、市販されている(Pierce,Rockford IL、Santa Cruz Biotechnology,Dallas TX、Invitrogen,Carlsbad CA、42 Life Science、Biocare)。概して、基質は、標的核酸の部位で沈着する沈殿物を形成する生成物に変換される。他の例示的な基質としては、HRP-Green(42 Life Science)、BiocareのBetazoid DAB、Cardassian DAB、Romulin AEC、Bajoran Purple、Vina Green、Deep Space Black(商標)、Warp Red(商標)、Vulcan Fast Red及びFerangi Blue(Concord CA、biocare.net/products/detection/chromogens)が挙げられる。
【0226】
検出可能な標識として適する例示的な希土類金属及び金属同位体としては、141Pr、142Nd、143Nd、144Nd、145Nd、146Nd、147Sm、148Nd、149Sm、150Nd、151Eu、152Sm、153Eu、154Sm、155Gd、156Gd、158Gd、159Tb、160Gd、161Dy、162Dy、163Dy、164Dy、165Ho、166Er、167Er、168Er、169Tm、170Er、171Yb、172Yb、173Yb、174Yb、175Lu及び176Ybのようなランタニド(III)同位体が挙げられるが、これらに限らない。金属同位体は、例えば、飛行時間型質量分析(TOF-MS)(例えば、FluidigmのHelios及びHyperionシステム、fluidigm.com/systems、South San Francisco,CA)を用いて検出できる。
【0227】
ビオチン-アビジン(またはビオチン-ストレプトアビジン)は、それらの2つの分子の相互の親和性が非常に高いとともに、1つのアビジン/ストレプトアビジン分子が4つのビオチン分子と結合できるという知見に基づく周知のシグナル増幅システムである。抗体は、免疫組織化学法及びISHでのシグナル増幅に広く用いられている。チラミドシグナル増幅(TSA)は、ペルオキシダーゼ活性によって、多数のハプテン化チラミド分子が沈着することに基づいている。チラミンは、フェノール化合物である。固定化された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、少量の過酸化水素の存在下で、標識基質を、極めて反応性の高い短命な中間体に変換する。続いて、活性化した基質分子は、ペルオキシダーゼ結合部位またはペルオキシダーゼ結合部位の近くで、電子の豊富なタンパク質部分(チロシンなど)と非常に速やかに反応して、その部分に共有結合する。この方法で、チラミドにコンジュゲートした多くのハプテン分子をハイブリダイゼーション部位で、in situに導入できる。その後、沈着したチラミド-ハプテン分子を直接または間接的に可視化できる。このような検出システムは例えば、米国公開第2012/0100540号にさらに詳細に記載されている。
【0228】
本明細書に記載されている実施形態では、酵素を利用して、適切な発色基質または蛍光基質を用いる検出可能なシグナルを生成できる。あるいは、標識プローブは、その標識プローブの核酸部分に直接結合された検出可能な標識を有することができることが理解される。例示的な検出可能な標識は、当業者に周知であり、発色標識または蛍光標識が挙げられるが、これらに限らない(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照されたい)。標識として有用である例示的なフルオロフォアとしては、ローダミン誘導体、例えば、テトラメチルローダミン、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、Texas Red(スルホローダミン101)、ローダミン110及びその誘導体(テトラメチルローダミン-5-(または6)など)、リサミンローダミンBなど、7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)、フルオレセイン及びその誘導体、ナフタレン(ダンシル(5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホニル)など)、クマリン誘導体(7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA)、7-ジエチルアミノ-3-[(4’-(ヨードアセチル)アミノ)フェニル]-4-メチルクマリン(DCIA)、Alexa fluor色素(Molecular Probes)など)、4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY(商標))及びその誘導体(Molecular Probes、Eugene,OR)、ピレン、スルホン化ピレン(Cascade Blue(商標)など)及びそれらの誘導体(8-メトキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸などを含む)、ピリジルオキサゾール誘導体及びダポキシル誘導体(Molecular Probes)、ルシファーイエロー(3,6-ジスルホン酸-4-アミノ-ナフタルイミド)及びその誘導体、CyDye(商標)蛍光色素(Amersham/GE Healthcare Life Sciences;Piscataway NJ)、ATTO390、DyLight395XL、ATTO425、ATTO465、ATTO488、ATTO490LS、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO532、ATTO Rho6G、ATTO542、ATTO550、ATTO565、ATTO Rho3B、ATTO Rho11、ATTO Rho12、ATTO Thio12、ATTO Rho101、ATTO590、ATTO594、ATTO Rho13、ATTO610、ATTO620、ATTO Rho14、ATTO633、ATTO643、ATTO647、ATTO647N、ATTO655、ATTO Oxa12、ATTO665、ATTO680、ATTO700、ATTO725、ATTO740、Cyan500 NHS-Ester(ATTO-TECH,Siegen,Germany)などが挙げられるが、これらに限らない。例示的な発色団としては、フェノールフタレイン、マラカイトグリーン、芳香族ニトロ化合物(ニトロフェニルなど)、ジアゾ色素、ダブシル(4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-スルホニル)などが挙げられるが、これらに限らない。
【0229】
本明細書で開示されているように、本発明の方法は、複数の標的核酸の同時検出を利用できる。フルオロフォアを標識として用いる場合には、複数の標的核酸の検出に用いるフルオロフォアは、標的核酸の同時検出の場合に、各フルオロフォアが識別可能であるとともに、フルオロフォアを蛍光顕微鏡で同時に検出できるように選択する。このようなフルオロフォアは、標的核酸の別個の標識を同時に検出できるように、発光線のスペクトルが分離されるように選択する。本発明の方法で用いるのに適する識別可能なフルオロフォアを選択する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Johnson and Spence,“Molecular Probes Handbook,a Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies,11th ed.,Life Technologies(2010)を参照されたい)。
【0230】
顕微鏡、サイトメトリー(例えば、マスサイトメトリー、飛行時間によるサイトメトリー(CyTOF)、フローサイトメトリー)または分光法のような周知の方法を用いて、それぞれの標的核酸と関連する検出可能な発色シグナル、蛍光シグナルまたは金属シグナルを可視化できる。概して、同じ試料内の核酸標的の検出に、1種類の計器を使用できるように、同じアッセイで、それぞれ異なる標識を使用する場合には、特定のアッセイに合わせて、発色基質、蛍光基質、発色標識、蛍光標識または希土類金属同位体のいずれかを使用する。
【0231】
本明細書で開示されているように、標識プローブは、標識が任意に切断可能となるように設計できる。本明細書で使用する場合、切断可能な標識とは、例えば、標的核酸を標識及び検出する2回目以降のラウンドで、同じ標識を使用するために、標識をSGCから除去できるように、標識プローブに結合またはコンジュゲートされている標識を指す。概して、標識は、切断可能である化学リンカーによって、標識プローブにコンジュゲートされている。標識が切断可能となるように、標識を標識プローブにコンジュゲートする方法は、当業者に周知である(例えば、Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)、Daniel et al.,BioTechniques 24(3):484-489(1998)を参照されたい)。オリゴヌクレオチドを標識する具体的システムの1つは、FastTag(商標)システムである(Danielらによる上記の1998年の文献、Vector Laboratories,Burlinghame CA)。様々な切断可能な部分をリンカーに含めて、標識を標識プローブから切断できるようにできる。このような切断可能な部分は、化学的、光化学的または酵素的に切断できる基を含む。切断可能な化学リンカーは、還元によって切断できるジスルフィド、過ヨウ素酸塩によって切断できるグリコールまたはジオール、亜ジチオン酸塩によって切断できるジアゾ結合、ヒドロキシルアミンによって切断できるエステル、塩基によって切断できるスルホンなどのような切断可能な化学的部分を含むことができる(Hermansonによる上記の1996年の文献を参照されたい)。特に有用である切断可能なリンカーの1つは、ジスルフィド結合を還元することによって切断できるジスルフィド結合を含むリンカーである。別の実施形態では、リンカーは、酵素によって切断するための部位を含むことができる。例えば、リンカーは、タンパク質切断部位を含むことができる。概して、このような切断部位は、配列特異的なプロテアーゼに対するものである。このようなプロテアーゼとしては、ヒトライノウイルス3Cプロテアーゼ(切断部位:LEVLFQ/GP、配列番号1)、エンテロキナーゼ(切断部位:DDDDK/配列番号2)、第Xa因子(切断部位:IEGR/配列番号3)、タバコエッチウイルスプロテアーゼ(切断部位:ENLYFQ/G、配列番号4)及びトロンビン(切断部位:LVPR/GS、配列番号5)が挙げられる(例えばOxford Genetics,Oxford,UKを参照されたい)が、これらに限らない。別の切断可能な部分は例えば、ウラシル-DNAグリコシラーゼ(UNG)によって切断できるウラシル-DNA(ウラシルを含むDNA)であることができる(例えば、Sidorenko et al.,FEBS Lett.582(3):410-404(2008)を参照されたい)。
【0232】
本発明は、標的核酸に結合した標識を標的核酸から除去できるように、切断可能な標識を用いることに関するものである。本明細書で開示されているように、標識は、最後の検出ラウンドでは、任意に切断可能であることができる。最後の検出ラウンドでは、標識の切断は必須ではないからである。切断可能な標識は、その標識を切断し、その標識を標識プローブから解離する目的で、化学的な薬剤のような薬剤または光を適用することによって除去することができる。上で論じたように、化学的な切断に有用な切断剤としては、還元剤、過ヨウ素酸、亜ジチオン酸塩、ヒドロキシルアミン、塩基などが挙げられるが、これらに限らない(Hermansonによる上記の1996年の文献を参照されたい)。ジスルフィド結合を含むリンカーを切断するのに有用な方法の1つは、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を利用することである(Moffitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 113:11046-11051(2016)を参照されたい)。一実施形態では、標識を標識プローブから切断する薬剤として、TCEPを使用する。
【0233】
別の実施形態では、切断可能な標識を用いる代わりに、標的核酸に結合したSGCを、標識プローブと増幅剤との結合配列のTmよりも高い温度に暴露することによって、SGCに結合した標識プローブを選択的に除去するか、または洗い流すことができる。SGCにおける標識プローブと増幅剤の間の結合を破壊するのに好適な温度及び条件を選択することによって、SGCにおいて増幅剤に結合した標識プローブを除去する方法のように、SGCの成分を選択的に除去する方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に開示されている。標識プローブをSGCから選択的に除去することを用いる場合には、SGCの成分の相互作用のうち、標識プローブと増幅剤との相互作用以外の相互作用が、標識プローブの増幅剤への結合を破壊する条件下でも、安定な状態を維持するように、SGCの成分を設計する。切断可能な標識を含む標識プローブを用いるのと同様に、最後の反復的な検出ラウンドでは、それ以上の検出ラウンドを行わないことから、標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度を、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤(使用する場合)、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低くする必要は必ずしもないことが理解される。したがって、最後の反復的な検出ラウンドでは、標識プローブ及び増幅剤の間の融解温度を、標的プローブ、プレ-プレ増幅剤(使用する場合)、プレ増幅剤及び増幅剤の間の融解温度よりも低くするかは任意であり、その結果、最後の反復的な検出ラウンドで、標識プローブと標識がSGCに結合したままとなってもよい。
【0234】
本明細書で説明されている本発明は概して、試料内の複数の標的核酸を検出することに関するものである。加えて、本発明の方法は、複数の標的核酸と、任意に、試料内、特には、標的核酸と同じ細胞内の他の分子を検出することにも適用できることが理解される。例えば、複数の標的核酸を検出するのに加えて、細胞内で発現されたタンパク質も、標的核酸を検出するためのものとして本明細書で説明した原理と同様の原理を用いて、同時に検出できる。この場合には、複数の標的核酸を検出する1回以上の検出ラウンドにおいて、例えば、細胞内で発現された1つ以上のタンパク質を検出するための検出可能な標識を用いることによって、そのタンパク質を任意に検出できる。初期の標的核酸検出ラウンドで、そのタンパク質を検出している場合には、そのタンパク質は、標的核酸を検出するのに用いた切断可能な標識と同様に、切断可能な標識によって検出できる。最後の検出ラウンドで、そのタンパク質を検出している場合には、標識は、切断可能である必要はない。例えば、標的核酸の検出用として、本明細書に記載されているシステムを含む周知の検出システムのいずれかを用いて、タンパク質に特異的な抗体の結合を検出することによって、細胞内のタンパク質を検出することは、当業者には周知である。同じ細胞内の標的核酸及びタンパク質の検出は、実施例に記載されている(Schulz et al.,Cell Syst.6(1):25-36(2018)も参照されたい)。
【0235】
標的核酸が検出される限りは、本発明は、いずれの所望の順序でも実施できることが理解される。すなわち、本発明の方法では、標的核酸が検出される限りは、細胞と、SGCをアセンブルするためのいずれかの成分とを接触させる工程は、いずれの所望の順序でも実施できるし、逐次的にも実施できるし、もしくは同時にも実施できるし、または所望に応じて、いくつかの工程を逐次的に実施できる一方で、他の工程を同時に実施する。さらに、各種の構成、成分のサイズ、アッセイ条件、アッセイ感度などを使用する目的で、所望に応じて、本明細書に開示されている実施形態は独立して、本明細書に開示されている他の実施形態と組み合わせることができることが理解される。
【0236】
本発明は、標的核酸を検出させるいずれの形式でも実施できることが理解される。本明細書では、本発明の実施については、概してin situハイブリダイゼーションを用いて説明してきたが、本発明は、当該技術分野において周知であるように、他の形式で、標的核酸を検出するために、特には、細胞内の標的核酸を検出するために実施できることが理解される。細胞内の標的核酸を検出するのに使用できる方法の1つは、当該技術分野において周知であるように、フローサイトメトリーである(例えば、Shapiro,Practical Flow Cytometry 3rd ed.,Wiley-Liss,New York(1995)、Ormerod,Flow Cytometry,2nd ed.,Springer(1999)を参照されたい)。すなわち、本発明の方法、試料及びキットは、in situハイブリダイゼーションアッセイの形式、またはフローサイトメトリーのような別の形式で使用できる。in situハイブリダイゼーションを含む核酸検出方法をフローサイトメトリーに適用することは、以前に説明されている(例えば、Hanley et al.,PLoS One,8(2):e57002.doi:10.1371/journal.pone.0057002(2013)、Baxter et al.,Nature Protocols 12(10):2029-2049(2017)を参照されたい)。
【0237】
いくつかの場合には、アッセイ工程数を減らすこと、例えば、ハイブリダイゼーション及び洗浄の工程数を減らすことが望ましいことがある。アッセイ工程数を減らす方法の1つは、細胞と接触させる前に、SGCの成分の一部または全部を事前にアセンブルすることである。このように事前にアセンブルするのは、標的核酸と接触させる前に、SGCの成分の一部または全部を併せてハイブリダイゼーションさせることによって行うことができる。
【0238】
本発明は、1つの細胞または複数の細胞を含む試料も提供する。その細胞は、任意に固定できる。その細胞は、任意に浸透化できる。細胞を固定及び/または浸透化することは特に、in situハイブリダイゼーションアッセイに適用可能である。
【0239】
加えて、本発明は、1つの細胞または複数の細胞を含むスライドを提供する。任意に、その1つの細胞または複数の細胞は、スライドに固定されている。任意に、その1つの細胞または複数の細胞は、浸透化されている。特定の実施形態では、スライド上の細胞は、in situアッセイ用に固定及び/または浸透化されている。
【0240】
本発明は、本明細書に記載されているようなSGCの成分を含むキットも提供し、そのキットは、標的核酸を含まない。このようなキットは、本明細書に開示されているように、プレ増幅剤(PA)、増幅剤(AMP)及び標識プローブ(LP)、ならびに任意にプレ-プレ増幅剤(PPA)を含むことができる。任意に、そのキットは、特定の1つの標的核酸または複数の標的核酸に対する標的プローブ(TP)を含むことができる。本発明のキットの成分は任意に、容器に入っていることができ、任意に、そのキットを使用するための説明を提供できる。
【0241】
本明細書に示されている、本発明の定義内で、本発明の各種実施形態の活性に実質的に影響を及ぼさない修正が行われることも理解される。したがって、下記の実施例は、例示するためのものであり、本発明を限定しないように意図されている。
【実施例
【0242】
実施例I
反復的な蛍光検出ラウンドでの標的核酸の検出
この実施例では、3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出することが説明されている。
【0243】
ホルマリン固定パラフィン包埋切片として調製したHeLa細胞に、12個の異なる標的に対するプローブ対をハイブリダイゼーションさせ、プレ増幅剤及び増幅剤の配列との逐次的なハイブリダイゼーションラウンドによって、そのハイブリダイゼーションシグナルを併せて増幅した。図4A~4Cにはそれぞれ、3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出した結果が示されている。ラウンド1では、12個の標的遺伝子のうちの4つ、すなわち、POLR2A、PPIB、UBC及びHPRT1の4つに対する標的プローブに割り当てたシグナル増幅システムに対応する蛍光標識プローブを用いて、これらの4つの標的遺伝子を検出した。POLR2A、PPIB、UBC、及びHPRT1を、それぞれフルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750で標識した。別のスライドでは、細菌dapB遺伝子に対するネガティブコントロールプローブを用いて、非特異的なバックグラウンドを評価した。核は、DAPI(青色)で染色した。図4Aには、標的核酸に結合した可視化標識の1ラウンド目の検出結果が示されている。1ラウンド目の標識プローブからフルオロフォアを切断後、第2の標識プローブセットをハイブリダイゼーションさせ、TUBB、RPL28、RPL5、及びB2Mを、それぞれフルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750を用いて検出した(図4Bを参照されたい)。2ラウンド目の標識プローブからフルオロフォアを切断後、第3の標識プローブセットをハイブリダイゼーションさせ、ACTB、LDHA、RPLP0、及びGAPDHを、それぞれフルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750を用いて検出した(図4Cを参照されたい)。
【0244】
これらの結果から、標識、検出及び切断の反復的なラウンドを用いて、複数の標的核酸を検出できることが示されている。
【0245】
実施例II
反復的な蛍光検出ラウンドでの標的核酸の検出
この実施例では、新鮮な凍結マウス脳内のニューロンマーカーの検出及び画像レジストレーションが説明されている。
【0246】
標準的な組織処理方法を用いて、新鮮な凍結マウス脳10μMの切片を調製した。11個の異なる標的に対するプローブ対をそのマウス脳切片にハイブリダイゼーションさせ、プレ増幅剤及び増幅剤の配列とハイブリダイゼーションさせる逐次的なラウンドによって、ハイブリダイゼーションシグナルを併せて増幅した。標識プローブとハイブリダイゼーションさせるラウンドを3回行い、Alexa488、ATTO550、ATTO647及びAlexa750というフルオロフォアを用いて、Htr7、Pcdh8、Meis1、Th、Crym、Synpr、Drd1a、Cnr1、Wfs1、Drd2、Calb1を検出した。ATTO550を用いて、抗NeuN抗体による免疫蛍光の検出を行った。核は、DAPIで染色した。各検出ラウンドから得られたDAPI画像を使用して、画像レジストレーションソフトウェア(Advanced Cell Diagnostics)で、4ラウンド分の画像をレジストレーションした(重ね合わせた)。上記と同じソフトウェアを用いて、各標的に対して疑似カラーを選択することによって、レジストレーション画像をオーバーレイし、オーバーレイ画像をTiffでエクスポートした。この方式で、同じ個別細胞上の12個の標的シグナルを解明した。代表的なオーバーレイ画像が図5に示されている。これらの結果から、標識、検出及び切断の反復的ラウンドを用いて、複数の標的核酸を検出できること、及び標的核酸を検出した複数回のラウンドの結果を重ね合わせて、試料内のすべての標的核酸及びタンパク質の発現を解明できることが示されている。
【0247】
本願の全体を通じて、様々な刊行物が参照されている。これらの刊行物の開示内容の全体は、参照により、本発明が属する分野の現状をさらに充分に説明する目的で、本願に援用される。上記の実施例を参照しながら、本発明について説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱しなければ、様々な修正を加えることができることは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0248】
図1】マルチプレックスアッセイの概略図を示している。このようなアッセイの、ある特定の実施形態は、本明細書では、RNAscope(商標)HiPlex Probe Hybridization and Amplification Systemと称する。示されている実施形態では、標的核酸のマルチプレックス検出のために、元来のRNAscope(商標)のプローブデザイン及び分岐状のDNA様シグナル増幅法(例えば、米国特許第7,709,198号、米国公開第2008/0038725号及び同第2009/0081688号、WO2007/001986、WO2007/002006、Wang et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.2(2):109-119(2002)を参照されたい)をRNAscope(商標)HiPlexに取り入れた。図1に示されている実施形態では、12個の標的配列が、12個の垂直方向のシグナル増幅システム(異なる色の標識プローブによって示されている)に結合するプローブ対(ダブルZ型プローブとして示されている)と、同時にハイブリダイゼーションする。
図2】マルチプレックスアッセイのワークフロー(RNAscope(商標)HiPlex Assay Workflow)の概略図を示している。図2に示されている実施形態では、12個の標的配列が、標的プローブ(ダブルZ型プローブとして示されている)にハイブリダイゼーションし、シグナルが、RNAscope(商標)のような増幅システムによって、同時に増幅される。示されている実施形態では、非スペクトルな重なり合った蛍光色素にコンジュゲートした4種のオリゴ(標識プローブ)を介して、第1の4つの標的を検出し、従来の蛍光顕微鏡またはスキャナーを用いてイメージングする。続いて、フルオロフォアを標識プローブから切断し、次の4つの標的を標識し、同じ方法を用いてイメージングする。1ラウンドあたり4つの標的を検出するラウンドをL回(例えば3回)行った後、画像レジストレーションソフトウェアのアルゴリズムを用いて、画像をレジストレーションして、重ね合わせた画像の最終合成物をシングルセルの解像度で作成する。
図3A】標的核酸を垂直方向で標識する概略図である。図3Aに示されているのは、RNAscope(商標)アッセイに基づき、標的核酸を垂直方向で標識することである。図3Aに示されているのは、3つの例示的な標的核酸を、それぞれのシグナル生成複合体(SGC)で標識することである。図3Aには、標的プローブ対1(TP1a及びTP1b)が標的核酸1に結合しているのが示されている。プレ増幅剤(PA1)が、標的プローブ対(TP1a及びTP1b)に結合しているのが示されている。複数の増幅剤(AMP1)が、PA1に結合しているのが示されている。複数の標識プローブ(LP1)が、増幅剤に結合しているのが示されている。図3Aには、標的2及び3についても、同様の構成が示されており、SGCの成分(標的プローブ、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)は、対応する標的のそれぞれに特異的である。
図3B】標的核酸を垂直方向で標識する概略図である。図3Aに示されている構成の修正形態を示している。図3Bに示されているのは、2つの例示的な標的核酸を、それぞれのシグナル生成複合体(SGC)で標識することである。図3Bには、標的プローブ対1(TP1a及びTP1b)が標的核酸1に結合しているのが示されている。プレ-プレ増幅剤(PPA1)が、標的プローブ対(TP1a及びTP1b)に結合しているのが示されている。複数のプレ増幅剤(PA1)が、PPA1に結合しているのが示されている。複数の増幅剤(AMP1)が、PA1に結合しているのが示されている。簡略化のために、増幅剤は、1つのプレ増幅剤に結合しているように示されているが、増幅剤は、すべてのプレ増幅剤に結合できることが理解される。複数の標識プローブ(LP1)が、増幅剤に結合しているのが示されている。図3Bには、標的2についても、同様の構成が示されており、SGCの成分(標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)は、対応する標的のそれぞれに特異的である。
図3C】標的核酸を垂直方向で標識する概略図である。図3Cに示されているのは、Basescope(商標)アッセイに基づき、標的核酸を垂直方向で標識することである。図3Cに示されているのは、2つの例示的な標的核酸を、それぞれのシグナル生成複合体(SGC)で標識することである。図3Cには、標的プローブ対1(TP1a及びTP1b)が標的核酸1に結合しているのが示されている。プレ-プレ増幅剤対(PPA1a及びPPA1b)が、それぞれの標的プローブ対(TP1a及びTP1b)に結合しているのが示されている。プレ増幅剤(PA1)が、プレ-プレ増幅剤対(PPA1a及びPPA1b)に結合しているのが示されている。複数の増幅剤(AMP1)が、PA1に結合しているのが示されている。簡略化のために、増幅剤は、1つのプレ増幅剤に結合しているように示されているが、増幅剤は、すべてのプレ増幅剤に結合できることが理解される。複数の標識プローブ(LP1)が、増幅剤に結合しているのが示されている。図3Cには、標的2についても、同様の構成が示されており、SGCの成分(標的プローブ、プレ-プレ増幅剤、プレ増幅剤、増幅剤、標識プローブ)は、対応する標的のそれぞれに特異的である。
図4A】3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出した結果を示している。ホルマリン固定パラフィン包埋切片として調製したHeLa細胞に、12個の異なる標的に対するプローブ対をハイブリダイゼーションさせ、プレ増幅剤及び増幅剤の配列との逐次的なハイブリダイゼーションラウンドによって、ハイブリダイゼーションシグナルを併せて増幅した。図4Aは、標的核酸、すなわち、RNAポリメラーゼIIサブユニットA(POLR2A)遺伝子、ペプチジルプロリルイソメラーゼB(PPIB)遺伝子、ユビキチンC(UBC)遺伝子及びヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT1)遺伝子に結合した標識を可視化した1回目のラウンドの検出結果を示している。POLR2A、PPIB、UBC、及びHPRT1は、フルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750で標識した。別のスライドで、同じ蛍光標識を用いた、細菌のジヒドロジピコリン酸レダクターゼ(dapB)遺伝子に対するネガティブコントロールプローブを使用して、非特異的なバックグラウンドを評価した。核は、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)(青色)で染色した。
図4B】3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出した結果を示している。1回目のラウンドで結合した標識を切断後、標的核酸、すなわち、クラスIのβチューブリン(TUBB)、リボソームタンパク質L28(RPL28)、リボソームタンパク質L5(RPL5)、及びβ-2ミクログロブリン(B2M)に結合した標識を、それぞれフルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750を用いて可視化した2回目のラウンドの検出結果を示している。
図4C】3ラウンドの蛍光検出で、HeLa細胞内の12個のポジティブコントロール遺伝子を検出した結果を示している。2回目のラウンドで結合した標識を切断後、標的核酸、すなわち、βアクチン(ACTB)、乳酸デヒドロゲナーゼA(LDHA)、リボソームタンパク質ラテラルストークサブユニットP0(RPLP0)、及びグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に結合した標識を、フルオロフォアのAlexa488、ATTO550、ATTO647N、及びAlexa750を用いて可視化した3回目のラウンドの検出結果を示している。
図5】新鮮な凍結マウス脳におけるニューロンマーカーの検出及び画像レジストレーションの結果を示している。3ラウンドの標識プローブハイブリダイゼーションを行って、Alexa488、ATTO550、ATTO647N及びAlexa750というフルオロフォアを用いて、5-ヒドロキシトリプタミン(セロトニン)受容体7(Htr7)、プロトカドヘリン8(Pcdh8)、Meisホメオボックス1(Meis1)、チロシンヒドロキシラーゼ(Th)、クリスタリンμ(Crym)、シナプトポリン(Synpr)、ドーパミン受容体D1(Drd1a)、カンナビノイド受容体1(脳)(Cnr1)、ウォルフラミンER膜貫通糖タンパク質(Wfs1)、ドーパミン受容体D2(Drd2)及びカルビンジン1(Calb1)を検出した後、ATTO550を用いて、NeuN(RNA結合タンパク質fox-1ホモログ(C.elegans)3によってコードされる)に対する抗体によって免疫蛍光検出を行い、4枚からなる画像セットを得てから、画像解析ソフトウェアを用いることによってレジストレーションを行って、同じ個別細胞上の12個の標的シグナルを重ね合わせた。
図6】A~Cは、シグナル生成複合体(SGC)を用いて、核酸標的を検出する上記方法の概略図を示している。PPAはプレ-プレ増幅剤、PAはプレ増幅剤、AMPは増幅剤、LPは標識プローブである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5
図6
【配列表】
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