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特許7531505医療用注入装置用のバルブストッパーおよび少なくとも1つの組成物を注入するための医療用注入装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】医療用注入装置用のバルブストッパーおよび少なくとも1つの組成物を注入するための医療用注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20240802BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20240802BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A61M5/24 530
A61M5/28 520
A61M5/315 580
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021549995
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020054902
(87)【国際公開番号】W WO2020173938
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】19305230.5
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19305647.0
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セドリック リヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ギョーム ルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ナスターシャ グリエ
(72)【発明者】
【氏名】フェルディナンド ラヴィーニュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ヴァクセレイア
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-535987(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170634(WO,A1)
【文献】特開2000-210384(JP,A)
【文献】特表平09-504457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/28
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルの遠位端(104)を介して少なくとも1つの組成物を注入するために、注入装置(100)のバレル(101)の内部に配置されるように構成されたバルブストッパー(1)であって、前記バルブストッパー(1)は、
- 近位面(6)および遠位面(7)を含、前記膜は、前記バレルの第1の遠位チャンバー(108)と前記バレルの第2の近位チャンバー(109)とを分離するように構成されている、膜(2)と、
- 少なくとも遠位キャビティ(4)を画定するために、前記膜(2)から遠位に、または遠位と近位の両方に延び、前記バレルの内面(102)に密封係合するように構成された円周方向の密封面(8)を備える、側壁(3)と、
を備え、
前記膜(2)の前記近位面(6)が凹状形状を呈し、前記膜(2)、前記近位面(6)と前記遠位面(7)との間の一部を通って延びるノッチ(10,20)を有し、
前記側壁(3)は、組成物によって前記膜(2)の前記近位面(6)に対して遠位方向に作用する機械的圧力の下で前記バルブストッパー(1)の崩壊を誘発するように構成された内部凹部(13)を有し、
記ノッチ(10,20)は、前記第2のチャンバー(109)から前記第1のチャンバー(108)に流体のみを移動させるために、組成物によって前記膜(2)の前記近位面(6)に及ぼされる前記機械的圧力に応じて崩壊することにより、前記近位面(6)から前記遠位面(7)まで前記膜(2)を通る流体経路(30)を選択的に形成するように構成されていることを特徴とする、バルブストッパー(1)。
【請求項2】
前記内部凹部(13)は、前記バルブストッパー(1)の円周に沿って前記側壁(3)に延在する環状溝である、請求項2に記載のバルブストッパー(1)。
【請求項3】
前記バルブストッパー(1)が、中間リブと2つの側方リブとを含む3つのリブ(9)を備え、前記膜(2)が前記中間リブと整列していることを特徴とする、請求項1または2に記載のバルブストッパー(1)。
【請求項4】
前記ノッチ(20)が、前記膜(2)の厚さの一部においてのみ延在し、それによって、前記ノッチ(20)によって横断されない膜の厚さにおける引き裂き部分(21)を画定し、前記引き裂き部分(21)は、前記流体経路(30)を形成するために組成物によって及ぼされる決定された前記機械的圧力の下で前記ノッチ(20)に沿って引き裂くように構成されている、請求項1からのいずれか1項に記載のバルブストッパー。
【請求項5】
前記膜(2)の引き裂き部分(21)が、前記組成物が前記近位面(6)に及ぼす前記機械的圧力に応じて、前記キャビティ(4)を開閉するように構成された弁を形成する、請求項に記載のバルブストッパー。
【請求項6】
前記ノッチ(20)が、前記遠位面(7)から前記膜(2)の一部を通って延びている、請求項1からのいずれか1項に記載のバルブストッパー。
【請求項7】
前記ノッチ(20)の深さが0.1mm以上である、請求項5または6に記載のバルブストッパー。
【請求項8】
前記ノッチ(20)が楕円形の形状を有しているか、または十字のセンター(26)で交差する2つのセグメント(25)からなる十字の形状を有している、請求項5からのいずれか1項に記載のバルブストッパー。
【請求項9】
前記ノッチが、前記近位面(6)と前記遠位面(7)との間で前記膜(2)を通って延びるスプリット(10)であり、前記スプリットが、前記組成物が前記近位面(6)に及ぼす前記機械的圧力に応じて前記キャビティ(4)を開閉するように構成された弁を形成している、請求項1からのいずれか1項に記載のバルブストッパー。
【請求項10】
前記ノッチ(10)が、前記近位面(6)の中心を通る線(11)の形態である、請求項1からのいずれか1項に記載のバルブストッパー(1)。
【請求項11】
前記ノッチ(10)が2つのセグメント(12)をさらに備え、各セグメントが前記線(11)の端部の両側に延びている、請求項10に記載のバルブストッパー(1)。
【請求項12】
記遠位面(7)が平面または凸状形状を呈し、前記遠位面の湾曲が前記近位面(6)から離れて延びている、請求項1から11のいずれか1項に記載のバルブストッパー(1)。
【請求項13】
前記ノッチ(10)は、前記キャビティ(4)の直径の4分の1よりも長く、かつ、前記キャビティ(4)の直径よりも短い長さを呈する、請求項1から12のいずれか1項に記載のバルブストッパー(1)。
【請求項14】
少なくとも1つの組成物を注入するための医療用注入装置(100)であって、
- 近位端(103)から遠位端(104)まで延びるバレル(101)と、
- 前記バレル(101)の内部で並進移動可能に適合されたプランジャーストッパー(107)と、
- 請求項1から13のいずれか1項に記載のバルブストッパー(1)であって、前記バレルの前記遠位端(104)と前記プランジャーストッパー(107)との間に配置され、前記バレル(101)の内部で並進移動可能に適合されており、前記バルブストッパー(1)の前記側壁(3)が前記バレルの内面(102)に密封係合しているバルブストッパー(1)と、
を備える、医療用注入装置(100)。
【請求項15】
前記医療用注入装置は、2つの組成物を順次注入するように適合されており、前記バルブストッパー(1)は、第1の組成物を含む前記バルブストッパー(1)と前記バレルの前記遠位端(104)との間の第1のチャンバー(108)と、第2の組成物を含む前記バルブストッパー(1)と前記プランジャーストッパー(107)との間の第2のチャンバー(109)とを含む前記バレルの2つのチャンバー(108,109)を分離する、請求項14に記載の医療用注入装置(100)。
【請求項16】
前記バルブストッパー(1)が、連続した以下の位置、
- 前記流体経路(30)が閉じている静止位置と、
- 前記バルブストッパー(1)が、前記流体経路(30)が閉じている静止位置よりも遠位にあり、前記近位面(6)が、前記ノッチ(10)のバルブ開放力Fopよりも小さい前記機械的圧力を受けている封止位置と、
- 前記バルブストッパー(1)が前記バレル(101)の前記遠位端(104)に接しており、前記近位面(6)に、前記ノッチ(10)のバルブ開放力Fopよりも大きい前記機械的圧力がかかることによって、前記流体経路(30)が開放されている注入位置と、
を呈する、請求項14または請求項15に記載の医療用注入装置(100)。
【請求項17】
前記バルブストッパー(1)が、前記プランジャーストッパー(107)が前記バルブストッパー(1)に接し、前記バルブストッパー(1)が崩壊位置をさらに呈する、請求項16に記載の医療用注入装置(100)。
【請求項18】
シリンジである、請求項14から17のいずれか1項に記載の医療用注入装置(100)。
【請求項19】
記近位面(6)は、前記バレルの内径の1.2倍から2.3倍の曲率半径を有する、請求項14から18のいずれか1項に記載の医療用注入装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの組成物を注入するための、医療用注入装置用のバルブストッパー、および前記バルブストッパーを含む医療用注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
事前に充填された注入装置は、薬剤またはワクチンを患者に送達するための一般的な容器であり、シリンジ、カートリッジ、および自動注入器などが含まれる。それらは通常、容器に滑り係合するプランジャーストッパーを含み、容器は、開業医が患者にすぐに使用できる注入装置を提供するために医薬組成物で満たされている。
【0003】
容器は、実質的に円筒形状を含み、プランジャーストッパーによって栓をすることができる近位端と、医薬組成物が容器から放出される遠位端と、および容器の近位端と遠位端との間に延びる側壁とを含む。実際には、プランジャーストッパーは、プランジャーによって加えられた圧力に応じて、容器の近位端から容器の遠位端に向かって移動し、それにより、容器内に含まれる薬剤を放出することを目的とする。
【0004】
患者の身体への注入の直前にバイアルに保管された医薬組成物で満たされた空の注入装置と比較すると、事前充填された注入装置の使用はいくつかの利点をもたらす。特に、注入前の準備を制限することにより、事前に充填された注入装置は、医療投薬エラーの削減、微生物汚染のリスクの最小化、および開業医のための使用の利便性の向上を提供する。さらに、そのような事前に充填された容器は、患者による自己投与を促進および単純化し得、これにより、治療のコストを削減し、患者のアドヒアランスを増加させることができる。最後に、事前に充填された注入装置は、医薬組成物がバイアルから事前に充填されていない注入装置に移されるときに通常発生する貴重な医薬組成物の損失を減らす。これにより、医薬組成物の所定の製造バッチで注入可能な注入の数が増え、購入とサプライチェーンのコストが削減される。
【0005】
事前に充填された注入装置を使用して、患者への複数の組成物の注入を実行することができる。そのような場合、容器は、第1の組成物を含むように適合された第1のチャンバーおよび第2の組成物を含むように適合された第2のチャンバーを含む2つのチャンバーを含む。2つのチャンバーは、通常、プラグまたはダイヤフラムと呼ばれる第2のストッパーによって分離されており、これは、組成物が一方のチャンバーから他方のチャンバーに移動して混合するのを防ぐ。
【0006】
特許文献1は、異なる特性を有する2つの粘弾性溶液を分配するための装置を開示している。この装置は、それぞれが溶液を含む2つのチャンバーを分離する可動ダイヤフラムを備えている。可動ダイヤフラムは、第1の溶液が注入される前に2つの溶液の混合を防ぐのに十分であると同時に、第2の溶液のその後の注入を可能にする小さな直径の開口部を備えている。あるいは、可動ダイヤフラムは、第1の溶液を注入する前の2つの溶液の混合をさらに確実に防止するために、バレル自体の遠位端にあるバレルの内側に設けられた内部スパイクによって貫通されるように適合された膜を備えてもよい。
【0007】
したがって、この特許文献1は、ダイヤフラム自体に形成された開口部を介して、第2の溶液を可動ダイヤフラムに通すことを開示している。第2の溶液を考慮して第1のチャンバーの密閉を確実にするために、言い換えれば、第1の組成物の完全な注入前に2つの溶液の混合を防ぐために、開口部は小さい直径を有する。これは、開口部を通過してそれを排出するためにプランジャーに加えられる必要がある力のために、第2の溶液の注入を実行することを困難にする。
【0008】
このような欠点は、組成物が高粘度である場合、これは通常粘弾性溶液の場合であり、および/または注入が、プランジャーを指で十分に強く押すことができないユーザーによって手動で行われる場合、例えばユーザーの手または指に影響を与える病気の関節リウマチまたは任意のタイプに罹患している場合、に特に重要である。注入は、自己注射であり得るか、または医療専門家などのユーザーによって他の人に対して行われ得る。粘性のある医薬組成物の患者への反復注入を行う医療専門家の場合、注入を実行するためにプランジャーに強い力を加えることを必要とする同じジェスチャーの繰り返しは、反復運動損傷を引き起こす可能性がある。
【0009】
特許文献2は、それぞれが溶液を含む2つのチャンバーを分離するバレルおよびプラグを含むマルチチャンバーシリンジを開示している。プラグは、バレルの内面に接触するように適合された2つのフランジで構成されている。近位フランジには、遠位方向に延びる偏心突起が設けられている。第1の溶液の注入の終わりに、偏心突起がバレルの遠位端に隣接し、これは、バレルに対するプラグの旋回を誘発する。それにより、第2の溶液は、プラグの2つのフランジのそれぞれとバレルの内面との間に形成された空間を通過し、フランジ間のプラグの側壁に形成された流体経路を通過し得る。
【0010】
したがって、この特許文献2は、プラグの側壁に沿って、およびプラグのフランジとバレルの内面との間で、第2の溶液を通過させることを開示している。
【0011】
第2の溶液を注入するために必要な高い力から生じる以前の欠点は、ユーザーがバレルに対してプラグを回転させるのに十分な力をプランジャーに加えなければならないため、この特許文献2の装置では解決されない。さらに、プラグのフランジとバレルの内面との間のギャップは、バレルの直径に比べて非常に小さい。したがって、ユーザーは、これらのギャップを通る液体の通過を強制するのに十分な力をプランジャーに加える必要がある。したがって、第2の溶液の注入には、ユーザーの重要な努力が必要である。
【0012】
さらに、プラグのフランジがバレルの内面に沿ってスライドするため、プラグによって提供される2つのチャンバーの密封は、第1の溶液の注入中に2つの溶液の混合を防ぐのに十分でない場合がある。バレルに対するフランジの摩擦により、フランジ間に望ましくないギャップが生じ、第2の溶液が通過して第1の溶液と混合する可能性がある。
【0013】
特許文献3は、それぞれが溶液を含む2つのチャンバーを分離するバレルおよびバルブアセンブリを含むマルチチャンバーシリンジを開示している。バルブアセンブリは、バルブ付きストッパーとバルブアクチュエーターを含む2つの部分で構成されている。バルブアクチュエーターは、バルブ付きストッパーの遠位面に設けられたバルブを形成するスリットを選択的に開閉するために、バルブ付きストッパーに設けられた中空容積に挿入される。
【0014】
バルブアセンブリの構造は非常に複雑であり、バルブアセンブリの機能とその製造に悪影響を与える可能性がある。このようなバルブアセンブリは、バレル内にも多くのスペースを必要とし、これにより、滑走が制限され、注入を実行するために必要な力が増加する可能性がある。さらに、バルブアクチュエーターは十分に変形できない可能性があり、それはバルブ付きストッパー(圧縮比)に負担をかけ、バルブアセンブリの気密性を確保することと低い滑動力を可能にすることとの間の競合につながる。
【0015】
特許文献4は、それぞれが溶液を含む2つのチャンバーを分離するピストンを含む皮下注射器を開示している。ピストンは、外部リブを備えた壁と、ピストンの遠位面から延びるラグとを備えている。第2の溶液を含む近位チャンバー内の圧力が十分に高い場合、ピストンの壁が崩壊し、第2の溶液がピストンと注射器のバレルの内面との間の空間を通過する可能性がある。
【0016】
この特許文献4は、上記の問題を解決しない。さらに、ピストンの構造は複雑であり、ピストンの体積が大きいため、注入できる溶液の最大量が減少する。同様に、ストッパーの容量が大きくなる可能性があり、これにより、注入できる溶液の最大容量も減少する。
【0017】
前述の特許文献のいずれでも解決されないもう1つの問題は、デッドボリューム(dead volume)に関するものである。第2の溶液の注入の終わりに、より遠位のチャンバーにおいて、少量の第2の溶液がチャンバー内に残る。この少量はデッドボリュームと呼ばれる。非常に正確な量の溶液を注入する必要がある場合は、デッドボリュームを考慮する必要があり、これには追加の計算が必要であり、効果的に注入された溶液の量に誤差が生じる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】国際公開02/076534号パンフレット
【文献】欧州特許出願公開第1844804号明細書
【文献】米国特許第6,997,910号明細書
【文献】米国特許第4,929,230号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、既知の装置の欠点を克服した、少なくとも1つの組成物を注入するための、好ましくは医薬組成物であってもよい少なくとも2つの組成物を順次注入するための、医療用注入装置用のバルブストッパー、および前記バルブストッパーを含む注入装置を提供することを目的とする。
【0020】
本発明は、特に、ユーザーが注入装置のバレルに含まれる第2の組成物の注入を容易に実行できるようにするとともに、第1の組成物が完全に注入される前に2つの組成物が混合するのを防ぐための最適な密封を確保することができる、そのようなバルブストッパーおよび注入装置を提供することを目的とする。
【0021】
本発明はまた、従来技術のストッパーと比較してより少ない体積を呈し、注入された組成物のデッドボリュームを減少させることを可能にするそのようなバルブストッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的のために、本発明の1つの目的は、バレルの遠位端を通して少なくとも1つの組成物を注入するための注入装置のバレルの内側に配置されるように構成されたバルブストッパーであり、前記バルブストッパーは、
● 近位面および遠位面を含む膜であって、バレルの第1の遠位チャンバーをバレルの第2の近位チャンバーから分離するように構成された膜と、
● 膜から遠位に、または遠位と近位の両方に延在して、少なくとも遠位のキャビティを画定する側壁であって、バレルの内面に密封的に係合するように構成された円周方向の密封面を備える側壁と、を備え、
膜の近位面が凹状形状を呈し、膜が、近位面と遠位面との間で膜の厚さの少なくとも一部を通って延びるノッチを有し、ノッチは、第2のチャンバーから第1のチャンバーに流体のみを移送するために、組成物が膜の近位面に及ぼす圧力に応じて、近位面から遠位面へと膜を通る流体経路を選択的に形成するように構成されていることを特徴とする。
【0023】
バルブストッパーの他のオプション機能によると:
- 側壁は、遠位方向に加えられる機械的圧力の下でバルブストッパーの崩壊を誘発するように構成された内側の凹部を備え;
- 内側の凹部は、バルブストッパーの円周に沿って側壁に延びる環状の溝であり;
- バルブストッパーは、中央リブと2つの側方リブを含む3つのリブで構成され、膜は中央リブと位置合わせされており;
- ノッチは、膜の厚さの一部にのみ延在し、それによって、ノッチが横切らない膜の厚さの引き裂き部分を区切り、前記引き裂き部分は、流体経路を作成するための組成物によって加えられる決定された圧力の下でノッチに沿って裂けるように構成され;
- 膜の引き裂き部分は、組成物によって膜の近位面に加えられる圧力に応じてキャビティを開閉するように構成された弁を形成し;
- ノッチは、膜の遠位面から膜の一部を通って延び;
- ノッチの深さは、0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上であり;
- ノッチは楕円形上であるか、十字の中心で交差する2つのセグメントを含む十字の形をしており;
- ノッチは、近位面と遠位面との間の膜を通って延びるスプリットであり、前記スプリットは、組成物によって膜の近位面に加えられる圧力に応じてキャビティを開閉するように構成された弁を形成し;。
【0024】
- ノッチは、膜の近位面の中心を通る線の形をしており;
- ノッチはさらに2つのセグメントを含み、各セグメントは線の端の両側に延び;
- 膜の遠位面は平面または凸状形状を呈し、遠位面の湾曲は近位面から離れて伸びており;
- ノッチは、キャビティの直径の4分の1よりも長く、前記キャビティの直径よりも短い長さを呈す。
【0025】
本発明の別の目的は、少なくとも1つの組成物を注入するための医療用注入装置であり、
● 近位端から遠位端まで延びるバレルと、
● バレル内で並進的に移動できるように適合されたプランジャーストッパーと、
● 前述のバルブストッパーであって、バレルの遠位端とプランジャーストッパーとの間に配置され、バレル内で並進移動可能に適合されており、バルブストッパーの側壁がバレルの内面に密封係合する、バルブストッパーと、を備える。
【0026】
医療用注入装置の他のオプション機能によると:
- 前記医療用注入装置は、2つの組成物を順次注入するように適合されており、前記バルブストッパーは、前記バルブストッパーと前記バレルの遠位端との間に第1の組成物を含む第1のチャンバーと、前記バルブストッパーと前記プランジャーストッパーとの間に第2の組成物を含む第2のチャンバーとを含む、前記バレルの2つのチャンバーを分離する;
- バルブストッパーは、次の連続した位置:
● 流体経路が閉じている静止位置、
● シール位置であって、バルブストッパーが静止位置よりも遠位にあり、流体経路が閉じており、膜の近位面は、ノッチのバルブ開放力Fopよりも低い圧力にさらされている、シール位置、
● 注入位置であって、バルブストッパーがバレルの遠位端に隣接し、ノッチのバルブ開放力Fopよりも大きい膜の近位面に加えられる圧力のために流体経路が開かれる、注入位置と、を示す;
- バルブストッパーはさらに、プランジャーストッパーがバルブストッパーに隣接し、前記バルブストッパーが折りたたまれている、折りたたまれた位置を示し;
- 医療用注入装置は有利には注射器であり;
- 膜の近位面は、バレルの内径よりも1.2~2.3倍大きい曲率半径を示す。
【0027】
本出願において、「遠位方向」は、注入装置に関して、注入の方向を意味すると理解されるべきである。遠位方向は、第1の組成物および/または第2の組成物の注入中のバルブストッパーおよびプランジャーストッパーの移動方向に対応し、注入装置のバレルに最初に含まれる前記組成物は、注入装置から排出される。「近位方向」は、前記注入の方向と反対の方向を意味すると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明から明らかになるであろう:
図1図1は、第1の一般的な実施形態による、本発明によるバルブストッパーの斜視概略図である。
図2図2は、図1のバルブストッパーの断面概略図である。
図3A図3Aは、第1の組成物を注入する前に、第1の組成物と第2の組成物を分離するバルブストッパーを含む医療用注入装置の断面図である。
図3B図3Bは、第1の組成物の注入の終わりにおける、図3Aの医療用注入装置の断面図である。
図3C図3Cは、第2の組成物の注入中の、図3Aの医療用注入装置の断面図である。
図3D図3Dは、第2の組成物の注入の終わりにある、図3Aの医療用注入装置の断面図であり、バルブストッパーは折りたたまれた位置にある。
図3E図3Eは、スプリットを含む平面における、第1の一般的な実施形態によるバルブストッパーの断面図であり、逆止弁の機能を示しており、弁は開いている。
図3F図3Fは、逆止弁の機能を説明する第1の一般的な実施形態によるバルブストッパーの図であり、弁は閉じられている。
図4図4は、第2の一般的な実施形態の第1の実施形態による、本発明のバルブストッパーの斜視概略図である。
図5図5は、図4のバルブストッパーの遠位面の図である。
図6図6は、図4のバルブストッパーの断面概略図である。
図7図7は、図4のバルブストッパーの側断面概略図である。
図8図8は、第2の一般的な実施形態の第2の実施形態による、本発明のバルブストッパーの斜視概略図である。
図9図9は、図8のバルブストッパーの遠位面の図である。
図10図10は、図8のバルブストッパーの断面概略図である。
図11図11は、図8のバルブストッパーの側断面概略図である。
図12A図12Aは、ノッチを含む平面における第2の一般的な実施形態の第1の実施形態によるバルブストッパーの断面図であり、バルブストッパーの膜を通る流体経路の作成を示している。
図12B図12Bは、流体経路が閉じている、第2の一般的な実施形態の第1の実施形態によるバルブストッパーの断面図である。
図13A図13Aは、ノッチを含む平面における第2の一般的な実施形態の第1の実施形態によるバルブストッパーの断面図であり、バルブストッパーの膜を通る流体経路の作成を示している。
図13B図13Bは、流体経路が閉じている、第2の一般的な実施形態の第1の実施形態によるバルブストッパーの断面図である。
図14図14は、流体経路が膜を通って開く、第2の一般的な実施形態の第1の実施形態によるバルブストッパーの斜視概略図である 。
図15図15は、流体経路が膜を通って開く、第2の一般的な実施形態の第2の実施形態によるバルブストッパーの斜視概略図である。
図16図16は、ベンチの変位の観点から、本発明によるバルブストッパー、および従来技術から知られているストッパーに加えられる力の進展を示すグラフである。
図17図17は、既知のストッパーおよび本発明によるバルブストッパーについて、バルブ開放力と呼ばれる、バルブを開放するのに必要な力を示すグラフである。
図18図18は、本発明によるバルブストッパーおよび従来技術から知られているストッパーの最大滑動力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、少なくとも1つの組成物を注入するために、好ましくは少なくとも2つの組成物を連続して注入するために、注入装置100のバレル101の内側に配置されるよう構成されたバルブストッパー1に関する。そのような注入装置100は、医療専門家による患者への、または自己注射の場合には患者自身による、医薬組成物の注射を実施するのに特に適している。
【0030】
組成物は流体であり、医薬品、ワクチンなどの液体であり得る。バレルが前記組成物で満たされている場合、空気、窒素、または別のガスまたはそれらの混合物などのガスが(小さな気泡の形で)前記バレル内に存在し得る。
【0031】
本発明によるバルブストッパー1の第1の一般的な実施形態は、図1に全体図として、図2に断面図として示されている。
【0032】
バルブストッパー1は、実質的に円筒形であり、注射器等の注射装置のバレル101の形状に対応し、バルブストッパーを挿入する。
【0033】
バルブストッパー1は、近位面6および遠位面7を備える膜2を備える。バルブストッパーの側壁3は、膜から遠位に、または遠位と近位の両方に延びる。
【0034】
側壁3は、側壁の内面5と膜の近位面6または遠位面7とによって区切られた中空の容積であるキャビティ4を画定する。
【0035】
図1および図2に表される実施形態では、側壁3は遠位方向にのみ延在し、キャビティ4は、側壁の内面5およびキャビティの底部を構成する膜の近位面6によって区切られる。
【0036】
別の実施形態(図示せず)によれば、バルブストッパーの側壁3は、膜2から近位および遠位の両方に延びる。それにより、膜は、側壁の内面5および膜の近位面6によって区切られる近位キャビティ、ならびに側壁の内面5および膜の遠位面7によって区切られる遠位キャビティを含む、2つのそれぞれのキャビティを分離する。
【0037】
側壁3は、バレルの内壁に密封係合するように構成された外部密封面8を有利に備えている。
【0038】
密封面8は連続的であり、これは、それがバルブストッパーの円周に沿って連続的に延在し、リングを形成することを意味する。連続面は、バルブストッパー1の側壁の外面と医療用容器のバレルの内面102との間に延在するため、バルブストッパー1とバレル101との間の組成物の通過が防止される。したがって、最適な密封が保証される。
【0039】
好ましい実施形態によれば、密封面8は、2つ以上の密封リブ9を含み得る。リブの数、ならびに高さ、幅、および2つの隣接するリブ間の距離などの各リブの寸法は、バルブストッパーおよびバレルの寸法に応じて、密封をさらに最適化するように適合させることができる。
【0040】
一実施形態(図示せず)によれば、バルブストッパー1は、中央リブおよび2つの側方リブを含む3つのリブ9を含み、膜は中央リブと整列している。この実施形態では、バルブストッパーの側壁3は、膜から近位および遠位の両方に延在し、2つのキャビティを区切る。2つの側方リブは、それぞれ2つのキャビティの1つと位置合わせされる。別の実施形態(図示せず)によれば、バルブストッパーの側壁3は、主に膜から近位方向に延在し、側壁のより小さな部分が突出し、膜から遠位方向に延在する。この実施形態では、バルブストッパー1とバレルの遠位端との間に含まれる組成物中に存在する気泡の数を減らすことができる。
【0041】
2つ以上のリブの存在は、バルブストッパーの平面側壁と比較して、バルブストッパーの側壁と注射装置のバレルの内面との間の接触面を減少させ、したがって、バレルに対するバレルストッパーの滑動性能を改善する。その結果、バルブストッパーをバレル内に移動させるためにバルブストッパーに加える必要のある力が減少し、ユーザーが注射しやすくなり、通常はバルブストッパーのバレルに対してのスライドによって生じるスリップスティック効果が防止される。また、リブ間の距離が大きいほど、バルブストッパーの安定性が高くなる。
【0042】
膜の近位面6は凹状形状を呈する。
【0043】
膜の遠位面7は、平面または凸状形状を呈する。
【0044】
膜の面に関する「凹状」という用語は、当該面が湾曲しており、湾曲の頂点が図3Eの平面Pに向かっていることを意味し、この平面は、遠位-近位方向に直交する平面であり、膜の最も薄い領域における厚さの中央部を構成している。逆に、膜の面に関連する「凸状」という用語は、前記面が湾曲しており、曲率の頂点が平面Pから離れて延びることを意味する。
【0045】
したがって、凹状形状を示す、膜の近位面の曲率の頂点は、膜の遠位面に向かって延びる。膜の遠位面が凸状形状を示す場合、前記遠位面の曲率の頂点は、膜の近位面から離れて延びる。
【0046】
膜2はノッチを含む。前記ノッチは、膜2の近位面6と遠位面7との間の膜の厚さの少なくとも一部を通って延びる。ノッチは、膜2の近位面6から遠位面7まで、膜2を通る流体経路30を作成するように構成される。第1の一般的な実施形態によれば、ノッチは、近位面6と遠位面7との間の膜を通って延びるスプリット10である。スプリット10は、組成物によって膜の近位面6に加えられる圧力に応じて、キャビティ4を開閉するように構成された弁を形成する。
【0047】
バルブストッパーは、医療用注射装置のストッパーを製造するために通常使用されるエラストマー特性を備えた任意の材料で作ることができる。例えば、バルブストッパーは、エラストマー、ゴム、熱可塑性エラストマー、および液体シリコーンゴムでできていてもよい。
【0048】
スプリット10は、好ましくは、膜の近位面の中心を通過する線11の形態であり、好ましくは直線である。このような線は製造が非常に簡単である。膜はスプリット無しに製造し、次に穴を開けてスプリットを形成することができる。あるいは、スプリットは、膜の製造中に直接膜に形成され得る。
【0049】
スプリット11の長さは、好ましくは、キャビティの直径の4分の1よりも長く、キャビティ4の直径よりも短い。キャビティの直径の4分の1未満の長さでは、バルブを開くためにユーザーからの非常に大きな力が必要になり、それによって注入の実行が困難になる。逆に、キャビティの直径よりも長い長さは、キャビティに至らないスプリットの部分を役に立たなくし、スプリットの機能を低下させる可能性がある。
【0050】
一実施形態によれば、スプリット10は、2つのセグメント12をさらに含み、各セグメントは、線11の端部の両側に延在し、それにより、大文字の「i」を形成する。この実施形態は、スプリットのより大きな開口部を達成する。図1では、2つのセグメント12は、スプリットの線11に実質的に垂直であり、好ましくは、膜の曲率に一致するようにわずかに湾曲しており、これにより、スプリット10の開放が容易になる。
【0051】
有利なことに、バルブストッパーの膜2は、0.3mmから1mmの間で構成される厚さを有する。好ましくは、バルブストッパーは、1mLから3mLの間に含まれる注入容量を有する注入装置で使用され、膜2の厚さは、0.4mmから0.8mmの間に含まれ、好ましくは、膜2の厚さは、0.5mm以上、好ましくは、0.6mm以上である。
【0052】
膜2は一方向膜であり、これは、前記組成物が遠位方向、すなわち注入方向に流れる場合にのみ、組成物がオープンスプリット10を介して膜を通過できるように膜が構成されることを意味する。言い換えれば、スプリットは、組成物が膜の近位面6に接触するバルブストッパーの一方の側から、組成物が膜の遠位面7に接触するバルブストッパーの別の側に、組成物が膜を通過することを可能にするためにのみ開くように構成される。スプリット10は、組成物が膜の遠位面7に接触するバルブストッパーの他方の側から、組成物が膜の近位面6に接触するバルブストッパーの一方の側まで、すなわち注入方向と反対の方向である近位方向に、組成物が膜を通過するのを防ぐために閉じたままであるように構成される。このようなバルブは「チェックバルブ」と呼ばれる。
【0053】
スプリット10は、スプリットを開くために膜の近位面に加えられる必要がある力に対応するバルブ開放力Fopを提示する。したがって、バルブ開放力は、スプリットの開放しきい値に対応する。バルブ開放力は、好ましくは10N~25N、好ましくは10N~20N、より好ましくは15N~20Nで構成される。スプリット10は、膜の近位面6にかかる圧力P2がFopよりも小さい間は閉じたままであり、前記圧力P2がFopと同等以上になると開くように構成されており、これにより、バルブストッパーに対して最初に近位に位置する組成物の注入が可能となる。
【0054】
膜の近位面の凹状形状は、バルブ開放力Fopを最小化し、それにより、弁が逆止弁として機能することを可能にしながら、弁の開放およびその後のバルブストッパーに対して近位に位置する組成物の注入を容易にする。
【0055】
本発明者らによる計算によれば、膜の凹面の曲率半径は、好ましくは、注射器のバレルの内径よりも約1.8倍±30%大きい(すなわち、1.2倍から2.3倍大きい)。近位面の曲率半径とバレルの内径との間のこの比率は、注入のためにバルブを開くために必要な力を制限するために最適化されている。
【0056】
スプリットの形状は、第2の液体の注射力に影響を与える。スプリットが小さいほど、注射力は大きくなる。
【0057】
バルブストッパーの側壁3は、有利には、遠位方向に加えられる機械的圧力下でバルブストッパー1の崩壊を誘発するように構成された内部凹部13を備える。
【0058】
図2の実施形態では、少なくとも1つの凹部13は、バルブストッパーの円周に沿って側壁3に延びる環状溝である。好ましくは、凹部13のみが側壁3内に延びる。環状溝は、好ましくはリブ9と位置合わせされ、より好ましくは、リブの数が奇数の場合、中央のリブと位置合わせされる。
【0059】
内部凹部13の存在は、ストッパーの崩壊を可能にし、したがって、デッドボリュームを減少させ、これは、注射後にバルブストッパーと接触し、かつバルブストッパーに対して遠位にあるバレル101の内部に留まる組成物の体積に対応する。これにより、注入される組成物の総量を増やすことができ、組成物の無駄を防ぐことができる。
【0060】
本発明によるバルブストッパー1の第2の一般的な実施形態は、図4~11および14~15に示され、図4~7および14は、バルブストッパーの第1の実施形態に向けられ、図8~11および15は、バルブストッパーの第2の実施形態に向けられている。
【0061】
第2の一般的な実施形態のバルブストッパーの一般的な構造は、前述の第1の一般的な実施形態の構造と同様であり、これ以上説明しない。図1~3および4~11に示されている第1の一般的な実施形態と第2の一般的な実施形態との間の共通の特徴には、同じ参照が与えられている。
【0062】
第1の一般的な実施形態に対する第2の一般的な実施形態の利点は、バルブストッパーの製造プロセス中に膜がその構造的完全性を維持することであり、これにより、特に真空を含むステップが実行されるときに、前記プロセスを実行しやすくする。
【0063】
第2の一般的な実施形態によれば、ノッチ20は、膜2の厚さの一部にのみ延びる。膜の厚さのうち、ノッチによって横断されない部分21は、引き裂き部分と呼ばれ、近位面6から遠位面7まで膜2を通る流体経路30を形成するように、組成物によって及ぼされる決定された圧力の下でノッチに沿って引き裂くように構成されている。
【0064】
そうするために、ノッチ20は、膜2に局所的な弱化ゾーンを形成し、これは、注入される組成物によってその近位面の前記1つに、決定された圧力が加えられると、膜を引き裂く。引き裂かれると、引き裂き部分21は、このように形成された流体経路に沿った組成物の流れのガイドとしても機能する。
【0065】
引き裂き部分21は、組成物によって膜2の近位面6に加えられる圧力に応じて、キャビティ4を開閉するように構成された弁を形成する。
【0066】
ノッチ20は、好ましくは膜の遠位面7から膜2の一部を通って延びる。あるいは、ノッチは、膜の近位面6から延びることができる。
【0067】
好ましくは、バルブストッパーは、1mLから3mLの間に含まれる注入容量を有する注入装置で使用され、膜2の厚さは、0.4mmから0.8mmの間に含まれ、好ましくは、膜2の厚さは、0.5mm以上であり、より好ましくは0.6mm以上である。
【0068】
ノッチ20の深さは、好ましくは、膜の厚さの約25%から50%の間、より好ましくは、膜の厚さの25%から35%の間で構成される。約0.5mmの厚さを有する膜の場合、ノッチ20の深さは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.2mm以上である。これは、前記膜を引き裂くのに必要な組成物によって及ぼされる圧力を下げることによって、膜の引き裂きを容易にする。
【0069】
第1の一般的な実施形態と同様に、第2の一般的な実施形態による膜2は、前記組成物が注入方向を意味する遠位方向に流れる場合にのみ、前記ノッチ20を介して前記膜を通過することができるように構成された一方向膜である。言い換えれば、引き裂き部分21は、組成物が膜の近位面6に接触するバルブストッパーの一方の側から、組成物が膜の遠位面7に接触するバルブストッパーの他方の側まで、組成物が膜を通過することを可能にするためにのみ開くように構成されている。それにより、膜の引き裂き部分21は、逆止弁として機能するように構成される。
【0070】
引き裂き部分21は、膜の近位面6に加えられる圧力P2が弁開放力Fopよりも小さい限り閉じたままであり、前記圧力P2がFop以上であるときに引き裂くことによって開くように構成され、 それにより、膜を通る流体経路が形成され、バルブストッパーに対して最初に近位に位置する組成物の注入を可能にする。
【0071】
図4~7に示される第2の一般的な実施形態の第1の実施形態によれば、ノッチは楕円形の形態を有する。楕円形の形状は、共通の線23で結合する2つの対向する傾斜面22を含む。2つの対向する傾斜面22は、2つの円錐形の端部24によって横方向に結合されている。共通の線は、膜の引き裂き部分21に接触し、引き裂きの開始点を構成する。
【0072】
したがって、組成物によって膜に加えられる圧力がバルブ開放力Fopよりも大きい場合、共通の線23は引き裂かれ、膜2の引き裂き部分21の引き裂きを誘発する。これにより、膜を通る流体経路が作成される。
【0073】
2つの傾斜面22の傾斜方向は、ノッチがそこから延びる膜の面に依存する。ノッチ20が膜の遠位面7から延びる場合、傾斜面22は、組成物の注入方向とは反対の近位方向に向けられる。逆に、ノッチ20が膜の近位面6から延びる場合、傾斜面22は、組成物の注入方向である遠位方向に向けられる。
【0074】
楕円形のノッチには、さまざまな構造上のバリエーションを加えることができる。例えば、2つの円錐形の端部24は、互いに平行な2つの真っ直ぐな壁によって置き換えることができる。さらに、傾斜面と膜の近位面または遠位面との交点は、楕円形の縦方向の側面から、図4および5に示すように互いにわずかに曲がっていてもよいし、互いに平行な直線であってもよい。
【0075】
図8~11に示される第2の一般的な実施形態の第2の実施形態によれば、ノッチ20は十字の形態である。十字は、十字の中心で交差する2つの垂直なセグメント25を含む。膜は、好ましくは、十字の中心でのみ裂ける。センターは、図8図9では、センター十字26と呼ばれる細い線で描かれた別の十字で表現されているが、これは随意である。センター十字26は、膜の引き裂き部分21に接触し、引き裂きの開始点を構成し得る。もちろん、十字20は一気に完全に裂ける可能性があり、センター十字26(存在する場合)および2つの垂直なセグメント25は実質的に同時に裂ける。
【0076】
したがって、組成物によって膜に加えられる圧力がバルブ開放力Fopよりも大きい場合、十字20は引き裂かれ、膜の引き裂き部分21の引き裂きを誘発する。これにより、膜を通る流体経路が作成される。好ましくは、センター十字26のみが裂け、センター十字を区切る十字の突出部分27は裂けないが、センター十字の引き裂きに追従するように変形し、こうして形成された流体経路に沿って組成物の流れを導くことができる。
【0077】
その長さ、幅、および深さなどのノッチ20の寸法は、第2の組成物を注入するために必要な注入力を調整するように適合させることができる。第2の一般的な実施形態の第1の実施形態、長方形の長さおよび幅に関して、傾斜面の傾斜角は、それに応じて適合させることができる。第2の一般的な実施形態の第2の実施形態に関して、十字の2つのセグメントの長さおよび幅もそれに応じて調整することができる。
【0078】
本発明のバルブストッパー1は、少なくとも1つの組成物を注入するために、好ましくは少なくとも2つの組成物を順次注入するために、注入装置100のバレル101の内側に配置されるように構成される。そのような注入装置の実施形態が図3Aに示されている。
【0079】
図3Aを参照すると、注入装置100は、近位端103から遠位端104まで延びるバレル101を含む注射器である。遠位端は、組成物の通過のためのチャネル106を囲む先端105を備えている。
【0080】
注入装置100は、組成物を注入するためにバレル内で並進的に移動可能であるように適合されたプランジャーストッパー107を備える。プランジャーストッパーは、有利には、前記プランジャーロッドがプランジャーストッパーを遠位方向に押して注入を行うときに前記ヘッドを収容するために、プランジャーロッドのヘッドの形状に対応する形状を有する中空容積110を備える。
【0081】
バルブストッパー1は、バレルの遠位端104とプランジャーストッパー107との間に配置され、バレル101内で並進運動可能である。バルブストッパー1は、バルブストッパー1とバレルの遠位端104との間の第1のチャンバー108と、バルブストッパー1とプランジャーストッパー107との間の第2のチャンバー109とを含む、バレルの2つのチャンバーを分離する。
【0082】
第1のチャンバー108は、最初に注入されることを意図された第1の組成物を含み、第2のチャンバー109は、第1の組成物が注入された後に注入されることを意図された第2の組成物を含む。
【0083】
第1および第2の組成物は、同じであっても異なっていてもよい。そのような組成物は、医薬であり得、粘弾性であり得る。
【0084】
注入装置100は、2つ以上のバルブストッパー1を含み得、そして2つ以上の組成物を注入するために使用され得ることに留意されたい。例えば、注入装置は、バレルの遠位端と前記第1バルブストッパーとの間に位置する第1チャンバーと、前記第1バルブストッパーと第2バルブストッパーとの間に位置する第2チャンバーとを分離する第1バルブストッパーと、前記第2チャンバーを分離する第2バルブストッパーと、前記第2バルブストッパーとプランジャーストッパーとの間に位置する第3チャンバーとを含む2つのバルブストッパーを含み得る。第1、第2、および第3の各チャンバーには、組成物が含まれている。
【0085】
注入前に、スプリット10は閉じられ、これは、バルブストッパー1が注入装置のバレル101に挿入されるとき、スプリット10は、バルブストッパーの半径方向の圧縮下で閉じられたままであり、前記バルブストッパー自体がバレルの半径方向の圧縮にさらされることを意味する。クローズドスプリット10は、第1の組成物が第2のチャンバー109に入るのを防ぎ、第2の組成物が第1のチャンバー108に入るのを防ぐことによって、第1および第2の組成物の混合を防ぐ。
【0086】
バルブストッパーの2つ以上のリブ9は、バレルの内面102に密封係合する。したがって、第1および第2の組成物は、バルブストッパー1とバレル101との間の通路を介してチャンバーから別のチャンバーに通過することができない。
【0087】
次に、図3Aから3Dを参照して、バルブストッパーおよび前記バルブストッパーを含む注入装置の機能を、本明細書の以下で説明する。
【0088】
以下のステップでは、ノッチの第1の一般的な実施形態および第2の一般的な実施形態の両方について並行して説明される。
【0089】
図3Aは、第1の組成物の注入前の注入装置100の構成に対応する。
【0090】
この構成では、バルブストッパー1は、流体経路が閉じられている静止位置にある。第1の一般的な実施形態に関して、静止位置では、スプリット10は、バルブストッパーの半径方向の圧縮下で閉じた状態に維持され、プランジャーストッパー107は近位位置にある。第2の一般的な実施形態に関して、静止位置では、膜の引き裂き部分21は構造的に無傷であり、したがって、キャビティ4は閉じられている。
【0091】
第1のチャンバー108の圧力P1および第2のチャンバー109の圧力P2は実質的に等しく、その結果、差圧ΔP=P2-P1は実質的に零であり、したがってスプリットのバルブ開放力Fopよりはるかに低い 。したがって、ノッチは閉じたままである。
【0092】
ユーザーは最初の組成物の注入を実行する。注入装置100の構成は、図3A図3Bの構成の間にある。プランジャーストッパー107に加えられた力は、第2のチャンバー109に伝達され、次にバルブストッパー1に伝達され、その結果、第2の組成物によってバルブストッパーの膜2の近位面に加えられる力F2が生じる。
【0093】
遠位方向へのバルブストッパー1の変位は、第1の組成物を遠位方向に押し、前記第1の組成物は、先端のチャネル106によって注射器から排出される。この構成では、バルブストッパー1はシール位置にある。
【0094】
チャネル106の直径がバレル101の直径よりもはるかに小さいので、バルブストッパー1の変位は、第1のチャンバー108内に圧力を蓄積する。圧力P1のこの増加は、注入のためのチャネルを通して第1の組成物を強制するだけでなく、バルブストッパーの変位とは反対に、バルブストッパーの膜の遠位面7にも適用される。結果として、バルブストッパー1は、第1の組成物および第2の組成物によってそれぞれバルブストッパーの膜の近位面6および遠位面7に加えられる実質的に等しく反対の圧力P1およびP2にさらされる。
【0095】
結果として、差圧ΔPは実質的に零であり、したがって、ノッチのバルブ開放力Fopよりもはるかに低い 。バルブストッパー1の変位中、差圧ΔPは実質的に零ではないかもしれないが、ノッチのバルブ開放力Fopよりも低いままである 。したがって、第1の一般的な実施形態のスプリット10は閉じたままである。第2の一般的な実施形態の引き裂き部分21は無傷のままである。
【0096】
図3Bに示されるように、注入は、バルブストッパー1がバレルの遠位端104に隣接するまで続く。第1の組成物の一部は、依然として第1のチャンバー108に残っている。
【0097】
バルブストッパー1はそれ以上遠位に移動することができないので、第2のチャンバー109内の圧力P2は増加し、力差ΔPは弁開放力Fopよりも大きいものになる。
【0098】
結果として、第1の一般的な実施形態に関して、スプリットは開き、それにより、図3Cに示されるように、第2の組成物が、注入のためのチャネルまで前記スプリットを通過することを可能にする。この構成では、バルブストッパーは注入位置にある。
【0099】
この状況は、図3Eにも詳細に表されており、第2の組成物によって膜2に加えられる力は矢印F2で表され、弁を開く力は小さい矢印F2aで示されている。
【0100】
第2の一般的な実施形態に関して、引き裂き部分21は引き裂かれ、それにより膜を通る流体経路30が形成され、第2の組成物が流体経路に沿って、ノッチおよび引き裂かれた引き裂き部分21を通って、注入用のチャネルに通過することができる。
【0101】
この状況はまた、第2の一般的な実施形態の第1および第2の実施形態について図12Aおよび13Aにさらに詳細に表され、ここで、第2の組成物によって膜2に及ぼされる力は矢印F2によって表され、流体経路を開放するための力は、小さい矢印F2aで示されている。流体経路30は点線で示されている。
【0102】
図14および15は、第2の一般的な実施形態の第1および第2の実施形態の流体経路30の開口部を、バルブストッパーの全体斜視図とともに示している。
【0103】
この構成では、バルブストッパーは注射位置にある。
【0104】
前に説明したように、この時点で、第1の組成物の一部が第1のチャンバー108に残っている。したがって、第2の組成物の注入の開始時に、第1の組成物の一部および少量の第2の組成物は、両方の組成物が同じ流体経路を通して注入されるので、混合され得る。
【0105】
第2の組成物の注入の終わりに、プランジャーストッパー107は、バルブストッパー1に隣接する。第2の組成物の一部は、デッドボリュームに対応する第1のチャンバー108に残る。
【0106】
バルブストッパー1は、プランジャーストッパー107によって加えられた圧力の下で崩壊し、崩壊は、内側の凹部のおかげで開始される。したがって、図3Dに示すように、バルブストッパーは折りたたまれた位置にある。バルブストッパーの崩壊により、キャビティ4の容積が減少し、デッドボリュームが注入される。
【0107】
バルブストッパーが近位キャビティを含む場合(図示せず)、プランジャーストッパーは、有利には、前記近位キャビティに適合する遠位ピンを含み得る。このようにして、前記ピンがバルブストッパーの近位キャビティに係合することにより、第2の組成物を近位キャビティからスプリットを通して排出することが可能になる。
【0108】
一実施形態によれば、静止位置にあるバルブストッパーは、注射器の遠位端に接触する。この構成では、第1のチャンバーの容積が最小化される。第2のチャンバーは、注入される組成物を含む。この構成は、1つの組成物、特に薬物のみを注入する場合に特に有用であり、前記薬物(たとえばエピネフリン)は汚染物質に非常に敏感であり、したがって(たとえば針の)接着剤/金属または空気からの追加の保護が必要である。
【0109】
好ましい実施形態によれば、吸引効果を生成し、空である第1のチャンバーを組成物で満たすことを可能にするために、バルブストッパーが近位方向に動かされる。この組成物は通常、血液または別の薬物であり、この場合、この操作は「静脈検査」または「再構成」と呼ばれる。
【0110】
静脈試験または再構成中、チェックバルブ機能(図3F、12B、および13B)のおかげでノッチは閉じたままであり、それによって吸引された組成物が最初の組成物と混合するのを防ぐ。吸引力は矢印F1で表され、流体経路を閉じた状態に維持する、第2の組成物によって膜に加えられる力は、小さい矢印F2bで表される。
【0111】
静脈試験または再構成は、第1の組成物の注入の前に実施することができる。この場合、別のバルブストッパーがバレルの遠位端と第1の組成物との間に設けられる。
【0112】
あるいは、静脈試験または再構成は、第1の組成物の注入中に実施され得る。この場合、注入は一時的に停止され、静脈検査が行われる。その後、第1の組成物の注入が再開される。
【0113】
本発明はまた、少なくとも1つの組成物を注射するための医療用注入装置100に関する。医療用注入装置は、
- 近位端103から遠位端104まで延びるバレル101と、
- バレル101内で並進移動可能に適合されたプランジャーストッパー107と、
- 前述のバルブストッパー1であって、バレルの遠位端104とプランジャーストッパー107との間に配置され、バレル101内で並進移動可能に適合されており、バルブストッパー1の側壁3がバレルの内面102に密封係合する、バルブストッパーと、を備える。
【実施例
【0114】
注入力の測定
第1の一般的な実施形態による本発明によるバルブストッパー、および当技術分野で知られているストッパーの注入力を決定するために、試験が実施されてきた。
【0115】
例えば、特許文献4において当技術分野で知られているストッパーは、ストッパーの円周に沿って半径方向外向きに延びるリブを備える。前記ストッパーが使用される場合、組成物は、リブとバレルの内面との間の通路を通過することが意図されている。従来の設計には、いかなるスプリットも含まれていない。当技術分野で知られている前記ストッパーの総体積は、約4mm3である。比較として、本発明のバルブストッパーの総体積は約162mm3である。
【0116】
バルブストッパーが密封位置にあるシリンジが使用されており、これは、前記バルブストッパーがシリンジのバレルの遠位端に隣接していないことを意味する(図3Aに対応する)。バレルの遠位端とバルブストッパー/既知の従来技術のストッパーとの間、およびバルブストッパー/既知の従来技術のストッパーとプランジャーストッパーとの間の両方のチャンバーは、注射器から排出される組成物を含む。注射器はテストベンチに取り付けられている。プランジャーストッパーは機械的に遠位方向に動かされ、プランジャーストッパーに加えられた力はベンチの変位の関数として記録された。この力は、バルブストッパー/既知の従来技術のストッパーの注入力に対応する。前記力は、バルブストッパー/既知の従来技術のストッパーのバルブ開放力Fopを含み、これは、曲線注入力(図3Bの構成に対応する)の局所的なピークに対応し、組成物が注入される際の滑動力にも対応している。バルブストッパーの前記注入力(N)は、ベンチ変位(mm)の関数として図16に表されている。バルブ開放力と最大滑動力の両方が表されている。本発明によるバルブストッパーの注入力は実線で表され、既知の従来技術のストッパーの注入力は点線で表されている。
【0117】
ベンチ変位が12mmの場合、注入力は約12Nまで増加する。これは、バルブストッパーの動作設定に対応しており、前記バルブストッパーに一定の力を加える必要がある。
【0118】
その後、滑動力は、ベンチ変位が30mmになるまで実質的に一定に保たれる。これは、バレルの遠位端とバルブストッパーとの間に最初に含まれる第1の組成物を注入するための、遠位方向のバルブストッパーの変位に対応する。この力は、従来の設計で観察された力と同等である。
【0119】
その後、ベンチ変位が35mmに達すると、注入力が急激に増加し、バルブ開放力Fopに対応する17.5Nの曲線の最大値に達する。
【0120】
次に、注入力は、第2の組成物を注入するための最大滑動力に対応する約14Nの平均値へと減少する。
【0121】
その後、バルブストッパーが崩壊し、2回目の注入が終了し、注入力が大幅に低下する。
バルブ開放力と滑動力の平均値の決定
第1の一般的な実施形態による本発明のいくつかのバルブストッパーおよび既知の先行技術のいくつかのストッパーについて、前述の試験が数回実施された。各試験で測定されたバルブ開放力Fopおよび前記異なるストッパーの最大滑動力の平均値は、それぞれ図17のグラフおよび図18のグラフに示されている。
【0122】
図17については、従来の設計に関して、バルブ開放力の平均値は27.5Nである。
【0123】
標準偏差も、2つのセグメントで区切られた垂直線でグラフに表される。標準偏差が小さいということは、測定値が異なると、平均値である27.5Nに近いバルブ開放力の値が得られることを意味している。
【0124】
本発明のバルブストッパー(「バルブ設計」)に関しては、バルブ開放力の平均値は15.5Nであり、従来の設計よりもはるかに低い。異なる厚さの膜を提示するバルブストッパーを使用してテストが実行されたため、標準偏差が高くなり、これは、スプリットの厚さに直接影響し、それによってバルブ開放力にも影響する。
【0125】
したがって、本発明のバルブストッパーは、従来の設計よりもはるかに低いバルブ開放力をもたらす。バルブ開放力は、使用者による組成物の注入を非常に容易にし、ひずみによる損傷を防ぐために十分に低く、そして、医薬組成物がその注入前に誤ってそのチャンバーを離れることを防ぐことによってバレルの堅固な密封を確実にするために十分に高くなっている。
【0126】
図18については、従来の設計の場合、最大滑動力の平均値は22.1Nである。標準偏差は小さく、測定値の違いによって平均値である22.1Nに近い滑動力の値が得られていることになる。
【0127】
本発明のバルブストッパーに関しては、最大滑動力の平均値は12.7Nであり、従来の設計よりもはるかに低い。膜の厚さが異なるバルブストッパーを使用してテストが実行されたため、標準偏差は平均であり、これは、バルブストッパーの重量に影響を与え、それによって滑動力にも影響を与える。
【0128】
したがって、本発明のバルブストッパーは、従来の設計よりもはるかに低いバルブ開放力をもたらす。これは、1つまたは複数のリブが組成物の通路を形成するのではなく、バレルの内面と恒常的に接触しているためで、バルブストッパーがシリンジの軸に対してオフセットするのを防ぎ、注入をよりスムーズに行うことができる。バルブ開放力は、使用者による組成物の注入を非常に容易にし、ひずみによる損傷を防ぐために十分に低く、そして、医薬組成物がその注入前に誤ってそのチャンバーを離れることを防ぐことによってバレルの堅固な密封を確実にするために十分に高くなっている。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18