(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】アクリル含有核輸送モジュレーターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C07D 401/12 20060101AFI20240802BHJP
A61K 31/4192 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/501 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/5355 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/537 20060101ALI20240802BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240802BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240802BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240802BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240802BHJP
C07D 403/12 20060101ALI20240802BHJP
C07D 413/12 20060101ALI20240802BHJP
C07D 471/04 20060101ALI20240802BHJP
C07D 471/08 20060101ALI20240802BHJP
C07D 471/10 20060101ALI20240802BHJP
C07D 487/04 20060101ALI20240802BHJP
C07D 487/10 20060101ALI20240802BHJP
C07D 491/107 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61K31/4192
A61K31/454
A61K31/496
A61K31/4985
A61K31/501
A61K31/505
A61K31/5355
A61K31/537
A61P29/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
C07D403/12
C07D413/12
C07D471/04 102
C07D471/04 104H
C07D471/04 104Z
C07D471/08
C07D471/10 101
C07D487/04 144
C07D487/10
C07D491/107
(21)【出願番号】P 2021550008
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 CN2020076525
(87)【国際公開番号】W WO2020173417
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】201910144005.4
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519416819
【氏名又は名称】ウィゲン・バイオメディシン・テクノロジー・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WIGEN BIOMEDICINE TECHNOLOGY (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING 11, LIBING ROAD 67, ZHANGJIANG HI‐TECH PARK, SHANGHAI 201203, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ホウシン
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ユリ
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521652(JP,A)
【文献】特表2015-516434(JP,A)
【文献】国際公開第2014/144772(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/205393(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)の化合物、またはその光学異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化1】
式中、
Xは-NH-または結合であり、
Xが-NH-である場合、Rが-NR
1COR
2であり、R
1およびR
2はそれらに連結されたアミド基と一緒になって、4-7員の飽和、不飽和または部分飽和複素環を形成し、前記複素環は、ハロゲン、CN、CF
3、CH
2CF
3、CH
2CN、OCF
3、OCH
2CF
3、OH、R
3、OR
3およびNR
3R
3′からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R
3およびR
3′はH、置換または非置換C1-C3アルキル、および置換または非置換C3-C6シクロアルキルからなる群から独立に選択され、または、
R
1およびR
2はそれらに連結したアミド基と一緒になって、5-6員芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、3-6員非芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、5-7員非芳香族複素環および3-6員非芳香族複素環によって形成されるスピロ環、または5-7員非芳香族複素環および4-6員非芳香族複素環によって形成される架橋環を形成し、前記5-6員芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、前記3-6員非芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、前記スピロ環、および前記架橋環はハロゲン、CN、CF
3、OCF
3、OCH
2CF
3、OH、R
3およびOR
3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R
3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
Xが結合である場合、Rは-NR
4NR
5COR
6であり、R
5はH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、アルコキシ置換C1-C3アルキル、シクロアルキル置換C1-C3アルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択され、R
4およびR
6はそれらに結合したヒドラジド基と一緒になって5-7員の非芳香族複素環を形成し、これはハロゲン、CN、OH、R
3およびOR
3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、かつ、R
3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルであり、または、
Xが結合である場合、Rは以下の基であり、
【化2】
式中、nは1または2であり、
Yは結合、-CH
2-、-CH
2CH
2-、-CO-、-SO
2-、-SO-、-CON(R
8)-、-SO
2N(R
8)-、および-COCON(R
8)-からなる群から選択され、式中、R
8はH、置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルであり、
R
7はH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C1-C3アルコキシ、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択される。
【請求項2】
一般式(1)の化合物が以下の式(1A)で表される請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化3】
式中、
R
1およびR
2がそれらに連結したアミド基と一緒になって、4-7員の飽和、不飽和または部分飽和複素環を形成し、前記複素環はハロゲン、CN、CF
3、CH
2CF
3、CH
2CN、OCF
3、OCH
2CF
3、OH、R
3、OR
3およびNR
3R
3′からなる群から選択される官能基によって任意に置換され、式中、R
3およびR
3′はH、置換または非置換C1-C3アルキル、および置換または非置換C3-C6シクロアルキルからなる群から独立に選択され、または、
R
1およびR
2がそれらに連結したアミド基と一緒になって、5-6員芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、3-6員非芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、5-7員非芳香族複素環および3-6員非芳香族複素環によって形成されるスピロ環、5-7員非芳香族複素環および4-6員非芳香族複素環によって形成される架橋環を形成し、前記5-6員芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、前記3-6員非芳香族複素環と縮合した5-7員非芳香族複素環、前記スピロ環、および前記架橋環はハロゲン、CN、CF
3、OCF
3、OCH
2CF
3、OH、R
3およびOR
3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R
3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【請求項3】
一般式(1)の化合物が以下の式(1B)で表される請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化4】
式中、
R
5がH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、アルコキシ置換C1-C3アルキル、シクロアルキル置換C1-C3アルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択され、R
4およびR
6はそれらに連結したヒドラジド基と一緒になって、5-7員非芳香族複素環を形成し、前記複素環はハロゲン、CN、OH、R
3およびOR
3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R
3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【請求項4】
一般式(1)の化合物が以下の式(1C)で表される請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化5】
式中、
nは1または2であり、
Yは結合、-CH
2-、-CH
2CH
2-、-CO-、-SO
2-、-SO-、-CON(R
8)-、-SO
2N(R
8)-、および-COCON(R
8)-からなる群から選択され、式中、R
8はH、置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルであり、かつ、
R
7はH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C1-C3アルコキシ、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択される。
【請求項5】
以下の式(1AA)で表される化合物、またはその光学異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化6】
式中、
mは0、1、2または3であり、
R
a、R
b、R
cおよびR
dはH、ハロゲン、CN、CF
3、OCF
3、OCH
2CF
3、OH、NMe
2、R
3およびOR
3からなる群から独立に選択され、式中、R
3はC1-C3アルキル基またはC3-C6シクロアルキル基であり、
または、R
aとR
bはそれらに連結した炭素原子と一緒になって、C3-C6シクロアルキル基または3-6員非芳香族複素環を形成し、
または、R
cとR
dはそれらに連結した炭素原子と一緒になって、C3-C6シクロアルキル基または3-6員非芳香族複素環を形成し、
または、R
a(またはR
b)およびR
c(またはR
d)はそれらと連結したC-C結合と一緒になって、C3-C6シクロアルキルまたは3-6員非芳香族複素環を形成し、
前記3-6員非芳香族複素環はハロゲン、CN、OH、R
3およびOR
3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R
3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【請求項6】
式(1A)の化合物が以下の式(1AB)で表される請求項2に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化7】
式中、
nは1または2であり、
R
eおよびR
fはH、OH、OCH
2CF
3、R
3およびOR
3からなる群から独立に選択され、式中、R
3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【請求項7】
以下の式(1AC)で表される化合物、またはその光学異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化8】
式中、
Mは-O-、-S-、-NR
3-または-CONR
3-であり、式中、R
3はC1-C3アルキル、またはC3-C6シクロアルキルであり、
R
g、R
h、R
iおよびR
jはH、R
3、およびOR
3からなる群から独立に選択され、式中、R
3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルであり、
または、R
gおよびR
hはそれらと連結した炭素原子と一緒になって、-CO-基、もしくはC3-C6シクロアルキルを形成し、
または、R
iおよびR
jはそれらと連結した炭素原子と一緒になって、-CO-基、もしくはC3-C6シクロアルキルを形成する。
【請求項8】
式(1B)の化合物が以下の式(1BA)で表される請求項3に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【化9】
式中、
nは1または2であり、
Qは-CH
2-または-CO-であり、
R
9はH、C1-C3アルキル、重水素化C1-C3アルキル、C3-C6シクロアルキル、アミノ置換C1-C3アルキル-アミノ、アルコキシ置換C1-C3アルキル、シクロアルキル置換C1-C3アルキル、5-7員芳香族複素環、および5-7員非芳香族複素環からなる群から選択される。
【請求項9】
化合物が以下からなる群から選択される化合物、またはその光学異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化10-1】
【化10-2】
【化10-3】
【化10-4】
【化10-5】
【請求項10】
前記薬学的に許容される塩
が無機酸
塩、有機酸
塩、または酸性アミノ酸
塩であり、前記無機酸
塩は塩酸
塩、臭化水素酸
塩、フッ化水素酸
塩、硫酸
塩、硝酸
塩、およびリン酸
塩からなる群から選択され、前記有機酸
塩はギ酸
塩、酢酸
塩、プロピオン酸
塩、シュウ酸
塩、トリフルオロ酢酸
塩、マロン酸
塩、コハク酸
塩、フマル酸
塩、マレイン酸
塩、乳酸
塩、リンゴ酸
塩、酒石酸
塩、クエン酸
塩、ピクリン酸
塩、メタンスルホン酸
塩、p-トルエンスルホン酸
塩、エタンスルホン酸
塩、およびベンゼンスルホン酸
塩からなる群から選択され、前記酸性アミノ酸
塩はアスパラギン酸
塩およびグルタミン酸
塩からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
CRM1タンパク質に関連する生理学的状態に関連する疾患を治療、調節および/または予防するための組合せ医薬組成物であって、該組合せ医薬組成物が、薬学的に許容される賦形剤または担体、および有効成分としての請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物、またはその光学異性体、薬学的に許容される塩、水和物または溶媒和物を含む、組合せ医薬組成物。
【請求項12】
医薬組成物が経口剤形である請求項11に記載の組み合わせ医薬組成物。
【請求項13】
CRM1に関連する生理学的状態に関連する疾患の治療、調節および/または予防のための組合せ医薬組成物の製造における、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物、またはその光学異性体、結晶形態、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の使用。
【請求項14】
CRM1に関連する生理学的状態に関連する疾患の治療、調節および/または予防のための医薬の製造における、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物、またはその光学異性体、結晶形態、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、平成31年2月26日に出願された中国特許出願第2019101440054号の利益を主張する。
【0002】
本発明は医薬、医薬化学および薬理学の分野に属し、より具体的には、一種のアクリル含有CRM1タンパク質レギュレーター、その調製方法および使用に関する。
【背景技術】
【0003】
適切な細胞位置は、適切なタンパク質機能に必須である。その中で、タンパク質の核からの出入りは、細胞内の恒常性を維持するために極めて重要である。細胞質ゾルと核の間の輸送は、それぞれ積み荷を核内外に輸送するインポーチンやエクスポーチンを含む特異的な輸送タンパク質に依存している。CRM1またはXPO1としても知られるエクスポーチン1は200を超えるタンエクスポーチン送を媒介し、その大部分は、p53、p21、Rb1、APC、BCR-ABL、FOXO、サイクリンB1およびサバイビン1などの、腫瘍抑制因子および細胞周期およびアポトーシスの調節因子である。正常細胞では、これらのタンパク質の調節された核外輸送がそれらの活性化または不活性化を制御する。一方、腫瘍細胞では、これらのタンパク質の過剰な核外輸送が発がん性のトランスフォーメーションを促進する。[Current Medicinal Chemistry,2008,15(26):2648-2655]。
【0004】
CRM1は乳癌[Cancer,2008,112(8):1733-1743]、子宮頸癌[International Journal of Cancer,2009,124(8):1829-1840]、胃癌[Medical Oncology,2013,30(4):726]、骨肉腫[Oncology Reports,2009,21(1):229-235]、膠芽腫[Neurosurgery,2009,65(1):153-160]、肺癌[British Journal of Cancer(2014)111,281-291]、膵癌[Gastroenterology,2013,447(2):447-456]、肝癌[Cancer Chemother Pharmacol,2014,74(3):487-495],腎癌[Journal of Urology,2013,189(6):2317-2326],食道癌[Oncology Report,32(2):730-738],リンパ腫[Blood,120(23):4621-4634]、多発性骨髄腫[Leukemia,2014,28(1)):155-165]、および白血病[Blood,2013,121(20):4166-4174]を含む、多様な腫瘍において過剰発現され、また、CRM1の高発現は予後不良と相関する。CRM1の過剰発現により、腫瘍抑制因子が細胞質ゾルに輸送され、分解され、結果として不活性化されることが、腫瘍細胞がアポトーシスを回避するメカニズムの一つと考えられている[Biochemical Pharmacology、2012,83(8):1021-1032;Seminars in Cancer Biology,2014,27:74-86]。さらに、KRASの変異により、肺癌細胞はKPT-185及びKPT-330を含むCRM1阻害薬に対してより脆弱になるが、KRAS変異のない肺癌細胞はより抵抗性を示す。比較遺伝子セット分析は、NF-κB活性化がKRAS変異肺癌のCRM1阻害薬に対する感受性増加の根底にある可能性があることを明らかにする[Nature,2016,538:114-117]。
【0005】
CRM1は、腫瘍抑制因子に加えて、IκB、NF-κB、Cox-2、RXRα、Commd1、HIF1、HMGB1、FOXOおよびFOXPを含む、炎症および免疫における多くの重要なタンパク質の核外輸送を媒介する。IκBはNF-κBの阻害因子である。核内のNF-κBに結合して不活性化し、それによってNF-κB経路の活性化を調節し、炎症や免疫と密接に絡み合っている。CRM1はIκBを細胞質ゾルに輸送し、そこでIκBは分解され、NF-κBを阻害できなくなる[Journal of Biological Chemistry,1999,274(13):9108-9115;Shock,2008,29(2):160-166]。NF-κB、HIF-1およびRXRαシグナル伝達経路におけるCRM1媒介核外輸送の必須の役割は、核外輸送の遮断が血管炎、動脈炎、アテローム性動脈硬化症、乾癬、関節炎、ループス、および強皮症を含む、複数の組織器官を傷める、様々な炎症性疾患の治療に有益であり得ることを示唆する。
【0006】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス(HIN1)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマ(HPV)、RSウイルス(RSV)、デング熱ウイルス(Dungee)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS)、西ナイルウイルス(WNE)、単純ヘルペスウイルス(HSV)及びメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)等の複数のウイルスのアセンブリー及び成熟にもCRM1が必要である[Proceedings of National Academy of Sciences、2002、99(22):14440-14445;Journal of Virology,2008,82(21):10946-10952; Journal of Biological Chemistry,2009,284(23):15589-15597;Journal of Virology,2009,83(11):5353-5362]。これらのウイルスの多くは、がんの発生に関連している。例えば、HBVまたはHCVの慢性感染は肝細胞癌を引き起こし、HPV感染は子宮頸癌を引き起こす。したがって、CRM1の阻害はウイルス感染を阻止し、ウイルスによる悪性化を妨げることができる。
【0007】
天然産物レプトマイシンB(LMB)は、多くの研究においてCRM1阻害剤として広く使用されている。LMBは腫瘍細胞に対して強力な活性を示すが、動物実験では忍容性が低い。LMBの第I相試験は、その明白な毒性のために早期に終了した[Trends in Cell Biology,2007,17(4):193-201]。XPO1のNESドメインの疎水性ポケットに基づいて、一連の化合物をKaryopharmにより分子ドッキングにより設計し、それらの抗腫瘍活性を評価した。KPT-185、KPT-276、KPT-330(セリネクソル)およびKPT-251[WO2012099807;WO2013019548;WO2013019561;WO2013170068]を含む、より良好な水溶性および定義された立体配置を有するいくつかのゆっくりと可逆的なCRM1阻害剤が出現した。それらの化学構造を以下に列挙する。
【化1】
【0008】
KPT-276およびKPT-251と比較して、KPT-330は経口バイオアベイラビリティ、ならびに薬物動態学的、薬力学的および安全性プロファイルの改善を示した。KPT-330は現在、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、多形性膠芽腫(GBM)、婦人科癌、前立腺癌および頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の治療のために臨床開発中である。しかし、KPT-330は血液脳関門を通過する可能性があり、薬物動態および安全性の責任と関連している。本発明は、より良好な水溶性、薬物動態特性および安全性プロフィールを有するCRM1阻害剤の新しい世代を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、一般式(1)の化合物、光学異性体、結晶形、薬学的に許容される塩、その水和物または溶媒和物を提供する。
【化2】
【0010】
式(1)中、
Xは-NH-または結合である。
【0011】
Xが-NH-である場合、Rが-NR1COR2であり、式中、R1およびR2はそれらに連結されたアミド基と一緒になって、4-7員の飽和、非飽和または部分飽和複素環を形成し、複素環はハロゲン、CN、CF3、CH2CF3、CH2CN、OCF3、OCH2CF3、OH、R3、OR3およびNR3R3’からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R3およびR3’はH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C3-C6シクロアルキルからなる群から独立に選択される。
【0012】
または、R1およびR2はそれに連結されたアミド基と一緒になって、5-7員非芳香族複素環と5-6員芳香族複素環からなる縮合環、5-7員非芳香族複素環と3-6員非芳香族複素環からなる縮合環、5-7員非芳香族複素環と3-6員非芳香族複素環からなるスピロ環、または5-7員非芳香族複素環と3-6員非芳香族複素環からなる架橋環、を形成する。縮合5-7員非芳香族複素環、縮合5-7員非芳香族複素環、スピロ環、および架橋環はハロゲン、CN、CF3、OCF3、OCH2CF3、OH、R3およびOR3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0013】
Xが結合である場合、Rは-NR4NR5COR6であり、R5はH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、アルコキシ置換C1-C3アルキル、シクロアルキル置換C1-C3アルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択され、R4およびR6はそれらに連結されたヒドラジド基と一緒になって、5-7員非芳香族複素環を形成し、これはハロゲン、CN、OH、R3およびOR3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、R3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0014】
または、Xが結合である場合、Rは以下の基である。
【化3】
【0015】
式中、nは1または2である。
【0016】
Yは結合、-CH2-、-CH2CH2-、-CO-、-SO2-、-SO-、-CON(R8)-、-SO2N(R8)-、および-COCON(R8)-からなる群から選択され、R8はH、置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0017】
R7は、H、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C1-C3アルコキシ、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択される。
【0018】
好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物は以下の式(1A)で表されるか、、またはその薬学的に許容される塩である。
【化4】
【0019】
式中、
R1およびR2はそれに連結されたアミド基と一緒になって、4-7員の飽和、不飽和または部分飽和複素環を形成し、複素環はハロゲン、CN、CF3、CH2CF3、CH2CN、OCF3、OCH2CF3、OH、R3、OR3またはNR3R3’からなる群から選択される官能基によって任意に置換され、式中、R3およびR3’はH、置換または非置換C1-C3アルキル、および置換または非置換C3-C6シクロアルキルからなる群から独立に選択される。
【0020】
R1およびR2はそれに結合したアミド基と一緒になって、5-7員の非芳香族複素環と5-6員の芳香族複素環からなる縮合環、5-7員の非芳香族複素環と3-6員の非芳香族複素環からなる縮合環、5-7員非芳香族複素環と3-6員非芳香族複素環からなるスピロ環、または5-7員非芳香族複素環と3-6員非芳香族複素環からなる架橋環、を形成すし、縮合5-7員非芳香族複素環、縮合5-7員非芳香族複素環、スピロ環、および架橋環はハロゲン、CN、CF3、OCF3、OCH2CF3、OH、R3およびOR3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0021】
別の好ましい実施形態では、一般式(1)の化合物が以下の式(1B)で表されるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【化5】
【0022】
式中、
R5はH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、アルコキシ置換C1-C3アルキル、シクロアルキル置換C1-C3アルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択され、R4およびR6はそれらに連結されたヒドラジド基と一緒になって5-7員非芳香族複素環を形成し、複素環はハロゲン、CN、OH、R3およびOR3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0023】
別の好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物は、以下の式(1C)によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【化6】
【0024】
式中、
nは1または2である。
【0025】
Yは結合、-CH2-、-CH2CH2-、-CO-、-SO2-、-SO-、-CON(R8)-、-SO2N(R8)-、および-COCON(R8)-からなる群から選択され、式中、R8はH、置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0026】
および、R7はH、置換または非置換C1-C3アルキル、置換または非置換C1-C3アルコキシ、置換または非置換C3-C6シクロアルキル、置換または非置換5-7員芳香族複素環、および置換または非置換5-7員非芳香族複素環からなる群から選択される。
【0027】
別の好ましい実施形態において、式(1A)の化合物は、以下の式(1AA)によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【化7】
【0028】
式中、
mは、0、1、2または3である。
【0029】
Ra、Rb、RcおよびRdはH、ハロゲン、CN、CF3、OCF3、OCH2CF3、OH、NMe2、R3およびOR3からなる群から独立に選択され、式中、R3はC1-C3アルキル基またはC3-C6シクロアルキル基である。
【0030】
または、RaおよびRbはそれらに連結された炭素原子と一緒になって、C3-C6シクロアルキル基または3-6員の非芳香族複素環を形成する。
【0031】
または、RcおよびRdはそれらに連結された炭素原子と一緒になって、C3-C6シクロアルキル基または3-6員の非芳香族複素環を形成する。
【0032】
または、Ra(またはRb)およびRc(またはRd)はそれらに連結されたC-C結合と一緒になって、C3-C6シクロアルキルまたは3-6員の非芳香族複素環を形成する。
【0033】
3-6員非芳香族複素環はハロゲン、CN、OH、R3およびOR3からなる群から選択される1つまたは2つの官能基によって任意に置換され、式中、R3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0034】
別の好ましい実施形態において、式(1A)の化合物は、以下の式(1AB)によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【化8】
【0035】
式中、
nは1または2である。
【0036】
ReおよびRfはH、OH、OCH2CF3、R3およびOR3からなる群から独立して選択され、式中、R3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0037】
別の好ましい実施形態において、一般式(1A)の化合物は、以下の式(1AC)によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【化9】
【0038】
式中、
Mは-O-、-S-、-NR3-または-CONR3-であり、式中、R3はC1-C3アルキル、またはC3-C6シクロアルキルである。
【0039】
Rg、Rh、RiおよびRjはH、R3およびOR3からなる群から独立に選択され、式中、R3は置換または非置換C1-C3アルキル、または置換または非置換C3-C6シクロアルキルである。
【0040】
または、RgおよびRhが一緒になって-CO-となる、または、RgおよびRhはそれらに連結された炭素原子と一緒になって、C3-C6シクロアルキルを形成する。
【0041】
または、RiおよびRjが一緒になって-CO-となる、または、RiおよびRjはそれらに連結された炭素原子と一緒になって、C3-C6シクロアルキルを形成する。
【0042】
別の好ましい実施形態において、式(1B)の化合物は、以下の式(1BA)によって表されるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【化10】
【0043】
式中、
nは1または2である。
【0044】
Qは-CH2-または-CO-である。
【0045】
R9は、H、C1-C3アルキル、重水素化C1-C3アルキル、C3-C6シクロアルキル、アミノ置換C1-C3アルキル-アミノ、アルコキシ置換C1-C3アルキル、シクロアルキル置換C1-C3アルキル、5-7員芳香族複素環、および5-7員非芳香族複素環からなる群から選択される。
【0046】
別の好ましい実施形態において、一般式(1)の化合物は、表1に列挙される化合物から選択される。
表1 本発明の化合物
【化11】
【0047】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【0048】
別の実施形態では、本発明が薬理学的に許容される賦形剤または担体、および本発明の式(1)の化合物、光学異性体、またはその薬学的に許容される無機もしくは有機塩を有効成分として含有する組み合わせ医薬組成物を提供する。
【0049】
別の実施形態では、本発明がXPO1タンパク質に関連する疾患を治療するための抗腫瘍薬の製造における、化合物、光学異性体、またはその薬学的に許容される無機もしくは有機塩の使用を提供する。
【0050】
本発明の上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は例示的かつ説明的であり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することが意図されることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
本発明の技術的な実施の形態における技術的なスキームをより明確に示すために、以下に、実施の形態の技術的な説明に必要な図面を簡単に紹介する。以下の説明における図面は、本発明のいくつかの実施形態に過ぎないことは明らかである。
【
図1】BxPC-3異種移植におけるビヒクル対照、KPT-330、化合物38、79および62の腫瘍増殖阻害効果のグラフである。
【
図2】ヌードマウスにおけるBxPC-3異種移植におけるビヒクル対照、KPT-330、化合物38、79および62の体重変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
一般式(1)の化合物の調製方法を以下に具体的に記載するが、これらの具体的な方法は本発明を限定するものではない。
【0053】
上記の式(1)の化合物は、標準的な合成技術、周知の技術または本明細書中の方法の組み合わせを使用して合成され得る。さらに、本明細書に記載される溶媒、温度および他の反応条件は変化し得る。式(1)の化合物の合成のための出発物質は、合成され得るか、またはAldrichChemicalCo(Milwaukee、WI)またはSigmaChemicalCo(StLouis、Mo)のような(これらに限定されない)商業的供給源から得られ得る。本明細書に記載の化合物および異なる置換基を有する他の関連化合物は、March、ADVANCED ORGANICCHEMISTRY 4th Ed(Wiley 1992);CareyおよびSundberg,ADVANCED ORGANICCHEMISTRY 4th Ed,Vols.AおよびB(Plenum 2000,2001),Green and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis 3rd Ed.,(Wiley 1999)に見出されるものを含む、周知の技術および出発物質を使用して合成され得る。化合物の一般的な調製方法は、本明細書中に提供される分子式中に異なる基を導入するための適切な試薬および条件を使用することによって変化させることができる。
【0054】
1つの局面において、本明細書に記載の化合物は、周知の方法に従って得られる。しかし、反応物、溶媒、塩基、使用する化合物の量、反応温度、反応に要する時間などのプロセスの条件は、以下の説明に限定されない。本発明の化合物はまた、本明細書に記載される種々の合成方法または周知の方法と任意に組み合わせて、都合よく調製され得、このような組み合わせは、当業者によって容易に実施される。他の局面において、本発明はまた、以下の方法A、方法Bまたは方法Cによって調製される、一般式(1)に示される化合物の調製方法を提供する。
【0055】
方法Aは、以下の工程を含む。出発物質I-1およびI-2を、縮合剤および塩基の存在下で縮合反応を実施して、式(1A)の化合物を得た。
【化12】
【0056】
上記の反応では、R1とR2の定義は上記の定義と同じである。
【0057】
方法Bは、以下の工程を含む。出発物質I-1およびII-1を、縮合剤および塩基の存在下で縮合反応を実施して、式(1B)の化合物を得た。
【化13】
【0058】
上記の反応では、R4、R5とR6の定義は上記の定義と同じである。
【0059】
方法Bは、以下の工程を含む。出発物質I-1およびIII-1を、縮合剤および塩基の存在下で縮合反応を実施して、式(1C)の化合物を得た。
【化14】
【0060】
上記の反応では、n、YおよびR7は上記の定義と同じ定義になっている。
【0061】
化合物のさらなる形態
いくつかの実施形態では、式(1)の化合物が化合物の遊離塩基を、薬学的に許容される無機酸、有機酸またはアミノ酸と反応させることによって、薬学的に許容される酸付加塩(薬学的に許容される塩)として調製される。使用される酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸およびリン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸などの有機酸、アスパラギン酸およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸、を含むが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書において「薬学的に許容される」という用語は本発明の化合物の生物学的活性または特性を不活性化しない、担体または希釈剤などの比較的無毒性の物質を表す。例えば、対象への物質の投与は、望ましくない生物学的効果またはその含有成分のいずれかとの有害な相互作用を引き起こさない。
【0063】
用語「薬学的に許容される塩」は、投与された被験体に有意な刺激を引き起こさず、化合物の生物学的活性および特性を排除しない化合物の形態をいう。特定の局面において、薬学的に許容される塩は式(1)の化合物を、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸または硝酸)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸)、および酸性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)と反応させることによって得られる。
【0064】
薬学的に許容される塩は、溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形を含むことを理解されたい。溶媒和物は化学量論的または非化学量論的溶媒を含み、水およびエタノールなどの薬学的に許容される溶媒との結晶化中に選択的に形成される。水和物は溶媒が水である場合に形成され、またはアルコラートは溶媒がエタノールである場合に形成される。式(1)の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法に従って都合よく調製または形成することができる。例えば、式(1)の化合物の水和物は便宜上、水/有機溶媒の混合溶媒から再結晶することによって調製され、使用される有機溶媒はジオキサン、テトラヒドロフラン、エタノールまたはメタノールを含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書で言及される化合物は、非溶媒和または溶媒和形態で存在することができる。要約すると、本明細書中に提供される化合物および方法の目的のために、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0065】
他の特定の実施形態では、式(1)の化合物が非晶質、粉砕およびナノ粒子サイズ形態を含むがこれらに限定されない、異なる形態で調製される。さらに、式(1)の化合物は、結晶形態および多形形態を含む。多形形態は、化合物の同じ元素組成の異なる格子配列を含む。多形体は、通常、異なるX線回折パターン、赤外線スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形態、光学的および電気的特性、安定性および溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度および貯蔵温度のような異なる因子は、主に形成される特定の結晶を引き起こし得る。
【0066】
他方の態様では、式(1)の化合物が1つ以上の立体中心を有し、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物および単一ジアステレオマーの形態で現れる。存在し得る不斉中心は、分子上の種々の置換基の特性に依存する。それぞれのそのような不斉中心は独立して2つの光学異性体を生成し、全ての可能な光学異性体およびジアステレオマー混合物、ならびに純粋または部分的に純粋な化合物は、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物の全てのそのような異性体形態を含むことを意味する。
【0067】
ターミノロジー
特に断らない限り、本明細書および特許請求の範囲を含む本出願で使用される用語は、以下のように定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」および「an」は文脈において特に明記しない限り、複数の意味を含む。特に明記しない限り、マススペクトロメトリー、核磁気共鳴、HPLC、蛋白質化学、生化学、組換えDNAテクノロジーおよび薬理学のような従来の方法が使用された。本出願において、「または」または「および」は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。
【0068】
「式(1)の化合物」は、式(1)の構造の化合物を指す。
【0069】
「アルキル」とは飽和脂肪族炭化水素基をいい、1-6個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖基、好ましくは1-4個の炭素原子を含む低級アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルを包含し、本明細書で使用される場合、「アルキル」は非置換および置換アルキル、特に1つ以上のハロゲンにより置換されたアルキルを包含する。好ましくは、アルキル基は、CH3、CH3CH2、CF3、CHF2、CF3CH2、iPr、nPr、iBu、cPr、nBu、またはtBuから選択される。
【0070】
「シクロアルキル」は3-6個の炭素原子を有する非芳香族単環式または多環式脂肪族炭化水素基を指し、ここで、1つ以上の環は1つ以上の二重結合を含み得るが、いずれの環も、完全に共役したπ電子系を有さない。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキサン、シクロヘキサジエンなどである。
【0071】
「アルコキシ」はエーテル酸素原子を介して分子の残りの部分に結合したアルキル基を指し、典型的なアルコキシ基は1-6個の炭素原子を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシであり、本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、非置換および置換アルコキシ、特に1つ以上のハロゲンによって置換されたアルコキシを含む。好ましくは、アルコキシグループは、OCH3、OCF3、CHF2O、CF3CH2O、iPrO、nPrO、iBuO、cPrO、nBuO、tBuOから選択される。
【0072】
「アリール」は少なくとも1つの芳香環構造を有する基、すなわち、ベンジルおよびナフチルなどの共役π電子系を有する炭素環アリールを指す。
【0073】
「芳香族複素環」とは1個以上のヘテロ原子(O、SまたはN)を含む芳香族基をいい、芳香族複素環は単環式または多環式であり、例えば、単環式芳香族複素環は1個以上の炭素環式芳香族基または他の単環式複素環式基と縮合している。芳香族複素環の例としてはピリジル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラン、ベンゾチアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾピリジルおよびピロロピリミジルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
「アルケニル」は2-12個の炭素原子を有し、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含有する飽和直鎖または分岐非環式アルキル基を指す。
【0075】
「ハロゲン」(または「ハロ」)は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0076】
“Oxo”は“=O”を指す。
【0077】
「重水素化(deuteration)」(または「重水素化された(deuterated)」)は、置換基上のH原子の全部または一部がDで置換されていることを意味する。
【0078】
「結合」または「単結合」という用語は、2つの原子または2つの断片(結合によって連結された原子が大きな構造の一部であると考えられる場合)の間の化学結合を指す。一方、本明細書に記載される基が結合である場合、参照基は存在せず、残りの確定基の間に結合が形成されることを可能にする。
【0079】
「環」という用語は任意の環構造を含み、「員」という用語は、環を構成する骨格原子の数を示すことを意味する。したがって、例えば、シクロヘキシル、ピリジル、ピラニルおよびチオピラニルは6員環であり、シクロペンチル、ピロリル、フラニルおよびチエニルは5員環である。
【0080】
「断片」という用語は、分子の特定の部分または官能基を指す。化学断片は一般に、分子中に含まれるか、または分子に付着した化学的実体とみなされる。
【0081】
医薬品・医療用語
本明細書で使用される「許容できる」という語は、処方箋の構成要素または活性成分が被験者の健康に過度に有害な影響を及ぼさないことを意味する。
【0082】
本明細書中で使用される、用語「治療」、「治療の経過」または「治療」は、疾患の症状または状態を緩和、阻害または改善すること、合併症の発生を阻害すること、潜在的なメタボリックシンドロームを改善または予防すること、疾患または状態の発生を制御するような疾患または症状の発生を抑制すること、疾患または症状を軽減すること、疾患または症状を軽減すること、疾患または症状によって引き起こされる合併症を軽減すること、または疾患または症状によって引き起こされる症状を予防または治療することを含む。
【0083】
本明細書中で使用される場合、投与後に特定の疾患、症状または状態を改善し得る、特定の化合物または医薬組成物は、特にその重症度を減少させ、発症を遅延させ、疾患の進行を遅らせ、または疾患の持続期間を短縮し得る。固定投与であろうと一時投与であろうと、持続投与であろうと、間欠投与であろうと、関連する投与に起因し得る。
【0084】
用語「活性成分」は、一般式(1)で表される化合物、および一般式(1)の化合物の薬学的に許容される無機または有機塩を指す。本発明の化合物は1つ以上の不斉中心を含有することができ、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物または単一ジアステレオマーの形態で現れる。存在し得る不斉中心は、分子上の種々の置換基の特性に依存する。このような不斉中心の各々は独立して2つの光学異性体を生成し、全ての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物、および純粋または部分的に純粋な化合物は、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物の全てのそのような異性体形態を含むことを意味する。
【0085】
一般式(1)に示す化合物はシスアクリルアミドであり、便宜上、本願における一般式(1)の化合物を単にアクリルアミドと呼ぶ。
【0086】
さらに、必要に応じて、本発明の化合物は薬学的に許容される塩を生成するために、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどの極性プロトン性溶媒中で薬学的に許容される酸と反応させることによって調製することができる。薬学的に許容される無機または有機酸は、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、またはグルタミン酸などから選択することができる。
【0087】
「化合物」、「組成物」、「薬剤」または「医薬または医薬」などの用語は本明細書では互換的に使用することができ、すべて、ヒト(ヒトまたは動物)に適用された場合に局所的および/または全身的作用によって所望の医薬および/または生理学的応答を誘導することができる化合物または組成物を指す。
【0088】
「投与された」、「投与する」または「投与」という用語は、本明細書では化合物もしくは組成物の直接投与、または対象の体内でかなりの量の活性化合物を形成することができる活性化合物のプロドラッグ、誘導体または類似体の投与を指す。
【0089】
「対象」または「患者」という用語は本明細書では化合物および/または方法による治療を受けられる動物(ヒトを含む)を指すために互換的に使用される。本明細書では「個体」または「患者」という用語が特に明記しない限り、オスおよびメスの両方を包含する。したがって、「個体」または「患者」は化合物による治療から利益を得ることができる、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えば、哺乳動物)、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウシなどを含むがこれらに限定されない任意の哺乳動物を含む。本発明の化合物および/または方法による治療に適した動物は好ましくはヒトである。一般に、「患者」という用語および「個体」という用語は、本明細書では互換的に使用することができる。
【0090】
本発明の広い範囲を定義するために使用される数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施形態における関連する値は本明細書において可能な限り正確に提示されている。ただし、各試験方法に起因する標準偏差は、必然的に数値に含まれる。ここで、「約」とは通常、実際の値が特定の値又は範囲の±10%、5%、1%又は0.5%の範囲内にあることを意味する。あるいは「約」という語が当業者の考察に応じて、実際の値が平均値の許容基準誤差の範囲内にあることを意味する。実験例を除き、又は特に断らない限り、本明細書で使用される全ての範囲、量、値及び百分率(例えば、材料の量、時間の長さ、温度、運転条件、量の割合及び他の類似のものを記載するために)が「約」によって修正されることが理解される。したがって、本明細書および特許請求の範囲に開示されている数値パラメータは特に断らない限り、近似値であり、適宜変更することができる。少なくともこれらの数値パラメータは、示された有効数字および一般桁上げ法を適用することによって得られる数値として理解されるべきである。
【0091】
本明細書で特に定義されない限り、本明細書で使用される科学用語および技術用語の意味は、当業者によって理解され使用されるものと同じである。さらに、本明細書で使用される単数名詞は文脈と矛盾することなく、名詞の複数形を包含し、使用される複数名詞は、名詞の単数形も包含する。
【0092】
治療用途
本明細書中に記載される化合物または組成物は一般に、CRM1を阻害するために使用され得、したがって、CRM1タンパク質に関連する1つ以上の疾患を処置するために使用され得る。したがって、特定の実施形態において、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される組成物を、それを必要とする患者に投与する工程を含む、CRM1媒介疾患を治療するための方法を提供する。
【0093】
本明細書中で使用される場合、用語「CRM1媒介」疾患は、CRM1タンパク質が役割を果たすことが公知である任意の疾患または他の有害な状態をいう。したがって、本発明の別の実施形態は、CRM1タンパク質が役割を果たすことが知られている1つまたは複数の疾患の治療または重症度の低減に関する。特定の実施形態では、本発明が対象におけるP53、P21、Rb1、APC、c-ABL、FOXO、IκB、NF-κB、COX-2またはHDACの発現または活性に関連する疾患を治療するための方法であって、治療有効量の本発明の化合物を患者に投与することを含む方法を提供する。別の実施形態において、本発明は増殖性疾患(例えば、癌)、炎症性障害、自己免疫疾患、ウイルス感染症または神経変性障害から選択される疾患または状態の重症度を処置または減少させる方法に関し、ここで、この方法は、本発明の化合物または組成物を、それを必要とする患者に投与することを包含する。より具体的な実施形態において、本発明は、癌を処置するか、またはその重症度を減少させる方法に関する。
【0094】
本発明の化合物で治療することができる癌には血液学的悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫を含む骨髄腫、骨髄異形成症候群または骨髄異形成症候群)および固形腫瘍(前立腺、乳房、肺、結腸、膵臓、腎臓、卵巣、軟部組織癌および骨肉腫または間質腫瘍などの癌)が含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
投与の経路
本発明の化合物およびその薬学的に許容される塩は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩および薬学的に許容される賦形剤または担体を安全かつ有効な量範囲で含有する種々の調製物にすることができる。これらの中で、「安全かつ有効量」は、化合物の量が重篤な副作用を引き起こすことなく、状態を明らかに改善することができることを意味する。化合物の安全かつ有効な用量は、対象の年齢、疾患、治療の経過および他の特定の状態に従って決定される。
【0096】
「医薬上許容される賦形剤又は担体」とはヒトでの使用に適し、かつ、充分な純度及び低毒性を有していなければならない、一つ以上の適合性のある固形又は液状の充填剤又はゲル物質をいう。ここで「適合性」とは化合物の効力を著しく低下させることなく、組成物中の各成分を本発明の化合物と、及びそれらの間で混合することができることを意味する。薬学的に許容される賦形剤または担体の例としては、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウム、アセチルセルロースなど)、ゼラチン、タルク、固体潤滑剤(例えば、ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(例えば、Tween)、湿潤剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウムなど)、着色剤、香料、安定剤、抗酸化剤、防腐剤、発熱物質を含まない水などが挙げられる。
【0097】
本発明の化合物は、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内または皮下)または局所的に投与することができる。
【0098】
経口投与のための固体剤形には、カプセル、錠剤、丸剤、粉末および顆粒が含まれる。これらの固体投薬形態では、その活性化合物が少なくとも1つの従来の不活性賦形剤(または担体)(例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム)と、または(a)充填剤または相溶化剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸)。(b)結合剤(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア)。(c)保湿剤(例えば、グリセリン)。(d)崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩、炭酸ナトリウム)。(e)遅い溶媒(例えば、パラフィン)。(f)吸収促進剤(例えば、第四級アミン化合物)。(g)湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびグリセリルモノステアレート)。(h)吸着剤(例えば、カオリン)ならびに(i)潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム又はこれらの混合物。)と混合される。カプセル、錠剤および丸剤において、投薬形態はまた、緩衝剤を含み得る。
【0099】
錠剤、糖丸剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤のような固体投薬形態は、当技術分野で周知のケーシングおよび他の材料のようなコーティングおよびシェル材料を使用して調製され得る。それらは不透明化剤を含んでもよく、そのような組成物中の活性化合物または化合物の放出は消化管の一部において遅延様式で放出されてもよい。使用され得る埋め込み成分の例は、ポリマー物質およびワックスである。所望であれば、活性化合物はまた、1つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセルを形成し得る。
【0100】
経口投与のための液体投薬形態は、薬学的に受容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップまたはチンキ剤を含む。活性化合物に加えて、液体剤形は水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミドおよび油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油またはこれらの混合物などの、当技術分野で従来使用されている不活性希釈剤を含み得る。
【0101】
これらの不活性希釈剤に加えて、組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤および香味剤などのアジュバントを含有する可能性がある。
【0102】
活性化合物に加えて、懸濁液は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメトキシド、寒天またはこれらの混合物などの懸濁剤を含むことができる。
【0103】
非経口注射用組成物は、生理学的に許容される無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および無菌の注射用溶液または分散液に再構成するための無菌粉末を含むことができる。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤には、水、エタノール、ポリオールおよびそれらの適切な混合物が含まれる。
【0104】
局所投与のための本発明の化合物の投薬形態には、軟膏、粉末、パッチ、スプレーおよび吸入剤が含まれる。活性成分は、無菌条件下で、生理学的に許容される担体および必要に応じて任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と混合される。
【0105】
本発明の化合物は、単独で、または他の薬学的に受容可能な化合物と組み合わせて投与され得る。
【0106】
医薬組成物が使用される場合、本発明の化合物の安全かつ有効な量が治療を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)に適用され、ここで、投与時の用量は薬学的に許容される有効用量であり、60kg体重のヒトについては、1日用量が一般に1-1000mg、好ましくは10-500mgである。もちろん、特定の用量はまた、投与経路、患者の健康などのような因子を考慮に入れるべきであり、これらは熟練した医師の技術の範囲内である。
【0107】
なお、本発明において上述した特徴、または実施の形態において上述した特徴は、ランダムに組み合わせることができる。本明細書に開示される特徴の全ては任意の構成形態で使用されてもよく、本明細書に開示される様々な特徴は同じ、同等の、または同様の目的を提供する任意の代替の特徴で置き換えられてもよい。したがって、特に明記しない限り、開示された特徴は、同等または類似の特徴の一般的な例にすぎない。
【0108】
上記の化合物、方法、および医薬組成物の種々の特定の局面、特徴および利点は、以下のように詳細に記載される。以下の詳細な説明および実施例は、参考のためにのみ特定の実施形態を記載することが理解されるべきである。本発明の説明を読んだ後、様々な変更または修正が当業者に思い浮かぶことがあり、そのような均等物は本出願の範囲内に入る。
【0109】
全ての実施例において、1H-NMRはバリアンMercury400NMR分光計で記録され、化学シフトはδ(ppm)として表され、分離のためのシリカゲルは具体的な記載なしに200-300メッシュであり、溶離剤の比率は体積比である。
【0110】
本発明の略語は以下の通りである。CDCl3は重水素化クロロホルムを表し、CD3ODは重水素化メタノールを表し、DABCOは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンを表し、DCMはジクロロメタンを表し、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンを表し、DMFはジメチルホルムアミドを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表し、EAは酢酸エチルを表し、hは時を表し、LiOHは水酸化リチウムを表し、MgCl2は塩化マグネシウムを表し、minsは分を表し、MSはマススペクトルを表し、NaSHは硫化水素ナトリウムを表し、NMRは核磁気共鳴を表し、T3Pはプロピルホスホン酸無水物を表し、THFはテトラヒドロフランを表す。
【0111】
広範な研究を通して、本発明者らは多数の化合物を合成し、評価し、式(1)の化合物が強力な抗腫瘍活性、良好な水溶性、より優れた薬物動態特性およびインビボ抗腫瘍活性を有することを初めて見出した。以上のように、本発明者らは、本発明を完成させた。
【0112】
調製例1、(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸(I-1)の合成
【化15】
【0113】
3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾチオアミド(M2)の合成
3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゾニトリル(47.82g、0.2mol)をDMF(250mL)に溶解し、NaSH(22.42g、2.0当量)およびMgCl2(38.08g、2.0当量)を加え、室温で3時間攪拌した後、混合物を氷水(2L)に注ぎ、EA(250mL×3)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。最後に、3,5-ビス(トリフルオロメチル)チオベンズアミドの粗生成物(46.97g、収率86%)を得た。
【0114】
3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール(M3)の合成
3,5-ビス(トリフルオロメチル)チオベンズアミド(46.44g、0.17mol)をDMF(250mL)に溶解し、ヒドラジン水和物(16.5mL、2.0当量)を滴下した。添加後、混合物を室温で1時間撹拌し、続いてHCOOH(200mL)を滴下した。次に、混合物を90℃に加熱して3時間反応させた。室温まで冷ました後、飽和NaHCO3水溶液(1.2L)に注ぎ、EA(300mL×3)で抽出した。合わせた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮して粗生成物を得、これをさらに石油エーテル(400mL)でスラリー化し、濾過し、乾燥して、目的化合物3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール(34.40g、収率72%)、MS(ESI,m/z):282.1[M+H]+を得た。
【0115】
イソプロピル(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリレート(M4)の合成
3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール(33.74g、0.12mol)をDMF(150mL)に溶解し、DABCO(26.92g、2.0当量)を添加した。室温で30分間撹拌した後、0℃に冷却し、(Z)-3-ヨードアクリル酸イソプロピル(31.68g、1.1当量)を滴下し、次いで混合物を室温で1時間反応させた。混合物を氷水(1L)に注ぎ、EA(200mL×3)で抽出し、有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)イソプロピルアクリレートの粗生成物(28.32g、収率60%)を得た。
【0116】
(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸(I-1)の合成
イソプロピル(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリレート(27.53g、70mmol)をTHFに溶解し、LiOH(8.4g、5.0当量、200mL水中)の溶液を反応溶液に滴下し、続いて室温で4時間撹拌し、氷水混合物(100mL)を反応物に添加した。希塩酸でpH値を2-3に調整し、EA(200mL×3)で抽出し、有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、所望の生成物(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸(23.36g、収率95%)を得た。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 9.54 (s, 1H), 8.63-8.56 (m, 2H), 8.04 (tt, J = 1.6, 0.9 Hz, 1H), 7.42 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 5.90 (d, J = 10.6 Hz, 1H); MS (ESI, m/z): 352.1 [M+H]+.
【0117】
実施例1(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-N-(2-オキソアゼチジン-1-イル)アクリルアミド(化合物1)の合成
【化16】
【0118】
(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)アクリル酸(105mg、0.3mmol)および1-アミノアザシクロブチル-2-オン(39mg、0.45mmol)を乾燥EA(10mL)に溶解し、窒素ガスで保護し、-60℃に冷却し、T3P(0.3mL、2MのEA溶液)を滴下した。次いで、DIPEA(77mg、0.6mmol)を添加し、反応を撹拌しながら3時間続け、反応を少量の氷水でクエンチし、水(20mL)で洗い、水相をEA(20mL×2)で抽出し、有機層を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮し、さらにカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=1/100-1/30)によって精製して、所望の生成物(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-N-(2-オキソアザシクロブチル-1-イル)アクリルアミド(15.1mg、収率12%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.70 (s, 1H), 9.39 (s, 1H), 8.56 (s, 2H), 8.28 (s, 1H), 7.52 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 5.95 (d, J = 10.6 Hz, 1H), 3.52 (t, J = 4.4 Hz, 2H), 2.91 (t, J = 4.2 Hz, 2H); MS (ESI, m/z): 352.1 [M+H]+.
【0119】
実施例2-実施例89、化合物2-化合物89の合成
化合物1の合成と類似し、化合物2-89は出発物質としてI-1を使用し、異なるヒドラジドと反応させることによって合成した。
【0120】
表2 化合物2-89の質量分析およびNMRデータ
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【0121】
実施例90(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-1-(ピラゾリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン(化合物90)の合成
【化17】
【0122】
100mLの三つ口フラスコに、ピラゾリジン二塩酸塩(1.5g、10.34mmol)、DIPEA(6.23g、48.3mmol)およびDMF(72mL)を充填し、次いで混合物をArガス雰囲気下で-50℃に冷却した。化合物I-1(2.42g、6.9mmol)を添加し、T3P(6.58g、10.34mmol)を-50℃で滴下した。滴下後、混合物を-50℃で12時間撹拌し、TLC(DCM:MeOH=20:1-DCM:MeOH=10:1)およびLC-MSによってモニターした。反応が完了した後、系を水(145mL)で-50℃でクエンチし、室温で30分間撹拌し、濾過し、濾過ケーキを水(各回10mL)で3回洗浄し、真空中で乾燥させて、化合物90の白色様固体を得た(1.97g、収率71.6%)。
1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 9.18 (s, 1H), 8.60-8.55 (m, 2H), 8.04 (s, 1H), 7.26 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 6.42 (d, J = 10.3 Hz, 1H), 4.57 (s, 1H), 3.65-3.55 (m, 2H), 2.95 (t, J = 6.6 Hz, 2H), 2.15-2.06 (m, 2H); MS (ESI, m/z): 406.1 [M+H]+.
【0123】
実施例91(Z)-3-(3-(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル)-1-(2-メチルピラゾリジン-1-イル)プロプ-2-エン-1-オン(化合物91)の合成
【化18】
【0124】
化合物90(50mg、0.123mmol)、K2CO3(34mg、0.247mmol)およびDMF(5mL)を10mLの単口フラスコに加えた。Arガスで置換した後、MeI(35mg、0.247mmol)を添加し、次いで混合物を50℃に加熱し、さらに20時間撹拌した。TLC(DCM:MeOH=20:1)およびLC-MSによってモニターし、反応の完了後、混合物を室温に冷却し、水(10mL)でクエンチし、EA(各回10mL)で2回抽出し、合わせた有機層を乾燥するまで濃縮し、残渣をプレTLCによって精製して、化合物91の白色固体を得た(31mg、収率60%)。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 9.76 (s, 1H), 8.58 (s, 2H), 7.89 (s, 1H), 7.15 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 6.52 (d, J = 11.0 Hz, 1H), 3.71 (m, 2H), 3.00 (t, J = 6.9 Hz, 2H), 2.54 (s, 3H), 2.24 (m, 2H); MS (ESI, m/z): 420.1 [M+H]+
【0125】
実施例92-実施例103、化合物92-化合物103の合成
化合物91の合成と類似し、化合物92-103は出発物質として90を使用し、塩基性条件下で異なるハロゲン、アミド、スルホンアミドなどと反応させることによって合成した。
【0126】
表3 化合物92-103の質量分析およびNMRデータ
【表3-1】
【表3-2】
【0127】
実施例104 Rev-GFP核外輸送アッセイ
HIV由来のRev蛋白質はそのC末端に核外輸送配列(NES)とそのN末端に核局在配列(NLS)を含む。Revタンパク質の核局在はCRM1に依存している。GFPと融合したRevタンパク質(Rev-GFP)を発現するU2OS細胞を、処理の1日前に、透明な底部を有する黒色384プレートにプレーティングした。化合物を、384プレート中でDMEMで40μMから2倍に連続希釈し、次いでU2OS細胞と共に1時間インキュベートした。その後、細胞を3.7%ホルムアルデヒドで固定し、核をHoechst33258で染色した。Rev-GFPの核残留を調べ、IC50を計算した。Rev-GFPアッセイの結果を表4に要約した。本開示の複合物は実施例に例示されるように、以下の範囲でIC50を示した。A=IC50≦1μM、B=1μM<IC50≦10μM、C=IC50>10μM。
【0128】
実施例105 癌細胞増殖アッセイ
BxPC-3細胞(膵癌)およびMDA-MB-231細胞(乳癌細胞)を指数期培養物から採取し、ウェル当たり2×104の細胞濃度で96ウェルプレートに播種した。一晩付着させた後、陽性対照を含む化合物を5つの濃度で細胞に適用し、3日間インキュベートした。インキュベーションの最後の4時間の間に、20μLの5mg/mLのMTTを添加し、続いて100μLのDMSOをさらに添加した。続いて、プレートを10分間振盪して、不溶性紫色ホルマザンを溶解した。570nmの波長における吸光度(A)を定量した。阻害率を用いて、Bliss法に基づき、IC50を算出した。
【0129】
表4 核外輸送試験及び増殖試験におけるIC
50値の例
(A=<1μM、B=1-10μM、C=>10μM、NT=試験なし)
【表4】
【0130】
上記の表に示されるように、本発明の化合物は、Rev-GFPの核外輸送および腫瘍細胞の増殖を阻害する際に増強された活性を示す。例えば、BxPC-3およびMDA-MB-231細胞において、KPT-330のIC50は705および455nMであるのに比べて、実施例87の化合物はそれぞれ41および21nMであり、抗増殖アッセイにおいて20倍の活性増強を示した。
【0131】
実施例106 水溶性アッセイ
化合物10-30mgをそれぞれ水およびpH1.2のHCl溶液に溶解し、次いで3日間連続的に振盪し、続いて10000rpm/分で5分間遠心分離した。上清の2mLアリコートを取り出し、50mLに希釈して試料溶液を調製した。2.5mgの化合物をメタノールに溶解した対照溶液を調製し、続いてこれを水で50mLの最終容量に希釈した。20μLの対照溶液およびサンプル溶液をHPLCに注入した。試料溶液の曲線下面積(A)を対照溶液の面積と比較し、濃度を測定した。溶解度は、以下の式により算出した。
溶解度(mg/mL)=C(対照)*25*A(試料)/A(対照)
C(対照):対照溶液の濃度
A(試料):試料溶液の曲線下面積
A(対照):対照溶液の曲線下面積
【0132】
【0133】
表5に示すように、本発明の化合物は、KPT-330よりも水およびpH1.2のHCl溶液においての溶解性が良い。より良好な水溶性は薬物の薬物動態特性を著しく改善し、製剤開発を容易にすることができる。
【0134】
実施例107 生体内薬物動態解析
9匹のICRマウスのグループに、0.5%CMC中5mg/kgの化合物を強制経口投与した。血液を、処置の前、および処置後の5分、30分、1、2、4、8、12および24時間後に採取した。80μL全血を眼窩後出血または心臓穿刺によりサンプリングした(各時点でn=3)。血液サンプルをEDTAチューブに回収し、1500-1600年rpmで10分間、4℃で遠心分離することにより血漿を得た。遠心分離後、血漿試料を新しい試験管に移し、将来の分析のために-60--90℃で保存した。タンデム質量分析検出(LC/MS/MS)に結合した液体クロマトグラフィーに基づく方法によって化合物の血漿濃度を定量した。ノンコンパートメント薬物動態パラメータを算出した。
【0135】
表6 マウスにおける化合物(5mg/kg)の薬物動態パラメータ
【表6】
【0136】
上のテーブルに示されるように、KPT-330と比較して、本発明に開示される実施例の化合物はより長いt1/2、より高いCmaxおよびAUC0-tを示し、これは、有効性、投与量低減および費用削減に重大な意味を持つ可能性がある。
【0137】
実施例108 膵腫瘍BxPC3ヌードマウス異種移植モデルにおける抗腫瘍増殖効果
BxPC-3細胞を10%FBSを含む1640培地中、37℃、5%CO2で培養した。8×106BxPc-3細胞を40匹のヌードマウスの左側脇腹に皮下移植した。平均腫瘍体積が65-66mm3に達したとき、30匹のマウスを腫瘍体積によって5群(n=6)に無作為にグループ化し、ビヒクル(5%DMSO/45%PEG400/50%水)、KPT-330、化合物38、79および62で処置した。化合物62を毎日(qd)10mg/kgで経口投与し、一方、KPT-330および化合物38を週3回(tiw、月曜日、水曜日および金曜日)10mg/kgで強制経口投与し、化合物79を週3回(tiw、月曜日、水曜日および金曜日)2.5mg/kgで強制経口投与した。腫瘍体積および体重を1日おきに測定した。21日目にマウスを屠殺し、腫瘍および最終体重を記録した。相対腫瘍体積、パーセント治療/対照値および腫瘍増殖阻害を計算し、統計を行った。
【0138】
表7 BxPC-3異種移植モデルの腫瘍増殖及び体重の要約
【表7】
【0139】
*:P<0.05vsビヒクル群;D1:薬物治療の初日;RTV:相対腫瘍体積;RTV=VT/V0;T/C(%)=TRTV/CRTVX100;TRTV:治療群のRTV;CRTV:ビヒクル群のRTV。TGI(%):腫瘍増殖抑制(%)。T/C(%)>60を無効とし、T/C(%)≦60かつP<0.05を有効とする。
【0140】
表7、ならびに
図1および2に示されるように、実施例79は、BxPC-3異種移植モデルにおいて有意な抗腫瘍増殖活性を実証する。10mg/kgのKPT-330と比較して、実施例79の2.5mg/kgは、腫瘍増殖の阻害においてより強力である。10mg/kgでは、実施例38がKPT-330よりも有効性が高く、体重に対する影響が少なく、安全域がより大きいことを示唆している。
【0141】
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、これらは単なる例であり、本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施形態に様々な変更または修正を行うことができることが当業者には理解されよう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。