(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】デジタルシリコン光電子増倍管の充電回路
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240802BHJP
G01T 1/161 20060101ALI20240802BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20240802BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G01T1/20 E
G01T1/161 C
G01T1/20 G
H01L31/10 B
H01L31/10 G
(21)【出願番号】P 2021576227
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 EP2020070115
(87)【国際公開番号】W WO2021013681
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318015161
【氏名又は名称】アバゴ・テクノロジーズ・インターナショナル・セールス・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Avago Technologies International Sales Pte.Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Yishun Avenue 7,Singapore 768923,Singapore
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】フラヒ トマス
(72)【発明者】
【氏名】ソルフ トルステン
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-173379(JP,A)
【文献】特表2016-513788(JP,A)
【文献】特表2012-519843(JP,A)
【文献】特表2010-521825(JP,A)
【文献】特表2008-542706(JP,A)
【文献】特表2008-538606(JP,A)
【文献】特表平04-506570(JP,A)
【文献】特表平02-500789(JP,A)
【文献】I.Vornicu et al,「A CMOS 8×8 SPAD Array for Time-of-Flight Measurement and Light-SpotStatistics」,2013 IEEE International Symposium on Circuits and Systems (ISCAS),2013年05月19日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/20
G01T 1/161
H01L 31/107
H01L 31/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルのアレイと、
前記アレイのセルのグループに再充電信号を印加するように構成される再充電回路とを有する光検出器であって、
各セルは、
単一光子アバランシェダイオードの降伏電圧より高く逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオードと、
前記単一光子アバランシェダイオードに接続され、前記単一光子アバランシェダイオードが降伏しているかを示すトリガ信号を出力するように構成されるトリガ論理部と、
(i)前記再充電回路が前記セルに前記再充電信号を印加することと、(ii)前記トリガ信号が、前記セルの前記単一光子アバランシェダイオードが降伏していることを示す前記セルのトリガ論理部によって出力されることとの両方を条件として、前記単一光子アバランシェダイオードを再充電するように構成される条件付き再充電回路と
を有する、光検出器。
【請求項2】
前記アレイのセルのグループは前記アレイのセルの行であり、
各行に対する前記再充電回路は、前記再充電信号を出力するための再充電ドライバと、
前記再充電ドライバの出力を前記行の全てのセルの前記条件付き再充電回路に接続する電気導体とを含む、
請求項1に記載の光検出器。
【請求項3】
前記条件付き再充電回路は、前記単一光子アバランシェダイオードのアノードを電気的に接地させることによって前記単一光子アバランシェダイオードを再充電するように構成される、請求項1乃至2の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項4】
前記セルはそれぞれ、pチャネル形電界効果トランジスタをさらに含み、
前記再充電信号は、前記pチャネル形電界効果トランジスタのゲートに接続され、
前記トリガ信号は、
前記pチャネル形電界効果トランジスタのソースに接続される、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項5】
前記再充電信号は第1のpチャネル形電界効果トランジスタのゲート、第2のpチャネル形電界効果トランジスタのゲート、及びnチャネル形電界効果トランジスタのゲートに接続され、
前記トリガ信号は前記
第1のpチャネル形電界効果トランジスタのソースに接続される、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項6】
前記再充電信号は、デューティサイクルを備えるパルス列を有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項7】
前記再充電信号は可変パルス幅を有する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項8】
前記再充電信号は10nsのパルスを有する、請求項6乃至7の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項9】
前記デューティサイクルは50%である、請求項6
、請求項6に従属する請求項7、及び請求項6に直接的に又は間接的に従属する請求項8の何れか一項に記載の光検出器。
【請求項10】
セルのアレイと、前記アレイのセルのグループに再充電信号を印加するように構成される再充電回路とを有する光検出器において、各セルは、単一光子アバランシェダイオードの降伏電圧より高く逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオード、前記単一光子アバランシェダイオードに接続されたトリガ論理部、及び条件付き再充電回路を含むものにおいて、
前記トリガ論理部を用いて、前記単一光子アバランシェダイオードが降伏していることを示すトリガ信号を出力するステップと、
前記条件付き再充電回路を用いて、
前記単一光子アバランシェダイオードが降伏していることを示す前記トリガ信号を受信するステップと、
前記単一光子アバランシェダイオードを再充電することを示す再充電信号を受信するステップと、
前記単一光子アバランシェダイオードが降伏していることを示す前記トリガ信号を受信し、前記単一光子アバランシェダイオードを再充電することを示す再充電信号を受信することに応答して、前記単一光子アバランシェダイオードを再充電するステップと
を有する、方法。
【請求項11】
前記条件付き再充電回路は、前記単一光子アバランシェダイオードのアノードを接地にすることによって、前記単一光子アバランシェダイオードを再充電する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記再充電信号はpチャネル形電界効果トランジスタのゲートに送られ、
前記トリガ信号は前記pチャネル形電界効果トランジスタのソースに送られる、
請求項10乃至11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記再充電信号は第1のpチャネル形電界効果トランジスタのゲート、第2のpチャネル形電界効果トランジスタのゲート、及びnチャネル形電界効果トランジスタのゲートに送られ、
前記トリガ信号は前記第1のpチャネル形電界効果トランジスタのソースに送られる、
請求項10乃至12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記再充電信号は、デューティサイクルを備えるパルス列を有する、請求項10乃至13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記再充電信号は、10nsのパルスを有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記デューティサイクルは50%である、請求項1
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下は、デジタル陽電子放出断層撮影(PET)システム、天文学検出器、光検出及び測距(LIDAR)システム等にしばしば使用されるタイプのシリコン光電子増倍管(SiPM)検出器アレイに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルPETに使用されるSiPMでは検出器アレイの各画素はそれ自体、セルのアレイで構成され、各セルはその降伏電圧以上に逆バイアスされる単一の光子アバランシェダイオード(SPAD)と、支持回路の一部とを含む。サポート回路はSPADが降伏したときにトリガイベントを生成し、検証し、トリガイベントの後の時間隔の間、画素のセルのアレイにわたってブレークダウンイベントをカウントするサブモジュールを含む。トリガ・イベント(降伏後など)に続いて、クエンチ回路やリフレッシュ回路を使用して、SPADの再インストールを高速化する。PET用のSiPM検出器アレイのいくつかの例示的な例は、Frachらの「TOFPET用ディジタルシリコン光電子増倍管」と題する米国特許公開第9,268,033号、及びSolfの「Timestamping Detected Radiation Quanta」と題する米国特許公開第2016/0011321 A1号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下は、これらの問題及び他の問題に対処する特定の改善を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示される一態様では、光検出器がセルのアレイと、アレイのセルのグループに再充電信号を印加するように構成される再充電回路とを備える。いくつかの実施形態では、各セルがSPADの降伏電圧を超えて逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオード(SPAD)と、SPADに接続され、SPADが降伏しているかを示すトリガ信号を出力するように構成されるトリガ論理部と、(i)再充電信号をセルに印加する再充電回路と、(ii)セルのSPADが降伏していることを示すセルのトリガ論理部によって出力されるトリガ信号との両方に応じてSPADを再充電するように構成される条件付き再充電回路とを含む。
【0005】
別の開示される態様では、方法が単一光子アバランシェダイオード(SPAD)に接続されるトリガ論理部を備え、SPADが降伏中であることを示すトリガ信号を出力することを含む。この方法は、条件付き再充電回路と、SPADが降伏中であることを示すトリガ信号を受信するステップと、SPADを再充電することを示す再充電信号を受信するステップと、SPADが降伏中であることを示すトリガ信号を受信するステップと、SPADを再充電することを示す再充電信号を受信するステップと、SPADを再充電するステップとを含むことができる。
【0006】
別の開示される態様では、光検出器は、各々がSPADの降伏電圧以上に逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオード(SPAD)を含むセルのアレイと、SPADのアノードに接続され、トリガ信号を出力するように構成されるトリガ論理部と、を含む。いくつかの実施形態ではアレイの各セルが再充電信号が印加されると、SPADを接地に接続するように構成され、再充電信号はデューティサイクルを含む。
【0007】
1つの利点は再充電中に暗カウントが発生した場合に、SPADの「ドミノ効果」降伏を防止することにある。
【0008】
別の利点は、改良される再充電回路にある。
【0009】
所与の実施形態は本開示を読んで理解すると当業者に明らかになるように、前述の利点のいずれも提供しない、1つ、2つ、より多く、又はすべてを提供することができ、かつ/又は他の利点を提供することができる。
【0010】
本発明は、様々なコンポーネント及び構成要素の配置、ならびに様々なステップ及びステップの配置の形成をとることができる。図面は好ましい実施形態を例示する目的のためだけのものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】PET走査システムの実施形態を概略的に示す。
【
図3】ゲート付き再充電を伴う行再充電の設定を形成するための、例示的な条件付き再充電回路を含むセルの実施形態を示す図である。
【
図5】従来の再充電のデータの一例を示す図である。
【
図6】50%のデューティサイクルを有するスマート再充電のデータの例を示す。
【
図7】本明細書で説明されるシステム及び方法による実施形態のフローチャートを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
しかし、ノイズによって特定の問題が発生する可能性がある。具体的にはいわゆるダークカウントが光子検出には関係しないが、大部分は単一光子アバランシェダイオード接合における熱的に発生したキャリアによるSPAD降伏である。このような暗カウントは誤ったトリガをもたらす可能性があり、それによって、誤ったトリガが処理され、拒絶され、SiPMがリセットされるときに、望ましくない検出器のデッドタイムもたらされる。さらに、再充電中に降伏が発生すると、隣接するSPADSも降伏するブレークダウンドミノ効果が発生する可能性がある。以下は、デジタル陽電子放出断層撮影(PET)システムのような医療用核撮像システムにおいてしばしば使用されるタイプのシリコン光電子増倍管(SiPM)検出器アレイに関する。しかしながら、開示されるアプローチには、核医学撮像の分野の内側及び外側の両方に多くの用途がある。
【0013】
図1を参照すると、放射撮像システム10はスキャナ12を含む。スキャナ12は、検査領域においてうつ伏せの人間の被験者を受け入れるように配置され、大きさが決められる。
【0014】
医療用核画像では、様々な走査技術及び変形を使用することができる。そのような技術の1つはPETである。PETの一例では、陽電子放出放射性同位元素を含む放射性医薬品を被験者に投与する。放射性医薬品は、脳、肺、腫瘍などの興味深い器官又は組織に凝集するように設計され得る。放射性医薬品の投与後、被験者を検査領域に装填する。時間が進むにつれて、放射性医薬品は放射性崩壊事象において陽電子を放出するのであろう。放射性医薬品によって放出される陽電子は、電子と相互作用する前に短い(一般に無視できる)距離を移動する。いったん陽電子が電子と相互作用すると、陽電子と電子の両方が消滅し、対向するガンマ光子(消滅光子とも呼ばれる)が一対生成される。ガンマ光子は反対方向に移動し、スキャナ12内のシンチレータ100に到達すると、それぞれが検出され得る。この例は、一対のガンマ光子の同時検出に依存し得る。したがって、いくつかのアルゴリズムは、同時に到着しないガンマ光子を割り引くことができる。
【0015】
ガンマ光子を検出するために、シリコン光電子増倍管(SiPM)検出器アレイを用いた。これらの検出器では、検出器アレイの各画素がそれ自体、セルのアレイで構成され、各セルは単一の光子アバランシェダイオード(SPAD)を含み、その降伏電圧を上回って逆バイアスされ、支持回路の一部を含む。(以下ではPETアプリケーションではセルのこのアレイがより大きなPET検出器アレイの1つの画素を形成するので、用語「画素」はSPADセルのアレイを指すために使用される。しかしながら、いくつかの他のアプリケーションではSPADセルの単一のアレイが例えば、LIDARシステムにおける放射線検出器として使用されてもよく、この場合、単一の「画素」のみが存在してもよい)、サポート回路はSPADが降伏に入ったときにトリガイベントを生成し、検証し、トリガイベントの後の時間隔の間、画素のセルのアレイにわたってブレークダウンイベントをカウントし、デジタルタイムスタンプをイベントに割り当てるためのサブモジュールを含む。クエンチ及びリフレッシュ回路はSPADの再設置を加速するために、降伏後に使用される。PET検出器設計において高い空間分解能を提供するために、各セルによって占有されるシリコン面積は、実行可能な限り小さくされる。一部の支持回路はアレイ内のセルの領域内になければならないが、支持回路の実現可能な部分は画素の周辺部に配置され、また、複数のセル(例えば、セルの行全体)にサービスを提供するようにも設計される。PET用のSiPM検出器アレイのいくつかの例示的な例は、Frachらの「TOF-PET用ディジタルシリコン光電子増倍管」と題する米国特許出願公開第9,268,033号、及びSolfの「タイムスタンピング検出放射量」と題する米国特許出願公開第2016/0011321A1号に記載されている。両者の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
ガンマ線を検出する完全なPET放射線検出器は、ガンマ線が吸収されると閃光(シンチレーション)を発生するシンチレータ100をさらに含む。SiPM画素102は、シンチレーションを構成する光子のバーストを検出する。積分時間隔にわたるカウントの総数は検出イベントの光子エネルギーのメトリックであり、トリガ信号のタイミングは、イベントのタイムスタンプを提供する。さらに、室温で、又は少なくとも冷却量を制限するために、SiPMを操作することが望ましい。
【0017】
ここで関心は再充電回路104がピクセル領域の周辺部に位置し、単一の再充電回路が、ピクセルのセルの行と接続されることである。その静止状態では、SPADはその降伏電圧より数ボルト上にバイアスされる。SPADが降伏すると、接合上の電圧はその降伏電圧以下に低下するので、SPADをリセットするためには、降伏電圧以上に戻さなければならない。再充電回路はトランジスタを短時間オンにしてSPADのアノードを接地に接続し、それによって電荷をアノードに投入し、降伏したSPADをその降伏電圧以上にして静止状態に戻すことによって動作する。
【0018】
さらに、アクティブクエンチ及び再充電回路は、SPADのデッドタイムを最小化する。理想的には、これらの回路が各SPADを個別にクエンチして再充電するように設計されるのであろう(Noletら、「7.8 ps FWHM単一光子タイミング分解能を有するCMOS 65nmに集積化されるクエンチ回路及びSPAD」、器具、2018参照)。しかしながら、個々のSPADクエンチ及び再充電に必要な回路は、典型的には大きく、クエンチ及び再充電のタイミングを調整するためにアナログ部品を必要とする場合がある。従って、各SPADセルに個別の再充電回路を設けることは特に、SPADセルを実用可能な限り小さくすることに向かって駆動する、高い空間分解能が望まれるPET検出器のような用途においては実用的でない場合がある。
【0019】
あるいは、共通行再充電技術を使用して、面積要件を低減し、センサの周辺部へのタイミング回路をオフロードすることができる(IEEE核科学シンポジウム会議録、核科学シンポジウム、2009年12月、Frachら、「デジタルシリコン光電子増倍管-動作原理及び固有検出器性能」を参照)。この場合、各SPADは独立してクエンチされるが、複数のSPAD(典型的には1つ以上の行)は一度に再充電される。この方法はセルエレクトロニクスの領域を著しく減少させ、より高い充填率のために、装置のより高い光子検出効率をもたらす。
【0020】
図2は、共通の行再充電を有するSPAD内のセルの行の2つのセルの電気回路図の一例を示す。それを参照すると、各セル202は、SPADの降伏電圧以上に逆バイアスされる単一光子アバランシェダイオード(SPAD)(204)と、SPAD 204に接続されるトリガ論理部206とを含む。トリガ論理部206は、SPAD 204が降伏しているかを示すトリガ信号を画素のトリガネットワークに出力するように構成される。例示的なトリガ論理部206は読み出しライン上で読み出し信号を生成するステップと、SPAD 204を切断するために使用することができる任意選択のイネーブルトランジスタ212を制御するステップ(例えば、SPAD 204に欠陥があり、非アクティブにすべき場合)とを含む、追加の機能を実行する。適切なトリガ論理部のいくつかの例示的な例は、Frachらの米国特許出願公開第9,268,033号及びSolfの米国特許出願公開第2016/0011321 A1号に開示されている。
【0021】
図2にさらに示すように、各セル202は、SPAD 204の再充電を制御する再充電トランジスタ220をさらに含む。セル202の再充電トランジスタ220は、アレイのセルの列に再充電信号を印加するように構成される再充電回路の一部である(より一般的には再充電回路がアレイのセルの集団に再充電信号を印加するように構成され、例示的な例では集団がアレイのセルの行であるが、他の集団化も考えられる)。再充電回路は、再充電信号を出力する各行についての再充電ドライバ222と、ドライバ222を行の全てのセルの再充電トランジスタ220に接続する電気導体224とをさらに含む。このようにして、再充電信号を出力するドライバ222は、行の全てのセルの再充電トランジスタ220に再充電信号を印加する。動作において、ピクセルコントローラは行上の任意の場所で(例えば、トリガ論理部206によって出力される読み出し及び/又はトリガ信号を介して)SPAD降伏の発生を検出し、ドライバ222を制御して、再充電信号を出力する。例示的な例では再充電信号がアクティブハイ信号(すなわち、論理「1」)信号であり、それにより、ドライバ222はピクセルコントローラがドライバ222を起動してアクティブハイ再充電信号を出力するまで、ロー信号(論理「0」)を出力する(以下に説明するように、再充電信号がアクティブローである逆の構成を使用することが考えられる。各セル202の再充電トランジスタ220のゲートに印加されるアクティブハイ再充電信号はSPAD 204のアノードを電気接地に接続させ、それによって、電荷をアノードに付与し、降伏されるSPADをその降伏電圧より高くして静止状態に戻すようにする。
【0022】
再充電信号がアクティブローである「逆配置」を使用する実施形態も考えられる。これらの実施形態では、再充電トランジスタがPMOSタイプ(
図2に示されている再充電トランジスタ220がゲートが論理0であるときは開であり、論理1であるときは閉であるため、NMOS)であり、また、回路全体が「反転」される。背景として、米国特許出願公開第2011/0079727 A1号は、両方の読み出し方法のいくつかの態様を示す。
【0023】
さらに図示するために、本明細書に開示される実施形態では、再充電トランジスタが閉じているときに、SPADはGNDに結合される。陰極で正バイアス(=Vbreakdown+Vexcess)をかけると、再充電NMOSが開くとき、SPADは降伏電圧以上のVexcessでバイアスされる。SPADが絶縁破壊すると、アノード-カソード間電圧がVbreakdownに下がるまで接合部に電流が流れる。カソード電位が固定されていると、アノード電位のみが変化するため、アノード電圧はGNDから乃至Vexcessまで増加する(NMOSトランジスタが開いていると仮定すると、そわなければSPADに大電流が流れる)。
【0024】
PMOS実施形態の場合、過剰電圧を規定する電源に接続するために、再充電トランジスタはカソードに接続される。この場合、カソードは負のVbreakdownでバイアスされ、PMOS再充電は陰極をVexcessを規定する供給レールに接続する。SPADのカソードは再充電スイッチが開くとVexcessにとどまり、カソード電圧は降伏時にGNDに遷移する。従って、続くセル回路の論理全体は反転される。
【0025】
この共通の行再充電設計の利点は、セル202内に局所的に配置する必要がある再充電回路の唯一の構成要素が再充電トランジスタ220であることである。再充電ドライバ222は、セル202のアレイ200の周辺に配置することができる。これは、セル202の小型化を容易にし、それによって、より小さなピクセル及びより高い空間分解能を有するPET検出器を可能にする。あるいは、画素サイズは固定されるままであってもよく、開示されるアプローチはセルのフィルファクタを増加させること(すなわち、光に感応しないセルの分数領域を減少させること)を可能にし、それによってセンサの感度を増加させる。感度を高くすると、センサ(及びシステム)のタイミング分解能が向上する。行内の任意のセルが降伏すると、再充電ドライバは降伏中のセルを含むセルの行全体(又は他のグループ)に再充電信号を印加するために、画素コントローラによってアクティブ化されることに留意される。しかしながら、静止状態にある(すなわち、その降伏電圧以上に逆バイアスされている)SPADのアノードを、その再充電トランジスタ220を介して電気的接地に接続しても、逆バイアスの大きさがその降伏電圧以上にさらにわずかに増加するだけであるため、SPADの状態は変化しない。したがって、共通の行再充電設計は、典型的には部品の総数を有利に減少させ、その結果、コストを伴うことなくアレイ200を小型化すると理解される。
【0026】
上述のように、共通の行再充電設計では行内の任意の特定のSPADが降伏したかにかかわらず、再充電回路は行全体のSPADのすべてのアノードを接地にする。現在分解されていないSPADは静止状態のままであるので、通常、これは問題ではない。しかしながら、そのようなSPADがその静止状態(すなわち、降伏電圧より上にバイアスされ、降伏状態にない)にあり、そのアノードがその再充電トランジスタ220を介して電気的接地に接続されている場合、たまたま降伏を受けると、SPADのpn接合は大きな電流を流し、SPADは実質的に光エミッタになることが本明細書において認識されている。SPADによって放射される光は次に、隣接するSPADにおける降伏(ブレークダウンドミノ効果)をトリガすることができる。
【0027】
言い換えると、共通行再充電回路の1つの問題は、そのSPADを含む行についての再充電サイクル中にSPADが降伏するときに発生する。PET検出器ピクセルのためのいくつかのSiPM設計では、再充電線224に接続される数十個のSPADがあり、再充電が開始されるときにすべてのSPADが放電されるわけではない。従って、その静止状態にあるSPADの1つが、その再充電トランジスタ220が閉じた後に、続いて降伏するという現実的なチャンスが存在する。この場合、SPADを通して大きな電流が流れ始め、それによって高い光電子放出もたらされる。この光電子放出は、その後、同じ線又は他の線における隣接するSPADにおける降伏(ブレークダウンドミノ効果)を引き起こす。この状態は再充電の終了と共に終了し、時には数千個の光子が初期SPADによって放出され、多くの他のSPADを降伏させるスプリアスイベントをもたらす。この組み合わされる「ドミノ効果」は「ノイズ」イベントを生成するエネルギーベースの検証閾値を通過するいくつかのイベントを生成し、したがって、センサのデッドタイムを増加させる。これらのイベントの一部はまた、システムのエネルギーウィンドウ内に入り、したがって、PET撮像システムのランダム同時発生率を増加させる。
【0028】
本明細書に開示されるシステム及び方法はこの問題に対する2つの解決策、すなわち、1つの解決策は追加の回路を使用し、他の解決策は、再充電線に印加される信号の修正を使用する。2つの解決策は、互いに組み合わせて、又は別々に使用することができることを理解される。第1のソリューションのいくつかの実施形態はセルの領域内に位置する付加的な回路を含み、付加的な回路は再充電線とトリガ線との論理積(何らかのバッファを伴う)を実行し、論理積の出力を、再充電線だけによって通常起動されるトランジスタに適用する。より一般的には、追加回路がトリガ線によって再充電ラインをゲート制御する。したがって、SPADアノードは(i)再充電線がアクティブであり、(ii)特定のSPADがトリガされている(したがって、降伏している)場合にのみ接地される。一方、静止状態にあるSPADはその(バッファされる)トリガライン上に論理「0」を有し、その結果、そのアノードは接地されない。
【0029】
つまり、再充電パルスは放電されるSPADにのみ印加される。これはSPAD降伏の確率を変化させないが、降伏を受けるSPADを通って流れる大電流を排除し、それによって降伏ドミノ効果の可能性を著しく低減する。更に、回路はコンパクトであるため、セルの小型化が容易になり、行再充電線の負荷が減少し、それによって、より速い再充電時間及び行再充電線ドライバのより低い電力消費もたらされる。
【0030】
図3は
図2を参照して既に説明した再充電トランジスタ220と共に、(i)再充電回路222、224がセルを含むセルの行に再充電信号を印加することと、(ii)セルのSPAD 204が降伏していることを示すセルのトリガ論理部206との両方を条件としてSPAD 204を再充電するように追加回路310によって構成される条件付き再充電回路220、310を形成する、追加回路310を含む共通の行再充電を有する、SPAD内のセルの行の2つのセルの電気回路図の一例を示す。
図3に見られるように、追加回路310は再充電信号312を入力として導体224を介して受け取り、また、トリガ論理部206によって出力されるトリガ信号314を第2の入力として受け取り、セルのSPAD 204が降伏中であるか否かを示す。追加回路310は、トリガ信号314によってゲート制御される再充電信号312であるゲート付き再充電信号316を出力する。
【0031】
例示的な例では再充電信号312がアクティブハイであり(すなわち、論理「1」は再充電トランジスタ220を介してSPAD 204を再充電するように動作する)、トリガ信号もアクティブハイである(すなわち、論理「1」はSPAD 204が降伏中であることを示し、論理「0」は降伏中でないことを示す)。この場合、追加回路310は論理積ゲートとして動作し、論理
ゲート再充電信号(316)=再充電信号(312)ANDトリガ信号(314)
を実行する。 従って、ゲート再充電信号316は再充電信号312が論理「1」であり、かつトリガ信号が論理「1」である場合にのみ論理「1」である。異なるアクティブ状態が使用される場合、追加の回路によって実装される論理は異なることがあることが理解されるのであろう。例えば、再充電信号がアクティブ・ハイであるが、トリガ信号がアクティブ・ローである場合(すなわち、論理「0」はSPADが降伏中であることを示す)、追加回路は論理
ゲート再充電信号=再充電信号(312)AND NOTトリガ信号
を適切に実行する。
【0032】
図4は、追加回路310の実施例を示す。追加の回路310は各セル202(
図3に示されるように)に実装され、したがって、高い光子検出効率のためにセルに対する高い充填率を維持するために、コンパクトであるべきである。
図4の例示的な実施例の基本的な機能は、以下の通りである。再充電パルス312がノードDN上のセルのトリガ314出力の状態を動的に記憶する。再充電信号312はアクティブハイであり、それによって、再充電の時間、トリガ信号314をDNに接続するpチャネル形電界効果トランジスタP1を開く。残りのトランジスタはノードDNに記憶される状態と再充電信号312との間の論理AND関数、すなわち、スパッド再充電=再充電AND DNを実現する。
【0033】
DN上のバックグラウンドを更に説明するために、SPADの状態は再充電の時間のために再充電パルスの開始時に蓄積されることになる。そうでない場合には、アノードが付加論理(Vexcess/2まで)の閾値電圧に達した直後にSPADの再充電が停止することになる。DN上に状態を格納することによって、SPADの再充電トランジスタが再充電のフルタイムの間閉じられることが保証される。
【0034】
ダイナミック記憶(状態はN1とP3のゲート容量に蓄積される)は小さな領域高速という利点があるが、漏れによる蓄積時間が限られている。PMOS P1はトランスミッションゲートの半分である。ここでは面積を節約するためにNMOSを省略しているが、反転充電信号によって制御されるNMOSを追加することによって容易に追加することができる(追加のNMOS +インバータNMOS/PMOSが必要とされる)。他の記憶素子(ラッチ、フリップフロップ)もシリコン面積のコストで同様に使用することができる。
【0035】
有利には、
図4の追加回路310がたった7つのトランジスタを含み、したがって、コンパクトにすることができる。
【0036】
第2の解決策は、再充電線にデューティサイクルを追加することである。いくつかの実施形態では、デューティサイクルが再充電線224のパルス列の一部として追加される。本明細書中に報告される実験(
図5及び6ならびに関連する本文を参照のこと)によって示されるように、このアプローチはまた、ブレークダウンドミノ効果を抑制するために非常に有効であり、そして単独で、又は第1の解決策のさらなる回路と組み合わせて使用され得る。
【0037】
第2の解決策が働く物理的理由は、短い再充電パルスの間に降伏が発生すると、SPADがOFF状態の間に回復するチャンスを得ることである。再充電パルス幅とデューティサイクルは、調整可能にすることができる(例:10ns、50%)。ON状態の持続時間は、再充電トランジスタがSPAD容量をVexcessまで充電するのに要する時間、通常は数ナノ秒に基づいて適切に選択される。オフ状態の持続時間はSPADが接合から電荷を取り除き、バンドギャップ内の任意のトラップを放電するのに要する時間に依存する(そわなければアフターパルシングをもたらす)。トラップ寿命は温度の関数であるため、この部分は動作温度にも依存する。
【0038】
第2の解決策をさらに説明するために、光電子放出及びドミノ効果のさらなる抑制は、再充電パルスにデューティサイクルを加えることによって達成することができる。50%のデューティサイクルを有する典型的には10nsの長さの再充電パルスは4つのセンサ画素について実験結果を報告する
図5及び6に示されるように、光電子放出を抑制するのに非常に効果的であることが証明されている。
図5は、長さ10nsの静的再充電パルスを使用して得られたデータと、
図2の回路(追加回路(310)を含まない)を示す。
図5に示されるデータは1500ph乃至2000phのエネルギー範囲における光ピークイベントの所望の信号に加えて、1000phまでの広いエネルギー範囲にわたってノイズイベントを示す(すなわち、ユニット「ph」は光子数を示す、すなわち、1000phは、1000光子の時間積分エネルギーを有する検出されるノイズ「イベント」を示す)。対照的に、
図6は、50%のデューティサイクルを有する10nsの再充電パルスを使用するデータと、
図3の回路(付加回路(310)を有する)とを示す。
図6に見られるように、0乃至1000phの範囲の雑音事象は実質的に除去される。
【0039】
図5及び6に示されるデータについて、フォトピークイベントは、1500ph乃至2000phの総エネルギーを有する拡散レーザ照射によって生成される(4つのセンサ画素の位置に応じて)。SPAD行列の暗計数率は20℃での熱雑音により発生する。
【0040】
より詳細には
図2の回路の場合であって、再充電信号をパルス化することなく(すなわち、100%「デューティサイクル」)、共通行再充電は数百光子のエネルギーを伴う低エネルギーノイズ事象(
図5)をもたらすことが分かる。対照的に、
図6に例示されているように、付加回路(310)を有し、50%のデューティサイクルを使用すると、ノイズイベントはほぼ完全に除去される。
図5と
図6との比較によって示されるように、開示される改善される再充電は、再充電段階中の相関SPAD降伏の確率を効率的に除去する。
【0041】
図7は、本明細書で説明されるシステム及び方法による実施形態のフローチャートを概略的に示す。ステップ710では、SPADを再充電することを示す再充電信号にデューティサイクルが印加される。ステップ720において、トリガ論理部がSPADに接続される状態で、SPADが降伏中であることを示すトリガ信号が出力される。ステップ730において、条件付き再充電回路を用いて、トリガ信号が受信される。ステップ740において、条件付き再充電回路と共に、SPADを再充電することを示す再充電信号が受信される。条件付き再充電回路を備えたステップ750では、トリガ信号を受信し、SPADを再充電することを示す再充電信号を受信することに応答して、SPADが再充電される。
【0042】
PETに加えて、特に高温で使用される場合(高温でのSPAD降伏の増加のため)、開示される技術の多くの他の用途がある。より一般的には、高時間分解能タイムスタンピングによる光パルスの検出を必要とする他の用途が考えられる。他の用途としては、例えば、PET/CT、PET/MR、SPECT、高エネルギー物理学、LIDAR、及び蛍光寿命撮像顕微鏡が挙げられる。特に興味深いのは、レーザビームの放射とその反射の検出との間の飛行時間に基づく光学測距を実行するLIDARシステムである。ライダーは例えば、非常ブレーキを作動させるためのトリガー装置として使用される自動車を含む多様な産業に適用される。
【0043】
さらに、本明細書で開示される技法は、開示される技法を実行するために電子データ処理デバイスによって可読可能かつ実行可能な命令を記憶する非一時的記憶媒体によって実施され得ることが理解されるのであろう。そのような非一時的記憶媒体は、ハードドライブ又は他の磁気記憶媒体、光ディスク又は他の光記憶媒体、RAIDディスクアレイ、フラッシュメモリ又は他の不揮発性電子記憶媒体などのクラウドベースの記憶媒体を備えることができる。
【0044】
本発明は、好ましい実施形態を参照して説明されてきた。前述の詳細な説明を読み、理解すると、修正及び変更が他者に思い浮かぶ可能性がある。これら例示的な実施形態は、そのような修正及び変更が請求の範囲及びその等価物の範囲に包含される限りにおいて、それら全てを含むと解釈されることを意図している。