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特許7531535試料中のウイルス病原体を検出するための組成物および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】試料中のウイルス病原体を検出するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6888 20180101AFI20240802BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALI20240802BHJP
   C12Q 1/6853 20180101ALI20240802BHJP
   C12Q 1/6818 20180101ALI20240802BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20240802BHJP
   C12N 15/44 20060101ALN20240802BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20240802BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/6853 Z
C12Q1/6818 Z
C12Q1/686 Z
C12N15/44
C12M1/00 A
【請求項の数】 35
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022015433
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2019181268の分割
【原出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2022048340
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】62/476,659
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500169900
【氏名又は名称】ジェン-プローブ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ジョスト
(72)【発明者】
【氏名】パメラ ダグラス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ピー. コルク
(72)【発明者】
【氏名】マーダド アール. マジレッシ
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/028312(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/006720(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/085733(WO,A1)
【文献】特開2016-131498(JP,A)
【文献】特開2015-221047(JP,A)
【文献】特表2012-532627(JP,A)
【文献】J. Mol. Diagn. (2013) Vol.15, pp.347-354
【文献】Journal of Clinical Virology (2004) Vol.29, pp.179-188
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/68
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中に存在し得る病原体に関連する複数の標的核酸分子種のうちの1つ以上を分析するためのキットであって、
Flu Bが前記生体試料中に存在する場合に、Flu Bアンプリコンを生成するためのFlu Bプライマー対であって、第1のFlu Bプライマーおよび第2のFlu Bプライマーを含み、
(i)第1のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Bプライマーが、配列番号67のオリゴヌクレオチド配列からなり、
(ii)第2のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のFlu Bプライマーが、配列番号68のオリゴヌクレオチド配列からな、Flu Bプライマー対を含む、キット。
【請求項2】
前記キットに含まれるプローブ分子種を更に含み、
前記プローブ分子種が、Flu Bプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、かつ配列番号64のオリゴヌクレオチド配列からなる、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記プライマー対のうちの1つ以上における前記プライマーのうちの1つ以上が、前記プライマーの標的ヌクレオチド配列と相補的でないヌクレオチド配列を有するプライマー上流領域を更に含む、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
前記プローブ分子種が標識されている、請求項2に記載のキット。
【請求項5】
前記プローブ分子種が化学発光部分、フルオロフォア部分、クエンチャー部分、ならびにフルオロフォア部分およびクエンチャー部分の両方からなる群から選択される1つ以上の検出可能な標識で標識されている、請求項4に記載のキット。
【請求項6】
前記プローブ分子種がドナー/アクセプター標識対で検出可能に標識されている、請求項2に記載のキット。
【請求項7】
第1のFlu Aプライマー対、第2のFlu Aプライマー対、RSV Aプライマー対、およびRSV Bプライマー対からなる群から選択される複数のプライマー対をさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項8】
少なくとも1つのプライマーおよび/または少なくとも1つのプローブが1個以上のメチル化シトシン塩基を含有する、請求項2に記載のキット。
【請求項9】
核酸増幅反応を実行するための試薬、ならびに任意選択で、核酸増幅を実行するために前記プライマー対および前記試薬を使用するための使用説明書を更に含む、請求項1に記載のキット。
【請求項10】
少なくとも1つのプライマーが凍結乾燥された試薬として前記キット中に存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
少なくとも1つのプローブが凍結乾燥された試薬として前記キット中に存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
前記キットが逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液、およびdNTPのうちの1つ以上を含む、請求項10または請求項11に記載のキット。
【請求項13】
逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液、およびdNTPの各々が凍結乾燥された試薬として前記キット中に存在する、請求項12に記載のキット。
【請求項14】
塩を含む再水和試薬を更に含む、請求項10~13のいずれか一項に記載のキット。
【請求項15】
請求項1に記載のプライマー対を含み、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液、およびdNTPのうちの1つ以上を更に含む、反応混合物。
【請求項16】
請求項2に記載の少なくとも1つのプローブ分子種を更に含む、請求項15に記載の反応混合物。
【請求項17】
前記反応混合物が凍結乾燥された組成物である、請求項16に記載の反応混合物。
【請求項18】
生体試料がインフルエンザB型(Flu B)を含有するかどうかを決定する方法であって、
(a)プローブ:標的二重鎖を形成するために、前記生体試料由来の標的核酸分子を1つ以上の識別可能に標識されたプローブ分子種と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で接触させることであって、
(ii)前記生体試料がFlu Bを含有するかどうかを決定するために、Flu Bプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、かつ配列番号64のオリゴヌクレオチド配列からなる、識別可能に標識されたFlu Bプローブ分子種を使用する、接触させることと、
(b)ステップ(a)において、安定で識別可能に標識されたプローブ:標的二重鎖が形成されるかどうかを検出することと、その場合に、
(c)前記識別可能な標識が検出されるかどうかに基づいて、前記生体試料がFlu Bを含有することを決定すること、
を含み、前記生体試料に由来する前記核酸分子が、前記試料中に存在する場合に、Flu Bに対応する増幅産物を生成するために、核酸増幅プロセスによって増幅され、前記増幅産物が、1つ以上のプライマー対を使用して核酸増幅反応を実行することを含む核酸増幅プロセスを介して産生され、前記1つ以上のプライマー対が、
Flu Bが前記生体試料中に存在する場合に、Flu B増幅産物を生成するためのFlu Bプライマー対であって、第1のFlu Bプライマーおよび第2のFlu Bプライマーを含み、
(i)第1のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Bプライマーが、配列番号67のオリゴヌクレオチド配列からなり、
(ii)第2のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のFlu Bプライマーが、配列番号68のオリゴヌクレオチド配列からなる、Flu Bプライマー対である、方法。
【請求項19】
前記生体試料が臨床検体を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記臨床検体が鼻咽頭検体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記臨床検体が気管支肺胞検体である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記検体が下気道検体である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記プライマーのうちの1つ以上が、前記プライマーの標的ヌクレオチド配列と相補的でないヌクレオチド配列を有するプライマー上流領域を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
識別可能な各標識が、化学発光部分、フルオロフォア部分、クエンチャー部分、ならびにフルオロフォア部分およびクエンチャー部分の両方からなる群から選択される検出可能な標識である、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記プローブ分子種がドナー/アクセプター標識対で検出可能に標識されている、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
第1のFlu Aプライマー対、第2のFlu Aプライマー対、RSV Aプライマー対、および/またはRSV Bプライマー対をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのプライマーおよび/または少なくとも1つのプローブが1個以上のメチル化シトシン塩基を含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
生体試料中に存在し得る病原体に関連する複数の標的核酸分子種のうちの1つ以上を分析するための組成物であって
lu Bが前記生体試料中に存在する場合に、Flu Bアンプリコンを生成するためのFlu Bプライマー対であって、第1のFlu Bプライマーおよび第2のFlu Bプライマーを含み、
(i)第1のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Bプライマーが、配列番号67のオリゴヌクレオチド配列からなり、
(ii)第2のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のFlu Bプライマーが、配列番号68のオリゴヌクレオチド配列からなる、Flu Bプライマー
を含む、組成物。
【請求項29】
試料中のFlu B標的核酸の有無を決定する方法であって、
(A)試料を請求項1に記載のプライマー対と接触させるステップと、
(B)インビトロでの核酸増幅反応を実施するステップであって、増幅産物を生成するために前記試料中の前記Flu B標的核酸が、前記標的核酸を増幅するように構成された前記プライマー対によって使用される、ステップと、
(C)前記増幅産物を検出するステップと、を含み、
これにより前記試料中の前記標的核酸の有無を決定する、方法。
【請求項30】
前記検出ステップ(C)が、前記増幅産物にハイブリダイズするように構成された、検出可能に標識されたプローブを使用して実施される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記検出可能に標識されたプローブが、ドナー/アクセプター標識対により検出可能に標識される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記検出ステップ(C)が、検出可能に標識されたプローブ分子種を使用して実施され、 (iii)Flu Bプライマー対について、前記プローブ分子種が、Flu Bプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、かつ配列番号64のオリゴヌクレオチド配列からなる、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
検出可能に標識された前記プローブ分子種が、ドナー/アクセプター標識対によりそれぞれ検出可能に標識される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
検出可能に標識された前記プローブ分子種が、識別可能な標識によりそれぞれ検出可能に標識される、請求項32または請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記検出可能に標識されたFlu Bプローブ分子種が、CalRed/BHQ-2により検出可能に標識されている、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
関連出願の相互参照
本出願は、2017年3月24日に出願された米国仮出願第62/476,659号の米国特許法第119条に基づく優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、バイオテクノロジーの分野に関する。より具体的には、本開示は、ウイルス病原体、特にインフルエンザウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルスを検出するために試料を分析するための、キットおよび試薬を含む組成物、ならびに方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザは、インフルエンザ(Flu)ウイルス、主にAおよびB型の感染によって引き起こされる、ヒトにおける急性呼吸器疾患である。インフルエンザA型ウイルスは、2つの主要表面タンパク質抗原、ヘマグルチニン(H)およびノイラミニダーゼ(N)に基づいて更に亜型に分類される。インフルエンザB型ウイルスは、亜型に分類されない。インフルエンザウイルスは、Orthomyxoviridae科のRNAウイルスである。インフルエンザAおよびB型(それぞれFlu AおよびFlu B)のそれぞれは、1つの種および多数の亜種を含む別個の属である。
【0004】
インフルエンザの流行は、世界中で毎年発生している。Flu AおよびB型が集団内で広まるが、通常はA型が優勢である。この毎年の流行は、ウイルスのHおよびN表面タンパク質の抗原変異に部分的に起因する。インフルエンザの伝染は、主に飛沫(咳またはくしゃみ)を介する。症状は、平均して曝露の1~2日後に生じ、熱、悪寒、頭痛、倦怠感、咳、および鼻感冒を含む。主に小児において、悪心、嘔吐、および下痢などの胃腸症状が生じ得る。インフルエンザによる合併症としては、小児、高齢者、および易感染性集団における罹患率および死亡率の増加を引き起こし得る肺炎が挙げられる。米国において、インフルエンザにより毎年20万人以上の入院および最大3万6千人の死亡がもたらされると推定されている。インフルエンザの大流行または世界的流行病は、滅多に発生しない。20世紀に3回のインフルエンザの世界的流行が、1918年、1958年、および1968年に発生し、いずれも全世界で数百万人の死亡を引き起こした。ブタ、ウマ、および鳥類を含む他の動物もインフルエンザを発症し得る。
【0005】
呼吸器合胞体ウイルス(RSV)は、乳児および小児における下気道感染症の主因である。インフルエンザのように、RSVはRNAウイルスである。RSVは、Paramyxoviridae科のOrthopneumovirus属に属する。2種類のRSV、AおよびBが存在し、それらは抗原性および表面タンパク質の差異に基づいて区別される。毎年の流行のほとんどはRSV AおよびRSV Bの混在を含むが、1つの亜群が季節を通じて支配的となることがある。RSV感染は、あらゆる年齢で重篤な呼吸器疾患を引き起こし得るが、小児、高齢者、および易感染性集団により多く見られる。RSVは、最大80%の1歳未満の小児に感染し得る。細気管支炎および肺炎は、乳児および幼児における主要な臨床的合併症であり、毎年米国において推定5万1千人~8万2千人の入院をもたらす。RSV感染は、重篤な呼吸器疾患および相当な数の高齢者死亡の重要な原因でもあり、RSV肺炎による入院に推定1億5千万~6億8千万ドルの年間費用がかかっている。
【0006】
インフルエンザおよびRSV感染に関連する罹患率、死亡率、および経済コストを考慮すると、これらの病原体の検出を改善する必要性が明らかに存在する。本開示は、この必要性および他の必要性に取り組むものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
[発明を実施するための形態]
本開示は、試料中のインフルエンザA型ウイルス(Flu A)、インフルエンザB型ウイルス(Flu B)、呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV A)または呼吸器合胞体ウイルスB型(RSV B)核酸のインビトロ診断分析のための、キットおよび試薬を含む組成物、ならびに方法を提供する。当該インビトロ診断分析はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用することが好ましいが、他のインビトロアッセイ方法論を本開示の組成物と共に使用することが企図される。Flu A、Flu B、RSV AまたはRSV B標的核酸用に使用するのに特に有用なインビトロアッセイは、これらの標的核酸がRNAウイルスであるため、逆転写PCRアッセイである。好都合には、インビトロ増幅アッセイは、インビトロ検出アッセイと同時に実行することができる(リアルタイムPCR)。したがって、Flu A、Flu B、RSV AまたはRSV B標的核酸用に使用するのに特に有用かつ便利なインビトロアッセイは、リアルタイム逆転写PCRアッセイである。
【0008】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り、複数形を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「オリゴヌクレオチド」への言及は、複数のオリゴヌクレオチドなどを含む。接続詞「または」は、包括的な意味が文脈において不当でない限り、包括的な意味で、すなわち、「および/または」と同等であると解釈されるべきである。
【0009】
本開示で述べられる温度、濃度、時間などの前に黙示的な「約」があり、これによりわずかで非実質的な逸脱が本明細書の教示の範囲内であることが理解されよう。一般に、「約」という用語は、組成物の活性または安定性に有意な影響を及ぼさない組成物の成分の量の非実質的な変動を示す。全ての範囲は、「端点を含まない」などの明らかな除外がない限り端点を含むものと解釈されるべきであり、したがって、例えば、「10~15の範囲内の」は、値10および15、ならびにその間の全ての値および(適用可能な場合)部分的な値を含む。
【0010】
特に記述がない限り、様々な構成要素を「含むこと」を列挙する本明細書中の実施形態は、列挙された構成要素「からなる」または「から本質的になる」とも企図され、様々な構成要素「からなること」を列挙する本明細書中の実施形態は、列挙された構成要素「を含む」または「から本質的になる」とも企図され、また、様々な構成要素「から本質的になること」を列挙する本明細書中の実施形態は、列挙された構成要素「からなる」または「を含む」とも企図される(この互換性は、請求項におけるこれらの用語の使用には適用されない)。「から本質的になる」とは、本明細書に記載の組成物および方法の基本的かつ新規の特徴を実質的に変化させない追加の成分、組成物、または方法ステップがそれらの組成物または方法に含まれ得ることを意味する。そのような特徴としては、試料中に存在する標的核酸を、当該標的核酸を他の既知の呼吸器病原体から区別する特異性で検出する能力が挙げられる。本開示の基本的かつ新規の特徴に対する実質的な影響を有する任意の成分、組成物または方法ステップは、この用語から逸脱するであろう。
【0011】
用語「相補体」は、別の核酸分子の連続した核酸配列と相補的である連続したヌクレオチド配列を含む核酸分子を指す(標準的なヌクレオチドについてA:T、A:U、C:G)。例えば、5’-AACTGUC-3’は、5’-TTGACAG-3’の相補体である。2つの核酸配列は、それらのそれぞれの連続した核酸配列が少なくとも70%相補的である場合、「十分に相補的」である(例えば、See Sambrook,et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nded.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)を参照のこと)。
【0012】
核酸二重鎖に関して「完全に一致した」とは、二重鎖を形成しているポリヌクレオチド鎖またはオリゴヌクレオチド鎖が、二重鎖(すなわち、ハイブリダイズした)領域における各鎖の全てのヌクレオチド(またはヌクレオチド類似体)が他方の鎖のヌクレオチドとワトソン・クリック型塩基対形成を起こすように互いに二本鎖構造または二本鎖構造の領域を形成していることを意味する。当該用語は、例えばデオキシイノシン、2-アミノプリン塩基を有するヌクレオシドなどヌクレオシド類縁体の対合も包含する。逆に、核酸二重鎖において「ミスマッチ」とは、二重鎖の1つ以上のヌクレオチド対がワトソン・クリック型塩基対形成を起こすことができないことを意味する。
【0013】
「実質的に相同である」、「実質的に対応している」、または「実質的に対応する」とは、ある核酸分子が、別の核酸分子の連続した核酸配列と少なくとも70%相同である連続した核酸配列を含むことを意味する。
【0014】
「試料」または「生体試料」とは、ヒト、動物、または環境試料から得られ、標的核酸を含有し得る任意の組織またはポリヌクレオチドを含有する材料である。生体試料としては、末梢血、粘液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、尿もしくは他の体液、骨髄もしくは他の器官、生検組織または生物起源の他の材料、加えて、生物起源の材料を含有する溶液または組成物、例えば、気管支洗浄液が挙げられる。試料は多数の供給源から得ることができ、供給源には、試料中の標的核酸の有無を決定するために試料が採取され、これにより患者に診断を提供する臨床的供給源が含まれる。試料は組織または細胞構造を破壊するために化学的におよび/または機械的に処理され、これにより細胞内成分を溶液中に放出させる。
【0015】
本明細書において「ヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド(例えば、dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、リボヌクレオチド(例えば、rATP、rCTP、rGTP、rUTP)、およびそれらの類似体を含む、ヌクレオチドおよびヌクレオシドを含むと定義される。ヌクレオチドは、リボースまたはデオキシリボース糖にグリコシド結合したプリンまたはピリミジン塩基、および当該リボースまたはデオキシリボース糖に結合したリン酸基を含む。ヌクレオシドは、リボースまたはデオキシリボース糖にグリコシド結合したプリンまたはピリミジン塩基を含むが、ヌクレオチドに存在するリン酸残基を欠く。本明細書で使用する場合、ヌクレオチドおよびヌクレオシドとは、DNAまたはRNAそれぞれのモノマーを指す。(例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,2ndEd.(Freeman,San Francisco,1992)を参照のこと)。
【0016】
化合物に関する用語「類似体」は、別の化合物の構造と類似した構造を有するが、除去されているかまたは1つ以上の他の原子、官能基、または部分構造と置き換えられている1つ以上の異なる原子、官能基、または部分構造に関してその化合物と異なる化合物を指す。ヌクレオチドまたはヌクレオシドとの関係において類似体とは、自らが類似体であるヌクレオチド/ヌクレオシドのように、核酸分子(例えば、プライマー、プローブ、および/または増幅産物)に組み込むことができる化合物を指す。ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体は、一般にホスホロアミダイト化学法および装置を使用して合成オリゴヌクレオチド(例えばプライマーおよびプローブ)に付加される。ヌクレオチド/ヌクレオシド類似体は、反応混合物に類似体を含めることによって増幅産物に一般に付加され、当該反応混合物において好適なポリメラーゼ、例えば、DNAポリメラーゼが当該類似体を増幅産物に組み込む。ヌクレオチド/ヌクレオシド(以下「ヌクレオチド」)類似体は、修飾塩基部分および/または修飾糖部分および/または修飾リン酸基を有する合成ヌクレオチドを含む(例えば、Scheit,Nucleotide Analogues(John
Wiley,New York,1980)、Uhlman and Peyman,Chemical Reviews,90:543-584(1990)を参照のこと)。そのような類似体は、結合特性の増強、複雑性の低下、特異性の増加などがなされるように設計された合成ヌクレオシドを含む。
【0017】
「DNA」とはデオキシリボ核酸、すなわちホスホジエステル結合によって結合されたデオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNAは、一本鎖(ssDNA)または二本鎖(dsDNA)である場合があり、一本鎖および二本鎖(または「二重鎖」)領域の両方を含むことができる。「RNA」とはリボ核酸、すなわちホスホジエステル結合によって結合されたリボヌクレオチドのポリマーを指す。RNAは、一本鎖(ssRNA)または二本鎖(dsRNA)である場合があり、一本鎖および二本鎖(または「二重鎖」)領域の両方を含むことができる。一本鎖DNA(またはその領域)およびssRNAは、十分に相補的である場合、ハイブリダイズして二本鎖複合体(または領域)を形成することができる。「RNA等価物」、「DNA等価物」、「RNA等価塩基」、および「DNA等価塩基」は、同程度の相補塩基対ハイブリダイゼーション特性を有するRNAおよびDNA分子を意味する。RNAおよびDNA等価物は異なる糖部分(すなわちリボース対デオキシリボース)を有し、例えば、RNA中のウラシルおよびDNA中のチミンの存在によって異なり得る。等価物は特定の配列に対して同程度の相補性を有するので、RNA等価物とDNA等価物との間の相違は相同性(または配列同一性)の相違には寄与しない。
【0018】
用語「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」(本明細書において同義的に使用される)は、2個以上連結のされたRNAヌクレオチド、DNAヌクレオチド、RNAヌクレオチドの類似体、DNAヌクレオチドの類似体、またはこれらの組み合わせを含む多量体化合物を意味する。ポリヌクレオチドは、ヌクレオチドの連結された配列に存在してもよく、ポリヌクレオチドの相補配列を有する第2の分子とのハイブリダイゼーションを妨げない他の分子を含み得る。例えば、ポリヌクレオチドは、多くの場合、分子トーチの立体配置のように、リンカー分子の第1端の2個以上の連結されたヌクレオチド、および当該リンカー分子の第2端の2個以上の連結されたヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、好ましくは10~200個の連続したヌクレオチドのポリマー鎖である。ポリヌクレオチドは、天然に存在する供給源から精製されてもよいが、好ましくは種々の周知の酵素的または化学的方法のいずれかを使用して合成される。オリゴヌクレオチド(または他の核酸)が「ATGCUCTG」などの文字の配列によって表される場合はいつでも、特に明記しない限り、ヌクレオチドが左から右の5’-3’の方向であること、および別途注記のない限り、「A」はアデノシン(dATP/rATP)またはその類似体を意味し、「C」はシチジン(dCTP/rCTP)またはその類似体を意味し、「G」はグアノシン(dGTP/rGTP)またはその類似体を意味し、「U」はウラシル(rUTP)またはその類似体を意味し、「T」はチミジン(dTTP)またはその類似体を意味することが理解されよう。通常、本開示のオリゴヌクレオチドは4種の天然ヌクレオチドを含むが、それらが非天然のヌクレオチド類似体をも含んでいてもよい。
【0019】
「プローブ」は、ハイブリダイゼーションを促進する条件下で核酸、好ましくは増幅された核酸の標的核酸配列に特異的にハイブリダイズして検出可能なハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドである。プローブオリゴヌクレオチドは、連続したヌクレオチド配列、標的にハイブリダイズする配列、標的にハイブリダイズしない配列、検出可能な標識、リンカー、およびヌクレオチド類似体のうちの1つ以上を含む。プローブは、好ましくは約10個の連続したヌクレオチドから100個の連続したヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチド長を有する。ある種の好ましい特異的なプローブは、12~87、10~20、13~37、または17~23ヌクレオチドの範囲の長さである標的にハイブリダイズする配列を有する。プローブ配列は、RNA、DNA、類似体、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。プローブの「主鎖」は当該技術分野において既知の種々の結合で構成されてもよく、当該結合には、1つ以上の糖-ホスホジエステル結合、ペプチド-核酸結合(PNA)、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、またはこれらの組み合わせが含まれる。プローブの糖部分はリボースもしくはデオキシリボース、または既知の置換、例えば、2’-O-メチルリボースおよび2’-ハロゲン化物置換(例えば、2’-O-Meまたは2’-F)を有する類似の化合物であり得る。プローブオリゴヌクレオチド配列に組み込まれるヌクレオチド類似体としては、イノシンもしくは「I」、5-Me-dC、イソグアニン、プリンもしくはピリミジン塩基の他の誘導体、または無塩基残基(例えば、ヌクレオシド残基(例えば、The Biochemistry of the Nucleic Acids,pages 5-36,Adams,et al.,ed.,11thed.,1992、PCT出願公開第WO93/13121号)が含まれ得る。一般に、プローブの標的核酸配列とは、標準的な水素結合を使用してプローブオリゴヌクレオチドの少なくとも一部に特異的にハイブリダイズする、増幅された核酸分子内に含まれる配列を意味する。
【0020】
プローブは、標的に特異的な配列、および任意選択で、標的にハイブリダイズしない配列である他の配列(例えば、検出されるべき核酸をハイブリダイズしない配列)を含んでいてもよい。そのような標的にハイブリダイズしない配列としては、例えば、プロモーター配列、制限エンドヌクレアーゼ認識部位、またはプローブの三次元コンフォメーションに寄与する配列(例えば、米国特許第5,118,801号および同第5,312,728号を参照のこと)を含み得る。少なくともある程度の自己相補性を示すプローブとしては、分子トーチおよび分子ビーコンが挙げられる。
【0021】
「分子トーチ」は、連結領域によって連結され、所定のハイブリダイゼーションアッセイ条件下で互いにハイブリダイズする、異なる自己相補性領域(「標的にハイブリダイズする配列ドメイン」および「標的閉鎖ドメイン」と命名)を含むように設計され得る。変性条件に曝露された場合に、分子トーチの2つの相補的領域(完全または部分的に相補的でもよい)は融解し、所定のハイブリダイゼーションアッセイ条件に戻された場合に、標的にハイブリダイズする配列ドメインの標的核酸配列とのハイブリダイゼーションが可能な状態になる。分子トーチは、標的にハイブリダイズする配列ドメインが標的閉鎖ドメインよりも標的核酸配列とのハイブリダイゼーションを支持するように設計される。分子トーチの標的にハイブリダイズする配列ドメインおよび標的閉鎖ドメインは、分子トーチが標的核酸配列とハイブリダイズする場合とは対照的に、分子トーチが自己ハイブリダイズする場合には異なるシグナルが生じるように配置された相互作用標識(例えば、蛍光/クエンチャー)を含み、これにより、プローブに結合した機能する標識を有するハイブリダイズしていないプローブの存在下で試験試料中のプローブ:標的二重鎖を検出することを可能にする。分子トーチは、例えば、米国特許第6,361,945号に記載されている。
【0022】
「分子ビーコン」は、標的にハイブリダイズする配列、標的核酸配列の非存在下で閉じたコンフォメーションのプローブを保つ親和性対(または核酸アーム)、およびプローブが「閉じた」コンフォメーションの場合に相互作用する標識対を有するように設計され得る。分子ビーコンの標的にハイブリダイズする配列のその意図された標的核酸配列とのハイブリダイゼーションは、親和性対のメンバーを分離し、これによりプローブを「開いた」コンフォメーションへ移行させる。「開いた」コンフォメーションへの移行は、標識対の相互作用の減少により検出可能である。分子ビーコンは、例えば、米国特許第5,925,517号に記載されている。
【0023】
プローブは、任意選択で、当該プローブの末端に結合していてもよく、当該プローブの内部に結合していてもよい検出可能な標識を含有してもよい。用語「標識」または「検出可能な標識」は、本明細書において同じ意味で使用され、1個以上の原子を指し、特異的に検出されて当該1個以上の原子に結合した物質の存在を示すことができる。標識は、直接的に検出可能な一次標識、または例えば一次標識との直接的もしくは間接的な相互作用により間接的に検出することができる二次標識であり得る。標識は、ポリヌクレオチドプローブに直接的または間接的に連結することができる。標識としては、色素、粒子、発色団(例えば、検出可能な色を付与する原子または分子)、組み合わせによる蛍光エネルギー移動標識、エレクトロフォア、酸化還元活性部分(例えば、遷移金属)、酵素、ハプテン、発光化合物(例えば、生物発光性、リン光性、または化学発光性部分)、フルオロフォア、質量標識、および放射標識が挙げられる。標識および関連する検出法は周知である(例えば、米国特許第6,627,748(B1)号、Styer and Haugland,(1967),Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.98:719、米国特許第5,591,578号、米国特許第5,491,063号、米国特許第5,201,015号を参照のこと)。
【0024】
用語「フルオロフォア」は、光励起により再発光できる蛍光性化合物を意味する。フルオロフォアとしては、例えば、蛍光ランタニド錯体(ユーロピウムおよびテルビウムのものを含む)、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリトロシン、クマリン、メチルクマリン、ピレン、マラカイトグリーン、Cy3、Cy5、CalFluor Red(商標)、CalFluor Orange(商標)、スチルベン、Quasar色素(例えば、Quasar 570、Quasar 670、Quasar 705)、Lucifer Yellow、Cascade Blue(商標)、Texas Red、Alexa色素、フィコエリスリン、Bodipy、および当技術分野において既知の他のものが挙げられる(例えば、Haugland,Molecular Probes Handbook(Eugene,OR),6th Edition、The Synthegen catalog(Houston,Tex.)、Lakowicz,Principles of Fluorescence Spectroscopy,2nd Ed.,Plenum Press New York(1999)、およびWO98/59066を参照のこと)。
【0025】
用語「クエンチャー」は、光を吸収する分子を指すために使用される。クエンチャーは、一般にフルオロフォアなどの発光標識と組み合わされて使用され、フルオロフォアに極めて接近している場合に放出された光を吸収する。クエンチャーは当技術分野において周知であり、少し例を挙げれば、例えば、Black Hole Quencher(商標)(または、BHQ(商標)、BHQ-1(商標)、またはBHQ-2(商標))、Blackberry Quencher、Dabcyl、QSY、およびTamra(商標)化合物が挙げられる。
【0026】
「均一な検出可能標識」とは、プローブオリゴヌクレオチドと結合しており、標識または標識されたプローブのハイブリダイズした形態をハイブリダイズしていない形態から物理的に除去することなく検出することができる標識を意味する。均一な標識の例が、例えば米国特許第5,283,174号、同第6,150,097号、同第5,201,015号、同第5,656,207号、および同第5,658,737号に詳述されている。
【0027】
直鎖状プローブ、分子トーチおよびビーコンは、好ましくは検出可能な標識の相互作用対によって標識されている。検出可能な標識の相互作用対のメンバーとして好ましい検出可能な標識の例は、FRETまたは非FRETエネルギー移動機構によって互いに相互作用するものである。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)は、熱エネルギーへの変換なく、かつ供与体部分および受容体部分が動的衝突を起こすことなく、原子間距離よりもかなり長い距離にわたる、発色団間の共鳴相互作用による、吸収部位からその分子または分子系におけるその利用部位へのエネルギー量子の無放射伝達を含む。「ドナー」とは最初にエネルギーを吸収して、次いで伝達する部分であり、「アクセプター」とはその後にエネルギーが伝達される部分である。FRETに加えて、励起エネルギーが供与体から受容体分子に伝達され得る少なくとも3つの他の「非FRET」エネルギー移動プロセスがある。
【0028】
ドナー/アクセプター対の2つの標識が十分に接近している状態に保たれ、1つの標識によって放出されたエネルギーが第2の標識によって受容または吸収され得る場合、FRET機構または非FRET機構にかかわらず、2つの標識は、互いに「エネルギー移動関係」にあると言われる。これは、例えば、分子ビーコンまたは分子トーチがステム二本鎖の形成によって「閉鎖」状態に維持され、プローブの一方のアームに結合したフルオロフォアからの蛍光発光が反対側のアーム上のクエンチャー部分によって消光される場合である。これはまた、例えば、直鎖状プローブが当該直鎖状プローブに沿ってある距離をおいてフルオロフォアおよびクエンチャーにより標識され、結合した当該フルオロフォアからの蛍光放出が結合した当該クエンチャーによって消光される場合でもある。これらの例において、フルオロフォアおよびクエンチャー分子の空間分離(例えば、分子トーチまたはビーコンを「開くこと」によって、または直鎖状プローブ分子を加水分解することによって)。
【0029】
ドナー/アクセプター対の例としては、フルオレセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANS/フルオレセイン、EDANS/DABCYL、クマリン/DABCYL、フルオレセイン/フルオレセイン、BODIPY FL/BODIPY FL、フルオレセイン/DABCYL、ルシファーイエロー/DABCYL、BODIPY/DABCYL、エオシン/DABCYL、エリトロシン/DABCYL、テトラメチルローダミン/DABCYL、CalOrange/BHQ1、CalRed/BHQ2、FAM/BHQ1、Quasar/BHQ2、Texas Red/DABCYL、CY5/BH1、CY5/BH2、CY3/BH1、CY3/BH2、およびフルオレセイン/QSY7色素が挙げられる。標識は、LGC Biosearch Technologies(Petaluma,CA)、Glen Research(Sterling,VA)、Integrated DNA Technologies(Skokie,Il)、Thermo Fisher(Waltham,MA)などから入手可能である。
【0030】
合成技術ならびに標識を核酸に結合する方法および標識を検出する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、Sambrook,et al.,Molecular
Cloning, A Laboratory Manual,2nd ed.(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989),Chapter 10、米国特許第5,658,737号、同第5,656,207号、同第5,547,842号、同第5,283,174号、および同第4,581,333号、ならびに欧州特許出願第0747706号を参照のこと)。プローブは、任意選択でフルオロフォアおよびクエンチャーを含有してもよい。プローブ配列内部の検出可能部分の場合のように、標的核酸配列と結合させるプローブのヌクレオチド残基は厳密に連続している必要はない。
【0031】
「増幅プライマー」または「プライマー」は、任意選択で、標的核酸配列またはその相補体にハイブリダイズし、核酸増幅反応に関与することができる修飾オリゴヌクレオチドである。プライマーオリゴヌクレオチドは、連続したヌクレオチド配列、標的にハイブリダイズする配列、標的にハイブリダイズしない配列、リンカー、およびヌクレオチド類似体のうちの1つ以上を含む。プライマーは、好ましくは約10個の連続したヌクレオチドから100個の連続したヌクレオチドまでのオリゴヌクレオチド長を有する。プライマー配列は、RNA、DNA、類似体、およびこれらの組み合わせを含んでいてもよい。プライマーの「主鎖」は、当該技術分野において既知の種々の結合で構成されてもよく、当該結合には、1つ以上の糖-ホスホジエステル結合、ペプチド-核酸結合(PNA)、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、またはこれらの組み合わせが含まれる。プライマーの糖部分は、リボースもしくはデオキシリボース、または既知の置換、例えば、2’-O-メチルリボースおよび2’-ハロゲン化物置換(例えば、2’-O-Meまたは2’-F)を有する類似の化合物であり得る。プライマーオリゴヌクレオチド配列に組み込まれるヌクレオチド類似体としては、イノシンもしくは「I」、5-Me-dC、イソグアニン、プリンもしくはピリミジン塩基の他の誘導体、または無塩基残基(例えば、ヌクレオシド残基)が含まれ得る。プライマーの標的核酸配列とは、一般に標準的な水素結合を使用してプライマーオリゴヌクレオチドの少なくとも一部と特異的にハイブリダイズする、検出されるべき生物の遺伝子情報内に含まれる配列および増幅された核酸分子内に含まれる配列の両方を指す。プライマーは標的核酸配列にハイブリダイズし、標的核酸配列と相補的なヌクレオチドを組み込んで、その二本鎖部分を生成するDNAポリメラーゼによって伸長され得る3’末端を有する。
【0032】
「捕捉オリゴヌクレオチド」とは、塩基対ハイブリダイゼーションによる標的核酸と固定化オリゴヌクレオチドの連結を可能にする少なくとも1つの核酸オリゴヌクレオチドを意味する(好ましくは、固定化プローブ:捕捉オリゴヌクレオチド:標的核酸複合体をもたらす)。捕捉オリゴヌクレオチドは、好ましくは2つの結合領域、通常は同一オリゴヌクレオチド上で連続する標的核酸結合領域および固定化プローブ結合領域を含むが、本発明の捕捉オリゴヌクレオチドは1つ以上のリンカーによって連結された2つの異なるオリゴヌクレオチド上に存在する標的核酸結合領域および固定化プローブ結合領域を含んでもよい。例えば、固定化プローブ結合領域は第1のオリゴヌクレオチド上に存在し、標的核酸結合領域は第2のオリゴヌクレオチド上に存在し、当該2つの異なるオリゴヌクレオチドは、第1および第2のオリゴヌクレオチドの配列と特異的にハイブリダイズする配列を含む第3のオリゴヌクレオチドであるリンカーと水素結合によって連結されている。捕捉プローブの標的とハイブリダイズする領域は、標的核酸に特異的(例えば、標的核酸配列と十分に相補的)または標的核酸に非特異的であり得る。捕捉オリゴヌクレオチドを含む一標的捕捉システムは、米国特許第6,110,678号および同第9,051,601号に記載されている。
【0033】
「固定化プローブ」または「固定化核酸」とは、捕捉オリゴヌクレオチドを固定化支持体に直接的または間接的に連結する核酸を意味する。固定化プローブは、試料中の結合していない物質からの結合した標的核酸の分離を促進する、固体支持体に連結されたオリゴヌクレオチドである。
【0034】
「固体基質」という用語は、抗体または薬剤が共有結合的または非共有結合的に結合または固定化され得る固相中に存在する任意の好適な媒体を意味する。
【0035】
「分離する」または「精製する」または「単離する」とは、生体試料の1つ以上の成分が、当該試料の1つ以上の他の成分から除去されることを意味する。試料成分には、一般に水溶液相中の核酸が含まれ、水溶液相には他の物質、例えばタンパク質、炭水化物、脂質、および標識プローブも含まれ得る。好ましくは、分離、単離、または精製ステップは、試料中に存在する他の成分の少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは少なくとも約95%を除去する。
【0036】
「均一アッセイ」とは、特定のプローブハイブリダイゼーションの程度を決定する前に、ハイブリダイズしていないプローブからハイブリダイズしたプローブを物理的に分離する必要のない検出手順を指す。例示的な均一アッセイでは、適切な標的核酸配列にハイブリダイズしたときに蛍光シグナルを発する分子ビーコンまたは他の自己報告プローブ、ハイブリッド二重鎖に存在しない限り化学的手段によって選択的に破壊され得る化学発光アクリジニウムエステル標識、および当業者によく知られている他の均一な検出可能標識を使用することができる。
【0037】
「増幅」とは、標的核酸配列、その相補体、またはその断片の複数コピーを得るためのインビトロ手順を指す。
【0038】
「アンプリコン」とは、核酸増幅または複製プロセスの産物であるDNAまたはRNAを指す。アンプリコンは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写関連増幅(例えばTMA)などの各種の方法を使用して形成され得る。
【0039】
「マルチプレックスPCR」という用語は、同一のPCR反応で2対以上の増幅プライマーを使用することにより2つ以上の異なる増幅産物またはアンプリコンが生成されることを特徴とするPCR反応を指す。
【0040】
「マルチカラー」RT-PCRという用語は、マルチプレックスPCRまたはモノプレックスPCR(1対の増幅プライマーのみを使用)で生成される1つ以上の異なる増幅産物またはアンプリコンが識別可能に標識されたハイブリダイゼーションプローブを使用して検出されることを特徴とするリアルタイムPCRアッセイを指す。
【0041】
「標的核酸」または「標的」とは、標的核酸配列を含む核酸を意味する。本明細書に記載される、標的核酸には、Flu A核酸、Flu B核酸、RSV A核酸、およびRSV B核酸が含まれる。「標的核酸配列」(「標的ヌクレオチド配列」、「標的配列」、「標的領域」、「標的核酸分子」とも称される)とは、一本鎖核酸分子のヌクレオチド配列の全てまたは一部を含む特定のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド分子またはヌクレオチド配列、およびこれらに相補的なデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド配列を意味する。
【0042】
「転写関連増幅」とは、RNAポリメラーゼを使用して核酸テンプレートから複数のRNA転写物を産生する任意のタイプの核酸増幅を意味する。「転写媒介増幅」(TMA)と呼ばれる転写関連増幅法の一例では、一般にRNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、リボヌクレオシド三リン酸、およびプロモーター-テンプレート相補的オリゴヌクレオチドを使用し、任意選択で1つ以上の類似のオリゴヌクレオチドを含んでもよい。TMAの変形例は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第5,437,990号、同第5,399,491号、同第5,554,516号、同第5,130,238号、同第4,868,105号、および同第5,124,246号、PCT出願公開第WO93/22461号、同第WO88/01302号、同第WO88/10315号、同第WO94/03472号、および同第WO95/03430号に記載されている。
[発明の概要]
【0043】
本開示は、試料中のインフルエンザA型ウイルス(Flu A)、インフルエンザB型ウイルス(Flu B)、呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV A型)、または呼吸器合胞体ウイルスB型(RSV B型)核酸のインビトロ診断分析のための、キットおよび試薬を含む組成物、ならびに方法を提供する。インビトロ診断分析はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用することが好ましいが、他のインビトロアッセイ方法論を本開示の組成物と共に使用することが企図される。Flu A、Flu B、RSV AまたはRSV
Bの標的核酸用に使用するのに特に有用なインビトロアッセイは、これらの標的核酸がRNAウイルスであるため、逆転写PCRアッセイである。好都合には、インビトロ増幅アッセイは、インビトロ検出アッセイ(リアルタイムPCR)と同時に実行することができる。したがって、Flu A、Flu B、RSV AまたはRSV B標的核酸用に使用するのに特に有用かつ便利なインビトロアッセイは、リアルタイム逆転写PCRアッセイである。
【0044】
一態様では、試料は生体試料である。一態様では、生体試料は臨床試料である。別の態様では、試料は、例えば、患者から得た鼻咽頭(NP)綿棒検体からの綿棒試料である。いくつかの実施形態では、本発明の組成物および方法は、Flu A、Flu B、ならびにRSV AおよびRSV B感染の鑑別診断に役立たせるために使用することができる。陰性の結果は、当該感染を排除しない。逆に、陽性の結果は、細菌感染または他のウイルスとの同時感染を除外しない。また、追加の研究室試験の使用および臨床症状を考慮して呼吸器ウイルス感染の最終診断を得てもよい。
【0045】
一態様は、Flu A、Flu B、RSV AまたはRSV Bの標的核酸配列を検出するのに有用なハイブリダイゼーションアッセイプローブである核酸分子を提供する。好ましくは、そのようなプローブ分子種は、検出の標的とされるウイルスゲノムまたはそれから生成されるアンプリコン内のプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であるプローブ配列を含む。好ましい実施形態では、プローブの標的核酸配列は、標的とされるウイルスゲノム(またはそれから生成されるアンプリコン)に含まれる約17~約100個の連続した塩基からなる。好ましくは、プローブ分子は最大約100個のヌクレオチド残基長であるが、約20~60個の間のヌクレオチド残基の長さが特に好ましい。
【0046】
Flu Aの文脈において、いくつかの好ましい実施形態では、本発明のプローブは、好ましくは配列名:FA1-F、配列名:FA1-G、配列名:FA1-H、配列名:FA1-I、配列名:FA1*-J、配列名:FA1*-K、配列名:FA1-L、配列名:FA1-M、配列名:FA1-N、配列名:FA1*-O、配列名:FA1*-P、または配列名:FA1*-Qである配列を含む。他の実施形態では、本発明のプローブ配列は、好ましくは配列名:FA2-R、配列名:FA2-S、配列名:FA2-T、配列名:FA2*-U、または配列名:FA2*-V(配列番号6~22)である。特に好ましい実施形態では、前述のグループのそれぞれから1つずつの2つのプローブを縦一列に並べて使用して、Flu Aゲノムまたはそれから生成される増幅産物の2つの異なる領域を標的とする。
【0047】
Flu Bの文脈において、好ましい実施形態では、本発明のプローブ配列は、好ましくは配列名:FB-B、配列名:FB-B!、配列名:FB-C、配列名:FB-C!、配列名:FB-D、配列名:FB-D!、配列名:FB-E、配列名:FB-E!、配列名:FB-F、配列名:FB-F!、配列名:FB-G、配列名:FB-G!、配列名:FB-H、配列名:FB-H!、配列名:FB-I、配列名:FB-I!、配列名:FB-J、配列名:FB-J!、配列名:FB-K、配列名:FB-K!、配列名:FB-L、配列名:FB-L!、配列名:FB-M、配列名:FB-M!、配列名:FB-N、配列名:FB-N!、配列名:FB-O、配列名:FB-O!、配列名:FB-Q、配列名:FB-R、配列名:FB-S、配列名:FB-T、配列名:FB-U、配列名:FB-V、配列名:FB*-W、または配列名:FB*-X(配列番号30~57および59~66)である。
【0048】
RSV Aの文脈において、好ましい実施形態では、本発明のプローブ配列は、好ましくは配列名:RA-A、配列名:RA-E、配列名:RA-F、配列名:RA-G、配列名:RA-H、配列名:RA-J、配列名:RA-J!、配列名:RA-K、配列名:RA-K!、配列名:RA-L、配列名:RA-L!配列名:RA-M、配列名:RA-M!、配列名:RA-O、配列名:RA-P、配列名:RA-Q、配列名:RA*-W、および配列名:RA*-X(配列番号71、75~78、80~87、89~91、97および98)である。
【0049】
RSV Bの文脈において、好ましい実施形態では、本発明のプローブ配列は、好ましくは配列名:RB-D、配列名:RB-E、配列名:RB-V、配列名:RB-V!、配列名:RB-W、配列名:RB-W!、配列名:RB-X、配列名:RB-X!、配列名:RB-Y、および配列名:RB-Y!(配列番号102、103および107~114)である。
【0050】
好ましくは、プローブ分子種は標識されており、任意選択で多重検出アッセイにおいて任意の1つのプローブ分子種を他のプローブ分子種と区別できるように識別可能に標識されている。識別可能な標識化は、2つ以上の検出可能な標識、例えば、化学発光部分、フルオロフォア部分、ならびにフルオロフォア部分およびクエンチャー部分の両方を使用して達成することができる。
【0051】
本開示の別の態様は、標的核酸配列のインビトロ増幅に使用するために設計された増幅プライマーである核酸分子に関する。本開示の関連する態様は、標的核酸配列を含む望ましいアンプリコンを増幅するために使用することができるそのようなプライマーの対に関する。これらのプライマーは、第1のFlu Aプライマー対、第1のFlu Aプライマー対を使用して増幅することができるFlu A標的核酸領域と異なるFlu A標的核酸領域を増幅するために使用することができる第2のFlu Aプライマー対、Flu
Bプライマー対、RSV Aプライマー対およびRSV Bプライマー対を含むプライマー対のうちの1つ以上を含む。これらのプライマー対は、ウイルス病原体が試験される生体試料中に存在する場合、Flu A、Flu B、RSV A、および/またはRSV Bについて対応するアンプリコンを生成するために使用することができる第1および第2のプライマーを含む。
【0052】
一般に、プライマー対は、ウイルスゲノムの第1の標的核酸配列、すなわち増幅されるべきウイルスゲノムの一部と実質的に相補的であるプライミングヌクレオチド配列を含む第1のプライマーを含む。好ましくは、標的核酸の第1および第2の標的核酸配列は、少なくとも10ヌクレオチド、好ましくは約50~1,000ヌクレオチド離れており、それらの各々は、好ましくは、検出されるべきウイルスゲノムの約17~約100個の連続した塩基から構成されている。いくつかの実施形態では、1つ以上のプライマー対におけるプライマーのうちの1つ以上は、当該プライマーの標的ヌクレオチド配列と相補的でないヌクレオチド配列を有するプライマー上流領域を更に含む。
【0053】
第1のFlu Aアンプリコンを生成するのに好ましい第1のプライマーは、配列名:FA1-Aまたは配列名:FA1-Wのプライミングヌクレオチド配列を有する。そのような第1のプライマーと共に使用するのに有用な好ましい第2のプライマーは、配列名:FA1-Yまたは配列名:FA1-ABのプライミングヌクレオチド配列を有する。配列番号1、23、25、および28。
【0054】
第2のFlu Aアンプリコンを生成するのに好ましい第1のプライマーは、配列名:FA2-B、配列名:FA2-C、配列名:FA2-D、配列名:FA2-E、または配列名:FA2-Xのプライミングヌクレオチド配列を有する。そのような第1のプライマーと共に使用するのに有用な好ましい第2のプライマーは、配列名:FA2-Zまたは配列名:FA2-AAのプライミングヌクレオチド配列を有する。配列番号2、5、24、26、および27。
【0055】
Flu Bアンプリコンを生成するのに好ましい第1のプライマーは、配列名:FB-Aまたは配列名:FB-Yのプライミングヌクレオチド配列を有する。そのような第1のプライマーと共に使用するのに有用な好ましい第2のプライマーは、配列名:FB-Z、配列名:FB-AAおよび配列名:FB-ABのプライミングヌクレオチド配列を有する。配列番号29および67~70。
【0056】
RSV Aアンプリコンを生成するのに好ましい第1のプライマーは、配列名:RA-Iまたは配列名:RA-Nのプライミングヌクレオチド配列を有する。そのような第1のプライマーと共に使用するのに有用な好ましい第2のプライマーは、配列名:RA-B、配列名:RA-C、配列名:RA-D、配列名:RA-R、配列名:RA-S、配列名:RA-T、配列名:RA-U、および配列名:RA-Vのプライミングヌクレオチド配列を有する。配列番号:79、88、72~74、および92~96。
【0057】
RSV Bアンプリコンを生成するのに好ましい第1のプライマーは、配列名:RB-A、配列名:RB-B、配列名:RB-C、および配列名:RB-Uのプライミングヌクレオチド配列を有する。そのような第1のプライマーと共に使用するのに有用な好ましい第2のプライマーは、配列名:RB-F、配列名:RB-G、配列名:RB-U、および配列名:RB-Zのプライミングヌクレオチド配列を有する。配列番号99~101、104~106、および115。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態では、プローブおよび/またはプライマーは、1個以上のメチル化シトシン塩基を含有する。
【0059】
本開示の別の関連する態様は、上記プローブ、プライマーおよびプライマー対を含有する組成物に関する。そのような組成物は、乾燥組成物または液状組成物を含む。乾燥組成物は、プライマーおよびプローブのうちの1つ以上を含有する凍結乾燥された試薬を含む。
【0060】
本開示の別の態様は、プライマーおよび/またはプローブを含むキットに関する。そのようなキットは、塩、酵素、dNTP、dRTP、他の基質、および/またはそのような材料の使用のための使用説明書をも含み得る。上記キット中の上記プライマー、プローブ、塩類、酵素、dNTP、rNTP、および/または他の基質は、乾燥形態または水性形態であり得る。
【0061】
本開示の別の態様は、プライマーおよび/またはプローブを含有する試薬に関する。そのような試薬は、塩、酵素、dNTP、rNTP、および/または他の基質をも含み得る。上記試薬中の上記プライマー、プローブ、塩、酵素、dNTP、rNTP、および/または他の基質は、乾燥形態または水性形態であり得る。
【0062】
本開示の更に別の態様は、試料がFlu A標的核酸、Flu B標的核酸、RSV A標的核酸およびRSV B標的核酸のうちの1つ以上を含有するかどうかを決定するために、試料を分析するために上記プライマーおよびプローブを使用する方法に関する。上述の目的および他の目的、本発明の組成物および方法の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲により明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0063】
本明細書では、試料中の各種のウイルス病原体、具体的にはインフルエンザA型(Flu A)、インフルエンザB型(Flu B)、呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV A)および呼吸器合胞体ウイルスB型(RSV B)の核酸を選択的に検出するための、キットおよび試薬を含む組成物、ならびに方法が記載される。これらの組成物および方法は、例えば診断応用においては、これらの病原生物のうちの1つ以上を含有し得る臨床試料、鼻咽頭試料、気管支肺胞試料、献血液および血液製剤または他の組織をスクリーニングするのに使用することができる。
【0064】
明らかなように、Flu A、Flu B、RSV A、RSV Bおよび/または他の病原性ウイルス標的に特異的な任意のプライマーおよびプローブ配列を、目的の標的核酸の増幅に適した任意の好適なプライマー/プローブベースのインビトロ核酸増幅法においてプライマーまたはプローブとして使用してもよい。更に、本明細書に記載の配列を有するオリゴヌクレオチドがウイルスの標的核酸を検出するためのアッセイにおいて他の機能を発揮できることが理解される。例えば、プローブはプライマーとして(例えば、プライマー対の1つのメンバーとして)使用することができ、プライマーは代替的検出アッセイにおいてプローブとして使用することができる。
【0065】
増幅プライマーは、反応混合物中でアンプリコン種が標的に特異的なプライマーから産生され得るユニプレックスまたはマルチプレックス増幅反応の構成要素として有用である。マルチプレックス増幅反応は、Flu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bのうちの2つ以上を増幅するためのプライマー対を含むか、または加えて、Flu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bのうちの1つ以上および1つ以上の追加の標的(例えば、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、および/またはボルデテラ)用のプライマーを含む。
【0066】
本開示に関連した有用な増幅方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、転写媒介増幅(TMA)、核酸配列ベース増幅(NASBA)、鎖置換増幅(SDA)、および自己複製ポリヌクレオチド分子およびMDV-1 RNAおよびQ-β酵素などの複製酵素を使用した増幅方法が挙げられる。これらの各種の増幅技術を実施する方法は、それぞれ、米国特許第4,965,188号、同第5,399,491号、同第5,455,166号、および同第5,472,840号、欧州特許出願公開第EP0525882号、ならびにLizardi,et al.,BioTechnology 6:1197(1988)に見出すことができる。特に好ましい実施形態では、Flu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bの核酸配列は、リアルタイムPCR(RT-PCR)を使用して増幅される。
【0067】
呼吸器系ウイルス系統間(特にFlu A)の配列保存性の欠如により、およびプライマーまたはプローブとウイルスの標的核酸内の当該プライマーまたはプローブに対応する標的核酸配列との間のミスマッチ/変異への対応のために、いくつかの好ましい実施形態では、縮重塩基および非ワトソン・クリック型(NWC)塩基対形成がプライマーまたはプローブオリゴヌクレオチドに含まれ得る。オリゴヌクレオチド内のNWC位置とは、当該オリゴヌクレオチドが少なくとも1つの標的核酸配列と非ワトソン・クリック型対形成、例えばG-U、G-TまたはG-A(GまたはU/T/Aのいずれかがオリゴヌクレオチド内の塩基であり得る)によりハイブリダイズするように構成されている位置を指す。いくつの実施形態では、NWC位置は、ゆらぎ(G-UまたはG-T)またはプリン-プリン(G-A)対を介してハイブリダイズするように構成される。いくつかの実施形態では、単一のプライマーまたはプローブについて1個以上の縮重塩基が標的核酸配列内に同定される場合、複数のプライマー種またはプローブ種を合成して全ての塩基の組み合わせを含めることができる。
【0068】
望ましい特徴を有する増幅プライマーおよびプローブを設計するのに有用なガイドラインは、当技術分野において既知であり、本明細書に記載されている。Flu A、Flu
B、RSV A、およびRSV Bの核酸を増幅および探索するのに最適な部位は、それぞれが約15塩基長より長く、標的核酸の連続した配列のうちの約1,000塩基、好ましくは約500塩基、更により好ましくは約200塩基の領域内で全てが互いに空間的に分離されている、2つおよび好ましくは3つの保存された領域を含む。一組のプライマーによって観察される増幅の程度は、プライマーがそれらの相補配列とハイブリダイズする能力、およびプライマーが酵素によって伸長される能力を含むいくつかの要因に依存する。ハイブリダイゼーション反応の程度および特異性は多数の要因に影響を受けるため、それらの要因の操作により特定のオリゴヌクレオチドの正確な感度および特異性が、その標的に完全に相補的であるか否かにかかわらず決定する。アッセイ条件を変化させることの効果は、当技術分野において既知であり、例えば、米国特許第5,840,488号を参照のこと。
【0069】
増幅プライマーおよびプローブは、オリゴヌクレオチド:非標的(例えば、標的核酸と類似の配列を有する核酸)およびオリゴヌクレオチド:オリゴヌクレオチド(例えば、プライマー二量体および自己相補性)核酸ハイブリッドの安定性を最小限にするように配置されなければならない。増幅プライマーおよび検出プローブは標的配列と非標的配列とを区別可能であることが好ましい。プライマーおよびプローブを設計する際は、オリゴヌクレオチド:非標的およびオリゴヌクレオチド:オリゴヌクレオチドと比較したオリゴヌクレオチド:標的の融解温度(T)値の差をオリゴヌクレオチド:標的ハイブリダイゼーションを支持するのに十分な大きさとしなければならない。また、好ましくは長いホモポリマー領域および高いGC含量を回避して、偽のプライマー伸長を減少させる。
【0070】
既に知られているように、核酸ハイブリダイゼーションは、水素結合した二本鎖を形成するために2つの相補的核酸の一本鎖が会合することを伴う。2本の鎖のうちの1本が完全にまたは部分的にハイブリッドに関与している場合、その鎖は新しいハイブリッドの形成に関与することができなくなることを暗示している。関心のある配列のかなりの部分が一本鎖になるようにプライマーとプローブを設計することにより、ハイブリダイゼーションの速度と程度を大幅に高めることができる。標的が二本鎖型の場合(PCR産物の場合のように)、通常、ハイブリダイゼーション前の変性が必要となる。
【0071】
増幅反応の実施に有用なプライマーは、標的への結合に関与せず、増幅または検出手順に実質的に影響を及ぼさない可能性がある外側の配列の存在を収容するために、異なる長さを有し得る。例えば、本開示に従って増幅反応を実施するのに有用なプロモーター-プライマーは、所望の標的核酸配列にハイブリダイズする少なくとも最小配列、およびその最小配列の上流に位置するプロモーター配列を有する。ただし、標的に結合する配列とプロモーター配列の間に配列を挿入すると、増幅反応での有用性を損なうことなくプライマーの長さを変えることができる。更に、増幅プライマーと検出プローブの長さは、これらのオリゴヌクレオチドの配列が所望の相補的な標的配列とハイブリダイズするための最低限の必須要件を満たす限り、選択の問題である。
【0072】
Flu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bの核酸配列の検出に有用なハイブリダイゼーションアッセイプローブには、Flu A、Flu B、RSV AまたはRSV Bのゲノム中の選択された標的核酸配列(または、対応する領域とその隣接領域または周辺領域を表すアンプリコン)に実質的に相補的な塩基配列が含まれる。そのようなプローブは、任意選択で標的核酸領域の外側に追加の塩基を有してもよく、それらはFlu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bの核酸に相補的であってもなくてもよい。
【0073】
好ましいプローブは、設計された増幅および検出反応に対応するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするように十分に標的核酸と相同である。例えば、PCRでは、オリゴヌクレオチドが約60℃の反応温度でその標的核酸配列とハイブリダイズするように、伸長および検出反応が実行される。塩濃度は、オリゴヌクレオチドのその標的核酸配列へのハイブリダイゼーションにも影響する。例示的な塩濃度としては、約0.6~0.9Mの適切な範囲である。好ましい塩には塩化リチウムが含まれるが、塩化ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムなどの他の塩もハイブリダイゼーション溶液に使用することができる。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件の例は、0.48Mリン酸ナトリウムバッファー、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、ならびに各1mMのEDTAおよびEGTA、または0.6MのLiCl、1%ラウリル硫酸リチウム、60mMコハク酸リチウムならびに各10mMのEDTAおよびEGTAによっても提供される。当業者は、核酸ハイブリダイゼーションのための溶液の調製に精通している。
【0074】
本開示によるプローブは、プローブが標的とする特定のウイルス標的核酸の事前に選択された標的領域に相補的な、または対応する配列を有する。好ましいプローブは、10~100ヌクレオチド長の範囲で、検出される核酸に相補的ではない任意の塩基配列と共に、標的にハイブリダイズする塩基配列を含むプローブ配列を有する。
【0075】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸の増幅は分子生物学の基本的な手法であり、通常は試料調製、増幅、および産生物の分析を必要とする。通常、これらのステップは順番に実行されるが、増幅と分析は同時に実行できる。DNA色素または蛍光プローブは、増幅前にPCR混合物に添加して、増幅中のPCR産物の分析に使用できる。試料分析は、同じ機器内の同じチューブで増幅と同時に行われる。そのような複合手法により、更なる分析のために試料をその閉じた容器から取り出す必要がないため、試料の取り扱いが減り、時間が節約され、後続の反応で産生物が汚染されるリスクが大幅に減少する。増幅と産生物の分析を組み合わせた概念は、「リアルタイム」PCR(RTーPCR)として知られるようになった。例えば、米国特許第6,174,670号および同第8,137,616号を参照のこと。リアルタイムPCRでは、PCRの各サイクルでPCR産物の形成がモニタリングされる。増幅は通常、増幅反応中にプローブオリゴヌクレオチド種に結合した標識からのシグナルを生成および検出するための追加の装置を備えたサーモサイクラーで測定される。1つの反応容器内で3つ、4つ、またはそれ以上の識別可能に標識されたハイブリダイゼーションプローブを用いて多重診断アッセイを行うための多くのそのような装置は当該技術分野において既知である。
【0076】
既に知られているように、マルチプレックスアッセイでのプローブベースの増幅DNAのリアルタイム検出には、種々のフォーマットがある。一般的な例としては、「Taqman」プローブシステム、分子ビーコンおよびトーチ、単一標識プローブ、ならびにFRETハイブリダイゼーションプローブが挙げられる。
【0077】
Taqmanプローブフォーマットでは、所与の標的に対する一本鎖ハイブリダイゼーションプローブが、検出可能な標識のドナー/アクセプター対で標識される。ドナー(例えば、フルオロフォア部分)が適切な波長の光で励起されると、FRETの原理に従って、吸収されたエネルギーはアクセプター(例えば、クエンチャー部分)に移動する。PCR反応サイクルのアニーリングステップ中にハイブリダイゼーションプローブは標的DNAに結合し、その後の伸長段階でTaqポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性により分解される。結果として、励起したドナー部分とアクセプター部分は空間的に分離され、これにより装置によって検出されるドナーからのシグナル(例えば、蛍光放出)が消光されなくなる。例えば、米国特許第5,538,848号を参照のこと。
【0078】
分子ビーコンおよびトーチフォーマットも、通常、ドナー/アクセプター対で標識されたハイブリダイゼーションプローブを含み、ドナー部分およびアクセプター部分の各々はプローブの反対端に位置している。しばしばプローブの両端の相補領域のハイブリダイゼーションを伴うプローブの二次構造の結果として、ドナー部分およびアクセプター部分(例えば、フルオロフォア部分およびクエンチャー部分)の両方が溶液中で空間的に近接している。プローブの標的とハイブリダイズする領域を所望の標的核酸配列にハイブリダイズさせた後、適切な波長の光でドナー部分を励起した後にその発光を測定できるように、ドナー部分とアクセプター部分を互いに分離する。例えば、米国特許第5,118,801号を参照のこと。
【0079】
単一標識プローブ(SLP)フォーマットでは、単一のオリゴヌクレオチドは5’または3’末端のいずれかが単一の蛍光色素で標識される。G-クエンチングプローブやニトロインドール-デクエンチングプローブなど、種々のデザインをオリゴヌクレオチド標識に使用できる。G-クエンチングの実施形態では、蛍光色素は、オリゴヌクレオチドの5’または3’末端にCを介して結合している。2つのGがCの反対側の標的鎖上にあり、相補的なオリゴヌクレオチドプローブの一方の位置1にある場合、プローブが標的にハイブリダイズすると蛍光は大幅に減少する。ニトロインドールデクエンチングの実施形態では、蛍光色素はオリゴヌクレオチドの5’または3’末端のニトロインドールに結合し、ニトロインドールは遊離(例えば、ハイブリダイズしていない)プローブ分子からの蛍光シグナルを減少させる。デクエンチング効果により、プローブが標的DNAにハイブリダイズすると蛍光が増加する。
【0080】
標的核酸を検出するためにFRETハイブリダイゼーションプローブを使用するマルチプレックスアッセイは、均一ハイブリダイゼーションアッセイで特に有用である(例えば、Matthews and Kricka,Analytical Biochemistry,vol.169(1988),pp:1-25を参照のこと)。特に、RT-PCRでFRETハイブリダイゼーションプローブフォーマットを使用して、増幅された標的DNA種を検出することができる。
【0081】
PCRおよびリアルタイムPCRに加えて、FRETハイブリダイゼーションプローブは融解曲線分析にも使用することができる。そのようなアッセイでは、標的核酸は、適切な増幅プライマーを用いた典型的なPCR反応で最初に増幅される。ハイブリダイゼーションプローブは、増幅反応時に既に存在しているか、またはその後に添加される。PCR反応の完了後、試料の温度は徐々に上昇し、ハイブリダイゼーションプローブが標的DNAに結合している限り、蛍光が検出される。融解温度では、ハイブリダイゼーションプローブ分子は相補的な標的配列から放出され、蛍光シグナルはすぐにバックグラウンドレベルまで減少する。この減少は、最大の蛍光減少が観察される一次微分値が決定され得るように、蛍光対温度-時間プロットでモニタリングされる。
【0082】
いくつかの好ましい実施形態では、マルチプレックスアッセイにおいて複数の標的DNA配列を増幅および検出するためのRT-PCR法が使用される。そのような方法は、生体試料由来の核酸、プローブ、プライマーおよび増幅を触媒する好適なポリメラーゼ活性を含有する組成物または反応混合物を提供するステップ、反応混合物を複数の標的配列が増幅されるような熱サイクルプロトコルに供するステップ、ならびに複数の増幅サイクルの後に少なくとも1回、各々のプローブ分子種(例えば、FRETハイブリダイゼーションプローブ対)のハイブリダイゼーションをモニタリングするステップを伴う。検出されるべきウイルスの標的核酸が1つ以上のRNA分子で構成される実施形態では、そのような方法は通常、逆ポリメラーゼ活性を利用することにより最初にRNAをDNA(例えば「相補的」DNAまたは「cDNA」)に変換するステップを伴う。
【0083】
そのようなマルチプレックスの実施形態では、組成物または反応混合物は、通常、少なくとも2対、好ましくは3~5対、最も好ましくは4対の検出プローブを含み、好ましくは各対のプローブはFRETドナー部分およびFRETアクセプター部分を含む。加えて、そのような組成物または反応混合物は、PCR用に設計された緩衝剤、dNTP、テンプレート依存性DNAポリメラーゼ(好ましくは耐熱性DNAポリメラーゼ)、逆転写酵素のうちの1つ以上を含む多数の試薬も含む。
【0084】
増幅プロセスが完了する間または完了後、反応をモニタリングして反応中に存在する識別可能に標識されたプローブ種のうちの1つ以上とその対応する標的核酸配列との間の安定したハイブリダイゼーションを検出する(検出される特定のウイルス(または他の)病原体に対応するプライマー対を使用して生成されたアンプリコンが保有する。異なるドナー/アクセプター対のそれぞれからのドナー部分が検出されるかどうかに基づいて、生体試料にFlu A、Flu B、RSV Aおよび/もしくはRSV B、および/または特定のアッセイで標的とされるような他の病原体が含まれているかどうかを決定することができる。
【0085】
ある種の好ましいキットは、プローブ、プライマー、捕捉オリゴヌクレオチド、内部標準オリゴヌクレオチド、その他の補助的なオリゴヌクレオチド、緩衝液、dNTP、DNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および当該キットの構成要素を使用するための使用説明書(またはそのような使用説明書を提供するウェブサイトへのリンク)のうちの1つ以上を含むであろう。
【0086】
以下の実施例は、ある特定の開示された実施形態を例示するよう提供され、本開示の範囲をいかなる方法でも制限するものとして解釈されるべきではない。
【0087】
一般的な試薬および方法。別に示さない限り、増幅はABI 7500 FAST(登録商標)機器を用いて実施した。増幅の標的または対照として使用されるウイルス分離株は適切な培地、例えば、Micro Test M4 media(Remel Inc.、カタログ番号R12500)、Micro Test M5 Viral Transport Medium(Remel Inc.、カタログ番号R12515)、Micro Test M6 Viral Transport Medium(Remel
Inc.、カタログ番号R12530)、Micro Test M4RT Viral Transport Medium(Remel Inc.、カタログ番号R12505)、またはCopan Universal Transport Medium(Copan Diagnostics Inc.、カタログ番号330C)で希釈した。米国特許出願公開第2013/0209992号に記載されるような非特異的な標的捕捉方法を使用して核酸をウイルス分離株から抽出した。
【0088】
PCR反応混合物は通常、以下のように組み立てられた。19.05uLのSupermix(Promega GoTaqA(登録商標) Supermix)、0.35uLのMMLV Reverse Transcriptase(35U)、0.6uLのGoTaq MDX Hotstart Taq(3U)、5uLの核酸(適切な希釈液中のプライマー、プローブ、および標的)、=25uLの総反応容量。Promega,Madison,WI、New England Biolabs,Ipswich,MA、Sigma-Aldrich,St. Louis MO、Thermo Fisher,Waltham,MAなど。
【0089】
実施例1
Flu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bを検出するためマルチプレックスRT-PCRアッセイ
この実施例では、生体試料中のインフルエンザA型ウイルス、インフルエンザB型ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスA型およびB型を検出および識別するためのTaqman試薬作用に基づく代表的なRT-PCRアッセイについて説明する。
【0090】
ここでプロセスは、例えば、症候性のヒト患者から鼻咽頭綿棒検体を採取するステップから始まる。試料が直ちに分析されるべきでない限り、試料は、好ましくは、適切な容量のウイルス輸送培地(VTM、例えば、Remel,Inc.,Copan Diagnostics,Inc.、または(Becton,Dickinson and Co.)と共に封止可能な容器(例えば、RNA分解酵素/DNA分解酵素フリーの1.5mLポリプロピレン製微量遠心チューブ)に入れる。次いで、好ましくは、汎用内部標準(Universal Internal Control、UIC)も試料に添加して、試料中に存在する可能性がある阻害因子についてモニタリングする。
【0091】
次に、試料中の核酸を、例えば、MagNA Pure LC System(Roche)およびMagNA Pure Total Nucleic Acid Isolation Kit(Roche、カタログ番号03038505001)またはNucliSENS easyMAG System(bioMerieux)およびAutomated Magnetic Extraction Reagents(bioMerieux)を使用して単離する。次いで、精製した核酸を、耐熱性DNAポリメラーゼおよび逆転写酵素と共に反応混合物に添加する。反応混合物は、Flu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bのそれぞれに対するオリゴヌクレオチドプライマー対および標的に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ、ならびにTaq DNAポリメラーゼ、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP(またはdUTP))、MgCl、および安定剤を含有する緩衝液ならびにウシ血清アルブミンを含有する。ウイルスゲノムの逆転写のためにM-MLV逆転写酵素を使用することができ、RNAを分解から保護するためにRNA分解酵素阻害因子(例えば、RNA分解酵素阻害因子II)を含めることもできる。各種の対照核酸を含めることもできる。そのような対照は、例えば、インビトロで転写された特定のウイルス配列の非感染性RNAおよび/または対照配列を含む非感染性プラスミドDNAであり得る。必要に応じて、特にFlu Aの場合のように系統間の遺伝的な多様性が存在する可能性があり、したがって単一の領域に基づく検出が正確な分析を保証するに不十分である可能性がある場合、検出されるべきウイルスの異なるゲノム領域を標的とする2つの異なる組の増幅プライマーおよびプローブを任意の所与の標的ゲノムに使用することができる。種々のプライマー対の増幅プライマーが、これらの呼吸器合胞体ウイルスの遺伝子配列の高度に保存された領域に相補的である。プローブ種はそれぞれ識別可能なレポーター色素とクエンチャーで二重標識されている。
【0092】
RNAのcDNAへの逆転写およびその後のDNAの増幅は、例えば、Cepheid
SmartCycler II(Cepheid,Sunnyvale,CA)上で実施することができる。このプロセスでは、検出されるべき各々のウイルスゲノムについて、標的ウイルスゲノム(またはその領域)に対するプローブ種が標的核酸分子の標的ヌクレオチド配列(例えば、Flu Aゲノムの特定領域)に特異的にアニールし、続いてプライマー伸長および増幅が起きる。Taqman試薬の作用により、Taqポリメラーゼの5’-3’エキソヌクレアーゼ活性を利用してプローブが切断され、これによりレポーター色素がクエンチャーから分離される。このことが光源からの励起による蛍光シグナルの増加を引き起こす。各サイクルで、更にレポーター色素分子がそれぞれのプローブから切断され、蛍光シグナルが更に増加する。任意のサイクル時における蛍光の量は、その時点で存在する増幅産物(アンプリコン)の数に依存する。蛍光強度は、リアルタイム機器によって各PCRサイクルの間モニタリングされる。
【0093】
実施例2
臨床試料中のFlu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bの増幅および検出
気道感染の兆候および/または症状を示す個体からの鼻咽頭(NP)綿棒検体および下気道(LRT)検体の残りをFlu A、Flu B、RSV AおよびRSV Bの標的核酸の増幅および検出のためのプライマーおよびプローブを使用したマルチプレックスリアルタイムPCRアッセイで分析した。NP綿棒およびLRT試料を、Panther
Fusion Flu A/B/RSVアッセイで試験した。
【0094】
この例に関して、2930個の残余NP綿棒検体が使用された。当該検体を処理して核酸を放出させた。簡潔には、Remel輸送培地(Thermo Fisher,Waltham,MA)中の残余NP綿棒検体を受領した。各々の検体から輸送培地(500ul)のアリコートを、別々にPanther Fusion Lysis Tube(Hologic,Marlborough,MA)中で溶解液(710ul)と混合した。インキュベーション後、360ulの溶解させた検体を、捕捉オリゴヌクレオチドおよび固体支持体を含有する450ulの標的核酸単離試薬と混合した。標的核酸の単離反応を、Panther Fusion装置(Hologic,Marlborough,MA)で一般に米国特許第6,110,678号および同第9,051,601号に記載されるように実施した。次いで、各々の臨床検体から単離された標的核酸を捕捉反応から50ul溶出液に溶出させて、各々が1つのNP綿棒検体に対応する2930個の試料条件を得た。核酸増幅および検出反応を以下の通りに設定した。各々の試料条件から5ulを多重プレートのウェルに添加した。20ulの再水和したリアルタイムPCR反応混合物もウェルに含有させた。乾燥されたPCR反応混合物を、24ulのマグネシウム塩を含有する緩衝液を使用して再水和した。このリアルタイムPCR反応混合物の成分は上記のものであり、配列番号5、7、12、18、23、25~27、64、67、68、75、79、92、101、102および115として示したヌクレオチド配列を有するプライマーおよびプローブを更に含んだ。Flu Aの増幅産物を検出するためのプローブは、FAM/BHQ1により標識され、Flu Bの増幅産物を検出するためのプローブは、CalRed/BHQ2により標識され、RSV AおよびRSV Bの増幅産物を検出するためのプローブは、CalOrange/BHQlにより標識された(標識はLGC
Biosearch Technologies,Petaluma,CAから入手可能である)。各々の試料条件を独立してPCR反応マイクロチューブに添加した。対照のウェルには、内部標準、陽性対照および陰性対照が含まれた。
【0095】
次いで、各々のPCR反応マイクロチューブをPanther Fusion装置(Hologic,Marlborough,MA)に配置し、各ウェル中の標的核酸のうちの1つ以上の有無を分析した。2930個のNP綿棒検体のうち、61個は矛盾した結果をもたらしたため、無効とみなして評価結果から除外した。189/2869(6.6%)は、Flu Aの標的核酸について陽性であった。55/2869(1.9%)は、Flu Bの標的核酸について陽性であった。365/2869(12.7%)は、RSV
Aおよび/またはRSV Bについて陽性であった。
【0096】
250ulの残余下気道(LRT)検体を250ulの溶解液と混合し、次いで、360ulのこの混合した溶液を標的核酸反応に使用したことを除いて同様のアッセイを、LRT検体を使用して実施した。この例に関して、144個の残余LRT検体が使用された。当該検体を、この例では一般に上記のように処理した(検体の溶解、核酸の単離、増幅および検出)。144個のLRT検体のうち、4個は矛盾した結果をもたらしたか、または試験されず、したがって無効であるとみなして評価結果から除外した。3/140(2.1%)は、Flu Aの標的核酸について陽性であった。0/140(0.0%)は、Flu Bの標的核酸について陽性であった。1/140(0.7%)は、RSV Aおよび/またはRSV Bについて陽性であった。
【0097】
これらの結果は、上記アッセイがNP綿棒検体からの標的核酸の検出について感度が高く、かつ特異的なアッセイであることを示す。これらの結果は、上記アッセイがFlu Aの標的核酸の検出について感度が高いことも示すが、LRT検体に関しては、Flu BならびにRSV AおよびB標的核酸に対する感度を決定することができなかった。これらの結果は、上記アッセイがFlu A、Flu B、RSV AおよびRSV B標的核酸について高い特異性を有することを示す。
【0098】
実施例3
例示的なオリゴヌクレオチド配列
表1は、Flu A、Flu B、RSV-AおよびRSV-Bのうちの1つ以上を増幅または検出するための、組成物として、キットにおいて、診断試薬として、および/または方法において有用である多数のプライマーおよびプローブ配列を示す。以下の表1は、ヌクレオチド配列のみを示す。これらの配列は、示される連続した記号の配列内に表現されていない、検出可能な標識、糖修飾(例えば、2’-メトキシ)、塩基修飾(例えば、メチル化塩基)および他の化学成分を更に含んでもよいことが理解されよう。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0099】
本明細書において開示および特許請求される全ての物品、装置、システム、および方法は、本開示に照らして過度の実験なしに作成および実行することができる。本開示の装置、システム、および方法は、好ましい実施形態を基準にして説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、変形形態が物品および方法に適用され得ることは当業者には明らかであろう。そのような当業者にとって明らかな変形形態および等価物は全て、現在存在するか、後に開発されるかにかかわらず、本開示の趣旨および範囲内にあるとみなされる。本開示のコンピュータベースの実施形態は、任意の適切なハードウェアおよびソフトウェアを使用して実装できることも理解されよう。
【0100】
本明細書で言及される全ての特許、特許出願、および刊行物は、本開示が関係する当業者のレベルを示している。全ての特許、特許出願、および出版物は、個々の出版物が全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度まで、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明の実施形態の例として、以下の項目が挙げられる。
(項目1)
生体試料中に存在し得る病原体に関連する複数の標的核酸分子種のうちの1つ以上を分
析するためのキットであって、
(a)Flu Aが前記生体試料中に存在する場合に、第1のFlu Aアンプリコン
を生成するための第1のFlu Aプライマー対であって、第1のFlu Aプライマー
および第2のFlu Aプライマーを含み、
(i)第1のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Aプラ
イマーが、約18~約100個の連続した塩基長であり、配列番号1および配列番号23
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のFlu A標的核酸と実質的に相補的な前記第2のFlu Aプライ
マーが、約18~約100個の連続した塩基長であり、配列番号25および配列番号28
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、第1のFlu Aプライマー
対、および/または
(b)Flu Aが前記生体試料中に存在する場合に、第2のFlu Aアンプリコン
を生成するための第2のFlu Aプライマー対であって、第3のFlu Aプライマー
および第4のFlu Aプライマーを含み、
(i)第3のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第3のFlu Aプラ
イマーが、約19~約100個の連続した塩基長であり、配列番号2~5および24から
なる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第4のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第4のFlu Aプ
ライマーが、約20~約100個の連続した塩基長であり、配列番号26および27から
なる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、第2のFlu Aプライマー対、
および/または
(c)Flu Bが前記生体試料中に存在する場合に、Flu Bアンプリコンを生成
するためのFlu Bプライマー対であって、第1のFlu Bプライマーおよび第2の
Flu Bプライマーを含み、
(i)第1のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Bプラ
イマーが、約22~約100個の連続した塩基長であり、配列番号29および67からな
る群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のFlu Bプ
ライマーが、約21~約100個の連続した塩基長であり、配列番号68~70からなる
群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、Flu Bプライマー対、および/ま
たは
(d)RSV Aが前記生体試料中に存在する場合に、RSV Aアンプリコンを生成
するためのRSV Aプライマー対であって、第1のRSV Aプライマーおよび第2の
RSV Aプライマーを含み、
(i)第1のRSV A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のRSV A(R
SV A)プライマーが、約26~約100個の連続した塩基長であり、配列番号79お
よび88からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のRSV A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のRSV Aプ
ライマーが、約22~約100個の連続した塩基長であり、配列番号72~74および9
2~96からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、RSV Aプライマ
ー対、および/または
(e)RSV Bが前記生体試料中に存在する場合に、RSV Bアンプリコンを生成
するためのRSV Bプライマー対であって、第1のRSV Bプライマーおよび第2の
RSV Bプライマーを含み、
(i)前記第1のRSV B(RSV B)プライマーが、第1のRSV B標的核
酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、配列番号
99~101および106からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)前記第2のRSV Bプライマーが、第2のRSV B標的核酸配列と実質
的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、配列番号104~10
6および115からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、RSV Bプ
ライマー対を含む、キット。
(項目2)
前記キットに含まれる各プライマー対に対するプローブ分子種を更に含み、
(a)前記キットが第1のFlu Aプライマー対を含む場合、前記プローブ分子種が
、第1のFlu Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個
の連続した塩基長であり、配列番号6~17からなる群から選択されるオリゴヌクレオチ
ド配列を含む、および/または
(b)前記キットが第2のFlu Aプライマー対を含む場合、前記プローブ分子種が
、第2のFlu Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個
の連続した塩基長であり、配列番号18~22からなる群から選択されるオリゴヌクレオ
チド配列を含む、および/または
(c)前記キットがFlu Bプライマー対を含む場合、前記プローブ分子種が、Fl
u Bプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩
基長であり、配列番号30~66からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含
む、および/または
(d)前記キットがRSV Aプライマー対を含む場合、前記プローブ分子種が、RS
V Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩
基長であり、配列番号71、75~78、80~87、89~91、97および98から
なる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、および/または
(e)前記キットがRSV Bプライマー対を含む場合、前記プローブ分子種はRSV
プローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長で
あり、配列番号102、103および107~114からなる群から選択されるオリゴヌ
クレオチド配列を含む、項目1に記載のキット。
(項目3)
前記プライマー対のうちの1つ以上における前記プライマーのうちの1つ以上が、前記
プライマーの標的ヌクレオチド配列と相補的でないヌクレオチド配列を有するプライマー
上流領域を更に含む、項目1に記載のキット。
(項目4)
各プローブ分子種が標識されており、任意の1つのプローブ分子種を他のプローブ分子
種と区別できるように、任意選択に識別可能に標識されている、項目2に記載のキット。
(項目5)
各プローブ分子が化学発光部分、フルオロフォア部分、クエンチャー部分、ならびにフ
ルオロフォア部分およびクエンチャー部分の両方からなる群から選択される1つ以上の検
出可能な標識で識別可能に標識されている、項目4に記載のキット。
(項目6)
前記プローブ分子種のうちの1つ以上がドナー/アクセプター標識対で検出可能に標識
されている、項目2に記載のキット。
(項目7)
各プローブ分子種が約60個までのヌクレオチド残基の長さである、項目2に記載のキ
ット。
(項目8)
複数のプライマー対、任意選択で第1のFlu Aプライマー対、第2のFlu Aプ
ライマー対、Flu Bプライマー対、RSV Aプライマー対およびRSV Bプライ
マー対を含む、項目1に記載のキット。
(項目9)
1つのプライマーでおよび/または少なくとも1つのプローブが1個以上のメチル化シ
トシン塩基を含有する、項目2に記載のキット。
(項目10)
核酸増幅反応を実行するための試薬、ならびに任意選択で、核酸増幅を実行するために
前記プライマー対種および前記試薬を使用するための使用説明書を更に含む、項目1に記
載のキット。
(項目11)
少なくとも1つのプライマーが凍結乾燥された試薬として前記キット中に存在する、項
目1~10のいずれか一項に記載のキット。
(項目12)
少なくとも1つのプローブが凍結乾燥された試薬として前記キット中に存在する、項目
1~11のいずれか一項に記載のキット。
(項目13)
前記キットが逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液、およびdNTPのうちの1つ
以上を含む、項目11または項目12に記載のキット。
(項目14)
逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、緩衝液、およびdNTPの各々が凍結乾燥された試
薬として前記キット中に存在する、項目13に記載のキット。
(項目15)
塩、好ましくはマグネシウム塩を含む再水和試薬を更に含む、項目11~14のいずれ
か一項に記載のキット。
(項目16)
項目1に記載の少なくとも1つのプライマーを含み、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ
、緩衝液、およびdNTPのうちの1つ以上を更に含む、反応混合物。
(項目17)
項目2に記載の少なくとも1つのプローブを更に含む、項目16に記載の反応混合物。
(項目18)
前記反応混合物が凍結乾燥された組成物である、項目17に記載の反応混合物。
(項目19)
生体試料がインフルエンザA型(Flu A)、インフルエンザB型(Flu B)、
呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV A)、および/または呼吸器合胞体ウイルスB型(
RSV B)を含有するかどうかを決定する方法であって、
(a)プローブ:標的二重鎖を形成するために、前記生体試料由来の標的核酸分子を1
つ以上の識別可能に標識されたプローブ分子種と、ストリンジェントなハイブリダイゼー
ション条件下で接触させることであって、
(i)前記生体試料がFlu Aを含有するかどうかを決定するために、識別可能に
標識された第1のFlu Aプローブ分子種および/または識別可能に標識された第2の
Flu Aプローブ分子種を使用し、(A)前記識別可能に標識された第1のFlu A
プローブ分子種が、第1のFlu Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約
17~約100個の連続した塩基長であり、配列番号6~17からなる群から選択される
オリゴヌクレオチド配列を含み、(B)前記識別可能に標識された第2のFlu Aプロ
ーブ分子種が、第2のFlu Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17
~約100個の連続した塩基長であり、配列番号18~22からなる群から選択されるオ
リゴヌクレオチド配列を含む、および/または
(ii)前記生体試料がFlu Bを含有するかどうかを決定するために、Flu
Bプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長
であり、配列番号30~66からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、
識別可能に標識されたFlu Bプローブ分子種を使用する、および/または
(iii)前記生体試料がRSV Aを含有するかどうかを決定するために、RSV
Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基
長であり、配列番号71、75~78、80~87、89~91、97および98からな
る群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、識別可能に標識されたRSV Aプ
ローブ分子種を使用する、および/または
(iv)前記生体試料がRSV Bを含有するかどうかを決定するために、RSVプ
ローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であ
り、配列番号102、103および107~114からなる群から選択されるオリゴヌク
レオチド配列を含む、識別可能に標識されたRSV Bプローブ分子種を使用する、接触
させることと、
(b)ステップ(a)で、安定ている場合、識別可能に標識されたプローブ:標的二重
鎖が形成されるかどうかを検出することと、その場合に、
(c)前記第1、第2、第3、第4、および/または第5の識別可能な標識が検出され
るかどうかに基づいて、前記生体試料がFlu A、Flu B、RSV A、および/
またはRSV Bを含有することを決定すること、を含む、方法。
(項目20)
前記生体試料に由来する前記核酸分子が、前記試料中に存在する場合、Flu A、F
lu B、RSV A、および/またはRSV Bに対応する増幅産物、任意選択にアン
プリコンを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記増幅産物が1つ以上のプライマー対を使用して、核酸増幅反応を実行することを含
む核酸増幅プロセスを介して産生され、前記1つ以上のプライマー対が、
(a)Flu Aが前記生体試料中に存在する場合に、第1のFlu Aアンプリコン
を生成するための第1のFlu Aプライマー対であって、第1のFlu Aプライマー
および第2のFlu Aプライマーを含み、
(i)第1のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Aプラ
イマーが、約18~約100個の連続した塩基長であり、配列番号1および配列番号23
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のFlu A標的核酸と実質的に相補的な前記第2のFlu Aプライ
マーが、約18~約100個の連続した塩基長であり、配列番号25および配列番号28
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、第1のFlu Aプライマー
対、および/または
(b)Flu Aが前記生体試料中に存在する場合に、第2のFlu Aアンプリコン
を生成するための第2のFlu Aプライマー対であって、第3のFlu Aプライマー
および第4のFlu Aプライマーを含み、
(i)第3のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第3のFlu Aプラ
イマーが、約19~約100個の連続した塩基長であり、配列番号2~5および24から
なる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第4のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第4のFlu Aプ
ライマーが、約20~約100個の連続した塩基長であり、配列番号26および27から
なる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、第2のFlu Aプライマー対、
および/または
(c)Flu Bが前記生体試料中に存在する場合に、Flu Bアンプリコンを生成
するためのFlu Bプライマー対であって、第1のFlu Bプライマーおよび第2の
Flu Bプライマーを含み、
(i)第1のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Bプラ
イマーが、約22~約100個の連続した塩基長であり、配列番号29および67からな
る群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のFlu Bプ
ライマーが、約21~約100個の連続した塩基長であり、配列番号68~70からなる
群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、Flu Bプライマー対、および/ま
たは
(d)RSV Aが前記生体試料中に存在する場合に、RSV Aアンプリコンを生成
するためのRSV Aプライマー対であって、第1のRSV Aプライマーおよび第2の
RSV Aプライマーを含み、
(i)第1のRSV A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のRSV A(R
SV A)プライマーが、約26~約100個の連続した塩基長であり、配列番号79お
よび88からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のRSV A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のRSV Aプ
ライマーが、約22~約100個の連続した塩基長であり、配列番号72~74および9
2~96からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、RSV Aプライマ
ー対、および/または
(e)RSV Bが前記生体試料中に存在する場合に、RSV Bアンプリコンを生成
するためのRSV Bプライマー対であって、第1のRSV Bプライマーおよび第2の
RSV Bプライマーを含み、
(i)前記第1のRSV B(RSV B)プライマーが、第1のRSV B標的核
酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、配列番号
99~101および106からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)前記第2のRSV Bプライマーが、第2のRSV B標的核酸配列と実質
的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、配列番号104~10
6および115からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、RSV Bプ
ライマー対、である、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記生体試料が臨床検体を含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記臨床検体が鼻咽頭検体である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記臨床検体が気管支肺胞検体である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記検体が下気道検体である、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記プライマー対のうちの1つ以上における前記プライマーのうちの1つ以上が、前記
プライマーの標的ヌクレオチド配列と相補的でないヌクレオチド配列を有するプライマー
上流領域を更に含む、項目21に記載の方法。
(項目27)
識別可能な各標識が、化学発光部分、フルオロフォア部分、クエンチャー部分、ならび
にフルオロフォア部分およびクエンチャー部分の両方からなる群から選択される検出可能
な標識である、項目19に記載の方法。
(項目28)
前記プローブ分子種のうちの1つ以上がドナー/アクセプター標識対で検出可能に標識
されている、項目19に記載の方法。
(項目29)
各プローブ分子種が約60個までのヌクレオチド残基の長さである、項目19に記載の
方法。
(項目30)
複数のプライマー対、任意選択に、第1のFlu Aプライマー対、第2のFlu A
プライマー対、Flu Bプライマー対、RSV Aプライマー対、およびRSV Bプ
ライマー対を含む、項目22に記載の方法。
(項目31)
1つのプライマーでおよび/または少なくとも1つのプローブが1個以上のメチル化シ
トシン塩基を含有する、項目22に記載の方法。
(項目32)
更に1種の核酸分子を含む組成物であって、各々が独立して、
(a)Flu Aが生体試料中に存在する場合に、第1のFlu Aアンプリコンを生
成するための第1のFlu Aプライマー対であって、第1のFlu Aプライマーおよ
び第2のFlu Aプライマーを含み、
(i)第1のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Aプラ
イマーが、約18~約100個の連続した塩基長であり、配列番号1および配列番号23
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のFlu A標的核酸と実質的に相補的な前記第2のFlu Aプライ
マーが、約18~約100個の連続した塩基長であり、配列番号25および配列番号28
からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、第1のFlu Aプライマー
対、および/または
(b)Flu Aが前記生体試料中に存在する場合に、第2のFlu Aアンプリコン
を生成するための第2のFlu Aプライマー対であって、第3のFlu Aプライマー
および第4のFlu Aプライマーを含み、
(i)第3のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第3のFlu Aプラ
イマーが、約19~約100個の連続した塩基長であり、配列番号2~5および24から
なる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第4のFlu A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第4のFlu Aプ
ライマーが、約20~約100個の連続した塩基長であり、配列番号26および27から
なる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、第2のFlu Aプライマー対、
および/または
(c)Flu Bが前記生体試料中に存在する場合に、Flu Bアンプリコンを生成
するためのFlu Bプライマー対であって、第1のFlu Bプライマーおよび第2の
Flu Bプライマーを含み、
(i)第1のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のFlu Bプラ
イマーが、約22~約100個の連続した塩基長であり、配列番号29および67からな
る群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のFlu B標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のFlu Bプ
ライマーが、約21~約100個の連続した塩基長であり、配列番号68~70からなる
群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、Flu Bプライマー対、および/ま
たは
(d)RSV Aが前記生体試料中に存在する場合に、RSV Aアンプリコンを生成
するためのRSV Aプライマー対であって、第1のRSV Aプライマーおよび第2の
RSV Aプライマーを含み、
(i)第1のRSV A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第1のRSV A(R
SV A)プライマーが、約26~約100個の連続した塩基長であり、配列番号79お
よび88からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)第2のRSV A標的核酸配列と実質的に相補的な前記第2のRSV Aプ
ライマーが、約22~約100個の連続した塩基長であり、配列番号72~74および9
2~96からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、RSV Aプライマ
ー対、および/または
(e)RSV Bが前記生体試料中に存在する場合に、RSV Bアンプリコンを生成
するためのRSV Bプライマー対であって、第1のRSV Bプライマーおよび第2の
RSV Bプライマーを含み、
(i)前記第1のRSV B(RSV B)プライマーが、第1のRSV B標的核
酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、配列番号
99~101および106からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含み、
(ii)前記第2のRSV Bプライマーが、第2のRSV B標的核酸配列と実質
的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、配列番号104~10
6および115からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、RSV Bプ
ライマー対、
(f)第1のFlu Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約1
00個の連続した塩基長であり、配列番号6~17からなる群から選択されるオリゴヌク
レオチド配列を含む、プローブ分子種、および/または
(g)第2のFlu Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約1
00個の連続した塩基長であり、配列番号18~22からなる群から選択されるオリゴヌ
クレオチド配列を含む、プローブ分子種、および/または
(h)Flu Bプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個
の連続した塩基長であり、配列番号30~66からなる群から選択されるオリゴヌクレオ
チド配列を含む、プローブ分子種、および/または
(i)RSV Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個
の連続した塩基長であり、配列番号71、75~78、80~87、89~91、97お
よび98からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、プローブ分子種、お
よび/または
(j)RSVプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連
続した塩基長であり、配列番号102、103および107~114からなる群から選択
されるオリゴヌクレオチド配列を含む、プローブ分子種、
(k)パート(a)に記載のFlu Aプライマー対を利用する核酸増幅プロセスによ
って生成されるインフルエンザA型(Flu A)アンプリコン、
(l)パート(b)に記載のFlu Aプライマー対を利用する核酸増幅プロセスによ
って生成されるインフルエンザA型(Flu A)アンプリコン、
(m)パート(c)に記載のFlu Bプライマー対を利用する核酸増幅プロセスによ
って生成されるインフルエンザB型(Flu B)アンプリコン、
(n)パート(d)に記載のRSV Aプライマー対を利用する核酸増幅プロセスによ
って生成される呼吸器合胞体ウイルスA型(RSV A)アンプリコン、および
(o)パート(e)に記載のRSV Bプライマー対を利用する核酸増幅プロセスによ
って生成生される呼吸器合胞体ウイルスB型(RSV B)アンプリコン、からなる群か
ら選択される、組成物。
(項目33)
試料中のFlu A標的核酸、Flu B標的核酸、RSV A標的核酸、およびRS
V B標的核酸、またはこれらの組み合わせの有無を決定する方法であって、
(A)試料を項目1に記載の増幅オリゴマーの組み合わせと接触させるステップと、
(B)インビトロでの核酸増幅反応を実施するステップであって、増幅産物を生成する
ために前記試料中の前記Flu A標的核酸、前記Flu B標的核酸、前記RSV A
標的核酸、および前記RSV B標的核酸のうちのいずれかが、前記標的核酸を増幅する
ように構成された増幅オリゴマーの前記組み合わせによって使用される、ステップと、
(C)前記増幅産物を検出するステップと、を含み、
これにより前記試料中の前記標的核酸の有無を決定する、方法。
(項目34)
前記検出ステップ(C)が、前記増幅産物にハイブリダイズするように構成された、検
出可能に標識されたプローブを使用して実施される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記検出可能に標識されたプローブが、ドナー/アクセプター標識対により検出可能に
標識される、項目34に記載の方法。
(項目36)
前記検出ステップ(C)が、増幅産物を生成するために使用された各プライマー対に対
する検出可能に標識されたプローブ分子種を使用して実施され、
(i)第1のFlu Aプライマー対について、前記プローブ分子種が、第1のFlu
Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基
長であり、配列番号6~17からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、
および/または
(ii)第2のFlu Aプライマー対について、前記プローブ分子種が、第2のFl
u Aプローブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩
基長であり、配列番号18~22からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含
む、および/または
(iii)Flu Bプライマー対について、前記プローブ分子種が、Flu Bプロ
ーブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり
、配列番号30~66からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、および
/または
(iv)RSV Aプライマー対について、前記プローブ分子種が、RSV Aプロー
ブ標的核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、
配列番号71、75~78、80~87、89~91、97および98からなる群から選
択されるオリゴヌクレオチド配列を含む、および/または
(v)RSV Bプライマー対について、前記プローブ分子種が、RSVプローブ標的
核酸配列と実質的に相補的であり、約17~約100個の連続した塩基長であり、配列番
号102、103および107~114からなる群から選択されるオリゴヌクレオチド配
列を含む、項目33に記載の方法。
(項目37)
検出可能に標識された前記プローブ分子種が、ドナー/アクセプター標識対によりそれ
ぞれ検出可能に標識される、項目36に記載の方法。
(項目38)
検出可能に標識された前記プローブ分子種が、識別可能な標識によりそれぞれ検出可能
に標識される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目39)
前記検出可能に標識されたFlu Aプローブ分子種が、FAM/BHQ-1により検
出可能に標識されているか、前記検出可能に標識されたFlu Bプローブ分子種が、C
alRed/BHQ-2により検出可能に標識されているか、前記検出可能に標識された
RSV Aプローブ分子種が、CalOrange/BHQ-1により検出可能に標識さ
れているか、前記検出可能に標識されたRSV Bプローブ分子種が、CalOrang
e/BHQ-1により検出可能に標識されているか、あるいはこれらの組み合わせである
、項目36に記載の方法。
(項目40)
項目19~31または33~39のうちの1項に記載の方法の1つ以上のステップを実
施するためのシステム。
(項目41)
前記システムが自動化システムである、項目40に記載のシステム。
【配列表】
0007531535000001.app