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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】鉄道車両の側壁構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/08 20060101AFI20240802BHJP
   B61D 15/06 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B61D17/08
B61D15/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022030751
(22)【出願日】2022-03-01
(65)【公開番号】P2023127149
(43)【公開日】2023-09-13
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000163372
【氏名又は名称】近畿車輌株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 順平
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/010001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/06
B61D 17/08
B61D 15/06
B61G 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット衝突で隅柱が受けた衝撃を座屈変形によって車内側へ逸らす鉄道車両の側壁構造であって、
吹寄部の高さに相当する領域を含むように高さ方向へ延び、且つ、前記隅柱と側構体との間で前記隅柱側に隙間が形成されるようにして配置されており、車両長手方向に対する圧縮強度が前記側構体よりも低い座屈部と、
前記座屈部のうち車幅方向の外側から延設され、前記隅柱の車幅方向の外側に接合され、車両幅方向の外側において前記座屈部と面を一致させるようにして延設されている隅柱接合片と
を備えたことを特徴とする鉄道車両の側壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向の中心から外れた位置で衝突するオフセット衝突において衝撃を緩和し、側構体の損傷を抑えた擦れ違い通過を可能にする鉄道車両の側壁構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複線の鉄道において車両が脱線すると、隣接の軌道内に車体の一部が侵入する場合がある。このような場合、後続車両や対向車両と接触(オフセット衝突)し、被害が拡大する恐れがある。オフセット衝突を起こす車両同士の車幅方向の重なりが大きいほど、側構体が大きく損傷し、被害が甚大となる。
【0003】
従来から、このようなオフセット衝突による事故の被害を最小限に抑えるための対策が講じられている。
【0004】
図9は、オフセット衝突対策を施した従来の鉄道車両用構体構造を示している。側構体100内に弱化部として溝構造のフォールディングスリット101が形成されており、オフセット衝突時にこのフォールディングスリット101がレール方向に押し潰されることにより衝撃が緩和される。
【0005】
このような技術については、特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-18109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、衝撃緩和のために溝構造を形成するとレール方向の強度が低下するので、広範囲に用いることはできない。このため形成された溝幅により吸収できる衝撃には限界があり、十分に衝撃を吸収しきれない状況も生じ得る。そして、衝撃を十分に吸収しきれず、側構体100に強大な力が加わった場合、側構体100は大きく破壊される。また、このように大きく破壊された損傷部分が客車内に侵入すると、被害が拡大する恐れがある。
【0008】
そこで、本発明は、衝撃の大きさに関わらず、効率的に衝撃を吸収しながら側構体を退避させることが可能な鉄道車両の側壁構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の鉄道車両の側壁構造は、オフセット衝突で隅柱が受けた衝撃を座屈変形によって車内側へ逸らす鉄道車両の側壁構造であって、吹寄部の高さに相当する領域を含むように高さ方向へ延び、且つ、前記隅柱と側構体との間で前記隅柱側に隙間が形成されるようにして配置されており、車両長手方向に対する圧縮強度が前記側構体よりも低い座屈部と、前記座屈部のうち車幅方向の外側から延設され、前記隅柱の車幅方向の外側に接合される隅柱接合片とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の鉄道車両の側壁構造は、上記構成に加えて、前記座屈部は横断面が矩形に形成された中空構造を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の鉄道車両の側壁構造は、上記構成に加えて、前記座屈部の上端が天井から離隔していることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の鉄道車両の側壁構造は、上記構成に加えて、前記座屈部の下端が床から離隔していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の鉄道車両の側壁構造は、上記構成に加えて、前記隅柱接合片が、車両幅方向の外側において前記座屈部と面を一致させるようにして延設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、隅柱と側構体との間に設けられた座屈部の車両長手方向に対する圧縮強度が側構体よりも低いので、隅柱にオフセット衝突の衝撃が加わると、側構体よりも先に座屈部が座屈変形する。また、この座屈部が吹寄部の高さに相当する領域を含むように配置されているので、隅柱の高さ方向の中間域の湾曲変形が可能となる。これにより、隅柱が妻構体側を中心に円弧軌道を描き、座屈部を座屈変形させながら、吹寄部周辺の側構体を車両の幅方向の内側へ引き込むことができる。
【0015】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、座屈部が横断面矩形の中空構造を有しているので、隅柱の円弧軌道を描く変形に対して、外側の壁から先行して座屈する。これにより、オフセット衝突時の衝撃吸収機能を損なうことなく、長手方向に十分な強度を有する構造の設計が可能となる。つまり、長手方向の圧縮強度については十分な強度を維持しながら、オフセット衝突時には、隅柱の円弧軌道を描く作用を利用して外側の壁から順に座屈させることができるので、スムーズな座屈変形が可能になる。
【0016】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、座屈部の上端が天井から離隔しているので、この離隔領域については側構体と隅柱とが直接接続される。これにより、オフセット衝突時には、天井近傍では側構体による大きな抵抗を受けるので、衝撃が吹寄部近傍に集中し、座屈変形が効率的に働く。
【0017】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、座屈部の下端が床から離隔しているので、この離隔領域については側構体と隅柱とが直接接続される。これにより、オフセット衝突時には、床近傍では側構体による大きな抵抗を受けるので、衝撃が吹寄部近傍に集中し、座屈変形が効率的に働く。
【0018】
また、本発明によれば、上記効果に加えて、隅柱接合片が座屈部の外側の面と一致させるようにして延設されるので、隅柱からの衝撃が座屈部の外側に伝達され易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る鉄道車両の車幅方向から見た側壁構造を示す図である。
図2】座屈部を含む隅柱周辺の部分拡大斜視図である。
図3図2の構造の横断面図である。
図4】鉄道車両のオフセット衝突のシミュレーション結果であり、(a)は衝突後0.006秒後の状態、(b)は0.014秒後の状態、(c)は0.018秒後の状態、(d)は0.060秒後の状態を示す平面図である。
図5】隅柱側から衝撃を受けた状態を示す座屈部及び隅柱接合片の部分拡大横断面図である。
図6】隅柱から衝撃を受けた状態を示す座屈部及び側構体の部分拡大横断面図である。
図7】オフセット衝突に伴う座屈部周辺の変形の推移を第1~第3段階に分類し、(a)は衝突後の第1段階、(b)は第2段階、(c)は第3段階を示す図である。
図8】オフセット衝突で変形した隅柱及び座屈部を表した模式図である。
図9】従来のオフセット衝突対策を施した鉄道車両構体構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の側壁構造について図を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る鉄道車両を車幅方向から見た側壁構造を示す図である。
【0022】
本発明の側壁構造1には、オフセット衝突の際に衝撃を吸収し、安全に車両を擦れ違い通過させるための座屈部8が設けられている。この座屈部8は、後述の隅柱接合片10を介して隅柱4と接するように配置されている。
【0023】
また、座屈部8は、側構体2の吹寄部6が形成される高さ領域を含んで高さ方向に延びるように設けられている。本実施の形態に係る構成では、座屈部8の上端側が天井から離隔し、下端側は床から離隔している。
【0024】
そして、座屈部8は、窓16との間に吹寄部6を介在させるようにして配置されている。このように座屈部8は、側構体2と共に側壁構造1の一部を構成している。図示していないが、車両の幅方向の反対側の側壁構造1にも同様に座屈部8が設けられている。
【0025】
図2は、座屈部8を含む隅柱4周辺の部分拡大斜視図である。
【0026】
図1を用いて説明したように、側構体2と隅柱4との間に座屈部8が配置されている。本実施の形態に係る構成の座屈部8は、横断面が略矩形に形成された中空構造を有している。隅柱4も中空構造を有しているが、座屈部8よりも肉厚に形成されている。
【0027】
側構体2は車両の長手方向(以下、レール方向と呼ぶ。)に延びる押出材で構成されている。中空構造で高さ方向に延びる座屈部8は、高さ方向に比べてレール方向の強度が低い。よって、押出材で構成されている側構体2の押出方向と直交する方向へ延びるように配置されている座屈部8は、レール方向の強度が側構体2よりも低い。
【0028】
また、座屈部8よりも肉厚に形成されている隅柱4と比較しても、座屈部8はレール方向の強度が低くなるように設定されている。
【0029】
図3は、図2の構造の横断面図である。
【0030】
座屈部8は、側構体2及び隅柱4に対してそれぞれ接合片を介して接続されている。隅柱4に対しては、座屈部8の車両の幅方向(以下、枕木方向と呼ぶ。)の外側から延設される隅柱接合片10を介して接続されている。枕木方向の内側では、角部8cにおいて、座屈部8が隅柱4と直接接合されている。
【0031】
横断面が略矩形の中空構造を有する座屈部8のうち、枕木方向の外側に形成される外壁8aと内側に形成される内壁8bとが、2枚の接続壁8d、8eによって接続されている。これら2枚の接続壁8d、8eのうち、隅柱4側に形成されている接続壁8dと隅柱4との間には隙間20が形成されている。
【0032】
一方、側構体2側では、座屈部8は枕木方向の外側に形成された外面接合片12及び枕木方向の内側に形成された内面接合片14の2枚の接合片を介して側構体2と接続されている。外面接合片12は、座屈部8の外壁8aよりも枕木方向の内側にオフセットする形で側構体2側へ延設されている。また、内面接合片14は、座屈部8の内壁8bよりも枕
木方向の内側にオフセットする形で側構体2側へ延設されている。
【0033】
図4は、鉄道車両のオフセット衝突のシミュレーション結果であり、(a)は衝突後0.006秒後の状態、(b)は0.014秒後の状態、(c)は0.018秒後の状態、(d)は0.060秒後の状態を示す平面図である。このシミュレーションでは、脱線した車両に対して相対速度60km/hの軌道内走行車両がオフセット衝突する状況をモデルとしている。衝突直前の車両同士の枕木方向の重なり代は89.8mmとして設定されている。図4において左側の車両が軌道内走行車両であり、右側の傾いた車両が脱線車両である。
【0034】
オフセット衝突の場合、隅柱4は妻構体側を中心とした円弧軌道を描くように変形する。衝突の進行に伴って、隅柱4は、枕木方向の内側、且つ、レール方向の内側へ向けて円弧を描くように変形している様子が、図4(a)~(d)に表れている。
【0035】
他の車両から衝撃を受けた隅柱4から力が伝達されると、上述のように、側壁構造1の中で相対強度の低い座屈部8が側構体2よりも先に座屈変形する。そして、座屈した座屈部8に引き寄せられるように側構体2が枕木方向の内側へ傾斜する。衝突する車両同士は何れもこのように変形するので、対向する車両同士は、互いに側構体2を枕木方向の内側へ変形させながらスムーズに擦れ違うことが可能となる。
【0036】
ところで、本実施の形態に係る構成とは異なり、座屈部8が設けられていない場合は、隅柱に受けた衝撃がそのまま側構体へ伝達される。上述のように、側構体はレール方向に延びる押出材で構成されているので、隅柱から受けた衝撃を吸収し難い構造となっている。このため、許容値内の衝撃に対しては突っ張るように抵抗するが、隅柱から伝達される強大な力が許容値を超えると、側構体に破壊が始まる。こうなると、隅柱は側構体を大きく破壊しながらレール方向の内側へ向けて倒れ込む。このとき、側構体がダブルスキン構造であれば、外側の鋼材が剥がれるなどして対向車両の進行方向へ飛び出す恐れもある。そして、側構体が対向車両側へ飛び出すと、互いの車両へ側構体が食い込む可能性が高くなるので、被害が非常に大きくなる恐れがある。これにより、乗客の危険度は増大する。
【0037】
しかし、本発明の実施の形態に係る構成によれば、図4のシミュレーション結果が示すように、車両同士が互いに退くように自身の枕木方向の内側へ向けて側壁構造1の変形が促進される。これにより、乗客の安全性を向上させることが可能となる。
【0038】
図5は、隅柱4側から衝撃を受けた状態を示す座屈部8及び隅柱接合片10の部分拡大横断面図である。
【0039】
隅柱4にオフセット衝突による衝撃が加わると、妻構体の内側を中心にして隅柱4が円弧軌道を描くように変形が進む。図5では、この円弧軌道を一点鎖線による軌道Lで表している。この軌道Lの方向に向けて隅柱4から力が加わると、隅柱4に接合される隅柱接合片10に力F1のような力が生じる。これにより、隅柱接合片10には、レール方向に沿った力の成分による作用に加えて、枕木方向の内側に向かう力の成分による作用が生じる。
【0040】
本実施の形態に係る構成では、座屈部8と隅柱4との間に隙間20が形成されているので、隅柱接合片10は、隅柱4と接合される接合領域10aと、接合されない非接合領域10bとを有している。このような構成により、隅柱接合片10のうち、隅柱4と接合されていない非接合領域10b側に変形が生じやすくなる。
【0041】
すなわち、座屈部8の外壁8aに対して枕木方向の内側寄りの位置からレール方向の内
側へ向けて斜めに突き出すように力が加わる。これにより、外壁8aと接続壁8dとの交差位置辺りを中心にして外壁8aを幅方向の外側へ旋回させるように変形を促す力F2が生じる。オフセット衝突の初期段階では、このような力F1、F2が座屈部8に生じる。
【0042】
図6は、隅柱4から衝撃を受けた状態を示す座屈部8及び側構体2の部分拡大横断面図である。
【0043】
本実施の形態に係る構成では、外面接合片12は、座屈部8の外壁8aに対して枕木方向の内側へオフセットするように延設されている。同様に、内面接合片14は、座屈部8の内壁8bに対して枕木方向の内側へオフセットするように延設されている。
【0044】
このように構成されているので、隅柱4に受けた衝撃が座屈部8の外壁8a及び内壁8bから外面接合片12及び内面接合片14へ伝達されると、図5の場合と同様に、接続壁8eとの交差位置辺りを中心にして外壁8a及び内壁8bが枕木方向の外側へ旋回するような力F3、F4が生じる。これにより、図6中に点線で示したように外壁8a、内壁8bが変形する。座屈部8と側構体2との接続領域では、オフセット衝突の初期段階でこのような力F3、F4が働く。
【0045】
図7は、オフセット衝突に伴う座屈部8周辺の変形の推移を示し、(a)は衝突後の第1段階、(b)は第2段階、(c)は第3段階を示す図である。
【0046】
座屈部8のレール方向の両端には、オフセット衝突直後の初期段階で図5、6に示したような力が働くことを上述した。この初期段階は図7(a)の第1段階に相当する。
【0047】
ここで、外壁8aと内壁8bとを比較すると、隅柱4が円弧軌道を描くことから枕木方向の外側の動きの方が大きく、加えて、外壁8a側には隅柱接合片10が設けられていることから、外壁8aの変形が内壁8bに先行する。図7(a)では、内壁8bに対して外壁8aが大きく湾曲している様子が表されている。
【0048】
図7(b)の第2段階では、外壁8aの変形が進むにつれて、隅柱4の枕木方向の内側への変位も大きくなる。この第2段階では、既に外壁8aが大きく変形することにより強度が低下しているため、内壁8bに力が集中する。したがって、内壁8bの変形も始まり、座屈部8が全体で座屈変形する。
【0049】
図7(c)では、完全に座屈した座屈部8を介する隅柱4の枕木方向の内側への変形に伴って、側構体2も枕木方向の内側へ引き込まれている状態が表されている。本実施の形態に係る構成では、座屈部8の設けられている領域の長さだけ側構体2と隅柱4とが離れて配置されている。これにより、先行して車両の内側へ旋回しながら変形する隅柱4が側構体2と干渉することを防止でき、側構体2はスムーズに内側へ引き寄せられるように傾斜する。
【0050】
このように側構体2がそれぞれの車両において内側へ退避するので、互いの側構体2の外面を擦り合わせるようにして擦れ違うことが可能となる。したがって、図4(d)に示したように、側構体2同士が大きく干渉することなく通過することができる。
【0051】
図8は、オフセット衝突で変形した隅柱4及び座屈部8を表した模式図である。
【0052】
本実施の形態に係る構成では、図1を用いて上述したように、座屈部8は吹寄部6の高さ領域を含む範囲に形成されており、座屈部8の上方側は天井から離隔し、下方側は床から離隔している。
【0053】
このように構成されているので、隅柱4の上端側及び下端側では直接繋がっている側構体2が抵抗することにより、レール方向の強度の低下が抑えられる。また、上述のように、オフセット衝突が生じた場合には、隅柱4は、座屈部8により力の逃げ場が設けられているので、上端及び下端側の側構体2に接する領域に比べて中間領域で湾曲し易くなる。
【0054】
また、吹寄部6の高さ領域では、長手方向の側構体2が窓16によって分断されている。このため、図7(c)のように、隅柱4から座屈部8を介して、側構体2を内側へ引き込む力が作用する際、側構体2は、窓16で区切られた部分的な領域において、水平回転による捻じれを生じ易く、スムーズに内側へ傾斜する。
【0055】
特に、窓16の設けられている高さ領域が外側へ膨らんだ断面形状を有する車両においては、オフセット衝突が吹寄部6の辺りで生じるので、本実施の形態に係る構成が有効である。また、座屈部8は、吹寄部6の近傍の直線状の領域に形成することができるので、天井近傍や床近傍の傾斜した壁面に合わせる必要がなく、加工が容易である。
【0056】
本発明は、以上に述べた構成に限定されることなく、以下のような変形も含まれる。
【0057】
(1)上記の実施の形態では、隅柱接合片10が座屈部8の外壁8aと外面を揃えた位置から延設されている構成を例として示した。しかし、外壁8aが内壁8bに先行して屈曲し、衝突の初期段階で外壁8aの隅柱4側の部分が枕木方向の外側へ膨らむように変形を促す構成であれば、隅柱接合片10と外壁8aの外面とが揃っていなくても構わない。少なくとも座屈部8に対して外壁8a寄りの位置から隅柱接合片10が延設されていれば、隅柱4からの衝撃が内壁8bよりも外壁8aの方に伝達され易くなるので、上記の実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0058】
(2)上記の実施の形態では、座屈部8が断面略矩形の中空構造に形成されている構成を例として示した。しかし、少なくとも側構体2よりもレール方向に対する圧縮強度が低い構造であれば、断面コの字形等の開断面形状でも構わない。また、側構体2に対するレール方向の圧縮強度が低ければ、中実構造であっても構わない。
【0059】
(3)上記の実施の形態では、座屈部8が天井及び床から離隔している構成を例として示した。このように構成されていると、より確実に吹寄部6周辺の座屈変形を先行させることができるが、座屈部8は、天井又は床と接していても構わない。
【0060】
(4)上記の実施の形態では、座屈部8の外壁8aが均一な厚さで形成されている構成を例として示した。しかし、一部で壁を薄く形成した弱化部を有する構成であっても構わない。
【符号の説明】
【0061】
1 側壁構造
2 側構体
4 隅柱
6 吹寄部
8 座屈部
8a 外壁
8b 内壁
8c 角部
8d、8e 接続壁
10 隅柱接合片
10a 接合領域
10b 非接合領域
12 側構体外面接合片
14 側構体内面接合片
16 窓
18 ドア開口
20 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9