(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】べと病耐性ホウレンソウ及びべと病に対する耐性を付与する遺伝子
(51)【国際特許分類】
A01H 6/02 20180101AFI20240802BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20240802BHJP
C12N 15/29 20060101ALI20240802BHJP
A01H 1/06 20060101ALI20240802BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240802BHJP
C12N 5/14 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
A01H6/02 ZNA
A01H5/10
C12N15/29
A01H1/06
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N5/14
(21)【出願番号】P 2022516259
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020064060
(87)【国際公開番号】W WO2020239572
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2019/063449
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】NCIMB NCIMB 43360
(73)【特許権者】
【識別番号】521511818
【氏名又は名称】エンザ・ザデン・ベヘール・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マチュー・アンドレ・ペル
(72)【発明者】
【氏名】ファイラ・スイジェスト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・アネ・デイクストラ
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/059651(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0127753(US,A1)
【文献】国際公開第2018/060445(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/063839(WO,A1)
【文献】SHE H. et al.,Fine mapping and candidate gene screening of the downy mildew resistance gene RPF1 in Spinach,Theoretical and Applied Genetics,2018年,vol. 131,pp. 2529-2541
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペロノスポラ・ファリノーサ(Pfs)によって引き起こされるべと病に耐性のあるホウレンソウ植物であって、ホウレンソウ植物が、1つ又は複数の耐性遺伝子を含み、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4
、配列番号6、及び配列番号16と少なくとも
99%の配列同一性を有するタンパク質をコードし、
前記タンパク質が、保存されたアミノ酸配列KDHKIEKE及び保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、ホウレンソウ植物。
【請求項2】
前記1つ又は複数の耐性遺伝子が
、配列番号3、配列番号5
、及び配列番号1
5からなる群から選択されるコード配列を含む、請求項
1に記載のホウレンソウ植物。
【請求項3】
ペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17に対して少なくとも耐性である、請求項
1又は2に記載のホウレンソウ植物。
【請求項4】
前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、寄託番号NCIMB43360に由来する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のホウレンソウ植物。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載のホウレンソウ植物から得られる種子であって、種子が、1つ又は複数の耐性遺伝子を含み、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4
、配列番号6、及び配列番号16と少なくとも
99%の配列同一性を有するタンパク質をコードし、
前記タンパク質が、保存されたアミノ酸配列KDHKIEKE及び保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、種子。
【請求項6】
ホウレンソウ植物においてべと病に対する耐性を付与する耐性遺伝子であって、配列番号4
、配列番号6、及び配列番号16と少なくとも
99%の配列同一性を有するタンパク質をコー
ドし、前記タンパク質が、保存されたアミノ酸配列KDHKIEKE及び保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、耐性遺伝子。
【請求項7】
配列番号3、配列番号5
、及び配列番号1
5からなる群から選択されるコード配列を含む、請求項
6に記載の耐性遺伝子。
【請求項8】
ペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17に対する耐性をホウレンソウにおいて提供する、請求項
6又は7に記載の耐性遺伝子。
【請求項9】
べと病に耐性のあるホウレンソウ植物を提供する方法であって、方法が、ホウレンソウ植物のゲノムに1つ又は複数の耐性遺伝子を導入する工程を含み、1つ又は複数の耐性遺伝子が
、配列番号3、配列番号5
、及び配列番号1
5からなる群から選択さ
れ、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4、配列番号6、及び配列番号16と少なくとも99%の配列同一性を有するタンパク質をコードし、前記タンパク質が、保存されたアミノ酸配列KDHKIEKE及び保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、方法。
【請求項10】
1つ又は複数の耐性遺伝子の導入が、ゲノム編集技術、CRISPR Cas、又は変異誘発技術によって達成される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
べと病に耐性のあるホウレンソウ植物を提供するための方法であって、
a)1つ又は複数の耐性遺伝子を含むホウレンソウ植物を提供する工程であって、前記耐性遺伝子が、請求項
6から
8のいずれか一項に記載され
るものである、工程、
b)工程a)のホウレンソウ植物を感受性のあるホウレンソウ植物と交配する工程、
c)場合により、工程b)で得られた植物を少なくとも1回自家受粉させる工程、
d)べと病に耐性のある植物を選択する工程
を含む、方法。
【請求項12】
前記1つ又は複数の耐性遺伝子のコード配列が、配列番号3、配列番号5
、及び配列番号15からなる群から選択される、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
ホウレンソウ植物が、ペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17によって引き起こされるべと病に耐性である、請求項
9から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
1つ又は複数の耐性遺伝子が、寄託番号NCIMB43360から得られる、請求項
9から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
ペロノスポラ・ファリノーサ(Pfs)によって引き起こされるべと病に耐性のあるホウレンソウ植物の植物細胞であって、植物細胞が、1つ又は複数の耐性遺伝子を含み、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4、配列番号6、及び配列番号16と99%超の配列同一性を有するタンパク質をコードし、前記タンパク質が、保存されたアミノ酸配列KDHKIEKE及び保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、植物細胞。
【請求項16】
前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号3、配列番号5、及び配列番号15からなる群から選択されるコード配列を含む、請求項15に記載の植物細胞。
【請求項17】
植物細胞が、配列番号3、配列番号5、及び配列番号15からなる群から選択されるコード配列を含む1つ又は複数の耐性遺伝子を含み、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4、配列番号6、及び配列番号16と99%超の配列同一性を有するタンパク質をコードする、請求項15又は16に記載の植物細胞。
【請求項18】
前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4、配列番号6、及び配列番号16からなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項15から17のいずれか一項に記載の植物細胞。
【請求項19】
ペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17に対して少なくとも耐性である、請求項15から18のいずれか一項に記載の植物細胞。
【請求項20】
前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、寄託番号NCIMB43360に由来する、請求項15から19のいずれか一項に記載の植物細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペロノスポラ・ファリノーサ(Peronospora farinosa)(Pfs)によって引き起こされるべと病に耐性のあるホウレンソウ植物に関する。本開示は更に、ホウレンソウ植物におけるPfsの複数の種属に対する耐性を付与する耐性遺伝子に関する。更に、本開示は、べと病に耐性のあるホウレンソウ植物を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホウレンソウ(Spinacia oleracea)は、様々な環境で栽培されている露地作物である。ホウレンソウは二倍体作物であり、春は涼しくて雨が多く、夏は涼しく、秋は乾燥している地域において良好に育つ。ホウレンソウを育てるのに最適な土壌条件は、水はけの良い土壌及び6を超えるpHを含む。今日、ホウレンソウの育種は、主に耐病性(例えば、べと病への耐性)、収穫量、及び栄養価の向上に重点を置いている。
【0003】
育種とスクリーニング活動は、主要な生産地域においてホウレンソウの品種を選択するのを助けるが、ここでは、地元の市場への適応と動的な耐性が成功の重要な要素となる。ホウレンソウの育種プログラムは、生鮮(ベビーリーフ)市場、バンチング市場、並びに冷凍及び缶詰製品市場等、あらゆる市場セグメントに品種を提供することを目的としている。ホウレンソウのいくつかの特定の品種が、スムーズ(smooth)、サボイ(savoy)、及びオリエンタル(oriental)タイプといった主要なタイプ内で利用可能である。ホウレンソウの市場は世界中で急速に成長しており、ホウレンソウの遺伝学を改善するために多くの研究が行われている。ホウレンソウの遺伝的改善の具体的な目標は、耐病性を向上させ、生化学物質や農薬の必要性を減らし、作物の収量と品質の両方を向上させることである。育種プログラムの更なる目標は、ペロノスポラ・ファリノーサによって引き起こされるべと病に対し、理想的には未来の菌株もすでに考慮に入れて、幅広い耐性を持つホウレンソウの品種である。
【0004】
べと病とは、植物の寄生生物である数種の卵菌を指す。べと病は様々な種に由来し得るが、主なべと病属はペロノスポラ(Peronospora)、プラスモパラ(Plasmopara)、ブレミア(Bremia)である。べと病は多くの食用作物で問題となっており、ホウレンソウでは最も問題のある病気の1つである。ホウレンソウでは、べと病はペロノスポラ・ファリノーサsp.(Pfs)によって引き起こされ、この病原体は世界中でこの作物の生産に影響を与えている。病気は、空中の胞子によって植物から植物へと伝染する。べと病に感染したホウレンソウは、葉の下部表面にある白色、灰色、又は紫色のカビとの組み合わせで、葉の上部表面に変色した領域と不規則な黄色の斑点の症状を示す。病変は最終的に乾燥して褐色になり得る。
【0005】
ペロノスポラ・ファリノーサを制御するために殺菌剤が使用され得るが、時間の経過とともに病原体も殺菌剤に対する耐性を獲得するため、最終的にペロノスポラ・ファリノーサはこれらの化学物質に対する免疫を獲得する。更に市場は、食用作物の生産におけるそのような化学物質の使用を減らすことを望んでいる。したがって、ペロノスポラ・ファリノーサ感染を制御する他の方法を見つけることが最も重要である。制御の最も好ましい形態は、ペロノスポラ・ファリノーサに対して幅広い耐性を提供する耐性遺伝子であろう。また、1つ又は複数の耐性遺伝子(例えば、より狭い耐性を有する)を組み合わせて、ペロノスポラ・ファリノーサに対する広範で耐久性のある耐性を達成することもできる。したがって、新たな耐性遺伝子の同定は、化学的制御の有望な代替手段である。
【0006】
これまでに、ペロノスポラ・ファリノーサの17種の公式な種属(race)が同定されている(Pfs1からPfs17)。これらの種属の特徴付けは、特定の異なる宿主(ディファレンシャルズ)のセットにおける定性的な疾患反応に基づいており、これが、多くの植物病原体の種属を同定するために広く使用されるアプローチとなっている。ホウレンソウの場合、現在のディファレンシャルズのセットは、新旧の商用交配種、並びに放任受粉品種及び育種系統(NIL系統)を含んでいる。ホウレンソウのべと病は特に複雑で、耐病性を回避するために急速に進化するため、この範囲のディファレンシャルズが必要とされる。耐病性遺伝子の圧力下で、病原体は耐病性を破壊するために変異し、これは、感染を制御するために作物の新たな耐病性が必要となることを意味する。べと病には様々な種属があり、新たな耐性べと病種属、つまり現在のホウレンソウの耐性を打ち破る種属が常に出現している。ブレークスルーは、新たなホウレンソウ耐性が開発されてから4~6か月以内という早さで発生し得る。主な問題は、ペロノスポラ・ファリノーサが新たな毒性のある種属を急速に進化させるにつれて、異なる耐性を組み合わせた現在の市場に出回っているホウレンソウの品種が、非常に急速に時代遅れとなることである。過去数年間にホウレンソウにおいて出現したペロノスポラ・ファリノーサの新たな種属により、壊滅的な病気の一歩先を行くことはますます困難となった。
【0007】
現在、ペロノスポラ・ファリノーサの全ての種属に対してフルスペクトルの耐性を提供する利用可能な単一の耐性遺伝子は無い。したがって、複数の耐性遺伝子を含み、あらゆるペロノスポラ・ファリノーサ種属に耐性であるか、又は少なくとも可能な限り多くのペロノスポラ・ファリノーサ種属に耐性である植物が得られるように、ホウレンソウ植物中において複数の耐性遺伝子を組み合わせる又は積み重ねることは有利である。
【0008】
上記を考慮すると、ホウレンソウにおいてより多様で耐久性のある耐性を開発し、ペロノスポラ・ファリノーサによって引き起こされるべと病に耐性のあるホウレンソウ植物を提供することが、当技術分野で必要とされている。特に、ペロノスポラ・ファリノーサに対して広域スペクトルの耐性を有するホウレンソウ植物を提供することにはニーズがある。更に、そのようなべと病耐性植物を得るための方法を提供することが、本開示の目的である。より多くの遺伝的バリエーションを市販の交配種で達成して、ペロノスポラ・ファリノーサ等の病原体が適応しにくくできるように、より多様な遺伝子に対するニーズがある。これらの遺伝子の耐性が広ければ広いほど、より効果的にそれらを耐性植物の開発に使用できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick及びThompson編, CRC Press, Inc., Boca Raton, 67~88頁(1993年)中のMikiら, "Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants"
【文献】Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick及びThompson編, CRC Press, Inc., Boca Raton, 89~119頁(1993年)中のGruberら, "Vectors for Plant Transformation"
【文献】Huang C, Qian Y, Li Z, Zhou X.: Virus-induced gene silencing and its application in plant functional genomics. Sci China Life Sci. 2012;55 (2):99~108頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
当技術分野における上記のニーズに対処することが、他の目的の中でもとりわけ、本開示の目的である。本開示の目的は、他の目的の中でもとりわけ、添付の特許請求の範囲に概要が示される本開示によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
具体的には、他の目的の中でもとりわけ、上記の目的は、第1の態様によれば、ペロノスポラ・ファリノーサ(Pfs)によって引き起こされるべと病に耐性のあるホウレンソウ植物であって、ホウレンソウ植物が、1つ又は複数の耐性遺伝子を含み、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するタンパク質をコードし、タンパク質が、保存されたアミノ酸配列KDHKIEKE及び保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、ホウレンソウ植物による本開示によって満たされる。本開示の新規候補優性Pfs耐性遺伝子の正体は、CC-NBS-LLR遺伝子としても知られている。新規耐性遺伝子が見出され、より具体的には、T10、T70、T71、T72、T75、T76、T83、T89、T96、T253、T18、T133、T139、T170及びT175が、ホウレンソウにおける遺伝子座1の配列決定及びペロノスポラ・ファリノーサ耐性遺伝子の遺伝子マッピングによって得られた。好ましくは、本開示のホウレンソウ植物は、T10、T70、T71、T72、T75、T76、T83、T89、T96、T253、T18、T133、T139、T170、T175の群から選択される新規耐性遺伝子のうちの少なくとも2つを含む。
【0012】
ホウレンソウにおいて、これらの新規耐性遺伝子は、ホウレンソウゲノムの2番染色体上の遺伝子座1にマッピングした。新規Pfs耐性遺伝子の類似性は、マルチプルアラインメントソフトウェアを使用して決定され、高度に保存されていることが示された。Table 1(表1)を参照。新規Pfs耐性遺伝子のコード配列は、少なくとも約94%の配列類似性を示した。T10のコード配列は配列番号1で表され、T70は配列番号3で表され、T71は配列番号5で表され、T72は配列番号7で表され、T75は配列番号9で表され、T76は配列番号11で表され、T83は配列番号13で表され、T89は配列番号15で表され、T96は配列番号23で表され、そしてT253は配列番号25で表され、T18は配列番号27で表され、T133は配列番号29で表され、T139は配列番号31で表され、T170は配列番号33で表され、そしてT175は配列番号35で表される。
【0013】
好ましい実施形態によれば、本開示は、ホウレンソウ植物であって、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、タンパク質をコードし、前記タンパク質が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34及び配列番号36からなる群から選択される、ホウレンソウ植物に関する。T10のアミノ酸配列は配列番号2で表され、T70は配列番号4で表され、T71は配列番号6で表され、T72は配列番号8で表され、T75は配列番号10で表され、T76は配列番号12で表され、T83は配列番号14で表され、T89は配列番号16で表され、T96は配列番号24で表され、T253は配列番号26で表され、T18は配列番号28で表され、T133は配列番号30で表され、T139は配列番号32で表され、T170は配列番号34で表され、そしてT175は配列番号36で表される。
【0014】
別の好ましい実施形態によれば、本開示は、ホウレンソウ植物であって、1つ又は複数の遺伝子が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35からなる群から選択されるコード配列を含む、ホウレンソウ植物に関する。
【0015】
好ましい実施形態によれば、本開示は、ホウレンソウ植物であって、1つ又は複数の耐性遺伝子が、タンパク質をコードし、タンパク質が、アミノ酸配列KDHxIzKEを含み、xがアミノ酸K又はE、好ましくはKであり、そしてzがアミノ酸K又はE、好ましくはEである、ホウレンソウ植物に関する。アミノ酸配列KDHxIzKEは、好ましくは、前記タンパク質中の429から449の間のアミノ酸位置に対応する。
【0016】
別の好ましい実施形態によれば、本開示は、ホウレンソウ植物であって、1つ又は複数の耐性遺伝子が、タンパク質をコードし、タンパク質が、アミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、ホウレンソウ植物に関する。アミノ酸配列LSNNRNLKILは、好ましくは、前記タンパク質中の592から612の間のアミノ酸位置に対応する。
【0017】
更に別の好ましい実施形態によれば、本開示は、ホウレンソウ植物であって、前記耐性遺伝子が、タンパク質をコードし、前記タンパク質が、アミノ酸配列KDHKIEKE及び/又はアミノ酸配列LSNNRNLKILから構成される、ホウレンソウ植物に関する。本開示の新規Pfs耐性遺伝子のタンパク質は、タンパク質内の特定の位置で少なくとも1つの保存されたアミノ酸配列、KDHKIEKE及び/又はLSNNRNLKILを共有する。
【0018】
本開示は、概して、1つ又は複数の耐性遺伝子を有する植物、例えば、アミノ末端ドメインにCCモチーフを有するNBS-LRRタンパク質(NLRとしても知られる)をコードするR遺伝子を有する植物に関する。NLRは、ヌクレオチド結合(NB-ARC)ドメイン及び一連のC末端ロイシンリッチリピート(LRR)からなる明確なドメイン構造を持ち、ほとんどの場合、Toll/インターロイキン-1受容体(TIR)ドメイン、コイルドコイルドメイン(CC)、又は多岐にわたるコイルドコイルドメイン(CCR)からなるN末端延長を有している。NLRは、エフェクターに結合して認識すること、又はそのエフェクター機能を介して別の植物成分の修飾を認識することができる。本発明の耐性植物のタンパク質におけるKDHKIEKEモチーフは、これらのタンパク質のNB-ARCドメイン、他のRタンパク質によって共有されるヌクレオチド結合アダプター、並びにAPAF-1及びCED-4等のタンパク質、すなわちアポトーシス調節ネットワークに関与する細胞質タンパク質中に位置する。NB-ARCドメインは、ATPに結合して加水分解できると仮定されている。ADP結合は、実験的に検証されている。このドメインによるATPの結合と加水分解は、タンパク質全体のコンフォメーション変化を誘導し、アポトソームの形成を導くと提案されている。共有されたドメイン及びNLR間の共通の進化的起源(高い配列相同性)は、ADPをATPに交換した後のNB-ARCドメインを介した多量体化が、NLRの活性化における重要な工程であり、植物の免疫シグナル伝達における分子スイッチ等として機能することを示唆している。ADPに結合した状態は、LRRがNB-ARCドメインと一体化し、それによってNLRを非活性化状態で安定化する「オフ状態」と考えられる。NLRの活性化は、一般にATP結合状態に関連付けられ、「オン状態」と呼ばれる。好ましくは、KDHKIEKEモチーフは、本発明に含まれる耐性遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸433から442の間に見出される。
【0019】
LSNNRNLKILモチーフは、タンパク質のLRR(ロイシンリッチリピート)ドメインの1つの中に位置する。これらのモチーフの主な機能は、タンパク質-タンパク質相互作用の形成のための多様な構造的フレームワークを提供することであるように思われる。組換え及び遺伝子変換によるNLRの多様化は、非常に多様なエフェクターを認識でき、病原体に対する耐性を提供できる様々なLRR領域を生成する。これらのドメインは、エフェクターの認識を決定し、したがって、直接的なエフェクターの相互作用及び疾患の感受性/耐性に関与すると考えられている。好ましくは、LSNNRNLKILモチーフは、本発明に含まれる耐性遺伝子によってコードされるタンパク質のアミノ酸596から607の間に見出される。
【0020】
好ましい実施形態によれば、本開示はホウレンソウ植物であって、前記ホウレンソウ植物が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号15からなる群から選択される1つ又は複数の耐性遺伝子を含む、ホウレンソウ植物に関する。T70は配列番号3で表され、T71は配列番号5で表され、T72は配列番号7で表され、そしてT89は配列番号15で表される。
【0021】
更に別の好ましい実施形態によれば、本発明は、ペロノスポラ・ファリノーサ(Pfs)によって引き起こされるべと病に耐性のあるホウレンソウ植物であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、及び配列番号15、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35からなる群から選択されるコード配列を含む1つ又は複数の耐性遺伝子を含む、ホウレンソウ植物に関する。これらの1つ又は複数の耐性遺伝子は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、及び配列番号16、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34及び配列番号36からなる群から選択されるタンパク質をコードする。
【0022】
別の好ましい実施形態によれば、本開示は、ホウレンソウ植物であって、前記植物が、少なくともペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17に対して耐性である、ホウレンソウ植物に関する。ホウレンソウは、Pfs6にも耐性があると予想される。
【0023】
別の好ましい実施形態によれば、本開示は、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、寄託番号NCIMB43360に由来するホウレンソウ植物に関する。本発明によるホウレンソウ(Spinacia oleracea)植物の種子は、2019年2月21日にファーガソンビル、クレイブストーンエステートバックスバーン、AB21 9YAアバディーン、英国のNCIMB社に寄託された。
【0024】
第2の態様によれば、本開示は、本開示によるホウレンソウ植物によって生産された、又はホウレンソウ植物から得られる種子であって、種子が、1つ又は複数の耐性遺伝子を含み、前記1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号4と少なくとも85%の配列同一性を有するタンパク質をコードし、タンパク質が、保存されたアミノ酸配列KDHKIEKE及び保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、種子に関する。
【0025】
本開示は、第3の態様によれば、ホウレンソウ植物においてべと病に対する耐性を付与する耐性遺伝子であって、配列番号4と少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、更により好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは100%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、耐性遺伝子に関する。新規の耐性遺伝子は、ホウレンソウに幅広いPfs耐性を与えるタンパク質をコードしている。耐性遺伝子のコード配列は、配列番号3と少なくとも90%、好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも98%、更により好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは100%の配列同一性を有する。
【0026】
好ましい実施形態によれば、本開示は、耐性遺伝子であって、遺伝子が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35からなる群から選択されるコード配列を含む、耐性遺伝子に関する。
【0027】
更に別の好ましい実施形態によれば、本開示は、耐性遺伝子であって、耐性遺伝子が、タンパク質をコードし、タンパク質が、アミノ酸配列KDHxIzKEを含み、xがアミノ酸K又はE、好ましくはKであり、そしてzがアミノ酸K又はE、好ましくはEである、耐性遺伝子に関する。
【0028】
好ましい実施形態によれば、本開示は、耐性遺伝子であって、耐性遺伝子が、タンパク質をコードし、タンパク質が、保存されたアミノ酸配列LSNNRNLKILを含む、耐性遺伝子に関する。
【0029】
更に別の好ましい実施形態によれば、本開示は、耐性遺伝子であって、耐性遺伝子が、タンパク質をコードし、前記タンパク質が、アミノ酸配列KDHKIEKE及び/又はアミノ酸配列LSNNRNLKILから構成される、耐性遺伝子に関する。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、本開示は、耐性遺伝子であって、前記耐性遺伝子のコード配列が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号15からなる群から選択され、ホウレンソウにおいて少なくともペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17に対する耐性を提供する、耐性遺伝子に関する。好ましくは、耐性遺伝子は、配列番号7、より好ましくは配列番号5、更により好ましくは配列番号3、そして最も好ましくは配列番号15である。
【0031】
更なる態様によれば、本開示は、べと病に耐性のあるホウレンソウ植物を提供する方法であって、方法が、ホウレンソウ植物のゲノムに1つ又は複数の耐性遺伝子を導入する工程又は改変する工程を含み、1つ又は複数の耐性遺伝子が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35からなる群から選択される、方法に関する。
【0032】
別の好ましい実施形態によれば、本開示は、1つ又は複数のPfs耐性遺伝子の導入又は改変が、ゲノム編集技術、CRISPR Cas、又は変異誘発技術によって達成される、方法に関する。
【0033】
本開示は、更なる態様によれば、べと病に耐性のあるホウレンソウ植物を提供する方法であって、方法が、
a)本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子を含むホウレンソウ植物を提供する工程、
b)工程a)のホウレンソウ植物を感受性のあるホウレンソウ植物と交配する工程、
c)場合により、工程b)で得られた植物を少なくとも1回自家受粉させる工程、
d)べと病に耐性のある植物を選択する工程
を含む、方法に関する。
【0034】
好ましい実施形態によれば、本開示は、前記1つ又は複数の耐性遺伝子のコード配列が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、及び配列番号15からなる群から選択される、方法に関する。
【0035】
別の好ましい実施形態によれば、本開示は、ホウレンソウ植物が、ペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17によって引き起こされるべと病に対して耐性である、方法に関する。
【0036】
好ましい実施形態によれば、本開示は、1つ又は複数の耐性遺伝子が、寄託番号NCIMB43360から得られる方法に関する。
【0037】
本発明は、以下の実施例及び図において更に詳細に説明される:
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、qPCR定量化が、VIGS遺伝子のサイレンシング後にPfs種属14(Pfs 14)に感染したホウレンソウ植物におけるPfsアクチンの定量化を示すことを示している。定量化に使用されたホウレンソウ植物は、VIGSコンストラクトで形質転換されなかったホウレンソウ植物(「非処置」)、RFP VIGSサイレンシングコンストラクトで一過的に形質転換されたT70遺伝子を含む耐性ホウレンソウ植物(「VIGSRFP」;ネガティブコントロール)、及びT70 VIGSサイレンシングコンストラクトで一過的に形質転換されたT70遺伝子を含む耐性ホウレンソウ植物(「VIGST70」)であった。反復実験を3回行った。Pfs14に感染したホウレンソウにおいてT70遺伝子発現レベルをVIGSでサイレンシングした場合、Pfsアクチンの発現レベルが劇的に増加した。Pfsに感受性の植物の葉は、Pfsアクチンハウスキーピング遺伝子の高い転写レベルを示し、これは、感受性がVIGSサイレンシングによるT70遺伝子発現の低下に対応することを指し示している。
【
図2】
図2は、耐性遺伝子T10、T70、T71、T72、T75、T76、T83、及びT89によってコードされるタンパク質における2つの保存されたアミノ酸配列モチーフのアラインメントを示している。これらのタンパク質は全て、429から449の間の位置に所在する第1の保存されたアミノ酸配列モチーフKDHxIzKE(
図2の上部に表示)を含んでいる(x=アミノ酸K又はE、好ましくはK;z=K又はE、好ましくはE)。また、これらのタンパク質のほとんどは、およそ592から612の位置に、第2の保存されたアミノ酸配列モチーフLSNNRNLKILを含んでいる(
図2の下部に表示)。
【
図3】
図3は、耐性遺伝子T10、T70、T71、T72、T83、T89、T96、T253、T18、T133、T139、T170及びT175によってコードされるタンパク質における2つの保存されたアミノ酸配列モチーフのアラインメントを示している。これらのタンパク質は全て、第1の保存されたアミノ酸配列モチーフKDHKIEKE及び第2の保存されたアミノ酸配列モチーフLSNNRNLKILを含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
耐病性遺伝子及びタンパク質
NBS-LRRタンパク質としても知られるヌクレオチド結合部位ロイシンリッチリピートタンパク質は、R遺伝子として知られる植物の耐病性遺伝子によってコードされている。NBS-LRRタンパク質は、ヌクレオチド結合部位(NBS)及びロイシンリッチリピート(LRR)ドメイン、並びに可変アミノ及びカルボキシ末端ドメインによって特徴付けられる。これらのタンパク質は、細菌、ウイルス、真菌、線虫、昆虫、卵菌を含む多様な病原体の検出に関与している。植物NBS-LRRタンパク質には、アミノ末端ドメインのToll/インターロイキン-1受容体(TIR)又はコイルドコイル(CC)モチーフによって定義される2つの主要なサブファミリーがあり、両方のサブファミリーのタンパク質が病原体の認識に関与している。
【0040】
ホウレンソウの最も知られている耐性は、遺伝子座1と呼ばれ、2番染色体(LG2)上に位置し、可変性の高い遺伝子座から同定された。多くの遺伝子が多くの異なる野生ホウレンソウ系統において同定されているが、ほとんどの遺伝子では、それらが機能的であるかどうか(例えば、べと病耐性を提供するかどうか)はまだ不明である。
【0041】
本開示は、概して、1つ又は複数の耐性遺伝子を有する植物、例えば、アミノ末端ドメインにTIRモチーフを有するNBS-LRRタンパク質をコードするR遺伝子を有する植物に関する。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の耐性遺伝子を有することは、べと病(例えば、ペロノスポラ・ファリノーサ)に対して広域スペクトルの耐性を提供する。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の耐性遺伝子を有することは、ペロノスポラ・ファリノーサの少なくとも15の種属に対する耐性を提供する。
【0042】
いくつかの態様において、本開示の植物は、ホウレンソウとしても知られるスピナキア・オレラセア(Spinacia oleracea)である。ホウレンソウは、R遺伝子として知られる多くの耐性遺伝子を含んでいる。特に、ホウレンソウは、遺伝子座1に由来するR遺伝子を含んでいる。いくつかの態様において、本開示の植物は、アクセッション番号NCIMB43360の下で寄託された種子中に存在する耐性遺伝子を有する。
【0043】
本開示の特定の態様は、配列番号1のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号1の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号1の相同体又はオルソログは、配列番号1と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0044】
本開示の特定の態様は、配列番号3のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号3の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号3の相同体又はオルソログは、配列番号3と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0045】
本開示の特定の態様は、配列番号5のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号5の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号5の相同体又はオルソログは、配列番号5と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0046】
本開示の特定の態様は、配列番号7のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号7の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号7の相同体又はオルソログは、配列番号7と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0047】
本開示の特定の態様は、配列番号9のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号9の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号9の相同体又はオルソログは、配列番号9と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0048】
本開示の特定の態様は、配列番号11のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号11の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号11の相同体又はオルソログは、配列番号11と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0049】
本開示の特定の態様は、配列番号13のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号13の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号13の相同体又はオルソログは、配列番号13と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0050】
本開示の特定の態様は、配列番号15のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子に関する。本明細書には、配列番号15の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号15の相同体又はオルソログは、配列番号15と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0051】
いくつかの態様において、本開示の植物は、配列番号1のヌクレオチドコード配列を有する耐性遺伝子を有する。いくつかの実施形態において、これらの植物はまた、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、又は配列番号15の群から選択されるヌクレオチドコード配列を有する1つ又は複数の耐性遺伝子も有し得る。
【0052】
本開示の特定の態様は、配列番号2のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号2の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号2の相同体又はオルソログは、配列番号2と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0053】
本開示の特定の態様は、配列番号4のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号4の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号4の相同体又はオルソログは、配列番号4と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0054】
本開示の特定の態様は、配列番号6のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号6の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号6の相同体又はオルソログは、配列番号6と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0055】
本開示の特定の態様は、配列番号8のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号8の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号8の相同体又はオルソログは、配列番号8と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0056】
本開示の特定の態様は、配列番号10のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号10の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号10の相同体又はオルソログは、配列番号10と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0057】
本開示の特定の態様は、配列番号12のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号12の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号12の相同体又はオルソログは、配列番号12と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0058】
本開示の特定の態様は、配列番号14のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号14の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号14の相同体又はオルソログは、配列番号14と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0059】
本開示の特定の態様は、配列番号16のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質に関する。本明細書には、配列番号16の相同体及びオルソログも提供される。いくつかの実施形態において、配列番号16の相同体又はオルソログは、配列番号16と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%同一であるコード配列を有する。
【0060】
いくつかの態様において、本開示の植物は、配列番号2のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質を有する。いくつかの実施形態において、これらの植物はまた、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34及び配列番号36の群から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又は複数の耐性タンパク質も有し得る。
【0061】
いくつかの態様において、本開示の植物は、1つ又は複数若しくは2つのアミノ酸コンセンサスモチーフを含む耐性タンパク質を有する。いくつかの実施形態では、耐性タンパク質は、KDHxIzKEの第1のアミノ酸コンセンサスモチーフを有し、xはアミノ酸K又はE、好ましくはKであり、zはアミノ酸K又はE、好ましくはEである。いくつかの実施形態において、第1のアミノ酸コンセンサスモチーフは、KDHKIEKEである。いくつかの実施形態において、耐性タンパク質は、LSNNRNLKILの第2のアミノ酸コンセンサスモチーフを有する。いくつかの実施形態において、耐性タンパク質は、第1のアミノ酸コンセンサスモチーフ及び第2のアミノ酸コンセンサスモチーフの両方を有する。
【0062】
第1のアミノ酸コンセンサスモチーフKDHxIzKE(例えば、KDHKIEKE)は、他のRタンパク質によって共有されるヌクレオチド結合アダプターであるタンパク質のNB-ARCドメイン、並びにAPAF-1及びCED-4等のタンパク質(すなわち、アポトーシス調節ネットワークに関与する細胞質タンパク質) に位置する。NB-ARCドメインは、ATPに結合して加水分解できると仮定されている。ADP結合は、実験的に検証されている。NB-ARCドメインによるATPの結合と加水分解は、タンパク質全体のコンフォメーション変化を誘導し、アポトソームの形成を導くと提案されている。
【0063】
第2のアミノ酸コンセンサスモチーフLSNNRNLKILは、タンパク質のLRR(ロイシンリッチリピート)ドメインの1つ中に位置する。これらのモチーフの主な機能は、タンパク質-タンパク質相互作用の形成のための多様な構造的フレームワークを提供することであるように思われる。これらのドメインは、エフェクターの認識を決定し、したがって、疾患の感受性/耐性に関与すると考えられている。
【0064】
ペロノスポラ・ファリノーサへの耐性
本開示は、概して、べと病(例えば、ペロノスポラ・ファリノーサ)耐性に対する耐性を有する植物に関する。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、ペロノスポラ・ファリノーサに対して広域スペクトルの耐性を有する。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、ペロノスポラ・ファリノーサの15以上、16以上、又は17以上の種属に対して耐性である。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、Pfs1、Pfs2、Pfs3、Pfs4、Pfs5、Pfs6、Pfs7、Pfs8、Pfs9、Pfs10、Pfs11、Pfs12、Pfs13、Pfs14、Pfs15、Pfs16、又はPfs17の群から選択されるペロノスポラ・ファリノーサの15以上、16以上、又は17の種属に対して耐性である。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、Pfs1、Pfs2、Pfs3、Pfs4、Pfs7、Pfs8、Pfs9、Pfs10、Pfs11、Pfs12、Pfs13、Pfs14、Pfs15、Pfs16、及びPfs17に対する耐性を有する。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、ペロノスポラ・ファリノーサの他の種属に対する耐性を更に有する。
【0065】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の耐性遺伝子の1つ又は複数のコード配列の存在は、ペロノスポラ・ファリノーサ耐性をもたらす。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のコード配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35の群から選択される。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のコード配列は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号15の群から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の耐性タンパク質の存在は、ペロノスポラ・ファリノーサ耐性をもたらす。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の耐性タンパク質は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34及び配列番号36の群から選択される。いくつかの実施形態において、耐性タンパク質は、配列番号4である。
【0067】
本開示の植物
いくつかの態様において、本開示の植物は、ヒユ科(Amaranthaceae)の植物である。いくつかの実施形態では、本開示の植物は、スピナキア・オレラセア(ホウレンソウ)種の植物である。
【0068】
本明細書によれば、植物の部分は、葉、茎、分裂組織、子葉、胚軸、根、根の先端、根の分裂組織、胚珠、花粉、葯、雌しべ、花、胚、種子、果実、果実の一部、細胞等を含むが、これらに限定はされない。植物の組織は、組織又は任意の植物の部分であり得る。植物の細胞は、任意の植物の部分の細胞であり得る。
【0069】
本開示の植物は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35の群から選択されるコード配列を有する耐性遺伝子を有する植物を含む。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、配列番号3、配列番号5、配列番号7、又は配列番号15の群から選択されるコード配列を有する耐性遺伝子を有する植物を含む。
【0070】
本開示の植物は、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34及び配列番号36の群から選択されるアミノ酸配列を有する耐性タンパク質を有する植物を含む。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、配列番号4のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質を有する植物を含む。
【0071】
本開示の植物は、第1の保存されたアミノ酸モチーフKDHxIzKEであって、xがアミノ酸K又はE、好ましくはKであり、zがアミノ酸K又はE、好ましくはE(例えば、KDHKIEKE)である第1の保存されたアミノ酸モチーフ、第2の保存されたアミノ酸モチーフLSNNRNLKIL、又は、第1の保存されたアミノ酸モチーフKDHxIzKE及び第2の保存されたアミノ酸モチーフLSNNRNLKILの両方を含む耐性タンパク質を有する植物を含む。
【0072】
本開示の植物は、アクセッション番号NCIMB43360の下で寄託された種子から生育したホウレンソウ植物を含む。別の実施形態では、本発明は、NCIMBアクセッション番号43360を有するホウレンソウ種子を生育させることによって生成されるホウレンソウ植物の全ての生理学的及び形態学的特徴を有するホウレンソウ植物及びそれから単離された部分に向けられている。更に別の実施形態では、本発明は、F1交配種ホウレンソウ種子、種子から生育した植物、及び親としてホウレンソウ植物を有するそれから単離された葉に向けられており、ここで、ホウレンソウ植物は、NCIMBアクセッション番号43360を有するホウレンソウ種子から生育される。いくつかの実施形態では、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35の群から選択されるコード配列を有する1つ又は複数の耐性遺伝子が、アクセッション番号NCIMB43360の下で寄託された種子から生育される植物に存在する。いくつかの実施形態では、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33及び配列番号35の群から選択されるアミノ酸配列を有する1つ又は複数の耐性タンパク質が、アクセッション番号NCIMB43360の下で寄託された種子から生育される植物に存在する。
【0073】
植物が本開示の植物であるかどうか、したがって、前記植物が本開示の植物と同じ遺伝子を有するかどうかを決定するために、植物の表現型が本開示の既知の植物(例えば、アクセッション番号NCIMB43360の下で寄託された種子から生育された植物)の表現型と比較され得る。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、広いスペクトルのべと病(ペロノスポラ・ファリノーサ)耐性を有する。いくつかの実施形態において、本開示の植物は、Pfs1、Pfs2、Pfs3、Pfs4、Pfs5、Pfs6、Pfs7、Pfs8、Pfs9、Pfs10、Pfs11、Pfs12、Pfs13、Pfs14、Pfs15、Pfs16、又はPfs17の群から選択される15以上のPfs種属に対する耐性を有する。いくつかの実施形態において、表現型は、例えば、実施例4に記載されているように、べと病葉ディスクアッセイによって評価され得る。いくつかの実施形態において、表現型は、当業者に知られている耐病性アッセイによって評価され得る。
【0074】
表現型の観察に加えて、植物の遺伝子型も調査され得る。植物の遺伝子型の分析、比較、及び特徴付けに利用可能な当技術分野で知られている実験室ベースの技術が多く存在する。そのような技術は、アイソザイム電気泳動、制限酵素断片長多型(RFLP)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、DNA増幅フィンガープリント(DAF)、配列特徴的増幅領域(SCAR)、増幅断片長多型(AFLP)、単純配列反復(SSR、マイクロサテライトとも呼ばれる)、及び単一ヌクレオチド多型(SNP)を含むが、それらに限定はされない。これらの技術を使用することにより、本開示の植物のべと病耐性表現型に関与するアレル、遺伝子、及び/又は遺伝子座の存在を評価することが可能である。
【0075】
更に、植物又は病原体の遺伝子発現が調査され得る。植物又は病原体の遺伝子発現の分析、比較、及び特徴付けに利用可能な当技術分野で知られている実験室ベースの技術が多く存在する。そのような技術は、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR;リアルタイムPCRとも呼ばれる)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、及びRNAシーケンシング(RNA-Seq)を含むが、これらに限定はされない。例えば、病原体遺伝子の発現は、qPCRを使用して評価可能であり、実施例3に記載されているように、植物が本開示の植物のべと病耐性表現型を有するかどうかを決定するために使用され得る。
【0076】
本開示の植物を入手する方法
いくつかの実施形態において、本開示は、a)本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含むホウレンソウ植物を生育させる工程、並びにb)工程a)からの植物を選択する工程によって、ホウレンソウ植物を選択する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、ホウレンソウ植物を、本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含む植物と交配する工程によってホウレンソウ植物を育種する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、(a)本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含むホウレンソウ植物を提供する工程、(b)工程(a)のホウレンソウ植物を感受性のホウレンソウ植物と交配する工程、(c)場合により、工程(b)で得られた植物を少なくとも1回自家受粉させる工程、そして(d)べと病に耐性のある植物を選択する工程によって、べと病に耐性のあるホウレンソウ植物を育種する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、(a)本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含むホウレンソウ植物を、子孫植物を生産するための所望の形質を含む別のホウレンソウ品種の植物と交配する工程であって、所望の形質が除草剤耐性、昆虫又は害虫への耐性、細菌性疾患、真菌性疾患、卵菌性疾患、又はウイルス性疾患に対する耐性から選択される工程、(b)所望の形質を有する1つ又は複数の子孫植物を選択する工程、(c)選択された子孫植物を、本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含むホウレンソウ植物と戻し交配して、戻し交配子孫植物を生成する工程、(d)所望の形質並びに本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含むホウレンソウ植物の全ての生理学的及び形態学的特徴を有する戻し交配子孫植物を選択する工程、並びに(e)工程(c)及び(d)を連続して2回以上繰り返して、所望の形質を含む選択された第3以降の戻し交配子孫植物を生産する工程によって、本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含むホウレンソウ植物に所望の形質を導入する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の1つ又は複数の耐性遺伝子
若しくは1つ又は複数の耐性タンパク質を含むホウレンソウ種子を生育させる工程によってホウレンソウ植物を得る方法に向けられている。前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態では、ホウレンソウの子孫植物は、べと病(ペロノスポラ・ファリノーサ)に対して広域スペクトルの耐性を有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、本開示は、a)NCIMBアクセッション番号43360を有するホウレンソウ種子からホウレンソウ植物を生育させる工程、及びb)工程a)からの植物を選択する工程によって、ホウレンソウ植物を選択する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、ホウレンソウ植物を、NCIMBアクセッション番号43360を有するホウレンソウ種子から生育させた植物と交配する工程によって、ホウレンソウ植物を育種する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、(a)ホウレンソウ種子の試料がNCIMBアクセッション番号43360の下で寄託されたホウレンソウ植物を提供する工程、(b)工程(a)のホウレンソウ植物を感受性のホウレンソウ植物と交配する工程、(c)場合により、工程(b)で得られた植物を少なくとも1回自家受粉させる工程、そして(d)べと病に耐性のある植物を選択する工程によって、べと病に耐性のあるホウレンソウ植物を育種する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、(a)ホウレンソウ種子の試料がNCIMBアクセッション番号43360の下で寄託されたホウレンソウ植物を、子孫植物を生産するための所望の形質を含む別のホウレンソウ品種の植物と交配する工程であって、所望の形質が、除草剤耐性、昆虫又は害虫への耐性、細菌性疾患、真菌性疾患、卵菌性疾患、又はウイルス性疾患に対する耐性から選択される工程、(b)所望の形質を有する1つ又は複数の子孫植物を選択する工程、(c)選択された子孫植物を、NCIMBアクセッション番号43360を有するホウレンソウ種子から生育させたホウレンソウ植物と戻し交配して、戻し交配子孫植物を生成する工程、(d) 所望の形質並びにNCIMBアクセッション番号43360を有するホウレンソウ種子から生育させたホウレンソウ植物の全ての生理学的及び形態学的特徴を有する戻し交配子孫植物を選択する工程、並びに(e)工程(c)及び(d)を連続して2回以上繰り返して、所望の形質を含む選択された第3以降の戻し交配子孫植物を生産する工程によって、NCIMBアクセッション番号43360を有するホウレンソウ種子から生育させたホウレンソウ植物に所望の形質を導入する方法に向けられている。いくつかの実施形態において、本開示は、NCIMBアクセッシ
ョン番号43360を有するホウレンソウ種子を生育させる工程によってホウレンソウ植物を得る方法に向けられている。前述の実施形態のいずれかと組み合わせ得るいくつかの実施形態では、ホウレンソウの子孫植物は、べと病(ペロノスポラ・ファリノーサ)に対して広域スペクトルの耐性を有する。
【0078】
本開示の耐性遺伝子又はタンパク質は、育種によって植物に持ち込まれ得る。戻し交配と呼ばれる育種技術は、系統に移入される単一の遺伝子(例えば、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする耐性遺伝子)に加えて、栽培品種の所望の形態学的及び生理学的特徴の本質的に全てを回復することを可能とする。所望の特徴のための遺伝子(例えば、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする耐性遺伝子)に寄与する親ホウレンソウ植物は、一回親又はドナー親と呼ばれる。この用語は、一回親が戻し交配プロトコルで1回限り使用され、反復されないという事実を指す。一回親からの遺伝子が移される親ホウレンソウ植物は、戻し交配プロトコルで数ラウンド使用されるため、反復親として知られる。典型的な戻し交配プロトコルでは、関心のある元の栽培品種(反復親)が、移入される関心のある単一の遺伝子を有する第2の系統(一回親)と交配される。次に、この交配から得られた子孫は、反復親と再び交配され、一回親から移される単一の遺伝子に加えて、反復親の本質的に全ての所望の形態学的及び生理学的特徴が、転換された植物において回復されているホウレンソウ植物が得られるまでこのプロセスが繰り返される。本開示は更に、ホウレンソウ植物育種プログラムにおいて、反復選択、戻し交配、系統育種、制限酵素断片長多型強化選択、及び遺伝子マーカー強化選択を含む植物育種技術を使用して、ホウレンソウ植物を開発するための方法に関する。
【0079】
本開示の耐性遺伝子又はタンパク質はまた、トランスジェニック技術によって植物に持ち込まれ得る。植物の形質転換は、植物細胞において機能する発現ベクターの構築を含む。そのようなベクターは、調節エレメント(例えば、プロモーター)の制御下にあるか、又は作動可能に連結された遺伝子を含むDNAを含む。発現ベクターは、1つ又は複数のそのような作動可能に連結された遺伝子/調節エレメントの組み合わせを含んでいてもよい。ベクターは、プラスミドの形態であってもよく、そして形質転換されたメロン植物を提供するために、単独で又は他のプラスミドと組み合わせて使用され得る。プロモーターは、誘導性、構成的、組織特異的、又は組織優先的であり得る。植物の形質転換の方法は、生物学的方法及び物理的方法を含む(例えば、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick及びThompson編, CRC Press, Inc., Boca Raton, 67~88頁(1993年)中のMikiら, "Procedures for Introducing Foreign DNA into Plants"を参照)。更に、植物細胞の発現ベクター及びin vitro培養法、又は組織の形質転換及び植物の再生が利用可能である(例えば、Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology, Glick及びThompson編, CRC Press, Inc., Boca Raton, 89~119頁(1993年)中のGruberら, "Vectors for Plant Transformation"を参照)。次に、新たなトランスジェニック系統を生産するために、生成されたトランスジェニック系統を別の(形質転換されていない、又は形質転換された)系統と交配させることができる。或いは、前述の形質転換技術を使用して特定のホウレンソウ栽培品種中に組み込まれた遺伝形質を、植物育種の技術分野で周知の従来的な戻し交配技術を使用して別の系統に移すことができるであろう。例えば、戻し交配アプローチを使用して、遺伝子改変された形質をパブリックな非エリート近交系からエリート近交系へと、又はゲノムに外来遺伝子を含む近交系からその遺伝子を含まない近交系へと移すことができるであろう。
【0080】
いくつかの実施形態において、内因性耐性遺伝子は、変異誘発、遺伝子編集技術、又は本開示の植物を得るために当技術分野で知られている他の方法を使用して、改変又は変異され得る。いくつかの実施形態において、遺伝子編集技術は、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)遺伝子編集技術、クラスター化された規則的な間隔を有する短いパリンドロームリピート(CRISPR/Cas9)遺伝子編集技術、又はジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)遺伝子編集技術の群から選択される。いくつかの実施形態において、変異は、CRISPR/Cas9系、TALEN、ジンクフィンガー、及び耐性遺伝子をコードする核酸配列を標的とするように設計されたメガヌクレアーゼの群から選択される遺伝子編集成分を含む1つ又は複数のベクターを使用して導入される。
【0081】
本開示の植物は、上記のように、複数の方法によって同定され得る。遺伝子発現レベルは、例えば、配列番号3等の本開示のコード配列から生成される転写レベルの分析によって(例えば、RT-PCRによって)試験され得る。別の選択肢は、例えば抗体を使用することによる耐性タンパク質レベル(例えば、配列番号4のアミノ酸配列を有する耐性タンパク質)の定量化である。また、当業者は通常の病原体試験を使用して、べと病耐性が、広いスペクトルのべと病耐性であるかどうかを確認することができる。これらの方法は、当業者に知られており、本開示の植物を同定するために使用され得る。次に、所望の新たな遺伝子のみを所望の作物の背景に移すために、所望の耐性遺伝子又はタンパク質を有する植物が、繁殖、戻し交配、又は他の育種系統と交配させられる。
【実施例】
【0082】
以下の例は、本開示の態様を更に説明するために提供される。これらの例は非限定的であり、本開示のいかなる態様をも限定するものと解釈されるべきではない。
【0083】
(実施例1)
新規候補優性耐性遺伝子を同定するための遺伝子マッピング
ホウレンソウ(S.oleracea)のペロノスポラ・ファリノーサ耐性遺伝子を遺伝子マッピングすることによって、新規候補優性耐性遺伝子を得た。耐性遺伝子は、バルク分離分析(BSA)アプローチを使用してマッピングした。多耐性ファミリー(F3世代に由来)のRNAをプールし、感受性ファミリーのRNAのプールと比較した。全てのF3ファミリーが、同じF2植物に由来するものであった。SNPの数の増加が観察された領域において、マーカーを開発した。F2母集団を使用して、マーカーを検証した。関心領域(ROI)を同定し、マーカーを隣接させることが可能となった後、詳細なマッピングアプローチを開始した。
【0084】
(実施例2)
ホウレンソウ(S.oleracea)におけるT70遺伝子のウイルス誘導性遺伝子サイレンシング(VIGS)
T70遺伝子がペロノスポラ・ファリノーサ耐性に関連していることを示すために、推定上の耐性遺伝子(T70)をタバコガラガラウイルス(TRV)ベースのウイルス誘導性遺伝子サイレンシング(VIGS)を用いてサイレンシングした。これは、T70耐性遺伝子を含む耐性ホウレンソウ系統のVIGSサイレンシングが、P.ファリノーサ感染に対する感受性を誘導するかどうかを見るために行われた。
【0085】
VIGSコンストラクトの構築とVIGSコンストラクトによるホウレンソウ(S.oleracea)の形質転換
遺伝子機能を研究するためのTRV由来VIGSベクターの使用は周知であり、VIGSベクターは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ニコチアナ・ベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)、及びトマト(Lycopersicon esculentum)を含む複数の植物種の遺伝子機能を研究するために使用されている(例えば、Huang C, Qian Y, Li Z, Zhou X.: Virus-induced gene silencing and its application in plant functional genomics. Sci China Life Sci. 2012;55 (2):99~108頁を参照)。T70遺伝子が観察された耐性表現型の原因であるかどうかを確認するために、VIGSサイレンシングを使用して、耐性源S.oleraceaのT70をサイレンシングした。これを行うために、T70を標的とするVIGSコンストラクトを作成し、このコンストラクトをK20ベクターにクローニングした。異なる遺伝子(RFP)を標的とする別のVIGSコンストラクトも作成し、ネガティブコントロールとして使用した。Table 1(表1)は、各遺伝子のVIGSコンストラクトにおいて使用された配列を示している。アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株GV3101との共培養を使用して、コンストラクトでホウレンソウを形質転換し、T70の機能を研究するために使用した。
【0086】
【0087】
VIGSサイレンシングアッセイと結果
簡単に述べると、VIGSを使用して、T70遺伝子を含むS.oleracea系統をT70についてサイレンシングした。耐性ホウレンソウ植物をT70サイレンシングコンストラクト(上記のようにして生成)で一過的に形質転換した。その後、ホウレンソウにべと病を引き起こすことが知られているP.ファリノーサ種属Pfs14を植物に感染させた。T70をサイレンシングした植物は、P.ファリノーサ種属Pfs14に感受性があることが判明した。これらの結果は、T70のサイレンシングが、以前は耐性のあった植物を感受性にするのに十分であることを示しており、T70がべと病耐性と関連していることが示された。
【0088】
(実施例3)
ペロノスポラ・ファリノーサに感染したホウレンソウにおけるペロノスポラ・ファリノーサのアクチンの発現のqPCR検出
ペロノスポラ・ファリノーサ感染に対するT70遺伝子を含む耐性ホウレンソウ植物の応答について、より多くの洞察を得るために、qPCR実験を実施した。VIGS実験(実施例3に記載)でペロノスポラ・ファリノーサに感染させた耐性ホウレンソウ植物、T70をサイレンシングした植物、及びRFPをサイレンシングした植物から葉を採取した。これらの感染した葉からRNAを単離し、RNAからcDNAを合成した。ペロノスポラ・ファリノーサのアクチンの発現を、Table 2(表2)に示すプライマー(配列番号19、配列番号20、配列番号21、及び配列番号22)を使用したqPCRによって分析した。
【0089】
【0090】
図1は、P.ファリノーサのアクチン遺伝子(Pfsアクチン;ハウスキーピング遺伝子)を検出するように設計されたプライマーを使用したqPCRの結果を示している。反復実験を3回行い、相対量(RQ=1/(2^Cttarget))及び正規化された発現量(NE=RQtarget/RQref)を計算することにより、相対的なPfsアクチン発現量を分析した。標的遺伝子の相対量は、ホウレンソウのハウスキーピング遺伝子であるホウレンソウ伸長因子遺伝子の発現に対して正規化した。y軸の値は相対的なPfsアクチン発現量である。x軸、左から右:VIGSサイレンシングコンストラクトが使用されていない植物の葉から得られた試料、RFP VIGSコンストラクトが使用された植物の葉から得られた試料(ネガティブコントロール)、及びT70 VIGSコンストラクトが使用された植物の葉から得られた試料。VIGSサイレンシングコンストラクトを使用しなかった植物からの試料とRFP VIGSコンストラクトを使用した植物からの試料の両方が、耐性表現型を有していた。これらの試料は両方ともT70遺伝子を発現していた。
図1に提示のqPCRの結果によって示されるように、PfsアクチンはqPCRを使用してこれらの試料において検出されず、したがって、P.ファリノーサは存在していなかった。対照的に、高い転写レベルのPfsアクチンが、T70をサイレンシングした植物から得られた試料において測定された。したがって、P.ファリノーサが存在しており、これはT70をサイレンシングした植物で観察された感受性表現型と相関している。
【0091】
(実施例4)
べと病のリーフディスク感染アッセイ
T70遺伝子を含むホウレンソウ植物を、対照のホウレンソウ系統であるビロフレー(Viroflay)、レジストフレー(Resistoflay)、カリフレー(Califlay)、クレアモント(Clermont)、カンパニア(Campania)、ボーイング(Boeing)、及びラツィオ(Lazio)を含む試験において、べと病病原体ペロノスポラ・ファリノーサの異なる種属に対する耐性について試験した。これらの対照系統のそれぞれは、異なるPfs種属に対する既知の耐性及び感受性を有していた。試験に使用した植物は、少なくとも第2葉期にあり、まだ開花していなかった。
【0092】
耐性は、リーフディスク試験を用いて試験した。異なるホウレンソウ植物の葉を、湿らせた板紙の入ったトレイに置いた。試験葉に感染させるP.ファリノーサを得るために、すでにP.ファリノーサに感染した実生を20mLの水に懸濁し、チーズクロスで濾過し、フロースルーをスプレーフラスコ中に回収した。トレイにこのペロノスポラ・ファリノーサ懸濁液を噴霧接種した。噴霧接種については、葉が接種物で完全に覆われるように葉に噴霧し、この完全な被覆を、全てのディスクが湿っていることを確認することによってチェックした。トレイをガラス板で覆い、15℃の人工気象室おいて保管した(12時間の明:12時間の暗サイクル)。接種の7~14日後に、ペロノスポラ・ファリノーサ(Pfs)の存在について、葉の表現型を目視により採点した。
【0093】
葉の採点は、リーフディスクの上側(向軸側)又は下側(背軸側)の胞子形成の症状に基づいて行った。胞子形成の程度は、ディスクの変色ではなく、胞子形成の量によって定量化した。Table 3(表3)は、感染アッセイで使用された疾患採点スケールの詳細な説明を提供している。
【0094】
【0095】
感染アッセイは、異なるPfs種属に対する既知の感受性及び耐性を有する対照ホウレンソウ系統(ビロフレー=V、レジストフレー=R、カリフレー、クレアモント、カンパニア、ボーイング、及びラツィオ)並びにT70遺伝子(T70)を含むホウレンソウを含めることによって検証した。
【0096】
Table 4(表4)は、リーフディスク感染アッセイの結果の概要を示している。アッセイは、上記のホウレンソウ品種のペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs17の分離株を使用して実施した。結果は、T70耐性遺伝子を含むホウレンソウが、少なくともペロノスポラ・ファリノーサ種属Pfs1からPfs4、及びPfs7からPfs17に耐性があることを示した。Pfs6の耐性は決定されていないが(ND)、ホウレンソウ植物はPfs6にも耐性であると予想される。T70耐性遺伝子を含むホウレンソウは、Pfs5に感受性であった。対照の系統は、それぞれが複数のPfs種属に感受性であることが示された。T70ホウレンソウだけが、最近同定されたPfs17に対して耐性であった。
【0097】
【0098】
(実施例5)
Pfs耐性遺伝子コード配列及びタンパク質配列のアラインメント
新規耐性遺伝子コード配列(Table 5(表5))と新規耐性タンパク質(Table 6(表6))の類似性を、マルチプルアラインメントソフトウェアを使用して決定した。T10(配列番号1)、T70(配列番号3)、T71(配列番号5)、T72(配列番号7)、T75(配列番号9)、T76(配列番号11)、T83(配列番号13)、T89(配列番号15)、T96(配列番号23)及びT253(配列番号25)のコード配列を使用して、Table 5(表5)に示される結果を生成した。T10(配列番号2)、T70(配列番号4)、T71(配列番号6)、T72(配列番号8)、T75(配列番号10)、T76(配列番号12)、T83(配列番号14)、T89(配列番号16)、及びT96(配列番号24)及びT253(配列番号26)のタンパク質配列を使用して、Table 6(表6)に示される結果を生成した。更に、T18(それぞれ配列番号27、配列番号28)、T133(それぞれ配列番号29、配列番号30)、T139(それぞれ配列番号31、配列番号32)、T170(それぞれ配列番号33、配列番号34)及びT175(それぞれ配列番号35、配列番号36)のヌクレオチド配列及びタンパク質配列のどちらも、配列間で約90%以上の高い配列相同性を有している。全ての耐性遺伝子が、ヌクレオチドレベル及びアミノ酸レベルの両方で非常に類似していた。アミノ酸レベルでは、T70はT10、T75、T76、及びT83との類似性が低かったが(<94%の同一性)、T71、T72、及びT89との類似性は非常に高かった(>97%の同一性)。
【0099】
【0100】
【0101】
寄託情報
ホウレンソウ(スピナキア・オレラセア(Spinacia oleracea) 2017.02544-B/SNNLENBL 19011503)の寄託物は、米国カリフォルニア州93901、サリナス、ハリスプレイス7に住所を有するエンザ・ザデンUSA社(Enza Zaden USA, Inc.)によって維持されている。特許商標庁長官が37CFRセクション1.14及び35USCセクション122に基づいて権利を有すると決定した者は、本出願の係属中、この寄託物へのアクセスが利用可能となる。本出願のいずれかの特許請求が認められた場合は、ファーガソンビルディング、クレイブストーンエステート、バックスバーン、アバディーン、AB21 9YA、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(National Collection of Industrial、Food and Marine Bacteria Ltd.)(NCIMB Ltd)における同じ品種の少なくとも2,500個の種子の寄託物へのアクセスを提供することにより、その品種の一般への入手可能性に関する全ての制限が変更不可の形で取り除かれる。
【0102】
ホウレンソウ(スピナキア・オレラセア(Spinacia oleracea) 2017.02544-B/SNNLENBL 19011503)の少なくとも2500個の種子が、ブダペスト条約に従って、2019年2月21日にファーガソンビルディング、クレイブストーンエステート、バックスバーン、アバディーン、AB21 9YA、英国の国立産業・食品・海洋細菌コレクション社(NCIMB Ltd)に寄託された。寄託にはNCIMB番号43360が割り当てられている。特許商標庁長官が37CFRセクション1.14及び35USCセクション122に基づいて権利を有すると決定した者は、本出願の係属中、この寄託物へのアクセスが利用可能となる。本出願のいずれかの特許請求が許可された場合、その品種の一般への利用可能性に関する全ての制限が変更不可の形で取り除かれる。
【0103】
寄託は、公的な寄託機関であるNCIMB寄託機関において、少なくとも30年間、又は寄託の試料の最新の請求から少なくとも5年間、又は特許の有効期間のうち、より長い期間維持され、その期間中に寄託が生育不能となった場合は交換される。
【配列表】