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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】マルチチャネルクロストーク処理
(51)【国際特許分類】
   H04S 1/00 20060101AFI20240802BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H04S1/00 700
H04S7/00 300
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2022521284
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 US2020049227
(87)【国際公開番号】W WO2021071608
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】16/599,042
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518253875
【氏名又は名称】ブームクラウド 360 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザッカリー セルデス
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004668(JP,A)
【文献】国際公開第2019/183271(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/118194(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0031462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 1/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチャネル入力オーディオ信号を処理するためのシステムであって、
複数の左右チャネルペアを含む前記マルチチャネル入力オーディオ信号を受信し、前記複数の左右チャネルペアのうちの第1の左右チャネルペアは、左入力チャネルおよび右入力チャネルを含み、前記複数の左右チャネルペアのうちの第2の左右チャネルペアは、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルを含み、
第1のバイノーラルフィルタリング、第1のサブバンド空間処理、および第1のクロストークシミュレーションを前記第1の左右チャネルペアに適用して、第1のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび第1のクロストークシミュレートされた右チャネルを生成し、前記第1のバイノーラルフィルタリング、第1のサブバンド空間処理、および第1のクロストークシミュレーションは、連続して前記第1の左右チャネルペアに適用され
第2のバイノーラルフィルタリング、第2のサブバンド空間処理、および第2のクロストークシミュレーションを前記第2の左右チャネルペアに適用して、第2のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび第2のクロストークシミュレートされた右チャネルを生成し、前記第2のバイノーラルフィルタリングは、前記左周辺入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第1のバイノーラルフィルターを適用することと、前記右周辺入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第2のバイノーラルフィルターを適用することとを含み、前記第2のバイノーラルフィルタリング、第2のサブバンド空間処理、および第2のクロストークシミュレーションは、連続して前記第2の左右チャネルペアに適用され
前記第1のクロストークシミュレートされた左チャネルと前記第2のクロストークシミュレートされた左チャネルとを結合することによって左出力チャネルを生成し、
前記第1のクロストークシミュレートされた右チャネルと前記第2のクロストークシミュレートされた右チャネルを結合することによって右出力チャネルを生成する
ように構成された回路
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含み、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記回路は、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のサブバンド空間処理を適用する前に、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のバイノーラルフィルタリングを適用するように構成され、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記回路は、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のサブバンド空間処理を適用することに続いて、および、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のクロストークシミュレーションを適用する前に、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のバイノーラルフィルタリングを適用するように構成され、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1のバイノーラルフィルタリングは、
前記左入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第3のバイノーラルフィルターを適用することと、
前記右入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第4のバイノーラルフィルターを適用することと
を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記回路は、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のサブバンド空間処理を適用する前に、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のバイノーラルフィルタリングを適用するように構成され、前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記回路は、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のサブバンド空間処理を適用することに続いて、および、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のクロストークシミュレーションを適用する前に、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のバイノーラルフィルタリングを適用するように構成され、前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の左右チャネルペアに前記第1のクロストークシミュレーションを適用するように構成された前記回路は、前記左入力チャネルまたは前記右入力チャネルのうちの少なくとも1つにフィルター、時間遅延、およびゲインを適用するように構成されている前記回路を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2の左右チャネルペアに前記第2のクロストークシミュレーションを適用するように構成された前記回路は、前記左周辺入力チャネルまたは前記右周辺入力チャネルのうちの少なくとも1つにフィルター、時間遅延、およびゲインを適用するように構成されている前記回路を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記回路は、
前記マルチチャネル入力オーディオ信号の中央入力チャネルにハイシェルフフィルターを適用して、左中央チャネルおよび右中央チャネルを生成し、
前記マルチチャネル入力オーディオ信号の低周波数入力チャネルにディバイダーを適用して、左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルを生成し、
前記第1のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび前記第2のクロストークシミュレートされた左チャネルに前記左中央チャネルおよび前記左低周波数チャネルを結合して、前記左出力チャネルを生成し、
前記第1のクロストークシミュレートされた右チャネルおよび前記第2のクロストークシミュレートされた右チャネルに前記右中央チャネルおよび前記右低周波数チャネルを結合して、前記右出力チャネルを生成する
ようにさらに構成されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルを含む前記第2の左右チャネルペアは、
サラウンドペア、または
リアサラウンドペア
のうちの1つであることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
プロセッサーによって実行されると、前記プロセッサーに、
複数の左右チャネルペアを含むマルチチャネル入力オーディオ信号を受信し、前記複数の左右チャネルペアのうちの第1の左右チャネルペアは、左入力チャネルおよび右入力チャネルを含み、前記複数の左右チャネルペアのうちの第2の左右チャネルペアは、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルを含み、
第1のバイノーラルフィルタリング、第1のサブバンド空間処理、および第1のクロストークシミュレーションを前記第1の左右チャネルペアに適用して、第1のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび第1のクロストークシミュレートされた右チャネルを生成し、前記第1のバイノーラルフィルタリング、第1のサブバンド空間処理、および第1のクロストークシミュレーションは、連続して前記第1の左右チャネルペアに適用され
第2のバイノーラルフィルタリング、第2のサブバンド空間処理、および第2のクロストークシミュレーション処理を前記第2の左右チャネルペアに適用して、第2のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび第2のクロストークシミュレートされた右チャネルを生成し、前記第2のバイノーラルフィルタリングは、前記左周辺入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第1のバイノーラルフィルターを適用することと、前記右周辺入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第2のバイノーラルフィルターを適用することとを含み、前記第2のバイノーラルフィルタリング、第2のサブバンド空間処理、および第2のクロストークシミュレーションは、連続して前記第2の左右チャネルペアに適用され
前記第1のクロストークシミュレートされた左チャネルと前記第2のクロストークシミュレートされた左チャネルとを結合することによって左出力チャネルを生成し、
前記第1のクロストークシミュレートされた右チャネルと前記第2のクロストークシミュレートされた右チャネルを結合することによって右出力チャネルを生成する
ようにさせるプログラムコードを格納する非一時的なコンピューター読取り可能媒体。
【請求項13】
前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含み、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項12に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項14】
前記第2の左右チャネルペアにサブバンド空間処理を適用する前に、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のバイノーラルフィルタリングを適用し、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むようにプロセッサーにさせるプログラムコードをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項15】
前記第2の左右チャネルペアにサブバンド空間処理を適用することに続いて、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のバイノーラルフィルタリングを適用し、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むようにプロセッサーにさせるプログラムコードをさらに含むことを特徴とする請求項12に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項16】
前記プロセッサーに、前記第1のバイノーラルフィルタリングを前記第1の左右チャネルペアに適用するようにさせるプログラムコードは、前記プロセッサーに、
前記左入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第3のバイノーラルフィルターを適用し、
前記右入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第4のバイノーラルフィルターを適用する
ようにさせることを特徴とする請求項12に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項17】
前記プログラムコードは、前記プロセッサーに、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のサブバンド空間処理を適用する前に、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のバイノーラルフィルタリングを適用し、前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むようにさせることを特徴とする請求項16に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項18】
前記プログラムコードは、前記プロセッサーに、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のサブバンド空間処理を適用することに続いて、および、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のクロストークシミュレーションを適用する前に、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のバイノーラルフィルタリングを適用し、前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むようにさせることを特徴とする請求項16に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項19】
前記プロセッサーに、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のクロストークシミュレーションを適用するようにさせる前記プログラムコードは、前記プロセッサーに、前記左入力チャネルまたは前記右入力チャネルのうちの少なくとも1つにフィルター、時間遅延、およびゲインを適用するようにさせるプログラムコードを含むことを特徴とする請求項12に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項20】
前記プロセッサーに、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のクロストークシミュレーションを適用するようにさせる前記プログラムコードは、前記プロセッサーに、前記左周辺入力チャネルまたは前記右周辺入力チャネルのうちの少なくとも1つにフィルター、時間遅延、およびゲインを適用するようにさせるプログラムコードを含むことを特徴とする請求項12に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項21】
前記プログラムコードは、前記プロセッサーに、
前記マルチチャネル入力オーディオ信号の中央入力チャネルにハイシェルフフィルターを適用して、左中央チャネルおよび右中央チャネルを生成し、
前記マルチチャネル入力オーディオ信号の低周波数入力チャネルにディバイダーを適用して、左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルを生成し、
前記第1のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび前記第2のクロストークシミュレートされた左チャネルに前記左中央チャネルおよび前記左低周波数チャネルを結合して、前記左出力チャネルを生成し、
前記第1のクロストークシミュレートされた右チャネルおよび前記第2のクロストークシミュレートされた右チャネルに前記右中央チャネルおよび前記右低周波数チャネルを結合して、前記右出力チャネルを生成する
ようにさらにさせることを特徴とする請求項20に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項22】
前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルを含む前記第2の左右チャネルペアは、
サラウンドペア、または
リアサラウンドペア
のうちの1つであることを特徴とする請求項12に記載のコンピューター読取り可能媒体。
【請求項23】
マルチチャネル入力オーディオ信号を処理するための方法であって、回路によって、
複数の左右チャネルペアを含む前記マルチチャネル入力オーディオ信号を受信することであって、前記複数の左右チャネルペアのうちの第1の左右チャネルペアは、左入力チャネルおよび右入力チャネルを含み、前記複数の左右チャネルペアのうちの第2の左右チャネルペアは、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルを含む、ことと、
第1のバイノーラルフィルタリング、第1のサブバンド空間処理、および第1のクロストークシミュレーションを前記第1の左右チャネルペアに適用して、第1のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび第1のクロストークシミュレートされた右チャネルを生成することであって、前記第1のバイノーラルフィルタリング、第1のサブバンド空間処理、および第1のクロストークシミュレーションは、連続して前記第1の左右チャネルペアに適用される、ことと、
第2のバイノーラルフィルタリング、第2のサブバンド空間処理、および第2のクロストークシミュレーションを前記第2の左右チャネルペアに適用して、第2のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび第2のクロストークシミュレートされた右チャネルを生成することであって、前記第2のバイノーラルフィルタリングは、前記左周辺入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第1のバイノーラルフィルターを適用することと、前記右周辺入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第2のバイノーラルフィルターを適用することとを含み、前記第2のバイノーラルフィルタリング、第2のサブバンド空間処理、および第2のクロストークシミュレーションは、連続して前記第2の左右チャネルペアに適用される、ことと、
前記第1のクロストークシミュレートされた左チャネルと前記第2のクロストークシミュレートされた左チャネルとを結合することによって左出力チャネルを生成することと、
前記第1のクロストークシミュレートされた右チャネルと前記第2のクロストークシミュレートされた右チャネルを結合することによって右出力チャネルを生成することと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項24】
前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含み、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のバイノーラルフィルタリングは、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のサブバンド空間処理を適用する前に、前記第2の左右チャネルペアに適用され、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記第2のバイノーラルフィルタリングは、前記第2の左右チャネルペアに前記第2のサブバンド空間処理を適用することに続いて、前記第2の左右チャネルペアに適用され、前記第2のサブバンド空間処理は、前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記回路によって、
前記左入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第3のバイノーラルフィルターを適用することと、
前記右入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する第4のバイノーラルフィルターを適用することと
によって、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のバイノーラルフィルタリングを適用することをさらに備えることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記第1のバイノーラルフィルタリングは、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のサブバンド空間処理を適用する前に、前記第1の左右チャネルペアに適用され、前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1のバイノーラルフィルタリングは、前記第1の左右チャネルペアに前記第1のサブバンド空間処理を適用することに続いて、前記第1の左右チャネルペアに適用され、前記第1のサブバンド空間処理は、前記左入力チャネルおよび前記右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の左右チャネルペアに前記第1のクロストークシミュレーションを適用することは、前記左入力チャネルまたは前記右入力チャネルのうちの少なくとも1つにフィルター、時間遅延、およびゲインを適用することを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の左右チャネルペアに前記第2のクロストークシミュレーションを適用することは、前記左周辺入力チャネルまたは前記右周辺入力チャネルのうちの少なくとも1つにフィルター、時間遅延、およびゲインを適用することを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記回路によって、
前記マルチチャネル入力オーディオ信号の中央入力チャネルにハイシェルフフィルターを適用して、左中央チャネルおよび右中央チャネルを生成することと、
前記マルチチャネル入力オーディオ信号の低周波数入力チャネルにディバイダーを適用して、左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルを生成することと、
前記第1のクロストークシミュレートされた左チャネルおよび前記第2のクロストークシミュレートされた左チャネルに前記左中央チャネルおよび前記左低周波数チャネルを結合して、前記左出力チャネルを生成することと、
前記第1のクロストークシミュレートされた右チャネルおよび前記第2のクロストークシミュレートされた右チャネルに前記右中央チャネルおよび前記右低周波数チャネルを結合して、前記右出力チャネルを生成することと
をさらに備えることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記左周辺入力チャネルおよび前記右周辺入力チャネルを含む前記第2の左右チャネルペアは、
サラウンドペア、または
リアサラウンドペア
のうちの1つであることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、概して、オーディオ信号処理の分野に関し、より詳細には、空間強化マルチチャネルオーディオに関する。
【背景技術】
【0002】
サラウンド音声は、聴取者の周りに位置されたラウドスピーカーによる、複数のチャネルを含むオーディオ信号の音声再生をいう。例えば、5.1サラウンド音声は、フロントスピーカー、左スピーカーおよび右スピーカー、サブウーファー、ならびにリア(サラウンド)左スピーカーおよびリア右スピーカーに対して6チャネルを用いる。別の例では、7.1サラウンド音声は、5.1サラウンド音声構成のリア左スピーカーおよびリア右スピーカーを、4つの別個のスピーカー、たとえば、左サラウンドスピード、右サラウンドスピーカー、左リアサラウンドスピーカー、および右リアサラウンドスピーカーなどに分離することによって、8チャネルを用いる。マルチチャネルオーディオ信号のオーディオチャネルは、オーディオチャネルが出力されるスピーカーのロケーションに対応する角度位置に関連付けられることがある。ゆえに、マルチチャネルオーディオ信号は、オーディオ信号が、異なるロケーションにおけるスピーカーに出力されるとき、聴取者に、音場における空間感覚に気づくことを可能にする。しかしながら、空間感覚は、サラウンド音声に対するマルチチャネルオーディオ信号がステレオ(例えば、左および右)ラウドスピーカーまたはヘッドマウントスピーカーに出力されるとき、失われることがある。
【発明の概要】
【0003】
態様は、(例えば、サラウンド音声)マルチチャネル入力オーディオ信号を、左スピーカーおよび右スピーカーに対するステレオ出力信号に処理することと同時に、マルチチャネル入力オーディオ信号の音場の空間感覚を保存することまたは強化することに関する。とりわけ、処理は、オーディオ信号がサラウンド音声システム(例えば、5.1、7.1など)においてレンダリングされた場合に起こるのと同じ方向または類似した方向から生じることとして、オーディオ信号の各チャネルが気づかれるというリスニング体験に帰着する。
【0004】
いくつかの例示的な態様では、左入力チャネル、右入力チャネル、左周辺入力チャネル、および右周辺入力チャネルを含むマルチチャネル入力オーディオ信号が受信される。サブバンド空間処理は、左入力チャネル、右入力チャネル、左周辺入力チャネル、および右周辺入力チャネルにおいて行われて、空間強化チャネル(spatially enhanced channel)を作成する。サブバンド空間処理は、左入力チャネル、右入力チャネル、左周辺入力チャネル、および右周辺入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することを含むことがある。クロストーク処理は、空間強化チャネルにおいて行われて、クロストーク処理された左チャネルおよび右クロストーク処理チャネルを作成する。左出力チャネルは、左クロストーク処理チャネル(left crosstalk processed channel)から生成され、右出力チャネルは、右クロストーク処理チャネル(right crosstalk processed channel)から生成される。クロストーク処理は、クロストークキャンセルまたはクロストークシミュレーションを含むことがある。
【0005】
左周辺チャネルおよび右周辺チャネルは、左サラウンド入力チャネルおよび右サラウンド入力チャネル、ならびに/または左サラウンドリア入力チャネルおよび右サラウンドリア入力チャネルを含むことがある。マルチチャネル入力オーディオ信号は、クロストーク処理の出力と結合されることがある中央チャネルおよび低周波数チャネルをさらに含むことがある。
【0006】
いくつかの態様では、サブバンド空間処理は、左チャネルおよび右チャネルの対応するペアの各々において行われる。例えば、サブバンド空間処理は、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することと、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することと、左入力チャネル、右入力チャネル、左周辺入力チャネル、および右周辺入力チャネルのゲイン調整されたミッドサブバンド成分およびゲイン調整されたサイドサブバンド成分を左結合チャネルおよび右結合チャネルに結合することとによって行われることがある。クロストーク処理は、左結合チャネルおよび右結合チャネルにおいて行われて、出力チャネルを生成する。
【0007】
いくつかの態様では、サブバンド空間処理は、結合された左チャネルおよび右チャネルにおいて行われる。例えば、サブバンド空間処理は、左入力チャネルおよび左周辺入力チャネルを左結合チャネルへ結合することと、右入力チャネルおよび右周辺入力チャネルを右結合チャネルへ結合することと、左結合チャネルおよび右結合チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整して、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを作成することとを含むことがある。クロストーク処理は、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルにおいて行われて、出力チャネルを生成する。
【0008】
いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、入力チャネルの少なくとも一部分に適用される。例えば、バイノーラルフィルターは、周辺入力チャネルに適用されて、周辺入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する。いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、左入力チャネルまたは右入力チャネルを含む入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整するのに適しているどんな入力チャネルにも適用される。
【0009】
いくつかの態様は、マルチチャネル入力オーディオ信号を処理するためのシステムを含むことがある。システムは、複数の左右チャネルペア(left-right channel pair)を含むマルチチャネル入力オーディオ信号を受信し、複数の左右チャネルペアのうちの第1の左右チャネルペアは左入力チャネルおよび右入力チャネルを含み、複数の左右チャネルペアのうちの第2の左右チャネルペアは左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルを含み、第1の左右チャネルペアに第1のクロストーク処理を適用して第1のクロストーク処理チャネルを生成し、第2の左右チャネルペアに第2のクロストーク処理を適用して第2のクロストーク処理チャネルを生成し、第1および第2のクロストーク処理チャネルから左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する、ように構成された回路を含む。
【0010】
いくつかの態様では、回路は、第1の左右チャネルペアに第1のサブバンド空間処理を適用し、第1のサブバンド空間処理は、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含み、第2の左右チャネルペアに第2のサブバンド空間処理を適用し、第2のサブバンド空間処理は、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含む、ようにさらに構成される。
【0011】
いくつかの態様は、プロセッサーによって実行されると、複数の左右チャネルペア(left-right channel pair)を含むマルチチャネル入力オーディオ信号を受信し、複数の左右チャネルペアのうちの第1の左右チャネルペアは左入力チャネルおよび右入力チャネルを含み、複数の左右チャネルペアのうちの第2の左右チャネルペアは左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルを含み、第1の左右チャネルペアに第1のクロストーク処理を適用して第1のクロストーク処理チャネルを生成し、第2の左右チャネルペアに第2のクロストーク処理を適用して第2のクロストーク処理チャネルを生成し、第1および第2のクロストーク処理チャネルから左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する、ようにプロセッサーにさせるプログラムコンピューティングコードを格納する非一時的なコンピューター読取り可能媒体を含むことがある。
【0012】
いくつかの態様では、コンピューター読取り可能媒体は、第1の左右チャネルペアに第1のサブバンド空間処理を適用し、第1のサブバンド空間処理は、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含み、第2の左右チャネルペアに第2のサブバンド空間処理を適用し、第2のサブバンド空間処理は、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含む、ようにプロセッサーにさせるプログラムコードさらに含む。
【0013】
いくつかの態様は、マルチチャネル入力オーディオ信号を処理するための方法を含むことがある。方法は、回路によって、複数の左右チャネルペア(left-right channel pair)を含むマルチチャネル入力オーディオ信号を受信することと、複数の左右チャネルペアのうちの第1の左右チャネルペアは左入力チャネルおよび右入力チャネルを含み、複数の左右チャネルペアのうちの第2の左右チャネルペアは左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルを含み、第1の左右チャネルペアに第1のクロストーク処理を適用して第1のクロストーク処理チャネルを生成することと、第2の左右チャネルペアに第2のクロストーク処理を適用して第2のクロストーク処理チャネルを生成することと、第1および第2のクロストーク処理チャネルから左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成することと、含むことがある。
【0014】
いくつかの態様では、方法は、回路によって、第1の左右チャネルペアに第1のサブバンド空間処理を適用することと、第1のサブバンド空間処理は、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含み、第2の左右チャネルペアに第2のサブバンド空間処理を適用することと、第2のサブバンド空間処理は、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整すること含む、をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一態様に係るサラウンド音声ステレオオーディオ再生システムの例を例示する。
図2】一態様に係るオーディオシステムの例を例示する。
図3】一態様に係るサブバンド空間プロセッサーの例を例示する。
図4】一態様に係るクロストークキャンセルプロセッサーの例を例示する。
図5】一態様に係る図2において示されたオーディオシステムによるオーディオ信号を強化するための方法の例を例示する。
図6】一態様に係るオーディオシステムの例を例示する。
図7】一態様に係る図6において示されたオーディオシステムによるオーディオ信号を強化するための方法の例を例示する。
図8】一態様に係るコンピューターシステムの例を例示する。
図9】一態様に係るオーディオシステムの例を例示する。
図10】一態様に係るオーディオシステムの例を例示する。
図11】一態様に係る図9または図10において示されたオーディオシステムによるオーディオ信号を強化するための方法の例を例示する。
図12】一態様に係るクロストークシミュレーションプロセッサーの例を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書に説明される特徴および利点はすべてを含まず、特に、多くの追加の特徴および利点は、図面、明細書、および特許請求の範囲の観点から当業者に明らかになるだろう。さらにその上、本明細書に用いられる用語は、おもに読みやすさおよび教育目的のために選択され、発明の主題の境界を明示するまたは発明の主題を制限するために選択されていないことが気づかれるべきである。
【0017】
図面(FIG.)および後に続く説明は、例示のみのための好ましい態様に関係する。後に続く議論から、本明細書に開示される構造および方法の代替態様は、本発明の原理から逸脱することなく用いられることがある実行可能な代替として直ちに認められるだろうということに気づかれるべきである。
【0018】
ただちに参照は本発明(複数可)のいくつかの態様に対して詳細になされ、例が添付の図面に例示されている。実際に使用できるときはいつでも、同一のまたは同様な参照符号は、図面において用いられることがあり、同一のまたは同様な機能を示すことがあることに気づかれるべきである。図面は例示のみの目的のために態様を描いている。当業者は、本明細書に例示される構造および方法の代替態様が、本明細書に説明される原理から逸脱することなく用いられることがあることを後に続く説明から直ちに認めるだろう。
【0019】
例示的なサラウンド音声ステレオおよび例示的なオーディオシステム
本明細書に述べられるオーディオシステムは、ステレオ(例えば、左および右)スピーカーに出力するためのマルチチャネルサラウンド音声オーディオ信号のクロストーク処理および空間エンハンスメント(spatial enhancement)を提供する。信号処理は、マルチチャネルサラウンド音声オーディオ信号にてエンコードされた音場の空間感覚の保存または強化に帰着する。とりわけ、マルチスピーカーサラウンド音声システムを用いて達成される空間感覚は、ステレオラウドスピーカーを用いて達成される。
【0020】
図1は、一態様に係るサラウンド音声ステレオオーディオ再生システム100の例を例示する。本システム100は、聴取者140にオーディオ信号再生を提供する7.1サラウンド音声システムの例である。システム100は、左スピーカー110L、右スピーカー110R、中央スピーカー115、サブウーファー125、左サラウンドスピーカー120L、右サラウンドスピーカー120R、左サラウンドリアスピーカー130L、および右サラウンドスピーカー130Rを含む。中央スピーカー115およびサブウーファー125は、前方軸(forward axis)を0°に定義される、聴取者140の前に位置されることがある。左スピーカー110Lは、前方軸に関して-20°から-30°までの間の角度に位置されることがあり、右スピーカー110Rは、前方軸に関して20°から30°までの間の角度に位置されることがある。左サラウンドスピーカー120Lは、前方軸に関して-90°から-110°までの間の角度に位置されることがあり、右サラウンドスピーカー120Rは、前方軸に関して90°から110°までの間の角度に位置されることがある。左サラウンドリアスピーカー130Lは、前方軸に関して-135°から-150°までの間の角度に位置されることがあり、右サラウンドスピーカー130Rは、前方軸に関して135°から150°までの間の角度に位置されることがある。システム100は、スピーカー110、115、120、130、およびサブウーファー125の各々に対するチャネルを含むオーディオ信号を受信するように構成されることがある。複数のスピーカーおよびそれらの位置的な配置は、聴取者140によって気づかれることが可能である音場の空間感覚を提供する。以下により詳細に述べられている、オーディオシステムは、サラウンド音声システム100に対するマルチチャネル入力オーディオ信号を、マルチチャネルオーディオ信号を用いてサラウンド音声システム100によって生成される音場における空間感覚を再生するまたはシミュレートする、左スピーカーおよび右スピーカー(例えば、スピーカー110Lおよび110R)に対する強化されたステレオ信号へ処理するように構成されることがある。
【0021】
図2は、一態様に係るオーディオシステム200の例を例示する。オーディオシステム200は、左入力チャネル201A、右入力チャネル210B、中央入力チャネル210C、低周波数入力チャネル210D、左サラウンド入力チャネル210E、右サラウンド入力チャネル210F、左サラウンドリア入力チャネル210G、および右サラウンドリア入力チャネル210Hを含む入力オーディオ信号を受信する。
【0022】
チャネル210E、210F、210G、210Hは、サラウンドスピーカーに対する周辺チャネルの例である。周辺チャネルは、左入力チャネルおよび右入力チャネル以外のチャネルを含むことがある。周辺チャネルは、チャネルペア、たとえば、左右ペア、または前後ペア、または他のペア配置などを含むことがある。例えば、入力オーディオ信号がサラウンド音声ステレオオーディオ再生システム100によって出力されると、左サラウンドスピーカー120Lは左サラウンド入力チャネル210Eを受信し、右サラウンドスピーカー120Rは右サラウンド入力チャネル210Fを受信し、左サラウンドリアスピーカー130Lは左サラウンドリアス入力チャネル210Gを受信し、右サラウンドリアスピーカー130Rは右サラウンドリアス入力チャネル210Hを受信する。いくつかの態様では、入力オーディオ信号は、より少ないまたはより多くの周辺チャネルを有する。例えば、5.1サラウンド音声システムに対するオーディオ入力信号は、2つの周辺チャネルのみ、たとえば、左サラウンドスピーカーおよび右サラウンドスピーカーに出力されることがある左サラウンド入力チャネルおよび右サラウンド入力チャネルなどを含むことがある。同様に、左スピーカー110Lは左入力チャネル210Aを受信することがあり、右スピーカー110Rは右入力チャネル210Bを受信することがあり、中央スピーカー115は中央入力チャネル210Cを受信することがあり、サブウーファー125は低周波数入力チャネル210Dを受信することがある。入力オーディオ信号は、サラウンド音声ステレオオーディオ再生システム100によって出力されるときの音場の空間感覚を提供する。
【0023】
オーディオシステム200は、入力オーディオ信号を受信し、左出力チャネル290Lおよび右出力チャネル290Rを含む出力信号を生成する。オーディオシステム200は、入力オーディオ信号の入力チャネルを結合することがあり、さらに、たとえば、サブバンド空間処理およびクロストークキャンセルなどのエンハンスメント(enhancement)を提供して、出力オーディオ信号を生成することがある。左出力チャネル290Lは、左スピーカーに提供されることがあり、右出力チャネル290Rは、右スピーカーに出力されることがある。出力オーディオ信号は、複数(例えば、周辺)のスピーカーを含むサラウンド音声システムを用いて入力オーディオ信号を出力することによって典型的に達成される、左スピーカーおよび右スピーカー(例えば、左スピーカー110Lおよび右スピーカー110R)を用いる音場の空間感覚を提供する。
【0024】
オーディオシステム200は、ゲイン215A、215B、215C、215D、215E、215F、215G、215H、サブバンド空間プロセッサー230A、230B、230C、ハイシェルフフィルター220、ディバイダー240、バイノーラルフィルター250A、250B、250C、250D、左チャネルコンバイナー260A、右チャネルコンバイナー260B、クロストークキャンセルプロセッサー270、左チャネルコンバイナー260C、右チャネルコンバイナー260D、および出力ゲイン280を含む。
【0025】
ゲイン215Aないし215Hの各々は、それぞれ、入力チャネル210Aないし210Hを受信することがあり、入力チャネル210Aないし210Hにゲインを適用することがある。ゲイン215Aないし215Hは、入力チャネルのゲインを互いに関して調整するために異なることがある、または同一であり得る。いくつかの態様では、正のゲインが左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネル210E、210F、210G、210Hに適用され、負のゲインが中央チャネル210Cに適用される。例えば、ゲイン215Aは0dBのゲインを適用することがあり、ゲイン215Bは0dBのゲインを適用することがあり、ゲイン215Cは-3dBのゲインを適用することがあり、ゲイン215Dは0dBのゲインを適用することがあり、ゲイン215Eは3dBのゲインを適用してよく、ゲイン215Fは3dBのゲインを適用することがあり、ゲイン215Gは3dBのゲインを適用することがあり、ゲイン215Hは3dBのゲインを適用することがある。
【0026】
ゲイン215Aおよびゲイン215Bは、サブバンド空間プロセッサー230に結合される。同様に、ゲイン215Eおよび215Fは、サブバンド空間プロセッサー230Bに結合され、ゲイン215Gおよび215Hは、サブバンド空間プロセッサー230Cに結合される。サブバンド空間プロセッサー230A、230B、230Cは、各々、対応する左チャネルおよび右チャネルのペアに対してサブバンド空間処理を適用する。
【0027】
各サブバンド空間プロセッサー230は、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することによって、左入力チャネルおよび右入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行って、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを生成する。サブバンド空間プロセッサー230Aは、左入力チャネルおよび右入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行うと同時に、他のサブバンド空間プロセッサー230Bおよび230Cは、各々、対応する左周辺チャネルおよび右周辺チャネルに対してサブバンド空間処理を行う。入力オーディオ信号における周辺チャネルの数に応じて、オーディオシステム200は、より多いまたはより少ないサブバンド空間プロセッサーを含むことがある。いくつかの態様では、左/右の対をなすものの片方を有さないチャネル(たとえば、中央入力チャネル210C、低周波数入力チャネル210D、またはたとえばリア中央、オーバーヘッド中央などの他のタイプのチャネルなど)は、SBS処理をバイパスすることが可能である。
【0028】
サブバンド空間プロセッサー230Bは、バイノーラルフィルター250Aおよび250Bに結合される。サブバンド空間プロセッサー230Bは、左空間強化チャネルをバイノーラルフィルター250Aに提供し、右空間強化チャネルをバイノーラルフィルター250Bに提供する。同様に、サブバンド空間プロセッサー230Cは、バイノーラルフィルター250Cおよび250Dに結合される。サブバンド空間プロセッサー230Cは、左空間強化チャネルをバイノーラルフィルター250Cに提供し、右空間強化チャネルをバイノーラルフィルター250Dに提供する。サブバンド空間プロセッサー230に関する追加の詳細は、図3に示され、以下に述べられる。
【0029】
バイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dの各々は、聴取者が入力チャネルの音に気づくべきであるターゲットソースロケーション(target source location)を記述する頭部伝達関数(HRTF:Head-Related Transfer Function)を適用する。各バイノーラルフィルターは、入力チャネルを受信し、入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整するHRTFを適用することによって左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。角度位置は、図1に示されている聴取者140に関してX-Y「方位角」平面において定義される角度を含むことがあり、さらに、たとえば、アンビソニックス信号、または聴取者140に関してX-Y平面より上または下にレンダリングされることを意図した信号を含むチャネルベースのフォーマットなど、Z軸において定義される角度を含むことがある。例えば、バイノーラルフィルター250Aは、左サラウンド入力チャネル210Eが左サラウンドスピーカー120Lの前方軸に関して-90°から-110°までの間の角度(X-Y平面において定義される)に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用するように構成されることがある。バイノーラルフィルター250Bは、右サラウンド入力チャネル210Fが右サラウンドスピーカー120Lの前方軸に関して90°から110°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用するように構成されることがある。バイノーラルフィルター250Cは、左サラウンドリア入力チャネル210Gが左サラウンドリアスピーカー130Lの前方軸に関して-135°から-150°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用するように構成されることがある。バイノーラルフィルター250Dは、右サラウンドリア入力チャネル210Hがリアスピーカー130Rの前方軸に関して135°から150°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用するように構成されることがある。いくつかの態様では、バイノーラル処理は、インターチャネルのスペクトルの均一性(uniformity)を保存するために完全にバイパスされることがある。バイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dのうちの1つまたは複数は、オーディオシステム200から省略されることがある。しかしながら、バイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dは、空間に関するイメージングを強化するのに用いられることがある。いくつかの態様では、バイノーラルフィルタリングは、周辺入力チャネル以外のチャネルに適用されることがある。例えば、バイノーラルフィルターは、サブバンド空間プロセッサー230Aから出力される左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルの各々に適用されて、異なる左出力スピーカーのロケーションおよび右出力スピーカーのロケーションに対して調整することがある。別の例では、入力オーディオ信号が他のスピーカーのロケーション(オーバーヘッド、リア中央など)に関連付けられたチャネルを含むならば、バイノーラル処理は、他の入力チャネルに適用されることがある。その意味で、バイノーラル処理は、左入力チャネル210A、右入力チャネル210B、中央入力チャネル210C、または低周波数入力チャネル210Dのうちの1つまたは複数に適用されることがある。いくつかの態様では、HRTFは適用されず、バイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dのうちの1つまたは複数は、システム200からバイパスされるまたは省略されることがある。
【0030】
バイノーラルフィルターの例は、式1によって定義されることがある。
【0031】
【数1】
【0032】
ただし、SOおよびSiは、それぞれ、出力信号および入力信号である。引数θはSOおよびSiにおける各チャネルの角度をエンコードする。値zは、任意の複素数であり、我々の解が、周波数をエンコードする関数である。それゆえ、H(θ,z)は、角度θとzとの両方の関数であり、伝達関数、それ自体zの関数を返しており、おそらく人体計測学的データベース(anthropometric database)から導出される伝達関数の集合の中から選択されるまたは補間されることがある。今述べた表記では、角度θ、Sも同様に、およびzの関数としてのH(θ)は、マルチチャネル処理が望まれるならば、ベクトルに対して評価することがある。今述べた場合にて、S(z)、およびH(θ,z)における各係数は、異なるチャネルに対応すると同時に、θにおける各係数は、各チャネルに対して角度に関連する。
【0033】
いくつかの態様では、入力オーディオ信号は、音場のスピーカー独立(speaker-independent)の表現を定義するアンビソニックスオーディオ信号である。アンビソニックスオーディオ信号は、サラウンド音声システムに対するマルチチャネルオーディオ信号にデコードされることがある。チャネルは、聴取者より上または下にあるロケーションを含む、種々のロケーションにおけるスピーカーのロケーションに関連付けられることがある。バイノーラルフィルターは、アンビソニックスオーディオ信号の各デコードされた入力チャネルに適用して、デコードされた入力オーディオチャネルの関連位置に対して調整することがある。
【0034】
いくつかの態様では、バイノーラルフィルタリングは、サブバンド空間処理の前に行われる。例えば、バイノーラルフィルターは、チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整するのに適している1つまたは複数の入力チャネルに適用されることがある。各左右入力チャネルペアに対して、バイノーラルフィルターの左出力チャネルは結合されることがあり、バイノーラルフィルターの右出力チャネルは結合されることがあり、サブバンド空間処理は、結合した左チャネルおよび右チャネルに適用されることがある。いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、中央入力チャネル210Cまたは低周波数入力チャネル210Dに適用される。いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、低周波数入力チャネル210Dを除く各入力チャネルに適用される。
【0035】
左チャネルコンバイナー260Aは、サブバンド空間プロセッサー230A、およびバイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dに結合される。左チャネルコンバイナー260Aは、サブバンド空間プロセッサー230A、およびバイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dの左出力チャネルを受信し、これらのチャネルを左結合チャネルに結合する。さらに、右チャネルコンバイナー260Bは、サブバンド空間プロセッサー230A、およびバイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dに結合される。右チャネルコンバイナー260Bは、サブバンド空間プロセッサー230A、およびバイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dの右出力チャネルを受信し、これらのチャネルを右結合チャネルに結合する。
【0036】
クロストークキャンセルプロセッサー270は、左入力チャネルおよび右入力チャネルを受信し、クロストークキャンセルを行って、左および右のクロストークキャンセルされたチャネルを生成する。クロストークキャンセルプロセッサーは、左チャネルコンバイナー260Aに結合されて左結合チャネルを受信し、右チャネルコンバイナー260Bに結合されて右結合チャネルを受信する。ここで、クロストークキャンセルプロセッサー270によって処理される左結合チャネルおよび右結合チャネルは、ミックスダウンされた左および右の対をなすものの片方の入力チャネルを表す。クロストークキャンセルプロセッサー270に関する追加の詳細は、図4に示され、以下に述べられる。
【0037】
ハイシェルフフィルター220は、中央入力チャネル210Cを受信し、高周波数シェルビングフィルターまたはピーキングフィルターを適用する。ハイシェルフフィルター220は、中央入力チャネル210Cに「ボイスリフト(voice-lift)」を提供する。いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター220は、バイパスされる、またはオーディオシステム200から省略される。ハイシェルフフィルター220は、コーナー周波数より上の周波数を減衰させるまたは増幅させることがある。ハイシェルフフィルター220は、左チャネルコンバイナー260Cおよび右チャネルコンバイナー260Dに結合される。いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター220は、750Hzのコーナー周波数、+3dBの利得、および0.8Qファクターによって定義される。ハイシェルフフィルター220は、たとえば中央入力チャネルを2つの別個の左中央チャネルおよび右中央チャネルに分離することによってなど、左中央チャネルおよび右中央チャネルを出力として生成する。
【0038】
ディバイダー240は、低周波数入力チャネル210Dを受信し、低周波数入力チャネル210Dを左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルに分離する。ディバイダー240は、左チャネルコンバイナー260Cおよび右チャネルコンバイナー260Dに結合され、左低周波数チャネルを左チャネルコンバイナー260Cに、右低周波数チャネルを右チャネルコンバイナー260Dに提供する。
【0039】
左チャネルコンバイナー260Cは、クロストークキャンセルプロセッサー270、ハイシェルフフィルター220、およびディバイダー240に結合される。左チャネルコンバイナー260Cは、クロストークキャンセルプロセッサー270から左クロストークチャネルを、ハイシェルフフィルター220から左中央チャネルを、ディバイダー240から左低周波数チャネルを受信し、これらのチャネルを左出力チャネルに結合する。
【0040】
右チャネルコンバイナー260Dは、クロストークキャンセルプロセッサー270、ハイシェルフフィルター220、およびディバイダー240に結合される。右チャネルコンバイナー260Dは、クロストークキャンセルプロセッサー270から右クロストークチャネルを、ハイシェルフフィルター220から右出力チャネルを、ディバイダー240から右低周波数チャネルを受信し、これらのチャネルを右出力チャネルに結合する。
【0041】
いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター220からの左中央チャネルおよびディバイダー240からの左低周波数チャネルは、左チャネルコンバイナー260Aによって、サブバンド空間プロセッサー230Aからの左空間強化チャネルおよびバイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dの左出力チャネルと結合されて左結合チャネルを生成する。同様に、ハイシェルフフィルター220からの右出力チャネルおよびディバイダー240からの右低周波数チャネルは、右チャネルコンバイナー260Bによって、サブバンド空間プロセッサー230Aからの右空間強化チャネルおよびバイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dの右出力チャネルと結合されて右結合チャネルを生成する。左結合チャネルおよび右結合チャネルは、クロストークキャンセルプロセッサー270に入力される。ここで、中央および低周波数チャネルは、クロストークキャンセル演算を受ける。左チャネルコンバイナー260Cおよび右チャネルコンバイナー260Dは省略されることがある。いくつかの態様では、中央または低周波数チャネルのうちの1つが、クロストークキャンセル演算を受ける。
【0042】
出力ゲイン280は、左チャネルコンバイナー260Cおよび右チャネルコンバイナー260Dに結合される。出力ゲイン280は、左チャネルコンバイナー260Cからの左出力チャネルにゲインを適用し、右チャネルコンバイナー260Dからの右出力チャネルにゲインを適用する。出力ゲイン280は、左出力チャネルおよび右出力チャネルに同じゲインを適用することがある、または異なるゲインを適用することがある。出力ゲイン280は、オーディオシステム200の出力信号のチャネルを表す左出力チャネル290Lおよび右出力チャネル290Rを出力する。
【0043】
例示的なサブバンド空間プロセッサー
図3は、一態様に係るサブバンド空間プロセッサー230の例を例示する。サブバンド空間プロセッサー230は、オーディオシステム200のサブバンド空間プロセッサー230A、230B、または230Cの例である。サブバンド空間プロセッサー230は、空間周波数帯域ディバイダー340、空間周波数帯域プロセッサー345、および空間周波数帯域コンバイナー350を含む。空間周波数帯域ディバイダー340は、空間周波数帯域プロセッサー345に結合され、空間周波数帯域プロセッサー345は、空間周波数帯域コンバイナー350に結合される。
【0044】
空間周波数帯域ディバイダー340は、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを受信し、これらの入力を空間成分Xmおよび非空間成分Xsに変換するL/R-M/Sコンバーター312を含む。空間成分Xsは、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを減算することによって生成されることがある。非空間成分Xmは、左入力チャネルXLおよび右入力チャネルXRを加算することによって生成されることがある。
【0045】
空間周波数帯域プロセッサー345は、非空間成分Xmを受信し、サブバンドフィルターのセットを適用して、強化された非空間サブバンド成分Emを生成する。さらに、空間周波数帯域プロセッサー345は、空間サブバンド成分Xsを受信し、サブバンドフィルターのセットを適用して、強化された非空間サブバンド成分Emを生成する。サブバンドフィルターは、ピークフィルター、ノッチフィルター、ローパスフィルター、ハイパスフィルター、ローシェルフフィルター、ハイシェルフフィルター、バンドパスフィルター、バンドストップフィルター、および/またはオールパスフィルターのうちの種々の組合せを含むことが可能である。
【0046】
いくつかの態様では、空間周波数帯域プロセッサー345は、非空間成分Xmのn個の周波数サブバンドの各々に対するサブバンドフィルターと、空間成分Xsのn個の周波数サブバンドの各々に対するサブバンドフィルターとを含む。n=4個のサブバンドの場合、たとえば、空間周波数帯域プロセッサー345は、サブバンド(1)に対するミッド等化(EQ)フィルター362(1)と、サブバンド(2)に対するミッドEQフィルター362(2)と、サブバンド(3)に対するミッドEQフィルター362(3)と、サブバンド(4)に対するミッドEQフィルター362(4)とを含む非空間成分Xmに対する一連のサブバンドフィルターを含む。各ミッドEQフィルター362は、非空間成分Xmの周波数サブバンド部分にフィルターを適用し、強化された非空間成分Emを生成する。
【0047】
空間周波数帯域プロセッサー345は、サブバンド(1)に対するサイド等化(EQ)フィルター364(1)と、サブバンド(2)に対するサイドEQフィルター364(2)と、サブバンド(3)に対するサイドEQフィルター364(3)と、サブバンド(4)に対するサイドEQフィルター364(4)とを含む空間成分Xsの周波数サブバンドに対する一連のサブバンドフィルターをさらに含む。各サイドEQフィルター364は、空間成分Xsの周波数サブバンド部分にフィルターを適用して、強化された空間成分Esを生成する。
【0048】
非空間成分Xmおよび空間成分Xsのn個の周波数サブバンドの各々は、周波数のある範囲に対応し得る。例えば、周波数サブバンド(1)は、0から300Hzに対応し得、周波数サブバンド(2)は、300から510Hzに対応し得、周波数サブバンド(3)は、510から2700Hzに対応し得、周波数サブバンド(4)は、2700Hzからナイキスト周波数に対応し得る。いくつかの態様では、n個の周波数サブバンドは、臨界帯域の統合されたセットである。臨界帯域は、多種多様な音楽ジャンルからのオーディオサンプルのコーパスを用いて決定されることがある。24個のバーク尺度臨界帯域にわたるミッド成分からサイド成分の長期平均エネルギー比が、これらのサンプルから決定される。次に、同様の長期平均比率を有する連続した周波数バンドがグループ化されて、臨界帯域の組を形成する。周波数サブバンドの範囲、ならびに周波数サブバンドの数は、調整可能であり得る。
【0049】
いくつかの態様では、ミッドEQフィルター362またはサイドEQフィルター364は、式2によって定義される伝達関数を有するバイカッドフィルターを含むことがある。
【0050】
【数2】
【0051】
ただし、zは複素変数である。フィルターは、式3によって定義されているダイレクトフォームIトポロジー(direct form I topology)を用いて実装されることがある。
【0052】
【数3】
【0053】
ただし、Xは入力ベクトル、Yは出力である。他のトポロジーは、最大ワード長および飽和挙動(saturation behavior)に応じて、あるプロセッサーに対して利点を有することがある。
【0054】
次に、バイカッドは、実数値の入力および出力を有するどんな2次フィルターでも実装するのに用いることが可能である。離散時間フィルターを設計するために、連続時間フィルターが設計され、双一次変換を介して離散時間に変換される。その上さらに、中央周波数および帯域幅におけるいかなる結果のシフトに対しても補償は、周波数ウォーピング(frequency warping)を用いて達成されることがある。
【0055】
例えば、ピーキングフィルターは、式4によって定義されるS平面伝達関数を含むことがある。
【0056】
【数4】
【0057】
ただし、sは複素変数であり、Aはピークの振幅であり、Qはフィルター「品質」(
【0058】
【数5】
【0059】
としてカノニカルに導出される)である。デジタルフィルター係数は、
【0060】
【数6】
【0061】
ただし、ω0は、ラジアンにおけるフィルターの中央周波数であり、
【0062】
【数7】
【0063】
である。
【0064】
空間周波数帯域コンバイナー350は、ミッド成分およびサイド成分を受信し、それらの成分の各々にゲインを適用し、ミッド成分およびサイド成分を左チャネルおよび右チャネルに変換する。例えば、空間周波数帯域コンバイナー350は、強化された非空間成分Emおよび強化された空間成分Esを受信し、強化された非空間成分Emおよび強化された空間成分Esを左空間強化チャネルELおよび右空間強化チャネルERに変換する前にグローバルなミッドゲインおよびサイドゲインを行う。
【0065】
より具体的には、空間周波数帯域コンバイナー350は、グローバルミッドゲイン322と、グローバルサイドゲイン324と、グローバルミッドゲイン322およびグローバルサイドゲイン324に結合されたM/S-L/Rコンバーター326とを含む。グローバルミッドゲイン322は、強化された非空間成分Emを受信し、ゲインを適用し、グローバルサイドゲイン324は、強化された空間成分Esを受信し、ゲインを適用する。M/S-L/Rコンバーター326は、グローバルミッドゲイン322から強化された非空間成分Emを、グローバルサイドゲイン324から強化された空間成分Esを受信し、これらの入力を左空間強化チャネルELおよび右空間強化チャネルERに変換する。
【0066】
例示的なクロストークキャンセルプロセッサー
図4は、1つの例示的な態様に係るクロストークキャンセルプロセッサー270を例示する。クロストークキャンセルプロセッサー270は、左チャネルコンバイナー260Aからの入力として左チャネル(例えば、左空間強化チャネルEL)を、右チャネルコンバイナー260Bからの入力として右チャネル(例えば、右空間強化チャネルER)を受信し、チャネルの左および右チャネルにおいてクロストークキャンセルを行って、左出力チャネルOLおよび右出力チャネルORを生成する。
【0067】
クロストークキャンセルプロセッサー270は、帯域内外ディバイダー410と、インバーター420および422と、コントララテラルエスティメーター(contralateral estimator)430および440と、コンバイナー450および452と、帯域内外コンバイナー460とを含む。今述べたコンポーネントは、ともに動作して入力チャネルTL、TRを帯域内成分および帯域外成分に区分し、帯域内成分に対してクロストークキャンセルを行って出力チャネルOL、ORを生成する。
【0068】
入力オーディオ信号Eを異なる周波数帯域成分に区分することによって、および、選択的な成分(たとえば、帯域内成分)においてクロストークキャンセルを行うことによって、クロストークキャンセルは、他の周波数帯域における減損を防ぐかぎり、特定の周波数帯域に対して行われることが可能である。クロストークキャンセルが、入力オーディオ信号Eを異なる周波数帯域に区分せずに行われるならば、上記クロストークキャンセルの後のオーディオ信号は、低周波数(例えば350Hzより下)、高周波数(例えば12000Hzより上)、または両方の、非空間成分および空間成分において著しい減衰または増幅を示すことがある。大多数の影響のある空間キュー(spatial cues)がある帯域内(たとえば、250Hzから14000Hzの間)に対してクロストークキャンセルを選択的に行うことによって、特に非空間成分内において、ミックスにおけるスペクトルにわたってバランスのとれた全体的なエネルギーは、保持されることが可能である。
【0069】
帯域内外ディバイダー410は、入力チャネルEL、ERを、それぞれ、帯域内チャネルEL,In、ER,Inおよび帯域外チャネルEL,Out、ER,Outに分離する。特に、帯域内外ディバイダー410は、左強化補償チャネルELを左帯域内チャネルEL,Inおよび左帯域外チャネルEL,Outに区分する。同様に、帯域内外ディバイダー410は、右強化補償チャネルERを右帯域内チャネルER,Inおよび右帯域外チャネルER,Outに分離する。各帯域内チャネルは、例えば、250Hzから14kHzを含む周波数範囲に対応するそれぞれの入力チャネルの一部分を含み込むことがある。周波数帯域の範囲は、例えば、スピーカーパラメーターに従って調整可能であり得る。
【0070】
インバーター420およびコントララテラルエスティメーター430は、ともに動作して、左帯域内チャネルEL,Inのためにコントララテラル音成分(contralateral sound component)に対して補償する左コントララテラルキャンセル成分(contralateral cancellation component)SLを生成する。同様に、インバーター422およびコントララテラルエスティメーター440は、ともに動作して、右帯域内チャネルER,Inのためにコントララテラル音成分に対して補償する右コントララテラルキャンセル成分SRを生成する。
【0071】
1つの手法では、インバーター420は、帯域内チャネルEL,Inを受信し、受信された帯域内チャネルEL,Inの極性を反転して、反転された帯域内チャネルEL,In’を生成する。コントララテラルエスティメーター430は、反転された帯域内チャネルEL,In’を受信し、フィルタリングを通してコントララテラル音成分に対応する反転された帯域内チャネルEL,In’の一部分を抽出する。フィルタリングが、反転された帯域内チャネルEL,In’に対して行われるので、コントララテラルエスティメーター430によって抽出された一部分は、コントララテラル音成分に起因する帯域内チャネルEL,Inの一部分の反転になる。したがって、コントララテラルエスティメーター430によって抽出された一部分は、左コントララテラルキャンセル成分SLになり、対をなすものの片方の帯域内チャネルER,Inに加算されて、帯域内チャネルEL,Inのためにコントララテラル音成分を減らすことが可能である。いくつかの態様では、インバーター420およびコントララテラルエスティメーター430は異なるシーケンスにおいて実装される。
【0072】
インバーター422およびコントララテラルエスティメーター440は、帯域内チャネルER,Inに関して同様の動作を行って、右コントララテラルキャンセル成分SRを生成する。それゆえ、詳細な説明は、簡潔さのために本明細書にて省略される。
【0073】
1つの例示的な実装では、コントララテラルエスティメーター430は、フィルター432、アンプ434、およびディレイユニット436を含む。フィルター432は、反転された入力チャネルEL,In’を受信し、フィルタリングを通してコントララテラル音成分に対応する反転された帯域内チャネルEL,In’の一部分を抽出する。例示的なフィルターの実装は、5000Hzと10000Hzとの間にて選択される中央周波数と、0.5と1.0との間にて選択されるQとを有するノッチフィルターまたはハイシェルフフィルター(Highshelf filter)である。デシベルにおける(GdB)は式5から導出されることがある。
dB=-3.0-log1.333(D) 式(5)
ただし、Dは、サンプルにおける、例えば、48kHzのサンプリングレートにおけるディレイユニット1556A/Bによる遅延量である。代替的な実装は、5000Hzと10000Hzとの間にて選択されるコーナー周波数と、0.5と1.0との間にて選択されるQを有するローパスフィルターである。さらにその上、アンプ434は、抽出された部分を、対応するゲイン係数GL,Inによって増幅し、ディレイユニット436は、アンプ434からの増幅された出力を遅延関数Dに従って遅延させて、左コントララテラルキャンセル成分SLを生成する。コントララテラルエスティメーター440は、フィルター442と、アンプ444と、反転された帯域内チャネルER,In’において同様の動作を行って右コントララテラルキャンセル成分SRを生成する遅延ユニット446とを含む。一例では、コントララテラルエスティメーター430、440は、以下の式に従って左コントララテラルキャンセル成分SL、SRを生成する。
L=D[GL,In*F[EL,In’]] 式(6)
R=D[GR、In*F[ER,In’]] 式(7)
ただし、F[]はフィルター関数であり、D[]は遅延関数である。
【0074】
クロストークキャンセルの構成は、スピーカーパラメーターによって決定されることが可能である。一例では、フィルター中央周波数、遅延量、アンプゲイン、およびフィルターゲインは、聴取者に関して出力信号の2つの出力スピーカーの間にて形成された角度に、または例えば相対的な位置、パワーなどスピーカーの他の特徴に従って、決定されることが可能である。いくつかの態様では、スピーカー角度の間の値が、他の値を補間するのに用いられる。
【0075】
コンバイナー450は、右コントララテラルキャンセル成分SRを左帯域内チャネルEL,Inと結合して、左帯域内補償チャネルULを生成し、コンバイナー452は、左コントララテラルキャンセル成分SLを右帯域内チャネルER,Inと結合して、右帯域内補償チャネルURを生成する。帯域内外コンバイナー460は、左帯域内補償チャネルULを帯域外チャネルEL,Outに結合して、左出力チャネルOLを生成し、右帯域内補償チャネルURを帯域外チャネルER,Outに結合して、右出力チャネルORを生成する。
【0076】
したがって、左出力チャネルOLは、コントララテラル音(contralateral sound)に起因する帯域内チャネルTR,Inの一部分の反転に対応する右コントララテラルキャンセル成分SRを含み、右出力チャネルORは、コントララテラル音に起因する帯域内チャネルTL,Inの一部分の飯店に対応する左コントララテラルキャンセル成分SLを含む。今述べた構成では、右耳に届けられる右出力チャネルORに従って、右スピーカー(例えばスピーカー110R)によって出力されるイプシラテラル音成分(ipsilateral sound component)の波面(wavefront)は、左出力チャネルOLに従って、右スピーカー(例えばスピーカー110L)によって出力されるコントララテラル音成分の波面をキャンセルすることが可能である。同様に、左耳に届けられる左出力チャネルOLに従って、左スピーカーによって出力されるイプシラテラル音成分の波面は、右出力チャネルORに従って、右スピーカーによって出力されるコントララテラル音成分の波面をキャンセルすることが可能である。ゆえに、コントララテラル音成分は、空間検出能力を強化するのに減らされることが可能である。
【0077】
例示的なオーディオ信号エンハンスメント処理
図5は、一態様に係る図2において示されたオーディオシステム200によるオーディオ信号を強化するための方法500の例を例示する。いくつかの態様では、方法500は、異なるおよび/もしくは追加のステップを含むことがある、またはいくつかのステップは、異なる順にてあり得る。
【0078】
オーディオシステム200は、マルチチャネル入力オーディオ信号を受信する505。マルチチャネルオーディオ信号は、左入力チャネル、右入力チャネル、少なくとも1つの左周辺入力チャネル、および少なくとも1つの右周辺入力チャネルを含むサラウンド音声オーディオ信号であり得る。さらに、マルチチャネルオーディオ信号は、中央入力チャネル210Cおよび低周波数入力チャネル210Dをさらに含むことがある。例えば、入力オーディオ信号は、左入力チャネル210Aおよび右入力チャネル210Bを、ならびに左サラウンド入力チャネル210Eおよび右サラウンド入力チャネル210Fと左サラウンドリア入力チャネル210Gおよび右サラウンドリア入力チャネル210Hとを含む周辺チャネルを含む7.1サラウンド音声システムに対してであり得る。5.1サラウンド音声システムに対する入力オーディオ信号の別の例では、周辺チャネルは、単一の左周辺チャネルおよび単一の右周辺チャネルを含むことがある。
【0079】
オーディオシステム200(例えば、ゲイン215Aないし215H)は、マルチチャネル入力オーディオ信号のチャネルにゲインを適用する510。ゲイン215Aないし215Hは、オーディオシステム200によって生成される出力信号に対する特定の入力チャネルのコントリビューションを制御するのに変わることがある。いくつかの態様では、中央チャネル210Cは負のゲインを受信する一方、周辺入力チャネルは正のゲインを受信する。
【0080】
オーディオシステム200(例えば、サブバンド空間プロセッサー230A)は、左入力チャネルおよび右入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行うことによって、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを生成する515。例えば、サブバンド空間プロセッサー230Aは、左入力チャネル210Aおよび右入力チャネル210Bのミッド成分およびサイド成分のn個のサブバンドのゲインを調整することによって、空間強化チャネルを生成する。
【0081】
オーディオシステム200(例えば、サブバンド空間プロセッサー230Bおよび/または230C)は、左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行うことによって、左空間強化周辺チャネルおよび右空間強化周辺チャネルを生成する520。例えば、サブバンド空間プロセッサー230Bは、左サラウンドチャネル210Eおよび右サラウンドチャネル210Fのミッド成分およびサイド成分のn個のサブバンドのゲインを調整して、左空間強化周辺チャネルおよび右空間強化周辺チャネルを生成する。サブバンド空間プロセッサー230Cは、左サラウンドリアチャネル210Gおよび右サラウンドリアチャネル210Hのミッド成分およびサイド成分のn個のサブバンドのゲインを調整して、左空間強化周辺チャネルおよび右空間強化周辺チャネルを生成する。
【0082】
オーディオシステム200(例えば、バイノーラルフィルター250Aないし250D)は、左空間強化周辺チャネルおよび右空間強化周辺チャネルの各々にバイノーラルフィルターを適用する525。例えば、バイノーラルフィルター250Aは、サブバンド空間プロセッサー230Bから出力される左空間強化周辺チャネルから、頭部関連伝達関数(HRTF)を適用することによって、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。バイノーラルフィルター250Bは、サブバンド空間プロセッサー230Bから出力される空間的に強化された右チャネルから、HRTFを適用することによって、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。バイノーラルフィルター250Cは、サブバンド空間プロセッサー230Cから出力される空間的に強化された左チャネルから、HRTFを適用することによって、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。バイノーラルフィルター250Dは、サブバンド空間プロセッサー230Cから出力される空間的に強化された右チャネルから、HRTFを適用することによって、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。いくつかの態様では、バイノーラルフィルタリングがバイパスされる。
【0083】
オーディオシステム200(例えば、ハイシェルフフィルター220)は、中央入力チャネル210Cに対してハイシェルフフィルターを適用する530。いくつかの態様では、ゲインが中央入力チャネル210Cに適用される。その上さらに、ハイシェルフフィルター220は、中央入力チャネル210Cを左中央チャネルおよび右中央チャネルに分離する。
【0084】
オーディオシステム200(例えば、ディバイダー240)は、低周波数入力チャネルを左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルに分離する535。
【0085】
オーディオシステム200(例えば、左チャネルコンバイナー260A)は、サブバンド空間プロセッサー230Aからの左空間強化チャネルと、バイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dの左出力チャネルとを結合して、左結合チャネルを生成する540。例えば、左空間強化チャネルは、左出力チャネルに加えられることがある。
【0086】
オーディオシステム200(例えば、右チャネルコンバイナー260B)は、サブバンド空間プロセッサー230Aからの右空間強化チャネルと、バイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dの右出力チャネルとを結合して、右結合チャネルを生成する545。例えば、右空間強化チャネルは、右出力チャネルに加えられることがある。
【0087】
オーディオシステム200(例えば、クロストークキャンセルプロセッサー270)は、左結合チャネルおよび右結合チャネルにおいてクロストークキャンセルを行って、左クロストークキャンセルチャネルおよび右クロストークキャンセルチャネルを生成する550。
【0088】
オーディオシステム200(例えば、左チャネルコンバイナー260Cおよび右チャネルコンバイナー260D)は、クロストークキャンセルプロセッサー270からの左クロストークキャンセルチャネルを、ディバイダー240からの左低周波数チャネルおよびハイシェルフフィルター220からの左中央チャネルに結合して左出力チャネルを生成し、クロストークキャンセルプロセッサー270からの右クロストークキャンセルチャネルを、ディバイダー240からの右低周波数チャネルおよびハイシェルフフィルター220からの右中央チャネルに結合して、右出力チャネルを生成する555。その上さらに、オーディオシステム200(例えば、出力ゲイン280)は、左出力チャネルおよび右出力チャネルの各々にゲインを適用することがある。オーディオシステム200は、左出力チャネルおよび右出力チャネル290L、290Rを含む出力オーディオ信号を出力する。
【0089】
例示的なオーディオシステムおよび例示的なオーディオ処理プロセス
図6は、一態様に係るオーディオシステム600の例を例示する。オーディオシステム600は、オーディオシステム200と同様であり得るが、左入力チャネルおよび右入力チャネルが、オーディオシステム600のためのサブバンド空間処理の前に左周辺チャネルおよび右周辺チャネルに結合されることにおいて、少なくともオーディオシステム200と異なることがある。ここで、オーディオシステム200に対して示されている、左右チャネルペアのための別個のサブバンド空間プロセッサーよりもむしろ、単一のサブバンド空間プロセッサーおよび対応するサブバンド空間処理ステップが用いられることがある。
【0090】
オーディオシステム600は、入力オーディオ信号を受信する。入力オーディオ信号は、左入力チャネル610A、右入力チャネル610B、中央入力チャネル610C、低周波数入力チャネル610D、左サラウンド入力チャネル610E、右サラウンド入力チャネル610F、左サラウンドリア入力チャネル610G、および右サラウンドリア入力チャネル610Hを含むことがある。チャネル610E、610F、610G、610Hは、サラウンドスピーカーに提供されることがある周辺チャネルの例である。いくつかの態様では、オーディオシステム600は、より少ないまたはより多いチャネルを有する入力オーディオ信号を受信し、処理することがある。
【0091】
オーディオシステム600は、例えば、入力オーディオ信号におけるサブバンド空間処理およびクロストークキャンセルなどのエンハンスメントを用いて、左出力チャネル690Lおよび右出力チャネル690Rを含む出力信号を生成する。左出力チャネル690Lは、左スピーカーに提供されることがあり、右出力チャネル690Rは、右スピーカーに出力されることがある。出力オーディオ信号は、左スピーカーおよび右スピーカー(例えば、左スピーカー110Lおよび右スピーカー110R)を用いて、サラウンド音声入力オーディオ信号に関連付けられた音場の空間感覚を提供する。
【0092】
オーディオシステム600は、ゲイン615A、615B、615C、615D、615E、615F、615G、615H、ハイシェルフフィルター620、ディバイダー640、バイノーラルフィルター650A、650B、650C、650D、左チャネルコンバイナー660A、右チャネルコンバイナー660B、サブバンド空間プロセッサー630、クロストークキャンセルプロセッサー670、左チャネルコンバイナー660C、右チャネルコンバイナー660D、および出力ゲイン680を含む。
【0093】
ゲイン615Aないし615Hの各々は、それぞれ、入力チャネル610Aないし610Hを受信することがあり、入力チャネル610Aないし610Hにゲインを適用することがある。ゲイン615Aないし615Hは、入力チャネルのゲインを互いに関して調整するために異なることがある、または同一であり得る。いくつかの態様では、正のゲインが左周辺入力チャネルおよび右周辺入力チャネル610E、610F、610G、610Hに適用され、負のゲインが中央チャネル610Cに適用される。例えば、ゲイン615Aは0dBのゲインを適用することがあり、ゲイン615Bは0dBのゲインを適用することがあり、ゲイン615Cは-3dBのゲインを適用することがあり、ゲイン615Dは0dBのゲインを適用することがあり、ゲイン615Eは3dBのゲインを適用することがあり、ゲイン615Fは3dBのゲインを適用することがあり、ゲイン615Gは3dBのゲインを適用することがあり、そしてゲイン615Hは3dBのゲインを適用することがある。
【0094】
左入力チャネル610Aのゲイン615Aは、左チャネルコンバイナー660Aに結合される。右入力チャネル610Bのゲイン615Bは、右チャネルコンバイナー660Bに結合される。ゲイン615Cは、ハイシェルフフィルター620に結合される。ゲイン615Dは、ディバイダー640に結合される。周辺入力チャネルのゲイン615E、615F、610G、610Hは、各々、バイノーラルフィルター650に結合される。特に、ゲイン615Eはバイノーラルフィルター650Aに結合され、ゲイン615Fはバイノーラルフィルター650Bに結合され、ゲイン615Gはバイノーラルフィルター650Cに結合され、ゲイン615Hはバイノーラルフィルター650Dに結合される。
【0095】
バイノーラルフィルター650A、650B、650C、650Dの各々は、聴取者が入力チャネルの音に気づくべきであるターゲットソースロケーション(target source location)を記述する頭部伝達関数(HRTF:Head-Related Transfer Function)を適用する。各バイノーラルフィルターは、入力チャネルを受信し、HRTFを適用することによって左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。オーディオシステム200のバイノーラルフィルター250A、250B、250C、250Dについての議論は、バイノーラルフィルター650A、650B、650C、650Dに適用可能であり得る。例えば、バイノーラルフィルター650Aないし650Dの各々は、それぞれの入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整を適用することがある。いくつかの態様では、バイノーラルフィルター650Aないし650Dのうちの1つまたは複数は、バイパスされる、またはオーディオシステム600から省略されることがある。
【0096】
左チャネルコンバイナー660Aは、ゲイン615Aおよびバイノーラルフィルター650Aないし650Dに結合される。左チャネルコンバイナー660Aは、バイノーラルフィルター650Aないし650Dの左出力チャネルを受信し、左出力チャネルをゲイン615Aの出力に結合する。右チャネルコンバイナー660Bは、ゲイン615Bおよびバイノーラルフィルター650Aないし650Dに結合される。右チャネルコンバイナー660Bは、バイノーラルフィルター650Aないし650Dの右出力チャネルを受信し、右出力チャネルをゲイン615Bの出力に結合する。
【0097】
いくつかの態様では、バイノーラルフィルタリングは、サブバンド空間処理に続いて行われる。例えば、バイノーラルフィルターは、チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整するのに適しているサブバンド空間プロセッサー630の左出力および右出力に適用されることがある。いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、図6に示されている周辺入力チャネルに適用される。いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、中央入力チャネル610Cまたは低周波数入力チャネル610Dに適用される。いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、低周波数入力チャネル610Dを除く各入力チャネルに適用される。
【0098】
サブバンド空間プロセッサー630は、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することによって、左入力チャネルおよび右入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行って、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを出力として生成する。サブバンド空間プロセッサー630は、左チャネルコンバイナー660Aに結合されて左チャネルコンバイナー660Aから左結合チャネルを受信し、右チャネルコンバイナー660Bに結合されて右チャネルコンバイナー660Bから右結合チャネルを受信する。対応する左入力チャネルおよび右入力チャネルを各々処理するオーディオシステム200のサブバンド空間プロセッサー230A、230B、230Cとは違って、サブバンド空間プロセッサー630は、左結合チャネルおよび右結合チャネルに結合した後に、左チャネルおよび右チャネルを処理する。ゆえに、オーディオシステム600は、単一のサブバンド空間プロセッサー630のみを含むことがある。いくつかの態様において、図3に示されるサブバンド空間プロセッサー230は、サブバンド空間プロセッサー630の例である。
【0099】
クロストークキャンセルプロセッサー670は、入力オーディオ信号のミックスダウンステレオ信号を表すことがある、サブバンド空間プロセッサー630の出力においてクロストークキャンセルを行う。クロストークキャンセルプロセッサー670は、サブバンド空間プロセッサー630から左入力チャネルおよび右入力チャネルを受信し、クロストークキャンセルを行って、左および右のクロストークキャンセルされたチャネルを生成する。クロストークキャンセルプロセッサー670は、左チャネルコンバイナー260Aおよび右チャネルコンバイナー260Bに結合される。いくつかの態様において、図4に示されるクロストークキャンセルプロセッサー270は、クロストークキャンセルプロセッサー670の例である。
【0100】
ハイシェルフフィルター620は、中央入力チャネル610Cを受信し、高周波数シェルビングフィルターまたはピーキングフィルターを適用する。ハイシェルフフィルター620は、中央入力チャネル610Cに「ボイスリフト」を提供する。いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター620は、バイパスされる、またはオーディオシステム600から省略される。ハイシェルフフィルター620は、コーナー周波数より上の周波数を減衰させることがある。ハイシェルフフィルター620は、左チャネルコンバイナー660Cおよび右チャネルコンバイナー660Dに結合される。いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター620は、750Hzのコーナー周波数、+3dBの利得、および0.8Qファクターによって定義される。ハイシェルフフィルター620は、左中央チャネルおよび右中央チャネルを出力として生成する。
【0101】
ディバイダー640は、低周波数入力チャネル610Dを受信し、低周波数入力チャネル610Dを左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルに分離する。ディバイダー640は、左チャネルコンバイナー660Cおよび右チャネルコンバイナー660Dに結合され、左低周波数チャネルを左チャネルコンバイナー660Cに、右低周波数チャネルを右チャネルコンバイナー660Dに提供する。
【0102】
左チャネルコンバイナー660Cは、クロストークキャンセルプロセッサー670、ハイシェルフフィルター620、およびディバイダー640に結合される。左チャネルコンバイナー660Cは、クロストークキャンセルプロセッサー670から左クロストークチャネルを、ハイシェルフフィルター620から左中央チャネルを、ディバイダー640から左低周波数チャネルを受信し、これらを左出力チャネルに結合する。
【0103】
右チャネルコンバイナー660Dは、クロストークキャンセルプロセッサー670、ハイシェルフフィルター620、およびディバイダー640に結合される。右チャネルコンバイナー660Dは、クロストークキャンセルプロセッサー670から右クロストークチャネルを、ハイシェルフフィルター620から右中央チャネルを、ディバイダー640から右低周波数チャネルを受信し、これらを右出力チャネルに結合する。
【0104】
いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター620からの左中央チャネルおよびディバイダー640からの左低周波数チャネルは、左チャネルコンバイナー660Aによって、バイノーラルフィルター650Aないし650Dの左出力チャネルおよびゲイン615Aの出力と結合されて、左結合チャネルを生成する。ハイシェルフフィルター620からの右中央チャネルおよびディバイダー640からの右低周波数チャネルは、右チャネルコンバイナー660Bによって、バイノーラルフィルター650Aないし650Dの右出力チャネルとゲイン615Bの出力と結合されて右結合チャネルが生成される。左結合チャネルおよび右結合チャネルは、サブバンド空間プロセッサー630およびクロストークキャンセルプロセッサー670に入力される。ここで、中央および低周波数チャネルは、サブバンド空間処理およびクロストークキャンセル演算を受ける。左チャネルコンバイナー660Cおよび右チャネルコンバイナー660Dは、省略されることがある。いくつかの態様では、中央または低周波数チャネルのうちの1つは、サブバンド空間処理およびクロストークキャンセル演算を受ける。
【0105】
出力ゲイン680は、左チャネルコンバイナー660Cおよび右チャネルコンバイナー660Dに結合される。出力ゲイン680は、左チャネルコンバイナー660Cからの左出力チャネルにゲインを適用し、右チャネルコンバイナー660Dからの右出力チャネルにゲインを適用する。出力ゲイン680は、左出力チャネルおよび右出力チャネルに同一のゲインを適用することがある、または異なるゲインを適用することがある。出力ゲイン680は、オーディオシステム600の出力信号のチャネルを表す左出力チャネル690Lおよび右出力チャネル690Rを出力する。
【0106】
図7は一態様に係る図6において示されたオーディオシステム600によるオーディオ信号を強化するための方法700の例を例示する。いくつかの態様では、方法700は、異なるおよび/もしくは追加のステップを含むことがある、またはいくつかのステップは、異なる順にてあり得る。
【0107】
オーディオシステム600は、マルチチャネル入力オーディオ信号を受信する705。入力オーディオ信号は、左入力チャネル610A、右入力チャネル610B、少なくとも1つの左周辺入力チャネル、および少なくとも1つの右周辺入力チャネルを含むことがある。さらに、マルチチャネルオーディオ信号は、中央入力チャネル610Cおよび低周波数入力チャネル610Dを含むことがある。
【0108】
オーディオシステム600(例えば、ゲイン615Aないし615H)は、マルチチャネル入力オーディオ信号のチャネルにゲインを適用する710。ゲイン615Aないし615Hは、オーディオシステム600によって生成される出力信号に対する特定の入力チャネルのコントリビューションを制御するのに変わることがある。
【0109】
オーディオシステム600(例えば、バイノーラルフィルター650Aないし650D)は、左周辺チャネルおよび右周辺チャネルの各々にバイノーラルフィルターを適用する715。例えば、バイノーラルフィルター650Aは、左サラウンド入力チャネル610Eから、頭部関連伝達関数(HRTF)を適用することによって、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。バイノーラルフィルター650Bは、HRTFを適用することによって、右サラウンド入力チャネル610Fから左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。バイノーラルフィルター650Cは、左サラウンドリア入力チャネル610Gから、HRTFを適用することによって、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。バイノーラルフィルター650Dは、右サラウンドリア入力チャネル610Hから、HRTFを適用することによって、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。
【0110】
オーディオシステム600(例えば、ハイシェルフフィルター620)は、中央入力チャネル610Cに対してハイシェルフフィルターを適用する720。いくつかの態様では、ゲインは、中央入力チャネル610Cに適用される。その上さらに、ハイシェルフフィルター620は、中央入力チャネル610Cを左中央チャネルおよび右中央チャネルに分離する。
【0111】
オーディオシステム600(例えば、ディバイダー640)は、低周波数入力チャネルを左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルに分離する725。
【0112】
オーディオシステム600(例えば、左チャネルコンバイナー660A)は、左入力チャネル610Aと、バイノーラルフィルター650A、650B、650C、650Dの左出力チャネルとを結合して、左結合チャネルを生成する730。
【0113】
オーディオシステム600(例えば、右チャネルコンバイナー660B)は、右入力チャネル610Bと、バイノーラルフィルター650A、650B、650C、650Dの右出力チャネルとを結合して、右結合チャネルを生成する735。
【0114】
オーディオシステム600(例えば、サブバンド空間プロセッサー630)は、左結合チャネルおよび右結合チャネルにおいてサブバンド空間処理を行うことによって、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを生成する740。例えば、サブバンド空間プロセッサー630は、左チャネルコンバイナー660Aおよび右チャネルコンバイナー660Bから左結合チャネルおよび右結合チャネルを受信し、左結合チャネルおよび右結合チャネルのミッド成分およびサイド成分のn個のサブバンドのゲインを調整することによって空間強化チャネルを生成する。
【0115】
オーディオシステム600(例えば、クロストークキャンセルプロセッサー670)は、サブバンド空間プロセッサー630からの左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルにおいてクロストークキャンセルを行って、左クロストークキャンセルチャネルおよび右クロストークキャンセルチャネルを生成する745。
【0116】
オーディオシステム600(例えば、左チャネルコンバイナー660Cおよび右チャネルコンバイナー660D)は、クロストークキャンセルプロセッサー670からの左クロストークキャンセルチャネルを、ディバイダー640からの左低周波数チャネルおよびハイシェルフフィルター620からの左中央チャネルに結合して左出力チャネルを生成し、クロストークキャンセルプロセッサー670からの右クロストークキャンセルチャネルを、ディバイダー640からの右低周波数チャネルおよびハイシェルフフィルター620からの右中央チャネルに結合して、右出力チャネルを生成する750。その上さらに、オーディオシステム600(例えば、出力ゲイン680)は、左出力チャネルおよび右出力チャネルの各々にゲインを適用することがある。オーディオシステム600は、左出力チャネルおよび右出力チャネル690L、690Rを含む出力オーディオ信号を出力する。
【0117】
本明細書に説明されるシステムおよび処理は、組み込まれた電子回路または電子システムにおいて具体化されることがあることが特筆される。さらに、システムおよび処理は、1つまたは複数の処理システム(たとえば、デジタル信号プロセッサー)およびメモリー(たとえば、プログラムされた読出し専用メモリーまたはプログラム可能なソリッドステートメモリー)を含むコンピューティングシステム、または特定用途向け集積回路(ASIC)もしくはフィールドプログラマブル-ゲートアレイ(FPGA)回路などいくつかの他の回路において具体化されることがある。
【0118】
図8は、一態様に係るコンピューターシステム800の例を例示する。コンピューターシステム800は、オーディオシステムを実装する回路の例である。チップセット804に結合された少なくとも1つのプロセッサー802が示されている。チップセット804は、メモリコントローラハブ820および入力/出力(I/O)コントローラハブ822を含む。メモリー806およびグラフィクスアダプタ812がメモリコントローラハブ820に結合され、ディスプレイデバイス818がグラフィクスアダプタ812に結合されている。ストレージデバイス808、キーボード810、ポインティングデバイス814、およびネットワークアダプタ816がI/Oコントローラハブ822に結合されている。コンピューター800の他の態様は、異なるアーキテクチャを有する。たとえば、メモリー806は、いくつかの態様では、プロセッサー802に直接結合される。
【0119】
ストレージデバイス808は、ハードドライブ、コンパクトディスク読出し専用メモリー(CD-ROM)、DVD、またはソリッドステートメモリデバイスなど1つまたは複数の非一時的なコンピューター読取り可能記録媒体を含む。メモリー806は、プロセッサー802によって用いられる命令およびデータを保持する。例えば、メモリー806は、プロセッサー802によって実行されると、たとえば方法500または700などの本明細書に述べられる方法をプロセッサー802にさせる、または行うようにプロセッサー802を構成する命令を格納することがある。ポインティングデバイス814は、データをコンピューターシステム800に入力するために、キーボード810と組み合わせて使用される。グラフィクスアダプタ812は、画像および他の情報をディスプレイデバイス818上に表示する。いくつかの態様では、ディスプレイデバイス818は、ユーザーの入力および選択を受信することに対するタッチスクリーン性能を含む。ネットワークアダプタ816は、コンピューターシステム800をネットワークに結合する。コンピューター800のいくつかの態様は、図8に示されているものとは異なるおよび/または他の構成要素を有する。例えば、コンピューターシステム800は、ディスプレイデバイス、キーボード、および他の構成要素のないサーバーであり得る。
【0120】
コンピューター800は、本明細書に説明される機能性を提供するためのコンピュータープログラムモジュールを実行するように適合される。本明細書に用いられている、用語「モジュール」は、特定の機能性を提供するのに用いられるコンピュータープログラム命令および/または他のロジックを参照する。ゆえに、モジュールは、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアにおいて実装されることが可能である。一態様では、実行可能なコンピュータープログラム命令の形成されたプログラムモジュールは、ストレージデバイス808に格納され、メモリー806へロードされ、プロセッサー802によって実行される。
【0121】
オーディオシステムを実装することが可能である回路の他の例は、カスタムIC(ASIC:Application-Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、他のものの全体にわたって含むことがある。
【0122】
例示的なオーディオシステムおよび例示的なオーディオ処理プロセス
図9は、一態様に係るオーディオシステム900の例を例示する。オーディオシステム900は、クロストーク処理が、左出力チャネル990Lおよび右出力チャネル990Rへの結合の前に、各左右チャネルペアにおいて行われることを除いて、オーディオシステム200と同様である。クロストーク処理およびサブバンド空間処理を左右チャネルペアに別個に適用することは、「仮想」ラウドスピーカーペアごとに一意的なサブバンド空間処理およびクロストーク処理の構成に対する機会を提供する。例えば、与えられた左右チャネルペアに対するサブバンド空間処理は、信号の空間成分において、より多いまたはより少ない、帯域ごとの強調を適用するように構成され、他のチャネルペアと比較して、気づかれる増加されたまたは減少された空間「強度」に帰着することがある。同様に、与えられた左右チャネルペアに対して、クロストーク処理フィルターおよび遅延パラメーターは、そのチャネルペアに適用されるバイノーラルフィルタリングに基づいて、最大の知覚の効果に対して一意的に構成されることがある。
【0123】
オーディオシステム900は、左入力チャネル910A、右入力チャネル910B、中央入力チャネル910C、低周波数入力チャネル9210D、左サラウンド入力チャネル910E、右サラウンド入力チャネル910F、左サラウンドリア入力チャネル910G、および右サラウンドリア入力チャネル910Hを含む入力オーディオ信号を受信する。左入力チャネル910Aおよび右入力チャネル910Bは、フロントスピーカーに対して左右チャネルペアを形成する。左サラウンド入力チャネル910Eおよび右サラウンド入力チャネル910Fは、別の左右チャネルペアを形成し、左サラウンドリア入力チャネル910Gおよび右サラウンドリア入力チャネル910Hは、別の左右チャネルペアを形成する。今述べた他の左右チャネルペアは、周辺左右チャネルペアである。オーディオシステム900は、左右チャネルペアの各々においてサブバンド空間処理およびクロストークキャンセルのうちの1つまたは複数を行って、出力を左出力チャネル990Lおよび右出力チャネル990Rに結合する。
【0124】
オーディオシステム900は、ゲイン915A、915B、915C、915D、915E、915F、915G、915H、バイノーラルフィルター950A、950B、950C、950D、950E、950F、サブバンド空間プロセッサー930A、930B、930C、クロストークキャンセルプロセッサー970A、970B、970C、ハイシェルフフィルター920、ディバイダー940、左チャネルコンバイナー960A、右チャネルコンバイナー960B、および出力ゲイン980を含む。
【0125】
ゲイン915Aないし915Hの各々は、それぞれの入力チャネル910Aないし910Hを受信することがあり、入力チャネル910Aないし910Hにゲインを適用することがある。ゲイン915Aないし915Hは、入力チャネルのゲインを互いに関して調整するために異なることがある、または同一であり得る。
【0126】
バイノーラルフィルターは、左右チャネルペアのチャネルに適用される。ゲイン915Aはバイノーラルフィルター950Aに結合され、ゲイン915Bはバイノーラルフィルター950Bに結合され、ゲイン915Eはバイノーラルフィルター950Cに結合され、ゲイン915Fはバイノーラルフィルター950Dに結合され、ゲイン915Gはバイノーラルフィルター950Eに結合され、ゲイン915Hはバイノーラルフィルター950Fに結合される。バイノーラルフィルター950A、950B、950C、950D、950E、950Fの各々は、聴取者が入力チャネルの音に気づくべきであるターゲットソースロケーションを記述する頭部関連伝達関数(HRTF)を適用する。各バイノーラルフィルターは、入力チャネルを受信し、入力チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整するHRTFを適用することによって左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。角度位置は、図1に示されている聴取者140に関してX-Y「方位角」平面において定義される角度を含むことがあり、さらに、たとえば、アンビソニックス信号、または聴取者140に関してX-Y平面より上または下にレンダリングされることを意図した信号を含むチャネルベースのフォーマットなど、Z軸において定義される角度を含むことがある。
【0127】
例えば、バイノーラルフィルター950Aは、左入力チャネル910Aが左スピーカー110Lの前方軸に関して-30°から-45°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用することがある。バイノーラルフィルター950Bは、右入力チャネル910Bが右スピーカー110Rの前方軸に関して30°から45°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用することがある。バイノーラルフィルター950Cは、左サラウンド入力チャネル910Eが左サラウンドスピーカー120Lの前方軸に関して-90°から-110°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用することがある。バイノーラルフィルター950Dは、右サラウンド入力チャネル910Fが右サラウンドスピーカー120Rの前方軸に関して90°から110°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用することがある。バイノーラルフィルター950Eは、左サラウンドリア入力チャネル910Gが左サラウンドリアスピーカー130Lの前方軸に関して-135°から-150°までに関連付けられることに基づいて、フィルターを適用することがある。バイノーラルフィルター950Fは、右サラウンドリア入力チャネル910Hが右サラウンドリアスピーカー130Rの前方軸に関して135°から150°までの間の角度に関連付けられることに基づいて、フィルターを適用することがある。バイノーラルフィルター950Aないし950Fの各々は、左チャネルおよび右チャネルを生成する。
【0128】
いくつかの態様では、左入力チャネルおよび右入力チャネル910Aおよび910Bのバイノーラル処理はバイパスされることがある。ここで、バイノーラルフィルター950A、950Bは、オーディオシステム900から省略されることがある。いくつかの態様では、バイノーラル処理は、インターチャネルのスペクトルの均一性(uniformity)を保存するために完全にバイパスされることがある。バイノーラルフィルター950A、950B、950C、950D、950E、または950Fのうち1つまたは複数は、オーディオシステム900から省略されることがある。
【0129】
いくつかの態様では、入力オーディオ信号は、音場のスピーカー独立(speaker-independent)の表現を定義するアンビソニックスオーディオ信号である。アンビソニックスオーディオ信号は、サラウンド音声システムに対するマルチチャネルオーディオ信号にデコードされることがある。チャネルは、聴取者より上または下にあるロケーションを含む、種々のロケーションにおけるスピーカーのロケーションに関連付けられることがある。バイノーラルフィルターは、アンビソニックスオーディオ信号の各デコードされた入力チャネルに適用して、デコードされた入力オーディオチャネルの関連位置に対して調整することがある。
【0130】
サブバンド空間プロセッサー930の各々は、異なる左右チャネルペアにサブバンド空間処理を適用する。サブバンド空間プロセッサー930ーAは、バイノーラルフィルター950Aおよび950Bの各々に結合される。サブバンド空間プロセッサー930Aは、バイノーラルフィルター950Aおよび950Bの各々から左チャネルを受信し、これらの左チャネルを、結合された左チャネルに結合し、結合された左チャネルにサブバンド空間処理を適用する。サブバンド空間プロセッサー930Aは、バイノーラルフィルター950Aおよび950Bの各々から右チャネルを受信し、これらの右チャネルを、結合された右チャネルに結合し、結合された右入力チャネルにサブバンド空間処理を適用する。サブバンド空間プロセッサー930Aは、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することによって、左入力チャネルおよび右入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行って、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを生成する。
【0131】
サブバンド空間プロセッサー930Bは、バイノーラルフィルター950Cおよび950Dの各々に結合される。サブバンド空間プロセッサー930Bは、バイノーラルフィルター950Cおよび950Dの各々から左チャネルを受信し、これらの左チャネルを、結合された左チャネルに結合し、結合された左チャネルにおいてサブバンド空間処理を適用する。サブバンド空間プロセッサー930Bは、バイノーラルフィルター950Cおよび950Dの各々から右チャネルを受信し、これらの右チャネルを、結合された右チャネルに結合し、結合された右チャネルにおいてサブバンド空間処理を適用する。サブバンド空間プロセッサー930Bは、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することによって、左入力チャネルおよび右入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行って、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを生成する。
【0132】
サブバンド空間プロセッサー930Cは、バイノーラルフィルター950Eおよび950Fの各々に結合される。サブバンド空間プロセッサー930Cは、バイノーラルフィルター950Eおよび950Fの各々から左チャネルを受信し、これらの左チャネルを、結合された左チャネルに結合し、結合された左チャネルにおいてサブバンド空間処理を適用する。サブバンド空間プロセッサー930Cは、バイノーラルフィルター950Eおよび950Fの各々から右チャネルを受信し、これらの右チャネルを、結合された右チャネルに結合し、結合された右チャネルにおいてサブバンド空間処理を適用する。サブバンド空間プロセッサー930Cは、左入力チャネルおよび右入力チャネルのミッドサブバンド成分およびサイドサブバンド成分をゲイン調整することによって、左入力チャネルおよび右入力チャネルにおいてサブバンド空間処理を行って、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを生成する。
【0133】
クロストークキャンセルプロセッサー970の各々は、異なる左右チャネルペアにクロストークキャンセルを適用する。クロストークキャンセルプロセッサー970Aは、サブバンド空間プロセッサー930Aに結合され、クロストークキャンセルプロセッサー970Bは、サブバンド空間プロセッサー930Bに結合され、クロストークキャンセルプロセッサー970Cは、サブバンド空間プロセッサー930Cに結合される。
【0134】
クロストークキャンセルプロセッサー970Aは、サブバンド空間プロセッサー930Aから左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを受信し、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルにクロストークキャンセル処理を適用して、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。今述べた左出力チャネルおよび右出力チャネルは、サブバンド空間処理およびクロストークキャンセルの後に、左入力チャネルおよび右入力チャネル910Aおよび910Bによって形成される左右チャネルペアに対応する。
【0135】
クロストークキャンセルプロセッサー970Bは、サブバンド空間プロセッサー930Bから左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを受信し、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルにクロストークキャンセル処理を適用して、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。今述べた左出力チャネルおよび右出力チャネルは、サブバンド空間処理およびクロストークキャンセルの後に、左サラウンド入力チャネルおよび右サラウンド入力チャネル910Eおよび910Fによって形成される左右チャネルペアに対応する。
【0136】
クロストークキャンセルプロセッサー970Cは、サブバンド空間プロセッサー930Cから左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルを受信し、左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルにクロストークキャンセル処理を適用して、左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する。今述べた左出力チャネルおよび右出力チャネルは、サブバンド空間処理およびクロストークキャンセルの後に、左サラウンドリア入力チャネルおよび右サラウンドリア入力チャネル910Gおよび910Hによって形成される左右チャネルペアに対応する。
【0137】
ハイシェルフフィルター920は、ゲイン915Cに結合される。ハイシェルフフィルター920は、中央入力チャネル910Cを受信し、高周波数シェルビングフィルターまたはピーキングフィルターを適用する。ハイシェルフフィルター920は、コーナー周波数より上の周波数を減衰させるまたは増幅させることがある。いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター920は、750Hzのコーナー周波数、+3dBの利得、および0.8Qファクターによって定義される。ハイシェルフフィルター920は、たとえば中央入力チャネルを2つの別個の左中央チャネルおよび右中央チャネルに分離することによってなど、左中央チャネルおよび右中央チャネルを出力として生成する。いくつかの態様では、ハイシェルフフィルター920は、バイパスされる、またはオーディオシステム900から省略される。
【0138】
ディバイダー940は、ゲイン915Dに結合される。ディバイダー940は、低周波数入力チャネル910Dを受信し、低周波数入力チャネル910Dを左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルに分離する。
【0139】
左チャネルコンバイナー960Aおよび右チャネルコンバイナー960Bは、各々、クロストークキャンセルプロセッサー970A、クロストークキャンセルプロセッサー970B、クロストークキャンセルプロセッサー970C、ハイシェルフフィルター920、およびディバイダー940に結合される。左チャネルコンバイナー960Aは、クロストークキャンセルプロセッサー970A、クロストークキャンセルプロセッサー970B、クロストークキャンセルプロセッサー970C、ハイシェルフフィルター920、およびディバイダー940の各々から出力される左チャネルを受信して、これらの左チャネルを左出力チャネルに結合する。右チャネルコンバイナー960Bは、クロストークキャンセルプロセッサー970A、クロストークキャンセルプロセッサー970B、クロストークキャンセルプロセッサー970C、ハイシェルフフィルター920、およびディバイダー940の各々から出力される右チャネルを受信して、これらの右チャネルを右出力チャネルに結合する。
【0140】
出力ゲイン980は、左チャネルコンバイナー960A、960Bに結合される。出力ゲイン980は、左チャネルコンバイナー960Aからの左出力チャネルにゲインを適用し、右チャネルコンバイナー960Bからの右出力チャネルにゲインを適用する。出力ゲイン980は、左出力チャネルおよび右出力チャネルに同一のゲインを適用することがある、または異なるゲインを適用することがある。出力ゲイン980は、オーディオシステム900の出力信号のチャネルを表す左出力チャネル990Lおよび右出力チャネル990Rを出力する。
【0141】
図10は、一態様に係るオーディオシステム1000の例を例示する。オーディオシステム1000は、オーディオシステム900と同様であるが、バイノーラルフィルターが、サブバンド空間処理の後に、および、左右チャネルペアのうちの1つまたは複数のクロストークキャンセル処理の前に、適用されることにおいて、少なくともオーディオシステム900と異なる。
【0142】
オーディオシステム1000は、ゲイン915A、915B、915C、915D、915E、915F、915G、915H、サブバンド空間プロセッサー930A、930B、930C、クロストークキャンセルプロセッサー970A、970B、970C、ハイシェルフフィルター920、ディバイダー940、左チャネルコンバイナー960A、右チャネルコンバイナー960B、および出力ゲイン980を含む。さらに、オーディオシステム1000は、バイノーラルフィルター1050A、1050B、1050C、1050D、1050E、1050Fを含む。
【0143】
バイノーラルフィルター1050A、1050Bは、サブバンド空間プロセッサー930Aおよびクロストークキャンセルプロセッサー970Aに結合される。バイノーラルフィルター1050A、1050Bは、サブバンド空間処理に続いて、および、クロストークキャンセル処理の前に、左入力チャネル910Aおよび右入力チャネル910Bを含む左右チャネルペアにバイノーラルフィルタリングを適用する。いくつかの態様では、バイノーラルフィルター1050A、1050Bは、オーディオシステム1000からバイパスされるまたは除外されることがある。
【0144】
オーディオシステム100は、周辺左右チャネルペアの各々に、同様のサブバンド空間処理、バイノーラルフィルタリング、およびクロストークキャンセル処理を適用する。左サラウンド入力チャネル910Eおよび右サラウンド入力チャネル910Fを含む左右チャネルペアを処理するために、バイノーラルフィルター1050Cおよび1050Dは、サブバンド空間プロセッサー930Bおよびクロストークキャンセルプロセッサー970Bに結合される。左サラウンドリア入力チャネル910Gおよび右サラウンドリア入力チャネル910Hを含む左右チャネルペアを処理するために、バイノーラルフィルター1050Eおよび1050Fは、サブバンド空間プロセッサー930Cおよびクロストークキャンセルプロセッサー970Cに結合される。
【0145】
いくつかの態様では、クロストークキャンセルプロセッサー970A、970B、970Cは、各々、クロストークシミュレーションプロセッサーであり得る。クロストークキャンセルチャネルを生成することよりもむしろ、クロストークシミュレーションプロセッサーは、追加のクロストーク効果を有するクロストークシミュレートチャネル(crosstalk simulated channel)を生成する。
【0146】
図11は、一態様に係る図9において示されたオーディオシステム900または図10において示されたオーディオシステム1000によるオーディオ信号を強化するための方法1100の例を例示する。いくつかの態様では、方法1100は、異なるおよび/もしくは追加のステップを含むことがある、またはいくつかのステップは、異なる順にてあり得る。方法1100は、オーディオシステム900を参照して、より詳細に以下に述べられる。
【0147】
オーディオシステム900は、左右チャネルペアを含むマルチチャネル入力オーディオ信号を受信する1105。マルチチャネルオーディオ信号は、複数の左右チャネルペアを含むサラウンド音声オーディオ信号であり得る。例えば、左入力チャネル、右入力チャネルは、第1の左右チャネルペアを形成することがあり、少なくとも1つの左周辺入力チャネルおよび少なくとも1つの右周辺入力チャネルは、別の左右チャネルペアを形成することがある。マルチチャネル入力信号は、周辺入力チャネルに対して複数の左右チャネルペアを含むことがある。例えば、左サラウンド入力チャネル910E、910Fはサラウンドペアを形成し、左サラウンドリア入力チャネル910Gおよび右サラウンドリア入力チャネル910Hはリアサラウンドペアを形成する。さらに、マルチチャネルオーディオ信号は、中央入力チャネルおよび低周波数入力チャネルを含むことがある。
【0148】
オーディオシステム900(例えば、ゲイン915Aないし915H)は、マルチチャネル入力オーディオ信号のチャネルにゲインを適用する1110。ゲイン915Aないし915Hは、オーディオシステム900によって生成される出力信号に対する特定の入力チャネルのコントリビューションを制御するのに変わることがある。
【0149】
オーディオシステム900(例えば、バイノーラルフィルター950Aないし950F)は、マルチチャネル入力オーディオ信号の左右チャネルペアの各々にバイノーラルフィルターを適用する1115。各チャネルに対して、バイノーラルフィルターは、チャネルに関連付けられた角度位置に対して調整する。いくつかの態様では、バイノーラルフィルターは、周辺の左右チャネルペアに適用されるが、左入力チャネルおよび右入力チャネルを含む左右チャネルペアに適用されない。
【0150】
オーディオシステム900(例えば、サブバンド空間プロセッサー930A、930B、930C)は、各左右チャネルペアに対して、サブバンド空間処理を適用して、空間強化チャネルを生成する1120。例えば、サブバンド空間プロセッサー930Aは、左入力チャネル910Aおよび右入力チャネル910Bを含む左右チャネルペアにおいてサブバンド空間処理を適用して、空間強化チャネルを生成する。サブバンド空間処理は、左入力チャネル910Aおよび右入力チャネル910Bのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含む。
【0151】
さらに、サブバンド空間処理は、周辺チャネルに対して、左右チャネルペアのうちの少なくとも1つに適用される。例えば、サブバンド空間プロセッサー930Bは、左サラウンド入力チャネル910Eおよび右サラウンド入力チャネル910Fを含む左右チャネルペアにおいてサブバンド空間処理を適用して、空間強化チャネルを生成する。サブバンド空間処理は、左サラウンド入力チャネル910Eおよび右サラウンド入力チャネル910Fのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含む。サブバンド空間プロセッサー930Cは、左サラウンドリア入力チャネル910Gおよび右サラウンドリア入力チャネル910Hを含む左右チャネルペアにおいてサブバンド空間処理を適用して、空間強化チャネルを作成する。サブバンド空間処理は、左サラウンドリア入力チャネル910Gおよび右サラウンドリア入力チャネル910Hのミッド成分およびサイド成分をゲイン調整することを含む。上記のように、空間強化チャネルは、左右チャネルペアの各々に対して作成される。
【0152】
いくつかの態様では、各左右チャネルペアに対するサブバンド空間処理は、オーディオシステム1000に対して図10に示されている、バイノーラルフィルタリングの前に行われる。ここで、サブバンド空間プロセッサー930A、930B、930Cから出力される左空間強化チャネルおよび右空間強化チャネルの各々は、バイノーラルフィルターに入力される。
【0153】
オーディオシステム900(例えば、クロストークキャンセルプロセッサー970A、970B、970C)は、各左右チャネルペアに対して、クロストーク処理を適用して、クロストーク処理チャネルを生成する1125。クロストーク処理は、クロストークキャンセルまたはクロストークシミュレーションを含むことがある。クロストークキャンセルの場合、クロストーク処理チャネルは、クロストークキャンセルチャネルを含む。クロストークシミュレーションの場合、クロストーク処理チャネルは、クロストークシミュレートチャネルを含む。クロストークキャンセルは、ラウドスピーカー出力に対して用いられることがあり、クロストークシミュレーションは、ヘッドフォン出力に対して用いられることがある。各左右チャネルペアに対して、クロストーク処理は、空間強化チャネルの少なくとも1つにフィルター、時間遅延、およびゲインを適用して、クロストーク処理チャネルを生成することを含むことがある。いくつかの態様では、クロストーク処理は、各左右チャネルペアにおけるサブバンド空間処理の前に、各左右チャネルペアにおいて行われることがある。
【0154】
オーディオシステム900(例えば、左チャネルコンバイナー960Aおよび右チャネルコンバイナー960B)は、クロストーク処理チャネルから左出力チャネルおよび右出力チャネルを生成する1130。例えば、左チャネルコンバイナー960Aは、クロストークキャンセルプロセッサー970A、970B、970Cの各々からのクロストーク処理チャネルの左チャネルを結合して、左出力チャネルを生成し、右チャネルコンバイナー960Bは、クロストークキャンセルプロセッサー970A、970B、970Cの各々からのクロストーク処理チャネルの右チャネルを結合して、右出力チャネルを生成する。
【0155】
さらに、左チャネルコンバイナー960Aは、左チャネルを左低周波数チャネルおよび左中央チャネルに結合して、左出力チャネルを生成することがある。さらに、右チャネルコンバイナー960Bは、右チャネルを右低周波数チャネルおよび右中央チャネルに結合して、右出力チャネルを生成することがある。オーディオシステム900(例えば、ハイシェルフフィルター920)は、マルチチャネル入力オーディオ信号の中央入力チャネルにハイシェルフフィルターを適用して、左中央チャネルおよび右中央チャネルを生成する。オーディオシステム900(例えば、ディバイダー940)は、低周波数入力チャネルを、マルチチャネル入力オーディオ信号の中央入力チャネルに分離して、左低周波数チャネルおよび右低周波数チャネルを生成する。
【0156】
図12は、一態様に係るクロストークシミュレーションプロセッサー1200の例を例示する。クロストークシミュレーションプロセッサー1200は、クロストーク処理がクロストークシミュレーションであるとき、クロストークキャンセルプロセッサーの代わりに、オーディオシステムにおいて用いられることがある。クロストークシミュレーションプロセッサー1200は、ヘッドマウントスピーカーにおいて、ラウドスピーカーのようなリスニング体験を提供するのに用いられることがある。
【0157】
クロストークシミュレーションプロセッサー1200は、左ヘッドシャドウローパスフィルター(head shadow low-pass filter)1202、左ヘッドシャドウハイパスフィルター(head shadow high-pass filter)1204、左クロストークディレイ1210、および左ヘッドシャドウゲイン(head shadow gain)1224を含んで、左チャネル(例えば、左空間強化チャネルEL)を処理する。さらに、クロストークシミュレーションプロセッサー1200は、右ヘッドシャドウローパスフィルター1206、右ヘッドシャドウハイパスフィルター1208、右クロストークディレイ1212、および右ヘッドシャドウゲイン(head shadow gain)1226を含んで、右チャネル(例えば、右空間強化チャネルER)を処理する。
【0158】
左ヘッドシャドウローパスフィルター1202および左ヘッドシャドウハイパスフィルター1204は、各々、聴取者の頭部を通過した後の信号の周波数特性を形作る変調を適用する。左クロストークディレイ1210は、イプシラテラル音成分に関してコントララテラル音成分によってトラバースされるトランスオーラル距離(trans-aural distance)を表す時間遅延を適用する。周波数特性は、聴取者の頭部によって音波変調の周波数依存特性を決定する実証実験に基づいて、生成されることが可能である。いくつかの態様では、左クロストークディレイ1210は、左ヘッドシャドウローパスフィルター1202および左ヘッドシャドウハイパスフィルター1204の前に適用されることがある。左ヘッドシャドウゲイン1224は、左クロストークシミュレーションチャネルOLを生成するゲインを適用する。
【0159】
右ヘッドシャドウローパスフィルター1206および右ヘッドシャドウハイパスフィルター1208は、各々、聴取者の頭部を通過した後の信号の周波数特性を形作る変調を適用する。右クロストークディレイ1212は、イプシラテラル音成分に関してコントララテラル音成分によってトラバースされるトランスオーラル距離(trans-aural distance)を表す時間遅延を適用する。周波数特性は、聴取者の頭部によって音波変調の周波数依存特性を決定する実証実験に基づいて、生成されることが可能である。いくつかの態様では、右クロストークディレイ1212は、右ヘッドシャドウローパスフィルター1206および右ヘッドシャドウハイパスフィルター1208の前に適用されることがある。右ヘッドシャドウゲイン1226は、右クロストークシミュレーションチャネルOLを生成するゲインを適用する。
【0160】
左チャネルおよび右チャネルの各々に対するヘッドシャドウローパスフィルター、ヘッドシャドウハイパスフィルター、クロストークディレイ、およびヘッドシャドウゲインの適用は、異なる順にて行われることがあり、これらの段階のうちの1つまたは複数は、スキップされることがある。左チャネルおよび右チャネルにおけるローパスフィルターおよびハイパスフィルターの使用は、聴取者の頭を通る周波数特性のより正確なモデルに帰着する。
【0161】
追加の考慮事項
開示された構成は、いくつかの利益および/または利点を含むことがある。例えば、マルチチャネル入力信号は、音場の空間感覚を保存するまたは強化するのと同時に、ステレオラウドスピーカーに出力されることが可能である。高音質なリスニング体験は、高価なマルチスピーカーサウンドシステムを必要とすることなく、たとえば、モバイルデバイス、サウンドバー、またはスマートスピーカーにおいてなど、達成されることが可能である。
本開示を読めば、当業者なら、なお追加の代替実施形態、本明細書で開示されている原理を理解するであろう。ゆえに、特定の態様および用途が例示され説明されたのと同時に、開示されている態様は、本明細書に開示された正確な構造および構成要素に限定されないことが理解されるべきである。当業者には明らかであろう種々の変更、変化、および異形は、本明細書に説明された範囲から逸脱することなく本明細書に開示される方法および装置の配置、動作、および細部において作られることがある。
【0162】
本明細書に説明されるステップ、動作、または処理のうちのいずれかは、1つまたは複数のハードウェアモジュールまたはソフトウェアモジュールにより、単独にてまたは他のデバイスとの組み合わせにて行われるまたは実装されることがある。一態様では、ソフトウェアモジュールは、説明されたステップ、動作、もしくは処理のいずれかまたはすべてを行うためにコンピュータープロセッサーによって実行されることが可能であるコンピュータープログラムコードを含むコンピューター読取り可能媒体(例えば、非一時的なコンピューター読取り可能媒体)を含むコンピュータープログラム製品により実装される。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12