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特許7531590無線ローカルエリアネットワーク接続としてのセルラー接続の仮想化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】無線ローカルエリアネットワーク接続としてのセルラー接続の仮想化
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/12 20180101AFI20240802BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20240802BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20240802BHJP
   H04W 48/16 20090101ALI20240802BHJP
   H04W 48/18 20090101ALI20240802BHJP
   H04W 28/084 20230101ALI20240802BHJP
【FI】
H04W76/12
H04W84/12
H04W88/06
H04W48/16 132
H04W48/18 113
H04W28/084
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022533205
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-09
(86)【国際出願番号】 US2020064034
(87)【国際公開番号】W WO2021119141
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】62/947,439
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/866,495
(32)【優先日】2020-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502208397
【氏名又は名称】グーグル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Google LLC
【住所又は居所原語表記】1600 Amphitheatre Parkway 94043 Mountain View, CA U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チンナカンウ,ジャヤチャンドラン
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラン,アムルス
(72)【発明者】
【氏名】ナヤック,シバンク
(72)【発明者】
【氏名】ドダプカル,チンメイ
【審査官】吉村 真治▲郎▼
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0306898(US,A1)
【文献】特開2008-219733(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0098487(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
ユーザ機器を含み、前記ユーザ機器は、第1のサブスクライバ識別に基づいてモバイルネットワークオペレータで確立されたセルラー接続を、第2のサブスクライバ識別に関連付けられているとともに前記ユーザ機器において実行される1つ以上のプロセスによる使用のための仮想の無線ローカルエリアネットワーク(wireless local area network:WLAN)アクセスポイントとして仮想化するように構成され、
前記ユーザ機器は、
前記セルラー接続のためのモバイルホットスポットを確立し、
前記1つ以上のプロセスによる前記仮想のWLANアクセスポイントとしての使用のために前記モバイルホットスポットのためのWLANインターフェイスを設けることにより、
前記セルラー接続を仮想化するように構成され、
前記ユーザ機器はさらに、
前記セルラー接続のための1つ以上のセルラー信号品質パラメータを決定し、
前記1つ以上のセルラー信号品質パラメータに基づいて1つ以上の等価なWLAN信号品質パラメータを決定し、
前記モバイルホットスポットを、前記決定された1つ以上の等価なWLAN信号品質パラメータを有する仮想のWLANアクセスポイントとして表わすように構成されるシステム。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセスは、ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル(Voice-over-Internet Protocol:VoIP)プロセス、メッセージングプロセス、およびセッション開始プロトコル(Session Initiation Protocol:SIP)プロセス、のうち少なくとも1つを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記モバイルネットワークオペレータをさらに含む、請求項1または2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
セルラー電話、タブレットコンピュータ、および他の無線通信デバイスは、複数の加入者(サブスクライバ)情報モジュール(subscriber information module:SIM)のためのハードウェアおよびソフトウェアサポートなどを通じて複数のモバイルサブスクライバ接続をサポートするように構成されていることが多い。例示として、1つのSIMを用いて、1つのモバイルネットワークオペレータとの音声サービス用のサブスクライバセルラー接続を確立し得るとともに、別のSIMを用いて、データサービス用の異なるモバイルネットワークオペレータとの別個のサブスクライバセルラー接続を確立する。別の例として、ユーザの一次的なまたはデフォルトのモバイルサブスクリプションのために1つのSIMを使用してもよく、一方で、無線通信デバイスが一次モバイルネットワークオペレータによって提供されるネットワークと接続できなくなった場合、すなわち、無線通信デバイスが一次モバイルネットワークオペレータの範囲外で「ローミング中」である場合、別のSIMを用いて代替のサブスクライバ接続を提供する。
【発明の概要】
【0002】
実施形態の概要
一局面に従うと、システムは、ユーザ機器を含み、当該ユーザ機器は、第1のサブスクライバ識別に基づいてモバイルネットワークオペレータで確立されたセルラー接続を、第2のサブスクライバ識別に関連付けられているとともに当該ユーザ機器において実行される1つ以上のプロセスによる使用のための仮想の無線ローカルエリアネットワーク(wireless local area network:WLAN)アクセスポイントとして仮想化するように構成される。いくつかの実施形態では、当該ユーザ機器は、当該セルラー接続のためのモバイルホットスポットを確立するとともに当該1つ以上のプロセスによる使用のために当該モバイルホットスポットのためのWLANインターフェイスを設けることにより、当該セルラー接続を仮想化するように構成される。当該ユーザ機器はさらに、当該セルラー接続のための1つ以上のセルラー信号品質パラメータを決定し、当該1つ以上のセルラー信号品質パラメータに基づいて1つ以上の等価なWLAN信号品質パラメータを決定し、当該モバイルホットスポットを、当該決定された1つ以上の等価なWLAN信号品質パラメータを有する仮想のWLANアクセスポイントとして表わすように構成され得る。当該1つ以上のプロセスは、たとえば、ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル(Voice-over-Internet Protocol:VoIP)プロセス、メッセージングプロセス、およびセッション開始プロトコル(Session Initiation Protocol:SIP)プロセスのうち少なくとも1つを含み得る。
【0003】
別の局面に従うと、方法は、ユーザ機器の第1のサブスクライバ識別によって表わされる第1のサブスクリプションに基づいて、当該ユーザ機器と第1のモバイルネットワークオペレータとの間に第1のセルラー接続を確立するステップと、当該第1のセルラー接続を、当該ユーザ機器の第2のサブスクライバ識別によって表わされる第2のサブスクリプションのために当該ユーザ機器において実行される1つ以上のプロセスによる使用のためにWLAN接続として仮想化するステップとを含む。いくつかの実施形態では、当該第1のセルラー接続を当該WLAN接続として仮想化するステップは、当該第1のセルラー接続のために当該ユーザ機器においてモバイルホットスポットを確立するステップと、当該第2のサブスクリプションに関連付けて当該ユーザ機器において実行されるネットワークプロトコルスタックによる使用のために当該モバイルホットスポットのためのWLANインターフェイスを設けるステップとを含み、当該1つ以上のプロセスでは、当該WLANインターフェイスおよび当該第1のセルラー接続を含むデータ経路を使用して第2のモバイルネットワークオペレータと通信する。当該方法はさらに、当該1つ以上のプロセスのために、当該WLANインターフェイスおよび当該第1のセルラー接続を介して当該第2のモバイルネットワークオペレータとのセキュアなトンネルを確立するステップを含み得る。いくつかの実現例では、当該WLANインターフェイスを設けるステップは、当該ユーザ機器において実行するオペレーティングシステムのための1つ以上のアプリケーションプログラミングインターフェイス(application programming interface:API)のセットとして当該WLANインターフェイスを設けるステップを含む。
【0004】
当該方法はまた、当該ユーザ機器において、当該第1のセルラー接続の少なくとも1つのセルラー信号品質パラメータを監視するステップと、当該ユーザ機器において、当該少なくとも1つのセルラー信号品質パラメータに基づいて、当該第1のセルラー接続を表わす仮想のWLANアクセスポイントのための少なくとも1つの等価なWLAN信号品質パラメータを決定するステップとを含み得る。当該方法はさらに、当該ユーザ機器のWLANモデムを監視して、当該ユーザ機器に接続するために利用可能な1つ以上の第2のWLANアクセスポイントを識別するステップと、当該識別された1つ以上の第2のWLANアクセスポイントの各々のうちの少なくとも1つのWLAN信号品質パラメータを決定するステップと、当該1つ以上の第2のWLANアクセスポイントの当該WLAN信号品質パラメータおよび当該仮想のWLANアクセスポイントのための当該少なくとも1つの等価なWLAN信号品質パラメータに基づいて、当該ユーザ機器のためのWLAN接続を確立するために、当該1つ以上の第2のWLANアクセスポイントまたは当該仮想のWLANアクセスポイントのうちの1つを選択するステップと、を含み得る。当該第1のセルラー接続を当該WLAN接続として仮想化するステップは、当該WLAN接続を確立するために当該仮想のWLANアクセスポイントを選択するステップに応答して、当該第1のセルラー接続を仮想化するステップを含む。当該方法はまた、当該少なくとも1つの等価なWLAN信号品質パラメータのグラフィカル表現を当該ユーザ機器の表示画面に表示するステップを含み得る。
【0005】
いくつかの実現例では、当該第1のセルラー接続を当該WLAN接続として仮想化するステップは、当該ユーザ機器が、当該第2のサブスクリプションを使用して第2のモバイルネットワークオペレータとの第2のセルラー接続を確立することができないこと、または、当該1つ以上のプロセスによる当該第2のセルラー接続の使用が、電力消費の理由で実現不可能であること、のうち少なくとも1つに応答して、当該第1のセルラー接続を当該WLAN接続として仮想化するステップを含む。さらに、いくつかの実現例では、当該第1のセルラー接続は、ロングタームエボリューション(Long Term Evolution:LTE)無線アクセス技術(radio access technology:RAT)、第5世代新無線(Fifth Generation New Radio:5G NR)無線アクセス技術、グローバルシステムフォーモビリティ(Global System for Mobility:GSM(登録商標))無線アクセス技術、および、ユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーションズ・システム(Universal Mobile Telecommunications System:UMTS)無線アクセス技術、のうち少なくとも1つを使用して確立されたセルラー接続であり、当該WLAN接続は、WiFi無線アクセス技術、Bluetooth(登録商標)無線アクセス技術、および超広帯域無線アクセス技術、のうち少なくとも1つを使用して確立される無線接続である。
【0006】
さらに別の局面に従うと、ユーザ機器は、少なくとも1つのモバイルネットワークオペレータと無線通信するように構成された無線周波数(radio frequency:RF)モデムと、少なくとも1つのWLANアクセスポイントと無線通信するように構成されたWLANモデムと、当該RFモデムおよび当該WLANモデムに連結されるプロセッサとを含む。当該ユーザ機器はさらに、実行可能命令を格納する少なくとも1つのメモリを含み、当該実行可能命令は、当該プロセッサおよび当該RFモデムのうち少なくとも1つを操作して、第1のサブスクライバ識別によって表わされる第1のサブスクリプションに基づいて、第1のモバイルネットワークオペレータとの第1のセルラー接続を確立し、当該第1のセルラー接続を、第2のサブスクライバ識別によって表わされる第2のサブスクリプションのために当該プロセッサによって実行される1つ以上のプロセスによる使用のためにWLAN接続として仮想化するように構成される。いくつかの実現例では、当該プロセッサまたは当該RFモデムのうち少なくとも1つを操作して、当該第1のセルラー接続を当該WLAN接続として仮想化するための当該実行可能命令は、当該プロセッサまたは当該RFモデムのうち少なくとも1つを操作して、当該第1のセルラー接続のために当該ユーザ機器においてモバイルホットスポットを確立し、当該第2のサブスクリプションに関連付けて当該ユーザ機器において実行されるネットワークプロトコルスタックによる使用のために、当該モバイルホットスポットのためのWLANインターフェイスを設けるための実行可能命令を含み、当該1つ以上のプロセスは、当該WLANインターフェイスおよび当該第1のセルラー接続を含むデータ経路を使用して第2のモバイルネットワークオペレータと通信するためのものである。いくつかの実施形態では、当該実行可能命令はさらに、当該プロセッサまたは当該RFモデムのうち少なくとも1つを操作して、当該1つ以上のプロセスのために、当該WLANインターフェイスおよび当該第1のセルラー接続を介して当該第2のモバイルネットワークオペレータとのセキュアなトンネルを確立するための実行可能命令を含む。いくつかの実施形態では、当該第1のセルラー接続は、当該第2のサブスクリプションを使用する第2のモバイルネットワークオペレータとの第2のセルラー接続が利用不可能であるかまたは使用するのに非実用的であることに応答して、当該WLAN接続として仮想化される。さらに、いくつかの実施形態では、当該ユーザ機器はさらに、当該第1のサブスクライバ識別の表現を格納する第1の集積回路(integrated circuit:IC)カードを受取るように構成された第1のICカードインターフェイスと、当該第2のサブスクライバ識別の表現を格納する第2のICカードを受取るように構成された第2のICカードインターフェイスとを含む。
【0007】
いくつかの実現例では、当該実行可能命令はさらに、当該プロセッサまたは当該RFモデムのうち少なくとも1つを操作して、当該第1のセルラー接続の少なくとも1つのセルラー信号品質パラメータを監視し、当該少なくとも1つのセルラー信号品質パラメータに基づいて、当該第1のセルラー接続を表わす仮想のWLANアクセスポイントのための少なくとも1つの等価なWLAN信号品質パラメータを決定する、ための実行可能命令を含む。当該実行可能命令はさらに、当該プロセッサまたは当該RFモデムのうち少なくとも1つを操作して、当該ユーザ機器のWLANモデムを監視して、当該ユーザ機器に接続するために利用可能な1つ以上の第2のWLANアクセスポイントを識別し、当該識別された1つ以上の第2のWLANアクセスポイントの各々のうちの少なくとも1つのWLAN信号品質パラメータを決定し、当該1つ以上の第2のWLANアクセスポイントの当該WLAN信号品質パラメータおよび当該仮想のWLANアクセスポイントのための当該少なくとも1つの等価なWLAN信号品質パラメータに基づいて、当該ユーザ機器のためのWLAN接続を確立するために、当該1つ以上の第2のWLANアクセスポイントまたは当該仮想のWLANアクセスポイントのうちの1つを選択する、ための実行可能命令を含み得る。当該第1のセルラー接続は、当該WLAN接続を確立するための当該仮想のWLANアクセスポイントの選択に応答して当該WLAN接続として仮想化される。したがって、当該ユーザ機器は、当該少なくとも1つの等価なWLAN信号品質パラメータのグラフィカル表現を表示するように構成された表示画面を含み得る。
【0008】
図面の簡単な説明
添付の図面を参照することにより、本開示がより良く理解されるとともにその多数の特徴および利点が当業者にとって明らかになる。異なる図面において同じ参照符号を用いる場合には同様または同一の要素を示すこととする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】いくつかの実施形態に従った、ユーザ機器(user equipment:UE)を採用してセルラーとWLANとの仮想化を実現したモバイルセルラーシステムを示すブロック図である。
図2図1のモバイルセルラーシステムにおける仮想化されたデータ経路を示すブロック図である。
図3】いくつかの実施形態に従った、図1および図2のUEのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】いくつかの実施形態に従った、図1図3のUEの仮想化エンジンを示すブロック図である。
図5】いくつかの実施形態に従った、UEにおけるセルラーとWLANとの仮想化のための方法を示すフロー図である。
図6】いくつかの実施形態に従った、ローミングシナリオにおける図1図4のUEの例示的な使用事例を示す図である。
図7】いくつかの実施形態に従った、登録シナリオにおける図1図4のUEの例示的な使用事例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
無線通信デバイスは、複数の別個のサブスクライバ接続をサポートすることができるが、これらのサブスクライバ接続は典型的には互いから切り離されているため、1つのサブスクリプションに関連付けられたローカルサービスが、通常、別のサブスクリプションによって確立されたデータ経路に容易にアクセスしたり当該データ経路を利用したりすることができなくなっている。例示として、多くのモバイルネットワークオペレータは、ボイス・オーバー・インターネットプロトコル(voice-over-internet Protocol:VoIP)サービスをサポートしており、これにより、無線通信デバイスとモバイルネットワークオペレータとの間のデータ接続を少なくとも部分的に経由して電話呼を実行することができる。しかしながら、従来の無線通信デバイスが第1のSIMを使用して充分なデータ接続を確立することができない(かまたは、ユーザが、さまざまな理由で第1のSIMを使用して確立されたデータ接続を使用することを望んでいない)が、無線通信デバイスが第2のSIMを使用して別のキャリアとの充分なデータ接続を有する場合、従来の無線通信デバイスは、典型的には、第1のSIMに関連付けられたサブスクライバ識別に基づいてVoIP呼を確立またはサポートするために第2のSIMに関連付けられたデータ接続を使用することができない。メッセージング、プレゼンス、および他のIPマルチメディアサブシステム(IP Multimedia Subsystem:IMS)サービスも同様に、従来の無線通信デバイスにおいて別個のサブスクリプションによって提供されるデータ接続を利用することができない。
【0011】
本開示において説明するシステムおよび方法の実施形態は、UEにおける第1のサブスクライバ識別を使用して確立されたセルラー接続の使用を、当該セルラー接続の仮想化によりUEにおける別個の第2のサブスクライバ識別に関連付けられた音声またはデータのサービスをサポートすることで、容易にするためのシステムおよび方法であって、これにより、セルラー接続が、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)アクセスポイントとして第2のサブスクライバ識別子のためにUEにおいて実行されるローカルプロセスに提示されるようにするものである。したがって、これらのローカルプロセスは、ボイス・オーバー・WiFi(Voice-over-WiFi:VoWiFi)または他のVoIPサービス、メッセージングサービス、プレゼンスサービスなどの、第2のサブスクライバ識別に関連付けられたさまざまなサービスに関連付けてデータを通信することを含め、任意の実際のWLANアクセスポイントと接続する場合と同様に、この仮想のWLANアクセスポイントを利用することができる。
【0012】
図1および図2は、いくつかの実施形態に従った、WLANアクセスポイントとしてセルラー接続の仮想化を利用するモバイルセルラーシステム100を示す。図1に示すように、モバイルセルラーシステム100は、ユーザ機器(UE)102と、一般に「モバイルキャリア」、「キャリアネットワーク」、または単に「キャリア」とも称される1つ以上のモバイルネットワークオペレータ104(本明細書では簡潔にするために「オペレータ」と称する)とを含む。UE102は、セルラー電話、セルラー対応タブレットコンピュータまたはセルラー対応ノートブックコンピュータ、(たとえば、ナビゲーション、エンターテイメントサービスの提供、車載モバイルホットスポットなどのための)セルラーサービスを採用する自動車または他の車両などの、さまざまな電子無線通信デバイスのいずれかを含み得る。各オペレータ104は、インターネットなどの少なくとも1つのパケットデータネットワーク(packet data network:PDN)105を介して、1つ以上のプライベート相互接続データネットワークを介して、またはそれらの組合わせを介して、1つ以上の他のオペレータ104に接続される。
【0013】
各オペレータ104は、バックホールインフラストラクチャ108を介して接続されるコアネットワーク106および複数のエッジネットワークまたは無線アクセスネットワーク(radio access network:RAN)、たとえば、オペレータ104-1および104-2のそれぞれのためのコアネットワーク106-1および106-2ならびにバックホールインフラストラクチャ108-1および108-2などを含む。各エッジネットワークは、1つ以上の無線アクセス技術(radio access technology:RAT)に基づいて信号範囲内でUEと無線通信するように動作可能な基地局110-1および110-2などの基地局110を含む。基地局110の例として、たとえば、ユニバーサル・モバイル・テレコミュニケーションズ・システム(UMTS)RAT実装(「3G」としても公知である)のためのNodeB(または送受信基地局(base transceiver station:BTS))、第3世代パートナーシッププロジェクト(Third Generation Partnership Project:3GPP(登録商標))ロングタームエボリューション(LTE)RAT実装のための拡張型NodeB(eNodeB)、3GPP(登録商標)第5世代(Fifth Generation:5G)新無線(New Radio:NR)RAT実装のための5GノードB(「gNB」)などが含まれる。当技術分野で周知であるように、基地局110は、UEとの無線周波数(RF)無線接続を確立するために「エアインターフェイス」として動作し、さらに、これらの無線接続(または「リンク」)は、UEとコアネットワーク106との間のデータ経路および音声経路として機能して、回線交換ネットワークまたはパケット交換ネットワークを介した音声サービス、シンプルメッセージングサービス(simple messaging service:SMS)またはマルチメディアメッセージングサービス(multimedia messaging service:MMS)などのメッセージングサービス、マルチメディアコンテンツ配信、プレゼンスサービスなどを含むさまざまなサービスをUEに提供する。
【0014】
一般に、オペレータ104によるUEへのサービスの提供はサブスクリプションベースであり、すなわち、オペレータ104によって提供される特定のサービス、およびそれらが提供される態様は、対応するUEのためにオペレータ104によって確立されるモバイルサブスクリプションに基づいている。各々のモバイルサブスクリプションは、典型的には、サブスクライバ識別のために頻繁に使用されるフォーマットとして国際モバイル加入者識別(international mobile subscriber identity:IMSI)フォーマットで、対応する固有のサブスクライバ識別に関連付けられている。多くの場合、サブスクライバ識別は、セキュリティの目的で、かつ、あるUEから集積回路(IC)カードを取外して別のUEにインストールすることによって同じサブスクライバ識別を維持しつつユーザがUEを切替えることを可能にするために、ICカードに符号化されている。ICカードの例として、ユニバーサル集積回路カード(Universal Integrated Circuit Card:UICC)、より具体的にはサブスクライバ識別モジュール(subscriber identity module:SIM)が含まれる。他の例では、ICカードは、代わりにサブスクライバ識別情報および関連情報をUE自体におけるセキュアなメモリ位置に格納することによって「仮想化」される。参照を容易にするために、SIMに格納されるとともに当該SIMによって表わされるサブスクライバ識別の例示的な実現例について説明する。しかしながら、本明細書に記載の技術はこれらの例に限定されるものではなく、このため、サブスクライバ識別を目的としてSIMについて言及している場合、明示的に述べられていない限り、他の形式のサブスクライバ識別表現にも等しく適用される。
【0015】
オペレータによって提供されるサービスはサブスクライバ固有のものであるので、少なくとも1つの実施形態では、UE102は、2以上のオペレータへのアクセスを容易にするために2以上のサブスクライバ識別を採用する。図示される実施形態では、UE102のためのこの複合型サブスクライバ識別構成は、以下の2つのSIM112を介して実現される。すなわち、オペレータ104-1でのサブスクリプションに関連付けられたサブスクライバ識別を表わすSIM112-1(「SIM1」)と、オペレータ104-2でのサブスクリプションに関連付けられたサブスクライバ識別を表わすSIM112-2(「SIM2」)とである。SIM112-1およびSIM112-2は、たとえば、物理SIM、仮想SIM、またはそれらの組合せとして実現され得る。
【0016】
各SIM112は、対応する無線アクセス技術(RAT)に基づいて対応するオペレータ104とのセルラー接続を確立するためにUE102によって使用され得る。セルラーRATの例として、前述の5G NR、LTE、グローバルシステムフォーモビリティ(GSM(登録商標))、およびUMTS、ならびに、シングルキャリア無線伝送技術(Single Carrier Radio Transmission Technology:1xRTT)、ワイマックス(Worldwide Interoperability for Microwave Access:Wi-MAX)、符号分割多元接続(Code Division Multiple Access:CDMA)、時分割多元接続(Time Division Multiple Access:TDMA)、エボリューションデータ最適化(Evolution-Data Optimized:EV-DO)などを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、UE102はシングルSIMモードを採用する。シングルSIMモードでは、単一のSIMのみがUE102において使用され得るとともに、セルラー接続を切替えるためにユーザがSIM112を手動で切替える。他の実施形態では、UE102は、デュアルSIMデュアルスタンバイ(Dual SIM Dual Standby:DSDS)などのスタンバイモードを採用する。このモードでは、単一のRFリソース(たとえば、RFトランシーバおよびモデム)が両方のSIM112によって共有されるとともに、UE102が時間多重化によりSIM112-1のセルラー接続とSIM112-2のセルラー接続とを交互に実施する。さらに他の実施形態では、UE102は、デュアルSIMデュアルアクティブ(Dual SIM Dual Active:DSDA)等のデュアルアクティブモードを採用する。このモードでは、各SIM112はUE102自体の別個のRFリソースを有しており、これにより、両方のセルラー接続が同時にアクティブになることを可能にする。
【0017】
複数のサブスクライバ識別を使用し易くすることにより、UE102が2つ以上のオペレータに接続することが可能になり得るが、いくつかのシナリオでは、複数のセルラー接続のうちの1つを使用することは実行不可能または実現不可能であるかもしれない。たとえば、UE102が、オペレータ104の基地局110のエアインターフェイス範囲を超えてローミングする可能性があり、これにより、UE102がそのオペレータ104との任意の種類のセルラー接続を確立することが妨げられるか、または、1つのセルラー接続の信号品質もしくは接続品質がUE102による有用性を制限してしまう可能性がある。別の例として、UE102は、その一次または「ホーム」オペレータに関連付けられた領域の外側に位置する可能性があり、このため、二次オペレータの受信可能範囲内で「ローミング」する可能性があり、たとえば、音声サービスをサポートする二次オペレータとのセルラー接続をUE102が使用する場合に発生するであろうローミング料金がユーザにとって法外なものとなる可能性がある。このような事例では、或るサブスクリプションのために確立された十分なセルラー接続が、他のサブスクリプションに関連付けられたオペレータによって提供されるサービスをサポートするために使用され得るのであれば有利であり得ることが判明している。従来のUEでは、サブスクライバと、当該サブスクライバに関連付けられたUEにおけるソフトウェアスタックと、サブスクライバ識別に基づいたオペレータのサービスサポートとの間の緊密な連結により、セルラー接続のこのようなクロスオーバー共有が妨げられてしまう。
【0018】
しかしながら、少なくとも1つの実施形態では、モバイルセルラーシステム100のUE102は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)アクセスポイント(access point:AP)としてセルラー接続を仮想化することにより、別のサブスクリプションに関連付けてUE102において実行されるプロセスのためにUE102にサービスを提供するための1つのサブスクリプションに基づいて、1つのオペレータとのセルラー接続の使用を容易にする。WLANの例として、たとえば、(たとえば、電気電子技術者協会(International Electrical and Electronics Engineer:IEEE)802.11規格、たとえばIEEE802.11a/b/g/n/acなどに従った)「WiFi」、Bluetooth(登録商標)(たとえば、Bluetooth(登録商標)1.0、1.2、2.0、2.1、3.0、4.0、5.0等)などの無線パーソナルエリアネットワーク(wireless personal area network:WPAN)プロトコル、近距離無線通信(Near Field Communication:NFC)、超広帯域(Ultra-Wide Band:UWB)などが含まれる。代替的には、セルラーアクセスネットワークが5G NR対応のアクセスネットワークであるいくつかの実施形態では、WLANは、5G NR仕様において信頼できない非3GPP(登録商標)アクセスネットワークとして通常識別されるものを指し得るのに対して、このような実施形態では、「セルラー」という語は、5G NR仕様における信頼できる3GPP(登録商標)アクセスネットワークとして通常識別されるものを指している。UE102は、さらに、利用可能な1つのサブスクリプションとの適切なセルラー接続を用いて、この仮想化されたWLANへのWLANインターフェイスを確立し、UE102が接続されている実際のWLAN AP用のWLANインターフェイスであるかのように使用するために、他のサブスクリプションに関連付けられたプロセスにWLANインターフェイスを提示する。
【0019】
例示として、図1は、SIM112-1を使用するUE102とオペレータ104-1との間のセルラー接続114-1が「損なわれている」一方で、SIM112-2を使用するUEとオペレータ104-2との間のセルラー接続114-1がデータ接続の目的のために「十分である」例を示す。この文脈では、セルラー接続114は、実際には存在しない(すなわち、セルラー接続が存在しない)か、データ帯域幅もしくは信号完全性が不十分であるか、または、ユーザがセルラー接続114-1を使用することで使用料金もしくは電力消費が上昇するかもしくは過剰になる可能性がある等の点で、損なわれている。逆に、この文脈における十分なセルラー接続とは、ユーザにとって十分であると見なされる信号強度、帯域幅、および使用料金請求方式でのセルラー接続である。したがって、少なくとも1つの実施形態では、UE102は、十分なセルラー接続114-2のためのモバイルホットスポット(mobile hot spot:MHS)を確立し、MHSを仮想のWLANアクセスポイント(AP)116として仮想化し、仮想のWLAN AP116のためのWLANインターフェイスを、SIM112-1に関連付けられたプロセスによる使用のための候補WLANインターフェイスとして提示する。1つ以上の実際のWLAN AP118が存在し得るとともに、UE102への接続のために利用可能であり得る。次いで、UE102は、さまざまな基準のいずれかに基づいて、仮想のWLAN AP116を含む1つ以上の候補WLAN APからWLAN APを選択し、選択されたWLAN APとの無線接続を確立し、次いで、選択されたWLAN APによって提供される拡張されたネットワーク接続を使用して、SIM112-1に関連付けられたUE102におけるローカルプロセスによる使用のための、PDN105などの1つ以上のターゲットネットワークまたはオペレータ104-1のコアネットワーク106-1へのデータ経路を確立することができる。
【0020】
選択されたWLAN APが実際のWLAN AP118である場合、実際のWLAN AP118との無線接続の確立および使用は、さまざまな周知の技術または独自の技術のいずれかに従って実行することができる。しかしながら、選択されたWLAN APが仮想のWLAN AP116である場合、UE102は、仮想のWLAN AP116を典型的なWLAN APとして提示するように動作する。すなわち、少なくとも1つの実施形態では、仮想のWLAN AP116が実際にセルラー接続であるという事実は、SIM112-1に関連付けられたUE102におけるローカルプロセスからは不明瞭にされている。このため、UE102と仮想のWLAN AP116との間に確立される「無線接続」は、実際には、SIM112-1に関連付けられたローカルプロセスと、SIM112-2に関連付けられたソフトウェアスタックと、オペレータ104-2の基地局110-2との間のUE102におけるデータ経路である。
【0021】
図2は、いくつかの実施形態に従った、モバイルセルラーシステム100におけるWLAN APとしてのセルラー接続のこのような仮想化の例を示す。この図示される例では、UE102は、セルラー接続114-2(図1)を不明瞭にする仮想のWLAN AP116を選択し、SIM112-1に関連付けられたソフトウェアスタックの観点から、仮想のWLAN AP116との(仮想の)WLAN接続202を確立する。次いで、SIM112-1のためのソフトウェアスタックは、基地局110-2、バックホールインフラストラクチャ108-2、オペレータ104-2のコアネットワーク106-2、PDN105、およびオペレータ104-1のコアネットワーク106-1に渡ってUE102とコアネットワーク106-1との間にデータ経路204を確立するように動作する。次いで、オペレータ104-1のコアネットワーク106-1およびSIM112-1に関連付けられたローカルプロセスは、このデータ経路204を使用して、SIM112-1によって表わされるサブスクライバ識別に関連付けてオペレータ104-1によって提供されるサブスクリプションに従ってさまざまなサービスを提供することができる。
【0022】
一例として、SIM112-1のためのソフトウェアスタックは、進化型パケットデータゲートウェイ(evolved Packet Data Gateway:ePDG)プロトコルまたは信頼型Wi-Fiアクセスゲートウェイ(Trusted Wi-Fi Access Gateway:TWAG)を使用して、コアネットワーク106-1のエッジ上にUE102とePDG対応パケットデータネットワークゲートウェイ(P-GW)(図示せず)との間にIPセキュリティ(IP Security:IPSec)トンネルを確立することなどによって、データ経路204を介してUE102とコアネットワーク106との間にセキュアなトンネルを確立することができる。このセキュアなトンネルが適所にあれば、オペレータ104-1は、このセキュアなトンネルを介してサブスクライバベースのサービスをUE102に提供することができる。例示として、VoWiFiおよび他のVoIPサービスは、UEがパケット交換ネットワークを介して電話呼を確立および実施することを可能にすることによって、回路ベースの電話通信をエミュレートする。このような場合、オペレータ104-1は、オペレータ104-2とのセルラー接続114-2を介して、かつ、任意の電話呼がSIM112-1に関連付けられた電話番号または他のユニフォームリソース識別子(uniform resource identifier:URI)に関連付けて接続および実施される態様で、電話呼に使用されるデータ経路が別のオペレータ、すなわち、オペレータ104-2、とのセルラー接続を介して実行される場合であっても、SIM112-1に関連付けられたソフトウェアスタックにこのようなVoIPサービスを提供することができる。このようなサービスはまた、他のIPマルチメディアサブシステム(IMS)サービス、たとえば、SMS、MMS、または、SIM112-1によって表わされるサブスクライバ識別に関連付けて提供される他のメッセージングサービス、SIM112-1によって表わされるサブスクライバ識別のためのサブスクリプションに関連付けたビデオ・オーバーIPなど、を含み得る。
【0023】
図3は、いくつかの実施形態に従った、セルラーとWLANとの接続仮想化をサポートするUE102のための例示的なハードウェア構成を示す。図示の例では、UE102は、中央処理装置(central processing unit:CPU)または他の汎用プロセッサ302と、システムメモリ304と、WLANリソース306と、RFリソース308とを含む。WLANリソース306は、典型的にはWLAN RATに関連付けられた1つ以上の周波数帯におけるRF信号伝達および信号処理に適した、WLANモデム310と、WLANトランシーバ312と、少なくとも1つのWLANアンテナ315とを含む。同様に、RFリソース308は、セルラーRATに関連付けられた周波数帯におけるRF信号伝達および信号処理に適した、RFモデム316と、RFトランシーバ318と、少なくとも1つのRFアンテナ319とを含む。RFモデム316は、ベースバンドプロセッサ322およびメモリ324を含む。メモリ324は、たとえば、フラッシュメモリ、不揮発性ランダムアクセスメモリ(non-volatile random access memory:NVRAM)もしくは他の不揮発性メモリ、またはスタティックDRAM(static DRAM:SRAM)もしくはダイナミックRAM(dynamic RAM:DRAM)もしくは他の揮発性メモリ、またはそれらの組合せを含み得る。WLANモデム310は、プロセッサまたは他の処理要素によって実行されるWLANプロトコルスタックでRFモデム316と同様の態様で構成され得る。RFモデム316は、SIM112-1およびSIM112-2をそれぞれ受信してこれらに接続するためのSIM1 IF326-1およびSIM2 IF326-1などの2つ以上のSIMインターフェイス(interface:IF)326に連結される。SIM112-1またはSIM112-2の一方または両方が仮想SIM(「eSIM」)として実現され得るので、対応するSIMインターフェイス326は、たとえば、仮想SIMによって表わされるサブスクライバ識別および関連する情報を格納するUE102内のセキュアなメモリ位置を表わすことができる。なお、図示される実施形態では、UE102は、各SIM112が進行中のセルラー接続を有する場合、時間多重化により、RFリソース308がSIM112-1とSIM112-2との間で共有されるシングルSIMモードまたはDSDMモードのいずれかをサポートするように構成されていることに留意されたい。他の実施形態では、UE102は、SIM112-1およびSIM112-2の両方のためのセルラー接続が同時にアクティブになり得るように、各SIM112ごとにRFリソース308の別個のインスタンスを用いてデュアルSIMデュアルアクティブ(DSDA)モードをサポートするように構成され得る。さらに、UE102が、たとえば、1つ以上のディスプレイ、1つ以上のタッチスクリーン、キーパッド、マウス、タッチパッド、マイクロフォン、スピーカ、および他のユーザ入出力デバイス、1つ以上のセンサ、バッテリ、または他の電源、グラフィック処理ユニット(graphical processing unit:GPU)または他のコプロセッサなどを含む、例示を容易にするために図3から省かれたいくつかの追加の構成要素を含み得ることが認識されるだろう。
【0024】
一般的な動作の概要として、汎用プロセッサ302は、オペレーティングシステム(operating system:OS)330(一般に「カーネル」とも称される)および1つ以上のユーザソフトウェアアプリケーション331を含むとともに、RFモデム316およびWLANモデム310のプロセッサによって実行されるプロトコルスタックをさらに含み得る、ソフトウェアスタックからの実行可能命令を実行する。OS330は、プロセッサ302を操作することにより、UE102のさまざまなハードウェア構成要素の全体的な動作を管理するとともに、OS330を表わす実行可能命令と、典型的には汎用プロセッサ302による実行のためにシステムメモリ304からアクセスされるユーザソフトウェアアプリケーション331とで、1つ以上のユーザソフトウェアアプリケーション331の実行をサポートする。OS330またはユーザソフトウェアアプリケーション331の1つ以上のプロセスは、実行中、サーバ、ゲートウェイ、別のUEなどで、モバイルセルラーシステム100(図1)内の構成要素と無線通信しようと試みる可能性もある。これらのプロセスは本明細書では「ローカルプロセス」と称される。
【0025】
ローカルプロセスがセルラー接続を使用しようと試みている場合、OS330は、RFモデム316と協働して、対応するSIM112を介して提供されるそのオペレータのサブスクリプションに基づいて、対応するオペレータ104とのセルラー接続を確立する。この目的のために、RFモデム316のメモリ324は、各サブスクライバ識別(たとえば、SIM112-1およびSIM112-2用のそれぞれのプロトコルスタック328-1および328-2)ごとにプロトコルスタック328を格納しており、各プロトコルスタック328が格納している実行可能命令は、ベースバンドプロセッサ322によって実行されると、ベースバンドプロセッサ322を操作して、無線アクセス技術(RAT)プロトコルに従って、または、RFリソース308が通信リンクを確立しようと試みているオペレータ104の基地局110(図1)によって提供されるエアインターフェイスに関連付けられた他の通信プロトコルに従って、さまざまな動作を実行する。周知であるように、このような動作は、典型的には、ネットワークプロトコルの低レベル層、たとえば物理層、データリンク層、およびネットワーク層のうちのいくつかまたは全てなど、と関連付けられており、OS330およびユーザソフトウェアアプリケーション331は、ネットワークプロトコルの高レベル層、たとえばトランスポート層、セッション層、プレゼンテーション層、およびアプリケーション層など、をサポートする。同様に、ローカルプロセスがWLAN接続を使用しようと試みている場合、OS330は、WLANモデム310と協働して、いずれかの利用可能なWLAN APを識別するとともに、少なくとも1つの適切なWLAN APが利用可能であると仮定して、適切なRATに関連付けられたWLANプロトコルスタックとOS330によって提供される対応するより高レベルのプロトコルスタックとを使用して好適なWLAN APとのWLAN接続を確立する。
【0026】
いくつかの状況では、関連するオペレータ104によって提供されるサービスを利用するローカルプロセスは、関連するオペレータとのセルラー接続ではなくWLAN接続を使用してサービスをサポートしようと試みてもよい。1つのこのような例は、VoWiFi(通常、WiFi呼(WFC)とも称される)である。この場合、UE102と対応するWLAN APとの間のWLAN接続にわたって延在するデータ経路(たとえば、図2のデータ経路204)を使用して、UEにおける音声電話ローカルプロセスとオペレータ104との間で電話呼セッションが確立される。このような場合、OS330は、WLANインターフェイス(たとえば、Linux(登録商標)ベースのOSにおけるwlan0()インターフェイス)をローカルプロセスとサブスクリプションに関連付けられたソフトウェアスタックの他のソフトウェアコンポーネントとに提示するように動作する。WLANインターフェイスは、典型的には、ローカルプロセスとWLANモデム310との間のデータの転送、制御、および他の信号伝達、ならびに対応するWLAN接続を管理するために、UE102のさまざまなソフトウェアプロセスによる使用のための1つ以上のアプリケーションプログラミングインターフェイス(application programming interface:API)を含む。
【0027】
WLAN接続およびセルラー接続はともに、さまざまなサービスをサポートするデータ経路を確立する機会を提供する。しかしながら、従来のUEでは、1つのサブスクリプションのローカルプロセスは、典型的には、別のサブスクリプションのために確立されたセルラー接続にアクセスすることができない。対照的に、UE102は、少なくとも1つの実施形態では、1つのサブスクリプションのためのセルラー接続の使用を、別のサブスクリプションのためのWLANインターフェイスとして扱うことができるWLAN APとして1つのサブスクリプションのセルラー接続を仮想化することにより、異なるサブスクリプションのためのサービスをサポートすることで、容易にする。したがって、少なくとも1つの実施形態では、UE102のソフトウェアスタックは、仮想化エンジン(virtualization engine:VE)332を実現して、セルラー接続を確立するために使用されるサブスクリプションに関連付けられていないサービスのためのセルラー接続用の仮想のWLAN APおよびその対応するWLANインターフェイスの確立、提示、および使用を管理する。
【0028】
図4は、いくつかの実施形態に従った、仮想化エンジン332およびUE102の他の構成要素との対話をより詳細に示す。仮想化エンジン332は、1つ以上のAPIおよび対応する実行可能命令を含む。当該対応する実行可能命令は、単独で実行されるか、またはOS330、ユーザソフトウェアアプリケーション331、もしくはプロトコルスタック328-1、328-2のうちの1つ以上の対応する実行可能命令と組合わせて実行されると、汎用プロセッサ302、RFモデム316、またはWLANモデム310のうちの1つ以上を操作して、本明細書で説明される機能を実行する。仮想化エンジン332は、仮想化器モジュール402および二次データアクセスモジュール404という2つの一次モジュールに編成されている。二次データアクセスモジュール404は、SIM112(たとえば、SIM112-1およびSIM112-2のためのそれぞれのソフトウェアスタック406-1およびソフトウェアスタック406-2)の各々のソフトウェアスタック406とインターフェイスし、より特定的には、SIM112-1およびSIM112-2によって表わされるサブスクリプションの一方または両方のためのセルラー接続の電話状態および他のステータス指標を監視するために、これらのソフトウェアスタック406のプロトコルスタック328とインターフェイスする。二次データアクセスモジュール404は、セルラー接続がサブスクリプションのために利用可能になった場合またはセルラー接続がもはや利用できなくなった場合に報告するなどして、ステータス更新を仮想化器モジュール402に報告する。二次データアクセスモジュール404はさらに、信号強度パラメータ、リンク容量推定パラメータなどを含む、利用可能なセルラー接続に関するさまざまなパラメータを取得するように動作し、この情報を仮想化器モジュール402に提供する。
【0029】
仮想化器モジュール402は、二次データアクセスモジュール404、WLANモデム310、および、OS330、WLANモデム310またはそれらの組合わせで実装されるWLANプロトコルスタック320とインターフェイスする。WLANプロトコルスタック320は、WiFi/IEEE802.11RAT、Bluetooth(登録商標) RAT、UWB RATなどの対応するWLAN RATに従って、WLANモデム310を介して、選択されたWLAN APとの無線接続を確立および管理するソフトウェアプロセスのセットを表わす。概要として、仮想化器モジュール402は、二次データアクセスモジュール404からの入力を監視して、任意のセルラー接続が仮想のWLAN AP408(仮想のWLAN AP116の一実施形態、図1)として仮想化するのに利用可能であるかどうかを識別し、利用可能である場合、セルラー接続の信号品質パラメータを変換して、WLAN接続のために使用される信号品質パラメータとより密接に整合させるように動作する。さらに、仮想化器モジュール402は、WLANモデム310からの入力を監視して、実際の任意のWLAN APが利用可能であるかどうかを判断し、利用可能である場合、それぞれの信号品質パラメータを決定する。
【0030】
たとえば、ソフトウェアスタック406-1のIMSプロトコルスタック412などのオペレータ104のローカルプロセスが、WLAN接続を使用する意図を示す(たとえば、そのオペレータ104とのセルラー接続が利用不可能であるかもしくは損なわれている)場合、または、WLAN接続の必要性を信号伝達する別のトリガに応答して、仮想化器モジュール402は、任意の利用可能な実際のWLAN APおよび任意の利用可能な仮想のWLAN AP(たとえば、仮想のWLAN AP408)をともに含む利用可能な候補WLAN APを評価し、WLAN接続を確立する際に使用するための候補WLAN APを選択する。この選択は、(仮想のWLAN AP408の場合、対応するセルラー信号品質指標のマッピングに基づいて1つ以上の「等価な」WLAN信号品質パラメータとして模倣される)候補WLAN APの示された信号品質パラメータ、リンク容量推定値などを含む、いくつかの基準のいずれかに基づき得る。
【0031】
実際のWLAN APが選択される場合、WLANモデム310は、選択されたWLAN APとのWLAN接続を確立し、WLAN接続のためのWLANインターフェイスがインスタンス化されるとともに、さまざまな周知のまたは独自のWLAN・セルラー間サポートプロセスのうちのいずれかを使用して、WLANインターフェイスがその使用のためにオペレータ104に関連付けられたソフトウェアスタック406に提示される。仮想のWLAN AP408が選択される場合、仮想化器モジュール402は、WLANプロトコルスタック320と協働して、仮想のWLAN AP408のための(すなわち、仮想のWLAN AP408として仮想化されるセルラー接続のための)WLANインターフェイス410を確立するように動作するとともに、実際のWLAN APのためのWLANインターフェイスが使用され得るのと同じ態様で、すなわち、ソフトウェアスタック406の観点から、仮想のWLAN AP408が他の任意のWLAN APらしく見えるように、ソフトウェアスタック406による使用のためにWLANインターフェイス410を提示する。このプロセスは、たとえば、仮想化器モジュール402およびWLANプロトコルスタック320が、セルラー接続のためのモバイルホットスポット(MHS)414のインスタンスを確立すること、MHSインスタンスのためのWLANインターフェイス410をインスタンス化すること、WLANインターフェイス410にIPアドレスを割当てることなどによってそれに応じてWLANプロトコルスタック320およびWLANインターフェイス410を構成すること、他のプロセスがセルラー接続上でデータおよび帯域幅を消費するのが防止されるようにWLANインターフェイス410を計測済みWLANインターフェイスとして構成すること、などを含む。この目的のために、従来のWLANプロトコルスタックに見出される従来のインターフェイスおよび機能に加えて、WLANプロトコルスタック320はさらに、いくつかの実施形態では、仮想化器モジュール402が実際のWLAN APを監視することと、仮想のWLAN AP408の接続および切断をトリガすることと、表わされたセルラー接続のその時点での信号品質に関する二次データアクセスモジュール404からの入力に基づいて、WLANインターフェイス410についての信号強度および他の信号品質指標を更新することとを可能にするために、仮想化器モジュール402にとって利用可能な1つ以上のAPIまたは他のインターフェイスを含む。
【0032】
図5は、いくつかの実施形態に従った、別のサブスクライバのためのWLAN接続として仮想化されたセルラー接続を確立および使用するためのUE102の動作の例示的な方法500を示す。方法500は、図1図4に示されるUE102の実施形態を参照して説明されるが、このような構成に限定されず、むしろ、本明細書において提供されるガイドラインを使用して、複合型サブスクライバUEのさまざまな構成のいずれかに適合され得る。
【0033】
例示の目的で、方法500が説明される例示的なシナリオにおいては、充分なセルラー接続が確立できない、セルラー接続を使用する費用がユーザにとって受入れられない、セルラー接続の使用が過剰な電力を消費する可能性がある等の理由で、同じオペレータによって提供されるサービスをサポートするためにSIM112-1に関連付けられたサブスクリプションを使用するオペレータ104-1とのセルラー接続114-1(図1)の使用が実現不可能である。したがって、この例示的なシナリオでは、SIM112-2に関連付けられたサブスクリプションを使用するオペレータ104-2とのセルラー接続は、UE102におけるSIM112-1に関連付けられたサブスクリプションのためにソフトウェアスタック406-1のIMSプロトコルスタック412に関連付けて提供されるサービスをサポートするために使用され得るWLAN APとして仮想化するための候補として企図されるものである。したがって、この例示的なシナリオでは、オペレータ104-1とのセルラー接続114-1(図1)は、使用すべきデータ経路を求めるサービスに関連付けられたサブスクリプションに直接関連付けられるので「一次セルラー接続」と称され、オペレータ104-2とのセルラー接続114-2(図1)は、このサブスクリプションに直接関連付けられていないので「二次セルラー接続」と称される。
【0034】
したがって、方法500は、一次セルラー接続が十分に確立できないという判断、または、UE102とオペレータ104-1との間の確立された一次セルラー接続が、ユーザにとって使用するのに費用が掛かり過ぎる、過剰な電力を消費する、もしくは何らかの態様で損なわれているという判断に応答して、ブロック502において開始される。これに応答して、ブロック504において、仮想化エンジン332の仮想化器モジュール402は、UE102とオペレータ104-2との間に二次データ経路を設けるために利用可能な少なくとも1つのWLANアクセスポイントがあるかどうかを判断する。この判断プロセスをサポートするべく、ブロック506において、WLANモデム310は、たとえば、近くのWLAN APによって送信されたビーコンフレームの検出により、UE102に利用可能な実際のWLAN AP(たとえば、図1の実際のWLAN AP118)を監視し、識別されたWLAN APの対応するその時点での信号品質パラメータおよび他の能力を判断し、この情報を仮想化器モジュール402に報告する。同様に、ブロック508において、二次データアクセスモジュール404は、UE102とオペレータ104-2のエッジネットワークとの間の接続性を周期的、連続的または反復的に監視し、その時点での接続状態を仮想化器モジュール402に報告する。例示として、一実施形態では、二次データアクセスモジュール404は、SIM112-2のためのセルラーネットワークプロトコルスタック328-2とのAPIまたは他のインターフェイスを使用して、たとえば、受信信号強度インジケータ(received signal strength indicator:RSSI)値、基準信号受信品質(reference signal received quality:RSRQ)値、リンク容量推定(link capacity estimation:LCE)値などを含む、二次セルラー接続のためのその時点での信号パラメータを取得する。
【0035】
ブロック504に戻って、適切なWLAN APが利用不可能である(すなわち、利用可能な適切な実際のWLAN APが存在せず、二次セルラー接続が利用可能でないかまたはこの文脈においてデータ経路として使用するには不十分である)と仮想化器モジュール402が判断した場合、ブロック510において、仮想化器モジュール402は、二次データ経路がIMSプロトコルスタック412によってサポートされるプロセスのためにアクセス可能でないことをIMSプロトコルスタック412に対して信号で伝え、これに応答して、IMSプロトコルスタック412は、これらのサービスをサポートする一次セルラー接続を使用するための労力を再開するか、または、それらの使用のためにデータ経路が利用不可能であることをローカルサービスに信号で伝える。
【0036】
しかしながら、少なくとも1つの候補WLAN APが利用可能である場合、ブロック512において、仮想化器モジュール402は、二次データ経路を確立する際に使用するための候補WLAN APを選択する。2つ以上の候補WLAN APが存在する場合、選択プロセスは、二次データ経路によってサポートされるべきローカルサービスの必要性に応じて、たとえば、信号品質、帯域幅またはスループットの考慮事項、ジッタおよび遅延の考慮事項などに基づき得る。したがって、少なくとも1つの実施形態では、二次セルラー接続が仮想のWLAN APとして表わされるのに利用可能である場合に、より等価な評価を与えるために、ブロック514によって表わされるように、仮想化器モジュール402は、二次データアクセスモジュール404によって提供される二次セルラー接続に関するその時点での信号品質情報を利用して(ブロック508)、二次セルラー接続のセルラー信号品質に基づいて仮想のWLAN AP408についてのWLAN信号品質インジケータを模倣するように、1つ以上の等価なWLAN信号品質パラメータを決定する。上述したように、二次データアクセスモジュール404は、二次セルラー接続に関するその時点でのRSSI値、RSRQ値またはLCE値のうちの1つ以上を取得することができ、さらに、これらの1つ以上の値から、仮想のWLAN AP408についての1つ以上の対応するWLAN信号品質インジケータを導出することができる。一例として、WiFiプロトコルは、典型的には、-100dBm~-50dBmの実現可能な範囲でWiFi RF接続の(デシベル-ミリワットまたはdBmの単位で)RSSIを利用して、WiFi RF接続を、典型的には「使用不能」、「低品質」、「中品質」、または「高品質」で構成される複数のレベルのうちの1つとして認定する。実現可能な範囲内にあるこれらのさまざまな品質レベル間の境界は実現例特有のものである。したがって、この例では、仮想化器モジュール402は、二次セルラー接続についてのRSRQまたはLCEの一方または両方に基づいて修正されたセルラーRSSIの変換に基づいて、かつ、このWLAN等価RSSIがさまざまな品質レベルに関する特定のサブレンジに基づいて仮想のWLAN AP408についての信号品質表現として使用されていることに基づいて、二次セルラー接続のためのWLAN等価RSSIを決定することができる。
【0037】
仮想化器モジュール402が二次データ経路として使用するために仮想のWLAN AP408を選択する場合、仮想化器モジュール402は、ブロック516において、二次セルラー接続のためのモバイルホットスポット(MHS)をUE102においてインスタンス化または確立することによって、WLAN APとして二次セルラー接続の仮想化を開始する。このプロセスは、たとえば、メディアアクセス制御(media access control:MAC)アドレスをMHSに割当てることと、サービスセット識別子(service set identifier:SSID)をMHSに割当てることと、MHSによって利用されるべき任意の認証または暗号化プロセスを選択することと、この情報に基づいてMHSのためのAPプロファイルを構成することとを含み得る。当該プロセスはさらに、二次セルラー接続を介してUE102と基地局110-2との間にセキュアなトンネルを確立することを含み得る。MHSが確立されると、ブロック518において、仮想化器モジュール402は、二次データ接続のために仮想のWLAN AP408を作動させるようにWLANプロトコルスタック320に信号伝達する。
【0038】
多くの実現例では、OS330または関連するアプリケーションは、UE102においてその時点で適所にある無線接続のうちのいくつかまたはすべての信号品質を図で表わすように構成される。例示として、図2を簡潔に参照すると、OS330は、UE102の表示画面208に表示するためのグラフィカル表現206を提供する。この場合、グラフィカル表現206は、一次セルラー接続のその時点での信号品質を視覚的に描写するものであって、たとえば、オペレータについての名前(たとえば「OP1」)と、一次セルラー接続のRATタイプ(たとえば、「LTE」)と、その時点での接続品質を図式的に描写する一連のバーとを含んでいる。このため、仮想のWLAN AP408が接続のためにインスタンス化されて選択されると、二次セルラー接続は、同様に、オペレータについての名前(たとえば、「OP2」)と、(実際にはセルラー接続であるが「WiFi」接続として仮想化される)接続RATタイプと、二次セルラー接続についての監視された信号パラメータから決定された模倣された等価なWLAN信号品質から決定されたその時点での接続品質を図式的に描写する一連のバーとを描写するグラフィカル表現210として表示画面208において表わすことができる。
【0039】
ブロック518において仮想のWLAN AP408をアクティブ化した後、ブロック520において、WLANプロトコルスタック320は、確立されたMHSのためのWLANインターフェイス410をIMSプロトコルスタック412に提示し、IMSプロトコルスタック412は、SIM112-1に関連付けられたオペレータ104-1のサブスクリプションに関連付けられた1つ以上のローカルサービスの代わりに、オペレータ104-2との二次セルラー接続を介してUE102との間でデータを無線通信するためのWLANインターフェイス410の使用を開始する。少なくとも1つの実施形態では、IMSプロトコルスタック412によって促進されるサービスは、オペレータ104-1によって提供されるサービスであり、したがって、SIM112-1のためのプロトコルスタック328-1は、UE102と、オペレータ104-2と、1つ以上のPDN105と、オペレータ104-1との間に延びるデータ経路204(図2)を確立すること等によって、オペレータ104-2への二次データ経路を確立するために二次セルラー接続を利用するように動作する。
【0040】
これらのサービスは、SIM112-1によって表わされるサブスクリプションのためにオペレータ104-1によってサポートされるさまざまなサービスのいずれかを含み得る。たとえば、これらのサービスは、VoWiFiサービスまたは他のVoIPサービス(ブロック522)、SMS、MMS、または他のメッセージング/ページングサービス、チャット、音声メッセージング、および他のリッチ通信サービス(rich communication service:RCS)、およびプレゼンスサービス(ブロック524)などの、さまざまなIMSサービスのいずれかを含み得る。さらに、いくつかの実施形態では、仮想のWLAN AP408によって提供される二次データ経路は、一次経路に関連付けられたサブスクリプションについてのサブスクライバ登録(ブロック526)のために使用することができる。例示として、5G NR仕様は、関連する5Gネットワークを介して行われるデータ通信を確立するためにUEが4Gネットワークを使用してオペレータに登録するといった、複合型4G/5Gネットワークで使用するための独立型の手順を提供する。このような場合、同様の登録シナリオでは、SIM112-1のためのプロトコルスタック328-1は、無線リソース制御(Radio Resource Control:RRC)接続をセットアップすること、認証プロセスおよびセキュリティプロセスを実行すること、ならびに、5G登録手順によって提供されるRRC再構成プロセスを実行すること、といったランダムなアクセスプロセスのうちの1つ以上を含む5Gセッション開始プロトコル(Session Initiation Protocol:SIP)登録プロセスを、二次セルラー接続を利用するデータ経路を介して実行することができる。
【0041】
VoWiFi呼の終了、UE102がスタンバイモードに入ること、またはソフトウェアスタック406-1からの明示的な終了信号などの、ブロック528によって表わされるような仮想のWLAN AP408の使用を終了するイベントに応答して、ブロック530において、仮想化器モジュール402は、WLAN接続の終了が可能であることをWLANプロトコルスタック320に信号で伝え、WLANインターフェイス410を無効にし、MHSを解体する。
【0042】
ブロック512に戻り、仮想のWLAN AP408が選択されず、代わりに仮想化器モジュール402が実際の無線アクセスポイントを選択する場合、ブロック532において、仮想化器モジュール402は、選択された実際のWLAN APとの接続を確立するようにWLANプロトコルスタック320に指示し、次いで、WLANプロトコルスタック320は、さまざまな周知のまたは独自のプロセスのいずれかに従って使用するために、ソフトウェアスタック406-1のためにWLANインターフェイスを実際のWLAN APに提供する。
【0043】
図6および図7は、上述のモバイルセルラーシステム100についての2つの例示的な使用事例を示す。図6の例示的な使用事例では、モバイルセルラーネットワーク600(図1のモバイルセルラーシステム100の一実施形態)は、UE602と、LTEベースのネットワークを介してSIM1 612-1に関連付けられたサブスクリプションを提供するオペレータOP1 604-1と、LTEベースのネットワークを介してSIM2 612-2に関連付けられたサブスクリプションを提供するオペレータOP2 604-2とを含む。この使用事例では、オペレータOP1 604-1はUE602のための一次オペレータであり、すなわち、ユーザは、オペレータOP1 604-1のサブスクリプションを使用してネットワークサービスが提供されることを好み、このような電話呼およびSMS/MMSメッセージは、このサブスクリプションについての電話番号または他のサブスクライバ識別に関連付けて実行される。しかしながら、この使用事例では、UE602とオペレータOP1 604-1との間のセルラー接続は実行不可能である。なぜなら、UE602がオペレータOP1 604-1の送信範囲内にないか、または、このようなセルラー接続では信号品質が不十分であるからである。したがって、SIM2 612-2のためのセルラープロトコルスタック628は、オペレータOP2 612-2とのセルラー接続を確立し、UE602はさらに、WiFiモバイルホットスポットMHS2 614のインスタンスを確立するとともに、WiFi MHS2 614を仮想のWLAN APとして仮想化し、さらに、SIM2 612-1に関連付けられてUE602において実行されるネットワークプロトコルスタックへのWiFiインターフェイス610の形式で仮想のWLAN APのためのWLANインターフェイスを設ける。次いで、ネットワークプロトコルスタックは、WiFiインターフェイス610を使用して、結果として得られる二次データ経路においてOP2 604-2とOP1 604-1のIMSサーバ607との間に図示のePDGトンネル624等のIPSecトンネルを確立する。次いで、UE102は、ePDGトンネル624を介してOP1 604-1においてIMSサーバ607とデータ、制御、および他の信号伝達をやり取りするために、SIM2 612-2に関連付けられたソフトウェアスタックの一部としてUE102において実行されるIMSプロセスIMS1 622による使用のために二次データ経路を利用可能にする。
【0044】
図7の例示的な使用事例では、モバイルセルラーネットワーク700(図1のモバイルセルラーシステム100の一実施形態)は、UE702と、5G NRベースのネットワークを介してSIM1 712-1に関連付けられたサブスクリプションを提供するオペレータOP1 704-1と、LTEベースのネットワークを介してSIM2 712-2に関連付けられたサブスクリプションを提供するオペレータOP2 704-2とを含む。先の使用事例と同様に、オペレータOP1 704-1はUE702のための一次オペレータであるが、UE702とオペレータOP1 704-1との間のセルラー接続は実現不可能である。したがって、SIM2 712-2のためのセルラープロトコルスタック728-2は、オペレータOP2 712-2とのセルラー接続を確立し、UE702はさらに、WiFiモバイルホットスポットMHS2 714のインスタンスを確立し、WiFi MHS2 714を仮想のWLAN APとして仮想化するとともに、仮想のWLAN APのためのWLANインターフェイスをWiFiインターフェイス710の形式で、SIM2 712-1に関連付けられてUE602において実行されるネットワークプロトコルスタック728-1に提供する。次いで、ネットワークプロトコルスタック728のネットワークアクセス層(network access stratum:NAS)レイヤ726が、WiFiインターフェイス710によって容易にされる二次データ経路を使用して、OP1 704-1のコアネットワーク706で5G登録プロセスを実行する。登録が完了した後、ネットワークプロトコルスタック728は、二次データ経路を使用して、結果として得られる二次データ経路において、OP2 604-2とOP1 704-1のIMSサーバ707との間に、図示されるePDGトンネル724等のIPSecトンネルを確立する。次いで、UE702は、ePDGトンネル724を介してOP1 704-1においてIMSサーバ707とデータ、制御、および他の信号伝達をやり取りするために、SIM2 712-2に関連付けられたソフトウェアスタックの一部としてUE702において実行されるIMSプロセスIMS1 722による使用のために二次データ経路を利用可能にする。
【0045】
いくつかの実施形態では、上記技術のいくつかの局面は、ソフトウェアを実行する処理システムの1つ以上のプロセッサによって実現される。ソフトウェアは、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるかまたは有形的に具現化される実行可能命令の1つ以上のセットを含む。ソフトウェアは、1つ以上のプロセッサによって実行されると、1つ以上のプロセッサを操作して上記技術の1つ以上の局面を実行するための命令および何らかのデータを含み得る。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体はたとえば、磁気または光学ディスクストレージデバイス、フラッシュメモリなどのソリッドステートストレージデバイス、キャッシュ、および、ランダムアクセスメモリ(random access memory:RAM)または他の1つもしくは複数の不揮発性メモリデバイスなどを含み得る。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体上に格納される実行可能命令は、ソースコード、アセンブリ言語コード、オブジェクトコード、または、1つ以上のプロセッサによって解釈されるかまたは実行可能である他の命令フォーマットであってもよい。
【0046】
コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータシステムに命令および/またはデータを提供するよう使用中にコンピュータシステムによってアクセス可能である任意の記憶媒体または記憶媒体の組合せを含む。このような記憶媒体は、光学媒体(たとえばコンパクトディスク(compact disc:CD)、デジタルバーサタイルディスク(digital versatile disc:DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク)、磁気媒体(たとえばフロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープもしくは磁気ハードドライブ)、揮発性メモリ(たとえばランダムアクセスメモリ(RAM)もしくはキャッシュ)、不揮発性メモリ(たとえばリードオンリメモリ(read-only memory:ROM)もしくはフラッシュメモリ)、または、微小電気機械システム(microelectromechanical system:MEMS)ベースの記憶媒体を含み得るがこれらに限定されない。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピューティングシステムに埋め込まれてもよく(たとえばシステムRAMもしくはROM)、コンピューティングシステムに固定的に取り付けられてもよく(たとえば磁気ハードドライブ)、コンピューティングシステムに取外し可能に取り付けられてもよく(たとえば光学ディスクもしくはユニバーサルシリアルバス(Universal Serial Bus:USB)ベースのフラッシュメモリ)、または、有線ネットワークもしくは無線ネットワークを介してコンピュータシステムに結合されてもよい(たとえばネットワークアクセス可能ストレージ(network accessible storage:NAS))。
【0047】
なお、概略の記載において上述されるアクティビティまたは要素のすべてが必要であるわけではなく、特定のアクティビティまたはデバイスの一部が必要ではない場合もあり、上述されたものに加えて、1つ以上のさらに別のアクティビティが実行されてもよく、要素が含まれてもよい。さらに、アクティビティが列挙される順番は必ずしもそれらが実行される順番ではない。さらに、特定の実施形態を参照して概念が説明された。しかしながら、当業者であれば、添付の請求の範囲において記載される本開示の範囲から逸脱することがなければ、さまざまな修正および変更が実施可能であることを理解する。したがって、明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で解釈されるべきであり、すべてのそのような修正例は本開示の範囲内に含まれるよう意図されている。
【0048】
有用性、他の利点および問題の解決手段は、特定の実施形態に関して上記で説明されている。しかしながら、これらの有用性、利点、問題の解決手段、および、任意の有用性、利点または解決手段をもたらし得るかまたはより顕著にし得る任意の特徴は、請求項のいずれかまたはすべての重要、必要または必須である特徴として解釈されるべきでない。さらに、上記に開示された主題は、本願明細書における教示の利益を有する当業者に明白であるさまざまな、但し同等の態様で修正および実施され得るので、上記で開示された特定の実施形態は単に例示的なものに過ぎない。本明細書中に示されるものであって添付の請求の範囲に記載されるもの以外の構造または設計の詳細に対する限定は意図されていない。したがって、上記で開示された特定の実施形態が変更または修正されてもよく、すべてのそのような変更が開示された主題の範囲内にあるとみなされることは明らかである。従って、本明細書において要求される保護は添付の請求の範囲に記載される通りである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7