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特許7531599加工物のレーザ溶接中に溶接された接続部を分析する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】加工物のレーザ溶接中に溶接された接続部を分析する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240802BHJP
   B23K 26/21 20140101ALI20240802BHJP
   H01M 50/516 20210101ALI20240802BHJP
   H01M 50/522 20210101ALI20240802BHJP
【FI】
B23K26/00 P
B23K26/21 G
H01M50/516
H01M50/522
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022550145
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2021053993
(87)【国際公開番号】W WO2021165380
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102020104462.3
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516234100
【氏名又は名称】プレシテック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイザー イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ ルッツ
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー エリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ローレンツ トルステン
(72)【発明者】
【氏名】ノルテ ヨーナス
(72)【発明者】
【氏名】ドンケ アレキシス
(72)【発明者】
【氏名】グラウ サシャ
(72)【発明者】
【氏名】モーサー リューディガー
(72)【発明者】
【氏名】ドン ウェイ クアン
(72)【発明者】
【氏名】ストレベル マチアス
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ビルマンズ
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-271768(JP,A)
【文献】特開2007-326134(JP,A)
【文献】特表2017-535435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ねジョイントまたは平行ジョイントで配列されている加工物(30a、30b)のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法であって、前記方法は、
レーザ溶接中に生成された加工放射光についての第1測定信号(P1、P2)を取得するステップ(S1)と、
前記加工物(30a、30b)によって反射された放射光についての第2測定信号(P3)を取得するステップ(S2)と、
前記第1測定信号(P1、P2)に基づいて、前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在するか否かを判定するステップ(S3)と、
ギャップ(S)が存在していると判定された場合に、前記第2測定信号(P3)に基づいて、溶接接続部が存在するか否かを判定するステップ(S4)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記反射された放射光は、機械加工レーザビームの反射されたレーザ放射光、機械加工領域内に放射されたLED光の反射された放射光、及び前記機械加工領域内に放射されたパイロットレーザビームの反射されたレーザ放射光のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1測定信号(P1、P2)及び/又は前記第2測定信号(P3)は、放射光強度の検出に基づいている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1測定信号(P1、P2)は、レーザ溶接に使用される機械加工レーザビームの波長を上回る、及び/又は前記反射された放射光の波長を上回る第1波長範囲内で取得され、及び/又は、
前記第1測定信号(P1、P2)は、前記レーザ溶接に使用される機械加工レーザビームの前記波長を下回る、及び/又は前記反射された放射光の前記波長を下回る第2波長範囲内で取得される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1測定信号(P1、P2)として取得された前記加工放射光は、赤外スペクトル範囲内の熱放射光、及び/又は可視スペクトル範囲内のプラズマ放射光である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2測定信号(P3)として取得された前記反射された放射光は、赤外スペクトル範囲内、又は可視緑又は青スペクトル範囲内にある、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在するか否かを判定するステップ(S3)は、前記第1測定信号(P1、P2)に基づいてギャップ幅を判定するステップを含み、
前記ギャップ幅が所定のギャップ幅限界値よりも大きい場合に、ギャップ(S)が存在すると判定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在するか否かを判定するステップ(S3)は、前記第1測定信号(P1、P2)が、基準値若しくは基準曲線であるか又はそれを下回るか否かを判定するステップを含み、
前記第1測定信号(P1、P2)が前記基準値若しくは前記基準曲線であるか又はそれを下回る場合に、前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在すると判定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在するか否かを判定するステップ(S3)が、前記第1測定信号(P1、P2)について第1積分値、及び/又は前記第1測定信号(P1、P2)の第1平均値を算定するステップを含み、
前記第1積分値が所定の第1積分値限界値を下回る場合に、及び/又は前記第1平均値が所定の第1平均値限界値を下回る場合に、前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在すると判定される、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1測定信号(P1、P2)は、前記反射された放射光の前記波長を上回る、又は前記レーザ溶接に使用された機械加工レーザビームの前記波長を上回る第1波長範囲内で、及び前記反射された放射光の前記波長を下回る、又は前記レーザ溶接に使用される機械加工レーザビームの前記波長を下回る第2波長範囲内で取得され、前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在するか否かを判定するステップ(S3)は、前記第1波長範囲内で取得された前記第1測定信号(P1)について第1積分値を算定するステップと、前記第2波長範囲内で取得された前記第1測定信号(P2)について第2積分値を算定するステップと、を含み、
前記第1積分値が所定の第1積分値限界値を下回る場合に、及び/又は前記第2積分値が所定の第2積分値限界値を下回る場合に、前記加工物(30a、30b)の間にギャップ(S)が存在すると判定される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2測定信号(P3)のノイズに基いて、溶接接続部が存在するか否かが判定される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2測定信号(P3)の前記ノイズの外れ値出現頻度が所定の第1ノイズ限界値を上回る場合に、
及び/又は前記第2測定信号(P3)の前記ノイズについての積分値が、所定の第2ノイズ限界値を上回る場合に、溶接接続部が存在しないと判定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記加工物(30a、30b)うちの少なくとも1つが、アルミニウム及び/又は銅及び/又はニッケルを含むか、あるいはこれから構成されている、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記加工物のうちの少なくとも1つは、0.20mm乃至0.30mmの厚さを有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記加工物(30a、30b)は、第1電池のダイバータと第2電池のダイバータとを含み、前記電池の前記ダイバータ同士の間の溶接された電気的接触部が、前記溶接接続部として分析される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記加工物は、レーザ溶接中に重ねジョイント又は平行ジョイントで配列されている、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
第1加工物(30a)と第2加工物(30b)とをレーザ溶接する方法であって、前記方法は、
前記加工物(30a、30b)を、前記第1加工物(30a)の第1表面と前記第2加工物(30b)の第1表面とが互いの表面上にあるように配列するステップと、
前記加工物(30a、30b)の間に溶接接続部を形成するように前記加工物(30a、30b)をレーザ溶接するステップであって、前記レーザ溶接するステップは、前記第1加工物(30a)の前記第1表面の裏側の前記第1加工物(30a)の第2表面上に機械加工レーザビームを放射することにより、及び/又は前記第2加工物(30b)の前記第1表面の裏側の前記第2加工物(30b)の第2表面上に機械加工レーザビームを放射することにより行われる、ステップと、
請求項1~16のうちの1項に記載の前記溶接接続部を分析する方法を実行するステップと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記加工物(30a、30b)の前記第1表面が、少なくとも1つの領域に接触している、及び/又は、ギャップが、前記加工物(30a、30b)の前記第1表面同士の間の別の領域内に存在している、請求項17に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工物のレーザ溶接中に、特にレーザ溶接加工中に、溶接された接続部を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザビームを使用して加工物を機械加工するためのレーザ機械加工システムにおいて、レーザ光源から又はレーザ光ファイバの1つの端部から放出するレーザビームは、ビーム誘導及び集束光学系によって機械加工されるべき加工物上に集束させられるか又はコリメートされる。機械加工は、例えば、レーザ溶接を含んでよい。レーザ機械加工システムは、レーザ機械加工装置、例えば、レーザ機械加工ヘッド、特に、レーザ溶接ヘッドを含んでよい。特に、加工物をレーザ溶接する場合、機械加工の品質を保証するために溶接過程を連続的に監視することが重要である。これは、機械加工欠陥の検出を含む。
【0003】
機械加工過程は、典型的には、加工ビーム、加工光、又は加工放出とも呼ばれる加工放射光についての様々なパラメータを取得して分析することによって監視される。これらは、例えば、機械加工中の加工物表面からのプラズマ放射光、熱放射光等の光の赤外領域内の加工放出、又は光の可視領域内の加工放出を含む。次いで、査定がなされ、対応する測定信号がチェックされて、特定の条件が満たされているか否かを判定する。1つ又は複数の測定信号が、事前に規定された機械加工中の条件を満たす場合、欠陥信号が出力される。したがって、機械加工された加工物が、「良好」又は「良好な部分」(すなわち、更なる機械加工又は販売に適している)、あるいは「不良」又は「不良部分」(すなわち、スクラップ)と特徴付けられてよい。機械加工過程の連続的な監視は、典型的には、機械加工の実行中にリアルタイムで行われ、そのため、オンライン加工監視又はインライン加工監視とも呼ばれる。
【0004】
特許文献1が、レーザ溶接過程を監視するためのセンサモジュールを記載しており、該センサモジュールは、加工放射光についての様々なパラメータを検出し、それらを測定信号として出力する複数の検出器又はセンサを含む。
【0005】
バッテリは、エレクトロモビリティの分野において、中心的役割を果たしている。「バッテリセル」とも呼ばれる、個々のバッテリセルは、互いに接続されている、すなわち接触させられている。複数のバッテリセルの複合体は、「バッテリモジュール」と呼ばれる。接続部は、通常、レーザ溶接によって作成される。バッテリセルの導体は、典型的には重ねジョイントでレーザ溶接によって互いに接続されている。例えば、溶接シームは、いわゆる「Iシーム」形状を有する。材料は、通常、アルミニウム及び銅である。典型的な材料の接続又は組合せは、銅-銅、アルミニウム-アルミニウム、及び銅-アルミニウムである。バッテリセルをバッテリモジュールに接続すると、それで良好なモジュール構成を求める場合に、接続された加工物同士の間に電気接触部が存在する、すなわち電流が接続された加工物同士の間で、又は溶接シームを通して流れ得ることが重要である。このときだけ接触部は良好である。
【0006】
レーザ溶接中に、特にIシームを有する重ねジョイントで典型的な欠陥パターンが生じることがある。これは、加工物同士の間にギャップを含む。溶接接続部が存在する場合、すなわち、ギャップが加工物の溶解された材料によってブリッジされている場合、すなわち、ギャップが存在するにもかかわらず、溶接されるべき加工物同士の間に電気的接触部が存在する場合、この欠陥は許容されてよい。これは、「ギャップブリッジング溶接」又は「(電気的)接触部を有するギャップ」とも呼ばれる。別の典型的な欠陥パターンは、「フォールスフレンド(false frend):潜在欠陥」(見た目では溶接されたように見えるが実際には溶接されていない態様)と呼ばれる。接合された加工物同士の間にはギャップが存在し、ギャップはブリッジングされておらず、そのため、加工物同士の間に(電気的)接触部が存在しない。これは、「ギャップブリッジングを有しない溶接」又は「(電気的)接触部を有しないギャップ」とも呼ばれる。すなわち、加工物同士の間のギャップは、可能ならば存在すべきでなく、又は可能な限り小さくなければならない。
【0007】
特にレーザ溶接が実行された後の検査中に、適切な溶接部が、すなわち「良好な溶接部」又は「ゼロギャップを有する溶接部」とも呼ばれる、ギャップを有しない溶接接続部が存在するか否か、又はギャップを有するがギャップブリッジングを有する溶接接続部、すなわちギャップを有する溶接ジョイント、もしくはギャップを有するがギャップブリッジングを有しない溶接部が存在するか否か、を上面視において視覚的に識別することは不可能である。現在、溶接加工中にフォールスフレンド(潜在欠陥)を検出する方法は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】独国特許出願公開第102019122047号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、レーザ溶接中に簡便及び迅速に、加工物同士の間の溶接接続部を分析又は査定することである。
【0010】
本発明の目的は、レーザ溶接中に、ギャップを有しない溶接部とギャップを有する溶接部との間の簡便及び迅速な区別を可能にすることである。
【0011】
特に、本発明の目的は、加工物同士の間にギャップを有する溶接部の場合に、ギャップブリッジングを有する、すなわち加工物同士の間に電気的接触部を有するギャップ、又は接続部を有しない、すなわち加工物同士の間に電気的接触部を有しないギャップが、存在するか否かを認知することである。
【0012】
本発明の更なる目的は、特に、溶接接続部のレーザ溶接加工中に、リアルタイムの分析又は識別を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。有利な改善及び発展が、従属請求項の主題である。
【0014】
本発明は、測定信号を検出して適切に評価するという考えに基づいており、特にレーザ溶接加工中には、溶接部又は溶接接続部を分析及び区別するために、溶接接続部のレーザ溶接中に生成された加工放射光、及び反射されて戻ったレーザ放射光に基づいている。測定信号は、センサによって、特にフォトダイオードによって検出されてよい。
【0015】
本発明の一態様に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析又は査定する方法が提供され、この方法は、レーザ溶接中に生成された加工放射光についての第1測定信号を取得するステップと、加工物によって反射されたレーザ放射光についての第2測定信号を取得するステップと、第1測定信号に基づいて、接合された加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定するステップと、ギャップが存在していると判定された場合に、第2測定信号に基づいて、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在するか否かを判定するステップと、を含む。ここで、反射された放射光は、(機械加工)レーザビームの反射されたレーザ放射光、反射されたLED放射光又は反射されたLED光、及び反射されたパイロットレーザ放射光のうちの少なくとも1つを含んでよい。方法は、LED放射光によって照射すること又はLED光によって照明すること、特に、現在の機械加工位置を照明すること、又は(機械加工)レーザビームの現在の入射点周辺領域を照明することを更に含んでよい。方法は、パイロットレーザビームを放射すること、特に、それを現在の機械加工位置内に又は(機械加工)レーザビームの現在の入射点周辺の領域内に放射することを更に含んでよい。反射された放射光又はパイロットレーザビーム又はLED光は、任意の好ましい波長、特に赤外範囲内又は可視の緑若しくは青範囲内の波長を有してよい。特に、LED光源又はパイロットレーザビーム源は、例えば、約630nm又は約530nmの波長を有してもよい。好ましくは、機械加工領域内に放射されたLED光又はパイロットレーザビームのビーム経路の少なくとも一部が、機械加工レーザビームのビーム経路に同軸で延在する。
【0016】
本発明に従う方法は、それ故に、接合された加工物同士の間にギャップが存在するか否かを検出することを可能にする。さらに、本発明に従う方法は、溶接接続部が存在するか否かを認知することを可能にする。溶接接続部は、電気的及び/又は機械的(すなわち、物理的)溶接接続部と呼ばれてよく、すなわち加工物同士の間に電気的又は機械的接触部が存在する。接合された加工物同士の間にギャップが存在しない(いわゆるゼロギャップ)場合に、又はギャップが存在するが、それがブリッジングされている(ギャップブリッジングを有するギャップ)場合に、溶接接続部が存在する。ギャップがブリッジングされていない場合には、溶接接続部は存在しない。したがって、方法が用いられて、例えば、バッテリセルをバッテリモジュールに接触させる場合に、溶接された電気的接続部を分析する、特に接合された加工物同士の間の電気的接触部の欠如を検出する。このように、本発明に従うと、良好な溶接部又はギャップのない溶接部が、ギャップを有する溶接部から識別され得、そして、ギャップを有する溶接部が、ギャップブリッジングを有する溶接部とギャップブリッジングを有しない溶接部とに分けられ得る。
【0017】
また、溶接部は(i)適切な溶接部、すなわち「良好な溶接部」又は「ゼロギャップ溶接部」とも呼ばれるギャップを有しない溶接部、(ii)接合された加工物同士の間に(電気的又は機械的)接触部が存在するようなギャップ及びギャップブリッジングを有する溶接部、並びに(iii)接合された加工物同士の間に(電気的又は機械的)接触部が存在しないようなギャップを有するがギャップブリッジングを有しない溶接部に分類され得る。分類は、レーザ溶接中、すなわち溶接部を作成するためのレーザ溶接加工中に実行されることが好ましい。
【0018】
好ましくは、レーザ溶接によって接合された加工物は、溶接接続部が存在すると判定された場合に、「良好」又は「良好部分」と評価又は採点され、そして溶接接続部が存在しないと判定された場合に、「不良」又は「不良部分」と評価又は採点される。それに基づいて、レーザ溶接はまた、開ループ又は閉ループ制御されてよい。例えば、供給されたレーザパワー、レーザ機械加工装置と加工物との間の距離、焦点位置、及び/又はレーザ溶接に使用されたレーザビームの焦点位置等の機械加工パラメータが、特にリアルタイムで、調整又は制御されてよい。方法は、溶接接続部が存在しないと判定された場合に、加工物についての誤差を出力すること、及び/又は、ギャップ、特に所定の値よりも大きいギャップ幅を有するギャップが存在すると判定された場合に、加工物に対する警告を出力すること、を更に含んでよい。
【0019】
例示的な一実施形態では、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在するか否かについての、第2測定信号に基づく決定は、ギャップが存在すると事前に判定された場合にのみ実行され得る。
【0020】
本発明に従う方法の少なくとも1つのステップが、特にリアルタイムで溶接部のレーザ溶接中に実施されてよい。したがって、本発明に従う方法は、「インライン方法」と呼ばれてよい。第1及び/又は第2測定信号は、好ましくはレーザ溶接中に取得される。同様に、ギャップが存在するか否かについての判定、及び/又は溶接接続部若しくはギャップブリッジングが存在するか否かについての判定が、レーザ溶接中に実行されてよい。本発明に従う方法の全体は、レーザ溶接中に実行されることが好ましい。
【0021】
本発明に従う方法は、特に重ねジョイント又は平行ジョイントでのレーザ溶接のために使用されてよい。
【0022】
第1測定信号及び/又は第2測定信号は、放射光強度の測定値に基づいてよい。特に、第1測定信号は、加工放射光の放射光強度の測定値に基づいてよく、及び/又は第2測定信号は、反射されたレーザ放射光の放射光強度の測定値に基づいてよい。レーザ溶接中に生成された加工放射光は、光の赤外波長範囲内の熱放射、及び/又は光の可視領域内のプラズマ放射光を含んでよい。
【0023】
第1測定信号は、レーザ溶接に使用されたレーザビームの波長を上回る第1波長範囲内で、及び/又はレーザ溶接に使用されたレーザビームの波長を下回る第2波長範囲内で取得されてよい。それに代替又は追加して、第1測定信号は、レーザ溶接に使用されたレーザビームの波長を下回る、及び/又は反射された放射光の波長を下回る第2波長範囲内で取得されてもよい。第1波長範囲は、光の赤外波長範囲に対応してよい。換言すれば、第1波長範囲内の第1測定信号は、熱放射に対応してよい。第2波長範囲は、可視光の波長範囲に対応してよい。換言すれば、第2波長範囲内の第1測定信号は、プラズマ放射に対応してよい。第1波長範囲内の第1測定信号は、第1波長範囲内のスペクトル感度を有する少なくとも1つの第1フォトダイオードによって取得されてよい。第2波長範囲内の第1測定信号は、第2波長範囲内のスペクトル感度を有する少なくとも1つの第2フォトダイオードによって取得されてよい。換言すれば、第1測定信号は、第1波長範囲内と第2波長範囲内とで別個に取得されるか、又は少なくとも1つのフォトダイオードによってそれぞれ取得されることが好ましい。
【0024】
第2測定信号、又は反射された放射光、特に反射されたレーザ放射光、あるいはレーザ溶接に使用されるレーザビーム、又は放射されたパイロットレーザビーム若しくは放射されたLED光は、赤外、青又は緑の波長範囲又はスペクトル範囲内であってよい。換言すると、赤外レーザビーム源は、(機械加工)レーザビームのための又はパイロットレーザビームのためのビーム源として使用されてよい。その代替として、レーザ溶接に使用されるレーザビームの、又はパイロットレーザビームのレーザビーム源は、緑又は青のスペクトル又は波長範囲内で放出してもよい。
【0025】
すなわち、第1測定信号は、熱放射を検出するためには、第1波長範囲内の、特に赤外範囲内の加工放射光の放射光強度の検出に基づいてよく、及び/又は、プラズマ放射光を検出するために、第2波長範囲内の、特に可視範囲内の加工放射光の放射光強度の検出に基づいてよい。第1波長範囲内で取得された第1測定信号は、したがって「熱信号」と呼ばれてよい。第2波長範囲内で取得された第1測定信号は、したがって「プラズマ信号」と呼ばれてよい。
【0026】
レーザ溶接中に生成された加工放射光は、第1測定信号として、少なくとも1つの(第1及び/又は第2)フォトダイオードによって取得されてよく、及び/又は反射された放射光は、第2測定信号として、少なくとも1つの(第3)フォトダイオードによって取得されてよい。第3フォトダイオードは、レーザ溶接に使用されるレーザの波長範囲内にスペクトル感度を有してよい。換言すれば、第1及び第2測定信号は、別個に取得されるか、又は少なくとも1つのフォトダイオードによってそれぞれ取得されることが好ましい。フォトダイオードは、互いに異なるスペクトル感度を有することが好ましい。
【0027】
加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定することは、第1測定信号に基づいてギャップ幅を決定することを含んでよい。この場合に、ギャップ幅が、所定のギャップ幅限界値よりも大きい場合に、ギャップが存在すると判定されてよい。ギャップ幅限界値は、50μm乃至200μm、特に100μm乃至175μmであってよく、あるいは50μm、100μm、又は150μmであってもよい。
【0028】
例えば、ギャップ幅は、溶接部又は溶接シームに隣接しているが、その外側にある接合された加工物同士の間の最短距離として規定されてよい。例えば、ギャップ幅は、例えば、重ねジョイント又は平行ジョイントの場合に、互いに対向して配置された加工物表面同士の間の最短距離として規定されてよい。
【0029】
加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定することは、第1測定信号が基準値又は基準曲線を下回るか否かを判定することを含んでよい。第1測定信号が、第1波長範囲及び第2波長範囲について取得された場合に、第1波長範囲の第1測定信号が、第1基準値又は基準曲線を下回るか否か、及び第2波長範囲の第1測定信号が、第2基準値又は基準曲線を下回るか否かが判定されてよい。基準曲線は、より低い包絡線であってよい。この場合、測定信号が基準値又は基準曲線を下回る場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定されてよい。加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定することは、第1測定信号が基準値又は基準曲線を下回るか否かを判定することを更に含んでよい。この場合、測定信号が基準値又は基準曲線を下回る場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定されてよい。
【0030】
加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定することは、第1測定信号について第1積分値を算定することを含んでよい。この場合、第1積分値が所定の第1積分値限界値を下回る場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定されてよい。第1積分値は、第1測定信号の少なくとも1つの領域上において算定されてよい。
【0031】
その代替又は追加として、加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定することは、第1測定信号について第1平均値を算定することを含んでよい。この場合、第1平均値が所定の第1平均値限界を下回る場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定されてよい。第1平均値は、第1測定信号の少なくとも1つの領域において算定されてよい。
【0032】
その代替又は追加として、加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定することは、第1測定信号の第1外れ値出現頻度を判定することを含んでよい。この場合、第1測定信号の第1外れ値出現頻度が所定の第1外れ値限界値を上回る場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定されてよい。第1の外れ値出現頻度は、第1測定信号の少なくとも1つの領域において算定されてよい。
【0033】
第1測定信号は、第1波長範囲及び第2波長範囲についてそれぞれ取得された場合に、加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定するために、第1波長範囲内で取得された第1測定信号、すなわち熱信号にわたって第1積分値を算定するために、及び第2波長範囲内で取得された第1測定信号、すなわちプラズマ信号にわたって第2積分値を算定するために使用されてよく、第1積分値が、所定の第1積分値限界値を下回る場合、及び/又は第2積分値が、所定の第2積分値限界値を下回る場合、加工物同士の間にギャップが存在すると判定さる。
【0034】
第1測定信号は、第1波長範囲及び第2波長範囲についてそれぞれ取得された場合に、加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定するために、第1波長範囲内で取得された第1測定信号、すなわち熱信号にわたって第1平均値を算定するために、及び第2波長範囲内で取得された第1測定信号、すなわちプラズマ信号にわたって第2の平均値を算定するために使用されてよく、第1平均値が、所定の第1平均値限界値を下回る場合に、及び/又は第2平均値が、所定の第2平均値限界値を下回る場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定される。
【0035】
第1測定信号が、第1波長範囲及び第2波長範囲についてそれぞれ取得された場合に、加工物同士の間にギャップが存在するか否かを決定することは、第1波長範囲内で取得された第1測定信号、すなわち温度信号の第1外れ値出現頻度を決定すること、及び第2波長範囲内で取得された第1測定信号、すなわちプラズマ信号の第2の外れ値出現頻度を計算することを含んでよい。この場合、第1外れ値出現頻度が、所定の第1外れ値限界値を上回る場合に、及び/又は第2外れ値出現頻度が、所定の第2外れ値限界値を上回る場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定されてよい。
【0036】
外れ値出現頻度は、第1測定信号の値が、第1測定信号についての所定の包絡曲線の外側に現れる頻度又は数として規定されてよい。外れ値の出現頻度は、考慮された及び/又は所定の時間間隔又は測定間隔、あるいは、第1測定信号の考慮された及び/又は所定の領域に基く百分率として指定されてもよい。その代替として、外れ値出現頻度は、絶対値で指定されてもよい。第1測定信号が、第1波長範囲内で、及び第2波長範囲内で取得される場合に、第1の外れ値出現頻度は、第1波長範囲内の第1測定信号の値が、第1測定信号についての所定の第1の包絡線の外側に現れる頻度又は数に基づいて別個に判定されてよく、そして、第2の外れ値出現頻度は、第2波長範囲内の第1測定信号の値が、第1測定信号についての所定の第2の包絡線の外側に現れる頻度又は数に基づいて別個に判定されてよい。
【0037】
溶接接続部又はギャップブリッジングが存在するか否かについての判定は、第2測定信号のノイズに基づいて判定されてよい。ノイズは、例えば、所定の時間間隔又は測定間隔にある、あるいは第2測定信号の考慮された及び/又は所定の範囲内の、第2測定信号の平均値からの偏差として判定されてよく、及び任意選択的で利得係数を有してよい。ノイズはまた、第2測定信号の「ノイズ信号」又は「ノイズ成分」と呼ばれてよい。
【0038】
第2測定信号のノイズの外れ値出現頻度が、所定の第1ノイズ限界値を上回る場合に、及び/又は第2測定信号のノイズについての積分値が、所定の第2ノイズ限界値を上回る場合に、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在しないと判定されてよい。
【0039】
第2測定信号のノイズの外れ値出現頻度は、ノイズの値が、ノイズについての所定の包絡曲線及び/又は所定の許容範囲の外側に現れる頻度又は数として規定されてよい。外れ値出現頻度は、考慮された時間間隔及び/又は測定間隔、あるいは第2測定信号の範囲に基く百分率として指定されてよい。その代替として、外れ値出現頻度は、絶対値で指定されてもよい。
【0040】
加工物のうちの少なくとも1つが、アルミニウム及び/又は銅及び/又はニッケルを含むか、又はそれから構成されてよい。特に、加工物のうちの1つは、アルミニウムから構成されてよく、加工物のうちの別の1つは、銅を含んでもよく、後者は任意選択でニッケルを用いて(例えば、8μmの層厚で)被覆可能である。被覆は、電気的に適用されてよい。
【0041】
加工物のうちの少なくとも1つは、0.10mm乃至0.50mmの厚さ、好ましくは0.15mm乃至0.35mmの厚さ、特に好ましくは0.20mm乃至0.30mmの厚さを有してよい。
【0042】
加工物は、金属シート若しくはダイバータであってよく、又はこれを含んでもよい。加工物のうちの1つは、バッテリ、バッテリモジュール、及び/若しくはバッテリセルであってよく、並びに/又は加工物のうちの別の1つは、ダイバータを含んでもよい。導体とバッテリセルとの間の溶接された電気的接触部が、溶接部として分析されてよい。
【0043】
本開示の更なる一態様に従って、第1加工物と第2加工物をレーザ溶接する方法が提供され、該方法は、第1加工物の第1表面と第2加工物の第1表面とが、互いの表面上にあるように、又は互いに接触しているように加工物を配列するステップと、第1加工物の第1表面と対向している第1加工物の第2表面上にレーザビームを放射することによって、及び/又は、第2加工物の第1表面の裏側の第2加工物の第2表面上にレーザビームを放射することによって、加工物同士の間に溶接接続部を形成するように加工物をレーザ溶接するステップと、先行する主張のうちのいずれか1つに従って溶接接続部を分析する方法を実行するステップと、を含む。
【0044】
第1加工物の第1表面と第2表面、及び/又は第2加工物の第1表面と第2表面は、互いに平行に形成されてよい。第1加工物及び/又は第2加工物は、金属シート又はダイバータとして構成されてよく、あるいは金属シート又はダイバータを含んでもよい。加工物の第1及び第2表面は、加工物の主表面と呼ばれてよい。
【0045】
加工物の第1表面同士は、少なくとも1つの領域内で接触してよい。別の領域内で、ギャップが、加工物同士の間に存在してよい。
【0046】
加工物は、加工物同士の間のギャップが、存在しないか、又は可能な限り小さいように配列されてよい。加工物は、重ねジョイント又は平行ジョイントで配列されてよい。
【0047】
本発明に従う方法は、レーザ機械加工システムによって実行されてよく、該レーザ機械加工システムは、レーザビームを使用して加工物を機械加工するためのレーザ機械加工装置、特にレーザ溶接ヘッド、及びセンサモジュールを含む。レーザ機械加工装置は、加工放射光をレーザビームのビーム経路から外に結合するためのビームスプリッタを含んでよい。レーザ機械加工装置は、加工放射光を外れて結合するための光学出力を含んでもよく、センサモジュールは、レーザ機械加工装置から出てくる加工放射光内で結合するための光学入力を含んでよい。センサモジュールは、少なくとも1つの検出器を含み、該検出器は、加工放射光を検出し、そして反射された放射光、この例では(機械加工)レーザビームの反射されたレーザ放射を検出する。例示的な一実施形態では、レーザ機械加工システムは、LED光を放射するLED照明ユニットを含んでよい。この場合、センサモジュールによって検出された反射された放射光は、反射されたLED放射光又は反射されたLED光を含む。更なる例示的な一実施形態では、レーザ機械加工システムは、パイロットレーザビームを放射するパイロットレーザユニットを含んでよい。この場合、センサモジュールによって検出された反射された放射光は、反射されたパイロットレーザ放射光、又は反射されたLED光を含む。パイロットレーザユニットは、パイロットレーザビーム源を含んでよい。レーザ機械加工システムは、例えば約630nm又は約530nmの波長を有するパイロットレーザビームを生成するためのパイロットレーザビーム源を含んでよい。その代替又は追加として、レーザ機械加工システムは、LED光を生成するためのLED源を含んでよい。LED光は、例えば、ビームスプリッタによって、機械加工レーザビームのビーム経路内に、又はレーザ機械加工装置内に結合されてよい。センサモジュールは、レーザ機械加工装置に結合されてよい。少なくとも1つの検出器は、加工放射光についての少なくとも1つのビームパラメータ、特に、特定の波長範囲内での強度を検出するように構成されてよい。少なくとも1つの検出器は、検出に基づいて測定信号を出力するように更に構成されてよい。検出器は、フォトダイオード、及び/又はフォトダイオードアレイ、及び/又はカメラ、例えばCMOS又はCCDベースカメラを備えていてよい。センサモジュールは、いくつかの検出器を含んでよく、該検出器は、異なる波長の又は異なる波長範囲内の加工放射光を検出するようにそれぞれ構成されている。レーザ機械加工システムは、制御ユニットを更に含んでよい。制御ユニットは、少なくとも1つの検出器からアナログ測定信号を受信するように構成されてよい。制御ユニットは、溶接接続部を分析するために、本開示内で列挙された実施形態のうちの1つに従う方法を実行するように構成されてよい。制御ユニットは、分析の結果に基づいて上記されたように、レーザ機械加工システム、特にレーザ機械加工装置を、開ループ又は閉ループ制御するように更に構成されてよい。
【0048】
それぞれの検出器は、特定の波長で、又は特定の波長範囲内でのみ感知可能であってよい。例えば、第1検出器が、光の可視領域内で感知可能であってよく、第2検出器が、赤外領域内で感知可能であってよく、及び/又は第3検出器が、レーザ機械加工装置のレーザ放出波長範囲内で感知可能であってよい。検出器は、そのため、それらが異なる波長範囲内で感知可能であるように構成されてよい。例示的な一実施形態によれば、センサモジュールは、プラズマ加工放出又はプラズマ放射光を検出するために、光の可視スペクトル内で感知可能であるフォトダイオードを有する第1検出器と、加工放出又は熱放射光を検出するために、赤外波長範囲内で感知可能であるフォトダイオードを有する第2検出器と、レーザ機械加工装置のレーザの戻り反射を検出するために、レーザ放出波長範囲内で感知可能であるフォトダイオードを有する第3検出器と、を備えている。したがって、本発明に従う方法は、レーザ機械加工システムを用いて実行されてよい。特に、第1測定信号、特に熱信号及び/又はプラズマ信号、並びに第2測定信号は、上述されたセンサモジュールによって取得されてよい。
【0049】
本開示に従って、ギャップを検出するための方法、特に接続部を有する又は接触部を有するギャップと、接続部を有しない又は接触部を有しないギャップとを識別するための方法が提供され、特にフォトダイオードのようなセンサを使用する方法が、提供される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本開示の実施形態に従って溶接接続部を分析する方法を実行するための、レーザビームを用いて加工物を機械加工するレーザ機械加工システムについての概略図である。
図2図1に示すレーザ機械加工システムのセンサモジュールについての詳細概略図である。
図3】本開示の実施形態に従って、レーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法のフローチャートである。
図4A】本開示の実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって分析される溶接接続部を示す図である。
図4B】本開示の実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって分析される溶接接続部を示す図である。
図4C】本開示の実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって分析される溶接接続部を示す図である。
図4D】本開示の実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって分析される溶接接続部を示す図である。
図5A】実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって取得される測定信号の時間曲線の例を示す図である。
図5B】実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって取得される測定信号の時間曲線の例を示す図である。
図5C】実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって取得される測定信号の時間曲線の例を示す図である。
図5D】実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって取得される測定信号の時間曲線の例を示す図である。
図6】本開示の実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によるギャップ幅の決定を例として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明が、図を参照して以下において詳細に説明される。
特に断らない限り、同じ参照記号が、以下では同じ要素、及び等価な効果を有する要素に使用される。
【0052】
図1は、本開示の実施形態に従って(機械加工)レーザビームを用いて加工物を機械加工するためのレーザ機械加工システムについての概略図である。図2は、図1に示すレーザ機械加工システムのセンサモジュールについての詳細概略図である。
【0053】
レーザ機械加工システム1は、レーザ機械加工装置10と、センサモジュール20と、制御ユニット40と、を備えている。
【0054】
レーザ機械加工装置10は、例えば、レーザ機械加工ヘッドとして、特にレーザ溶接ヘッドとして構成されてよく、そして機械加工されるべき加工物30a、30b上にビーム誘導及び集束光学系(図示せず)を用いてレーザビーム(図示せず)を集束又はコリメートすることにより、機械加工又は機械加工処理を実行するように構成されてよい。機械加工は、特にレーザ溶接を含んでもよい。機械加工中に、加工放射光11が生成され、これが、レーザ機械加工装置10に入り、ビームスプリッタ12によってレーザビームのビーム経路の外で結合される。加工放射光は、センサモジュール20内に誘導されて、そこで少なくとも1つの検出器D1、D2、D3に入射する。
【0055】
機械加工のために、加工物30a、30bは、これらが重なるように配列されてよい。加工物30a、30bは、特に平行ジョイント又は重ねジョイント状に配列されてよい。
【0056】
例えば、図1に示すように、加工物30aの下側表面は、加工物30bの上側表面と対向しており、レーザビームは、加工物30aの上側表面上に放射されている。加工物30a、30bの上側表面及び下側表面はまた、加工物30a、30bの主面又は主表面と呼ばれてよい。
【0057】
示すように、レーザビームは、加工物30aの上側表面又は上側主表面上に放射され、加工物30a、30bの主表面に実質的に垂直であることが好ましい。したがって、レーザビームは、加工物30a、30bの端縁上に、又は主表面に平行に放射されない。
【0058】
したがって、結果として生じる加工放射光11は、加工物30aの上側表面又は上側主表面から放出される。加工放射光11は、それで、加工物30aの上側表面から取得されることが好ましい。同様に、反射放射光は、工作物30aの上側表面から取得されることが好ましい。示さない例示的な一実施形態では、レーザ機械加工システムは、加工物上の機械加工領域にLED光を放射するLED照明ユニットを含んでもよい。この場合、センサモジュールによって検出された反射放射光は、反射LED放射光又は反射LED光を含む。示さない更なる例示的な一実施形態では、レーザ機械加工システムは、加工物上の機械加工領域内にパイロットレーザビームを放出するためのパイロットレーザユニットを含んでもよい。この場合、センサモジュールによって検出された反射放射は、反射パイロットレーザ放射光又は反射LED光を含む。パイロットレーザユニットは、パイロットレーザビーム源を含んでもよい。
【0059】
特に、加工物30a、30bのレーザ溶接のために、加工物30a、30bは、このような態様に配列された加工物30a、30bの間にギャップが存在しないように、又はギャップができる限り小さいように、重ね又は平行ジョイントで配列されるべきである。示すように、加工物30a、30bの間に、すなわち、加工物30bの上側表面と加工物30aの下側表面との間に(望ましくない)ギャップが存在している。加工物30a、30bを平面視しただけでは、特に、加工物30aの上側表面、又は加工物30bの下側表面を平面視しただけでは、加工物30a、30bの間にギャップが存在するか否かが判らない。
【0060】
図2に示すように、センサモジュール20は、加工放射光11の強度のような様々なパラメータを検出し、それに基づく測定信号を出力するように構成された複数の検出器又はセンサD1、D2、D3を含むことが好ましい。それぞれの検出器D1、D2、D3は、フォトダイオード又は画素アレイを含んでもよい。検出器は、可視スペクトル範囲用のフォトダイオード又はセンサ、赤外スペクトル範囲用のフォトダイオード又はセンサ、及びレーザビーム又は放射されたパイロットレーザビーム若しくは放射されたLED光の波長範囲用のフォトダイオード又はセンサを含むことが好ましい。さらに、センサモジュール20は、加工放射光11を分割して、それを対応する検出器D1、D2、D3に方向付けるための複数のビームスプリッタ221、222を含んでもよい。ビームスプリッタ221、222は、部分的に透過性のミラーとして構成されてよく、実施形態に従って波長選択性であってよい。
【0061】
制御ユニット40は、センサモジュール20に接続されて、検出器D1、D2、D3からの測定信号を受信する。制御ユニット40は、検出器D1、D2、D3からの測定信号を記録するように構成されてよい。制御ユニット40は、レーザ機械加工の機械加工結果を判定及び/又は分析するように構成され、特に溶接ジョイントを分析するように構成されている。制御ユニット40は、分析の結果に基づいてレーザ機械加工装置10を制御するように更に構成されてよい。
【0062】
レーザ機械加工システム1は、本開示の実施形態に従って、レーザ機械加工処理、特にレーザ溶接を実行するように構成されてよく、そして加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析するための方法を実行するように構成されてよい。
【0063】
図3は、本開示の実施形態に従って加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法のフローチャートを示す。
【0064】
方法は、レーザ溶接中に生成された加工放射光についての第1測定信号を取得することから始まる(ステップS1)。方法は、加工物によって反射された放射光についての第2測定信号を取得することを更に含む(ステップS2)。実施形態に従って、第1測定信号の取得と、第2測定信号の取得とが、同時に実行されてよい。それに続いて、第1測定信号に基づいて、加工物同士の間にギャップが存在するか否かが判定される(ステップS3)。ギャップが存在すると判定された場合に、第2測定信号に基づいて2つの加工物の間に溶接接続部又はギャップブリッジングが存在するか否かが判定される(ステップS4)。換言すれば、加工物同士の間に電気的又は機械的接触部が存在するか否かが判定される。
【0065】
そのため、方法は、接続された加工物同士の間にギャップが存在するか否かを検出することを可能にする。方法はまた、ギャップブリッジング、すなわち溶接接続部、特に電気的及び機械的溶接接続部の有無を識別することを可能にする。特に、方法が使用されることにより、溶接された電気的接続部を分析する、例えば接合された加工物同士の間の電気的接触部の欠如を認識してよい。そのため、適切な溶接部、すなわち「良好な溶接部」若しくは「0ギャップ溶接部」とも呼ばれるギャップを有しない溶接部、又は接合された加工物同士の間に電気的接触部が存在するような、ギャップを有する及びギャップブリッジングを有する溶接部、又は接合された加工物同士の間に電気的接触部が存在しないような、ギャップを有するがギャップブリッジングを有しない溶接部、を互いに識別することが可能である。
【0066】
第1測定信号は、2つの異なる波長範囲内で取得されることが好ましい。例えば、第1測定信号は、反射放射光の波長を上回る、又はレーザ溶接に使用されるレーザビームの波長を上回る第1波長範囲内の、特に赤外範囲内の加工放射光の放射光強度の検出に基づいて取得されてよく、さらに反射放射光の波長を下回る、又はレーザビームの波長を下回る第2波長範囲内の、特に可視範囲内の加工放射光の放射光強度の検出に基づいて取得されてよい。第1波長範囲内で取得された第1測定信号は、熱放射に対応してよく、及び「熱信号」と呼ばれてよい。第2波長範囲内で取得された第1測定信号は、プラズマ放射光と対応してよく、及び「プラズマ信号」と呼ばれてよい。しかし、これらの波長範囲のうちのただ1つのものにおける第1測定信号のみを取得又は評価することも可能である。上述のように、反射放射光は、反射パイロットレーザビームの反射レーザ放射光、又は溶接加工に使用された(機械加工)レーザビームの反射レーザ放射光、又は放射LED光の反射レーザ放射光を含んでよい。
【0067】
図1及び2の例示的な実施形態では、プラズマ信号は、検出器D1によって取得されてよく、該検出器は、反射放射光又はレーザビームの波長を下回る波長範囲内で、特に光の可視波長範囲内で感知可能であることにより、プラズマ加工放出の強度を検出する。熱信号は、検出器D2によって取得されてよく、該検出器は、反射放射光又はレーザビームの波長を上回る波長範囲内で、特に光の赤外波長範囲内で感知可能であることにより、赤外又は熱スペクトル範囲内における加工放出の、すなわち熱放射の強度を検出する。第2測定信号は、検出器D3によって検出されてよく、該検出器は、反射放射光又はレーザビームの波長範囲内で感知可能であることにより、レーザ機械加工装置のレーザの戻り反射を検出する。
【0068】
実施形態に従って、加工物同士の間にギャップが存在するか否かを判定すること(ステップS3)は、プラズマ信号について第1積分値を算定し、熱信号について第2積分値を算定する。この場合、第1積分値が所定の第1積分値限界値以下である場合に、及び/又は第2積分値が所定の第2積分値限界値以下である場合に、加工物同士の間にギャップが存在すると判定されてよい。
【0069】
実施形態に従って、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在するか否かを判定すること(ステップS4)は、第2測定信号についてのノイズに基づいてよい。この場合、第2測定信号のノイズについての外れ値出現頻度が所定の第1ノイズ限界値を上回る場合に、及び/又は、第2測定信号のノイズについての積分値が所定の第2ノイズ限界値を上回る場合に、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在しないと判定されてよい。ノイズは、好ましくは、所定の時間間隔又は測定信号における、特に所定の因子によって増幅された第2測定信号の平均値からの偏差として規定されてよい。平均値は、所定のものであってよく、又は第2測定信号に基づいて決定されてよい。
【0070】
実施形態に従うと、ステップS1~S4のうちの少なくとも1つは、溶接接続部のレーザ溶接中に実行されてよい。
【0071】
加工物のうちの1つは、バッテリ、バッテリモジュール、及び/又はバッテリセルを含み、加工物のうちの別の1つは、ダイバータを含むことが好ましい。この場合、本開示の実施形態に従う方法が使用されて、ダイバータと、バッテリ、バッテリモジュール、又はバッテリセルとの間の溶接電気接触部を分析してよい。特に、加工物のうちの1つは、アルミニウムから構成されてよく、加工物のうちの別の1つは、銅を含み、ニッケルで被覆されてよい。被覆は、電気的に適用されてよい。加工物のうちの少なくとも1つは、0.10mm乃至0.50mmの厚さ、好ましくは0.15mm乃至0.35mmの厚さ、特に好ましくは0.20mm乃至0.30mmの厚さを有してよい。
【0072】
一実施形態では、2つ以上のバッテリからのダイバータが、互いに溶接されるか、又は接触させられる。ダイバータは、銅Cu又はアルミニウムAlで作成されてよい。特に、第1バッテリのダイバータは、アルミニウム又は銅で作成されてよく、第2バッテリのダイバータは、アルミニウム又は銅から作成されてよく、それにより、溶接接続部は、アルミニウムとアルミニウムAl-Alの間に、又は銅と銅Cu-Cuの間に、又はアルミニウムと銅Al-Cuの間に形成される。
【0073】
レーザ溶接は、バッテリセルのセルハウジングの気密溶接、バッテリセルのセル蓋の膜の溶接、バッテリセルのセルカバー内の接続部の溶接、及びバッテリセルのセル蓋の破裂板の溶接を含んでもよい。
【0074】
特に、本開示の実施形態に従う方法が使用されて、重ねジョイント又は平行ジョイントでの、及び特にI溶接シームでの、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析してよい。
【0075】
図4A~4Dは、本開示の実施形態に従う、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法を用いて分析された溶接接続部を示す。
【0076】
図4A~4Dは、それぞれ上側の行(「カメラ」)に重ねジョイントでレーザ溶接中に作成されたI溶接シームの平面図を示し、そして、それぞれ中間の行にそれぞれの溶接シームの断面図を示す。断面図の概略図が、下側の行に、それぞれの場合において示されている。それぞれの加工物30a、30b又はそれぞれの溶接シームの平面図においては、ギャップを有しない溶接、ギャップ及びギャップブリッジングを有する溶接、又はギャップを有するがギャップブリッジングを有しない溶接が存在するか否かを識別することが不可能である。平面図は、図1を参照して論じたような加工物30aの上側表面を示したものである。
【0077】
第1列(「ギャップ:0μm」)において、図4Aは、「良好な溶接」とも呼ばれる適切な溶接シームを示し、該溶接シームは、本開示の実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法を用いて認識される。ここで金属シートとして示されている溶接された加工物30a、30bは、これらの間にギャップを有さず、電流が溶接シームを通って流れ得る。結果として生じる溶接接続部は、「良好な溶接」又は「0ギャップ」と特徴付けられる。
【0078】
図4B~4Dは、本開示の実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法を使用して認識される典型的な欠陥パターンを示す。
【0079】
図4Bは、第2列(「ギャップ:100μm」)において、2つの溶接された加工物30a、30bの間のギャップSを示す。このギャップSは、ギャップSがブリッジされている(図4Bのギャップブリッジング「B」)ので許容され得る。したがって、ギャップSが存在するにもかかわらず、それでも溶接された加工物同士の間に電気的接触部が存在する、すなわち溶接接続部が存在する。これはまた、「ギャップブリッジングを有する溶接」、又は「(電気的)接続部又は(電気的)接触部を有するギャップ」と呼ばれる。
【0080】
第3及び第4列(「ギャップ:150μm」及び「ギャップ:200μm」)において、図4C及び4Dは、「フォールスフレンド(潜在欠陥)」とも呼ばれる別の典型的な欠陥パターンを示す。溶接された加工物30a、30bの間にギャップSが存在し、該ギャップは、ブリッジされていないことにより、加工物同士の間に電気的接触部が存在しない。これは、「ギャップブリッジングを有しない溶接」、「(電気的)接続部又は(電気的)接触部を有しないギャップ」とも呼ばれる。すなわち、溶接接続部が存在しない。
【0081】
図5A~5Dは、実施形態に従って、加工物のレーザ溶接中に溶接接続部を分析する方法によって取得された測定信号の時間曲線についての例を示す。
【0082】
図5A~5Dに示す実施形態では、第1測定信号は、第1及び第2波長範囲において取得され、そしてプラズマ信号P1及び熱信号P2を含む。反射されたレーザ光についての第2測定信号は、戻り反射信号P3と呼ばれる。図5A~5Dは、それぞれ1つのレーザ溶接加工に対する、測定信号P1、P2、及びP3の例示的な曲線を示す。それに加えて、測定信号P3のノイズの曲線は、「P3ノイズ」として示されている。
【0083】
本開示の実施形態に従う方法は、プラズマ信号P1及び熱信号P2を取得することを含む。例えば、プラズマ信号P1及び/又は温度信号P2が、それぞれの下側包絡線以下である場合、加工物同士の間にギャップが存在すると判定される。このことは、例えば、プラズマ信号P1についての第1積分値、及び温度信号P2についての第2積分値を計算することによって決定されてよい。第1積分値が、所定の第1積分値限界値以下である場合、及び/又は第2積分値が、所定の第2積分値限界値以下である場合、ギャップが存在する。ギャップが存在する場合、戻り反射信号P3に基づいて、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在するか否かが決定される。戻り反射信号P3のノイズの外れ値出現頻度が、所定の第1ノイズ限界値を上回る場合、及び/又は戻り反射信号P3のノイズについての積分値が、所定の第2ノイズ限界値を上回る場合、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在しない。そうでなければ、ギャップブリッジング、すなわち溶接接続部を有するギャップが存在する。
【0084】
一方で、方法が使用されて、良好な溶接部、すなわち加工物同士の間にギャップを有しない溶接部と、ギャップを有する溶接部との間を識別してよい。一方、方法は、ギャップを有するがギャップブリッジングを有する溶接と、ギャップを有するがギャップブリッジングを有しない溶接との間を識別し得る。
【0085】
図5Aでは、プラズマ信号P1及び熱信号P2の積分値は、それぞれの限界値を上回っている。レーザ溶接加工中に作成された溶接部は、「良好な溶接部」と特徴付けられる。0ギャップを有する溶接接続部が、このようにして接合された加工物同士の間に存在する。特に、電気的接触部又は電気的接続部が、接続された加工物同士の間に存在する。これは、図4Aに示す溶接接続部に対応する。
【0086】
図5B~5Dでは、プラズマ信号P1及び熱信号P2は、それぞれの所定の基準値又は包絡曲線に関連している。換言すれば、プラズマ信号P1の積分値及び温度信号P2の積分値は、それぞれの限界値を下回っている。それぞれのレーザ溶接加工中に作成された溶接部は、ギャップを有する溶接部と特徴付けられる。
【0087】
実施形態に従うと、プラズマ信号P1の積分値又は熱信号P2の積分値のいずれかが、それぞれの限界値を下回れば、十分である。更なる実施形態に従うと、プラズマ信号P1の積分値と熱信号P2の積分値の両方が、それぞれの限界値を下回る場合にだけ、ギャップが存在すると判定されてよい。
【0088】
図5Bにおいて、加工物同士の間に100μmのギャップが存在し、図5Cにおいて、加工物同士の間に150μmのギャップが存在し、図5Dにおいて、加工物同士の間に200μmのギャップが存在している。図5B~5Dに示す溶接部は、図4B~4Dに示す溶接部に対応する。ギャップ幅は、プラズマ信号P1及び/又は熱信号P2の積分値に基づいて判定されてよい。積分値が第1範囲内にある場合、第1の値又は第1の値の範囲のギャップ幅が対応する溶接部に割り当てられてよい。したがって、第2範囲内にある積分値が、第2の値又は第2の値の範囲等のギャップ幅に割り当てられてよい。このことは、例えば、プラズマ信号P1について図6に示されている。
【0089】
図5B~5Dの対応する溶接部について、ここで、それでも加工物同士の間に溶接接続部が、したがって、電気的接触部又は電気的接続部が、存在するか否かが判定される。このために、戻り反射信号P3のノイズ、P3ノイズが、分析される。
【0090】
図5Bにおいて、戻り反射信号P3のノイズの外れ値出現頻度が、所定の第1ノイズ限界値を下回っている。そのため、ギャップが存在するにもかかわらず、加工物同士の間に溶接接続部又はギャップブリッジングが存在すると判定される。
【0091】
図5C及び5Dにおいて、戻り反射信号P3のノイズの外れ値出現頻度が、所定の第1ノイズ限界値よりも大きい。そのため、加工物同士の間に、溶接接続部又はギャップブリッジングが存在せず、したがって、電気的接触部が存在しないと判定される。
【0092】
本発明は、重ねジョイントのレーザ溶接において、良好な溶接部が、プラズマ信号の強度の低下及びレーザ溶接加工の熱信号の強度の低下によって、ギャップを有する溶接部から識別され得るという知見に基づいている。更に、本発明は、ギャップを有する及びギャップブリッジングを有する溶接部が、後者の場合に加工物から戻り反射された放射光の戻り反射信号のノイズの有意な増加によって、ギャップを有するがギャップブリッジングを有しない溶接部から識別され得る。したがって、プラズマ信号と戻り反射信号による熱信号との組合せが、加工物同士の間の溶接接続部、特に電気的接触部の有無についての明確な情報を提供する。ここで、「ギャップが存在する」は、ギャップがブリッジされていないことについての必要条件と考えられてよく、そして過剰なノイズは、それについての十分条件と考えられてよい。したがって、フォールスフレンド(潜在欠陥)が存在するか否かが、明確に認識され得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6