(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240802BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240802BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20240802BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240802BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B38/18 C
C09J201/00
C09J11/04
(21)【出願番号】P 2022557510
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038366
(87)【国際公開番号】W WO2022085616
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2020176131
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100127247
【氏名又は名称】赤堀 龍吾
(74)【代理人】
【識別番号】100152331
【氏名又は名称】山田 拓
(72)【発明者】
【氏名】和田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】小野 毅
(72)【発明者】
【氏名】草間 博幸
(72)【発明者】
【氏名】奈良 知幸
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-341233(JP,A)
【文献】特開2010-021407(JP,A)
【文献】特開2008-184265(JP,A)
【文献】特開2016-121341(JP,A)
【文献】特開2010-159096(JP,A)
【文献】特開2019-214435(JP,A)
【文献】特開2013-028410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 11/04
B32B 27/00
B32B 38/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を用いて、第1フィルムの平滑面上に原反シートを形成し、該原反シートを任意の形状に打ち抜き、不要部分を除去することで、粘着シートを形成するシート形成工程と、
前記粘着シートと前記第1フィルムの間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すことにより、前記移動板上に、前記移載ベルトを介して、前記粘着シートを掬い上げる掬上工程と、
前記移動板を送り戻すことにより、前記移動板上に掬い上げた、前記粘着シートを、第2フィルムの粗面上に配置する配置工程と、を有し、
前記掬上工程において、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から移動板の主面側に繰り出しながら前記移動板の送り出しを行い、
前記配置工程において、前記移載ベルトを前記移動板の主面側から移動板の裏面側に繰り戻しながら前記移動板の送り戻しを行う、
シートの製造方法。
【請求項2】
前記第1フィルムの前記平滑面の表面粗さが、0.01~50.0μmである、
請求項1に記載のシートの製造方法。
【請求項3】
前記第2フィルムの前記粗面の表面粗さが、0.01~50.0μmである、
請求項1又は2に記載のシートの製造方法。
【請求項4】
前記第2フィルムの前記粗面が、エンボス加工、シボ加工、又はマット加工が施されたものであり、厚みが1.0μm以上である、
請求項1~3のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
【請求項5】
厚さ方向に10Nの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
請求項1~4のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
【請求項6】
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
請求項1~5のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
【請求項7】
前記シートのボールタックテスターに拠る粘着性が、0~300mmである、
請求項1~6のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
【請求項8】
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布である、
請求項1~7のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品からヒートシンクや筐体等の冷却部へ効率よく熱を伝えるために熱伝導性材料が使用される。このような熱伝導性材料としては、シリコーンゴム又はシリコーンゲルに熱伝導性充填剤を充填した熱伝導性シートや、シリコーンオイルに熱伝導性充填剤を充填した熱伝導性グリース等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
グリースは界面との密着がシートより高く、熱伝導性充填剤の最大粒子径まで薄膜化可能なため、低熱抵抗を実現できる。しかし、液状であるため、たれ落ちやポンプアウトを引き起こす欠点がある。一方、シートはグリースに比べて作業性に優れており、また、電子部品とヒートシンク又は筐体の間に圧縮して固定することができ、グリースのようなたれ落ちやポンプアウト性は良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなシートはその製造過程でラミネートフィルムなどへの載せ替えが行われる。しかしながら、上記シートは柔らかく変形しやすいため、載せ替えの際に変形しやすいことなどが問題であった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、所定の性状を有する被移載物を粗面を有するフィルム状に移載する際に形状変化を生じさせにくいシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を用いて、第1フィルムの平滑面上に原反シートを形成し、該原反シートを任意の形状に打ち抜き、不要部分を除去することで、粘着シートを形成するシート形成工程と、
前記粘着シートと前記第1フィルムの間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すことにより、前記移動板上に、前記移載ベルトを介して、前記粘着シートを掬い上げる掬上工程と、
前記移動板を送り戻すことにより、前記移動板上に掬い上げた、前記粘着シートを、第2フィルムの粗面上に配置する配置工程と、を有し、
前記掬上工程において、前記移載ベルトを前記移動板の裏面側から移動板の主面側に繰り出しながら前記移動板の送り出しを行い、
前記配置工程において、前記移載ベルトを前記移動板の主面側から移動板の裏面側に繰り戻しながら前記移動板の送り戻しを行う、
シートの製造方法。
〔2〕
前記第1フィルムの前記平滑面の表面粗さが、0.01~50.0μmである、
〔1〕に記載のシートの製造方法。
〔3〕
前記第2フィルムの前記粗面の表面粗さが、0.01~50.0μmである、
〔1〕又は〔2〕に記載のシートの製造方法。
〔4〕
前記第2フィルムの前記粗面が、エンボス加工、シボ加工、又はマット加工が施されたものであり、厚みが1.0μm以上である、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
〔5〕
厚さ方向に10Nの荷重をかけた場合の前記シートの圧縮率が、5~60%である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
〔6〕
前記シートのアスカーC硬度が、50以下である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
〔7〕
前記シートのボールタックテスターに拠る粘着性が、0~300mmである、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
〔8〕
前記移載ベルトが、ポリエステルを含むフィルム又はポリエステル系繊維を含む織布である、
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のシートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、所定の性状を有する被移載物を粗面を有するフィルム状に移載する際に形状変化を生じさせにくいシートの製造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0011】
〔シートの製造方法〕
本実施形態のシートの製造方法は、樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を用いて、第1フィルムの平滑面上に原反シートを形成し、該原反シートを任意の形状に打ち抜き、不要部分を除去することで、粘着シートを形成するシート形成工程と、前記粘着シートと前記第1フィルムの間に、移載ベルトが周設された移動板を送り出すことにより、前記移動板上に、前記移載ベルトを介して、前記粘着シートを掬い上げる掬上工程と、前記移動板を送り戻すことにより、前記移動板上に掬い上げた、前記粘着シートを、第2フィルムの粗面上に配置する配置工程と、有する。以下、各工程について詳説する。
【0012】
〔シート形成工程〕
シート形成工程は、樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を用いて、第1フィルムの平滑面上に原反シートを形成し、該原反シートを任意の形状に打ち抜き、不要部分を除去することで、粘着シートを形成する工程である。
【0013】
図1に、シート形成工程の一態様を示す。初めに、樹脂とフィラーを含む樹脂組成物を用いて、第1フィルムの平滑面上に原反シート10を形成する(
図1(a))。そして、原反シート10を、打ち抜き機などで任意の形状の粘着シート11に打ち抜く(
図1(b))。最後に、不要部分13を除去することで、粘着シート11を作製することができる(
図1(c))。なお、この際に、粘着シート11に切込み部12を設けたり、任意の切れ目を形成したりしてもよい。
【0014】
図1(c)においては、切込み部12を一方向に有する粘着シート11を例示したが、粘着シート11の切込み部12は、一方向F1に設けられていても、複数の方向F1,F2に設けられていてもよい。粘着シート11は、後述する配置工程で、切込み部12で切断されて第2フィルム上に配置される。すなわち、切込み部12は、後述する配置工程で切断される部分である。
【0015】
また、
図1(b)においては、粘着シート11の間に不要部分13があるように打ち抜く態様を示したが、粘着シート11の間に不要部分13を設ける必要はなく、粘着シート11同士が接触した状態で、原反シート10を打ち抜いてもよい。このようにすることで、破棄する不要部分13の量を軽減することができる。
【0016】
また、不要部分13は除去せずに、掬い上げ工程や配置工程を行ってもよい。不要部分13を除去しないことにより、不要部分13が粘着シート11の変形を抑える役目を果たし、掬い上げ工程や配置工程、あるいは輸送等において粘着シート11の位置ずれや、変形が抑制される。
【0017】
(粘着シート)
本実施形態の製造方法において好適に用いられる粘着シート11は、柔軟性や粘性を有することが好ましい。このような粘着シート11は、柔らかく変形しやすいうえに、様々なものに対してくっつきやすく、特に移載が困難であるため、本発明が特に有用である。特に、本発明の製造方法を用いることにより、移載時の粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる。
【0018】
このような観点から、本実施形態の粘着シートは、圧縮率、アスカーC硬度、ボールタックテスターに拠る粘着性を所定の範囲とすることができる。
【0019】
(シート物性)
厚さ方向に10Nの荷重をかけた場合の粘着シート11の圧縮率は、好ましくは5~60%であり、より好ましくは10~55%であり、さらに好ましくは15~50%である。圧縮率が上記範囲内である粘着シート11は、比較的に柔らかいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある個所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。
【0020】
粘着シート11のアスカーC硬度は、好ましくは50以下であり、より好ましくは5~50であり、さらに好ましくは5~40である。アスカーC硬度が上記範囲内である粘着シート11は、比較的に柔らかいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある個所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。
【0021】
粘着シート11の粘着シートのボールタックテスターに拠る粘着性は、好ましくは0~300mmであり、より好ましくは0~200mmであり、さらに好ましくは0~100mmである。ボールタックテスターに拠る粘着性が上記範囲内である粘着シート11は、粘着シートが第1フィルムや移載ベルトに密着しやすいものであるため、変形や寸法精度の悪化をさせずにある箇所から他の場所へ移送させることが困難であり、本発明が特に有用である。
【0022】
(シート組成)
本実施形態の製造方法に用いる粘着シート11としては、特に制限されないが、例えば、樹脂と充填剤とを含む放熱シートが挙げられる。以下、放熱シートの組成について例示するが、本実施形態で用い得る粘着シート11は、下記放熱シートに限られるものではない。
【0023】
放熱シートは、一例として、シリコーン樹脂及び無機充填剤を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
【0024】
シリコーン樹脂を用いることにより、高柔軟性及び高熱伝導性の熱伝導性シートを得ることができる。シリコーン樹脂は、過酸化物架橋、縮合反応架橋、付加反応架橋、及び紫外線架橋等によって硬化反応を生じさせるものが好ましく、このなかでも付加反応架橋を生じさせるものがより好ましく、さらには、一液反応型又は二液付加反応型シリコーン樹脂が好ましい。
【0025】
二液付加反応型シリコーン樹脂の例としては、特に制限されないが、例えば、末端又は側鎖にビニル基を有するオルガノポリシロキサンを含む第1液と、末端又は側鎖に2個以上のH-Si基を有するオルガノポリシロキサンを含む第2液とを含むものが挙げられる。これら二液付加反応型シリコーン樹脂は、互いに反応し硬化することにより、シリコーンゴムを形成することができる。
【0026】
無機充填剤は、放熱フィラーとして使用することができる。このような無機充填剤としては、特に制限されないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、金属アルミニウム及び黒鉛等が挙げられる。これら無機充填剤は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
無機充填剤の含有量は、粘着シート11の体積100体積%に対して、好ましくは35~85体積%であり、より好ましくは40~85体積%である。無機充填剤の含有量が多いほど熱伝導性がより向上する傾向にある。また、無機充填剤の含有量が少ないほど粘着シート11が適度な流動性を有し、圧縮して用いる放熱シートに好適に用いることができる。
【0028】
なお、粘着シート11は、任意の切れ目を有していてもよい。そのような切れ目の深さは、粘着シート11の厚さ100%に対して、好ましくは2%~90%であり、より好ましくは30%~80%であり、さらに好ましくは40%~70%である。このような切れ目を有することにより、配置されたシートを厚み方向に圧縮したときに、圧縮方向の力をシートの水平方向に逃がすことができる。そのため、粘着シート11を圧縮する際の荷重を低減することができ、また、圧縮の際に空気が入りにくい構造となる。なお、切れ目に関してはWO2018/190233を参照することができる。
【0029】
〔掬上工程〕
次に、本実施形態の粘着シート11の製造方法では、第1フィルムS1(移載元)の平滑面上に形成された粘着シート11を掬い上げる掬上工程を行う。掬上工程では、第1フィルムS1と粘着シート11との間に、移載ベルト21が周設された移動板22を送り出すことにより、移動板22上に、移載ベルト21を介して、粘着シート11を掬い上げる。
【0030】
図2に、掬上工程及び配置工程で使用する配置装置20を示す。配置装置20は、移載ベルト21と、移載ベルト21が周設された移動板22と、移動板22をスライド移動するとともにそのスライド移動の速度を調整可能な移動機構23と、を備える。
【0031】
移載ベルト21は、移動板22の主面22a側から裏面22b側へ、移動板22を囲うように周設される。移載ベルト21は、例えば、一端又は両端が所定の固定具24に固定されている。この状態で、移動板22を固定具24に対して相対的に前方にスライドF3させると、移載ベルト21が移動板22の裏面22b側から移動板22の主面22a側に繰り出される(
図2(b)のF4)。また、これに伴い、移載ベルト21が移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に引き出される(
図2(b)のF5)。
【0032】
掬上工程においては、移載ベルト21を移動板22の裏面22b側から移動板22の主面22a側に繰り出しながら移動板22の先端を第1フィルムS1と粘着シート11との間に徐々に進入させる。この進入により粘着シート11が
図2(b)のように移載ベルト21の先端で掬われて移載ベルト21上にのり上げる。移動板22をさらにスライドさせて、移載ベルト21を繰り出すことにより粘着シート11が移載ベルト21上に完全に掬い上げられる。この掬い上げの際に粘着シート11と移載ベルト21との間に、粘着シート11を変形させるような摩擦が生じないため、粘着シート11は、変形、型崩れすることなく第1フィルムS1の上にあったままの形状が保持されて移載ベルト21上に掬い上げられる。
【0033】
なお、掬い上げ工程においては、移動機構23は、速度を変化させることなく、一定の速度で、移動板22をスライド移動させることが好ましい。これにより、掬い上げの際に生じ得る粘着シート11の変形や寸法精度の悪化がより抑制される傾向にある。
【0034】
掬い上げ工程における、移動板22の送り出し速度は、好ましくは5~50m/minであり、より好ましくは10~40m/minであり、さらに好ましくは15~30m/minである。掬い上げ工程における、移動板22の送り出し速度が上記範囲内であることにより、移動板22が粘着シート11と第1フィルムとの間に侵入する際に生じる、粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0035】
なお、本実施形態においては、第1フィルムと第2フィルムは粘着シート11の移載先または移載元を区別するための呼称であり、掬い上げられる粘着シート11が配されている移載元のフィルムを第1フィルム、粘着シート11が配置される移載先のフィルムを第2フィルムと呼称する。
【0036】
第1フィルムの平滑面の表面粗さは、好ましくは0.01~50.0μmであり、より好ましくは0.01~40.0μmであり、さらに好ましくは0.01~30.0μmである。このような平滑面を有する第1フィルムに粘着シート11を形成することにより、第1フィルムと接する面が平滑な粘着シート11を得ることができる。
【0037】
また、第2フィルムの粗面の表面粗さは、好ましくは0.01~50.0μmであり、より好ましくは1.0~50.0μmであり、さらに好ましくは10~50.0μmである。このような粗面を有する第2フィルムに粘着シート11を移載することにより、その後の工程において、粘着シート11と第2フィルムとを剥離しやすくなる。なお、第2フィルムの粗面の表面粗さは、第1フィルムの平滑面の表面粗さよりも大きいことが好ましい。
【0038】
このような第2フィルムの粗面としては、特に制限されないが、例えば、エンボス加工、シボ加工、又はマット加工が施されたものが挙げられる。
【0039】
また、第2フィルムの粗面を粘着テープの剥離強度として表現することもできる。例えば、第2フィルムの粗面に日東電工社31Bテープ25μm25mm幅を2kg圧着ローラーで貼付けて、20時間経過後に300mm/minで180°剥離強度を測定した場合、その剥離強度は0.01N/25mm以下であることが好ましい。なお、上記剥離強度は、平滑面であるほど高くなる傾向にある。
【0040】
第2フィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば、1.0μm以上とすることができる。また、第2フィルムの厚みの上限についても、特に制限されないが、例えば、3.0mm以下とすることができる。
【0041】
(移載ベルト)
移載ベルト21としては、特に制限されないが、例えば、繊維から構成される織布及び不織布や、膜状の成形体であるフィルムが挙げられる。また、織布、不織布、フィルムを構成する樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル;テフロン(登録商標)等のフッ素;ナイロン、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン・アラミドなどのポリアミド;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニリデン;ポリ塩化ビニル;ポリアクリロニトリル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどのポリオレフィン;ポリエーテルエステル;ポリウレタンが挙げられる。また、任意の織布、不織布、フィルムに対して、剥離性の良好な膜をコーティングしたものを用いることもできる。
【0042】
粘着シート11の形状を損なわず掬上工程と配置工程を行う観点から、移載ベルト21は、柔軟性と粘性を有する粘着シート11にくっつきにくい構成を有することが好ましい。このような観点から、移載ベルト21はポリエステルを含むフィルムや、ポリエステル系繊維を含む織布であることが好ましく、ポリエステルを含むフィルムがより好ましい。
【0043】
移載ベルト21の表面粗さは、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.03μm~500μmであり、さらに好ましくは0.1μm~50μmである。また、移載ベルト21の表面粗さは、第1フィルムS1の表面粗さ以上であることが好ましい。フィルムの場合の表面粗さが小さく、織布等の場合の表面粗さが大きくなる。移載ベルト21の表面粗さが上記範囲内であることにより、移載ベルト21と第1フィルムS1に対する粘着シート11の密着性を調整することができ、移載の際に粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0044】
移載ベルト21の水の接触角は、好ましくは40°以上であり、より好ましくは40~150°であり、さらに好ましくは90~130°である。また、移載ベルト21の水の接触角は、第1フィルムS1の水の接触角以上であることが好ましい。移載ベルト21の水の接触角が上記範囲内であることにより、移載ベルト21と第1フィルムS1に対する粘着シート11の密着性を調整することができ、移載の際に粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【0045】
(移動板)
移動板22としては、特に制限されないが、例えば、ステンレス製、樹脂製の板が挙げられる。移動板22は、送り出される先端に、傾斜部22cを有するものが好ましい。より具体的には、移動板22は、第1フィルム又は第2フィルムと略平行にして用いる平行板22dとその先端に位置する傾斜部22cを有することが好ましい(
図3(a))。後述する配置工程のように、本実施形態の製造方法では、移動板のスライド移動とともに粘着シート11を配置する。例えば、実際の使用においては、長尺な移動板の上に複数の粘着シート11をスライド方向F3に乗せる必要がある。傾斜部22cを有さない場合には、移動板22がフィルムにぶつかるため移動板22のスライド範囲には限界があるが(
図3(b))、傾斜部22cを有することにより、移動板22とフィルムS1、S2の衝突を回避することができ、移動板22のスライド長を長くすることができる。
【0046】
傾斜部22cの平行板22dに対する角度θは、好ましくは15~45°であり、より好ましくは20~40°である。傾斜部22cの角度が上記範囲内であることにより、掬上工程や配置工程における粘着シート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0047】
移動板22の厚みは、好ましくは0.5~3.0mmであり、より好ましくは1.0~2.0mmである。移動板22の厚みが上記範囲内であることにより、粘着シート11の下に入り込みやすくなり、掬上工程や配置工程における粘着シート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0048】
移動板22の送り出される先端辺22eの先端の角Rは、好ましくは0.25~2.0mmであり、より好ましくは0.5~1.0mmである。先端辺22eの先端の角Rが上記範囲内であることにより、粘着シート11の下に入り込みやすくなり、掬上工程や配置工程における粘着シート11の変形や寸法精度の悪化が抑制される傾向にある。
【0049】
(固定具)
固定具24における移載ベルト21の両端部21a、21bの固定方法は、特に制限されない。
図4に、固定具24の一態様を示す概略断面図を示す。移載ベルト21の両端部21a、21bを固定する固定具24としては、特に制限されないが、例えば、移載ベルト21の両端部21a、21bを挟持する二本の棒状の治具24a,24bを用いることができる。この二本の棒状の治具24a,24bは、ボルト・ナットやビス等の連結具(付図示)で連結固定することができ、これにより両端部21a、21bを挟持することができる。また、治具24a,24bには、それぞれ、移載ベルト21を噛んで嵌合できる凹部と凸部が形成されていてもよい。これにより、移載ベルト21をより強固に固定することができる。
【0050】
さらに、固定具24には、移載ベルト21の張力を調整する張力調整部24cが設けられていてもよい。例えば、張力調整部24cとしては、治具24a,24bを任意の回転角で固定可能に保持できるもの、あるいは、一定加重で端部21a、21bを引っ張る弾性体が挙げられる。掬上工程や配置工程で移動板22のスライド移動を繰り返し行うことで、移載ベルト21は徐々に延性変形したわみが生じることがある。たわみが一定以上蓄積すると、掬上工程や配置工程において粘着シート11が変形や寸法精度の悪化を招来しやすくなるが、張力調整部24cを設けることにより、移載ベルトを張り替える等の調整をすることなく、掬上工程や配置工程を連続して行うことができる。
【0051】
〔配置工程〕
最後に、移動板22を送り戻すことにより、移動板22上に掬い上げた、粘着シート11を、第2フィルムS2上に配置する配置工程を行う。
【0052】
図5に、配置工程を表す概略図を示す。配置工程においては、移載ベルト21を移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に繰り戻しながら方向F7へ移動板22の送り戻しを行う。例えば、移載ベルト21の一端又は両端が所定の固定具24に固定されている状態で、移動板22を固定具24に対して相対的に後方F7に送り戻すと移載ベルト21が移動板22の主面22a側から移動板22の裏面22b側に引き戻される(
図4のF7)。この送り戻しにより、粘着シート11が移載ベルト21の先端から、第2フィルムS2上へと送り出される。この場合、粘着シート11と第2フィルムS2との間に摩擦が生じないため粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を生じさせることなく第2フィルムS2上に配置することができる。
【0053】
配置工程における、移動板22の送り戻し速度は、好ましくは1.0~7.5m/minであり、より好ましくは1.0~6.5m/minであり、さらに好ましくは1.0~6.0m/minである。粘着シート11が第2フィルムS2上に接触しているときの送り戻し速度が上記範囲内であることにより、粘着シート11が第2フィルムS2上に接触する際に生じる、粘着シート11の変形や寸法精度の悪化を抑制できる傾向にある。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0055】
〔実施例1〕
二液付加反応型シリコーン樹脂と無機フィラーと混合して組成物を得た。得られた組成物を、ドクターブレード法を用いてシート状に成型し、加熱硬化を行って、第1フィルム上に原反シートを得た。得られた原反シートを
図1(c)のように切り出し、切込み部を有するシートを得た。なお、シートは、100mm(短辺)×216mm(長辺)の長方形とし、短編と平行な方向に18mm間隔で切込み部を有するものとした。すなわち、配置工程後のシート形状が100mm×18mmの短冊12本分となるよう切込み部を形成した。粘着シートの物性を表1に示し、その測定方法を以下に示す。
【0056】
(圧縮率)
粘着シートの圧縮率は、スペーサーを10×10mmに打ち抜いた後、卓上試験機(島津製作所製EZ-LX)により、厚さ方向に10Nの荷重をかけたときの圧縮変形量を計測し、下記式にて圧縮率を算出した。
圧縮率(%)={圧縮変形量(mm)×100}/元の厚さ(mm)
【0057】
(アスカーC硬度)
粘着シートのアスカーC硬度は、25℃のSRIS0101に準拠するアスカーCタイプのスプリング式硬度計(高分子計器株式会社製「アスカーゴム硬度計C型」)で測定した。
【0058】
(ボールタック)
粘着シートのボールタックは、JIS Z 0237に準拠して測定した。
【0059】
(掬上げ工程)
移載ベルトとしてPETフィルム(表面粗さ1μm,接触角120°)を用い、
図2に示すように掬上工程を行った。なお、移動板の厚さは3.0mm、傾斜部の角度は30°、送り出し速度は20m/minとした。
【0060】
(配置工程)
また、
図5に示すように配置工程を行い、粘着シートを切込み部で離間して12本の短冊を第2フィルム上に配置した。なお、引戻速度と、送り戻し速度は5m/minとした。
【0061】
〔実施例2~8〕
表1に記載の条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。
【0062】
(寸法評価)
上記一連の工程により得られた12本の短冊の幅寸法を測定し、その平均値Aveを算出した。そして、目的とする短冊寸法(長さ100mm×幅18mm)の幅(18mm)と平均値Aveとの差分に基づいて、第2フィルムに配置したシートの寸法を下記基準で評価した。
A:目的幅(18mm)と平均値Aveの差が0.10mm以下
B:目的幅(18mm)と平均値Aveの差が0.10mm超過、0.30mm以下
C:目的幅(18mm)と平均値Aveの差が0.30mm超過
【0063】
(外観評価)
上記一連の工程により得られた12本の短冊の外観を確認し、下記評価基準で評価した。
〇:いずれの短冊にも、歪みや、めくれ、気泡、うねり、切れの悪い部分が生じなかった
×:少なくとも一つの短冊に、歪みや、めくれ、気泡、うねり、切れの悪い部分のいずれかが生じた
【0064】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の製造方法は、柔らかい被移載物を任意の箇所に配置することが要求される生産プロセスに用い得る方法として、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0066】
10…原反シート、11…粘着シート、12…切込み部、13…不要部分、20…配置装置、21…移載ベルト、21a、21b…端部、22…移動板、22a…主面、22b…裏面、22c…傾斜部、22d…平行板、22e…先端辺、23…移動機構、24…固定具、24a、24b…治具、24c…張力調整部、S1…第1フィルム、S2…第2フィルム