(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】CD28Hドメイン含有キメラ抗原受容体および使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240802BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240802BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240802BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240802BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240802BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240802BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240802BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240802BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240802BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240802BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240802BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240802BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240802BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/62 Z
C07K14/725 ZNA
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/867 Z
C12N5/10
C07K16/18
A61P35/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
A61K35/17
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2022557764
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 US2020024985
(87)【国際公開番号】W WO2021194495
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Cancer Immunology Research vol.7,no.6,April 24,2019.における「CD28 Homolog Is a Strong Activator of Natural Killer Cells for Lysis of B7H7+ Tumor Cells」
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 Trends Immunology 2019 Dec;Vol 40,No.12における「Inhibition-Resistant CARs for NK Cell Cancer Immunotherapy」
(73)【特許権者】
【識別番号】514144836
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ロング, エリック オー.
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン, シャオシュアン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】Cancer Immunol Res.,2019年,7(6),p.939-951
【文献】Trends in Immunology,2019年,40(12),p.1078-1081
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 14/00
C07K 19/00
C12N 5/10
C07K 16/00
A61P 35/00
A61K 48/00
A61K 31/7088
A61K 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体であって、
N末端からC末端の順に、
(a)標的結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)CD28ホモログ(CD28H)由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメインおよび
2B4またはTCRζ由来の第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメイン
と、
を含むキメラ抗原受容体。
【請求項2】
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項3】
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282のアミノ酸配列を含む、請求項2に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項4】
前記第2の細胞内シグナル伝達ドメインが、TCRζに由来する、請求項
1~3のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項5】
前記TCRζ細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸283~395と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項
4に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項6】
前記TCRζ細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸283~395のアミノ酸配列を含む、請求項
5に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項7】
前記第2の細胞内シグナル伝達ドメインが、2B4に由来する、請求項
1~3のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項8】
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項
7に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項9】
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291のアミノ酸配列を含む、請求項
8に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項10】
前記細胞内ドメインが、前記膜貫通ドメインと前記第1の細胞内シグナル伝達ドメインとの間に細胞内領域をさらに含む、請求項1~
9のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項11】
前記膜貫通ドメインおよび細胞内領域が、CD16、NKp46、NKp30、NKp44またはKIR2DS4に由来する、請求項
10に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
キメラ抗原受容体であって、
N末端からC末端の順に、
(a)標的結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)CD28ホモログ(CD28H)由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメインと、2B4由来の第2の細胞内シグナル伝達ドメインと、
TCRζ由来の第3の細胞内シグナル伝達ドメインとを含
む、細胞内ドメインと、
を含む、キメラ抗原受容体。
【請求項13】
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項
12に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項14】
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282のアミノ酸配列を含む、請求項
13に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項15】
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項
12~14のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項16】
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291のアミノ酸配列を含む、請求項
15に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項17】
前記標的結合ドメインが、CD19 scFvまたはCD28H細胞外ドメインを含む、請求項1~
16のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項18】
前記膜貫通ドメインが、CD28H膜貫通ドメインを含む、請求項1~
9または
12から
17のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項19】
ヒンジドメインをさらに含み、前記ヒンジドメインが、前記標的結合ドメインに対してC末端であり、前記膜貫通ドメインに対してN末端である、請求項1~
18のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項20】
前記ヒンジ領域が、CD8αヒンジ領域を含む、請求項
19に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項21】
アミノ末端シグナル配列をさらに含む、請求項1~
20のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項22】
前記シグナル配列が、CD8αシグナル配列である、請求項
21記載のキメラ抗原受容体。
【請求項23】
前記CD8αシグナル配列が、配列番号16のアミノ酸1~21を含む、請求項
22に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項24】
配列番号2、6、12、
または16
のうちのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~
23のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項25】
配列番号2、6、12、
または16
のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、請求項
24に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項26】
請求項1~
25のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子。
【請求項27】
配列番号1、5、11、
または15
のうちのいずれか1つの核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、請求項
26に記載の核酸分子。
【請求項28】
配列番号1、5、11、
または15
のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、請求項
27に記載の核酸分子。
【請求項29】
請求項
26~28のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項30】
前記ベクターが、ウイルスベクターである、請求項
29に記載のベクター。
【請求項31】
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、請求項
30に記載のベクター。
【請求項32】
請求項1~
25のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を発現する細胞。
【請求項33】
請求項
26~28のいずれか一項に記載の核酸または請求項
29~31のいずれか一項に記載のベクターを含む細胞。
【請求項34】
前記細胞が、ナチュラルキラー細胞またはT細胞である、請求項
32または請求項
33に記載の細胞。
【請求項35】
請求項
26~28のいずれか一項に記載の核酸、請求項
29~31のいずれか一項に記載のベクター、または請求項
32~34のいずれか一項に記載の細胞および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
【請求項36】
がんを有する対象を処置するための、請求項
32~34のいずれか一項に記載の細胞を含む組成物または請求項
35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記医薬組成物が、ナチュラルキラー細胞またはT細胞を含む、請求項
36に記載の組成物。
【請求項38】
前記ナチュラルキラー細胞またはT細胞が、処置されている前記対象にとって自家である、請求項
37に記載の組成物。
【請求項39】
前記がんが、血液悪性腫瘍または固形腫瘍である、請求項
36~38のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項40】
前記血液悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫である、請求項
39に記載の組成物。
【請求項41】
前記固形腫瘍が、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん、前立腺がん、または肉腫である、請求項
39に記載の組成物。
【請求項42】
前記組成物が、手術、化学療法、放射線治療、またはそれらの2もしくはそれより多くの組み合わせと組み合わせて、前記対象に投与されることを特徴とする、請求項
36~41のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CD28Hシグナル伝達ドメインを含有するキメラ抗原受容体、および特にがんを処置するためのそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CAR-T細胞による免疫療法は、血液がんの臨床処置において成功しており、固形腫瘍の標的化において実質的な進歩がなされている。しかしながら、CAR-T細胞の注入に伴う特有の有害な副作用、例えば、重篤なサイトカイン放出症候群(CRS)および神経毒性などは、生命を脅かす可能性があり、慎重に管理される必要がある。ナチュラルキラー細胞は、造血幹細胞移植で観察されるように、より安全なサイトカインプロファイルおよび低い移植片対宿主病(GVHD)活性のために、養子細胞治療におけるエフェクター細胞としての大きな潜在性を有する。CAR-T細胞治療のコストを低減し、CAR-T細胞産生のプロセスを単純化するために、「既製の」CAR-T細胞戦略が提案されている。健常ドナーに由来する同種異系CAR-T細胞上のT細胞受容体(TCR)は、GVHDを最小限に抑え、必要なときにすぐに使用できる普遍的な凍結保存CAR-T細胞産物を産生するために、サイレンシングされなければならない。特に、T細胞とは異なり、「既製の」CAR-NK戦略は、TCRの遺伝子サイレンシングを必要とせずに開発することができる。ドナー由来NK細胞の安全性および持続性は、造血幹細胞移植の数十年にわたる臨床診療によって実証されている。さらに、腫瘍細胞上のリガンドに対する生殖細胞にコードされたNK細胞活性化受容体によって、さらなる有益な効果を提供することができる。
【0003】
NK細胞の活性化は、活性化受容体からのシグナルの相乗的組み合わせを必要とし、そのリガンドは通常、形質転換細胞または感染細胞で上方調節される。しかしながら、活性化シグナルは、非古典的MHC-I HLA-Eに対する受容体CD94-NKG2Aおよび古典的MHC-I分子に対する阻害性キラー細胞Ig様受容体(KIR)を含む、MHC-Iに対する阻害性受容体によって打ち消される。具体的には、KIR2DL1はHLA-C群1(C1)に対する受容体であり、KIR2DL2/3はHLA-C群2(C2)に対する受容体であり、KIR3DL1はHLA-Bの特定の対立遺伝子に対する受容体である。これらの阻害性受容体によるシグナル伝達は、典型的には、共活性化受容体によるシグナル伝達より優勢である。阻害性受容体はまた、NK細胞を高応答性の状態に維持する重要な機能を有し、これはライセンシングまたは教育と呼ばれている特性である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
NK細胞による養子細胞治療が腫瘍細胞の排除に成功するためには、阻害性受容体によるシグナル伝達を低減または無効にする必要がある。本明細書には、例えばCD94-NKG2AおよびKIR2DL1による阻害を克服する能力をCARに付与するCD28ホモログ(CD28H)活性化ドメイン(CD28H細胞内シグナル伝達ドメインとも呼ばれる)を含むCARが開示される。
【0005】
(a)抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)CD28H由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメインおよび第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインと、を含むキメラ抗原受容体(CAR)が開示される。ドメイン(a)~(c)はN末端からC末端の順序である。しかしながら、細胞内ドメインの第1および第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、どちらの順序であってもよい。いくつかの例では、第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、2B4、TCRζ、FcεR1γまたはDAP12に由来する。1つの特定の例では、第2の細胞内シグナル伝達ドメインはTCRζに由来する。別の特定の例では、第2の細胞内シグナル伝達ドメインは2B4に由来する。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメインに対してC末端であり、膜貫通ドメインに対してN末端であるヒンジドメイン(例えば、CD8ヒンジドメイン)をさらに含む。
【0006】
提供されるのはまた、(a)抗原結合ドメインと、(b)膜貫通ドメインと、(c)CD28H由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメイン、2B4由来の第2の細胞内シグナル伝達ドメイン、および第3の細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインと、を含むキメラ抗原受容体(CARs)である。いくつかの例では、第3の細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRζ、FcεR1γまたはDAP12に由来する。ドメイン(a)~(c)はN末端からC末端の順序である。しかしながら、第1、第2および第3の細胞内シグナル伝達ドメインは、任意の順序であり得る。いくつかの実施形態では、CARは、抗原結合ドメインに対してC末端であり、膜貫通ドメインに対してN末端であるヒンジドメイン(例えば、CD8ヒンジドメイン)をさらに含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARは、配列番号2、6、12、16および20のうちのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の例では、CARは、配列番号2、6、12、16および20のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。
【0008】
本明細書で提供されるCARをコードする核酸分子も開示される。いくつかの実施形態では、核酸分子は、発現ベクター(レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなど)に含まれる。実施形態では、CARが、配列番号1、5、11、15および19のうちのいずれか1つの核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含むか、または配列番号1、5、11、15および19のうちのいずれか1つの核酸配列を含むかもしくはそれからなる。CARを発現する単離された細胞(例えば、T細胞またはナチュラルキラー細胞)が提供され、同様にまた、それらの細胞および薬学的に許容され得る担体を含む組成物も提供される。
【0009】
がん(血液悪性腫瘍または固形腫瘍など)を有する対象を処置する方法がさらに提供される。そのような方法は、本明細書に開示される単離された細胞または組成物を対象に投与することを含む。いくつかの例では、細胞は、自家NK細胞などのCARを発現するNK細胞である。
【0010】
本開示の上記および他の特徴は、添付の図面を参照して進行する以下の詳細な説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】
図1A~
図1Dは、ヒトNK細胞上のCD28H発現を示す。
図1A:新たに単離されたNK細胞を、フルオロフォア-コンジュゲートmAbでCD56およびCD28Hについて染色した。CD28Hのアイソタイプコントロール(IgG)を左パネルに示す。
図1B:CD28Hの発現をCD56
bright NK細胞とCD56
dim NK細胞との間で比較した。各記号は独立したドナーを表す(n=4)。
図1C:KIRおよびNKG2A発現によって定義される異なるCD56
dimサブセットにおけるCD28Hの発現。KIRファミリーの受容体を、PE-コンジュゲート抗体(EB6、GL183およびDX9)のカクテルを使用して染色した。各記号は独立したドナー(n=4)を表す。
【
図1-2】
図1D:CD56
dimCD57
-およびCD56
dimCD57
+NK細胞上のCD28H発現。各記号は独立したドナーを表す(n=4)。全てのデータを平均±SEMとして示す。
*P<0.05、n.s.、有意でない(マン・ホイットニー検定、両側)。すべての実験を少なくとも2回繰り返した。
【0012】
【
図2-1】
図2A:NKG2AおよびKIR発現に基づく異なるCD56
dim NK細胞集団のゲーティング戦略。KIR発現を、PE-コンジュゲート抗体(EB6、GL183およびDX9)のカクテルによって決定した。
【
図2-2】
図2B:休止NK細胞およびIL-2およびPHA中で14日間増大させた(expanded)NK細胞におけるCD28Hについての免疫染色の代表的なヒストグラム。新たに単離されたかまたはIL-2培養されたNK細胞を、アイソタイプコントロール(網掛け)またはCD28H mAb(実線)で染色した後、PE-コンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体とインキュベートした。
図2C:休止NK細胞(左)またはIL-2およびCD2とNKp46との架橋によって活性化されたNK細胞(右)におけるCD28Hについての免疫染色の代表的なヒストグラム。NK細胞を、プレートに結合したCD2に対するmAbおよびNKp46プラス100U/ml IL-2によって7日間活性化した。
図2Cと同様の2人のドナー由来のNK細胞の活性化後の異なる時点でのCD28Hの発現。CD28H
+であるNK細胞の割合を、CD56およびCD28Hについて染色することによって決定した。
【
図2-3】
図2E:IL-2刺激後の異なる時点でのNK細胞上のCD25発現。
図2F:休止NK細胞をIL-2中で24時間活性化し、続いてCD56、CD25およびCD28Hについて染色した。ヒストグラムに示された(右)および3人の独立したドナーからのデータとして示された(左)CD25
-およびCD25
+NK細胞におけるCD28Hの発現。平均±SEM.n.s.、有意でない(マン・ホイットニー検定、両側)。
【0013】
【
図3-1】
図3A:リダイレクトされた細胞傷害性アッセイの概略図。アッセイでは、mAbのF(ab’)
2部分は、NK細胞受容体を特異的に認識するが、FcフラグメントはマウスP815細胞上のFc受容体に結合する。NK細胞は、架橋NK細胞活性化受容体によって相乗的に活性化される。
【
図3-2】
図3B:フルオロフォア-コンジュゲートmAbを用いた免疫染色によって決定された、NKL、YTS、KHYG-1およびNK-92細胞株における2B4、NKp46およびCD28Hの表面発現。網掛けヒストグラムは、アイソタイプコントロールによる染色を表す。
図3C:リダイレクトされた細胞傷害性アッセイにおけるKHYG-1細胞によるP815細胞の溶解。KHYG-1細胞をIL-2なしで24時間静置した後、P815細胞および示されたmAbと共にE:T比1および5で6時間インキュベートした。
【0014】
【
図4-1】
図4A~
図4Kは、CD28HがNK細胞活性化のために2B4およびNKp46と相乗作用し、CD16を介して活性化を増強することを示す。
図4A:リダイレクトされた細胞傷害性アッセイにおける、CD28H、2B4およびNKp46の単独または組み合わせのいずれかによって誘導されたNK細胞脱顆粒の代表的な等高線図である。新たに単離されたNK細胞を、P815細胞および5μg/mlの示されたmAbと共に37℃で2時間インキュベートした。E:T比は1:2であった。NK細胞脱顆粒をCD107aについて染色することによって決定した。CD56に対するmAbは脱顆粒の陰性対照であったが、NKp46および2B4の共結合(co-engagement)はNK活性化受容体の相乗作用の陽性対照であった。
【
図4-2】
図4B:いくつかのドナーからの
図4Aと同様のNK脱顆粒を示す。各記号は独立したドナーを表す(n=5)。
図4C~
図4F:
図4Aと同様に行われたリダイレクトされた細胞傷害性アッセイにおける、CD28Hと、CD2(
図4C)、DNAM-1(
図4D)、NKG2D(
図4E)およびCD16(
図4F)との共結合の際のNK細胞脱顆粒。各記号は独立したドナーを表し、
図4Cではn=4、
図4Dではn=3、
図4Eではn=4、
図4Fではn=5である。
【
図4-3】
図4G~
図4I:リダイレクトされた細胞傷害性アッセイにおける
図4Aと同様のNK細胞脱顆粒。2B4(
図4G)、NKp46(
図4H)およびCD16(
図4I)に対する固定濃度(5μg/ml)のmAbを使用し、漸増濃度でCD28H抗体を添加した。各記号は独立したドナーを表し、
図4Gではn=5、
図4Hではn=5、
図4Iではn=6である。
図4J~
図4K:P815細胞および示されたmAbと共に様々なE対T比で6時間インキュベートしたNK細胞。CD28Hと、2B4(
図4J)またはNKp46(
図4K)との共結合によって誘導されるP815細胞の溶解。各グラフは、2つの独立した実験のうちの1つを表す。全てのデータを平均±SEMとして示す。
*P<0.05、
**P<0.01、n.s.、有意でない(マン・ホイットニー検定、両側)。すべての実験を少なくとも2回繰り返した。
【0015】
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、ショウジョウバエS2細胞上のB7H7およびCD48によって誘導されるNK細胞脱顆粒およびサイトカイン産生を示す。
図5A:CD48、B7H7、またはその両方でトランスフェクトされたS2細胞上のCD48およびB7H7の発現。網掛けヒストグラムは、トランスフェクトされていないS2細胞の染色を示す。
図5B:円グラフは、示された数の応答について陽性のNK細胞の頻度を表す。円弧は、MIP-1α、IFN-γ、TNF-αおよびCD107aについて陽性のNK細胞の割合を表す。値は、3人のドナーの平均を表す。
【0016】
【
図6-1】
図6A~6Fは、B7H7およびCD48によって誘導されるNK細胞脱顆粒およびサイトカイン産生をショウジョウバエS2細胞上で示す。
図6A:1:2のE:T比で2時間インキュベートした後の、B7H7、CD48、またはその両方を発現するS2細胞およびS2細胞によって誘導されたNK細胞脱顆粒の代表的な等高線図。脱顆粒を、CD56およびCD107aについて染色することによって決定した。
図6B:いくつかのドナーからの
図6Aと同様のNK細胞脱顆粒。各記号は独立したドナーを表し、n=5である。
【
図6-2】
図6C~
図6F:1:2のE:T比で、37℃で6時間、示されたS2細胞と共にインキュベートした後のNK細胞によるサイトカイン産生。B7H7-CD28H相互作用をブロックするために、CD28Hに対するmAb(抗CD28H)を、10μg/mlで含んだ。細胞をCD56およびCD107aについて染色し、固定し、透過処理し、細胞内サイトカインについて染色した。複数のドナー由来のNK細胞におけるIFNγ(
図6C)、TNFα(
図6D)、MIP-1α(
図6E)およびMIP-1β(
図6F)の発現。各記号は独立したドナーを表し、
図6Cではn=7、
図6Dではn=5、
図6Eではn=6、
図6Fではn=6である。全てのデータを平均±SEMとして示す。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001(マン・ホイットニー検定、両側)。すべての実験を少なくとも2回繰り返す。
【
図6-3】
図6C~
図6F:1:2のE:T比で、37℃で6時間、示されたS2細胞と共にインキュベートした後のNK細胞によるサイトカイン産生。B7H7-CD28H相互作用をブロックするために、CD28Hに対するmAb(抗CD28H)を、10μg/mlで含んだ。細胞をCD56およびCD107aについて染色し、固定し、透過処理し、細胞内サイトカインについて染色した。複数のドナー由来のNK細胞におけるIFNγ(
図6C)、TNFα(
図6D)、MIP-1α(
図6E)およびMIP-1β(
図6F)の発現。各記号は独立したドナーを表し、
図6Cではn=7、
図6Dではn=5、
図6Eではn=6、
図6Fではn=6である。全てのデータを平均±SEMとして示す。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001(マン・ホイットニー検定、両側)。すべての実験を少なくとも2回繰り返す。
【0017】
【
図7-1】
図7A~7Eは、標的細胞上のB7H7がNK細胞によってADCCを増強することを示す。
図7A:抗S2血清の存在下で2時間、示されたS2細胞によって誘導され、フルオロフォア-コンジュゲートCD56およびCD107a mAbで染色することによって測定されたNK細胞脱顆粒の代表的な等高線図。
【
図7-2】
図7B:複数のドナーからの
図7Aと同様のNK細胞による脱顆粒。各記号は独立したドナーを表し、n=7である。
図7C:221およびDaudi細胞上のCD20についての染色。網掛けヒストグラムは、アイソタイプコントロールによる染色を示す。
【
図7-3】
図7Dおよび7E:10μg/mlリツキシマブの存在下での5:1のエフェクター対標的細胞比でのNK細胞による標的細胞の特異的溶解。各記号は独立したドナーを表し、
図7Dおよび
図7Eの両方においてn=5である。標的細胞は、トランスフェクトされていないかまたはB7H7でトランスフェクトされたかのいずれかの221(
図7D)およびDaudi(
図7E)細胞株であった。B7H7-CD28H相互作用をブロックするために、CD28Hに対するmAb(抗CD28H)を、10μg/mlで含んだ。全てのデータを平均±SEMとして示す。
*P<0.05(ウィルコクソンの符号順位検定、対合、両側)。すべての実験を少なくとも2回繰り返した。
【0018】
【
図8-1】
図8A~
図8Cは、221細胞上のB7H7が、NK細胞によるCD28H依存性溶解を促進することを示す。
図8A:Daudi、K562および221細胞上のB7H7およびCD48についての染色。網掛けヒストグラムは、アイソタイプコントロールによる染色を表す。
【
図8-2】
図8B:トランスフェクトされた221細胞およびDaudi細胞におけるB7H7の発現。網掛けヒストグラムは、トランスフェクトされていない細胞の染色を表す。
図8C:6時間後の、示されたE対T比での休止NK細胞による221および221.B7H7細胞の溶解。CD28Hに対するmAbを10μg/mlで添加して、CD28H-B7H7相互作用をブロックした(四角の記号)。
【0019】
【
図9-1】
図9A~9Fは、CD28HのTyr192がCD28H媒介NK細胞活性化に必須であることを示す。
図9A:過バナジン酸塩処理の際のCD28H野生型および示されるTyr変異体のチロシン-リン酸化。トランスフェクトされた293T細胞を過バナジン酸塩で10分間処理した。細胞溶解物をCD28H mAbで免疫沈降させた。ホスホ-チロシン(4G10)および全CD28H(抗2A)を免疫ブロットによって検出した。
図9B:6時間後の、示されたmAbの存在下での様々なE:T比でのNKL.CD28H細胞によるP815細胞の溶解。
【
図9-2】
図9C:示されたE:T比で、2B4およびCD28Hに対するmAbの存在下、NKL細胞トランスフェクタントによるP815細胞の溶解。2B4に対するmAbを伴うNKL.CD28H-野生型を陰性対照(Ctrl)とした。グラフは、2つの独立した実験のうちの1つを表す。
図9D:6時間後の示されたE:T比でのNKL細胞トランスフェクタントによる221.B7H7細胞の溶解。トランスフェクトされていない221細胞を陰性対照とした。グラフは、2つの独立した実験のうちの1つを表す。
【
図9-3】
図9E:CD28H野生型またはY192F変異体を発現するNKL細胞と共にインキュベートしたDaudiまたはDaudi-B7H7細胞のCD28H抗体による免疫蛍光染色。
【
図9-4】
図9F:
図9Eと同様に、シナプスから離れた細胞表面領域(非IS)と比較した、免疫シナプス(IS)でのCD28Hの蛍光強度の倍率変化。各ドットは単一の細胞を表す。サンプルサイズ(n)を図に示す。2つの独立した実験からデータを得て組み合わせ、平均±SEMとして示した。
****P<0.0001(マン・ホイットニー検定、両側)。すべての実験を少なくとも2回繰り返した。
【0020】
【
図10】
図10は、示されたCD28H変異体でトランスフェクトされたNKL細胞上のCD28H発現を示す。網掛けヒストグラムは、トランスフェクトされていない細胞の染色を表す。
【0021】
【
図11-1】
図11Aおよび11Bは、循環単球および骨髄性樹状細胞上のB7H7発現を示す。未処理またはLPSおよびポリ(I:C)刺激ヒトPBMCのいずれかをCD14
+集団でゲートし、フルオロフォア-コンジュゲートB7H7 mAbを用いてB7H7発現について試験した。
【
図11-2】
図11B:循環骨髄性樹状細胞におけるB7H7の発現。
図11Aのように処理したヒトPBMCを系列陰性(CD3
-CD19
-CD14
-NKp46
-)CD11c
+細胞でゲートし、B7H7 mAbで染色することによってB7H7の発現について試験した。網掛けヒストグラムは、アイソタイプコントロールによる染色を表す。
【0022】
【
図12-1】
図12A~
図12Jは、CD28H-TCRζキメラ抗原受容体を発現するNKG2A
+NK細胞によるB7H7
+HLA-E
+HDLM-2腫瘍細胞の溶解を示す。
図12A:NKL細胞におけるCD28Hキメラ抗原受容体の設計および発現。完全長または細胞質ドメイン欠失(ΔCD)CD28HをTCRζの細胞質ドメインに融合し、NKL細胞にトランスフェクトした。細胞をフルオロフォア-コンジュゲートCD28H mAbで染色した。網掛けヒストグラムは、トランスフェクトされていないNKL細胞の染色を表す。
図12B~
図12C:5時間後の、示されたE:T比でトランスフェクトされたNKL細胞による221細胞(
図12B)および221.B7H7細胞(
図12C)の溶解。
【
図12-2】
図12D:221.AEHおよび221.AEH.B7H7細胞におけるHLA-EおよびB7H7についての染色。網掛けヒストグラムは、トランスフェクトされていない221細胞の染色を表す。免疫染色によって決定されたNKL細胞上のNKG2Aの発現。網掛けヒストグラムは、IgGコントロールによる染色を表す。
【
図12-3】
図12F~12G:5時間後の、示されたE:T比でトランスフェクトされたNKL細胞による221.AEH細胞(
図12F)および221.AEH.B7H7細胞(
図12G)の溶解。グラフは、2つの独立した実験のうちの1つを表す。
図12H:HDLM-2腫瘍細胞上のB7H7およびHLA-Eの染色。網掛けヒストグラムは、アイソタイプコントロールによる染色を表す。
図12I:免疫染色によって決定されたKHYG-1細胞上のNKG2Aの発現(左)。NKG2Aに対するブロッキング抗体の存在下または非存在下での、5時間後のKHYG-1細胞によるHDLM-2腫瘍細胞の溶解(右)。グラフは、2つの独立した実験のうちの1つを表す。
【
図12-4】
図12J:5時間後の、示されたE:T比でトランスフェクトされたNKL細胞によるHHLA-2
+HLA-E
+HDLM-2腫瘍細胞の溶解。すべての実験を少なくとも2回繰り返す。
【0023】
【
図13-1】
図13A~
図13Eは、活性化受容体、CD19.CARの設計および発現、ならびに設計されたCD19.CARを発現するNK細胞によるCD19
+MHC-I
+腫瘍細胞の溶解の組み合わせによるNK細胞脱顆粒の相乗的活性化を示す。
図13A:NK細胞活性化受容体の組み合わせを架橋することによって誘導された休止ヒトNK細胞の脱顆粒。示されている活性化受容体に対する抗体の存在下で、P815細胞を使用して、リダイレクトされた細胞傷害性アッセイにおいて架橋を行った(n=2)。
図13B:N末端mycタグおよびCD8αヒンジを細胞外ドメインとして有する抗CD19 scFvならびに膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインとの示された組み合わせを使用するCAR構築物の概略図。
【
図13-2】
図13C:NKL.2DL1細胞におけるCAR構築物の発現を示すヒストグラム。
【
図13-3】
図13D:示されているCAR発現NKL.2DL1細胞による標的細胞の溶解を比較する殺傷アッセイ。変異型MHC-I陰性リンパ芽球様細胞株221またはMHC-I(HLA-EまたはHLA-C/Cw15)トランスフェクトした221細胞のいずれかを標的として使用した(n=3)。
図13E:CAR2またはT-CARを発現するNKL.2DL1細胞による標的細胞溶解の比較(n=3)。
図13Dと同じ標的細胞を使用した。
【0024】
【
図14】
図14は、NKL.2DL1細胞上のKIR2DL1(左)およびNKG2A(右)の発現を示すパネルの対である。NKL.2DL1細胞をIgG対照(網掛け)、ならびにKIR2DL1に対するIgG抗体(左、オープンヒストグラム)およびNKG2Aに対するIgG抗体(右、オープンヒストグラム)で染色した。
【0025】
【
図15-1】
図15A~
図15Dは、第3世代T-CARまたはNKG2D-2B4-TCRζ CARを発現するNK細胞と比較した、CD28H-CARを発現するNK細胞によるB7H7
+MHC-I
+腫瘍細胞の溶解を示す。
図15A:CD28Hの細胞外ドメインおよびシグナル伝達ドメインの示された組み合わせからなるCAR構築物の概略図。
【
図15-2】
図15B:NKL.2DL1細胞におけるCD28H.T-CAR、CD28H.CAR2およびCD28H.CAR3の発現のフローサイトメトリー決定。
図15C:CARを形質導入されたNKL.2DL1細胞をエフェクターとして使用し、221.HLA-E細胞またはB7H7をトランスフェクトされた221.HLA-E細胞を標的として使用する殺傷アッセイ(n=2)。
【
図15-3】
図15D:CD28H.CARを発現するNKL.2DL1細胞による221.HLA-C(Cw15)細胞またはB7H7をトランスフェクトされた221.HLA-C(Cw15)細胞の溶解(n=2)。
【0026】
【
図16-1】
図16A~16Eは、CD19.CAR2が、NKG2A媒介阻害を克服し、T-CARよりも持続性の活性化シグナルを伝達することを示す。
図16A:ビーズ上に固定された抗体によるCAR刺激の図。ビーズによる刺激後のCAR発現NKL細胞の溶解物における活性化シグナルのウエスタンブロット検出。示された抗体をビーズに予め結合させ、次いで、CAR-NK細胞と共に10分間インキュベートした。示されたシグナル伝達分子について細胞溶解物を探索した。
【
図16-2】
図16C:pErk/total-ErkおよびpPLCg1/total-PLCg1比のウエスタンブロット定量(n=2)。
【
図16-3】
図16D:T-CARまたはCAR2を発現するNKL細胞のビーズ刺激。示されるように、ビーズおよびNK細胞の共インキュベーションを10分間および45分間行った。細胞溶解物を示された抗体でウエスタンブロットした。
図16E:抗体とのCAR架橋後にT-CARまたはCAR2を発現するNKL細胞において誘導されたカルシウム動員。NKL細胞をMycタグ抗体と氷上で30分間プレインキュベートし、アッセイの前に37℃で5分間インキュベートした。架橋のための二次ヤギ抗マウスIgG抗体を添加する前に、ベースラインカルシウムを30秒間測定した。
【0027】
【
図17】
図17は、
図13Bに示されるT-CARおよびCAR2~CAR6を発現するNKL細胞の刺激を示す(N:CARなし)。示された抗体とカップリングされたビーズをCAR-NK細胞と共に37℃で10分間インキュベートした。細胞溶解物を、示されるように、リン酸化または全ErkおよびPLCγ1に対する抗体でウエスタンブロットした。バンド強度の定量を
図16Cに示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
配列表
本明細書または添付の配列表に列挙されている任意の核酸およびアミノ酸配列は、米国特許法施行規則§1.822で定義されているように、ヌクレオチド塩基およびアミノ酸についての標準的な文字略語を使用して示されている。少なくともいくつかの場合、各核酸配列の1つの鎖のみが示されているが、相補鎖は、表示された鎖に対する任意の参照によって含まれると理解される。
【0029】
配列番号1は、TCRζの細胞質ドメインと融合した完全長CD28Hの核酸配列である。CD28H:ヌクレオチド1~846;TCRζ:ヌクレオチド847~1185。
【化1】
【0030】
配列番号2は、TCRζの細胞質ドメインと融合した完全長CD28Hのアミノ酸配列である。CD28H:アミノ酸1~282;TCRζ:アミノ酸283~395。
【化2】
【0031】
配列番号3は、TCRζの細胞質ドメインと融合したCD28Hの細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインの核酸配列である。CD28H:ヌクレオチド1~513;TCRζ:ヌクレオチド514~852。
【化3】
【0032】
配列番号4は、TCRζの細胞質ドメインと融合したCD28Hの細胞外ドメインおよび膜貫通ドメインのアミノ酸配列である。CD28H:アミノ酸1~171;TCRζ:アミノ酸172~284。
【化4】
【0033】
配列番号5は、2B4およびTCRζの細胞内ドメインと融合した完全長CD28Hの核酸配列である。CD28HのDNA配列を、gBlockフラグメントとして合成するためにコドン最適化した。CD28H:ヌクレオチド1~846;2B4:ヌクレオチド847~1206;TCRζ:ヌクレオチド1207~1545。
【化5】
【0034】
配列番号6は、2B4およびTCRζの細胞内ドメインと融合した完全長CD28Hのアミノ酸配列である。CD28H:アミノ酸1~282;2B4:アミノ酸283~402;TCRζ:アミノ酸403~515。
【化6】
【化7】
【0035】
配列番号7は、CD28の膜貫通ドメインならびにCD28、41BBおよびTCRζの細胞内ドメインと融合したCD28Hの細胞外ドメインの核酸配列である。CD28H:ヌクレオチド1~450;CD28:ヌクレオチド451~654;4-1BB:ヌクレオチド655~780;TCRζ:ヌクレオチド781~1119。
【化8】
【0036】
配列番号8は、CD28の膜貫通ドメインならびにCD28、4-1BBおよびTCRζの細胞内ドメインと融合したCD28Hの細胞外ドメインのアミノ酸配列である。CD28H:アミノ酸1~150;CD28:アミノ酸151~218;4-1BB:アミノ酸219~260;TCRζ:ヌクレオチド261~373。
【化9】
【0037】
配列番号9は、NKG2Dの膜貫通ドメインならびに2B4およびTCRζの細胞内ドメインと融合したCD28Hの細胞外ドメインの核酸配列である。CD28H:ヌクレオチド1~450;NKG2D:ヌクレオチド451~513;2B4:ヌクレオチド514~873;TCRζ:ヌクレオチド874~1212。
【化10】
【0038】
配列番号10は、NKG2Dの膜貫通ドメインならびに2B4およびTCRζの細胞内ドメインと融合したCD28Hの細胞外ドメインのアミノ酸配列である。CD28H:アミノ酸1~150;NKG2D:アミノ酸151~171;2B4:アミノ酸172~291;TCRζ:ヌクレオチド292~404。
【化11】
【0039】
配列番号11は、CD19 scFvと、それに続く、CD28Hの膜貫通ドメインならびにCD28H、2B4およびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインの核酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。CD8α部分およびCD28H部分のDNA配列を、gBlockフラグメントとして合成するためにコドン最適化した。シグナルペプチド:ヌクレオチド1~63;Mycタグ:ヌクレオチド64~93;CD19 scFv:ヌクレオチド94~819;CD8αヒンジ:820-954;CD28H膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン:ヌクレオチド955~1350;2B4:ヌクレオチド1351~1710;TCRζ:ヌクレオチド1711~2049。
【化12】
【0040】
配列番号12は、CD19 scFvと、それに続く、CD28Hの膜貫通ドメインならびにCD28H、2B4およびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインのアミノ酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。シグナルペプチド:アミノ酸1~21;Mycタグ:アミノ酸22~31;CD19 scFv:アミノ酸32~273;CD8αヒンジ:274-318;CD28H膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン:アミノ酸319~450;2B4:アミノ酸451~570;TCRζ:アミノ酸571~683。
【化13】
【化14】
【0041】
配列番号13は、CD19 scFvと、それに続くCD28の膜貫通ドメインならびにCD28、4-1BBおよびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインの核酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。CD8αのDNA配列を、gBlockフラグメントとして合成するためにコドン最適化した。シグナルペプチド:ヌクレオチド1~63;Mycタグ:ヌクレオチド64~93;CD19 scFv:ヌクレオチド94~819;CD8αヒンジ:ヌクレオチド820~954;CD28膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン:ヌクレオチド955~1158;4-1BB:ヌクレオチド1159~1284;TCRζ:ヌクレオチド1285~1623。
【化15】
【0042】
配列番号14は、CD19 scFvと、それに続く、CD28の膜貫通ドメインならびにCD28、4-1BBおよびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインのアミノ酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。シグナルペプチド:アミノ酸1~21;Mycタグ:アミノ酸22~31;CD19 scFv:アミノ酸32~273;CD8αヒンジ:アミノ酸274~318;CD28膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメイン:アミノ酸319~386;4-1BB:アミノ酸387~428;TCRζ:アミノ酸429~541。
【化16】
【0043】
配列番号15は、CD19 scFvと、それの続くCD28Hの膜貫通ドメインならびにCD28HおよびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインの核酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。CD8α部分およびCD28H部分のDNA配列を、gBlockフラグメントとして合成するためにコドン最適化した。シグナルペプチド:ヌクレオチド1~63;Mycタグ:ヌクレオチド64~93;CD19 scFv:ヌクレオチド94~819;CD8αヒンジ:ヌクレオチド820~954;CD28H膜貫通ドメイン:ヌクレオチド955~1017;CD28Hシグナル伝達ドメイン:ヌクレオチド1018~1350;TCRζ:ヌクレオチド1351~1689。
【化17】
【0044】
配列番号16は、CD19 scFvと、それに続く、CD28Hの膜貫通ドメインならびにCD28HおよびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインのアミノ酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。シグナルペプチド:アミノ酸1~21;Mycタグ:アミノ酸22~31;CD19 scFv:アミノ酸32~273;CD8αヒンジ:アミノ酸274~318;CD28H膜貫通ドメイン:アミノ酸319~339;CD28Hシグナル伝達ドメイン:アミノ酸340~450;TCRζ:アミノ酸451~563。
【化18】
【0045】
配列番号17は、CD19 scFvと、それに続くCD28の膜貫通ドメインならびにCD28およびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインの核酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。CD8αのDNA配列を、gBlockフラグメントとして合成するためにコドン最適化した。シグナルペプチド:ヌクレオチド1~63;Mycタグ:ヌクレオチド64~93;CD19 scFv:ヌクレオチド94~819;CD8αヒンジ:ヌクレオチド820~954;CD28膜貫通ドメイン:ヌクレオチド955~1035;CD28シグナル伝達ドメイン:ヌクレオチド1036~1158;TCRζ:ヌクレオチド1159~1497。
【化19】
【化20】
【0046】
配列番号18は、CD19 scFvと、それに続くCD28の膜貫通ドメインならびにCD28およびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインのアミノ酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。シグナルペプチド:アミノ酸1~21;Mycタグ:アミノ酸22~31;CD19 scFv:アミノ酸32~273;CD8αヒンジ:アミノ酸274~318;CD28膜貫通ドメイン:アミノ酸319~345;CD28シグナル伝達ドメイン:アミノ酸346~386;TCRζ:アミノ酸387~499。
【化21】
【0047】
配列番号19は、CD19 scFvと、それに続くCD28Hの膜貫通ドメインおよびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインの核酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。CD8αのDNA配列を、gBlockフラグメントとして合成するためにコドン最適化した。シグナルペプチド:ヌクレオチド1~63;Mycタグ:ヌクレオチド64~93;CD19 scFv:ヌクレオチド94~819;CD8αヒンジ:ヌクレオチド820~954;CD28H膜貫通ドメイン:ヌクレオチド955~1017;TCRζ:ヌクレオチド1018~1356。
【化22】
【0048】
配列番号20は、CD19 scFvと、それに続くCD28Hの膜貫通ドメインおよびTCRζのシグナル伝達ドメインに融合されたCD8αヒンジドメインのアミノ酸配列である。この構築物は、N末端Mycタグを含む。シグナルペプチド:アミノ酸1~21;Mycタグ:アミノ酸22~31;CD19 scFv:アミノ酸32~273;CD8αヒンジ:アミノ酸274~318;CD28H膜貫通ドメイン:アミノ酸319~339;TCRζ:アミノ酸340~452。
【化23】
【0049】
配列番号21は、CD16(FCGR3A)の例示的なアミノ酸配列である。
【化24】
【0050】
配列番号22は、NKp46の例示的なアミノ酸配列である。
【化25】
【0051】
配列番号23は、NKp30の例示的なアミノ酸配列である。
【化26】
【0052】
配列番号24は、NKp44の例示的なアミノ酸配列である。
【化27】
【0053】
配列番号25は、KIR2DS4の例示的なアミノ酸配列である。
【化28】
【0054】
本明細書で実証されるように、CD28H由来の細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARは、増加した抗腫瘍活性および阻害を克服する能力を提供する。特定の例では、CD28Hおよび2B4由来の細胞内シグナル伝達ドメインの組み合わせを使用した。実施例に記載されるように、第3世代T細胞CAR(CD28-41BB-TCRζ)と比較して、共活性化受容体CD28Hおよび2B4(CD244)由来のドメインを含むCAR(CD28H-2B4-TCRζ)は、NK細胞によってより強い抗腫瘍細胞傷害性を誘導し、CD94-NKG2AおよびKIR2DL1による阻害を克服するその能力においてより強力であった。同様に、共活性化受容体CD28Hおよび2B4を含むCAR(CD28H-2B4-TCRζ)は、NK細胞によってより強い抗腫瘍細胞傷害性を誘導し、NKG2Dの膜貫通ドメインならびに2B4およびTCRζ由来の細胞内シグナル伝達ドメインで構成される別のCAR(NKG2D-2B4-TCRζ)よりも、CD94-NKG2AおよびKIR2DL1による阻害を克服するその能力においてより強力であった。
I.用語
【0055】
特に明記しない限り、技術用語は従来の用法に従って使用される。分子生物学における一般的な用語の定義は、Lewin’s Genes X,ed.Krebsら、Jones and Bartlett Publishers、2009(ISBN 0763766321);Kendrewら(eds.)、The Encyclopedia of Molecular Biology、Blackwell Publishers発行、1994(ISBN 0632021829);Robert A.Meyers(ed.)、Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference、Wiley,John&Sons,Inc.発行、1995(ISBN 0471186341);およびGeorge P.Redei,Encyclopedic Dictionary of Genetics,Genomics,Proteomics and Informatics、3rd Edition,Springer、2008(ISBN:1402067534)、ならびに他の同様の参考文献に見出され得る。
【0056】
別段の説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数の指示対象を含む。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。核酸またはポリペプチドについて与えられるすべての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、およびすべての分子量または分子質量値は近似値であり、説明のために提供されることをさらに理解されたい。
【0057】
本明細書に記載の方法および材料と類似または同等の方法および材料を本開示の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が組み込まれ、GenBankt番号(2020年3月26日にGenBankに存在する配列について)も同様である。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。
【0058】
本開示の様々な実施形態の精査を容易にするために、特定の用語の以下の説明が提供される。
【0059】
抗体:抗原のエピトープを認識して結合する(例えば、特異的に認識して特異的に結合する)少なくとも1つの可変領域を含むポリペプチドリガンド。哺乳動物免疫グロブリン分子は、重(H)鎖および軽(L)鎖から構成され、それぞれが可変重(VH)領域および可変軽(VL)領域とそれぞれ呼ばれる可変領域を有する。合わせて、VH領域およびVL領域は、抗体によって認識される抗原の結合を担う。哺乳動物免疫グロブリンには、抗体分子の機能活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEがある。
【0060】
抗体可変領域は、「フレームワーク」領域および「相補性決定領域」または「CDR」として知られる超可変領域を含む。CDRは、主に抗原のエピトープへの結合を担う。抗体のフレームワーク領域は、CDRを三次元空間に配置し、整列させるのに役立つ。所与のCDRのアミノ酸配列境界は、Kabatらによって記載されたものを含む、いくつかの周知のナンバリングスキームのいずれかを使用して容易に決定することができる。(Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国保健福祉省、1991年;「Kabat」ナンバリングスキーム)、Chothiaら(Chothia and Lesk,J Mol Biol 196:901-917,1987;Chothiaら、Nature、342:877、1989;およびAl-Lazikaniら、(JMB 273、927-948、1997;「Chothia」のナンバリングスキーム)、ならびにImMunoGeneTics(IMGT)データベース(Lefranc,Nucleic Acids Res 29:207-9、2001を参照のこと;「IMGT」のナンバリングスキーム)。KabatおよびIMGTデータベースはオンラインで維持される。
【0061】
単鎖抗体(scFv)は、遺伝子融合された単鎖分子(例えば、Birdら、Science、242:423-426、1988;Hustonら、Proc.Natl.Acad.Sci.、85:5879-5883、1988;Ahmadら、Clin.Dev.Immunol.、2012、doi:10.1155/2012/980250;Marbry、IDrugs、13:543-549、2010を参照されたい。)として適切なポリペプチドリンカーによって連結された1またはそれを超える抗体のVHおよびVLドメインを含む遺伝子操作された分子である。scFvにおけるVHドメインおよびVLドメインの分子内配向は、典型的にはscFvにとって決定的ではない。したがって、両方の可能な配置(VHドメイン-リンカードメイン-VLドメイン;VLドメイン-リンカードメイン-VHドメイン)を有するscFvを使用することができる。dsFvでは、VHおよびVLは、ジスルフィド結合を導入して鎖の会合を安定化するように変異している。ダイアボディも含まれ、これは、VHドメインおよびVLドメインが、単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、それによってドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させ、2つの抗原結合部位を作り出す二価二重特異性抗体である(例えば、Holligerら、Proc.Natl.Acad.Sci.、90:6444-6448、1993;Poljakら、Structure、2:1121-1123、1994を参照のこと)。
【0062】
抗体には、キメラ抗体(ヒト化マウス抗体など)およびヘテロコンジュゲート抗体(二重特異性抗体など)などの遺伝子操作された形態も含まれる。Pierce Catalog and Handbook、1994-1995(Pierce Chemical Co.、Rockford、IL);Kuby、J.、Immunology、3rd Ed.、W.H.Freeman&Co.、New York、1997も参照のこと。
【0063】
2B4(CD244):非MHC拘束性殺傷を媒介するNK細胞表面受容体。2B4はまた、いくつかのT細胞、樹状細胞および単球上に見出される。2B4のリガンドはCD48であり、これは造血細胞上に発現される。2つのヒトアイソフォームが同定されている。これらは、同一の細胞内ドメインを有し、細胞外ドメインにおける5つのアミノ酸の存在または非存在によって異なる。
【0064】
2B4配列は公的に入手可能である。例示的なヒト2B4核酸配列としては、NM_016382およびNM_001166664が挙げられる。例示的なヒト2B4アミノ酸配列としては、GenBankアクセッション番号NP_057466およびNP_001160136が挙げられる。当業者は、例えば、現在利用可能であるかまたは後に開発される配列検索およびデータベースツールを利用して、さらなる2B4核酸およびアミノ酸配列を同定することができる。
【0065】
CD28ホモログ(CD28H):CD28Hは、チェックポイント阻害物質PD-1およびCTLA-4などの免疫系の調節因子を含む免疫受容体のCD28ファミリーに属する。CD28Hは、最初に、細胞間相互作用、細胞遊走ならびに上皮細胞および内皮細胞の血管新生に関与する分子として記載された。CD28Hは、単一の細胞外免疫グロブリンドメインと、それに続く膜貫通ドメインと、110アミノ酸長の細胞質領域と、を有する。CD28Hは、ナイーブT細胞における共刺激受容体である。CD28HのリガンドはB7ホモログ7(遺伝子HHLA2によってコードされるB7-H5としても知られるB7H7)であり、これはT細胞成長およびサイトカイン産生を共刺激する。刺激後の抗原提示細胞上での発現に加えて、B7H7は腫瘍組織でも広く発現される。CD28H+ナイーブおよびメモリーT細胞は、エフェクター機能の低下およびナイーブ特徴の増加を示す。CD28Hの発現は、ヒト末梢血中のNK細胞、自然リンパ系細胞(ILC)、および形質細胞様樹状細胞(pDC)において記述されている。
【0066】
CD28H配列は、公的に入手可能である。例示的なヒトCD28H核酸配列としては、NM_144615およびNM_001308232が挙げられる。例示的なヒトCD28Hアミノ酸配列としては、GenBankアクセッション番号NP_653216およびNP_001295161が挙げられる。当業者は、例えば、現在利用可能であるかまたは後に開発される配列検索およびデータベースツールを利用して、さらなるCD28H核酸およびアミノ酸配列を同定することができる。
【0067】
キメラ抗原受容体(CAR):標的結合部分(単一ドメイン抗体またはscFvなど)およびシグナル伝達ドメイン、例えばT細胞受容体(例えば、CD3ζ、本明細書で「TCRζ」とも呼ばれる)由来のシグナル伝達ドメインを含むキメラ分子。典型的には、CARは、標的結合部分、膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを含む。細胞内ドメインは、典型的には、TCRζ(CD3ζまたはFcεR1γなどの1またはそれを超える免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を有するシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの例では、細胞内ドメインは、少なくとも1つのさらなる共刺激ドメインまたは細胞内シグナル伝達分子の細胞内部分も含む。
【0068】
DAP12(TYROBP):活性化シグナル伝達エレメントとして作用し得る、かつZAP70およびSYKに結合し得る、細胞質ドメインにITAMモチーフを含む膜貫通タンパク質。
【0069】
DAP12配列は、公的に入手可能である。例示的なヒトDAP12核酸配列としては、NM_198125およびNM_001173515が挙げられる。例示的なヒトDAP12アミノ酸配列としては、GenBankアクセッション番号NP_937758およびNP_001166986が挙げられる。当業者は、例えば、現在利用可能であるかまたは後に開発される配列検索およびデータベースツールを利用して、さらなるDAP12核酸およびアミノ酸配列を同定することができる。
【0070】
単離された:「単離された」生物学的成分、例えば核酸、タンパク質(抗体を含む)または細胞小器官は、その成分が天然に生じる環境(細胞など)中の他の生物学的成分、例えば他の染色体および染色体外のDNAおよびRNA、タンパク質および細胞小器官から実質的に分離または精製されている。「単離された」核酸およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語はまた、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸を包含する。
【0071】
ナチュラルキラー(NK)細胞:特定の抗原刺激の非存在下で、MHCクラスによる制限なしに標的細胞を死滅させる免疫系の細胞。標的細胞は、腫瘍細胞またはウイルスを保有する細胞であり得る。NK細胞は、CD56の存在およびCD3表面マーカーの非存在を特徴とする。NK細胞は、典型的には、正常な末梢血中の単核細胞画分の約10~15%を構成する。歴史的に、NK細胞は、事前の免疫または活性化なしに特定の腫瘍細胞を溶解する能力によって最初に同定された。NK細胞は、MHCクラスI提示を下方調節することによってCTL応答から逃れる可能性があるウイルスおよび腫瘍に対する「バックアップ」保護機構を提供すると考えられている。NK細胞は、直接的な細胞傷害性殺傷に関与することに加えて、がんおよび感染を制御するために重要であり得るサイトカイン産生においても役割を果たす。
【0072】
いくつかの例では、「改変NK細胞」は、異種核酸(本明細書に開示される核酸またはベクターの1つまたは複数など)で形質導入または形質転換された、または1またはそれを超える異種タンパク質を発現するNK細胞である。「改変NK細胞」および「形質導入NK細胞」という用語は、本明細書のいくつかの例では互換的に使用される。
【0073】
精製:精製されたという用語は、絶対純度を必要とせず、むしろ、相対的な用語として意図されている。したがって、例えば、精製されたタンパク質または核酸調製物は、タンパク質または核酸がその天然環境(例えば、細胞内)にあるよりも富化されているものである。一実施形態において、調製物は、タンパク質または核酸が調製物の全タンパク質または核酸含有量の少なくとも50%を占めるように精製される。実質的な精製は、他のタンパク質または細胞成分からの精製を意味する。実質的に精製されたタンパク質または核酸は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または98%純粋である。したがって、1つの具体的な非限定的な例では、実質的に精製されたタンパク質または核酸は、他の成分を90%含まない。
【0074】
組換え:天然に生じない配列を有するか、別の方法で分離された配列の2つのセグメント(例えば、「キメラ」配列)の人工的な組み合わせによって作製された配列を有する核酸またはタンパク質。この人工的な組み合わせは、化学合成によって、または例えば遺伝子操作技術による核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成することができる。
【0075】
対象:ヒトおよび非ヒト哺乳動物を含むヒトおよび獣医学的対象の両方を含むカテゴリーである、生きている多細胞脊椎動物。
【0076】
T細胞:免疫応答の重要なメディエーターである白血球(リンパ球)。T細胞には、CD4+T細胞およびCD8+T細胞が含まれるが、これらに限定されない。CD4+Tリンパ球は、「分化抗原群4」(CD4)として知られるその表面にマーカーを有する免疫細胞である。ヘルパーT細胞としても知られるこれらの細胞は、抗体応答ならびにキラーT細胞応答を含む免疫応答を統合するのに役立つ。CD8+T細胞は、「分化抗原群8」(CD8)マーカーを有する。一実施形態では、CD8+T細胞は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。別の実施形態では、CD8+T細胞は、サプレッサーT細胞である。
【0077】
活性化T細胞は、細胞増殖および/または1またはそれを超えるサイトカイン(例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IFNγまたはTNFα)の発現もしくは分泌の増加によって検出することができる。CD8+T細胞の活性化は、抗原に応答した細胞溶解活性の増加によっても検出することができる。
【0078】
いくつかの例では、「改変T細胞」は、異種核酸(本明細書に開示される核酸またはベクターの1つまたは複数など)で形質導入または形質転換された、または1またはそれを超える異種タンパク質を発現するT細胞である。「改変T細胞」および「形質導入T細胞」という用語は、本明細書のいくつかの例では互換的に使用される。
【0079】
形質導入または形質転換:形質転換細胞は、分子生物学技術によって核酸分子が導入された細胞である。本明細書で使用される場合、形質導入および形質転換という用語は、ウイルスベクターによるトランスフェクション、プラスミドベクターの使用、ならびにエレクトロポレーション、リポフェクションおよび粒子銃加速によるDNAの導入を含む、核酸分子がそのような細胞に導入され得るすべての技術を包含する。
【0080】
疾患を処置または改善すること:「処置すること」とは、腫瘍サイズまたは腫瘍量の減少など、疾患または病的状態が発症し始めた後に疾患または病的状態の徴候または症状を減少または阻害する治療的介入を指す。「改善する」とは、がんなどの疾患の徴候または症状の数または重症度の減少を指す。
【0081】
ベクター:宿主細胞(例えば、トランスフェクションまたは形質導入によって)に導入し、それによって形質転換宿主細胞を産生することができる核酸分子。組換えDNAベクターは、組換えDNAを有するベクターである。ベクターは、複製起点などの宿主細胞内での複製を可能にする核酸配列を含むことができる。ベクターはまた、1またはそれを超える選択マーカー遺伝子および当技術分野で公知の他の遺伝要素を含むことができる。ウイルスベクターは、1またはそれを超えるウイルスに由来する少なくともいくつかの核酸配列を有する組換え核酸ベクターである。複製欠損ウイルスベクターは、少なくとも1つの複製必須遺伝子機能の欠損に起因して、複製に必要なウイルスゲノムの1またはそれを超える領域の補完を必要とするベクターである。
II.キメラ抗原受容体
【0082】
本明細書では、CD28H由来の細胞内シグナル伝達ドメインおよび少なくとも1つのさらなる細胞内シグナル伝達ドメイン(1つまたは2つのさらなる細胞内シグナル伝達ドメインなど)を含むCARが提供される。いくつかの実施形態では、CARは、(N末端からC末端の順序で)標的結合ドメイン(抗原結合ドメインなど)と、必要に応じてヒンジ(または「ステム」)ドメインと、膜貫通ドメインと、CD28H由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメインおよび第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、細胞内ドメインと、を含む。第1および第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、任意の順序であり得る。特定の実施形態では、細胞内ドメインは、CD28H由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメインと、2B4、TCRζ、FcεR1γまたはDAP12由来の第2の細胞内シグナル伝達ドメインと、を含む。例示的なCARとしては、
図13Bに概略的に示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
CD28H由来の細胞内シグナル伝達ドメインおよび少なくとも2つのさらなる細胞内シグナル伝達ドメインを含むCARも提供される。いくつかの実施形態では、CARは、(N末端からC末端の順序で)標的結合ドメイン(抗原結合ドメインなど)と、必要に応じてヒンジ(または「ステム」)ドメインと、膜貫通ドメインと、CD28H由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメイン、2B4由来の第2の細胞内シグナル伝達ドメイン、および第3の細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインと、を含む。第1、第2および第3の細胞内シグナル伝達ドメインは、任意の順序であり得る。いくつかの例では、第3の細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRζ、FcεR1γまたはDAP12に由来する。例示的なCARとしては、
図15Aに概略的に示されるものおよび表2に記載されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態では、第1の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28Hに由来し、配列番号2のアミノ酸172~282と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなるアミノ酸配列を含む。さらなる例では、CD28H細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号1のヌクレオチド514~846と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる核酸分子によってコードされる。他の例では、CD28H細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸は、コドン最適化されており、配列番号15のヌクレオチド1018~1350と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる核酸分子を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、第1の細胞内シグナル伝達ドメインに対してC末端であり得るか、または第1の細胞内シグナル伝達ドメインに対してN末端であり得る。一例では、第2の細胞内シグナル伝達ドメインはTCRζに由来する。いくつかの例では、第2の細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号2のアミノ酸283~395と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなるアミノ酸配列を含む。さらなる例では、TCRζ細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号1のヌクレオチド847~1185と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる核酸分子によってコードされる。他の実施形態では、第2の細胞内シグナル伝達は、2B4に由来し、配列番号10のアミノ酸171~291と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなるアミノ酸配列を含む。さらなる例では、2B4細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号9のヌクレオチド514~873と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる核酸分子によってコードされる。なおさらなる実施形態では、第2の細胞内シグナル伝達ドメインはFcεR1γまたはDAP12に由来する。
【0086】
いくつかの実施形態では、細胞内ドメインは、2B4由来の第2の細胞内ドメイン(例えば、上述したように)および第3の細胞内シグナル伝達ドメインを含む。特定の実施形態では、第3の細胞内シグナル伝達ドメインは、例えば上記のように、TCRζ、FcεR1γ、またはDAP12に由来する。
【0087】
いくつかの実施形態では、標的結合ドメイン(抗原結合ドメインとも呼ばれる)は、がんもしくは腫瘍細胞上に発現されるタンパク質または腫瘍関連抗原などの目的の標的に結合する抗原結合ドメインまたはscFvである。任意の標的結合ドメインが、本明細書中に記載されるCARに挿入され得る。いくつかの実施形態では、標的結合ドメインは、血液悪性腫瘍または固形腫瘍において発現されるタンパク質に結合する。いくつかの非限定的な例では、抗原結合ドメインは、CD19(CD19に結合するscFvなど)に結合する。他の例では、標的結合ドメインは、B7H7(例えば、CD28Hの細胞外ドメイン)に結合する。細胞外結合ドメインの例示的な標的および対応する悪性腫瘍を表1に示す。
表1:例示的な細胞外抗原結合ドメイン標的および悪性腫瘍
【表1-1】
【表1-2】
【0088】
したがって、いくつかの実施形態では、細胞外標的結合ドメインは、CD19、CD22、B細胞成熟因子(BCMA)、CD171、上皮成長因子受容体バリアントIII(EGFRvIII)、インターロイキン-13受容体アルファ(IL-13Ra)、メソテリン、ムチン16、ムチン1、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR-1)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、CD33、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、CD123、CD70、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、癌胎児性抗原(CEA)、GTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)、CD5、CD38、エフリンA型受容体2(EphA2)、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)、ガングリオシドG2(GD2)、上皮細胞接着分子(EpCam)、CD133、およびグリピカン3(GPC3)のうちの1またはそれを超えるものに結合する。このリストは非限定的であり、さらなる細胞外標的化ドメインも利用することができる。特定の例では、標的化ドメインは、CD19(例えば、配列番号12のアミノ酸32~273、または配列番号11のヌクレオチド94~819によってコードされる)に結合するscFvである。他の特定の例では、細胞外標的結合ドメインは、CD28H細胞外ドメイン(例えば、配列番号8のアミノ酸1~150、または配列番号7のヌクレオチド1~450によってコードされる)である。
【0089】
いくつかの実施形態では、CARの細胞外領域は、例えば細胞表面でのCARの発現を促進するために、シグナル配列ドメイン、例えば抗原結合ドメインのN末端をさらに含む。いくつかの例では、シグナル配列ドメインは、合成中および/または細胞表面上での発現の際にCARから切断され得る。したがって、いくつかの実施形態では、CARは、シグナル配列ドメインを欠く。シグナル配列ドメインは、任意の適切なシグナルペプチド配列を含み得る。1つの非限定的な例では、シグナル配列ドメインは、CD8αシグナル配列である。いくつかの例では、シグナル配列は、配列番号16のアミノ酸1~21を含むかもしくはそれからなるか、または配列番号15のヌクレオチド1~63によってコードされる。別の非限定的な例では、シグナル配列ドメインは、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)シグナル配列である。
【0090】
他の実施形態では、CARの細胞外領域は、例えばNK細胞におけるCARの発現の検出を容易にするために、検出可能な標識またはタグをさらに含む。いくつかの例では、検出可能な標識またはタグは、抗原結合ドメインに対してN末端である。しかしながら、当業者は、構築物の他の場所、例えば細胞内ドメインのC末端に検出可能な標識またはタグを配置することができる。1つの非限定的な例では、検出可能な標識またはタグはMycタグである。限定されないが、蛍光標識を含む他の検出可能な標識またはタグを選択することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、開示されるCARは、ヒンジ(または「ステム」)ドメインも含み、これは、いくつかの例では、細胞外標的化ドメインと膜貫通領域との間のスペーサーである。しかしながら、他の実施形態では、CARはヒンジドメインを含まない。いくつかの実施形態では、細胞外ヒンジドメインはCD8αヒンジドメインである。いくつかの例では、ヒンジドメインは、配列番号12のアミノ酸274~318のアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなるCD8αヒンジドメインである。さらなる例では、CD8αヒンジドメインは、配列番号11のヌクレオチド820~954と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる核酸分子によってコードされる。他の例では、ヒンジドメインは、本明細書に開示されるCARにおいて利用されるCD28H配列に含まれる(例えば、CD28HのIgドメインと膜貫通ドメインとの間のヒンジドメイン)。
【0092】
開示されるCARは、存在する場合、ヒンジドメイン(例えば、ヒンジドメインに対するC末端)および細胞内ドメイン(例えば、細胞内ドメインのN末端)に連結される膜貫通ドメインを含む。他の例では、ヒンジドメインが存在しない場合、膜貫通ドメインは、細胞外標的化ドメイン(例えば、細胞外標的化ドメインに対するC末端)および細胞内ドメイン(例えば、細胞内ドメインのN末端)に連結される。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインはCD28H膜貫通ドメインである。他の例では、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメイン、NKp30膜貫通ドメイン、NKp46膜貫通ドメイン、CD16(FCGR3A)膜貫通ドメイン、NKp44膜貫通ドメイン、またはKIR2DS4膜貫通ドメインである。1つの具体的な例では、膜貫通ドメインは、CD28Hに由来する。いくつかの例では、膜貫通ドメインは、配列番号16のアミノ酸319~339と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなるCD28H膜貫通ドメインである。さらなる例では、CD28H膜貫通ドメインは、配列番号15のヌクレオチド955~1017と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる核酸分子によってコードされる(少なくともいくつかの例では、コドン最適化されていてもよい)。他の具体的な例では、膜貫通ドメインは、配列番号23のアミノ酸136~156(NKp30)、配列番号22のアミノ酸256~279(NKp46)、配列番号21のアミノ酸209~229(CD16)、配列番号24のアミノ酸193~213 NKp44)もしくは配列番号25のアミノ酸246~265(KIR2DS4)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる。
【0093】
いくつかの実施形態では、CARは、膜貫通ドメインの細胞内領域C末端および第1の細胞内シグナル伝達ドメインに対してN末端(例えば、約20~70アミノ酸、例えば約25~50アミノ酸、約35~60アミノ酸または約45~70アミノ酸の細胞内領域)を含む。特定の例では、この細胞内領域は、NKp30、NKp46、CD16、NKp44、またはKIR2DS4に由来し、それぞれの膜貫通ドメインに対してC末端で連結されている(例えば、例については表2を参照のこと)。特定の例では、細胞内領域は、配列番号21のアミノ酸230~254(CD16)、配列番号22のアミノ酸280~304(NKp46)、配列番号23のアミノ酸157~201(NKp30)、配列番号24のアミノ酸214~276(NKp44)、もしくは配列番号25のアミノ酸266~304(KIR2DS4)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるか、またはそれらを含むか、またはそれらからなる。
【0094】
本開示の例示的なCARには、
図13Bおよび
図15Aに概略的に示されるもの、ならびに表2に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。
【0095】
特定の実施形態では、CARは、配列番号2、6、12、16、および20のうちのいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性)を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの例では、CARは、配列番号2、6、12、16、および20のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含むかまたはこれからなる。特定の例では、配列番号2、6、12、16および20のうちのいずれか1つに含まれるシグナルペプチドおよび/またはMycタグは、使用前に除去される。
【0096】
本明細書に開示されるCARをコードする核酸も提供される。いくつかの実施形態では、CARは、配列番号1、5、11、15、および19のうちのいずれか1つと少なくとも90%の配列同一性(例えば、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性)を有する核酸配列によってコードされるか、または配列番号1、5、11、15、および19のうちのいずれか1つの核酸配列を含むか、またはそれからなる。特定の例では、配列番号1、5、11、15および19のうちのいずれか1つに含まれるシグナル配列および/またはMycタグコード配列は、使用前に除去される。
表2:例示的なCAR
【表2】
【0097】
バリアントであるCARの生物学的活性を保持するか、または特定のドメインの生物学的活性を保持する、本明細書に記載のCARまたはそのドメインの機能的バリアントも提供される。機能的バリアントは、親CARまたはドメインとアミノ酸配列において少なくとも約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%)、約97%、約98%、約99%またはそれを超えて同一であり得る。置換は、例えば、細胞外標的化ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインのうちの1またはそれを超えるものにおいて行うことができる。
【0098】
いくつかの例では、機能的バリアントは、少なくとも1つの保存的アミノ酸置換(例えば最大10個の保存的アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の保存的置換)を有する親CARまたはドメインのアミノ酸配列を含む。他の例では、機能的バリアントは、少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換(例えば最大10個の非保存的アミノ酸置換、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の非保存的置換)を有する親CARまたはドメインのアミノ酸配列を含む。この場合、非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性を妨害も阻害もしない。非保存的アミノ酸置換は、機能的バリアントの生物学的活性が親CARまたはドメインと比較して増加するように、機能的バリアントの生物学的活性を増強し得る。
【0099】
CARまたはそのドメインは、いくつかの例では、1つまたはそれを超える天然に生じるアミノ酸の代わりに1つまたはそれを超える合成アミノ酸を含み得る。そのような合成アミノ酸としては、例えば、アミノシクロヘキサンカルボン酸、ノルロイシン、a-アミノn-デカン酸、ホモセリン、S-アセチルアミノメチル-システイン、トランス-3-およびトランス-4-ヒドロキシプロリン、4-アミノフェニルアラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、4-カルボキシフェニルアラニン、β-フェニルセリンβ-ヒドロキシフェニルアラニン、フェニルグリシン、α-ナフチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、シクロヘキシルグリシン、インドリン-2-カルボン酸、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、アミノマロン酸、アミノマロン酸モノアミド、N’-ベンジル-N’-メチル-リジン、Ν’,Ν’-ジベンジル-リジン、6-ヒドロキシリジン、オルニチン、α-アミノシクロペンタンカルボン酸、α-アミノシクロヘキサンカルボン酸、OC-アミノシクロヘプタンカルボン酸、OC-(2-アミノ-2-ノルボルナン)-カルボン酸、γ-ジアミノ酪酸、α、β-ジアミノプロピオン酸、ホモフェニルアラニン、およびα-tert-ブチルグリシンが挙げられる。CARは、グリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化、エステル化、N-アシル化、例えば、ジスルフィド架橋を介した環化、または酸付加塩への変換、および/または必要に応じて二量体化もしくは重合もしくはコンジュゲートされ得る。他の実施形態では、CARをコードする核酸は、例えば、目的の細胞における発現を改善するためにコドン最適化され得る。
【0100】
いくつかの実施形態では、開示されるCARをコードする核酸分子は、T細胞またはNK細胞などの宿主細胞における発現のための発現ベクター(ウイルスベクターなど)に含まれる。いくつかの例では、発現ベクターは、CARをコードする核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。1またはそれを超えるエンハンサー、転写および/または翻訳ターミネーター、ならびに開始配列などのさらなる発現制御配列も、発現ベクターに含めることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供されるCARをコードする核酸は、ウイルスベクターに含まれる。適切なウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(例えば、ガンマレトロウイルス、例えばMoMLVまたはレンチウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスおよび鶏痘ベクターが挙げられる。いくつかの例では、CARをコードする核酸は、SFGレトロウイルスベクターまたはpHAGE-CPPTレンチウイルスベクターなどのMoMLVベクターに含まれる。別の例では、CARをコードする核酸は、pCDH-EF1α-MSC-T2A-Puroレンチウイルス発現ベクターに含まれる。他の例では、ベクターはDNAベクターであり得る。さらなる例では、CARをコードする核酸は、MSGV-1などのγ-レトロウイルスベクターに含まれる。
【0101】
いくつかの例では、ベクターは、少なくとも1つのさらなるCARをコードする核酸配列をさらに含む。いくつかの例では、さらなるCARは、さらなる腫瘍抗原に特異的であり、例えば、標的抗原を発現または過剰発現する腫瘍細胞に対する開示されたCARの標的化の特異性を増加させる。
III.キメラアダプタータンパク質を発現する細胞
【0102】
開示のCARを発現する細胞(例えば、免疫細胞)および開示のCARを発現する細胞を含む組成物も本明細書で提供される。特定の実施形態では、組成物は、開示されるCARを発現する細胞(NK細胞またはT細胞など)および薬学的に許容され得る担体を含む。
【0103】
いくつかの実施形態では、開示されるCARをコードする核酸分子は、T細胞またはNK細胞などの宿主細胞における発現のための発現ベクター(ウイルスベクターなど)に含まれる。いくつかの例では、発現ベクターは、CARをコードする核酸分子に作動可能に連結されたプロモーターを含む。1またはそれを超えるエンハンサー、転写および/または翻訳ターミネーター、ならびに開始配列などのさらなる発現制御配列も、発現ベクターに含めることができる。
【0104】
開示される核酸は、例えばCARをコードする核酸を含む発現ベクターを使用して、細菌、植物、酵母、昆虫または哺乳動物細胞などの宿主細胞で発現させることができる。宿主が真核生物である場合、リン酸カルシウム共沈、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソームに包んだプラスミドの挿入、ウイルスベクターなどのDNAのトランスフェクションの方法を用いてもよい。真核細胞はまた、CARをコードするポリヌクレオチド配列、および選択可能な表現型をコードする第2の核酸分子、例えば単純ヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子と共形質転換され得る。別の方法は、シミアンウイルス40(SV40)、レンチウイルスまたはレトロウイルスなどの真核生物ウイルスベクターを使用して、真核細胞に形質導入または形質転換し、CAR(例えば、Viral Expression Vectors,Springer Press,Muzyczka ed.、2011)を発現させることである。いくつかの例では、そのような発現系は、293、COS、CHO、HeLaまたは骨髄腫細胞株などの細胞において組換えタンパク質を産生するために使用される。
【0105】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターがCARの発現に利用される。ウイルスベクターとしては、シミアンウイルス40、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルスベクター、およびレトロウイルス、例えばガンマレトロウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。レトロウイルスベクターは、真核細胞への遺伝子導入のための非常に効率的な方法を提供する。さらに、レトロウイルス組込みは、制御された様式で起こり、細胞あたり1コピーまたは数コピーの新しい遺伝情報の安定した組込みをもたらす。理論に拘束されるものではないが、レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖性細胞を形質導入することができるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコ-レトロウイルスに由来するベクターを超える利点を有する。それらはまた、低い免疫原性という追加の利点を有する。1つの非限定的な例では、ベクターは、例えばEF1aプロモーターを有するpELNSなどのレンチウイルスベクターである。他の例示的なベクターには、ネオマイシン欠失またはレトロウイルスベクターMSGVを有するpLV-ER1a-IRES-Neoが含まれる。特定の例では、ベクターは、pCDH-EF1α-MCS-T2A Puroレンチウイルス発現ベクターであり、例えばプラスミドsPAX2およびpMD2.Gと共にレンチウイルスを産生するために使用することができる。
【0106】
本明細書に開示されるCARを発現する免疫細胞(NK細胞またはT細胞など)も提供される。免疫細胞に、CARをコードする核酸を含む発現ベクターを形質導入する。いくつかの例では、形質導入細胞は、末梢血リンパ球(例えば、対象から得られる)、末梢血単核細胞(例えば、対象から得られる)、単離されたT細胞(例えば、初代T細胞または対象から得られたT細胞)、または単離されたNK細胞(例えば、初代NK細胞または対象から得られたNK細胞)である。T細胞またはNK細胞は、対象からのサンプル、例えば血液、血漿、骨髄、リンパ節または胸腺から得ることができる。いくつかの例では、T細胞またはNK細胞はまた、例えばCAR発現ベクターによる形質導入の前および/または後に、対象からのサンプルから富化、精製および/または増大される。
IV.免疫療法の方法
【0107】
CARを用いてがん(血液悪性腫瘍または固形腫瘍など)を有する対象を処置する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に開示されるCARを発現するT細胞またはNK細胞(例えば、CARをコードするベクターで形質導入される)および薬学的に許容され得る担体を含む組成物を対象に投与することを含む。他の例では、本方法は、開示されるCARをコードする発現ベクターおよび薬学的に許容され得る担体を含む医薬組成物を対象に投与することを含む。CARの細胞外標的化ドメインは、例えば、表1に示されるように、処置されているがんに基づいて選択される。
【0108】
血液学的悪性腫瘍の例としては、急性白血病(例えば、11q23陽性急性白血病、急性リンパ性白血病(ALL)、T細胞ALL、急性骨髄性白血病(acute myelocytic leukemia)、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)(AML)、ならびに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄性(chronicmyelocytic)(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病(chronic myelogenous leukemia)および慢性リンパ性白血病)、リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、T細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、有毛細胞白血病、および骨髄異形成を含む白血病が挙げられる。1つの非限定的な例では、血液悪性腫瘍は急性リンパ性白血病(ALL)である。
【0109】
固形腫瘍の例としては、肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、およびその他の肉腫)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸がん、結腸直腸がん、腹膜がん、食道がん、膵臓がん、乳がん(基底乳癌、乳管癌および小葉乳癌を含む)、肺がん、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん(肝細胞癌を含む)、胃がん、扁平上皮癌(頭頸部扁平上皮癌を含む)、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭状腺癌、髄様癌、気管支原性癌、ヘパトーマ、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸がん、卵管がん、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱がん(腎細胞がんなど)、黒色腫、およびCNS腫瘍(神経膠腫、神経膠芽腫、星細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫および網膜芽細胞腫など)が挙げられる。固形腫瘍には、腫瘍転移(例えば、肺、肝臓、脳または骨への転移)も含まれる。
【0110】
細胞またはベクターを対象に導入するために、様々な薬学的に許容され得る担体、例えば緩衝食塩水などを本明細書で提供される組成物に使用することができる。これらの溶液は、無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。組成物は、滅菌され得る。いくつかの例では、組成物は、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤、ならびに保存剤、例えば酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの薬学的に許容され得る補助物質も含む。これらの製剤中の濃度は様々であってよく、選択された特定の投与様式および対象の必要性に従って、主に体液量、粘度、体重などに基づいて選択される。
【0111】
投与される組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍サイズ、転移の程度および状態の個人差を考慮して医師が決定することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCARを発現するT細胞またはNK細胞を含む医薬組成物は、約104~109細胞/kg体重(例えば、約104、105、106、107、108または109細胞/kg)、例えば約104~106細胞/kg、約105~107細胞/kg、または約106~108細胞/kgの投与量で投与される。例示的な用量は、約105細胞/kg~約109細胞/kg、例えば約106細胞/kg、約5×106細胞/kg、約107細胞/kg、約5×107細胞/kg、約108細胞/kg、または約5×108細胞/kgである。改変T細胞またはNK細胞の集団は、典型的には非経口的に、例えば静脈内投与される。しかし、腫瘍または腫瘍の近くへの注射もしくは注入(局所投与)または腹膜腔への投与も使用することができる。当業者は、適切な用量および投与経路を決定することができる。
【0112】
いくつかの例では、組成物(CARを発現するT細胞またはNK細胞を含む組成物など)は、1またはそれを超える回数、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回投与される。組成物は、静脈内注射または注入によって投与することができる。いくつかの例では、組成物は、毎日、毎週、隔月または毎月投与される。複数回用量が投与される場合、投与間の時間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日間またはそれを超える時間であり得る。いくつかの非限定的な例では、組成物は静脈内投与用に製剤化され、複数回投与される。投与の量および頻度は、対象の状態ならびに対象の疾患の種類および重症度などの因子によって決定されるが、適切なレジメンは臨床試験によって決定され得る。
【0113】
いくつかの例では、CAR改変NK細胞またはT細胞は、対象においてインビボで持続および/または複製することができ、持続的な腫瘍制御をもたらし得る長期持続性をもたらす。同じ例では、対象に投与されたNK細胞もしくはT細胞、またはこれらの細胞の子孫は、対象への投与後少なくとも2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間、13ヶ月間、14ヶ月間、15ヶ月間、16ヶ月間、17ヶ月間、18ヶ月間、19ヶ月間、20ヶ月間、21ヶ月間、22ヶ月間、23ヶ月間、または数年間、対象において存続する。他の実施形態では、細胞またはそれらの子孫は、対象への細胞の投与後6ヶ月未満、5ヶ月、4ヶ月、3ヶ月2ヶ月、または1ヶ月、例えば3週間、2週間、1週間の間、存在する。
【0114】
一実施形態では、CARは、NK細胞またはT細胞などの細胞に導入され、対象(がんを有する対象など)は、細胞の投与を受ける。いくつかの実施形態では、方法は、対象からNKまたはT細胞を単離すること、CARをコードする発現ベクター(レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターなど)でNKまたはT細胞を形質転換すること、および処置のためにCARを発現する改変NK細胞またはT細胞を対象に投与すること、を含む。NK細胞またはT細胞は、レシピエントに対して自家であり得るか、または同種異系(例えば、単離され、形質転換されたNK細胞またはT細胞は、処置されている対象由来ではない)であり得る。いくつかの例では、対象は、改変NK細胞またはT細胞を投与する前に免疫抑制レジメン(例えば、リンパ球枯渇または部分的リンパ球枯渇)を受け得る。免疫系支持療法(IL-2および/またはG-CSFなど)はまた、例えば、対象における改変された細胞の増大を促進するために、および/または好中球の回復を支援するために、対象に投与され得る。
【0115】
いくつかの実施形態では、リンパ球(PBMCなど)を含む細胞の集団は、アフェレーシスを含むがこれに限定されない任意の方法によって得ることができる。細胞の集団の全部もしくは一部を直ちに利用することができ、または細胞の全部もしくは一部を将来の使用のために凍結保存することができる。使える状態にある、細胞集団の全部または一部を解凍し(予め凍結保存されている場合)、NK細胞またはT細胞を培養で活性化、富化および/または増大させる。NK細胞またはT細胞を単離、活性化および増大させる方法は、当技術分野で公知である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/006054号および国際公開第2018/022646号)。細胞に、CARを含むベクターを形質導入する。特定の例では、約107~109個の細胞が形質導入される(例えば、約1×107、5×107、1×108、5×108、または1×109個の細胞)。形質導入されたT細胞またはNK細胞は、エクスビボで増大させることができ、増大後に適切な投与量(例えば、約106~1012個の細胞)で凍結保存することができる。形質導入されたNK細胞またはT細胞は、対象への投与前に解凍される(予め凍結されている場合)。対象は、改変NK細胞またはT細胞を投与する前に免疫抑制レジメン(例えば、リンパ球枯渇)を受け得る。改変NK細胞またはT細胞は、例えば注射または注入によって対象に投与される。
【0116】
処置有効性は、腫瘍サイズ、病変数、腫瘍ステージ、奏効率、または他の基準などの方法によって監視される。いくつかの例では、原発腫瘍または転移のサイズの減少(例えば、標準的なRECISTまたはirRECIST基準によって定義されるような)は、対象におけるがんの阻害を示す。他の例では、無増悪生存期間および/または全生存期間(例えば、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、2年、またはそれを超える、例えば1~12ヶ月、6~18ヶ月、1~2年、またはそれを超える期間)は、対象におけるがんの阻害を示す。他の例では、循環CAR発現NK細胞またはT細胞の持続性、免疫細胞サブセットの変化、および免疫細胞の活性化状態、ならびに他の免疫学的決定因子の1またはそれを超えるものを評価し、臨床転帰をベースラインで(例えば、改変された細胞の投与前または投与のときに)、処置中の異なる時点、および/または疾患進行のときに評価する。
【0117】
いくつかの例では、対象はまた、手術、化学療法、放射線、免疫抑制剤、化学療法剤、またはそれらの2つまたはそれを超える任意の組み合わせの1またはそれを超えるもので処置される。例示的な薬剤としては、限定されないが、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード(例えば、クロラムブシル、クロルメチン、シクロホスファミド、イホスファミドおよびメルファラン)、ニトロソ尿素(例えば、カルムスチン、フォテムスチン、ロムスチンおよびストレプトゾシン)、白金化合物(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチンおよびBBR3464)、ブスルファン、ダカルバジン、メクロレタミン、プロカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、およびウラムスチン;葉酸(例えば、メトトレキサート、ペメトレキセドおよびラルチトレキセド)、プリン(例えば、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、メルカプトプリンおよびチオグアニン)、ピリミジン(例えば、カペシタビン)、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビンなどの代謝拮抗剤;ポドフィルム(例えば、エトポシドおよびテニポシド)、タキサン(例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセル)、ビンカ(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビン)などの植物アルカロイド;アントラサイクリンファミリーのメンバー(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロンおよびバルルビシン)、ブレオマイシン、ヒドロキシ尿素、およびマイトマイシンなどの細胞傷害性/抗腫瘍抗生物質;トポイソメラーゼ阻害剤、例えばトポテカンおよびイリノテカン;モノクローナル抗体、例えば、アレムツズマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、ゲムツズマブ、リツキシマブ、パニツムマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、イピリムマブ、オファツムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、リツキシマブ、デュルバルマブおよびトラスツズマブ;アミノレブリン酸、アミノレブリン酸メチル、ポルフィマーナトリウム、ベルテポルフィンなどの光増感剤;プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、オプロゾミブ、イキサゾミブ、マリゾミブおよびデランゾミブ;ゲフィチニブ、イマチニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、ベムラフェニブ、トラメチニブ、およびルキソリチニブなどのキナーゼ阻害剤;成長因子受容体阻害剤、例えば、アシチニブ、エルロチニブ、カボザンチニブおよびクリゾチニブ;mTOR阻害剤、例えばエベロリムス、テムシロリムス、およびテミソロチムス;ならびに他の薬剤、例えば、アリトレチノイン、アルトレタミン、アムサクリン、アナグレリド、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、ベキサロテン、セレコキシブ、デニロイキンジフチトクス、エンザルタミド、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、トピルタミド、アパルタミド、エストラムスチン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、マソプロコール、ミトタン、ペグアスパラガーゼ、タモキシフェン、クロミフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、フルベストラントおよびトレチノインが挙げられる。さらなる薬剤としては、チェックポイント阻害剤、例えば抗体(例えば、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、イピリムマブ、デュルバルマブ、およびアテゾリズマブ)または小分子阻害剤(例えば、BMS-1001、BMS-1166、CCX4503)が挙げられる。いくつかの例では、チェックポイント阻害剤は、対象に投与されない。当業者は、処置される対象および状態に適切な1またはそれを超える利用可能な薬剤を選択することができる。
【実施例】
【0118】
以下の実施例は、特定の特徴および/または実施形態を説明するために提供される。これらの例は、本開示を記載された特定の特徴または実施形態に限定すると解釈されるべきではない。
実施例1
CD28ホモログは、B7H7+腫瘍細胞の溶解のためのナチュラルキラー細胞の強力な活性化因子である
【0119】
この実施例に含まれるデータは、2019年4月24日にオンラインで公開された、Zhuang and Long,Cancer Immunol.Res.7(6):939-951で公開されたものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
材料および方法
【0120】
プラスミド:B7H7 cDNAを含有するプラスミドをHarvard PlasmID Database(#HsCD00044662)から得た。B7H7 cDNAを増幅し、ショウジョウバエS2細胞での発現のためにpAc5.1/V5-His Aベクター(Thermo Fisher Scientific)のEcoRIおよびNotIクローニング部位にクローニングし、ヒト細胞株での発現のためにpCDH-EF1-T2A-Puroベクター(System Biosciences)のEcoRIおよびNotIクローニング部位にクローニングした。CD28HのcDNAを、Harvard PlasmID Database(#HsCD00416184)からベクターpLX304において得た。CD28H cDNAを増幅し、ヒト細胞株の形質導入のためにpCDH-EF1-T2A-Puroレンチウイルスベクター(System Biosciences)のEcoRIおよびNotIクローニング部位にクローニングした。CD28H変異体およびキメラを、In-Fusion HDクローニングキット(Clontech)を使用して作製し、配列決定によって検証した。PCDHベクターにクローニングされたcDNAはすべて、2A-ペプチドとインフレームであった。発現されたタンパク質は、免疫ブロットにおいて抗2A抗体によって検出することができた。全てのプラスミド構築は、In-Fusion HDクローニングキット(Clontech)を使用して行った。
【0121】
細胞:ヒトNK細胞を、陰性選択によって健康な米国ドナーの末梢血から単離した(STEMCELL Technologies)。NK細胞を、10%ヒト血清(Valley Biomedical)を補充したIscoveの改変ダルベッコ培地(IMDM;Gibco)に再懸濁し、4日以内に使用した。IL2およびPHA活性化NK細胞を前記のように培養した(Liuら、Immunity、36:600~611、2012)。簡単に説明すると、新たに単離されたNK細胞を、10%精製IL2(Hemagen)、100単位/ml組換えIL2(Roche)および5μg/mlフィトヘマグルチニン(PHA、Sigma)を補充したOpTimizer(Invitrogen)中で照射した自家フィーダー細胞と共に培養し、PHAおよびフィーダー細胞を含まない同じ培地で増やした。CD28H発現を2週間の活性化後に試験した。NKp46およびCD2+IL2によって活性化されたNK細胞を得るために、新たに単離したNK細胞を、100単位/mlの組換えIL2(Roche)の存在下で、5μg/mlのCD2およびNKp46 mAbでコーティングしたプレート中で培養した。CD28H発現を3日目、5日目および7日目に試験した。NKL細胞(インディアナ大学がん研究所(インディアナポリス、インディアナ州)のM.J.Robertsonより入手)およびKHYG-1細胞を、10%熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco)、2mM L-グルタミン(Gibco)および100単位/ml組換えIL-2(Roche)を補充したIMDM培地(Gibco)中で培養した。721.221細胞(221細胞と呼ばれる)、P815細胞(American Type Culture Collection、マナッサス、バージニア州より入手)、Daudi細胞(ATCC マナッサス、バージニア州)およびHDLM-2細胞(Juら、PNAS、113:1624~1629、2016)(T.Waldmann、NCI、NIHから入手)を、10%熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco)および2mM L-グルタミン(Gibco)を含有するRPMI 1640培地(Gibco)中で培養した。適切なHLA-E発現(Leeら、PNAS、95:199~204、1998)を達成するためのHLA-Aシグナルペプチドを含むHLA-E(221.AEH)でトランスフェクトした221個の細胞は、D.Geragty(シアトルのFred Hutchinson Cancer Research Center)から寄贈された。Lenti-X 293T細胞(Clontech)を、10%熱不活性化ウシ胎児血清(Gibco)および2mM L-グルタミン(Gibco)を補充したDMEM培地(Gibco)中で培養した。NIH Office of Research Serviceによって試験されたように、細胞はマイコプラズマを含まなかった。使用した全ての細胞株は、解凍後2ヶ月以内培養で維持され、形態、成長特性、表面マーカーの発現、および機能アッセイによって認証された。
【0122】
トランスフェクションおよびレンチウイルス産生:S2細胞トランスフェクションのために、発現プラスミドの1/10の量の6μg/mlピューロマイシン中で、選択のためのpAc5.1/V5-His A-puroプラスミドと共に、CD48およびB7H7発現のためのプラスミドを一緒にまたはそれぞれ単独で細胞にトランスフェクトした。耐性細胞をクローニングし、CD48およびB7H7の発現について試験した。レンチウイルスの作製のために、低継代Lenti-X 293T細胞(Clontech)をトランスフェクションの1日前にT75フラスコに播種した。細胞をPEI Max(ポリエチレンイミン)でトランスフェクトした。簡潔には、プラスミドpMD2.G 1.2μg、psPAX2 2.3μg、PCDH 4.6μgおよび217μlの無血清DMEMを15ml Falconチューブ中で混合した。65μlのPEI Max 40K(Polysciences)ストック溶液(1mg/ml)を添加し、サンプルを短時間ボルテックスした。室温で10分後、10% FCSを含むDMEM培地8.6mlをチューブに添加した。293T細胞の培養培地を、トランスフェクション試薬混合物を含む新鮮な培地で置き換えた。トランスフェクションの2日後、上清を回収し、0.45μmフィルターに通し、等分し、-80℃で保存した。形質導入のための上清を直接またはPEG-it(System Biosciences)で富化した後に使用してウイルス力価を増加させた。ヒト細胞株の形質導入のために、レンチウイルスを8μg/mlの最終濃度になるようにポリブレンと共に細胞に添加し、2日間インキュベートした。細胞を1200rpmで10分間遠心分離し、予め滴定した濃度のピューロマイシンを含む完全培地に再懸濁した。ピューロマイシン耐性細胞上の形質導入遺伝子の表面発現をフローサイトメトリーによって検証した。
【0123】
フローサイトメトリーアッセイ:ほとんどのフローサイトメトリーアッセイは、細胞を予め混合したフルオロフォア-コンジュゲート抗体と4℃で30分間インキュベートすることによって行った。HLA-Eについての染色を、最初に細胞を抗HLA-E(3D12)または対照マウスIgG1(クローンMOPC-21)とインキュベートし、その後、PE-コンジュゲートポリクローナルヤギF(ab’)2抗マウスIgG Fc(Jackson)とインキュベートすることによって行った。IL2中で増やしたNK細胞を、抗体で染色する前に、氷上で30分間、10%ヒト血清中でプレインキュベートしてFc受容体CD16をブロックした。休止NK細胞を、使用するまで10%ヒト血清を含有するIMDM中で培養したので、さらなるFc受容体ブロッキングは必要とされなかった。細胞を染色後に洗浄し、LSR II(BD Biosciences)またはLSRFortessa(商標)X-20(BD Biosciences)で分析した。データをFlowJo(FlowJo、LLC)で分析した。
【0124】
脱顆粒および細胞傷害性アッセイ:リダイレクトされた細胞傷害性アッセイを記載のように行った(Brycesonら、Blood、107:159~166、2006)。簡単に記載すると、P815細胞を、5μg/mlの、CD28H(R&D MAB83162)、2B4(BioLegend 329502)、NKp46(BD 557847)、NKG2D(R&D MAB139)、CD2(BD 555323)、DNAM-1(BD Biosciences 559787)、CD16(BD 555404)およびCD56(BD 555513)に対するmAbの示された組み合わせで、室温で15分間インキュベートした。休止NK細胞を1:2のE:T比で添加し、混合し、300rpmで1分間穏やかに遠心分離した。37℃で2時間後、細胞をLive/Dead-NIR(Thermo Fisher)、抗CD56-Bv421(BD 562751)および抗CD107a-PE(BD 555801)で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。標的細胞溶解アッセイを、ToxiLight非破壊細胞傷害性バイオアッセイキット(Lonza)を製造者の指示に従って使用して、またはフローベースアッセイによって行った。簡潔には、NK細胞を、示されたE:T比で10% FCSを含むIMDM培地中で6時間、PKH67標識標的細胞と共にインキュベートした。細胞をLive/Dead NIRで染色し、標的細胞の溶解をフローサイトメトリーによって決定した。CD28Hブロッキングのために、NK細胞を10μg/ml CD28H抗体(R&D Systems)と15分間プレインキュベートした後、221.B7H7細胞と混合した。KHYG-1およびNKL細胞を、細胞傷害性アッセイに使用する前に、IL-2を含まない完全IMDM培地に1日間静置した。
【0125】
S2細胞混合および複数の機能アッセイ:休止NK細胞をトランスフェクトしたS2細胞と1:2のE:T比で混合した。細胞を10% FCSを含むIMDM培地中で2時間インキュベートし、Live/Dead-NIR、抗CD56-Bv421および抗CD107a-PEで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。細胞内サイトカインおよびケモカインを染色するために、NK細胞およびS2細胞を1時間、3μM GolgiStop(BD Biosciences)の存在下で5時間インキュベートした。CD28Hブロッキングのために、10μg/ml CD28H抗体(R&D Systems)をNK細胞と15分間プレインキュベートした後、S2細胞と混合した。細胞を抗CD107a-PE(BD 555801)および抗CD56-Bv421(BD 562751)で染色し、4%パラホルムアルデヒドで10分間固定し、細胞内染色透過処理洗浄緩衝液(BioLegend)で透過処理した。細胞を、抗IFN-γ-APC(BioLegend 506510)、抗TNF-α-BV650(BioLegend 502937)、抗MIP-1α-FITC(Invitrogen MA523564)および抗MIP-1β-PerCP-Cy5.5(BD 560688)で染色した。LSR II(BD Biosciences)またはLSRFortessa(商標)X-20(BD Biosciences)でデータを取得し、FlowJo(FlowJo、LLC)で分析した。
【0126】
ADCCアッセイ:S2細胞を、1:10,000に希釈したウサギ抗S2血清と室温で15分間プレインキュベートした。休止NK細胞をE:T比1:2で添加し、混合し、300rpmで1分間遠心分離した。10% FCSを含むIMDM培地中、37℃で2時間後、細胞をLive/Dead-NIR、抗CD56-Bv421および抗CD107a-PEで染色し、フローサイトメトリーによって分析した。リツキシマブを使用するADCCアッセイのために、221細胞およびDaudi細胞を10μg/mlのリツキシマブと共に室温で15分間プレインキュベートした。休止NK細胞を5:1のE:T比で添加し、5時間インキュベートした。標的細胞の溶解を、ToxiLight非破壊細胞傷害性バイオアッセイキット(Lonza)を製造者の指示に従って使用して決定した。
【0127】
統計分析:統計分析を、GraphPad PRISM V7を用いて行った。データを平均±SEMとして提示し、両側マン・ホイットニー検定またはウィルコクソンの符号順位検定によって比較する。
【0128】
ヒトドナー:健康な米国成人由来の末梢血サンプルを、NIH Institutional Review Boardが承認したプロトコル(99-CC-0168)の下で、書面によるインフォームドコンセントを得て、Belmont Reportに従ってNIH Department of Transfusion Medicineから得た。
結果
【0129】
CD28Hは、初代休止ヒトNK細胞上に発現される:新たに単離されたヒトNK細胞の大部分は、細胞表面でCD28Hを発現した(
図1A)。ヒトNK細胞は、CD56の発現に基づいてCD56
brightおよびCD56
dim NKサブセットに分けることができる。2つのサブセットは、異なる表現型および特性(Cooperら、Trends Immunol.22:633-640、2001)を有する。本発明者らは、2つのNKサブセットにおけるCD28H発現を調べ、より大きな割合のCD56
brightサブセットがCD28Hを発現した(
図1B)。CD56
bright NK細胞のほとんどは、CD56
brightCD16
-KIR
-NKG2A
+CD57
-として表現型分類され、成熟度の低いNK細胞集団を表す(Cooperら、Trends Immunol.22:633-640、2001)。KIRおよびNKG2Aの発現は、CD56
dim NK細胞をいくつかのサブセット(
図2A)に分割することができる。しかしながら、NKG2A
+KIR
+、NKG2A
+KIR
-、NKG2A
-KIR
+およびNKG2A
-KIR
-NKであるCD56
dim NK細胞の間では、CD28H発現の有意差は見られなかった(
図1C)。CD57発現を使用して、CD56
dim NK細胞をさらに分離することもできる(Lopez-Vergesら、Blood、116:3865~3874、2010)。CD57
+NK細胞は成熟しており、最終分化しており、増殖のための能力が低下している(Lopez-Vergesら、Blood、116:3865~3874、2010)。CD56
dimCD57
-NKサブセットと比較して、CD57
+細胞のより低い割合がCD28Hを発現した(
図1D)。エクスビボで増大および活性化されたNK細胞は非常に細胞傷害性であり、数十年にわたって臨床および基礎研究で使用されてきた(Bachanovaら、Crit Rev Oncog.19:133-141、2014;Granzinら、Front Immunol.8:458、2017)。培養中のNK細胞増大のための十分に確立された戦略は、フィーダー細胞として放射線照射された自家PBMCの存在下でのIL2とPHAの組み合わせである(Liuら、Immunity、36:600~611、20012;Granzinら、Front Immunol.8:458、2017)。NK細胞上のCD28H発現は、IL2およびPHAにおいて2週間後に失われ(
図2B)、この結果は、NK細胞をCD2およびNKp46に対するIL2およびプレートにコーティングしたmAbで刺激した免疫細胞の定量的プロテオミクス分析と一致する(Rieckmannら、Nat Immunol.18:583-593、2017)。同じ刺激条件を使用して、免疫染色によってCD28H発現の減少を確認した(
図2C)。CD28Hを発現するNK細胞の割合の減少が活性化の3日後に観察され、活性化の7日後にNK細胞の約20%に徐々に低下した(
図2D)。本発明者らはまた、IL2中でより短時間活性化されたNK細胞上のCD28Hの発現を試験した。CD25発現を活性化のためのマーカーとして使用した(
図2E)。IL2で24時間活性化した後、CD25
+およびCD25
-NK細胞上のCD28H発現に有意差は観察されなかった(
図2F)。結果は、CD28Hの発現が長期刺激および増大後にのみ減少したが、IL2による短期活性化によっては減少しなかったことを示した。
【0130】
CD28Hは、2B4およびNKp46と相乗作用し、CD16によるNK細胞活性化を増強する:CD28H単独および他の受容体と共結合したCD28Hによって誘導されるNK細胞脱顆粒を、リダイレクトされた細胞傷害性アッセイ(逆ADCCとしても知られる)を用いて試験した(Brycesonら、Blood、107:159~166、2006;Vitaleら、J.Exp.Med.187:2065-2072、1998)。FcR
+マウス細胞株P815を、CD28Hおよび他の受容体に対するモノクローナル抗体(mAb)と混合し、NK細胞と共にインキュベートした。mAbのF(ab’)
2部分は、それぞれのNK細胞受容体に結合したが、Fcフラグメントは、マウスP815細胞上のFcRに結合した。NK細胞の活性化およびP815細胞の溶解を、NK活性化受容体(
図3A)の共結合によって誘導した。CD56およびCD107aについて染色することによって決定される強いNK細胞脱顆粒は、CD28Hと、2B4またはNKp46のいずれかとの共結合後にのみ生じたが(
図4Aおよび
図4B)、CD2、NKG2DまたはDNAM-1との共結合後には生じなかった(
図4C~
図4E)。末梢血中のCD56
dim NK細胞は細胞傷害性およびサイトカイン産生の両方において適格であるが、CD56
bright NK細胞は細胞傷害性が低く、サイトカイン産生細胞と見なされている(Cooperら、Trends Immunol.22:633-640、2001;Fauriatら、Blood、115:2167~2176、2010)。したがって、CD56
bright NK細胞のわずかにより多くの画分がCD28Hを発現したが(
図1B)、NK細胞の脱顆粒はCD56
dim NK細胞でのみ観察され(
図4A)、以前の研究と一致した(Brycesonら、Blood、107:159~166、2006;Brycesonら、Blood、114:2657~2666、2009)。CD28Hはまた、CD16によって誘導されたNK細胞脱顆粒を増強した(
図4F)。CD28Hを介した刺激に対するNK細胞の応答を滴定するために、2B4、NKp46およびCD16に対するmAbを、漸増濃度のCD28H抗体の存在下で、リダイレクトされた細胞傷害性アッセイにおいて一定濃度で使用した(
図4G~
図4I)。100ng/mlという低いCD28H抗体で脱顆粒の増強が観察され、刺激は約5μg/mlでプラトーに達した(
図4G~
図4I)。このリダイレクトされた細胞傷害性アッセイにおけるP815細胞の溶解もまた、異なるエフェクター対標的比で調査した(
図4J~
図4K)。NK細胞は、CD28Hと、2B4およびNKp46との共結合の際にP815標的細胞を効率的に溶解し、3つの受容体のいずれもが、単独でNK細胞細胞傷害性を誘発しなかった(
図4J~
図4K)。
【0131】
4つの一般的に使用されるNK細胞株、すなわちNKL、YTS、KHYG-1およびNK-92の中で、KHYG-1のみがCD28Hを発現したが、4つすべてが2B4およびNKp46を発現した(
図3B)。KHYG-1細胞は、CD28Hおよび2B4に対する、またはCD28HおよびNKp46に対する抗体の存在下でP815標的細胞を溶解した(
図3C)。したがって、休止NK細胞で観察されたCD28Hと、2B4およびNKp46との相乗作用は、KHYG-1細胞で再現された。
【0132】
B7H7およびCD48の共発現は、NK細胞の脱顆粒およびサイトカイン産生を誘因する:受容体-リガンド相互作用に関連してCD28Hおよび2B4によるNK細胞の相乗的活性化を研究するために、本発明者らは、B7H7およびCD48を単独または組み合わせのいずれかでショウジョウバエS2細胞において発現させた(
図5A)。ほとんどの造血細胞で発現されるCD48は、2B4のリガンドである。B7H7(S2.B7H7)またはCD48(S2.CD48)を発現するS2細胞と2時間インキュベートしたNK細胞は、脱顆粒しなかった(
図6A)。対照的に、B7H7およびCD48の両方を発現するS2細胞は、NK細胞脱顆粒を誘導した(
図6A~
図6B)。結果は、それぞれのリガンドによるCD28Hおよび2B4の両方の結合がNK細胞の相乗的活性化をもたらすことを示した。S2細胞上のB7H7およびCD48の共発現は、初代NK細胞におけるIFNγ、TNFα、MIP-1αおよびMIP-1βの産生を誘導した(
図6C~
図6F)。NK細胞脱顆粒で観察されたように、サイトカインおよびケモカインの産生は、CD28Hおよび2B4の相乗作用によってのみ誘発されたが、いずれかの受容体単独では誘発されなかった。さらに、IFNγ、TNF-α、MIP-1αおよびMIP-1βの発現は、CD28Hブロッキング抗体の存在下で減少し(
図6C~
図6F)、CD28Hを介した刺激が確認された。CD48およびB7H7は、単独ではごく一部のNK細胞を刺激してMIP-1αを発現させたが、B7H7およびCD48は、一緒に強いNK細胞応答を誘導した-NK細胞の約70%がMIP-1αを発現し、NK細胞の約10%が少なくとも3つの異なる応答を有した(
図5B)。脱顆粒NK細胞およびIFNγ産生NK細胞が部分的にのみ重複していたことは、注目に値する。さらに、CD28Hに対するブロッキング抗体は、すべてのNK応答を減弱させた。
【0133】
CD28Hは、CD16媒介ADCCを増強する:CD28HによるNK細胞媒介ADCCの可能な増強を調べるために、S2細胞に対するウサギ抗血清を用いてアッセイを行った(Brycesonら、Blood、107:159~166、2006)。S2細胞を抗S2血清でプレコートした後、初代ヒトNK細胞とインキュベートした。S2細胞におけるB7H7の発現は、ADCCアッセイにおいてNK活性化を増強したが、B7H7およびCD48の両方を発現すると、NK脱顆粒をさらに増加させた(
図7Aおよび
図7B)。NK細胞媒介性ADCCは、リツキシマブ(抗CD20)およびセツキシマブ(抗EGFR)などの治療用抗体の作用機序において中心的な役割を果たす(Scottら、Nat Rev Cancer、12:278~287、2012)。NK細胞の標的として一般的に使用される3つのMHCクラスI欠損細胞株を、B7H7の発現について調べた(
図8A)。B7H7は、K562細胞によって発現されたが、Daudi細胞や221細胞では、発現されなかった(
図8A)。これらの3つの細胞株のうち、221のみがCD48を発現した(
図8A)。本発明者らは、B7H7の発現のために221およびDaudi細胞にレンチウイルスを形質導入し、B7H7の明るく均一な発現を得た(
図8B)。新たに単離されたヒトNK細胞は、B7H7を発現する221細胞(221.B7H7)を、トランスフェクトされていない221細胞(
図8C)よりも効率的に溶解した。221.B7H7の向上した溶解は、CD28H特異的mAbによってブロックされた(
図8C)。Daudi細胞および221細胞は、両方ともCD20
+リンパ芽球様B細胞株(
図7C)であるので、本発明者らはリツキシマブを使用してADCCを誘導した。リツキシマブ誘導性ADCCにおける標的細胞の特異的溶解は、B7H7の発現によって増加し、殺傷の増強は、CD28H抗体によって特異的にブロックされた(
図7Dおよび
図7E)。本発明者らは、CD28H-B7H7相互作用が、初代NK細胞による221およびDaudi細胞の自然殺傷、ならびにADCCによる221およびDaudi細胞の溶解を増強すると結論付けた。
【0134】
Tyr192は、CD28H媒介NK細胞活性化に必須である:CD28H細胞質尾部は、3つのチロシンを含み、これらは潜在的に活性化シグナルの形質導入に寄与し得る。全ての可能な組み合わせにおいて、各チロシンをフェニルアラニンで置き換えた。CD28H野生型および各変異体を、チロシンホスファターゼ阻害剤の過バナジン酸塩で処理した後、トランスフェクトしたHEK293T細胞から免疫沈降させた。チロシンリン酸化は、Y192またはY222のいずれかの変異によって大きく減少した(
図9A)。変異体をNK細胞株で発現させることにより、各変異体の機能を試験した。CD28H
-2B4
+細胞株NKLにおける野生型CD28Hの外因性発現は、P815細胞を用いたリダイレクトされたADCCアッセイで示されるように、CD28Hおよび2B4の相乗作用を再現した(
図9B)。NK細胞のCD28H依存性活性化に対する各チロシンの寄与を試験するために、CD28H変異体をNKL細胞で発現させた(
図10)。Y192(Y192F)の単一部位変異は、CD28Hおよび2B4による相乗的活性化を無効にした(
図9C)。野生型CD28HおよびCD28H変異体を発現するNKL細胞による221.B7H7細胞の溶解も調べた。リダイレクトされた細胞傷害性アッセイと一致して、B7H7発現による221細胞の殺傷の増強も変異Y192Fで失われ(
図9D)、Y192のリン酸化がNK細胞活性化に必須であり得ることを示した。Y192F変異は免疫シナプスでのCD28Hの蓄積を変化させず(
図9Eおよび
図9F)、CD28Hの蓄積と細胞傷害性をシグナル伝達するその能力が脱共役であることを示唆した。NK細胞免疫学的シナプスの形成には複数の段階がある(Orange Nat.Rev.Immunol.8:713-725、2008)。シナプスにおける変異体Y192Fの蓄積は、Y192によって特異的に引き起こされるシグナルがシナプス形成のその段階に必要でないことを示した。細胞質尾部の3つのチロシン残基に加えて、CD28Hは、プロリンリッチドメインも含み、これはシグナル伝達に関与し得る。
【0135】
CD28H-CARを有するNK細胞は、NKG2Aによる阻害を無効にすることによってB7H7
+腫瘍細胞を死滅させる:CD28HリガンドB7H7の発現は、活性化骨髄性細胞(Zhuら、Nat.Commun.4;2043、2013;Zhaoら、PNAS 110:9879-9884、2013)および腫瘍細胞(Janakiramら、Clin.Cancer Res.21:2359-2366、2015)に限定される。本発明者らは、LPSまたはポリ(I:C)によって活性化された単球およびDC上のB7H7の限界発現(marginal expression)を検出した(
図11Aおよび
図11B)。腫瘍組織におけるB7H7のより広範な発現は、本発明者らに、がん免疫療法において腫瘍を標的とするCD28H-B7H7相互作用を利用する可能性を探求する動機を与えた。本発明者らは、完全長または細胞質ドメイン切断型(ΔCD)CD28HをTCR ζ鎖のシグナル伝達ドメイン(
図12Aおよび配列番号1~4)と融合することによって、2つのCD28H CARを構築した。NKL細胞におけるCD28H-CARの発現(
図12A)は、トランスフェクトされていない221細胞に対する細胞傷害活性を有意に変化させず(
図12B)、221.B7H7細胞の殺傷を増強した(
図12C)。非古典的MHC-I抗原HLA-Eは、NK細胞上の阻害性受容体NKG2Aに結合し、NK細胞活性化を抑制する(Longら、Annu.Rev.Immnuol.31:227-258、2013)。CD28HまたはCD28H-CARがNKG2A媒介阻害を克服することができるかどうかを試験するために、細胞表面にHLA-Eを発現する221.AEH細胞をB7H7でトランスフェクトした(
図12D)。NKL細胞は、NKG2Aを発現する(
図12E)。NKL.CD28HおよびNKL.CD28H-CAR細胞の221.AEH細胞に対する細胞傷害性は、おそらくNKG2Aによる阻害に起因して低かった(
図12F)。注目すべきことに、NKL.CD28H-TCRζ細胞は221.AEH.B7H7細胞を死滅させ、NKG2A媒介阻害がCD28H-B7H7相互作用によって克服されたことを示した(
図12G)。NKLにおける野生型CD28H単独またはCD28HΔCD-TCRζキメラ受容体の発現は、NKG2A阻害を克服せず、CD28H-TCRζキメラにおけるCD28Hの必須の共刺激機能を示した(
図12G)。B7H7
+ホジキンリンパ腫細胞株HDLM-2を使用して、CD28H-CARの抗腫瘍活性をさらに試験した(
図12H)。HLA-E(
図12H)を発現するHDLM-2細胞を、NKG2Aに対するmAbとのNKG2A-HLA-E相互作用をブロックした後にのみ、CD28H
+NKG2A
+KHYG-1 NK細胞株によって溶解した(
図12I)。しかしながら、完全長CD28Hを有するCARを発現するNKL細胞は、B7H7
+HLA-E
+HDLM-2腫瘍細胞の効率的な殺傷を達成し(
図12J)、CD28H-CARが、抗腫瘍活性および治療潜在性を有することを示した。
考察
【0136】
本発明者らは、循環血液中のほとんどのNK細胞が、T細胞に記載されているCD28受容体ファミリーのメンバーであるCD28Hを発現することを示した。CD28Hと2B4との共結合は、脱顆粒、標的細胞溶解、ならびにサイトカインおよびケモカインの発現のための新たに単離されたNK細胞の相乗的活性化をもたらした。CD28Hは、NK細胞共活性化受容体のファミリーへの付加であり、2B4およびNKp46と相乗作用するが、NKG2D、CD2、またはDNAM-1とは相乗作用しない。CD28H発現は、IL2による長期活性化中にオフになる。CD28Hの下方調節もまた、抗原刺激後のヒトT細胞において観察されている。それにもかかわらず、一般に「休止」と呼ばれる末梢血から新たに単離されたNK細胞は、IL2およびIL15の非存在下でさえ完全に機能的である。CD28Hとの共結合はまた、CD16媒介NK細胞脱顆粒および細胞傷害性を増強した。相乗作用を必要とする共活性化受容体とは異なり、NK細胞におけるCD16シグナル伝達は細胞傷害性を活性化するのに十分である。2B4、CD2、NKG2DおよびDNAM-1などの他の活性化受容体もADCCを増強することが報告されている。
【0137】
本発明者らは、B7H7が活性化骨髄性細胞上で発現することを示した。CD48が造血細胞上で広く発現されるという事実を考慮すると、活性化骨髄性細胞上のB7H7の発現は、NK細胞とAPCとの間の相互作用に寄与し得る。CD28Hと他の活性化受容体との間の他の潜在的相乗作用の関与は、NK-APC相互作用および免疫ホメオスタシスの調節に別の複雑さを重ねるかもしれない。実際、NKp30およびNKG2Dなどの活性化受容体は、NK-DC相互作用の調節因子として報告されている。B7H7は、その共刺激機能に加えて、T細胞に対する共阻害効果も有し得、免疫チェックポイント阻害剤として提案されている。この実施例に関連して、脱顆粒、標的細胞溶解およびサイトカイン発現を含む、ここで実施された機能的アッセイにおいて、NK細胞株および初代NK細胞に対するB7H7の阻害効果はなかった。しかしながら、PD-1およびLAG-3などのチェックポイント共阻害受容体の発現は、通常、活性化後にNK細胞上で誘導または上方調節される。B7H7の共阻害受容体の発現は、活性化または他の刺激によってNK細胞上で誘導される可能性がある。
【0138】
本発明者らは、CD28Hを介したNK細胞の活性化に対する細胞株上に発現されるB7H7の寄与を試験した。変異体細胞株221は、NK細胞阻害性受容体に対するいくつかのMHC-Iリガンドの喪失のためにNK細胞の細胞傷害性に感受性がある。221細胞におけるB7H7の発現は、それらをNK細胞に対してさらにより感受性にした。これは、CD28Hと2B4との相乗作用によって説明することができ、2B4のリガンドであるCD48が221で発現される。しかしながら、HLA-Eも発現した221細胞上のB7H7の発現は、NK細胞株上に発現したNKG2Aによる阻害を克服するのに十分ではなく、これはNK細胞上のMHC-I特異的受容体の優勢な阻害機能と一致する。
【0139】
CD28Hと、2B4およびNKp46との相乗作用のシグナル伝達の根拠は不明である。本発明者らは、CD28Hの細胞質尾部の3つのチロシン残基のうちのただ1つ(チロシン192)が、NK細胞の細胞傷害性を共活性化するのに必要かつ十分であることを示した。フェニルアラニンによる他の2つのチロシンの置換は、CD28H媒介NK細胞活性化を損なわなかった。チロシン192および隣接アミノ酸は、アダプターGrb2のSH2ドメインおよび関連タンパク質の結合を予測する配列モチーフ(YxN)を形成する。
【0140】
本発明者らは、CD28HをTCRζの細胞内ドメインに融合することによって、CD28H自体をCARとして使用する可能性を試験した。NKL細胞におけるCD28H-TCRζ CARの発現は、CD28Hを発現するNKL細胞による溶解に対して既に非常に感受性がある221.B7H7細胞のより高い感受性をもたらさなかった。しかしながら、NKL細胞におけるCD28H-TCRζ CARは、B7H7およびHLA-Eを共発現する221細胞で示されるように、NKG2Aによる阻害に対する完全な耐性をもたらした。B7H7とHLA-Eの両方を天然に発現するホジキンリンパ腫腫瘍細胞HDLM-2を用いても、阻害に対する耐性が観察された。予想通り、CD28H-NKG2A+NKL細胞はHDML-2細胞を死滅させなかった。注目すべきことに、NKL細胞におけるCD28H-TCRζ CARの発現は、HDML-2細胞の非常に効率的な溶解をもたらしたが、CD28H細胞質尾部もTCRζ鎖も、それら自身では阻害を克服することができなかった。ここで、CD28Hの天然の膜貫通ドメインおよび細胞質尾部を、NK細胞において使用するためのCAR成分のリストに加えることができる。
【0141】
NK細胞上のMHC-I特異的阻害性受容体によるシグナル伝達を克服するために提案された解決策には、NK細胞におけるCAR発現に付随する阻害性受容体のサイレンシング、またはCAR発現NK細胞と抗体による阻害性受容体KIRおよびNKG2Aの遮断とを組み合わせることが含まれ、その一部は既に臨床で使用されている。より単純でより低コストのアプローチは、HLA-CおよびHLA-Eを発現する腫瘍細胞の状況においてKIRおよびNKG2Aによる阻害を克服するNK仕様のCARを設計することである。一例として、CD28H-TCRζ CARは、HLA-E+腫瘍細胞との接触中にNKG2Aによる阻害に対して完全に耐性があった。要約すると、本発明者らは、CD28HがNK細胞の活性化受容体であることを示し、本発明者らは、阻害性受容体によるシグナル伝達を克服し、B7H7を発現する腫瘍を標的とするために、NK-CARの設計のためにCD28Hを利用する可能性を高めた。
実施例2
NK細胞における阻害抵抗性キメラ抗原受容体は強力かつ持続的な活性化シグナルをもたらす
材料および方法
【0142】
細胞:ヒトNK細胞の単離を前記のように行った。NKL細胞株は、M.J.Robertson(Indiana University Cancer Research Institute、インディアナポリス、インディアナ州)から得て、10%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS、Gibco)を含むIMDM(Gibco)中で培養した。P815細胞(ATCC)、721.221細胞(221細胞と呼ばれる)、およびHLA-EまたはHLA-C(Cw15)トランスフェクトした221細胞を、10%熱不活性化FCSを補充したRPMI-1640(Gibco)中で培養した。
【0143】
プラスミド、レンチウイルス産生:CAR構築物をgBlocks(IDT)として直接合成するか、または既存の鋳型からPCRによって増幅し、次いでpCDH-EF1-T2A-Puroベクター(System Biosciences)のEcoRIおよびNotI制限部位にクローニングした。全てのプラスミド構築は、In-Fusion HDクローニングキット(Clontech)を使用して行った。レンチウイルスの作製のために、低継代Lenti-X 293T細胞(Clontech)に、以前に記載されたようにPEI Max(ポリエチレンイミン)をトランスフェクトした(Zhuangら、Cancer Immunol.Res.7:939-951、2019)。Lenti-X 293T細胞からの培養培地をトランスフェクションの2日後に回収し、0.45μMフィルターに通した。培養培地を形質導入に直接使用するか、またはPEG-it(System Biosciences)を使用して濃縮した。
【0144】
細胞傷害性アッセイ:カルセイン-AM放出アッセイを使用して、NK細胞による標的細胞の溶解を決定した。簡潔には、完全培地中の最終濃度106/mlの標的細胞を、15μMカルセイン-AM(Invitrogen)と共に37℃で30分間インキュベートした。完全培地で2回洗浄した後、標識された標的細胞を96-ウェル-プレートに104/ウェルで添加した。エフェクターNK細胞を異なるE:T比で添加し、4時間インキュベートした。標的細胞溶解を、プレートリーダー(Enspire、Perkin Elmer、MA and SpectraMax plus、Molecular Devices、カリフォルニア州)によって測定した上清中の放出されたカルセイン-AMの蛍光によって決定した。
【0145】
ビーズ刺激:1細胞あたり4ビーズの比で、抗体被覆ヤギ抗マウスDynabeads(Invitrogen)で細胞を刺激した。ビーズコーティングに使用される抗体には、Mycタグ抗体(9B11、マウスIgG2a、細胞シグナル伝達)、NKG2A抗体(Z199、マウスIgG2b、Beckman Coulter)、対照マウスIgG2b(MOPC-141、Sigma)および対照マウスIgG2a(UPC-10、Sigma)が含まれた。107個のビーズを、異なる組み合わせ:1μgのmIgG2a+1μgのmIgG2b、1μgのmIgG2a+1μgの抗NKG2A、1μgの抗Mycタグ+1μgのmIgG2b、または1μgの抗Mycタグ+1μgの抗NKG2Aの2μgの全IgGで、37℃で30分間コーティングした。。ビーズを1% FCSハンクス平衡塩溶液(HBSS、コーニング)で洗浄して過剰な抗体を除去し、同じ緩衝液に再懸濁した。予冷したビーズおよび細胞を氷上で混合し、37℃の水浴中で10分間または45分間インキュベートした。細胞を洗浄し、溶解した後、ウエスタンブロットによって分析した。
結果および考察
【0146】
本発明者らは、CD28Hが強力なNK細胞共活性化受容体であり、CD28HおよびTCRζの両方のシグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体がNKG2A媒介阻害に耐性であることを実証した(Zhuangら、Cancer Immunol.Res.7:939-951、2019)。休止ヒトNK細胞は、NK活性化受容体の相乗的組み合わせによって活性化される(Brycesonら、Blood、107:159~166、2006;Longら、Annu.Rev.Immunol.31:227-258、2013)。組み合わせの1つとして、CD28Hと2B4との間の相乗作用は、堅牢なNK細胞活性化および脱顆粒を誘導することができる(
図13A)。本発明者らは、CD28Hおよび2B4のシグナル伝達ドメインをTCRζ細胞質ドメインと組み合わせてCAR構築物にすると、強力なNK細胞活性化を誘導することができ、これは阻害性シグナルに対するより強い耐性を達成し得ると仮定した。本発明者らは、CD19
+がん細胞を標的化するための細胞外ドメインとして、N末端MycタグおよびCD8αヒンジを有する抗CD19 scFvを使用してCAR構築物を設計した。膜貫通ドメインは、T-CARについてはCD28由来であり、NK仕様のCARについてはCD28H由来であった。細胞内ドメインは、NK受容体CD28Hおよび2B4、T細胞受容体CD28および4-1BB由来の1~3個のシグナル伝達ドメインの組み合わせ、ならびにT細胞受容体(TCRζ)のζ鎖から作製された(
図13B)。CAR構築物を、NKG2Aの内因性発現およびKIR2DL1のトランスジェニック発現を有するNKL.2DL1細胞にトランスフェクトした(
図14)。NKL細胞上の異なるCAR構築物間で同様の発現が達成された(
図13C)。MHC-I陰性CD19
+721.221リンパ芽球細胞株(ここでは221と呼ぶ)を標的細胞として使用する殺傷アッセイにより、CD28H、2B4およびTCRζシグナル伝達ドメインの組み合わせを含有するCD19.CAR2が、221リンパ芽球に対する堅牢ななNK細胞細胞傷害性を誘導し、CD28Hおよび2B4の両方のシグナル伝達ドメインがこの強い活性に寄与することが実証された(
図13D)。第三世代T細胞CAR(T-CARとして示される)と比較して、CD19.CAR2(例えば、配列番号12)は、221標的細胞に対してより高い腫瘍溶解有効性を示した(
図13E)。
【0147】
MHC-Iに対する受容体によって媒介される阻害に対するCAR構築物の耐性を試験するために、HLA-EまたはHLA-Cでトランスフェクトした221細胞を細胞傷害性アッセイに使用した。CD19.CAR2は、NKG2AまたはKIR2DL1によって媒介される阻害および誘導されるMHC-I
+リンパ芽球標的細胞の溶解を克服することができ、両方の共刺激ドメインがこの阻害耐性応答に必要であった(
図13D)。CD19.CAR2と比較して、NKL.2DL1細胞で発現される第3世代CD19.T-CAR(CD28-41BB-ζ)は、NKG2AおよびKIR2DL1による阻害を克服するその能力は、はるかに弱かった(
図13E)。細胞外抗原標的化ドメインとしてCD19 scFvを使用するCAR構築物に加えて、本発明者らはまた、B7H7
+腫瘍細胞を標的化するための細胞外ドメインとしてCD28H受容体自体を使用してCARを試験した(
図15Aおよび
図15B)。殺傷アッセイを、B7H7およびMHC-I(HLA-EまたはHLA-C)トランスフェクトした221リンパ芽球(Zhuangら、Cancer Immunol.Res.7:939-951、2019)を使用して行った。CD28H.T-CARと比較して、CD28H.CAR2(例えば、配列番号2)は、NKG2AまたはKIR2DL1のいずれかによる阻害に対してはるかに耐性であるNK細胞活性化を誘導した(
図15Cおよび
図15D)。さらに、CD28H.CAR2は、2B4およびTCRζの細胞質ドメインに融合されたシグナル伝達分子DAP10の動員について、NKG2Dの膜貫通ドメインから構成される別のNK仕様のCAR(CAR3)よりも優れた阻害耐性活性を示した(
図15Cおよび
図15D)。このNKG2D-2B4-ζ膜貫通およびシグナル伝達ドメイン組成物(CAR3)は、iPSC由来NK細胞におけるメソテリン標的化CARの一部として以前に試験された(Liら、Cell Stem Cell、23:181~192 e5、2018)。
【0148】
CARを介して伝達される活性化シグナル形質導入を調べるために、CD19.CARを発現するNKL細胞を、N末端mycタグを架橋することによってCARを介して活性化シグナルを誘導するビーズ結合mycタグ抗体(Mycビーズ)によって刺激した(
図16A)。本発明者らは、CD19.CARを発現するNKL細胞の溶解物におけるホスホリパーゼCγ1(PLC-γ1)Tyr783およびマイトジェン関連タンパク質キナーゼ(MAPK/Erk)のリン酸化を評価した。TCRζのみの細胞質シグナル伝達ドメインを担持するCAR6を除いて、各CARを介した刺激後に、PLC-γ1およびERKのリン酸化が検出可能であった(
図16Bおよび
図13B)。試験したすべてのCARの中で、CAR2は、PLC-γ1およびErkの両方の最も強いリン酸化を誘導した(
図16B、
図16Cおよび
図15A)。NKG2AもしくはMycタグのいずれかまたは両方に対する抗体とカップリングされたビーズによる刺激を使用して、異なるCARの阻害に対する耐性を試験した(
図16A)。阻害に対する最も強い耐性は、NKG2AとCAR2とを共架橋した後に検出された。実質的なPLC-γ1およびErkリン酸化も保持されたが、NKG2AおよびCAR4は架橋された(
図16Bおよび
図16C)。T-CARと比較して、CAR2およびCAR4の両方が、阻害に対してより抵抗性であるNK細胞活性化シグナルを誘導した(
図16Bおよび
図16C)。さらに、持続的なErkリン酸化が、T-CARの活性化と比較してCAR2媒介NK細胞活性化において検出され、より持続的な活性化シグナルがCAR2によって産生されたことを示した(
図16D)。この結論は、T-CARよりもCAR2の架橋後により持続的なカルシウム動員を示したカルシウム動員アッセイによってさらに裏付けられた(
図16E)。
【0149】
ここで、本発明者らは、CD28H-2B4-TCRζの融合シグナル伝達ドメインを含有するNK仕様のCAR2が、NK細胞における発現のための第3世代T-CARよりも効果的なCAR構築物であることを実証した。CAR2は、T-CARよりも強い細胞傷害性および活性化シグナルを誘導した。重要なことに、CAR-2は、NK細胞がMHCクラスIの受容体によって媒介される阻害を克服し、MHCクラスI+がん細胞を死滅させるのを促進する阻害耐性活性化シグナルを誘発した。いくつかの形質転換がん細胞は、MHCクラスIを下方調節してT細胞媒介監視を回避するが、多くの腫瘍細胞は、依然としてMHCクラスIの実質的な発現を保持しており、これはNKG2Aまたは阻害性KIRに関与し、NK細胞の抗がん応答を制限し得る。これらの結果は、T細胞による細胞治療とは異なり、NK細胞における発現のためのCAR構築物の阻害耐性特性の評価が重要であることを裏付けている。CAR2シグナル伝達ドメインの設計は、活性化受容体2B4とCD28Hとの間の強い相乗作用に基づいていた。
実施例3
CAR有効性のインビボ評価
【0150】
この実施例は、マウス異種移植モデルにおいてインビボで1またはそれを超える開示されたCARの有効性を評価するために使用され得る方法を記載する。しかしながら、当業者は、これらの特定の方法から逸脱する方法を使用してCARの有効性をインビボで試験することもできることを理解する。
【0151】
NOD-scid IL2Rγnullマウス(NSGマウスとしても知られている)に、105個~106個のルシフェラーゼ発現NALM-6 B-ALL細胞を注射する。NK細胞は、免疫磁気法を用いた陽性および/または陰性選択によって健康なドナーのPBMCから単離される。増やしたNK細胞に、CD19-CARを含むレトロウイルスベクター、例えば本明細書に記載のもの(例えば、配列番号1、5、11および15)を形質導入する。106個~107個の形質導入および増やしたNK細胞を含む組成物を、腫瘍担持マウスに静脈内投与する。CAR発現NK細胞のインビボ増殖および持続性は、ヒトIL-2またはIL-15の投与によって支持される。腫瘍量を生物発光イメージング(BLI)によって追跡する。CARのインビボ有効性を、腫瘍担持NSGマウスの腫瘍量および全生存期間(OS)の両方によって評価する。
実施例4
CD19-CAR発現NK細胞によるB細胞リンパ腫の処置
【0152】
この実施例は、CD19-CARが形質導入されたNK細胞で、B細胞リンパ腫を有する対象を処置するために使用することができる方法を記載する。しかしながら、当業者は、これらの特定の方法から逸脱する方法もまた、B細胞リンパ腫を有する対象を首尾よく処置するために使用され得ることを理解する。さらに、同様の方法を使用して、他のがんを有する対象を他のCAR発現NK細胞で処置することができる。
【0153】
B細胞リンパ腫を有する対象は、末梢血単核細胞を採取するためにアフェレーシスを受ける。NK細胞(例えば、CD56陽性/CD3陰性細胞)は、免疫磁気法を用いた陽性および/または陰性選択によってPBMCから単離され、本明細書に記載のもの(例えば、配列番号1、5、11、15および19)などのCD19-CARを含むレトロウイルスベクターで形質導入される。形質導入されたNK細胞は、後の使用のために凍結保存することができ、または対象への投与のために製剤化することができる(例えば、薬学的に許容され得る担体中)。106個~1012個の増やしたNK細胞を含む組成物を対象に静脈内投与する。
【0154】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示された実施形態は単なる例であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことを認識されたい。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの請求項の範囲および精神の範囲内に入るすべてを本発明者らの発明として主張する。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
キメラ抗原受容体であって、
(a)標的結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)CD28ホモログ(CD28H)由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメインおよび第2の細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内ドメインであって、前記第1および第2の細胞内シグナル伝達ドメインがどちらの順序であってもよい、細胞内ドメインと、を含むキメラ抗原受容体。
(項目2)
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1に記載のキメラ抗原受容体。
(項目3)
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282のアミノ酸配列を含む、項目2に記載のキメラ抗原受容体。
(項目4)
前記第2の細胞内シグナル伝達ドメインが、2B4、TCRζ、FcεR1γまたはDAP12に由来する、項目1~3のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目5)
前記第2の細胞内シグナル伝達ドメインが、TCRζに由来する、項目4に記載のキメラ抗原受容体。
(項目6)
前記TCRζ細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸283~395と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目5に記載のキメラ抗原受容体。
(項目7)
前記TCRζ細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸283~395のアミノ酸配列を含む、項目6に記載のキメラ抗原受容体。
(項目8)
前記第2の細胞内シグナル伝達ドメインが、2B4に由来する、項目4に記載のキメラ抗原受容体。
(項目9)
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目8に記載のキメラ抗原受容体。
(項目10)
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291のアミノ酸配列を含む、項目9に記載のキメラ抗原受容体。
(項目11)
前記細胞内ドメインが、前記膜貫通ドメインと前記第1の細胞内シグナル伝達ドメインとの間に細胞内領域をさらに含む、項目1~10のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目12)
前記膜貫通ドメインおよび細胞内領域が、CD16、NKp46、NKp30、NKp44またはKIR2DS4に由来する、項目11記載のキメラ抗原受容体。
(項目13)
キメラ抗原受容体であって、
(a)標的結合ドメインと、
(b)膜貫通ドメインと、
(c)CD28ホモログ(CD28H)由来の第1の細胞内シグナル伝達ドメインと、2B4由来の第2の細胞内シグナル伝達ドメインと、第3の細胞内シグナル伝達ドメインとを含み、前記第1、第2、および第3の細胞内シグナル伝達ドメインが、任意の順序であり得る、細胞内ドメインと、を含む、キメラ抗原受容体。
(項目14)
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目13に記載のキメラ抗原受容体。
(項目15)
前記CD28H細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号2のアミノ酸172~282のアミノ酸配列を含む、項目14に記載のキメラ抗原受容体。
(項目16)
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目13~15のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目17)
前記2B4細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号10のアミノ酸172~291のアミノ酸配列を含む、項目16に記載のキメラ抗原受容体。
(項目18)
前記第3の細胞内シグナル伝達ドメインが、TCRζ、FcεR1γまたはDAP12に由来する、項目13~17のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目19)
前記第3の細胞内シグナル伝達ドメインが、TCRζに由来する、項目18に記載のキメラ抗原受容体。
(項目20)
前記標的結合ドメインが、CD19 scFvまたはCD28H細胞外ドメインを含む、項目1~19のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目21)
前記膜貫通ドメインが、CD28H膜貫通ドメインを含む、項目1~10または13から20のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目22)
ヒンジドメインをさらに含み、前記ヒンジドメインが、前記標的結合ドメインに対してC末端であり、前記膜貫通ドメインに対してN末端である、項目1~21のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目23)
前記ヒンジ領域が、CD8αヒンジ領域を含む、項目22に記載のキメラ抗原受容体。
(項目24)
アミノ末端シグナル配列をさらに含む、項目1~23のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目25)
前記シグナル配列が、CD8αシグナル配列である、項目24記載のキメラ抗原受容体。
(項目26)
前記CD8αシグナル配列が、配列番号16のアミノ酸1~21を含む、項目25に記載のキメラ抗原受容体。
(項目27)
配列番号2、6、12、16および20のうちのいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目1~26のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体。
(項目28)
配列番号2、6、12、16および20のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、項目27に記載のキメラ抗原受容体。
(項目29)
項目1~28のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸分子。
(項目30)
配列番号1、5、11、15、および19のうちのいずれか1つの核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する核酸配列を含む、項目29に記載の核酸分子。
(項目31)
配列番号1、5、11、15および19のうちのいずれか1つの核酸配列を含む、項目30に記載の核酸分子。
(項目32)
項目29~31のいずれか一項に記載の核酸分子を含むベクター。
(項目33)
前記ベクターが、ウイルスベクターである、項目32に記載のベクター。
(項目34)
前記ウイルスベクターが、レンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターである、項目33に記載のベクター。
(項目35)
項目1~28のいずれか一項に記載のキメラ抗原受容体を発現する細胞。
(項目36)
項目29~31のいずれか一項に記載の核酸または項目32~34のいずれか一項に記載のベクターを含む細胞。
(項目37)
前記細胞が、ナチュラルキラー細胞またはT細胞である、項目35または項目36に記載の細胞。
(項目38)
項目29~31のいずれか一項に記載の核酸、項目32~34のいずれか一項に記載のベクター、または項目35~37のいずれか一項に記載の細胞および薬学的に許容され得る担体を含む組成物。
(項目39)
がんを有する対象を処置する方法であって、有効量の項目35~37のいずれか一項に記載の細胞または項目38に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目40)
前記医薬組成物が、ナチュラルキラー細胞またはT細胞を含む、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記ナチュラルキラー細胞またはT細胞が、処置されている前記対象にとって自家である、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記がんが、血液悪性腫瘍または固形腫瘍である、項目39~41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記血液悪性腫瘍が、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫である、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記固形腫瘍が、乳がん、卵巣がん、結腸直腸がん、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、肺がん、肝臓がん、膀胱がん、前立腺がん、または肉腫である、項目42に記載の方法。
(項目45)
手術、化学療法、放射線治療、またはそれらの2もしくはそれより多くの組み合わせで前記対象を処置することをさらに含む、項目39~44のいずれか一項に記載の方法。
【配列表】