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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】バッテリー保護回路及びその保護方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/18 20060101AFI20240802BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240802BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H02H7/18
H02J7/00 S
H01M10/48 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022566440
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 KR2021011156
(87)【国際公開番号】W WO2022045687
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0110093
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ウク・ジャン
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-241040(JP,A)
【文献】特開平07-131938(JP,A)
【文献】特開2006-197736(JP,A)
【文献】特開2017-208881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0309289(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0373514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H7/00
H02H7/10-7/20
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J1/00-1/16
H01M10/42-10/48
G01R19/00-19/32
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上のバッテリーセルを過充電、過放電及び過電流を含む異常状況から保護するバッテリー保護回路であって、
前記バッテリーセルの一方の端子と外部システムへの出力部との間に形成される電流出力経路に直列に接続されて、前記電流出力経路に流れるバッテリーセルの電流をセンシングする電流センシング部と、
前記バッテリーセルの両端に接続された電圧センシングラインに接続されて、前記バッテリーセルの電圧をセンシングする電圧センシング部と、
前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧値を、前記外部システムに伝送する電圧情報伝送部と、
前記電流センシング部及び前記電圧センシング部のセンシング値を用いてバッテリーセルに異常状況が生じたか否かを判断し、判断結果に基づいて、前記電圧センシングラインを遮断する制御部と、
前記電圧センシングラインに配備されて、前記制御部の制御によりオフになって前記電圧センシングラインを遮断するセンシングライン遮断電界効果トランジスター(FET)と、を備え、
前記制御部により前記電圧センシングラインが遮断される場合に前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧値が前記外部システムに伝送されると、前記外部システムは自動的にシステム電源をオフにすることを特徴とするバッテリー保護回路。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧値が所定の第1の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過充電状態であると判断し、過充電信号を出力する第1の判断部と、
前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧値が所定の第2の基準値以下であるか否かを比較して、以下である場合、バッテリーセルが過放電状態であると判断し、過放電信号を出力する第2の判断部と、
前記電流センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電流値が所定の第3の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過電流状態であると判断し、過電流信号を出力する第3の判断部と、
前記第1の判断部からの過充電信号、前記第2の判断部からの過放電信号及び第3の判断部からの過電流信号のうちのいずれか一つでも出力される場合に、前記センシングライン遮断電界効果トランジスター(FET)をオフ制御して電圧センシングラインを遮断する遮断電界効果トランジスター(FET)制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のバッテリー保護回路。
【請求項3】
前記遮断電界効果トランジスター(FET)制御部により前記電圧センシングラインが遮断される場合に、前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧は0Vであることを特徴とする請求項2に記載のバッテリー保護回路。
【請求項4】
前記電圧情報伝送部においてバッテリーセルの0Vの電圧値が前記外部システムに伝送されると、前記外部システムは、現在バッテリーセルが低電圧状態であると感知して自動的にシステム電源をオフにすることを特徴とする請求項3に記載のバッテリー保護回路。
【請求項5】
一つ以上のバッテリーセルを過充電、過放電及び過電流を含む異常状況から保護する方法において、
前記バッテリーセルと外部システムへの出力部との間の電流出力経路に配備された電流センシング部及びバッテリーセルの両端に接続された電圧センシングラインを介して、所定の周期ごとにバッテリーセルの電流及び電圧値を測定するセル状態情報測定ステップと、
前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電流及び電圧値を用いて、バッテリーセルに異常状況が生じたか否かを判断する異常状況発生有無判断ステップと、
前記異常状況発生有無判断ステップによりバッテリーセルに異常状況が生じたと判断された場合、前記電圧センシングラインを遮断する電圧センシングライン遮断ステップと、
前記電圧センシングライン遮断ステップにより遮断された電圧センシングラインを介して測定されるバッテリーセルの電圧値を前記外部システムに伝送するセル電圧情報伝送ステップと、
前記セル電圧情報伝送ステップを通じて遮断された電圧センシングラインを介して測定されたバッテリーセルの電圧値が伝送された前記外部システムにおいて、自動的にシステム電源をオフにする外部システム電源オフステップと、を含むバッテリーの保護方法。
【請求項6】
前記異常状況発生有無判断ステップは、
前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電圧値が所定の第1の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過充電状態であると判断する過充電判断ステップと、
前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電圧値が所定の第2の基準値以下であるか否かを比較して、以下である場合、バッテリーセルが過放電状態であると判断する過放電判断ステップと、
前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電流値が所定の第3の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過電流状態であると判断する過電流判断ステップと、を含み、
前記過充電、過放電及び過電流のうちのいずれか一つでも判断される場合に、前記バッテリーセルに異常状況が生じたと判断することを特徴とする請求項5に記載のバッテリーの保護方法。
【請求項7】
前記電圧センシングライン遮断ステップは、前記電圧センシングラインに構成されるセンシングライン遮断電界効果トランジスター(FET)をオフにすることにより行われることを特徴とする請求項5または6に記載のバッテリーの保護方法。
【請求項8】
前記セル電圧情報伝送ステップにおいて、前記外部システムに伝送されるバッテリーセルの電圧値は、0Vであることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載のバッテリーの保護方法。
【請求項9】
前記外部システム電源オフステップは、前記外部システムにおいて、前記セル電圧情報伝送ステップによりバッテリーセルの0Vの電圧値が伝送されると、現在バッテリーセルが低電圧状態であると感知してシステム電源をオフにすることを特徴とする請求項8に記載のバッテリーの保護方法。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか一項に記載のバッテリー保護回路を備えるバッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー保護回路及びその保護方法に係り、さらに詳しくは、バッテリーを過充電、過放電及び過電流から保護するバッテリー保護回路及びその保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリーは、スマートフォン、ノート型パソコン、タブレットPC(パソコン)などの小型電子機器分野だけではなく、電気自動車、エネルギー貯蔵システム(ESS)に至るまで多岐にわたる分野において広く用いられている。
【0003】
ところが、このようなバッテリーは、多岐にわたる分野において使用可能な効率性及び利便性を有するのに対し、エネルギー密度が高いという特性のため、何らかの原因により過熱されれば発火してしまうというリスクを抱えている。なお、過放電される場合にはバッテリーの性能が低下するだけではなく、ひいては、安全性が阻害されるといった状況も生じてしまう虞がある。
【0004】
このようなバッテリーの安全性を確保するために、過充電、過放電、過電流、短絡からバッテリーを保護するバッテリー保護回路が用いられている。
【0005】
一方、バッテリー保護回路20は、一般に、図1に示すように、バッテリーセル10と外部システムへの出力部30との間の電流経路の上に充/放電電界効果トランジスター(FET)22a、22bを構成し、過充電、過放電、過電流などの異常が生じたときに前記充/放電FET22a、22bをオフにして異常電流を遮断することによりバッテリーを保護するという方式を用いている。
【0006】
ところが、前記電流経路の上に構成される充/放電FET22a、22bは、電流経路を流れる電流の損失及び電流による発熱を防ぐために、抵抗値の小さな低抵抗FETを用いることを余儀なくされる。しかしながら、低抵抗FETは、通常のFETに比べて大きさが小さく、しかも、高価であるという欠点があり、これにより、バッテリー保護回路の価格の高騰と大きさの肥大を招き、バッテリーの内部抵抗が増加してしまうなどの不都合が生じてしまう。
【0007】
関連する技術が下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国登録特許第2045999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の不都合を解決するために案出されたものであって、通常のFETを用いて、過充電、過放電、過電流などの異常状況からバッテリーを保護するバッテリー保護回路及びその方法を提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る一つ以上のバッテリーセルを過充電、過放電及び過電流を含む異常状況から保護するバッテリー保護回路は、前記バッテリーセルの一方の端子と外部システムへの出力部との間に形成される電流出力経路に直列に接続されて、前記電流出力経路に流れるバッテリーセルの電流をセンシングする電流センシング部と、前記バッテリーセルの両端に接続された電圧センシングラインに接続されて、前記バッテリーセルの電圧をセンシングする電圧センシング部と、前記電圧センシング部においてセンシングしたバッテリーセルの電圧値を、前記外部システムに伝送する電圧情報伝送部と、前記電流センシング部及び電圧センシング部のセンシング値を用いてバッテリーセルに異常状況が生じたか否かを判断し、その判断結果に基づいて、前記電圧センシングラインを遮断(disconnect)する制御部と、前記電圧センシングラインに配備されて、前記制御部の制御によりオフ(Off)になって電圧センシングラインを遮断するセンシングライン遮断電界効果トランジスター(FET)と、を備えてなる。
【0011】
具体的に、前記制御部は、前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧値が所定の第1の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過充電状態であると判断し、過充電信号を出力する第1の判断部と、前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧値が所定の第2の基準値以下であるか否かを比較して、以下である場合、バッテリーセルが過放電状態であると判断し、過放電信号を出力する第2の判断部と、前記電流センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電流値が所定の第3の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過電流状態であると判断し、過電流信号を出力する第3の判断部と、前記第1、第2及び第3の判断部から過充電、過放電及び過電流信号のうちのいずれか一つでも出力される場合、前記センシングライン遮断FETをオフ(Off)制御して電圧センシングラインを遮断する遮断電界効果トランジスター(FET)制御部と、を備えてなることを特徴とする。
【0012】
一方、前記遮断FET制御部により前記電圧センシングラインが遮断される場合、前記電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセルの電圧は0Vであることを特徴とする。
【0013】
これにより、前記電圧情報伝送部においてバッテリーセルの0V電圧値を外部システムに伝送すれば、前記外部システムは、現在バッテリーセルが低電圧状態であると感知して自動的にシステム電源をオフ(Off)にすることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る一つ以上のバッテリーセルを過充電、過放電及び過電流を含む異常状況から保護する方法は、前記バッテリーセルと外部システムへの出力部との間の電流出力経路に配備されたセンシング抵抗(電流センシング部)及びバッテリーセルの両端に接続された電圧センシングラインを介して、所定の周期ごとにバッテリーセルの電流及び電圧値を測定するセル状態情報測定ステップと、前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電流及び電圧値を用いて、バッテリーセルに異常状況が生じたか否かを判断する異常状況発生有無判断ステップと、前記異常状況発生有無判断ステップによりバッテリーセルに異常状況が生じたと判断された場合、前記電圧センシングラインを遮断する電圧センシングライン遮断ステップと、前記電圧センシングライン遮断ステップにより遮断する電圧センシングラインを介して測定されるバッテリーセルの電圧値を外部システムに伝送するセル電圧情報伝送ステップと、前記セル電圧情報伝送ステップを通じて遮断された電圧センシングラインを介して測定されたバッテリーセルの電圧値を伝送された外部システムにおいて、自動的にシステム電源をオフ(Off)にする外部システム電源オフステップと、を含んでなることを特徴とする。
【0015】
具体的に、前記異常状況発生有無判断ステップは、前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電圧値が所定の第1の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過充電状態であると判断する過充電判断ステップと、前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電圧値が所定の第2の基準値以下であるか否かを比較して、以下である場合、バッテリーセルが過放電状態であると判断する過放電判断ステップと、前記セル状態情報測定ステップにおいて測定されるバッテリーセルの電流値が所定の第3の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過電流状態であると判断する過電流判断ステップと、を含んでなり、前記過充電、過放電及び過電流のうちのいずれか一つでも判断される場合、前記バッテリーセルに異常状況が生じたと判断することを特徴とする。
【0016】
一方、前記電圧センシングライン遮断ステップは、前記電圧センシングラインの上に構成されるセンシングライン遮断FETをオフ(Off)にすることにより行われることを特徴とする。
【0017】
このため、前記セル電圧情報伝送ステップにおいて、前記外部システムに伝送されるバッテリーセルの電圧値は、0Vであることを特徴とする。
【0018】
これにより、前記外部システムオフステップは、前記外部システムにおいて、前記セル電圧情報伝送ステップによりバッテリーセルの0V電圧値が伝送されれば、現在バッテリーセルが低電圧状態であると感知してシステム電源をオフ(Off)にするものであることを特徴とする。
【0019】
一方、このようなバッテリー保護回路は、バッテリーパックに備えられていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバッテリー保護回路は、低抵抗FETではなく、通常のFETを用いて過充電、過放電、過電流などの異常状況からバッテリーを保護することから、バッテリー保護回路の価格を低減し、しかも、小型化が図れるという効果が奏される。なお、バッテリーの内部抵抗が減少するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来のバッテリー保護回路を概略的に示す回路図である。
図2】本発明に係るバッテリー保護回路を概略的に示す回路図である。
図3】本発明に係るバッテリー保護回路の詳細な構成要素を示すブロック図である。
図4】本発明に係るバッテリー保護回路を用いたバッテリーの保護方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、添付図面に基づいて、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施の形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施の形態に何ら限定されるものではない。なお、図中、本発明を明確に説明するために、説明とは無関係な部分は省略し、明細書の全般に亘って、類似の部分には類似の図面符号を付している。
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明について詳しく説明する。
【0024】
1.本発明に係るバッテリー保護回路
【0025】
図2及び3を参照して、本発明に係るバッテリー保護回路について説明する。本発明のバッテリー保護回路200は、バッテリーセルを過充電、過放電及び過電流を含む異常状況から保護する構成要素であって、下記のような構成要素を備えていてもよい。
【0026】
1.1.電流出力経路L1
【0027】
まず、電流出力経路は、バッテリーセル100の一方の端子と外部システム(図示せず)への出力部300との間に形成されて、前記バッテリーセル100から出力部300へと電流が流れる経路であって、これを介して、外部システム(図示せず)に電力を印加することができる。
【0028】
ここで、外部システムとは、バッテリーパックのコネクター(図示せず)に接続されてバッテリーセル100からの電流を駆動電源として用いる、例えば、携帯電話、ノート型パソコン、タブレットPCなどの電子機器のことをいう。
【0029】
一方、図2には、一つのバッテリーセル100のみを示しているが、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、バッテリーセルは一つ以上であってもよい。
【0030】
1.2.電圧センシングラインL2
【0031】
電圧センシングラインは、バッテリーセル100の電圧を感知するための構成要素であって、図2に示すように、バッテリーセル100の両端に接続され、バッテリーセル100の負極部に接続される電圧センシングラインL2は、前記電流出力経路L1に並列に接続されるタイプに構成されてもよい。
【0032】
このような電圧センシングラインは、バッテリーセル100の電圧を感知するためにバッテリー保護回路に構成される通常の構成要素であるが、本発明の電圧センシングラインは、既存の電圧センシングラインとは異なり、電圧センシングラインを遮断するFET240が途中に介在されるという点で相違点がある。
【0033】
より具体的には、上述のように、図1に示す従来のバッテリー保護回路の場合、バッテリーセル10から外部システム(図示せず)への電流出力経路の上に充/放電FET22a、22bを接続してバッテリーの異常電流を遮断する方式であるため、充/放電FET22a、22bを低抵抗FETから構成せねばならないという点により、保護回路の価格の高騰及び大きさの肥大を招き、しかも、バッテリーパックの内部抵抗が増加してしまうという不都合がある。これに対し、本発明は、電流出力経路L1に充/放電FETを接続する代わりに、電圧センシングラインL2にFET240を接続して上述の従来の不都合を解決しようとするものである。その原理については、以下の制御部250についての説明の際に詳しく説明する。
【0034】
1.3.電流センシング部210
【0035】
電流センシング部は、前記電流出力経路L1に直列に接続されて経路に流れるバッテリーセル100の電流をセンシングする構成要素であって、例えば、シャント抵抗(Shunt Resistor)から構成されてもよい。シャント抵抗は、抵抗値が非常に低く、高精度といった特性を有する電流測定用の抵抗であって、電流の大きさに応じて生じる抵抗にかかる電圧を用いる方式により電流を測定する。
【0036】
1.4.電圧センシング部220
【0037】
電圧センシング部は、前記電圧センシングラインL2を介してバッテリーセル100の両端に接続されて、バッテリーセル100の電圧をセンシングする構成要素である。電圧センシング部は、所定の周期ごとにバッテリーセル100の電圧をセンシングしてもよい。
【0038】
ここで、電圧センシング部は、電圧センシングラインL2に配備されたセンシングライン遮断FET240の後端において電圧をセンシングするため、電圧センシングラインL2に配備されたセンシングライン遮断FET240がオフ(Off)制御されてラインL2が遮断されれば、電圧センシング部においてセンシングするバッテリーセル100の電圧値は0Vとなる。
【0039】
1.5.電圧情報伝送部230
【0040】
電圧情報伝送部は、前記電圧センシング部220においてセンシングするバッテリーセル100の電圧値を外部システム(図示せず)に伝送する構成要素であって、これは、バッテリーパックのコネクター(図示せず)を介してバッテリーセルの電圧値を外部システム(図示せず)に伝送してもよい。
【0041】
1.6.センシングライン遮断FET240
【0042】
センシングライン遮断FETは、前記電圧センシングラインL2に配備されて後述の制御部250の制御に従って電圧センシングラインL2を遮断する構成要素である。センシングライン遮断FETは、バッテリーセル100に過充電、過放電及び過電流を含む異常状況が生じていない正常の状態ではオン(On)状態であるが、前記異常状況が生じる場合にオフ(Off)状態に切り換えられて電圧センシングラインL2を遮断する。このような場合、電圧センシングラインL2を介してバッテリーセルの電圧をセンシングする電圧センシング部220は、バッテリーセルの電圧を0Vとセンシングすることになる。
【0043】
1.7.制御部250
【0044】
制御部は、前記電流センシング部210及び電圧センシング部220のセンシング値を用いて、バッテリーセルに過充電、過放電及び過電流を含む異常状況が生じたか否かを判断し、その判断結果に基づいて、前記センシングライン遮断FET240をオフ(Off)にして電圧センシングラインL2を遮断する構成要素である。このような制御部は、下記詳細の構成要素を備えていてもよい。
【0045】
ア.第1の判断部252
【0046】
第1の判断部は、前記電圧センシング部220においてセンシングする電圧値が所定の第1の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、現在バッテリーセル100が過充電状態であると判断してもよい。この場合、バッテリーセル100の過充電状態である旨を示す過充電信号を出力してもよい。
【0047】
ここで、所定の第1の基準値とは、バッテリーセルを過充電から保護するために予め遮断するように設定される基準電圧値である過充電電圧保護値(OVP:Overvoltage protection)のことをいう。
【0048】
イ.第2の判断部254
【0049】
第2の判断部は、前記電圧センシング部220においてセンシングする電圧値が所定の第2の基準値以下であるか否かを比較して、以下である場合、現在バッテリーセル100が過放電状態であると判断してもよい。この場合、バッテリーセル100の過放電状態である旨を示す過放電信号を出力してもよい。
【0050】
ここで、所定の第2の基準値とは、バッテリーセルを過放電から保護するために予め遮断するように設定される基準電圧値である過放電電圧保護値(UVP:Undervoltage protection)のことをいう。
【0051】
ウ.第3の判断部256
【0052】
第3の判断部は、前記電流センシング部210においてセンシングする電流値が所定の第3の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、現在バッテリーセル100が過電流状態であると判断してもよい。この場合、バッテリーセル100の過電流状態である旨を示す過電流信号を出力してもよい。
【0053】
ここで、所定の第3の基準値とは、バッテリーセルを過電流から保護するために予め遮断するように設定される基準電流値である過電流保護値(OCP:Overcurrent protection)のことをいう。
【0054】
エ.遮断FET制御部258
【0055】
遮断FET制御部は、前記第1の判断部252からの過充電信号、第2の判断部254からの過放電信号及び第3の判断部256からの過電流信号のうちのいずれか一つでも出力される場合、現在バッテリーセル100に異常状況が生じた状態であるとして前記電圧センシングラインL2に構成されたセンシングライン遮断FET240をオフ(Off)にして電圧センシングラインL2を遮断することにより、バッテリーセルの異常電流を遮断してもよい。
【0056】
その原理について説明すれば、電圧センシングラインL2が遮断される場合、電圧センシング部220においてセンシングするバッテリーセルの電圧は0Vとなる。すると、電圧情報伝送部230により、外部システム(図示せず)は、現在のバッテリーセルの電圧が0Vであるとして、外部システムそれ自体の保護回路においてバッテリーの低電圧状態であると感知してシステム電源を自動的にオフ(Off)にする。これにより、バッテリーセル100と外部システムの出力部300との間の電流出力経路L1に電流が流れなくなり、その結果、バッテリーの異常電流を遮断することができるのである。
【0057】
換言すれば、従来のバッテリー保護回路の場合、保護回路の内部において自らバッテリーの異常電流を遮断する方式であるのに対し、本発明に係るバッテリー保護回路は、電圧センシングラインを遮断することで外部システムにバッテリーセル0V電圧を伝送して、外部システムにおいてバッテリーの異常電流を遮断する方式である。
【0058】
このとき、電圧センシング経路L2には、電流が流れないため、既存のように電流の損失及び発熱の防止のために低抵抗FETを用いる必要なしに、通常のFETでも電流の損失及び発熱の問題がなく、上述の従来の不都合を解決するとともに、過充電、過放電及び過充電を含む異常状況からバッテリーを保護することが可能である。
【0059】
一方、上述した電圧センシング部220、電圧情報伝送部230、制御部250は、保護IC内に実現されてもよい。
【0060】
2.本発明に係るバッテリーの保護方法(図4参照)
【0061】
本発明に係るバッテリー保護回路200を用いて、過充電、過放電及び過電流を含む異常状況からバッテリーを保護する方法は、下記のようなステップを含んでいてもよい。
【0062】
2.1.セル状態情報測定ステップ(S100)
【0063】
セル状態情報測定ステップは、バッテリーセル100と外部システムへの出力部300との間の電流出力経路L1に配備されたセンシング抵抗(電流センシング部)210及びバッテリーセル100の両端に接続された電圧センシングラインL2を介して、バッテリーセル100の電流及び電圧値を測定するステップであって、所定の周期ごとに行われてもよい。
【0064】
2.2.異常状況発生有無判断ステップ(S200)
【0065】
異常状況発生有無判断ステップは、前記セル状態情報測定ステップ(S100)において測定されるバッテリーセルの電流及び電圧値を用いて、バッテリーセルに過充電、過放電及び過電流を含む異常状況が生じたか否かを判断するステップである。
【0066】
ア.過充電判断ステップ(S210)
【0067】
過充電判断ステップは、前記セル状態情報測定ステップ(S100)において測定されるバッテリーセルの電圧値が所定の第1の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過充電状態であると判断してもよい(第1の判断部252)
【0068】
イ.過放電判断ステップ(S220)
【0069】
過放電判断ステップは、前記セル状態情報測定ステップ(S100)において測定されるバッテリーセルの電圧値が所定の第2の基準値以下であるか否かを比較して、以下である場合、バッテリーセルが過放電状態であると判断してもよい(第2の判断部254)。
【0070】
ウ.過電流判断ステップ(S230)
【0071】
過電流判断ステップは、前記セル状態情報測定ステップ(S100)において測定されるバッテリーセルの電圧値が所定の第3の基準値以上であるか否かを比較して、以上である場合、バッテリーセルが過電流状態であると判断してもよい(第3の判断部256)。
【0072】
異常状況発生有無判断ステップは、前記過充電判断ステップ(S210)、過放電判断ステップ(S220)及び過電流判断ステップ(S230)を通してバッテリーセルの過充電、過放電及び過電流状態のうちのいずれか一つでも判断されれば、バッテリーセルに異常状況が生じたと判断してもよい。
【0073】
2.3.電圧センシングライン遮断ステップ(S300)
【0074】
電圧センシングライン遮断ステップは、前記異常状況発生有無判断ステップ(S200)において、バッテリーセルが過充電、過放電及び過電流状態のうちのいずれか一つにでも相当すると判断した場合、前記電圧センシングラインを遮断してもよい。前記電圧センシングラインを遮断することは、バッテリーセルの両端に接続された電圧センシングラインL2に構成されたセンシングライン遮断FET240をオフ(Off)にすることにより行われる。このようなステップは、上述した制御部250の遮断FET制御部258により行われる。
【0075】
2.4.セル電圧情報伝送ステップ(S400)
【0076】
セル電圧情報伝送ステップは、前記電圧センシングライン遮断ステップ(S300)により遮断された電圧センシングラインを介して測定されるバッテリーセルの電圧値を外部システムに伝送するステップである(電圧情報伝送部230)。このようなステップを通じて、外部システムは、バッテリーセルの電圧状態を捉えることができる。
【0077】
このとき、このステップにおいて外部システムに伝送するバッテリーセルの電圧値は、遮断された電圧センシングラインを介して測定された値であるため、0Vである。
【0078】
2.5.外部システムオフステップ(S500)
【0079】
外部システムオフステップは、外部システム(図示せず)において、前記セル電圧情報伝送ステップ(S400)により遮断された電圧センシングラインを介して測定されたバッテリーセルの電圧値、すなわち、0V値が伝送されることにより、現在のバッテリーセルを低電圧状態であると感知して自動的にシステム電源をオフ(Off)にするステップである。これにより、バッテリーセル100と外部システム(図示せず)との間に充/放電電流が流れなくなり、その結果、前記異常状況に相当するバッテリーの異常電流を遮断するという結果をもたらす。
【0080】
このように、バッテリーセルと外部システムとの間の電流出力経路に充/放電FETを構成することなく、電圧センシングラインにFETを接続して、バッテリーの異常状況が生じたときに電圧センシングラインを遮断して、外部システムにおいてバッテリーが低電圧状態であると捉えるようにして、自動的に電源をオフ(Off)にすることにより、バッテリーの異常電流を遮断することが可能である。
【0081】
一方、本発明の技術的思想は、上記の実施形態に基づいて具体的に記述されたが、上記の実施形態はその説明のためのものであり、その限定のためのものではないということに留意されたい。なお、本発明の技術分野における当業者は、本発明の技術思想の範囲内において種々の実施形態が可能であるということが理解できるものである。
【符号の説明】
【0082】
100:バッテリーセル
200:バッテリー保護回路
210:電流センシング部
220:電圧センシング部
230:電圧情報伝送部
240:センシングライン遮断FET
250:制御部
252:第1の判断部
254:第2の判断部
256:第3の判断部
258:遮断FET制御部
L1:電流出力経路
L2:電圧センシングライン
図1
図2
図3
図4