(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】封止された燃料電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0286 20160101AFI20240802BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20240802BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20240802BHJP
H01M 8/0221 20160101ALI20240802BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20240802BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240802BHJP
【FI】
H01M8/0286
H01M8/0206
H01M8/0213
H01M8/0221
H01M8/0273
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2022568565
(86)(22)【出願日】2021-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2021062267
(87)【国際公開番号】W WO2021233707
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】102020206255.2
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリヒス,フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】リントナー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ディスナー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,ハラルド
(72)【発明者】
【氏名】ベツィザ,トマス
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347255(JP,A)
【文献】特開2010-251048(JP,A)
【文献】特開2017-103126(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110010925(CN,A)
【文献】特開2013-175336(JP,A)
【文献】特開2005-347256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を有する、封止された燃料電池スタック(100)用燃料電池(101)の製造方法:
1)カソード側分配プレート(K)およびアノード側分配プレート(A)を準備する工程、
2)前記カソード側分配プレート(K)を封止する第1のフィルムウエブ(B1)および前記アノード側分配プレート(A)を封止する第2のフィルムウエブ(B2)を準備する工程、
3)前記第1のフィルムウエブ(B1)から前記カソード側分配プレート(K)のためのカソード側分配構造(VK)を
打ち抜き、
且つ、前記第2のフィルムウエブ(B2)から前記アノード側分配プレート(A)のためのアノード側分配構造(VA)を打ち抜く工程、
4)前記カソード側分配構造(VK)用の第1のシール(D1)を製造するために前記第1のフィルムウエブ(B1)を
裁断し、
且つ、前記アノード側分配構造(VA)用の第2のシール(D2)を製造するために前記第2のフィルムウエブ(B2)を裁断する工程、
5)前記カソード側分配プレート(K)上に前記第1のシール(D1)を
載置し、
且つ、前記アノード側分配プレート(A)上に前記第2のシール(D2)を載置する工程、
6)
前記カソード側分配プレート(K)を加熱して、載置された前記第1のシール(D1)を、前記カソード側分配プレート(K)上に
溶着し、且つ、前記アノード側分配プレート(A)を加熱して、載置された前記第2のシール(D2)を前記アノード側分配プレート(A)上に
溶着する工程
、
7)前記カソード側分配プレート(K)における、溶着後の前記第1のシール(D1)を有する面の側であって、前記アノード側分配プレート(A)における、溶着後の前記第2のシール(D2)を有する面の側に、膜電極接合体(MEA)を配置し、前記カソード側分配プレート(K)、前記膜電極接合体(MEA)、および前記アノード側分配プレート(A)を積層して、封止された燃料電池(101)にする工程。
【請求項2】
前記工程6)が、前記カソード側分配プレート(K)上に前記第1のシール(D1)を
素材結合により溶着するために、前記カソード側分配プレート(K)を加熱し、且つ、前記アノード側分配プレート(A)上に前記第2のシール(D2)を素材結合により溶着するために
、前記アノード側分配プレート(A)を加熱する工程であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程6)において、前記カソード側分配プレート(K)および前記アノード側分配プレート(A)を、部分的に加熱することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程6)において、前記カソード側分配プレート(K)
における前記第1のシール(D1)が載置された範囲を加熱し、且つ、前記アノード側分配プレート(A)
における前記第2のシール(D2)
が載置された範囲
を加熱することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程6)において、前記カソード側分配プレート(K)および前記アノード側分配プレート(A)を、スタンプもしくはローラ、赤外線照射機および/または誘導加熱器を用いて加熱することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程6)において、前記カソード側分配プレート(K)および前記アノード側分配プレート(A)を、加熱したスタンプもしくはローラ、赤外線照射機および/または誘導加熱器を用いて加熱することを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程6)において、前記第1のシール(D1)およ
び前記第2のシール(D2)へ熱を導入することなく、前記カソード側分配プレート(K)および前記アノード側分配プレート(A)
を加熱することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記工程6)において
、前記カソード側分配プレート(K)および前記アノード側分配プレート(A)
を誘導によ
って加熱することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、
さらに、以下の工
程を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法:
8)前記カソード側分配プレート(K)と前記膜電極接合体(MEA)と前記アノード側分配プレート(A)とを積層後、前記カソード側分配プレート(K
)およ
び前記アノード側分配プレート(A)を加熱する工程。
【請求項10】
前記工程1)において、前記カソード側分配プレート(K)および前記アノード側分配プレート(A)を、電気および/または熱伝導性の材料から準備することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記工程1)において、前記カソード側分配プレート(K)および前記アノード側分配プレート(A)を
、金属性の材料、炭素材料および/または導電性プラスチックから準備することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を、ポリマーまたはコポリマーから準備することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を、同じポリマーまたはコポリマーから準備することを特徴とする、請求項1から1
1までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を、熱可塑性のポリマーまたはコポリマーから準備することを特徴とする、請求項1から1
1までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を、押出フィルムとして、例えばフィルムチューブとして、あるいはフィルムフラットウエブとして準備することを特徴とする、請求項12から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を、スクリュー押出による押出フィルムとして、例えばフィルムチューブとして、あるいはフィルムフラットウエブとして準備することを特徴とする、請求項12から1
4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を、共押出による押出フィルムとして、例えばフィルムチューブとして、あるいはフィルムフラットウエブとして準備することを特徴とする、請求項12から1
4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を、多層フィルムとして準備することを特徴とする、請求項1から1
7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記工程2)において
、前記第1のフィルムウエブ(B1)およ
び前記第2のフィルムウエブ(B2)を
、複数の機能層を有す
る多層フィルムとして準備
し、
前記複数の機能層は、互いに融解温度が異なることを特徴とする、請求項1から1
7までのいずれか1項に記載の方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方法の独立請求項に記載の、封止された燃料電池スタック用燃料電池の製造方法に関する。また、本発明は、装置の独立請求項に記載の、対応する封止された燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は基本的に公知である。燃料電池は、カソード側分配プレート、アノード側分配プレートおよび膜電極接合体の繰り返し単位からなるスタックとして構成されることが多い。これらの分配プレートは合わせてバイポーラプレートを形成する。分配プレートは導電性であるが、しかしガスおよびイオンに対しては不透過性である。分配プレートは、膜電極接合体の活性面に亘ってガスを分配する。このような繰り返し単位からなるスタックを互いに圧着する。燃料電池スタックが機能するためには、分配プレートを膜電極接合体に対して封止しなければならない。封止のためにゴムシールを使用する場合、これらを分配プレートおよび/または膜電極接合体に装着するか、それらの間に装入しなくてはならない。これは、例えばシールの射出成形により行なうことができる。しかし、シールは許容誤差を有するので、膜電極接合体の活性面内における電気接触を保障するためにはシール範囲も押圧しなければならない。このとき、封止および電気接触のために妥協しなくてはならない。ゴムシールの射出成形には費用がかかり、リサイクルできない切り屑が多く出るかもしれない。シールは、大抵、分配プレートの片方にのみ成型され、他方の分配プレートは、大抵、シール面に対してのみ押圧され、それにより、例えばガスは分配プレートとシールとの間を徐々に通り抜けることができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、第1の態様によれば、方法の独立請求項の特徴を有する、封止された燃料電池スタック用燃料電池の製造方法を提供するものである。さらに、本発明は、第2の態様によれば、装置の独立請求項の特徴を有する、対応する封止された燃料電池を提供するものである。本発明の他の利点、特徴および詳細は、従属請求項、明細書および図面から明らかになる。その際、本発明による方法に関して記載された特徴および詳細は、当然、本発明による燃料電池に関しても該当し、かつ、それぞれその逆も該当するので、個々の発明の態様についての開示に関しては常に相互に参照する、もしくは参照することができる。
【0004】
本発明は、第1の態様によれば、以下の工程を有する、封止された燃料電池スタック用燃料電池の製造方法を提供する:
1)カソード側分配プレートおよびアノード側分配プレートを準備する工程、
2)前記カソード側分配プレートを封止する第1のフィルムウエブおよび前記アノード側分配プレートを封止する第2のフィルムウエブを準備する工程、
3)前記第1のフィルムウエブから前記カソード側分配プレートのためのカソード側分配構造を、および前記第2のフィルムウエブから前記アノード側分配プレートのためのアノード側分配構造を打ち抜く工程、
4)前記カソード側分配構造用の第1のシールを製造するために前記第1のフィルムウエブを、および前記アノード側分配構造用の第2のシールを製造するために前記第2のフィルムウエブを裁断する工程、
5)前記カソード側分配プレート上に前記第1のシールを、および前記アノード側分配プレート上に前記第2のシールを載置する工程、
6)前記カソード側分配プレート上に前記第1のシールを、および前記アノード側分配プレート上に前記第2のシールを素材結合により接続する、特に溶着するために、前記カソード側分配プレートおよび前記アノード側分配プレートを加熱する工程。
【0005】
本発明の枠内においては、本発明による方法の前記工程、特に工程4)および5)を前記所定の順序で、あるいは順序を変更して、あるいは同時に実施することが考えられる。
【0006】
本発明の意味における分配プレートは、同様にモノポーラプレートと称することもでき、これらは、このような封止された燃料電池を積層して燃料電池スタックにする際に、後続の燃料電池の補完的モノポーラプレートあるいはハウジングプレートとともに載置される。
【0007】
本発明による燃料電池スタックは、本発明による封止された燃料電池の形をした複数の繰り返し単位を有することができる。本発明による燃料電池スタックは、好適には、例えば自動車内のような移動用途に、または、例えば発電機設備内のような定置用途に使用することができる。
【0008】
本発明による燃料電池スタックは、好適には、速くて安上がりな大量生産、特に流れ作業生産に適している。
【0009】
ここで、本発明の着想は、ウエブ材として、好ましくは熱可塑性の、フィルムウエブ、例えばポリマーフィルムウエブ、例えばPVDFフィルムウエブから、それぞれの分配構造の活性範囲ならびに開口部を打ち抜くことにある。好適には、穿孔屑を集めてリサイクルしてもよい。打ち抜かれたフィルムウエブはそれぞれ、アノード側分配プレートおよびカソード側分配プレートの(例えば金属製の)表面の上に載置される。それぞれのフィルムウエブを載置して、例えば部分的に、分配プレートを加熱することにより、フィルムウエブは分配プレート上に、少なくともシール範囲に、溶着される。分配プレートの加熱は、例えば加熱したスタンプもしくはローラ、赤外線照射機および/または誘導加熱器および/またはさらに分配プレートの抵抗加熱により行なうことができる。有利には、分配プレートの加熱を限定して行なうことができるので、フィルムウエブはそれぞれの分配プレートに対する接触時に表面だけを溶着し、後ろ(フィルムの冷たい側)から、例えば冷却された工具によって温かいフィルムに向かって押圧することができる。したがって、本発明の枠内においては、それぞれのシールをそれぞれの分配プレート上に貼り合わせることができる。フィルムウエブは、本発明の枠内においては、それぞれの分配プレート上に載置する前または後または同時に裁断することができる。
【0010】
続いて、このようにして製造した、それぞれ溶着されたシールを有する分配プレートは、膜電極接合体と積層することができ、その際、これらのプレートはそれぞれシール面でもって膜電極接合体上に載置される。すなわち、分配プレートのフィルム側は互いに向かい合って膜電極接合体を囲っている。膜電極接合体は、場合によってはガス拡散層と一緒に準備してもよく、任意で、縁部補強材としてのいわゆるガスケットにはめ込まれるか、もしくは縁どられてもよい。膜電極接合体の範囲ではさらに、スタック高さを好適な方法で適合してもよい。そのために、本発明による封止された燃料電池をシール範囲において新たに短時間加熱してもよいので、それぞれのシールのポリマーを可塑化することができる。燃料電池は、したがって、正確な間隔寸法に調整することができる。軟化したポリマーは、したがって膜電極接合体をも囲うことができ、および/または分配プレートに貼り付けることができ、ガス拡散層の縁部に含浸することができ、および/または分配プレートを相互に接続することができる。このように、結合性で、完全に封止された、機械的応力がない、個別に取り扱い可能なモジュールユニットとしての燃料電池を準備することができる。
【0011】
このように封止された燃料電池を接続して燃料電池スタックにすることは、本発明の意味における封止された燃料電池を複数積層し、連続する燃料電池の分配プレートを冷却材側で任意に適切に封止することにより行なうことができる。ここでの封止は、ガス範囲におけるよりも危険ではなく、積層の際のリスクはより少ない。加えて、本発明の枠内においては、外側の分配プレート冷却材面に、隣接する燃料電池の分配プレートの位置決めおよび/または素材結合による接続に用いることができる個々の支持溶接個所を設置することが考えられる。
【0012】
言い換えれば、本発明の着想は、(開口部がなく、かつ活性範囲がない)縁部範囲上に場合により全面的にさえ載置することができ、そこで溶着することができる安価なシールをウエブ材として準備することにある。積層方向の許容誤差調整は、好適には、シールを新たに可塑化することにより行なうことができる。本発明を用いて、膜範囲のシールとシール範囲への圧着との間を機械的に解除することが可能になる。リサイクル可能な熱可塑性ポリマーを使用することにより、廃棄物を削減することができる。シールを裁断するフィルムウエブの材料としては、様々なポリマー、コポリマー、多層フィルム複合体等が考えられる。本発明の他の利点によれば、ポリマーフィルムの形をしたこれらシールは、例えば斜めの面を封止するために、平坦ではない基層上にも装着することができる。したがって、分配プレートは、噛み合った、かつそれでも確実に封止される輪郭を有することができる。
【0013】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、前記工程6)において、前記カソード側分配プレートおよび前記アノード側分配プレートを、部分的に、特に前記第1のシールおよび同様に前記第2のシールの範囲で、加熱することを規定してもよい。したがって、シールを分配プレートに的確かつそれゆえ効率的に素材結合により接続することができる。
【0014】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、前記工程6)において、前記カソード側分配プレートおよび前記アノード側分配プレートを、特に加熱した、スタンプもしくはローラ、赤外線照射機および/または誘導加熱器を用いて加熱することを規定してもよい。このようにして、分配プレートへの効率的かつ均一なシールの接続を可能にすることができる。
【0015】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、前記工程6)において、前記第1のシールおよび同様に前記第2のシールへ熱を導入することなく、前記カソード側分配プレートおよび前記アノード側分配プレートを的確に、特に誘導により、加熱することを規定してもよい。このようにして、それぞれの分配プレートと接触するフィルムウエブの表面層のみが溶着されて、分配プレートとの素材結合による接続を形成し、かつ、フィルムウエブの残りの材料がほとんどそのまま残されて、改善したシール特性を提供することを可能にできる。
【0016】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、以下の工程のうち少なくともさらに1つの工程を有することを規定してもよい:
7)接続された前記第1のシールを有する前記カソード側分配プレート、膜電極接合体、および接続された前記第2のシールを有する前記アノード側分配プレートを積層して、封止された燃料電池にする工程、ただし、その際、特に前記分配プレートのシール側が前記膜電極接合体の方向に面している、
8)封止された前記燃料電池の高さを的確に調整するために、接続された前記第1のシールを有する前記カソード側分配プレート、および接続された前記第2のシールを有する前記アノード側分配プレートを加熱する工程。
【0017】
したがって、完成した封止された燃料電池の、所望の、および/または必要な厚さまたは高さを調整、および/またはさらに別の工程で簡単に適合させることができる。膜電極接合体を有する積層複合体中のシールを溶着することにより、シールは、好適には、膜電極接合体を、場合によりその上に装着されたガス拡散層とともに、その縁部を囲って確実に封止することができる。
【0018】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、前記工程1)において、前記カソード側分配プレートおよび前記アノード側分配プレートを、電気および/または熱伝導性の、特に金属性の材料、炭素材料および/または導電性プラスチックから準備することを規定してもよい。このようにして、電子伝達および/または熱伝達を分配プレートによって保障することができる。
【0019】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、前記工程2)において、前記カソード側分配プレートを封止する前記第1のフィルムウエブおよび前記アノード側分配プレートを封止する前記第2のフィルムウエブを(特に、製造を簡単にするために同じ、あるいは、燃料電池のアノード側およびカソード側のための個々のシールを準備できるようにするために異なる)、好ましくは熱可塑性の、ポリマーまたはコポリマーから準備することを規定してもよい。したがって、リサイクル可能な切り屑を有する熱加工可能なシールを準備することができる。
【0020】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、前記工程2)において、前記カソード側分配プレートを封止する前記第1のフィルムウエブおよび前記アノード側分配プレートを封止する前記第2のフィルムウエブを、特にスクリュー押出による、好ましくは共押出による押出フィルムとして、例えば、引き続き縁部が切開できるフィルムチューブとして、あるいはフィルムフラットウエブとして準備することを規定してもよい。したがって、ウエブ材としてのシールを、費用をかけずに速く製造することを可能にできる。
【0021】
さらに、本発明は、封止された燃料電池の製造方法において、前記工程2)において、前記カソード側分配プレートを封止する前記第1のフィルムウエブおよび前記アノード側分配プレートを封止する前記第2のフィルムウエブを、特に、例えば異なる融解温度を有してもよい複数の機能層を有する、多層フィルムとして準備することを規定してもよい。このように、本発明によるフィルムウエブの範囲における機能性を拡張することができる。それぞれのフィルムウエブの異なる層により、好適には、シールの異なる特性を提供することができる。そのように、特に分配プレートに溶着する層は低い融解温度を有していてもよい。別の層は、例えば分配層の開口部範囲に対して、例えば改善された絶縁性を有していてもよい。さらに別の層は、特に燃料含有ガスに対して、例えば改善された耐食性を有していてもよい。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、上述のように行なうことができる方法を用いて製造される燃料電池を提供する。本発明による燃料電池により、本発明による方法に関して先に記載したものと同様の利点を得ることができる。ここでは全面的にこれらの利点を参照する。本発明による燃料電池は、改良された方法で応力なく封止され、確実に電気的に接触する。
【0023】
本発明およびその実施形態ならびにその利点を、以下、図面により詳細に説明する。それぞれの図は概略的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の意味における燃料電池スタックの一例の概略図を示している。
【
図2】第1のシールをカソード側分配プレートに接続するための本発明による方法の流れを概略的に示している。
【
図3】第2のシールをアノード側分配プレートに接続するための本発明による方法の流れを概略的に示している。
【
図4】本発明の意味における燃料電池を積層するための本発明による方法の流れを概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
異なる図面において、本発明の同じ部品は常に同一の符号を付しており、したがって、原則的にこれらは一度しか記載しない。
【0026】
図1は、本発明の意味における燃料電池スタック100を示す。本発明による燃料電池スタック100は、単一の燃料電池101の形をした繰り返し単位が複数積層されることで構成されうる。本発明による燃料電池スタック100は、異なる移動用途または定置用途に使用することができる。
【0027】
図2から
図4は、封止された燃料電池スタック用燃料電池を製造するために用いられる、本発明の意味における方法の流れを説明するものである。本発明による方法は、以下の工程を有する:
1)カソード側分配プレートKおよびアノード側分配プレートAを準備する工程、
2)前記カソード側分配プレートKを封止する第1のフィルムウエブB1および前記アノード側分配プレートAを封止する第2のフィルムウエブB2を(例えば押出成形により)準備する工程、
3)前記第1のフィルムウエブB1から前記カソード側分配プレートKのためのカソード側分配構造VKを、および前記第2のフィルムウエブB2から前記アノード側分配プレートAのためのアノード側分配構造VAを打ち抜く工程、
4)前記カソード側分配構造VK用の第1のシールD1を製造するために前記第1のフィルムウエブB1を、および前記アノード側分配構造VK用の第2のシールD2を製造するために前記第2のフィルムウエブB2を裁断する工程、
5)前記カソード側分配プレートK上に前記第1のシールD1を、および前記アノード側分配プレートA上に前記第2のシールD2を載置する工程、
6)前記カソード側分配プレートK上に前記第1のシールD1を、および前記アノード側分配プレートA上に前記第2のシールD2を素材結合により接続する、特に溶着するために、前記カソード側分配プレートKおよび前記アノード側分配プレートAを加熱する工程。
【0028】
図2および
図3が示唆するように、工程4)および5)は前記所定の順序で、あるいは順序を変更して、あるいは同時にさえ実施することができる。
【0029】
分配プレートK、Aは、同様にモノポーラプレートと称することもでき、これらは、このような封止された燃料電池101を積層して燃料電池スタック100にする際に、後続の燃料電池101の補完的モノポーラプレートあるいはハウジングプレートGPとともに載置される。
【0030】
完成した燃料電池スタック100は、本発明による方法を用いて封止された燃料電池101の形をした繰り返し単位を複数有していてよい。本発明による方法は、好適には、燃料電池101の速くて安上がりな大量生産、特に流れ作業生産を可能にする。
【0031】
工程2)では、燃料電池101のカソード側(
図2参照)およびアノード側(
図3参照)に対して、それぞれ、好ましくは熱可塑性の、ポリマーフィルムウエブ、例えばPVDFフィルムウエブの形をした、(同じまたは個別の材料からなる)フィルムウエブB1、B2をウエブ材として準備する。
【0032】
工程3)では、それぞれのフィルムウエブB1、B2から、それぞれの分配構造VK、VAの活性範囲ならびに開口部を打ち抜く。本発明の枠内においては、穿孔屑を集めてリサイクルすることができる。
【0033】
打ち抜かれたフィルムウエブB1、B2はそれぞれ、工程5)でカソード側分配プレートK(
図2参照)およびアノード側分配プレートA(
図3参照)の膜側表面上に載置される。工程5)でフィルムウエブB1、B2を載置して、工程6)で分配プレートK、Aを、好ましくは部分的に、加熱することにより、それぞれのフィルムウエブB1、B2は分配プレートK、A上に、少なくともそのシール範囲に溶着される。
【0034】
工程6)およびさらに別の工程8)における分配プレートK、Aの加熱は、例えば、図示されていない、加熱したスタンプもしくはローラ、赤外線照射機および/または誘導加熱器および/またはさらに分配プレートの抵抗加熱により行なうことができる。このことは、
図2および
図3ならびに
図4中に、熱は符号Q、温度は符号T、および電流は符号Iにより示唆している。
【0035】
有利には、本発明の枠内においては、例えば誘電加熱器を用いて、分配プレートK、Aの加熱を限定して行なうことができるので、フィルムウエブB1、B2はそれぞれの分配プレートK、Aとの接触時に表面だけ溶着し、後ろ(フィルムウエブB1、B2の冷たい側)から、例えば冷却された工具によって温かいフィルム表面もしくはフィルム層に向かって押圧することができる。言い換えれば、それぞれのシールD1をそれぞれの分配プレートK、A上に貼り合わせることができる。フィルムウエブB1、B2は、このため、融解温度、耐食性および/または電気絶縁性に関して異なる特性を有することができる1つまたは複数の機能層を有していてもよい。
【0036】
フィルムウエブB1、B2は、工程4)において、工程5)でそれぞれの分配プレートK、Aを載置する前または後または同時に裁断することができる。
【0037】
図4がさらに示すように、それぞれ溶着されたシールD1、D2を有する封止された分配プレートK、Aを、さらに別の可能な工程7)において、膜電極接合体MEAと積層して燃料電池101にすることができ、その際、プレートK、Aはそれぞれシール面でもって膜電極接合体MEA上に載置される。シールD1、D2は、このとき、膜電極接合体MEAを枠状に囲むことができる。膜電極接合体MEAは、任意でガス拡散層と一緒に準備してもよく、場合により、縁部補強材としてのいわゆるガスケットにはめ込まれるか、もしくは縁どられてもよい。
【0038】
さらに別の可能な工程8)において、燃料電池101のスタック高さを好適な方法で調整および/または適合させてもよい。そのために、工程7)で積層された本発明による燃料電池101をシール範囲において新たに短時間加熱してもよいので、それぞれのシールD1、D2の材料を溶着することができる。燃料電池101は、したがって、正確な間隔寸法に調整することができる。軟化したシールD1、D2の材料は、これにより、膜電極接合体MEAの縁部を囲むことができ、および/または分配プレートK、Aに貼り付けることができる。したがって、任意のガス拡散層の縁部に含浸することができる。好適には、したがって、分配プレートK、Aを相互に接続することができる。このように、完全に封止され、機械的応力がない結合性複合体として燃料電池101を準備することができる。
【0039】
上述のように行なうことができる方法を用いて製造される燃料電池101は、同様に本発明の1つの態様を成す。このような燃料電池101を複数有する、対応する燃料電池スタック100も、同様に本発明の1つの態様を表すことができる。
【0040】
上述の図面の説明は、本発明を専ら実施例の枠内において説明するものである。当然、前記実施形態のそれぞれの特徴は、技術的な意味がある限り、本発明の枠を逸脱しなければ自由に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0041】
100 燃料電池スタック
101 燃料電池
A アノード側分配プレート
K カソード側分配プレート
B1、B2 フィルムウエブ
D1、D2 シール
VA アノード側分配構造
VK カソード側分配構造
MEA 膜電極接合体