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▶ ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】液化ガス貯蔵タンク及びそれを含む船舶
(51)【国際特許分類】
   F17C 3/04 20060101AFI20240802BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20240802BHJP
   B65D 90/02 20190101ALI20240802BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F17C3/04 A
F17C3/04 E
F17C13/00 302Z
B65D90/02 B
B63B25/16 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022573754
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-07
(86)【国際出願番号】 KR2021008387
(87)【国際公開番号】W WO2022010184
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0084336
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0089200
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520387760
【氏名又は名称】エイチディー ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク チョン チン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ビョン キ
(72)【発明者】
【氏名】オ フン キュ
(72)【発明者】
【氏名】イム ホン イル
(72)【発明者】
【氏名】パク ミン キュ
(72)【発明者】
【氏名】イ サン オク
(72)【発明者】
【氏名】パク ソン ボ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨン テ
(72)【発明者】
【氏名】ホ ウォン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム トン ウ
(72)【発明者】
【氏名】アン チェ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヨン ム
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-528241(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1337642(KR,B1)
【文献】特開2008-110813(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0041971(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1556259(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1617036(KR,B1)
【文献】独国特許出願公開第102006016796(DE,A1)
【文献】特表2017-516030(JP,A)
【文献】特表2018-512344(JP,A)
【文献】特表2011-519005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
F17C 13/00
B65D 90/02
B63B 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温物質を貯蔵する液化ガス貯蔵タンクであって、
極低温物質を収容する収容空間を形成する金属材質の1次防壁と、
上記1次防壁の外側に1次プライウッドと1次断熱材が順に配置される1次断熱壁と、
上記1次断熱壁の外側に設けられる2次防壁と、
上記2次防壁の外側に2次断熱材と2次プライウッドが順に積層されて配置される2次断熱壁と、を含み、
上記2次防壁は、
単位要素を構成する上記2次断熱壁のそれぞれの上部に設けられるメイン防壁と、
隣り合う上記メイン防壁を互いに連結する補助防壁と、からなり、
上記2次防壁は、
金属と非金属の積層構造からなり、
上記1次断熱壁は、
低温負担(thermal stress)を減らすために上記2次断熱壁の66%~166%の厚さを有し、
上記1次断熱壁は、
上記2次断熱壁、上記2次防壁、上記1次断熱壁の一部である固定断熱壁が積層されて形成される単位要素が隣り合って配置された状態で、上記隣り合う固定断熱壁の間の空間部分に設けられる連結断熱壁を含み、
上記連結断熱壁は上記2次断熱壁の67%~167%の厚さを有する、ことを特徴とする液化ガス貯蔵タンク。
【請求項2】
上記2次防壁は、
上記液化ガス貯蔵タンクにおいて厚さ方向を基準として全厚の40%~60%の範囲に該当する中心領域に配置されることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【請求項3】
上記1次断熱材は、
上記2次断熱材の90%~110%の厚さを有することを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【請求項4】
上記1次防壁は、
上記1次断熱壁の上面に接触する平面部、第2曲率半径を有する曲面部、及び上記平面部と上記曲面部との間に第1曲率半径を有する境界部を含む複数のしわからなるしわの形状に形成され、
上記第1曲率半径と上記第2曲率半径は異なることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【請求項5】
複数のしわは同じ形状に形成されることを特徴とする請求項4に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【請求項6】
上記2次防壁は、
第1部材/アルミニウムホイル/第2部材が積層された構造の素材で形成され、
上記第1部材と上記第2部材のうち少なくとも1つはガラスクロス、ガラス-アラミドクロス、バザルトクロスまたはガラスクロス/アルミニウムホイル/ガラスクロスであることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【請求項7】
上記1次断熱材は、発泡剤としてCO2を用いた強化ポリウレタンフォームで形成され、
上記2次断熱材は、発泡剤HFC-245faを用いた強化ポリウレタンフォームで形成されることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【請求項8】
直角コーナー構造をさらに含み、
上記直角コーナー構造に形成される上記2次防壁の曲率半径は、上記1次断熱壁の厚さに対して25%~50%であることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【請求項9】
鈍角コーナー構造をさらに含み、
上記鈍角コーナー構造に形成される上記2次防壁の曲率半径は、上記1次断熱壁の厚さに対して15%~35%であることを特徴とする請求項1に記載の液化ガス貯蔵タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液化ガス貯蔵タンク及びそれを含む船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、技術開発によりガソリンやディーゼルに代わって液化天然ガス(Liquefied Natural Gas;LNG)、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gas;LPG)などの液化ガスが広く使用されている。
【0003】
また、LNGなどの液化ガスを海上で輸送または保管するLNG運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)、LNG FPSO(Floating、Production、Storage and Offloading)、LNG FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)などの船舶内には、LNGを極低温の液体状態で貯蔵するための貯蔵タンク(いわゆる、「貨物倉」と呼ばれる)が設置されている。
【0004】
また、液化ガス貯蔵タンクは、外部からの熱侵入により蒸発ガス(Boil Off Gas;BOG)が発生することがあり、断熱設計を通じて蒸発ガスの気化比率である自然気化率(Boil Off Rate;BOR)を下げるのが液化ガス貯蔵タンク設計の核心技術である。また、液化ガス貯蔵タンクはスロッシング(Sloshing)などの様々な荷重にさらされるため、断熱パネルの機械的強度を確保することも必須である。
【0005】
このような点を考慮すると、1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さ範囲が液化ガス貯蔵タンクの機械的強度と関係し得る。そのため、2次防壁の低温負担を無くしながら2次断熱壁の機械的強度も保持できるようにする研究が活発に行われている。
【0006】
なお、1次防壁の場合、極低温物質に直接露出されるため、極低温による熱応力(thermal stress)だけでなく、スロッシングによる圧応力(pressure stress)負担を最小化するために曲面部の断面形状を最適化する研究が活発に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような従来技術の問題点を解決するために創出されたものであり、本発明の目的は、1次防壁の曲面部の断面形状を最適化することで、低温による熱応力(thermal stress)だけでなく、スロッシングによる圧応力(pressure stress)の負担を最小化できるようにする液化ガス貯蔵タンク及びそれを含む船舶を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、断熱壁の全厚において1次断熱壁の厚さを2次断熱壁と同一または類似するようにして、2次断熱壁の機械的強度を一定レベルに保持しながら2次防壁の低温負担及びスロッシング負担を減らせる液化ガス貯蔵タンク及びそれを含む船舶を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、断熱壁の全厚において1次断熱壁の厚さを2次断熱壁と同一または類似するようにして、船体の脆性破壊が発生しない範囲内で2次防壁の低温負担及びスロッシング負担を減らせる液化ガス貯蔵タンク及びそれを含む船舶を提供することである。
【0010】
また、本発明の目的は、2次防壁の構成を改善して断熱性能を向上させられる液化ガス貯蔵タンク及びそれを含む船舶を提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、2次断熱壁を船体に固定する固定部材の構成を改善して断熱性能の増加だけでなく、工数を削減させられる液化ガス貯蔵タンク及びそれを含む船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面による液化ガス貯蔵タンクは、極低温物質を貯蔵する液化ガス貯蔵タンクであって、極低温物質を収容する収容空間を形成する金属材質の1次防壁と、上記1次防壁の外側に1次プライウッドと1次断熱材が順に配置される1次断熱壁と、上記1次断熱壁の外側に設けられる2次防壁と、上記2次防壁の外側に2次断熱材と2次プライウッドが順に積層されて配置される2次断熱壁と、を含み、上記2次防壁は、単位要素を構成する上記2次断熱壁のそれぞれの上部に設けられるメイン防壁と、隣り合う上記メイン防壁を互いに連結する補助防壁と、からなり、上記2次防壁は、金属と非金属の混合素材からなり、上記1次断熱壁は、低温負担(thermal stress)を減らすために上記2次断熱壁の66%~166%の厚さを有することを特徴とする。
【0013】
具体的に、上記1次断熱壁は、上記2次断熱壁、上記2次防壁、上記1次断熱壁の一部である固定断熱壁が積層されて形成される単位要素が隣り合って配置された状態で、上記隣り合う固定断熱壁の間の空間部分に設けられる連結断熱壁を含んでもよい。
【0014】
具体的に、上記連結断熱壁は上記2次断熱壁の67%~167%の厚さを有することができる。
【0015】
具体的に、上記2次防壁は、上記液化ガス貯蔵タンクにおいて厚さ方向を基準として全厚の40%~60%の範囲に該当する中心領域に配置されてもよい。
【0016】
具体的に、上記1次断熱材は、上記2次断熱材の90%~110%の厚さを有することができる。
【0017】
具体的に、上記1次防壁は、上記1次断熱壁の上面に接触する平面部、第1曲率半径を有する曲面部、及び上記平面部と上記曲面部との間に第2曲率半径を有するしわの形状に形成された境界部からなり、上記第1曲率半径と上記第2曲率半径は異なってもよい。
【0018】
具体的に、上記しわの形状は水平及び垂直のしわの大きさが同じであってもよい。
【0019】
具体的に、上記2次防壁は、第1部材/アルミニウムホイル/第2部材が積層された構造の素材で形成され、上記第1部材と上記第2部材のうち少なくとも1つはガラスクロス、ガラス-アラミドクロス、バザルトクロスまたはガラスクロス/アルミニウムホイル/ガラスクロスであってもよい。
【0020】
具体的に、上記1次断熱材は発泡剤としてCO2を用いた強化ポリウレタンフォームで形成され、上記2次断熱材は発泡剤HFC-245faを用いた強化ポリウレタンフォームで形成されてもよい。
【0021】
具体的に、直角コーナー構造をさらに含み、上記直角コーナー構造に形成される上記2次防壁の曲率半径は、上記1次断熱壁の厚さに対して25%~50%であってもよい。
【0022】
具体的に、鈍角コーナー構造をさらに含み、上記鈍角コーナー構造に形成される上記2次防壁の曲率半径は上記1次断熱壁の厚さに対して15%~35%であってもよい。
【0023】
本発明の他の側面による液化ガス貯蔵タンクは、極低温物質を貯蔵する液化ガス貯蔵タンクであって、極低温物質を収容する収容空間を形成する金属材質の1次防壁と、上記1次防壁の外側に1次プライウッドと1次断熱材が順に配置される1次断熱壁と、上記1次断熱壁の外側に設けられる2次防壁と、上記2次防壁の外側に2次断熱材と2次プライウッドが順に配置される2次断熱壁と、を含み、上記2次防壁は、単位要素を構成する上記2次断熱壁のそれぞれの上部に設けられるメイン防壁と、隣り合う上記メイン防壁を互いに連結する補助防壁と、からなり、上記補助防壁は非接着部分を有し、上記極低温物質による上記補助防壁の低温応力の上限値が50MPa以下を有するように形成されることを特徴とする。
【0024】
本発明のさらに他の側面による液化ガス貯蔵タンクは、極低温物質を収容する収容空間を形成する金属材質の1次防壁と、上記1次防壁の外側に設けられる1次断熱壁と、上記1次断熱壁の外側に設けられ、メイン防壁と補助防壁からなる2次防壁と、上記2次防壁の外側に設けられる2次断熱壁と、からなる液化ガス貯蔵タンクであって、上記1次防壁は、上記1次断熱壁の上面に固定される複数の平面部と、上記複数の平面部の間に形成されて上記収容空間側に曲面を形成し、横方向の曲面部と縦方向の曲面部を含む曲面部と、からなり、上記曲面部は、隣り合う上記平面部のそれぞれに連結され、第1曲率半径r1を有する1対の第1曲面部と、上記曲面部の上部をなし、少なくとも上記第1曲率半径r1より大きい半径の第2曲率半径r2を有する第2曲面部と、上記1対の第1曲面部のそれぞれと上記第2曲面部を連結し、少なくとも上記第2曲率半径r2より大きい半径の第3曲率半径r3を有する1対の第3曲面部と、を含み、上記1対の第3曲面部は、何れか1つの第3曲面部の第1曲率中心と他の1つの第3曲面部の第2曲率中心が上記曲面部の内側において水平方向にずれて位置することを特徴とする。
【0025】
具体的に、上記横方向の曲面部と上記縦方向の曲面部は交差するように形成され、上記横方向の曲面部と上記縦方向の曲面部は高さと幅が同じであってもよい。
【0026】
具体的に、上記第3曲率半径の大きさは、上記第2曲率半径の大きさと上記第1曲率半径の大きさを合わせた値より大きくてもよい。
【0027】
具体的に、上記曲面部の高さHに対する幅Wの比率(W/H)は、2.0~3.0の範囲(2.0≦W/H≦3.0)であり、上記1次防壁の低温における熱応力及び圧応力に基づいて決定されてもよい。
【0028】
具体的に、上記1対の第1曲面部のそれぞれは、上記平面部と連結される第1連結地点と、上記1対の第3曲面部のそれぞれと連結される第2連結地点の間で上記第1曲率半径を有する曲面形状であり、上記第1連結地点は、上記収容空間側の曲率中心から上記第1曲率半径を有する第1円の曲線と上記第1円の縦中心線が交差する地点と同じ位置であり、上記第2連結地点は、第1円の曲線と上記第1円の横中心線が交差する地点から下側に30度角度以内の上記第1円の曲線部分に位置することができる。
【0029】
具体的に、上記1次防壁は、上記横方向の曲面部と上記縦方向の曲面部が交差する交差部から一定距離内に位置し、上記収容空間側に突出して上記平面部に形成される突出構造物をさらに含んでもよい。
【0030】
具体的に、上記突出構造物は、上記横の曲面部と上記縦の曲面部より大きさが小さく、凸状の円形または弧状からなってもよい。
【0031】
具体的に、上記1対の第3曲面部の上記第1、2曲率中心は、上記平面部が形成する仮想の平面より上部に位置することができる。
【0032】
本発明のさらに他の側面による船舶は、上記の液化ガス貯蔵タンクを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明による液化ガス貯蔵タンク及びそれを備える船舶は、1次防壁の曲面部の断面形状を最適化することで、低温による熱応力(thermal stress)だけでなく、スロッシングによる圧応力(pressure stress)の負担を最小化することができる。
【0034】
また、本発明による液化ガス貯蔵タンク及びそれを備える船舶は、連結断熱壁を包括する1次断熱壁と2次断熱壁の全厚において1次断熱壁の厚さを2次断熱壁と同一または類似するように構成することで、2次断熱壁の機械的強度を一定レベルに保持できるだけでなく、2次防壁の低温負担及びスロッシング負担を減らせるため、2次防壁の損傷を防止することができる。
【0035】
また、本発明による液化ガス貯蔵タンク及びそれを備える船舶は、連結断熱壁を包括する1次断熱壁と2次断熱壁の全厚において1次断熱壁の厚さを2次断熱壁と同一または類似するように構成することで、船体の脆性破壊を防止し、2次防壁の低温負担及びスロッシング負担を減らせる。
【0036】
また、本発明による液化ガス貯蔵タンク及びそれを備える船舶は、単位要素を構成する隣り合う1次断熱壁の間の空間に設けられる連結断熱壁の下面に補助断熱板を設けることで、単位要素を構成する隣り合う2次断熱壁の連結部分における断熱性能をさらに向上させることができる。
【0037】
また、本発明による液化ガス貯蔵タンク及びそれを備える船舶は、2次防壁の構成を改善して断熱性能を向上させることができる。
【0038】
また、本発明による液化ガス貯蔵タンク及びそれを備える船舶は、2次断熱壁と船体との間に2次断熱壁のレベリング部材として非接着弾性断熱材を適用することで、既存のマスティックとレベリングウェッジを使用しなくても船体の変形部位の水平を合わせることができ、タンクの断熱性能を向上させることができる。
【0039】
また、本発明による液化ガス貯蔵タンク及びそれを備える船舶は、2次断熱壁の単位パネルの側面下部に外部に突出して設けられる突出部と、船体に固定されるスタッドボルトによるクリート(cleat)構造方式で隣接する2次断熱壁の単位パネルを固定させることで、2次断熱壁に穴を開けてスタッドボルトで単位パネルを固定させる方式に比べて工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部断面図である。
図2】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部斜視図である。
図3】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次防壁を説明するための図である。
図4】(a)及び(b)は1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さ変化による2次防壁の引張力を示す図である。
図5】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために、第1ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図6】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために、第1ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図7】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために、第1ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図8】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために、第1ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図9】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第2ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図10】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第2ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図11】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第2ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図12】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第2ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図13】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第3ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図14】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第3ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図15】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第3ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図16】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第3ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図17】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第4ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図18】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第4ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図19】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第4ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図20】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さを導出するために実施した第4ケースの1次断熱壁と2次断熱壁の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
図21】1次断熱壁及び2次断熱壁の厚さ変化による2次防壁の低温ストレスと船体の脆性破壊の確率を示すグラフである。
図22】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの2次防壁に対する様々な構成を説明するための図である。
図23】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの2次防壁に対する様々な構成を説明するための図である。
図24】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの2次防壁に対する様々な構成を説明するための図である。
図25】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの直角コーナー構造を説明するための一部断面図である。
図26】本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの鈍角コーナー構造を説明するための一部断面図である。
図27】本発明の液化ガス貯蔵タンクの1次断熱材及び2次断熱材の使用材質による熱伝導度を示すグラフである。
図28】本発明の第2実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部断面図である。
図29】本発明の第2実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部斜視図である。
図30】本発明の第3実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部断面図である。
図31】本発明の第3実施例による液化ガス貯蔵タンクの主要部分に対する拡大図である。
図32】本発明の第1、2、3実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次防壁の他の実施例を説明するための図である。
図33】1次防壁に対する形状を説明するための図である。
図34】(a)及び(b)は1次防壁に設けられる突出構造物を説明するための図である。
図35】1次防壁の単位防壁を説明するための斜視図である。
図36】1次防壁の曲面部の高さに対する曲面部の幅の比率(W/H)によるフォン・ミーゼス応力値(熱応力及び圧応力)の分布を示す図である。
図37】1次防壁の断面形状の最適化シミュレーションを通じた1次防壁の曲面部の高さに対する曲面部の幅の比率(W/H)による曲率半径「r3-r2-r1」値の範囲を示す図である。
図38】(a)、(b)及び(c)は本発明の1次防壁と比較対象の1次防壁の横及び縦の曲面部に流体が流入するときのスロッシング圧力値に対する構造解析を行った結果を示す図である。
図39】(a)及び(b)は本発明の1次防壁と比較対象の1次防壁に等分布荷重を加えたときの変形を説明するための図である。
図40】鈍角コーナー構造において2次防壁が2次断熱壁に接着されない部分の長さ変化による2次防壁の応力変化値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の目的、特定の利点及び新規な特徴は、添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び好ましい実施例からより明らかになるであろう。また、本明細書では、各図面の構成要素に参照番号を付するにおいて、同じ構成要素に限ってはたとえ異なる図面上に表示されても、できる限り同じ番号を付したことに留意されたい。なお、本発明を説明するに当たり、関連する公知技術の具体的な説明が本発明の要旨を不要に不明確にすると判断される場合は、その詳細な説明を省略する。
【0042】
また、添付の図面は本明細書に開示された実施例を理解しやすくするためのものであり、添付の図面によって本明細書に開示された技術的思想は限定されず、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、等価物ないし代替物を含むと理解すべきである。
【0043】
また、第1、第2などの序数を含む用語は様々な構成要素を説明するために用いられるが、上記構成要素は上記用語によって限定されない。上記用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0044】
以下、本明細書において、液化ガスはLNGまたはLPG、エチレン、アンモニアなどのように一般的に液体状態で保管される全てのガス燃料を包括する意味で使用してもよく、加熱や加圧によって液体状態でない場合なども便宜上液化ガスと表現することができる。これは蒸発ガスにも同様に適用されることができる。また、LNGは便宜上液体状態であるNG(Natural Gas)だけでなく、超臨界状態などであるLNGを全て包括する意味で使用することができ、蒸発ガスは気体状態の蒸発ガスだけでなく、液化された蒸発ガスを含む意味で使用することができる。
【0045】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【0046】
図1は本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部断面図であり、図2は本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部斜視図である。図3は本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次防壁を説明するための図である。
【0047】
図1図2に示すように、本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンク1は、船舶に備えられて極低温(約-160℃~-170℃)物質であるLNGなどの液化ガスを貯蔵することができる。
【0048】
以下で説明する液化ガス貯蔵タンク1が備えられる船舶は、図示していないが、貨物を出発地から目的地まで輸送する商船の他にも海上の一定地点に浮遊して特定の作業を行う海洋構造物を包括する概念である。また、本発明における液化ガス貯蔵タンク1には液化ガスを貯蔵する如何なる形態のタンクも含まれる。
【0049】
液化ガス貯蔵タンク1は、液化ガスと接触する1次防壁2と、1次防壁2の外側に設けられる1次断熱壁3と、1次断熱壁3の外側に設けられる2次防壁4と、2次防壁4の外側に配置される2次断熱壁5と、を含んで構成されてもよい。液化ガス貯蔵タンク1は2次断熱壁5と船体7との間に設けられるマスティック6によって船体7に支持されることができる。
【0050】
液化ガス貯蔵タンク1は、断熱性能及び貯蔵容量を最適化するために1次断熱壁3及び2次断熱壁5の厚さの最適化が必要となり得る。例えば、1次断熱壁3と2次断熱壁5の主要材質としてポリウレタンフォームを使用する場合、1次断熱壁3の厚さと2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚は250mm~500mmの範囲となるようにすることができる。これに関しては図4図20において説明する。
【0051】
上記において、液化ガス貯蔵タンク1は平面及びコーナー構造を含んでもよい。例えば、液化ガス貯蔵タンク1の前後方向の横壁、横壁の間の底、縦壁及び天井は平面構造に該当することができる。また、例えば、液化ガス貯蔵タンク1の横壁、底、縦壁、天井が当接する構造はコーナー構造に該当することができる。ここで、コーナー構造は鈍角コーナー構造または直角コーナー構造を含んでもよい。1次断熱壁3または2次断熱壁5の厚さが変化すると、鈍角コーナー構造または直角コーナー構造の変化が伴われることがあり、図25図26において説明する。
【0052】
図1及び図2を参照すると、1次防壁2は極低温物質である液化ガスを収容する収容空間を形成し、金属材質からなることができる。例えば、金属材質はステンレス鋼材であってもよいが、これに限定されない。1次防壁2は2次防壁4とともに液化ガスが外部に漏れるのを防止することができる。
【0053】
1次防壁2はアンカーストリップ(不図示)により1次断熱壁3の上部に固定結合され、液化ガス貯蔵タンク1に貯蔵される極低温物質である液化ガスと直接接触するように設けられてもよい。
【0054】
図3を参照すると、1次防壁2は、1次断熱壁3の上面に接触する平面部21と、温度による収縮または膨張応力(stress)の緩和のための曲面部22と、平面部21と曲面部22の間の境界部23と、に区分されることができる。例えば、1.0~1.5mm厚さのステンレス鋼材、好ましくは1.0~1.2mm厚さのステンレス鋼材からなるコルゲーションメンブレンシート(corrugation membrane sheet)で形成されてもよい。即ち、1次防壁はしわの形状に形成されることができる。
【0055】
1次防壁2は、しわの形状が第1曲率半径R1と第2曲率半径R2を有するように形成されてもよい。即ち、本実施例の1次防壁2は平面部21と曲面部22の間の境界部23において第1曲率半径R1をなし、曲面部22が第2曲率半径R2をなす2種類の曲率半径R1、R2を有するように形成されることができる。例えば、第1曲率半径R1は第2曲率半径R2より小さく形成されてもよい。曲率半径R1、R2を有する1次防壁2は上部が緩やかな曲線をなすため、溶接検査に容易であり、また、横から打撃する流体がすぐ流れるため、スロッシングにも柔軟に対応できる。これに関しては図32図39を参照してより詳細に説明する。
【0056】
また、本実施例の1次防壁2は、ラージコルゲーション(Large corrugation)とスモールコルゲーション(Small corrugation)の区分なく全地域において水平及び垂直のしわの大きさが同一に形成されてもよい。即ち、1次防壁2の全体において水平及び垂直のしわの大きさが同一であるため、1次防壁の作製が容易である。
【0057】
図1を参照すると、1次断熱壁3は、外部からの熱侵入を遮断しながら外部からの衝撃または内部での液化ガススロッシングによる衝撃に耐えられるように設計され、1次防壁2と2次防壁4との間に設けられてもよい。
【0058】
1次断熱壁3は、1次防壁2の外側に1次プライウッド31と1次断熱材32が順に積層された構造であってもよく、1次プライウッド31の厚さと1次断熱材32の厚さを合わせた厚さに該当することができる。1次断熱壁3は160mm~250mmの厚さに形成されることができる。
【0059】
1次プライウッド31は1次防壁2と1次断熱材32との間に設けられてもよい。
【0060】
1次プライウッド31は6.5mm~15mmの厚さに形成されてもよい。
【0061】
1次断熱材32は、外部からの熱侵入を遮断しながら外部からの衝撃または内部での液化ガススロッシングによる衝撃に耐えられるように、断熱性能に優れ、且つ機械的強度に優れた材質で形成されることができる。
【0062】
1次断熱材32は1次プライウッド31と2次防壁4の間にポリウレタンフォームで形成されてもよく、150mm~240mmの厚さ範囲に該当することができる。
【0063】
図1を参照すると、1次断熱壁3の一部、2次防壁4及び2次断熱壁5が積層されて単位要素を構成することができる。ここで、単位要素を構成する1次断熱壁3の一部は固定断熱壁3bと定義することができ、幅は単位要素に含まれた2次断熱壁5の幅より小さい幅を有することができる。なお、固定断熱壁3b、2次防壁4及び2次断熱壁5は既に固定された状態で配置されてもよいが、これに限定されず、それぞれが分離されて液化ガス貯蔵タンク1内に配置されてもよい。これにより、1次断熱壁3の両側に2次防壁4の一部が露出することができる。単位要素は隣り合って配置されてもよく、このとき、隣り合う1次断熱壁3の間の空間部分、即ち、2次防壁4が露出する空間部分には連結断熱壁3aが設けられてもよい。
【0064】
2次防壁4はメイン防壁41と補助防壁42に区分されてもよく、メイン防壁41は単位要素の2次断熱壁5の上部に設けられ、補助防壁42は露出するメイン防壁41と連結断熱壁3aとの間に設けられる。このとき、補助防壁42は互いに隣接する単位要素に設けられたメイン防壁41を互いに連結するように設けられる。即ち、隣り合って配置される単位要素はメイン防壁41に積層される補助防壁42及び連結断熱壁3aによって仕上げられてもよい。
【0065】
連結断熱壁3aが設けられる部分の積層構造は図2をもって説明する。連結断熱壁3aは、単位要素を構成する1次断熱壁3で説明したものと同一または類似する連結プライウッド31aと連結断熱材32aとが積層された形態で設けられてもよく、本明細書における1次断熱壁3は連結断熱壁3a及び固定断熱壁3bを包括することができる。
【0066】
図2図1のA-A’面の断面構造を示しており、連結断熱壁3aは連結プライウッド31aと連結断熱材32aが積層された構造を有することができる。連結断熱壁3aの厚さは連結プライウッド31aの厚さと連結断熱材32aの厚さを合わせた厚さに該当することができる。
【0067】
連結プライウッド31aは6.5mm~15mmの厚さに形成されてもよい。
【0068】
連結断熱材32aは連結プライウッド31aと2次防壁4の補助防壁42との間にポリウレタンフォームで形成されてもよく、150mm~240mmの厚さ範囲に該当することができる。
【0069】
上記のように、1次断熱壁3の1次断熱材32と連結断熱壁3aの連結断熱材32aは厚さが同じであってもよい。ただし、連結断熱壁3aの連結断熱材32aの場合、下部に2次防壁4のメイン防壁41に加えて補助防壁42がさらに積層されるため、連結断熱壁3aの連結断熱材32aは1次断熱壁3の1次断熱材32の厚さより補助防壁42の厚さ分だけ小さい厚さであることができる。
【0070】
上記の連結断熱壁3aは、単位要素を隣り合って配置したとき、隣り合う2次断熱壁5の間に生じる空間部分を補助防壁42とともに密封して外部からの熱侵入を遮断する役割をするように設けられる。
【0071】
ところが、連結断熱壁3aは、単位要素を構成する隣り合う固定断熱壁3bの間に挿入設置される構造であるため、連結断熱壁3aの下部の2次防壁4を極低温から保護するには脆弱である。これにより、メイン防壁41と補助防壁42が重なる連結断熱壁3aの下部の2次防壁4で問題が発生する可能性が高い。よって、以下では連結断熱壁3aを中心に説明する。
【0072】
2次防壁4は断熱壁3aを包括する1次断熱壁3と2次断熱壁5との間に設けられてもよく、1次防壁2とともに液化ガスが外部に漏れるのを防止することができる。
【0073】
固定断熱壁3bの下端の2次防壁4は単一防壁であってメイン防壁41を含み、連結断熱壁3aの下端の2次防壁4は、単位要素を互いに連結するメイン防壁41と、単位要素を構成する2次断熱壁5上に設けられる補助防壁42と、を含んでもよい。
【0074】
メイン防壁41は単位要素を構成する2次断熱壁5上に設けられ、0.6mm~1.0mmの厚さに形成されてもよく、互いに隣接するメイン防壁41は補助防壁42が積層されて気密となることができる。
【0075】
補助防壁42は単位要素を互いに連結する構成であり、0.6mm~1.0mmの厚さに形成されてもよく、メイン防壁41上に積層されることができる。
【0076】
一方、図1及び図2を参照すると、2次断熱壁5は、固定断熱壁3b及び連結断熱壁3aとともに外部からの熱侵入を遮断しながら外部からの衝撃または内部での液化ガススロッシングによる衝撃に耐えられるように設計されることができる。また、2次断熱壁5は2次防壁4と船体7との間に設けられてもよく、2次断熱材51と2次プライウッド52を含んで構成されてもよい。
【0077】
2次断熱壁5は2次防壁4の外側に2次断熱材51と2次プライウッド52が順に積層された構造であってもよく、2次断熱材51の厚さと2次プライウッド52の厚さを合わせた全厚が150mm~240mmに形成されることができる。
【0078】
2次断熱材51は、外部からの熱侵入を遮断しながら外部からの衝撃または内部での液化ガススロッシングによる衝撃に耐えられるように、断熱性能に優れ、且つ機械的強度に優れた材質で形成されることができる。
【0079】
2次断熱材51は、2次防壁4と2次プライウッド52との間にポリウレタンフォームで形成されてもよく、140mm~230mmの厚さに形成されることができる。
【0080】
2次プライウッド52は2次断熱材51と船体7との間に設けられてもよい。例えば、2次断熱材51は2次プライウッド52と接して設けられてもよい。2次プライウッド52は6.5mm~25mmの厚さに形成されることができる。
【0081】
上記のように、本実施例による液化ガス貯蔵タンク1は、1次断熱壁3が2次断熱壁5の66%~166%の厚さを有し、1次断熱壁3に包括される連結断熱壁3aが2次断熱壁5の67%~167%の厚さを有するようにして、連結断熱壁3aが2次断熱壁5と同一または類似する厚さとなるように構成することができる。このような構成と関連するように連結断熱壁3aの連結断熱材32aが2次断熱材51の90%~110%の厚さを有するようにして、連結断熱壁3aの連結断熱材32aが2次断熱材51と同一または類似する厚さとなるように構成することができる。本実施例では、連結断熱壁3aを包括すると、単位要素を構成する固定断熱壁3bの部分に対しては詳細は言及しないが、2次断熱壁5との関係においては固定断熱壁3bも連結断熱壁3aと同一または類似する。
【0082】
このような厚さ比率で連結断熱壁3aと2次断熱壁5または連結断熱壁3aの連結断熱材32aと2次断熱材51を形成すると、2次防壁4の低温における応力の上限値は連結断熱壁3aの下部で50MPa以下に該当することができる。また、具体的には、2次防壁4の低温における応力値は連結断熱壁3aの下部において40MPa~50MPaであってもよい。このような数値は後述する構造解析の結果によって得られたものである。
【0083】
本実施例では、連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さまたは1次断熱壁3の連結断熱材32aと2次断熱材51の厚さが同一または類似するように構成したが、これに関しては図4図20をもって説明する。
【0084】
図4の(a)、(b)は、1次断熱壁3に包括される連結断熱壁3a及び2次断熱壁5の厚さ変化による連結断熱壁3aの下部における2次防壁4の引張力を示す図である。図4の(a)及び(b)において連結断熱壁3a、2次防壁4、2次断熱壁5などを合わせた全厚は同一であると仮定する。
【0085】
一方、2次防壁4及び2次断熱壁5は露出する温度によって自己収縮量に差が生じるが、2次防壁4及び2次断熱壁5の場合、連結断熱壁3aの厚さが薄くなるほど、極低温の液化ガスの冷熱による影響を多く受けることができる。また、この場合、自己温度が低くなって収縮量そのものが増加して低温での応力が増加し、2次防壁4が損傷する危険性が高くなるという問題がある。この問題は、特に、連結断熱壁3aの下部において互いに隣接する単位要素に設けられたメイン防壁41をボンディングなどで相互連結する補助防壁42において多く発生し得る。連結断熱壁3aの下部において補助防壁42は両端が各単位要素のメイン防壁41に連結されているが、これは単位要素の2次断熱壁5が収縮することにより補助防壁42の両端が互いに遠くなったり近くなるように変形され得るためである。
【0086】
図4の(a)を参照すると、連結断熱壁3aが2次断熱壁5より相対的に薄く形成され、2次防壁4の高さが厚さ方向を基準として全厚の中心から上方に位置する場合が示されている。このとき、船体7の6自由度運動により船体が構造的に変形されるときに2次防壁4に加わる機械的応力を減らすために、2次断熱壁5の厚さを大きく確保することで、2次断熱壁5の厚さを連結断熱壁3a対比で相対的に厚くすることができる。
【0087】
図4の(b)を参照すると、連結断熱壁3a及び2次断熱壁5の厚さが類似するように形成されて、2次防壁4の高さが厚さ方向を基準として全厚の中心領域に位置する場合が示されている。ここで、中心領域は全厚の40%~60%の範囲に該当することができる。この場合、図4の(a)と比較して、収縮量そのものが減少して低温でのストレスが減少するようになる。また、図4の(a)と比較して、2次防壁の損傷リスクが相対的に低くなる。
【0088】
本発明では、2次断熱壁5の機械的強度を一定レベルに保持しながら2次防壁4の低温負担及びスロッシング負担を減らせる液化ガス貯蔵タンク1を導出しており、以下、図5図20を参照した説明によって理解できるであろう。
【0089】
図5図20は、上記の本実施例による液化ガス貯蔵タンク1の連結断熱壁3aを包括する1次断熱壁3及び2次断熱壁5の厚さを導出するために、第1ケース(図5図8)、第2ケース(図9図12)、第3ケース(図13図16)、第4ケース(図17図20)毎に連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。本実施例では、連結断熱壁3aの厚さを中心に説明するが、1次断熱壁3の厚さも連結断熱壁3aと同一または類似する。
【0090】
各ケースごとに構造解析を行うに当たり、解析条件は以下の通りである。
【0091】
第1に、解析モデルである第1ケース~第4ケースの連結断熱壁3aと2次断熱壁5の全厚を400mmと同様に適用した。
【0092】
第2に、連結断熱壁3aと2次断熱壁5のそれぞれの厚さを異ならせることで2次防壁4の位置だけが変わるようにした。
【0093】
第3に、同じ線形温度分布条件を考慮して1次防壁2の位置の温度を液化ガスの温度である-163℃とし、船体7の位置の温度を常温である20℃とした。
【0094】
第4に、厚さ比率は全厚(400mm)のうち連結断熱壁3aの厚さが占める割合とした。
【0095】
上記のような解析条件で解析モデルである第1ケース~第4ケースの構造解析を行った。
【0096】
図5図8は、本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁3に包括される連結断熱壁3a及び2次断熱壁5の厚さを導出するために第1ケースの連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
【0097】
第1ケースは、図5に示すように、連結断熱壁3aの厚さを100mmとし、2次断熱壁5の厚さを300mmと形成したケースである。即ち、第1ケースは、連結断熱壁3aと2次断熱壁5の全厚(400mm)のうち連結断熱壁3aの厚さが占める割合が0.25であり、2次防壁4が連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚の中心から上端である1次防壁2側に近く位置する。
【0098】
このような第1ケースの場合、図6図8に示すように、構造解析の結果、単位要素が隣り合って配置された状態で、隣り合う2次断熱壁5の間に対応する2次防壁4の応力値は70.12MPaと算出された。
【0099】
第1ケースの場合に2次防壁4で応力が発生する理由は図4から分かる。即ち、連結断熱壁3aの厚さが薄くなることで、2次防壁4で液化ガスの冷熱に大きく影響を受けるからである。
【0100】
図9図12は、本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁3に包括される連結断熱壁3a及び2次断熱壁5の厚さを導出するために実施した第2ケースの連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
【0101】
第2ケースは、図9に示すように、連結断熱壁3aの厚さを160mmとし、2次断熱壁5の厚さを240mmと形成したケースである。即ち、第2ケースは、連結断熱壁3aと2次断熱壁5の全厚(400mm)のうち連結断熱壁3aの厚さが占める割合が0.4であり、2次防壁4が連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚の中心から1次防壁2側に若干偏って位置する。
【0102】
このような第2ケースの場合、図10図12に示すように、構造解析の結果、単位要素が隣り合って配置された状態で、隣り合う2次断熱壁5の間に対応する2次防壁4の応力値は55.09MPaと算出された。
【0103】
図13図16は、本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁3に包括される連結断熱壁3a及び2次断熱壁5の厚さを導出するために実施した第3ケースの連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
【0104】
第3ケースは、図13に示すように、連結断熱壁3aの厚さと2次断熱壁5の厚さを同一または類似するように形成したケースである。即ち、第3ケースは、連結断熱壁3aと2次断熱壁5の全厚(400mm)のうち連結断熱壁3aの厚さが占める割合が約0.5であり、2次防壁4が連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚の中心に隣接して位置する。
【0105】
このような第3ケースの場合、図14図16に示すように、構造解析の結果、単位要素が隣り合って配置された状態で、隣り合う2次断熱壁5の間に対応する2次防壁4の応力値は47.63MPaと算出された。
【0106】
図17図20は、本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次断熱壁3に包括される連結断熱壁3a及び2次断熱壁5の厚さを導出するために実施した第4ケースの連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを異ならせて構造解析を行った結果を示す図である。
【0107】
第4ケースは、図17に示すように、連結断熱壁3aの厚さを240mmとし、2次断熱壁5の厚さを160mmと形成したケースである。即ち、第4ケースは、連結断熱壁3aと2次断熱壁5の全厚(400mm)のうち連結断熱壁3aの厚さが占める割合が0.6であり、2次防壁4が連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚の中心から下側に位置する。
【0108】
このような第4ケースの場合、図18図20に示すように、構造解析の結果、単位要素が隣り合って配置された状態で、隣り合う2次断熱壁5の間に対応する2次防壁4の応力値は41.21MPaと算出された。
【0109】
上記のように、第1ケース~第4ケースそれぞれの構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部の2次防壁4は、1次防壁2から遠くなるほど熱収縮による低温応力が減少する傾向を示すことが分かる。図21を参照して説明する。
【0110】
図21は、1次断熱壁と2次断熱壁の厚さ変化による2次防壁の低温ストレスと船体の脆性破壊の確率との関係を示す図である。
【0111】
図21に示すグラフのように、第1ケース~第4ケースだけでなく、連結断熱壁3aの下部の2次防壁4は1次防壁2から遠くなるほど、低温における熱収縮による応力値が減少することを予測することができる。即ち、連結断熱壁3aの下部の2次防壁4は1次防壁2から遠くなるほど、温度が近いときと比べて相対的に高くなるため、収縮が小さくなり応力が減少することが分かる。本実施例では、連結断熱壁3aの下部の2次防壁4を中心に説明するが、単位要素を構成する固定断熱壁3bの下部の2次防壁4も、1次防壁2から遠くなるほど応力が減少することは明らかである。連結断熱壁3aの下部の2次防壁4はメイン防壁41と補助防壁42が積層された状態であり、1次断熱壁3の下部の2次防壁4はメイン防壁41のみで構成されている。
【0112】
このように導出された本実施例の液化ガス貯蔵タンク1は、連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚において連結断熱壁3aの厚さを増加させることで、2次防壁4が受ける温度が上昇(極低温の液体ガスからの冷熱による影響力減少)するようになる。これにより、2次防壁4そのものの冷熱による収縮が減少し、冷熱による応力が減少することで、冷熱による2次防壁4の損傷を防止することができる。このような原理は連結断熱壁3aを包括すると定義した1次断熱壁3の下部の2次防壁4にも適用される。
【0113】
また、2次防壁4は連結断熱壁3a及び固定断熱壁3bの厚さが増加することにより(2次断熱壁5の厚さが相対的に減少する)、2次防壁4に伝達されるスロッシング荷重及び流体動荷重が低くなり、スロッシングによる応力が減少することで、スロッシングによる損傷を防止することができる。また、2次断熱壁5の厚さが薄くなることにより(1次断熱壁3の厚さは相対的に厚くなる)、2次防壁4の水平(flatness)を合わせることが容易になる。
【0114】
また、連結断熱壁3a及び固定断熱壁3bの厚さが増加することにより、2次断熱壁5の厚さが相対的に減少して1次防壁2から相対的に遠くなるため、2次断熱壁5の冷熱による収縮力も減少し、2次断熱壁5の収縮力の減少により2次防壁4の引張力が減少するため、2次防壁4は2次断熱壁5の収縮力による損傷を防ぐことができる。
【0115】
このような2次防壁4の低温ストレスを考慮すると、本発明では、連結断熱壁3a及び2次断熱壁5を合わせた厚さにおいて連結断熱壁3aが40%以上に該当するように配置させることができる。好ましくは、本発明の液化ガス貯蔵タンク1は第2ケース~第4ケースの範囲、即ち、連結断熱壁3aが連結断熱壁3a及び2次断熱壁5を合わせた厚さにおいて40%~60%に該当するように配置することができる。より好ましくは、本発明の液化ガス貯蔵タンク1は第3ケースの範囲、即ち、連結断熱壁3aが連結断熱壁3a及び2次断熱壁5を合わせた厚さに対して47%~53%に該当するように配置することができる。
【0116】
しかし、連結断熱壁3a及び1次断熱壁3の厚さを増加させると、2次断熱壁5の厚さが相対的に減少するため、2次断熱壁5は船体7の6自由度運動によって船体7が構造的に変形するときに加えられる機械的応力に脆弱となり、これによって2次断熱壁5を介して2次防壁4に伝達される機械的応力の程度が大きくなる。
【0117】
また、液化ガスが積載された状態で、1次防壁2が割れるなどの緊急事態(emergency condition)が発生することがある。この場合、1次防壁2がこれ以上液化ガスの漏れを防止することができなくなるため、2次防壁4に液化ガスが接することができる。また、2次防壁4が極低温の液化ガスに接すると、船体(hull)の温度が低くなり、脆性破壊の確率が高くなり得る。また、低温になるほど船体の材料強度は高くなり、これにより脆性問題が発生するため、脆性破壊の確率が高くなり得る。ここで、脆性破壊(brittle fracture)は塑性変形がほとんどなく発生する突然の破壊に該当し、脆性亀裂(brittle crack)と理解することができる。
【0118】
これに関連して、図21を参照すると、緊急事態において、第1ケースから第4ケースになるほど極低温の液化ガスが接する2次防壁4が船体に近くなるため、脆性破壊の確率は増加する。即ち、図21において、船体の脆性破壊の確率は、第1ケースから第4ケースになるほど、即ち、2次断熱壁5の厚さ対比で連結断熱壁の厚さが増加するほど高くなる。また、第4ケースを超えて連結断熱壁3aの厚さがさらに厚くなると、脆性破壊の確率は1に近づき、船体は亀裂(crack)または分裂されることがある。
【0119】
従って、液化ガス貯蔵タンク1の断熱システムは、上述した低温ストレスだけでなく、船体の亀裂または破壊リスクまで考慮して配置されるべきである。本発明では、2次防壁4が連結断熱壁3aと2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚の中心領域に位置する第2ケース~第4ケースが低温ストレス及び船体亀裂の側面をすべて考慮すると、適切であることができる。好ましくは、第3ケースが低温ストレス及び船体亀裂の機械的側面において適切であると判断することができる。
【0120】
従って、本発明は、連結断熱壁3a及び1次断熱壁3の厚さを確保して2次防壁4の低温応力を減少させるが、2次断熱壁4の厚さを適切に設けて船体7と2次防壁4の間の間隔を確保することで、2次防壁4の船体7から伝達される構造的応力に対する負担を減らせる第2ケースから第4ケースが適切な実施例であることができる。また、このうち第3ケースが低温ストレス及び機械的強度の側面を全て考慮すると、好ましい実施例に該当する
【0121】
上記の第1ケース~第4ケースと類似または同じ構造解析の条件で、1次断熱壁3及び2次断熱壁5の厚さ変化による連結断熱壁3aの下部の応力変化を[表1]に示す。ここで、連結断熱壁3aは、上述したように1次断熱壁3に包括される断熱壁であってもよいため、下記[表1]における1次断熱壁3の厚さは連結断熱壁3aの厚さであることができる。また、連結断熱壁3aの下部の応力変化は連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力変化であることができる。
【0122】
以下において、[表1]を参照して説明する実施例1~実施例5及び比較例1~比較例3は、上述した例示(第1ケース~第4ケース)と同じ数値を使用しても必ずしも同じ例示を意味するものではない。
【0123】
【表1】
【0124】
[表1]に示すように、実施例1は1次断熱壁3の厚さを160mmとし、2次断熱壁5の厚さを240mmとした場合であり、このような実施例1は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が55.09MPaと算出された。
【0125】
実施例2は、1次断熱壁3の厚さを180mmとし、2次断熱壁5の厚さを220mmとした場合であり、このような実施例2は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が51.08MPaと算出された。
【0126】
実施例3は、1次断熱壁3の厚さを200mmとし、2次断熱壁5の厚さを200mmとした場合であり、このような実施例3は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が47.63MPaと算出された。
【0127】
実施例4は、1次断熱壁3の厚さを220mmとし、2次断熱壁5の厚さを180mmとした場合であり、このような実施例4は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が44.13MPaと算出された。
【0128】
実施例5は、1次断熱壁3の厚さを240mmとし、2次断熱壁5の厚さを160mmとした場合であり、このような実施例5は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が41.21MPaと算出された。
【0129】
比較例1は、1次断熱壁3の厚さを100mmとし、2次断熱壁5の厚さを300mmとした場合であり、このような比較例1は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が70.12MPaと算出された。
【0130】
比較例2は、1次断熱壁3の厚さを300mmとし、2次断熱壁5の厚さを100mmとした場合であり、このような比較例2は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が34.29MPaと算出された。
【0131】
比較例3は、1次断熱壁3の厚さを140mmとし、2次断熱壁5の厚さを260mmとした場合であり、このような比較例3は、構造解析の結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が59.52MPaと算出された。
【0132】
上記の実施例1~実施例5は、1次断熱壁3の厚さを160mmから240mmに増加させ、相対的に2次断熱壁5の厚さを240mmから160mmに減少させながら構造解析した結果、連結断熱壁3aの下部層である2次防壁4の応力値が55.09MPaから41.21MPaに変化しており、液化ガス貯蔵タンク1の低温ストレス及び船体7の亀裂の側面をすべて考慮すると、このような厚さ範囲及び応力値において適切であった。
【0133】
しかし、比較例1~比較例3の場合は、1次断熱壁3と2次断熱壁5の厚さが何れか一方に偏り、液化ガス貯蔵タンク1の低温ストレス及び船体7の亀裂の側面をすべて考慮すると、液化ガス貯蔵タンク1の断熱システムとして適用するには好ましくない。
【0134】
一方、2次防壁4の素材は多様に構成されてもよく、これに関しては図22図24において説明する。
【0135】
図22図23及び図24は本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの2次防壁に対する様々な構成を説明するための図である。
【0136】
図22に示すように、2次防壁4は、ガラスクロス(GC)/アルミニウムホイル(AF)/ガラス-アラミドクロス(GAC)が積層された3層構造の第1素材で形成されてもよい。
【0137】
ガラス-アラミドクロス(GAC)はガラスクロス(Glass Cloth)にアラミド(Aramid)素材を適用したもので、ガラス繊維(Glass fiber)の2本当たりにアラミド1本を混合して製造することができる。
【0138】
このような第1素材は2次防壁4の補助防壁42に適用されてもよいが、これに限定されず、2次防壁4のメイン防壁41にも適用できることは言うまでもない。
【0139】
図23に示すように、2次防壁4は、ガラスクロス(GC)/アルミニウムホイル(AF)/ガラスクロス(GC)/アルミニウムホイル(AF)/ガラスクロス(GC)が積層された5層構造の第2素材で形成されてもよい。
【0140】
このような第2素材は2次防壁4のメイン防壁41に適用されてもよいが、これに限定されず、2次防壁4の補助防壁42にも適用できることは言うまでもない。
【0141】
図24に示すように、2次防壁4は玄武岩から抽出される無機質系バサルト(Basalt)クロスを利用したものであり、バザルトクロス(BC)/アルミニウムホイル(AF)/バザルトクロス(BC)が積層された3層構造の第3素材で形成されてもよい。
【0142】
このような第3素材は2次防壁4であるメイン防壁41に適用されてもよいが、これに限定されず、2次防壁4である補助防壁42にも適用できることは言うまでもない。
【0143】
図22図24で説明したように、本実施例の2次防壁4は第1部材/アルミニウムホイル(AF)/第2部材が積層された多層構造の様々な素材で形成されてもよい。このとき、第1部材及び第2部材の少なくとも1つはガラスクロス(GC)、ガラス-アラミドクロス(GAC)、バザルトクロス(BC)またはガラスクロス(GC)/アルミニウムホイル(AF)/ガラスクロス(GC)であってもよい。
【0144】
また、2次防壁4に適用される様々な素材は2次防壁4のメイン防壁41と補助防壁42に様々な組み合わせで適用されてもよい。
【0145】
図25は本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの直角コーナー構造を説明するための一部断面図であり、図26は本発明の第1実施例による液化ガス貯蔵タンクの鈍角コーナー構造を説明するための一部断面図である。
【0146】
上述した図5図20において、連結断熱壁3aまたは1次断熱壁3の厚さと2次断熱壁5の厚さが同一または類似する範囲内で形成される場合、より安定した断熱システムを有することが確認された。例えば、同一または類似する範囲は、2次防壁4の位置が連結断熱壁3aまたは1次断熱壁3と2次断熱壁5の厚さを合わせた全厚において40%~60%に位置する場合であることができる。このような構成は、図25に示す液化ガス貯蔵タンク1の直角コーナー構造と図26に示す液化ガス貯蔵タンク1の鈍角コーナー構造にも同様に適用することができる。
【0147】
しかし、液化ガス貯蔵タンク1の直角コーナー構造及び鈍角コーナー構造では2次防壁4が曲線に形成され、曲線に形成されると、直線部分対比で周辺環境による荷重に脆弱となるが、本実施例はこのような荷重による応力を緩和させることができる。また、本実施例は船体変形吸収に容易であることができる。
【0148】
図25を参照すると、直角コーナー構造における2次防壁4は、1次断熱壁3の厚さが第1ケース及び第2ケースよりも厚くなることにより、曲率半径が1次断熱壁3の厚さに対して25%以上、例えば、25%~50%を占めることになる。
【0149】
また、直角コーナー構造における2次防壁4は、1次断熱壁3の厚さが第1ケース及び第2ケースよりも厚くなることにより、既存の薄い厚さの1次断熱壁に比べて船体7側に移動するようになる。この場合、曲率半径が大きくなり、曲率半径が大きくなることで2次防壁4が2次断熱壁5に接着されない部分(secondary Barrier scab part not glued)の長さL1も増加する。これは、直角コーナー構造における2次防壁4の柔軟性(flexibility)の増加を意味し、これにより直角コーナー構造における2次防壁4は周辺部の変形吸収、例えば、船体変形吸収が容易になり、低温応力も減少する。例えば、接着されない部分の長さL1は100mm~200mmであってもよい。
【0150】
図26を参照すると、鈍角コーナー構造における2次防壁4は、1次断熱壁3の厚さが第1ケース及び第2ケースよりも厚くなることにより、曲率半径が1次断熱壁3の厚さに対して15%以上、例えば、15%~35%を占めることになる。
【0151】
また、鈍角コーナー構造における2次防壁4は、1次断熱壁3の厚さが第1ケース及び第2ケースよりも厚くなることにより、既存の薄い厚さの1次断熱壁に比べて船体7側に移動するようになって曲率半径が大きくなる。この場合、2次防壁4の曲率半径が大きくなることで2次防壁4が2次断熱壁5に接着されない部分(secondary Barrier scab part not glued)の長さL2も増加する。これは、鈍角コーナー構造における2次防壁4の柔軟性(flexibility)の増加を意味し、これにより鈍角コーナー構造における2次防壁4は周辺部の変形吸収、例えば、船体変形吸収が容易になり、低温応力も減少する。例えば、本実施例は、2次防壁4が2次断熱壁5に接着されない部分の長さL2が50mm~100mm、好ましくは50mm超過から100mm未満であってもよい。
【0152】
1次断熱壁3の厚さを増加させることにより長くなる2次防壁4の接着されない部分の長さL2の変化による2次防壁4の応力変化値を下記[表2]及び図40に示す。
【0153】
【表2】
【0154】
[表2]及び図40に示すように、接着されない部分の長さL2が増加するほど、2次防壁4の応力変化値が低くなることが分かり、これは接着されない部分の長さL2が増加するほど、鈍角コーナー構造における2次防壁4の柔軟性(flexibility)が増加することを意味する。本発明の場合、1次断熱壁3の厚さを2次断熱壁5の厚さと同一または類似する厚さに形成することができるため、比較例4だけでなく、実施例6~実施例10のように接着されない部分の長さL2の長い2次防壁4を形成することができる。
【0155】
上記のように、本発明の直角コーナー構造及び鈍角コーナー構造における2次防壁4は、相対的に薄い厚さに形成される1次断熱壁の直角コーナー構造及び鈍角コーナー構造対比で既存の2次防壁に加わる低温での応力が減少することができる。また、接着されない部分が増加して、船体変形吸収も容易である。
【0156】
図27は液化ガス貯蔵タンクの1次断熱材及び2次断熱材の使用材質による熱伝導度を示すグラフである。
【0157】
上記の本発明の実施例による液化ガス貯蔵タンク1において、連結断熱壁3a及び1次断熱壁3の1次断熱材32、32a及び2次断熱壁5の2次断熱材51のそれぞれは、全て同じ材質のポリウレタンフォームで形成されることを説明したが、必要に応じて選択的に材質が異なるポリウレタンフォームを使用してもよい。
【0158】
具体的には、強化ポリウレタンフォーム(RPUF)は、ポリオール(Polyol)、イソシアネート(isocyanate)、発泡剤(blowing agent)を混合して作製されるが、発泡剤としてHFC-245faまたはCO2が用いられてもよい。HFC-245faがCO2に比べて相対的に高価であることができる。
【0159】
本実施例の場合、1次断熱材32、32aを発泡剤としてCO2を用いた強化ポリウレタンフォームで形成し、2次断熱材51を発泡剤HFC-245faを用いた強化ポリウレタンフォームで形成する。
【0160】
発泡剤HFC-245faと発泡剤CO2の熱伝導度特性を図27のグラフを参照してみると、発泡剤HFC-245faは発泡剤CO2と比較して常温では熱伝導度値が低いが、極低温になるほど、同一または類似する値を示す。
【0161】
即ち、発泡剤HFC-245faと発泡剤CO2の熱伝導度値は、-80℃を起点として以下の温度では同一または類似する値を示し、それ以上の温度では発泡剤HFC-245faが発泡剤CO2より低い値を示す。
【0162】
従って、本実施例では、相対的に高価の発泡剤HFC-245faを1次断熱材32、32aと2次断熱材51の両方に使用せず、経済的な側面を考慮して、相対的に極低温に近い1次断熱材32、32aを発泡剤としてCO2を用いた強化ポリウレタンフォームで形成し、2次断熱材51を発泡剤HFC-245faを用いた強化ポリウレタンフォームで形成することができる。
【0163】
図28は本発明の第2実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部断面図であり、図29は本発明の第2実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部斜視図である。
【0164】
図28図29に示すように、本発明の第2実施例による液化ガス貯蔵タンク1は、内部で液化ガスと接触する1次防壁2と、1次防壁2の外側に設けられる1次断熱壁3及び連結断熱壁3aと、1次断熱壁3及び連結断熱壁3aの外側に設けられる2次防壁4と、2次防壁4の外側に配置されて船体7に固定される2次断熱壁5と、を含んで構成されてもよく、上述した第1実施例と比較して連結断熱壁3aの構成が異なり、その他の構成は同一または類似するため、以下では重複する説明を避けるために異なる部分についてのみ説明する。
【0165】
本実施例は、上述した第1実施例と比較して連結断熱壁3aの構成が異なることができる。
【0166】
具体的には、上述した第1実施例と比較して、連結断熱壁3aは補助断熱板33をさらに含んでもよい。
【0167】
即ち、連結断熱壁3aは、連結プライウッド31a、連結断熱材32a、補助断熱板33が積層される構造からなってもよい。
【0168】
補助断熱板33は5mm~10mmの厚さであってもよく、プライウッドや高密度ポリウレタンフォーム(HD PUF)、FRP(Fiber Reinforced Plastic)などで設けられて、2次防壁4の荷重分散効果を得ることができる。または、補助断熱板33は断熱特性に優れたVIP(Vacuum Insulation Panel)、LD PUFなどで設けられて連結断熱壁3aが形成される部分における断熱脆弱性を補うことができる。
【0169】
連結断熱壁3aの連結断熱材32aと単位要素を構成する固定断熱壁3bの1次断熱材32は同じ厚さであってもよい。ただし、連結断熱壁3aの場合、下部に2次防壁4のメイン防壁41に加えて補助防壁42がさらに積層され、また、補助断熱板33を含むため、連結断熱壁3aの連結断熱材32aの厚さは、補助防壁42の厚さ及び補助断熱板33の厚さ5mm~10mm分だけ1次断熱壁3の1次断熱材32より小さい厚さであってもよい。
【0170】
上記した補助断熱板33は連結断熱壁3aの連結断熱材32aの下部だけでなく、単位要素を構成する1次断熱壁3の1次断熱材32の下部にも設けられることは言うまでもない。
【0171】
図30は本発明の第3実施例による液化ガス貯蔵タンクを説明するための一部断面図であり、図31は本発明の第3実施例による液化ガス貯蔵タンクの主要部分に対する拡大図である。
【0172】
図30図31に示すように、本発明の第3実施例による液化ガス貯蔵タンク1は、内部で液化ガスと接触する1次防壁2と、1次防壁2の外側に設けられる1次断熱壁3及び連結断熱壁3aと、1次断熱壁3及び連結断熱壁3aの外側に設けられる2次防壁4と、2次防壁4の外側に配置されて船体7に固定される2次断熱壁5と、2次断熱壁5と船体7の間に設けられるレベリング部材8と、2次断熱壁5を船体7に固定する固定部材9と、を含んで構成されてもよく、上述した第1実施例と比較してレベリング部材8と固定部材9が異なり、その他の構成は同一または類似するため、以下では重複する説明を避けるために、第1実施例と異なる構成要素であるレベリング部材8及び固定部材9と、これによって異なる部分についてのみ説明する。
【0173】
レベリング部材8は2次断熱壁5と船体7の間に設けられてもよい。
【0174】
レベリング部材8は、船体7の変形部位の水平を合わせることができ、タンクの断熱性能を向上させ、2次断熱壁5を支持することができる非接着弾性断熱材であってEPS(Expanded Polystyrene)などであってもよい。
【0175】
このようなレベリング部材8は、弾性力によって2次断熱壁5に密着される上面は平坦になり、船体7に密着される下面は船体7の変形に合うように曲面であることができる。船体7の変形は、例えば、船体7のブロック間の溶接時に発生し得る。
【0176】
即ち、レベリング部材8は既存のマスティックとレベリングウェッジを使用しなくても船体の変形部位の水平を合わせることができる。ここで、レベリングウェッジは選択的に使用できることは言うまでもない。
【0177】
本実施例は、上記のようなレベリング部材8を適用することにより、ギャップ(gap)の大きさに応じて様々なタイプで塗布する既存のマスティックとは異なって、単一大きさで施工が可能であり、マスティックの硬化時間が必要ないため、作業時間を短縮することができ、断熱材を適用することで、保温力を増加させることができる。
【0178】
固定部材9は2次断熱壁5を船体7に固定できるように、突出部91とスタッドボルト92を含むクリート(cleat)構造からなることができる。
【0179】
突出部91は、2次断熱壁5の単位パネルの両側面の下部において外部に突出して設けられてもよく、プライウッドで形成されてもよい。
【0180】
突出部91は、一側面が2次断熱壁5の2次プライウッド52の側面と2次プライウッド52から一定高さまでの2次断熱材51の一部の側面にわたって固定設置されてもよく、下面が2次プライウッド52の下面と同じレベルを有する。
【0181】
突出部91の幅の厚さは、2次断熱壁5をなす複数の単位パネルを配置したとき、互いに対向する突出部91の間がスタッドボルト92が挿入される程度であってもよい。
【0182】
スタッドボルト92は船体7に固定されてもよい。
【0183】
スタッドボルト92は、2次断熱壁5をなす複数の単位パネルを配置したとき、隣り合う2次断熱壁5の単位パネルの間の空間に一致するように船体7に固定設置されてもよい。
【0184】
スタッドボルト92は、隣り合う2次断熱壁5の単位パネルのそれぞれの側面に設けられて対向する2つの突出部91の間に位置した状態でボルトを締め付けることにより、2次断熱壁5を船体7に固定させることができる。
【0185】
このように、本実施例は、連結断熱壁3aを包括する1次断熱壁3と2次断熱壁5の全厚において1次断熱壁3、3aの厚さを2次断熱壁5と同一または類似するように構成することで、2次断熱壁5の機械的強度を一定レベルに保持することができ、また、2次防壁4の低温負担及びスロッシング負担を減らせるため、2次防壁4の損傷を防ぐことができる。
【0186】
また、本実施例は、単位要素を構成する隣り合う1次断熱壁3の間の空間に設けられる連結断熱壁3aの下面に補助断熱板33を設けることにより、単位要素を構成する隣り合う2次断熱壁5の連結部分における断熱性能をさらに向上させることができる。
【0187】
また、本実施例は、2次防壁4の構成を改善して断熱性能を向上させることができる。
【0188】
また、本実施例は、2次断熱壁5と船体7の間に2次断熱壁5のレベリング部材8として非接着弾性断熱材を適用することにより、既存のマスティックとレベリングウェッジを使用しなくても船体7の変形部位の水平を合わせることができ、タンクの断熱性能を増大させることができる。
【0189】
また、本実施例は、2次断熱壁5の単位パネルの側面の下部に外部に突出して設けられる突出部91と、船体7に固定されるスタッドボルト92によるクリート(cleat)構造方式で隣接する2次断熱壁5の単位パネルを固定することにより、2次断熱壁5に穴を開けてスタッドボルトで単位パネルを固定する方式に比べて工数を削減することができる。
【0190】
本発明は上記で説明した実施例に限定されず、上記実施例の組み合わせまたは上記実施例のうち少なくとも何れか1つと公知技術の組み合わせをさらに他の実施例として含むことができる。例えば、図28図29の実施例を図4図27の実施例と組み合わせてもよい。さらに、例えば、図30図31の実施例を図1及び図2の断熱システムまたは図28及び図29の断熱システムと組み合わせてもよい。
【0191】
以下では、図32図39をもって上述した液化ガス貯蔵タンクの1次防壁の形状について詳細に説明する。
【0192】
図32は発明の第1、2、3の実施例による液化ガス貯蔵タンクの1次防壁の他の実施例を説明するための図であり、図33は1次防壁に対する形状を説明するための図である。
【0193】
図32図33に示すように、本発明の第1、2、3実施例による液化ガス貯蔵タンク1の1次防壁2は、図3を参照して説明した2種類の曲率半径R1、R2を有するように形成された1次防壁2と比較して断面形状が異なることができ、以下に具体的に説明する。
【0194】
図32を参照すると、1次防壁2は、1次断熱壁3の上面に接触する複数の平面部21と、温度による収縮または膨張応力(stress)の緩和のための複数の曲面部22と、からなってもよい。
【0195】
本実施例の曲面部22は、平面部21から曲面部22の上端までの高さHに対する隣り合う平面部21の間の幅Wの比率(W/H)を2.0~3.0の範囲(2.0≦W/H≦3.0)となる断面形状を有するようにし、低温による熱応力(thermal stress)だけでなく、スロッシングによる圧応力(pressure stress)負担を最小化できるようにする。
【0196】
このとき、曲面部22の幅Wは50mm~105mm、好ましくは65mm~93mm、さらに好ましくは70mm~80mmであり、曲面部22の高さHは30mm~50mm、好ましくは30mm~45mm、さらに好ましくは33mm~40mmであってもよい。
【0197】
このような複数の曲面部22は横方向と縦方向に交差するように形成されてもよく、横方向の曲面部22と縦方向の曲面部22は同じ大きさであってもよい。即ち、1次防壁2の全体において横及び縦の曲面部22の大きさが同じであるため、1次防壁の作製が容易である。
【0198】
また、複数の曲面部22は、隣り合う曲面部22の間の間隔を公知のもの(ここで、公知のものとは以下で「比較対象」という用語で用いられることがある)より広く、例えば、350mm~400mmの間隔となるようにすることができる。ここで、曲面部22の間の間隔は曲面部22の最上端地点間の間隔に該当することができる。また、1次防壁2をなす複数の単位防壁2aの大きさは、図35に示すように公知のものより大きい3:1比率、例えば、長さが3150mm~3600mmであり、幅が1,050mm~1,200mmの大きさに形成されてもよい。
【0199】
このように、本実施例の1次防壁2において曲面部22の間の間隔を広くし、単位防壁2aの大きさを大きくすることができるのは、上記した平面部21から曲面部22の上端までの高さHに対する隣り合う平面部21の間の幅Wの比率(W/H)を2.0~3.0の範囲(2.0≦W/H≦3.0)となるようにした曲面部22の断面形状によって可能であり、図36図39を参照して後述することによってさらに理解できるであろう。
【0200】
一方、図2に示すように、横方向の曲面部と縦方向の曲面部は交差するように形成されてもよい。このとき、横方向の曲面部と縦方向の曲面部はそれぞれ同じ高さと幅で形成されてもよい。
【0201】
また、曲面部22は、曲率半径が互いに異なる第1、2、3曲面部22a、22b、22cを有する断面形状に形成されてもよい。
【0202】
第1曲面部22aは、隣り合う平面部21のそれぞれに連結されて1対に形成され、第1曲率半径r1を有する。第1曲率半径r1は4mm~12mmであってもよい。
【0203】
1対の第1曲面部22aのそれぞれは、平面部21と連結される第1連結地点P1と、1対の第3曲面部22cのそれぞれと連結される第2連結地点P2との間で第1曲率半径r1を有する曲面形状であってもよい。
【0204】
ここで、第1連結地点P1は、収容空間側の第1曲率中心C1から第1曲率半径r1を有する第1円A1の最下部の曲線部分と第1円A1の縦中心線が交差する地点と同じ位置であることができる。第1曲面部22aの第1曲率中心C1は平面部21が形成する仮想の平面より上部に位置することができる。
【0205】
第2連結地点P2は、第1円A1の曲線と第1円A1の横中心線が交差する地点から下側に30度角度以内の第1円A1の曲線部分に位置することができる。
【0206】
第2曲面部22bは、曲面部22の上部をなし、少なくとも第1曲率半径r1より大きい半径の第2曲率半径r2を有する。ここで、第2曲率半径r2は7mm~15mmであってもよい。
【0207】
第2曲面部22bは、1対の第3曲面部22cの何れか1つの第3曲面部22cと連結される第3連結地点P3と、他の1つの第3曲面部22cに連結される第4連結地点P4との間で第2曲率半径r2を有する曲面形状であってもよい。
【0208】
ここで、第3連結地点P3及び第4連結地点P4のそれぞれは、収容空間の反対側の第2曲率中心C2から第2曲率半径r2を有する第2円A2の縦中心線を基準として両側に一定角度、例えば、3度から10度の間の第2円A2の曲線部分に位置することができる。第2曲面部22bの第2曲率中心C2は平面部21が形成する仮想の平面より上部に位置することができる。
【0209】
第3曲面部22cは、1対の第1曲面部22aのそれぞれと第2曲面部22bを連結する1対で形成され、少なくとも第2曲率半径r2より大きい半径の第3曲率半径r3を有する。ここで、第3曲率半径r3は25mm~45mmであってもよい。
【0210】
即ち、第1、2、3曲面部22a、22b、22cのそれぞれの第1、2、3曲率半径r1、r2、r3の大きさは、「第1曲率半径r1≦第2曲率半径r2<第3曲率半径r3」であってもよい。このとき、本実施例は、第3曲率半径r3の大きさが第2曲率半径r2の大きさと第1曲率半径r1の大きさを合わせた値より大きくてもよい。
【0211】
1対の第3曲面部22cの何れか1つの第3曲面部22cは、1対の第1曲面部22aの何れか1つの第1曲面部22aが連結される第2連結地点P2と第2曲面部22bの一側が連結される第3連結地点P3との間に第3曲率半径r3を有する曲面形状であってもよい。
【0212】
何れか1つの第3曲面部22cは、収容空間の反対側の第3曲率中心C3から第3曲率半径r3を有する第3円A3の曲線部分に設けられてもよい。
【0213】
また、1対の第3曲面部22cの他の1つの第3曲面部22cは、1対の第1曲面部22aの他の1つの第1曲面部22aが連結される第2連結地点P2と第2曲面部22bの他の1つが連結される第4連結地点P4との間に第3曲率半径r3を有する曲面形状であってもよい。
【0214】
他の1つの第3曲面部22cは、収容空間の反対側の第4曲率中心C4から第3曲率半径r3を有する第4円A4の曲線部分に設けられてもよい。
【0215】
上記において、第2、3、4連結地点P2、P3、P4のそれぞれは、1対の第3曲面部22cを基準として位置をみると、第2連結地点P2は1対の第1曲面部22aの何れか1つの第1曲面部22aの第1円A1の曲線と第3円の曲線または1対の第1曲面部22aの他の1つの第1曲面部22aの第1円A1の曲線と第4円A4の曲線が接する地点であってもよい。
【0216】
また、第3連結地点P3は第2円A2の曲線と第3円A3の曲線が接する地点であってもよい。第3連結地点P3は第3円A3の最上部の曲線部分と第3円A3の縦中心線が交差する地点と同じ位置であってもよい。
【0217】
第4連結地点P4は第2円A2の曲線と第4円A4の曲線が接する地点であってもよい。第4連結地点P4は第4円A4の最上部の曲線部分と第4円A4の縦中心線が交差する地点と同じ位置であってもよい。
【0218】
上記した1対の第3曲面部22cは、同じ大きさの第3曲率半径r3を有し、何れか1つの第3曲面部22cの第3曲率中心C3と他の1つの第3曲面部22cの第4曲率中心C4が水平方向にずれて位置することができる。また、本実施例の第3、4曲率中心C3、C4は曲面部22の内側に位置する。従って、第3、4曲率中心C3、C4は、隣り合う平面部21の間を仮想の線で連結したとき、仮想の線の上側である曲面部22の内側に位置する。即ち、第3曲面部22cの第3、4曲率中心C3、C4は平面部21が形成する仮想の平面より上部に位置することができる。
【0219】
上記のように、本実施例の曲面部22の全ての曲率中心C1、C2、C3、C4は、平面部21が形成する仮想の平面より上部に位置することができる。
【0220】
図34の(a)及び(b)は1次防壁に設けられる突出構造物を説明するための図である。
【0221】
本実施例の1次防壁2は、図34の(a)及び(b)に示すように、横の曲面部22と縦の曲面部22が交差する交差部の周辺平面部21に突出構造物24をさらに備えることができる。例えば、突出構造物24は交差部から一定距離以内に設けられてもよい。また、一定距離は、同一線上に位置する交差部間の距離において3分の1の範囲に該当することができるが、これに限定されない。
【0222】
突出構造物24は横の曲面部22と縦の曲面部22より大きさが小さく、図34の(a)に示すように凸状の円形または図34の(b)に示すように弧状など様々な形状からなってもよい。
【0223】
このような突出構造物24は、横の曲面部22と縦の曲面部22が交差する部分におけるスロッシングによる圧応力(pressure stress)の負担をさらに最小化することができる。
【0224】
図35は1次防壁の単位防壁を説明するための斜視図である。
【0225】
本実施例による1次防壁2は、隣り合う曲面部22の間の間隔を公知のものより広い350mm~400mmの間隔となるようにすることができ、これにより、図35に示すように1次防壁2をなす複数の単位防壁2aのそれぞれの大きさを公知のものより大きい3:1比率、例えば、長さが3,150mm~3,600mmで、幅が1,050mm~1,200mmの大きさに形成することができる。本実施例は、単位防壁2aの大きさを大きくすることで、既存対比で単位防壁2aの設置数を減らすことができ、1次防壁2の設置工数を削減することができる。
【0226】
また、図35に示す単位防壁2aにおいて、曲面部22の最上端部間の幅は350mm~400mmに該当することができる。ここで、曲面部22の最上端部は、図32の第2曲面部22bの最上端地点に該当することができる。これは、比較対象の単位防壁(公知の単位防壁)と比較して曲面部の最上端部間の幅が増加したものであり、比較対象の単位防壁に比べて生産及び設置の際により容易であることができる。また、本発明の実施例による単位防壁2aは、横方向の曲面部22及び縦方向の曲面部22の幅及び高さが同一であるため、比較対象の単位防壁に比べて製作コストを節減することができる。
【0227】
図36は1次防壁の曲面部の高さに対する曲面部の幅の比率(W/H)によるフォン・ミーゼス応力値(熱応力及び圧応力)の分布を示す図であり、図37は1次防壁の断面形状の最適化シミュレーションを通じた1次防壁の曲面部の高さに対する曲面部の幅の比率(W/H)による曲率半径「r3-r2-r1」値の範囲を示す図である。
【0228】
本実施例の1次防壁2は、低温による熱応力(thermal stress)だけでなく、スロッシングによる圧応力(pressure stress)の負担を最小化することができるように、上記のように曲面部22の断面形状を平面部21から曲面部22の上端までの高さHに対する隣り合う平面部21の間の幅Wの比率(W/H)を2.0~3.0の範囲(2.0≦W/H≦3.0)となるようにし、これに加えて第1、2、3曲面部22a、22b、22cのそれぞれの第1、2、3曲率半径r1、r2、r3が互いに異なるようにするが、第3曲率半径r3の大きさが第2曲率半径r2の大きさと第1曲率半径r1の大きさを合わせた値より大きくなるようにした。このような曲面部22の断面形状は以下の図36図39に示す実験データによって得られており、さらに、公知の1次防壁を比較対象として比較してみた。
【0229】
ここで、比較対象の1次防壁は、本発明の1次防壁2とは異なってラージコルゲーション(Large corrugation)とスモールコルゲーション(Small corrugation)を有する。
【0230】
図36に示すように、1次防壁2の曲面部22の高さHに対する曲面部22の幅Wの比率(W/H)によるフォン・ミーゼス応力(Von Mises Stress)から熱応力及び圧応力の両方を考慮したとき、本発明の1次防壁2は高さと幅の比率(W/H)が2.0~3.0の範囲で熱応力及び圧応力が集中しており、比較対象の1次防壁の場合は、ラージコルゲーションやスモールコルゲーションのそれぞれの高さと幅の比率(W/H)が約1.5以下であり、熱応力と圧応力に大きな差があった。即ち、高さと幅の比率(W/H)が2.0~3.0の範囲の本発明が高さと幅の比率(W/H)が1.5以下の比較対象と比べて熱応力及び圧応力の両方が良好であることが分かる。
【0231】
具体的に、本発明は、熱応力が1次防壁2の高さと幅の比率(W/H)の大きさに比例して大きくなり、圧応力が1次防壁2の高さと幅の比率(W/H)の大きさに反比例して小さくなり、高さと幅の比率(W/H)が2.0~3.0の範囲のとき、熱応力及び圧応力の分布が集中しており、このとき、本発明の1次防壁2は熱応力と圧応力が110MPa~210MPaの間にあることが分かる。
【0232】
一方、比較対象は1次防壁の高さと幅の比率(W/H)が約1.5以下のラージコルゲーションにおいて最大熱応力が約73MPa、最大圧応力が約310MPaであり、1次防壁の高さと幅の比率(W/H)が1.5以下のスモールコルゲーションにおいて最大熱応力及び最大圧応力は約150MPaであった。
【0233】
また、図37に示すように、本発明は、1次防壁2の高さと幅の比率(W/H)が2.0~3.0の範囲であり、曲率半径「r3-r2-r1」値が10mm~30mmの範囲、好ましくは15mm~27mmにおいて、1次防壁2の断面形状の最適化の結果を得た。
【0234】
一方、比較対象は、1次防壁のラージコルゲーション及びスモールコルゲーションの高さと幅の比率(W/H)が約1.5以下のとき、ラージコルゲーションの曲率半径「r3-r2-r1」値は約48mmであり、スモールコルゲーションの曲率半径「r3-r2-r1」値は約21mmであり、これにより、比較対象の1次防壁は本発明の1次防壁2の断面形状と異なることが分かる。
【0235】
一方、本発明の1次防壁2は降伏応力が常温では170Mpaであり、-170度の低温では220Mpa程度であるが、常温で作製するため、170Mpa~180MPaを超えない範囲が求められる。
【0236】
従って、本実施例の1次防壁2は、熱応力(y=72.446e0.3522x)または圧応力(y=255.95e-0.233x)が約170MPaを超えず、比較対象と差別化されるように高さと幅の比率(W/H)が2.0~3.0の範囲、そして170MPa以下を満たす「r3-r2-r1」値が15mm~27mmの範囲の形状を有するようにすることが好ましい。
【0237】
下記[表3]は、図36に示す1次防壁2の曲面部22の高さHに対する曲面部22の幅Wの比率(W/H)によるフォン・ミーゼス応力(Von Mises Stress)からの熱応力及び圧応力の分布を示したものである。
【0238】
【表3】
【0239】
図38の(a)、(b)及び(c)は、本発明の1次防壁と比較対象の1次防壁の横及び縦の曲面部に流体が流入するときのスロッシング圧力値に対する構造解析を行った結果を示す図であり、このとき、横及び縦の曲面部に流入する流体の速度は5m/sの速度とした。図38の(a)は、本発明の1次防壁2の横または縦の曲面部22に流体が流入するときのスロッシング圧力値に対する構造解析であり、曲面部22の第1地点P1で最大スロッシング圧力値305.29Paを得た。また、図38の(b)は、比較対象の1次防壁の横の曲面部(ラージコルゲーション)に流体が流入するときのスロッシング圧力値に対する構造解析であり、横の曲面部(ラージコルゲーション)の第2地点P2で最大スロッシング圧力値10,515Paを得ており、図38の(c)は比較対象の1次防壁の縦の曲面部(スモールコルゲーション)に流体が流入するときのスロッシング圧力値に対する構造解析であり、縦の曲面部(スモールコルゲーション)の第3地点P3で最大スロッシング圧力値3577.6Paを得た。
【0240】
ここで、本発明の1次防壁2は、上述したように横及び縦の曲面部22の大きさ及び高さが同一の断面形状を有するが、比較対象の1次防壁は、一般的な曲面部の断面形状の大きさの大きい横の曲面部(ラージコルゲーション)と大きさの小さい縦の曲面部(スモールコルゲーション)が交差するものであり、本発明の1次防壁2は比較対象の1次防壁と比べて、スロッシング圧力値が横の曲面部では優れており、縦の曲面部では非常に優れていることが分かる。
【0241】
図39の(a)及び(b)は、本発明の1次防壁と比較対象の1次防壁に等分布荷重を加えたときの変形を示したもの(スロッシング衝撃圧力による構造解析の結果を示したもの)である。このとき、1次防壁に対して全体の衝撃圧力10barを加えて弾塑性構造解析を行った。これは、1次防壁の断面形状における動的挙動と塑性変形量を把握するためである。図39の(a)に示す本発明の1次防壁2の曲面部22の断面形状が図39の(b)に示す比較対象の1次防壁の曲面部(ラージコルゲーション)の断面形状より傾斜が緩やかであり、本発明の1次防壁2には変形がほとんど生じず、比較対象の1次防壁には変形が多く生じることが分かる。このように、比較対象の1次防壁の場合、変形を防止するために曲面部の下端にウッドウェッジや金属などの保形物を入れなければならないなどの追加作業が必要となる。
【0242】
以上、本発明を具体的な実施例を通じて詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものであり、本発明はこれに限定されず、本発明の技術的な思想内で当該分野の通常の知識を有する者によりその変形や改良が可能であることは明らかである。
【0243】
本発明の単純な変形ないし変更はすべて本発明の範囲に属し、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明らかになる。
【符号の説明】
【0244】
1 液化ガス貯蔵タンク
2 1次防壁
2a 単位防壁
21 平面部
22 曲面部
22a 第1曲面部
22b 第2曲面部
22c 第3曲面部
23 境界部
24 突出構造物
3 1次断熱壁
3b 固定断熱壁
31 1次プライウッド
32 1次断熱材
3a 連結断熱壁
31a 連結プライウッド
32a 連結断熱材
33 補助断熱板
4 2次防壁
41 メイン防壁
42 補助防壁
GAC ガラス-アラミドクロス
AF アルミニウムホイル
GC ガラスクロス
BC バザルトクロス
5 2次断熱壁
51 2次断熱材
52 2次プライウッド
6 マスティック
7 船体
8 レベリング部材
9 固定部材
91 突出部
92 スタッドボルト
A1 第1円
A2 第2円
A3 第3円
A4 第4円
C1 第1曲率中心
C2 第2曲率中心
C3 第3曲率中心
C4 第4曲率中心
P1 第1連結地点
P2 第2連結地点
P3 第3連結地点
P4 第4連結地点
r1 第1曲率半径
r2 第2曲率半径
r3 第3曲率半径
図1
図2
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