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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】膨張式水筒、車両冷却システム及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20240802BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240802BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240802BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/625
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022574234
(86)(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2020094773
(87)【国際公開番号】W WO2021243720
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】522450233
【氏名又は名称】浙江聯控技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG LIANKONG TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 818 2nd Binhai Road, Hangzhou Bay New District, Ningbo, Zhejiang, China
(73)【特許権者】
【識別番号】507362513
【氏名又は名称】浙江吉利控股集団有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG GEELY HOLDING GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1760 Jiangling Road, Binjiang District, Hangzhou Zhejiang310000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】林 炳栄
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02852267(EP,A1)
【文献】特開2010-281245(JP,A)
【文献】特開2008-103297(JP,A)
【文献】特開2017-101573(JP,A)
【文献】特開2016-100193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/613
H01M 10/625
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティ構造体(101)と管状構造を有する脱気流路(102)とを含む膨張式容器であって、
前記脱気流路(102)は前記膨張式容器に設けられ、前記脱気流路(102)には導流孔(103)が設けられ、前記脱気流路(102)と前記キャビティ構造体(101)は前記導流孔(103)を介して連通しており、
前記脱気流路(102)の両端には、車両冷却システムに連通する給液口(104)及び排液口(105)がそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする膨張式容器
【請求項2】
前記脱気流路(102)は前記キャビティ構造体(101)内に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張式容器
【請求項3】
前記脱気流路(102)は前記キャビティ構造体(101)に着脱可能に接続されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張式容器
【請求項4】
前記脱気流路(102)と前記キャビティ構造体(101)は一体成形されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の膨張式容器
【請求項5】
前記脱気流路(102)の断面積が、前記給液口(104)の断面積以上である、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の膨張式容器
【請求項6】
前記脱気流路(102)に複数の導流孔(103)が設けられ、前記複数の導流孔(103)は前記脱気流路(102)に等間隔に設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の膨張式容器
【請求項7】
前記脱気流路(102)は、側壁と、前記側壁に着脱可能に接続されたカバープレート(106)と、を含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の膨張式容器
【請求項8】
前記導流孔(103)は、前記脱気流路(102)の側壁及び/又はカバープレート(106)に設けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の膨張式容器
【請求項9】
射出成形により成形されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の膨張式容器
【請求項10】
前記キャビティ構造体(101)の頂部に設けられ、冷却液を充填するための充填口(107)が設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の膨張式容器
【請求項11】
前記キャビティ構造体(101)の側壁に設けられ、前記キャビティ構造体(101)内の冷却液の液位を示す液位計がさらに設けられている、
ことを特徴とする請求項10に記載の膨張式容器
【請求項12】
前記膨張式容器の内部圧力を調整するための圧力調整手段をさらに含む、
ことを特徴とする請求項11に記載の膨張式容器
【請求項13】
前記圧力調整手段は、前記膨張式容器の上部に設けられた圧力逃がし弁を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の膨張式容器
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の膨張式容器を含む、
ことを特徴とする車両冷却システム。
【請求項15】
請求項14に記載の車両冷却システムを含む、
ことを特徴とする車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両の技術分野に関し、特に膨張式水筒、車両冷却システム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の冷却システムは、主としてパワートレインの作動時に発生する熱を空気中に放出し、パワートレインの過熱を防止するものである。液冷式冷却システムを採用している自動車の場合、冷却液は冷却システム内で液体循環を行い、冷却液が高温のパワートレインを流れる際に熱を吸収し、パワートレインの温度を低下させる。冷却液はパワートレインを流れた後、熱交換器(又はラジエータ)に流れ、冷却液の熱は熱交換器を介して空気中に放散される。冷却液には蒸発しやすい成分がほとんど含まれているので、パワートレインが作動すると、冷却システム内に蒸気が発生し、また、冷却システムの圧力は冷却液の温度の変化によって絶えず変化する。蒸気が排出されずに冷却管路を循環していると、放熱管路内に空気抵抗が発生し、放熱不良が発生することがある。
【0003】
従来技術では、エンジンをパワートレインとする車両の場合、冷却システムは通常、ラジエータを利用して液気分離を行い、ラジエータ水室の最も高いところに排気口を設け、冷却液中の蒸気を排気口から排出する方法を採用していた。
【0004】
しかし、多くの新エネルギー純電気自動車では、その電池冷却システムはラジエータがなく、しかも管路が複雑であるので、空気をより蓄積しやすく、電池冷却回路の迅速な液気分離は更に重要になる。現在、冷却システムの主回路に専用の液気分離器を直列に接続している車両もあるが、液気分離器の増設は冷却システム全体のコストと重量を大幅に増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願が解決しようとする技術的課題は、既存の新エネルギー車両の冷却システムでは、液気分離装置を増設することを必要とし、重量及びコストが高くなるという課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した技術的課題を解決するために、第1態様では、本願の実施例は、キャビティ構造体と脱気流路とを含む膨張式水筒であって、
前記脱気流路は前記膨張式水筒に設けられ、前記脱気流路には導流孔が設けられ、前記脱気流路と前記キャビティ構造体は前記導流孔を介して連通しており、
前記脱気流路の両端には、車両冷却システムに連通する給液口及び排液口がそれぞれ設けられている膨張式水筒キャビティを開示する。
【0007】
さらに、前記脱気流路は前記キャビティ構造体内に設けられている。
【0008】
さらに、前記脱気流路は前記キャビティ構造体に着脱可能に接続されている。
【0009】
さらに、前記脱気流路と前記キャビティ構造体は一体成形されている。
【0010】
さらに、前記脱気流路の断面積が、前記給液口の断面積以上である。
【0011】
さらに、前記脱気流路に複数の導流孔が設けられ、前記複数の導流孔は前記脱気流路に等間隔に設けられている。
【0012】
さらに、前記脱気流路は、側壁と、前記側壁に着脱可能に接続されたカバープレートとを含む。
【0013】
さらに、前記導流孔は、前記脱気流路の側壁及び/又はカバープレートに設けられている。
【0014】
さらに、前記膨張式水筒は、射出成形により成形されている。
【0015】
さらに、前記膨張式水筒は、前記キャビティ構造体の上部に設けられ、前記冷却液を充填するための充填口が設けられている。
【0016】
さらに、前記膨張式水筒は、前記キャビティ構造体の側壁に設けられ、前記キャビティ構造体内の冷却液の液位を示す液位計がさらに設けられている。
【0017】
さらに、前記膨張式水筒は、前記膨張式水筒の内部圧力を調整するための圧力調整手段をさらに含む。
【0018】
さらに、前記圧力調整手段は、前記膨張式水筒の上部に設けられた圧力逃がし弁を含む。
【0019】
第2態様では、本願の実施例は上記膨張式水筒を含む車両冷却システムを開示する。
【0020】
第3態様では、本願の実施例は、前記冷却システムは上記車両冷却システムを含む車両を開示する。
【発明の効果】
【0021】
上記の技術案を用いると、本願の実施例に係る膨張式水筒、車両冷却システム、及び車両は、以下のような有益な効果を有する。
1)本願の実施例に係る膨張式水筒では、筒底部に脱気用の脱気流路が設けられ、脱気流路には導流孔が設けられ、冷却システム内の冷却液が給液口を介して脱気流路に入り、冷却液中の気泡が導流孔を介して排出され、気体が排出された冷却液が排液口を介して循環回路に入る。これによって、液気分離装置を増設せずに脱気ニーズに対応することができ、管路やパイプクリップの使用量を減らし、車体の軽量化を図り、軽量設計を満たして、しかもコストを削減させる目的を達成させる。
2)本願の実施例に係る膨張式水筒では、脱気流路と膨張式水筒とを一体的に射出成形することにより、後続で組み立て作業が不要となり、組立工程が少なくなり、コストが削減され、また、カバープレートを流路に着脱可能に接続することにより、射出成形時の工程の難度を低減する一方で、脱気流路の点検や修理を容易にすることができる。
3)本願の実施例に係る膨張式水筒では、膨張式水筒の内部に連通する圧力調整手段を設けることにより、キャビティ構造体内の圧力を安定に維持し、膨張式水筒の内外の圧力差を平衡状態にして脱気効果を確保する。
4)本願の実施例に係る車両冷却システムでは、電池ボックスの冷却回路内の膨張式水筒を主冷却システムに接続し、膨張式水筒の底部に空気流通路を設けることで、膨張式水筒本体に気泡を含む冷却液を入れて液気分離を行うことにより、液気分離装置を増設する必要がなく、しかも管路やパイプクリップの使用量を減らし、コストの投入を削減し、また、管路、パイプクリップ、液気分離装置が占有するスペースを節約し、車両内の最適化のための配置スペースを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本願の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下では、実施例の説明において使用する必要がある図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は、本願の一部の実施例にすぎず、当業者にとっては、創造的な努力を必要とせずにこれらの図面から他の図面を得ることもできる。
図1】本願の一実施例に係る膨張式水筒の構造斜視図である。
図2】本願の一実施例のカバープレートの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本願の実施例に係る技術案について、本願の実施例の図面を参照して明確かつ完全に説明する。明らかに、説明される実施例は、本願の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を必要とせずに取得した他のすべての実施例は、本願の特許範囲に属する。
【0024】
ここでいう「一実施例」又は「実施例」とはは、本願の少なくとも1つの実施形態に含まれることができる特定の特徴、構造、又は特性を意味する。本願の説明では、「上」、「下」、「頂」、「底」等の用語で示される方位又は位置関係は、図面に示される方位又は位置関係に基づくものであり、係る装置又は要素が特定の方位を有したり、特定の方位で構成され、動作したりしなければならないことを指示又は示唆するものではなく、単に本願の説明を容易にし、説明を簡略化するためであり、したがって、本願を限定するものと理解することはできない。また、「第1」、「第2」という用語は説明の目的にのみ使用され、相対的重要性を指示又は示唆し、又は示された技術的特徴の数を暗黙的に示すとは理解されない。これにより、「第1」、「第2」に限定される特徴は、1つ又は複数の当該特徴を明示的又は暗黙的に含むことができる。さらに、「第1」、「第2」などの用語は、特定の順序又は優先順位を説明するために使用されるのではなく、類似する対象を区別するために使用される。このように使用されるデータは、ここで記載された本願の実施例がここで図示又は記載されたもの以外の順序で実施されることを可能にするために、適宜交換されてもよいことが理解されるべきである。
【0025】
冷却液の流れは主に水ポンプの圧力で行われ、水ポンプでは、吸水する圧力が低い側に蒸気の泡が発生し、さらに冷却液の温度が高くなっても蒸気の泡が発生し、その際に冷却液の量が低下することがある。蒸気が排出されずに冷却管路を循環し続けると、放熱管路内に空気抵抗が発生し、熱放散不良が発生し、パワートレインの寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。燃料モデルの車両の場合、ラジエータ内の蒸気の泡の流れは導管を介して行われ、このように、ラジエータを用いて液気分離が行われる。一方、新エネルギー純電気自動車の場合、電池冷却システムにはラジエータがなく、この場合、ラジエータを利用した液気分離はできない。
【0026】
図1に示すように、冷却システム内の蒸気の泡を自動的に排除するために、本願の実施例は、キャビティ構造体101と、このキャビティ構造体101に設けられた脱気流路102と、を含み、脱気流路102には導流孔103が設けられ、脱気流路102とキャビティ構造体101は導流孔103を介して連通しており、脱気流路102の両端には、車両冷却システムに連通する給液口104及び排液口105がそれぞれ設けられている。
【0027】
本願の実施例に係る膨張式水筒では、膨張式水筒の筒底部に脱気用の脱気流路102が設けられ、脱気流路102には導流孔103が設けられ、冷却システム内の冷却液が給液口104を介して脱気流路102に入り、冷却液中の気泡が導流孔103を介して排出され、気体が排出された冷却液が排液口105を介して循環回路内に入る。これによって、液気分離装置を増設せずに脱気ニーズに対応することができ、管路やパイプクリップの使用量を減らし、車体の軽量化を図り、軽量化設計を満たして、しかもコストを削減させる目的を達成させる。
【0028】
本願の実施例では、膨張式水筒の内部は中空のキャビティ構造体101であり、膨張式水筒の外形は、柱体形状、錐台状、立方体形状等の規則的な形状であってもよいし、不規則な形状であってもよい。膨張式水筒の材質はプラスチックであるが、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属であってもよい。脱気流路102は管状構造であり、任意に円管、角管又は他の多角形管材である。脱気流路102には、1つ乃至複数の導流孔103が設けられており、導流孔103の孔形状は、円孔、三角孔、角孔、その他の多角形孔であってもよく、不規則な形状の孔形状であってもよい。導流孔103の孔径は2mm~20mmであり、孔径の大きさや形状位置は具体的な状況に応じて決定されてもよく、例えば、脱気流路102の排気効果は、膨張式水筒の形状や大きさ、配置角度等に依存する場合がある。具体的には、3Dプリント技術やシミュレーション技術などを用いて検証を行うことにより、排気効果が最も高い孔径及び位置を、導流孔103の最終的な孔径及び位置として決定することができる。膨張式水筒と接触する面には、膨張式水筒と脱気流路102とを連通する導流孔103が設けられている。脱気流路102は、膨張式水筒に着脱可能に接続又は一体成形されている。脱気流路102は、膨張式水筒の外側に設けられていてもよく、キャビティ構造体101の内部に設けられていてもよい。任意に、脱気流路102は膨張式水筒の底部に設けられ、或いは、脱気流路102は、底部近傍の側壁に設けられ、或いは、脱気流路102の一端は膨張式水筒の底部に設けられ、他端は膨張式水筒の側壁に設けられ、或いは、脱気流路102の両端部はそれぞれ膨張式水筒の側壁に設けられ、脱気流路102の中央部はキャビティ構造体101内にぶら下がって設けられる。膨張式水筒内に冷却液が注入されると、脱気流路102の導流孔103の一部又は全部が冷却液に浸漬されていなければならない。いくつかの実施例では、脱気流路102は、膨張式水筒の外側に設けられ、膨張式水筒に一体成形され、脱気流路102と膨張式水筒との接合面には、脱気流路102とキャビティ構造体101とを連通する導流孔103が開設されている。別のいくつかの実施例では、脱気流路102は膨張式水筒の外側に設けられ、膨張式水筒の外側に係合溝が設けられ、係合溝内には導流孔103が開けられ、脱気流路102は一側が開放された溝形状であり、係合溝に係合可能である。脱気流路102の両端には接続ポートが設けられており、膨張式水筒が冷却システムに接続される際に、脱気流路102の2つの接続ポートは冷却液循環管路に接続されるようになっている。冷却液は冷却システムの循環管路内を循環し、給液口104から脱気流路102に入ると、冷却液中の蒸気の泡が導流孔を介して冷却液から排出され、蒸気の泡中の気体が膨張式水筒の上部空間に入る。冷却液は、蒸気の泡を排出した後、排液口105を介して再び循環管路に入って循環する。
【0029】
図1に示すように、脱気流路102はキャビティ構造体101の内部に設けられている。
【0030】
本願の実施例では、脱気流路102が衝突や擦れによる損傷を受けにくくし、脱気流路102と膨張式水筒との接続の信頼性を確保するために、脱気流路102がキャビティ構造体101内に設けられることが好ましく、脱気流路102の給液口104及び排液口105は膨張式水筒の側壁に一体化されてもよい。
【0031】
脱気流路102は、キャビティ構造体101に着脱可能に接続されている。
【0032】
本願の実施例では、脱気流路102は独立した管材であってもよく、膨張式水筒には、脱気流路102を取り付けるための貫通孔が設けられており、脱気流路102は、貫通孔を貫通して膨張式水筒の底部に設けられており、脱気流路102の両端は膨張式水筒の外側に残されている。いくつかの実施例では、膨張式水筒には、内部のキャビティ構造体101に連通する給液口104及び排液口105が設けられ、キャビティ構造体101の内部では、脱気流路102の両端は給液口104及び排液口105に接続されている。
【0033】
脱気流路102は、キャビティ構造体101に一体成形されている。
【0034】
本願の実施例では、組立工程を削減し、コストを節減し、さらに重量を軽減するために、脱気流路102とキャビティ構造体101とは一体成形により接続されてもよい。任意に、一体成形の方式は、鋳造成形、射出成形、3D印刷などの方式を含む。
【0035】
脱気流路102の断面積は、給液口104の断面積以上である。
【0036】
本願の実施例では、脱気流路102の断面積は、給液口104の断面積以上であり、冷却液が給液口104から脱気流路102内に入ると、配管口径の変化により、冷却液の流速が遅くなり、蒸気の泡の排出がより容易になる。
【0037】
図2に示すように、脱気流路102には複数の導流孔103が設けられており、複数の導流孔103は、脱気流路102に等間隔に設けられている。
【0038】
本願の実施例では、脱気効果を確保するために、脱気流路102に複数の導流孔103が設けられてもよく、任意に、複数の導流孔103の孔形状は、全ての導流孔103が角孔であるなど、全て同一であってもよく、導流孔103に角孔、円孔、三角孔等が同時に存在するなど、複数の導流孔103の孔形状は全て同一でなくてもよい。また、導流孔103の孔径は完全に等しくしなくてもよい。好ましくは、複数の導流孔103は、脱気流路102に均等に等間隔で分布している。いくつかの実施例では、複数の導流孔103は、脱気流路102にランダムに分布してもよく、複数の導流孔103の間の間隔は完全には等しくない。
【0039】
図1及び図2に示すように、脱気流路102は、側壁と、側壁に着脱可能に接続されたカバープレート106とを含む。
【0040】
本願の実施例では、脱気流路102がキャビティ構造体101の内部に設けられる場合、組立を容易にするために、脱気流路102は着脱可能なカバープレート106と流路本体との2つの部分として構成されてもよい。任意に、側壁の先端に係合溝が設けられ、カバープレート106の両側縁は係合溝内に係合可能である。
【0041】
図2に示すように、導流孔103は脱気流路102の側壁及び/又はカバープレート106に設けられている。
【0042】
本願の実施例では、導流孔103は、排気流路102の側壁又は頂部のカバープレート106にのみ設けられていてもよい。冷却システムの循環管路内では冷却液の流速が一定ではないので、好ましくは、脱気流路102の側壁又は頂部のカバープレート106のいずれにも複数の導流孔103を設けることにより、蒸気の泡の排出がより容易になる。
【0043】
膨張式水筒は射出成形により成形されている。
【0044】
本願の実施例では、膨張式水筒を射出成形により成形することにより、製造工程及び組立工程を簡略化し、コストを削減しつつ、さらに軽量化を図ることができる。
【0045】
図1に示すように、膨張式水筒には、キャビティ構造体101の頂部に冷却液を充填するための充填口107が設けられている。
【0046】
本願の実施例では、冷却液は充填口107から膨張式水筒に充填された後、導流孔103を介して脱気流路102に入り、さらに循環システムに入って循環する。いくつかの実施例では、膨張式水筒には、冷却システムの循環管路と連通する液漏れ口がさらに設けられ、冷却液は液漏れ口から循環管路に入って循環する。
【0047】
また、膨張式水筒は、キャビティ構造体101の側壁に設けられ、キャビティ構造体101内の冷却液の液位を示す液位計がさらに設けられる。
【0048】
本願の実施例では、膨張式水筒の側壁に液面観察窓が設けられ、この観察窓には液位最低ラインと液位最高ラインとが表示され、冷却液の液位深さは液位最低ラインと液位最高ラインとの間でなければならない。いくつかの実施例では、液位計はまた、液位深さを直接測定し、車両の中央コントローラに表示することができる液位センサであってもよい。
【0049】
膨張式水筒は、膨張式水筒の内部圧力を調整するための圧力調整手段をさらに含む。
【0050】
本願の実施例では、蒸気の泡から排出される気体が膨張式水筒の上部空間に絶えず蓄積されるため、膨張式水筒内の気圧が上昇し、冷却液中の蒸気の泡の排出に悪影響を及ぼす。このため、膨張式水筒に圧力調整手段を設ける必要があり、膨張式水筒内の圧力が上昇したときに、キャビティ構造体101内の気体が膨張式水筒から排出され、これによって、キャビティ構造体101内の空気圧が安定に維持される。
【0051】
圧力調整手段は膨張式水筒の上部に設けられる圧力逃がし弁を含む。
【0052】
本願の実施例では、圧力逃がし弁は膨張式水筒の上部又は頂部に設けられ、膨張式水筒の内部空間と外部とを連通させ、膨張式水筒内の気圧が上昇したときに、圧力逃がし弁を介して気体を排出するようにした。或いは、膨張式水筒内に圧力センサが設けられ、圧力センサはキャビティ構造体101内の圧力上昇が閾値を超えたと検知すると、車両全体のコントローラにフィードバックし、車両全体のコントローラは圧力逃がし弁を開いて気体を排出するように制御する。いくつかの実施例では、圧力調整手段は、膨張式水筒の外側に設けられ、キャビティ構造体101に連通するエアポンプであってもよい。膨張式水筒内の気圧が上昇すると、エアポンプはキャビティ構造体101内から気体を抜く。具体的には、圧力センサはキャビティ構造体101内の空気圧の上昇が閾値を超えることを検知すると、車両全体のコントローラにフィードバックし、車両全体のコントローラは、エアポンプを起動してキャビティ構造体101内から気体を抜くように制御する。好ましくは、適切な閾値パラメータを設定することにより、エアポンプの起動停止を制御して、膨張式水筒内の安定した微小負圧環境を維持し、これは冷却液中の蒸気の泡の排出をより容易にする。
【0053】
本願の実施例はまた、上記した膨張式水筒を含む車両冷却システムを開示する。
【0054】
本願の実施例に係る車両冷却システムでは、電池ボックスの冷却回路内の膨張式水筒を主冷却システムに接続し、膨張式水筒の底部に空気流通路102を設けることで、膨張式水筒本体に気泡を含む冷却液を入れて液気分離を行う。これにより、液気分離装置を増設する必要がなく、しかも管路やパイプクリップの使用量を減らし、コストの投入を削減し、また、管路、パイプクリップ、液気分離装置が占有するスペースを節約し、車両内の最適化のための配置スペースを提供する。
【0055】
本願の実施例は、冷却システムとして上記した車両冷却システムを含む車両を開示する。
【0056】
上記は、本願の好ましい実施例にすぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神及び原則の範囲内において、行われたあらゆる補正、均等置換、改良等は、本願の特許範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0057】
以下、図面について補足説明する。
101 キャビティ構造体
102 脱気流路
103 導流孔
104 給液口
105 排液口
106 カバープレート
107 充填口
図1
図2