(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240802BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240802BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240802BHJP
C01B 35/12 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
C01B35/12 D
(21)【出願番号】P 2022576486
(86)(22)【出願日】2021-06-11
(86)【国際出願番号】 KR2021007318
(87)【国際公開番号】W WO2021251786
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0071473
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0074551
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517113750
【氏名又は名称】エコプロ ビーエム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ECOPRO BM CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】リー,チャン ウ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ムン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ヒョン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヤン ナム
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ベー
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン,ジェ ウ
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102432(JP,A)
【文献】特開2013-137947(JP,A)
【文献】特開2004-083388(JP,A)
【文献】特開2019-192325(JP,A)
【文献】特開2016-216340(JP,A)
【文献】特開2018-045802(JP,A)
【文献】特開2015-133318(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第3349276(EP,A2)
【文献】国際公開第2012/133113(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/106024(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/525
H01M 4/36
H01M 4/505
C01B 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともLi、NiおよびBを含む一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含むリチウム複合酸化物で構成された正極活物質であって、
前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部にボロン含有酸化物を含むコーティング層が存在し、
前記二次粒子の表面から前記コーティング層のう
ち一部が除去さ
れ、
前記コーティング層は、下記の化学式2で表される少なくとも1つのボロン含有酸化物を含む、正極活物質。
[化学式2]
Li
a
B
b
O
c
(ここで、
0≦a≦8、0<b≦8、2≦c≦13である)
【請求項2】
前記一次粒子は、下記の化学式1で表される、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式1]
Li
wNi
1-(x+y+z+z′)Co
xB
yM1
zM2
z′O
2
(ここで、
M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、
M2は、Mn、Ba、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Al、Cr、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、
M1とM2は、互いに異なる元素であり、
0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦z′≦0.20である)
【請求項3】
前記コーティング層は、下記の化学式3で表される少なくとも1つの金属酸化物をさらに含む、請求項1に記載の正極活物質。
[化学式3]
Li
dM3
eO
f
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦d≦8、0<e≦8、2≦f≦13である)
【請求項4】
前記コーティング層は、前記リチウム複合酸化物に対する水洗を通じて前記二次粒子の表面から少なくとも一部が除去された、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記リチウム複合酸化物に対する水洗後の前記リチウム複合酸化物中残留ボロンの含有量は、0.3mol%以下である、請求項
4に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、下記の式1を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
[式1]
r<(19,153×x1)+x2
(ここで、
x1は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、
x2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、
rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【請求項7】
前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、下記の式2を満たす、請求項1に記載の正極活物質。
[式2]
y1≦r≦y1+(y2×(1-y3)×18,429)
(ここで、
y1は、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、
y2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、
y3は、水洗前後に前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量の変化率であり、0超過0.90以下の値を有し、
rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【請求項8】
前記リチウム複合酸化物に対する水洗後の前記二次粒子内空隙率/水洗前の前記二次粒子内空隙率の比は、1.7以上である、請求項
4に記載の正極活物質。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極。
【請求項10】
請求項
9に記載の正極を使用するリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的特性および安定性が向上したリチウム複合酸化物を含む正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関し、より具体的には、前記リチウム複合酸化物の表面に存在するコーティング層のうち少なくとも一部とリチウム含有不純物を除去することによって、電気化学的特性および安定性を向上させた正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、正極と負極に電気化学的反応が可能な物質を用いることによって電力を貯蔵する。前記電池の代表的な例としては、正極および負極においてリチウムイオンがインターカレーション/デインターカレーションされるときの化学電位(chemical potential)の差によって電気エネルギーを貯蔵するリチウム二次電池がある。
【0003】
前記リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的なインターカレーション/デインターカレーションが可能な物質を正極と負極活物質として用い、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填させて製造する。
【0004】
リチウム二次電池の正極活物質に用いられる代表的な物質としては、リチウム複合酸化物がある。前記リチウム複合酸化物は、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiO2、LiMnO2または韓国特許公開第10-2015-0069334号公報(2015年06月23日公開)に開示されたように、Ni、Co、MnまたはAlなどが複合化された酸化物などがある。
【0005】
前記正極活物質のうちLiCoO2は、寿命特性および充放電効率に優れていて、最も多く用いられているが、原料に用いられるコバルトの資源的限界に起因して高価であるため、価格競争力に限界があるという短所を有している。
【0006】
LiMnO2、LiMn2O4などのリチウムマンガン酸化物は、熱的安全性に優れており、価格が安いという長所があるが、容量が小さく、高温特性に劣るという問題点がある。また、LiNiO2系正極活物質は、高い放電容量の電池特性を示しているが、Liと遷移金属間のカチオン混合(cation mixing)問題により合成が難しく、それによって、レート特性において大きな問題点がある。
【0007】
また、このようなカチオン混合の深化度合いに応じて多量のLi副産物が発生することになる。前記Li副産物の大部分は、LiOHおよびLi2CO3を含み、正極ペーストの製造時にゲル(gel)化を引き起こしたり、電極製造後に繰り返される充放電によってガスを発生させる原因となり得る。また、前記Li副産物のうち残留Li2CO3は、セルのスウェリング現象を増加させて寿命特性を低下させる原因として作用する。
【0008】
このような短所を補うために、二次電池の正極活物質としてNi含有量が50%以上のHigh-Ni正極活物質の需要が増加し始めた。しかしながら、このようなHigh-Ni正極活物質は、高容量特性を示すのに対して、正極活物質中のNi含有量が増加することにより、Li/Ni cation mixingによる構造的不安定性がもたらされるという問題点がある。このような正極活物質の構造的不安定性により、高温だけでなく、常温でもリチウム二次電池が急激に劣化することがある。
【0009】
したがって、このようなHigh-Ni正極活物質の問題点を補完するための正極活物質の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
リチウム二次電池の市場では、電気自動車用リチウム二次電池の成長が市場の牽引役割をしている中で、リチウム二次電池に用いられる正極活物質の需要も続いて変化している。
【0011】
例えば、従来、安全性の確保などの観点から、LFPを用いたリチウム二次電池が主に用いられてきたが、最近になって、LFP対比で重量当たりのエネルギー容量が大きいニッケル系リチウム複合酸化物の使用が拡大する傾向にある。
【0012】
これによって、本発明の目的は、リチウム二次電池の電気化学的特性および安定性などを向上させることが可能なHigh-Ni正極活物質を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明の他の目的は、本願で定義されたリチウム複合酸化物を含む正極を使用するリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
従来、正極活物質のうち軽元素(light element)、代表的にボロンのような元素が酸化物形態で存在するようにして、正極活物質の表面副反応を減らして安定性を向上させる技術が提案されている(韓国特許登録第10-1651338号公報、2016年08月25日公告)。
【0015】
しかしながら、前記軽元素含有酸化物を正極活物質の表面に形成することによって、前記正極活物質と電解質間の副反応を減らすことはできるが、反対に前記正極活物質と前記軽元素含有原料物質の反応によって前記正極活物質の表面中にリチウム含有不純物の含有量が増加するという問題がある。
【0016】
このような問題は、前記正極活物質の表面に存在する前記リチウム含有不純物のうち少なくとも一部が前記軽元素含有原料物質と反応して軽元素含有酸化物に転換されるが、前記軽元素含有酸化物に転換される前記リチウム含有不純物の量は、前記正極活物質と前記軽元素含有原料物質の反応によって生成される前記リチウム含有不純物の含有量に比べてきわめて少ないので発生する。
【0017】
これによって、本発明の一態様によれば、前記正極活物質に含まれた前記リチウム複合酸化物の前駆体と軽元素含有原料物質の混合物に対する熱処理を通じて前記軽元素含有酸化物を一次粒子および/または二次粒子の表面のうち少なくとも一部に形成した後、前記正極活物質のうち過剰の軽元素含有酸化物とリチウム含有不純物を除去して、電気化学的特性および安定性などが向上した正極活物質が提供される。
【0018】
一実施例において、前記一次粒子は、下記の化学式1で表され得る。
【0019】
[化学式1]
LiwNi1-(x+y+z+z′)CoxByM1zM2z′O2
【0020】
(ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、M2は、Mn、Ba、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Al、Cr、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、M1とM2は、互いに異なる元素であり、0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦z′≦0.20である)
【0021】
一方、前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、下記の式1を満たすことができる。
【0022】
[式1]
r<(19,153×x1)+x2
【0023】
(ここで、x1は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、x2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【0024】
また、前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、下記の式2を満たすことができる。
【0025】
[式2]
y1≦r≦y1+(y2×(1-y3)×18,429)
【0026】
(ここで、y1は、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、y2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、y3は、水洗前後に前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量の変化率であり、0超過0.90以下の値を有し、rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【0027】
また、本発明の他の態様によれば、上述のような正極活物質を含む正極が提供される。
【0028】
また、本発明のさらに他の態様によれば、上述のような正極を使用するリチウム二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、前記正極活物質の前駆体と軽元素含有原料物質の混合物に対する熱処理を通じて前記正極活物質中の軽元素含有酸化物を一次粒子および/または二次粒子の表面のうち少なくとも一部に形成した後、前記正極活物質中の過剰の軽元素含有酸化物とリチウム含有不純物を除去して、電気化学的特性および安定性を向上させることができる。
【0030】
特に、本発明による正極活物質は、前記正極活物質の前駆体焼成段階で前記正極活物質の前駆体と前記軽元素含有原料物質を混合して熱処理することによって、前記正極活物質内軽元素がドープされると同時に、前記正極活物質中の軽元素含有酸化物は、一次粒子の表面および/または界面に集中的に存在するようにすることができる。
【0031】
また、二次粒子の表面に存在する前記軽元素含有酸化物の含有量を制御することによって、前記軽元素含有酸化物および/または前記リチウム含有不純物によって前記正極活物質の電気化学的特性が低下するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施例による正極活物質の概略図であり、二次粒子の表面にボロン含有酸化物を含むコーティング層とリチウム含有不純物が除去される過程を概略的に示す図である。
【
図2】実施例1、実施例2および比較例1による正極活物質を構成するリチウム複合酸化物の水洗前に中和滴定を通じて得られた微分グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明による電気化学的特性および安定性が向上したリチウム二次電池用正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池についてより詳細に説明する。
【0034】
正極活物質
本発明の一態様によれば、リチウムのインターカレーションおよびデインターカレーションが可能なリチウム複合酸化物である一次粒子が複数個凝集した二次粒子を含む正極活物質が提供される。
【0035】
ここで、前記一次粒子は、1つの結晶粒(grain or crystallite)を意味し、二次粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された凝集体を意味する。前記一次粒子は、棒状、楕円状および/または不定形の形状を有していてもよい。前記二次粒子を構成する前記一次粒子の間には、空隙および/または結晶粒界(grain boundary)が存在していてもよい。
【0036】
例えば、前記一次粒子は、前記二次粒子の内部で隣接する一次粒子から離隔して内部空隙を形成することができる。また、前記一次粒子は、隣接する一次粒子と互いに接して結晶粒界を形成せずに内部空隙と接することによって、前記二次粒子の内部に存在する表面を形成することができる。一方、前記二次粒子の最表面に存在する前記一次粒子が外気に露出した面は、前記二次粒子の表面を形成する。
【0037】
ここで、前記一次粒子の平均長軸径は、0.1μm~5μm、好ましくは、0.1μm~2μmの範囲内に存在することによって、本発明の様々な実施例による正極活物質を使用して製造された正極の最適密度を具現することができる。また、二次粒子の平均粒径は、凝集した一次粒子の数によって異なるが、1μm~30μmであってもよい。
【0038】
一方、前記正極活物質は、平均粒径が5μm以下の二次粒子である小粒子および平均粒径が12μm以上の二次粒子である大粒子を含むバイモーダル(bimodal)形態であってもよい。
【0039】
一実施例において、前記一次粒子は、少なくともLi、NiおよびBを含むリチウム複合酸化物であってもよい。より具体的には、前記一次粒子は、下記の化学式1で表され得る。
【0040】
[化学式1]
LiwNi1-(x+y+z+z′)CoxByM1zM2z′O2
【0041】
(ここで、M1は、MnおよびAlから選ばれる少なくとも1つであり、M2は、Mn、Ba、Ce、Hf、Ta、Cr、F、Mg、Al、Cr、V、Ti、Fe、Zr、Zn、Si、Y、Nb、Ga、Sn、Mo、W、P、Sr、Ge、Nd、GdおよびCuから選ばれる少なくとも1つであり、M1とM2は、互いに異なる元素であり、0.5≦w≦1.5、0≦x≦0.50、0<y≦0.20、0≦z≦0.20、0≦z′≦0.20である)
【0042】
もし前記正極活物質が小粒子および大粒子を含むバイモーダル形態の場合、前記小粒子中M1の濃度は、前記大粒子中M1の濃度より大きくてもよい。
【0043】
一般的に、正極活物質内存在する軽元素(light element)、代表的にボロンのような軽元素は、前記正極活物質の製造時に添加されるボロン含有原料物質の含有量によって前記正極活物質内含有量を予測することができ、前記正極活物質内軽元素が他の元素に比べてどのように存在するかを具体的に確認しにくいという問題がある。
【0044】
ただし、本発明によれば、前記リチウム複合酸化物の前駆体(水酸化物前駆体または焙焼前駆体)の焼成段階で前記前駆体と軽元素含有原料物質を混合した後に熱処理することによって、前記化学式1で表されるように、前記一次粒子内軽元素がドープされると同時に、前記正極活物質中の軽元素含有酸化物を含むコーティング層が前記一次粒子の表面および/または界面に集中的に存在するようにすることができる。
【0045】
また、前記リチウム複合酸化物の前駆体(水酸化物前駆体または焙焼前駆体)の焼成段階で前記前駆体と軽元素含有原料物質を混合した後に熱処理する場合、前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部にも前記軽元素含有酸化物を含むコーティング層を形成することができる。
【0046】
上述したように、前記コーティング層は、下記の化学式2で表される少なくとも1つのボロン含有酸化物を含んでもよい。
【0047】
[化学式2]
LiaBbOc
【0048】
(ここで、
0≦a≦8、0<b≦8、2≦c≦13である)
すなわち、前記ボロン含有酸化物は、borate系化合物またはLBO(lithium borate)系化合物であり、前記borate系化合物またはLBO(lithium borate)系化合物の非制限的な例としては、B2O3、Li2O-B2O3、Li3BO3、Li2B4O7、Li2B2O7、Li2B8O13などがある。
【0049】
前記コーティング層は、前記一次粒子および/または前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部に存在し、前記コーティング層は、前記化学式2で表されるボロン含有酸化物が存在する領域と定義することができる。
【0050】
前記コーティング層は、前記一次粒子および/または前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部を連続的または不連続的にコートすることができ、前記コーティング層が不連続的に存在する場合、アイランド(island)形態で存在していてもよい。また、前記コーティング層は、前記一次粒子および/または前記二次粒子と境界を形成しない固溶体形態で存在することもできるが、必ずしもそうではない。
【0051】
前記コーティング層は、前記リチウム複合酸化物の前駆体(水酸化物前駆体または焙焼前駆体)の焼成後、前記焼成結果物とボロン含有原料物質を混合および熱処理して形成されるものではなく、前記リチウム複合酸化物の前駆体(水酸化物前駆体または焙焼前駆体)とボロン含有原料物質を混合および熱処理して形成される。
【0052】
一方、前記リチウム複合酸化物の前駆体(水酸化物前駆体または焙焼前駆体)とボロン含有原料物質の混合物に対する熱処理後、水洗を通じて前記一次粒子および/または前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部に存在する前記コーティング層のうち少なくとも一部を除去することができる。
【0053】
特に、ボロン含有酸化物を含むコーティング層が形成された前記リチウム複合酸化物を水洗することによって、相対的に前記二次粒子の中心部に近い領域内存在する前記一次粒子の表面および/または界面に存在するコーティング層に比べて相対的に前記二次粒子の表面部に近い領域内存在する前記一次粒子の表面および/または界面に存在するコーティング層をさらに除去することができる。
【0054】
また、ボロン含有酸化物を含むコーティング層が形成された前記リチウム複合酸化物を水洗することによって、相対的に前記二次粒子の中心部に近い領域内存在する前記一次粒子の表面および/または界面に存在するコーティング層に比べて相対的に前記二次粒子の表面に存在するコーティング層をさらに除去することができる。
【0055】
上述のような水洗を通じて、前記正極活物質、特に前記二次粒子の表面中、軽元素含有酸化物が一部除去されて、前記二次粒子の表面が露出し、これと共に、前記二次粒子の表面に存在するリチウム含有不純物を除去することができる。
【0056】
これによって、水洗前の前記正極活物質中のボロンの含有量に比べて、水洗後の前記正極活物質中のボロンの含有量が減少することができ、水洗後の前記正極活物質中のボロンの含有量の変化率(減少率)は、0超過0.90以下(0%超過95%以下)、好ましくは、0.10~0.90(10%~95%)、より好ましくは、0.20~0.90(20%~90%)であってもよい。
【0057】
前記正極活物質の水洗結果、前記リチウム複合酸化物中残留ボロンの含有量は、少なくとも0.3mol%以下であることが好ましい。ただし、前記リチウム複合酸化物中残留ボロンの含有量が0.3mol%以下である場合と水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量が0.3mol%以下である場合は、前記リチウム複合酸化物を構成する一次粒子および/または二次粒子の表面に存在するボロン含有酸化物およびリチウム含有不純物の分布とボロン含有酸化物を含むコーティング層の形態などが異なっているので、相互区別しなければならない。
【0058】
前記正極活物質の水洗による前記正極活物質中のボロンの含有量の減少率が95%を超過する場合、前記正極活物質、特に前記二次粒子の表面中、ボロン含有酸化物の含有量が過度に少なくなることにより、前記ボロン含有酸化物による表面副反応の抑制効果を具現しにくいことがある。
【0059】
一方、前記リチウム複合酸化物の表面にボロン含有酸化物を形成した後、水洗しないか、または、前記正極活物質の水洗結果、前記正極活物質中のボロンの含有量がほとんど減少しない場合、前記二次粒子の表面中、ボロン含有酸化物が過度に存在したり、リチウム含有不純物が前記二次粒子の表面に過度に存在することにより、かえって前記正極活物質の電気化学的特性が低下するおそれが存在する。
【0060】
一実施例において、前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、下記の式1を満たすことができる。
【0061】
[式1]
r<(19,153×x1)+x2
【0062】
(ここで、
x1は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、
x2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、
rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【0063】
この際、前記中和滴定法は、前記正極活物質5gに対して0.1N HClを使用して行われ得、LiOHの溶出量は、前記中和滴定法を通じて得られるHCl投入量によるpHの変化に対する微分グラフを通じて測定することができる。
【0064】
前記式1で、定数「19,153」は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量によるLiOHの増加量を計算するためである。
【0065】
上述したように、前記リチウム複合酸化物の前駆体と反応する前記軽元素含有原料物質の配合比が大きいほど前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量と前記リチウム複合酸化物中ボロン含有酸化物の含有量が増加する。前記リチウム複合酸化物中に存在するボロン含有酸化物の含有量が多いほど中和滴定時に下記の反応式1によって溶出されるLiOHの量が増加することができる。
【0066】
[反応式1]
Li3BO3+H2O→LiOH+H3BO3
【0067】
一方、x2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量は、前記反応式1によってLi3BO3から転換されたLiOHではなく、水洗前の前記リチウム複合酸化物中に存在するLiOHの量によって決定される。
【0068】
例えば、
図2の実施例1に対応する微分グラフを参照すると、最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量は、前記リチウム複合酸化物中に存在するLiOHの量に換算することができ、最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値と次に現れる第2ピークのx軸値の差に対応するHCl消耗量は、前記反応式1によってLi
3BO
3から転換されたLiOHの量に換算することができる。また、第2ピークのx軸値と次に現れる第3ピークのx軸値の差に対応するHCl消耗量は、リチウム含有不純物中Li
2CO
3の量に換算することができる。
【0069】
したがって、もし水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)が1.0mol%であり、水洗前の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)が8,638ppmである場合、前記式1の右辺から計算されたLiOHの量は、27,791ppmでありうる。
【0070】
この場合、水洗したリチウム複合酸化物を含む前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、27,791ppmより小さいことが好ましい。
【0071】
もし水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)が1.0mol%であり、水洗前の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)が8,638ppmであるとき、水洗したリチウム複合酸化物を含む前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、27,791ppm以上である場合、前記ボロン含有酸化物および/または前記リチウム含有不純物が前記二次粒子の表面に過度に存在することにより、かえって前記正極活物質の電気化学的特性が低下するおそれが存在する。
【0072】
より詳細に、前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、下記の式2を満たすことができる。
【0073】
[式2]
y1≦r≦y1+(y2×(1-y3)×18,429)
【0074】
(ここで、
y1は、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、
y2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、
y3は、水洗前後に前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量の変化率であり、0超過0.90以下の値を有し、
rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【0075】
前記式2で、定数「18,429」は、水洗後の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量によるLiOHの増加量を計算するためである。
【0076】
y1は、前記式1のx2に対応するものであり、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量は、前記反応式1によってLi3BO3から転換されたLiOHではなく、水洗後の前記リチウム複合酸化物中に存在するLiOHの量によって決定される。
【0077】
したがって、もし水洗後の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量の変化率が0.88(88%)であり、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)が2,34ppmである場合、前記式2から計算されたLiOHの量の範囲は、2,734ppm以上4,945ppm以下でありうる。
【0078】
この場合、水洗したリチウム複合酸化物を含む前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量は、2,734ppm以上4,945ppm以下、好ましくは、2,734ppm超過4,945ppm以下であることが好ましい。
【0079】
もし水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)が1.0mol%であり、水洗後の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量の変化率が0.88(88%)であり、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)が2,34ppmであるとき、前記正極活物質に対する水洗工程が過度に進行された場合、水洗したリチウム複合酸化物を含む前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量が2,34ppm未満でありうる。
【0080】
この場合、前記リチウム複合酸化物の表面に存在するリチウム含有不純物の含有量を減少させることができるが、かえって前記リチウム複合酸化物の表面に損傷を加えて電気化学的特性および安定性を低下させるおそれがある。また、前記リチウム複合酸化物の表面中、ボロン含有酸化物のほとんどが除去されることにより、表面副反応の抑制効果を具現しにくいことがある。
【0081】
一方、同一条件下で水洗したリチウム複合酸化物を含む前記正極活物質に対してHClを用いた中和滴定法によって測定されるLiOHの溶出量が4,945ppmを超過する場合、前記ボロン含有酸化物および/または前記リチウム含有不純物が前記二次粒子の表面に過量残留することにより、かえって前記正極活物質の電気化学的特性が低下するおそれが存在する。
【0082】
他の実施例において、前記コーティング層は、下記の化学式3で表される少なくとも1つの金属酸化物をさらに含んでもよい。
【0083】
[化学式3]
LidM3eOf
【0084】
(ここで、
M3は、Ni、Mn、Co、Fe、Cu、Nb、Mo、Ti、Al、Cr、Zr、Zn、Na、K、Ca、Mg、Pt、Au、P、Eu、Sm、W、Ce、V、Ba、Ta、Sn、Hf、Ce、GdおよびNdから選ばれる少なくとも1つであり、
0≦d≦8、0<e≦8、2≦f≦13である)
【0085】
前記金属酸化物は、前記正極活物質の表面に存在するリチウム含有不純物を低減させると同時に、リチウムイオンの移動経路(diffusion path)として作用することによって、前記正極活物質の電気化学的特性を向上させることができる。
【0086】
前記金属酸化物は、前記リチウム複合酸化物の前駆体(水酸化物前駆体または焙焼前駆体)とB含有原料物質の混合物に対する熱処理前に、M3含有原料物質をさらに混合した後に熱処理することによって形成されてもよい。また、他の場合において、前記金属酸化物は、表面にボロン含有酸化物が形成された前記リチウム複合酸化物の水洗前にまたは水洗後の前記リチウム複合酸化物と混合した後に熱処理して形成されてもよい。
【0087】
前記金属酸化物は、前記リチウム複合酸化物の一次粒子および/または二次粒子の表面のうち少なくとも一部に存在していてもよく、前記ボロン含有酸化物と同一または異なる層に存在していてもよい。
【0088】
前記金属酸化物は、リチウムとM3で表される元素が複合化された酸化物であるか、または、M3の酸化物であり、前記金属酸化物は、例えば、LiaWbOc、LiaZrbOc、LiaTibOc、LiaNibOc、LiaCobOc、LiaAlbOc、CobOc、AlbOc、WbOc、ZrbOcまたはTibOcなどであってもよいが、上述のような例は、理解を助けるために便宜上記載したものに過ぎず、本願で定義された前記金属酸化物は、上述のような例に限定されない。
【0089】
また、前記金属酸化物は、リチウムとM3で表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物であるか、または、リチウムとM3で表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物をさらに含んでもよい。リチウムとM3で表される少なくとも2種の元素が複合化された酸化物は、例えば、Lia(W/Ti)bOc、Lia(W/Zr)bOc、Lia(W/Ti/Zr)bOc、Lia(W/Ti/B)bOcなどであってもよいが、必ずこれに限定されるものではない。
【0090】
本発明による正極活物質は、少なくともLi、NiおよびBを含む一次粒子および前記一次粒子が凝集した二次粒子を含むリチウム複合酸化物で構成され、前記二次粒子の表面のうち少なくとも一部にボロン含有酸化物を含むコーティング層が存在し、かつ、前記二次粒子の表面から前記コーティング層のうち少なくとも一部が除去されたことを特徴とする。
【0091】
前記コーティング層は、前記リチウム複合酸化物の前駆体とボロン含有原料物質の混合物の熱処理によって形成することができ、前記リチウム複合酸化物に対する水洗を通じて前記二次粒子の表面から少なくとも一部を除去することができる。
【0092】
この際、前記リチウム複合酸化物に対する水洗後の前記二次粒子内空隙率/水洗前の前記二次粒子内空隙率の比は、1.7以上であってもよい。
【0093】
すなわち、前記リチウム複合酸化物に対する水洗結果、前記二次粒子の表面中、ボロン含有酸化物のうち一部除去されると同時に、前記二次粒子の内部に存在するボロン含有酸化物のうち一部も除去される。前記二次粒子の内部に存在するボロン含有酸化物は、前記一次粒子の表面にコーティング層として存在していてもよい。
【0094】
前記リチウム複合酸化物の水洗を通じて前記二次粒子の内部に存在するボロン含有酸化物のうち一部が除去されることによって、前記二次粒子内空隙率が増加することができる。
【0095】
この際、前記リチウム複合酸化物に対する水洗後の前記二次粒子内空隙率/水洗前の前記二次粒子内空隙率の比が1.7未満の場合、前記ボロン含有酸化物および/または前記リチウム含有不純物が前記二次粒子の内部に過量残留することにより、前記正極活物質の電気化学的特性が低下するおそれが存在する。
【0096】
一方、前記リチウム複合酸化物に対する水洗後の前記二次粒子内空隙率/水洗前の前記二次粒子内空隙率の比が2.0を超過する場合、かえって前記リチウム複合酸化物の表面および内部に損傷を加えて電気化学的特性および安定性を低下させるおそれがある。また、前記リチウム複合酸化物の内部中にボロン含有酸化物のほとんどが除去されることにより、前記二次粒子内に存在する前記一次粒子の界面での副反応抑制効果を具現しにくいことがある。
【0097】
リチウム二次電池
本発明の他の態様によれば、正極集電体と、前記正極集電体上に形成された正極活物質層とを含む正極を提供することができる。ここで、前記正極活物質層は、正極活物質として上述した本発明の様々な実施例によるリチウム複合酸化物を含んでもよい。
したがって、リチウム複合酸化物に関する具体的な説明を省略し、以下では、残りの前述しない構成のみについて説明する。また、以下では、便宜上、上述したリチウム複合酸化物を正極活物質と称することとする。
【0098】
前記正極集電体は、電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素又はアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが用いられてもよい。また、前記正極集電体は、通常3~500μmの厚さを有してもよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で使用されてもよい。
【0099】
前記正極活物質層は、前記正極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーを含む正極スラリー組成物を前記正極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0100】
このとき、前記正極活物質は、正極活物質層の総重量に対して80~99wt%、より具体的には、85~98.5wt%の含量で含まれてもよい。前記含量範囲に含まれるとき、優れた容量特性を示すことができるが、必ずしもこれに制限されるものではない。
【0101】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限なく使用可能である。具体例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記導電材は、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0102】
前記バインダーは、正極活物質粒子間の付着及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を果たす。具体例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などが挙げられ、これらのうち、1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して0.1~15重量%で含まれてもよい。
【0103】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除いては、通常の正極製造方法によって製造されてもよい。具体的には、前記正極活物質及び選択的に、バインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した正極スラリー組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することにより製造してもよい。
【0104】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に使用される溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide、DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などが挙げられ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が用いられてもよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造収率を考慮して、前記正極活物質、導電材及びバインダーを溶解又は分散させ、その後、正極製造のための塗布時に優れた厚さ均一度を示すことができる粘度を持たせる程度であれば十分である。
【0105】
また、他の実施例において、前記正極は、前記正極スラリー組成物を別途の支持体上にキャストした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを正極集電体上にラミネーションすることによって製造されてもよい。
【0106】
また、本発明のさらに他の態様によれば、前述の正極を含む電気化学素子が提供されてもよい。前記電気化学素子は、具体的には、電池、キャパシタなどであってもよく、より具体的には、リチウム二次電池であってもよい。
【0107】
前記リチウム二次電池は、具体的には、正極、前記正極と対向して位置する負極、及び前記正極と前記負極との間に介在する分離膜及び電解質を含んでもよい。ここで、前記正極は、前述の通りであるので、便宜上、具体的な説明を省略し、以下では、前述しない残りの構成についてのみ具体的に説明する。
【0108】
前記リチウム二次電池は、前記正極、前記負極及び前記分離膜の電極組立体を収納する電池容器及び前記電池容器を封止する封止部材を選択的にさらに含んでもよい。
【0109】
前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層とを含んでもよい。
【0110】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられてもよい。また、前記負極集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有してもよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの様々な形態で使用されてもよい。
【0111】
前記負極活物質層は、前記負極活物質とともに導電材及び必要に応じて選択的にバインダーとを含む負極スラリー組成物を前記負極集電体に塗布して製造されてもよい。
【0112】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションが可能な化合物が使用されてもよい。具体例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料、Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物、SiOβ(0<β<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープ可能な金属酸化物、またはSi-C複合体またはSn-C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などが挙げられ、これらのいずれか1つまたは2つ以上の混合物が使用されてもよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料としては、低結晶炭素及び高結晶性炭素などがすべて用いられてもよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては無定形、板状、鱗片状、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、液晶ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、炭素微小球体(meso-carbon microbeads)、液晶ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0113】
前記負極活物質は、負極活物質層の全重量を基準に80~99wt%で含まれてもよい。
【0114】
前記バインダーは、導電材、活物質及び集電体間の結合に助力する成分として、通常、負極活物質層の全重量を基準に0.1~10wt%で添加されてもよい。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化-EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、ニトリル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの多様な共重合体などが挙げられる。
【0115】
前記導電材は、負極活物質の導電性をさらに向上させるための成分として、負極活物質層の全重量を基準に10重量%以下、好ましくは、5重量%以下で添加されてもよい。このような導電材は、当該電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスキー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料などが用いられてもよい。
【0116】
一実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥することにより製造されるか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0117】
また、他の実施例において、前記負極活物質層は、負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダー及び導電材を溶媒中に溶解又は分散させて製造した負極スラリー組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極スラリー組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得られたフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0118】
一方、前記リチウム二次電池において、分離膜は、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するもので、通常、リチウム二次電池において分離膜として使用されるものであれば、特に制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗であるとともに電解液含湿能力に優れていることが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムまたはこれらの2層以上の積層構造体が用いられてもよい。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が用いられてもよい。また、耐熱性または機械的強度を確保するため、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされた分離膜が使用されてもよく、選択的に単層または多層構造として使用されてもよい。
【0119】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0120】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでもよい。
【0121】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たすものであれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒、ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒、シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒、ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate、MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい。)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてもよい。これらの中でもカーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用すると電解液の性能が優秀になりうる。
【0122】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供できる化合物であれば、特に制限なく使用されてもよい。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiN(C2F5SO3)、LiN(C2F5SO2)2、LiN(CF3SO2)2、LiCl、LiI、またはLiB(C2O4)2などが使用されてもよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1~2.0M範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するため、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動しうる。
【0123】
前記電解質には、前記電解質構成成分の他に、電池の寿命特性向上、電池容量の減少抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤がさらに1種以上含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1~5重量%で含まれてもよい。
【0124】
前記のように本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び寿命特性を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などに有用である。
【0125】
本発明によるリチウム二次電池の外形は、特に制限がないが、缶を用いた円筒状、角状、ポーチ(pouch)状またはコイン(coin)状などであってもよい。また、リチウム二次電池は、小型デバイスの電源として使用される電池セルに使用できるだけでなく、複数の電池セルを含む中大型電池モジュールに単位電池としても好ましく使用されてもよい。
【0126】
本発明のさらに他の態様によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及び/又はこれを含む電池パックを提供しうる。
【0127】
前記電池モジュールまたは前記電池パックは、パワーツール(Power Tool)と、電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む電気自動車と、または電力貯蔵用システムのいずれか1つ以上の中大型デバイスの電源として利用できる。
【0128】
製造例1.正極活物質の製造
実施例1
共沈法(co-precipitation method)によって球状のNi0.80Co0.12Mn0.08(OH)2水酸化物前駆体を合成した。具体的には、90L級の反応器で硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを80:12:8のモル比で混合した1.5Mの複合遷移金属硫酸水溶液に25wt%のNaOHと30wt%のNH4OHを投入した。反応器内のpHは、11.5を維持させ、この際の反応器の温度は、60℃に維持し、不活性ガスであるN2を反応器に投入して、製造された前駆体が酸化しないようにした。合成撹拌の完了後、Filter press(F/P)装備を通じてろ過し、Ni0.80Co0.12Mn0.08(OH)2水酸化物前駆体(ニッケル複合前駆体)を得た。
【0129】
次に、前記ニッケル複合前駆体にリチウム化合物としてLiOH(Li/(Ni+Co+Mn)mol ratio=1.01)および前記ニッケル複合前駆体に対して1.0mol%のH3BO3を混合した後、焼成炉でO2雰囲気を維持しつつ、700℃まで毎分2℃昇温して12時間熱処理し、解砕して、リチウム複合酸化物を得た。
【0130】
次に、前記リチウム複合酸化物を蒸留水で水洗し、水洗した前記リチウム複合酸化物をろ過した後、乾燥した。
【0131】
具体的には、前記リチウム複合酸化物に対する水洗は、次のように行われた。
・一次水洗
まず、前記リチウム複合酸化物と蒸留水を1:1の重量比となるように混合した後、25℃で30分間撹拌して、混合物を製造した。次に、前記混合物を前駆体合成時に使用した前記複合遷移金属硫酸水溶液に投入すると同時に、NaOHおよびNH4OHを投入して、30分間撹拌した。
【0132】
・二次水洗およびろ過
一次水洗が完了した後、前記リチウム複合酸化物の全重量と同じ重量の蒸留水を使用して前記リチウム複合酸化物を水洗した後、F/P装備を通じてろ過した後、乾燥させて、最終的に正極活物質を得た。
【0133】
実施例2
H3BO3を前記ニッケル複合前駆体に対して0.5mol%となるように混合したことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0134】
実施例3
H3BO3を前記ニッケル複合前駆体に対して2.0mol%となるように混合したことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0135】
実施例4
二次水洗時、前記リチウム複合酸化物の全重量に対して2倍の重量の蒸留水を使用して前記リチウム複合酸化物を水洗したことを除いて、前記実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0136】
実施例5
二次水洗時、前記リチウム複合酸化物の全重量に対して0.5倍の重量の蒸留水を使用して前記リチウム複合酸化物を水洗したことを除いて、前記実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0137】
実施例6
水洗後に乾燥した前記リチウム複合酸化物に前記リチウム複合酸化物に対して0.15mol%のAl2O3および0.3mol%のTiO2を混合した後、焼成炉でO2雰囲気を維持しつつ、680℃まで毎分2℃昇温して8時間さらに熱処理したことを除いて、前記実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0138】
比較例1
H3BO3を混合しない前記ニッケル複合前駆体および前記リチウム化合物の混合物に対する熱処理結果として得られた前記リチウム複合酸化物を水洗しないことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0139】
比較例2
前記ニッケル複合前駆体の熱処理前にH3BO3を混合しないことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0140】
比較例3
前記ニッケル複合前駆体、前記リチウム化合物およびH3BO3の混合物に対する熱処理結果として得られた前記リチウム複合酸化物を水洗しないことを除いて、実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0141】
比較例4
二次水洗時、前記リチウム複合酸化物の全重量に対して3倍の重量の蒸留水を使用して前記リチウム複合酸化物を水洗したことを除いて、前記実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0142】
比較例5
二次水洗時、前記リチウム複合酸化物の全重量に対して0.2倍の重量の蒸留水を使用して前記リチウム複合酸化物を水洗したことを除いて、前記実施例1と同様に正極活物質を製造した。
【0143】
製造例2.リチウム二次電池の製造
製造例1によって製造された正極活物質それぞれ92wt%、人造黒鉛4wt%、PVDFバインダー4wt%をN-メチル-2ピロリドン(NMP)30gに分散させて正極スラリーを製造した。前記正極スラリーを厚さ15μmのアルミニウム薄膜に均一に塗布し、135℃で真空乾燥して、リチウム二次電池用正極を製造した。
【0144】
前記正極に対してリチウムホイルを対電極(counter electrode)とし、多孔性ポリエチレン膜(Celgard 2300、厚さ:25μm)を分離膜とし、エチレンカーボネートおよびエチルメチルカーボネートが3:7の体積比で混合された溶媒にLiPF6が1.15Mの濃度で存在する電解液を使用してコイン電池を製造した。
【0145】
実験例1.正極活物質の成分分析
(1)水洗前後のリチウム複合酸化物中ボロンの含有量の測定
水洗前後のリチウム複合酸化物中ボロン(B)の含有量を測定するために、前記正極活物質に対するICP分析を行った。
【0146】
具体的には、製造例1によって製造された水洗前後の正極活物質をそれぞれ0.05g秤量した後、硝酸2mL、塩酸6mLおよび超純水20mLの混合溶媒に投入して、混合物を製造した後、前記混合物中正極活物質を完全に溶解させた。次に、前記混合物に超純水を投入して、合計100mLとなるように希釈した後、ICP-OES(Perkin Elmer、Avio 500)を用いて前記正極活物質に含まれたリチウム複合酸化物中ボロン(B)の含有量を測定した。
【0147】
水洗前後のリチウム複合酸化物中、ボロン(B)の含有量の測定結果は、下記の表1に示した。表1で、水洗前後の変化率は、水洗前のリチウム複合酸化物中ボロン(B)の含有量に対して、水洗後のリチウム複合酸化物中ボロン(B)の含有量の減少率を示したものであり、括弧内の値は、%で表現したものである。
【0148】
【0149】
(2)水洗前後のリチウム複合酸化物中、リチウム含有不純物(LiOH)の含有量の測定
水洗前後のリチウム複合酸化物中、リチウム含有不純物(LiOH)の含有量を測定するために、pH滴定分析を行った。
【0150】
具体的には、製造例1によって製造された水洗前後のリチウム複合酸化物それぞれを5gずつDIW 100mlに入れ、10分間撹拌(300rpm)した後、ろ過した。次に、ろ過した溶液50mlに0.1N HClを加えて、溶液のpH変化によるHCl消耗量を測定(pH meter、Ag/AgCl metal wire使用)し、HCl投入量に対するpH値を微分して微分グラフを得た。
【0151】
水洗前後のリチウム複合酸化物中、リチウム不純物含有量(LiOH)の測定結果は、下記の表2に示した。参考として、比較例1および比較例3の場合、リチウム複合酸化物に対する水洗を行っていないので、水洗前のリチウム複合酸化物中、リチウム不純物含有量(LiOH)のみを記載した。
【0152】
【0153】
また、前記表1および表2の結果から、水洗前後のリチウム複合酸化物が下記の式1および式2を満たすか否かを確認し、その結果は、下記の表3に示した。
【0154】
[式1]
r<(19,153×x1)+x2
【0155】
(ここで、x1は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、x2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【0156】
[式2]
y1≦r≦y1+(y2×(1-y3)×18,429)
【0157】
(ここで、y1は、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対して前記中和滴定法によってHCl投入量に対するpH値を微分して示した微分グラフにおいて最小のx軸値に現れる第1ピークのx軸値に対応するHCl消耗量から換算したLiOHの量(ppm)であり、y2は、水洗前の前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量(mol%)であり、y3は、水洗前後に前記リチウム複合酸化物中ボロンの含有量の変化率であり、0超過0.90以下の値を有し、rは、水洗後の前記リチウム複合酸化物に対するLiOHの溶出量(ppm)である)
【0158】
【0159】
実験例2.リチウム二次電池の電気化学的特性の評価
製造例2で製造されたリチウム二次電池(コインセル)に対して電気化学分析装置(Toyo、Toscat-3100)を用いて25℃、電圧範囲3.0V~4.3V、0.1Cの放電率を適用して充放電実験を実施して、充電および放電容量を測定した
【0160】
また、同じリチウム二次電池に対して25℃、3.0V~4.4Vの駆動電圧の範囲内で1C/1Cの条件で50回充放電を実施した後、初期容量に対して50サイクル目の放電容量の割合(サイクル容量保持率;capacity retention)を測定した。
【0161】
前記測定結果は、下記の表4に示した。
【0162】
【0163】
実験例3.正極活物質およびリチウム二次電池の安定性の評価
(1)正極活物質の熱的安定性の評価
製造例1によって製造された正極活物質の熱的安定性を評価するために、熱重量分析装置(TA Instruments、Q20)を用いて常圧のAr雰囲気下で25℃から350℃まで10℃/minの昇温速度で重量損失を測定した。この際、それぞれの正極活物質で重量損失(熱分解)ピークが現れる開始温度(On-set Temp)を下記の表5に示した。
【0164】
【0165】
前記表5の結果を参照すると、実施例1~実施例6による正極活物質の熱分解開始温度は、比較例1~比較例5による正極活物質に比べて高いことを確認することができる。
【0166】
特に、表4に記載されたように、比較例3および比較例5による正極活物質を使用したリチウム二次電池の場合、実施例1~実施例6による正極活物質を使用したリチウム二次電池と電気化学的特性を示す一部の指標において類似のレベルであると見られるが、表5に記載されたように、正極活物質の熱的安定性は不十分であることを確認することができる(比較例3の場合、実施例のうち最も苛酷な水洗条件を適用した実施例4と類似したレベルである)。
【0167】
(2)リチウム二次電池のガス発生量の測定
製造例2によって製造されたリチウム二次電池を定電流0.2Cで4.25Vまで充電した後、60℃で14日間保管して、リチウム二次電池内ガス発生に起因するリチウム二次電池の体積変化を測定した。体積変化の測定結果は、下記の表6に示した。
【0168】
【0169】
前記表6の結果を参照すると、製造例2によって製造されたリチウム二次電池のうち実施例1~実施例6による正極活物質を使用したリチウム二次電池の高温保管中の体積変化率が、比較例1~比較例5による正極活物質を使用したリチウム二次電池に比べて、小さいことを確認することができる。
【0170】
特に、表4に記載されたように、比較例3および比較例5による正極活物質を使用したリチウム二次電池の場合、実施例1~実施例6による正極活物質を使用したリチウム二次電池と電気化学的特性を示す一部の指標において類似のレベルであると見られるが、表6に記載されたように、高温貯蔵安定性が不十分であることを確認することができる。
【0171】
以上、本発明の実施例について説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想を逸脱しない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加などにより本発明を多様に修正及び変更させることができ、これも、本発明の権利範囲内に含まれると言える。