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特許7531646半自動または自動係留システムを備えた船舶および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】半自動または自動係留システムを備えた船舶および方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/10 20060101AFI20240802BHJP
   B63B 21/16 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B63B21/10
B63B21/16
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023045689
(22)【出願日】2023-03-22
(62)【分割の表示】P 2020539692の分割
【原出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2023075339
(43)【公開日】2023-05-30
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】20180090
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】521348030
【氏名又は名称】コングスベルグ・マリタイム・アーエス
【氏名又は名称原語表記】KONGSBERG MARITIME AS
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シピレ、サウリ ペッテリ
(72)【発明者】
【氏名】ルバンデル、オスカル
(72)【発明者】
【氏名】キャラウェイ、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ロメク、ミカル
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-99881(JP,A)
【文献】特開昭61-94887(JP,A)
【文献】特開昭56-116586(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0176189(EP,A1)
【文献】中国実用新案第206231569(CN,U)
【文献】米国特許第4729332(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0118729(KR,A)
【文献】特開2014-073787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/10
B63B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半自動または自動船舶係留システムを備えた船舶(3)であって、前記船舶(3)は、船体(22)と、
係留ラインウインチユニット(7)と、
前記ウインチユニット(7)から延びる少なくとも1つの係留ラインと、
前記少なくとも1つの係留ラインの端のウエイト(14)と、
少なくとも1つの係留ラインガイドブーム開口部(12)で構成された少なくとも1つの係留ラインガイド、および係留ラインガイド部分(26)を備えた、前記船体(22)と整列した後退位置と延長位置との間で移動可能な係留ラインガイドブーム(5)と、を備え、
前記船体(22)が少なくとも1つの船体開口部(11)を含み、前記少なくとも1つの係留ラインが前記少なくとも1つの船体開口部(11)を通って延びており、
前記係留ラインガイドブーム(5)が、前記係留ラインガイド部分(26)を前記船体(22)と整列した前記後退位置と船体の側面から延びた前記延長位置との間で直線的にシフトするように設けられた伸縮要素(17)または直線的に延びるアーム(23)を含み、
前記係留ラインガイド部分(26)が船体(22)と整列した前記後退位置にあるとき、前記係留ラインガイドが少なくとも1つの船体開口部(11)と整列しており、
これにより、前記延長位置にある前記係留ラインガイド部分(26)は、前記ウインチユニット(7)が前記係留ラインガイドを通って岸壁(1)まで延びる前記係留ラインの前記端で前記ウエイト(14)を下げることを可能にする、
船舶。
【請求項2】
前記少なくとも1つの係留ラインは、メッセンジャライン(8)と、前記メッセンジャライン(8)に取り付けられた主係留ライン(9)とを含み、前記ウエイト(14)は、前記メッセンジャライン(8)の端に取り付けられる、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記ウエイト(14)は、少なくとも前記ウインチユニット(7)を制御する岸側コントローラ(18)を含む、請求項1または2に記載の船舶。
【請求項4】
前記ウインチユニット(7)は、前記船体(22)の内部に位置する、請求項1~3のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項5】
前記少なくとも1つのウエイト(14)は、前記係留ラインガイド部分(26)の係留ラインガイドブーム開口部(12)を取り囲む開口部シート(13)に一致する円錐形着座部分(15)を含み、前記少なくとも1つの係留ラインが後退位置にあるときに前記船体開口部(11)を密閉する、請求項1~4のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項6】
前記少なくとも1つのウエイト(14)は、平らな底面(4)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項7】
前記船舶は、自律船舶である、請求項1~6のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項8】
各々2つまたは3つの係留ライン(9)を含む2つ以上の半自動または自動船舶係留システムを含み、各係留ライン(9)は、前記ウインチユニット(7)によって制御され、前記ウインチユニットは、各係留ライン(9)に対して1つの係留ラインドラム(28)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項9】
前記係留ラインガイド部分(26)が、前記伸縮要素(17)の外端に配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項10】
前記伸縮要素(17)が単一の伸縮要素(17)であり、前記伸縮要素(17)の端部にある前記係留ラインガイド部分(26)がT字を形成している、請求項9に記載の船舶。
【請求項11】
前記伸縮要素(17)は、前記係留ラインガイド部分(26)を前記後退位置と前記延長位置との間で移動させるための能動的リニアアクチュエータまたは受動的リニアアクチュエータを含む、請求項9に記載の船舶。
【請求項12】
前記受動的リニアアクチュエータは、前記係留ラインガイドブーム(5)および前記係留ラインガイド部分(26)を延長位置に向けて付勢するスプリング要素を含む、請求項11に記載の船舶。
【請求項13】
前記スプリング要素は、機械式スプリング、油圧シリンダおよび液圧アキュムレータ、ガススプリングのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の船舶。
【請求項14】
前記アクチュエータが受動的なリニアアクチュエータであり、前記ウインチユニット(7)が、前記係留ラインガイドブーム(5)を後退させるように適合されている、請求項12に記載の船舶。
【請求項15】
前記船体(22)の凹部(19)が前記ラインガイド部分(26)の形状に適合する形状を有し、前記係留ラインガイドブーム(5)を後退しているときに前記ラインガイド部分(26)を前記船体(22)に面一に装着することができる、請求項1~14のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項16】
前記ウインチユニット(7)は、前記係留ラインのそれぞれに対して1つのウインチドラム(28)を含み、前記ウインチドラム(28)は個別に操作可能である、請求項1~15のいずれか一項に記載の船舶。
【請求項17】
半自動または自動船舶係留システムを備えた船舶(3)の半自動または自動係留の方法であって、前記船舶(3)は、船体(22)と、
係留ラインウインチユニット(7)と、
前記ウインチユニット(7)から延びる少なくとも1つの係留ラインと、
前記少なくとも1つの係留ラインの端のウエイト(14)と、
係留ラインガイド部分(26)上の少なくとも1つの係留ラインガイドを備えた、前記船体(22)と位置合わせされた後退位置と延長位置との間で移動可能な係留ラインガイドブーム(5)と
を含み、
前記方法は、
岸壁(1)に沿って来るように前記船舶(3)を航行するステップと、
前記係留ラインガイド部分(26)を前記船体(22)に沿って後退位置から前記岸壁(1)の上の延長位置に移動させるステップと、
前記ウインチユニット(7)を作動させて前記ウエイト(14)を前記岸壁(1)に下げるステップと、
前記係留ラインガイド部分(26)を前記岸壁(1)の上の前記延長位置から前記船体(22)に沿って前記後退位置に移動させるステップと、
前記係留ラインを引き出して前記係留ラインの係留ライン取り付け部分を受け取るステップと、
前記係留ライン取り付け部分を前記岸壁の係留ライン取り付け要素に取り付けるステップと、
前記ウインチユニットを操作して係留ラインの締め付けを調整するステップと
を含む、方法。
【請求項18】
前記船舶係留システムは、複数の係留ラインを含み、前記方法は、
前記複数の係留ラインのそれぞれを引き出し、前記複数の係留ラインのそれぞれの複数の係留ライン取り付け部分を受け取るステップと、
前記複数の係留ライン取り付け部分を前記岸壁のさらなる係留ライン取り付け要素に取り付けるステップと、
前記ウインチユニットを操作して前記複数の係留ラインのそれぞれの締め付けを調整するステップと
を繰り返すことをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ウインチユニットを操作して係留ラインの締め付けを調整するステップは、前記少なくとも1つのウエイト(14)に取り付けられた岸側コントローラ(18)を操作することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記岸壁に設置された前記係留ライン取り付け要素は、ボラード(2)であり、前記係留ラインの前記係留ライン取り付け部分は、係留ラインアイ(16)である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半自動または自動船舶係留システムを備えた船舶およびそのようなシステムとドッキングするための方法に関する。本発明の船舶は、典型的には自律船舶であるが、本発明は有人船舶であってもよい。自律船舶のドッキングは、船舶に人員がいない状態で行うのが最適である。本発明は、特別な設備または岸壁の適合を必要とせずに、係留ラインを岸壁に自動的に提示するシステムを提供することによって、本問題を解決する。しかし、岸壁には、係留ラインをボラードまたは他の適切な取り付け構造物に取り付けるためのクルーを含める必要がある。システムは、係留ラインを単独で、またはライン固定ユニットと組み合わせて解放、締め付け、および定位置に保持することができる搭載型係留ラインウインチを含む。全自動システムの場合、岸壁には、係留ラインを自動的に取り付けるためのシステムを含めなければならない。
【背景技術】
【0002】
従来技術の解決策は、船舶を岸壁に保持するための様々なタイプのアームまたはブームによる解決策を含む。アームは、典型的には、手動で操作される。しかし、これらの解決策のほとんどは、岸壁を何らかの方法で船舶に適合させる必要がある。他のタイプは、係留が完了した後に係留の一部を形成するアームを含む。
【発明の概要】
【0003】
本発明では、アームは自動的に操作され、アームは係留が完了した後に係留の一部を形成しない。手動操作または解決策の介入を岸壁から行ってもよい。本発明の目的は、係留システムに特に適合していない岸壁で使用することができる、少なくとも半自動のシステムを提供することである。
【0004】
本発明のシステムは、岸壁に特別に適合された制御システムを必要とせず、かつ無人船舶に搭載された手動操作を必要としない。
【0005】
システムを船舶の上部のデッキ領域から完全に離して、その領域を他の目的のために確保することができる。
【0006】
システムは、複数の係留ラインと組み合わせて使用することができ、システムをブレストライン、スプリングライン、バウライン、スターンラインなどに使用することが可能である。
【0007】
システムはまた、典型的にはシステムの一部として使用されるウエイトに取り付けられた制御ユニットを含む。
【0008】
本発明は、半自動または自動船舶係留システムを備えた船舶に関する。船舶は、船体と、係留ラインウインチユニットと、前記ウインチユニットから延びる少なくとも1つの係留ラインとを含む。ウエイトは、少なくとも1つの係留ラインの端に固着される。係留ラインガイド部分に少なくとも1つの係留ラインガイドを備えた係留ラインガイドブームは、船体と位置合わせされた後退位置と岸壁の上の延長位置との間で移動可能である。延長位置にある係留ラインガイドブームは、ウインチユニットが少なくとも1つの係留ラインガイドを通って岸壁まで延びる少なくとも1つの係留ラインの端でウエイトを下げることを可能にする。
【0009】
船体は、船体開口部を含んでもよく、少なくとも1つの係留ラインは、船体開口部を通って延びてもよい。
【0010】
少なくとも1つの係留ラインは、メッセンジャラインと、メッセンジャラインに取り付けられた主係留ラインとを含んでもよい。ウエイトは、メッセンジャラインの端に取り付けられてもよい。
【0011】
ウエイトは、少なくともウインチユニットを制御する岸側コントローラを含んでもよい。
【0012】
ウインチユニットは、船体の内部に位置してもよい。
【0013】
少なくとも1つのウエイトは、係留ラインガイドブーム開口部を取り囲むシートに一致する円錐形着座部分を含んでもよい。船体が少なくとも1つの船体開口部を含むとき、ウエイトは、したがって少なくとも1つの係留ラインが後退位置にあるときに船体開口部を密閉してもよく、波または海水しぶきから水が開口部/複数の開口部に入る危険を冒さずに開口部/複数の開口部を船体のさらに下に位置させることができる。
【0014】
ウエイトは、平らな底面を含んでもよい。
【0015】
係留ラインガイドブームは、船体に旋回可能に支持されてもよく、船体と位置合わせされた後退位置と延長位置との間で係留ラインガイドブームを揺動させるために設けられた係留ラインガイドブームアクチュエータを含んでもよい。
【0016】
半自動または自動船舶係留システムの係留ラインガイドブームは、代替の実施形態では、船体と位置合わせされた後退位置と延長位置との間で係留ラインガイドブームを直線的にシフトさせるために設けられた伸縮要素を含んでもよい。
【0017】
船舶は、各係留ライン用の表示灯を含んでもよい。
【0018】
船舶は、自律船舶であってもよい。
【0019】
船舶は、各々3つの係留ラインを含む2つの半自動または自動船舶係留システムを含んでもよく、各係留ラインは、ウインチユニットによって制御され、ウインチユニットは、各係留ラインに対して1つの係留ラインドラムを含む。
【0020】
本発明は、半自動または自動船舶係留システムを備えた船舶の半自動または自動係留の方法を含む。船舶は、船体と、係留ラインウインチユニットと、前記ウインチユニットから延びる少なくとも1つの係留ラインと、少なくとも1つの係留ラインの端のウエイトと、少なくとも1つの係留ラインガイドを備えた係留ラインガイドブームとを含む。係留ラインガイドブームは、船体と位置合わせされた後退位置と延長位置の間で移動可能である。方法は、岸壁に沿って来るように船舶を航行するステップを含む。次に、係留ラインガイドブームは、船体に沿って後退位置から岸壁の上の延長位置に移動する。ウインチユニットが作動され、ウエイトを岸壁に下げる。係留ラインガイドブームは、岸壁の上の延長位置から船体に沿って後退位置に移動する。係留ラインは、係留ラインの係留ライン取り付け部分を受け取るように引き出され、係留ライン取り付け部分は、岸壁の係留ライン取り付け要素に取り付けられ、ウインチユニットが操作され、係留ラインの締め付けを調整する。
【0021】
船舶係留システムがさらなる係留ラインを含む場合、方法は、さらなる係留ラインを引き出し、さらなる係留ラインのさらなる係留ライン取り付け部分を受け取るステップを繰り返すことを含む。さらなる係留ライン取り付け部分は、岸壁のさらなる係留ライン取り付け要素に取り付けられ、ウインチユニットが操作され、さらなる係留ラインの締め付けを調整する。
【0022】
ウインチユニットを操作して係留ラインの締め付けを調整するステップは、少なくとも1つのウエイトに取り付けられた岸側コントローラを操作することを含む。
【0023】
1つまたは複数の搭載型係留ラインウインチは、従来のドラムウインチである必要はないが、自動的に供給されるキャプスタンウインチであってもよく、複数の係留ラインと組み合わせて使用することもできる。ウインチユニットはまた、複数の係留ラインに使用することができる把握および解放タイプのワイヤウインチを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の構成における本発明の係留システムを備えた船舶の一部を示す図である。
図2】第2の構成における本発明の係留システムを備えた船舶の一部を示す図である。
図3】第3の構成における本発明の係留システムを備えた船舶の一部を示す図である。
図4】第4の構成における本発明の係留システムを備えた船舶の一部を示す図である。
図5】第5の構成における本発明の係留システムを備えた船舶の一部を示す図である。
図6】上から見た、本発明の第1の実施形態の概略図である。
図7】上から見た、本発明の第2の実施形態の概略図である。
図8】船体側に設置された係留ラインガイドブームを示す、側方からの本発明の第3の実施形態の概略図である。
図9】本発明によるドッキングのシーケンスの概略図である。
図10】本発明による出航のシーケンスの概略図である。
図11】本発明の代替の実施形態の半自動または自動船舶係留システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図5は、自律船舶に乗り込む必要のない船舶のドッキングのシーケンスを示す。
【0026】
図1では、船舶3が岸壁1に沿って置かれている。ボラード2は、岸壁1に固着されている。船舶3は、旋回点10において船舶3の船体の側部に旋回可能に支持された揺動アームによって提供される係留ラインガイドブーム5を含む。平らな底面4を備えた3つのウエイト14は、係留ラインガイドブーム5の円錐形着座面に位置して着座面を密閉し、海水しぶきが船体に入るのを防止する。ウエイト14の平らな底部4および係留ラインガイドブーム5は、滑らかな船体側部を提供するために船体に面一に装着されてもよい。
【0027】
係留ラインガイドブーム5は、図1図6および図8図10の実施形態では、係留ラインガイドブーム開口部を備えた係留ラインガイドブーム5の外側部分によって構成される係留ラインガイド部分26を含む。
【0028】
船舶内部のウインチは、ウエイト14をこの着座位置に保持する。
【0029】
シーケンスは、以下を含む:
1.図1、トランジット位置、システムは操作されず、ウエイトは係留ラインガイドブームと実質的に面一であり、係留ラインガイドブームは船体に沿って実質的に水平に置かれている。係留ラインガイドブームは、船体の凹部に位置することができる。
【0030】
2.図2、係留プロセスのステップ1:
係留ラインガイドブームは外に揺動され、船体からある角度に、典型的には垂直にあり、船体から実質的に水平に外に延びている。3つの係留ラインの最初の部分を形成する3つのメッセンジャラインは、係留ラインガイドブームの延長を可能にするために引き出される。
【0031】
3.図3、係留プロセスのステップ2:
係留ラインは、係留ラインガイドブームが延長位置にある間にウエイトを岸壁に下げるためにさらに引き出される。
【0032】
4.図4、係留プロセスのステップ3:
係留ラインガイドブームは、ウエイトが岸壁に残っている間に図1の位置に揺動して戻される。
【0033】
係留ラインガイドブームは、係留ラインが係留ラインガイドブームを通って延びる間に静止位置に後退し、係留ラインは、常に係留ラインガイドブームを通って延びる。
【0034】
5.図5、係留プロセスのステップ4:
メッセンジャラインの1つを引っ張って主係留ラインの1つを引き出し、この主係留ラインを岸壁に固着する。船体内部のウインチシステムは、この主係留ラインを締め付けるために岸側コントローラによって操作される。無視できるほどの荷重が、係留ラインから係留ラインガイドブームに伝達される。
【0035】
6.図5、係留プロセスのステップ5:
必要に応じて、残りの係留ラインを使用してステップ4を繰り返す。
【0036】
図2は、船体から外へと揺動した位置にある係留ラインガイドブーム5を示すことを除いて、図1に対応する。船体凹部19は、係留ラインガイドブーム5を収容するために船体の側部に位置し、係留ラインガイドブーム5が後退位置にあるとき、係留ラインガイド部分26を含む係留ラインガイドブーム5全体が船体と面一になることを可能にする。係留ラインガイドブーム5は、係留ラインガイドブーム5の内側端の旋回点10を中心に旋回した、外へと揺動した延長位置で示されている。係留ラインガイドブームの長さは、船体の側部から岸壁1の上の位置まで安全に延びるのに十分でなければならない。メッセンジャライン8は、係留ラインガイドブーム開口部に着座したウエイト14を保持する。メッセンジャライン8は、船体開口部11(ホース)を通って延び、船体内部の1つまたはいくつかのウインチに接続される。したがって、船舶の航行が良好である限り、係留ラインガイドブームは比較的短くてもよい。2~3メートル以下から最も内側のウエイトであれば、十分である。メッセンジャライン8は、主係留ラインの延長としてウインチに巻き取られ、わずかに弾性であり得、係留ラインガイドブーム開口部に着座したウエイト14をしっかりと保持する。係留ラインガイド部分26は、リアルタイムのライブ画像をコントローラ/港長/遠隔に位置する制御室に送るか、またはパターンマッチングソフトウェアを用いて情報をコンピュータに提供することができるカメラ29を含む。
【0037】
図3は、岸壁1に静止したウエイト14を示すことを除いて、図2に対応する。メッセンジャライン8は、船体内部のウインチによって解放されており、ウエイト14によって係留ラインガイドとして作用する係留ラインガイドブーム開口部12/ホースを通して引っ張られる。係留ラインガイドブーム開口部は、係留ワイヤの最も広い部分が開口部を通ることを可能にするように適合された直径を有する、円形または楕円形の開口部である。係留ラインの最も広い部分は、典型的には、係留ラインアイ16(図5に示される)との取り付け部分部である。円形/楕円形の開口部の直径は、例えば、係留ラインアイによって形成された係留ライン取り付け部分の幅の2倍であり得る。開口部は、係留ラインのホースまたはフェアリーダを形成し、係留ラインおよびフェアリーダの摩耗を減らすために丸みを帯びた縁を含む。係留ラインガイドブームアクチュエータ6は、係留ラインガイドブームをドッキングのための位置に維持するために延長位置にある。船体開口部11は、ウインチの外部に位置し、係留ラインガイドブームが後退位置にあるとき、係留ラインガイドブーム開口部12と位置合わせされる。ウエイト14の平らな底面により、ウエイトは岸壁に安定して位置するようになる。メッセンジャライン8は、その外側端でウエイト14に固定される。係留ライン取り付けまたは解放シーケンスを示す表示灯27は、ウエイト14、係留ラインガイド部分、または船舶3に位置することができる。
【0038】
図示の実施形態は、船体および係留ラインガイドブームに3つの係留ライン開口部を含み、係留ラインのフェアリーダ/ホースを形成する。
【0039】
あるいは、係留ラインガイドブーム開口部は、船体内部のローラフェアリーダにアクセス可能なように寸法設定されてもよい。ローラフェアリーダはまた、係留ラインガイドブームのホースと置き換えることができる。
【0040】
図4は、船体凹部に位置する後退位置にある係留ラインガイドブーム5を示すことを除いて、図3に対応する。係留ラインガイドブーム開口部12は、船体開口部と位置合わせされ、メッセンジャライン8がウインチから、船体を通り岸壁1のウエイト14に至ることを可能にする。メッセンジャライン8を引き込んでも、この位置では係留ラインガイドブーム5に荷重がかからない。ウエイト14は、係留ラインガイドブーム開口部12を取り囲む開口部シートに対して着座するための円錐形着座面15を含む。
【0041】
岸側コントローラ18は、ウインチを制御するためにウエイトの1つに位置する。岸側コントローラ、ウインチ、および係留ラインガイドブームアクチュエータの間の通信は、メッセンジャラインに沿って実行することも、ワイヤレスにすることも可能である。図5は、ボラード2に取り付けられた主係留ラインアイ16によって形成された主係留ライン取り付け部分を備えた主係留ライン9を示すことを除いて、図4に対応する。残りの2つのメッセンジャライン/パイロットライン8は、例えばブレストライン、スプリングライン、バウライン、スターンラインなどのさらなる主係留ラインを延長するために使用することができる。係留ラインガイドブーム開口部は、ウエイトの円錐形着座面15の形状を補完する形状を有する開口部シート13によって取り囲まれている。
【0042】
図6は、本発明の揺動式自律船舶係留システムの概略図である。係留ラインガイドブーム5は、平らな底部4を有するウエイト14のための開口部シート13を備えた開口部を含む。開口部は、船体22の船体開口部11と位置合わせされる。アクチュエータ6は、係留ラインガイド部分が延長位置と船体22と一致する位置(図示されるような)との間にある状態で係留ラインガイドブーム5を作動させる。アクチュエータ6は、油圧シリンダ、電気機械式アクチュエータなどの能動的な二方向(イン/アウト)制御アクチュエータ、または受動スプリング要素であってもよい。アクチュエータが受動スプリング要素であるとき、ウインチユニットを使用して、係留ラインガイドブーム5を延長または後退させることができる。スプリング要素は、機械式スプリング、油圧シリンダおよび液圧アキュムレータ、ガススプリングなどを含んでもよい。メッセンジャライン8は、主係留ライン(図示せず)と接合され、ライン固定ユニット20を通って延びてライン8をウインチユニット7に固定または解放することができる。ライン停止検出器21は、ラインが完全に後退し、ウエイトが開口部シート13に着座したときにウインチが停止すべきであることを示す信号を提供する。ウインチユニット7が荷重下でラインを保持することができる場合、ライン固定ユニット20は省略されてもよい。ウエイト14は、ウエイト14が図示のその後退位置にあるとき、船体開口部11を密閉する。
【0043】
図7は、係留ラインガイドブーム5および係留ラインガイド部分26を直線的に内外に移動させるための直線的に延びるアーム23を備えた代替の実施形態を示す。この実施形態では、「係留ラインガイドブーム」は、揺動または旋回しない。「直線的に延びるアーム」は、この文脈では、船体の外部で、または船体の凹部内で船体と位置合わせされた位置から、岸壁の上に位置する延長位置までの「係留ラインガイド部分26の直線的な変位を可能にする要素をカバーすることを意図している。残りの要素は、図6の要素に対応する。
【0044】
図8は、係留ラインガイドブーム5が3つの個々の係留ラインガイドブーム部12a、12bおよび12cに分割され、各々がホースを運ぶ一実施形態を示す。3つの係留ラインガイドブーム部は、複数の係留ラインでの係留を容易にするために、アクチュエータで独立して作動させることができる。個々の係留ラインガイドブーム部12a、12bおよび12cは、共通の旋回点を有しており、最も内側で最も短い係留ラインガイドブーム12cは、2番目の最も内側で中間の係留ラインガイドブーム12bの切り欠き24に位置し、次いで係留ラインガイドブーム12bは、外側の最も長い係留ラインガイドブーム12aの切り欠き24に位置する。係留ラインガイドブーム12は、船体22の凹部19に位置する。
【0045】
図9(a)~(f)は、ドッキング中のシーケンスを示す。(同じ参照番号がすべての図9(a)~(f)に適用される)。
【0046】
図9(a)では、船舶3は、岸壁1に沿って航行される。本発明の半自動または自動船舶係留システムは、非アクティブである。図1も参照されたい
【0047】
図9(b)では、係留ラインガイドブーム5は、係留ラインガイドブームアクチュエータ6によって延長され、ウインチユニット7の操作は、係留ラインガイドブームアクチュエータ6の操作と協調し、ウエイト14を係留ラインガイドブーム5に着座したそれぞれの位置に維持しながら係留ラインガイドブーム5の延長を可能にする。図2も参照されたい
【0048】
図9(c)では、左ウインチユニット7が操作され、左ウエイト14が岸壁に下げられる。
【0049】
図9(d)では、右ウインチユニット7が操作され、右ウエイト14が岸壁に下げられる。
【0050】
図9(e)では、係留ラインガイドブーム5は、係留ラインガイドブームアクチュエータ6によって後退され、中央ウインチユニット7の操作は、係留ラインガイドブームアクチュエータ6の操作と協調し、中央ウエイト14を係留ラインガイドブーム5に着座したそれぞれの位置に維持しながら係留ラインガイドブーム5の後退を可能にする。
【0051】
図9(f)では、ドック作業員25が左メッセンジャライン8を引っ張って左主係留ライン9を引き出しており、左主係留ラインアイ16が左ボラード2に取り付けられようとしている。ボラード2に取り付けられた左係留ラインアイ16を示す図5も参照されたい。
【0052】
図10(a)~(e)は、解放中のシーケンスを示す。(同じ参照番号がすべての図10(a)~(e)に適用される)。
【0053】
図10(a)では、2つの主係留ライン9が2つのボラード2に固着され、船舶3が係留されている。ドック作業員25は、メッセンジャライン8の端でウエイト14上の岸側コントローラ18を制御する。
【0054】
図10(b)では、ドック作業員25は、右主係留ラインの張力を解放し、主係留ラインアイ16をボラード2から持ち上げており、それによって右主係留ラインを解放している。
【0055】
図10(c)では、ドック作業員25は、岸側コントローラ18を用いて右ウインチユニット7を操作し、主係留ラインを船舶3に引き込んでいる。
【0056】
図10(d)では、ドック作業員25は、メッセンジャライン8の端でウエイト14上の岸側コントローラ18を用いて左ウインチユニット7を操作しており、左主係留ライン9の張力を解放している。
【0057】
図10(e)では、ドック作業員25は、左主係留ラインの張力を解放し、主係留ラインアイ16をボラード2から持ち上げており、それによって左主係留ラインを解放している。
【0058】
岸側コントローラ18は、ウエイト14が後退した係留ラインガイドブーム5に着座したそれぞれの静止位置にある状態で、すべてのウインチをそれらの待機位置まで自動的に動かす機能を含むことができる。
【0059】
図11(a)~(c)は、本発明の代替の実施形態の係留ラインガイド部分26を備えた係留ラインガイドブーム5の延長を示す。この実施形態では、本発明の半自動または自動船舶係留システムは、単一の伸縮要素17と、係留ラインガイドブーム5の一部を形成する単一の伸縮要素17の外側端にある係留ラインガイド部分26とを含む。伸縮要素および伸縮要素の端の係留ラインガイド部分26は、Tを形成する。係留ラインガイドブーム開口部またはガイド12は、単一の伸縮要素17によって前方にもたらされる主係留ライン9を運ぶように示されている。これは、状況によっては、メッセンジャラインが省略される場合があることを強調するためである。単一の伸縮要素は、図11(a)に示される後退位置、図11(b)に示される部分的に延長された位置、および図11(c)に示される完全に延長された位置の間で係留ラインガイドブームを移動させる受動または能動線形アクチュエータを含み得る。受動アクチュエータは、係留ラインガイドブーム5および係留ラインガイド部分26を延長位置に向かって付勢するスプリング要素を含むことができる。次に、ウインチユニット7を使用して、係留ラインガイドブーム5を延長または後退させることができる。スプリング要素は、機械式スプリング、油圧シリンダおよび液圧アキュムレータ、ガススプリングなどを含んでもよい。船体の凹部19は、ラインガイド部分26の形状に一致する形状を有してもよく、係留ラインブームが後退されるときにラインガイド部分を船体に面一に装着することを可能にする。ウインチユニット7は、各係留ラインおよびメッセンジャラインに対して1つのウインチドラム28を含み得る。ウインチドラム28は、個々に操作可能であってもよい。ブーム開口部またはガイド12は、主係留ライン9の繰り出しを容易にするために受動または従動ローラを含み得る。この実施形態では、ウエイトは、主係留ラインに直接固着される。
【0060】
岸側コントローラは、1つまたはすべてのウインチを制御することができる。あるいは、1つの岸側コントローラを多機能または「スマート」コントローラにして、他のいくつかを非常に基本的な機能を備えたコントローラにすることも可能である。
【0061】
別の方法として、システムは、遠隔制御ステーションを介して制御することができる。ライブ映像を転送するカメラは、遠隔制御ステーションと通信して操作を監視し得る。カメラは、係留ラインガイドブーム上、または係留システムによる係留の操作の図、特に主係留ラインおよびボラードの図を提供する別の場所に位置することができる。
【0062】
遠隔の場所、例えば制御室にいる船長は、展開するライン、および係留ラインを接続するためのショアクルー用のシーケンスを事前に決定することができる。
【0063】
システムは、ウエイトを備えたそのメッセンジャラインを特定の順序でショアクルーに自動的に展開するか、または最初に行う係留ラインを示す岸側コントローラと同時に通信することができる(シーケンスを示すために色の点滅する表示灯にすることも可能である)。
【0064】
ショアクルーは、ウインチユニットをアクティブ化し、岸側コントローラを使用してラインを緩めることができる。このモードでは、1つまたは複数のウインチは、張力センサを含んでショアクルーが係留ラインを引き出そうとしていることを確認することができ、ウインチユニットは、係留ラインを引き出すのを支援することが可能である。
【0065】
ショアクルーは、係留ラインがボラードに固着されていること、および係留ラインの張力を調整することができることを岸側コントローラに信号で伝えることができる。遠隔に位置する船長は、張力の程度を事前に決定することが可能である。コンピュータ化された制御システムは、遠隔に位置する船長と置き換えることができる。
【0066】
コントローラは、ドッキング時に特定の自動シーケンスを始めることもでき、センサおよび検出器は、信号を提供してドッキングプロセスを開始し得る。
【0067】
システムは、陸路に到着すると非アクティブ化されてもよい。
【0068】
出発時において出航するとき、遠隔の船長は、システムを再アクティブ化して係留ラインを解放し、ウエイトをそれらのシートにウインチすることが可能であり得る。
【0069】
遠隔に位置する船長/コントローラは、係留ラインの解放シーケンスを決定することができ、これは、張力解放シーケンスおよび岸側コントローラからの通信を通じてショアクルーに通信される。ウエイト上の、または各揺動アーム開口部に関連する色の点滅する表示灯は、解放シーケンスが必要な場合、どの係留ラインを解放するかを示すことができる。信号が出される前に、ショアクルーはボラードから係留ラインを外してはならない。ショアクルーは、ボラードから張力が解放されたラインを外し、次に岸側コントローラのボタンを押し、ウエイトを後退させることができることを示す。ウエイトはすぐに、または所定のシーケンスで後退させることができる。すべての係留ラインが無事に後退されると、システムに知らせることができる。
【0070】
システムは、故障が発生したことを示し、緊急信号を遠隔に位置する船長に提供する必要がある。故障には、1つまたは複数の係留ラインの破損、予想よりも高い荷重、ウインチの故障、トランスデューサの故障などが含まれ得る。
【0071】
船舶は、典型的には、本発明の2つの半自動または自動船舶係留システムを含み、1つはバウ部分に、1つはスターン部分にある。船舶が毎回この側部に沿って来ることができる限り、システムを船舶の片側のみ、典型的にはポート側に含めるだけで十分である。
【0072】
係留ライン取り付け部分は、係留ラインアイとして示されている。しかし、本発明は、ワイヤおよびロープの取り付け分野でよく知られている他のタイプの取り付けをカバーすることを意図している。
【0073】
システムは、岸壁に係留ラインの自動取り付けシステムが備えられている場合、完全に自動化することができる。
【符号の説明】
【0074】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11