(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】回路基板、回路基板の製造方法、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240802BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
H05K3/46 T
H05K1/02 C
(21)【出願番号】P 2023065702
(22)【出願日】2023-04-13
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】504112447
【氏名又は名称】FICT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 憲司
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 徳一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 泰治
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-026689(JP,A)
【文献】特開2005-136007(JP,A)
【文献】特開2019-102790(JP,A)
【文献】特開平06-244549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁性基材と、前記第1絶縁性基材の第1表面にパターン状で形成され
、且つ銅の単層構造、又は銅とニッケルの2層構造を含む金属層と、前記第1表面の前記金属層が配置されていない箇所において前記金属層と同一の厚さを有して積層された第2絶縁性基材と、前記第1絶縁性基材の前記第1表面とは反対側の第2表面に積層された第3絶縁性基材と、前記第3絶縁性基材の前記第1絶縁性基材側とは反対側の表面から前記金属層に達するまで形成され
、且つ導電性ペーストを含むビアとを有する積層体が複数積層されていること
を特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記金属層と前記ビアとは、前記第3絶縁性基材から前記第2絶縁性基材の方向に向けて断面積が小さくなるように形成されていること
を特徴とする請求項1記載の回路基板。
【請求項3】
前記第2絶縁性基材は、感光性樹脂フィルム、又は感光性樹脂ワニスのいずれか一方からなること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の回路基板。
【請求項4】
各前記金属層における前記第2表面側の表面は、算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上2.0μm以下となるように粗面化処理されていること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の回路基板。
【請求項5】
第1絶縁性基材の第1表面に
銅の単層構造、又は銅とニッケルの2層構造を含む金属層をパターン状に形成する金属層形成工程と、
次工程として、前記第1表面の前記金属層が配置されていない箇所において、前記金属層と同一の厚さに第2絶縁性基材を積層して、前記金属層の表面を露出させる第1積層工程と、
次工程として、前記第1絶縁性基材の前記第1表面とは反対側の第2表面に未硬化の第3絶縁性基材、及び樹脂フィルムをこの順で積層する第2積層工程と、
次工程として、前記樹脂フィルムの前記第1絶縁性基材側とは反対側の表面から前記金属層に達するまで
ビアホールを形成し
導電性ペーストを充填するビア形成工程と、
次工程として、前記樹脂フィルムを剥離する剥離工程とによって積層体を形成する第1工程と、
複数の前記積層体を積層する第2工程と、を具備すること
を特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1積層工程の次工程として、前記金属層において前記第1表面側とは反対側の表面を、算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上2.0μm以下となるように粗面化処理する粗面化工程を含むこと
を特徴とする請求項5記載の回路基板の製造方法。
【請求項7】
前記第2絶縁性基材は感光性樹脂フィルムからなり、
前記第1積層工程は、前記第1表面側から前記金属層を覆うように前記感光性樹脂フィルムを貼付する工程と、
前記感光性樹脂フィルムが所定の水分量となるように仮キュアを実施する工程と、露光により前記感光性樹脂フィルムの硬化領域を硬化させる工程と、前記金属層を露出させる工程と、前記感光性樹脂フィルムの水分量がさらに少なくなるように本キュアを実施する工程と、前記金属層及び前記感光性樹脂フィルムを面一にする工程とを含むこと
を特徴とする請求項5または請求項6記載の回路基板の製造方法。
【請求項8】
前記第2絶縁性基材は感光性樹脂ワニスからなり、
前記第1積層工程は、前記第1表面側から前記金属層を覆うように前記感光性樹脂ワニスを印刷する工程と、
前記感光性樹脂ワニスが所定の水分量となるようにキュアを実施する工程と、露光により前記感光性樹脂ワニスの硬化領域を硬化させる工程と、前記金属層を露出させる工程と、前記金属層及び前記感光性樹脂ワニスを面一にする工程とを含むこと
を特徴とする請求項5または請求項6記載の回路基板の製造方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項2記載の回路基板と、電子部品とを有することを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板、回路基板の製造方法、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品をコンパクトに電子機器に組み込むためにプリント配線板などの回路基板が一般に広く使用されている。プリント配線板は、積層板に張り合わせた銅箔を電子回路パターンに従ってエッチングしたものであって、高密度に電子部品を実装することは困難であるが、コスト面で有利である。
【0003】
一方、電子機器に対する小型化、高性能化、低価格化などの要求に伴い、回路基板の電子回路の微細化、多層化、及び電子部品の高密度実装化が急速に進み、回路基板に対し、多層プリント配線板の検討が活発化している。
【0004】
多層構造を有する回路基板である多層プリント配線板を製造する際には、配線パターンが形成された複数の絶縁性基材を接着層により張り合わせることが行われている。一例として、特許文献1(特開2006-66738号公報)には、パターン状の金属層を形成した絶縁層に対して、金属層とは反対側の面に接着樹脂層を配置して、接着樹脂層から金属層の位置までビアを形成した積層板を複数積層した多層プリント配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される多層プリント配線板において、積層板同士を積層する際に絶縁層から突出したパターン状の金属層と、接着層又はビアとを接合させると、電気的接続の信頼性が低下してしまうという課題があった。また、そもそも接着層は、製造された多層プリント配線板においては必要のない材料である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、接着層を用いずに、且つ信頼性の高い電気的接続を可能とする回路基板、回路基板の製造方法、及び電子機器を提供することを目的とする。
【0008】
一つの態様では、本件の回路基板は、第1絶縁性基材と、前記第1絶縁性基材の第1表面にパターン状で形成された金属層と、前記第1表面の前記金属層が配置されていない箇所において前記金属層と同一の厚さを有して積層された第2絶縁性基材と、前記第1絶縁性基材の前記第1表面とは反対側の第2表面に積層された第3絶縁性基材と、前記第3絶縁性基材の前記第1絶縁性基材側とは反対側の表面から前記金属層に達するまで形成されたビアとを有する積層体が複数積層されていることを特徴とする。
【0009】
他の一つの態様では、本件の回路基板の製造方法は、第1絶縁性基材の第1表面に金属層をパターン状に形成する金属層形成工程と、次工程として、前記第1表面の前記金属層が配置されていない箇所において、前記金属層と同一の厚さに第2絶縁性基材を積層して、前記金属層の表面を露出させる第1積層工程と、次工程として、前記第1絶縁性基材の前記第1表面とは反対側の第2表面に未硬化の第3絶縁性基材、及び樹脂フィルムをこの順で積層する第2積層工程と、次工程として、前記第3絶縁性基材の前記第1絶縁性基材側とは反対側の表面から前記金属層に達するまでビアを形成するビア形成工程と、次工程として、前記樹脂フィルムを剥離する剥離工程とによって積層体を形成する第1工程と、複数の前記積層体を積層する第2工程と、を具備することを特徴とする。
【0010】
他の一つの態様では、本件の電子機器は、開示の回路基板と、電子部品とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
一つの側面では、接着層を用いずに、且つ信頼性の高い電気的接続が可能な回路基板を提供することができる。一つの側面では、接着層を用いずに、且つ信頼性の高い電気的接続が可能な回路基板の製造方法を提供することができる。一つの側面では、接着層を用いずに、且つ信頼性の高い電気的接続が可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その1)。
【
図2】
図2は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その2)。
【
図3】
図3は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その3)。
【
図4】
図4は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その4)。
【
図5】
図5は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その5)。
【
図6】
図6は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その6)。
【
図7】
図7は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その7)。
【
図8】
図8は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その8)。
【
図9】
図9は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その9)。
【
図10】
図10は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その10)。
【
図11】
図11は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その11)。
【
図12】
図12は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その12)。
【
図13】
図13は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その13)。
【
図14】
図14は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その14)。
【
図15】
図15は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その15)。
【
図16】
図16は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その16)。
【
図17】
図17は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その17)。
【
図18】
図18は、回路基板の製造方法の一例を示す概略断面図である(その18)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、各実施形態における回路基板、回路基板の製造方法、及び電子機器について詳しく説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0014】
<回路基板の製造方法>
<<概要>>
先ず、
図1~
図18に基づいて、本発明に係る回路基板の製造方法について説明する。回路基板の製造方法は、積層体30を形成する第1工程と、複数の積層体30を積層する第2工程とに大別される2工程とを少なくとも有しており、さらに必要に応じてその他の工程を有する。
【0015】
また、第1工程は、金属層形成工程と、第1積層工程と、第2積層工程と、ビア形成工程と、剥離工程との各工程を少なくとも有しており、さらに必要に応じてその他の工程を有する。なお、第1実施形態と第2実施形態とでは、第1積層工程のみが異なるため、第1積層工程以外の説明は共通として、第1積層工程についての説明の際に、第1実施形態の場合と、第2実施形態の場合とに分けて説明する。
【0016】
<<第1工程>>
<<<金属層形成工程>>>
第1工程のうち、金属層形成工程について説明する。金属層形成工程では、第1絶縁性基材14の一面(第1表面14aと称する場合がある)にパターン状の金属層18を形成する。
【0017】
パターン状の金属層18の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サブトラクティブ(エッチング)法、セミアディティブ法(メッキ法)などが挙げられる。これらは、フォトリソグラフィー法を利用して行うことができる。以下、各実施形態においては、サブトラクティブ(エッチング)法を採用した場合で説明する。
【0018】
先ず、
図1に示すように、第1絶縁性基材14の両面に金属箔12(12a、12b)を張り付けた3層部材10を用意する。
【0019】
第1絶縁性基材14としては、回路基板で用いられる絶縁性基材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラスクロス等を用いた無機織布、無機不織布等の無機基材、有機織布、有機不織布等の有機基材により硬度強化された基材などが挙げられる。
【0020】
より具体的には、第1絶縁性基材14としては、例えば、ガラスエポキシ基材(エポキシ樹脂を浸み込ませたガラス織布基材、エポキシ樹脂を浸み込ませたガラス不織布基材)、ビスマレイミドトリアジン樹脂を浸み込ませたガラス織布基材、エポキシ樹脂を浸み込ませたアラミド不織布基材、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を浸み込ませたガラス織布基材などが挙げられる。ここで、ガラスエポキシ基材とは、ガラス繊維の布(織布又は不織布)にエポキシ樹脂を浸み込ませて得られる基材である。
【0021】
また、第1絶縁性基材14は硬化済みである。ここで、硬化済みとは、例えば全硬化発熱量のおよそ100%を終えた状態であり、例えば、示差走査熱量測定を行った際にほとんど発熱が観察できない状態である。以下、硬化済みのことをCステージと称する場合がある。また、Cステージに達していない硬化度をBステージと称する場合がある。
【0022】
さらに、第1絶縁性基材14は、通常、平板状である。第1絶縁性基材14の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10μm以上200μm以下であってもよいし、30μm以上100μm以下であってもよい。
【0023】
金属箔12としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニッケル、銅が挙げられる。
【0024】
また、金属箔12の構造としては、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。金属箔12としては、例えば、銅の単層構造、銅とニッケルとの2層構造などが挙げられる。
【0025】
次に、
図2に示すように、金属箔12(12a、12b)の表面にレジスト16を貼付する。
【0026】
次に、
図3に示すように、露光装置EMにより露光し、現像装置(不図示)により現像して、
図4に示すように、金属箔12上に所定のパターン状のレジスト16を形成する。露光は金属箔12aに対してのみなされるが、パターン状の金属層18を形成する金属箔12aに対しては、パターン状の金属層18と同様のパターンが形成されたフォトマスクPMを介して露光がなされる。また、金属箔12bの表面のレジスト16は、現像によって完全に除去される。
【0027】
次に、
図5に示すように、エッチングによりパターン状の金属層18を形成する。
【0028】
次に、
図6に示すように、金属層18の表面からレジスト16を除去して、金属層18の表面を露出させる。
【0029】
<<<第1積層工程(第1実施形態)>>>
続いて、第1工程のうち、第1実施形態における第1積層工程について説明する。第1積層工程では、第1絶縁性基材14の第1表面14aの金属層18が配置されていない箇所において金属層18と同一の厚さ(すなわち、第1表面14aを基準として同一の高さ)となるように第2絶縁性基材20を積層して金属層18の表面を露出させる。
【0030】
第2絶縁性基材20としては、回路基板で用いられる絶縁性基材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、本実施形態における第2絶縁性基材20として、感光性樹脂フィルムを採用することができる。なお、感光性樹脂フィルム20は未硬化である。
【0031】
感光性樹脂フィルム20を金属層18に貼付し、真空ラミネート装置(不図示)を利用して、
図7に示すように、金属層18が感光性樹脂フィルム20に隙間なく覆われた状態を得る。
【0032】
次に、
図10に示すように、感光性樹脂フィルム20から金属層18の表面を露出させる。より具体的には、先ず、
図8に示すように、露光装置EMによりフォトマスクPMを介して露光して、
図9に示すように、感光性樹脂フィルム20において硬化領域を形成する。当該硬化領域は、感光性樹脂フィルム20において平面視で金属層18の表面以外の箇所に相当し、露光によりUVが照射される領域である。続いて、感光性樹脂フィルム20が所定の水分量となるように、ベーク炉(不図示)を用いて加熱処理(仮キュア)する。続いて、現像装置(不図示)により感光性樹脂フィルム20を現像することで、硬化領域の感光性樹脂フィルム20のみを第1絶縁性基材14の第1表面14a上に残存させて、金属層18を再び露出させる。続いて、感光性樹脂フィルム20をさらに水分量が少なくなるようにベーク炉により加熱処理(本キュア)する。
【0033】
次に、
図11に示すように、研磨機(不図示)により金属層18と感光性樹脂フィルム20とを面一に形成する。
【0034】
<<<第1積層工程(第2実施形態)>>>
第1実施形態では、第2絶縁性基材20として感光性樹脂フィルムを採用したが、第2実施形態では、第2絶縁性基材40として感光性樹脂ワニスを採用することができる。なお、本実施形態における感光性樹脂ワニス40は未硬化である。感光性樹脂ワニス40を採用した場合の第1積層工程は次の通りである。
【0035】
第1積層工程として、スクリーン印刷機(不図示)により、感光性樹脂ワニス40を金属層18に印刷し、
図7に示すように、金属層18が感光性樹脂ワニス40に隙間なく覆われた状態を得る。
【0036】
次に、
図10に示すように、感光性樹脂ワニス40から金属層18の表面を露出させる。より具体的には、先ず、
図8に示すように、露光装置EMによりフォトマスクPMを介して露光して、
図9に示すように、感光性樹脂ワニス40において硬化領域を形成する。当該硬化領域は、感光性樹脂ワニス40において平面視で金属層18の表面以外の箇所に相当し、露光によりUVが照射される領域である。続いて、感光性樹脂ワニス40が所定の水分量となるように、ベーク炉(不図示)を用いて加熱処理(キュア)する。続いて、現像装置(不図示)により感光性樹脂ワニス40を現像することで、硬化領域の感光性樹脂ワニス40のみを第1絶縁性基材14の第1表面上に残存させて、金属層18を再び露出させる。なお、本実施形態においては、その後の加熱処理(キュア)を有しなくてもよい。
【0037】
次に、
図11に示すように、研磨機(不図示)により金属層18と感光性樹脂フィルム20とを面一に形成する。
【0038】
なお、スクリーン印刷機(不図示)により、感光性樹脂ワニス40を金属層18に印刷した後、スクレーパ(不図示)により、金属層18の厚さ以上に印刷された感光性樹脂ワニス40を除去して、金属層18の表面を露出させてもよい。
【0039】
上記したいずれかの実施形態における第1積層工程により、第1絶縁性基材14の第1表面14aの金属層18が配置されていない箇所において金属層18と同一の厚さを有する第2絶縁性基材20(40)を積層することができる。開示の回路基板の製造方法が第1積層工程を有することにより、積層体30における金属層18側の面が平坦となり、後述する第2工程において、ビア26と金属層18との信頼性の高い電気的接続を実現し得る。
【0040】
<<<粗面化工程>>>
なお、各実施形態における回路基板の製造方法は、第1積層工程の次工程として、金属層18の表面を粗面化する粗面化させる粗面化工程を有していてもよい。より具体的には、CZ装置により金属層18の表面を算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上2.0μm以下となるように粗面化させる。すなわち、開示の回路基板は、第1絶縁性基材14の第2表面14b側の金属層18の表面は、算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上2.0μm以下となるように粗面化処理されていてもよい。
【0041】
また、金属層18の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、5μm以上40μm以下であってもよいし、10μm以上30μm以下であってもよい。
【0042】
<<<第2積層工程>>>
続いて、第1工程のうち、第2積層工程について説明する。第2積層工程では、第1絶縁性基材14の第1表面14aとは反対側の第2表面14bに未硬化の第3絶縁性基材22、及び樹脂フィルム24をこの順で積層させる。
【0043】
第2積層工程として、
図12に示すように、第1絶縁性基材14の第2表面14bに未硬化の第3絶縁性基材22、及び樹脂フィルム24をこの順で重ねて、熱圧着を行う。
【0044】
第3絶縁性基材22としては、回路基板で用いられる絶縁性基材であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラスクロス等を用いた無機織布、無機不織布等の無機基材、有機織布、有機不織布等の有機基材により硬度強化された基材などが挙げられる。
【0045】
より具体的には、第3絶縁性基材22としては、例えば、ガラスエポキシ基材(エポキシ樹脂を浸み込ませたガラス織布基材、エポキシ樹脂を浸み込ませたガラス不織布基材)、ビスマレイミドトリアジン樹脂を浸み込ませたガラス織布基材、エポキシ樹脂を浸み込ませたアラミド不織布基材、変性ポリフェニレンエーテル樹脂を浸み込ませたガラス織布基材などが挙げられる。ここで、ガラスエポキシ基材とは、ガラス繊維の布(織布又は不織布)にエポキシ樹脂を浸み込ませて得られる基材である。
【0046】
また、第3絶縁性基材22の材質は、熱硬化性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂としては、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂(PPE/PPO樹脂)、ポリイミド樹脂(PI樹脂)、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)が好ましい。これらの樹脂は、低誘電率且つ低誘電正接の樹脂であることから、これらの樹脂を用いることで、電気信号の伝送損失を低減することができる。
【0047】
さらに、第3絶縁性基材22は、通常、平板状である。第3絶縁性基材22の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10μm以上150μm以下であってもよいし、20μm以上100μm以下であってもよい。
【0048】
さらに、第1絶縁性基材14の平均厚みと、第3絶縁性基材22の平均厚みとの比率(第1絶縁性基材14:第3絶縁性基材22)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、回路基板50の製造性、及び厚み寸法制御の点から、4.0:1.0~1.0:1.0が好ましく、2.0:1.5~1.5:1.0がより好ましい。
【0049】
さらに、樹脂フィルム24としては、熱圧着の際に溶融しない樹脂フィルムであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイトフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。
【0050】
さらに、樹脂フィルム24の第3絶縁性基材22側の表面は粗面であることが好ましい。そうすることで、熱圧着後の第3絶縁性基材22と樹脂フィルム24との一時的接着力をより高くして、他の工程において、第3絶縁性基材22と樹脂フィルム24とが意図せずに剥離することを避けることができる。
【0051】
樹脂フィルム24の表面を粗面にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ブラスト加工、エンボス加工、コーティング加工などが挙げられる。粗面の算術平均粗さ(Ra)としては、例えば1.0μm以上2.0μm以下などが挙げられる。
【0052】
また、樹脂フィルム24の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10μm以上100μm以下などが挙げられる。
【0053】
さらに、熱圧着の際の温度、圧力、及び時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。温度としては、例えば、50℃以上100℃以下が挙げられる。圧力としては、例えば、0.5MPa以上1.2MPa以下が挙げられる。時間としては、上記温度下、及び上記圧力下で60秒以上120秒以下が挙げられる。
【0054】
なお、熱圧着の際には、第3絶縁性基材22を完全に硬化させないが硬化させることが好ましい。すなわち、熱圧着の際には、第3絶縁性基材22をCステージまで硬化させず、Bステージまで硬化させることが好ましい。第3絶縁性基材22をBステージまで硬化させた後に、第3絶縁性基材22にビアホールVHを形成すると、当該ビアホールVHの寸法安定性が向上するからである。他方、第3絶縁性基材22をCステージまで完全硬化させずに、複数の積層体30を重ねた後に熱圧着して回路基板50を製造すると、一の積層体30の第3絶縁性基材22と、他の積層体30の第2絶縁性基材20との接着性が優れるからである。さらに、第3絶縁性基材22をCステージまで完全硬化させずに、複数の積層体30を積層して熱圧着すると、位置の積層体30の金属層18が、他の積層体30の第3絶縁性基材22に埋め込まれやすくなり、均一な厚みの回路基板が得られるからである。
【0055】
<<<ビア形成工程>>>
続いて、第1工程のうち、ビア形成工程について説明する。ビア形成工程では、樹脂フィルム24における第1絶縁性基材14の第1表面14a側とは反対側の表面から金属層18に達するまでビアを形成する。
【0056】
図13に示すように、樹脂フィルム24の第1絶縁性基材14の第1表面側とは反対側の表面から金属層18に達するまでビアホールVHを形成する。
【0057】
ビアホールVHを形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザを用いて穿孔する方法などが挙げられる。
【0058】
また、レーザとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CO2レーザ、YAGレーザなどが挙げられる。
【0059】
さらに、レーザの出力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜変更することができる。
【0060】
ビアホールVHとしては、金属層18の第1絶縁性基材14側の表面が露出していれば、開口径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、50μm以上500μm以下であってもよいし、100μm以上300μm以下であってもよい。なお、ここでの開口径は、例えば、第3絶縁性基材22の樹脂フィルム24側の表面の開口径を指す。
【0061】
ビアホールVHの形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂フィルム24側の開口部から金属層18に向かってその径が漸次小さくなる形状(テーパ形状)などが挙げられる。
【0062】
一の積層体30に形成されるビアホールVHの数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0063】
次に、
図14に示すように、各ビアホールVHにビアとしての導電性ペースト26を充填する。
【0064】
導電性ペースト26としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粒子(導電性フィラー)と、バインダ樹脂とを含有する導電性ペーストなどが挙げられる。
【0065】
金属粒子を構成する金属としては、例えば、銅、金、銀、パラジウム、ニッケル、錫、鉛、ビスマスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
バインダ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂などが挙げられる。ただし、バインダ樹脂はこれに限られず、例えば、ポリイミド樹脂等、他の樹脂であってもよい。
【0067】
また、バインダ樹脂は、常温で液状であってもよいし、固体であってもよい。バインダ樹脂が常温で固体の場合には、導電性ペースト26は、例えば、バインダ樹脂の溶融温度以上の温度に熱して使用される。
【0068】
導電性ペースト26は、圧接タイプであってもよいし、溶融タイプであってもよい。なお、圧接タイプとは、積層時の熱では低抵抗金属粉末(導電性フィラー)が溶融せず積層時の圧力だけで導電性フィラー同士が接触することで層間の導通接続を可能とする導電性ペーストである。圧接タイプは、導電性ペーストに含まれる樹脂が熱硬化することで流動性を失う。また、溶融タイプとは、積層時の熱で低融点金属粉末(導電性フィラー)が溶融し、高融点金属粉末(導電性フィラー)を取り巻くように硬化して合金層を形成することで層間の導通接続を可能とする導電性ペーストである。
【0069】
ビアホールVHに導電性ペースト26を充填する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スキージ治具を使用し大気又は真空下でビアホールVHに導電性ペースト26を充填する方法などが挙げられる。
【0070】
<<<剥離工程>>>
続いて、第1工程のうち、剥離工程について説明する。剥離工程では、樹脂フィルム24を剥離する。
【0071】
剥離工程については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂フィルム24の端部を治具により把持して、第3絶縁性基材22から引き離す方法などが挙げられる。剥離工程により、
図15に示すように、積層体30を製造することができる。
【0072】
<<<表面硬化工程>>>
なお、各実施形態における回路基板の製造方法は、第2工程の前工程として、積層体30のビアホールVHから突出している導電性ペースト26の表面を硬化する表面硬化工程を有することが好ましい。
【0073】
表面硬化工程により、ビアホールVHから突出している導電性ペースト26の形状を維持することができる。また、ビアホールVHから突出している導電性ペースト26の表面を硬化させることで、一の積層体30と、他の積層体30とを重ねて熱圧着する際に、導電性ペースト26が不必要に流れ広がることを避けることができる。
【0074】
表面硬化工程における硬化の程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、完全硬化である必要はない。
【0075】
表面硬化工程における加熱の程度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0076】
上記した各工程により、積層体30を得ることができる。なお、第2工程において最下位層の積層体は、第2絶縁性基材20(40)及び金属層18を有さず、代わりに金属箔36を有する積層体32である。積層体32の製造方法については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一例として、金属箔36が張り付けられた第1絶縁性基材14を用意して、上記した第2積層工程、及びビア形成工程により得られる。
【0077】
<<第2工程>>
続いて、複数の積層体30を積層する第2工程について説明する。
【0078】
第2工程として、
図16に示すように、一の積層体30と、他の積層体30とを、一の積層体30の金属層18と、他の積層体30のビアホールVHの開口部とが対抗するように重ねて、
図17に示すように、熱圧着をする。なお、最上層の積層体30の上面には金属箔34を積層する。また、最下層には、積層体32が積層される。熱圧着後、
図18に示すように、金属箔34、36を所定のパターン状に形成することで、回路基板50が得られる。
【0079】
<回路基板>
続いて、本発明に係る回路基板50について説明する。回路基板50の各部や各部材については、<回路基板の製造方法>にて説明したため、ここでの説明は省略する場合がある。
【0080】
図18に回路基板50の概略断面図を示す。回路基板50は、第1絶縁性基材14と、第1絶縁性基材14の第1表面14aにパターン状で形成された金属層18と、第1表面14aの金属層18が配置されていない箇所において金属層18と同一の厚さを有して積層された第2絶縁性基材20(40)と、第1絶縁性基材14の第1表面14aとは反対側の第2表面14bに積層された第3絶縁性基材22と、第3絶縁性基材22の第1絶縁性基材14側とは反対側の表面から金属層18に達するまで形成されたビア26とを有する積層体30が複数積層されている構成を少なくとも有しており、さらに必要に応じてその他の構成を有する。
【0081】
また、回路基板50として、より具体的には、上層から順に、金属層34、複数の積層体30、積層体32が積層されている構成である。
【0082】
第1絶縁性基材14の第1表面14aには、パターン状の金属層18が形成されて、且つ第2絶縁性基材20(40)も積層されている。換言すると、第1表面14aにパターン状に形成された金属層18の隙間は第2絶縁性基材20(40)によって埋められており、第2絶縁性基材20と金属層18とは面一に形成されている。
【0083】
また、ビア26と、金属層18、金属層34、又は金属層36とは、電気的に接続している。
図16では、ビア26の断面積よりも金属層18、34、36の断面積の方が大きくなっているが、ビア26と金属層18、34、36とが電気的に接続されていれば、各断面積の大きさは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0084】
また、ビア26と、少なくとも積層体30における金属層18とは、同一の方向(すなわち、第3絶縁性基材22から第2絶縁性基材20(40)の方向であり、金属層34から金属層36の方向)に向けて断面積が小さくなるように形成されていてもよい。より具体的には、ビア26と、少なくとも積層体30における金属層18とは、
図18に示すような断面において下向きの台形形状(テーパ形状)に形成されていてもよい。
【0085】
なお、最上位層の金属層34と、最下位層の金属層36とは、第1絶縁性基材14及び第3絶縁性基材22から露出している構成である。すなわち、金属層34、36が配置されていない箇所に、第2絶縁性基材20(40)は積層されていない。
【0086】
第2絶縁性基材として、より具体的には、感光性樹脂フィルム20、又は感光性樹脂ワニス40のいずれか一方であることが好ましい。
【0087】
また、金属層18における第1絶縁性基材14の第2表面側の表面は、算術平均粗さ(Ra)が1.0μm以上2.0μm以下に粗面化処理されていることが好ましい。これによれば、複数の積層体30を積層した際に、金属層18とビア26との間で、抵抗値異常や層間剥離を生じさせないという効果を生じる。
【0088】
<電子機器>
続いて、本発明に係る電子機器100について説明する。電子機器100は、回路基板50と、電子部品とを少なくとも有し、さらに必要に応じてその他の部材を有する。
【0089】
電子機器100としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、パソコン(ノート型パソコン、デスクトップ型パソコン)、電話機、携帯電話、タブレット型携帯端末、スマートフォン、コピー機、ファクシミリ、各種プリンタ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオ、CD装置、DVD装置、エアコン、リモコン装置などが挙げられる。
【0090】
図19に、半導体パッケージの概略断面図を示す。
図19の半導体パッケージは、半田ボール55を有するマザーボード60と、マザーボード60上にバンプ65を介して接続されたインターポーザ70と、インターポーザ70上に配置された半導体素子80とを有する。半導体素子80としては、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)チップなどが挙げられる。
【0091】
ここで、回路基板50は、
図19におけるマザーボード60としても使用可能であり、インターポーザ70としても使用可能であり、さらには、半導体素子80を構成する回路基板としても使用可能である。
【符号の説明】
【0092】
14 第1絶縁性基材
14a 第1表面
14b 第2表面
18 金属層
20 第2絶縁性基材(感光性樹脂フィルム)
22 第3絶縁性基材
26 ビア(導電性ペースト)
30 積層体
40 第2絶縁性基材(感光性樹脂ワニス)
50 回路基板
100 電子機器
【要約】
【課題】接着層を用いずに、且つ高信頼性の電気的接続を可能とする回路基板、回路基板の製造方法、及び電子機器を提供する。
【解決手段】第1絶縁性基材14と、第1絶縁性基材14の第1表面14aにパターン状で形成された金属層18と、第1表面14aの金属層18が配置されていない箇所において金属層18と同一の厚さを有して積層された第2絶縁性基材20(40)と、第1絶縁性基材14の第1表面14aとは反対側の第2表面14bに積層された第3絶縁性基材22と、第3絶縁性基材22の第1絶縁性基材14側とは反対側の表面から金属層18に達するまで形成されたビア26とを有する積層体30が複数積層されていることを要件とする。
【選択図】
図18