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特許7531653表面感知デバイス(surface sensing device)を較正する方法、対応する制御コンピュータ用較正プログラムおよび対応する較正キット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】表面感知デバイス(surface sensing device)を較正する方法、対応する制御コンピュータ用較正プログラムおよび対応する較正キット
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/016 20060101AFI20240802BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20240802BHJP
   G01B 5/012 20060101ALI20240802BHJP
   B23Q 17/22 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G01B5/016
G01B5/00 B
G01B5/012
B23Q17/22 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023070138
(22)【出願日】2023-04-21
(62)【分割の表示】P 2019565069の分割
【原出願日】2018-02-13
(65)【公開番号】P2023090783
(43)【公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】1702391.2
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーティン サイモン リース
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェフリー バター
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド スヴェン ウォレス
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-237428(JP,A)
【文献】特開2002-225706(JP,A)
【文献】特開平10-047943(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015205567(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-21/32
B23Q 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決定装置において使用するための表面感知デバイス(4)であって、
前記位置決定装置に装着される第1の細長い部材(8)および第2の細長い部材(10)と、
前記第1の細長い部材および前記第2の細長い部材を介して前記位置決定装置に装着される表面感知要素と
前記第2の細長い部材は前記第1の細長い部材に対する所望の角度に設定することができるために、前記第1の細長い部材および前記第2の細長い部材に連結する枢動可能な継手とを備え、
前記第1の細長い部材は前記位置決定装置と連接され、
前記表面感知要素は前記第2の細長い部材によって担持され、
前記表面感知デバイスは、単一方向に感知するものであり、
前記表面感知デバイスは、表面仕上げプローブまたは表面粗さプローブであり、
前記表面感知要素は、先端部を備えたスタイラス(5)であり、前記スタイラス(5)の先端部が表面を横切ってドラッグされたときに法線方向に前記表面感知デバイスのスキッド(14)に対して偏向するように装着され、表面仕上げまたは表面粗さを決定するための前記スキッド(14)に対する前記スタイラス(5)の前記偏向を測定するために変換器に連結される表面感知デバイス。
【請求項2】
前記表面感知デバイス(4)は、前記位置決定装置に連結された前記第1の細長い部材および前記第2の細長い部材を、全体的に前記第1の細長い部材の前記長手方向軸周りで回転させるように構成された回転継手を含む請求項1に記載の表面感知デバイス。
【請求項3】
前記回転継手は、前記第1の細長い部材を回転させるためのモータ(M3)を有する請求項に記載の表面感知デバイス。
【請求項4】
前記表面感知デバイス(4)は、運動学的継手(6)によって位置決定装置に自動的に取り付け可能であり、これから脱着可能である請求項1乃至のいずれか一項に記載の表面感知デバイス。
【請求項5】
前記表面感知要素の外側端部がばねの作用に抗して偏向し、これが偶発的に工作物の方に行きすぎて、これに衝突する場合にこれを損傷から保護することを可能にするオーバートラベルの機械を提供する運動学的結合継手(16)を含み、前記運動学的結合継手(16)は前記表面感知要素の外側端部を反復可能に位置特定し、それにより、これは、これが前記工作物との接触から外れて取り外された後に同じ位置に戻るようになる請求項1乃至のいずれか一項に記載の表面感知デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の表面感知デバイス(4)を備え、前記表面感知デバイスが装着される位置決定装置。
【請求項7】
前記表面感知デバイス(4)は、前記表面感知デバイスを2つの相互に直交する軸周り(A,B)で回転させるように構成された連接型ヘッド(7)を介して、前記位置決定装置に装着され、前記連接型ヘッドは、前記表面感知デバイスを前記相互に直交する軸周りで回転させるためのモータ(M1, M2)を含む請求項に記載の位置決定装置。
【請求項8】
位置決定装置において使用するための表面感知デバイス(4)を較正する方法であって、前記表面感知デバイス(4)は、前記位置決定装置に装着された第1の細長い部材(8)および第2の細長い部材(10)と、前記第1の細長い部材および前記第2の細長い部材を介して前記位置決定装置に装着された表面感知要素と, 枢動可能な継手とを備え、前記方法は、前記第1の細長い部材および前記第2の細長い部材の少なくとも1つを別個のプローブによってプロービングしてその配向を決定するステップを含み、
前記枢動可能な継手は、前記第2の細長い部材は前記第1の細長い部材に対する所望の角度に設定することができるために、前記第1の細長い部材および前記第2の細長い部材に連結し、
前記第1の細長い部材は前記位置決定装置と連接され、
前記表面感知要素は前記第2の細長い部材によって担持され、
前記方法は、前記第1の細長い部材および前記第2の細長い部材を前記別個のプローブ(32)でプロービングしてその配向を決定するステップと、次いで、前記第1の細長い部材に対する前記第2の細長い部材の角度を決定するステップとを含む方法。
【請求項9】
前記第1の細長い部材(8)および前記第2の細長い部材(10)の少なくとも1つは、その長さに沿って離間された少なくとも2つの位置においてプロービングされる請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の細長い部材(8)および前記第2の細長い部材(10)の少なくとも1つは、少なくとも6つの位置においてプロービングされる請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記表面感知デバイスは、単一方向に感知するものであり、並びに、表面仕上げプローブまたは表面粗さプローブである請求項乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記表面感知要素は、先端部を備えたスタイラス(5)であり、前記スタイラス先端部が表面を横切ってドラッグされたときに法線方向に偏向するように装着され、表面仕上げまたは表面粗さを決定するための前記スタイラスの前記偏向の測定のために変換器に連結され、
前記方法は、前記スタイラス先端部の前記法線方向および/または前記表面に沿って前記先端部がドラッグされる方向を決定するステップを含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記位置決定装置に対する前記スタイラス先端部の場所を説明するオフセットを決定するステップを含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記表面感知デバイスは、前記位置決定装置に連結された前記第1の細長い部材を、全体的に前記第1の細長い部材の前記長手方向軸周りで回転させるように構成された回転継手を含み、前記方法は、前記回転継手の前記回転軸の配向を決定するステップを含む請求項乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
位置決定装置に装着された第1の細長い部材(8)および第2の細長い部材(10)と、前記第1の細長い部材(8)および前記第2の細長い部材(10)を介して前記位置決定装置に装着された表面感知要素とを備える表面感知デバイスを有する前記位置決定装置の制御コンピュータ用のプログラムであって、前記位置決定装置に請求項乃至14のいずれか一項に記載の方法を実行させるように構成されるプログラム。
【請求項16】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の表面感知デバイス(4)を備える位置決定装置および請求項15に記載のプログラムと共に使用するためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば座標測定機(CMM)、走査機、工作機械または検査/測定ロボットなどの位置決定装置または機械において使用するための表面感知デバイスに関する。より詳細には、本発明は、そのような表面感知デバイスの較正に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような位置決定装置または機械は、工作物を測定するために使用することができ、通常、工作物がその上で支持されるテーブルに対して3つの座標方向X、Y、Zに移動可能である部材を備える。方向X、Y、Zの各々における部材の移動は、機械上の変換器によって測定される。移動可能な部材上に提供された表面感知デバイスまたはプローブは、これと測定される工作物表面との間の関係を表示する信号を生み出す。表面の位置はこうして決定され得る。代替の機械、たとえば、工作機械のいくつかのタイプでは、テーブルはXおよびYに移動し、移動可能な部材はZに移動する。
【0003】
接触プローブのいくつかのタイプ、たとえばタッチトリガプローブおよび接触走査プローブは、三次元で作用する。通常、これらは、機械の変換器のX、Y、Z座標系内の任意の方向で工作物表面に近づくことができ、これらは、工作物接触先端部を備えた偏向可能なスタイラスを有する。そのようなプローブによる測定を行う前に、「データミング(datuming)」として知られている一種の較正を実行することが通常である。これは、機械のX、Y、Z座標測定系内でスタイラス先端部の反復可能な場所を決定するために、スタイラス先端部をデータム表面(データム球など)に押しつけることを伴う。
【0004】
柔軟な測定システムでは、異なる工作物表面にアクセスするために、プローブは、2つの相互に直交する回転軸の周りでこれを回転可能にする電動式連接型ヘッド(articulating head)を介して、CMM上に装着され得る。機械およびヘッドは、コンピュータ制御下で作動することができる。
【0005】
プローブ(または表面感知デバイス)は、交換可能になり得る。使用されないとき、これらは、保管ラックのそれぞれの保管ポート内に保管される。測定のために必要となるとき、連接型ヘッドは、すべてコンピュータ制御下で、ラックの保管ポートからプローブを自動的に取り上げ、次いで、その後これを保管ポート内に戻すことができる。本出願者、Renishaw plcは、「Autochange」の商標下でそのようなシステムを販売している。連接型ヘッドのラックに対する位置合わせを可能にするために、Autochangeラックには、固定されたタッチトリガプローブが嵌合される。ラックを設定するとき、ヘッドの表面は、ラックのプローブに押しつけられる。これにより、ヘッドとラックのポートとの間に、これらの位置合わせを確実にするための空間関係が確立される。
【0006】
特許文献1(Wallaceら)および特許文献2(Wallace)は、表面感知デバイスを説明している。異なる工作物表面にアクセスするために、これは、2つの相互に垂直な回転軸の周りでこれを回転可能にする連接型ヘッドを介してCMM上に装着される。表面感知デバイスは、表面を一方向に感知する表面仕上げプローブ、または別のタイプの一方向(単一軸)プローブ、たとえばレーザスポットプローブまたはレーザラインプローブなどの光プローブを備えることができる。そのような一方向プローブが異なって配向された表面に対処することを可能にするために、これは、第3の回転軸を有して、これを手動で回転させることを可能にする。第3の回転軸は、表面感知デバイスの全体的に長手方向の軸と位置合わせすることができ、この表面感知デバイスは、第3の軸を横断する方向にまたはこれからずらして表面を感知することができる。代替的に、表面感知デバイスは、第3の回転軸に対して角度を付けて配置され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8006399号明細書
【文献】米国特許第8468672号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この第3の回転軸は、表面が特定の可能な配向で対処されることのみを可能にする。また、そのような表面感知デバイスの幾何学的形状をデータミングするまたは較正する問題も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、位置決定装置において使用するための表面感知デバイスを較正する方法であって、表面感知デバイスは、位置決定装置に装着された1つまたは複数の細長い部材と、1つまたは複数の細長い部材を介して装置に装着された表面感知要素とを備え、方法は、細長い部材の少なくとも1つを別個のプローブによってプロービングして(probing)その配向を決定するステップを含む、方法を提供する。
【0010】
1つまたは複数の細長い部材の1つは、枢動可能な継手(joint)に連結されてよく、それによってこれは、所望の角度で設定され得る。
【0011】
別個のプローブは、細長い部材またはその複数の部材の1つまたは複数の側部場所をプロービングすることができる。細長い部材は、同じプローブによって複数回プロービングされ得る。
【0012】
第1の細長い部材および第2の細長い部材が存在することができ、枢動可能な継手が、第1の細長い部材および第2の細長い部材を連結し、それによって第2の部材を第1の部材に対して所望の角度で設定することができ、第1の細長い部材は、位置決定装置に連結され、表面感知要素は、第2の細長い部材によって担持される。
【0013】
好ましくは、プロービングするステップは、少なくとも第2の細長い部材を別個のプローブによってプロービングしてその配向を決定するステップを含む。方法はまた、第1の細長い部材を別個のプローブによってプロービングしてその配向を決定するステップと、次いで、第1の部材に対する第2の部材の角度を決定するステップとを含むこともできる。
【0014】
適切には、そのまたは各々の細長い部材は、その長さに沿って離間された少なくとも2つの位置においてプロービングされる。好ましくは、そのまたは各々の細長い部材は、少なくとも6つの位置においてプロービングされる。これにより、その配向および空間における場所のより正確な表示が与えられる。
【0015】
好ましい実施形態では、表面感知デバイスは、一方向に感知するもの、たとえば表面仕上げプローブまたは表面粗さプローブ(surface roughness probe)である。表面感知要素は、先端部を備えたスタイラスであってよく、スタイラス先端部が表面を横切ってドラッグされた(dragged)ときに法線方向に偏向するように装着され、表面仕上げまたは表面粗さを決定するためのスタイラスの偏向の測定のために変換器に連結される。
【0016】
方法は、スタイラス先端部の法線方向および/または表面に沿って先端部がドラッグされる方向を決定するステップを含むことができる。これは、1つまたは複数の細長い要素の配向から決定され得る。
【0017】
方法はまた、位置決定装置に対するスタイラス先端部の場所を説明するオフセットを決定するステップを含むこともできる。これは、1つまたは複数の細長い部材の配向および長さから算出され得る。代替的には、これは、表面感知デバイスをスタイラス先端部の近傍で別個のプローブによってプロービングすることによって決定され得る。
【0018】
表面感知デバイスは、位置決定装置に連結された細長い部材を、全体的に細長い部材の長手方向軸周りで回転させるように構成された回転継手を含むことができる。方法は、回転軸の配向(細長い部材の配向に正確に一致しなくてよい)を決定するステップを含むことができる。回転継手は、細長い部材を回転させるためのモータを有することができる。
【0019】
表面感知デバイスは、表面感知デバイスを2つの相互に直交する軸の周りで回転させるように構成された連接型ヘッドを介して、位置決定装置に装着され得る。連接型ヘッドは、表面感知デバイスを相互に直交する軸周りで回転させるためのモータを含むことができる。
【0020】
本発明はまた、上記の方法の任意のものを実行するように構成された、位置決定装置のコンピュータ制御用のプログラムを提供する。
【0021】
本発明のさらなる態様は、位置決定装置と共に使用するためのキットであって、位置決定装置に装着するための1つまたは複数の細長い部材と、1つまたは複数の細長い部材を介して装置に装着するための表面感知要素とを備える表面感知デバイスと、上記の方法の任意のものを実行するように構成されたプログラムとを含む、キットを提供する。
【0022】
本明細書において論じるプログラムは、メモリディスク、メモリスティック、メモリカード、またはプログラムをそこからダウンロードできるローカルサーバまたはリモートサーバを含む、任意の適切な機械可読媒体上に提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の好ましい実施形態が、次に、添付の図を参照して、例として説明される。
図1】連接型プローブヘッド上に装着された表面感知デバイスの等角図である。
図2図1の軸AおよびBを通る断面図である。
図3】表面感知デバイスの幾何学的形状の概略図である。
図4】座標測定機(CMM)上に装着された表面感知デバイスおよび連接型プローブヘッドを示す図である。
図5】座標測定機(CMM)上に装着された表面感知デバイスおよび連接型プローブヘッドを示す別の図である。
図6】座標測定機(CMM)上に装着された表面感知デバイスおよび連接型プローブヘッドを示す別の図である。
図7】座標測定機(CMM)上に装着された表面感知デバイスおよび連接型プローブヘッドを示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、2つの相互に直交する回転軸A、Bの周りの回転のために表面感知デバイス4を支持する連接型プローブヘッド7を示す。図2は、軸A、Bによって画定された平面内の連接型ヘッド7および表面感知デバイス4を通る断面図を示す。
【0025】
連接型プローブヘッド7は、第1のハウジング部材1および第2のハウジング部材2それぞれを備える。第1のハウジング部材1は、位置決定装置、たとえば図4で分かるようにCMMの移動可能なアーム26に取り付けるように適合される。CMMは、アーム26を3つの線形次元Χ、Y、Ζで移動させる。図2に示すように、ハウジング部材1は、第1の軸A周りの第1のシャフト20の角度変位をもたらすためのモータM1を収容する。第1のシャフト20には、第2のハウジング部材2が取り付けられ、第2のハウジング部材は、第2の軸B周りの第2のシャフト22の角度変位をもたらすためのモータM2を収容する。表面感知デバイス4は第2のシャフト22に、これと共に回転するように取り付けられる。CMMは、コンピュータ制御装置3内のプログラムの制御下でX、Y、Z方向に駆動され、この制御装置は、軸A、B周りのモータM1、M2の移動も制御する。
【0026】
表面感知デバイス4は、軸Cに沿って、軸Bを横断し交差して全体的に延びる細長いプローブホルダ8を含む。これは、ハウジング9を介して連接型ヘッド7に取り付けられる。ハウジング9は、プローブホルダ8を軸C周りで回転させ、ここでもコンピュータ制御装置3内のプログラムによって制御される、モータM3を含む。
【0027】
異なるタイプまたは構成の表面感知デバイスの交換を可能にするために、ハウジング9は、知られているタイプの運動学的結合継手(kinematic coupling joint)6を有し、これによって表面感知デバイス4のホルダ8は、ハウジング9に取り付け可能であり、これから脱着可能である。使用されないとき、表面感知デバイスは、図4の4Aに示すように、保管ラック30のポート34内に保管され得る。これらの交換は、CMMアーム26および連接型ヘッド7の移動によって、コンピュータ制御装置3内のプログラムの制御下で自動的に実施される。表面感知デバイス4が再び取り付けられたとき、運動学的継手6は、これがハウジング9に対して反復的に配置され、それにより、表面感知デバイスが交換されるたびに以下で説明する較正を繰り返す必要がないことを確実にする。運動学的継手6は、使用されるときに表面感知デバイスを所定場所に保持する磁石(図示せず)を含む。
【0028】
表面感知デバイス4は、表面仕上げセンサまたは表面粗さセンサを含む、細長い感知モジュール10を含む。モジュール10は、ナックル継手12によってホルダ8に枢動可能に取り付けられる。これにより、測定作業の前に、モジュールをホルダ8に対する所望の設定角度に手動で配向することが可能になる。ナックル継手12は、次いで、モジュールセットを摩擦によってこの角度に保持するか、または継手は、締め付けねじを有することができる。工作物の異なる表面に対処するために、モジュール10の配向は、モータM3による軸C周りの回転によって、測定作業中、プログラム制御下でさらに変更され得る。
【0029】
モジュール10内に含まれた表面仕上げセンサまたは表面粗さセンサは、たとえば上記の特許文献1および特許文献2に説明するような、知られているタイプのものであってよい。通常、これは、測定される表面不規則性と比べて小さい、表面感知先端部を有する、針またはスタイラス5の形態の表面感知要素を備える。これは、スキッド14(図3)に対して、細長い感知モジュール10を横断して偏向可能である。使用時、スキッドおよびスタイラス先端部は、CMMアーム26のΧ、Y、Ζ動作によって、または連接型ヘッド7の回転によって、コンピュータ制御装置3内のプログラムの制御下で、表面を横切ってドラッグされる。スタイラス5は、モジュール10内の変換器に連結されて、結果として生じる、表面に対する法線方向のスタイラスの偏向を測定し、それによってその表面仕上げまたは表面粗さを表示する。この結果は、送り返され、コンピュータ3内で処理される。
【0030】
ホルダ8および感知モジュール10は、数多くの異なる構成で提供されて、さまざまな測定作業に適合させることができる。たとえば、これらは、異なる長さで提供することができ、または図3の破線10Aは、モジュール10の外側端部が、測定される表面により良好に対処するために傾斜され得ることを示す。異なるタイプのスキッドもまた提供されて、異なるタイプの測定に適合させることができる。
【0031】
感知モジュール10は、知られている方法で「オーバートラベル(overtravel)」を提供する運動学的結合継手16を含む。これは、モジュール10の外側端部がばね(図示せず)の作用に抗して偏向し、これが偶発的に工作物の方に行きすぎて、これに衝突する場合にこれを損傷から保護することを可能にする。運動学的継手16は、モジュールの外側端部を反復可能に位置特定し、それにより、これは、これが工作物との接触から外れて取り外された後に同じ位置に戻るようになる。着脱可能または交換可能であることは必要とされないため、継手16は、運動学的継手6より簡単となり得る。これは、通常、モジュールの外側端部を止め具に対して保持するばね屈曲部を備えることができる。
【0032】
使用前、表面感知デバイス4の幾何学的形状は、較正されるか、またはデータミングされる。較正は、細長い感知モジュール10がナックル継手12において所望の角度に手動で設定された後に実行され、これは、分度器を使用して大まかに設定することができる。較正は、制御装置3からのプログラム制御下で実行される。これは、図3に概略的に分かるように、幾何学的形状のいくつかの様相を決定する。
・CMM座標系Χ、Y、Ζに関連する回転軸Cの方向および起点(origin)。軸Cの傾き(swash)および振れ(runout)も決定され得る。
・細長いホルダ8の軸40。これは、たとえば、軸Cに対して決定され得る(軸40は、製造公差により、軸Cに精密に一致しないことが理解されるであろう。図3では、これは、説明のために誇張されている)。
・細長い感知モジュール10の軸42。これによって、ナックル継手12における軸40、42の交差点K、およびこれらの軸間の角度θkのより正確な測定値が与えられる。
・(その後の測定中、測定されている表面に対して法線方向に位置合わせされなければならない)先端部5の偏向方向を説明するベクトルTN(先端部法線)。
・測定される表面に沿って先端部5がドラッグされる方向を説明するベクトルDV(ドラッグベクトル)。図3は、これが感知モジュール10の長手方向として示しているが、側方走査が意図される場合、ドラッグベクトルは、感知モジュールに対して横方向に(長手方向ベクトルに加えて、またはその代わりに)算出され得る。
・軸Cの起点C0に対する先端部5のオフセットTO(先端部オフセット)。
【0033】
較正は、上記で挙げた個々の幾何学的形状の様相のすべて、またはこれらのいずれかを個々にまたは任意の組み合わせで決定して、実行される対象の測定作業に適合させ得る。
【0034】
この較正は、次に、より詳細に説明される。
【0035】
図4~7に示すように、偏向可能なスタイラス36を有する別個のタッチトリガプローブ32が、提供される。プローブ32は、CMMまたは他の位置決定装置に対して固定される。適切には、これは、保管ラック30上に固定され得る。表面感知デバイス4の測定値をCMMの座標測定系にリンクさせるために、タッチトリガプローブ32は、所望には、CMM座標系内でデータミングされていなければならない。これは、当業者に知られているように、移動可能なアーム26上に保持された参照プローブによって、そのスタイラスの先端部をプロービングすることによって行われ得る。
【0036】
表面感知デバイス4の較正中、(ナックル継手12の所望の角度で事前に設定された)表面感知デバイスのホルダ8およびモジュール10は、制御コンピュータ3内の較正プログラムの制御下、さまざまな位置および配向においてタッチトリガプローブ32の偏向可能なスタイラス36と接触させられ、これは、たとえば図5、6、および7に示される。この接触は、スタイラス36を偏向させ、タッチトリガプローブにコンピュータ制御装置3へのトリガ信号を発生させる。
【0037】
好ましくは、別個のタッチトリガプローブ30に対するこれらの接触は、連接型ヘッド7をそのA軸およびB軸周りで回転させることにより、最初に表面感知デバイス4を所望の方向に配向することによって実行される。次いで、表面感知デバイスは、CMMをそのX、Y、Z軸上で駆動することによって線形方向X、Y、Zに移動される。各トリガ信号の受け取り時、制御装置3は、接触を行ったホルダ8またはモジュール10上の点のX、Y、Z座標を表示するCMMのX、Y、Z位置変換器の読み取りを停止(freezes)する。
【0038】
以下の測定はすべて、単一配向に保たれた連接型ヘッド7のA軸およびB軸を用いて行われる。
【0039】
図3をより詳細に参照すれば、C軸は、たとえば、細長いホルダ8および感知モジュール10が概ねY-Z平面に位置するように選択された配向に駆動される。次いで、CMMは、そのX、Y、Z軸上で駆動されて、細長いホルダ8を点44A、44Bにおいてタッチトリガプローブ32に接触させる。適切には、これらの点は、ホルダ8の側部にある。X、Y、Z座標の読み取りは、各点について行われる。点は、細長いホルダの長さに沿って離間された少なくとも2つの位置44A、44Bにおいてとられなければならない。これから、軸40の方向が決定される。合計で少なくとも6点をとることが好ましく、その理由は、これによってホルダ8を画定する円筒形、ひいてはその軸40の方向の精密な決定が可能になるためである。
【0040】
回転軸Cの方向およびその起点C0を決定するために、モータM3は、次に、表面感知デバイスをC軸の周りで2つまたはそれ以上のさらなる配向に回転させるように作動される。たとえば、2つのさらなる配向は、Y-Z平面から120°であってよい。点44A、44Bにおいて読み取りを行うための上記の手順が、各配向において反復される。これにより、C軸周りの3つの配向の各々における軸40の方向が与えられ、これによってC回転軸の方向および起点ならびにC軸に対する細長いホルダ8の軸40の角度の算出が可能になる。C軸の傾きおよび振れもまた、算出され得る。
【0041】
軸40がC回転軸に(所望の公差内で)一致することが確実である場合、2つまたはそれ以上のさらなる配向において軸40のこの決定を反復する必要はなくなり得る。
【0042】
好都合には、B軸回転オフセット(B軸の0位置)が、ここで、B軸がゼロ位置にあるとき、(上記で決定した)C回転軸が、A軸およびB軸によって画定された平面内に位置するように数学的に設定され得る。これにより、さらなる測定が簡易化される。
【0043】
次に、C軸のモータM3が上記の配向の1つにある状態で、(たとえば最後に測定された)点46A、46Bが、上記と同じ方法で(適切にはモジュールの側部で)細長い感知モジュール10上でとられる。点44A、44Bと同様に、これらの点は、好ましくは、モジュール10の長さに沿って2つの離間された位置になければならず、好ましくは、合計で少なくとも6点が、モジュール10を画定する円筒形を精密に決定するためにとられる。これにより、感知モジュール10の軸42の方向が、与えられる。選択された配向において軸40および42を知ることで、ナックル継手12におけるこれらの交差点K、およびこれらの軸間の角度θkの正確な値、を算出することが簡単になる。
【0044】
ただし、2つの離間された位置における6つの点46A、46Bが好ましいが、これより少ない点を使用することも可能になり得る。たとえば、点Kまでの長さL1がC軸起点C0に関して十分正確に知られている場合、これから、たとえばモジュール10に沿って1つの位置における3つの点46Bを併用して、軸42を決定することが可能になり得る。この場合、この決定は、点46Bおよび点Kがモジュール10の長さに沿って離間されるという事実に基づく。
【0045】
さらに、細長いホルダ8およびモジュール10の公称設計長さL1、L2から、点Kおよびナックル角度θkと共に、C軸起点C0に対する先端部5の先端部オフセットTOの近似値を算出することが簡単である。ナックル角度θkおよび公称長さL1およびL2から、先端部法線TNおよびドラッグベクトルDVについての値が算出され得る。感知モジュール10をその表面を横切って側方に走査することが望まれる場合、ベクトルDVに対して90°にある適切なドラッグベクトルが、(長手方向ベクトルDVと共にまたはその代わりに)算出され得る。当然ながら、感知モジュールが(破線10Aによって示されるような)代替の幾何学的形状の構成を有する場合、この代替策の幾何学的形状の角度および長さの公称値を考慮に入れなければならない。
【0046】
その後の測定中、上記の較正値により、先端部5を複雑な形状の加工物の表面上の所望の場所に接触させ、ホルダ8または感知モジュール10の一部が加工物の他の表面を傷つけることなく、またはこれにぶつかることなく、プログラム制御下で全自動で測定を行うことが可能になる。プログラムは、ジョイスティック制御を使用して表面感知デバイスを手動で位置決めする必要なく、加工物のCADデータに基づいて記述され得る。これは、たとえば、せまい溝、または表面感知デバイスを、ジョイスティックによって手動でこれを位置決めするために見ることが不可能である、加工物の有する見えない内部空間などの制約のある場所において有用である。
【0047】
先端部5を測定される表面上の点に精密に位置決めするために、先端部オフセットTOについてより正確な値を得て、表面トポグラフィをより精密に決定することが望ましくなり得る。この場合、3つまたはそれ以上のさらなる点48が、先端部5の近傍の、感知モジュール10の突出部でとられ得る。2つのそのような点48が、図3に示されており、他の点は、これが突出部の異なる表面にあるために隠されている。これらの点は、突出部の位置および配向を精密に特定し、先端部5の位置は、感知モジュールの突出部に関連する先端部の公称設計幾何学的形状の知識から決定され得る。
【0048】
本発明が上記の較正のすべてを得ることは必須ではない。たとえば表面感知デバイスを、これを傷つけることなく、またはこれをぶつけることなく位置決めする能力だけではなく、たとえばその後の測定の精度にも影響を与える、先端部法線TN、ドラッグベクトルDVおよび/または先端部オフセットTOなどの一部だけが重要であると決定されてよい。傷つける、またはぶつけるリスクがより大きい場合、軸40、42および/またはナックル継手12の位置Kおよび角度θkを正確に決定することによって、表面感知デバイスの幾何学的形状を決定することがより重要になり得る。
【0049】
上述したように、上記の較正測定のすべては、単一配向に保たれた連接型ヘッド7のA軸およびB軸を用いて実施されている。しかし、これらを、たとえば図5、6、および7に提案されるようにA軸およびB軸の他の配向において反復することが望ましくなり得る。これは、たとえば、表面感知デバイスの細長いホルダ8および/または細長い感知モジュール10が、図5の鉛直位置から図6の水平位置に移動されたときに重力によって引き起こされる下垂(droop)を受ける場合に当てはまり得る。各位置における較正により、下垂を較正することが可能になる。
【0050】
上記で説明した幾何学的形状の較正は、実施され得る感知モジュール10内の変換器のいかなる較正からも分離されることが望ましい。
【0051】
本発明の上記の好ましい実施形態は、測定される表面を横切ってドラッグされるスタイラスを有する、接触タイプの表面仕上げプローブまたは表面粗さプローブに関するものである。しかし、本発明は、接触および非接触タイプ両方の他の表面感知デバイスと共に使用されてもよい。たとえば、これは、非接触の表面仕上げ光プローブおよび表面粗さ光プローブと共に使用することができる。これはまた、タッチトリガプローブおよび接触走査プローブと共に使用することもできる。他の非接触プローブは、たとえば、光プローブ、静電容量プローブ、およびインダクタンスプローブを含む。光プローブは、レーザスポットプローブおよびレーザラインプローブを含む。
【0052】
本発明は、特に、光プローブおよび表面仕上げプローブまたは表面粗さプローブなどの単一軸プローブに有用である。これは、特にプローブのこれらのタイプに関して、長手方向軸(上記の実施形態では軸C)周りの回転により、プローブがアクセスできる表面の数が大きく増加するためである。表面感知デバイスの軸(上述した第3の軸)周りでラインを回転させることが可能であるため、この軸周りの回転はまた、レーザラインプローブにも特に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7