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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】放熱構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20240802BHJP
   G06F 1/18 20060101ALI20240802BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240802BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/18 F
H05K1/02 F
H05K7/20 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023125322
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】星野 鷹典
(72)【発明者】
【氏名】潮田 達也
(72)【発明者】
【氏名】篠原 英治
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 諒太
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-257490(JP,A)
【文献】特開2021-132155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/18
H05K 1/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形の一端を形成する縁部の略中央部がネジによって基板に対して固定される電子モジュールの放熱構造であって、
前記電子モジュールに対して熱接続される熱伝導材の放熱板を有し、
前記電子モジュールはモジュール基板、および該モジュール基板に実装される複数の半導体チップを有し、
前記放熱板は、
前記半導体チップに対して熱接続される主放熱部と、
前記ネジと共締めさる固定部と、
前記固定部から前記電子モジュールとは反対側に突出する中継部と、
前記中継部から2つに分岐し、前記電子モジュールの方向に折返して前記固定部の両側を通り前記主放熱部と接続される2本のアーム部と、
を有する
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載の放熱構造において、
前記主放熱部における前記固定部に隣接する部分から突出し、前記ネジによって前記固定部と共締めされるシート状の取外しタブを有する
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項3】
請求項1に記載の放熱構造において、
前記アーム部には前記基板と対面する側に絶縁性シートが設けられている
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項4】
請求項1に記載の放熱構造において、
前記主放熱部は前記一端に最も近い前記半導体チップにおける前記一端に近い部分を覆う矩形突出部を形成し、
2本の前記アーム部における前記主放熱部との接続部は、前記矩形突出部との間にスリットを形成して離間している
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項5】
請求項1に記載の放熱構造において、
2本の前記アーム部はクランク形状である
ことを特徴とする放熱構造。
【請求項6】
矩形の一端を形成する縁部の略中央部がネジによって基板に対して固定される電子モジュールを備える電子機器であって、
前記電子モジュールに対して熱接続される熱伝導材の放熱板を有し、
前記電子モジュールはモジュール基板、および該モジュール基板に実装される複数の半導体チップを有し、
前記放熱板は、
前記半導体チップに対して熱接続される主放熱部と、
前記ネジと共締めさる固定部と、
前記固定部から前記電子モジュールとは反対側に突出する中継部と、
前記中継部から2つに分岐し、前記電子モジュールの方向に折返して前記固定部の両側を通り前記主放熱部と接続される2本のアーム部と、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールの放熱構造、および該電子モジュールを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCのような電子機器は、CPUを実装した基板(マザーボード)のコネクタに対してSSD等の電子モジュールを接続して用いている。電子モジュールは、例えば基板に実装されたコネクタに一端が接続されるとともに他端が該基板に対してネジで固定される(引用文献1参照)。このような電子モジュールはネジを取り外すことにより交換可能となっている。電子モジュールは、モジュール基板の上面にメモリなどの半導体チップが実装される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-057737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子モジュールの半導体チップは発熱をすることから安定した動作を確保するためには放熱板を設けて半導体チップに当接させることが望ましい。放熱板の固定には、電子モジュールの固定ネジを兼用化することが考えられる。
【0005】
一方、電子モジュールは仕様によってモジュール基板および半導体チップの厚みが異なる場合がある。放熱板を薄い電子モジュールに合わせた設計にすると厚い電子モジュールに交換できなくなり、または半導体チップに過大な圧力を加えてしまうことになる。反対に放熱板を厚い電子モジュールに合わせた設計にすると薄い電子モジュールに交換したときに半導体チップとの間に隙間が生じてしまう。また、様々な厚みの電子モジュールに適合した個別仕様の放熱板を多数用意することは合理的でない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、1枚の放熱板を様々な厚みの電子モジュールに対して適用することのできる放熱構造および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る放熱構造は、矩形の一端を形成する縁部の略中央部がネジによって基板に対して固定される電子モジュールの放熱構造であって、前記電子モジュールに対して熱接続される熱伝導材の放熱板を有し、前記電子モジュールはモジュール基板、および該モジュール基板に実装される複数の半導体チップを有し、前記放熱板は、前記半導体チップに対して熱接続される主放熱部と、前記ネジと共締めさる固定部と、前記固定部から前記電子モジュールとは反対側に突出する中継部と、前記中継部から2つに分岐し、前記電子モジュールの方向に折返して前記固定部の両側を通り前記主放熱部と接続される2本のアーム部と、を有する。
【0008】
また、本発明の第2態様に係る電子機器は、矩形の一端を形成する縁部の略中央部がネジによって基板に対して固定される電子モジュールを備える電子機器であって、前記電子モジュールに対して熱接続される熱伝導材の放熱板を有し、前記電子モジュールはモジュール基板、および該モジュール基板に実装される複数の半導体チップを有し、前記放熱板は、前記半導体チップに対して熱接続される主放熱部と、前記ネジと共締めさる固定部と、前記固定部から前記電子モジュールとは反対側に突出する中継部と、前記中継部から2つに分岐し、前記電子モジュールの方向に折返して前記固定部の両側を通り前記主放熱部と接続される2本のアーム部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、1枚の放熱板を様々な厚みの電子モジュールに対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る電子機器を上から見下ろした図である。
図2】筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
図3】電子機器における放熱構造の部分の分解斜視図である。
図4】放熱構造における放熱板の斜視図である。
図5】放熱板の左端部に取外しタブが設けられている状態の平面図である。
図6】放熱板の第1アーム部に柔軟な絶縁性シートが設けられている状態の平面図である。
図7】放熱構造の左端部の拡大斜視図である。
図8】薄い記憶装置に対して放熱構造を適用した場合の模式断面図である。
図9】厚い記憶装置に対して放熱構造を適用した場合の模式断面図である。
図10】放熱板を取り外す際の放熱構造の左端部の拡大斜視図である。
図11】変形例にかかる放熱構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる放熱構造および電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした図である。図1に示すように、電子機器10は、筐体12と、ディスプレイ筐体14と、ヒンジ16とを備える。本実施形態に係る電子機器10は、筐体12とディスプレイ筐体14との間がヒンジ16によって相対的に回動可能に連結されたクラムシェル型のノート型PCである。本発明は、ノート型PC以外、例えばデスクトップ型PC、タブレット型PC、携帯電話、スマートフォン、携帯用ゲーム機、電子手帳等の各種情報機器に適用できる。
【0013】
以下、筐体12及びこれに搭載される各要素について、図1に示す電子機器10を使用するユーザから見た方向を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。
【0014】
先ず、電子機器10の全体構成を説明する。
図1に示すように、筐体12は、扁平な箱型の筐体である。筐体12は、上カバー材12Aと、下カバー材12Bとで構成されている。上カバー材12Aは、筐体12の上面及び四周側面を形成する。下カバー材12Bは、上カバー材12Aの下面側開口を塞ぐ蓋板であり、筐体12の下面を形成する。筐体12の上面には、キーボード18及びタッチパッド19が設けられている。
【0015】
ディスプレイ筐体14は、筐体12よりも薄い扁平な箱型の筐体である。ディスプレイ筐体14の前面には、ディスプレイ20が設けられている。ディスプレイ20は、例えば液晶ディスプレイである。ヒンジ16は、筐体12の後縁部とディスプレイ筐体14の下縁部との間を連結している。ヒンジ16は、例えば左右一対設けられている。
【0016】
次に、筐体12の内部構造の具体的な構成例を説明する。図2は、筐体12の内部構造を模式的に示す底面図である。図2に示すように、筐体12の内部には、基板26、バッテリ装置23、及びアンテナエレメント24等の各種電子部品や機械部品が収容されている。
【0017】
バッテリ装置23は、電子機器10の電源となる二次電池である。バッテリ装置23は、基板26と接続され、基板26に電力を供給する。アンテナエレメント24は、図示しない通信モジュール(電子モジュール)と接続され、無線の送受信を行う。図2中の参照符号25は、筐体12の後端面に形成された切欠形状部であり、ヒンジ16が配置される。
【0018】
基板26は、電子機器10のマザーボードである。基板26は、例えば筐体12内で後側略半分の領域を占める大きさである。基板26は、CPU32、コネクタ33、及び電源コネクタ35等の各種電子部品が実装されている。また、基板26にはボス34が設けられている。基板26は、その第1面26aにCPU32及びコネクタ33等が実装される。基板26は、第1面26aの裏面が上カバー材12Aの下面及びキーボード18の下面に対してネジ止めされ、これにより筐体12に固定される。基板26には、取付孔26cが各所に形成されている。
【0019】
CPU(Central Processing Unit)32は、電子機器10の主たる処理装置である。CPU32は、ダイ32aと、パッケージ基板32bとを有する。CPU32は、基板26の第1面26aで大きなスペースを占有している。コネクタ33には記憶装置(電子モジュール)36が接続される。電源コネクタ35は、バッテリ装置23が接続される。
【0020】
次に、本発明の実施形態にかかる放熱構造40について説明する。放熱構造40は、放熱板42により記憶装置36の放熱を行うものである。図3は、電子機器10における放熱構造40の部分の分解斜視図である。放熱構造40についての説明では理解を容易にするため、筐体12とは逆に下カバー材12Bの側を上とし、上カバー材12Aの側を下とする。
【0021】
図3に示すように、コネクタ33は、基板26の第1面26aに実装されている。コネクタ33は、本実施形態における実装の向きを基準として左右方向より前後方向が長い平形である。もちろん、コネクタ33の実装の向きはこれに限られない。コネクタ33は、左側にスロット33aが形成されている。コネクタ33はカードエッジ型ソケットの一種であり、例えばM.2(エムドットツー)規格に対応している。
【0022】
ボス34は図3に示す範囲で2つ設けられている。このうち1つ(第1ボス34Aとも呼ぶ)は寸法が規格化された記憶装置36を固定するのに対応しており、コネクタ33の右側のやや離れた位置にある。もう1つのボス34(第2ボス34Bとも呼ぶ)はコネクタ33よりやや前方の位置に設けられている。ボス34は基部34aと、突出部34bとからなる段付き円筒型である。突出部34bの中空部は雌ネジが形成されている。
【0023】
記憶装置36は、左右方向にやや長い略矩形のカード型の電子モジュールであり、例えばSSD(Solid State Drive)である。記憶装置36は、モジュール基板36aがベースになっており、矩形の一端(この場合左端)を形成する縁部の略中央部には第1ボス34Aの突出部34bが嵌り込む半円形の切欠36bが設けられており、他端(この場合右端)にはコネクタ33のスロット33aに挿入・接続される接続端子36cが設けられている。
【0024】
モジュール基板36aには1つ以上のメモリチップ36d、制御チップ36e、およびその他の電気素子36fが実装されている。メモリチップ36d、制御チップ36eは半導体チップである。電気素子36fは抵抗やキャパシタなどである。半導体チップは基本的に基板26とは反対側を臨む上面36aaに表面実装されている。メモリチップ36dは、1つの場合にはモジュール基板36aにおける切欠36bがある一端近傍に実装され、複数の場合には、一端から他端に向かって配列および実装されている。これに対して、制御チップ36eは、モジュール基板36aにおける接続端子36cがある他端に寄った位置に実装されている。
【0025】
記憶装置36は、やや斜めにしながら接続端子36cをスロット33aに挿入し、その後基板26と水平にして、切欠36bの周辺部を第1ボス34Aの基部34aに載置し、後述するようにネジ44によって放熱板42の左端部と共締めして固定される。
【0026】
図4は、放熱構造40における放熱板42の斜視図である。放熱板42は、銅板やステンレス板などの熱伝導材に対して曲げやプレスなどの板金加工をして得られる。放熱板42は記憶装置36のほぼ全面を覆う主放熱部42aがベースとなっている。主放熱部42aは記憶装置36に対応して左右方向にやや長い略矩形となっている。放熱板42は前後および右の縁の一部に下向きに小さく突出した屈曲部42bを備えており適度な強度がある。
【0027】
放熱板42の左端部について説明する。放熱板42の左端部には、第1固定部42c、中継部42d、2本の細い第1アーム部42e、矩形突出部42fが設けられている。
【0028】
第1固定部42cは、ネジ44(図3参照)により放熱板42の左端を基板26のボス34に固定する部分であり、中央にはネジ挿通孔42caが形成されている。中継部42dは第1固定部42cから左側(モジュール基板36aとは反対側)にやや突出している。第1固定部42cは小さい段差部42cbによって中継部42dよりやや下になっている。
【0029】
第1アーム部42eは、中継部42dから前後に向けて2つに分岐し、右方向に折返して第1固定部42cの両側を通り主放熱部42aの前後端と接続されるように2本設けられている。各第1アーム部42eは第1固定部42cおよび矩形突出部42fと一定隙間を形成するように3つの直角部を有するクランク形状になっているが、他の形状であってもよい。第1アーム部42eのクランク形状を形成する直角部は多少鋭角状または鈍角状であってもよい。
【0030】
矩形突出部42fは、記憶装置36の左端に最も近いメモリチップ36d(図7参照)における左端に近い部分(例えば、左側略半分)を覆うように突出している部分である。2本の第1アーム部42eにおける主放熱部42aとの接続部42eaは、矩形突出部42fとの間にスリット42gを形成して離間している。矩形突出部42fと第1固定部42cとの隙間、および第1アーム部42eと第1固定部42cとの隙間もスリット42gとほぼ同幅である。第1アーム部42eにおける接続部42eaの端部から第1固定部42cの方向へ延びる部分をアーム中間部42ebとする。
【0031】
第1アーム部42eは接続部42eaの根元部を基準として弾性的に傾斜可能である。また、中継部42dは第1アーム部42eとの接続箇所を基準として弾性的に傾斜可能であり、第1固定部42cは上下動可能である。なお、接続部42eaは傾斜してもメモリチップ36dと干渉しない位置にある(図7参照)。
【0032】
放熱板42の右端部について説明する。放熱板42の右端近傍には前端から後方に向かってスリット42hが形成されている。スリット42hはスリット42gよりやや幅が広く、最奥部は左に向かってやや突出する鉤型となっている。本実施例のスリット42hの長さは、放熱板42の前後幅の2/3程度である。スリット42hより右側の部分は前方に向かって延長され、第2アーム部42iを形成している。第2アーム部42iの先端は第2固定部42jとなっている。第2固定部42jはネジ44(図3参照)により放熱板42の右端を基板26の第2ボス34Bに固定する部分であり、中央にはネジ挿通孔42iaが形成されている。第2固定部42jは小さい段差部42jbによって第2アーム部42iにおける他の部分よりやや下になっている。本実施例の第2アーム部42iの長さは放熱板42の前後幅と同じ程度である。本実施例の第2アーム部42iの幅はコネクタ33の幅と同程度であり、第1アーム部42eの2倍程度である。第2アーム部42iはコネクタ33のほぼ全面を覆うが、メモリチップ36dや次に述べるサーマルパッド48の厚みによって嵩上げされており、該コネクタ33には当接しない。したがって、第2アーム部42iは弾性的に傾斜可能であり、第2固定部42jは上下動可能である。
【0033】
主放熱部42aの裏側で記憶装置36と対面する面にはサーマルパッド48が貼られている。サーマルパッド48は、TIM(Thermal Interface Material)の一種であって半導体チップの熱を効率的に主放熱部42aに伝熱させることができる。サーマルパッド48は、記憶装置36の半導体チップに対して適度に圧縮されて当接される厚みを有している。サーマルパッド48は、複数の半導体チップのうち1つ以上の発熱の大きいものに対して当接可能な十分な面積を有している。サーマルパッド48は、例えばシリコーン材で構成されており弾性および多少の粘着性を有する。
【0034】
放熱板42は、左端部でネジ44がネジ挿通孔42caを通って第1ボス34Aに螺合することによって記憶装置36の左端と共締めされ、右端部で別のネジ44がネジ挿通孔42jaを通って第2ボス34Bに螺合することによって基板26に固定される。このように放熱板42が固定されると、主放熱部42aはサーマルパッド48を介して記憶装置36のメモリチップ36d、制御チップ36eと熱接続され、これらから受熱および放熱することができる。本実施例ではモジュール基板36aと基板26との間にも同様のサーマルパッド48が設けられている(図3参照)。
【0035】
図5は、放熱板42の左端部に取外しタブ50が設けられている状態の平面図である。取外しタブ50は、主放熱部42aにおける左端の矩形突出部42f(つまり第1固定部42cに隣接する部分)部分から突出し、ネジ44によって第1固定部42cと共締めされる柔軟で絶縁性のシート状部材である。取外しタブ50は、例えば樹脂シートで構成される。取外しタブ50はT字形状であり、矩形突出部42fと同幅で該矩形突出部42fに固定される固定片50aと、左方向に突出するツマミ片50bとを有する。ツマミ片50bには横長の長孔50cが形成されており、ネジ44が挿通するようになっている。ツマミ片50bは放熱板42の最も左端である中継部42dよりも左側に突出する。固定片50aは適度に広い面積を有しており矩形突出部42fと確実に固定されている。取外しタブ50および次に述べる絶縁性シート52と放熱板52の固定手段は粘着または接着などである。
【0036】
図6は、放熱板42の第1アーム部42eに柔軟な絶縁性シート52が設けられている状態の平面図である。絶縁性シート52は2枚あり2本の第1アーム部42eの下面(基板26と対面する側)にそれぞれ貼り付けられている。絶縁性シート52は接続部42eaに沿う第1部分52aと、アーム中間部42ebに沿う第2部分52bと、接続部42eaから矩形突出部42fに亘って設けられる第3部分52cとからなる。第2部分52bと第3部分52cとの間には切込52dが形成されており、矩形突出部42fとアーム中間部42ebとが相対的に変位することを妨げない。絶縁性シート52は柔軟であるが接続部42eaと矩形突出部42fとが相対的に変位することを妨げないように第3部分52cはやや弛ませてもよい。なお、煩雑とならないように取外しタブ50と絶縁性シート52とは図5および図6に分けて示しているが、実際の放熱板42には両方が設けられる。
【0037】
図7は、放熱構造40の右端部の拡大斜視図である。図7では、理解が容易となるように取外しタブ50を仮想線で示し、サーマルパッド48については省略している。図8は、薄い記憶装置36に対して放熱構造40を適用した場合の模式断面図である。図9は、厚い記憶装置36に対して放熱構造40を適用した場合の模式断面図である。第2アーム部42iは前方に向かって延在しているが、図8図9では模式的に右方向に延在しているように示している。
【0038】
記憶装置36はメモリチップ36d、制御チップ36eおよびモジュール基板36aによって厚みが異なる場合がある。放熱構造40では、記憶装置36の厚みに応じて第1アーム部42e、第2アーム部42iの傾斜角度が弾性的に変化して厚みの差を吸収し、主放熱部42aを適切にメモリチップ36dおよび制御チップ36eに対して隙間を生じることなく熱接続させることができる。また、第1アーム部42e、第2アーム部42iは弾性的に傾斜するので過大な張力が発生することがなく、メモリチップ36dおよび制御チップ36eに負荷がかからず、アーム部自体の寿命が低減しない。また放熱構造40では、ユーザまたは作業者が記憶装置36を厚みの違うものに交換した場合にも半導体チップと放熱板42との間に隙間を生じることなく適切に熱接続させることができる。
【0039】
ところで、記憶装置36では通常、第1ボス34Aおよび切欠36bに近い左端部からコネクタ33および接続端子36cのある右側に向かってメモリチップ36dが配列されている。記憶装置36の厚みの差が記憶容量の違いなどによるメモリチップ36dの厚みの差に大きく起因している場合、放熱構造40では左端部において、第1固定部42cから左に突出する中継部42dと、そこから分岐して側面視で折り返して主放熱部42aと接続される2本の第1アーム部42eとを備えていることから、十分な長さと弾性変形代が確保され、折り返し構造が余長吸収作用を奏して記憶装置36の厚み差を吸収しやすい。また、第1アーム部42eは平面視でアーム中間部42ebを介したクランク形状になっていることから、直角部が多少弾性変形して角度変化することにより余長吸収作用がある。このように、電子機器10および放熱構造40では1枚の放熱板42を様々な厚みの記憶装置36に対して適用することができる。
【0040】
また、矩形突出部42fは左端に最も近いメモリチップ36dにおける左端に近い部分を覆っており、2本の第1アーム部42eの接続部42eaは、矩形突出部42fとの間にスリット42gを形成して離間していることから、矩形突出部42fは特にこのメモリチップ36dに対して効果的に適度な押圧力を与えて熱伝導性が向上する。放熱板42の左端部の固定は、切欠36bとともに第1ボス34Aに対してネジ44によって共締めされるので合理的である。放熱構造40の左部分は、第1固定部42cを基準として前後対称構造となっているため放熱板42は記憶装置36に対して前後方向にバランスよく当接する。中継部42dは第1固定部42cに対して段差部42cbによって嵩上げされていることから、記憶装置36が薄い場合には第1アーム部42eの傾斜が緩くなり、その分相当に厚い記憶装置36にも適用可能となる。
【0041】
図7に示すように、モジュール基板36aには左端部分に小さい電気素子36fが実装され、または配線パターンが設けられている場合がある。これらは第1アーム部42eの接続部42eaやアーム中間部42ebで覆われている。第1アーム部42eは細いが、第1アーム部42eの接続部42eaの下面には絶縁性シート52が貼られていることから、仮に過大な外力や振動など不測の事態によって下方に変位しても電気素子36fや配線パターンとの電気的接触が防止される。
【0042】
放熱板42は第1固定部42c以外にも取外しタブ50を介して第1ボス34Aと固定されている。そのため、ユーザまたは作業者が放熱板42を取り外す際に誤ってネジ44をはずさずに矩形突出部42fを持ち上げようとしても、該矩形突出部42fは取外しタブ50で第1ボス34Aに固定されていることから持ち上がらない。したがって、細い第1アーム部42eに無理な力を加えて損傷することが防止される。
【0043】
図10は、放熱板42を取り外す際の放熱構造40の左端部の拡大斜視図である。放熱板42を取り外す際には第2ボス34Bからネジ44を外し、さらに第1ボス34Aからネジ44を外す。そうすると、取外しタブ50のツマミ片50bを持ち上げ可能な状態となる。そしてユーザまたは作業者がツマミ片50bを持ち上げることにより、放熱板42が取り外される。
【0044】
このとき、仮に第1固定部42cや中継部42dを持ち上げてしまうと、主放熱部42aがサーマルパッド48を介して半導体チップと粘着気味になっているため細い第1アーム部42eに過大な力が加わって損傷してしまう懸念がある。これに対して放熱構造40では、ツマミ片50bが第1固定部42cおよび中継部42dより上にあり、しかも中継部42dより左側に突出していることから、ユーザまたは作業者は必然的にツマミ片50bを持ち上げることになり、第1アーム部42eの損傷を防止することができる。
【0045】
放熱板42はネジ44を外して持ち上げることにより単体で取り外すことができる。このとき、記憶装置36の接続端子36cはコネクタ33のスロット33aに挿入されたままの状態であることから挿入状態を確認することができる。放熱板42はボス34に対して固定されていることから記憶装置36に対して機械的負荷をかけることがない。
【0046】
図11は、変形例にかかる放熱構造40Aの平面図である。放熱構造40Aにおいて上記の放熱構造40と同様の構成要素には同符号を付して詳細な説明を省略する。放熱構造40Aが適用されている記憶装置36は上記のものより横方向に長く、メモリチップ36dの数も多くなっている。放熱構造40Aにおける主放熱部42aは記憶装置36に応じて横長形状となっている。放熱構造40Aでは上記のような矩形突出部42fやスリット42gは設けられなく、第2アーム部42iは上記の場合と異なり右方向に突出している。これらは仕様やレイアウト条件により決定すればよい。
【0047】
上記実施例で、第1固定部42cから中継部42dを介した第1アーム部42eの折り返し構造は、レイアウト条件などにより放熱構造40,40Aの左側だけでなく左右両側に設けてもよい。放熱板42には記憶装置36との位置決め片などが付加されていてもよい。記憶装置36に何らかの位置決め手段があれば接続端子36cの接続先は実装されたコネクタ33ではなくケーブルなどであってもよい。
【0048】
放熱構造40,40Aにおける放熱板42は記憶装置36に対して適用されているが、例えばアンテナエレメント24に対応した通信モジュールなどに適用してもよい。放熱板42の主放熱部42aの部分は板状に限らず、例えば多数の冷却フィンが突出している形式であってもよいが、本実施例のように一枚板から構成される形式にすると廉価である。放熱構造40,40Aが放熱対象とする電子モジュールは、必ずしも交換可能なものに限らず、例えば電子機器10が機種ごとに違うタイプの交換不能の記憶装置36を実装する場合にも共用化することができる。
【0049】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
10 電子機器
12 筐体
26 基板
33 コネクタ
34、34A、34B ボス
36 記憶装置(電子モジュール)
36a モジュール基板
36b 切欠
36d メモリチップ
36es 制御チップ
36f 電気素子
40,40A 放熱構造
42 放熱板
42a 主放熱部
42c 第1固定部
42d 中継部
42e 第1アーム部
42ea 接続部
42eb アーム中間部
42f 矩形突出部
42g、42h スリット
42i 第2アーム部
42j 第2固定部
44 ネジ
48 サーマルパッド
50 取外しタブ
52 絶縁性シート
【要約】
【課題】1枚の放熱板を様々な厚みの電子モジュールに対して適用することのできる放熱構造を提供する。
【解決手段】矩形の一端を形成する縁部の略中央部がネジ44によって基板26に対して固定されている。放熱構造40は、記憶装置36に対して熱接続される熱伝導材の放熱板42を有する。記憶装置36はモジュール基板36a、および該モジュール基板36aに実装されるメモリチップ36dを有する。放熱板42は、メモリチップ36dに対して熱接続される主放熱部42aと、ネジ44と共締めさる第1固定部42cと、第1固定部42cから記憶装置36とは反対側に突出する中継部42dと、中継部42dから2つに分岐し折返して第1固定部42cの両側を通り主放熱部42aと接続される2本の第1アーム部42eとを有する。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11