(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】溶接システム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/127 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B23K9/127 501Z
(21)【出願番号】P 2023146938
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2022134828の分割
【原出願日】2022-08-26
【審査請求日】2023-09-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】榎本 望
(72)【発明者】
【氏名】片山 翼
(72)【発明者】
【氏名】三木 聡史
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-120066(JP,A)
【文献】特開2022-018144(JP,A)
【文献】特開2020-182963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチ及び溶接ワイヤを撮像することができる撮像部と、
前記撮像部による撮像により得られた画像データであって開先に対する前記溶接ワイヤの先端の位置が第1の位置である第1画像の画像データと、前記撮像部による撮像により得られた画像データであって開先に対する前記溶接ワイヤの先端の位置が第2の位置である第2画像の画像データと、に基づき、前記溶接ワイヤの先端の画像である先端画像の画像データを生成する画像生成部
を含む制御部と、
を備え、
前記第1の位置は、前記第2の位置よりも、開先に遠い位置であり、
前記制御部は、前記撮像部により前記第1画像が撮像された際の前記溶接トーチの位置と、前記撮像部により前記第2画像が撮像された際の前記溶接トーチの位置と、が同一になるよう、前記溶接トーチの位置を制御することができる、
溶接システム。
【請求項2】
前記画像生成部は、前記溶接ワイヤの先端の位置を示す画像である強調表示画像の画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項3】
前記画像生成部によって生成された画像データに対応する画像を表示する表示部、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記溶接ワイヤの先端と前記開先との距離が所定の範囲内か否かを示す情報の所定の入力先への入力を促す画像を表示する、
ことを特徴とする請求項3に記載の溶接システム。
【請求項5】
前記開先の断面形状を測定する断面形状測定部と、
前記溶接トーチによる溶接を制御する溶接制御部と、
を備え、
前記画像生成部は前記断面形状測定部による測定の後に前記先端画像の画像データを生成し、
前記溶接制御部は前記断面形状測定部の測定の結果と前記先端画像の画像データとに基づき前記溶接トーチに溶接を実行させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項6】
前記画像生成部は、前記
溶接トーチの先端を撮像するように前記撮像部の動作を制御する撮像制御処理の実行により、前記溶接ワイヤの先端が前記第1の位置に位置する場合の前記溶接トーチの先端を先に撮像し、前記溶接ワイヤの先端が前記第2の位置に位置する場合の前記溶接トーチの先端を次に撮像するよう、前記撮像部の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の溶接システム。
【請求項7】
前記溶接ワイヤは、前記溶接トーチの先端に支持されるとともにリールに巻かれている、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接システム。
【請求項8】
前記画像生成部は、背景差分又はフレーム間差分により、前記先端画像の画像データを生成する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の溶接システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接システムに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の接合に溶接ロボットを用いて自動溶接が行われている。自動溶接の際には、溶接部分に沿って自走式の溶接ロボットを配置し、予め溶接部分に形成しておいた開先に対して連続的に溶接を行う。溶接ロボットの制御装置においては、溶接ロボットのトーチの開先に対する位置を適切にするために、画像処理による位置制御が利用されている。
【0003】
溶接品質の向上、建築現場における人手不足を解消するために建築現場に導入されるレール自走式の溶接ロボットを使用して、溶接対象となる母材の形状測定を、非接触センサーを用いて実施する場合に、センサーにより検出したワールド座標系での溶接狙い位置を、ロボットの制御に使用可能なロボット座標系に変換する必要がある。
特許文献1は、画像によりセンシングした開先の特定の点に実際にワイヤを触れさせ、その時のロボットの現在位置と画像により特定した溶接狙い位置とを等しくすることによってワールド座標系の座標をロボット座標系に変換するパラメータを求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、溶接ワイヤの先端の位置を、より精度よく、取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る溶接システムは、溶接トーチ及び溶接ワイヤを撮像することができる撮像部と、前記撮像部による撮像により得られた画像データであって開先に対する前記溶接ワイヤの先端の位置が第1の位置である第1画像の画像データと、前記撮像部による撮像により得られた画像データであって開先に対する前記溶接ワイヤの先端の位置が第2の位置である第2画像の画像データと、に基づき、前記溶接ワイヤの先端の画像である先端画像の画像データを生成する画像生成部を含む制御部と、を備え、前記第1の位置は、前記第2の位置よりも、開先に遠い位置であり、前記制御部は、前記撮像部により前記第1画像が撮像された際の前記溶接トーチの位置と、前記撮像部により前記第2画像が撮像された際の前記溶接トーチの位置と、が同一になるよう、前記溶接トーチの位置を制御することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、溶接ワイヤの先端の位置を、より精度よく、取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の溶接システム100の概要を説明する説明図である。
【
図2】ロボットキャリブレーションを説明するための図である。
【
図3】実施形態における断面形状測定処理の結果の一例を示す図である。
【
図4】実施形態における断面形状測定処理の一例を示す図である。
【
図5】実施形態における断面形状測定処理の一例を示す図である。
【
図6】実施形態における制御装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図7】実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図である。
【
図8】実施形態における制御装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態における第1画像の一例を示す図である。
【
図10】実施形態における第2画像の一例を示す図である。
【
図11】実施形態における先端抽出画像の一例を示す図である。
【
図12】変形例1における表示部25が表示する画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本実施形態の溶接ロボットシステム、溶接方法及びプログラムを、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態の溶接システム100の概要を説明する説明図である。溶接システム100は、溶接装置1、制御装置2及びワイヤ送給装置3を備える。溶接装置1は、溶接対象9の溶接を行う。溶接対象9には、一対の辺縁に溝状の開先901が形成されている。開先901は、溶接対象9の部位のうち溶接装置1によって溶接される部位である。溶接システム100は、走行レール11を備える。走行レール11は、開先901に沿って設置されている。溶接装置1は走行レール11に取り付けられている。溶接装置1は、走行レール11に沿って移動可能である。
【0011】
溶接装置1は、走行レール11に沿って移動するサドル12を備える。サドル12は矩形箱状のケース13を支持する。ケース13の内部には図示しない移動機構が設置されている。移動機構の動作によりケース13は走行レール11に対して近接離隔する方向(以下「Z軸方向」という。)と開先901を横断する方向(以下「X軸方向」という。)とのそれぞれへ移動可能である。Z軸方向は、より具体的には、溶接対象9の表面との交差方向である。X軸方向は、より具体的には、Z軸方向とY軸方向とに直交する方向である。Y軸方向は、開先901及び走行レール11の延伸方向である。
【0012】
ケース13の開先901に臨む側にはブラケット14が設置され、ブラケット14の先端にはホルダ15が支持され、ホルダ15には溶接トーチ16が保持されている。溶接トーチ16の先端には溶接ワイヤ161が支持されている。溶接トーチ16には、溶接ワイヤ161に給電するコンタクトチップCCHが含まれる。ホルダ15は、ブラケット14に回動可能である。またホルダ15は、回動軸Sまわりの任意の角度位置で固定可能である。ホルダ15の角度により溶接トーチ16のねらい角Atは調整される。
またブラケット14は、アーム511を介してパネル5を支持する。パネル5は、ワールド座標系からロボット座標系への回転成分を算出する際に使用される。パネル5の少なくとも下半分が開先901内に入り込むように配置され、パネル5の表面が開先901の連続方向と交差する状態とされている。アーム511は、ブラケット14に対して回動自在に接続され、パネル5は開先901に入り込んだ状態から撮像装置42の視野外まで退避可能である。パネル5を撮像装置42の視野外へ退避させるために、アーム511およびパネル5をブラケット14から取り外し可能としてもよい。
【0013】
溶接ワイヤ161は、ワイヤ送給装置3に接続される。ワイヤ送給装置3は、溶接ワイヤ161を送給する。ワイヤ送給装置3が溶接ワイヤ161を送給することによって溶接ワイヤ161の位置は移動する。したがって、ワイヤ送給装置3は溶接ワイヤ161を送給することによって溶接ワイヤ161の位置を移動させる装置である。
【0014】
溶接装置1は、照明装置41及び撮像装置42を備える。照明装置41は、ラインレーザ照射装置である。照明装置41は、開先901の横断方向(すなわちX軸方向)に拡がるレーザー光束を開先901の測定部位911に照射することで、測定部位911を開先901の横断方向へ連続して線状に照明する。測定部位911は、溶接対象9の部位のうち撮像装置42によって測定される部位である。照明装置41による測定部位911へのレーザー光束の照明により、断面形状912は周囲よりも明るく浮かび上がる。
【0015】
撮像装置42は、溶接トーチ16を挟んで両側に設置される。なお、撮像装置42は、必ずしも複数存在する必要は無く、1つだけであってもよい。撮像装置42は、照明装置41によって線状に照明された断面形状912を含む測定部位911を撮像して画像データを生成する。撮像装置42が撮像して生成した画像データは制御装置2に出力される。
【0016】
撮像装置42は、例えばCCD(Charge Coupled Device)などの固体撮像素子を含んで構成される。撮像装置42は、支持パネル421及び支持アーム422を介して、ケース13の側面に設置された支持レール423に支持されている。撮像装置42は、支持パネル421に対して向きの調整が可能に設置されている。
【0017】
撮像装置42は、支持レール423に沿ってX軸方向へ移動可能にも設置されている。したがって、撮像装置42の位置、向き又は傾きはユーザ又は制御装置2が変更可能である。そのため、ユーザ又は制御装置2は、撮像する際に視野の調整を行うことができる。視野は、具体的には、測定部位911を含む溶接対象9上の撮像される空間(以下「撮像領域420」という。)である。
【0018】
溶接装置1は、制御部101を備える。制御部101は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを備え、プログラムを実行する。プログラムの実行により制御部101は、溶接装置1の動作を制御する。制御部101は、制御装置2と通信可能に接続されており、制御装置2による制御を受けて溶接装置1の動作を制御する。制御の内容は、例えば溶接装置1の移動の制御である。
【0019】
制御装置2は、溶接システム100の動作を制御する。制御装置2は、具体的には、溶接装置1及びワイヤ送給装置3の動作を制御する。
【0020】
溶接装置1に撮像装置42が取り付けられた後に、制御装置2には、撮像装置42が取り付けられた位置に紐づく撮像装置42のIPアドレスが登録される。制御装置2は、撮像装置42のゆがみなどを補正するための内部パラメータを算出する。制御装置2には、開先形状や溶接姿勢、ワイヤの種類などの溶接条件と、建て方治具有り又は無し、ガイドレール距離、コラムRなどの溶接対象が登録される。
図2は、ロボットキャリブレーションを説明するための図である。
図2を参照して、制御装置2の処理について説明を続ける。
制御装置2は、カメラ座標系からワールド座標系への変換パラメータを算出する。カメラ座標系とは、カメラの光学中心を原点とし, 座標軸の方向及び単位が予め定められた座標系である。制御装置2は、ワールド座標からロボット座標への回転成分を算出する。ロボット座標系とは、制御部101が溶接装置1の位置の制御に使用する座標系であって、座標軸の方向及び単位が予め定められた座標系である。
制御装置2は、ティーチングが行われた後に、センシングポイントと撮像装置42とを選択する。
【0021】
制御装置2は、断面形状測定処理を実行する。断面形状測定処理は、開先901の断面形状912を測定する処理である。断面形状測定処理では、制御装置2は、センシングポイントに溶接装置1(溶接ロボット)を移動させ、撮像装置42を選択する。
図3は、実施形態における断面形状測定処理の結果の一例を示す図である。より具体的には、
図3は、断面形状912を写す画像である。線A3が断面形状912の一例である。
断面形状測定処理では、制御装置2は、照明装置41をオンにして、撮像装置42に撮像させる。撮像装置42は、照明装置41によって線状に照明された断面形状912を含む測定部位911を撮像して画像データを生成する。撮像装置42が撮像して生成した画像データは制御装置2に出力される。
次に断面形状測定処理では、制御装置2は、照明装置41をオフにして、撮像装置42に撮像させる。撮像装置42は、照明装置41によって照明されていない断面形状912を含む測定部位911を撮像して画像データを生成する。撮像装置42が撮像して生成した画像データは制御装置2に出力される。
【0022】
図4は、実施形態における断面形状測定処理の一例を示す図である。断面形状測定処理では、制御装置2は、取得した画像データに基づいて、レーザー光線の角の画像上の座標(AからD)を検出する。
図5は、実施形態における断面形状測定処理の一例を示す図である。次に断面形状測定処理では、制御装置2は、検出した画像上の各座標(AからD)を、内部パラメータと外部パラメータとを利用して、ワールド座標(AwからDw)に変換する。断面形状測定処理では、制御装置2は、ワールド座標系からロボット座標系へ角度成分のみ変換した座標(AraからDra)を生成する。
制御装置2は、開先の原点の座標を保存する。制御装置2は、板厚、ルートギャップなどの開先形状パラメータの値を算出する。制御装置2は、必要に応じてセンシング処理の結果を補正する。
【0023】
制御装置2は、画像生成処理を実行する。画像生成処理では、被溶接部材とは異なる部材を撮像するように、制御する処理を含む。被溶接部材は、例えば、開先である。部材は、例えば、溶接ロボットの一部である。部材の位置は、例えば、部材の先端の位置である。画像生成処理の実行によって、撮像装置42は、部材を撮像した画像(以下「部材撮像画像」という)の画像データを生成する。撮像装置42は、生成した部材撮像画像の画像データを制御装置2へ出力する。
制御装置2は、撮像装置42が出力した部材撮像画像の画像データを取得する。制御装置2は、取得した部材撮像画像の画像データに基づき、ワールド座標取得処理を実行する。ワールド座標取得処理では、画像データに対応する部材撮像画像に含まれる部材のワールド座標系における座標を、画像データに基づき、取得する処理を含む。
具体的には、ワールド座標取得処理では、画像データに対応する部材撮像画像に含まれる部材の画像上の座標を取得する。ワールド座標取得処理では、取得した部材の画像上の座標を、内部パラメータを使用してカメラ座標系に変換し、カメラ座標系に変換した部材の画面上の座標を、外部パラメータを使用して、ワールド座標系における座標に変換する。
【0024】
制御装置2は、ロボット座標取得処理を実行する。ロボット座標取得処理では、部材撮像画像の画像データに対応する部材撮像画像に含まれる部材のロボット座標系における座標を、ロボット本体の制御を行っている制御部101から取得する処理を含む。
制御装置2は、取得した部材のワールド座標系における座標及び部材のロボット座標系における座標に基づき対応処理を実行する。対応処理では、部材のワールド座標系における座標と部材のロボット座標系における座標とに基づき、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応付ける処理を含む。
具体的には、対応処理では、部材のワールド座標系における座標と部材のロボット座標系における座標との差に基づき、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応付ける。制御装置2は、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応付けた結果を記憶する。
【0025】
図6は、実施形態における制御装置2のハードウェア構成の一例を示す図である。
制御装置2は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ91とメモリ92とを備える制御部21を備え、プログラムを実行する。制御装置2は、プログラムの実行によって制御部21、通信部22、入力部23、記憶部24及び表示部25を備える装置として機能する。
【0026】
より具体的には、制御装置2は、プロセッサ91が記憶部24に記憶されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをメモリ92に記憶させる。プロセッサ91が、メモリ92に記憶させたプログラムを実行することによって、制御装置2は、制御部21、通信部22、入力部23、記憶部24及び表示部25を備える装置として機能する。
【0027】
制御部21は、制御装置2が備える各種機能部の動作を制御する。また、制御部21は、溶接装置1及びワイヤ送給装置3の動作を制御する。制御部21による溶接装置1の動作の制御とは具体的には、制御部21が制御部101の動作を制御し、制御部101が制御部21の制御にしたがい溶接装置1の動作を制御することである。
制御部21によるワイヤ送給装置3の動作の制御の1つは具体的には、ワイヤの送給の制御である。なおワイヤ送給装置3は溶接装置1による溶接の実行中も制御部21の制御対象である。なお、撮像装置42に対する制御は、PC(Personal Computer)等の所定のコンピュータによってPLC(programmable logic controller)である制御部21を介して行われても良い。
【0028】
通信部22は、制御装置2を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部22は、有線又は無線を介して外部装置と通信する。外部装置は、例えば溶接装置1である。通信部22は、例えば溶接装置1に制御の指示を示す信号を送信する。
【0029】
外部装置は、例えばワイヤ送給装置3である。外部装置がワイヤ送給装置3である場合、通信部22はより具体的には、PLCを介してワイヤ送給装置3の動作と通信を行う。通信部22は、ワイヤ送給装置3との通信によって、例えば、ワイヤ送給を実行したことを示す信号をワイヤ送給装置3から受信することもある。
通信部22は、ワイヤ送給装置3との通信によって、例えばワイヤ送給装置3にワイヤの送給の開始の指示を示す信号をワイヤ送給装置3に送信する。通信部22は、ワイヤ送給装置3との通信によって、例えばワイヤ送給装置3にワイヤの送給の停止の指示を示す信号をワイヤ送給装置3に送信する。
【0030】
入力部23は、マウスやキーボード、タッチパネル等の入力装置を含んで構成される。入力部23は、これらの入力装置を制御装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。入力部23は、制御装置2に対する各種情報の入力を受け付ける。入力部23には、例えば溶接の開始の指示が入力される。
【0031】
記憶部24は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などのコンピュータ読み出し可能な記憶媒体装置を用いて構成される。記憶部24は、制御装置2自体を含む溶接システム100に関する各種情報を記憶する。記憶部24は、例えば通信部22又は入力部23を介して入力された情報を記憶する。
【0032】
記憶部24は、例えば制御部21による処理の実行により生じた各種情報を記憶する。制御部21による処理の実行により生じた各種情報は、例えば部材撮像画像である。記憶部24は、例えば対応処理の結果を記憶する。
【0033】
表示部25は、各種情報を表示する。表示部25は、例えばCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置を含んで構成される。表示部25は、これらの表示装置を制御装置2に接続するインタフェースとして構成されてもよい。表示部25は、例えば入力部23に入力された情報を出力する。表示部25は、例えば制御部21による処理の実行の結果を表示してもよい。表示部25は、例えば撮像制御処理によって生成された画像データの示す画像を表示してもよい。
【0034】
図7は、実施形態における制御部21の機能構成の一例を示す図である。制御部21は、画像生成部210、断面形状測定部220、ワールド座標取得部230-1、ロボット座標取得部230-2、対応部230-3、溶接制御部240、入力制御部250、記憶制御部260、通信制御部270及び表示制御部280を備える。
【0035】
画像生成部210は、画像生成処理を実行する。断面形状測定部220は、断面形状測定処理を実行する。ワールド座標取得部230-1は、ワールド座標取得処理を実行する。ロボット座標取得部230-2は、ロボット座標取得処理を実行する。対応部230-3は、対応処理を実行する。溶接制御部240は、溶接装置1及びワイヤ送給装置3の動作を制御することで溶接装置1による溶接を制御する。より具体的には、溶接制御部240は、溶接装置1及びワイヤ送給装置3の動作を制御することで溶接トーチ16による溶接を制御する。
【0036】
入力制御部250は、入力部23の動作を制御する。入力制御部250は、入力部23の動作を制御することで入力部23に入力された情報を取得する。記憶制御部260は、各種情報を記憶部24に記録する。記憶制御部260は、例えば制御部21の動作によって生じた各種情報を記憶部24に記録する。
通信制御部270は、通信部22の動作を制御する。通信制御部270は、通信部22の動作を制御することで、通信部22が受信した情報を取得する。通信制御部270は、通信部22の動作を制御することで、制御部21で生じた情報を通信部22の通信先に送信させる。表示制御部280は、表示部25の動作を制御する。
【0037】
図8は、実施形態における制御装置2が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。断面形状測定部220が断面形状測定処理を実行する(ステップS1-1)。次に、画像生成部210が画像生成処理を実行する(ステップS2-1)。ステップS2-1の処理により、部材撮像画像の画像データが生成される。
次に、ワールド座標取得部230-1がワールド座標取得処理を実行する(ステップS3-1)。次に、ロボット座標取得部230-2がロボット座標取得処理を実行する(ステップS4-1)。次に、対応部230-3が対応処理を実行する(ステップS5-1)。次に、溶接制御部240が溶接装置1及びワイヤ送給装置3の動作を制御して溶接トーチ16に溶接を実行させる(ステップS6-1)。
溶接装置1(溶接ロボット)は、複数のセンシング位置に移動し、撮像装置42、ワールド座標取得部230-1、ロボット座標取得部230-2及び対応部230-3のそれぞれの処理は、溶接ロボットが移動するセンシング位置それぞれにて、実行される。
【0038】
前述した実施形態では、ワールド座標取得処理において、画像データに対応する部材撮像画像に含まれる部材の画像上の座標を取得し、取得した部材の画像上の座標を、内部パラメータと外部パラメータとを使用して、ワールド座標系における座標に変換する場合について説明したが、この例に限られない。
例えば、ワールド座標取得処理において、部材撮影画像からパターンマッチングで部材抽出画像を取得するようにしてもよい。部材抽出画像の座標であって画像座標系の座標を、内部パラメータ及び外部パラメータを使用し、ワールド座標系の座標に変換するようにしてもよい。
また、例えば、ワールド座標取得処理において、画像データに対応する部材撮像画像に含まれる部材のワールド座標系における座標を、撮像装置42により生成された画像データに基づくパターンマッチングにより取得するようにしてもよい。この場合、制御装置2は、撮像装置42によって生成された画像データに基づき、部材が抽出された画像である部材抽出画像の画像データを生成する部材抽出画像生成部を更に備えてもよい。ワールド座標取得部230-1は、ワールド座標系における座標であって、撮像装置42によって生成された画像データに対応する部材撮像画像に含まれる部材の座標を、部材抽出画像生成部により生成された部材抽出画像の画像データに基づくパターンマッチングにより取得する。
【0039】
また、例えば、ワールド座標取得処理において、画像データに対応する部材撮像画像に含まれる部材のワールド座標系における座標を、撮像装置42により生成された画像データに基づく機械学習により取得するようにしてもよい。この場合、部材撮像画像と部材撮像画像に含まれる部材のワールド座標系における座標との関係を学習した学習済モデルを使用して、部材のワールド座標系における座標が取得されてもよいし、部材撮像画像と部材撮像画像から部材が抽出された画像である部材抽出画像との関係を学習した学習済モデルを使用して、部材抽出画像を取得し、取得した部材抽出画像、内部パラメータ、外部パラメータに基づいてワールド座標系における座標が取得されてもよい。
【0040】
以上のように構成された実施形態における溶接システム100は、部材撮像画像の画像データに基づき、部材のワールド座標系における座標と、部材のロボット座標系における座標とを取得し、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応付けることができるため、ワールド座標系の座標を、ロボット座標系の座標に変換できる。ワイヤ先端を特定位置に触れさせることなく、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応付けることができるため、溶接ワイヤを検出点上に誤差なく触れさせる作業をなくすことができる。このため、ワイヤが周辺に接触し曲がることがなくなる。
【0041】
(変形例1)
制御部21は、画像生成部210の代わりに部材抽出画像生成部210aを備える。部材抽出画像生成部210aは、部材抽出画像生成処理を実行する。部材抽出画像生成処理は、撮像装置42により生成された画像データに基づき、部材が抽出された画像である部材抽出画像の画像データを生成する。
部材抽出画像生成処理は、第1画像の画像データと第2画像の画像データとに基づき、溶接ワイヤ161の先端の部材抽出画像(以下「先端抽出画像」という。)の画像データを生成する処理(以下「主抽出処理」という。)を含む。
第1画像は、開先901に対する溶接ワイヤ161の先端の位置が第1の位置である画像である。第2画像は、開先901に対する溶接ワイヤ161の先端の位置が第2の位置である画像である。第1画像及び第2画像は、撮像装置42による撮像により得られた画像データである。
【0042】
第1の位置は、第2の位置よりも開先901から遠い位置である。例えば第1画像は溶接ワイヤ161の先端が溶接トーチ16に引っ込んだ状態にある画像であり、この場合、第2画像は、例えば、溶接ワイヤ161の先端が溶接トーチ16から突き出た状態にある画像である。すなわち、第1の位置における溶接ワイヤ161の先端は例えば溶接トーチ16に引っ込んだ状態にあり、第2の位置における溶接ワイヤ161の先端は例えば溶接トーチ16の先端から突き出た状態にある。
部材抽出画像生成部210aは、撮像装置42により第1画像が撮像された際の溶接トーチ16の位置と、撮像装置42により第2画像が撮像された際の溶接トーチ16の位置と、が同一になるよう、溶接トーチ16の位置を制御することができる。
【0043】
撮像制御処理では、溶接トーチ16の先端を撮像するように溶接装置1又はワイヤ送給装置3の動作を制御する。撮像制御処理の実行により、第1画像と第2画像とが得られる。したがって主抽出処理は、撮像制御処理の実行後に実行される。
図9は、実施形態における第1画像の一例を示す図である。
図9の第1画像には溶接トーチ16の先端の近傍A1に溶接ワイヤ161が存在しない。
図10は、実施形態における第2画像の一例を示す図である。
図10の第2画像には溶接トーチ16の先端の近傍A1に溶接ワイヤ161が存在する。
【0044】
図11は、実施形態における先端抽出画像の一例を示す図である。
図11の先端抽出画像には、領域A2に
図9の第1画像と
図10の第2画像との差分が写っている。差分が、溶接ワイヤ161の像である。したがって先端抽出画像は、溶接ワイヤ161の先端の画像である。このように、先端抽出画像は、例えば、第1画像と第2画像との背景差分により得られた画像である。なお、画像の時系列が動画であるので、先端抽出画像は、例えばフレーム間差分により得られた画像であってもよい。すなわち、部材抽出画像生成部は、背景差分又はフレーム間差分により、部材抽出画像の画像データを生成する。
部材抽出画像生成部は断面形状測定部220による測定の後に部材抽出画像の画像データを生成し、溶接制御部240は断面形状測定部220の測定の結果と先端抽出画像の画像データとに基づき溶接トーチ16に溶接を実行させる。
【0045】
変形例1において、記憶制御部260は、ワイヤ送給装置3から、溶接ワイヤ161が溶接トーチ16から突出する長さを示す第1長さ情報を取得し、取得した第1長さ情報を記憶部24に記憶させてもよい。この場合、ロボット座標取得部230-2は、ロボット座標系における座標であって、先端抽出画像に含まれる溶接ワイヤ161の先端の座標を、記憶部24に記憶される第1長さ情報に基づき、取得するようにしてもよい。
【0046】
変形例1において、部材抽出画像生成処理は、部材の位置が第1の位置と第2の位置とのいずれであるのかを判定する部材位置判定処理と、部材位置判定処理の判定の結果に基づき部材を撮像するように撮像装置42の動作を制御する撮像制御処理とを実行するようにしてもよい。
また、部材抽出画像生成処理は、先端位置判定処理を含んでもよい。先端位置判定処理は、溶接ワイヤ161の先端の位置が第1の位置と第2の位置とのいずれであるのかを判定する処理である。このような場合、撮像制御処理は、先端位置判定処理の判定の結果に基づき溶接トーチ16の先端を撮像するように撮像装置42の動作を制御する処理であってもよい。撮像装置42は溶接トーチ16及び溶接ワイヤ161を撮像することができる。
【0047】
入力部23には、例えば溶接ワイヤ161の先端の位置の移動の指示(以下「先端移動指示」という。)が入力されてもよい。すなわち、入力部23は、先端移動指示の入力を受け付けてもよい。部材抽出画像生成処理は、先端移動指示に基づいて、溶接ワイヤ161の先端の位置が第1の位置と第2の位置とのいずれであるのかを判定する処理を含んでもよい。
【0048】
なお、ワイヤ送給装置3は、位置変更部の一例である。位置変更部は、溶接ワイヤ161の先端の位置を移動させる機能部である。したがって、ワイヤ送給装置3は溶接ワイヤ161を送給することによって溶接ワイヤ161の位置を移動させるので、ワイヤ送給装置3は位置変更部の一例である。
そのため、このような場合に先端位置判定処理は、ワイヤ送給装置3の動作を示す情報に基づき、溶接ワイヤ161の先端の位置が第1の位置と第2の位置とのいずれであるのかを判定してもよい。ワイヤ送給装置3の動作を示す情報は、位置変更部動作情報の一例である。ワイヤ送給装置3の動作を示す情報は、例えばワイヤ送給装置3から送信され、通信部22を介して制御部21が取得する。ワイヤ送給装置3の動作を示す情報は、例えば溶接制御部240による溶接の制御に際して生成する。
【0049】
なお、ホルダ15は、位置変更部の一例である。上述したようにホルダ15は、ブラケット14に対して回動可能である。そしてホルダ15の角度により溶接トーチ16のねらい角Atが調整される。すなわち、ホルダ15は、溶接トーチ16を移動させることにより、溶接ワイヤ161の先端の位置を移動させる。したがって、ホルダ15は、位置変更部の一例である。
そのため、このような場合に先端位置判定処理は、ホルダ15の動作を示す情報に基づき、溶接ワイヤ161の先端の位置が第1の位置と第2の位置とのいずれであるのかを判定してもよい。ホルダ15の動作を示す情報は、位置変更部動作情報の一例である。ホルダ15の動作を示す情報は、例えば溶接装置1から送信され、通信部22を介して制御部21が取得する。ホルダ15の動作を示す情報は、例えば溶接制御部240が溶接の制御に際して生成する。
【0050】
部材抽出画像生成処理は、制限処理を含んでもよい。制限処理は、撮像装置42が第1画像の撮像を開始してから第2画像を撮像し終えるまでの間、溶接ワイヤ161による溶接を禁止する制御を少なくとも実行する処理である。撮像装置42に対する部材の位置は、撮像装置42が第1画像の撮像を開始してから第2画像を撮像し終えるまでの間、一定である。
制限処理は、撮像装置42が第1画像の撮像を開始してから第2画像を撮像し終えるまでの間、溶接トーチの移動と、ケース13の移動と、撮像装置42の位置、向き又は傾きと、を抑制する制御もさらに実行する処理であってもよい。制限処理が、撮像装置42が第1画像の撮像を開始してから第2画像を撮像し終えるまでの間、このような抑制する制御もさらに実行する処理である場合、溶接ワイヤ161の先端の位置は、溶接ワイヤ161が送給されることで移動する。制限処理は、撮像装置42により第1画像が撮像された際の溶接トーチの位置と、撮像装置42により第2画像が撮像された際の溶接トーチの位置と、が同一になるよう、溶接トーチの位置を制御してもよい。
【0051】
部材抽出画像生成処理は、強調表示画像生成処理を含んでもよい。強調表示画像生成処理は、第1画像の画像データと第2画像の画像データとに基づき、第2の位置に位置する溶接ワイヤ161の先端の位置を示す画像である強調表示画像の画像データを生成する。強調表示画像の一例を以下の
図12を用いて示す。
【0052】
図12は、変形例1における表示部25が表示する画像の一例を示す図である。
図12は、撮像装置42による撮像中の画像M1を示す。撮像装置42は、例えば所定の周期で繰り返し撮像を行う。すなわち、撮像装置42は画像の時系列を生成する。画像の時系列は動画であるので、撮像装置42は動画を撮像する。画像M1は、動画を構成する画像の一枚である。画像M1には、画像M2が重畳されている。画像M2は、強調表示画像の一例である。
図12の例では、強調表示画像は、溶接ワイヤ161の先端を囲う円形の画像である。
【0053】
図12は、“成功or失敗”という文字の画像M3が表示部25に表示されることを示す。
画像M3は、溶接ワイヤ161の先端と開先901との距離が所定の範囲内であれば成功を示す情報を入力部23に入力し、溶接ワイヤ161の先端と開先901との距離が所定の範囲外であれば失敗を示す情報を入力部23に入力することを促す画像である。促す対象は、表示部25の閲覧者である。したがって、画像M3は、溶接ワイヤ161の先端と開先901との距離が所定の範囲内か否かを示す情報の所定の入力先への入力を促す画像の一例である。所定の入力先は、例えば入力部23である。
図12において、“カメラ映像確認”は、撮像装置42の撮像中の動画を表示部25に表示させることを促す画像である。
【0054】
表示部25は、制限処理の実行中であることを示す画像を表示してもよい。制限処理の最中は、溶接装置1もワイヤ送給装置3も動作しない場合もあるため、ユーザは溶接装置1又はワイヤ送給装置3の故障なのか、正常な動作が行われていないのかを判定することができない場合がある。表示部25が、制限処理の実行中であることを示す画像を表示する場合、溶接装置1又はワイヤ送給装置3の動作が正常なのか故障なのかのユーザによる判定の精度が高まる。
【0055】
なお、先端位置判定処理は、溶接ワイヤ161の先端の位置が撮像制御処理の実行により第1の位置に位置したと先に判定し、次に、溶接ワイヤ161の先端の位置が撮像制御処理により第2の位置に移動したと判定する処理(以下「特異先端位置判定処理」という。)であってもよい。
【0056】
部材抽出画像生成処理では、撮像制御処理の実行により、先端位置判定処理の判定の結果を用い、第1撮像制御がまず実行され、次に第2撮像制御が実行される。第1撮像制御は、溶接ワイヤ161の先端が第1の位置に位置する場合の溶接トーチ16の先端を先に撮像するよう撮像装置42の動作を制御する処理である。第2撮像制御は、溶接ワイヤ161の先端が第2の位置に位置する場合の溶接トーチ16の先端を撮像するよう撮像装置42の動作を制御する処理である。
【0057】
ここで特異先端位置判定処理と部材抽出画像生成処理との奏する効果について説明する。溶接ワイヤ161は、ワイヤ送給装置3に格納されている場合にはリールに巻かれた状態であり、曲がっている。溶接トーチ16から溶接ワイヤ161が突き出る場合、溶接ワイヤ161はこのような曲がった状態から直線状に矯正されて溶接トーチ16から突き出る。しかしながら、曲がった状態から矯正されたとしても溶接トーチ16から突き出た溶接ワイヤ161の形状は完全な直線状ではなく、多少の曲率を有した形状である。
【0058】
ところで、溶接の開始と溶接トーチ16の先端との関係を考えると、以下のことが言える。すなわち、溶接ワイヤ161の先端が第2の位置に位置する場合の溶接トーチ16の先端を先に撮像し、溶接ワイヤ161の先端が第1の位置に位置する場合の溶接トーチ16の先端を次に撮像すると、溶接を開始するためには、再度、溶接ワイヤ161の先端を第2の位置に位置させる必要がある、ということである。
【0059】
以下説明の簡単のため、溶接ワイヤ161の先端が第2の位置に位置する場合の溶接トーチ16の先端を先に撮像する処理を、第1処理という。以下説明の簡単のため、溶接ワイヤ161の先端が第1の位置に位置する場合の溶接トーチ16の先端を撮像する処理を第2処理という。以下説明の簡単のため、溶接ワイヤ161の先端を第2の位置に位置させる処理を第3処理という。
【0060】
しかし、第1処理の実行時に、溶接ワイヤ161は直線状に矯正される。そして、第3処理の実行時に、溶接ワイヤ161はさらに直線状に矯正される。その結果、第1処理及び第2処理の実行により得られた溶接ワイヤ161の先端の位置と、第3処理の実行により得られた溶接ワイヤ161の先端の位置とはズレてしまう。以下、このズレを、先端ズレという。
【0061】
そこで、先に、溶接ワイヤ161の先端を第1の位置に位置させた状態で溶接トーチ16の先端を撮像し、次に、溶接ワイヤ161の先端を第2の位置に位置させた状態で溶接トーチ16の先端を撮像することを考える。このような場合、溶接ワイヤ161の位置を変更させることなく、そのまま溶接ワイヤ161の先端を第2の位置に位置させた状態で、溶接の開始が可能である。
【0062】
したがって、先に、溶接ワイヤ161の先端を第1の位置に位置させた状態で溶接トーチ16の先端を撮像し、次に、溶接ワイヤ161の先端を第2の位置に位置させた状態で溶接トーチ16の先端を撮像することで、上述の先端ズレを抑制することができる。
【0063】
特異先端位置判定処理と部材抽出画像生成処理とはどちらもこのような、先に、溶接ワイヤ161の先端を第1の位置に位置させた状態で溶接トーチ16の先端を撮像し、次に、溶接ワイヤ161の先端を第2の位置に位置させた状態で溶接トーチ16の先端を撮像する処理である。したがって、特異先端位置判定処理と部材抽出画像生成処理とはどちらも上述の先端ズレを抑制することができる。
【0064】
(変形例2)
画像生成処理は、溶接ロボットの溶接トーチ16を撮像するように、制御する処理を含む。画像生成処理の実行によって、撮像装置42は、溶接トーチ16を撮像した画像(以下「溶接トーチ撮像画像」という)の画像データを生成する。撮像装置42は、生成した溶接トーチ撮像画像の画像データを制御装置2へ出力する。
【0065】
制御装置2は、撮像装置42が出力した溶接トーチ撮像画像の画像データを取得する。制御装置2は、取得した溶接トーチ撮像画像の画像データに基づき、ワールド座標取得処理を実行する。ワールド座標取得処理では、画像データに対応する溶接トーチ撮像画像に含まれる溶接トーチのワールド座標系における座標を、画像データ、内部パラメータ、及び、外部パラメータに基づき、取得する処理を含む。
制御装置2は、ロボット座標取得処理を実行する。ロボット座標取得処理では、溶接トーチ撮像画像の画像データに対応する溶接トーチ撮像画像に含まれる溶接トーチのロボット座標系における座標を、画像データに基づき、取得する処理を含む。
【0066】
変形例2において、記憶制御部260は、溶接トーチ16の先端から溶接トーチ16に含まれるコンタクトチップCCHまでの長さを示す第2長さ情報を記憶部24に記憶させてもよい。この場合、ロボット座標取得部230-2は、ロボット座標系における座標であって、溶接トーチ画像に含まれる溶接トーチ16の先端の座標を、記憶部24に記憶される第2長さ情報に基づき、取得するようにしてもよい。
【0067】
(変形例3)
画像生成処理は、溶接ロボットの治具を撮像するように、制御する処理を含む。治具は、棒状などの直線形状、長方形の形状、真円などの円の形状のものであってもよい。治具の一例は、パネル(キャリブレーションプレート)5である。画像生成処理の実行によって、撮像装置42は、治具を撮像した画像(以下「治具撮像画像」という)の画像データを生成する。撮像装置42は、生成した治具撮像画像の画像データを制御装置2へ出力する。
【0068】
制御装置2は、撮像装置42が出力した治具撮像画像の画像データを取得する。制御装置2は、取得した治具撮像画像の画像データに基づき、ワールド座標取得処理を実行する。ワールド座標取得処理では、画像データに対応する治具撮像画像に含まれる部材のワールド座標系における座標を、画像データ、内部パラメータ、及び、外部パラメータに基づき、取得する処理を含む。
制御装置2は、ロボット座標取得処理を実行する。ロボット座標取得処理では、治具撮像画像の画像データに対応する治具撮像画像に含まれる部材のロボット座標系における座標を、画像データに基づき、取得する処理を含む。
【0069】
変形例3において、記憶制御部260は、溶接トーチ16の先端から溶接トーチ16に含まれるコンタクトチップCCHまでの長さを示す第3長さ情報を記憶部24に記憶させてもよい。この場合、ロボット座標取得部230-2は、ロボット座標系における座標であって、溶接トーチ画像に含まれる溶接トーチ16の先端の座標を、記憶部24に記憶される第3長さ情報に基づき、取得するようにしてもよい。また、ロボット座標系における座標であって、治具の座標を、記憶部24に記憶される治具座標情報に基づき、取得するようにしても良い。
【0070】
<構成例>
一構成例として、被溶接部材を溶接する溶接ロボットと、被溶接部材とは異なる部材と、を備える溶接ロボットシステムであって、部材を撮像して画像データを生成する撮像部の一例としての撮像装置42と、ワールド座標系における座標であって、撮像装置42によって生成された画像データに対応する画像に含まれる前記部材の座標を、前記撮像装置により生成された前記画像データに基づき、取得するワールド座標取得部230-1と、ロボットの位置を表すためのロボット座標系における座標であって、画像に含まれる部材の座標を取得するロボット座標取得部230-2と、ワールド座標取得部230-1により取得された座標とロボット座標取得部230-2により取得された座標とに基づき、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応付ける対応部230-3と、を備える、溶接ロボットシステムである。
このように構成することによって、部材の少なくとも一部が写った画像を用いて、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応づけることができるため、ワールド座標系とロボット座標系とを対応づけることを溶接ロボットの一部を用いることで効率的に実現できる。
【0071】
一構成例として、対応部230-3は、ワールド座標取得部230-1により取得された座標とロボット座標取得部230-2により取得された座標との差に基づき、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応付ける。
このように構成することによって、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを確実に対応付けることができる。
一構成例として、部材は、溶接ロボットの一部である。
このように構成することによって、溶接ロボットの一部が写った画像を用いて、ワールド座標系の原点とロボット座標系の原点とを対応づけることができるため、ワールド座標系とロボット座標系とを対応づけることを溶接ロボットの一部を用いることで効率的に実現できる。
一構成例として、溶接ロボットは、溶接トーチ16を含み、一部は、溶接トーチ16から突出する溶接ワイヤ161である。
このように構成することによって、溶接ワイヤの形状は、例えば直線状なので、検出が容易であり、ワールド座標系における溶接ワイヤの座標を、画像を用いて、精度よく検出できる。
一構成例として、溶接ワイヤ161が溶接トーチ16から突出する長さを示す長さ情報を記憶部24に記憶させる記憶制御部260を更に備え、ロボット座標取得部230-2は、ロボット座標系における座標であって、画像に含まれる溶接ワイヤ161の先端の座標を、記憶部24に記憶される長さ情報に基づき、取得する。
このように構成することによって、溶接ワイヤが溶接トーチから突出する長さを示す長さ情報に基づいて、溶接ワイヤの先端の位置を、ロボット座標系にて、取得することができる。
【0072】
一構成例として、溶接ロボットは、溶接トーチ16を含み、一部は、溶接トーチ16である。
このように構成することによって、溶接トーチの形状は、例えば円筒状なので、検出が容易であり、ワールド座標系における溶接トーチの座標を、画像を用いて、精度よく検出できる。
一構成例として、溶接トーチ16の先端から溶接トーチ16に含まれるチップまでの長さを示す長さ情報を記憶部24に記憶させる記憶制御部260を更に備え、ロボット座標取得部230-2は、ロボット座標系における座標であって、画像に含まれる溶接トーチの座標を、記憶部24に記憶される長さ情報に基づき、取得する。
このように構成することによって、溶接トーチの先端から溶接トーチに含まれるチップまでの長さを示す長さ情報に基づいて、溶接トーチの座標を、ロボット座標系にて、取得することができる。
一構成例として、一部は、溶接ロボットの治具である。
このように構成することによって、ワールド座標系における溶接ロボットの治具の座標を、画像を用いて、効率よく検出できる。
一構成例として、ワールド座標取得部230-1は、ワールド座標系における座標であって、撮像装置42によって生成された画像データに対応する画像に含まれる部材の座標を、撮像装置42により生成された画像データに基づくパターンマッチングにより、取得する。
このように構成することによって、ワールド座標系における部材の座標を、画像データに基づくパターンマッチングにより、効率よく取得できる。
【0073】
一構成例として、ワールド座標取得部230-1は、ワールド座標系における座標であって、撮像装置42によって生成された画像データに対応する画像に含まれる部材の座標を、撮像装置42により生成された画像データに基づく機械学習により、取得する。
このように構成することによって、ワールド座標系における部材の座標を、画像データに基づく機械学習により、効率よく取得できる。
一構成例として、撮像装置42により生成された画像データに基づき、部材が抽出された画像である部材抽出画像の画像データを生成する部材抽出画像生成部、更に備え、ワールド座標取得部230-1は、ワールド座標系における座標であって撮像装置42によって生成された画像データに対応する画像に含まれる部材の座標を、部材抽出画像生成部により生成された部材抽出画像の画像データに基づくパターンマッチングにより、取得する。
このように構成することによって、部材抽出画像の画像データを生成できるため、ワールド座標系における部材の座標を、部材抽出画像の画像データに基づくパターンマッチングにより、効率よく取得できる。
一構成例として、部材抽出画像生成部は、撮像装置42によって得られる画像データであって被溶接部材に対する部材の先端の位置が第1の位置である第1画像の画像データと、撮像装置42によって得られる画像データであって被溶接部材に対する部材の先端の位置が第2の位置である第2画像の画像データと、に基づき、部材抽出画像の画像データを生成し、第1の位置は、第2の位置よりも、被溶接部材から遠い位置であり、部材抽出画像生成部は、撮像装置により第1画像が撮像された際の部材の位置と、撮像装置42により第2画像が撮像された際の部材の位置と、が同一になるよう、溶接トーチの位置を制御することができる。
このように構成することによって、被溶接部材に対する部材の先端の位置が第1の位置である第1画像の画像データと、被溶接部材に対する部材の先端の位置が第2の位置である第2画像の画像データと、に基づき、部材抽出画像の画像データを生成し、第1画像が撮像された際の部材の位置と、第2画像が撮像された際の部材の位置と、が同一になるよう、前記部材の位置を制御できるため、ワールド座標系における一部の座標を、より精度よく、取得することができる。
【0074】
一構成例として、部材抽出画像生成部は、撮像装置42が第1画像の撮像を開始してから第2画像を撮像し終えるまでの間、部材の移動を抑制する制御を実行する。
このように構成することによって、撮像装置が第1画像の撮像を開始してから第2画像を撮像し終えるまでの間、部材の移動を抑制できるため、ワールド座標系における一部の座標を、より精度よく、取得することができる。
一構成例として、部材抽出画像生成部は、部材の位置が第1の位置と第2の位置とのいずれであるのかを判定する部材位置判定処理と、部材位置判定処理の判定の結果に基づき部材を撮像するように撮像装置42の動作を制御する撮像制御処理と、を実行する。
一構成例として、部材の位置の移動の指示を取得する入力部23を備え、部材位置判定処理は、指示に基づいて、部材の位置が第1の位置と第2の位置とのいずれであるのかを判定する。
一構成例として、部材の位置を移動させる位置変更部、を備え、部材位置判定処理は、位置変更部の動作を示す位置変更部動作情報に基づき、部材の先端の位置が第1の位置と前記第2の位置とのいずれであるのかを判定する。
【0075】
一構成例として、部材は、溶接ワイヤ161であり、位置変更部は、溶接ワイヤを送給することによって溶接ワイヤの先端の位置を移動させる。
一構成例として、部材抽出画像生成部は、撮像装置42が第1画像の撮像を開始してから第2画像を撮像し終えるまでの間、溶接ワイヤによる溶接を禁止する制御を実行する。 一構成例として、第1の位置における溶接ワイヤ161の先端は溶接トーチ16に引っ込んだ状態にあり、第2の位置における溶接ワイヤ161の先端は溶接トーチ16の先端から突き出た状態にある。
一構成例として、部材抽出画像生成部の生成した画像データの示す画像を表示する表示部25、を備える。
一構成例として、表示部25は、溶接ワイヤ161の先端と被溶接部材である開先との距離が所定の範囲内か否かを示す情報の所定の入力先への入力を促す画像を表示する。 一構成例として、表示部25は、部材抽出画像生成部が、溶接ワイヤ161による溶接を禁止する制御と溶接トーチ16の移動を抑制する制御とを実行していることを示す情報を表示する。
【0076】
一構成例として、開先の断面形状を測定する断面形状測定部220と、溶接トーチ16による溶接を制御する溶接制御部240と、を備え、部材抽出画像生成部は断面形状測定部220による測定の後に部材抽出画像の画像データを生成し、溶接制御部240は断面形状測定部220の測定の結果と先端抽出画像の画像データとに基づき溶接トーチ16に溶接を実行させる。
一構成例として、部材位置判定処理では、溶接ワイヤ161の先端の位置が撮像制御処理の実行により第1の位置に位置したと先に判定し、次に、溶接ワイヤ161の先端の位置が撮像制御処理により第2の位置に移動したと判定される。
一構成例として、溶接ロボットは、複数のセンシング位置に移動し、撮像装置42、ワールド座標取得部230-1、ロボット座標取得部230-2及び対応部230-3のそれぞれの処理は、溶接ロボットが移動するセンシング位置それぞれにて、実行される。 このように構成することによって、溶接ロボットは、複数のセンシング位置に移動できるため、溶接ロボットは、移動するセンシング位置それぞれにて処理を実行できる。
【0077】
なお、制御装置2は、ネットワークを介して通信可能に接続された複数台の情報処理装置を用いて実装されてもよい。この場合、制御装置2が備える各機能部は、複数の情報処理装置に分散して実装されてもよい。
なお、溶接システム100及び制御装置2それぞれの各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0078】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態及び変形例1から変形例3に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0079】
100…溶接システム、 1…溶接装置、 2…制御装置、 3…ワイヤ送給装置、 21…制御部、 22…通信部、 23…入力部、 24…記憶部、 25…表示部、 210…画像生成部、 210a…部材抽出画像生成部、 220…断面形状測定部、 230-1…ワールド座標取得部、 230-2…ロボット座標取得部、 230-3…対応部、 240…溶接制御部、 250…入力制御部、 260…記憶制御部、 270…通信制御部、 280…表示制御部、 91…プロセッサ、 92…メモリ、 11…走行レール、 12…サドル、 13…ケース、 14…ブラケット、 15…ホルダ、 16…溶接トーチ、 161…溶接ワイヤ、 41…照明装置、 42…撮像装置、 420…撮像領域、 421…支持パネル、 422…支持アーム、 423…支持レール、 101…制御部、 9…溶接対象、 901…開先、 911…測定部位、 912…断面形状、 5…パネル、 510…ゲージ、 511…アーム