(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】制御装置および空気調和装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240802BHJP
F24F 11/88 20180101ALI20240802BHJP
【FI】
H02M7/48 M
F24F11/88
(21)【出願番号】P 2023191739
(22)【出願日】2023-11-09
【審査請求日】2023-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316011466
【氏名又は名称】日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】弁理士法人MIP
(72)【発明者】
【氏名】中居 徹
(72)【発明者】
【氏名】福田 真也
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101272043(CN,A)
【文献】特開2008-042950(JP,A)
【文献】特開2014-077982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/06
F24F 11/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力機器を制御する制御装置であって、
交流電源からの電圧を直流に変換する第1の変換手段と、
変換された前記電圧を平滑化する平滑化手段と、
平滑化された前記電圧を交流に変換し、前記動力機器へ印加する第2の変換手段と
を含み、
前記平滑化手段は、3つ以上が直列接続されたコンデンサと、前記コンデンサと並列に接続されたバランス抵抗とを有
し、
前記第1の変換手段と、前記第2の変換手段と、前記コンデンサとが基板に実装され、前記バランス抵抗が、端子を用いて前記基板に外付け接続され、
前記コンデンサを直列接続する個数は、コンデンサ間の温度差が拡大しないように、耐電圧を満足する出来るだけ大きい第1の定格電圧のコンデンサを使用してその個数を減らすように設計する場合より小さい第2の定格電圧のコンデンサを使用し、前記第1の定格電圧のコンデンサより多い個数とされる、制御装置。
【請求項2】
直列接続された前記3つ以上のコンデンサの各々に対して並列に接続された前記バランス抵抗の各々につき、前記基板に接続するための前記各端子の形状、もしくは大きさ、またはその両方が異なることを特徴とする、請求項
1に記載の制御装置。
【請求項3】
動力機器と、前記動力機器を制御する制御装置とを含む、空気調和装置であって、
前記制御装置が、
交流電源からの電圧を直流に変換する第1の変換手段と、
変換された前記電圧を平滑化する平滑化手段と、
平滑化された前記電圧を交流に変換し、前記動力機器へ印加する第2の変換手段と
を含み、
前記平滑化手段は、3つ以上が直列接続されたコンデンサと、前記コンデンサと並列に接続されたバランス抵抗とを有
し、
前記第1の変換手段と、前記第2の変換手段と、前記コンデンサとが基板に実装され、前記バランス抵抗が、端子を用いて前記基板に外付け接続され、
前記コンデンサを直列接続する個数は、コンデンサ間の温度差が拡大しないように、耐電圧を満足する出来るだけ大きい第1の定格電圧のコンデンサを使用してその個数を減らすように設計する場合より小さい第2の定格電圧のコンデンサを使用し、前記第1の定格電圧のコンデンサより多い個数とされる、空気調和装置。
【請求項4】
直列接続された前記3つ以上のコンデンサの各々に対して並列に接続された前記バランス抵抗の各々につき、前記基板に接続するための前記各端子の形状、もしくは大きさ、またはその両方が異なることを特徴とする、請求項
3に記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力機器を制御する制御装置および空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置は、動力機器として、圧縮機を駆動する圧縮機モータおよびファンを駆動するファンモータを有する。これらのモータの制御に用いられる制御装置は、交流電源からの電圧を直流に変換するコンバータ回路と、変換された電圧を平滑化する平滑化回路と、平滑化された電圧を所望の交流に変換し、各モータに印加するインバータ回路とを備えている。
【0003】
平滑化回路を構成するコンデンサは、交流電源の仕様に応じた定格電圧のものを使用する必要がある。1つのコンデンサで耐電圧を満足することが困難な場合、2つのコンデンサを直列接続する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、コンデンサを基板実装する場合は、1つ当たりの静電容量に上限があるため、複数のコンデンサを並列接続することにより必要な静電容量を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンデンサの定格電圧とインピーダンスとはトレードオフの関係にあり、高い定格電圧のコンデンサほど、インピーダンスが大きい傾向にある。コンデンサは、低温になるほど、インピーダンスが大きくなり、その増加率が高くなる特性を有している。このため、複数のコンデンサを低温で使用する際は、コンデンサ間のインピーダンス差が大きくなり、特定のコンデンサに電流が集中するという現象が発生する。これにより、電流が集中したコンデンサは発熱し、その発熱によって寿命が短くなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、動力機器を制御する制御装置であって、
交流電源からの電圧を直流に変換する第1の変換手段と、
変換された電圧を平滑化する平滑化手段と、
平滑化された電圧を交流に変換し、動力機器へ印加する第2の変換手段と
を含み、
平滑化手段は、3つ以上が直列接続されたコンデンサと、コンデンサと並列に接続されたバランス抵抗とを有する、制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電流集中現象を抑え、コンデンサの寿命を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】空気調和装置の冷媒回路について説明する図。
【
図3】動力機器を制御する制御部の第1の構成例を示した図。
【
図4】従来の平滑化回路と、本実施形態に係る制御装置が備える平滑化回路とを比較した図。
【
図5】アルミ電解コンデンサの誘導正接の温度特性の一例を示した図。
【
図6】各位置でのコンデンサ内部温度の変化を示した図。
【
図7】各周囲温度における各位置でのコンデンサ内部温度の変化を示した図。
【
図8】動力機器を制御する制御部の第2の構成例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、空気調和装置の構成例を示した図である。空気調和装置10は、空気調和を行う空間内(室内)に設置される室内機11と、室外に設置される室外機12と、利用者によって操作されるリモコン13とを含み、室内機11と室外機12との間で、熱媒体としての冷媒を循環させ、室内の空気と熱交換させることにより空気調和を行う。このため、室内機11と室外機12は、冷媒を循環させるための2本の冷媒配管14、15により接続されている。
【0010】
室内機11および室外機12は、それぞれ2台以上で構成されていてもよく、室内機11は、1台の室外機12に対し、2台以上接続されていてもよい。冷媒としては、ハイドロフルオロカーボン(HFC)やハイドロフルオロオレフィン(HFO)を使用することができる。HFCの種類としては、R410A、R32等を挙げることができる。HFOの種類としては、R1234yf等を挙げることができる。
【0011】
室内機11は、リモコン13との間で赤外線等を使用した無線通信を行い、運転指令、停止指令、設定温度の変更指令、運転モードの変更指令等の種々の信号を受信する。室内機11は、室外機12と通信線を介して接続され、室外機12と協働して室内の空気調和を行う。
【0012】
室内機11は、リモコン13からの運転指令を受信して起動し、室外機12に対し、起動を指示する。室外機12は、起動後、室内の温度が設定温度になるように、圧縮機の回転数や膨張弁の開度等を調整し、冷媒の循環量等を制御する。
【0013】
図2を参照して、空気調和装置10の冷媒回路について簡単に説明する。
図2に示す矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示し、冷房運転時の動作を中心に説明する。なお、暖房運転時は、冷媒の流れの向きが逆向きになる。
【0014】
室内機11は、室内熱交換器20と、室内ファン21と、動力機器として室内ファンモータ22とを備える。室内ファン21は、室内ファンモータ22により駆動し、室内の空気を取り込み、室内熱交換器20へ送り込む。室内熱交換器20は、内部に冷媒が流通する伝熱管を有し、送り込まれた空気が伝熱管の表面に接触して熱交換を行うように構成されている。室内熱交換器20により熱交換された空気は、室内へ排出される。
【0015】
室内機11は、そのほか、室内温度等を計測するための各種センサや膨張弁等を備えることができる。
【0016】
室外機12は、圧縮機30と、アキュームレータ31と、四方弁32と、膨張弁33と、室外熱交換器34と、室外ファン35と、動力機器として室外ファンモータ36とを備える。圧縮機30は、動力機器として圧縮機モータにより駆動し、低圧のガス冷媒を圧縮し、高圧のガス冷媒として吐出する。アキュームレータ31は、過渡時の液戻りを貯留するための容器で、冷媒を適度な乾き度に調整する。乾き度は、蒸気と微小液滴との混合状態を示す湿り蒸気中における蒸気の占める割合である。
【0017】
四方弁32は、空気調和装置10の運転状態(運転モード)に応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。運転モードは、冷房モード、暖房モード、送風モード等である。膨張弁33は、高圧の冷媒を減圧し、膨張させる弁である。室外ファン35は、室外ファンモータ36により駆動し、室外の空気を取り込み、室外熱交換器34へ送り込む。室外熱交換器34は、室内熱交換器20と同様、内部に冷媒が流通する伝熱管を有し、送り込まれた空気が伝熱管の表面に接触して熱交換を行うように構成されている。室外熱交換器34により熱交換された空気は、室外へ排出される。
【0018】
室外機12は、さらに、制御装置37を備えている。制御装置37は、圧縮機30、四方弁32、膨張弁33、室内ファンモータ22、室外ファンモータ36と接続され、これらの制御を行う。具体的には、圧縮機モータの回転数、膨張弁33の開度、室内ファンモータ22および室外ファンモータ36の回転数等の制御である。これらを制御するため、室外機12にも、各種センサが取り付けられる。制御装置37は、各種センサにより検出された情報に基づき、これらの制御を行う。
【0019】
冷房運転時は、室内熱交換器20を蒸発器とし、室外熱交換器34を凝縮器として利用する。このため、制御装置37は、矢印に示すように、圧縮機30、室外熱交換器34、膨張弁33、室内熱交換器20、四方弁32、アキュームレータ31、圧縮機30の順で系内に封入された冷媒を循環させる。
【0020】
圧縮機30は、低温低圧のガス状態の冷媒(冷媒ガス)を圧縮し、高温高圧の冷媒ガスとして吐出する。室外熱交換器34は、室外の空気と熱交換を行い、冷媒ガスを冷却して凝縮させる。膨張弁33は、冷媒を減圧して一部を気化させる。このため、冷媒は、気液が混合した状態で室内機11へ供給される。膨張弁33は、適度な液体の量になるように制御装置37により開度が調整される。
【0021】
室内熱交換器20は、室内の空気と熱交換を行い、凝縮した液体の冷媒が全て気化し、冷媒ガスとして室外機12へ戻す。室内熱交換器20から戻された冷媒ガスは、四方弁32を通してアキュームレータ31へ送られ、圧縮機30へ戻される。
【0022】
制御装置37は、室外機12に実装されるが、これに限られるものではなく、室内機11に実装されてもよいし、その他の中央制御盤等に実装されていてもよい。なお、制御装置37が実装される機器は、空気調和装置10に限定されるものではなく、チラーや冷凍機等であってもよい。
【0023】
図3は、制御装置37が備える動力機器を制御する制御部40の第1の構成例を示した図である。動力機器を制御する制御部40は、空気調和装置10を制御する制御装置37に含まれるものとして説明するが、これに限られるものではなく、制御装置37とは別個の装置として構成されていてもよい。
【0024】
交流電源は、電圧の位相を120°ずつずらした三相交流電源である。三相交流電源は、電源線が3本あり、各線は、R相、S相、T相と表記して区別される。制御部40は、ノイズフィルタ41と、インバータ装置42とを含む。
【0025】
ノイズフィルタ41は、動力機器の誤作動を防止するため、交流電源の電源ラインから侵入するノイズを除去し、また、他の機器への悪影響を防止するため、制御部40で発生したノイズが電源ラインへ漏洩することを防ぐ。
【0026】
インバータ装置42は、第1の変換手段としてコンバータ回路43と、平滑化手段として平滑化回路44と、第2の変換手段としてインバータ回路45とを含む。
【0027】
コンバータ回路43は、交流電源からの電圧を直流に変換する回路であり、ダイオードモジュール50と、突入電流保護抵抗器51と、電力継電器52とを含む。ダイオードモジュール50は、整流回路であり、電圧を交流から直流に変換する。突入電流保護抵抗器51は、電源投入時等に一時的に大きい電流が流れるのを制限する抵抗器である。電力継電器52は、電源の電圧等の変動を検知し、必要に応じて遮断して誤作動や故障等を防ぐ継電器である。
【0028】
平滑化回路44は、コンバータ回路43により変換された電圧を平滑化する回路であり、直流リアクトル(DCL)60と、複数のコンデンサ61と、複数のバランス抵抗62とを含む。直流リアクトル60は、交流電源の交流の基本波に対して数倍の周波数成分をもつ高調波を阻止する。直流リアクトル60は、基板に実装されるものではなく、端子等の接続部品を使用して接続される外付け部品とされている。
【0029】
複数のコンデンサ61は、交流電源の仕様に応じて、耐電圧を満足する個数を直列に接続したものとされる。例えば、コンデンサ単体ではその耐電圧を満足することが困難な場合、2つのコンデンサを直列に接続したものが使用される。また、コンデンサを基板実装する場合は、1つ当たりの静電容量に上限があるため、複数のコンデンサを並列接続して必要な静電容量を実現する。
【0030】
図3に示す例では、耐電圧を満足する個数としては、2つのコンデンサを直列接続したものでよいが、下記に述べる理由から、3つのコンデンサを直列接続したものとしている。また、電源は、圧縮機モータ、室内ファンモータ22、室外ファンモータ36の3つに供給する必要があり、必要な静電容量を実現するために、3つを直列接続したコンデンサを3組用い、その3組のコンデンサを並列接続している。
【0031】
コンデンサ61は、電圧がある値を超えるまでは充電し、ある値を下回ると放電することにより、電圧を平滑化する。コンデンサ61は、2つ以上を直列接続すると、直列接続した各コンデンサにかかる電圧がアンバランスになる。各コンデンサにかかる電圧がアンバランスになると、一部のコンデンサに過電流がかかるおそれがある。そこで、全てのコンデンサ61にかかる電圧を一定にするため、各コンデンサ61に並列にバランス抵抗62が接続される。
【0032】
図3に示す例では、3つを直列接続したコンデンサ(
図3において縦に並ぶ3つのコンデンサ)61を3組用い、その3組のコンデンサ61を並列接続している。バランス抵抗62は、並列接続した3つのコンデンサ(
図3において横に並ぶ3つのコンデンサ)61に対して1つずつ並列に接続されている。すなわち、横に並ぶ3つのコンデンサは、上段、中段、下段の3つの段に存在し、それぞれの段に1つずつバランス抵抗62が接続されている。3つのバランス抵抗62は互いに接続され、その3つが直列接続したものとなっている。
【0033】
インバータ回路45は、平滑化された電圧を交流に変換し、各モータに印加する回路であり、パワーモジュール70を含む。パワーモジュール70は、複数のトランジスタを含み、オン/オフを切り替えて、電圧を直流から交流に変換し、各モータに交流電圧を印加する。パワーモジュール70は、オンにする時間を周期で除した値であるデューティ比を変化させて所定の周波数の交流電圧に変換する。
【0034】
ここで、
図4を参照して、従来の平滑化回路と、本実施形態に係る制御装置37が備える平滑化回路44とを比較する。従来の平滑化回路80を
図4(a)に示し、本実施形態に係る制御装置37が備える平滑化回路44を
図4(b)に示す。平滑化回路80と、平滑化回路44は、基板実装において、1つ当たりの静電容量に上限があるため、直列接続したコンデンサを3組並列接続したものを用い、必要な静電容量を実現している。
【0035】
従来の平滑化回路80は、直列接続するコンデンサ81が2つであり、本実施形態に係る制御装置37が備える平滑化回路44は、直列接続するコンデンサ61が3つである。
【0036】
基板に実装されるタイプのコンデンサには、アルミ電解コンデンサが使用される。アルミ電解コンデンサは、低コストで、大容量のコンデンサであり、電極間に誘電体を挟み込んだ構成で、その誘電体に酸化アルミニウムが用いられる。
【0037】
図4(c)の「従来」の欄に示すように、例えば、交流電源の仕様が575Vで、電源電圧の範囲が±10%である場合の直流電圧のピーク値は、575×1.1×√2=894Vである。コンデンサの定格電圧が550Vのもの単体では、耐電圧が不足するため、550Vのものを2つ直列接続し、耐電圧を1100Vにすることができる。
【0038】
一般的に、耐電圧を満足するように、出来るだけ大きい定格電圧のコンデンサを使用し、その数を減らすように設計する。コンデンサの数が増加すると、基板面積を大きくする必要があり、実装工数も増えるからである。このため、従来では、直流電圧894Vに対し、定格電圧550Vのコンデンサを2つ直列接続して894Vを超える1100Vとしている。
【0039】
ここで、コンデンサの性能を表す要素として、誘導正接(tanδ)が知られている。誘導正接は、抵抗成分値を容量成分のインピーダンス値で除したものであるため、インピーダンスに依存する。
【0040】
図5は、アルミ電解コンデンサの誘導正接の温度特性の一例を示した図である。アルミ電解コンデンサは、低温になるほど、tanδの値が増加し、インピーダンスが増加する。インピーダンスの増加率は、tanδの温度特性の傾きに依存し、低温になるほど大きくなる。
【0041】
ここで仮に、並列接続されたコンデンサ(
図3において横に並ぶコンデンサ)間に温度差が生じたとする。温度が高い状態のコンデンサは、他のコンデンサと比較してインピーダンスが低くなる。すなわち、温度が高い状態のコンデンサは、相対的にインピーダンスが低くなる。電流は、インピーダンスが低いところに流れやすいことから、その温度が高い状態のコンデンサへ多く流れることになる。コンデンサへ多く流れた電流は、コンデンサへ負荷をかける電流(負荷電流)となり、コンデンサの自己発熱を生じさせる。自己発熱コンデンサ間にさらに温度差が生じると、コンデンサの自己発熱を助長し、最終的にそのコンデンサへ電流が集中して寿命を悪化させる。コンデンサが基板に実装される場合、寿命が悪化したコンデンサのみを取り替えることができないので、基板ごと取り替えなければならず、基板としての寿命も短くなる。
【0042】
インピーダンスは、定格電圧とトレードオフの関係にあり、高い定格電圧のものほど、インピーダンスが大きい傾向にある。また、インピーダンスの増加率も、高い定格電圧のものほど大きい。このため、並列接続されたコンデンサ間に温度差が生じると、高い定格電圧のものほど、その増加率が大きいため、インピーダンスが大きく低下し、電流集中現象が起こりやすい。
【0043】
実際に従来の平滑化回路80のように、2つのコンデンサ81を直列に接続したものを5組用い、それらを並列接続して、低温条件で、温度上昇試験を行った。その結果を、
図6に示す。
図6(a)は、経過時間(秒)とコンデンサ内部温度(℃)との関係を示した図で、
図6(b)は、
図6(a)中の各線を示すコンデンサの位置を示した図である。
【0044】
図6(a)に示す結果から、EC6、EC9のコンデンサが、試験を開始してから2000秒が経過した後、徐々に内部温度が上昇していることが確認された。一方、EC6、EC9以外のコンデンサは、内部温度が低下傾向にあり、温度上昇しているEC6、EC9との温度差が拡大していることが確認された。このことから、EC6、EC9に負荷集中現象が生じていることが分かった。
【0045】
図7は、経過時間(秒)とコンデンサ内部温度(℃)との関係を示した図で、途中で周囲温度を変化させたものである。試験開始から約1300秒までは、周囲温度を-10℃とし、約1300秒から約3700秒までは、周囲温度を-15℃とし、約3700秒以降は、周囲温度を-20℃とした。周囲温度が-10℃では、各コンデンサの内部温度に温度差はほとんど生じないが、-15℃、-20℃と低温になるにつれて、温度差が拡大している。このため、周囲温度が低い低温時ほど、温度差が拡大し、電流集中現象が起こりやすいことが分かった。
【0046】
このように2つのコンデンサを直列接続しただけでは、各コンデンサの定格電圧が大きく、インピーダンスの変化率(増加率)が大きい。このため、コンデンサ間に温度差を生じると、高い温度の状態のコンデンサは、インピーダンスが低くなりやすく、その温度差が拡大すると、電流集中現象が起こりやすくなる。
【0047】
このことから考えて、コンデンサの定格電圧を小さくすれば、コンデンサ間に温度差が生じたとしても、インピーダンスの変化率が小さいため、高い温度の状態のコンデンサのインピーダンスは低くなりにくく、電流集中現象が起こりにくくなるものと想定される。
【0048】
そこで、
図4(c)の「新規」に示すように、直流電圧894Vに対し、定格電圧が550Vのコンデンサがあるにもかかわらず、定格電圧を下げて350Vのコンデンサを使用する。このとき、耐電圧を満足させるため、350Vのものを3つ使用し、それらを直列に接続する。
【0049】
なお、コンデンサの定格電圧は、350Vより小さいものを用い、耐電圧を満足するために、4つ以上を直列接続してもよい。しかしながら、コンデンサを直列接続する数を増やすと、並列接続される数(例えば、3列に並列接続されている場合は3つ)ずつ増加することになるため、その数を増やすと、基板面積が大きくなり、実装工数も増加することから、逆にコストアップとなる可能性がある。したがって、基板面積や実装工数等を考慮し、直列接続するコンデンサの数は適切な数とすることが望ましい。
【0050】
交流電源の仕様は、大きくても700V以下であるため、直列接続するコンデンサの数としては、適切な数として3つが望ましい。
【0051】
以上のようにして、直列接続するコンデンサ数を2つから3つへ増加し、個々のコンデンサの定格電圧を下げることで、低温条件時の特定のコンデンサへの電流集中を防ぎ、発熱とそれによる寿命の悪化を防ぐことができる。
【0052】
ところで、
図3に示したように、コンデンサを直列接続する場合、各コンデンサの印加電圧を均等にするため、各コンデンサと並列にバランス抵抗62を接続する。バランス抵抗62は、直流電源と直接接続されるため、常に電流が流れることになり、熱が発生することになる。
【0053】
コンデンサ間の印加電圧の差の割合をアンバランス度とした場合、コンデンサの定格電圧を下げると、許容できるアンバランス度が小さくなる。アンバランス度を小さくするには、バランス抵抗62の値を小さくする必要がある。
【0054】
バランス抵抗62の値を小さくした場合、常に流れる電流の電流値が増加し、発熱が大きくなる。バランス抵抗62を基板に実装するには、この発熱を基板の許容温度以下に抑えなければならず、発熱分散のために、多数のバランス抵抗62が必要になる場合がある。
【0055】
バランス抵抗62を外付け部品とすることで、許容温度が広がり、バランス抵抗62を多数設ける必要がなくなり、その数を減らすことができる。なお、バランス抵抗62を外付け部品にすると、実装工数が増加することになるが、部品コストと基板面積削減を優先する場合は、バランス抵抗62を外付け部品とし、外付け接続することが望ましい。
【0056】
図8は、制御装置37が備える動力機器を制御する制御部の第2の構成例を示した図である。
図3に示した制御部を構成する構成要素と同じものについては、既に説明したので、ここではその説明は省略する。
【0057】
図8に示す例では、バランス抵抗62が外付け部品とされている。例えば、バランス抵抗62には、平板状の端子(タブ端子)が取り付けられ、タブ端子を、基板から延びる電線に結線された嵌合部を有する接続子(レセプタクル)に差し込むことにより接続する構成を採用することができる。これにより、基板上にバランス抵抗62が取り付けられるものではないので、基板面積を削減することができる。また、バランス抵抗62が基板から離間して配置されることになるため、バランス抵抗62に発熱が生じたとしても、基板の許容温度以下に抑える必要がなくなり、バランス抵抗62の数を増やす必要がなくなる。
【0058】
なお、バランス抵抗62の基板への接続方法は、タブ端子とレセプタクルを用いた差し込んで接続するものに限定されるものではなく、中央に円形の穴があいたリング状の端子(丸端子)と、ネジを螺合するネジ穴を有する端子(ネジ端子)とをネジにより接続するもの等であってもよい。なお、これらは一例であるので、その他の接続方法であってもよいことは言うまでもない。
【0059】
バランス抵抗62を外付け部品とした場合、バランス抵抗62への接続を誤配線すると、電源入力と同時にコンデンサ61へ過電圧が印加され、コンデンサ61が破損するおそれがある。そこで、基板とバランス抵抗62を接続する各端子の形状や大きさを異なるものとし、間違った配線が物理的に接続できないようにすることで、誤配線を防止することができる。
【0060】
端子に目印や色を変える等して区別可能にして、誤配線を防止することも可能であるが、同じ形状で、同じ大きさの端子では、間違った端子を接続できてしまうので、上記の破損の問題が生じ得る。一方、各端子につき、形状を変え、もしくは大きさを変え、またはその両方を変えることで、正しい配線でしか物理的に接続できないので、確実に誤配線を防止することができる。
【0061】
これまで本発明の制御装置および空気調和装置について上述した実施形態をもって詳細に説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態や、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0062】
したがって、制御装置を含む空気調和装置の室外機や、制御装置を含む空気調和装置の室内機等を提供することも可能である。また、制御装置は、モータ等の動力機器を備える装置であれば、空気調和装置以外の装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
10…空気調和装置
11…室内機
12…室外機
13…リモコン
14、15…冷媒配管
20…室内熱交換器
21…室内ファン
22…室内ファンモータ
30…圧縮機
31…アキュームレータ
32…四方弁
33…膨張弁
34…室外熱交換器
35…室外ファン
36…室外ファンモータ
37…制御装置
40…制御部
41…ノイズフィルタ
42…インバータ装置
43…コンバータ回路
44、80…平滑化回路
45…インバータ回路
50…ダイオードモジュール
51…突入電流保護抵抗器
52…電力継電器
60…直流リアクトル
61、81…コンデンサ
62…バランス抵抗
70…パワーモジュール
【要約】
【課題】 電流集中現象を抑え、コンデンサの寿命を延ばすことを可能にする制御装置および空気調和装置を提供すること。
【解決手段】 制御装置は、動力機器を制御する制御装置であり、交流電源からの電圧を直流に変換する第1の変換手段と、変換された電圧を平滑化する平滑化手段と、平滑化された電圧を交流に変換し、動力機器へ印加する第2の変換手段とを含む。平滑化手段は、3つ以上が直列接続されたコンデンサと、コンデンサと並列に接続されたバランス抵抗とを有する。
【選択図】
図3