(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】ヒューズ
(51)【国際特許分類】
H01H 85/08 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
H01H85/08
(21)【出願番号】P 2023197603
(22)【出願日】2023-11-21
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】西林 政哉
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大志
【審査官】荒木 崇志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-059295(JP,A)
【文献】実公昭35-016442(JP,Y1)
【文献】実開昭50-058246(JP,U)
【文献】実開昭60-162357(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 37/76
H01H 69/02
H01H 85/00 - 87/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部同士が重なるようにして長さ方向に連なる2本の抵抗線と、前記2本の抵抗線の重なる端部同士を電気的に接続させる可溶合金部とを備えるヒューズであって、
前記可溶合金部は、
前記
2本の抵抗線の長さ方向に延びる胴体部と、
前記胴体部の少なくとも一端側に設けられ、他部分よりも前記
2本の抵抗線の長さ方向に突出した突出部とを備えるヒューズ。
【請求項2】
前記突出部は前記抵抗線の周りに設けられている請求項1に記載のヒューズ。
【請求項3】
前記突出部は一方の抵抗線の周りに設けられており、
他方の抵抗線の前記端部は、前記胴体部の内側から前記他部分に突き当たった状態で、
前記胴体部に埋設されている請求項1に記載のヒューズ。
【請求項4】
前記突出部は前記胴体部の両端に夫々設けられている請求項1から3の何れか一項に記載のヒューズ。
【請求項5】
前記胴体部の両端に設けられた両突出部は同じ形状である請求項4に記載のヒューズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
連なっている2本の抵抗線の端部を可溶体が電気的に接続させているヒューズ素子を備え、一方の抵抗線に頭部端子が接続され、他方の抵抗線にリード線が接続されており、ヒューズ素子が被覆筒で被覆されたタイムラグヒューズが広く普及している。
【0003】
例えば、特許文献1では、前記リード線に引張力がかかっており、過電流によって可溶体が溶断する際、リード線が被覆筒開口から抜けて垂れ下がることを防止すべく、開口端近傍にストッパーが設けられたタイムラグヒューズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、被覆筒の材質として硬質塩化ビニルが用いられており、この場合、可溶体が溶断する際、飛び散る合金によって被覆筒が損傷することを防ぐために、可溶体の周囲を保護筒で取り囲んでいた。
【0006】
保護筒は常に可溶体と接しているので、可溶体に伝わる熱の一部が保護筒に伝導されることから、可溶体の溶断に係る熱容量の計算の際に、保護筒を考慮する必要があった。
【0007】
一方、被覆筒の材質として硬質塩化ビニルが使用されなくなったことに伴い、前記保護筒も不要となった。しかし、可溶体の溶断に係る熱容量の計算には保護筒の熱容量が含まれているので、保護筒を省く場合には、保護筒の熱容量だけ、可溶体の熱容量を増やすか、抵抗線の発熱量を減らすために電気抵抗値を下げる必要がある。
【0008】
可溶体の熱容量を増やすには可溶体の径を大きくする等の方法が考えられる。しかし、径が大きくなると可溶体が被覆筒と接触するおそれがある。
また、電気抵抗値を下げるために、リード線と頭部端子との間の距離を短くする方法が考えられるが、斯かる距離を短くした場合、頭部端子及びリード線へ熱が逃げるため可溶体の溶断に係る最小溶断電流が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成にて、前記保護筒の省略に伴うヒューズ素子の熱容量変更に対応できるヒューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るヒューズは、一方向に連なる2本の抵抗線と、前記2本の抵抗線の重なる端部同士を電気的に接続させる可溶合金部とを備えるヒューズであって、前記可溶合金部は、前記一方向に延びる胴体部と、前記胴体部の少なくとも一端側に設けられ、他部分よりも前記一方向に突出した突出部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単な構成にて、前記保護筒の省略に伴うヒューズ素子の熱容量変更に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1に係るヒューズの構成を示す説明図である。
【
図2】実施形態1に係るヒューズのヒューズ素子を示す斜視図である。
【
図3】実施形態1に係るヒューズのヒューズ素子を示す部分的断面図である。
【
図4】実施形態2に係るヒューズのヒューズ素子を示す斜視図である。
【
図5】実施形態2に係るヒューズのヒューズ素子を示す部分的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るヒューズをその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るヒューズ10の構成を示す説明図である。実施形態1に係るヒューズ10は、所謂タイムラグヒューズであり、被覆筒1内にヒューズ素子2が収容されている。
図1では、便宜上、被覆筒1の長さ方向に沿って被覆筒1の一部を取り除いた状態を示している。
【0015】
被覆筒1は、例えば、細長い円筒形状をなしており、プレスボード、クラフト紙からなる。上述の如く、被覆筒1内には、ヒューズ素子2が収容されており、後述するリード線7の一部が更に収容されている。被覆筒1は、外側からの機械的な圧力等に対しヒューズ素子2を保護し、ヒューズ素子2の溶断特性に影響が及ぶことを防止する。また、被覆筒1は、電流遮断時にアークにより熱せられて消弧ガスを出し、そのアークを中和して遮断性能を上げる。
【0016】
ヒューズ素子2は、2本の抵抗線8と、2本の抵抗線8の端部同士を電気的に接続させる可溶合金部5とを有する。
抵抗線8は、被覆筒1の軸心方向(一方向)に沿って連なる第1抵抗線81及び第2抵抗線82を含む。第1抵抗線81は一端部が後述する頭部端子6と接続され、第2抵抗線82は一端部が後述するリード線7と接続されている。
【0017】
第1抵抗線81及び第2抵抗線82は被覆筒1の軸心方向における相互反対側の端部同士が重なっている。即ち、第1抵抗線81の他端部と第2抵抗線82の他端部とは被覆筒1の径方向視で、所定範囲に亘って重なっている。
【0018】
可溶合金部5は、例えばはんだ合金のような通電性の低融点合金であり、上述の如く、第1抵抗線81の他端部及び第2抵抗線82の他端部を凝結によって接続させている。可溶合金部5は、被覆筒1の軸心方向に沿って延在している。
【0019】
図2は、実施形態1に係るヒューズ10のヒューズ素子2を示す斜視図である。
可溶合金部5は、被覆筒1の軸心方向に延びる胴体部55と、胴体部55の両端に夫々設けられた突出部51,52とを有する。具体的には、第1抵抗線81側には、突出部51が設けられており、第2抵抗線82側には突出部52が設けられている。
【0020】
胴体部55は長さ方向に沿う断面視で長円であるカプセル形状をなしている。上述の如く、胴体部55の一端に突出部51が設けられ、胴体部55の他端に突出部52が設けられている。
【0021】
突出部51は、胴体部55の一端において、他部分53よりも被覆筒1の軸心方向に突出している部分である。ここで、他部分53は、胴体部55の一端面であって、突出部51が設けられていない部分である。また、突出部52は、胴体部55の他端において、他部分54よりも被覆筒1の軸心方向に突出している部分である。ここで、他部分54は、胴体部55の他端面であって、突出部52が設けられていない部分である。
換言すれば、突出部51は頭部端子6側に突出しており、突出部52はリード線7側に突出している。
【0022】
突出部51,52は、抵抗線8の周りを囲んで外周面を覆っている。
図3は、実施形態1に係るヒューズ10のヒューズ素子2を示す部分的断面図である。
図3に示すように、突出部51は第1抵抗線81の周りに周設されており、突出部52は第2抵抗線82の周りに周設されている。換言すれば、第1抵抗線81は突出部51に被覆されており、第2抵抗線82は突出部52に被覆されている。
【0023】
即ち、第1抵抗線81の他端部は、胴体部55に埋設された埋設部と、該埋設部に続く突出部51に被覆された被覆部とを含み、第2抵抗線82の他端部は、胴体部55に埋設された埋設部と、該埋設部に続く突出部52に被覆された被覆部とを含む。換言すれば、第1抵抗線81の埋設部と第2抵抗線82の埋設部とが被覆筒1の径方向視で重なっている。
【0024】
突出部51及び突出部52は、胴体部55の周面よりも、胴体部55の径方向に張り出ていない。また、突出部51及び突出部52は、胴体部55の軸心方向における寸法L1が同じであり、例えば、突出部51及び突出部52は同じ形状である。寸法L1は、
図3に示すように、第1抵抗線81の埋設部の先端811(後述する突き当たり)から突出部52の先端までの寸法、及び、第2抵抗線82の埋設部の先端821から突出部51の先端までの寸法である。
【0025】
よって、第1抵抗線81の前記埋設部及び第2抵抗線82の前記埋設部は同じ長さであり、かつ第1抵抗線81の前記被覆部及び第2抵抗線82の前記被覆部も同じ長さである。
【0026】
第1抵抗線81では、前記埋設部の先端811が、胴体部55の内側から、第1抵抗線81を被覆する突出部51と反対側(他端側)の他部分54に突き当たっている。また、第2抵抗線82では、前記埋設部の先端821が、胴体部55の内側から、第2抵抗線82を被覆する突出部52と反対側(一端側)の他部分53に突き当たっている。
【0027】
即ち、胴体部55の一端では、突出部51が突出して第1抵抗線81を被覆しており、突出部51に対応する他部分53には、胴体部55の内側から、第2抵抗線82の前記埋設部の先端821が突き当たっている。また、胴体部55の他端では、突出部52が突出して第2抵抗線82を被覆しており、突出部52に対応する他部分54には、胴体部55の内側から、第1抵抗線81の前記埋設部の先端811が突き当たっている。
【0028】
ヒューズ素子2に係る第1抵抗線81及び第2抵抗線82と可溶合金部5とは例えば鋳造によって一体的に製造される。
【0029】
第1抵抗線81の一端部には、上述の如く、頭部端子6が接続されている。頭部端子6は通電性の金属製であり、被覆筒1内に配置される細長い円筒形状部61と、円板形状部62とを有する。円筒形状部61は、被覆筒1の内径よりも小さい外径を有しており、被覆筒1の軸心方向に沿って延在している。円筒形状部61の一端には第1抵抗線81の一端部が挿入されて固定されており、円筒形状部61の他端には、円筒形状部61の軸心に対して垂直に円板形状部62が連設されている。円板形状部62は、被覆筒1の外径よりも大きい径を有しており、一方の電極に取り付けられる。例えば、円筒形状部61及び円板形状部62は一体形成されている。
【0030】
なお、円筒形状部61には、円筒形状のスペーサ11が外嵌されている。スペーサ11は、例えば、絶縁性材からなり、被覆筒1の内径よりも少し小さい外径を有し、円筒形状部61の外径よりも少し大きい内径を有しており、被覆筒1と同一軸心上に位置するように、円筒形状部61を保持する。
【0031】
第2抵抗線82の一端部には、上述の如く、リード線7が接続されている。リード線7は、束ねられた複数の銅線からなり、第2抵抗線82側の一端部に金属製のキャップ9がかぶされている。キャップ9は円筒形状であり、キャップ9の一端側からリード線7の一端部がキャップ9内に挿入されて固定され、キャップ9の他端側から第2抵抗線82の一端部がキャップ9内に挿入されて固定されている。リード線7の他端部は、頭部端子6が接続される電極と対応する他の電極に固定され、リード線7には引張力がかかる。
【0032】
以上のような構成を有する実施形態1に係るヒューズ10では、ヒューズ10(ヒューズ素子2)に閾値以上の過電流が流れると、抵抗線8の発熱によって可溶合金部5が溶け始める。上述の如く、リード線7には引張力がかかっているので、過電流が所定時間流れると、可溶合金部5が溶断し、第1抵抗線81と第2抵抗線82とが分離される。これによって、頭部端子6(一電極)とリード線7(他電極)との間の電流が遮断される。
【0033】
従来においては、被覆筒の材質として硬質塩化ビニルが用いられており、この場合、可溶合金部が溶断する際、飛び散る合金によって被覆筒が損傷するおそれがあるので、これに備え、可溶合金部の周囲を所謂クラフト筒で取り囲んでいた。即ち、従来は、ヒューズ素子の可溶合金部と被覆筒との間にクラフト筒が介在しており、クラフト筒が常に可溶合金部と接していた。
【0034】
故に、従来は、ヒューズの設計において、クラフト筒を考慮していた。即ち、クラフト筒が常に可溶合金部と接しているので、可溶合金部に伝わる熱の一部がクラフト筒に伝導されることから、可溶合金部の溶断に係る熱容量の計算の際に、クラフト筒の分だけ、加減する必要があった。
【0035】
一方、被覆筒の材質として硬質塩化ビニルが使用されなくなったことに伴い、前記クラフト筒も不要となった。しかし、可溶合金部の溶断に係る熱容量の計算にはクラフト筒の熱容量が含まれているので、クラフト筒を省く場合には、クラフト筒の熱容量だけ、可溶合金部の熱容量を増やすか、電気抵抗値を下げて発熱量を減らす必要がある。
【0036】
まず、可溶合金部の熱容量を増やすには可溶合金部の径を大きくするか、長さを長くする方法がある。しかし、径が大きくなると被覆筒との接触のおそれがあり、設計の自由度が制限される。また、可溶合金部の長さが長くなると可溶合金部に埋設される抵抗線の埋設部、即ち抵抗線同士の重なる部分が長くなり、電流遮断動作時の極間距離(抵抗線の他端間距離)が短くなって遮断不能のおそれがある。
【0037】
そして、電気抵抗値を下げるためには、リード線と頭部端子との間の距離、即ちヒューズ素子の長さである有効長を短くする方法がある。しかし、有効長を短くした場合、頭部端子及びリード線へ熱が逃げるため可溶合金部の溶断に係る最小溶断電流が大きくなるという問題がある。
【0038】
これに対して、実施形態1に係るヒューズ10では、上述の如く、可溶合金部5の胴体部55における両端に突出部51及び突出部52を夫々設けることによって、上述したクラフト筒の省略に伴う問題を解決している。
【0039】
即ち、実施形態1に係るヒューズ10では、従来と同様の胴体部55に突出部51及び突出部52を加えることによって、可溶合金部5全体の熱容量を増やし、クラフト筒の省略に起因する熱容量減を補っている。また、実施形態1に係るヒューズ10では、胴体部55の両端に突出部51及び突出部52が設けられているので、可溶合金部5の径を大きくせずに済む。更に、胴体部55の両端面に部分的に突出部51及び突出部52が設けられ、第1抵抗線81及び第2抵抗線82の埋設部、即ち第1抵抗線81及び第2抵抗線82において互いに重なる部分が拡張されることもない。
【0040】
また、実施形態1に係るヒューズ10では、上述の如く、第1抵抗線81の埋設部の先端811が、胴体部55の内側から、突出部51と反対側の他部分54に突き当たっており、第2抵抗線82の埋設部の先端821が、胴体部55の内側から、突出部52と反対側の他部分53に突き当たっている。即ち、鋳造によるヒューズ素子2の製造の際に、端部が型と突き当たるまで作業者が第1抵抗線81及び第2抵抗線82を押し込むことになる。従って、簡素な作業にて抵抗線8の埋設部の長さを一定に維持することができ、ヒューズ10の電流遮断の性能を安定化できる。
【0041】
更に、実施形態1に係るヒューズ10では、上述の如く、突出部51及び突出部52が同じ形状であるので、ヒューズ素子2に頭部端子6及びリード線7を接続させる作業の際、作業者がヒューズ素子2の接続向きを気にする必要がなく、作業性を高めることができる。
【0042】
(実施形態2)
実施形態2に係るヒューズ10は、実施形態1と同様、被覆筒1と、被覆筒1内に収容されたヒューズ素子2とを備えている。
【0043】
ヒューズ素子2は、第1抵抗線81及び第2抵抗線82と、第1抵抗線81の端部及び第2抵抗線82の端部を電気的に接続させる可溶合金部5Aとを有している。第1抵抗線81の一端部が頭部端子6と接続され、第2抵抗線82の一端部がリード線7と接続されている。
【0044】
実施形態2に係るヒューズ10では、可溶合金部5Aの形状が、実施形態1に係るヒューズ10の可溶合金部5と相違する。
図4は、実施形態2に係るヒューズ10のヒューズ素子2を示す斜視図である。
【0045】
可溶合金部5Aは、被覆筒1の軸心方向に延びる胴体部55Aと、胴体部55Aの両端に夫々設けられた突出部51A,52Aとを有し、第1抵抗線81側には、突出部51Aが設けられており、第2抵抗線82側には突出部52Aが設けられている。
【0046】
胴体部55Aは長さ方向に沿う断面視で平行四辺形である円筒形状をなしている。即ち、胴体部55Aは長さ方向の両端面が、胴体部55Aの軸心方向に対して傾斜している平坦面である。胴体部55Aの両端面は、楕円形であり、平行をなしている。
【0047】
上述の如く、胴体部55Aの一端に突出部51Aが設けられ、胴体部55Aの他端に突出部52Aが夫々設けられている。突出部51A,52Aは、夫々第1抵抗線81及び第2抵抗線82の周りを囲んでいる部分である。即ち、突出部51Aは胴体部55Aの一端面における他部分53Aよりも被覆筒1の軸心方向に突出しており、突出部52Aは胴体部55Aの他端面における他部分54Aよりも被覆筒1の軸心方向に突出している。
【0048】
図5は、実施形態2に係るヒューズ10のヒューズ素子2を示す部分的断面図である。
図5に示すように、第1抵抗線81は突出部51Aに被覆されており、第2抵抗線82は突出部52Aに被覆されている。第1抵抗線81の埋設部と第2抵抗線82の埋設部とが被覆筒1の径方向視で重なっている。
【0049】
突出部51A及び突出部52Aは、胴体部55Aの周面よりも、胴体部55Aの径方向に張り出ておらず、突出部51A及び突出部52Aは、胴体部55Aの軸心方向における寸法L2が同じであり、例えば、突出部51A及び突出部52Aは同じ形状である。
よって、第1抵抗線81の前記埋設部及び第2抵抗線82の前記埋設部は同じ長さであり、かつ第1抵抗線81の前記被覆部及び第2抵抗線82の前記被覆部も同じ長さである。
【0050】
第1抵抗線81では、前記埋設部の先端811が、胴体部55Aの内側から、突出部51Aと反対側(他端側)の他部分54Aに突き当たっており、第2抵抗線82では、前記埋設部の先端821が、胴体部55Aの内側から、突出部52Aと反対側(一端側)の他部分53Aに突き当たっている。
【0051】
以上のような構成を有するので、実施形態2に係るヒューズ10も、実施形態1と同様に、突出部51A及び突出部52Aを加えることによって、可溶合金部5A全体の熱容量を増やして、上述したクラフト筒の省略に伴う問題を解決できる。
【0052】
また、実施形態2に係るヒューズ10でも、上述の如く、第1抵抗線81の埋設部の先端811が、胴体部55Aの内側から、突出部51Aと反対側の他部分54Aに突き当たっており、第2抵抗線82の埋設部の先端821が、胴体部55Aの内側から、突出部52Aと反対側の他部分53Aに突き当たっている。従って、実施形態1と同様に、簡素な作業にて抵抗線8の埋設部の長さを一定に維持することができ、ヒューズ10の電流遮断の性能を安定化できる。
【0053】
更に、実施形態2に係るヒューズ10でも、上述の如く、突出部51A及び突出部52Aが同じ形状であるので、ヒューズ素子2に頭部端子6及びリード線7を接続させる際の作業性を高めることができる。
【0054】
実施形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
以上の実施形態1~2では、胴体部55の両端に夫々突出部51,52が設けられ、胴体部55Aの両端に夫々突出部51A,52Aが設けられた場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。胴体部55に突出部51,52の何れか一方が設けられ、胴体部55Aに突出部51A,52Aの何れか一方が設けられた構成であっても良い。
【0056】
また、以上の実施形態1~2では、突出部51及び突出部52が同じ形状である場合と、突出部51A及び突出部52Aが同じ形状である場合とについて夫々説明したが、これに限定されるものではない。例えば、突出部51及び突出部52が夫々異なる形状であっても良く、又は、突出部51A及び突出部52Aが異なる形状であっても良い。
【0057】
更に、以上の実施形態1~2では、第1抵抗線81の埋設部の先端811が反対側の他部分54、54Aに突き当たり、第2抵抗線82の埋設部の先端821が反対側の他部分53,53Aに突き当たっている場合について説明したが、これに限定されるものではない。第1抵抗線81の埋設部の先端811が反対側の他部分54、54Aに突き当たっておらず、第2抵抗線82の埋設部の先端821が反対側の他部分53,53Aに突き当たっていない構成であっても良い。
【0058】
実施形態1~2で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせることにより、新しい技術的特徴を想到することができる。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0059】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1:被覆筒、2:ヒューズ素子、5,5A:可溶合金部、6:頭部端子、7:リード線、8:抵抗線、10:ヒューズ、51,52,51A,52A:突出部、53,54,53A,54A:他部分、55,55A:胴体部、81:第1抵抗線、82:第2抵抗線
【要約】
【課題】簡単な構成にて、保護筒の省略に伴うヒューズ素子の熱容量変更に対応できるヒューズを提供する。
【解決手段】一方向に連なる2本の抵抗線8と、2本の抵抗線8の重なる端部同士を電気的に接続させる可溶合金部5とを備えるヒューズであって、可溶合金部5は、前記一方向に延びる胴体部55と、胴体部55の少なくとも一端側に設けられ、他部分53,54よりも前記一方向に突出した突出部51,52とを備える。
【選択図】
図2