(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】溶接方法
(51)【国際特許分類】
F03D 13/25 20160101AFI20240802BHJP
B23K 9/032 20060101ALI20240802BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
F03D13/25
B23K9/032 Z
B23K9/00 501B
(21)【出願番号】P 2023206074
(22)【出願日】2023-12-06
【審査請求日】2023-12-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】谷口 政宏
(72)【発明者】
【氏名】野口 大助
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特許第7198955(JP,B1)
【文献】特開2017-030004(JP,A)
【文献】特開2017-106345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0230745(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0058549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00
B23K 9/028
B23K 9/032
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の鋼管であるレグと、
円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え
、
前記第1内側溶接ステップでは、前記第1交点がアーク溶接されることを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
円筒状の鋼管であるレグと、
円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え、
前記レグの管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、前記第1ブレースの管軸が略水平方向に沿うよう、前記レグ及び前記第1ブレースを配置する配置ステップ、
を更に備え、
前記第1内側溶接ステップは、
前記配置ステップの後に、前記第1交点の下部となる部位である第1下部を、前記第1ブレースの内側から下向き姿勢で溶接する第1下向き姿勢溶接ステップと、
前記第1下向き姿勢溶接ステップの後、前記第1交点の側面部となる部位の一方である第1側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第1立向き姿勢上進溶接ステップと、
前記第1立向き姿勢上進溶接ステップの後、前記レグ及び前記第1ブレースの上下を反転させる反転ステップと、
前記反転ステップの後に、前記第1交点の下部となる部位である第2下部を、前記第1ブレースの内側から下向き姿勢で溶接する第2下向き姿勢溶接ステップと、
前記第2下向き姿勢溶接ステップの後、前記第1交点の側面部となる部位の他方である第2側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第2立向き姿勢上進溶接ステップと、
を含むことを特徴とす
る溶接方法。
【請求項3】
円筒状の鋼管であるレグと、
円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え、
前記レグの管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、前記第1ブレースの管軸が略水平方向に沿うよう、前記レグ及び前記第1ブレースを配置する配置ステップ、
を更に備え、
前記第1内側溶接ステップは、
前記配置ステップの後に、前記第1交点の側面部となる部位の一方である第1側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第1立向き姿勢上進溶接ステップと、
前記第1立向き姿勢上進溶接ステップの後、前記第1交点の下部となる部位である第1下部を、前記第1ブレースの内側から且つ前記第1立向き姿勢上進溶接ステップで溶接される部分から、下向き姿勢で溶接する第1下向き姿勢溶接ステップと、
前記第1下向き姿勢溶接ステップの後、前記レグ及び前記第1ブレースの上下を反転させる反転ステップと、
前記反転ステップの後に、前記第1交点の側面部となる部位の他方である第2側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第2立向き姿勢上進溶接ステップと、
前記第2立向き姿勢上進溶接ステップの後、前記第1交点の下部となる部位である第2下部を、前記第1ブレースの内側から且つ前記第2立向き姿勢上進溶接ステップで溶接される部分から、下向き姿勢で溶接する第2下向き姿勢溶接ステップと、
を含むことを特徴とす
る溶接方法。
【請求項4】
円筒状の鋼管であるレグと、
円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え、
前記レグの管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、前記第1ブレースの管軸が略鉛直方向に沿うよう、前記レグ及び前記第1ブレースを配置する配置ステップ、
を更に備え、
前記第1内側溶接ステップは、前記配置ステップの後、前記レグと前記第1ブレースとの前記第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する、
ことを特徴とす
る溶接方法。
【請求項5】
円筒状の鋼管であるレグと、
円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え、
前記第1内側溶接ステップにて、
前記第1交点のうち、前記レグの外周面と前記第1ブレースの内周面との交差角が鈍角をなす側を、前記第1ブレースの内側から先行溶接し、
前記第1交点のうち、前記レグの外周面と前記第1ブレースの内周面との交差角が鋭角をなす側を、前記第1ブレースの内側から後行溶接する、
ことを特徴とす
る溶接方法。
【請求項6】
円筒状の鋼管であるレグと、
円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え、
前記ガウジングステップは、前記第1交点を前記レグの管軸及び前記第1ブレースの管軸の両方と直交する方向から見た時、前記レグの外周面と前記第1ブレースの外周面とが鈍角をなす側から、開始される、
ことを特徴とす
る溶接方法。
【請求項7】
前記第1内側溶接ステップにて、前記第1ブレースの内側から前記第1交点を全周溶接する、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の溶接方法。
【請求項8】
円筒状の鋼管である第1ブレースと、
円筒状の鋼管である第2ブレースであって、端部が前記第1ブレースの側面に当接する第2ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記第1ブレースと前記第2ブレースとの交点である第1交点を、前記第2ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第2ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第2ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え
、
前記第1内側溶接ステップでは、前記第1交点がアーク溶接されることを特徴とする溶接方法。
【請求項9】
円筒状の鋼管である第1ブレースと、
円筒状の鋼管である第2ブレースであって、端部が前記第1ブレースの側面に当接する第2ブレースと、
を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、
前記第1ブレースと前記第2ブレースとの交点である第1交点を、前記第2ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、
前記第1内側溶接ステップの後、前記第2ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、
前記ガウジングステップの後、前記第2ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、
を備え、
前記第1内側溶接ステップにて、
前記第1交点のうち、前記第1ブレースの外周面と前記第2ブレースとの内周面との交差角が鈍角をなす側を、前記第2ブレースの内側から先行溶接し、
前記第1交点のうち、前記第1ブレースの外周面と前記第2ブレースとの内周面との交差角が鋭角をなす側を、前記第2ブレースの内側から後行溶接する、
ことを特徴とす
る溶接方法。
【請求項10】
前記第1内側溶接ステップにて、前記第2ブレースの内側から前記第1交点を全周溶接する、
ことを特徴とする請求項8
又は9に記載の溶接方法。
【請求項11】
前記第1内側溶接ステップの溶接量は、前記第1外側溶接ステップの溶接量より、少ない、
ことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、洋上風車用ジャケット構造体が含むレグ及びブレースを溶接接合することが行われている。
特許文献1は、洋上風車用ジャケット構造物が含む第1斜めブレースと第2斜めブレースとの交点を両面溶接すること、洋上風車用ジャケット構造物が含む第1斜めブレースとレグとの交点を両面溶接すること、を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、これら両面溶接の溶接方法に改善の余地があった。
【0005】
本開示は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、レグ又はブレースと、ブレースと、の交点を容易に両側溶接する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本開示の態様1に係る溶接方法は、円筒状の鋼管であるレグと、円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、レグ又はブレースと、ブレースと、の交点を容易に両側溶接する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体の斜視図である。
【
図2】実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体の正面図である。
【
図4】第1実施形態において配置ステップが行われた状態を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態において配置ステップが行われた状態を示す平面図である。
【
図7】第1実施形態において反転ステップが行われた状態を示す斜視図である。
【
図8】第1実施形態において反転ステップが行われた状態を示す平面図である。
【
図10】第2実施形態に係る配置ステップを示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態に係る配置ステップを示す正面図である。
【
図12】第3実施形態に係る配置ステップの第1例を示す平面図である。
【
図13】第3実施形態に係る配置ステップの第2例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、本開示の一実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法を説明する。本実施形態に係る溶接方法は、洋上風車用ジャケット構造体を地上のヤードで製作する際、洋上風車用ジャケット構造体を構成する部品同士を溶接により接合する際に行われる。
本実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法を説明するにあたり、まず、洋上風車用ジャケット構造体の構造について説明する。
【0010】
(洋上風車用ジャケット構造体の構造)
図1は、実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体1の斜視図である。
図2は、実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体1の正面図である。
図3は、
図1に示すIII部の拡大図である。
図4は、第1実施形態に係る配置ステップを示す斜視図である。
図5は、第1実施形態に係る配置ステップを示す平面図である。
図6は、
図5のVI-VI方向の断面図である。
図7は、第1実施形態において反転ステップが行われた状態を示す斜視図である。
図8は、第1実施形態において反転ステップが行われた状態を示す平面図である。
図9は、
図8のIX-IX方向の断面図である。
図1に示すように、洋上風車用ジャケット構造体1は、レグ10と、ブレース20と、トランジションピース30と、を備える。
レグ10は、上下方向に延びる円筒状の鋼管である。レグ10の下端は、海底地盤に打設された不図示の杭に接続される。レグ10の上端は、トランジションピース30に接続される。この時、レグ10は、上端に接続されるトランジションピース30の寸法と、下端に接続される不図示の鋼管杭同士の間隔と、に合わせて、適宜屈曲又は湾曲していてもよい。
本実施形態において洋上風車用ジャケット構造体1は、複数のレグ10を含む。具体的には、洋上風車用ジャケット構造体1は、4つのレグ10を有する。
【0011】
ブレース20は、洋上風車用ジャケット構造体1の上下方向を基準とした周方向に沿って、4本のレグ10を互いに接続する。本実施形態において、ブレース20は、レグ10に対して溶接により接合される。このことで、ブレース20は、4本のレグ10からなる構造を補強する。
図2に示すように、ブレース20は、第1ブレース21と、第2ブレース22と、を備える。第1ブレース21及び第2ブレース22のそれぞれは、円筒状の鋼管である。
第1ブレース21は、両側の端部がそれぞれレグ10に接続される。すなわち、第1ブレース21は、両側の端部がレグ10の側面に当接する。この状態で、第1ブレース21の両側の端部は、それぞれレグ10に溶接される。
第2ブレース22は、一方の端部がレグ10に接続され、他方の端部が第1ブレース21に接続される。すなわち、第2ブレース22は、一方の端部がレグ10の側面に当接し、他方の端部が第1ブレース21の側面に当接する。この状態で、第2ブレース22の一方の端部はレグ10に溶接され、第2ブレース22の他方の端部は第1ブレース21に接続される。
【0012】
図2に示すように、2本のレグ10同士の間において、1本の第1ブレース21に対して2本の第2ブレース22が設けられる。このことで、第1ブレース21と第2ブレース22とは、2本のレグ10の間においてX字状を形成する。前記X字状は、例えば、2本のブレース20の間において上下方向に2段設けられる。あるいは、前記X字状は、2本のブレース20の間において1段のみ設けられてもよいし、3段以上設けられてもよい。
【0013】
トランジションピース30は、洋上風車用ジャケット構造体1における、不図示の洋上風車が接続される部分である。具体的には、トランジションピース30には、不図示の洋上風車タワーの下端が接続される。また、トランジションピース30は、前述した4つのレグ10によって支持される。
以上の各構成により、洋上風車用ジャケット構造体1は、不図示の洋上風車を支持する。
【0014】
(洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法)
次に、本実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体1の溶接方法について説明する。本実施形態では、特に、レグ10と第1ブレース21との交点である第1交点C1を溶接する方法について説明する。本実施形態において、第1交点C1は、第1ブレース21の端部とレグ10の側面との当接面である。すなわち、本実施形態において、第1ブレース21の端部は、
図3に示すように、レグ10の外周面に沿って円弧状に切りかかれた形状を有する。これにより、第1ブレース21の端部が、レグ10の外周面に沿って当接する。
【0015】
第1交点C1の溶接方法は、配置ステップと、第1内側溶接ステップと、ガウジングステップと、第1外側溶接ステップと、を備える。
すなわち、まず、配置ステップにおいて、
図4又は
図5に示すように、互いに接続される前のレグ10と第1ブレース21とを適宜位置合わせした状態で治具Jの上に配置する。次に、第1内側溶接ステップにおいて、第1交点C1を内側から溶接する。そして、ガウジングステップにおいて第1交点C1のガウジングを行った後、第1外側溶接ステップにおいて、第1交点C1を外側から溶接する。
上述の工程で第1交点C1を溶接することで、すなわち、第1交点C1を溶接する際、先に第1ブレース21の内側から溶接することで、ガウジングステップを、第1ブレース21の外側から行うことができる。このことで、ガウジングステップを第1ブレース21の内側から行う場合と比較して、作業スペースを広く取りやすくすることができる。したがって、レグ10と第1ブレース21との第1交点C1を両側溶接する際、ガウジングステップを行いやすくすることができる。よって、レグ10と第1ブレース21との交点の両側溶接を容易に行いやすくすることができる。
以下、本実施形態に係る溶接方法の各工程の詳細について説明する。
【0016】
(配置ステップ)
配置ステップは、レグ10と第1ブレース21とを、互いに溶接可能な状態で配置する工程である。すなわち、配置ステップでは、
図4又は
図5に示すように、レグ10と第1ブレース21とを、適宜位置合わせした状態で治具Jの上に配置する。本実施形態において、配置ステップでは、レグ10の管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、第1ブレース21の管軸が略水平方向に沿うよう、レグ10及び第1ブレース21を配置する。本実施形態において、略水平方向とは、例えば、水平方向を基準として、水平方向に対して±10°の範囲内の方向をいう。
具体的には、レグ10及び第1ブレース21のそれぞれを寝かせた状態として、レグ10と第1ブレース21との交差角を適宜合わせた上で、第1ブレース21の端部が、レグ10の側面に当接した状態とする。
【0017】
本実施形態において、配置ステップによってレグ10と第1ブレース21とが上述のように配置された時、
図6に示すように、第1交点C1の下部となる部位を第1下部U1という。また、配置ステップによってレグ10と第1ブレース21とが上述のように配置された時、第1交点C1の側面部となる部位の一方を、第1側面部S1といい、他方を第2側面部S2という。
換言すれば、例えば、第1交点C1を周方向に4分割した時、下方に面する領域を第1下部U1といい、側面部となる方向を、それぞれ第1側面部S1、第2側面部S2という。なお、第1交点C1を周方向に4分割した時、第1下部U1に対向する領域を、第2下部U2という(詳細は後述する。)
【0018】
本実施形態において、
図5に示すように、配置ステップによってレグ10と第1ブレース21とが上述のように配置された状態における、レグ10の管軸及び第1ブレース21の両方と直交する方向から見て、レグ10と第1ブレース21との交差角が鋭角をなす側を、鋭角側A1といい、レグ10と第1ブレース21との交差角が鈍角をなす側を、鈍角側A2という。
【0019】
なお、上述のように、配置ステップによっては、レグ10と第1ブレース21とが、互いに略水平方向に配置される。このため、配置ステップにおいて、レグ10の中心軸及び第1ブレース21の中心軸は、
図4又は
図5に示すように、概ね水平である。すなわち、配置ステップにおいて、レグ10の中心軸及び第1ブレース21の中心軸は、鉛直線と略直交する。本実施形態において、鉛直線と略直交するとは、例えば、鉛直方向と平行である鉛直線との交差角が、90°±10°の範囲内であることをいう。したがって、上述の鋭角側A1及び鈍角側A2は、配置ステップによって配置されたレグ10と第1ブレース21とを、鉛直方向から見て定義される。
本実施形態において、第1側面部S1は、
図5及び
図6に示すように、配置ステップによってレグ10と第1ブレース21とが上述のように配置された時に第1交点C1の側面部となる部位のうち、鋭角側A1に位置する側の側面部をいう。
本実施形態において、第2側面部S2は、
図5及び
図6に示すように、配置ステップによってレグ10と第1ブレース21とが上述のように配置された時に第1交点C1の側面部となる部位のうち、鈍角側A2に位置する側の側面部をいう。
【0020】
(第1内側溶接ステップ)
第1内側溶接ステップは、第1交点C1を第1ブレース21の内側から溶接する工程である。第1内側溶接ステップでは、第1ブレース21の内側から第1交点C1を全周溶接する。このことで、第1交点C1の、第1ブレース21の内側からの溶接における品質を向上させる。第1内側溶接ステップでは、例えば、アーク溶接が行われる。
【0021】
ここで、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角は、
図5に示すように、鋭角側A1において鈍角となり、鈍角側A2において鋭角となる。
また、第1交点C1を第1ブレース21の内側から溶接する際、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鋭角となっている部分は、溶接工具を接近させにくいことから、交差角が鈍角となっている部分よりも、より高い溶接の技能が求められる。すなわち、第1交点C1を第1ブレース21の内側から溶接する際において、鈍角側A2の溶接には、鋭角側A1の溶接に対して比較的高い溶接の技能が求められる。
そこで、本実施形態において、第1内側溶接ステップでは、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鈍角をなす側である、第1交点C1の鋭角側A1を、第1ブレース21の内側から先行溶接する。そして、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鋭角をなす側である、第1交点C1の鈍角側A2を、第1ブレース21の内側から後行溶接する。すなわち、第1内側溶接ステップでは、第1交点C1を溶接する際、鋭角側A1から先に溶接し、その後に鈍角側A2を溶接する。
このように、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鈍角となる鋭角側A1から先に溶接することで、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鋭角となる鈍角側A2を溶接する際、レグ10と第1ブレース21との位置が概ね固定された状態とすることができる。よって、溶接中にレグ10と第1ブレース21との位置がずれる等の可能性を抑えやすくすることができる。
【0022】
本実施形態において、第1内側溶接ステップの溶接量は、第1外側溶接ステップの溶接量より、少ない。すなわち、第1交点C1を第1ブレース21の内側から溶接する際の溶接ビードの量は、外側から溶接する際の溶接ビードの量よりも少ない。このように、外側から溶接する際の溶接ビードを多くすることで、溶接の品質を確保しやすくすることが好ましい。
【0023】
以下、第1内側溶接ステップにおいて、第1交点C1を溶接する作業の手順について、2例挙げて説明する。なお、次に述べる第1内側溶接ステップの2例は、それぞれ、第1下向き姿勢溶接ステップと、第1立向き姿勢上進溶接ステップと、反転ステップと、第2下向き姿勢溶接ステップと、第2立向き姿勢上進溶接ステップと、を備える。第1内側溶接ステップの2例は、これらの各工程を行う順番が相違する。
本実施形態において、第1内側溶接ステップでは、以下の2例のいずれかを適宜選択の上実施されてよい。
【0024】
(第1内側溶接ステップの第1例)
まず、第1内側溶接ステップの第1例について説明する。以下、第1内側溶接ステップの第1例について、単に第1例という。第1例において、第1内側溶接ステップは、第1下向き姿勢溶接ステップ、第1立向き姿勢上進溶接ステップ、反転ステップ、第2下向き姿勢溶接ステップ、第2立向き姿勢上進溶接ステップ、の順で行われる。
【0025】
第1例において、第1下向き姿勢溶接ステップは、配置ステップの後に行われる。第1下向き姿勢溶接ステップでは、第1下部U1を、第1ブレース21の内側から下向き姿勢で溶接する。第1下向き姿勢溶接ステップでは、例えば、第1交点C1の周方向における第1下部U1の中央から、第1側面部S1の端部に相当する部位まで溶接する。その後、第1交点C1の周方向における第1下部U1の中央から、第2側面部S2の端部に相当する部位まで溶接する。
【0026】
第1例において、第1立向き姿勢上進溶接ステップは、第1下向き姿勢溶接ステップの後に行われる。第1立向き姿勢上進溶接ステップでは、第1側面部S1を、第1ブレース21の内側から立向き姿勢で上進溶接する。第1立向き姿勢上進溶接ステップでは、第1下向き姿勢溶接ステップにおいて溶接された第1下部U1の端部から、第1側面部S1を上進溶接によって、第2下部U2の端部に相当する部位まで溶接する。
【0027】
第1例において、反転ステップは、第1立向き姿勢上進溶接ステップの後に行われる。反転ステップでは、配置ステップによって、それぞれ管軸が略水平方向に沿うように配置されたレグ10及び第1ブレース21の上下を反転させる。このことで、第2下部U2が、第1交点C1の下部となる。
【0028】
第1例において、第2下向き姿勢溶接ステップは、反転ステップの後に行われる。第2下向き姿勢溶接ステップでは、第2下部U2を、第1ブレース21の内側から下向き姿勢で溶接する。第2下向き姿勢溶接ステップでは、例えば、第1交点C1の周方向における第2下部U2の中央から、第1立向き姿勢上進溶接ステップにおいて溶接された第1側面部S1の端部まで溶接する。その後、第1交点C1の周方向における第2下部U2の中央から、第2側面部S2の端部に相当する部位まで溶接する。
【0029】
第1例において、第2立向き姿勢上進溶接ステップは、第2下向き姿勢溶接ステップの後に行われる。第2立向き姿勢上進溶接ステップでは、第2側面部S2を、第1ブレース21の内側から立向き姿勢で上進溶接する。第2立向き姿勢上進溶接ステップでは、第2下向き姿勢溶接ステップにおいて溶接された第2下部U2の端部から、第2側面部S2を上進溶接によって、第1下部U1の端部まで溶接する。
上記工程によって、第1例による第1内側溶接ステップは行われる。
【0030】
(第1内側溶接ステップの第2例)
次に、第1内側溶接ステップの第2例について説明する。以下、第1内側溶接ステップの第2例について、単に第2例という。第2例において、第1内側溶接ステップは、第1立向き姿勢上進溶接ステップ、第1下向き姿勢溶接ステップ、反転ステップ、第2立向き姿勢上進溶接ステップ、第2下向き姿勢溶接ステップ、の順で行われる。
【0031】
第2例において、第1立向き姿勢上進溶接ステップは、配置ステップの後に行われる。第1立向き姿勢上進溶接ステップでは、第1側面部S1を、第1ブレース21の内側から立向き姿勢で上進溶接する。第1立向き姿勢上進溶接ステップでは、第1下部U1の端部に相当する部位から、第2下部U2の端部に相当する部位まで上進溶接する。
【0032】
第2例において、第1下向き姿勢溶接ステップは、第1立向き姿勢上進溶接ステップの後に行われる。第1下向き姿勢溶接ステップでは、第1下部U1を、第1ブレース21の内側から且つ第1立向き姿勢上進溶接ステップで溶接される部分から、下向き姿勢で溶接する。第1下向き姿勢溶接ステップでは、第1立向き姿勢上進溶接ステップで溶接された第1側面部S1の端部から、第2側面部S2の端部に相当する部位まで、第1下部U1を溶接する。この時、第1側面部S1の端部から、第1交点C1の周方向における第1下部U1の中央までと、第1下部U1の中央から第2側面部S2の端部に相当する部位までと、の溶接を個別に行ってもよい。あるいは、第1側面部S1の端部から、第2側面部S2の端部に相当する部位まで、第1下部U1を連続して溶接してもよい。
【0033】
第2例において、反転ステップは、第1下向き姿勢溶接ステップの後に行われる。反転ステップは、第1例と同様に行われる。
【0034】
第2例において、第2立向き姿勢上進溶接ステップは、反転ステップの後に行われる。第2立向き姿勢上進溶接ステップでは、第2側面部S2を、第1ブレース21の内側から立向き姿勢で上進溶接する。第2立向き姿勢上進溶接ステップでは、第2下部U2の端部に相当する部位から、第1下向き姿勢溶接ステップで溶接された第1下部U1の端部まで上進溶接する。
【0035】
第2例において、第2下向き姿勢溶接ステップは、第2立向き姿勢上進溶接ステップの後に行われる。第2下向き姿勢溶接ステップでは、第2下部U2を、第1ブレース21の内側から且つ第2立向き姿勢上進溶接ステップで溶接される部分から、下向き姿勢で溶接する。第2下向き姿勢溶接ステップでは、第2立向き姿勢上進溶接ステップで溶接された第2側面部S2の端部から、第1立向き姿勢上進溶接ステップで溶接された第1側面部S1の端部まで、第2下部U2を溶接する。この時、第2側面部S2の端部から、第1交点C1の周方向における第2下部U2の中央までと、第2下部U2の中央から第1側面部S1の端部までと、の溶接を個別に行ってもよい。あるいは、第2側面部S2の端部から、第1側面部S1の端部まで、第2下部U2を連続して溶接してもよい。
上記工程によって、第2例による第1内側溶接ステップは行われる。
【0036】
(ガウジングステップ)
ガウジングステップは、上述した第1内側溶接ステップの後、第1ブレース21の外側から第1交点C1をガウジングする工程である。すなわち、ガウジングステップは、第1内側溶接ステップにおいて生じた溶接ビードのうち、第1ブレース21の内側から外側に侵入した溶接ビードを取り除く工程である。ガウジングステップでは、例えば、アークガウジングによる方法が好適に用いられる。本実施形態において、ガウジングステップは、第1ブレース21の外側から行われる。このことで、第1ブレース21の内側からガウジングステップを行う場合と比較して、作業スペースを確保しやすくすることができる。
【0037】
ここで、ガウジングステップは、例えば、溶接部に向けてガウジングを行うための工具をより接近させやすいことから、鋭角側A1よりも鈍角側A2における作業の方が容易である。
本実施形態において、ガウジングステップは、第1交点C1における任意の部位から開始されてもよいが、例えば、第1交点C1をレグ10の管軸及び第1ブレース21の管軸の両方と直交する方向から見た時、レグ10の外周面と第1ブレース21の外周面とが鈍角をなす側から開始されることが好ましい。このことで、先に比較的作業が容易な鋭角側A1で作業を行うことで、鈍角側A2でのガウジングを行う際に、比較的慣れた状態で作業を行うことができる。
【0038】
(第1外側溶接ステップ)
第1外側溶接ステップは、ガウジングステップの後、第1ブレース21の外側から第1交点C1を溶接する工程である。第1外側溶接ステップは、第1交点C1における任意の部位から開始されてよい。第1外側溶接ステップでは、第1交点C1の周方向に亘って溶接作業を連続して行ってもよいし、連続して行われなくてもよい。
以上の各工程により、第1交点C1は溶接される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体1の溶接方法によれば、第1内側溶接ステップの後、第1ブレース21の外側から第1交点C1をガウジングするガウジングステップを備える。そして、ガウジングステップの後、第1外側溶接ステップにおいて、第1ブレース21の外側から第1交点C1を溶接する。このように、レグ10と第1ブレース21との交点である第1交点C1を、先に第1ブレース21の内側から溶接することで、ガウジングの作業を第1ブレース21の外側から行うことができる。よって、ガウジングの作業を第1ブレース21の内側から行う場合と比較して、作業スペースを広く取りやすくすることができる。したがって、レグ10と第1ブレース21との第1交点C1を両側溶接する際、ガウジングステップを行いやすくすることができる。よって、レグ10と第1ブレース21との交点の両側溶接を容易に行いやすくすることができる。
【0040】
また、第1内側溶接ステップは、第1下向き姿勢溶接ステップ及び第1立向き姿勢上進溶接ステップの後、レグ10及び第1ブレース21の上下を反転させる反転ステップを備える。そして、反転ステップの後、第2下向き姿勢溶接ステップと、第2立向き姿勢上進溶接ステップと、を行う。このように、反転ステップを備えることで、第1交点C1を第1ブレース21の内側から溶接する際に溶接作業者が行う作業を、下向き姿勢による溶接か、立向き姿勢による上進溶接か、のいずれかのみとすることができる。よって、比較的高度な技能が求められる上向き姿勢による溶接作業や下進溶接を不要として、溶接作業者に求められる技能を低く抑えることができる。
【0041】
また、第1内側溶接ステップは、第1立向き姿勢上進溶接ステップ及び第1下向き姿勢溶接ステップの後、レグ10及び第1ブレース21の上下を反転させる反転ステップを備える。そして、反転ステップの後、第2立向き姿勢上進溶接ステップと、第2下向き姿勢溶接ステップと、を行う。このように、反転ステップを備えることで、第1交点C1を第1ブレース21の内側から溶接する際に溶接作業者が行う作業を、立向き姿勢による上進溶接か、下向き姿勢による溶接か、のいずれかのみとすることができる。よって、比較的高度な技能が求められる上向き姿勢による溶接作業や下進溶接を不要として、溶接作業者に求められる技能を低く抑えることができる。
【0042】
ここで、第1交点C1を第1ブレース21の内側から溶接する際、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鋭角となっている部分は、交差角が鈍角となっている部分よりも、より高い溶接の技能が求められる。
そこで、第1内側溶接ステップにて、第1交点C1のうち、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鈍角をなす側を、第1ブレース21の内側から先行溶接し、第1交点C1のうち、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鋭角をなす側を、第1ブレース21の内側から後行溶接する。このように、比較的高い溶接の技能が求められない側を先に溶接することで、比較的高い溶接の技能が求められる側を溶接する際、レグ10と第1ブレース21との位置が概ね固定された状態とすることができる。よって、溶接中にレグ10と第1ブレース21との位置がずれる等の可能性を抑えやすくすることができる。よって、より第1交点C1の溶接作業を行いやすくすることができる。
【0043】
また、第1内側溶接ステップにて、第1ブレース21の内側から第1交点C1を全周溶接する。これにより、第1交点C1の内側に形成される溶接ビードを全周に亘って連続して設けることができる。よって、より溶接の品質を向上させることができる。
【0044】
ここで、第1ブレース21の外側からガウジングステップを行う際、レグ10の外周面と第1ブレース21の外周面との交差角が鈍角となっている部分は、交差角が鋭角となっている部分よりも、ガウジングを行うための工具を溶接部に接近させやすく、比較的作業を容易に行うことができる。
そこで、ガウジングステップは、第1交点C1のうち、第1交点C1をレグ10の管軸及び第1ブレース21の両方と直交する方向から見た時、レグ10の外周面と第1ブレース21の外周面とが鈍角をなす側から、開始される。このように、比較的作業を容易に行うことができる側からガウジングステップを開始することで、例えば、作業者がレグ10の外周面と第1ブレース21の外周面との交差角が鋭角となっている部分のガウジングを行う際、比較的習熟した状態で作業することができる。よって、ガウジングの作業の効率及び品質を向上させやすくすることができる。
【0045】
ここで、例えば、第1内側溶接ステップにおいては、作業者の溶接姿勢が悪く、視界も良好でないことが考えられる。
そこで、第1内側溶接ステップの溶接量は、第1外側溶接ステップの溶接量より、少ない。このことで、第1内側溶接ステップの溶接量を抑え、第1内側溶接ステップの品質を確保しやすくすることができる。また、レグ10と第1ブレース21とを溶接する際、外側の溶接ビードが多くなるようにすることで、品質の確保が比較的難しい内側溶接の作業量を減らし、比較的品質を確保しやすい外側溶接の作業量を増やすことで、より確実に溶接の品質を確保しやすくすることができる。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本開示に係る第2実施形態の溶接方法を、
図10を参照して説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図10は、第2実施形態に係る配置ステップを示す斜視図である。
図11は、第2実施形態に係る配置ステップを示す正面図である。
第2実施形態に係る溶接方法は、配置ステップにおいて、レグ10及び第1ブレース21を次のように配置する点で、第1実施形態と相違する。
【0047】
第2実施形態において、配置ステップでは、レグ10の管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、第1ブレース21の管軸が略鉛直方向に沿うよう、レグ10及び第1ブレース21を配置する。すなわち、第2実施形態における配置ステップでは、レグ10を寝かせた状態とする点では第1実施形態と同様であるが、第1ブレース21を立てた状態とする点で第1実施形態と相違する。なお、第1ブレース21の管軸が略鉛直方向に沿うように配置するとは、第1ブレース21を立てた状態としつつ、寝かせた状態であるレグ10に対する交差角が調整されることで、第1ブレース21の管軸が鉛直方向から傾いた状態となることをいう。
【0048】
第2実施形態において、配置ステップの後は、第1内側溶接ステップにおいて、第1交点C1を、第1ブレース21の内側から溶接する。この時、配置ステップにおいてレグ10と第1ブレース21とが上述した状態で配置されることで、第2実施形態の配置ステップにおいて、レグ10の管軸方向から見て、第1ブレース21の管軸は、概ね鉛直とされる。換言すれば、第1ブレース21の管軸は、レグ10の管軸方向から見て、鉛直線と略平行である。本実施形態において、鉛直線と略平行であるとは、例えば、鉛直方向と平行である鉛直線との交差角が、±10°の範囲内であることをいう。
すなわち、第1交点C1が、概ね水平方向に面する。これにより、第2実施形態に係る第1内側溶接ステップでは、第1交点C1の周方向に亘って、下向き姿勢のみ又は立向き姿勢のみによって溶接作業を行うことができる。
第2実施形態において、ガウジングステップ、及び、第1外側溶接ステップは、第1実施形態と同様にして行われる。
【0049】
以上説明したように、第2実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体1の溶接方法によれば、配置ステップでは、レグ10の管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、第1ブレース21の管軸が略鉛直方向に沿うよう、レグ10及び第1ブレース21を配置する。このように第1ブレース21及びレグ10を配置することで、第1交点C1が、概ね水平方向に面するように配置される。したがって、第1内側溶接ステップにおいて第1交点C1を溶接する際、第1交点C1の全周に亘って同じ姿勢で溶接作業を行うことができる。すなわち、例えば、第1交点C1の全周に亘って下向き姿勢又は立向き姿勢によって溶接作業を行うことができる。よって、より溶接作業を容易に行いやすくすることができる。また、例えば、比較的高度な技能が求められる上向き姿勢による溶接作業を不要として、溶接作業者に求められる技能を低く抑えることができる。
【0050】
(第3実施形態)
次に、本開示に係る第3実施形態の溶接方法を、
図12を参照して説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態及び第2実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図12は、第3実施形態に係る配置ステップの第1例を示す平面図である。
図13は、第3実施形態に係る配置ステップの第2例を示す斜視図である。
第3実施形態に係る溶接方法は、洋上風車用ジャケット構造体1のうち、特に第1ブレース21と第2ブレース22との交点である第2交点C2(第1交点)を溶接する方法である。
【0051】
第2交点C2の溶接方法は、配置ステップと、第1内側溶接ステップと、ガウジングステップと、第1外側溶接ステップと、を備える。すなわち、第2交点C2の溶接は、第1、第2実施形態において説明した第1交点C1の溶接と同様に行われる。具体的には、第2交点C2の溶接方法において、第1ブレース21が、第1、第2実施形態のレグ10に相当し、第2ブレース22が、第1、第2実施形態の第1ブレース21に相当する。
【0052】
より具体的には、まず、配置ステップにおいて、第1ブレース21と第2ブレース22とを互いに位置合わせした状態で、治具Jの上に配置する。第1ブレース21と第2ブレース22との位置関係は、第1又は第2実施形態において説明した形態と同様とされてよい。すなわち、例えば、
図12に示すように、第1ブレース21及び第2ブレース22のそれぞれを寝かせた状態としてもよいし、
図13に示すように、第1ブレース21を寝かせた状態として、第2ブレース22を立てた状態としてもよい。
以下、配置ステップによって第1ブレース21と第2ブレース22とが互いに溶接可能な状態で位置合わせされた状態における、第1ブレース21の管軸及び第2ブレース22の管軸の両方と直交する方向から見て、第1ブレース21の管軸と第2ブレース22の管軸との交差角が鋭角をなす側を、鋭角側A1といい、第1ブレース21の管軸と第2ブレース22の管軸との交差角が鈍角をなす側を、鈍角側A2という。
【0053】
次に、第1内側溶接ステップにおいて、第2交点C2を第2ブレース22の内側から溶接する。第1内側溶接ステップでは、第2ブレース22の内側から第2交点C2を全周溶接する。
第3実施形態において、第1内側溶接ステップでは、第1ブレース21の外周面と第2ブレース22の内周面との交差角が鈍角をなす側である、第2交点C2の鋭角側A1を、第2ブレース22の内側から先行溶接する。そして、第1ブレース21の外周面と第2ブレース22の内周面との交差角が鋭角をなす側である、第2交点C2の鈍角側A2を、第2ブレース22の内側から後行溶接する。すなわち、第1内側溶接ステップでは、第2交点C2を溶接する際、鋭角側A1から先に溶接し、その後に鈍角側A2を溶接する。
そして、ガウジングステップにおいて、第2ブレース22の外側から第2交点C2をガウジングした後、第1外側溶接ステップにおいて、第2ブレース22の外側から第2交点C2を溶接する。
以上の工程により、第2交点C2は溶接される。なお、第3実施形態において、上述した内容以外の各事項は、第1実施形態又は第2実施形態と同様であるとして、説明を省略する。
【0054】
以上説明したように、第3実施形態に係る洋上風車用ジャケット構造体1の溶接方法によれば、第1内側溶接ステップの後、第2ブレース22の外側から第2交点C2をガウジングするガウジングステップを備える。そして、ガウジングステップの後、第1外側溶接ステップにおいて、第2ブレース22の外側から第2交点C2を溶接する。このように、第1ブレース21と第2ブレース22との第2交点C2を、先に第2ブレース22の内側から溶接することで、ガウジングの作業を第2ブレース22の外側から行うことができる。よって、ガウジングの作業を第2ブレース22の内側から行う場合と比較して、作業スペースを広く取りやすくすることができる。したがって、第1ブレース21と第2ブレース22との第2交点C2を両側溶接する際、ガウジングステップを行いやすくすることができる。よって、第1ブレース21と第2ブレース22との交点の両側溶接を容易に行いやすくすることができる。
【0055】
また、第1内側溶接ステップにて、第2ブレース22の内側から第2交点C2を全周溶接する。これにより、第2交点C2の内側に形成される溶接ビードを全周に亘って連続して設けることができる。よって、より溶接の品質を向上させることができる。
【0056】
ここで、第2交点C2を第2ブレース22の内側から溶接する際、第1ブレース21の外周面と第2ブレース22の内周面との交差角が鋭角となっている部分は、交差角が鈍角となっている部分よりも、より高い溶接の技能が求められる。
そこで、第1内側溶接ステップにて、第2交点C2のうち、第1ブレース21の外周面と第2ブレース22との内周面との交差角が鈍角をなす側を、第2ブレース22の内側から先行溶接し、第2交点C2のうち、第1ブレース21の外周面と第2ブレース22との内周面との交差角が鋭角をなす側を、第2ブレース22の内側から後行溶接する。このように、比較的高い溶接の技能が求められない側を先に溶接することで、比較的高い溶接の技能が求められる側を溶接する際、第1ブレース21と第2ブレース22との位置が概ね固定された状態とすることができる。よって、溶接中に第1ブレース21と第2ブレース22との位置がずれる等の可能性を抑えやすくすることができる。よって、より第2交点C2の溶接作業を行いやすくすることができる。
【0057】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、レグ10と第1ブレース21とを溶接する際、第1内側溶接ステップを行う前に、レグ10に対する第1ブレース21の位置を調整した後、組み立て溶接又は点付け溶接によって仮止めしてもよい。なお、ガウジングステップを第1ブレース21の外側から行うため、組み立て溶接は、第1ブレース21の外側から行うことが好ましい。
また、第1ブレース21と第2ブレース22とを溶接する際においても、第1内側溶接ステップを行う前に、第1ブレース21に対する第2ブレース22の位置を調整した後、組み立て溶接又は点付け溶接によって仮止めしてもよい。なお、ガウジングステップを第2ブレース22の外側から行うため、組み立て溶接は、第2ブレース22の外側から行うことが好ましい。
上述の組み立て溶接又は点付け溶接は、任意の溶接姿勢で行ってよい。
【0058】
また、レグ10と第1ブレース21、第1ブレース21と第2ブレース22との溶接作業は、互いに同時並行で行われてもよい。この場合、例えば、共通する作業工程である反転ステップを、1度で済ませることができる。
また、実施形態において説明した各溶接部には、適宜開先が設けられてよい。なお、開先を設ける場合、第1ブレース21又は第2ブレース22の内側に形成される開先は、外側に形成される開先よりも小さいことが好ましい。このように、外側の開先の方を大きくすることで、品質の確保が比較的難しい内側溶接の作業量を減らし、比較的品質を確保しやすい外側溶接の作業量を増やすことで、溶接の品質を確保しやすくすることが好ましい。
また、第1実施形態において説明したレグ10と第1ブレース21との溶接方法によって、レグ10と第2ブレース22とを接続してもよい。
また、ガウジングステップは、例えば、比較的作業が難しい側である、レグ10の外周面と第1ブレース21の外周面とが鋭角をなす側から始めてもよい。このことで、比較的難しい作業を、作業者の体力に余裕がある時に行うようにしてもよい。
また、上記に関わらず、ガウジングステップは、その他の任意の判断に基づき、任意の作業順で行われてもよい。
また、第1内側溶接ステップでは、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鋭角をなす側である、第1交点C1の鈍角側A2を、第1ブレース21の内側から先行溶接し、レグ10の外周面と第1ブレース21の内周面との交差角が鈍角をなす側である、第1交点C1の鋭角側A1を、第1ブレース21の内側から後行溶接してもよい。すなわち、第1内側溶接ステップでは、第1交点C1を溶接する際、鈍角側A2から先に溶接し、その後に鋭角側A1を溶接するようにしてもよい。このことで、比較的難しい作業を、作業者の体力に余裕がある時に行うようにしてもよい。
【0059】
その他、本開示の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0060】
(付記)
前記実施形態に係る溶接方法は、例えば以下のように把握される。
<1>本開示の一態様に係る溶接方法は、円筒状の鋼管であるレグと、円筒状の鋼管である第1ブレースであって、端部が前記レグの側面に当接する第1ブレースと、を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、前記レグと前記第1ブレースとの交点である第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、前記第1内側溶接ステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、前記ガウジングステップの後、前記第1ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、を備えることを特徴とする溶接方法。
【0061】
上記洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法は、第1内側溶接ステップの後、第1ブレースの外側から第1交点をガウジングするガウジングステップを備える。そして、ガウジングステップの後、第1外側溶接ステップにおいて、第1ブレースの外側から第1交点を溶接する。このように、レグと第1ブレースとの交点である第1交点を、先に第1ブレースの内側から溶接することで、ガウジングの作業を第1ブレースの外側から行うことができる。よって、ガウジングの作業を第1ブレースの内側から行う場合と比較して、作業スペースを広く取りやすくすることができる。したがって、レグと第1ブレースとの第1交点を両側溶接する際、ガウジングステップを行いやすくすることができる。よって、レグと第1ブレースとの交点の両側溶接を容易に行いやすくすることができる。
【0062】
<2>上記<1>に係る溶接方法では、前記レグの管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、前記第1ブレースの管軸が略水平方向に沿うよう、前記レグ及び前記第1ブレースを配置する配置ステップ、を更に備え、前記第1内側溶接ステップは、前記配置ステップの後に、前記第1交点の下部となる部位である第1下部を、前記第1ブレースの内側から下向き姿勢で溶接する第1下向き姿勢溶接ステップと、前記第1下向き姿勢溶接ステップの後、前記第1交点の側面部となる部位の一方である第1側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第1立向き姿勢上進溶接ステップと、前記第1立向き姿勢上進溶接ステップの後、前記レグ及び前記第1ブレースの上下を反転させる反転ステップと、前記反転ステップの後に、前記第1交点の下部となる部位である第2下部を、前記第1ブレースの内側から下向き姿勢で溶接する第2下向き姿勢溶接ステップと、前記第2下向き姿勢溶接ステップの後、前記第1交点の側面部となる部位の他方である第2側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第2立向き姿勢上進溶接ステップと、を含むことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0063】
第1内側溶接ステップは、第1下向き姿勢溶接ステップ及び第1立向き姿勢上進溶接ステップの後、レグ及び第1ブレースの上下を反転させる反転ステップを備える。そして、反転ステップの後、第2下向き姿勢溶接ステップと、第2立向き姿勢上進溶接ステップと、を行う。このように、反転ステップを備えることで、第1交点を第1ブレースの内側から溶接する際に溶接作業者が行う作業を、下向き姿勢による溶接か、立向き姿勢による上進溶接か、のいずれかのみとすることができる。よって、比較的高度な技能が求められる上向き姿勢による溶接作業や下進溶接を不要として、溶接作業者に求められる技能を低く抑えることができる。
【0064】
<3>上記<1>又は<2>に係る溶接方法では、前記レグの管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、前記第1ブレースの管軸が略水平方向に沿うよう、前記レグ及び前記第1ブレースを配置する配置ステップ、を更に備え、前記第1内側溶接ステップは、前記配置ステップの後に、前記第1交点の側面部となる部位の一方である第1側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第1立向き姿勢上進溶接ステップと、前記第1立向き姿勢上進溶接ステップの後、前記第1交点の下部となる部位である第1下部を、前記第1ブレースの内側から且つ前記第1立向き姿勢上進溶接ステップで溶接される部分から、下向き姿勢で溶接する第1下向き姿勢溶接ステップと、前記第1下向き姿勢溶接ステップの後、前記レグ及び前記第1ブレースの上下を反転させる反転ステップと、前記反転ステップの後に、前記第1交点の側面部となる部位の他方である第2側面部を、前記第1ブレースの内側から立向き姿勢で上進溶接する第2立向き姿勢上進溶接ステップと、前記第2立向き姿勢上進溶接ステップの後、前記第1交点の下部となる部位である第2下部を、前記第1ブレースの内側から且つ前記第2立向き姿勢上進溶接ステップで溶接される部分から、下向き姿勢で溶接する第2下向き姿勢溶接ステップと、を含むことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0065】
第1内側溶接ステップは、第1立向き姿勢上進溶接ステップ及び第1下向き姿勢溶接ステップの後、レグ及び第1ブレースの上下を反転させる反転ステップを備える。そして、反転ステップの後、第2立向き姿勢上進溶接ステップと、第2下向き姿勢溶接ステップと、を行う。このように、反転ステップを備えることで、第1交点を第1ブレースの内側から溶接する際に溶接作業者が行う作業を、立向き姿勢による上進溶接か、下向き姿勢による溶接か、のいずれかのみとすることができる。よって、比較的高度な技能が求められる上向き姿勢による溶接作業や下進溶接を不要として、溶接作業者に求められる技能を低く抑えることができる。
【0066】
<4>上記<1>から<3>のいずれか一態様に係る溶接方法では、前記レグの管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、前記第1ブレースの管軸が略鉛直方向に沿うよう、前記レグ及び前記第1ブレースを配置する配置ステップ、を更に備え、前記第1内側溶接ステップは、前記配置ステップの後、前記レグと前記第1ブレースとの第1交点を、前記第1ブレースの内側から溶接する、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0067】
配置ステップでは、レグの管軸が略水平方向に沿うよう、且つ、第1ブレースの管軸が略鉛直方向に沿うよう、レグ及び第1ブレースを配置する。このように第1ブレース及びレグを配置することで、第1交点が、概ね水平方向に面するように配置される。したがって、第1内側溶接ステップにおいて第1交点を溶接する際、第1交点の全周に亘って同じ姿勢で溶接作業を行うことができる。すなわち、例えば、第1交点の全周に亘って下向き姿勢又は立向き姿勢によって溶接作業を行うことができる。よって、より溶接作業を容易に行いやすくすることができる。また、例えば、比較的高度な技能が求められる上向き姿勢による溶接作業を不要として、溶接作業者に求められる技能を低く抑えることができる。
【0068】
<5>上記<1>から<4>のいずれか一態様に係る溶接方法では、前記第1内側溶接ステップにて、前記第1交点のうち、前記レグの外周面と前記第1ブレースの内周面との交差角が鈍角をなす側を、前記第1ブレースの内側から先行溶接し、前記第1交点のうち、前記レグの外周面と前記第1ブレースの内周面との交差角が鋭角をなす側を、前記第1ブレースの内側から後行溶接する、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0069】
ここで、第1交点を第1ブレースの内側から溶接する際、レグの外周面と第1ブレースの内周面との交差角が鋭角となっている部分は、交差角が鈍角となっている部分よりも、より高い溶接の技能が求められる。
そこで、第1内側溶接ステップにて、第1交点のうち、レグの外周面と第1ブレースの内周面との交差角が鈍角をなす側を、第1ブレースの内側から先行溶接し、第1交点のうち、レグの外周面と第1ブレースの内周面との交差角が鋭角をなす側を、第1ブレースの内側から後行溶接する。このように、比較的高い溶接の技能が求められない側を先に溶接することで、比較的高い溶接の技能が求められる側を溶接する際、レグと第1ブレースとの位置が概ね固定された状態とすることができる。よって、溶接中にレグと第1ブレースとの位置がずれる等の可能性を抑えやすくすることができる。よって、より第1交点の溶接作業を行いやすくすることができる。
【0070】
<6>上記<1>から<5>のいずれか一態様に係る溶接方法では、前記第1内側溶接ステップにて、前記第1ブレースの内側から前記第1交点を全周溶接する、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0071】
第1内側溶接ステップにて、第1ブレースの内側から第1交点を全周溶接する。これにより、第1交点の内側に形成される溶接ビードを全周に亘って連続して設けることができる。よって、より溶接の品質を向上させることができる。
【0072】
<7>上記<1>から<6>のいずれか一態様に係る溶接方法では、前記ガウジングステップは、前記第1交点を前記レグの管軸及び前記第1ブレースの管軸の両方と直交する方向から見た時、前記レグの外周面と前記第1ブレースの外周面とが鈍角をなす側から、開始される、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0073】
ここで、第1ブレースの外側からガウジングステップを行う際、レグの外周面と第1ブレースの外周面との交差角が鈍角となっている部分は、交差角が鋭角となっている部分よりも、ガウジングを行うための工具を溶接部に接近させやすく、比較的作業を容易に行うことができる。
そこで、ガウジングステップは、第1交点のうち、第1交点をレグの管軸及び第1ブレースの両方と直交する方向から見た時、レグの外周面と第1ブレースの外周面とが鈍角をなす側から、開始される。このように、比較的作業を容易に行うことができる側からガウジングステップを開始することで、例えば、作業者がレグの外周面と第1ブレースの外周面との交差角が鋭角となっている部分のガウジングを行う際、比較的習熟した状態で作業することができる。よって、ガウジングの作業の効率及び品質を向上させやすくすることができる。
【0074】
<8>本開示の一態様に係る溶接方法は、円筒状の鋼管である第1ブレースと、円筒状の鋼管である第2ブレースであって、端部が前記第1ブレースの側面に当接する第2ブレースと、を含む洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法であって、前記第1ブレースと前記第2ブレースとの交点である第1交点を、前記第2ブレースの内側から溶接する第1内側溶接ステップと、前記第1内側溶接ステップの後、前記第2ブレースの外側から前記第1交点をガウジングするガウジングステップと、前記ガウジングステップの後、前記第2ブレースの外側から前記第1交点を溶接する第1外側溶接ステップと、を備えることを特徴とする。
【0075】
上記洋上風車用ジャケット構造体の溶接方法は、第1内側溶接ステップの後、第2ブレースの外側から第2交点をガウジングするガウジングステップを備える。そして、ガウジングステップの後、第1外側溶接ステップにおいて、第2ブレースの外側から第2交点を溶接する。このように、第1ブレースと第2ブレースとの第2交点を、先に第2ブレースの内側から溶接することで、ガウジングの作業を第2ブレースの外側から行うことができる。よって、ガウジングの作業を第2ブレースの内側から行う場合と比較して、作業スペースを広く取りやすくすることができる。したがって、第1ブレースと第2ブレースとの第2交点を両側溶接する際、ガウジングステップを行いやすくすることができる。よって、第1ブレースと第2ブレースとの交点の両側溶接を容易に行いやすくすることができる。
【0076】
<9>上記<8>に係る溶接方法では、前記第1内側溶接ステップにて、前記第2ブレースの内側から前記第1交点を全周溶接する、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0077】
第1内側溶接ステップにて、第2ブレースの内側から第2交点を全周溶接する。これにより、第2交点の内側に形成される溶接ビードを全周に亘って連続して設けることができる。よって、より溶接の品質を向上させることができる。
【0078】
<10>上記<8>又は<9>に係る溶接方法では、前記第1内側溶接ステップにて、前記第1交点のうち、前記第1ブレースの外周面と前記第2ブレースとの内周面との交差角が鈍角をなす側を、前記第2ブレースの内側から先行溶接し、前記第1交点のうち、前記第1ブレースの外周面と前記第2ブレースとの内周面との交差角が鋭角をなす側を、前記第2ブレースの内側から後行溶接する、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0079】
ここで、第2交点を第2ブレースの内側から溶接する際、第1ブレースの外周面と第2ブレースの内周面との交差角が鋭角となっている部分は、交差角が鈍角となっている部分よりも、より高い溶接の技能が求められる。
そこで、第1内側溶接ステップにて、第2交点のうち、第1ブレースの外周面と第2ブレースとの内周面との交差角が鈍角をなす側を、第2ブレースの内側から先行溶接し、第2交点のうち、第1ブレースの外周面と第2ブレースとの内周面との交差角が鋭角をなす側を、第2ブレースの内側から後行溶接する。このように、比較的高い溶接の技能が求められない側を先に溶接することで、比較的高い溶接の技能が求められる側を溶接する際、第1ブレースと第2ブレースとの位置が概ね固定された状態とすることができる。よって、溶接中に第1ブレースと第2ブレースとの位置がずれる等の可能性を抑えやすくすることができる。よって、より第2交点の溶接作業を行いやすくすることができる。
【0080】
<11>上記<1>から<10>のいずれか一態様に係る溶接方法では、前記第1内側溶接ステップの溶接量は、前記第1外側溶接ステップの溶接量より、少ない、ことを特徴とする構成を採用してもよい。
【0081】
ここで、例えば、第1内側溶接ステップにおいては、作業者の溶接姿勢が悪く、視界も良好でないことが考えられる。
そこで、第1内側溶接ステップの溶接量は、第1外側溶接ステップの溶接量より、少ない。このことで、第1内側溶接ステップの溶接量を抑え、第1内側溶接ステップの品質を確保しやすくすることができる。また、レグと第1ブレースとを溶接する際、外側の溶接ビードが多くなるようにすることで、品質の確保が比較的難しい内側溶接の作業量を減らし、比較的品質を確保しやすい外側溶接の作業量を増やすことで、より確実に溶接の品質を確保しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 洋上風車用ジャケット構造体
10 レグ
20 ブレース
21 第1ブレース
22 第2ブレース
30 トランジションピース
A1 鋭角側
A2 鈍角側
C1 第1交点
C2 第2交点
S1 第1側面部
S2 第2側面部
U1 第1下部
U2 第2下部
【要約】
【課題】レグ又はブレースと、ブレースと、の交点を容易に両側溶接する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】円筒状の鋼管であるレグ10と、円筒状の鋼管である第1ブレース21であって、端部がレグ10の側面に当接する第1ブレース21と、を含む洋上風車用ジャケット構造体1の溶接方法であって、レグ10と第1ブレース21との交点である第1交点C1を、第1ブレース21の内側から溶接する第1内側溶接ステップと、第1内側溶接ステップの後、第1ブレース21の外側から第1交点C1をガウジングするガウジングステップと、ガウジングステップの後、第1ブレース21の外側から第1交点C1を溶接する第1外側溶接ステップと、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1