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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】乗りかごおよびエレベーター
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/02 20060101AFI20240802BHJP
【FI】
B66B11/02 K
B66B11/02 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023542117
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2021030316
(87)【国際公開番号】W WO2023021644
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸村 好貴
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 智貴
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/015637(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/213147(WO,A1)
【文献】特開2004-359368(JP,A)
【文献】特開2011-051736(JP,A)
【文献】中国実用新案第209740465(CN,U)
【文献】中国実用新案第207275970(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/02
B66B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
かご床を支持するとともに、前記下枠に支持された床支持梁と、
前記かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記床支持梁に固定されるとともに、前記かご下プーリを支持するプーリ支持部材と、
前記縦枠と前記床支持梁とを連結する連結部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に加わる上向きの力を、前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている
乗りかご。
【請求項2】
前記連結部材は、前記かご下プーリの直上に配置されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項3】
前記連結部材に取り付けられた異物混入防止カバーを備える
請求項2に記載の乗りかご。
【請求項4】
前記床支持梁は、閉断面構造を有する
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項5】
前記床支持梁の一側面から突出する状態で前記一側面に固定された中間部材を備え、
前記連結部材は、前記中間部材を介して前記床支持梁に固定されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項6】
前記連結部材の一部は、前記プーリ支持部材に固定されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項7】
前記床支持梁の長手方向で前記縦枠と前記連結部材とを挟み込む一対の振れ止め部を備える
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項8】
前記かご下プーリは、前記縦枠よりも前側または後ろ側に配置されている
請求項1に記載の乗りかご。
【請求項9】
昇降路を昇降する乗りかごを備え、
前記乗りかごは、
一対の縦枠および前記一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、
かご床を支持するとともに、前記下枠に支持された床支持梁と、
前記かご床の下方に配置されたかご下プーリと、
前記床支持梁に固定されるとともに、前記かご下プーリを回転可能に支持するプーリ支持部材と、
前記縦枠と前記床支持梁とを連結する連結部材と、を備え、
前記かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによって前記プーリ支持部材および前記床支持梁に加わる上向きの力を、前記連結部材および前記縦枠で受ける構造になっている
エレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗りかごおよびエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベーターの乗りかごは、かご床の傾きを抑制するタイロッドを備えている。かご床は、床支持梁によって支持される。かご床の傾きは、タイロッドを介して床支持梁に上向きの力を加えることにより抑制される。タイロッドを備えるエレベーターの乗りかごに関する技術としては、たとえば特許文献1に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-246658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイロッドは、乗りかごのかご外法よりも昇降路の壁側に出っ張って配置される。このため、タイロッドを備える乗りかごでは次のような不都合が生じる。
かご外法は、昇降路に乗りかご以外の機器(以下、「昇降路機器」という。)を設置するうえで計画される寸法であり、この計画寸法の範囲内で乗りかごを設計するかぎり、乗りかごと昇降路機器とが干渉することはない。このため、昇降路機器の一つである釣り合い錘などの機器は、かご外法と昇降路の壁との間に収まるように設計される。しかし、上述のようにタイロッドがかご外法から出っ張る場合は、タイロッドの出っ張りによって昇降路機器の配置や設計に制約が生じる。また、エレベーターの据付作業を行う施工現場では、乗りかごと昇降路機器とが干渉しないかどうかを確認し、干渉する場合は昇降路機器の配置や乗りかごの構造を見直す必要がある。
【0005】
本発明の目的は、タイロッドを設けなくても、かご床の傾きを抑制することができる乗りかごおよびエレベーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、たとえば、特許請求の範囲に記載された構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一つを挙げるならば、一対の縦枠および一対の縦枠の下端部を連結する下枠を有するかご枠と、かご床を支持するとともに、下枠に支持された床支持梁と、かご床の下方に配置されたかご下プーリと、床支持梁に固定されるとともに、かご下プーリを回転可能に支持するプーリ支持部材と、縦枠と床支持梁とを連結する連結部材と、を備える乗りかごである。この乗りかごは、かご下プーリに巻き掛けられる主ロープによってプーリ支持部材および床支持梁に加わる上向きの力を、連結部材および縦枠で受ける構造になっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイロッドを設けなくても、かご床の傾きを抑制することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るエレベーターの概略構成図である。
図2】実施形態に係る乗りかごの外観を示す斜視図である。
図3図2に示す乗りかごを斜め下方から見た図である。
図4】防振部の構成を示す図である。
図5図2に示す乗りかごの要部を左右方向から見た図である。
図6図2に示す乗りかごの要部を斜め方向から見た図である。
図7】中間部材の構成を示す図である。
図8】比較形態に係る乗りかごを示す模式図である。
図9】実施形態に係る乗りかごを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能または構成を有する要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係るエレベーターの概略構成図である。
図1に示すように、エレベーターは、巻上機1と、主ロープ2と、乗りかご3と、釣り合い錘5と、プーリ6と、を備えている。乗りかご3は、一対のかご下プーリ4A,4Bを備えている。乗りかご3は、一対のかご下プーリ4A,4Bに巻き掛けられた主ロープ2の移動に従って昇降路50を昇降する。
【0011】
巻上機1は、乗りかご3を昇降させるために主ロープ2を巻き上げる機器である。巻上機1は、昇降路50の上部に設置されている。主ロープ2の一端と他端は、それぞれ昇降路50の最上部に固定されている。主ロープ2は、一対のかご下プーリ4A,4Bと、巻上機1と、プーリ6とに巻き掛けられている。乗りかご3は、図示しない一対のガイドレールに案内されて昇降する。一対のかご下プーリ4A,4Bは、乗りかご3の下側に配置されている。釣り合い錘5は、乗りかご3との質量バランスをとって巻上機1の負荷を軽減するための錘である。釣り合い錘5は、巻上機1によって主ロープ2を巻き上げた場合に、乗りかご3と反対方向に昇降する。プーリ6は、釣り合い錘5の上部に配置され、釣り合い錘5と一体に昇降する。
【0012】
図2は、実施形態に係る乗りかごの外観を示す斜視図である。
本実施形態においては、乗りかご3に相対するエレベーター利用者の視線を基準として、前後・上下・左右の各方向を定義する。この場合、エレベーター利用者から見て手前側が前方向、奥側が後方、上側が上方、下側が下方、左側が左方、右側が右方となる。
図2に示すように、乗りかご3は、かご枠7と、かご枠7の内側に配置されたかご室8とを備えている。かご室8は、荷物や人を乗せるための収容空間を内部に有する。かご室8は、かご床12と、側板13と、天井15とによって形成されている。かご床12と天井15は、上下方向で上記収容空間を介して対向する状態に配置されている。側板13は、かごドア18の部分を除いて、上記収容空間の四方を取り囲むように配置されている。
【0013】
かご枠7は、前後方向から見て縦長の長方形に形成されている。かご枠7は、かご室8を取り囲むように配置されている。かご枠7は、かご室8の上部に配置された上枠9と、かご室8の下部に配置された下枠10(図3参照)と、かご室8の左右の側部に配置された一対の縦枠11A,11Bと、を有している。上枠9は、左右方向に長く延在する部材である。上枠9は、一対の縦枠11A,11Bの上端部間に水平に架け渡されている。上枠9の長手方向の一端部は縦枠11Aの上端部に固定され、上枠9の長手方向の他端部は縦枠11Bの上端部に固定されている。これにより、一対の縦枠11A,11Bの上端部は、上枠9によって連結されている。
【0014】
一対の縦枠11A,11Bは、左右方向で互いに対向する状態に配置されている。各々の縦枠11A,11Bは、上下方向に長く延在する部材である。各々の縦枠11A,11Bは、上述した一対のガイドレールによって支持される。ガイドレールは、昇降路50の壁に鉛直に据え付けられる長尺状の部材である。
【0015】
一方、下枠10は、かご室8を介して上枠9と対向する位置に配置されている。下枠10は、左右方向に長く延在する部材である。下枠10は、一対の縦枠11A,11Bの下端部間に水平に架け渡されている。下枠10の長手方向の一端部は縦枠11Aの下端部に固定され、下枠10の長手方向の他端部は縦枠11Bの下端部に固定されている。これにより、一対の縦枠11A,11Bの下端部は、下枠10によって連結されている。
【0016】
下枠10は、図3に示すように、一対の床支持梁14A,14Bを介してかご床12を支持している。一対の床支持梁14A,14Bは、かご床12を支持する梁である。床支持梁14Aの長手方向の両端部には、それぞれ防振部20が設けられ、床支持梁14Bの長手方向の両端部にも、それぞれ防振部20が設けられている。防振部20は、かご床12を含むかご室8の振動を抑制する部分である。かご床12は、複数(本形態例では4つ)の防振部20を介して、一対の床支持梁14A,14Bにより支持されている。
【0017】
防振部20は、図4に示すように2つのコイルバネ20Aと、かご床12の下面に取り付けられた板状のバネ台座20Bと、床支持梁14Aの底面に取り付けられた板状のバネ台座(図示せず)とによって構成されている。コイルバネ20Aは、防振用の弾性部材である。バネ台座20Bには、コイルバネ20Aの端部を受け入れるバネ受け孔(不図示)が設けられている。この点は、床支持梁14Aの底面に取り付けられたバネ台座についても同様である。なお、防振部20は、コイルバネを用いた構成に限らず、たとえばゴムを用いた構成であってもよい。
【0018】
床支持梁14Aは、下枠10の長手方向の一端部(右端部)に配置され、床支持梁14Bは、下枠10の長手方向の他端(左端部)に配置されている。また、各々の床支持梁14A,14Bは、下枠10の上に載せた状態で、図示しないボルトにより下枠10の上面に固定されている。各々の床支持梁14A,14Bは、下枠10と直角をなす向きで水平に配置されている。具体的には、下枠10は左右方向と平行に配置され、各々の床支持梁14A,14Bは、前後方向と平行に配置されている。
【0019】
各々の床支持梁14A,14Bは、前後方向に長く延在する部材であって、閉断面構造を有する。閉断面構造とは、断面が閉じた構造をいい、より具体的には、角形や円筒の断面構造をいう。本実施形態においては、各々の床支持梁14A,14Bが角形の断面構造を有している。このように、閉断面構造を有する床支持梁14A,14Bを用いることにより、各々の床支持梁14A,14Bを高剛性化することができる。
【0020】
かご室8の前部には、かごドア18が設置されている。かごドア18は、左右方向に開閉可能に設けられている。かご室8の下側には、図3に示すように、一対のかご下プーリ4A,4Bが配置されている。かご下プーリ4A,4Bは、縦枠11A,11Bよりも前側に配置されている。一方のかご下プーリ4Aは床支持梁14Aに取り付けられ、他方のかご下プーリ4Bは床支持梁14Bに取り付けられている。以下、かご下プーリ4A,4Bの取り付け構造について詳しく説明する。なお、床支持梁14Aに対するかご下プーリ4Aの取り付け構造と、床支持梁14Bに対するかご下プーリ4Bの取り付け構造は、互いに共通である。このため、本明細書においては、説明の重複を避けるために、床支持梁14Aに対するかご下プーリ4Aの取り付け構造についてのみ説明する。
【0021】
図3および図5に示すように、かご下プーリ4Aは、一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bによって支持されている。一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bは、プーリ支持部材に相当する。一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bは、前後方向でかご下プーリ4Aを介して互いに対向する状態に配置されている。プーリ支持ブラケット16Aの上端部は、図示しないボルトを用いて床支持梁14Aの下面に固定されている。同様に、プーリ支持ブラケット16Bの上端部は、図示しないボルトを用いて床支持梁14Aの下面に固定されている。一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bは、かご下プーリ4Aの回転軸を回転自在に支持している。また、かご下プーリ4Aは、かご床12の下方に配置され、床支持梁14Aは、上下方向でかご下プーリ4Aとかご床12との間に配置されている。
【0022】
一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bの下端部には、ロープガイド17が取り付けられている。ロープガイド17は、左右方向に長いレール状の部材である。ロープガイド17の長手方向の一端部は、かご下プーリ4Aを支持する一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bの下端部にボルト19(図5参照)によって固定されている。また、ロープガイド17の長手方向の他端部は、かご下プーリ4Bを支持する一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bの下端部にボルト(図示せず)によって固定されている。ロープガイド17は、かご下プーリ4A,4Bに巻き掛けられる主ロープ2に異物が巻き込まれないように、主ロープ2を保護する役目を果たす。
【0023】
ここで、本実施形態に係る乗りかご3は、縦枠11Aと床支持梁14Aとを連結する連結部材21、および、縦枠11Bと床支持梁14Bとを連結する連結部材(不図示)を備えている。連結部材21の取付構造と連結部材(図示せず)の取り付け構造は、互いに共通である。このため、本明細書においては、説明の重複を避けるために、連結部材21の取り付け構造についてのみ説明する。
【0024】
連結部材21は、図5に示すように、紙面の奥行き方向に相当する左右方向から見て、かご下プーリ4Aの直上に配置されている。連結部材21は、金属製の板を曲げ加工して得られる一体構造物である。連結部材21は、図5および図6に示すように、第1の板部21Aと、第2の板部21Bと、第3の板部21Cと、第4の板部21Dとを一体に有する。第1の板部21Aは、4つの板部21A~21Dのなかで最も面積の大きい板部である。第1の板部21Aは、前後方向と上下方向とに平行な仮想平面と平行に配置されている。第2の板部21Bおよび第3の板部21Cは、第1の板部21Aの相対応する2つの側辺から、それぞれ直角に折れ曲がった状態で形成されている。また、第2の板部21Bおよび第3の板部21Cは、前後方向で互いに対向する状態に配置されている。第4の板部21Dは、第1の板部21Aの下辺から、第2の板部21Bおよび第3の板部21Cと同じ方向に直角に折れ曲がった状態で形成されている。
【0025】
上記構成からなる連結部材21は、中間部材22を介して床支持梁14Aに固定されている。中間部材22は、図7に示すように、ハット形に形成されている。図7では、中間部材22の構造を示すために、連結部材21の表記を省略している。
中間部材22は、金属製の板を曲げ加工して得られる一体構造物である。中間部材22は、一対の固定部22Aと、接続部22Bとを一体に有する。一対の固定部22Aと接続部22Bとの間には所定の段差が設けられている。一対の固定部22Aは、それぞれボルト23によって床支持梁14Aの一側面(右側面)に固定されている。接続部22Bは、床支持梁14Aの一側面から右方向に突出する状態で配置されている。接続部22Bには、図示しない2つのネジ孔が設けられ、各々のネジ孔にボルト24が取り付けられている。ボルト24は、連結部材21の第1の板部21Aと中間部材22の接続部22Bとを締結するためのボルトである。一方、連結部材21の第1の板部21Aには、上記2つのネジ孔に対応する2つのボルト挿入孔(不図示)が設けられている。そして、連結部材21の第1の板部21Aは、中間部材22の接続部22Bに2つのボルト24によって固定されている。これにより、連結部材21は、中間部材22を介して床支持梁14Aに固定されている。
【0026】
また、図6に示すように、連結部材21の第2の板部21Bは、2つのボルト25によって縦枠11Aの前側の面に固定されている。各々のボルト25の雄ネジには、ナット29(図5参照)が装着されている。これにより、連結部材21と縦枠11Aは、ボルト25とナット29の締め付け力によって相互に固定されている。一方、連結部材21の第4の板部21Dは、2つのボルト26によって一対のプーリ支持ブラケット16A,16bの上端部に固定されている。一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bの一部は、床支持梁14Aよりも右方向に突出して配置され、この突出部分に第4の板部21Dを載せた状態で各々のボルト26が締め付けられている。これにより、連結部材21の一部は、プーリ支持部材である一対のプーリ支持ブラケット16A,16bに固定されている。
【0027】
連結部材21には、図5および図6に示すように、異物混入防止カバー27が取り付けられている。異物混入防止カバー27は、主にかご下プーリ4Aへの異物の混入を防止するために設けられたカバーである。異物混入防止カバー27は、2つのボルト28によって連結部材21の第1の板部21Aに固定されている。異物混入防止カバー27は、第1の板部21Aの外面から斜め上方に突き出す遮蔽部27Aを一体に有する。遮蔽部27Aは、連結部材21よりも上方の位置から鉛直下方を見たときに、かご下プーリ4Aの外周部を遮蔽する状態に配置される。なお、異物混入防止カバー27は、縦枠11Aおよび床支持梁14Aが配置される右側の連結部材21だけでなく、縦枠11Bおよび床支持梁14Bが配置される左側の連結部材(図示せず)にも取り付けられる。
【0028】
また、床支持梁14Aと連結部材21とは、図5に示すように、床支持梁14Aの長手方向に相当する前後方向で一対の振れ止め部31により挟み込まれている。振れ止め部31は、図6および図7に示すように、弾性体としてのゴム板31Aと、ゴム板31Aを支持する金属製の支持板31Bとを備えている。ゴム板31AはL字形に形成され、支持板31BもL字形に形成されている。そして、ゴム板31Aと支持板31Bは、背中合わせの状態で結合されている。ゴム板31Aは、連結部材21の第3の板部21Cに押し付けられている。支持板31Bは、かご床12の側面に2つのボルト32によって固定されている。なお、縦枠11Aをあいだに挟んで連結部材21と反対側に配置された振れ止め部31では、ゴム板31Aが縦枠11Aの後ろ側の面に押し付けられている。
【0029】
図8は、比較形態に係る乗りかごを示す模式図である。
図8に示すように、比較形態に係る乗りかご100は、かご床101と、縦枠102と、床支持梁103と、タイロッド104と、を備えている。比較形態に係る乗りかご100においては、床支持梁103の前側に下向きの荷重Pが加わった場合に、床支持梁103に角度θの傾きが生じる。このように床支持梁103が傾くと、床支持梁103によって支持されるかご床101にも傾きが生じる。このため、比較形態に係る乗りかご100では、床支持梁103の前端部にタイロッド104の下端部に取り付け、このタイロッド104で床支持梁103の前側を引き上げることにより、床支持梁103およびかご床101の傾きを解消(調整)している。下向きの荷重Pは、乗りかご100を構成する部品全体の質量のバランスが前側と後ろ側で不均一になることによって生じる偏荷重である。なお、図9においては、一例として、床支持梁103の前側に加わる荷重が後ろ側に加わる荷重よりも大きい場合に生じる偏荷重Pを示している。
【0030】
これに対し、本実施形態に係る乗りかご3においては、図9に示すように、縦枠1111Aと床支持梁14Aとを連結部材21によって連結している。また、図5に示すように、床支持梁14Aには一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bが固定されている。一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bは、縦枠11Aよりも前側に配置されている。したがって、図1に示すように、一対のかご下プーリ4A,4Bに主ロープ2を巻き掛けて乗りかご3を吊り上げた場合は、乗りかご3の自重に応じた上向きの力が、主ロープ2によってかご下プーリ4A,4Bと一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bとに加わる。また、上述した上向きの力は、一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bを介して床支持梁14A,14Bにも加わる。このため、乗りかご3の右側では、図9に示すように、床支持梁14Aの前側に加わる下向きの荷重(偏荷重)Pに対して、これに対抗する上向きの力Puが床支持梁14Aに加わる。したがって、床支持梁14Aおよびかご床12の傾きを解消することができる。同様に、乗りかご3の左側では、床支持梁14Bの前側に加わる下向きの荷重(偏荷重)に対して、これに対抗する上向きの力が床支持梁14Bに加わる。このため、床支持梁14Bおよびかご床12の傾きを解消することができる。
【0031】
また、乗りかご3の右側では、縦枠11Aと床支持梁14Aとを連結部材21によって連結している。このため、連結部材21および縦枠11Aは、一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bおよび床支持梁14A,14Bに加わる上向きの力を受ける。具体的には、床支持梁14Aに加わる上向きの力が、中間部材22および連結部材21を介して縦枠11Aに伝わる。このため、連結部材21の第2の板部21Bは、縦枠11Aの前側の面に押し付けられる。また、昇降路50における縦枠11Aの位置および姿勢は、図示しないガイドレールによって一定に保持されている。このため、上述した上向きの力を受けて連結部材21が縦枠11Aに押し付けられても、縦枠11Aの位置および姿勢は変わらない。つまり、上向きの力を受ける連結部材21を縦枠11aによって支持する構成になっている。したがって、床支持梁14Aの姿勢を縦枠11Aおよび連結部材21によって水平に保持することができる。また、乗りかご3の左側でも、乗りかご3の右側と同様に、縦枠11Bと床支持梁14Bとを連結部材(不図示)によって連結している。このため、床支持梁14Bの姿勢を縦枠11Bおよび連結部材によって水平に保持することができる。
【0032】
<実施形態の効果>
本実施形態に係る乗りかご3とこれを備えるエレベーターによれば、次のような効果が得られる。
【0033】
本実施形態においては、かご床12を支持する床支持梁14A,14Bに一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bを固定するとともに、縦枠11A,11Bと床支持梁14A,14Bとを、それぞれ連結部材21によって連結している。このため、かご下プーリ4A,4Bに巻き掛けられる主ロープ2によって一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bに加わる上向きの力を利用して、床支持梁14A,14Bの傾きを解消することができる。これにより、上記比較形態に係る乗りかご100で必要とされるタイロッド104を設けなくても、かご床12の傾きを抑制することができる。つまり、乗りかごのタイロッドレス化を実現することができる。
【0034】
また、本実施形態において、連結部材21は、かご下プーリ4A,4Bの直上に配置されている。このため、かご下プーリ4A,4Bに巻き掛けられる主ロープ2によって一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bに加わる上向きの力を、効率よく連結部材21に伝えることができる。
【0035】
また、本実施形態においては、連結部材21に異物混入防止カバー27が取り付けられている。このため、たとえば、連結部材21よりも上方の位置から異物が落下した場合に、この異物は異物混入防止カバー27の遮蔽部27Aに当たってそこに留まるか、そこで跳ね返ってかご下プーリ4A,4Bの脇に逸れる。このため、かご下プーリ4A,4Bへの異物の混入を防止することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、閉断面構造を有する床支持梁14A,14Bを用いることにより、各々の床支持梁14A,14Bを高剛性化している。このため、床支持梁14A,14Bの撓みを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、床支持梁14Aの一側面に中間部材22を固定し、この中間部材22を介して連結部材21を床支持梁14Aに固定している。このため、縦枠11Aに対する中間部材22の固定位置と、床支持梁14Aに対する連結部材21の固定位置との関係に合わせて中間部材22の突出寸法(固定部22Aと接続部22Bとの段差)を設定することにより、連結部材21の構造を複雑にしなくても、縦枠11Aと床支持梁14Aとを連結部材21によって連結することができる。これにより、連結部材21の第1の板部21Aを平板構造とし、連結部材21全体の剛性を高めることができる。このような効果は、床支持梁14Bの一側面に中間部材22を固定し、この中間部材22を介して連結部材を床支持梁14Bに固定した場合にも得られる。
【0038】
また、本実施形態においては、連結部材21の一部である第4の板部21Dが、一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bに固定されている。これにより、一対のプーリ支持ブラケット16A,16Bに加わる上向きの力を、床支持梁14A,14Bと連結部材21の両方に負担させることができる。このため、上記上向きに力によって床支持梁14A,14Bに加わる荷重を軽減することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、床支持梁14Aの長手方向で一対の振れ止め部31により縦枠11Aと連結部材21とを挟み込んでいる。これにより、乗りかご3の昇降時における連結部材21の振れを抑制することができる。この効果は、床支持梁14Bの長手方向で一対の振れ止め部31により縦枠11Bと連結部材とを挟み込んだ場合にも得られる。
【0040】
また、本実施形態においては、縦枠11A,11Bよりも前側にかご下プーリ4A,4Bを配置している。このため、縦枠11A,11Bの前側に下向きの荷重(偏荷重)が加わる場合に、この荷重に対抗する上向きの力を縦枠11A,11Bの前側に発生させることができる。
【0041】
<変形例等>
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例を含む。たとえば、上述した実施形態では、本発明の内容を理解しやすいように詳細に説明しているが、本発明は、上述した実施形態で説明したすべての構成を必ずしも備えるものに限定されない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、これを削除し、または他の構成を追加し、あるいは他の構成に置換することも可能である。
【0042】
たとえば、上記実施形態においては、縦枠11A,11bよりも前側にかご下プーリ4A,4Bを配置しているが、これに限らない。たとえば図示はしないが、縦枠11A,11bよりも後ろ側にかご下プーリ4A,4Bを配置してよい。縦枠11A,11bよりも後ろ側にかご下プーリ4A,4Bを配置する場合は、縦枠11A,11Bの後ろ側に下向きの荷重(偏荷重)が加わる場合に、この荷重に対抗する上向きの力を縦枠11A,11Bの後ろ側に発生させることができる。
【0043】
また、上記実施形態においては、中間部材22を介して床支持梁14A,14Bに連結部材21を固定しているが、これに限らず、たとえば、連結部材21の第1の板部21Aを段付き構造とすることで、床支持梁14A,14Bに直接、連結部材21を固定することも可能である。
【符号の説明】
【0044】
2…主ロープ、3…乗りかご、4A,4B…かご下プーリ、7…かご枠、10…下枠、11A,11B…縦枠、12…かご床、14A,14B…床支持梁、16A,16B…プーリ支持ブラケット(プーリ支持部材)、21…連結部材、22…中間部材、27…異物混入防止カバー、31…振れ止め部、50…昇降路
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