(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】工作機械、工作機械システム、プログラム、工作機械の制御方法、及び、プログラムの生成方法
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20240802BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20240802BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240802BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
G05B19/18 T
B23Q15/00 A
B23Q11/10 E
B23Q11/00 S
(21)【出願番号】P 2024513235
(86)(22)【出願日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2023031014
【審査請求日】2024-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【氏名又は名称】森 昌康
(74)【代理人】
【識別番号】100175628
【氏名又は名称】仁野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐生
(72)【発明者】
【氏名】松井 純
(72)【発明者】
【氏名】松澤 洋明
(72)【発明者】
【氏名】角田 康晴
(72)【発明者】
【氏名】山口 啓太
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特許第7303958(JP,B1)
【文献】特開平07-251347(JP,A)
【文献】特開2005-138259(JP,A)
【文献】特開2023-092934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18
B23Q 15/00
B23Q 11/00-11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク形状を表すデータと製品形状を表すデータとから得られる前記ワーク形状から前記製品形状を除いた被切削部分の少なくとも一部の体積を、少なくとも1つの工具によって切削するために要する加工時間で除した除去率を含む切削情報を少なくとも有する付加情報を、工作機械によるワークと前記少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードに加えた加工プログラムを前記工作機械のプロセッサに読み取らせ、
前記工作機械が前記少なくとも一方の操作を実行する際に、前記工作機械の複数の機器のうち前記ワークを操作する機器と前記少なくとも1つの工具を操作する機器以外の少なくとも1つの周辺機器を前記切削情報に基づいて動作させるように前記工作機械を制御する、
ことを含む、工作機械の制御方法。
【請求項2】
前記付加情報は、前記切削情報に基づいて前記少なくとも1つの周辺機器を制御する処理を前記工作機械に実行させる制御コードをさらに含み、
前記加工プログラムを前記工作機械に読み取らせることは、前記制御コードに応じて前記切削情報を前記工作機械に読み取らせることを含み、
前記工作機械を制御することは、
前記工作機械の記憶装置に記憶された前記少なくとも1つの周辺機器の少なくとも1つの制御方法のうち、前記付加情報に対応する被決定制御方法を前記プロセッサに決定させることと、
前記少なくとも1つの周辺機器を前記被決定制御方法に基づいて動作させることと、
を含む、
請求項1に記載の工作機械の制御方法。
【請求項3】
前記付加情報は、前記少なくとも
一方の操作を行う際の加工条件を表す加工情報をさらに含み、
前記工作機械を制御することは、前記加工情報と前記切削情報とに基づいて前記被決定制御方法を前記プロセッサに決定させることを含む、
請求項2に記載の工作機械の制御方法。
【請求項4】
前記工作機械を制御することは、
前記工作機械の記憶装置に記憶された、前記除去率の複数の範囲にそれぞれ対応付 けられた前記少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、前記切削情報の前 記除去率に対応する被決定機器制御方法を前記プロセッサに決定させることと、
前記少なくとも1つの周辺機器を前記被決定機器制御方法に基づいて動作させるこ とと、
を含む、
請求項1に記載の工作機械の制御方法。
【請求項5】
前記工作機械を制御することは、
前記工作機械の記憶装置に記憶された、前記除去率の複数の範囲にそれぞれ対応付 けられた前記少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、前記切削情報の前 記除去率に対応する被決定機器制御方法を前記プロセッサに決定させることと、
前記少なくとも1つの周辺機器を前記被決定機器制御方法に基づいて動作させるこ とと、
を含む、
請求項2に記載の工作機械の制御方法。
【請求項6】
前記工作機械を制御することは、
前記工作機械の記憶装置に記憶された、前記除去率の複数の範囲にそれぞれ対応付 けられた前記少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、前記切削情報の前 記除去率に対応する被決定機器制御方法を前記プロセッサに決定させることと、
前記少なくとも1つの周辺機器を前記被決定機器制御方法に基づいて動作させるこ とと、
を含む、
請求項3に記載の工作機械の制御方法。
【請求項7】
前記
工作機械の記憶装置は、
前記除去率の複数の範囲と、前記複数の範囲にそれぞれ対応する複数の省エネルギーレベルとの第1の対応関係を表す情報と、
前記複数の省エネルギーレベルと、前記少なくとも1つの周辺機器
の複数の制御方法との第2の対応関係を表す情報と、
を記憶し、
前記複数の制御方法は、前記省エネルギーレベルが大きくなればなるほど、前記少なくとも1つの周辺機器の出力が減少されるように規定される、
請求項1から6のいずれかに記載の工作機械の制御方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの周辺機器は、前記工作機械中の、クーラント供給装置と、チップコンベアと、ミストコレクタのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1から6のいずれかに記載の工作機械の制御方法。
【請求項9】
ワーク形状を表すデータと製品形状を表すデータとから得られる前記ワーク形状から前記製品形状を除いた被切削部分の少なくとも一部の体積を、少なくとも1つの工具によって切削するために要する加工時間で除した除去率を含む切削情報を、前記ワーク形状を表すデータと前記製品形状を表すデータとからコンピュータに算出させることと、
ワークを加工して前記製品形状を得るための、工作機械による前記ワークと前記少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードに、前記切削情報と、前記切削情報に基づいて前記工作機械の複数の機器のうち前記ワークを操作する機器と前記少なくとも1つの工具を操作する機器以外の少なくとも1つの周辺機器を制御する処理を前記工作機械に実行させるための制御コードとを少なくとも有する付加情報が加えられた加工プログラムを前記コンピュータに生成させることと、
を含む、プログラムの生成方法。
【請求項10】
前記付加情報は、前記少なくとも一方の操作を行う際の加工条件を表す加工情報をさらに含み、
前記制御コードは、前記加工情報と前記切削情報とに基づいて前記少なくとも1つの周辺機器を制御する処理を前記工作機械に実行させるコードである、
請求項9に記載のプログラムの生成方法。
【請求項11】
前記制御コードは、前記工作機械の記憶装置に記憶された、前記
除去率の複数の範囲にそれぞれ対応付けられた前記少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、前記切削情報の前記除去率に対応する被決定機器制御方法を前記工作機械に決定させ、前記少なくとも1つの周辺機器を被決定制御方法に基づいて動作させる処理を前記工作機械に実行させるコードである、
請求項9に記載のプログラムの生成方法。
【請求項12】
前記制御コードは、前記工作機械の記憶装置に記憶された、前記除去率の複数の範囲にそれぞれ対応付けられた前記少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、前記切削情報の前記除去率に対応する被決定機器制御方法を前記工作機械に決定させ、前記少なくとも1つの周辺機器を被決定制御方法に基づいて動作させる処理を前記工作機械に実行させるコードである、
請求項10に記載のプログラムの生成方法。
【請求項13】
コンピュータによる実行時に、請求項9から12のいずれかに記載のプログラムの生成方法の処理を前記コンピュータに実行させる指示を備えるプログラム。
【請求項14】
請求項1から6のいずれかの制御方法を実行する手段を備える工作機械。
【請求項15】
請求項9から12のいずれかに記載のプログラムの生成方法を実行する手段を備えるコンピュータと、
請求項14に記載の工作機械と、
を備える工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、工作機械システム、プログラム、工作機械の制御方法、及び、プログラムの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、数値制御装置が加工プログラムから切削体積を算出し、算出した切削体積に基づいてクーラントポンプなどの機器を制御する技術を記述している。特許文献2は、シミュレーションによって予測した切削量が閾値を超えるブロックの直前に切粉排出用指令コードを挿入する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-266185号公報
【文献】特開2017-199256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術をEIA/ISOフォーマットで記述されている加工プログラムに適用した場合、加工プログラムは工具の移動量のみを記述しているため正確な切削体積は算出されない。特許文献2は、シミュレーションによって予測した切削量を利用するため、より精度の高い切削量に基づいているが、異なる工作機械に同じ処理を実行させる切粉排出用指令コードを出力しているため、異なる工作機械に対しても単一の切粉排出方法による制御しか行うことができない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1態様に係る工作機械の制御方法は、工作機械によるワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードとワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を少なくとも有する付加情報を含む加工プログラムを工作機械に読み取らせ、工作機械が少なくとも一方の操作を実行する際に、工作機械の複数の機器のうちワークを操作する機器と少なくとも1つの工具を操作する機器以外の少なくとも1つの周辺機器を切削情報に基づいて動作させるように工作機械を制御することを含む。
【0006】
本開示の第2態様によれば、第1態様による制御方法では、付加情報は、切削情報に基づいて少なくとも1つの周辺機器を制御する処理を工作機械に実行させる制御コードをさらに含む。加工プログラムを工作機械に読み取らせることは、制御コードに応じて切削情報を工作機械に読み取らせることを含む。工作機械を制御することは、工作機械の記憶装置に記憶された少なくとも1つの周辺機器の少なくとも1つの制御方法のうち、付加情報に対応する被決定制御方法をプロセッサに決定させることと、少なくとも1つの周辺機器を被決定制御方法に基づいて動作させることと、を含む。
【0007】
本開示の第3態様によれば、第2態様による制御方法では、付加情報は、少なくとも1つの操作を行う際の加工条件を表す加工情報をさらに含む。工作機械を制御することは、加工情報と切削情報とに基づいて被決定制御方法をプロセッサに決定させることを含む。加工条件は、切粉の飛び散り度合いや切粉の重さなど、切粉の排出しやすさやクーラント中の切粉の濾しやすさに関係する条件であることが好ましい。
【0008】
本開示の第4態様によれば、第1態様から第3態様のいずれかによる制御方法では、切削情報は、被切削部分の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータを含む。工作機械を制御することは、工作機械の記憶装置に記憶された、該パラメータの複数の範囲にそれぞれ対応付けられた少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、切削情報の該パラメータに対応する被決定機器制御方法を工作機械のプロセッサに決定させることと、少なくとも1つの周辺機器を被決定制御方法に基づいて動作させることと、を含む。
【0009】
本開示の第5態様によれば、第1態様から第4態様のいずれかによる制御方法では、パラメータは、被切削部分の少なくとも一部の体積を少なくとも1つの工具によって切削するために要する加工時間で除した除去率を含む。
【0010】
本開示の第6態様によれば、第5態様による制御方法では、記憶装置は、除去率の複数の範囲と、該複数の範囲にそれぞれ対応する複数の省エネルギーレベルとの第1の対応関係を表す情報と、複数の省エネルギーレベルと、少なくとも1つの周辺機器の制御方法との第2の対応関係を表す情報と、を記憶する。複数の制御方法は、省エネルギーレベルが大きくなればなるほど、少なくとも1つの周辺機器の出力が減少されるように規定される。複数の省エネルギーレベルは、除去率が小さくなればなるほど、大きくなるように規定されることが好ましい。
【0011】
本開示の第7態様によれば、第1態様から第6態様のいずれかの制御方法では、少なくとも1つの周辺機器は、工作機械中の、クーラント供給装置と、チップコンベアと、ミストコレクタのうちの少なくとも1つを含む。
【0012】
本開示の第8態様に係るプログラムの生成方法は、ワーク形状と製品形状とに基づいてワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報をコンピュータに算出させることと、ワークを加工して製品形状を得るための、工作機械によるワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードに、切削情報を少なくとも有する付加情報が加えられた加工プログラムをコンピュータに生成させることと、を含む。
【0013】
本開示の第9態様によれば、第8態様による生成方法では、付加情報は、切削情報に基づいて工作機械の複数の機器のうちワークを操作する機器と少なくとも1つの工具を操作する機器以外の少なくとも1つの周辺機器を制御する処理を工作機械に実行させる制御コードをさらに含む。
【0014】
本開示の第10態様によれば、第9態様による生成方法では、付加情報は、少なくとも一方の操作を行う際の加工条件を表す加工情報をさらに含む。制御コードは、加工情報と切削情報とに基づいて少なくとも1つの周辺機器を制御する処理を工作機械に実行させるコードである。加工条件は、切粉の飛び散り度合いや切粉の重さなど、切粉の排出しやすさやクーラント中の切粉の濾しやすさに関係する条件であることが好ましい。
【0015】
本開示の第11態様によれば、第8態様から第10態様のいずれかによる生成方法では、切削情報は、被切削部分の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータを含む。制御コードは、工作機械の記憶装置に記憶された、該パラメータの複数の範囲にそれぞれ対応付けられた少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、切削情報のパラメータに対応する被決定機器制御方法を工作機械に決定させ、少なくとも1つの周辺機器を被決定制御方法に基づいて動作させる処理を工作機械に実行させるコードである。
【0016】
本開示の第12態様によれば、第8態様から第11態様のいずれかによる生成方法では、切削情報は、被切削部分の少なくとも一部の体積を、少なくとも一方の操作によって切削するために要する加工時間で除した除去率を含む。別の言い方をすれば、第11態様におけるパラメータは、被切削部分の少なくとも一部の体積を、少なくとも1つの工具によって切削するために要する加工時間で除した除去率を含む。
【0017】
本開示の第13態様によれば、第8態様から第12態様のいずれかによる生成方法では、加工プログラムは、EIA/ISOフォーマットで記述されている。
【0018】
本開示の第14態様に係るプログラムは、第8態様から第13態様のいずれかによる生成方法の処理をコンピュータに実行させる指示を備えるプログラムである。本開示の第14態様に係るコンピュータ読取可能媒体は、第8態様から第13態様のいずれかによる生成方法の処理をコンピュータに実行させる指示を備えるコンピュータ読取可能媒体である。具体的には、コンピュータ読取可能媒体は、ワーク形状と製品形状とに基づいてワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を算出させることと、ワークを加工して製品形状を得るための、工作機械によるワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードに、切削情報を少なくとも有する付加情報が加えられた加工プログラムを生成させることとを含む処理をコンピュータに実行させる指示を備える。本開示の第14態様に係るコンピュータは、第8態様から第13態様のいずれかによる生成方法を実行する手段を備える。具体的には、コンピュータは、ワーク形状と製品形状とを記憶する記憶装置と、ワーク形状と製品形状とに基づいてワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を算出し、ワークを加工して製品形状を得るための、工作機械によるワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードに、切削情報を少なくとも有する付加情報が加えられた加工プログラムを生成させるように構成されたプロセッサとを備える。
【0019】
本開示の第15態様に係る工作機械は、第1態様から第7態様のいずれかの方法を実行する手段を備える。具体的には、工作機械は、加工プログラムを入力するインタフェースと、ワークを操作する第1機器と、少なくとも1つの工具を操作する第2機器と、ワークを操作する機器と少なくとも1つの工具を操作する機器以外の少なくとも1つの周辺機器と、加工プログラムに基づいて第1機器と第2機器とを制御するように構成されるプロセッサとを備え、プロセッサは、加工プログラムからワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードとワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を少なくとも有する付加情報とを読み取り、工作機械が少なくとも一方の操作を実行する際に、切削情報に基づいて動作させるように少なくとも1つの周辺機器を制御するように構成される。インタフェースは、無線・有線LAN、Bluetooth(登録商標)やNear Field Communicationなどの近距離無線通信、USB、SDインタフェースなどの外部記憶装置とのインタフェースなど、工作機械外部とデータのやり取りが可能な全てのインタフェースを含む。
【0020】
本開示の第16態様に係る工作機械システムは、第8態様から第13態様のいずれかによる生成方法を実行する手段を備えるコンピュータと、第15態様に係る工作機械を備える。具体的には、工作機械システムは、コンピュータと工作機械を備える。工作機械は、加工プログラムを入力するインタフェースと、ワークを操作する第1機器と、少なくとも1つの工具を操作する第2機器と、ワークを操作する機器と少なくとも1つの工具を操作する機器以外の少なくとも1つの周辺機器と、加工プログラムに基づいて第1機器と第2機器とを制御するように構成されるプロセッサとを備え、プロセッサは、加工プログラムからワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードとワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を少なくとも有する付加情報とを読み取り、工作機械が少なくとも一方の操作を実行する際に、切削情報に基づいて動作させるように少なくとも1つの周辺機器を制御するように構成される。コンピュータは、ワーク形状と製品形状とを記憶する記憶装置と、ワーク形状と製品形状とに基づいてワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を算出し、ワークを加工して製品形状を得るための、工作機械によるワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードに、切削情報を少なくとも有する付加情報が加えられた加工プログラムを生成させるように構成される。
【0021】
第14態様に係るプログラム、コンピュータ読取可能媒体、及び、コンピュータ、第1態様に係る工作機械の制御方法、第8態様に係るプログラムの生成方法、第15態様に係る工作機械、並びに、第16態様に係る工作機械システムでは、切削情報を被切削部分から得ているため、特開平7-266185号公報に係る発明に比べて精度の高い切削量に基づいて少なくとも1つの周辺機器を制御することができる。また、特開2017-199256号公報の切粉排出用指令コードに代えて、切削情報を加工プログラムに含めることにより、少なくとも1つの周辺機器の制御を柔軟に行うことができる。
【0022】
第9態様に係る生成方法、第9態様による生成方法の処理をコンピュータに実行させる指示を備える第14態様のプログラム、コンピュータ読取可能媒体、及び、コンピュータ、第2態様に係る制御方法、第2態様に係る制御方法を実行する手段を備える第15態様に係る工作機械、並びに、第2態様に係る制御方法を実行する手段を備える工作機械と第9態様による生成方法を実行する手段を備えるコンピュータとを備える第16態様に係る工作機械システムでは、付加情報は制御情報を含むため、付加情報は参照用の情報ではなく、工作機械によって少なくとも1つの周辺機器の制御に用いられる。
【0023】
第10態様に係る生成方法、第10態様による生成方法の処理をコンピュータに実行させる指示を備える第14態様のプログラム、コンピュータ読取可能媒体、及び、コンピュータ、第3態様に係る制御方法、第3態様に係る制御方法を実行する手段を備える第15態様に係る工作機械、並びに、第3態様に係る制御方法を実行する手段を備える工作機械と第10態様による生成方法を実行する手段を備えるコンピュータとを備える第16態様に係る工作機械システムでは、付加情報が切粉の散り具合や重さなどの切粉の排出しやすさに関係する加工情報を含むため、切粉が排出しにくいときに少なくとも1つの周辺機器の出力を大きくする制御を行いやすくすることができる。
【0024】
第11態様に係る生成方法、第11態様による生成方法の処理をコンピュータに実行させる指示を備える第14態様のプログラム、コンピュータ読取可能媒体、及び、コンピュータ、第4態様に係る制御方法、第4態様に係る制御方法を実行する手段を備える第15態様に係る工作機械、並びに、第4態様に係る制御方法を実行する手段を備える工作機械と第11態様による生成方法を実行する手段を備えるコンピュータとを備える第16態様に係る工作機械システムでは、切削情報(と加工情報)に応じて複数の制御方法を、工作機械の特性に合わせて規定することによって、同じ切削情報(と加工情報)であっても、工作機械ごとに異なる制御方法を設定することが出来る。特開2017-199256号公報の切粉排出用指令コードでは全ての工作機械に対して同じ制御を行うことしかできないため、特開2017-199256号公報に係る発明に比べてより柔軟な少なくとも1つの周辺機器の制御を行うことができる。
【0025】
第12態様に係る生成方法、第12態様による生成方法の処理をコンピュータに実行させる指示を備える第14態様のプログラム、コンピュータ読取可能媒体、及び、コンピュータ、第5態様に係る制御方法、第5態様に係る制御方法を実行する手段を備える第15態様に係る工作機械、並びに、第5態様に係る制御方法を実行する手段を備える工作機械と第12態様による生成方法を実行する手段を備えるコンピュータとを備える第16態様に係る工作機械システムでは、切削情報が除去率によって表されるため、単位時間あたりの切削量が多いときに少なくとも1つの周辺機器の出力を大きくする制御を行いやすくすることができる。
【0026】
第6態様に係る制御方法、第6態様に係る制御方法を実行する手段を備える第15態様に係る工作機械、及び、第6態様に係る制御方法を実行する手段を備える工作機械を備える第16態様に係る工作機械システムでは、除去率に応じて省エネルギーレベルを設定することができる。省エネルギーレベルが大きくなればなるほど、少なくとも1つの周辺機器の出力が減少されるように規定される。これによって、工作機械を利用するユーザは、工作機械がどの程度電力を消費しているか客観的に把握しやすくなる。
【0027】
第7態様に係る制御方法、第7態様に係る制御方法を実行する手段を備える第15態様に係る工作機械、及び、第7態様に係る制御方法を実行する手段を備える工作機械を備える第16態様に係る工作機械システムでは、少なくとも1つの周辺機器は、加工環境を整えるために利用される機器であるため、出力を変更しても加工速度や加工精度に影響しにくい。このため、切削条件に応じて出力を制御することで消費電力を減らしやすい。
【0028】
第13態様に係る生成方法、第13態様による生成方法の処理をコンピュータに実行させる指示を備える第14態様のプログラム、コンピュータ読取可能媒体、及び、コンピュータ、並びに、第13態様による生成方法を実行する手段を備えるコンピュータを備える第16態様に係る工作機械システムでは、汎用的に利用されているEIA/ISOフォーマットで記述された加工プログラムにおいて、少なくとも1つの周辺機器の制御を行いやすくすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本願に開示される技術によれば、例えば、精度の高い切削量に基づき、少なくとも1つの周辺機器の制御を行うとともに、異なる工作機械に対して少なくとも1つの周辺機器の制御を柔軟に行うことができる工作機械、工作機械システム、プログラム、工作機械の制御方法、及び、プログラムの生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、実施形態に係る工作機械の概略構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る工作機械のハードウェア構成のブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る加工プログラムの生成方法の処理の流れを表すフローチャートである。
【
図4】
図4は、加工プログラム生成プログラムによって生成される加工プログラムの一例を示す。
【
図5】
図5は、個別データの詳細を示した図である。
【
図6】
図6は、機器制御情報のうち第1アクチュエータを制御するためのデータを表す。
【
図7】
図7は、機器制御情報のうち第2アクチュエータを制御するためのデータを表す。
【
図8】
図8は、機器制御情報のうち第3アクチュエータを制御するためのデータを表す。
【
図9】
図9は、機器制御情報のうち第4アクチュエータを制御するためのデータを表す。
【
図10】
図10は、機器制御情報のうち加工条件のうちの工具径、工具回転速度に関する制御情報を表す。
【
図11】
図11は、機器制御情報のうち、加工条件のうちの周速に関する制御情報を表す。
【
図12】
図12は、機器制御情報のうち、加工条件のうちの第1アクチュエータに適用する材質情報に関する制御情報を表す。
【
図13】
図13は、機器制御情報のうち、加工条件のうちの第2アクチュエータに適用する材質情報に関する制御情報を表す。
【
図14】
図14は、工作機械の制御方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、図中において同じ符号は、対応するまたは実質的に同一の構成を示している。
<実施形態>
<工作機械1の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る工作機械1を含む工作機械システム100の構成を示すブロック図である。工作機械システム100は、工作機械1と工作機械1にネットワークNWを介して接続されるコンピュータ99とを含む。コンピュータ99は、ハードウェアプロセッサやメモリのような電子回路を含む汎用コンピュータであってもよい。コンピュータ99は、工作機械1で使用される加工プログラムを作成するために用いられる。ネットワークNWは、イントラネットなどの有線ネットワークでも無線LANなどの無線ネットワークでもよい。
【0032】
工作機械1は、数値制御装置2、基台3、ワークWを載せるテーブル4、少なくとも1つの工具Tを装着するように構成される主軸ユニット5、筐体6、配電盤9、クーラント供給装置10、チップコレクタ装置20、及び、ミストコレクタ装置30を備える。工作機械1は、主軸ユニット5を保持し、主軸ユニット5を
図1のX軸、Y軸、Z軸の方向に移動させる主軸移動装置5aを備える。工作機械1は、テーブル4を
図1のX軸、Y軸の方向に移動させるテーブル移動装置4aを備える。工作機械1は、少なくとも1つの工具Tのうち主軸ユニット5に装着する工具Tを交換するための図示しない工具交換装置をさらに備える。筐体6は、主軸移動装置5aとテーブル移動装置4aとの移動範囲から定義される加工領域を覆う。
図1では、説明の便宜上、筐体6の手前側(図のテーブル4、主軸ユニット5よりもX軸の正方向、Y軸の負方向)にある壁を一点鎖線で表示して内部を実線で表示するようにしている。
【0033】
数値制御装置2は、電子制御ユニット(Electric Control Unit)のような電子回路を含み、ハードウェアプロセッサ2Pのような情報処理手段と、メモリ2Mなどの記憶手段とを含む(
図2参照)。ハードウェアプロセッサ2Pは、主軸移動装置5aとテーブル移動装置4aとを制御し、工具Tを回転させるように制御する。数値制御装置2は、タッチパネルディスプレイのようなオペレータに対して情報の入出力が可能なコントロールパネル2CPを含む。コントロールパネル2CPのタッチパネルは、入力インタフェース2IFと呼称されてもよく、コントロールパネル2CPのディスプレイはディスプレイ2DSと呼称されてもよい。なお、数値制御装置2は、タッチパネル以外に、ボタンやダイヤルなどの入力インタフェース2IFをさらに備えてもよい。
【0034】
配電盤9は、数値制御装置2、クーラント供給装置10、チップコレクタ装置20、及び、ミストコレクタ装置30に電気を供給する。工作機械1は、主軸ユニット5の先端に装着された工具Tによって、テーブル4上に配置されたワークWの加工を行う。ここで、工具回転軸ATWに沿う軸をZ軸とし、Z軸に対して垂直で基台3の上面に沿う軸をY軸とし、Y軸とZ軸とに垂直な軸をX軸とする。
【0035】
クーラント供給装置10は、クーラントタンク11、複数のノズル12、複数のクーラント供給路13、第1ポンプ装置15、第2ポンプ装置16、切粉除去フィルタ17、及び、循環回路18を含む。ワークWに噴射されたクーラントを回収するために、基台3は、基台3の中央に設けられたクーラントタンク11に接続する排出口3Eと、排出口3Eにむけて下方に傾斜する複数の傾斜床(raked floor)3Fとを含む。クーラントタンク11は、クーラントを貯留するように構成される。複数のクーラント供給路13は、複数のノズル12とクーラントタンク11とを接続する。複数のノズル12は、工作機械1に取り付けられ、クーラントを噴射するように構成される。第1ポンプ装置15は、クーラントタンク11からクーラントを汲み上げ、複数のクーラント供給路13を通して複数のノズル12に供給するように構成される。クーラントは、複数のノズル12から噴射され、加工中のワークWにかけられ、切粉が除去される。
【0036】
第2ポンプ装置16と、切粉除去フィルタ17は、複数のクーラント供給路13とは異なる循環回路18を介してクーラントタンク11に接続される。第2ポンプ装置16は、クーラントタンク11からクーラントをくみ上げ、循環回路18を通して切粉除去フィルタ17に供給するように構成される。切粉除去フィルタ17は、クーラントに含まれる切粉を取り除く。。
【0037】
チップコレクタ装置20は、排出口3Eに落下したワークWの切粉をチップコンベアによって工作機械1の外部に排出する装置である。当該チップコンベアは、チップコンベア外部に落下しないようにバンク(外壁)を有し、運搬の便宜のためにスクレーパを有することが望ましい。
図1では、チップコレクタ装置20を点線で図示している。ミストコレクタ装置30は、内部にファン装置33やフィルタ34を有する装置本体31と筐体6に設けられ、装置本体31と接続するダクト32とを有し、ファンを回転させてから筐体6内部の霧状となったクーラントや油を吸い出す。
【0038】
図2は、実施形態に係る工作機械1のハードウェア構成のブロック図である。
図2に示されるように、数値制御装置2は、コンピュータの一種であり、ハードウェアプロセッサ2P、メモリ2M、ディスプレイ2DS、入力インタフェース2IF、システムバス2SB、外部I/Oインタフェース2IO、及び、通信インタフェース2CFを含む。システムバス2SBは、一般的なコンピュータと同様にアドレスバス、データバス、及び、コントロールバスを含む。外部I/Oインタフェース2IOは、外部装置(例えば、第1ポンプ装置15、第2ポンプ装置16、チップコレクタ装置20、及び、ファン装置33)と接続される。この外部装置のことを少なくとも1つの周辺機器と呼称してもよい。つまり、少なくとも1つの周辺機器は、第1ポンプ装置15と第2ポンプ装置16とを含むクーラント供給装置10と、チップコレクタ装置20と、ファン装置33とのうちの少なくとも1つを含む。通信インタフェース2CFは、ネットワークCWに接続される。
【0039】
メモリ2Mには、ワークWを加工するための加工プログラム41と機器制御プログラム42と機器制御情報43と個別データ44とがインストールされ、メモリ2Mは、加工プログラム41と機器制御プログラム42と機器制御情報43と個別データ44とを記憶するように構成される。加工プログラム41は、工作機械1によるワークWと少なくとも1つの工具Tとの少なくとも一方の操作を表すプログラムコードと少なくとも1つの周辺機器を制御するための付加情報41aを含む。機器制御プログラム42とは、加工プログラム41のインタプリタを含み、加工プログラム41に記述されている付加情報41aを読み込み、機器制御情報43に格納されている当該付加情報41aに対応する制御信号の値を読み込み、少なくとも1つの周辺機器に対応する制御信号を出力するようにプログラムされている。付加情報41aは、ワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報に基づいて少なくとも1つの周辺機器を制御する処理を工作機械1に実行させる制御コードと切削情報とを少なくとも含む。付加情報41aは、少なくとも1つの操作を行う際の加工条件を表す加工情報をさらに含んでもよい。切削情報と加工情報との詳細は後述する。
【0040】
なお、加工プログラム41に付加情報41aが含まれていない場合、デフォルトの設定値を機器制御情報43から読み込み、デフォルトの設定値に対応する制御信号の値を読み込み、少なくとも1つの周辺機器に対応する制御信号を出力するようにプログラムされている。ハードウェアプロセッサ2Pは、加工プログラム41を実行して主軸ユニット5を制御する。ハードウェアプロセッサ2Pは、機器制御プログラム42を実行して、少なくとも1つの周辺機器を制御する。機器制御プログラム42は、後述する
図13等に示される加工プログラム41の実行処理を、ハードウェアプロセッサ2Pに実行させる指示を備える。個別データ44は、加工プログラム41ごとに加工されるワークWの材質が設定され、加工プログラム41を工作機械1で呼び出して実行する際に利用されるワーク番号WNo.に対応づけられている。個別データ44の詳細は、後述する
図5にて詳細を説明する。なお、後述するように、加工プログラム41ごとに加工されるワークWの材質が付加情報41aに記述される場合、個別データ44は削除されてもよい。
【0041】
第1ポンプ装置15は、第1インバータ15Iと第1モータ15Mと第1ポンプ15Pとを含む。第1インバータ15Iは、外部I/Oインタフェース2IOを介して送信される数値制御装置2からの駆動信号に応じて第1モータ15Mを駆動する。第1インバータ15Iは、数値制御装置2からの駆動信号に応じて第1モータ15Mの回転速度/運転周波数を制御する。第1モータ15Mは、第1ポンプ15Pの斜板を回転させる。第1ポンプ15Pは、クーラントタンク11に接続される。第1ポンプ15Pは、クーラントタンク11からクーラントを吐出し、複数のノズル12にクーラントを供給するように構成される。以降の実施形態では、第1モータ15Mを第1アクチュエータと呼称してもよい。つまり、第1アクチュエータ(第1モータ15M)は、クーラントを工作機械1のノズル12に供給するポンプ(第1ポンプ15P)を駆動するように構成される。配電盤9は、第1インバータ15Iに電気を供給する電源PSを含む。電源PSは、好ましくは交流電源である。
【0042】
第2ポンプ装置16は、第2インバータ16Iと第2モータ16Mと第2ポンプ16Pとを含む。第2インバータ16Iは、外部I/Oインタフェース2IOを介して送信される数値制御装置2からの駆動信号に応じて第2モータ16Mを駆動する。第2インバータ16Iは、数値制御装置2からの駆動信号に応じて第2モータ16Mの回転速度/運転周波数を制御する。第2モータ16Mは、第2ポンプ16Pの斜板を回転させる。第2ポンプ16Pは、クーラントタンク11に接続される。第2ポンプ16Pは、クーラントタンク11からクーラントをくみ上げ、切粉除去フィルタ17にクーラントを供給するように構成される。以降の実施形態では、第2モータ16Mを第2アクチュエータと呼称してもよい。つまり、第2アクチュエータ(第2モータ16M)は、クーラントタンク11に貯留された切粉が含まれたクーラントを切粉除去フィルタ17に供給するポンプ(第2ポンプ16P)を駆動するように構成される。配電盤9の電源PSは、第2インバータ16Iにも電気を供給する。
【0043】
チップコレクタ装置20は、第3インバータ20Iと第3モータ20Mとを含む。第3インバータ20Iは、外部I/Oインタフェース2IOを介して送信される数値制御装置2からの駆動信号に応じて第3モータ20Mを駆動する。第3インバータ20Iは、数値制御装置2からの駆動信号に応じて第3モータ20Mの回転速度/運転周波数を制御する。第3モータ20Mは、図示しない減速機等を介してベルトコンベヤを駆動するように構成される。以降の実施形態では、第3モータ20Mを第3アクチュエータと呼称してもよい。つまり、第3アクチュエータ(第3モータ20M)は、工作機械1のチップコンベアを駆動するように構成される。配電盤9の電源PSは、第3インバータ20Iにも電気を供給する。
【0044】
ミストコレクタ装置30のファン装置33は、第4インバータ33Iと第4モータ33Mとを含む。第4インバータ33Iは、外部I/Oインタフェース2IOを介して送信される数値制御装置2からの駆動信号に応じて第4モータ33Mを駆動する。第4インバータ33Iは、数値制御装置2からの駆動信号に応じて第4モータ33Mの回転速度/運転周波数を制御する。第4モータ33Mは、図示しない減速機等を介してベルトコンベヤを駆動するように構成される。以降の実施形態では、第4モータ33Mを第4アクチュエータと呼称してもよい。つまり、第4アクチュエータ(第4モータ33M)は、工作機械1の機体に溜まったミストを排出するためのファン(ファン装置33)を駆動するように構成される。配電盤9の電源PSは、第4インバータ33Iにも電気を供給する。
【0045】
コンピュータ99は、例えば、加工プログラム41を生成するために使用される。コンピュータ99は、例えば、加工前のワーク形状を表示し、最終的な製品形状をワーク形状の内部に含まれるように作成する加工シミュレーションプログラムがインストールされている。コンピュータ99は、加工シミュレーションの結果に基づいて加工プログラム41を自動で生成するように構成される。コンピュータ99は、ハードウェアプロセッサ2P、メモリ2M、ディスプレイ2DS、入力インタフェース2IF、システムバス2SB、及び、通信インタフェース2CFの夫々と実質的に同等の機能を有する、ハードウェアプロセッサ99P、メモリ99M、ディスプレイ99DS、入力インタフェース99IF、システムバス99SB、及び、通信インタフェース99CFを含む。メモリ2M、メモリ99Mは、それぞれ、記憶装置と呼称されてもよい。コンピュータ99のメモリ99Mには、加工プログラム生成プログラム45と、素材情報46と、形状情報47と、工具情報48と、機械定数データ49と、オペレーティングシステムなどのプログラムがインストールされ、メモリ99Mは、加工プログラム生成プログラム45と、素材情報46と、形状情報47と、工具情報48と、機械定数データ49と、オペレーティングシステムなどのプログラムを記憶するように構成される。
【0046】
素材情報46とは、加工するワークWとなる素材の参照情報(材質情報、IDなど)、ワーク形状(外径、内径(孔が空いている場合)、長さ)、及び、特性(比切削抵抗x(kg/mm2)を含む。形状情報47は、製品形状を規定するデータである。これは、上述する加工シミュレーションプログラムで生成される。工具情報48とは、工作機械1に装着可能な工具Tに対応するT番号(T number)、工具Tの名称、工具Tの材質、工具Tの刃の特性(characteristics)、及び工具Tの使用状態(摩耗状態)を含む。工具Tの刃の特性とは、工具Tの呼び径、工具長(tool length)、工具径(tool diameter)、軸方向オフセット(axial offset)、径方向オフセット(radial offset)、刃数、刃先幅、刃先形状を規定する円弧の曲率半径(刃先の曲率半径)R、刃の割出角度(indexing angle)、有効な主軸回転方向、及び、刃の向きを含む。機械定数データ49は、切削条件(cutting condition)の計算において使用される工作機械1固有のパラメータである。工具Tの切削条件は、切削速度Vc、工具TのワークWに対する切込量、及び、ワークWの送り速度(feed speed)を含む。機械定数データ49は、例えば、機械効率η、機械馬力HP(HP)、加工制限(仕上げ代)である。素材情報46と、形状情報47と、工具情報48と、機械定数データ49とは、加工シミュレーションプログラムで読み込まれる。工具情報48及び機械定数データ49は、ネットワークNWを介して工作機械1の最新の設定に対応したデータに定期的に更新されてもよい。
【0047】
加工プログラム生成プログラム45は、典型的には、上述する加工シミュレーションプログラムの一部で上述する少なくとも1つの周辺機器を制御するための付加情報41aを含む加工プログラム41を生成するプログラムである。ただし、加工プログラム生成プログラム45は、加工シミュレーションプログラムと別プログラムであってもよい。加工プログラム生成プログラム45がコンピュータ99にて実行された場合、ハードウェアプロセッサ99Pは、メモリ99Mに記憶された素材情報46と、形状情報47と、工具情報48と、機械定数データ49とに基づいて、上述する少なくとも1つの周辺機器を制御するための付加情報41aを含む加工プログラム41を生成する。あるいは、別実施形態においては、ハードウェアプロセッサ99Pは、メモリ99Mに記憶された、付加情報41aを含まないプログラムコードと、素材情報46と、形状情報47と、工具情報48と、機械定数データ49とに基づいて、付加情報41aを含む加工プログラム41を生成してもよい。コンピュータ99にて生成された加工プログラム41は、通信インタフェース99CF、ネットワークNW、及び、通信インタフェース2CFを介して数値制御装置2に送られる。
<加工プログラム41の生成方法の処理の流れ>
図3は、実施形態に係る加工プログラム41の生成方法の処理の流れを表すフローチャートである。ステップS11として、当該生成方法は、ワーク形状と製品形状とに基づいてワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報をコンピュータ99に算出させることを含む。具体的には、ステップS1において、加工プログラム生成プログラム45を実行するハードウェアプロセッサ99Pは、素材情報46としてメモリ99Mに記憶されているワーク形状と形状情報47としてメモリ99Mに記憶されている製品形状とに基づいて、ワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を算出する。ステップS12として、当該生成方法は、ワークWを加工して製品形状を得るための、工作機械1によるワークWと少なくとも1つの工具Tとの少なくとも一方の操作を表すプログラムコードを生成することを含む。具体的には、ステップS12において、加工プログラム生成プログラム45を実行するハードウェアプロセッサ99Pは、ワークWを加工して製品形状を得るための、工作機械1によるワークWと少なくとも1つの工具Tとの少なくとも一方の操作を表すプログラムコードを生成する。このプログラム生成方法は、例えば、国際公開第2004/038522号のような周知の方法をEIA/ISOフォーマットのプログラムに適用した方法である。なお、このプログラムコードがすでに生成されている場合、ステップS12は省略されてもよい。ステップS13として、当該生成方法は、このプログラムコードに、付加情報41aが加えられた加工プログラム41をコンピュータ99に生成させることを含む。具体的には、ステップS13において、加工プログラム生成プログラム45を実行するハードウェアプロセッサ99Pは、このプログラムコードに付加情報41aが加えられた加工プログラム41を生成する。
【0048】
付加情報41aは、切削情報と、工作機械1によるワークWと少なくとも1つの工具Tとの少なくとも一方の操作を行う際の加工条件を表す加工情報と、加工情報と切削情報に基づいて工作機械1の複数の機器のうちワークWを操作する第1機器(例えば、上述するテーブル移動装置4a)と少なくとも1つの工具Tを操作する第2機器(例えば、主軸移動装置5aや主軸ユニット5中の少なくとも1つの工具Tを回転させるためのモータ5b)以外の少なくとも1つの周辺機器(例えば、第1ポンプ装置15、第2ポンプ装置16、チップコレクタ装置20、及び、ファン装置33)を制御する処理を工作機械1に実行させる制御コードG181、G182(後述)と、を含む。加工情報は、切粉の散り具合や重さなどの切粉の排出しやすさやクーラント中の切粉の濾しやすさに関係する情報である。
<付加情報41aを含む加工プログラム41>
図4は、加工プログラム生成プログラム45によって生成される加工プログラム41の一例を示す。加工プログラム41は、EIA/ISOフォーマットで記述されている。
図4は、説明の便宜上、プログラムコードの左端に行番号を付している。
図4において後述する制御コードG181、G182が含まれていない行は、工作機械1によるワークWと少なくとも1つの工具Tとの少なくとも一方の操作を表すプログラムコードを表す。
図4において、行番号2において、識別子O(アルファベットのオー)の後にワーク番号WNo.が数字で記載されている。行番号3で、付加情報41aとして制御コードG181とその引数が挿入されている。引数のうち識別子Rを付した数字は、少なくとも1つの周辺機器のうちの一部の周辺機器に適用される除去率、または、少なくとも1つの周辺機器のうちの残りの周辺機器に対して後述する制御コードG182が適用される範囲内を除いて加工プログラム41全体で適用される除去率をいう。除去率とは、加工プログラム181の所定の工程において切削された体積(単位:cc、inch
3)を当該工程の所用時間(単位:min)で割った値である。除去率は、被切削部分の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータであって、切削情報の一例である。つまり、切削情報は、被切削部分の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータを含む。被切削部分の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータとは、被切削部分の少なくとも一部の体積に限らず、被切削部分の少なくとも一部の重さ、被切削部分の少なくとも一部を切削するための少なくとも1つの工具Tの仕事量(負荷×時間)、被切削部分の少なくとも一部の切削の際に生じた熱量など、センサや工具を回転させるモータのドライバによって検出可能な被切削部分の少なくとも一部の大きさに依存する全ての値を含む。制御コードG181の引数として記載される除去率は、全体のワーク形状から全体の製品形状を除いた全体の被切削部分の体積を、加工プログラム41の全体の所用時間で割った値である。
【0049】
行番号11においてT番号23のミル工具が呼び出された後、行番号14において付加情報41aとして制御コードG182とその引数が挿入されている。引数のうち識別子Rを付した数字は、次の制御コードG182が呼び出される(行番号35)までの工程で適用される除去率をいう。以降の実施形態の説明において、特定の制御コードG182(i)(i=1、2、…。iは、加工プログラム41において出現する順番に対応する。)から次の制御コードG182(i+1)が呼び出されるまでの工程のことを、制御コードG182(i)が適用される工程と呼ぶ。ここでいう除去率とは、行番号14から行番号35までの工程において切削される、被切削部分の少なくとも一部の体積(単位:cc、inch3)をT番号23の工具によって切削するために要する加工時間(単位:min)で除した値である。加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサ99Pは、行番号14から行番号35までの工程において以下のように除去率を算出可能である。
【0050】
加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサ99Pは、ユーザからの入力によって加工部位が指定されているとき、加工部位ごとに被切削部分の少なくとも一部の体積を算出し、生成されるプログラムコードの送り速度によって加工時間を推定して除去率を算出し、加工部位ごとに生成されるEIA/ISOフォーマットに基づくプログラムコードの直前に除去率を引数とする制御コードG182を挿入するとよい。国際公開第2004/038522号の方法によってEIA/ISOフォーマットに基づく加工プログラムを生成する加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサ99Pは、例えば、加工形状体部それぞれに対応する除去率を計算して、当該加工形状体部を加工するソースコードの直前に計算した除去率を引数とする制御コードG182を挿入するとよい。
【0051】
引数のうち識別子Tを付した数字は、次の制御コードG182が呼び出される(行番号35)までの工程で適用される工具径(単位:mmまたはinch)を表す。引数のうち識別子Sを付した数字は、次の制御コードG182が呼び出される(行番号35)までの工程で適用される工具回転速度(単位:rev/min)を表す。工具径、工具回転速度は、少なくとも1つの操作を行う際の加工条件の一例である。つまり、加工情報は、工具径と、工具回転速度とを含む。国際公開第2004/038522号の方法によってEIA/ISOフォーマットに基づく加工プログラムを生成する加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサ99Pは、例えば、加工形状体部それぞれに対応する工具を表すTコードから工具情報48(国際公開第2004/038522号では工具定義部21)を参照して工具径を求めることが可能である。同様に、国際公開第2004/038522号の方法によってEIA/ISOフォーマットに基づく加工プログラムを生成する加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサ99Pは、加工形状体部それぞれに対応する工具を表すTコードからパラメータ入力制御部13で指定された工具回転速度を取得することが可能である。(本願の工具情報48は、パラメータ入力制御部13で指定された工具回転速度を表すデータも含む。すでに、EIA/ISOフォーマットに基づく加工プログラムに制御コードG181、G182を加えるように、加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサは、行番号14から行番号35までの工程がユーザ入力等によって指定されると、当該工程に使用される工具のT番号(T23)から工具情報48を参照し、工具径を求めることが可能である。加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサは、行番号14から行番号35までの工程がユーザ入力等によって指定されると、当該工程での主軸回転速度を表すコード(行番号15)を参照することによって、工具の回転速度を求めることが可能である。
【0052】
以下、行番号35、57において、制御コードG182と上述の除去率、工具径、回転速度とを含む付加情報41aが示されている。行番号35における付加情報41aは、行番号35から行番号57までの工程で適用される。この付加情報の値の求め方は、行番号14の付加情報41aと同じなので説明を省略する。行番号57以降には制御コードG182はなく、加工プログラム41の終了を示すプログラムコードM30が行番号82に設けられている。したがって、行番号57における付加情報41aは、行番号35からプログラム終了までの工程で適用される。この付加情報の値の求め方は、行番号14の付加情報41aと同じなので説明を省略する。
【0053】
以上の例においては、加工方向が工具径、回転速度を含む場合を示しているが、他に周速やワークWの材質情報を含んでもよい。例えば、周速は、制御コードG182の後ろに識別子Vを付した数字によって表され、数字は周速の値(単位:m/minまたはfeet/min)で表されるとよい。加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサは、制御コードG182に適用される工程において有効な周速を表すコード(識別子Fに数字が付加されたコード)を参照し、周速を求めることが可能である。また、制御コードG181の引数の加工条件として、さらにワークWの材質情報がふくまれてもよい。材質情報は、例えば、制御コードG181の後ろに識別子Mを付した数字によって表され、数字が材質に対応する。例えば、FC250を1、FCD450を2、S45Cを3、SCM415を4、SUS304を5、SS400を6、A5052を7、AC4Cを8とかで表されるとよい。FC250と、FCD450とは鋳鉄系合金である。S45Cと、SCM415と、SUS304と、SS400とは鋼鉄系合金である。A5052と、AC4Cとはアルミニウム系合金である。したがって、識別子Mの後の数字が大きければ大きいほど柔らかい金属である。加工プログラム生成プログラム45を実行するプロセッサは、素材情報46を参照し、材質情報を求めることが可能である。
<加工プログラム41の工作機械1における処理>
このように生成された付加情報41a付きの加工プログラム41は、例えば、ネットワークNWを介して工作機械1の数値制御装置2に送られる。数値制御装置2は、以下のように加工プログラム41の付加情報41aを処理する。加工プログラム41を実行するハードウェアプロセッサ99Pは、加工プログラム41の冒頭にあるワーク番号WNo.を取得し、個別データ44を参照してワーク番号WNo.に対応する材質情報を取得する。
図5は、個別データ44の詳細を示した図である。個別データ44は、ワーク番号WNo.と材質情報の対応関係を含む。
図5では対応関係をテーブルで示しているが、csvファイル形式やデータベースなど周知の方法で対応関係が記述されてもよい。
図4と
図5との例では、ワーク番号WNo.が1000であるため、材質をSC45Cと求めることができる。
【0054】
なお、
図5のワーク番号100のプログラムのように、材質が定義されてないものは、加工プログラム41起動時に材質を入力するためのインタフェース(例えば、ドロップダウンウィンドウ)が起動し、ユーザに材質を入力することを促すことができる。または、材質が入力されていないときは、デフォルトで鋳鉄系合金であるFC250またはFCD450が設定されてもよい。なお、制御コードG181の引数として材質が定義されるときは、個別データ44を参照して材質を決定しなくてもよい。
【0055】
つぎに、加工プログラム41を実行するハードウェアプロセッサ99Pは、制御コードG181の引数を参照して、上述する一部の周辺機器に適用される除去率、または、上述する残りの周辺機器に適用されるデフォルトの除去率を読み込む。つまり、ハードウェアプロセッサ99Pは、制御コードG181に応じて切削情報を読み取る。ハードウェアプロセッサ99Pは、加工プログラム41の実行時間全てにおいて、切削情報と加工情報とに基づいて、
図6~
図12に示される機器制御情報43を参照して、当該一部の周辺機器(例えば、第2ポンプ装置16)を制御する。上述する残りの周辺機器(例えば、第1ポンプ装置15、チップコレクタ装置20、及び、ファン装置33)に対するデフォルトの除去率は、後述する制御コードG182が呼び出されるまで、有効な除去率である。制御コードG181の引数に材質情報が含まれる場合、ハードウェアプロセッサ99Pは、制御コードG181の引数を参照して、材質情報も読み込む。
【0056】
加工プログラム41を実行するハードウェアプロセッサ99Pは、行番号11のコードによってT番号23の工具に工具交換した後、行番号14の制御コードG182を読み込む。ハードウェアプロセッサ99Pは、制御コードG182の引数を参照して、切削情報と加工情報とを読み込む。ハードウェアプロセッサ99Pは、切削情報と加工情報とに基づいて、
図6~
図12に示される機器制御情報43を参照して、当該残りの周辺機器(例えば、第1ポンプ装置15、チップコレクタ装置20、及び、ファン装置33)を制御する。
【0057】
図6は、機器制御情報43のうち第1アクチュエータ(第1モータ15M)を制御するためのデータ43a1、43a2を表す。
図7は、機器制御情報43のうち第2アクチュエータ(第2モータ16M)を制御するためのデータ43b1、43b2を表す。
図8は、機器制御情報43のうち第3アクチュエータ(第3モータ20M)を制御するためのデータ43c1、43c2を表す。
図9は、機器制御情報43のうち第4アクチュエータ(第4モータ33M)を制御するためのデータ43d1、43d2を表す。データ43a1~43d1は、制御コードG181のみを適用する一部の周辺機器か、制御コードG181または制御コードG182を適用する残りの周辺機器かを表すフラグを含む。データ43a2~43d2は、それぞれ、除去率の範囲と省エネレベルと第1~第4アクチュエータの定格出力を100%としたときの出力の割合の対応関係を含む。
図6~
図9では対応関係をテーブルで示しているが、csvファイル形式やデータベースなど周知の方法で対応関係が記述されてもよい。
図6~
図9に示されるように、データ43b2の制御フラグ「2」は、制御コードG181のみを適用する一部の周辺機器であることを示している。データ43a2、43c2、43d2の制御フラグ「1」は、制御コードG181または制御コードG182を適用する残りの周辺機器であることを示している。この制御フラグは、編集可能であってオペレータは、制御フラグを編集することによって、少なくとも1つの周辺機器を、制御コードG181のみを適用する一部の周辺機器と、制御コードG181または制御コードG182を適用する残りの周辺機器との少なくとも一方に切り換えることができる。
【0058】
図6~
図9に示されるように、データ43a2~43d2は、除去率の複数の範囲に対応する複数の省エネレベルを含んでいる。省エネレベルは、定格消費電力で第1~第4アクチュエータの各々を駆動した場合の出力を100%としたときの、各々の出力の割合をパーセンテージで示した値である。
図6~
図9に示すように、第1~第4アクチュエータにおいて、異なる省エネレベルの数が設定される。
図6~
図9に示すように、第1~第4アクチュエータにおいて、各省エネレベルを決定するための除去率の範囲は独立して設定される。
図6~
図9に示された閾値TH1~TH9は、経験的に定められた値で、閾値TH1~TH9の一部が同一の値であってもよい。出力の割合は、経験的に定められた値で、
図6~
図9に示された値と別の値が使用されてもよい。この出力の割合は、少なくとも1つの周辺機器の制御方法に該当する。したがって、少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法は、被切削部分の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータ(除去率)の複数の範囲にそれぞれ対応づけられている。
【0059】
メモリ2Mは、除去率の複数の範囲と、該除去率の複数の範囲にそれぞれ対応する複数の省エネルギーレベルとの第1の対応関係を表す情報と、該複数の省エネルギーレベルと、少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法との第2の対応関係を表す情報と、を記憶する。
図6~
図9から明らかなように、複数の制御方法は、省エネルギーレベルが大きくなればなるほど、少なくとも1つの周辺機器の出力が減少されるように規定されている。複数の省エネルギーレベルは、除去率が小さくなればなるほど、大きくなるように規定されている。ただし、メモリ2Mには、
図6~
図9に示される内容のうち、省エネレベルの値、閾値TH1~TH9、及び、出力の割合の値のみが記憶されていて、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、メモリ2Mに記憶されているデータを利用して、
図6~
図9に示される基準で出力の割合を決定してもよい。このように、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、メモリ2Mに記憶された少なくとも1つの周辺機器の少なくとも1つの制御方法(より好ましくは、複数の制御方法)のうち、付加情報41aに対応する被決定制御方法を決定することができる。より具体的には、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、加工情報と切削情報とに基づいて被決定制御方法を決定することができる。
【0060】
図10は、機器制御情報43のうち加工条件のうちの工具径、工具回転速度に関する制御情報43eを表す。
図11は、機器制御情報43のうち、加工条件のうちの周速に関する制御情報43fを表す。
図12は、機器制御情報43のうち、加工条件のうちの第1アクチュエータ(第1モータ15M)に適用する材質情報に関する制御情報43gを表す。
図13は、機器制御情報43のうち、加工条件のうちの第2アクチュエータ(第2モータ16M)に適用する材質情報に関する制御情報43hを表す。制御情報43eは、
図6に示される除去率に応じて設定された出力の割合に乗ぜられる第1補正係数K1を含む。制御情報43fは、
図6に示される除去率に応じて設定された出力の割合に乗ぜられる第2補正係数K2を含む。制御情報43gは、
図6に示される除去率に応じて設定された出力の割合に乗ぜられる第3補正係数K3を含む。制御情報43hは、
図7に示される除去率に応じて設定された出力の割合に乗ぜられる第4補正係数K4を含む。制御情報43eは、工具径×工具回転速度の範囲と第1補正係数K1との対応関係を含む。制御情報43fは、周速の範囲と第2補正係数K2との対応関係を含む。制御情報43gは、材質情報と第3補正係数K3との対応関係を含む。制御情報43hは、材質情報と第4補正係数K4との対応関係を含む。
図10~
図13では対応関係をテーブルで示しているが、csvファイル形式やデータベースなど周知の方法で対応関係が記述されてもよい。メモリ2Mには、
図10~
図13に示される内容のうち、閾値MTH1~MTH2、VTH1~VTH2、それぞれの材質を表す識別子、及び、第1~第3補正係数K1~K3の値のみが記憶されていて、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、メモリ2Mに記憶されているデータを利用して、
図10~
図13に示される基準で第1~第4補正係数K1~K4を決定してもよい。
【0061】
工具径、工具回転速度が大きいほど、切粉の散り具合が大きくなり、切粉の排出のために多くのクーラントを要する。このため、
図10において、工具径×工具回転速度が大きくなるほど、第1補正係数K1が大きくなるように第1補正係数K1が設定されている。これによって、工具径×工具回転速度が大きくなるほど、第1アクチュエータの出力が大きくなるように設定されている。同様に、周速が大きいほど、切粉の散り具合が大きくなり、切粉の排出のために多くのクーラントを要する。このため、
図11において、周速が大きくなるほど、第2補正係数K2が大きくなるように第2補正係数K2が設定されている。これによって、周速が大きくなるほど、第1アクチュエータの出力が大きくなるように設定されている。また、材質が柔らかいほど、切粉の散り具合が大きくなり、切粉の排出のために多くのクーラントを要する。これによって、
図12において、材質が柔らかければ柔らかいほど、第3補正係数K3が大きくなるように第3補正係数K3が設定されている。これによって、材質が柔らかければ柔らかいほど、第1アクチュエータの出力が大きくなるように設定されている。さらに、材質の比重が大きければ大きいほど、循環回路18に切粉を流すためにクーラントを流す流速を早くする必要がある。これによって、
図13において、比重が大きければ大きいほど、第4補正係数K4が大きくなるように第4補正係数K4が設定されている。これによって、比重が大きければ大きいほど、第2アクチュエータの出力が大きくなるように設定されている。
【0062】
このため、制御コードG182(i)(i=1、2、…。iは、加工プログラム41において出現する順番に対応する。)の引数の除去率の範囲から定まる第1アクチュエータの出力の割合(
図6において示される割合)をP1(i)とし、制御コードG182の引数の工具径×工具回転速度の範囲から定まる第1補正係数K1をK1(i)とし、制御コードG182の引数の周速の範囲から定まる第2補正係数をK2(i)として、制御コードG182の材質情報から定まる第3補正係数をK3(i)とする。このとき、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、第1アクチュエータの出力の定格出力を100%としたときの出力の割合P1
out(i)とすると、P1
out(i)は以下の(式1)によって表される。
P1
out(i)=K1(i)×K2(i)×K3(i)×P1(i) (式1)
制御コードG182(i)(i=1、2、…。iは、加工プログラム41において出現する順番に対応する。)の引数の除去率の範囲から定まる第2アクチュエータの出力の割合(
図6において示される割合)をP2(i)とし、制御コードG182の材質情報から定まる第4補正係数をK4(i)とする。このとき、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、第2アクチュエータの出力の定格出力を100%としたときの出力の割合P2
out(i)とすると、P2
out(i)は以下の(式2)によって表される。
P2
out(i)=K4(i)×P2(i) (式2)
なお、制御コードG182の引数によって工具径と工具回転速度との少なくとも1つが設定されていないとき、K1(i)=1とする。制御コードG182の引数によって周速が設定されていないとき、K2(i)=1とする。個別データ44または制御コードG181の引数によって材質情報が設定されていないとき、K3(i)=1とする。個別データ44または制御コードG181の引数によって材質情報が設定されていないとき、K4(i)=1とする。また、(式1)の値が100%を超えるときは、P1
out(i)=100%とする。(式2)の値が100%を超えるときは、P2
out(i)=100%とする。機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、このように求められたP1
out(i)、P2
out(i)に基づいて、第1~第2アクチュエータを制御する。機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、
図8、
図9の対応関係を参照して、第3~第4アクチュエータを制御する。なお、加工プログラム41に付加情報41aが含まれていない場合、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、デフォルトの設定値として100%として、第1~第4アクチュエータを制御する。このように、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、少なくとも1つの周辺機器(例えば、第1ポンプ装置15、第2ポンプ装置16、チップコレクタ装置20、及び、ファン装置33)を被決定制御方法に基づいて動作させることができる。
【0063】
以上のように、機器制御プログラム42を実行するハードウェアプロセッサ2Pは、工作機械1が少なくとも一方の操作を実行する際に、工作機械1の複数の機器のうちワークWを操作する第1機器と少なくとも1つの工具Tを操作する第2機器以外の少なくとも1つの周辺機器(例えば、第1ポンプ装置15、第2ポンプ装置16、チップコレクタ装置20、及び、ファン装置33)を切削情報に基づいて動作させるように工作機械1を制御することができる。したがって、制御コードG181、G182は、メモリ2Mに記憶された、パラメータ(除去率)の複数の範囲にそれぞれ対応付けられた少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法のうち、切削情報に対応する被決定機器制御方法を工作機械1に決定させ、少なくとも1つの周辺機器を被決定制御方法に基づいて動作させる処理を工作機械に実行させるコードである、と言える。
【0064】
図14は、工作機械1の制御方法の処理の流れを示すフローチャートである。当該制御方法は、ステップS21として、切削情報(例えば、除去率)を少なくとも有する付加情報41aとを含む加工プログラム41を工作機械1に読み取らせることを含む。具体的には、ステップS21において、当該制御方法は、制御コードG181、G182に応じて切削情報を工作機械1のハードウェアプロセッサ2Pに読み取らせることを含む。
【0065】
当該制御方法は、ステップS22として、工作機械1がワークWと少なくとも1つの工具Tとの少なくとも一方の操作を実行する際に、工作機械1の複数の機器のうちワークWを操作する機器(第1機器)と少なくとも1つの工具Tを操作する機器(第2機器)以外の少なくとも1つの周辺機器(例えば、第1ポンプ装置15、第2ポンプ装置16、チップコレクタ装置20、及び、ファン装置33)を切削情報(例えば、除去率)に基づいて動作させるように工作機械1を制御することを含む。具体的には、ステップS22において、当該制御方法は、工作機械1のメモリ2Mに記憶された少なくとも1つの周辺機器の少なくとも1つの制御方法のうち、付加情報41aに対応する被決定制御方法を工作機械1のハードウェアプロセッサ2Pに決定させることと、少なくとも1つの周辺機器を被決定制御方法に基づいて動作させることと、を含む。さらに具体的には、ステップS22において、当該制御方法は、加工情報(例えば、工具径、工具回転速度、周速、材質情報)と切削情報(例えば、除去率)とに基づいて被決定制御方法をハードウェアプロセッサ2Pに決定させることを含む。当該制御方法は、工作機械1のメモリ2Mに記憶された、被切削形状の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータ(例えば、除去率)の複数の範囲にそれぞれ対応付けられた少なくとも1つの周辺機器の複数の制御方法を規定する機器制御情報43のうち、切削情報のパラメータに対応する被決定機器制御方法を工作機械1のハードウェアプロセッサ2Pに決定させることを含む。
<実施形態の作用及び効果>
本実施形態に係る工作機械1、工作機械システム100、工作機械1の制御方法、加工プログラム41の生成方法、及び、当該生成方法に係るプログラムは、切削情報を被切削部分から得ているため、精度の高い切削量に基づき、少なくとも1つの周辺機器の制御を行うことができる。また、実施形態に係る工作機械1、工作機械システム100、工作機械1の制御方法、加工プログラム41の生成方法、及び、当該生成方法に係るプログラムは、切削情報を加工プログラム41に含めることにより、異なる工作機械に対して少なくとも1つの周辺機器の制御を柔軟に行うことができる。
<変形例>
上述の工作機械システム100は、工作機械1とコンピュータ99との間のデータの受け渡しは、通信インタフェース99CF、ネットワークNW、及び、通信インタフェース2CFを介した例を示している。しかし、Bluetooth(登録商標)やNear Field Communicationなどの近距離無線通信、USB、SDインタフェースなどの外部記憶装置とのインタフェースなどを介してデータの受け渡しがされてもよい。したがって、通信インタフェース99CF、通信インタフェース2CFは、これらのインタフェースを含める概念として単にインタフェース99CF、2CFと呼称されてもよい。
【0066】
上記のデータ43a1~43d1、43a2~43d2の一部が省略されてもよく、省略されたデータに対応するアクチュエータの制御が付加情報41aによって行われなくてもよい。
【0067】
被切削部分の少なくとも一部の大きさによって表されるパラメータは、除去率に限らず、被切削部分の少なくとも一部の重さを加工時間で除した値、被切削部分の少なくとも一部を切削するための少なくとも1つの工具Tの仕事量(負荷×時間)を加工時間で除した値、被切削部分の少なくとも一部の切削の際に生じた熱量を加工時間で除した値を用いてもよい。
【0068】
上述の機器制御プログラム42と加工プログラム生成プログラム45のロジックの一部または全ての機能が専用のプロセッサや集積回路によって実現されてもよい。上述の機器制御プログラム42と加工プログラム生成プログラム45は、数値制御装置2やコンピュータ99に内蔵されたメモリ2M、99Mにとどまらず、フロッピーディスク、光ディスク、CD-ROMおよび磁気ディスク等のディスク、SDカード、USBメモリ、外付けハードディスクなど数値制御装置2やコンピュータ99から取り外し可能で、数値制御装置2やコンピュータ99に読み取り可能な記憶媒体に記録されたものであってもよい。
【0069】
本願においては、「備える」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有する」、「含む」およびそれらの派生語にも適用される。
【0070】
「~部材」、「~部」、「~要素」、「~体」、および「~構造」という文言は、単一の部分や複数の部分といった複数の意味を有し得る。
【0071】
「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在することを暗に意味するわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在することを暗に意味するわけではない。
【0072】
程度を表す「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言は、最終結果が大きく変わらないような合理的なずれ量を意味し得る。本願に記載される全ての数値は、「実質的に」、「約」、および「およそ」などの文言を含むように解釈され得る。
【0073】
本願において「A及びBの少なくとも一方」という文言は、Aだけ、Bだけ、及びAとBの両方を含むように解釈されるべきである。
【0074】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【要約】
工作機械の制御方法は、工作機械によるワークと少なくとも1つの工具との少なくとも一方の操作を表すプログラムコードとワーク形状から製品形状を除いた被切削部分から得られる切削情報を少なくとも有する付加情報を含む加工プログラムを工作機械に読み取らせ、工作機械が少なくとも一方の操作を実行する際に、工作機械の複数の機器のうちワークを操作する機器と少なくとも1つの工具を操作する機器以外の少なくとも1つの周辺機器を切削情報に基づいて動作させるように工作機械を制御することを含む。