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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-01
(45)【発行日】2024-08-09
(54)【発明の名称】印刷物、及びインキとニスのセット
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240802BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20240802BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20240802BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20240802BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240802BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20240802BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20240802BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B41M3/00 Z
B41M1/30 D
C09D11/102
C09D5/00 Z
C09D4/00
C09D183/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024523466
(86)(22)【出願日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2023045837
【審査請求日】2024-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2023004970
(32)【優先日】2023-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 雅和
(72)【発明者】
【氏名】関野 吉厚
(72)【発明者】
【氏名】河田 はるか
(72)【発明者】
【氏名】桶村 英司
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-099948(JP,A)
【文献】特開2008-201893(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111985(WO,A1)
【文献】特開2003-034068(JP,A)
【文献】特開2017-202574(JP,A)
【文献】特開2018-090309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
B41M 1/30
3/00
C09D 11/00-13/00
183/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であって、(1)~(3)を満たすことを特徴とする印刷物。
(1)前記油性インキ層が、色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキからなる層である。
(2)前記活性エネルギー線硬化塗膜層が、活性エネルギー線硬化性化合物、シリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニスの硬化物からなる層である。
(3)前記シリコーン化合物の添加量が活性エネルギー線硬化型ニス全量の0.1~3質量%である。
【請求項2】
前記油性インキ層が、更に光重合開始剤Aを含有する請求項1に記載の印刷物。
【請求項3】
前記油性インキ層及び/又は前記活性エネルギー線硬化塗膜層が、粒子径0.1~5μmの微粒子を前記油性インキ全固形分及び/又は前記活性エネルギー線硬化型ニス全固形分に対して0.01~2.5質量%含有する請求項1に記載の印刷物。
【請求項4】
前記バインダー樹脂がロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂である請求項1に記載の印刷物。
【請求項5】
インキとニスのセットであって、
(1)色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキと、
(2)活性エネルギー線硬化性化合物、ニス全量の0.1~3質量%であるシリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニスとのセット。
【請求項6】
前記油性インキが更に光重合開始剤Aを含有する請求項5に記載のセット。
【請求項7】
前記油性インキ及び/又は前記活性エネルギー線硬化型ニスが、粒子径0.1~5μmの微粒子を前記油性インキ全固形分及び/又は前記活性エネルギー線硬化型ニス全固形分に対して0.01~2.5質量%含有する請求項5に記載のセット。
【請求項8】
前記バインダー樹脂がロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂である請求項5に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材と、その基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物、及びインキとニスのセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基材と、その基材上に印刷後硬化された活性エネルギー線硬化インキ層と、前記活性エネルギー線硬化インキ層を覆う透明被覆層とを備える印刷物(例えば、特許文献1参照)は、高光沢を備える印刷物として多く生産されている。しかしながら活性エネルギー線硬化インキを使用した当該印刷物は、活性エネルギー線硬化インキそのものの単価が高いことや、多色印刷では一色毎に活性エネルギー線の照射を要しランニングコストも高いことから、高価な印刷物であり、高光沢でありながら安価な印刷物が望まれていた。
【0003】
高価な活性エネルギー線硬化インキに比べ安価な油性インキ層をインキ層として有する、基材と、その基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物は、安価に生産できるものの、殆ど普及していない。その理由として、油性インキを使用した当該印刷物は、印刷物の光沢感が保持できず低光沢な仕上がりとなり、意匠性に乏しいことが挙げられる。
【0004】
従って、基材と、その基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備え、光沢性が充分保持された印刷物の提案が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-90309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、基材と、その基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であっても、光沢性が充分保持された印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
油性インキを使用した当該印刷物が低光沢となる原因として、1)油性インキ層上で活性エネルギー線硬化ニスがはじく傾向にあり、塗工段階での初期光沢の低下が見られる場合があることや、2)油性インキ層に使用する油性インキ中の低粘度・低分子成分が基材へ浸透しセットする際に、光沢低下(グロスバックとも言う)が生じることがある、等が挙げられる。特にこれらの現象は紙基材の場合に顕著となる傾向にある。
【0008】
本発明者らは、前記原因を解決する方法を鋭意検討した結果、基材と、基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であって、前記油性インキ層と前記活性エネルギー線硬化塗膜層を各々特定条件を満たす事で、光沢性を保持した印刷物を得ることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、基材と、基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であって、(1)~(3)を満たす印刷物を提供する。
(1)前記油性インキ層が、色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキからなる層である。
(2)前記活性エネルギー線硬化塗膜層が、活性エネルギー線硬化性化合物、シリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニスの硬化物からなる層である。
(3)前記シリコーン化合物の添加量が活性エネルギー線硬化型ニス全量の0.1~3質量%である。
【0010】
また本発明は、前記油性インキ層が、更に光重合開始剤Aを含有する前記記載の印刷物を提供する。
【0011】
また本発明は、前記油性インキ層及び/又は前記活性エネルギー線硬化塗膜層が、粒子径0.1~5μmの微粒子を前記油性インキ全固形分及び/又は前記活性エネルギー線硬化型ニス全固形分に対して0.01~2.5質量%含有する前記記載の印刷物を提供する。
【0012】
また本発明は、前記バインダー樹脂がロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂である前記記載の印刷物を提供する。
【0013】
また本発明は、前記記載の印刷物の製造方法であって、
基材上に、請求項1に記載の油性インキを印刷し油性インキ層を設ける工程1と、
前記油性インキ層が乾燥する前に、当該油性インキ層上に、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型ニスを印刷した後、紫外線を照射する工程2とを有する印刷物の製造方法を提供する。
【0014】
また本発明は、インキとニスのセットであって、
(1)色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキと、
(2)活性エネルギー線硬化性化合物、ニス全量の0.1~3質量%であるシリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニスとのセットを提供する。
【0015】
また本発明は、前記油性インキが更に光重合開始剤Aを含有する前記記載のセットを提供する。
【0016】
また本発明は、前記油性インキ及び/又は前記活性エネルギー線硬化型ニスが、粒子径0.1~5μmの微粒子を前記油性インキ全固形分及び/又は前記活性エネルギー線硬化型ニス全固形分に対して0.01~2.5質量%含有する前記記載のセットを提供する。
【0017】
また本発明は、前記バインダー樹脂がロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂である前記記載のセットを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のインキとニスのセット及びそれを用いた印刷物により、基材と、その基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であっても、光沢性が充分保持された印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(印刷物)
本発明の印刷物は、基材と、基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であって、(1)~(3)を満たすことが特徴である。
(1)前記油性インキ層が、色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキからなる層である。
(2)前記活性エネルギー線硬化塗膜層が、活性エネルギー線硬化性化合物、シリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニスの硬化物からなる層である。
(3)前記シリコーン化合物の添加量が活性エネルギー線硬化型ニス全量の0.1~3質量%である。
【0020】
また、本発明のインキとニスのセットは、セットで使用することで、本発明の印刷物を与えることができるものであり、具体的には、
(1)色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキと、
(2)活性エネルギー線硬化性化合物、ニス全量の0.1~3質量%であるシリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニスとのセットである。
以下、本発明における油性インキを、油性インキ(A)と称し、本発明における活性エネルギー線硬化型ニスを活性エネルギー線硬化型ニス(B)と称する。
【0021】
(基材)
本発明の印刷物で使用する基材としては特に限定は無く、例えばカタログ、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等の印刷に用いられる紙基材またはプラスチック基材が挙げれられる。
【0022】
(紙基材)
紙基材は、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。
また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。
紙基材を用いた本発明の印刷物は、紙基材に直接接する油性インキ層に使用する油性インキ中の低粘度・低分子成分が紙基材に浸透しセットする際に生じる光沢低下(グロスバック)が抑制できるため、光沢性が十分保持される。
【0023】
(プラスチック基材)
プラスチック基材は、プラスチック材料、成形品、フィルム基材、包装材等の基材に使用される基材であればよく、特にオフセット印刷分野で通常使用されているフィルム基材をそのまま使用できる。
具体的には例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称する場合がある)、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ乳酸等のポリヒドロキシカルボン酸、ポリ(エチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート)等の脂肪族ポリエステル系樹脂などの生分解性樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂又はそれらの混合物等の熱可塑性樹脂よりなるフィルムやこれらの積層体が挙げられるが、中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレンからなるフィルムが好適に使用できる。これらの基材フィルムは、原料として石油由来の原料あるいは植物由来の原料が使用されているが本発明においてはどちらでもよい。またこれらの基材フィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。また、基材フィルムの厚さも特に限定されるものではないが、通常は1~500μmの範囲であればよい。また基材フィルムにはコロナ放電処理がされていることが好ましく、アルミ、シリカ、アルミナ等が蒸着されていてもよい。また基材は、前記紙基材やフィルム基材をドライラミネート法や無溶剤ラミネート法、あるいは押出ラミネート法により積層させた積層構造を有する積層体(積層フィルムと称される場合もある)であっても構わない。また該積層体の構成に、金属箔、金属蒸着膜層、無機蒸着膜層、酸素吸収層、アンカーコート層、印刷層、ニス層等があっても構わない。
【0024】
前記単層の紙基材あるいはフィルム基材、各種基材の積層構造を有する積層体は、業界や使用方法等により、機能性フィルム、軟包装フィルム、シュリンクフィルム、生活用品包装用フィルム、医薬品包装用フィルム、食品包装用フィルム、カートン、ポスター、チラシ、CDジャケット、ダイレクトメール、パンフレット、化粧品や飲料、医薬品、おもちゃ、機器等のパッケージ等に用いられる上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙等様々な表現がなされているが、本発明の印刷物は特に限定なく使用することができる。
【0025】
基材上に印刷された油性インキ層を形成する油性インキが、活性エネルギー線硬化塗膜層を形成する活性エネルギー線硬化型ニスをはじく傾向にある事の原因として、油性インキが活性エネルギー線硬化型インキに比べて低極性である事が挙げられる。
従って、本発明では油性インキの低極性を活性エネルギー線硬化型ニスの高極性に近づけるべく、油性インキ中の低粘度・低分子原料や、低極性の原因となる石油系溶剤、石油樹脂を排除する事で、「はじきの現象」が解消するものである。
【0026】
(基材上に印刷された油性インキ層)
本発明の印刷層において、基材上に印刷された油性インキ層は、(1)色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキ(A)からなる層である。
【0027】
(油性インキ(A) 色材)
油性インキ(A)の色材としては、公知慣用の無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0028】
前記無機顔料としては、例えば、酸化鉄や、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等がある。
例えば、ラーベン14、ラーベン450、ラーベン860Ultra、ラーベン1035、ラーベン1040、ラーベン1060Ultra、ラーベン1080Ultra、ラーベン1180、ラーベン1255(以上、ビルラ社製)、リーガル250R、リーガル400R、リーガル330R、リーガル660R、モーグルL(以上、キャボット社製)、MA7、MA8、MA11(以上、三菱化学社製)等を挙げることができ、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0029】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0030】
イエローインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、174、180、185等が挙げられる。
【0031】
また、マゼンタインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、146、168、176、184、185、202、209、269等、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0032】
また、シアンインキに使用される顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:3、15:4、16、22、60、63、66等が挙げられる。
【0033】
更に染料としては、例えば、モノアゾ・ジスアゾ等のアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、ナフタルイミド染料、ペリノン染料、フタロシアニン染料、トリアリルメタン系染料等が挙げられる。これらの染料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0034】
(油性インキ(A) バインダー樹脂)
油性インキ(A)のバインダー樹脂としては、従来公知のものを使用することができるが、低極性の原因となる石油樹脂、石油樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、石油樹脂変性ロジンエステル、石油樹脂変性アルキド樹脂は極力用いない事が好ましい。
バインダー樹脂の例として、ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、アルキド樹脂、アルキド樹脂変性ロジン・フェノール樹脂、アルキド樹脂変性ロジンエステル、アクリル変性ロジン・フェノール樹脂、アクリル変性ロジンエステル、ウレタン変性ロジン・フェノール樹脂、ウレタン変性ロジンエステル、ウレタン変性アルキド樹脂、エポキシ変性ロジン・フェノール樹脂、エポキシ変性ロジンエステル、エポキシ変性アルキド樹脂等が挙げられる。この中でも、ロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂を用いることが望ましい。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
ロジン変性フェノール樹脂は、例えば、ホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドとフェノール類との加熱反応により得られる平均核体数が1.5~3.0のレゾールを、ロジン類と多価アルコールとの反応により得られるロジンエステル樹脂と反応させて得られる樹脂や、あるいは、平均核体数が1.5~3.0のレゾールとロジン類とを反応させた後、多価アルコールでエステル化して得られる樹脂を用いることができる。
ロジンエステル樹脂は、ロジン類と多価アルコールとの反応により得られる。
【0036】
レゾールの調整に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、アミルフェノール、p-ターシャリーブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール、ビスフェノールAなどが挙げられ、中でもp-ターシャリーブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-ノニルフェノール、p-ドデシルフェノール等の、パラ位に炭素原子数が4~12の置換基を持つアルキルフェノールを用いることが好ましい。
【0037】
ロジン類としては、従来公知のものを用いることができ特に制限はない。ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、重合ロジン、酸変性ロジン、およびこれらのロジン類を蒸留等により精製したものなどが挙げられる。
【0038】
酸変性ロジンを用いる場合、ロジンの変性に用いる化合物としては、二塩基酸またはその無水物を用いることが好ましい。フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられ、中でもフマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく用いられる。
【0039】
多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられ、中でもグリセリン、ペンタエリスリトールが好ましく用いられる。
【0040】
前記ロジン変性フェノール樹脂や前記ロジンエステル樹脂の重量平均分子量は特に限定はないが、一般的には15,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましい。また、150,000以下であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0041】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSKgel 4000HXL、TSKgel 3000HXL、TSKgel 2000HXL、TSKgel 1000HXL
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC-8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0042】
前記ロジン変性フェノール樹脂は、軟化点が150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。また、軟化点は200℃以下であることが好ましい。なお本明細書における軟化点は、JIS K5601-2-2に準拠し環球法により測定したもので、具体的には試料を充填した黄銅製環をグリセリン浴中に水平に保持し、試料の中心に一定重量の鋼球をのせ、一定速度で浴温を上昇させ、試料が次第に軟化し、鋼球が下降し、ついに厚さ25mmの位置の底板に達したときの温度計の示度をもって軟化点とする。
【0043】
油性インキ(A)中のロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジンエステル樹脂の添加量は、油性インキ全量の20~40質量%である事が好ましい。
【0044】
(油性インキ(A) ヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油)
油性インキ(A)においては、ヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を有することが特徴である。
植物油において、ヨウ素価は、油脂100gに付加することのできるヨウ素(I2)のグラム数である。一般的に共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油としては、サフラワー油(ヨウ素価:120~150)、ヒマワリ油(ヨウ素価:113~146)、大豆油(ヨウ素価:114~138)、綿実油(ヨウ素価:102~120)、コメ油(ヨウ素価:90~120)、ひまし油(ヨウ素価:81~91)、桐油(ヨウ素価:145~173)、亜麻仁油(ヨウ素価:168~190)等が挙げられるが、本発明ではヨウ素価が140以上とする点から中でも桐油、亜麻仁油が好ましい。ヨウ素価が140以上であれば、油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層を形成する活性エネルギー線硬化型ニスをはじく事なく塗工する事ができる。
【0045】
桐油、亜麻仁油は各々単独で使用してもよいが、桐油によるゲル化の予防を阻止する目的で混合して使用する事がより好ましい。桐油と亜麻仁油を混合して使用する場合は質量比で桐油:亜麻仁油=1:9~9:1が好ましく、より好ましくは2:8~8:2であり、更に好ましくは3:7~7:3である。
【0046】
油性インキ(A)中の、共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油の添加量は、インキ全量の40~70質量%である事が好ましい。40質量%以上であれば、油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層を形成する活性エネルギー線硬化型OPニスをはじく事なく塗工する事ができる。また70質量%以下であれば適切な流動性、粘度、タックバリューを保持する事ができる。
【0047】
(油性インキ(A) 光重合開始剤)
油性インキ(A)は光重合開始剤を含有することは必須ではないが、本発明のインキ層やニスの硬化物の硬化性が増すことから、含有していることが好ましい。光重合開始剤としては公知の光重合開始剤を単独または併用して使用することができる。以後油性インキに使用する光重合開始剤を光重合開始剤Aと表記する。
【0048】
光重合開始剤Aとして具体的には、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニル グリオキシリック アシッド メチル エステル、オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-ピペリジノフェニル)-ブタン-1-オン、1-([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-2-メチル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-メトキシフェニル)-2-メチル― 2 ― (4-モルフォリニル―1-プロパノンなどの化合物が挙げられる。
【0049】
また、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、エチル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィネート等のアシルフォスフィンオキサイド化合物が挙げられる。
より具体的には、Omnirad TPO H,Omnirad TPO-L,Omnirad 819などが挙げられる。その中でもOmnirad 819がバインダー樹脂への溶解性が乏しいため、Omnirad TPO H,Omnirad TPO-Lがより好ましい。
【0050】
また、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-ジイソプロピルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9Hチオキサントン-2-イロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミン塩酸塩等のチオキサントン化合物が挙げられる。
【0051】
また、4,4´-ビス-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の4,4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン類、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン化合物が挙げられる。
【0052】
それ以外には、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、2,3,4-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、〔4-(メチルフェニルチオ)フェニル〕フェニルメタノン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテルなどが挙げられる。
これらの光重合開始剤は、1種でも数種併用して使用してもよい。
【0053】
光重合開始剤の添加量は、油性インキ(A)全量の2~10質量%が好ましい。
【0054】
(油性インキ(A) 微粒子)
油性インキ(A)は、微粒子を含有することは必須ではないが、本発明の印刷物の耐ブロッキング性が向上することから、添加することが好ましい。微粒子の材料としては特に限定なく、例えば有機系粒子であれば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。また無機系粒子であれば、シリカ、シリコーン微粒子、アルミナケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を好適に用いることができる。なかでも、シリコーン系微粒子使用することが好ましい。
【0055】
微粒子の粒子径は、粒子径0.1~5μmであれば、耐ブロッキング性の向上に優れることから好ましく、中でも2~3μmがより好ましい。微粒子の添加量は、油性インキ(A)の全量に対して、0.01質量%以上であり2.5質量%以下であることが望ましく、特に0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましい。この範囲において、他の物性に影響することなく耐ブロッキング性の向上を期待することができる。
なお粒子径は、日立製作所製操作型電子顕微鏡S-3400Nにより測定した値とする。
【0056】
(油性インキ(A) その他の成分)
油性インキ(A)は、必要に応じ更に、有機溶剤、増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、シリコン系添加剤、ワックス等を含有しても良い。
【0057】
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類等が挙げられる。
ただし環境対応を目的として、大気中への有機溶剤の蒸散量の徹底的な低減、即ち揮発性有機化合物(VOC)の削減をする場合は、上記の有機溶剤を含まない方がより好ましい。また前記油性インキ(A)には、低極性の原因となる有機溶剤は極力用いない事が好ましい。
【0058】
(油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層)
本発明の印刷層において前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層は、
(2)前記活性エネルギー線硬化塗膜層が、活性エネルギー線硬化性化合物、シリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニス(B)の硬化物からなる層である。
(3)前記シリコーン化合物の添加量が活性エネルギー線硬化型ニス(B)全量の0.1~3質量%である。
を満たす硬化塗膜層である。
【0059】
(活性エネルギー線硬化型ニス(B) 活性エネルギー線硬化性化合物)
活性エネルギー線硬化型ニス(B)で使用する前記活性エネルギー線硬化性化合物としては、通常活性エネルギー線硬化型オフセット印刷インキに使用される化合物であれば特に限定なく使用できる。具体的には例えば、(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(重合性モノマーや重合性オリゴマーと称される場合もある)が挙げられる。
【0060】
(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物である単官能モノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチルテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する化合物である2官能以上のモノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等の3価以上の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、グリセリン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジ又はトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレンポリオールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
(メタ)アクリロイル基を含有する重合性オリゴマーとしては、アミン変性ポリエーテルアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、アミン変性脂肪族アクリレート、アミン変性ポリエステルアクリレート、アミノ(メタ)アクリレートなどのアミン変性アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリスチレン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0063】
エチレン性二重結合を有する化合物の総量は、活性エネルギー線硬化性ニス全量の40~80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは50~70質量%であれば更に好ましい。また、各種化合物の併用に伴う優れた硬化性、優れた流動性を兼備する観点から両者の添加量はこの範囲が好ましい。
【0064】
(活性エネルギー線硬化型ニス(B) 光重合開始剤)
活性エネルギー線硬化型ニス(B)は光重合開始剤Bを含有する。光重合開始剤としては公知の光重合開始剤を単独または併用して使用することができる。以後活性エネルギー線硬化型ニスに使用する光重合開始剤を光重合開始剤Bと表記する。
光重合開始剤Bは、前述の油性インキに使用される光重合開始剤Aと同様の光重合開始剤を1種でも数種併用して使用することができる。
【0065】
前記光重合開始剤Aの添加量としては、油性インキ(A)全量の2~10質量%が好ましく、前記光重合開始剤Bの添加量としては、活性エネルギー線硬化型ニス(B)全量の2~20質量%が好ましく、より好ましくは5~15質量%が好ましい。
前記光重合開始剤A、光重合開始剤B共に、上記の量であれば、油性インキ(A)、活性エネルギー線硬化型ニス(B)の流動性が保たれ、光重合開始剤成分の析出が抑制でき保存安定性が保持される。
【0066】
(活性エネルギー線硬化型ニス(B) シリコーン化合物)
活性エネルギー線硬化型ニス(B)で使用するシリコーン化合物としては、例えば、ジメチルシリコーン化合物、ポリエーテル変性シリコーン化合物、ポリエステル変性シリコーン化合物、ポリエーテル変性及びポリエステル変性シリコーン化合物等のポリエーテル変性及び/又はポリエステル変性シリコーン化合物を好ましく使用することができる。
前記ポリエーテル変性及び/又はポリエステル変性シリコーン化合物、ポリシロキサンの末端及び/又は側鎖に、ポリエーテル鎖及び/又はポリエステル鎖が導入された化合物等が挙げられ、ポリシロキサンにポリエーテル鎖およびポリエステル鎖以外のエポキシ基、アミノ基の如き有機基の導入が併用された共変性シリコーン化合物であっても差し支えない。また、分子中に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン化合物ものであれば、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができ、好ましい。
【0067】
前記ジメチルシリコーン化合物として、例えばKF-96、KF-965〔以上;信越化学工業(株)製〕等が挙げられる。
また、前記ポリエーテル変性シリコーンとして、例えば、KF-351、KF-352、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-618、KF-6011、KF-6015、KF-6004、X-22-4272、X-22-4952、X-22-6266、X-22-3667、X-22-4741、X-22-3939A、X-22-3908A〔以上;信越化学工業(株)製〕、BYK-300、BYK-302、BYK-306、BYK-310、BYK-320、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-344、BYK-375、BYK-377、BYK-UV3510、BYK-301、BYK-307、BYK-325、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348(以上;ビックケミー社製)等が挙げられる。
また、分子中に一つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン化合物としては、例えば、BYK-UV3500、BYK-UV3570、BYK-UV3530(以上;ビックケミー社製)、TegoRad2010、TegoRad2100、TegoRad2200N、TegoRad2300(以上;Evonik社製)等が挙げられる。
これらジメチルシリコーン化合物、ポリエーテル変性またはポリエステル変性シリコーン化合物はそれぞれ単独、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
前記シリコーン化合物の含有量は、活性エネルギー線硬化型ニス全量に対して0.1質量%以上であることが好ましい。又、シリコーン化合物の含有量は、活性エネルギー線硬化型ニス全量に対して3質量% 以下であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、レベリング等のシリコーン化合物の機能が有効に発揮する傾向となる。一方で3質量%以上添加してもレベリング等の効果がそれ以上向上することがなく、逆に粘度増加等の原因となる可能性がある。0.1質量%以上、又は、3質量%以下とすることで、活性エネルギー線硬化型ニスが基材等に対し好ましい濡れ性を有することとなり、印刷する際にニスのハジキが緩和され濡れ広がることが可能となるため、より好ましい活性エネルギー線硬化型ニスとすることができる。
【0069】
(活性エネルギー線硬化型ニス(B) 微粒子)
活性エネルギー線硬化型ニス(B)は、微粒子を含有することは必須ではないが、本発明の印刷物の耐ブロッキング性が向上することから、添加することが好ましい。微粒子の材料としては特に限定なく、例えば有機系粒子であれば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリアミド樹脂、アミノ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。また無機系粒子であれば、シリカ、シリコーン微粒子、アルミナケイ酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等を好適に用いることができる。なかでも、シリコーン系微粒子使用することが好ましい。
【0070】
微粒子の粒子径は、粒子径0.1~5μmであれば、耐ブロッキング性の向上に優れることから好ましく、中でも2~3μmがより好ましい。微粒子の添加量は、活性エネルギー線硬化型ニス(B)の全量に対して、0.01質量%以上であり2.5質量%以下であることが望ましく、特に0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましい。この範囲において、他の物性に影響することなく耐ブロッキング性の向上を期待することができる。
なお粒子径は、日立製作所製操作型電子顕微鏡S-3400Nにより測定した値とする。
【0071】
(活性エネルギー線硬化型ニス(B) その他の成分)
本発明で使用する活性エネルギー線硬化型ニス(B)には必要に応じ更に、バインダー樹脂、有機溶剤、体質顔料、増感剤、酸化防止剤、重合禁止剤、ワックス等を含有しても良い。
【0072】
前記体質顔料は活性エネルギー線硬化型ニス(B)としての粘度・流動性調整や印刷時のミスチング防止、紙基材への浸透防止等の物性改良・機能性付与を目的とするものである。
前記体質顔料としては公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「顔料便覧(編集:日本顔料技術協会編)」に掲載される印刷インキ用体質顔料等が挙げられ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、マイカ、硫酸バリウム、シリカ及び水酸化アルミニウム等が使用可能である。
【0073】
前記バインダー樹脂としては、適切な顔料親和性と分散性を有し、印刷インキ等に要求されるレオロジー特性を有する樹脂全般を示しており、例えば非反応性樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体等を挙げることができ、また分子中に少なくとも1つ以上の重合性基を有するエポキシアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物等を使用することもでき、これらバインダー樹脂は、単独で使用しても、いずれか1種以上を組合せて使用してもよい。
【0074】
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n-ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類等が挙げられる。
ただし環境対応を目的として、大気中への有機溶剤の蒸散量の徹底的な低減、即ち揮発性有機化合物(VOC)の削減をする場合は、上記の有機溶剤を含まない方がより好ましい。
【0075】
本発明の印刷物で使用する油性インキ(A)、及び前記活性エネルギー線硬化型ニス(B)の製造は、従来の油性インキ、活性エネルギー線硬化型ニスと同様に、各々諸原料を配合してミキサー等で撹拌混合することで製造され、更に必要に応じ三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【0076】
(印刷物の製造方法)
本発明の印刷物は、基材上に、前記油性インキ(A)を印刷し油性インキ(A)層を設ける工程1と、前記油性インキ(A)層が乾燥する前に、当該油性インキ(A)層上に、前記活性エネルギー線硬化型ニス(B)を印刷した後、活性エネルギー線を照射する工程2とを有する印刷物の製造方法にて製造する。
前記油性インキ(A)層が乾燥する前に、当該油性インキ(A)層上に、前記活性エネルギー線硬化型ニス(B)を印刷する事から、油性インキ(A)と活性エネルギー線硬化型ニス(B)はこの順にインライン方式で連続印刷する事が好ましい。また、油性インキ(A)はプロセスインキ及び特色を含む単色、2色、3色、墨・藍・紅・黄の4色プロセスカラー、5色以上の多色刷りであっても構わないが、本発明の印刷物で使用する油性インキ(A)(A)と活性エネルギー線硬化型ニス(B)は、油性インキ(A)が活性エネルギー線硬化型インキに比べて低極性である事による「はじきの現象」を抑制する為に、油性インキ(A)の低極性を活性エネルギー線硬化型ニス(B)の高極性に近づけ「はじきの現象」が解消するものであり、「油性インキ(A)と活性エネルギー線硬化型ニス(B)のセット」を前提に設計されたものである。
具体的には色数に応じてオフセットPS版又はCTP版を装着したオフセット印刷機の印刷胴で前記油性インキ(A)を用い各色インキ層を形成した直後に、最終胴にて活性エネルギー線硬化型ニス(B)による透明被覆層を形成させた後、活性エネルギー線照射による硬化乾燥を行う。この場合、オフセットPS版又はCTP版の画線部に従って部分的に透明被覆層を設ける事も、全面ベタで透明被覆層を設ける事も出来る。また、2色、3色、4色と多色印刷する際の油性インキ(A)の刷り順は特に問わない。
【0077】
前記工程2で使用する活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線が挙げられる。中でも紫外線が好ましく、紫外線による硬化反応を効率よく行う上で、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で照射してもよく、空気雰囲気下で照射しても良い。
【0078】
前記紫外線の発生源としては、実用性、及び経済性の面から紫外線ランプが一般的に用いられている。具体的には、殺菌灯、紫外線用蛍光灯、複写用高圧水銀灯、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、無電極ランプ、カーボンアーク、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、太陽光、紫外線発光ダイオード(UV-LED)等が挙げられる。
【実施例
【0079】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。また表の空欄は未配合を表す。
【0080】
〔油性オフセットプロセス色インキの作製〕
【0081】
(製造実施例1)
表1の配合に従い、色材として黄色顔料であるジスアゾイエローY-13を12部、桐油(ヨウ素価:145~176)を33部、亜麻仁油(ヨウ素価:168~190)を23部、ロジン変性フェノール樹脂ハリフェノールP-597(ハリマ化成株式会社製)を32部、ポリエチレンワックスS-381-N1(シャムロック社製)を1部の合計101部からなる組成物を、三本ロールミルにて練肉することで、黄色インキ1を作製した。
【0082】
(製造実施例2~44)
表1~4の配合に従い、黄・紅・藍・墨の各プロセスカラーインキを作製した。
【0083】
(製造実施例2~44)
表1、2、3、4の配合に従い、黄・紅・藍・墨の各プロセスカラーインキを作製した
した。
プロセスカラーインキ黄は、製造実施例1、5、9、13、17、21、25、29、33、37、41
プロセスカラーインキ紅は、製造実施例2、6、10、14、18、22、26、30、34、38、42
プロセスカラーインキ藍は、製造実施例3、7、11、15、19、23、27、31、35、39、43
プロセスカラーインキ墨は、製造実施例4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44である。
【0084】
(製造比較例1~8)
表5の配合に従い、製造比較例1~8の各プロセスカラーインキを作製した。
プロセスカラーインキ黄は、製造比較例1、5、
プロセスカラーインキ紅は、製造比較例2、6、
プロセスカラーインキ藍は、製造比較例3、7、
プロセスカラーインキ墨は、製造比較例4、8である。
【0085】
表1~5中、空欄は未配合である。
また表1~5中、略語等は次の通りである。
・ロジン変性フェノール樹脂 ハリフェノールP-597(ハリマ化成株式会社製)
・ロジン変性 エステル樹脂 マレイン化ロジンエステル HARITACK-28JA(ハリマ化成株式会社製)
・ポリエチレンワックスS-381-N1(シャムロック社製)
・2μmシリコーンビーズKMP-590(信越シリコーン社製)
・3μmシリコーン微粒子トスパール130(モメンティブ社製)
・2μm架橋ポリメタクリル酸ブチルビーズ ガンツパールGM-0105(アイカ工業社製)
・2.5μmアルミノケイ酸塩微粒子シルトンAMT25(水澤化学工業社製)
・Omnirad TPO H(IGM Resins B.V.社製、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(極大光吸収波長275nm、379nm)
・Omnirad TPO L(IGM Resins B.V.社製、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル(極大光吸収波長274nm、290nm、370nm)
・Omnirad184(IGM Resins B.V.社製、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(極大光吸収波長243nm、331nm)
Omnirad184
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
【表4】

【0090】
【表5】

【0091】
〔活性エネルギー線硬化型ニスの作製〕
(製造実施例45)
表6の配合に従い、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートであるMiramerM410(MIWON社製)を10部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)であるMiramerM600(MIWON社製)を30部、ジアリルオルソフタレート樹脂であるダイソーダップA(平均重量分子量5.5万:(株)大阪ソーダ社製)を14部、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(EO変性TMPTA)であるMIRAMER M-3130(MIWON社製)を20部、炭酸カルシウムである白艶華TDD(白石工業株式会社製)を6部、炭酸マグネシウムTT(ナイカイ塩業株式会社製)を2部、光重合開始剤Omnirad184(IGM Resins B.V.社製、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(極大光吸収波長243nm、331nm)を11部、ポリエチレンワックスS-381-N1を6部、シリコーン添加剤KF96(信越化学工業株式会社製)を1部の合計100部とし、3本ロールで連肉し完成したニスを活性エネルギー線硬化型ニスとした。
【0092】
(製造実施例46~48)(製造比較例9)
表6の配合に従い、活性エネルギー線硬化型ニスを作製した。
【0093】
表6中、空欄は未配合である。
また表6中、略語等は次の通りである。
・MiramerM410 ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートである(MIWON社製)
・MiramerM600 ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)(MIWON社製)
・ダイソーダップA ジアリルオルソフタレート樹脂(平均重量分子量5.5万:(株)大阪ソーダ社製)
・MIRAMER M-3130 エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(EO変性TMPTA)(MIWON社製)
・白艶華TDD 炭酸カルシウム(白石工業株式会社製)
・炭酸マグネシウムTT(ナイカイ塩業株式会社製)を2部、
・Omnirad184(IGM Resins B.V.社製、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(極大光吸収波長243nm、331nm)
・ポリエチレンワックスS-381-N1(シャムロック社製)
シリコーン添加剤KF96(信越化学工業株式会社製)
・2μmシリコーンビーズKMP-590(信越シリコーン社製)
・3μmシリコーン微粒子トスパール130(モメンティブ社製)
・2μm架橋ポリメタクリル酸ブチルビーズ ガンツパールGM-0105(アイカ工業社製)
・2.5μmアルミノケイ酸塩微粒子シルトンAMT25(水澤化学工業社製)
【0094】
【表6】


【0095】
〔印刷物の作製〕
小森コーポレーション社製リスロンGL440(5色機)を用いて、インキ壷と壷ローラーの間のクリアランスを2-3μmに調整した後、刷り順を油性インキ墨→油性インキ藍→油性インキ紅→油性インキ黄→活性エネルギー線硬化型ニスのオンライン連続印刷にて、インキ部の単色濃度を墨濃度1.8、藍濃度1.6、紅濃度1.5、黄濃度1.35(何れもX-Rite社製SpectroEye濃度計で計測)で均一に濃度合わせした。活性エネルギー線硬化型ニスは、ニスの送り量を統一して印刷した。毎時15000枚の印刷速度にてオフセット印刷を実施し、表7~11に示す実施例1~14、比較例1~3の印刷物を作製した。
印刷用紙には王子製紙社製OKトップコートプラス(57.5kg、A判)を使用した。版面に供給される湿し水は、水道水97.5質量%とエッチ液(Presart SU、DIC社製)2.5質量%を混合した水溶液を用いた。最終胴では、アイグラフィックス社製水冷メタルハライドランプ(出力160W/cm、3灯使用)を紫外線照射した。
【0096】
前記作製した印刷物に対し、光沢性、及び密着性を評価した。また、一部条件においては、耐ブロッキング性および耐摩擦性を評価した。
【0097】
〔評価項目1:光沢〕
作製した印刷物の印刷面の光沢値を60°光沢計(BYK Garder GmbH製)で測定し、次の4段階で評価した。数値が高い程、光沢が良い事を示す。
測定は刷了直後については、油性インキ墨・油性インキ藍・油性インキ紅・油性インキ黄・活性エネルギー線硬化型OPニスの4色重ね部分を、また刷了から24時間経過後については、表が示す各色の単色、2色、3色、4色重ね刷り部分毎に光沢値を測定した。
なお判定基準は次の4段階とした。
(評価基準)
◎:光沢値が40以上である。
○:光沢値が35以上 40未満である。
△:光沢値が30以上 35未満である。
×:光沢値が30未満である。
【0098】
〔評価項目2:密着性〕
作製した印刷物を刷了から24時間経過後に、印刷面の油性インキ墨・油性インキ藍・油性インキ紅・油性インキ黄・活性エネルギー線硬化型OPニスの4色重ね部分にセロハンテープ(ニチバン製)を貼り付け、これを急速に剥がしたときの印刷皮膜の外観の状態を目視判定した。インキとOPニスの密着性が良好な場合は、インキとOPニス間の界面剥離が発生せず紙剥けが起こる。一方、密着性が乏しい場合、インキとOPニス間の界面剥離が発生し、セロハンテープにOPニスだけが取られる。なお判定基準は次の3段階とした。
(評価基準)
〇:面積率95%以上で界面剥離が発生せず、紙剥けが起こる。
△:面積率70%以上、95%未満で界面剥離が発生せず、紙剥けが起こる。
×:面積率70%未満で界面剥離が発生せず、紙剥けが起こる。またはインキとOPニス間の界面剥離が発生し、セロハンテープにOPニスだけが取られる。
【0099】
〔評価項目3:耐ブロッキング性〕
刷了後の印刷物を1500枚棒積みし24時間放置した。その後、用紙の裏にインキの裏うつりが無いか確認した。また、用紙をめくった際に、紙がはがれる音がしたかどうかを確認した。
◎:全く色がつかなかず、紙がはがれる音もしなかった
〇:全く色がつかなかず、紙がはがれる音がした
△:全く色がつかなかず、紙がはがれる音が明瞭にした
×:色が付いていた。
【0100】
〔評価項目4:耐摩擦性〕
作成した印刷物を刷了から24時間経過後に2-3cm幅の短冊状にカットした。摩擦面には、印刷物作成時に用いた白紙を準備し、印刷物面と白紙面が擦れあうように学振摩擦試験機(DAISEI KAGAKU社製)に取り付けた。500gの重りを各サンプル上に取り付け試験機を稼働させた。印刷面と白紙で500往復摩擦し表面の状態を下記の評価基準にて判定した。
(評価基準)
〇:傷がまったくない
△:10%ほど印刷物に白い傷が入った。
×:摩擦面の半分以上が剥離した。
【0101】
表7~11に印刷物の評価結果を示す。
【0102】
【表7】

【0103】
【表8】

【0104】
【表9】

【0105】
【表10】

【0106】
【表11】

【0107】
本発明の基材と、その基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であっても、光沢性が充分保持され、印刷物の基本性能である密着性も兼備している。
【要約】
基材と、基材上に印刷された油性インキ層と、前記油性インキ層を覆う活性エネルギー線硬化塗膜層とを備える印刷物であって、(1)~(3)を満たす印刷物、当該印刷物に使用するインキとニスのセット。
(1)前記油性インキ層が、色材、バインダー樹脂、及びヨウ素価が140以上で且つ共役酸含有脂肪酸エステルを含有する植物油を含有する油性インキからなる層である。
(2)前記活性エネルギー線硬化塗膜層が、活性エネルギー線硬化性化合物、シリコーン化合物及び光重合開始剤Bを含有する活性エネルギー線硬化型ニスの硬化物からなる層である。
(3)前記シリコーン化合物の添加量が活性エネルギー線硬化型ニス全量の0.1~3質量%である。