(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】セラミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
C11B 11/00 20060101AFI20240805BHJP
C11B 1/10 20060101ALI20240805BHJP
A61K 8/68 20060101ALN20240805BHJP
A61K 35/618 20150101ALN20240805BHJP
A61P 17/16 20060101ALN20240805BHJP
A61Q 19/00 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
C11B11/00
C11B1/10
A61K8/68
A61K35/618
A61P17/16
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019533817
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2017028219
(87)【国際公開番号】W WO2019026230
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-07-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】599039887
【氏名又は名称】株式会社双葉紙器
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊川 喜仁
(72)【発明者】
【氏名】大隈 信行
【合議体】
【審判長】関根 裕
【審判官】塩見 篤史
【審判官】菊地 則義
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-180311(JP,A)
【文献】特開2000-80394(JP,A)
【文献】特開2008-208284(JP,A)
【文献】石川 哲ほか、イカ加工残渣からのセラミド抽出技術の開発、青森県産業技術センター食品総合研究所研究報告、(2011)、第2号、pp.28-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B1/00-15/00
C11C1/00-5/02
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-99/00
A61P1/00-43/00
A61K35/00-36/068
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA(STN)
JDreamIII
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料となる
魚介類の肉を、ヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒中で撹拌し、セラミドとセラミドシリアチンとを該第1の混合溶媒中に抽出する工程と、
該第1の混合溶媒を濾過して濾液を得る工程と、
得られた濾液を減圧蒸留により乾固して、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を得る工程と、
該乾固により得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物に、ヘキサンとエタノールと水とからなる第2の混合溶媒を加え、撹拌した後、静置することにより、該第2の混合溶媒をヘキサン相とエタノール-水相とに分離する工程と、
該ヘキサン相を乾固してセラミドを得る工程とを備えることを特徴とするセラミドの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のセラミドの製造方法において、前記第2の混合溶媒は、エタノール100質量部に対し、ヘキサンを100~200質量部の範囲、水を3~50質量%の範囲で含むことを特徴とするセラミドの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のセラミドの製造方法において、前記乾固により得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物に、ヘキサンを加え、撹拌した後、濾過して得られた濾液を減圧蒸留により乾固する操作を所定回数行うことを特徴とするセラミドの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のセラミドの製造方法において、前記エタノール-水相にヘキサンを加え、撹拌した後、静置することにより、ヘキサン相とエタノール-水相とに分離し、該ヘキサン相を乾固してセラミドを得る操作を少なくとも1回行うことを特徴とするセラミドの製造方法。
【請求項5】
請求項1記載のセラミドの製造方法において、前記
魚介類の肉は、
イカの肉を乾燥後、粉砕して得られた粉末であることを特徴とするセラミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド等のスフィンゴ脂質は、皮膚の保湿効果を高めることが知られており、化粧品原料等の用途に用いられている。
【0003】
セラミドは、次式(1)で示される化合物である。一方、魚肉の場合には、次式(2)で示されるセラミドシリアチンとして存在しており、セラミドシリアチンの一部がその遊離体としてのセラミドに変化していると考えられる。
【0004】
【0005】
【化2】
(2)
尚、式(1)、式(2)において、---は-(CH)
n-(nは整数)を示す。
【0006】
従来、セラミドの製造方法として、動植物から有機溶剤によりセラミドを抽出する方法が知られており、前記有機溶媒としてメタノール、エタノール、ヘキサン、アセトン等の溶媒を混合して用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、米糠からセラミドを抽出する場合には、水、エタノール、ヘキサン、アセトンから選択される2種以上の溶媒を混合して用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2003-221592号公報
【文献】特開平11-279586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来の製造方法により魚介類の肉から抽出される抽出物は、前記式(1)で示されるセラミドと、前記式(2)で示されるセラミドシリアチンとの混合物であり、セラミドとセラミドシリアチンとでは作用が異なるため、セラミドを選択的に分離することが望まれる。
【0010】
本発明は、かかる事情に鑑み、魚介類の肉から有機溶媒により抽出される抽出物から、セラミドを選択的に分離することができるセラミドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明のセラミドの製造方法は、原料となる魚介類の肉を、ヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒中で撹拌し、セラミドとセラミドシリアチンとを該第1の混合溶媒中に抽出する工程と、該第1の混合溶媒を濾過して濾液を得る工程と、得られた濾液を減圧蒸留により乾固して、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を得る工程と、該乾固により得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物に、ヘキサンとエタノールと水とからなる第2の混合溶媒を加え、撹拌した後、静置することにより、該第2の混合溶媒をヘキサン相とエタノール-水相とに分離する工程と、該ヘキサン相を乾固してセラミドを得る工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のセラミドの製造方法では、まず、原料となる魚介類の肉を、ヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒中で撹拌し、セラミドとセラミドシリアチンとを該第1の混合溶媒中に抽出する。次に、第1の混合溶媒を濾過して濾液を得る。前記濾過により、前記第1の混合溶媒に含まれる魚介類の肉の残渣を除去し、セラミドとセラミドシリアチンとを含む濾液を得ることができる。
【0013】
次に、得られた濾液を減圧蒸留により乾固して、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を得る。前記濾液は、減圧蒸留することにより、セラミド又はセラミドシリアチンが分解されることなく、前記第1の混合溶媒を留去することができる。
【0014】
次に、前記乾固により得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物に、ヘキサンとエタノールと水とからなる第2の混合溶媒を加え、撹拌した後、静置することにより、該第2の混合溶媒をヘキサン相とエタノール-水相とに分離する。このとき、セラミドシリアチンが実質的にエタノール-水相に溶解しているのに対し、セラミドはヘキサン相とエタノール-水相とに対する分配係数に従って、ヘキサン相とエタノール-水相との両方に溶解している。
【0015】
そこで、実質的にセラミドのみを選択的に含有している前記ヘキサン相を乾固することによりセラミドを得ることができる。
【0016】
上述のように、本発明のセラミドの製造方法によれば、魚介類の肉から前記第1の混合溶媒により抽出されたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物を、ヘキサンとエタノールと水とからなる前記第2の混合溶媒に溶解し、ヘキサン相とエタノール-水相とに分離することにより、該ヘキサン相から容易且つ選択的にセラミドを得ることができる。
【0017】
前記第2の混合溶媒は、例えば、エタノール100質量部に対し、ヘキサンを100~200質量部の範囲、水を3~50質量%の範囲で含む組成とすることができる。
【0018】
また、本発明のセラミドの製造方法では、前記減圧蒸留により乾固して得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物に、ヘキサンを加え、撹拌した後、濾過して得られた濾液を減圧蒸留により乾固する操作を所定回数行うことが好ましい。
【0019】
このようにすると、セラミドとセラミドシリアチンとはヘキサンに溶解されるので、ヘキサンに溶解しない夾雑物を濾別することができ、前記セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を精製することができる。前記操作は、例えば、1~5回行うことが好ましい。
【0020】
また、本発明のセラミドの製造方法では、セラミドは、ヘキサン相とエタノール-水相との両方に分配されて溶解しているので、該エタノール-水相にはセラミドシリアチンとともに該ヘキサン相に抽出されなかった残余のセラミドが含まれている。
【0021】
そこで、本発明のセラミドの製造方法では、前記エタノール-水相にヘキサンを加え、撹拌した後、静置することにより、ヘキサン相とエタノール-水相とに分離し、該ヘキサン相を乾固してセラミドを得る操作を少なくとも1回行うことが好ましい。このようにすることにより、前記エタノール-水相に含まれるセラミドをヘキサンにより抽出して回収することができ、セラミドの収率を向上させることができる。
【0022】
また、本発明のセラミドの製造方法では、前記魚介類の肉は、例えば、イカの肉を乾燥後、粉砕して得られた粉末を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0025】
図1に示すように、本実施形態のセラミドの製造方法では、まず、反応容器に収容された原料の
魚介類の肉1に、第1の混合溶媒2を添加して、撹拌、混合することにより、第1の混合液3を得る。
【0026】
魚介類の肉1としては、例えば、真イカ、ヤリイカ、剣先イカ等を2日間天日乾燥し、さらに温風乾燥機により40℃で48時間乾燥した乾燥品を裁断し、さらに粉砕した粉末を用いることができる。前記粉末は、例えば、約10質量%の水分を含み、500μm以下の粒子径を備えている。また、第1の混合溶媒2は、ヘキサンとエタノールからなり、例えば、エタノール100質量部に対し、ヘキサンを55~65質量部の範囲で含んでいる。
【0027】
次に、反応容器中で、10gの魚介類の肉1に対し、第1の混合溶媒2を例えば60~120ml添加し、1~4時間撹拌、混合する。このようにすることにより、魚介類の肉1に含まれるセラミドとセラミドシリアチンとが、第1の混合溶媒2に抽出された第1の混合液3が得られる。
【0028】
本実施形態では、次に、第1の混合液3を濾過し、第1の混合液3に含まれる魚介類の肉の残渣4を除去し、セラミドとセラミドシリアチンとを含む濾液5を得る。そして、濾液5を蒸発乾固させることにより、セラミドとセラミドシリアチンとを含む混合物6を得る。前記蒸発乾固は、例えば、ロータリーエバポレーター等を用いて濾液5を減圧蒸留し、第1の混合溶媒2を留去することにより行うことができる。
【0029】
本実施形態では、次に、反応容器中で、例えば、1.0gの混合物6に対し、20~50mlのヘキサンを添加する。混合物6は、セラミドとセラミドシリアチンとの他に、ヘキサンに溶解しにくい夾雑物を含んでいる。そこで、混合物6にヘキサンを添加することにより、主としてセラミドとセラミドシリアチンとが溶解している混合物溶液7を得ることができる。
【0030】
次いで、混合物溶液7を濾過することにより前記夾雑物を濾別して残渣8として除去することができ、得られた濾液9を蒸発乾固することにより、精製されたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物(精製混合物10)を得ることができる。濾液9の蒸発乾固は、濾液5の蒸発乾固と同様にして行うことができる。
【0031】
混合物6にヘキサンを添加して、混合物溶液7を濾過し、濾液9を蒸発乾固する操作は行わなくてもよいが、1~10回繰り返すことにより、精製混合物10としてより純度の高いセラミドとセラミドシリアチンとを得ることができる。ただし、前記操作が5回を超えると、セラミドの収率が低下することがある。
【0032】
本実施形態では、次に、精製混合物10を分液ロートに収容し、第2の混合溶媒11を添加して、第2の混合液12を得る。第2の混合溶媒11は、ヘキサンとエタノールと水とからなり、例えば、エタノール100質量部に対し、ヘキサンを100~200質量部、水を3~50質量部の範囲で含んでいる。
【0033】
第2の混合液12は、分液ロート中で、1.0gの精製混合物10に対し、第2の混合溶媒11を例えば30~150ml添加することにより得られる。次いで、第2の混合液12を、例えば、0.5~1.5時間撹拌した後、静置する。このようにすると、第2の混合液12は分液ロート中でヘキサン相13と、エタノール-水相14とに分離する。
【0034】
ここで、ヘキサン相13にはセラミドが含まれており、エタノール-水相14にはセラミドとセラミドシリアチンとが含まれている。そこで、ヘキサン相13とエタノール-水相14とを分離し、ヘキサン相13を蒸発乾固することによりセラミド15を得ることができる。ヘキサン相13の蒸発乾固は、濾液5又は濾液9の蒸発乾固と同様にして行うことができる。
【0035】
一方、エタノール-水相14には、セラミドとセラミドシリアチンとが含まれているので、エタノール-水相14にヘキサンを加え、撹拌した後、静置し、再びヘキサン相13とエタノール-水相14とに分離し、ヘキサン相13を蒸発乾固する操作を少なくとも1回行うことが好ましい。このようにすることにより、エタノール-水相14中に含まれるセラミドを回収することができ、全体としてのヘキサンの収率を向上させることができる。
【0036】
尚、本実施形態では、ヘキサン相13とエタノール-水相14との分離を分液ロートにより行っているが、工業的に行う場合には、例えば、向流多段抽出法等の方法により行うことができる。
【0037】
次に、実施例を示す。
【実施例】
【0038】
本実施例では、まず、魚介類の肉1として、例えば、真イカ、ヤリイカ、剣先イカ等を2日間天日乾燥し、さらに温風乾燥機により40℃で48時間乾燥した乾燥品を裁断し、さらに粉砕したイカ粉末10gを用意した。次に、反応容器中で、10gの魚介類の肉1に対し、エタノール50mlとヘキサン30mlとからなる第1の混合溶媒2を添加し、2時間撹拌、混合して、第1の混合液3を得た。
【0039】
次に、第1の混合液3を濾過して、第1の混合液3に含まれる魚介類の肉の残渣4を除去し、得られた濾液5を蒸発乾固させることにより、混合物6を得た。次に、反応容器中で、1.0gの混合物6に、ヘキサン30mlを添加して混合物溶液7とし、生じた白色沈殿を夾雑物(残渣8)として濾別して、濾液9を得た。次に、得られた濾液9を蒸発乾固することにより、精製されたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物(精製混合物10)を得た。
【0040】
次に、1.0gの精製混合物10を分液ロートに収容し、エタノール20mlとヘキサン30mlと水3.5mlからなる第2の混合溶媒11を添加し、混合して、第2の混合液12を得た。次いで、第2の混合液12を、1昼夜静置して、分液ロート中で分離したヘキサン相13と、エタノール-水相14とをそれぞれ分取し、ヘキサン相13を蒸発乾固することにより、セラミドを得た。
【0041】
次に、濾液9を試料1、ヘキサン相13を試料2、エタノール-水相14を試料3として、高速液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)により分析した。
【0042】
高速液体クロマトグラフとしては、株式会社島津製作所製クロマトグラフを用い、質量分析計としてはWaters社製四重極-飛行時間型質量分析計(商品名:Xevo G2S QTof)を用いた。カラムは、株式会社ワイエムシィ製J'sphere ODS-M80(商品名)、内径3.0mm、長さ150mmを用い、0.1%-酢酸アンモニウム:メタノール=2:98の溶媒を0.4ml/分の流速(設定値)で、40℃の温度下に流通させた。
【0043】
得られたクロマトグラムの各ピークの保持時間を、予め設定されたセラミド及びセラミドシリアチンの各分子種の保持時間と比較することにより、各ピークの化合物を同定した。予め設定されたセラミドの各分子種の保持時間を表1に、セラミドシリアチンの各分子種の保持時間を表2にそれぞれ示す。
【0044】
尚、表1、表2において、セラミド及びセラミドシリアチンの各分子種は、次の一般式(3)で表され、長鎖塩基(LCB)の炭素数をA、炭素-炭素二重結合数をB、不飽和脂肪酸(FA)の炭素数をC、炭素-炭素二重結合数をDとして、dA:B/C:D(A,B,C,Dは0以上の整数)と記載する。
【0045】
【化3】
(3)
一般式(3)において、R
1、R
2は不飽和であってもよい炭化水素基を示し、X-はセラミドの場合にはH-であり、セラミドシリアチンの場合にはNH
2C
2H
4PO(OH)-である。
【0046】
また、一般式(3)の構造をMとするときに、前記質量分析計において、セラミドの各分子種は、Mに対して水1分子が脱水され、プロトン化された構造[M+H-H2O]+として検出され、セラミドシリアチンの各分子種は、Mに対してプロトン化された構造[M+H]として検出される。
【0047】
【0048】
【表2】
また、和幸純薬工業株式会社から入手した炭素数18のセラミドの標準品(Toronto Research Chemicals Inc.製)の0.1~20μg/mlの各メタノール溶液を試料として、上述と同一条件で高速液体クロマトグラフ質量分析を行ったときの各濃度に対するクロマトグラムの各ピーク面積をプロットして検量線を作成した。そして、前記検量線を用いて、本実施例で得られたクロマトグラムの各ピーク面積から、セラミド及びセラミドシリアチンの各分子種の濃度を定量した。
【0049】
試料1~3について、得られたクロマトグラムから同定されたセラミド及びセラミドシリアチンの各分子種と、その濃度とを、表3~5にそれぞれ示す。
【0050】
【0051】
【0052】
【表5】
表3から、第2の混合溶媒11による抽出前の濾液9には、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物が含まれていることがわかる。
【0053】
これに対し、表4から、第2の混合溶媒11による抽出後、1昼夜静置することにより第2の混合液12から分離したヘキサン相13にはセラミドのみが含まれていることがわかる。従って、ヘキサン相13を蒸発乾固させることにより、セラミドを得ることができることが明らかである。
【0054】
また、表5から、第2の混合溶媒11による抽出後、1昼夜静置することにより第2の混合液12から分離したエタノール-水相14にはセラミドとセラミドシリアチンとの混合物が含まれていることがわかる。これは、セラミドが、ヘキサン相13とエタノール-水相14とに分配された結果と考えることができる。従って、エタノール-水相14にヘキサンを加え、撹拌した後、静置し、分離したヘキサン相13を蒸発乾固する操作を繰り返すことにより、エタノール-水相14中に含まれるセラミドを回収することができ、全体としてのセラミドの収率を向上させることができることが明らかである。
【0055】
また、この結果、エタノール-水相14には相対的にセラミドの含有量が低減されたセラミドシリアチンが残る。従って、エタノール-水相14から実質的にセラミドシリアチンのみを得ることができる。
【0056】
そこで、本発明のセラミドの製造方法においては、前記エタノール-水相にヘキサンを加え、撹拌した後、静置することにより、ヘキサン相とエタノール-水相とに分離し、該ヘキサン相を乾固してセラミドを得る操作を少なくとも1回行った後のエタノール-水相からセラミドシリアチンを得ることが好ましい。
【符号の説明】
【0057】
1…魚介類の肉、 2…第1の混合溶媒、 5…濾液、 6…混合物、 11…第2の混合溶媒、 13…ヘキサン相、 14…エタノール-水相、 15…セラミド。