(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】ペダルシフト型クランク回転駆動機構
(51)【国際特許分類】
B62M 3/06 20060101AFI20240805BHJP
B62M 1/26 20130101ALI20240805BHJP
【FI】
B62M3/06
B62M1/26
(21)【出願番号】P 2024072851
(22)【出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-05-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505117179
【氏名又は名称】内川 靖夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】内川 靖夫
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-142549(JP,A)
【文献】特表2016-529160(JP,A)
【文献】国際公開第2009/136088(WO,A2)
【文献】仏国特許出願公開第2874588(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 1/00 ― 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームなどに回転可能に取り付けられるクランク軸の両端部に夫々固定され、180度の作動位相角差を備えつつ動作する左右一対のクランクアームと、
前記左右一対のクランクアームの夫々の先端に設けられたクランク回動軸と、
前記フレームなどにおいて、前記クランク軸からクランクアーム長さを超えて離れた位置に固定配置された固定揺動支点軸に軸支された左右一対の揺動アームと、
前記クランク回動軸に回転自在に軸支されると共に前記揺動アームに保持され、当該揺動アームの長手方向に沿って往復移動可能であって、前記長手方向における前記固定揺動支点軸の方向を後端側とし、その反対方向を先端側とした場合に当該長手方向において一体的に移動する第1スライダー先端側当接部位および第1スライダー後端側当接部位が互いに相反する方向に向けて保有されている左右一対の第1スライダーと、
前記揺動アームに保持され、当該揺動アームの前記長手方向に沿って往復移動可能な第2スライダーであって、前記長手方向において一体的に移動する第2スライダー先端側当接部位および第2スライダー後端側当接部位が前記第1スライダーを所定の間隔をもって挟む状態で互いに向き合う方向に向けて保有され、かつ、相対する前記第1スライダー先端側当接部位および前記第2スライダー先端側当接部位の当接または非当接、あるいは相対する前記第1スライダー後端側当接部位および前記第2スライダー後端側当接部位の当接または非当接により、前記第1スライダーの往復移動に伴って同じ方向に、移動可能範囲内で断続的に往復移動する左右一対の前記第2スライダーと、
前記第1スライダーの往復移動の間、前記揺動アームの前記第1スライダーより先端側に位置するように構成される第2スライダー前ブロックに取り付けられ、その交互の作動により左右の前記揺動アームを交互に揺動させ、その揺動と相まって変形長円状の軌跡を描きつつ前記第1スライダーを介し前記クランクアームに回動力を付与し、同時に前記クランク軸に回転力を付与する左右一対のペダルと、を備え、
前記クランク軸と一体回転する出力部に回転出力を付与するペダルシフト型クランク回転駆動機構。
【請求項2】
前記揺動アームに保持された夫々の前記第2スライダーに取り付けられる揺動支点軸受台において軸受部に挿入される揺動支点軸に揺動自在に軸支された前記第2スライダー先端側当接部位を有する突っ張り揺動カムと、
前記揺動支点軸受台に装着され、前記突っ張り揺動カムを所定の方向に揺動回転させる付勢バネと、
前記突っ張り揺動カムが前記付勢バネの付勢方向に揺動するときの上限位置設定の為、前記第2スライダーまたは前記揺動支点軸受台に設けられたカム位置決めストッパーと、
前記第1スライダーと前記第2スライダー前ブロックとの間で所定距離確保維持状態を形成または解除させることができるように前記突っ張り揺動カムとの当接または非当接により突っ張り状態を形成または解除させる為、前記第1スライダーに取り付け保持された前記第1スライダー先端側当接部位を有する第1カムローラーと、
前記揺動アームの先端ブロックに前記長手方向で移動調節可能なように前記突っ張り揺動カムの揺動当接と揺動ロックを兼ねた第2カムローラーと、揺動ロック用のカムロックピンと、が一体で取り付けられたカム揺動・係止部と、を備える請求項1に記載のペダルシフト型クランク回転駆動機構。
【請求項3】
前記第1スライダーと前記第2スライダー前ブロックとの間隔の縮小変化量によって、その変化に対応して当接収縮を行いつつ、前記長手方向において先端側に前記第2スライダーを移動可能範囲内で移動させる力の伝達を行なわせる為、前記第1スライダーまたは前記第2スライダーの何れか一方に取り付け保持された先端側当接部位を有する弾性突っ張り部材と、
前記第2スライダーまたは前記第1スライダーの何れか一方に取り付け保持された先端側当接部位を有する突っ張り当接部材と、
を備える請求項1に記載のペダルシフト型クランク回転駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランク軸に取り付けられた左右一対のクランクアームに交互に外力を加える左右のペダルと、クランク軸と一体回転する出力部を備えたペダルシフト型クランク回転駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この関係のクランク回転駆動システムとしては例えば特許文献1に示すものがある(〔0011〕~〔0021〕
図1、
図2参照)。
【0003】
このシステムは、フレーム3に固定されて自身は回転しないペダル軸10と、ペダル軸を中心として一定の角度内で回転するガイド部材11a,11bと、このガイド部材11a,11bに取り付けられて上下往復運動する自転可能なペダル12a,12bとを備えている。
【0004】
ガイド部材11a,11bの内側にはそれぞれガイド溝13a,13bが形成され、該ガイド溝の中に、クランクカム22a,22bに一体的に形成された突出部材26a,26bがそれぞれ受け入れられる。クランクカム22a,22bはクランク軸20に一体的に組み付けられ、またクランク軸にはギア21が一体的に組み付けられる。
【0005】
ペダル12a,12bが上下運動をすると、ガイド溝13a,13bに沿って突出部材26a,26bが回転し、同時にクランクカム22a,22b、クランク軸20、及びギア21が回転する。ギア21が回転すると、それにかみ合われたギア31は反対方向に回転し、ギア31と一体的に形成されたチェーンギア32も共に回転する。
【0006】
固定軸30はフレーム3に固定されるように組み付けられて回転せず、ギア31とチェーンギア32とのみ回転する。したがって、ギア31とチェーンギア32とはベアリングを介して固定軸30に組み付けられる。
【0007】
この装置は、一方のペダル12aが上死点に位置し、他方のペダル12bが下死点に位置する時、クランクカム22a,22bの突出部材26a,26bがクランク軸20の垂直中心線を過ぎて回転する方向に一定の角度θ3ほど傾いているように運転されると円滑に作動する。
【0008】
本構成のように、ペダルを上下に往復運動させて前進させるサドルのない自転車に適用させることができる。ペダル等は円滑に作動し、ペダルの上下往復運動は困難なく回転運動に変換される。また、利用者が立って乗ることにより、座って乗る自転車に比べて全身運動の効果を得ることができるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来のクランク回転駆動システムにあっては、ペダルが昇降する際の移動軌跡がペダル軸10を中心とした同じ軌跡の繰り返し上下往復円弧形状となる。この為、人の歩行時の脚のような屈伸とは異なる利用者の脚部の動きが不自然なものとなり、脚部の力が十分に発揮できないうえに脚部が疲労し易く長時間の使用が困難になる。
【0011】
このように、従来のクランク回転駆動システムでは、ペダル軸10が固定されているなど全体の構成は簡便であるが、装置の利便性等については未だ解決すべき課題を有している。そこでこの技術分野にあっては、大きな脚力を要さず長時間の使用が可能なクランク回転駆動システムあるいは機構が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(特徴構成)
本発明に係るペダルシフト型クランク回転駆動機構の特徴構成は、
フレームなどに回転可能に取り付けられるクランク軸の両端部に夫々固定され、180度の作動位相角差を備えつつ動作する左右一対のクランクアームと、
前記左右一対のクランクアームの夫々の先端に設けられたクランク回動軸と、
前記フレームなどにおいて、前記クランク軸からクランクアーム長さを超えて離れた位置に固定配置された固定揺動支点軸に軸支された左右一対の揺動アームと、
前記クランク回動軸に回転自在に軸支されると共に前記揺動アームに保持され、当該揺動アームの長手方向に沿って往復移動可能であって、前記長手方向における固定揺動支点軸の方向を後端側とし、その反対方向を先端側とした場合に当該長手方向において一体的に移動する第1スライダー先端側当接部位および第1スライダー後端側当接部位が互いに相反する方向に向けて保有されている左右一対の第1スライダーと、
前記揺動アームに保持され、当該揺動アームの前記長手方向に沿って往復移動可能な第2スライダーであって、前記長手方向において一体的に移動する第2スライダー先端側当接部位および第2スライダー後端側当接部位が前記第1スライダーを所定の間隔をもって挟む状態で互いに向き合う方向に向けて保有され、かつ、相対する前記第1スライダー先端側当接部位および前記第2スライダー先端側当接部位の当接または非当接、あるいは相対する前記第1スライダー後端側当接部位および前記第2スライダー後端側当接部位の当接または非当接により、前記第1スライダーの往復移動に伴って同じ方向に、移動可能範囲内で断続的に往復移動する左右一対の前記第2スライダーと、
前記第1スライダーの往復移動の間、前記揺動アームの前記第1スライダーより先端側に位置するように構成される第2スライダー前ブロックに取り付けられ、その交互の作動により左右の前記揺動アームを交互に揺動させ、その揺動と相まって変形長円状の軌跡を描きつつ前記第1スライダーを介し前記クランクアームに回動力を付与し、同時に前記クランク軸に回転力を付与する左右一対のペダルと、を備え、
前記クランク軸と一体回転する出力部に回転出力を付与する点にある。
【0013】
(効果)
本構成のペダルシフト型クランク回転駆動機構は、左右一対のクランクアームの先端に設けたクランク回動軸に第1スライダーを回転自在に軸支し、この第1スライダーを、往復揺動する揺動アームが長手方向に移動可能に保持する。第1スライダーには一体的に移動する第1スライダー先端側当接部位および第1スライダー後端側当接部位が互いに相反する方向に向けて保有されている。
【0014】
左右一対の揺動アーム夫々には第2スライダーが設けられている。第2スライダーには、一体的に移動する第2スライダー先端側当接部位および第2スライダー後端側当接部位が第1スライダーを所定の間隔をもって挟む状態で互いに向き合う方向に向けて保有されており、第1スライダーの往復移動に伴って同じ方向に、相対する状態で設けられる第1スライダー先端側当接部位および第2スライダー先端側当接部位どうし、あるいは第1スライダー後端側当接部位および第2スライダー後端側当接部位どうしの当接または非当接により移動可能範囲内で断続的に往復移動する。その移動幅は移動が途切れる分だけ第1スライダーの移動幅より少なくなる。
【0015】
左右一対の第2スライダーには第1スライダーの往復移動の間、揺動アームの第1スライダーより先端側に位置する第2スライダー前ブロックを有し、この第2スライダー前ブロックに取り付けられる左右一対のペダルの交互作動により左右の揺動アームを交互に揺動させてクランク軸に回転力を付与すると共に、ペダル軸心の軌跡が揺動アームの揺動と相まって全体として前後の短径側にクランクアームの長さ以上に大きく膨らんだ上下長径の変形長円状のサークル軌跡を描くように構成されている。
【0016】
この場合、揺動アーム長手方向において第1スライダーの先端側端面を第1スライダー先端側当接部位とし、後端側端面を第1スライダー後端側当接部位としてもよい。また、第2スライダー前ブロックの後端側端面を第2スライダーの先端側当接部位としてもよい。
【0017】
第1スライダーの往復移動距離はクランク回動軸心が回動する軌跡が描くクランクサークル径となる。本案では、所定長さの一対のクランクアームとクランク回動軸をもったクランクを実施採用する。ここではこれを実施採用クランク、そのクランク回動軸心の回動軌跡を実施採用クランクサークルと称する。ペダルが取り付く第2スライダー前ブロックは第1スライダーより揺動アームの先端側にあって例えば、ペダルの作動開始から作動終了までの作動に対応して第1スライダーが揺動アーム上で往復移動する間に、当該第2スライダー前ブロックは当接に至るまで揺動アームの先端ブロックに近づく。
【0018】
揺動アームの揺動時には、第1スライダーの第1スライダー先端側当接部位あるいは第1スライダー後端側当接部位と、第2スライダー先端側当接部位あるいは第2スライダー後端側当接部位が当接した場合に限り、その当接によって第1スライダーに連動して第2スライダーが長手方向に沿って同じ方向に移動する。第1スライダーより揺動アームの先端側にある第2スライダー前ブロックにはペダルが設けられており、ペダルを介して揺動アームおよび第1スライダー、クランク回動軸、クランクアームに入力伝達の操作が行われる。
【0019】
本構成により、左右一対のペダルの交互作動に対応して左右の揺動アームが連続して交互に所定角度の往復揺動を行うことで、その作動分力により連動して第1スライダーが連続して往復移動すると共に、クランクアームが連続回動し、従ってクランク軸が連続回転して、その回転出力を得る。その際に第2スライダーはその両当接部位と第1スライダーの両当接部位との当接、非当接により揺動アームの長手方向で第1スライダーの移動に伴って同じ方向に断続的に往復移動する。
【0020】
左右一対の揺動アームの往復揺動動作中に、第2スライダー前ブロックに取り付く左右一対のペダルも揺動アームの長手方向に沿って往復移動可能であり、揺動アームの揺動支点である固定揺動支点軸からペダルまでの距離の変更が可能となる。
【0021】
また、本構成のペダルシフト型クランク回転駆動機構は、固定揺動支点軸心とクランク軸心を結ぶ基本線の方向を水平とした形を基本とし、以降も主にその形での説明とするが、利用する実施形態や利用状況に合わせ、本構成全体の相関を変えずに基本線を、クランク軸心を中心として、あるいは固定揺動支点軸を中心として、水平を含め水平から上下に適切な所定角度分を全体と共に振らす、すなわち、クランク軸方向視で角度を振らせて装着し使用して、より広範囲の用途に提供することができる。
【0022】
さて改めて固定揺動支点軸心とクランク軸心を結ぶ基本線の方向を水平としたとき、本構成においてクランク回動軸の上死点、下死点は、固定揺動支点軸心から実施採用クランクサークルに引いた上下の接線と実施採用クランクサークルとの接点である。これに対し、実施採用クランクサークルにおける最も上方の位置を最上点とし、最も下方の位置を最下点とする。最上点は上死点を確実に通過した点であり、最下点は下死点に至っていない位置である。従って、一方のペダル作動により揺動アームを揺動させてクランクアームを回動させることができる範囲は、基本的にはクランク回動軸心が実施採用クランクサークルにおいて、クランクアームを回動させるペダルの作動分力が生じない上死点を過ぎた点から下死点までとなる。
【0023】
また、左右一対のクランクアームは180度の作動位相角差を持つので、ここではペダル作動によりクランクアームを半回転180度の回動を行わせる為、一般的にはペダルを作動させる側のクランク回動軸心が従来のクランク作動と同じように下死点に到達するまで作動させてペダルの作動の行程を終了させる。そのとき作動の開始点に対応するクランク回動軸心の回動始点は、実施採用クランクサークル上の下死点からクランク軸心を中心として180度遡った位相角差位置の点対称点すなわち、当該サークル上の最上点と最下点を結ぶ線を実施採用クランクサークルの基準線とした場合の当該基準線を境とする上死点の線対称点となり、従ってその場合、その点に対応するペダル作動位置がペダル作動開始点となる。
【0024】
但し、本構成においては、各ペダルを作動する際のクランク回動軸心の回動範囲は第2スライダーに互いに向き合う方向に向けて保有される第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔を所定の距離に適宜設定することによって定められる。すなわち、ペダルを作動する際のクランク回動軸心の回動範囲を上死点の線対称点から下死点までとするか、最上点(あるいはその近辺)から、最下点(あるいはその近辺)までとするかは、両者可能であるが設計仕様として設定される。
【0025】
ここで改めてペダルを作動する際のクランク回動軸心の回動範囲を最上点から最下点までとした場合は(以降、「この場合は」という)、一方のペダルの作動終了時には対向の他方のクランク回動軸心は回動始点にあり、次にその他方のペダルの作動の行程(ここでは、これを作動行程と称する。)が行われると、一方のクランク回動軸心はその実施採用クランクサークルにおける最下点から回動始点すなわち、最上点までの行程(ここでは、これを戻り行程と称する。)の受動回動を行う。そして、各ペダルの作動行程と戻り行程を合わせたクランク回動軸心軌跡の1サイクルは最上点から最上点までの、戻り行程の開始を基準にすると最下点から最下点までのサイクルとなる。
【0026】
これにより例えば、一方のペダルを作動する作動行程におけるクランク回動軸心の回動方向を、回動始点の最上点から、クランクアームおよび揺動アームの長手方向が固定揺動支点軸心とクランク軸心を結ぶ線の方向となる作動行程の中間点を経由して最下点に向かう方向とする。当然、クランク軸も同じ回転方向とする。そして、第2スライダー前ブロックの第1スライダー側端面を第2スライダー先端側当接部位とする場合、クランクアームおよび揺動アームの長手方向が作動開始点から中間点までの前段回転においてペダルは、後述のように既に作動開始点で第1スライダー先端側当接部位に当接状態である第2スライダー先端側当接部位を有する第2スライダー前ブロックに取り付き、揺動アーム先端側で維持された状態である。
【0027】
そして、その状態でペダルを作動させて揺動アームを回動させ、クランク回動軸を介して第1スライダーを移動させて第2スライダー全体を揺動アーム上で移動範囲の先端となる揺動アームの先端ブロックに当接するまで移動させる。
【0028】
このように作動行程の前段回転においてペダルが作動したとき、ペダル軸心は揺動アームの揺動と相まって先端方向下向きに膨らみを持つ曲線状軌跡を描く。
【0029】
そして、続くクランクアームの前半回転となる作動行程の残りの後段回転では実施採用クランクサークルの軌跡に従ってクランク回動軸心が最下点に到達するまで第1スライダーのみが固定揺動支点軸側に移動するが、第2スライダー前ブロックに取り付くペダルは相反する作動力の方向の関係で、揺動アーム先端ブロックに当接した状態で作動行程を終了する。その結果、ペダル軸心は揺動アームの揺動と相まって固定揺動支点軸心を中心としたペダル軸心までの距離を半径とした部分的円弧軌跡を描く。このとき、第1スライダーを軸支するクランク回動軸の軸心が最下点に到達する時点まで、第1スライダー後端側当接部位すなわち、後端側端面は第2スライダー後端側当接部位に当接に至らない状態を保って最接近する。このことすなわち、一方のクランク回動軸心が最下点に到達する時点まで、同方の第1スライダー後端側当接部位が第2スライダー後端側当接部位に当接しないことをこの場合は重要な要件である第1前提条件とする。
【0030】
但しこの場合は、更に一方のペダルの作動を続けようとしてもすぐに、その方の第1スライダー後端側当接部位が第2スライダー後端側当接部位に当接して、第1スライダーに掛かるクランク回動力による後端側への力と第2スライダーに掛かる先端側への作動分力が相反して作動が阻止され、第1スライダーを軸支するクランク回動軸の軸心が最下点を大きく越えて移動することなく作動行程を終了させるように第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔が設定される。そして、引き続く他方のペダルの作動によって初めて、一方のクランク回動軸心の戻り行程が開始され、その方の第1スライダー後端側当接部位が第2スライダー後端側当接部位に当接した状態で共に揺動アームの後端側への移動を始める。
【0031】
これらの構成要件と使用者および使用条件により適宜設定される長手方向での第1スライダーの移動幅と、それに対応する第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔と、第1スライダーおよび第2スライダーの各長さと、その他の部材の必要長さおよび適切で必要な各スキマに基づいて所定の長さを持たせる揺動アームもまた、コンパクト化を図る為、いたずらに伸ばさず可能な限り必要最小限の長さに設計仕様として設定される。例えば、自転車などにおける従来のクランク回転駆動機構に対し、本構成のような揺動アーム式のペダルシフト型クランク回転駆動機構は必然的に長手方向長さが長くなりがちで、操作する脚と自転車の前輪との干渉が起こるなどの基本的な問題をはらむ。これを防ぐ為、揺動アームを可能な限り必要最小限の長さに留めることをこの場合は重要な要件の第2前提条件とする。
【0032】
ここで改めて自転車のように脚でペダルを踏み込む場合について例えば、左右一対のクランクアームおよびクランク回動軸が実施採用クランクサークル上において作動開始点すなわち、最上点に対応するペダル踏み込み開始点から最下点に対応するペダル踏み込み終了点までの行程を踏み込み行程とし、踏み込み終了点から開始点までを踏み込み行程前の戻り行程とする。戻り行程は互いの対向する側の踏み込み行程により行われる。
【0033】
対向する他方のペダルの踏み込みによって一方のペダルが戻り行程のクランクアームの回転において、例えば、実施採用クランクサークルにおける踏み込み終了点である最下点から揺動アーム固定揺動支点軸心およびクランク軸心を通る線まで上向きにクランクアームの回転が行われる戻り行程の前段では開始直後、揺動アーム上で第1スライダー後端側当接部位すなわち後端側端面が、第2スライダー後端側当接部位に当接して第2スライダー全体が揺動アームの固定揺動支点軸側の後端ブロックに当接に至らない状態を保って最接近するまで固定揺動支点軸側に移動する。それに伴い同じ距離だけ第2スライダー前ブロックに取り付くペダルも固定揺動支点軸に最も近付く。その結果、後述するようにペダル軸心は揺動アームの揺動と相まって基本線の後端側方向に実施採用クランクサークルのほゞ半径分膨らんだ約4分の1変形長円の弧を描く。このときもクランクアームおよび揺動アームの長手方向は揺動アーム固定揺動支点軸心およびクランク軸心を通る線の方向に一致する。
【0034】
引き続いて最上点までクランクアームの回転が行われる戻り行程の後段では、第1スライダーのみが実施採用クランクサークルの軌跡に従って揺動アームの先端側に移動し、理想的には第1スライダー先端側当接部位すなわち、先端側端面が、第2スライダー前ブロックの先端側当接部位すなわち、後端側端面に当接に至らない状態を保って最接近し、戻り行程を終了する。
【0035】
その間すなわち、戻り行程の後段では第2スライダーは揺動アームの長手方向において停止したままであり、従って、その第2スライダー前ブロックに取り付くペダルのペダル軸心は揺動アームの揺動と相まって固定揺動支点軸を中心としたペダル軸までの距離を半径とする後端方向上向きの部分的円弧湾曲軌跡を描く。
【0036】
しかしながらこの場合は、第2前提条件である揺動アームの長さを可能な限り必要最小限の長さに留めるよう設定することにより、各行程の切り替わり時でなく戻り行程の後段回転の途中でクランク回動軸心が作動開始点すなわち、最上点に達する直前のほゞ上死点で、第1スライダーの先端側端面と、上向きの部分的円弧湾曲軌跡を描いて揺動してきたペダルが取り付く第2スライダー前ブロックの後端側端面とが当接することになり、それに起因してペダル軸心軌跡に方向が急変し滑らかでない箇所が生じる。これについてはペダルの動きとしては好ましいものではないが、使用上で引き続くペダル踏み込み動作のタイミングが取れる良いきっかけとなる。
【0037】
この当接を防ぐ方法としてこの場合は、第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔を広げ、少なくともその分、更に揺動アームの長さを長くすることが考えられるが、これは第2前提条件と相反する。
【0038】
これまでの結果からペダルを作動する際のクランク回動軸心の回動範囲を最上点から最下点までとした場合は、1サイクルを終えてペダル軸心の作動軌跡は、方向が急変する箇所を持つものの揺動アームの揺動と相まって、揺動アームの前方下向きに膨らみを持ち、第1スライダーが軸支されるクランク回動軸の軸心が戻り行程の最下点以降で後端側へ移動する移動幅に対応した基本線方向への変位距離分すなわち、実施採用クランクサークルのほゞ半径分膨らんで、全体として特許文献1に示したような従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムにない、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易い短径側で前後幅の大きな、上下長径の変形長円状サークルを描く。
【0039】
第1前提条件については、もし一方のペダルの踏み込み行程の終了時、第1スライダーが軸支されるクランク回動軸の軸心が実施採用クランクサークルにおける最下点に到達する前に第1スライダー後端側当接部位すなわち、後端側端面が第2スライダー後端側当接部位に当接すれば、第1スライダーに掛かるクランク回動力による後端側への力と第2スライダーに掛かる先端側への作動分力が相反してクランク回動が阻止され、対向側のクランク回動軸が実施採用クランクサークル上においてクランク回動軸心の作動開始点すなわち、最上点に到達せず、引き続くペダル踏み込み(作動)による作動分力が不十分となり、クランク回動に影響を及ぼすという理由から重要度は高い。
【0040】
従って、総合的に考慮してここでは第1前提条件と、第2前提条件の設計仕様を満たすことを基本思想とする。
【0041】
ここで、第1前提条件および第2前提条件に照らし、(1)揺動アームの最小長さと、(2)第1スライダーの移動幅と、(3)それに対応する第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔の設定などの基本的事項について説明する。
【0042】
(1)まず、揺動アームの長さの必要最小化については、固定揺動支点軸心およびクランク軸心を通る基本線と同固定揺動支点軸心および実施採用クランクサークル上の最上点を通る線が成す狭角(これを基本狭角とする。)と、実施採用クランクサークル径が設定される。実施採用クランクサークルにおいてクランク回動軸心が固定揺動支点軸心から最も離れた位置にあるときすなわち、実施採用クランクサークルと、固定揺動支点軸心およびクランク軸心を結ぶ延長線との交点にあるとき、クランク回動軸に軸支する第1スライダーの先端側に適切なスキマを持たせて第2スライダー前ブロックが位置し、更にその先端側に揺動アーム先端ブロックが適切なスキマを持って配置されている状態の揺動アームの長さが必要最小限の長さに留め設定されたものとなる。
【0043】
従って、基本的には揺動アームの固定揺動支点軸心から先端側への長さとしては、固定揺動支点軸心からクランク軸心までの距離1)と、クランクアームの長さすなわち、クランク軸心とクランク回動軸心との間隔2)と、第1スライダーのクランク回動軸心から先端側側面までの幅3)と、第2スライダー前ブロックの幅4)と、揺動アーム先端ブロックの幅5)と、その他の要素パーツ間の適切なスキマの合計6)とを加えたものとなる。
【0044】
但し、揺動アームに更に大きなてこ比を持たせる為に第2スライダー前ブロックの幅を大きくしてペダルをより先端側に取り付ける場合はその分、揺動アームの長さも長くなる。また、基本狭角は最上点および最下点の夫々と固定揺動支点軸心とを結ぶ線と基本線とが成す同一角度の狭角とする。当該基本狭角については、揺動アームの長さや要素部材のサイズ、また踏み込み位置、高さ、ストロークなどを考慮して20度以上35度以下が望ましい範囲であるが、25度から30度程度とするのが最も効果的である。
【0045】
(2)揺動アーム長手方向における第1スライダーの全移動幅はクランクアームの長さの倍すなわち、クランク軸心とクランク回動軸心との間隔の倍で実施採用クランクサークル径である。
【0046】
(3)次に例えば、ペダルを踏み込む(作動する)際のクランク回動軸心の回動範囲を最上点から最下点までとした場合の第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔については、前記第2条件に照らして揺動アームを必要最小限の長さにすることを考えたとき、実施採用クランクサークルにおいて一方のクランク回動軸心が踏み込み行程終了点の最下点に到達したときに同方の第1スライダー後端側当接部位である後端面が第2スライダー後端側当接部位に当接しないとする第1前提条件に加え、ペダルの作動を続けようとしてもすぐに、その方の第1スライダー後端側当接部位が第2スライダー後端側当接部位に当接するということを合わせると、第2スライダー後端側当接部位は第1スライダーの更に後端側に最小限の必要なスキマを隔てて位置させることとなる。
【0047】
一方、そのとき第2スライダー前ブロックはそれに取り付くペダルの踏み込みにより、揺動アーム先端ブロックに押し付けられた状態であるので、このときの第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔をもってこの場合の設定間隔とする。
【0048】
従って、ペダルを踏み込む際のクランク回動軸心の回動範囲を最上点から最下点までとする場合、必要最小限の長さに留めた揺動アームにおける第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔は、第1スライダーが軸支されるクランク回動軸心が固定揺動支点軸心から最も離れた位置の点から最下点まで移動するときの揺動アーム長手方向の移動距離従って、踏み込み(作動)行程の後段での第1スライダーの移動距離に第1スライダーの長手方向幅を加えたものとなる(最小限の必要なスキマを除き)。これにより、最上点から始まる踏み込み(作動)行程において第1スライダーが最下点を大きく越えて移動しないように確実にほゞ最下点で終えるという本構成のしくみが形成される。
【0049】
ちなみに、ペダルを踏み込む際のクランク回動軸心の回動範囲を上死点の線対称点から下死点までとする場合は、踏み込み(作動)行程の後段で実施採用クランクサークルにおいてクランク回動軸心が最下点から下死点まで余分に回動するときに揺動アーム長手方向で第1スライダーが移動する距離だけ更に、第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位との間隔を広げる必要がある。
【0050】
本構成であれば、
図8に示すように、ペダルの踏み込み行程でペダルが揺動アームに沿って先端側にスライド移動し、ペダルの戻り行程の前段でペダルが揺動アームに沿って固定回転軸心の側にスライド移動する。これによりペダル軸心は前後幅の大きな、前後短径で上下長径の変形長円状サークルの軌跡を描く。
【0051】
但し、この戻り行程前段の後端側への移動距離と、ペダル軸心サークル軌跡の基本線方向における前後幅の膨らみ幅とは比例的な関係はあるが、同じ長さということではない。ペダル軸心の膨らみ幅を主に決定づけるのは回動軸心が実施採用クランクサークル上で後端側に回動するときの基本線方向への変位であり、その最大値が同方向の膨らみ幅となるので、この後端側への回動軸心の膨らみ幅と同じペダル軸心サークル軌跡の前後幅の膨らみ幅は最小限の必要なスキマを微小とすれば、当然ながらほゞ実施採用クランクサークルの半径となる。
【0052】
従って、踏み込み行程を含めた1サイクル全体におけるペダル軸心サークル軌跡の前後幅としてはそれ以上の膨らみを持つペダル軸心サークル軌跡を実現する。このことから、後述する比較対象クランクサークル径に対し、実施採用クランクサークル径を適切に設定することで、全体におけるペダル軸心サークル軌跡の膨らみの前後幅をほゞ従来の通常クランクサークルの半径すなわち、通常クランクアーム長さに近いものにすることができる。
【0053】
ちなみに、前述したような踏み込み行程を実施採用クランクサークル上の上死点の線対称点から下死点、戻り行程を下死点から上死点の線対称点までとした場合は、対応するペダル軸心サークル軌跡の長手方向前後幅を主に決定づける戻り行程の前段での第1スライダーの移動距離が、本構成のように踏み込み行程を最上点から最下点まで、戻り行程を最下点から最上点までとする場合の同移動距離より小さくなる。このことは
図6において、実施採用クランクサークル上におけるクランク回動軸心の固定揺動支点軸心に最も近い点に対し、下死点が最下点よりも近い位置にあることからも明らかである。
【0054】
従って、本構成においては戻り行程の前段で実施採用クランクサークル上の最下点から始め、第1スライダーの移動によりペダルが取り付く第2スライダーを揺動アーム上で固定揺動支点軸に最も近づける場合に、ペダル軸心軌跡における短径側の前後の膨らみを大きくすることとなる。
【0055】
以上のことから本構成において、ペダル軸心は、揺動アームの揺動と相まって揺動アームの先端側に少しの膨らみを持ち、後端側を合わせ全体として実施採用クランクサークルの半径分以上、ほゞ通常クランクアーム長さ分、前後に膨らんで、従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムにない前後幅の大きな、前後短径で上下長径の変形長円状サークルの軌跡を描く。
【0056】
そしてペダルそのものが揺動アームの揺動により上下に動きつつ、長手方向に移動することによって、本構成の効果については例えば、揺動アームを用いて脚でペダルを踏み込みクランクアームを作動回転させる際に、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易いサークル軌道の作動となり、作動者の脚部の疲労を軽減する回動軌跡でペダル動作を行うことが可能となる。そのことが本構成の第1の効果である。
【0057】
次に本構成の回転駆動のしくみは左右ペダルの内、実施採用クランクサークルの最上点の近傍でクランクアームに保持され、かつ揺動アームに保持された第1スライダーが例えば、揺動アームに保持された第2スライダー前ブロックに取り付くペダルの踏み込みにより揺動アーム長手方向の軌道に沿って移動し、第1スライダーより先端側にあって、それに当接する第2スライダー前ブロックとペダルが一体的に、少しのてこの働き効果により増加した駆動回転モーメントを維持しながら揺動アームの先端に移動すると共にクランクアームがクランク軸回りに回転する。
【0058】
クランクアームが作動開始点から固定揺動支点軸心とクランク軸心を結ぶ線の方向と同じ方向となるまでの前段回転で移動範囲の先端まで移動した第2スライダー前ブロックに取り付くペダルは、クランクアームの前半回転となる踏み込み(作動)行程の残りの後段回転ではそのまま揺動アームの先端位置に留まり、クランク回動軸が実施採用クランクサークルの最下点まで踏み込まれるので、揺動アームの大きなてこの働きの効果によりクランク軸回り駆動回転モーメントを増大させる。
【0059】
また本構成にあっては、ペダルの踏み込み開始はクランク回動軸心の作動開始点すなわち、実施採用サークル上で上死点を完全に越え回避した最上点から行なわれ、踏み込み終了は最下点までの範囲となるものの全体としては、特に踏み込み(作動)行程の残りの後段回転では発生する揺動アームの大きなてこの働きにより、従来のクランク回転駆動での最大課題であるところの、少なくとも位置的に通常クランクの上死点に相当する最上点を含め、その近傍および少なくとも位置的に通常クランクの下死点に相当する最下点を含め、その近傍において、前後幅の大きな上下長径の変形長円状のペダル作動軌跡を持ちつつ、しかも踏み込み作動分力効果も合わせて回転駆動の効率向上が図られる。
【0060】
従って、前後幅の大きいペダルの略長円状作動軌跡も持たない従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムのものより全体として、利用者が脚力で作動する場合のクランク軸の回転作動操作の負荷を大きく軽減することができ、このことが本構成の第2の効果である。
【0061】
以上のように、本構成のような揺動アーム式ペダルシフト型回転駆動機構はてこ比が位置的に通常クランクの上死点または下死点に当たる最上点または最下点に近い程大きくなり、そのてこの働きで駆動回転モーメントも大きくなるので、同じく位置的に通常クランクのいわゆる上死点または下死点に相当する最上点または最下点近傍での回転モーメント増大目的に対し、踏み込み作動分力と併せてうまく適合した合理的な手段となる。
【0062】
また、実際に本構成を自転車へ利用する場合では、通常の自転車のクランクの踏み込みのように足首の方向操作や下肢の関節を支点として無理なく行われる脚の前送りにより比較的容易に回転駆動が行われ、また一度、クランクアームが回転し走行体に慣性力が働けば、継続した連続回転も容易に行われるので、長時間に亘り第1、第2効果を享受できる。一方、緩やかであっても長く続く上り坂道など慣性力が望めないところでの自転車走行において、とりわけ本構成のペダルシフト型回転駆動機構は有効となる。
【0063】
このように、作動あるいは踏み込みを人の腕や脚に委ねる対象において作動(踏み込み)方向などを適切に調整される場合は、本構成の特徴を最大限に発揮でき、より多くの利用につながることとなり本構成にとって好都合である。それに加え、クランク軸方向視で角度を振らせて装着することを有効に組み合わせることで更に広い範囲の用途に適用され得る。一方、人の腕や脚に作動を委ねない対象においても本構成は、適切に設定される作動方向と、クランク軸方向視で角度を振らせて装着することを組み合わせることで同様に多くの用途に適用できる。
【0064】
(特徴構成)
本発明に係るペダルシフト型クランク回転駆動機構にあっては、
前記揺動アームに保持された夫々の前記第2スライダーに取り付けられる揺動支点軸受台において軸受部に挿入される揺動支点軸に揺動自在に軸支された前記第2スライダー先端側当接部位を有する突っ張り揺動カムと、
前記揺動支点軸受台に装着され、前記突っ張り揺動カムを所定の方向に揺動回転させる付勢バネと、
前記突っ張り揺動カムが前記付勢バネの付勢方向に揺動するときの上限位置設定の為、前記第2スライダーまたは前記揺動支点軸受台に設けられたカム位置決めストッパーと、
前記第1スライダーと前記第2スライダー前ブロックとの間で所定距離確保維持状態を形成または解除させることができるように前記突っ張り揺動カムとの当接または非当接により突っ張り状態を形成または解除させる為、前記第1スライダーに取り付け保持された前記第1スライダー先端側当接部位を有する第1カムローラーと、
前記揺動アームの先端ブロックに前記長手方向で移動調節可能なように前記突っ張り揺動カムの揺動当接と揺動ロックを兼ねた第2カムローラーと、揺動ロック用のカムロックピンと、が一体で取り付けられたカム揺動・係止部と、を備えることができる。
【0065】
(効果)
左右一対の揺動アームに取り付けられた夫々の第1スライダーおよび第2スライダー、ペダルの動作態様につき、第1スライダーおよび第2スライダーには夫々、二つの当接部位がある。それらのうち、第1スライダー先端側当接部位をその表面に有する第1カムローラーが当該第1スライダーに取り付けられ、第2スライダーには第1カムローラーとの間に嵌まって当接することにより突っ張り状態を形成させる為、第2スライダー先端側当接部位を有する突っ張り揺動カムが設けられる。
【0066】
その場合、長手方向において突っ張り揺動カムの後端側にある第2スライダー先端側当接部位と第2スライダー後端側当接部位の当接面どうしは、互いに向き合う方向に向けて第1スライダーを所定の間隔をもって挟む状態となる。そして、第2スライダー前ブロックに取り付く左右の一方のペダルを作動させて作動行程を始める。
【0067】
また、本構成においても後述の理由により作動行程を例えば、最上点から最下点まで、戻り行程を最下点から最上点までとするのが望ましい。
【0068】
その主な理由は、そうすることで本構成の場合の実施採用クランクサークル上でクランク回動軸心が戻り行程の前段で最下点から固定揺動支点軸に最も近づく位置すなわち、固定揺動支点軸心とクランク軸心を結ぶ線上に到達するまでに移動するときのペダル軸心サークル軌跡の前後幅を、上死点の線対称点から下死点までの作動行程の場合におけるクランク回動軸心の下死点から固定揺動支点軸に最も近づく位置までの戻り行程前段での同前後幅より大きくでき、特に人の脚で踏み込む場合に脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易いものにできることである。
【0069】
ここで改めてペダルを作動する際のクランク回動軸心の回動範囲を最上点から最下点までとした場合、一方のペダルを作動させて作動行程を始めると、クランク回動軸にペダル作動力の分力によりクランク回動軸を回動させる回転モーメントが生じるので、他方の揺動アームをペダルの作動により揺動させ、一方のクランク回動軸が回動して最上点に達する直前に、付勢バネの付勢力とカム位置決めストッパーとにより第1カムローラーと突っ張り当接状態にある突っ張り揺動カムは、当接する側と反対側の先端部が第2カムローラーと当接移動しながら全体が揺動する。その結果、第1カムローラーとの当接を解除する当接解除姿勢となり、同時に当接側と反対側のカム先端部が揺動アームに設けられたカム揺動・係止部に係止して位置保持される。
【0070】
その為、揺動アームの側面方向から見た突っ張り揺動カムの形状について第1カムローラーと当接する側は第2スライダー先端側当接部位となっており、当接と当接解除が円滑に行われるように突っ張り揺動カムの揺動支点軸心を中心とした半径R状となっていて、同方向から見た反対側の形状は第2カムローラーとカムロックピンとの間で揺動当接と揺動ロックを行わせる為に傾斜カット形状部分と先端ツメ形状部分を有するものとなっている。
【0071】
そして、一方の最上点から最下点に至るまでの作動行程の間、突っ張り揺動カムが当接解除姿勢のまま第1スライダーのみが揺動アームの先端側に向けて揺動アームの先端ブロックに少しのスキマを残して往復移動し、作動行程を終了する。その終了時点で第1スライダー後端側当接部位すなわち、後端側端面が第2スライダー後端側当接部位に当接に至らない状態を保って最接近するように、長手方向における第1スライダーの長さと、突っ張り揺動カムの揺動支点軸心より後端側の長さと、第2スライダーの揺動支点軸心より先端側の第2スライダー先端側当接部位までの長さと、最小限の必要なスキマなどが第1スライダーの移動幅に対応させて適切に設定される。
【0072】
一方のペダルおよび第2スライダーが、固定揺動支点軸心との距離が所定距離に維持されつつ揺動アームの先端側に位置保持されて、揺動アームの揺動と相まって一方のペダル軸心が円弧状湾曲形の軌跡を描く。
【0073】
その際、一方のペダル作動に応じて他方のクランク回動軸が実施採用クランクサークルの最下点から最上点に至るまで回動する戻り行程前半においては、回動が始まるとすぐに最小限の必要なスキマが解消され、他方の第1スライダーが他方の第2スライダーの後端側当接部位に当接して第2スライダー全体を従って、前ブロックに取り付く他方のペダルを揺動アームに沿って後端側すなわち、固定揺動支点軸心側に向けて実施採用クランクサークルの半径分押し戻し、その間に他方の突っ張り揺動カムは付勢バネ4によってカム位置決めストッパーに当接するまで揺動し突っ張り当接状態に復帰する。
【0074】
それに引き続いて、他方の戻り行程後半の第1スライダーの揺動アーム先端側に向けての移動により、当接復帰した突っ張り揺動カムを介して、それが取り付けられる第2スライダーと一体的に移動するペダルが取り付く第2スライダー前ブロックを、揺動アームの先端ブロックに少しのスキマを持って最接近させて戻り行程全体を終了する。その結果、揺動アームの側面方向から見て他方のペダル軸心が、揺動アームの揺動と相まって固定揺動支点軸側に第1スライダーの戻り行程全体における移動幅に相当する基本線方向の距離分すなわち、実施採用クランクサークルの半径分膨らんだ凸状となる略長円弧状の軌跡を描く。
【0075】
そして、双方のペダル作動が入れ替わって連続回転することにより揺動アームの揺動と相まって、各ペダル軸心の作動軌跡は作動行程と戻り行程を合わせ、揺動アームの先端側方向に少しの膨らみを持ち、後端側に実施採用クランクサークルのほゞ半径分膨らんで、実施採用クランクサークル径を適切に設定することで全体として通常のクランクのほゞクランクアームの長さの大きな前後幅を持つ、すなわち、長手方向の前後に短径で上下方向に長径で対称の、従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムにない大きな前後幅を持つ、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易い略長円形状サークルのペダル軸心作動軌跡を描くように構成されている。
【0076】
突っ張り揺動カムが第1スライダーと当接し、或は、当接解除することで、ペダルが設けられる第2スライダーと第1スライダーとの移動態様が切り替えられる。これにより、ペダルを作動して揺動アームを揺動させ作動行程ではペダルは揺動アームの先端側で位置固定され、ペダルに対する作動力を抜く戻り行程では、第1スライダーと第2スライダーとが同期移動してペダル軸心の軌跡が適切に設定される。
【0077】
本構成のように、作動行程を最上点から最下点まで、戻り行程を最下点から最上点までとすることにより揺動アームの長さを最小限に留めながら突っ張り揺動カムを導入して、ペダルの作動開始時に例えば、人の脚でペダルを踏み込むときにペダルの位置を揺動アームの固定揺動支点軸心から出来るだけ遠去けて揺動アームの大きなてこの働きの効果が利用でき、また踏み込みの初めから踏み込み力の分力によって生じるクランク軸回りの駆動回転モーメント、特に位置的に通常クランクの上死点に相当する最上点含め、その近傍および少なくとも位置的に通常クランクの下死点に相当する最下点含め、その近傍においてのクランク軸に入力するモーメントを増大させる。
【0078】
また、ペダル軸心の作動軌跡が揺動アームの揺動と相まって前後幅の大きな、上下長径で対称の略長円形状サークルのペダル作動軌跡を持ちつつ、クランク軸回りの駆動回転モーメントの増大と回転駆動の効率向上が図られる。また、突っ張り揺動カムの先端が位置決めロックされて第2スライダーが従って、ペダルがその踏み込み分力による逆戻りを起こさない安定して確実なペダル作動が行われる。その上で本ペダルシフト型クランク回転駆動機構は、従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムのものより全体として、利用者が脚力で作動する場合のクランク軸の回転作動操作の負荷を大きく軽減することができる。
【0079】
(特徴構成)
本発明に係るペダルシフト型クランク回転駆動機構にあっては、第1スライダーと前記第2スライダー前ブロックとの間隔の縮小変化量によって、その変化に対応して当接収縮を行いつつ、前記長手方向において先端側に前記第2スライダーを移動可能範囲内で移動させる力の伝達を行なわせる為、前記第1スライダーまたは前記第2スライダーの何れか一方に取り付け保持された先端側当接部位を有する弾性突っ張り部材と、
前記第2スライダーまたは前記第1スライダーの何れか一方に取り付け保持された先端側当接部位を有する突っ張り当接部材と、を備えることができる。
【0080】
(効果)
本特徴構成は前述の先端側当接部位を有する突っ張り揺動カムと第1カムローラーの代わりに、弾性突っ張り部材とそれに対応する突っ張り当接部材を夫々、第1スライダーまたは第2スライダーの何れか一方に取り付け保持して備えるものである。例えば、第1スライダーに弾性突っ張り部材を、第2スライダーに突っ張り当接部材を取り付けた場合は、長手方向において第2スライダー先端側当接部位となる突っ張り当接部材の後端側当接面と第2スライダー後端側当接部位の当接面どうしは互いに向き合う方向に向けて第1スライダーを所定の間隔をもって挟む状態で揺動アームに保有される。
【0081】
また、本構成においても前述の理由により作動行程を、最上点から最下点まで、戻り行程を最下点から最上点までとするのが望ましい。そして改めてペダルを作動する際のクランク回動軸心の回動範囲を最上点から最下点までとした場合で本構成において例えば、自転車のように脚でペダルを踏み込む場合において、第1スライダー先端側当接部位と、第2スライダー先端側当接部位との間に突っ張り部材がない構成では踏み込み開始時の最上点付近でクランク軸回り駆動回転モーメントの増大および回転駆動の効率向上が不十分であるのと、戻り行程の1作動の中でのペダル軸心の軌跡において、踏み込み直前にペダルの進行方向が急変するところが生じる。これは戻り行程後段において、戻り行程終了手前まで第1スライダーの移動に伴い、第1スライダー先端側当接部位が第2スライダー先端側当接部位に非当接のままで移動し、戻り行程終了手前にて揺動アーム上で揺動してきた第2スライダー先端側当接部位に当接して第2スライダーの前ブロックに取り付くペダルのペダル軸軌道方向が急変することによる。
【0082】
これについては引き続くペダル踏み込み動作のタイミングを取る良いきっかけとなるが、ペダルの軌道として好ましいものではない。本案特徴構成はこのペダル軸軌道方向の急変を改善し尚かつ、特に踏み込み開始時の最上点付近でのペダル踏み込みによるクランク軸回りの駆動回転モーメントの更なる増大および回転駆動の効率向上を図るものである。
【0083】
すなわち、突っ張り要素のない構成内容に本構成の弾性突っ張り機能部材を取り付けることにより、戻り行程の後段で第スライダーと第2スライダー前ブロックとが直接、当接する前から第1スライダーと第2スライダー前ブロックとの間隔の縮小変化量によって、その変化に対応して当接収縮しつつ、移動させる押し力の伝達を行わせることで、直接の当接を回避させてペダル軸軌道方向の急変を未然に防ぎかつ、作動行程開始時に少しでも揺動アームの先端側にペダルを移動させ、弾性突っ張り部材がないものに比し、踏み込み開始時の最上点付近でのクランク軸回りの駆動回転モーメントを増大させ回転駆動効率を向上させる。
【0084】
そして、戻り行程の終了前のペダル軌跡方向の急変を緩和すると共に、ペダル軸心の作動軌跡を揺動アームの先端側に少しの膨らみを持ち、後端側を合わせ全体として実施採用クランクサークルの半径分以上膨らんで従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムにない前後幅の大きな、前後に短径で上下方向に長径で対称の略長円形状サークルに少しでも近づけた滑らかな曲線にするなど、利用者が脚力で作動する場合のクランク軸の回転作動操作の負荷を大きく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【
図1】第1実施形態に係るペダルシフト型クランク回転駆動機構の外観を示す分解斜視図
【
図2】ペダルシフト型クランク回転駆動機構の要部を示す分解斜視図
【
図4】ペダルシフト型クランク回転駆動機構の動作態様を示す説明図
【
図5】ペダルシフト型クランク回転駆動機構の要部の動作態様を示す説明図
【
図7】第2実施形態に係るペダルの要部を示す斜視図
【
図9】ペダルシフト型クランク回転駆動機構の動作態様を示す説明図
【
図10】第3実施形態に係るペダルの要部を示す斜視図
【
図12】ペダルシフト型クランク回転駆動機構の動作態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0086】
〔第1実施形態〕
(概要)
【0087】
本発明は、左右一対のクランクアームCAおよびクランク回動軸CX2と、クランク軸CX1からクランクアームCAの長さを超えて離れた位置の固定揺動支点軸A4に軸支された左右一対の揺動アームAと、クランク回動軸CX2に軸支され揺動アームAの長手方向に沿って往復移動する第1スライダーS1と、第1スライダーS1の往復移動に伴い当接または非当接となって移動可能範囲内で同じ方向に断続的に往復移動する第2スライダーS2と、第2スライダー前ブロックS21に取り付けられ、揺動アームAを揺動させて略長円状軌跡を描きつつクランク軸CX1を回転させるペダルPと、を備え、クランク軸CX1と一体回転する出力部5に回転出力を付与するペダルシフト型クランク回転駆動機構Zに関する。本発明で同時的に果たす主要な目的は次の二つである。
【0088】
第1の目的は、通常のクランクにおけるペダル軸に回転自在に取り付くペダルの踏込み作動において、少なくともいわゆる上死点と下死点、および上死点近傍と下死点近傍のペダル作動による回転駆動効率を大きく向上させるしくみを作ることにある。
【0089】
第2の目的は、揺動アームAの先端側におけるペダルPの作動を、同じ軌道の往復揺動運動ではなく、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応しやすいサークル軌跡の作動とすることにある。
【0090】
これらの二つの目的を同時に実現する本発明は具体的には、ペダルPの前後移動幅を人の歩行ステップよりは小さくするも出来るだけ人の脚の折り畳みと送り出しの動きに見合う幅とし、ペダル軸心PXの軌跡を上下長径の略長円形軌跡サークルとしてペダル反復動作の動力負担の軽減を図る。本案構成によって例えば、人の脚でペダルPを作動するときの股関節の負担を軽減し滑らかな継続的作動を行うことができることにある。
【0091】
本発明を自転車に利用する場合の実施形態につき
図1~
図5を参考にしつつ説明する。自転車のフレームFにクランク軸CX1が支持され、180°相角で左右対向位置にある一対のクランクアームCA、クランク回動軸CX2(通常の自転車のペダルのペダル軸に相当)およびペダルPがあり、双方のクランク回動軸CX2のクランク軸CX1回りの回転駆動によりクランク軸CX1を回転させ、その出力により車輪の回転を行わせる。ここでは、通常の自転車より短い所定長さの一対のクランクアームCAとクランク回動軸CX2をもったクランク機構を実施採用する。前述の通り、これを実施採用クランク、そのクランク回動軸心CX2aの回動軌跡を実施採用クランクサークルと称する。
【0092】
この実施採用クランクのクランク軸CX1からクランクアームCAまでの長さを超えて離れた位置に固定揺動支点軸A4をもち、所定角度往復揺動する左右一対の揺動アームAを設け、長手方向に設けた軌道に沿って相対的に往復移動を行う第1スライダーS1が実施採用クランクにおけるクランク回動軸CX2とスリーブS11などを介し回転自在に係合されている。また、本実施形態においては基本的に固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aを結ぶ基本線を水平とするが、使用状況に合わせクランク軸心CX1aの側の基本線を、クランク軸心CX1aを中心として、あるいは固定揺動支点軸心AXを中心として水平から適切な所定角度分、当該基本線と本構成全体の相関を変えずに共に振らす、すなわち、クランク軸CX1方向視で角度を振らせて装着することを行ってもよい。
【0093】
本実施形態では揺動アームAの長手方向に設けた第1スライダーS1の軌道と同一軌道に沿って揺動アームAに対し相対的に往復移動し、第2スライダーS2に剛性を持たせる為、当該第2スライダー前ブロックS21と、長手方向において第1スライダーS1が移動する所定距離を開けて揺動アームAに保持される第2スライダー後ブロックS22を設ける。
【0094】
一方、第1スライダーS1および第2スライダーS2には夫々、一つずつ先端側当接部位がある。すなわち、第1スライダー先端側当接部位S1fを持つ第1カムローラーS1cが第1スライダーS1に取付けられ、第2スライダーS2には第2スライダー先端側当接部位S2fを持ち、第1カムローラーS1cとの間に嵌まって当接することにより突っ張り状態を形成させる為の突っ張り揺動カム3が設けられる。
【0095】
第1スライダーS1の後端側端面を第1スライダー後端側当接部位S1rとし、第2スライダー後ブロックS22の先端側端面を第2スライダー後端側当接部位S2rとする。長手方向において突っ張り揺動カム3の後端側当接部位3rと第2スライダー後ブロックS22の第2スライダー後端側当接部位S2rどうしは互いに向き合う方向に向けて第1スライダーS1を所定の間隔をもって挟む状態で揺動アームAに保有されている。そして、第1スライダーS1を跨ぐように連結部材21で連結された第2スライダー前ブロックS21と第2スライダー後ブロックS22がある二股構造の左右一対の第2スライダーS2において先端側の第2スライダー前ブロックS21にペダル軸P10および回転自在のペダルPを取り付ける。そして、この左右のペダルPの交互踏み込み作動により、実施採用クランクに回転動作を行わせる。
【0096】
その場合、本構成においては左右一対のクランクアームCAおよびクランク回動軸CX2が実施採用クランクサークルの略最上点(位置的に通常クランクの上死点に相当)における踏み込み開始点から略最下点(同じく位置的に下死点に相当)おける踏み込み終了点までの行程を踏み込み行程とし、終了点から開始点までを踏み込み行程前の戻り行程とする。戻り行程は互いの対向する側の踏み込み行程により行われる。
【0097】
第1の目的を果たす為の本案の回転駆動のしくみは、クランク軸CX1からクランクアームCAの長さを超えて離れた位置に配置される固定揺動支点軸A4に軸支された左右一対の揺動アームAに保持される第1スライダーS1が、同時に実施採用クランクサークルの最上点近傍にあるクランクアームCAに保持され、常に第1スライダーS1より先端側の位置で揺動アームAに保持された状態のままの第2スライダー前ブロックS21に取り付くペダルPの踏み込みにより、例えばペダル踏み込み力の方向をクランク回動軸CX2の回動時に描く最上点PHから最下点PLを結ぶ線の方向とした場合に発生する踏み込み分力により、少なくとも位置的に通常のクランクにおけるいわゆる上死点と下死点に相当する最上点PHと最下点PL、および最上点PH近傍と最下点PL近傍のペダル作動による回転駆動効率を向上できることにある。
【0098】
ここで、比較対象としての通常クランクにおける駆動回転モーメントに対し本実施形態の構成(以下、単に「本構成」と称する)では、いわゆる上死点、下死点を完全に回避したペダルPの踏み込みが可能となり、発生する踏み込み分力効果の他、揺動アームAの大きなてこの働きの効果により、最上点から最下点に至る範囲において本構成のクランク軸CX1の回りの駆動回転モーメントが通常クランクにおける駆動回転モーメントを上回ることができる。
【0099】
第2の目的である、揺動アームAの先端側におけるペダルPの踏み込み行程での作動と戻り行程での作動を、上下同じ軌跡の弧状往復揺動運動ではなく、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応しやすいサークル軌跡の作動とする為に、本実施形態の例では以下の構成を備えている。
【0100】
既にペダルPが取り付く第2スライダー前ブロックS21が揺動アームAの長手方向に沿って断続的に往復移動することにより、突っ張り揺動カム3がない状況でもペダル軸心PXがやや傾斜した変形長円状サークルの軌跡を描くことで本目的はほゞ果たされるが、本構成ではペダル軸心PXがより確実に上下対称の変形長円サークル軌跡を描く構成内容を説明する。
【0101】
本構成において、実施採用クランクサークルの最上点PHにおける一方のペダル踏み込み開始時にペダルPを揺動アームAの先端部に移動させ、実施採用クランクサークルの最下点PLまでの揺動アームAを下降させるペダルPの踏み込み作動中はペダルPを揺動アームAの先端で固定させ(隙間を詰める移動を除く)、ペダル軸心PXと揺動アームAの固定揺動支点軸心AXとの距離を半径とした円弧状湾曲形の回動を行わせる。その踏み込み行程終了時点で第1スライダー後端側当接部位S1rとしての後端側端面が第2スライダー後ブロックS22の第2スライダー後端側当接部位S2rとしての先端側端面に少しのスキマを持って最接近する状態となるように長手方向での第1スライダーS1の長さと第2スライダーS2の第2スライダー前ブロックS21と第2スライダー後ブロックS22の互いに向き合う端面間の所定の距離が第1スライダーS1の移動幅に対応させて適切に設定されている。このことは本構成にとって重要な前提条件である。
【0102】
この間、他方のペダルPは、戻り行程となっているクランク回動軸CX2の最下点PLから最上点PHまでの回動に伴って戻りの回動を行い、次の踏み込み行程開始直前の状態となっており、次にこのペダルPが踏み込まれると、一方のペダルPが、クランク回動軸CX2の最下点PLから最上点PHまでの回動に伴い、揺動アームAの揺動と相まって後述する経緯で上下対称の変形長円弧状の戻りの回動を行う。そして、以後、回動が継続される。
【0103】
この揺動アームAが上昇する戻り行程の前半の最初の段階で、第1スライダーS1の側面のうち固定揺動支点軸A4に向く第1スライダー後端側当接部位S1rの端面が、第2スライダーS2のうち固定揺動支点軸A4に近い側の第2スライダー後ブロックS22に当接しその後、第2スライダーS2の全体を固定揺動支点軸A4の側に第1スライダーS1の戻り行程における移動幅に相当する距離分すなわち、実施採用クランクサークルの半径分以上移動させる。
【0104】
そして、戻り行程後半で第1スライダーS1は、既に付勢バネ4の付勢力とカム位置決めストッパー31とにより突っ張り当接状態にある突っ張り揺動カム3を介して第2スライダーS2の全体を揺動アームAの先端方向に実施採用クランクサークルの半径分以上移動させ、戻り行程を終了する。これにより、第2スライダー前ブロックS21におけるペダル軸心PXの作動軌跡は揺動アームAの揺動と相まって、各ペダル軸心PXは踏み込み(作動)行程と戻り行程を合わせ、通常クランクのペダルPの前後動作に準じて従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムにない前後移動幅の大きなすなわち、揺動アームAの先端側方向に少しの膨らみを持ち、後端側に実施採用クランクサークルの半径分膨らんで、全体として通常のクランクにおけるクランクアーム長さに近く、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易い長手方向の前後に短径で上下方向に長径で対称の略長円形状サークルとなる。
【0105】
ペダルPが揺動アームAの先端部に復帰する直前すなわち、戻り行程が終了する直前で突っ張り揺動カム3の突っ張り当接が解除されるよう、突っ張り揺動カム3の先端部が第2カムローラー3R2に当接移動して付勢バネ4の付勢力に抗して突っ張り揺動カム3の姿勢が変化し、第1カムローラーS1cとの当接が解除される(
図4および
図5)。
【0106】
図4には、揺動アームAや第1スライダーS1などの動作対応を示す。このうち
図4Fに示すように、突っ張り揺動カム3がカム揺動・係止部3Rによって保持される状態となるタイミング(ロックタイミング)は、第1スライダーS1が軸支されるクランク回動軸心CX2aが最上点PHに至る直前であり、詳細には
図5に示す状態となる。クランク回動軸心CX2aの
回動軌跡上において、この保持位置と最上点PHとの揺動アームAの長手方向の距離をSkとする。この距離Skは長孔取り付け孔3Raを有する一体化のカム揺動・係止部3Rを揺動アームAの長手方向に位置を適切に調節して揺動アーム先端ブロックA1に固定される。
【0107】
一体化されたカム揺動・係止部3Rを揺動アームAの長手方向に位置を適切に調節して揺動アーム先端ブロックA1に固定する。その後、突っ張り揺動カム3の姿勢は、突っ張り揺動カム3の側面に当接しつつ移動する第1カムローラーS1c(場合により1つ以上の)によって維持され、突っ張り揺動カム3の先端ツメ部32もカムロックピン3R1に係合した状態を維持する。
【0108】
一方、突っ張り揺動カム3のロック状態が解除されるタイミングは、
図5に示すように、クランク回動軸心CX2aが最下点PLを距離Skだけ過ぎた時点となる。この時点で同時に突っ張り揺動カム3が第2カムローラー3R2から離れ、突っ張り揺動カム3に設けた付勢バネ4が突っ張り揺動カム3の姿勢を変化させつつカム位置決めストッパー31に当接するまで揺動させ、半径R状の後端側当接部位3rを第1カムローラーS1cに当接させ、突っ張り当接復帰を行わせる。
【0109】
これにより、第1スライダーS1が、突っ張り揺動カム3と第2スライダー後ブロックS22とによって挟持された状態となる。その時点は、第1スライダーS1が第2スライダーS2を突っ張り当接状態で固定揺動支点軸A4の側すなわち、後端側に押し戻し始める直前である。長手方向において、その後の揺動アームAの後端側への移動により、突っ張り揺動カム3と第2スライダー後ブロックS22とによって挟持された状態の第1スライダーS1の後端側端面と第2スライダー後ブロックS22の先端側端面どうしの間に突っ張り当接復帰を確実に行わせる為の適切なスキマが確保されている。
【0110】
図5(a)に示すように、ペダルPの踏み込みによる踏み込み行程終了時点の近傍で第2スライダー前ブロックS21と揺動アーム先端ブロックA1とに隙間距離Seがある場合はペダル踏み込み力により、さらにSeだけ第2スライダーS2が前出して踏み込みが完了する。この場合はSkの位置から隙間距離Seだけ手前で突っ張り当接復帰となる。ただ、少なくとも戻り行程の前半は、第1スライダーS1の第1スライダー後端側当接部位S1rが第2スライダー後ブロックS22にある第2スライダー後端側当接部位S2rに当接する。この場合は第2スライダー後ブロックS22の先端側端面に当接して固定揺動支点軸A4の側に第2スライダーS2を押し戻すので、突っ張り揺動カム3の突っ張り当接状態は、第1スライダーS1が固定揺動支点軸A4に最も近付くまでに復帰すればよい。
【0111】
本発明の第1実施形態に係るペダルシフト型クランク回転駆動機構Z(以下、単に「本機構Z」と称する)の各部詳細を、改めて
図1~
図4に示す。
【0112】
図1に示すように、本機構Zは、クランク軸CX1およびクランク回動軸CX2と連動する揺動アームAにペダルPが取り付けられ、左右のペダルPを交互に踏み込むことで揺動アームAを往復揺動させる。ペダルPは揺動アームAに沿って往復移動可能に構成されており、揺動アームAを踏み込む際にはペダルPが揺動アームAのほゞ先端位置に保持される。
【0113】
図3および
図4に示すように、ペダルPの踏み込みによる最上点PHから最下点PLに至るまでの踏み込み(作動)行程の間、つまり、ペダル軸心PXが
図3中のF点からH点まで移動する間、突っ張り揺動カム3が当接解除姿勢のまま第1スライダーS1のみが揺動アームAの先端部に向けて往復移動し、作動行程を終了する。すなわち、一方のペダルPおよび第2スライダーS2が、固定揺動支点軸A4との距離が可能な最長の距離に維持されつつ揺動アームAの先端側に位置保持されて、揺動アームAの揺動と相まってペダル軸心PXが円弧状湾曲形の軌跡を描く。
【0114】
一方の揺動アームAにあるペダルPを踏み込むと他方の揺動アームAは上昇する。クランク回動軸CX2の戻り行程前半でクランクアームCAが4分の1回転すると、他方のペダルPは固定揺動支点軸A4の側に引き戻され、続く後半の4分の1回転で揺動アームAの先端側に移動する。クランク軸CX1に沿う方向視におけるペダル軸心PXの移動軌跡は
図3に示すように上下対称の略長円弧状となる。
【0115】
そして、前述の通り踏み込み(作動)行程と戻り行程を合わせ、クランク回動軸心CX2aが1サイクル回動する際のペダル軸心PXの回動軌跡は揺動アームAの揺動と相まって、通常クランクのペダルPの前後動作に準じて従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムにない前後移動幅の大きなすなわち、揺動アームAの先端側方向に少しの膨らみを持つ円弧状湾曲形、後端側に実施採用クランクサークルのほゞ半径分膨らんだ変形長円弧形の、実施採用クランクサークル径を適切に設定することで合わせて通常のクランクにおけるクランクアーム長さに近い膨らみを持ち、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易い上下長径で対称の変形長円形となる。
【0116】
本構成では、第1スライダーS1と第2スライダーS2とに亘り突っ張り揺動カム3が設けられている。突っ張り揺動カム3は、第2スライダーS2の連結部材21に枢支され、突っ張り揺動カム3の後端側当接部位3rが、第1スライダーS1に設けた第1カムローラーS1cと当接/非当接可能に構成されている。突っ張り揺動カム3は、第1スライダーS1が揺動アームAに沿って往復移動する際に、第1スライダーS1の動作に対して第2スライダーS2が遊ぶことの無いように第2スライダーS2の位置を規制する。突っ張り揺動カム3の具体的な動作態様は後述する。
【0117】
このように揺動アームAに対してペダルPがスライドするため、特に踏み込みに際してペダルPは揺動アームAの最先端位置に移動する。これにより、クランク回動軸CX2が一周する際のペダル軸心PXの回動軌跡は、クランク回動軸心CX2aの円形の軌跡に対して大きく前方に位置をずらして形成される。
【0118】
ペダルPを作動させる際に、例えば人の脚の長時間踏み込み運動に耐えられる可動方式と可動範囲は限定される為、一般的な通常クランクのペダル作動ではクランクアームの長さが使用者および使用条件により適宜設定される。これに対し、本実施形態では装置のコンパクト化を図るため、クランク軸心CX1aからペダル軸心PXまでの距離すなわち、実施採用クランクのアーム長さを、一般的な通常クランクで適宜設定される各クランクアームの長さを基準にして同等以下の長さとする。この場合、適宜設定したクランクアームに付くべきクランク回動軸心CX2aの回動軌跡を、ここでは比較対象クランクサークルと称する。
【0119】
図3には、本実施形態におけるクランク回動軸心CX2aによる実施採用クランクサークルに係る軌跡T1と、通常のクランクの回転による比較対象クランクサークルに係る軌跡T2とを比較して示す。上記のことから必然的に実施採用クランクサークルは比較対象クランクサークルより小径の構成とする。しかしながら、当然のこととして人の歩行ステップよりは相当程度小さくするも出来るだけ使用者の脚の折り畳みと送り出しの動きに見合う前後幅に近いものとするのが好ましい。尚、
図3には、ペダル軸心PXの軌跡も合せて示す。
【0120】
図3中のペダル軸心PXの軌跡のうちD点~G点までおよびG点からJ点までは、本実施形態のペダル軸心PXの軌跡が従来のペダルの円軌跡の外側を通過する。これらの位置は、クランク回動軸心CX2aが上死点dを越えて下死点jに至るまでの領域に対応する。これらの位置に於ける踏込みの回動中心は固定揺動支点軸心AXであるから、踏み込み力は大幅に軽減される。
【0121】
一方、踏み込み行程が終了してクランク回動軸心CX2aが最下点PLからA点に戻る際には、第1スライダーS1によって第2スライダーS2が固定揺動支点軸A4の側に引き戻されるため、ペダルPは曲線状に上昇する。これにより、ペダル軸心PXの一周の軌跡が上下長径で対称の変形長円形となり、利用者にとって脚の折り畳みと送り出しが自然な機構を得ることができる。
【0122】
図6には、本実施形態に係るクランク回動軸心CX2aの軌跡T1(実施採用クランクサークル)と、従来のクランク機構に係るペダルの軌跡T2(比較対象クランクサークル)とを示す。ペダルPの踏み込み力Faの方向が例えば、クランク回動軸心CX2aの回動軌跡の最上点PHと最下点PLを結ぶ線(基準線)の方向であるとする。クランク軸心CX1aを通り基準線に対して任意の角度θを成す線と軌跡T1との交点P1に作用する力を定義する。このとき、揺動アームAの中心線と、固定揺動支点軸心AXおよびクランク軸心CX1aを結ぶ線とのなす角度をαとする。
【0123】
ペダル軸心PXには下向きの上記踏み込み力Faが作用するから、ペダル軸心PXにおいて揺動アームAに垂直なペダル踏み込み分力Fm1はFa・cosαである。このFm1に基づけば、交点P1では、Fm1と平行にk・Fm1、つまりk・Fa・cosαの力が作用する。kは、L2(線分AX-PXの長さ)/L1(線分AX-P1の長さ)で表されるてこ比である。また、交点P1において軌跡T1に接する方向の力は
k・Fa・cosα・sin(θ+α)である。
【0124】
ここで、r1を軌跡T1の半径、r2を軌跡T2の半径とすると、
交点P1におけるクランク軸CX1回りの駆動回転モーメントMa1は
Ma1=k・r1・Fa・cosα・sin(θ+α) ・・・(1)
で表される。
ここで、θがゼロのときすなわち、線分AX-CX1aと、線分AX-PHとの成す基本狭角をα0とする。θが0度から90度まで増えるに従ってL1は大きくなるが、αは逆にα0から0度まで減少する。
【0125】
α0は、固定揺動支点軸心AXと軌跡T1との相対によって決まるが、揺動アームAの長さや要素部材のサイズ、また踏み込み位置、高さ、ストロークなどを考慮して20度以上35度以下が望ましい範囲である。ただし、最も効果的な角度は25度から30度程度である。例えば、α=α0=25度とすると、
sinα0=0.42であり、cosα0は0.91程度であり、
よって、ペダルPが最上点PHにあるとき、
Ma1≒0.38・r1(L2/L1)・Fa・・・(2)
となる。α=α0=30度とすると、
sinα0=0.5であり、cosα0は0.87程度であり、
よって、 Ma1≒0.44・r1(L2/L1)・Fa・・・(3)
となる。
【0126】
これらのことは、最上点PHでθがゼロのとき、α0による作動分力効果として通常クランクでの上死点ではクランク軸駆動回転モーメントに寄与する作動分力は発生せずゼロであるが、θが90度のときの最大駆動回転モーメント(k・r1・Fa)に対する目安の比率として、α0が25度、30度では0.38や0,44比率の作動分力効果が生じる上、更に変化する内の最大の(L2/L1)のてこ比効果が加わることを表わす。
【0127】
ペダルPの踏み込み行程、即ち、クランク回動軸心CX2aが最上点PHから最下点PLまで移動する迄の領域に限れば、L2は一定であるから、てこ比k=(L2/L1)は最上点PHおよび最下点PLにおいて最大となる。本構成では、突っ張り揺動カム3の機能により、クランク回動軸心CX2aが最上点PHにあるとき、ペダルPの位置を揺動アームAの最先端に移動させるから、踏み行程の当初より大きな回転モーメントをクランクアームCAに付与することができる。
【0128】
すなわち、本構成のようなペダルシフト型回転駆動機構Zはてこ比kが位置的に通常クランクの上死点に当たる最上点PHに近い程大きくなり、そのてこの働きで駆動回転モーメントも大きくなるので、同じく位置的に通常クランクのいわゆる上死点に相当する最上点近傍での回転モーメント増大目的に対し、踏み込み作動分力と併せてうまく適合した合理的な手段となる。
【0129】
また、本構成ではθが踏み込み行程の前半を終えて中間点の90度を越え最下点PLの180度に至る踏み込み行程の後半におけるクランク軸心CX1a回りの駆動回転モーメントの変化は、線分AX-CX1aを境に上下対称のものになり、ペダル踏み込み行程全般でのクランク軸CX1回りの駆動回転モーメントの向上効果は最上点PHの近傍と同様、最下点PLの近傍でも発揮され、θが90度の中間点までのもののおよそ倍になる。
【0130】
ここで、本構成と他の実施形態での異なる例について補足して述べる。すなわち、踏み込み行程の前半でL2が一定とならず、L1と同様にθによって変化し、θが0度すなわち、実施採用クランクサークルの最上点において、L2が最小となり、てこ比k=(L2/L1)は必ずしも最大とならず、クランク軸CX1の回りの駆動回転モーメントの変化は固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aを通る水平線を境に、踏み込み行程の前半のものと後半のものが上下対称にならない場合がある。しかしこの場合、θが90度までの当該前半でもてこ比kは少なくとも1を上回り、てこの働きの効果は残る上に、θが90度を越える踏み込み行程の後半では踏み込み作動分力が掛かったまま、ペダルPが揺動アームAの上の可動範囲での最先端に位置した状態でL2は最長で一定の長さとなり、L1の減少変化に伴い最下点近傍の駆動回転モーメントは大きく増大する。従って、この場合でも踏み込み作動分力と併せ、ペダル踏み込み行程全般でのクランク軸CX1の回りの駆動回転モーメントの向上効果は発揮される。
【0131】
(クランクアーム)
図1に示すように、自転車等のフレームFに左右一対のクランクアームCAが取り付けられている。左右のクランクアームCAは180度の位相角差を持ちつつクランク軸CX1から径方向に延出する。クランク軸CX1には、クランク軸CX1の回転を例えば、後輪などに伝達する出力部5としてのスプロケット50が取り付けられている。
【0132】
左右のクランクアームCAの夫々の先端には、後述するクランク回動軸CX2が、クランク軸CX1と平行に外側に延出している。
【0133】
(揺動アーム)
フレームFのうちクランクアームCAの長さを超えて離れた位置にクランク軸CX1とは異なる固定揺動支点軸A4が設けられ、この固定揺動支点軸A4に揺動アームAが軸支されている。固定揺動支点軸A4は例えば、クランク軸CX1とほゞ同じ高さであって後方に設けられる。この揺動アームAには第1スライダーS1、第2スライダーS2およびペダルPが保持される。
【0134】
(第1スライダー)
図1および
図2に示すように、クランクアームCAのクランク回動軸CX2には第1スライダーS1が回転自在のスリーブS11を介して取り付けられている。第1スライダーS1は、
軌道として揺動アームAに設けた二本のガイドバーA3にリニア軸受などを介して外挿されている。これにより、第1スライダーS1は、クランクアームCAの回転に伴って揺動アームA上を円滑に往復移動する。
【0135】
(第2スライダー)
揺動アームAの二本のガイドバーA3には、第1スライダーS1の往復動作に従動する第2スライダーS2が、同じくリニア軸受を介して往復移動可能に取り付けられている。第2スライダーS2は第2スライダー前ブロックS21と第2スライダー後ブロックS22の二つが二股状に連結部材21で連結されている。第2スライダー前ブロックS21にはペダルPが軸支されている。第2スライダーS2がガイドバーA3に沿って往復移動することで、揺動アームAの揺動と相まってペダル軸心PXの移動軌跡をクランク軸心CX1aに沿う方向視において前後移動幅の大きい上下対称の変形長円形状にすることができる。
【0136】
具体的には、揺動アームAが踏み込まれる踏み込み行程では、ペダルPが揺動アームAの先端に固定されて円弧状に降下する。一方、ペダルPが上昇する戻り行程では、第1スライダーS1および第2スライダーS2の移動によってペダルPが揺動アームAの揺動と相まって略長円弧状に上昇する。踏み込み時の円弧と戻り時の変形長円弧とを合わせるとペダル軸心PXの移動軌跡は前後移動幅の大きい上下対称の変形長円形状となる。
【0137】
(ペダル)
自転可能なペダルPは第2スライダーS2の第2スライダー前ブロックS21に取り付けられる。連結部材21を含め第2スライダーS2の何れの個所に取り付けられても良いが、第1スライダーS1や揺動アームAあるいは後述の突っ張り揺動カム3の動作と干渉しない位置に設ける。
【0138】
(突っ張り揺動カム)
図2~
図4に示すように、第1スライダーS1と第2スライダーS2との相対移動は、突っ張り揺動カム3により制御される。揺動アームAがペダルPによって踏み込まれ、クランクアームCAが押し下げられる際(
図3および
図4のF,G,H)には、第2スライダーS2は揺動アームAの先端側に移動している。ペダルPが揺動アームAの先端に移動することで、踏み込み開始時から揺動アームAのペダル移動可能の最大長さがクランク軸CX1回りの回転モーメント増大に利用され、クランクアームCAを効率的に押し下げることができる。また、揺動アームAの揺動と相まってペダル軸心PXの移動軌跡をクランク軸心CX1aに沿う方向視において上下対称の長円弧状にすることができる。
【0139】
一方、クランクアームCAに取り付くクランク回動軸CX2の軸心CX2aが実施採用クランクサークル上の最下点PLを通過し最上点PHに向かう際には対向するペダルPの踏み込みにより揺動アームAが第1スライダーS1の作用によって従動上昇する。第1スライダーS1が最下点PLから踏み込み終了点iを越えて上昇するとき、第1スライダーS1が第2スライダー後ブロックS22に当接し、第2スライダーS2が固定揺動支点軸A4に向けて戻されるため、揺動アームAの揺動と相まって、ペダル軸心PXはクランクアームCAの長さ分膨らんだ変形長円弧状の軌跡を描いて上昇する。
【0140】
このとき、第2スライダーS2に取り付けられた突っ張り揺動カム3が付勢バネ4により第1スライダーS1に取り付く第1カムローラーS1cに当接または近接し、突っ張り揺動カム3と第2スライダー後ブロックS22との間に第1スライダーS1が位置する形となる。これにより、揺動アームAが上昇する際に第2スライダーS2従って、ペダルPが揺動アームAに沿って逆行したりガタついたりすることが防止される。
【0141】
(第1カムローラーおよび第2カムローラー)
突っ張り揺動カム3の動作機能を達成するために、
図1および
図2に示すように、第1スライダーS1には第1カムローラーS1cが設けられ、揺動アーム先端ブロックA1には第2カムローラー3R2が設けられている。第1スライダーS1が軸支されるクランク回動軸CX2の軸心CX2aが最下点PLから最上点PHに移動するまでの間、突っ張り揺動カム3のR状の後端側当接部位3rが付勢バネ4の付勢力とカム位置決めストッパー31とにより第1カムローラーS1cに当接し或は近接する。これにより、第2スライダー後ブロックS22と突っ張り揺動カム3とによって第1スライダーS1が挟持された形となり、第2スライダーS2が、第1スライダーS1の移動に対して逆行したりガタ付いたりせずに追従する。
【0142】
この後、クランク回動軸心CX2aの軌跡T1上に於いて、第1スライダーS1が軸支されるクランク回動軸CX2の軸心CX2aが最上点PHに到達する直前から、突っ張り揺動カム3の先端部の傾斜側面33が第2カムローラー3R2に当接し、付勢バネ4の付勢力に抗して突っ張り当接状態の突っ張り揺動カム3は回動し始め、第1スライダーS1がさらに移動し、
図4Fに示すように、突っ張り揺動カム3に形成した傾斜側面33が第2カムローラー3R2に押されて回動し、先端ツメ部32がカムロックピン3R1に係合する。これと入れ違いに突っ張り揺動カム3は第1カムローラーS1cとの突っ張り当接を解除する。この時点で、第2スライダー前ブロックS21は揺動アーム先端ブロックA1の後端面近傍に到達している。
【0143】
図4のF,G,Hに示す状態では、突っ張り揺動カム3の姿勢は、突っ張り揺動カム3の側面に当接しつつ移動する第1カムローラーS1c(場合により1つ以上の)によって維持され、突っ張り揺動カム3の先端ツメ部32がカムロックピン3R1に係合した状態が維持される。この状態では、第2スライダーS2が、揺動アームAに沿って固定揺動支点軸A4の側に戻ることが阻止される。この後、第1スライダーS1が軸支されるクランク回動軸CX2の軸心CX2aが最上点PHから最下点PLに至る間、第2スライダー前ブロックS21に取り付くペダルPは揺動アームAの最先端位置で保持される。この結果、
図3に太い実線で示すように、F点からH点に至るまでのペダル軸心PXの軌跡は揺動アームAの揺動と相まって固定揺動支点軸心AXを中心とした最大半径を有する円弧状となる。
【0144】
本機構Zの構成における回転駆動のしくみの大きな特徴は、固定揺動支点軸A4を持つ揺動アームAの回転系と、クランク軸CX1を支点に持つクランク(本構成の実施採用クランク)の回転系の二つの回転系が連動して動くことである。この連動は固定揺動支点軸A4に軸支された左右一対の揺動アームAに保持される第1スライダーS1がクランク回動軸CX2に回転自在に軸支されると共に、揺動アームAの長手方向に沿って往復移動可能である状況下で、常に揺動アームAの第1スライダーS1より先端側に位置する左右一対のペダルPの作動によって行われる。踏み込み行程の範囲で一方のペダルPを踏み込んで揺動アームAを部分的回転(ここでは踏み込み揺動)させることにより、その揺動作用分力の方向で、てこ比分増大した作用力をクランク回動軸CX2が受け、クランクが同時的にクランク軸CX1を支点として半回転を行う。
【0145】
図3には、比較として通常の円軌跡を持つクランク機構の軌跡T2を1点鎖線で示している。ここでは、軌跡T2において、円軌跡の最上点T2fからg’点に至るまでの移動方向の変化は、ペダル軸心PXの軌跡におけるF点からG点に至る軌跡上での移動方向変化に比べて大きくなる。このため、従来機構の軌跡T2では、ペダルPの踏み込み方向と軌跡との成す角度が大きくなり、ペダルPの移動に寄与する踏み込み力が少なくなる。
【0146】
本構成の機構Zでは、クランク回動軸心CX2aが最上点PHから最下点PLに至るまでのペダル軸心PXの軌跡が円弧状となり、ペダル軸心PXの移動方向をペダルPの踏み込み方向に近付けることで、踏み込み分力の関係によりペダルPに加わる脚力を有効に利用できる他、足首の疲労軽減にも有効となる。
【0147】
(第2実施形態)
本実施形態のペダルシフト型クランク回転駆動機構Zは、
図7~
図9に示すように、第1実施形態に於ける突っ張り揺動カム3を省略して構成することができる。
本実施形態では、第1スライダーS1と第2スライダーS2とに亘る突っ張り揺動カム3がなく、両者の相対位置関係が容易に変化する。そのために、ペダルPの踏み込み時に、ペダルPを保持する第2スライダーS2が揺動アームAの前方に少しでもスライドし易いように、クランク軸心CX1aに対して固定揺動支点軸心AXが上方となるように傾斜させている。すなわち、固定揺動支点軸心AXでなくクランク軸心CX1aを中心として固定揺動支点軸A4の側の基本線を水平から最上点PHの方向に適切な角度β分を、当該基本線と本構成全体の相関を変えずに共に振らす、
すなわち、クランク軸CX1方向視で角度を振らせて装着する。
【0148】
その上で、本実施形態では、一方のペダルが踏み込み作用を行う作動行程の範囲をクランク回動軸心の軌跡上に於いて最上点から最下点とし、他方のペダルが戻り作用を行う戻り行程の範囲を最下点から最上点に設定している。
【0149】
本構成とする一つの理由はペダルPの踏み込み動作の確実性に基づく。つまり、下死点は固定揺動支点軸心AXから実施採用クランクサークルに引いた下側の接線と実施採用クランクサークルとの接点であるので、揺動アームAの揺動触れ角に対する位置の振れ幅が大きく、ペダルPの作動のばらつきで不確定となり易い。一方、最下点PLではペダルPの踏み込み動作が未だ明確な状態にある。従って、この最下点PLからクランク軸心CX1aを中心として180度遡った位相角差位置の最上点PHを踏み込み動作の始点とする。
【0150】
その他の理由は、そうすることで本構成の場合の実施採用クランクサークル上でクランク回動軸心CX2aが戻り行程の前段でクランク最下点から固定揺動支点軸A4に最も近づく位置すなわち、固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aを結ぶ線上に到達するまでに移動するときのペダル軸心PXのサークル軌跡の前後幅を、上死点の線対称点から下死点までの作動行程の場合におけるクランク回動軸心CX2aの下死点から固定揺動支点軸A4に最も近づく位置までの戻り行程前段での同前後幅より大きくでき、特に人の脚で踏み込む場合に脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易いものにできることである。
【0151】
作動行程の前段においては、ペダルPを作動させて揺動アームAを回動させ、クランク回動軸CX2を介して第1スライダーS1を移動させて第2スライダーS2の全体を揺動アーム先端ブロックA1に当接するまで移動させる。
【0152】
そして、続くクランクアームCAの前半回転となる作動行程の残りの後段回転では、実施採用クランクサークルの軌跡に従ってクランク回動軸心CX2aが最下点PLに到達するまですなわち、
図8および
図9におけるG点からH点までは、第1スライダーのみが固定揺動支点軸A4の側に移動するが、第2スライダー前ブロックS21に取り付くペダルPは相反する作動力の方向の関係で、揺動アーム先端ブロックA1に当接した状態で作動行程を終了する。その結果、ペダル軸心PXは揺動アームAの揺動と相まって固定揺動支点軸心AXを中心としたペダル軸心PXまでの距離を半径とした部分的円弧軌跡を描く。このとき、第1スライダーS1を軸支するクランク回動軸CX2の軸心CX2aが最下点PLに到達する時点まで、第1スライダー後端側当接部位S1rすなわち後端側端面は、第2スライダー後端側当接部位S2rに当接に至らない状態を保って最接近する。
【0153】
但し、作動行程において踏み込まれた一方のペダルPにより、クランク回動軸心CX2aは慣性などによって最下点PLを越えて下死点に向かい、クランクアームCAがさらに回転しようとしてもすぐに、その方の第1スライダーS1が第2スライダー後端側当接部位S2rに当接して作動が阻止され、第1スライダーS1が軸支されるクランク回動軸CX2の軸心CX2aが最下点PLを大きく越えて移動することなく作動行程を終了させる。そして、引き続く他方のペダルPの作動によって初めて、一方のクランク回動軸心CX2aの戻り行程が開始され、その方の第1スライダー後端側当接部位S1rが第2スライダー後端側当接部位S2rに当接した状態で共に揺動アームAの後端側への移動を始め、当該ペダルPが固定揺動支点軸A4の側に引き戻される。
【0154】
すなわち、このときこれに並行して他方のペダルPの踏み込みにより作動行程が開始され、他方のクランク回動軸心CX2aが最上点PHを越え、第1スライダーS1が第2スライダー先端側当接部位S2fに当接した状態で、他方のペダルPが揺動アームAの先端側に押されるように作動行程が行われる。
【0155】
これらの動作の内、クランク回動軸心が最下点に到達する時点まで第1スライダー後端側当接部位S1rが第2スライダー後端側当接部位S2rに当接しないことがこの場合の一つの前提条件である前述の第1前提条件となる。仮に、一方のペダルPの踏み込み行程の終了時、クランク回動軸心CX2aが略最下点PLに到達する前に第1スライダー後端側当接部位S1rが第2スライダー後端側当接部位S2rに当接すれば、クランク回動軸CX2に掛かる回動分力と下向きに掛かるペダルPの踏み込み作動分力が相反してクランク回動が阻止され、対向側のクランク回動軸CX2が作動開始点すなわち、最上点PHに到達せず、引き続くペダル踏み込み(作動)による作動分力が不十分となり、クランク回動に影響を及ぼす。この理由から第1前提条件は揺動アームAの長さを可能な限り必要最小限の長さに留めるという前述の第2前提条件と共に重要度が高い。
【0156】
一方、ペダルPが戻り作用を行う戻り行程については以下の通りとなる。対向する他方のペダルPの踏み込みによって一方のペダルPが戻り行程のクランクアームCAの回転において、例えば、実施採用クランクサークルにおける踏み込み終了点である最下点PLから揺動アームAの固定揺動支点軸心AXおよびクランク軸心CX1aを通る線まで上向きにクランクアームCAの回転が行われる戻り行程の前段では、開始直後、揺動アームAの上で第1スライダー後端側当接部位S1rすなわち後端側端面が、第2スライダー後端側当接部位S2rに当接して第2スライダーS2の全体が揺動アームAの固定揺動支点軸A4の側の後端ブロックA2に当接に至らない状態を保って最接近するまで固定揺動支点軸A4の側に移動する。それに伴い同じ距離だけ第2スライダー前ブロックS21に取り付くペダルPも固定揺動支点軸A4に最も近付く。その結果、前述のようにペダル軸心PXは揺動アームAの揺動と相まって基本線の後端側方向に実施採用クランクサークルのほゞ半径分膨らんだ約4分の1変形長円の弧を描く。
【0157】
引き続いて最上点PHまでクランクアームCAの回転が行われる戻り行程の後段では、第1スライダーS1のみが実施採用クランクサークルの軌跡に従って揺動アームAの先端側に移動し、理想的には第1スライダー先端側当接部位S1fすなわち、先端側端面が、第2スライダー前ブロックS21の先端側当接部位S2fすなわち、後端側端面に当接に至らない状態を保って最接近し、戻り行程を終了する。
【0158】
その間すなわち戻り行程の後段では第2スライダーS2は揺動アームAの長手方向において停止したままであり、従って、その第2スライダー前ブロックS21に取り付くペダルPのペダル軸心PXは揺動アームAの揺動と相まって固定揺動支点軸A4を中心としたペダル軸心PXまでの距離を半径とする後端方向上向きの部分的円弧湾曲軌跡を描く。
【0159】
しかしながらこの場合は、第2前提条件である揺動アームAの長さを可能な限り必要最小限の長さに留めるよう設定することにより、各行程の切り替わり時でなく戻り行程の後段回転の途中でクランク回動軸心CX2aが作動開始点すなわち、最上点PHに達する直前のほゞ上死点で、第1スライダーS1の先端側端面と、上向きの部分的円弧湾曲軌跡を描いて揺動してきたペダルPが取り付く第2スライダー前ブロックS21の後端側端面とが当接することになり、それに起因してペダル軸心PXの軌跡に方向が急変し滑らかでない箇所が生じる。これについてはペダルPの動きとしては好ましいものではないが、使用上で引き続くペダル踏み込み動作のタイミングが取れる良いきっかけとなる。
【0160】
本構成の場合、クランク回動軸CX2に軸支される第1スライダーS1が連続したスライド移動動作を行うものの、ペダルPが取り付く第2スライダー前ブロックS21は、第1スライダーS1との当接によってのみ揺動アームAに沿って間接的かつ断続的に移動する。従って、本機構全体を基本狭角α0より小さい適切な角度βだけ傾斜させる、すなわち、クランク軸CX1方向視で角度を振らせて装着することで、使用者の踏み込み動作に応じて、ペダルPが取り付く第2スライダー前ブロックS21がより良好にスライド動作をし易くする状態とさせる。つまり、第1実施形態の構成要件に比べて簡素な構造を持ちながら、ペダルPはスライド動作と回動動作の双方を実現可能である。よって、従来の固定支点揺動アーム式クランク回転駆動システムに比較して、使用者は違和感なくペダル操作を行うことができる。
【0161】
尚、固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aを結ぶ基本線と、固定揺動支点軸心AXから実施採用クランクサークルに引いた接線との基本狭角α0は、揺動アームAの長さや要素部材のサイズ、踏み込み位置、ストロークなどを考慮して20度以上35度以下が望ましい。この内、25度から30度程度とするのが最も効果的である。
【0162】
以上のように、本実施形態における正しい動作のもとで、ペダル軸心PXは揺動アームAの揺動と相まって全体として実施採用クランクサークルの半径分以上、実施採用クランクサークル径の設定によりほゞ通常クランクアーム長さ分、前後に膨らんで、揺動アームAの長手方向の先端側方向にやや傾斜した上下長径の変形長円状サークルの軌跡を描く。そして、ペダルPそのものが揺動アームA上で上下に動きつつ、長手方向に移動することによって、本構成の効果については例えば、揺動アームAを用いて脚でペダルPを踏み込みクランクアームCAを作動回転させる際に、人の脚の折り畳みと送り出しの動きが適応し易いサークル軌跡の作動となり、作動者の脚部の疲労を軽減する回動軌跡でペダル動作を行うことが可能となる。これが本構成の第1の効果である。
【0163】
最上点PHおよび最下点PLは踏み込み(作動)行程の略始点と略終点となり、上死点、下死点を完全に回避した踏み込みが可能となり、全体としては発生する踏み込み作動分力と、特に踏み込み(作動)行程の残りの後段回転で揺動アームAの大きなてこの働きにより、従来のクランク回転駆動での最大課題であるところの、少なくとも位置的に通常クランクの上死点に相当する最上点PHを含め、その近傍および少なくとも位置的に通常クランクの下死点に相当する最下点PLを含め、その近傍における回転駆動の効率向上が図られる。このことが本構成の第2の効果となる。
【0164】
ペダルPを踏み込む(作動する)際のクランク回動軸心CX2aの回動範囲を最上点PHから最下点PLまでとした場合の第2スライダー先端側当接部位S2fと第2スライダー後端側当接部位S2rとの間隔については、実施採用クランクサークルにおいて一方のクランク回動軸心CX2aが踏み込み行程終了点の最下点PLに到達したときに、同方の第1スライダーS1の後端面が第2スライダー後端側当接部位S2rに最小限の必要なスキマを隔てて位置させることとなる。
【0165】
一方、そのとき第2スライダー前ブロックS21はそれに取り付くペダルPの踏み込みにより、揺動アーム先端ブロックA1に押し付けられた状態であるので、このときの第2スライダー先端側当接部位S2fと第2スライダー後端側当接部位S2rとの間隔をもって本実施形態での設定間隔とする。
【0166】
従って、第1スライダーS1が軸支されるクランク回動軸心CX2aが固定揺動支点軸心AXから最も離れた位置の点から最下点PLまで移動するときの揺動アームAの長手方向の移動距離すなわち、踏み込み(作動)行程の後段での第1スライダーS1の移動距離に第1スライダーS1の長手方向幅と最小限の必要なスキマを加えたものから算出される。
【0167】
揺動アームAの必要最小限長さについては、まず基本狭角と実施採用クランクサークル半径が設定されると固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aまでの距離が決められ。実施採用クランクサークルにおいてクランク回動軸心CX2aが固定揺動支点軸心AXから最も離れた位置にあるときすなわち、実施採用クランクサークルと、固定揺動支点軸心AXおよびクランク軸心CX1aを結ぶ延長線との交点にあるとき、クランク回動軸CX2に軸支する第1スライダーS1の先端側に適切なスキマを持たせて第2スライダー前ブロックS21が位置し、更にその先端側に揺動アーム先端ブロックA1が適切なスキマを持って配置されている状態の揺動アームAの長さは、固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aまでの距離に実施採用クランクサークルの半径と、第2スライダー前ブロックS21および第2スライダー後ブロックS22の寸法を決定することで、第2スライダーS2をスライド自在に保持すべき揺動アームAの固定揺動支点軸心AXから先端側の寸法が決定される(適切な各箇所のスキマを除き)。
【0168】
これらの寸法が決定されれば、第1スライダーS1と第2スライダーS2、揺動アームAの夫々の間に設定すべき隙間寸法も容易に設定される。
【0169】
本実施形態における本機構の寸法設定に際しては、前述の第1前提第1条件と第2前提条件の設計仕様を満たすとする基本思想に基づいた上で、使用者の脚の折り畳みと送り出し動作が容易となり、脚部の疲労が軽減されるように各部の寸法を決定すると良い。
【0170】
また、作動あるいは踏み込みを人の腕や脚に委ねる対象において作動(踏み込み)方向などを適切に調整される場合は、本構成の特徴を最大限に発揮でき、より多くの利用につながることとなり、本構成にとって好都合である。それに加え、装置を適切に傾斜させる、すなわち、クランク軸CX1方向視で角度を振らせて装着することを組み合わせることで、広い範囲の用途に適用される。一方、本構成の装置は、人が運転しない形式の装置においても有効に利用することができる。
【0171】
(第3実施形態)
第2実施形態で示した通り、第1スライダー先端側当接部位S1fと、第2スライダー先端側当接部位S2fとの間に突っ張り揺動カム3がない構成では、踏み込み開始時の略最上点PHの付近でクランク軸CX1の回りの駆動回転モーメントの増大および回転駆動の効率向上が不十分であるのと、戻り行程の1作動の中でのペダル軸心PXの軌跡において、踏み込み直前にペダルPの進行方向が急変するところが生じる。
【0172】
これは戻り行程終了前まで第1スライダー先端側当接部位S1fが第2スライダー先端側当接部位S2fに非当接のままで移動し、終了前に急激に当接してペダル軸心PXの移動方向が急変することによって生じる。これについては引き続きペダルPの踏み込み動作のタイミングを取る良いきっかけとなる一面もあるが、ペダルPの操作上
好ましいものではない。本実施形態の特徴構成はこのペダル軸心PXの軌跡方向の急変を改善し尚かつ、ペダルPを揺動アームAの固定揺動支点軸心AXからより遠くに移動させてペダルPの踏み込みによるクランク軸CX1の回りの駆動回転モーメントの増大および回転駆動の効率向上を図るものである。
【0173】
ここでは踏み込み(作動)行程における第1スライダーS1の移動幅を基準に第2スライダー先端側当接部位S2fと第2スライダー後端側当接部位S2rとの間のスキマ間隔を設定して、揺動アームAの長さを必要最小限に留めた実施形態を採り挙げる。
【0174】
本実施形態においては、前述のように揺動アームAのより先端側にペダルPを移動させ、弾性突っ張り部材Nなどがないものに比し、回転駆動開始時に、第1スライダーS1が既に例えば、踏み込み(作動)行程の前段の移動距離の半分程度、先端側に移動しており、更にその先端側にあるペダルPの踏み込みによって、引き続き踏み込み行程が行われる。
【0175】
また、本構成の実施に当たっては基本的に人の脚の上下の可動範囲において踏み込むペダル軸P10の最下位置を多少下げつつも、同程度最上位置を下げて高さを抑えることを重視する。例えば、通常の自転車で適宜設定される各サイズのクランクアームの長さを基準にした前述の比較対象クランクサークルの最上点位置と同程度の高さにする。その為、ここでは次の利用形態とする。すなわち、前述のペダル軸心サークル軌道の前後幅を大きくできる理由からペダルPを踏み込む際のクランク回動軸心CX2aの回動範囲を最上点PHから最下点PLまでとして、固定揺動支点軸心AXでなくクランク軸心CX1aを中心として固定揺動支点軸A4の側の基本線を水平から最上点PHの方向に適切な角度分を、当該基本線と本構成全体の相関を変えずに共に振らす、すなわち、クランク軸CX1方向視で角度を振らせて装着する。
【0176】
図10~
図12には、第3実施形態のペダルシフト型クランク回転駆動機構Zを示す。本実施形態は前述の突っ張り揺動カム3と第1カムローラーS1cの代わりに、弾性突っ張り部材Nとそれに対応する突っ張り当接部材Ntを夫々、第1スライダーS1または第2スライダーS2の何れか一方に備えるものである。
【0177】
例えば、
図10にあるように第1スライダーS1に弾性突っ張り部材Nを設け、第2スライダー先端側当接部位S2fを突っ張り当接部材Ntとした場合は、突っ張り当接部材Ntと第2スライダー後端側当接部位S2rの当接面どうしは互いに向き合う方向に向けて第1スライダーS1を所定の間隔をもって挟む状態で揺動アームAに保有される。
【0178】
弾性突っ張り部材Nおよび突っ張り当接部材Ntは、第1スライダーS1と第2スライダー前ブロックS21との間隔の縮小変化量に対応して当接し、弾性突っ張り部材Nが収縮を行いつつ、第2スライダーS2を長手方向の先端側に移動可能範囲内で移動させる。
【0179】
本実施形態では第2スライダーS2に剛性を持たせる為、第1スライダーS1の軌跡と同一軌跡に沿って揺動アームAに対し相対的に往復移動する第2スライダー前ブロックS21と、長手方向において第2スライダー前ブロックS21と所定距離を開けて揺動アームAに保持される第2スライダー後ブロックS22を設ける。
【0180】
第2スライダー前ブロックS21と第2スライダー後ブロックS22は、第1スライダーS1を跨ぐように二股構造の連結部材21で連結される。左右の第2スライダー前ブロックS21の夫々にはペダル軸P10および回転自在のペダルPを取り付ける。この左右のペダルPの交互踏み込み作動により、実施採用クランクに回転動作を行わせる。
【0181】
本構成の弾性突っ張り部材Nおよび突っ張り当接部材Ntを取り付けることにより、第1スライダーS1と第2スライダー前ブロックS21とが当接収縮する際に、第1スライダーS1から第2スライダー前ブロックS21に押し力を伝達し、ペダルPの作動行程開始時にペダルPを少しでも揺動アームAの先端側に移動させる。これにより、弾性突っ張り部材Nなどがないものに比し、最上点PHの付近での回転駆動効率を向上させることができる。
【0182】
また、戻り行程の終了前におけるペダルPの軌跡方向の急変を緩和すると共に、ペダル軸心PXの作動軌跡を揺動アームAの先端側に少し膨らませ、後端側に実施採用クランクサークルの半径分膨らんで全体として通常のクランクにおけるクランクアーム長さに近い前後幅の、前後に短径で上下方向に長径であり対称の略長円形状サークルに近似するようにして滑らかな曲線にできる。
【0183】
本実施形態においては、弾性突っ張り部材Nを第1スライダーS1に備え、突っ張り当接部材Ntを第2スライダー前ブロックS21に設けている。弾性突っ張り部材Nは、圧縮コイルばねN1と、圧縮コイルばねN1を挿入して保持するばね保持軸N2と、ばね保持軸N2を長手方向にスライド可能にして支える軸受穴N3を有する突っ張り軸受部材N4とで成る。ばね保持軸N2の先端と当接して圧縮コイルばねN1の付勢力を受け止める突っ張り当接部材Ntは、第2スライダー前ブロックS21に取り付けられ、長手方向後端側が第2スライダー先端側当接部位S2fとなる。
【0184】
ばね保持軸N2のうち突っ張り当接部材Ntの側の端部は、圧縮コイルばねN1の延伸当たり部として鍔形状となっており第1スライダー先端側当接部位S1fを兼ねている。反対側の端部にはネジが切られていて二重ロックナットN5などで圧縮コイルばねN1の付勢力によりばね保持軸N2が突っ張り軸受部材N4から抜け出るのを阻止する。また、この二重ロックナットN5はばね保持軸N2の突っ張り軸受部材N4からの突出長さを調節する役目を兼ねている。
【0185】
この調節により、一方のペダルPの戻り行程後半においてばね保持軸N2の先端を突っ張り当接部材Ntにどのタイミングで当接させるかを決めることができる。もちろん、ペダルPの戻り行程後半の最初の段階から、ばね保持軸N2の先端を突っ張り当接部材Ntに当接させて圧縮コイルばねN1の付勢力を加える状態としてもよい。
【0186】
圧縮コイルばねN1、ばね保持軸N2、突っ張り軸受部材N4、突っ張り当接部材Ntなどは、揺動アームAの下部に位置するように第1スライダーS1および第2スライダー前ブロックS21に夫々取り付けられる。その際、突っ張り軸受部材N4には段部N4aを設けておき、第1スライダーS1と第2スライダー前ブロックS21とが当接した場合でも縮み状態にある圧縮コイルばねN1が保持できるスペースが設けられている。
【0187】
このように弾性突っ張り部材Nを設けることで、踏み込み時のいわゆる通常の自転車の位置的に上死点に相当する最上点PHおよびその近傍の回転駆動効率向上に寄与すると共に、第1スライダー先端側当接部位S1fと、第2スライダー先端側当接部位S2fとの衝突当接時の繰り返し衝撃の緩和と衝撃音を抑制する。
【0188】
圧縮コイルばねN1の一実施例としては、無負荷時と圧縮時の長さの差が大きく、他方のペダルPの踏み込みによる一方のペダルPの戻り行程後半で、ばね保持軸N2がペダルPの取付く第2スライダー前ブロックS21に当接しつつ、第2スライダーS2の全体をできるだけ揺動アームAの先端側に移動させる付勢力を有するものとする。尚、この他の構成として圧縮コイルばねN1に代えて、例えば弾力を有するゴム製の弾性体を用いることもできる。
【0189】
第2スライダーS2の移動は、当接する第1スライダーS1の移動から若干の遅れをもって開始する可能性があるが、圧縮コイルばねN1により第2スライダーS2を移動させる力の伝達が行われれば、当該移動は生じる。
【0190】
それに引き続き、例えば、脚により一方のペダルPの踏み込み作動を行う場合(
図11および
図12におけるF点~H点)、突っ張り状態の解除が起こらないので、踏み込みの前半では最初は踏み込み分力に対しての、最後は揺動アーム先端ブロックA1に当接して停止する第2スライダー前ブロックS21に対しての第1スライダーS1の移動する力に圧迫され、更に圧縮コイルばねN1が余分に収縮しその為の余分の作動力が必要となる。
【0191】
続く後半では収縮がすべて解放され圧縮コイルばねN1は伸びて元の無負荷時の長さに戻り伸縮の1サイクルを終える。しかし、この1サイクルの間の収縮の為のペダルPの踏み込みエネルギーは基本的には踏み込み後半のクランク回転に加担して還元されるので、本機構Zのクランク作動においてエネルギーロスは生じない。
【0192】
この場合、図示は省略するが、弾性突っ張り部材Nの代わりに固体突っ張り部材を取り付けても第2スライダーS2の全体を揺動アームAの先端側に移動させることができる。固体突っ張り部材は収縮しないので弾性突っ張り部材Nがないものに比しその収縮しない長さ分、固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aを通る延長線方向において更に先端方向に第2スライダーS2およびペダルPを余分に移動させる。
【0193】
従って、本機構Zの重要な要件の第1前提条件すなわち、クランク回動軸心CX2aが実施採用クランクサークルにおける略最下点PLに到達する前に第1スライダー後端側当接部位S1rを第2スライダー後端側当接部位S2rに当接させない為に余分の移動分、第2スライダー先端側当接部位S2fと第2スライダー後端側当接部位S2rとの間隔を拡げることと併せ、揺動アームAを先端方向に伸ばす必要があり、揺動アームAをいたずらに伸ばさずに必要な最小限の長さに留めるよう設定されるという本構成、本機構Zの重要な要件の第2前提条件が崩れることになるので、本実施形態でこの前提条件を満たせることがもう一つの弾性突っ張り機能部材の効果となる。
【0194】
一方、踏み込み(作動)行程開始時において角度オフセットを行わない場合は、踏み込み方向によって
図11に示す線分AX-CX1aを通る線と、線分AX-PHを通る線とが成す狭角がα0(この場合、25度として)の上方向の仰角であるので逆方向の踏み込み分力により圧縮コイルばねN1を収縮させつつ、ペダルPが取り付く第2スライダー前ブロックS21およびペダルPが揺動アームAの上で後端側に一瞬、逆行戻りしょうとするが、すぐに先端側への当接移動する第1スライダーS1に押されて先端側に移動し始めるという動作が生じ得る。
【0195】
但し、本実施形態においては、既に
図11に示すように固定揺動支点軸心AXとクランク軸心CX1aを通る延長線の固定揺動支点軸A4側をクランク軸心CX1aを中心として水平から最上点の方向に
適切な角度βだけ
傾けてフレームFなどに取り付け使用するのでペダルPの一瞬の逆行戻りはほゞ解消される。
【0196】
また、本構成で先端側
を下向きに角度βだけ傾けてフレームFなどに取り付け使用する他の効果は、前述のように人の脚の上下の可動範囲において踏み込むペダル軸P10の最下位置を多少下げつつも、同程度最上位置を下げて高さを抑えることにある。具体的にはペダルPが揺動アームAの最先端側に位置する踏み込み開始時に、本構成のペダルPの位置が比較対象とする通常クランクサークルでの踏み込み開始時のペダルの位置すなわち、
図11における上死点T2dにあるペダルの位置より高くなり、踏み込み時に脚をより高く上げる必要があり、その繰り返しのペダル操作が使用者によって困難となる場合も本図のように
適切な角度βだけ、先端側
を下向きに傾けてフレームFに取り付け使用する。これにより、繰り返しの踏み込み操作の負荷を大きく軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明のペダルシフト型クランク回転駆動機構は、一般の自転車はもとより、リカンベント型自転車の他、身体弱者向けまたは業務用三輪自転車、フィットネス機器、あるいは省力化機器、装置などその他、クランク軸に取り付けられた左右一対のクランクアームに交互に外力を加え、クランク軸と一体回転する出力部を備えた装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0198】
21a 揺動支点軸受台
21b 挿入揺動支点軸
3 突っ張り揺動カム
3R カム揺動係止部
3R1 カムロックピン
3R2 第2カムローラー
31 カム位置決めストッパー
4 付勢バネ
5 出力部
A 揺動アーム
A1 揺動アーム先端ブロック
A3 ガイドバー
A4 固定揺動支点軸
CA クランクアーム
CX1 クランク軸
CX1a クランク軸心
CX2 クランク回動軸
CX2a クランク回動軸心
F フレーム
N 弾性突っ張り部材
Nt 突っ張り当接部材
P ペダル
PH 最上点
PL 最下点
PX ペダル軸心
S1 第1スライダー
S1c 第1カムローラー
S1f 第1スライダー先端側当接部位
S1r 第1スライダー後端側当接部位
S2 第2スライダー
S2f 第2スライダー先端側当接部位
S2r 第2スライダー後端側当接部位
S21 第2スライダー前ブロック
Z ペダルシフト型クランク回転駆動機構
【要約】
【課題】大きな脚力を要さず長時間使用が可能なペダルシフト型クランク回転駆動機構を提供する。
【解決手段】フレームFなどに軸支されたクランク軸CX1に固定された左右一対のクランクアームCAおよびクランク回動軸CX2と、クランク軸CX1から離れた位置の固定揺動支点軸A4に軸支された左右一対の揺動アームAと、クランク回動軸CX2に軸支され揺動アームAの長手方向に沿って往復移動する第1スライダーS1と、第1スライダーS1に当接または非当接となって断続的に往復移動する第2スライダーS2と、第2スライダー前ブロックS21に取り付けられ揺動アームAを揺動させて略長円状軌跡を描きつつクランク軸CX1を回転させるペダルPとを備え、出力部5に回転出力を付与するペダルシフト型クランク回転駆動機構Z。
【選択図】
図1