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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】位置決め装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20240805BHJP
   A61F 2/02 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61B17/00 500
A61F2/02
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022511017
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 IB2019000915
(87)【国際公開番号】W WO2021033004
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】522064269
【氏名又は名称】ホリスティック・メディカル
【氏名又は名称原語表記】HOLISTICK MEDICAL
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ,エレン
(72)【発明者】
【氏名】キロワー,マチュー
(72)【発明者】
【氏名】プーレティ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ポー,アントワーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ガード,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ワーナック,ボリス
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノー,マエル
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-069096(JP,A)
【文献】特表2008-532622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158045(US,A1)
【文献】特表2010-505481(JP,A)
【文献】特表2009-534138(JP,A)
【文献】特開2009-018150(JP,A)
【文献】特開2002-248105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0290001(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61F 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房欠損の治療のための医療用インプラントの送達のための送達装置(16)であって、前記送達装置は、前記送達装置を配置するための位置決め装置(1)を備え、前記送達装置は、前記位置決め装置と共通の長手方向軸を共有して、前記位置決め装置にわたって同心的に設置され、前記送達装置は、前記共通の長手方向軸に沿って前記位置決め装置に対して移動可能であり、前記位置決め装置は、前記心房欠損を通って送達されるように適合される遠位部(8)を備え、前記遠位部(8)を選択的に拡張させるための機構を備え、前記遠位部(8)は、前記位置決め装置(1)が欠損部位に一時的に係合されるように、拡張前に前記心房欠損を通って配置されることができるとともに、拡張の際に同じ心房欠損を通って引っ込められることが機械的に防止されるように適合され、前記遠位部は、前記医療用インプラントの配置の際に前記位置決め装置(1)が前記送達装置とともに引っ込められることができるように、前記医療用インプラントを通って引っ込められるように適合され、
前記位置決め装置は、管状構造を備え、
前記位置決め装置は、前記位置決め装置(1)の前記遠位部を前記位置決め装置(1)に対して引き戻すための、作動機構を備える、送達装置(16)。
【請求項2】
前記位置決め装置は、バルーン(10)を備える、請求項1に記載の送達装置(16)。
【請求項3】
前記位置決め装置(1)の前記遠位部(8)は少なくとも1つのワイヤ(7)を備え、前記少なくとも1つのワイヤ(7)は第1の形状と第2の形状とを有し、前記第1の形状は開口部を通る前記位置決め装置(1)の移送を許容するように適合され、前記第2の形状は前記開口部における前記位置決め装置(1)の係合を許容するように適合される、請求項1または請求項2に記載の送達装置(16)。
【請求項4】
前記第2の形状は平面状である、請求項3に記載の送達装置(16)。
【請求項5】
前記位置決め装置(1)は、前記少なくとも1つのワイヤ(7)が前記作動機構の作動によって前記第1の形状から前記第2の形状にされるように適合される、請求項に記載の送達装置(16)。
【請求項6】
前記第2の形状は、螺旋、平円盤、星を含む群から選択される、請求項3~5のいずれか一項に記載の送達装置(16)。
【請求項7】
前記管状構造(5)は、形状記憶材料でできている、請求項1に記載の送達装置(16)。
【請求項8】
前記管状構造(5)は少なくとも1つのスリット(2)を備える、請求項1または7のいずれか一項に記載の送達装置(16)。
【請求項9】
前記少なくとも1つのスリット(2)は、前記管状構造(5)から離れて拡張することができる少なくとも1つのストラット(3)を形成するように設けられる、請求項8に記載の送達装置(16)。
【請求項10】
前記少なくとも1つのスリット(2)は、少なくとも1つのワイヤ(7)が前記スリット(2)を通って配置されることができるように適合される、請求項8に記載の送達装置(16)。
【請求項11】
前記少なくとも1つのスリット(2)は、前記少なくとも1つのストラット(3)が前記管状構造(5)の一部の回転によって、前記管状構造(5)から離れて拡張されることができるように、前記管状構造(5)の外周および長手方向軸(L)の周りに螺旋状に延在する、請求項9に記載の送達装置(16)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の序文に記載の、医療用インプラントのための送達装置を配置するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低侵襲的治療によって最も良好に治療される数々の病状が存在する。その結果、先行技術において数多くの移植可能な装置が提案されており、その多くは低侵襲的な方法で配置され得る。たとえば、カテーテルを通って傘状のインプラントを配置することによる心房中隔欠損(ASD:atrial septal defects)の閉鎖は、Lockらによって開示されている(DOI:10.1161/01.CIR.79.5.1091)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、低侵襲的治療は、治療中に治療部位が直接アクセス可能ではないという点で困難である。したがって、外科医が送達装置の位置または配向を適合することは容易に可能であるものではない。同様に、送達装置が多数の部品を備える場合、他のものを移植部位に対して一定の位置に保持しながら多数の部品のうちの1つの位置を変更することは困難であり得る。さらに、所望の部位に送達装置を保持することは難しい場合がある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服すること、特に送達装置の場所を、特に装置を場所決めするための追加の手段を用いずに送達装置またはインプラントを動かすことが可能であるように決定する容易な方法を提供することである。
【0005】
このおよび他の目的は、本発明の独立請求項の特徴記述部分に記載の位置決め装置によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る位置決め装置は、特に医療用インプラントのための送達装置を配置するために適合される。それは、欠損、好ましくは心室壁、心房壁または血管壁における開口部を通って送達されるように適合される遠位部を備える。「遠位」とは、記載された装置の文脈において、操作者から離れる方向として理解されるべきである。それは、遠位部を選択的に拡張させるための機構をさらに備え、操作者が裁量により遠位部を拡張させることを可能にする。拡張前、遠位部は欠損を通って配置され得るが、拡張後は同じ欠損を通って引っ込められることが機械的に防止される。したがって、位置決め装置は欠損部位に一時的に係合される。遠位部は、さらに、位置決め装置が送達装置とともに引っ込められることができるように、再び萎んで医療用インプラントを通って引っ込められるように適合される。
【0007】
特に、本発明に係る装置は、医療用インプラントのための送達装置に固定されるように接続され得る。
【0008】
本発明に係る位置決め装置は患者の身体に残されるようには設計または適合されていないことが当業者によって理解されるであろう。したがって、それは、いつでも、しかし特にその配置と同じ手順の間に、容易に取り外されるように適合されるという点で、先行技術における医療用インプラントとは異なる。しかしながら、位置決め装置は、言うまでもなく、特に先行技術において知られるものと同様に医療用インプラントの配置を容易にするために、医療用インプラントとともに配置されるように適合される。
【0009】
欠損において係合されることにより、位置決め装置は、送達装置またはインプラントのための繋留点を提供するまたは示す。したがって、送達装置またはインプラントの任意の部分の位置が位置決め装置に対して既知である場合、欠損部位に対するその位置を推定することができる。加えて、欠損部位における繋留は、欠損部位に対する送達装置の正確な位置を監視することを不要にする。
【0010】
好ましくは、位置決め装置はバルーンを備える。特に、バルーンは、配置された状態でバルーンが遠位部とは異なる欠損の部位に位置するように設けられ得る。特に、バルーンは、卵円孔開存(PFO:patent foramen ovale)の異なる部位にあり得る。
【0011】
これは、操作者または使用者がバルーンに対して反力を提供することを可能にする。たとえば、バルーンが組織壁に対して医療用インプラントを押して欠損を閉鎖するために用いられる場合、位置決め装置は配置を助ける反力を提供することができる。
【0012】
好ましくは、位置決め装置は、少なくとも1つのワイヤを備える。ワイヤは、少なくとも、第1の形状と第2の形状とを有する。たとえば、第1の形状は欠損を通る容易な移送を可能にするように適合され得るが、第2の形状は欠損部位における係合を可能にするように適合される。
【0013】
好ましくは、第2の形状は実質的に平面状である。これは、移植部位において位置決め装置を係合させるために、およびさらなる反力を提供するのに特に有利である。追加的にまたは代替的に、第1の形状は、欠損を通る容易な移送を可能にするために実質的に直線状であり得る。
【0014】
好ましくは、位置決め装置は、位置決め装置の遠位部を位置決め装置の残りの部分に関して引き戻すための作動機構を備える。作動機構は、特に、機械的作動機構であり得る。特に好ましい実施形態において、作動機構はプルワイヤを備える。たとえば、プルワイヤは、プルワイヤの引っ張りが位置決め装置の残りの部分に対して遠位部を直接引き戻すように、位置決め装置の遠位部と動作可能に接続され得る。
【0015】
好ましくは、少なくとも1つのワイヤは、作動機構を作動させることによって、その第1の形状からその第2の形状にされる。
【0016】
好ましくは、第2の形状は、螺旋、平円盤、および星を含む群から選択される。
好ましくは、位置決め装置は、管状構造、特に好ましくはハイポチューブを備える。
【0017】
ハイポチューブとは、皮下注射針と同程度の細い中空の構造として理解されるべきである。皮下注射針とは対照的に、ハイポチューブは必ずしも鋭い先端を備えない。しかしながら、ハイポチューブは同様にカニューレ挿入され得る。ハイポチューブは、所望の機械的特性に応じて様々な材料を備えてもよく、または様々な材料から構成されてもよい。生体適合性材料でできたハイポチューブを用いることが特に有利である。特に、金属またはポリマーから構成されたハイポチューブは、本出願によく適している。
【0018】
好ましくは、管状構造は、形状記憶材料、さらにより好ましくはニチノールでできている。
【0019】
好ましくは、管状構造は、少なくとも1つのスリットを備える。
好ましくは、少なくとも1つのスリットは、管状構造から離れて拡張することができる少なくとも1つのストラットを形成するように設けられる。ストラットも第1の形状と第2の形状とを備えることができ、その第2の形状で欠損部位に係合し得る。
【0020】
好ましくは、少なくとも1つのスリットは、少なくとも1つのワイヤがスリットを通って配置されることができるように適合される。特に、ワイヤは、その第1の形状で管状構造内に設けられ、第2の形状で管状構造から離れて拡張するように適合され得る。
【0021】
好ましくは、少なくとも1つのスリットは、管状構造の外周および長手方向軸の周りに螺旋状に延在する。このような構成において、少なくとも1つのストラットは、管状構造の一部が回転される場合に管状構造から離れて拡張されることができる。特に、管状構造の遠位端は、たとえばトルクの印加によって、管状構造の長手方向軸の周りに、かつ管状構造および/または位置決め装置に対して回転されることができる。
【0022】
本発明は、送達装置にも関する。
本発明に係る送達装置は、本明細書に記載の位置決め装置を備える。好ましくは、送達装置は、位置決め装置にわたって同心的に設置される。それらは、互いに対して同軸的に動かされ得るが、共通の軸、特に長手方向軸を共有する。たとえば、これは、送達装置における専用の管の中に位置決め装置を設けることによって達成されることができる。これは、送達装置を位置決め装置の軸に沿って動かすことを可能にする。本発明は、さらに、人体において医療用インプラントを送達する方法に関する。本発明に係る方法は、心室壁または心房壁における開口部に医療用インプラントを送達するのに特に有利である。方法は、
-位置決め装置、特に本明細書に記載の位置決め装置を、組織における開口部、特に心房壁または心室壁における開口部を通って送達するステップと、
-開口部において位置決め装置を係合させるステップと、
-医療用インプラントを送達するステップと、
-インプラントを身体に保持しながら位置決め装置を係合解除して取り外すステップとを含む。
【0023】
好ましくは、位置決め装置は、医療用インプラントを通って引っ込められる。
位置決め装置は、第1の形状と第2の形状とを有する部分を備え得る。開口部において位置決め装置を係合させるステップは、上記部分をその第2の形状にすることを含み得る。好ましくは、それは、引込み前にその第1の形状に戻るように適合され得る。
【0024】
任意選択的に、方法は、特に位置決め装置の部分を第1の形状から第2の形状にするために、長手方向力またはトルクを印加するステップをさらに含んでもよい。
【0025】
以下において、本発明は、以下の図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】管状構造を備える位置決め装置の概略図である。
図2図2a~図2bは、送達状態および係合状態における位置決め装置の実施形態を示す図である。
図3図3a~図3bは、配置状態および配置された状態における位置決め装置の代替的な実施形態を示す図である。
図4図4a~図4cは、配置状態および配置された状態における位置決め装置の別の代替的な実施形態、ならびに頂面図における位置決め装置の別の代替的な実施形態を示す図である。
図5図5a~図5cは、位置決め装置の遠位部の異なる実施形態を示す図である。
図6図6a~図6bは、配置状態および配置された状態における位置決め装置の別の代替的な実施形態を示す図である。
図7図7a~図7bは、配置状態および配置された状態における位置決め装置の別の代替的な実施形態を示す図である。
図8図7a~図7bに示されるような位置決め装置の遠位部の詳細図である。
図9】位置決め装置の遠位部の長手方向軸に沿った断面図である。
図10】位置決め装置の別の代替的な実施形態を示す図である。
図11】送達装置との組み合わせにおける位置決め装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明に係る位置決め装置1の実施形態を示す。それは、金属材料でできたハイポチューブの形態の管状構造5を備える。その遠位部8は、1つのレーザ切断されたスリット2を備える。ハイポチューブにおいてスリットを形成するために代替法を用いることが可能であることは言うまでもない。スリットは、組織上に係合するための繋留部(図示せず)の配置を可能にする。しかしながら、示される構成においては、繋留部はハイポチューブ内に設けられ、係合し得ない。したがって、位置決め装置は、心房壁における開口部を通って移送されることができる。同様に、スリット内に繋留部を引っ込めることは、同じ欠損を通って装置1を引っ込めることを可能にする。
【0028】
図2aおよび図2bは、位置決め装置1の代替的な実施形態を示す。位置決め装置は、ハイポチューブ5の外周の周りに均等に広がるように配向されるとともにその長手方向軸Lに沿って切断される6つのスリット2を有する、ポリマーのハイポチューブを備える。6つのスリット2のうちの2つのみが、示される斜視図において見える。スリットはそれらの間に6つのストラット3を形成する。したがって、ストラット3および管状構造5は一体的に形成される。図2aでは、位置決め装置1は配置状態にあり、すなわちその遠位部8は開口部を通って、たとえばPFOを通って配置され得る。図2bにおいて、位置決め装置1はその配置された状態にあり、その遠位部8は組織と係合して位置決め装置を繋留し得る。この実施形態においては、作動機構として長手方向力4が用いられる。このような力4を印加することを可能にする任意の機構、たとえばばね、プルワイヤ、ナット付きねじ、またはさらには電気もしくは磁気手段を用いることができる。力4を印加することによって、遠位部8は、位置決め装置の残りの部分に対して動かされる。このように、ストラット3は位置決め装置から離れて拡張され、位置決め装置を越えて拡張する6つのアームを形成する。この状態では、位置決め装置の遠位部8は大きすぎるため、PFOなどの開口部を通って動かすことはできない。したがって、配置後に上記開口部を通って力が印加される場合、位置決め装置1は壁と係合され、開口部を通って引き抜かれることが妨げられる。
【0029】
図3aおよび図3bは、位置決め装置1の代替的な実施形態を示す。装置は、ストラット3を形成するスリット2を有するハイポチューブ5を備えるという点で、図2aおよび図2bに記載されるおよび示されるものに実質的に対応する。しかしながら、本実施形態においては、スリット2はハイポチューブ5の外周およびその長手方向軸Lに沿って螺旋形状で延在する。作動がない場合、位置決め装置1の全体の形状は、図3aに示されるようなハイポチューブ5の形状に実質的に対応する。スリット2の螺旋形状は、ストラット3を拡張させるために、位置決め装置1に対する遠位部8の回転6を可能にする。したがって、図2bに示されるような長手方向力の代わりに、この実施形態においては、トルクの印加が作動機構になる。回転6の際、ストラット3は位置決め装置1の遠位部8において拡張することにより開口部において係合する。
【0030】
図4a~図4cは、本発明に係る位置決め装置1の代替的な実施形態をさらに示す。装置は、ここでは外科用鋼でできた金属のハイポチューブの形態の、管状構造5を備える。それは、ハイポチューブ5の外周の周りに均等に広がる4つのスリット2をさらに備える。ハイポチューブの壁の中には、4つのワイヤ7が、図4aに示される配置状態においてスリット2と実質的に平行にかつスリット2と重なるように設けられる。本実施形態において、ワイヤは、形状記憶特性を有するニッケルチタン合金から構成される。したがって、たとえばヒトの体温に曝されることに起因して温度が上昇することにより、ワイヤ7はそれらの第2の形状になり、位置決め装置1およびハイポチューブ5から離れるようにスリット2を通って拡張する。したがって、遠位部8は、開口部を囲む壁において係合し、位置決め装置1を繋留することができる。図4cは、位置決め装置1のその配置された状態での(近位方向における遠位部からの)頂面図を示す。ワイヤ7は、ハイポチューブ5から離れて拡張し、位置決め装置の外周の周りに90°の角度で均等に広げられる。
【0031】
図5a、図5bおよび図5cは、位置決め装置1の遠位部8の異なる実施形態を概略的に示す。図5aは、螺旋形状のワイヤを備える遠位部を示す。この構成は、螺旋形状がハイポチューブまたは別の管状構造などの外側シース内における単純な圧縮を可能にするため、特に有利である。特に、遠位部がニチノールなどの弾性材料でできている場合、螺旋ばねのように圧縮されることができる。加えて、形状記憶特性は、たとえば、医療用インプラントおよび開口部を通って引っ込められることができるように螺旋をその第1の形状に戻すために活用され得る。しかしながら、ここで描写される遠位部の形状は特定の作動機構に制限されず、遠位部の異なる実施形態を示しているにすぎないということが当業者によって理解されるであろう。このように、図5aに示される螺旋は他の機械的または電気的な力によって拡張されてもよい。追加的にまたは代替的に、弛緩形状が配置のための第1の形状となり、それを拡張するために力が必要である、螺旋ばねとして設けられてもよい。このような構成は、単純に力の印加を止めることによってその元の形状を取り戻して、遠位部8を引っ込めることを容易にし得る。
【0032】
図5bは、星形状を有する遠位部8の異なる実施形態1を示す。この実施形態は、星を形成する5つの棒が軸に沿ってまたは位置決め装置1の長手方向軸に直交して回転可能に設置され得るという利点を提供する。たとえば、星を形成する棒は、配置する間には長手方向軸に対して平行に、配置された状態では直交して設けられ得る。それは、意図される用途の空間的制約に応じて、ここに示される5つよりも多いまたは少ない棒でできていてもよい。
【0033】
図5cは、遠位部8がポリマーでできた平円盤を備える、さらに別の実施形態を示す。ポリマーは、より容易な配置のために、形状記憶ポリマーおよび/または可撓性ポリマーであってもよい。平円盤を、類似の機械的特性を有する異なる材料、たとえば金属から作製することが可能であることは言うまでもない。
【0034】
図6aおよび図6bは、その遠位端8上にバルーン10を備える位置決め装置1の実施形態を示す。位置決め装置1は、管状構造5も備える。しかしながら、管状構造は、その周囲と流体接続しないように、閉鎖末端13を有する。その代わり、管状構造は、その側壁においていくつかの穴9を備える。バルーン10は、すべての穴9がバルーン内にあるように、管状構造の側壁の周りに設けられる。バルーンは、その内側がその外側と流体接続しないようにシールされる。図6aは、PFOなどの開口部を通って配置され得る実質的に直線状の外側形状を有する装置の配置状態を示す。図6bは、流体が穴9を通って押されバルーン10を満たしている、配置された状態を示す。バルーンの拡張された直径は、開口部を通って引っ込められることを防止し、したがって位置決め装置を係合させる。バルーン10は弾性であってもよく、外科医がより多くの圧力を流体に印加することによって所望のサイズになるまで満たすためにより高い可撓性をもたらす。しかしながら、非弾性材料を用いることも可能であることは言うまでもない。この場合、バルーン10の拡張されたサイズを変えることはできない。
【0035】
図7aおよび図7bは、本発明に係る位置決め装置1のさらに別の実施形態を示す。管状構造5a,5bは2つの部分に分割され、そのうちの1つ5bは遠位部8に設けられる。管状構造の2つの部分は、4つの弾性ワイヤ7によって接続される。さらに、遠位部8、特に管状構造5bの遠位部には、引っ張りワイヤ11が接続される。引っ張りワイヤを引っ張ることによって遠位部8を位置決め装置1の残りの部分に対してより近くに動かし、したがって位置決め装置から拡張する部分ループを形成するワイヤを曲げる。これらの部分ループは、開口部の周りにおける組織に係合するように適合され、したがって位置決め装置1を位置決めする。位置決め装置1は、プルワイヤ11を解放することによって容易に初期位置に至ることができる。曲げられたワイヤ7の弾性力は、その後、遠位部8をその元の位置に押し戻す。プルワイヤ11はワイヤ7の屈曲を作動するのに非常によく適した機構であることが当業者によって理解されるであろう。しかしながら、遠位部8を位置決め装置1の近くに動かすために、ねじ機構、ばね機構、水圧機構、または電気もしくは磁気手段などの任意の他の機構が用いられてもよい。
【0036】
図8は、図7aおよび図7bに示される位置決め装置1の遠位部8のより詳細な描写を示す。管状構造5a,5bは、4つのワイヤ7およびプルワイヤ11によって接続された2つの部分を備える。この図解において、ワイヤ7の追加の特徴がよく見える。プルワイヤ11を引っ張る際にワイヤ7が曲がることを容易にするために、ワイヤ7は各々1つの溝12を備える。ここで、溝は、ワイヤ7の内側における接線方向の球状の切欠きの形態を有する。しかしながら、他の形状が用いられてもよい。たとえば、特定の用途のためには、三角形の切欠きがより好適であり得る。追加的にまたは代替的に、ワイヤの外側における単純な切欠きが用いられてもよい。溝12は、遠位部8を位置決め装置1に対して引き戻すために必要な力を低減する。加えて、それらは、ワイヤの屈曲が最もよく伝えられる、より良好な制御を可能にする。複数の溝を用いることにより、プルワイヤ11の作動の際にワイヤ7の形状を制御することも可能である。たとえば、ワイヤ7ごとの2つの溝12は、ワイヤ7の球形状の代わりに、矩形状をもたらし得る。ここで示される位置決め装置1の直径はおおよそ1mmであるが、治療対象となる欠損に基づいて、より大きくてもよく、またはより小さくてもよい。ワイヤ7の直径は各々0.15mmであり、遠位部を位置決め装置の残りの部分5aと接続するワイヤ7の長さは1cmである。言うまでもなく、これらの値は変えられて特定の用途に適合されてもよく、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
【0037】
図9は、図7a、図7bおよび図8に示されるものに類似する遠位部8の断面を示す。それらの図に示される装置とは対照的に、ここで示される実施形態は、4本ではなく12本のワイヤ7を備える。これは、各個々のワイヤ7によってより小さな力が組織上に印加されながら、より堅牢な係合を可能にする。したがって、この実施形態は、傷つきやすい組織に特に有利である。ワイヤ7の数以外、この実施形態は、上記に記載および参照されたものと同一である。それは、管状構造5に接続される引戻しのためのプルワイヤ11も備える。同様に、ワイヤ7は管状構造5に接続される。
【0038】
図10は、バルーン10を備える位置決め装置1の異なる実施形態を示す。ここで、バルーン10は、配置された状態で、治療される開口部および壁の位置14に対して遠位部とは異なる側にあるように設けられる。ここで、遠位部8は、図5bに記載されるものと類似する星形状ワイヤ構成である。しかしながら、遠位部8は本明細書に記載されるような任意の遠位部であり得ることは言うまでもない。この特定的な構成は、遠位部8がバルーン10に対する反力として作用することを可能にする。たとえば、位置決め装置1がパッチ状の医療用インプラントの配置を助けるために用いられる場合、バルーン10は、遠位部がそれを押し戻す間に、上記医療用インプラント上へ力を印加し得る。
【0039】
図11は、送達装置16と位置決め装置1との組み合わせを示す。送達装置16は、インプラント15を取り付けることができるバルーン10を備える。ここで、送達装置16は、バルーン10を通って延在するとともにバルーン表面上における穴17において開く、内管を備える。これは、バルーンの膨張状態にかかわらず位置決め装置1の配置および引込みを可能にする。しかしながら、言うまでもなく、送達装置は任意の他の方法で位置決め装置と組み合わされるように適合され得ることが当業者によって理解されるであろう。このように、示された実施形態は、本発明を限定するものとして理解されるべきではない。位置決め装置1は、図2aおよび図2bに示されるものと類似である。それは、この場合においてはチタンでできた、金属管と、レーザ切断されたストラット3とを備える。管の内側には、プルワイヤ11が存在する。プルワイヤ11の引っ張りによって、位置決め装置の遠位部8は、送達装置16の長手方向軸に沿ってバルーン10の方向に動かされる。これは、ストラット3を拡張させる。示されたシステムは、心房壁における欠損を治療するのに特に有利である。位置決め装置は、上記欠損(図示せず)を通って送達されるように適合され、ストラット3が長手方向軸から離れて拡張するとき組織に係合する。位置決め装置の領域14は、送達の間、上記心房欠損に位置し得る。インプラント15は、欠損に取り付けられてそれを塞ぐことができ、その後、プルワイヤを解放して位置決め装置1を実質的に直線状の形状に戻し、インプラント15における穴17を通って引っ込めることによって、位置決め装置1を引っ込めることができる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11