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▶ 遠藤 加寿美の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】介護用ベッド
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/002 20060101AFI20240805BHJP
   A61G 7/005 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61G7/002
A61G7/005
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020207124
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084497
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2022-07-04
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】520493555
【氏名又は名称】遠藤 加寿美
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 加寿美
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-133833(JP,A)
【文献】中国実用新案第211984680(CN,U)
【文献】特開平09-173389(JP,A)
【文献】特開2002-035051(JP,A)
【文献】実開昭51-082395(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/002
A61G 7/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部側板、脚部側板とそれらを繋ぐ基台上に被介護者の身体を支える寝台を有する介護ベッドにおいて、前記寝台は、身体を支える部位それぞれに分割されており、長手方向に、頭部を支える頭部寝台、背部から腰部を支える背部寝台、腰椎部分から仙骨部分を支える臀部上寝台、骨盤部分を支える臀部頂点寝台、座骨から太腿を支える臀部下太腿寝台、脚部を支える脚部寝台の6つに分割されている。そのうち臀部を支える臀部上寝台、臀部頂点寝台、臀部下太腿寝台は、それぞれに昇降ユニット(昇降装置)を備えており、前記介護ベッドの基台と平行を保ったままの状態で個別に、または連動(連結させずに同時に動作)させ昇降させることができる。フットスイッチにて臀部上寝台と臀部頂点寝台の2つの寝台を連動(連結させずに同時に動作)させ昇降させること、臀部頂点寝台と臀部下太腿寝台を連動(連結させずに同時に動作)させ昇降させることができ、臀部頂点寝台は、臀部上寝台とも、臀部下太腿寝台とも連動(連結させずに同時に動作)させることができることを特徴とする介護ベッド。
【請求項2】
上記請求項1記載の介護ベッドにおいて、
頭部を支える頭部寝台の頭部側板側の端部は、角度変更対応昇降装置部(蝶番型昇降ユニット)にて固定されており、蝶番型昇降ユニットの下部はベッドの基台に取り付けられている。頭部寝台と、背部を支える背部寝台とは、伸縮可能な連結部(スライドシャフト)を介して連結されている。背部寝台の臀部上寝台側の端部は、角度変更対応取り付け部(蝶番型位置決めユニット)にて固定されており、蝶番型位置決めユニットの下部は、ベッドの基台に取り付けられている。ベッドを起こす際、蝶番型昇降ユニットにて取り付けられた頭部寝台は、同じ位置で角度を変化させながら昇降し、また、蝶番型位置決めユニットにて取り付けられた背部寝台は、同じ位置で角度を変化させながら、同じ高さを維持している。そのため、ベッドを起こす際、スライドシャフトが伸縮し、頭部寝台と背部寝台の間に隙間が空き、角度の変化量に応じて、隙間の幅を変化させることができることを特徴とする介護ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護者の負担を軽減することができる介護用ベッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1、特許文献2には、おむつ交換時、被介護者の膝を頂点として折り曲げ、足を持ち上げ、臀部とマットレスの間に空間を作り、その空間に介護者の手を入れることによって、腰を持ち上げなくても、おむつを容易に交換することが可能となる手段が示されている。
また、従来の介護ベッドは、上衣(被り服)の着替え時は、特許文献3のように、被介護者の頭から腰までの、いわゆる上半身を起こした状態で、被介護者の上衣(被り服)の着替えを行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-229994
【文献】特開2006-232
【文献】特開平7-298958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述した従来の技術においては、臀部を高くし臀部とマットレスの間に隙間を開け、臀部の下に手を入れられるようになったことによって、介護者の負担は軽減されるが、被介護者の立場では、臀部を上げられたり、足を開く動作をされたりすることによって、羞恥心があおられ、介護者と被介護者の関係にも影響するという問題がある。
【0005】
また、着替えにおいては、被介護者が自力で座位を保てない場合には、介護者が被介護者の上半身を支えながら、上衣(被り服)の袖を通し、頭から服を被せるという、非常に困難な作業を余儀なくされていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明では第一の発明として、被介護者の身体を支える寝台を長手方向に、頭部を支える頭部寝台、背部を支える背部寝台、腰椎部分から仙骨部分を支える臀部上寝台、骨盤部分を支える臀部頂点寝台、座骨から太腿部分を支える臀部下太腿寝台、脚部を支える脚部寝台の、6つに分割し、臀部付近の3つの寝台は、介護ベッドの基台と平行に、個別に昇降、または、連動(連結させずに同時に動作)させて、フットスイッチにて、臀部上寝台と臀部頂点寝台を同時、または、臀部頂点寝台と臀部下太腿寝台を同時に、昇降させることができる昇降装置を備えることにより、被介護者の臀部下部とマットレスの間に隙間をあけ、被介護者の体の下に、介護者の手を容易に入れられるようにするという手段を採用する。
【0007】
また、第二の発明として、頭部を支える頭部寝台の頭部側板側の端部は、角度変更対応昇降装置部(蝶番型昇降ユニット)にて固定されており、蝶番型昇降ユニットの下部は、ベッドの基台に取り付けられている。頭部寝台と、背部を支える背部寝台とは、伸縮可能な連結部(スライドシャフト)を介して連結されている。ベッドを起こす際、蝶番型昇降ユニットにて取り付けられた頭部寝台は、同じ位置で角度を変化させながら昇降する。背部寝台の臀部上寝台側の端部は、角度変更対応取り付け部(蝶番型位置決めユニット)にて固定されており、蝶番型位置決めユニットの下部は、ベッドの基台に取り付けられている。ベッドを起こす際、蝶番型昇降ユニットにて取り付けられた頭部寝台は、同じ位置で角度を変化させながら昇降し、また、蝶番型位置決めユニットにて取り付けられた背部寝台は、同じ位置で角度を変化させながら、同じ高さを維持している。そのため、ベッドを起こす際、スライドシャフトが伸縮し、頭部寝台と背部寝台の間に隙間が空き、角度の変化量に応じて、隙間の幅を変化させることができる
隙間を空けることで介護者の手を被介護者の体の下に容易に入れられるようにするという手段を採用する。
【発明の効果】
【0008】
上記発明によれば、被介護者の身体の下に介護者の手が容易に入り、被介護者の身体を持ち上げることなく、寝たままの姿勢、あるいは、もたれたままの姿勢で、おむつ交換及び着替えができるので、介護者の身体的負担を軽減しつつ、被介護者の羞恥心をあおることもなくなるため、被介護者の尊厳を守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第一及び第二の実施例に係る介護ベッドの側面図である。
図2図2は、第一の実施例において、臀部上付近とマットレスの間に隙間ができた状態を示す側面図である。
図3図3は、第一の実施例において、臀部下付近とマットレスの間に隙間ができた状態を示す側面図である。
図4図4は、第二の実施例において、上半身を起こした状態を示す側面図である。
図5図5は、第一及び第二の実施例において、寝台を裏から見た平面図である。
図6図6は、頭部、背部の寝台の角度が水平時の、頭部、背部の両寝台の間隔を示した側面図である。
図7図7は、頭部、背部の寝台の角度40度まで傾けた時の、頭部、背部の両寝台の間隔を示した側面図である。
図8図8は、頭部、背部の寝台の角度60度まで傾けた時の、頭部、背部の両寝台の間隔を示した側面図である。
図9図9は、上半身を起こすためのフットスイッチである。
図10図10は、臀部上寝台と臀部頂点寝台を連動させて昇降させるためのフットスイッチである。
図11図11は、臀部頂点寝台と臀部下太腿寝台を連動させて昇降させるためのフットスイッチである。
図12図12は、第二の実施例において、上半身を起こし、かつ、脚部を足先に向かって下げた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第一の実施例)
以下、図面を参照して本発明に係る寝台の第一の実施形態について説明する。
【0011】
図1に示す介護ベッドにおいて、1は基台であり、寝台3は3a~3fの6つに分割されており、それぞれ、3aは頭部を支える頭部寝台、3bは背部を支える背部寝台、3cは臀部上部を支える臀部上寝台、3dは臀部頂点部分を支える臀部頂点寝台、3eは臀部下部分を支える臀部下太腿寝台、3fは脚部を支える脚部寝台とする。また、臀部付近の3つの寝台3c~3eには、これらの寝台を昇降させるための昇降ユニット4c~4eがそれぞれ取り付けられており、全ての寝台が同じ高さとなる位置を定位置とする。
【0012】
図1に示す介護ベッドは、すべての寝台が水平な状態となっているが、図10のフットスイッチ30を操作することにより、臀部上寝台及び臀部頂点寝台を連動(連結させずに同時に動作)して昇降させることができる。また、図11のフットスイッチ40を操作することにより、臀部頂点寝台及び臀部下太腿寝台を連動(連結させずに同時に動作)してて昇降させることができる。この介護ベッドを用いて、おむつ替えを行う手順を説明する。
【0013】
まず、現在着用している使用済みおむつのテープを外す。次に、フットスイッチ30の『下降』ペダルを踏み、昇降ユニット4c及び4dを連動(連結させずに同時に動作)して下降させる。これにより、図2のように、腰椎部分から仙骨部分を支える臀部上寝台及び骨盤部分を支える臀部頂点寝台が下降し、臀部の下部とマットレスとの密着が解放され介護者の臀部の下部とおむつ間に隙間が空き介護者の手を入れることが容易になるため、おむつを臀部頂点まで引き下げる。
次に、フットスイッチ30の『上昇』ペダルを踏み、昇降ユニット4c及び4dを連動して上昇させて、定位置に戻す。次に、フットスイッチ40の『下降』ペダルを踏み、昇降ユニット4d及び4eを連動(連結させずに同時に動作)して下降させて、骨盤部分を支える臀部頂点寝台3d、座骨から太腿部分を支える臀部下太腿寝台3eを連動して下降させる。これにより、図3のように、臀部頂点寝台及び臀部下太腿寝台と、マットレスとの間に隙間が空き、被介護者の臀部の下部とマットレスとの間に介護者の手を入れることが容易になる。この状態で、清拭を行い、先ほど臀部頂点まで引き下げておいた使用済みのおむつを抜き取る。
【0014】
次に、新しいおむつを被介護者の臀部の下部に敷き、おむつの上下左右の位置を合わせる。この状態で、フットスイッチ40の『上昇』ペダルを踏み、昇降ユニット4d及び4eを連動(連結させずに同時に動作)して、上昇させることで、定位置に戻す。これにより、寝台とマットレスの間に隙間がなくなり、おむつの位置が固定される。
次に、フットスイッチ30の『下降』ペダルを踏み、昇降ユニット4c及び4dを連動して下降させて、腰椎部分から仙骨部分を支える臀部上寝台3c及び骨盤部分を支える臀部頂点寝台3dを連動(連結させずに同時に動作)して下降させる。これにより、図2のように、腰椎部分から仙骨部分を支える臀部上寝台及び骨盤部分を支える臀部頂点寝台と、マットレスとの間に隙間が空く。
この結果、被介護者の臀部上部とマットレスとの間に介護者の手を入れることが容易になるため、おむつを臀部上部まで引き上げる。
【0015】
最後に、フットスイッチ30の『上昇』ペダルを踏み、昇降ユニット4c及び4dを連動(連結させずに同時に動作)して、上昇させることで定位置に戻し、新しいおむつのテープをとめ、おむつ交換作業を完了する。
【0016】
以上の手順によって、おむつの交換作業において、介護者の身体的負担を軽減しつつ、被介護者の羞恥心をあおることもないため、被介護者の尊厳を守ることができる。同様の手順で、おむつ交換だけでなく、ズボンの脱着も容易に行うことが可能である。
【0017】
さらには、必要に応じて昇降ユニット4c、4d及び4eを個別に下降させることによって、体重のかかるところを常に同じにならないよう調整することができ、床ずれを防止することもできる。
【0018】
(第二の実施例)
次に、図面を参照して、本発明に係る寝台の第二の実施形態について説明する。
【0019】
図1において、伸縮可能なスライドシャフト8によって連結されている頭部寝台3aの頭部側板側の端部に、角度変更対応昇降装置部(蝶番型昇降ユニット6a)が取り付けられており、その下部は基台1に取り付けられ固定されている。また、背部寝台の臀 部上寝台側の端部に、角度変更対応取り付け部(蝶番型位置決めユニット5b)が取り付けられており、その下部は、基台1に取り付けられ固定されている。図9のフットスイッチ20を操作することにより、蝶番型昇降ユニット6aを上昇、または、下降動作させることができる。蝶番型昇降ユニット6aを上昇、または下降させると、頭部寝台3aと、これと連結されている背部寝台3bは、蝶番型位置決めユニット5bを支点として、図6~8のように角度が変化する。また、この角度の変化量に応じて、スライドシャフト8が伸縮し、頭部寝台3aと背部寝台3bの間隔も変化する。図6のように、角度が水平となる位置を定位置とする。
【0020】
この介護ベッドを用いて、上衣(被り服)の着脱を行う手順を説明する。
【0021】
まず、フットスイッチ20の『上昇』ペダルを踏み、頭部寝台3aと背部寝台3bの角度が、例えば図7のように40度になるまで動作させる。これにより、頭部寝台3aと背部寝台3bの間隔が広がり、被介護者の背中付近とマットレスとの間に介護者が手を差し入れることが可能になる。このとき、本実施例の介護ベッドは図4のような状態となる。
【0022】
この状態で、現在着用している上衣を背中付近まで引き上げる。次に、左右の腕から上衣の袖を抜き取る。そして、被介護者の頭部を手で持ち上げて、頭から上衣を抜き取る。こうすることによって、被介護者が現在着用している上衣を容易に脱がせることができる。
【0023】
新しい上衣を着せる場合には、まず、被介護者の頭部を手で持ち上げて、上衣を通す。次に、左右の腕に上衣の袖を通す。そして、上衣を引き下げて背部を通過させる。
【0024】
上衣を着せ終わったら、フットスイッチ20の『下降』ペダルを踏み、寝台を定位置に戻す。以上の手順によれば、介護者が被介護者の上半身を支える必要がなくなり、着替え作業における介護者の身体的負担を軽減することができる。
【0025】
なお、フットスイッチ20を用いて角度を変化させることによって、例えば図8のようにさらに角度をつけて、食事やテレビ視聴等、上半身を最適な姿勢にすることもできる。本実施例では、脚部寝台3fには、蝶番型位置決めユニット5f及び蝶番型昇降ユニット6fが備えられており、蝶番型昇降ユニット6fを下降させることによって、脚部を足先に向かって下げることができ、図12のように、より安定した楽な姿勢をつくることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 基台
2a 頭部側板
2b 脚部側板
3a 頭部寝台
3b 背部寝台
3c 臀部上寝台
3d 臀部頂点寝台
3e 臀部下太腿寝台
3f 脚部寝台
4c、4d、4e 昇降ユニット
5b、5f 蝶番型位置決めユニット
6a、6f 蝶番型昇降ユニット
7a、7b スライドシャフト受け
8 スライドシャフト
11 枕
12 マットレス
20 上半身寝台昇降フットスイッチ
30 臀部上寝台昇降フットスイッチ
40 臀部下寝台昇降フットスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12