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特許7531796NC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】NC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20240805BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20240805BHJP
   B24B 1/04 20060101ALI20240805BHJP
   B24B 45/00 20060101ALI20240805BHJP
   B24B 47/16 20060101ALI20240805BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20240805BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20240805BHJP
   B24D 3/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B24B27/06 J
B24B55/02 D
B24B1/04 Z
B24B45/00 Z
B24B47/16
B24D3/00 320B
B24D5/12 Z
B24D3/06 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022137321
(22)【出願日】2022-08-13
(65)【公開番号】P2024025598
(43)【公開日】2024-02-26
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】522344149
【氏名又は名称】野村 衛
(73)【特許権者】
【識別番号】509153364
【氏名又は名称】伊藤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】山城 賢
(72)【発明者】
【氏名】野村 衛
(72)【発明者】
【氏名】倉茂 周治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏之
(72)【発明者】
【氏名】岩川 泰三
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸男
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3224939(JP,U)
【文献】特許第5907445(JP,B1)
【文献】特許第5839308(JP,B1)
【文献】特開2008-213126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
B24B 55/02
B24B 1/04
B24B 45/00
B24B 47/16
B24D 3/00
B24D 5/12
B24D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC制御工作機械の主軸には、NC制御部によって制御された流体圧生成部からのクーラント液の流体圧脈動により砥石軸を当該砥石軸方向に往復動して脈動させる微振動工具ホルダを備え、上記微振動工具ホルダには縦・横に交差させた金属線の各交点を含む金網全体にダイヤモンド砥粒を電着固定させた金網砥石を備え、上記金網砥石に対して上記流体圧脈動するクーラント液を供給するとともに上記砥石軸を該砥石軸方向に往復動させる加工制御機器を備え、上記微振動工具ホルダの金網砥石による被切削材の直線及び任意曲線切断するNC制御工作機械による切断加工装置において、
上記NC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石は、被切削材に対して、上記NC制御部から直線溝切削指令時にはクーラント液の流体圧脈動により砥石軸方向に往復動させて、当該金網砥石の外周面で被削材を切り込み、また任意曲線切断指令時には金網砥石の外周面で被削材を切り込むとともに、上記NC制御部によって微振動工具ホルダを金網砥石の両側面方向に微動制御させることで、金網砥石の両側面で金網砥石の厚さ幅広寸法よりも広く切削しながら曲線溝加工することを特徴とするNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
【請求項2】
請求項1のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法において、NC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダに取付けた金網砥石は、被切削材に切り込んだ切断両側面に対し、周期的に揺動させて切り込むことで、ジグザグ溝即ち波状溝に溝加工することを特徴とするNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法において、上記NC制御工作機械の砥石回転軸に微振動工具ホルダを介在して取付けた上記金網砥石は、当該砥石回転軸の角度を変えずに砥石進行方向の方向制御とテーブル上の被削材に対する相対位置制御により、直線及び任意曲線切断加工を行うことを特徴とするNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
【請求項4】
請求項2のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法において、微動振工具ホルダで軸方向に往復揺動される金網砥石の振幅幅は1mm以内とし、1ジグザグにおける金網砥石の送りピッチは0.1mm以内とし、金網砥石によるジグザグ溝及び波状溝となる切断面に加工スジを残存させないことを特徴とするNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
【請求項6】
請求項5記載の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法において、上記金網砥石を砥石軸の軸芯方向に撓ませ時に、金網砥石の湾曲半径調節制御させて湾曲切断湾曲度を可変と成すことを特徴とするNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
【請求項7】
請求項1記載の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法において、上記微振動工具ホルダに備えた金網砥石は、金網の縦金属線と横金属線の交点を電着前にマスキングし該交点が固着しない構成としたことを特徴とするNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NC制御工作機械の主軸に微振動工具ホルダと金網砥石を備え、該金網砥石により、被切削材の直線溝加工や任意溝幅加工を始め直線切断から三次元の任意曲線切断等の多彩な切削加工を可能とした金網砥石による革新的な切削・研削の加工技術に係わる。具体的には、炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他合成樹脂板、金属薄板、「石材、アスファルト道路」等々の被削材を直線切断加工及び任意な溝幅で行う曲線切断加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、丸鋸により薄板を直線切断や曲線切断する曲線切削加工方法とこの装置及びこの装置用の丸鋸が種々提案されている。
その代表的な実施例は、特許第5527740号である発明の名称:曲線切削加工装置及び該装置用丸鋸。特許第6150327号である発明の名称:曲線切削加工方法及び曲線切削加工装置他が提供されている。上記丸鋸と装置及び曲線切削加工方法の構成は、明細書に添付の図1図8に説明されている。更に、曲線切削加工方法及び曲線切削加工装置は、図1図7とこの作用は図8から図24に説明されている。
【0003】
然し乍ら、上記二つの装置の主体である丸鋸20は、この全周に放射状に切開した多数のスリット22と、この丸鋸20をお椀状(放射状乃至パラボラ状)に湾曲させるために、左右一対のリング状フランジ41,42により丸鋸円盤の略直径の半分周囲を挟み、強制的にドローバー45の進退移動により左右方向に撓ませる構造としたから、多数の放射状のスリット22で分断された外周刃部21,21F,21Rは、完全に分断していて、均等な撓み量(放射状形状)とならず、各刃部の撓み量が微妙にバラバラとなり、最狭な切削幅の直線切断や、特に、正確な曲線切断が保証出来ない。即ち、特許権者が言う、あさりの幅、被加工物の板厚、Z軸の制御などの条件を考慮しながら、丸鋸の回転軸を被加工物に対して所定角度に傾けることによって、丸鋸をお椀状に撓ませて曲線加工する際に、被加工物の製品面を所定の角度や切削幅で切削することに疑問が残る。即ち、任意曲線の切削加工は辛うじて行えても、高精度な製品加工面を要求するユーザーの要求に答えられない他、丸鋸に大きな加工負荷を与えてしまい、その寿命を長期間に渡り保証することが出来ない、と言う根本的な諸問題を抱えている(特許文献1と特許文献2参照。)。
【0004】
更に、近年、航空機の機体軽量化と燃費改善が図られている。その具体的方策として、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)等の繊維強化プラスチック系複合材製品が軽量で、且つ、高い強度と剛性とを備えているから、航空機等の構造部材(主翼・尾翼・胴体等)として使用されている。上記航空機の構造部材の直線及び任意曲線切断は、専用の直線及び任意曲線切断機や手工具(丸鋸を使用した切断具)や曲刃カッター、ウオータージェット装置により直線及び任意曲線切断されている。
【0005】
上記航空機の構造部材の直線及び任意曲線切断装置用に開発された、特許第5435429号(本出願人の特許権)は、発明の名称:丸鋸による直線及び任意曲線切断装置として提供した。その構成は、主軸に着脱可能に繋がれる工具回転軸と、上記工具回転軸に嵌着される1枚の円板フランジの外周に、加工用の刃先チップを縦列させ、左右方向に撓み可能な丸鋸と、上記丸鋸の円板の外周縁両面を対接して押圧すべく工具回転軸に軸方向に進退可能とした一対のコーン体と、上記一対のコーン体の一方を丸鋸の外周縁両面の片側に押圧させる弾発部材と、他方側のコーン体を可調的に押圧させる押圧駆動部材と、上記弾発部材の押圧力に対抗する押圧駆動部材の押圧力制御により一対のコーン体60が丸鋸の円板を直伸姿勢と弾発部材側への撓み姿勢と押圧駆動部材側への撓み姿勢とするアンブレラ機構とを備え、しかも、コーン体8,9が丸鋸60の円板の外周縁近くに接近させた位置関係で、均等に押圧させた撓み量(放射状形状)が保証される。これにより、分割された各先端辺(加工刃先チップ)CPの撓み量が正確に揃えられ、最狭な切削幅の直線切断や、正確な曲線切断の切断面精度が保証出来るようにしたものである(特許文献3参照)。
【0006】
更に、蛇足だが、薄板切断加工機が存在する。その構成は、保持部材をワークテーブルに対し任意な三次元方向へ相対移動可能に設けると共に、この保持部材の先端部には、超硬材料よりなる断面V字状刃先部をもつ回転刃を装着する。この回転刃をモータで高速回転駆動しながら、保持部材を所定の高さまで下降させて旋回しつつX軸,Y軸方向に適宜動かすことで、ワークテーブル上の薄い素材を切断するものである。これにより、小径の円盤状の回転刃を板材に対して相対的に旋回しつつ、X,Y軸方向へ移動して板材の切断を行なうので、例えば従来のレーザ加工機のごとく、板材から適宜形状の製品を容易に切り抜くことかできるとしたものである(特許文献4参照。)。
【0007】
上記薄板切断加工機の曲刃カッターは、平円形カッター(丸鋸を含む)を改良したものである。その構成は、円形の中心部に回転軸への取付け孔を有し、該円形の外周に植刃部材又は鋸歯部材を付備する金属製皿状の円形カッターであって、この外周周辺は、円錐状の皿鍔部材で形成し、該皿鍔部材の円錐状の全周面に数条の切り込み溝が、該円錐放射状に等間隔で配備し、更に該皿鍔部材の外周縁に付備する植刃部材又は鋸歯部材も、該切り込み溝を跨いで等間隔で、各々が該円錐状に周配列をなし、且つ該植刃部材又は鋸歯部材の円錐形状の内外両側面が該円錐円弧形状の切削刃を形成したものである。これで、先ず、回転切削する切断刃は、絶えず、平板ワーク材の表面に対して垂立状態を保持することができ、同時に切削切断刃の刃先巾に対して、回転切削切断中は、該回転刃物の両側面に、絶えず一定のクリアランスを保持する。しかして、平板ワーク材の要切断円形の大小の円弧に、合理的に合致する回転切削曲刃物として、回転切削切断中にコジリ、軋み等の無理な負荷の掛らないものである(特許文献5参照。)。
【0008】
上記加工機は、その主軸先端に装着される工具ホルダにチョッピングユニットを備えたチョッピング工具ホルダであり、上記工具ホルダの把持部に開けられた装着穴に対して後端側を挿入把持される回転筒体と、上記回転筒体は先端部を大経に膨出させるとともにこの内周径を大径に拡張させてなり、上記回転筒体の筒内に通孔を貫通させた摺動軸部を気密且つ摺動可能に嵌合する回転軸と、上記回転軸の先端部は回転筒体の筒内から外部へ突出され該先端部に付設される研削砥石又は切削刃具の加工具とを備え、上記回転筒体の先端大径部内と上記回転軸の摺動環部との空間に回転軸を後退させる一対のリング状磁石からなるチョッピングユニットを備え、上記回転筒体の後端空間内に上記工具ホルダの軸芯に貫通させたセンター孔から装着穴を介して回転軸の後端に脈動供給する研削液又は切削液と、からなるチョッピング工具ホルダにおいて、上記チョッピングユニットは、上記回転筒体の先端大径部内と上記回転軸の摺動環部との空間に回転軸を後退させる一対のリング状磁石と、上記一対のリング状磁石の内径側又は外径側に並設させたリング状弾性体と、からなる(特許文献6参照。)。
【0009】
更に、工作機械のNC制御装置に改善を測った技術に、工作機械の主軸穴に装着されるチョッピング工具ホルダにおいて、該チョッピング工具ホルダの筒内で軸心方向に微動進退可能に軸心後端側へ弾圧微動されている工具軸と、上記チョッピング工具ホルダの筒内の工具軸後端に流体脈動圧を供給して工具軸を砥石先端側へ微動させる流体脈動圧を生成する流体供給器とからなるチョッピング工具ホルダの駆動装置において、工作機械の運転を司るNC制御装置には加工状況を感知する各種センサーからの指令信号で流体供給器の流体脈動圧を最適化する流体圧制御部を備え、上記流体圧制御部は上記流体供給器から吐出する流体脈動圧を最適化すべく指令信号で流体ポンプのモータを回転制御するNC制御によるチョッピング加工制御装置である(特許文献7参照。)。
【0010】
更に、従来の硬い円板砥石をソフト金網砥石へと革新させたこの砥石は、縦・横に交差する各金網線の交点を含む金網全体は電着前にマスキングされ、上記マスキングされた各金属線の交点が形成する円筒外周面を平坦部に削って電着面積が拡げられ、該円筒外周面の平坦部の電着部のみマスキングが剥されて電着され、電着後も上記交点は固着されない状態で金網体全体に柔軟性を持たせた。これにより、被削材に対してソフト金網砥石による強制的な押付力に対して金網体全体の柔軟性により押付力を低減排除させ、研磨面の研削・ホーニングを飛躍的に向上させたものである(特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5527740号公報
【文献】特許第6150327号公報
【文献】特許第5435429号公報
【文献】実開平05-029625号公報
【文献】実公平06-036881号公報
【文献】特許第5839308号公報
【文献】特許第5907445号公報
【文献】実用新案登録第3224939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記実開平05-029625号公報の薄板切断加工機は、小径の円盤状の回転刃を板材に対して相対的に旋回しつつ、X,Y軸方向へ移動して板材の切断を行なうので、板材から適宜形状の製品を容易に切り抜くことができるとするものの、回転刃が断面V字状刃先部を有するものであるから、板材の切断面がV字状の斜め形状を呈し、この切断面を垂直面とする修正加工をしなければならないという問題が解決されていない。
【0013】
また、上記実公平06-036881号公報の曲刃カッターは、平板ワーク材の要切断円形の大小の円弧に、合理的に合致する回転切削曲刃物として、回転切削切断中にコジリ、軋み等の無理な負荷の掛らないとするものの、曲刃カッターの円錐内角度が一定・固定されたものであるから、この円錐内角度に拘束された直線及び所定曲線加工に限定される。これが為に、加工直線及び任意曲線で左右に湾曲変化するものや曲率半径が任意に連続的に変化する直線及び任意曲線加工は、不可能であるという問題点が残存している。即ち、航空機等の構造部材(主翼・尾翼・胴体等)のように、大物ワークで精密な直線及び任意曲線加工を要求される直線及び任意曲線加工には適用できない。
【0014】
本発明は、上記特許文献4,5の他における諸々の技術的問題点に鑑み、更なる技術開発を行ったもので、本願発明者の特許権に係る特許第5839308号及び特許第5907445号に係る微振動工具ホルダー(チョッピング工具ホルダー)と、この制御技術を新規利用するとともに、これに装着される砥石を新規開発した実用新案登録第3224939号の金網砥石(ソフトトリノス又はハードトリノス)とを革新結合(前記の各特許技術の単なる組み合せでは達成されず、金網砥石とNC制御工作機械による主軸の三次元制御技術と微振動工具ホルダとを巧みに複合介在させた制御技術で、各種曲線加工を達成)させる事で、従来の各種研削砥石では、全く不可能であった技術的課題の壁に挑戦した新規技術である。その詳細技術は、一つの金網砥石(ソフトトリノス又はハードトリノス)だけで、被切削・研削材に対する直線加工、砥石の側面方向加工やギザギザ加工(ジグザグ加工)等、砥石の外周面や側面による直線加工及び任意曲線切断加工や三次元切断加工等の多彩・マルチプルな切断加工技術を達成させた被削材の直線及び任意曲線切断加工方法である
特に、従来の丸鋸による曲線切断とは異なり、金網砥石は、その外周縁は柔軟性に富み、且つ、連続した外周形状である。しかも連続した外周面形状でも容易に変形及び固定する柔軟性と固定性に優れる他、研削屑排除効果や冷却効果に優れ、ダイヤモンド砥粒を半永久的に寿命保持する等の多数の特性を発揮する。これにより、多彩な各種切削加工・研削加工を実施可能とした新技術開発に成功したものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するべく、本発明となる「特許請求の範囲」の請求項1は、NC制御工作機械の主軸には、NC制御部によって制御された流体圧生成部からのクーラント液の流体圧脈動により砥石軸を当該砥石軸方向に往復動して脈動させる微振動工具ホルダを備え、上記微振動工具ホルダには縦・横に交差させた金属線の各交点を含む金網全体にダイヤモンド砥粒を電着固定させた金網砥石を備え、上記金網砥石に対して上記流体圧脈動するクーラント液を供給するとともに上記砥石軸を該砥石軸方向に往復動させる加工制御機器を 備え、上記微振動工具ホルダの金網砥石による被切削材の直線及び任意曲線切断するNC制御工作機械による切断加工装置において、
上記NC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石は、被切削材に対して、上記NC制御部からの直線溝切削指令時にはクーラント液の流体圧脈動により砥石軸方向に往復動されて、当該金網砥石の外周面で被削材を切り込み、また任意曲線切断指令時には金網砥石の外周面で被削材を切り込むとともに、上記NC制御部によって微振動工具ホルダを金網砥石の両側面方向に微動制御させることで、金網砥石の両側面で該金網砥石の厚さ幅広寸法よりも広く切削しながら曲線溝加工することを特徴とするNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法である。
【0016】
請求項2は、請求項1のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法において、NC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダに取付けた金網砥石は、被切削材に切り込んだ切断両側面に対し、周期的に揺動させて切り込むことで、ジグザグ溝即ち波状溝に溝加工することを特徴とする。
【0017】
請求項3は、請求項1又は2のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法において、上記NC制御工作機械の砥石回転軸に微振動工具ホルダを介在して取付けた上記金網砥石は、当該砥石回転軸の角度を変えずに砥石進行方向の方向制御とテーブル上の被削材に対する相対位置制御により、直線及び任意曲線切断加工を行うことを特徴とする。
【0018】
請求項4は、請求項2のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法において、微振動工具ホルダで軸方向に往復揺動される金網砥石の振幅幅は1mm以内とし、1ジグザグにおける金網砥石の送りピッチは0.1mm以内とし、金網砥石によるジグザグ溝及び波状溝となる切断面に加工スジを残存させないことを特徴とする。
【0019】
請求項5は、請求項1記載のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法において、上記金網砥石は流体圧生成部で生成されたクーラント液の流体圧脈動により砥石軸方向に往復脈動する微振動工具ホルダの砥石軸先端部に装着されており、上記金網砥石は、上記砥石軸先端部に嵌合する外周拘束輪(皿ばね)を拘束リングの先端部に固着し、上記砥石軸の先端側への前進時に上記金網砥石の中心部を凹ませて椀状に外周縁を上方に撓ませ、上記砥石軸の後退時に金網砥石の中心部を凸ませて逆椀状に外周縁を下方に撓ませ可能となし、上記金網砥石をお椀状に撓ませ時は被削材に対して上向き方向の湾曲加工乃至湾曲切断し、上記金網砥石を逆椀状に撓ませ時には被削材に対して下向き方向の湾曲加工乃至湾曲切断することを特徴とする。
【0020】
請求項6は、請求項5記載の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法において、上記金網砥石を砥石軸の軸芯方向に撓ませ時に、金網砥石の湾曲半径を調節制御させて湾曲切断の湾曲度を可変と成すことを特徴とする。
【0021】
請求項7は、請求項1記載の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び曲線切断加工方法において、上記微振動工具ホルダに備えた金網砥石は、金網の縦金属線と横金属線の交点を電着前にマスキングし該交点が固着しない構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の請求項1のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法によると、微振動工具ホルダに備える金網砥石の加工方向性は、NC制御部によって制御される微振動工具ホルダの様々な送り制御により、直線及び任意曲線切断加工等々の多彩な加工形態が適用できる効果が発揮される。
【0023】
請求項2の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法によると、請求項1の金網砥石による直線及び任意曲線切断の他、被削材に対するジグザグ加工や波状溝が合理的に実施できる効果が得られる。
【0024】
請求項3の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法によると、砥石回転軸の角度を変えずに砥石進行方向の方向制御とテーブル上の被削材に対する相対位置制御により、直線及び任意曲線切断加工を合理的に行なえる効果が得られる。
【0025】
請求項4の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法によると、金網砥石によるジグザグ溝及び波状溝において、加工スジを残存させない振幅幅を1mm以内とし、1ジグザグにおける金網砥石の送りピッチは0.1mm以内としたから、高精度な溝加工が実施できる効果がある。
【0026】
請求項5の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法によると、上記金網砥石をお椀状に撓ませ時には被削材に対して上向き方向の湾曲加工乃至湾曲切断ができ、上記金網砥石を逆お椀状に撓ませ時には被削材に対して下向き方向の湾曲加工乃至湾曲切断が可能となり、多彩な切断の作用効果が発揮される。
【0027】
請求項6の微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法によると、上記金網砥石を上下方向に撓ませ時に、金網砥石の湾曲半径の調節制御により、湾曲加工乃至湾曲切断の曲線加工の湾曲度を可変とした切断が可能となり、微調整が可能な湾曲切断効果が発揮される。
【0028】
請求項7のNC制御工作機械の主軸に備えた微振動工具ホルダの金網砥石による被削材の直線及び任意曲線切断加工方法によると、当該金網砥石金網は、縦金網と横金網の交点が固着しない柔軟性のある特性を有するから、炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他合成樹脂板、金属薄板等々の柔らかい素材を直線加工及び任意溝幅加工及び任意曲線に切断可能とする加工処理は、一つの金網砥石で柔軟に実施できる効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態を示し、本発明の中枢となる金網砥石の概念説明図。
図2】本発明の実施形態を示し、金網砥石の金属線網目構造の拡大図。
図3】本発明の実施形態を示し、金網砥石とメタルソーの構成と切削可否図。
図4】本発明の実施形態を示し、金網砥石とメタルソーの詳細な切削可能比較図。
図5】本発明の実施形態を示し、加工面と溝加工の比較図。
図6】本発明の実施形態を示し、メタルソーに対する金網砥石の砥粒比較図。
図7】本発明の実施形態を示し、金網砥石の砥粒個数と砥粒の拡大写真図。
図8】本発明の実施形本態を示し、回転軸に金網砥石の取付け斜視図。
図9】本発明の実施形本態を示し、金網砥石の弾力撓みと表面の拡大図。
図10】本発明の実施形態を示し、NC制御と流体圧成部と微振動工具ホルダとの駆動系図。
図11】本発明の実施形態を示し、ジグザグ駆動アーバーの断面図。
図12】本発明の実施形態を示し、砥石脈動の有無と研削焼け有無の断面図。
図13】本発明の実施形態を示し、砥石側面加工要素試験の研削砥石の拡大図。
図14】本発明の金網砥石の冷却効果と切粉排出効果時の網目拡大図。
図15】本発明の施形態を示し、脈動有無時のジグザグ加工の砥石移動奇跡図。
図16】本発明の実施形態を示し、砥石のジグザグピッチと加工面の状態図。
図17】砥石ジグザグのみで曲線加工方法の作用図。
図18】金網砥石をフラット状態で曲線加工方法の作用図。
図19】円弧切断となる曲線加工例の工具移動軌跡図。
図20】砥石側面加工要素試験1の写真図。
図21】砥石側面加工要素試験2の砥石側面加工によるワーク加工の写真図。
図22】本発明の実施形態を示し、金網砥石を軸方向に湾曲制御させるパラボラ駆動アーバーの断面図である。
図23】本発明の実施形態を示し、金網砥石をパラボラ状に軸方向変位させるパラボラ駆動アーバーの作用図
図24】本発明の実施形態を示し、円弧補間送りしたワークの切断写真図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図1図24を参照して本発明実施例の各形態を順次に説明する。
【実施例
【0031】
先ず、本発明の中枢となる金網砥石(ハードトリノス砥石)1は、図2(a)(b)に示すように、ステンレス線からなる金属線2,3を縦・横に交差して編み込み、縦・横の交点を含む全体を電着(ニッケル鍍金)した形状硬さある金網砥石。また、金網砥石(ソフトトリノス砥石)4は、図2(a)(C)に示すように、ステンレス線からなる金属線2,3を縦・横に交差して編み込み、縦・横の交点が固着してない全体が柔軟性を有する。上記製法は電着(ニッケル鍍金)に各金属線2,3を別々に電着固定することで、交点固着・連結しない金網砥石である。これらの金網砥石1,4は、網目が空洞5に維持されており、クーラント液の噴射で、この空洞から切粉・研削屑・クーラント液が円滑に外部へ排出される。
尚、ダイヤモンド砥粒Dは、例えば、図7他の網目の拡大写真に見るように、金属線2,3の表面に固着されている。
【0032】
しかして、上記金網砥石1,4は、図1如く、金網砥石1,4の外周加工面1a,4aと両側加工(刃)面1b,4bにダイヤモンド砥粒Dが、固着されている。しかし、図3の如く、従来のメタルソーMSは、外周面にだけ切刃が設けられている。これにより、図3に示す「切断・溝工具と加工(刃)面の解説のごとく、メタルソーは、外周面の切刃による溝加工のみ、側面の冷却効果が弱く、側面焼けを起こし易い。上記金網砥石1,4は、外周面加工と両側面加工とが可能であり、クーラント液による冷却効果と切粉排出効率が高く、ダイヤモンド砥粒の寿命が全く尽きず、大きな効果を発揮する。
【0033】
更に、上記金網砥石1,4の優位性とメタルソーMSの劣性について、図4図9により詳細に解説する。図4において、側面に切れ刃がないメタルソーは、ジグザグ加工において、「側面には、大きな応力集中がある」「外周一列の切れ刃のみの切断作用だけ」「側刃が無く激しい研削焼け」を起こす。これに対して、金網砥石は「側面で受け応力集中無し」「外周面と両側面に砥粒があり、全面が切れ刃」「砥石やワークの焼けは極小」である。図5は、金網砥石1,4に発生する摩擦熱の状態を示し、金網砥石1,4による外周面加工方向F1と、外周溝加工方向F2とを示している。上記各加工には、金網砥石1,4を使用した時、円棒Wの外周面加工の発熱は、比較的に少ないのに対して、円棒Wの外周面加工と細くなった側面加工とを同時に行う時は、金網砥石1,4の発熱量は多量となるが、上記金網砥石は、金網の網目隙間が無数にある上、砥石を軸方向に微振動(ジグザグ往復運動)する、砥石外周面及び両側面の隙間にクーラント液が侵入しやすく、冷却効果と切粉排出効果と網目隙間に堆積し易い研削屑を積極的に排除し、ダイヤ砥粒Dに対する冷却・クリーニングが確保された加工状態となる。これで、高精度で効率の良い研削動作時の発熱を積極的に抑制し、金網砥石のメンテナンスフリーの作用・効果が得られる。
【0034】
続いて、図6には、側刃無しのメタルソーMSと金網砥石1,4の事例でのダイヤモンド砥粒Dの数で比較すると、メタルソーは、切れ刃は外周の1列約10個であるのに対して、金網砥石は、切れ刃は全周面約57個となる。
更に、簡単な計算式で試みると、図7(a)に示す如くである。図示とその数値から、ダイヤ長0,2mmとすると、(A)円周ダイヤ個数は、1,570個。(A)面ダイヤ個数は、133,825個となり、メタルソーに対して、金網砥石は約85倍の加工能力があることが解る。
【0035】
上記金網砥石1,4は、図7(b)の如く、写真図で見ると、外径は150mmで、厚さ1mm、砥石の露出量10mm。写真の白い部分がダイヤモンド砥粒D。図7(C)は、0,5mm角の網目を持ち、そのステンレス線の外周にダイヤモンド砥粒Dが固着されている。しかして、ワークWの加工時には、発熱したクーラント液や切粉・研削屑等は、この網目を通過して外部への排出作用・効果を助長されるとともに、ダイヤモンド砥粒に対する冷却清掃作用が得られ、熱損耗も無く、半永久的に使用可能な状態をキープする。
尚、上記金網砥石1,4は、図9に示す如く、主軸(図示無し)の軸方向に撓み、表面は網目模様を呈している。
【0036】
上記金網砥石1,4は、図8に図示の如く、回転軸Sに締付リング5を介して取り付けられている。この回転軸Sは、例えば、図示しないが、上記金網砥石は、直接にNC制御工作機械の主軸に装着される。尚、アングルヘッドに取付け、このアングルヘッドをNC制御工作機械の主軸に装着される。続いて、図10に示すように、NC制御装置50による工具を砥石軸方向に振動する加工制御機器100(以下、チョッピング加工制御機器と言う)により、ポンプ脈動の流体が供給される。今回のチョッピング加工制御機器100においては、図11に開示のジグザグ駆動アーバー(ジグザグ駆動工具又は微振動工具ホルダとも言う)10に備える上記金網砥石1,4を、その回転軸11の軸芯方向に揺動させる機能と、金網砥石1,4に対するクーラント液Cを連続又は間欠に供給する機能を備えている。以下、その構成を簡潔に説明する。
【0037】
図10に示す、上記チョッピング加工制御装置100は、例えば、工作機械の運転を司るNC制御装置50によって運転制御されている。勿論、図示しないが、工作機械の主軸ヘッド(Z軸)を垂直姿勢とした縦型工作機械、又は、主軸にクイルヘッドを備えた機械構成に装着可能。その概要機能は、インバータによって回転制御されるモータM0により、2気筒式の流体供給器60は、クーラント液C0を汲み上げ、位相の異なる流体脈動圧V1,V2を最適化する流体圧成部70(クーラントが油性なら油圧成部70とも言う)を備えている。上記流体圧成部70は、上記流体供給器60から吐出する流体脈動圧V1,V2を複合した脈動流体V3や、両者の位相を合わせた脈動流体V4や、アキュムレーターAで、一定圧V5等に生成でき、複数のバルブ(1)(2)(3)(4)の開閉操作をNC制御装置50の指令(詳細機能は省略)により行う。
【0038】
従って、図10に示すように、金網砥石1,4に対するクーラント液Cは、ノズルN1,N2に連続又は間欠に供給される。クーラント液Cは、サイドスルークーラントやセンタースルークーラント方式に切り替えて、金網砥石1,4に供給する。本発明においては、工作機械の主軸(図示無し)に挿入されるホルダの先端に装着するアーバーは、図11(a)(b)に示すジグザグ駆動アーバー10が適用される。その構成は、筒体11内貫通した中心孔12にはスプライン係合で軸方向に摺動可能な回転軸13が嵌合し、上記筒体11の貫通した中心孔12の下端は大口径部12aが形成され、ここを貫通する回転軸13の箇所にリング状の永久磁石M4が固着する。上記回転軸13の先端部13aは大口径部12aから先端外部へ突出し、ここに金網砥石1又は4が、両側に配置した締付リング5をナット16で固定されている。上記回転軸13の先端部13aの基部は上記回転軸13の大口径部12aの開口部を閉塞する円板14の上面(大口径部12a内)にはリング状の永久磁石M5が固着している。これにより、図11(b)に見るように、永久磁石M5はクーラント液Cにより浮上し、減圧時に永久磁石M4を永久磁石M5に圧接させ、クーラント液Cが無くなると、図11(a)の如く、回転軸13を浮上させる。これで、先端部13aの金網砥石1と4おいて、両永久磁石M4,M5間の隙間Xだけ浮上させ、金網砥石1,4を持つ回転軸13の上端面をピストンの如くクーラント液Cの加圧で下降動させる。この昇降運動が両永久磁石M4,M5間の隙間Xのストロークで起き、クーラント液Cの脈動流体(流体圧脈動とも言う)V3又はV4の間欠供給により、金網砥石1,4を揺動幅Xで駆動される。
【0039】
上記クーラント液Cの脈動流体V3又はV4は、回転軸13のセンター孔を通過する流体圧脈動するクーラント液Cであるから、その一部が金網砥石1,4の中心部に圧送されると、図2に示す如く、網目2,3の隙間5を通過して外周方向に放射状に流れるとともに、網目2,3の両側面と外周面に供給されて潤滑と冷却と切粉排出のマルチ作用が行われる。尚、上記ジグザグ駆動工具10は、特許第5839308号を採用したものである。
【0040】
しかして、図12には、上記ジグザグ駆動工具10において、「脈動なし」と「脈動あり」の各々における被削材Wへの切込に対して、被削材Wの研削焼け有るのは、図12(a)の脈動なしの時であり、図12(b)の脈動有りの時は、クーラント液Cの脈動流体V3又はV4により、金網砥石1又は4が両永久磁石M4,M5間の隙間Xのストロークで脈動が起き、被削材Wへの切込溝H1に脈動の隙間Xが起き、ここにクーラント液Cの脈動流体V3又はV4が噴射して、金網砥石と研削面への潤滑と冷却と切粉排出のマルチ作用が行われる。
【0041】
この時、図13の拡大写真の金網砥石1,4の網目5を見ると、ダイヤモンド砥粒Dは、金属線2,3の表面に固着されており、ステンレス線からなる金属線2,3を縦・横に交差して編み込み、縦・横の交点が固着してない全体が柔軟性を有する。この金網砥石1,4は、網目となる空洞5を切粉排除作用により維持している。即ち、クーラント液Cの噴射で、この空洞に貯まった切粉・研削屑・クーラント液が円滑に外部へ排出される。上記作用と効果を、図14の写真図により、詳細に説明する。(a)では「研削液が金網の隙間に一時的に保持される」。(b)では「ワークWの加工点を冷却するとともに、切りくずを一時的に保持する。」(C)では「排熱、切りくず排出が行われる。」。しかして、金網の冷却効果と、切りくず排出効果が積極的に得られる。
【0042】
続いて、図15について、NC制御工作機械の主軸(共に図示無し)に、上記ジグザグ駆動アーバー(ジグザグ駆動工具又は微振動工具ホルダとも言う)10を装着し、この主軸に金網砥石1又は4を備えた被削材Wの切削加工例を示す。図15(a)は、ジグザグ駆動アーバー10にて、金網砥石1,4での脈動なしの「直線加工E1」すると、金網砥石1,4の側面にも、ダイヤモンド砥粒Dがあるから被削材Wに対する側面切削加工が行われ、僅かな隙間が得られるから、メタルソーのような研削焼けは起きない。そこで、図15(b)の「ジグザグ加工E2」を脈動幅X1mmで行う時に、図16の研削条件で行うと、ジグザグの加工残痕が発生しない。その条件は、ジグザグのピッチを0,1mm以内とすると、加工残しはゼロになる。この時の金網砥石1,4での脈動幅は、1mm以内とするのが望ましいことを、試験結果で確認した。
【0043】
そこで、図15図17に図示する如く、ジグザグ駆動アーバーと被削材Wとの関係位置によるジグザグ移動軌跡の移動で、各種の曲線加工E3、E4、E5に対する各種曲線加工方法が実施出来る。尚、図17は、NC制御工作機の主軸に取付けたジグザグ駆動ア ーバー10を円弧軌跡E3で移動させることで、金網砥石1,4の両側面と外周面とで曲線加工E3が行える。
【0044】
また、図18は、NC制御工作機械の主軸に例えば、取付けたアングルヘッドにジグザグ駆動アーバー10を取付け、この直線軌跡E4と円弧軌跡E5に移動させることで、金網砥石1,4をパラボラ(椀)形状にしなくても画期的な曲線加工E5が金網砥石1,4の両側面と外周面とで行えることを試験結果から確認した。
【0045】
更に、図19も、NC制御工作機械の主軸に取付けたアングルヘッド(共に、図示無し)に、ジグザグ駆動アーバー10を取付け、この円弧軌跡E6に沿って移動させることで、金網砥石1,4を円弧形状に画期的な曲線加工が金網砥石1,4の両側面と外周面とで行えることを試験結果から確認した。
【0046】
上記図12図19において、金網砥石1,4の両側面と外周面とで直線加工から曲線加工まで自由・自在に行える実施例で説明した。この実証加工例の一部となる砥石側面加工要素試験を、図20図21の試験結果(1)(2)として説明する。尚、アングルヘッドなしで、ジグザグ駆動アーバーは主軸に直接取り付けられている。
【0047】
上記図20は、被削材W(CFRP)の砥石側面加工要素試験結果(1)の試験写真で、砥石回転数:900rpm、送り:2.0mm/min、Z軸方向への切込量:3.0mmとした実証である。これにより、確認された加工実績は、1,目詰まり:なし。2、切粉付着:なし。2、砥石変形:なし、であった。
図21は、被削材W(CFRP)に対してX軸送りの後に、X軸&Z軸方向送りによる砥石側面加工要素試験結果(2)の試験写真と)切断穴の拡大写真である。段差は、円弧(ヘリカル)補間スムージング加工すれば、無くなり、円滑な円弧加工が可能であることを実証できる。尚、回転数と送りと切込量:とは、図21内に記載する通りである。
【0048】
上記図20の被削材W(CFRP)の砥石側面加工要素試験結果(1)において、図24(a)の写真と、図24(b)の図示の如く、金網砥石1,4を被削材Wに対して、X軸(イ)方向送りと、X軸(イ)とZ軸(ロ)との複合送りにより、円弧(ヘリカル)補間スムージング加工すれば、直線切断と円弧切断とが、連続加工され、ワークW1とワーク辺W2とには、段差が無くなり、スムージング加工され、無駄な研削屑と加工時間との発生が抑制できる。
尚、上記加工条件は、回転数1900rpm。送り:10.0mm/min。切込量:8.mm、5mmまでX軸方向に送る。R30mmでX軸方向に80mmまで送り、Z軸方向に30mm下ろす100mmまでX軸方向に送る。
【0049】
続いて、パラボラ駆動アーバー20は、図22図23で説明する。このパララ駆動アーバーは、図11で説明するジグザグ駆動アーバー(微振動工具ホルダとも言う)10において、その構成の1部を変更させたもので、以下にその相違点だけ説明する。 その構成は図22(a)において、筒体11を貫通した中心孔12内にはスプライン係合で軸方向に摺動可能な回転軸13が嵌合し、上記筒体11の貫通した中心孔12の下端は大口径部12aが形成され、ここを貫通する回転軸13の中腹箇所にリング状の永久磁石M4が固着する。上記回転軸13の先端部13aは大口径部12aから先端外部へ突出させている。ここに金網砥石1又は4が、その上面の皿ばね15を凸の変形に伴い、回転軸13が上方に引き上げられると、カム円板Jで外周が押され、この中央部を上方に凸状として両側に配置したフランジF1,F2をナット16で固定される。また、逆に、圧力流体の減圧で、図22(b)に見るように、永久磁石M5が永久磁石M4に吸引・吸着されると、回転軸13は先端下方へ突出される。これで、先端部13aの金網砥石1と4は、両永久磁石M4,M5間の隙間Xだけ先端部13aが突出し、中央部を凹ませた金網砥石1,4を持つ回転軸13の上端面をピストンの如くクーラント液Cの加圧で下降動させる。この昇降運動が両永久磁石M4,M5間の隙間Xのストロークで起き、クーラント液Cの流体脈動圧(流体圧脈動)V3又はV4により、金網砥石1,4を下方に突出駆動する関係構成になっている。
【0050】
しかして、上記パラボラ駆動アーバー20は、図22(a)の如く、回転軸13の先端部13aが上方に持ち上げられると、金網砥石1又は4は、その内径側の上面に貼付けた外周拘束輪となる皿ばね15を山型に中心部を持ち上げたパラボラ形状となる。また、回転軸13の先端部13aが図22(b)の如く、下方に押し下げられると、その内径側の上面に貼付けた皿ばね15をお椀型に中心部を押し下げたパラボラ形状とする。上記パラボラ形状は、図23も示す如く、加圧と減圧で、上下の湾曲率に形成される。
【0051】
しかして、上記パララ形状の金網砥石1又は4は、例えば、図17図19に示す円弧軌跡E3~E6の各種湾曲率に対して、曲線加工をパラボラ形状の湾曲方向の変更により、任意曲線切断加工が自由自在に合理的に行える。しかして、更なる加工時間の短縮と研削屑を大幅に削減できる。
【0052】
以上のように、NC制御工作機械の主軸に、微振動工具ホルダ(ジグザグ駆動アーバー又はジグザグ駆動)10やパラボラ駆動アーバー20等に、金網砥石を備えてなる被削材の切断加工装置において、直線及び任意曲線切断加工方法が実施される。
以下に、本発明の各請求項(1~7)に対応して、順次にその構成要件と作用効果記載する。
【0053】
本発明の金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法は、微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断であって、NC制御工作機械の主軸に、NC制御部に支配され流体圧生成部で生成された流体圧脈動により砥石軸方向に脈動する微振動工具ホルダを備え、上記微振動工具ホルダには縦・横に交差した金網体の各金網線の交点を含む金網全体にダイヤモンド砥粒をマスキングされた金網砥石を備え、上記金網砥石には上記脈動するクーラント液を供給するシステムを備えた。これにより、金網砥石の加工方向性とその種類は、(工具外周面での加工)、(工具側面方向への加工)、直線及び任意曲線切断加工やジグザグ加工、パラボラ断面加工等々の多彩な加工手段が適用できる。
【0054】
更に、微振動工具ホルダ10に備えた金網砥石1,4による直線及び任意曲線切断加工方法において、上記金網砥石は、外周面と左右両側面にダイヤモンド砥粒が付着されており、被切削材に対して、金網砥石の外周面での切り込みと、金網砥石の両側面で金網砥石の厚さ幅広寸法よりも若干広く直線溝加工が可能である。
【0055】
更に、微振動工具ホルダ10に備えた金網砥石1,4による直線及び任意曲線切断加工方法は、上記の金網砥石による直線及び任意曲線切断において、上記金網砥石は、外周面と左右両側面にダイヤモンド砥粒が付着されており、被切削材に対して金網砥石の両側面方向に対する円弧溝加工を得意とする。
【0056】
更に、微振動工具ホルダ10に備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法は、上記チョッピング脈動する微振動工具ホルダに取付けた金網砥石は、被切削材に対して、直線溝切削時に微振動工具ホルダの軸方向への脈動により、主軸の回転軸に取付けた金網砥石の外周面で切り込むとともに、金網砥石の両側面で金網砥石の厚さ寸法よりも幅広溝に効率良く溝加工できる。
【0057】
更に、微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法は、被切削材に対して、直線溝切削時に微振動工具ホルダのチョッピング脈動により、金網砥石の両側面における片側面を相互に周期的に被切削材に対して切り込むことで、効率的にジグザグ溝波状溝等の溝加工できる。
【0058】
更に、微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法は、上記NC制御工作機械の主軸アングルヘッドに微振動工具ホルダを介して金網砥石を固定し、該アングルヘッドの曲率半径に沿った傾斜角に金網砥石を軸制御することにより、ジグザグ溝即ち波状溝溝加工やジグザグ加工の溝幅内において切削方向を自在に変えた曲線加工ができる。
【0059】
更に、微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法は、NC制御工作機械の主軸に微振動工具ホルダを介在して取付けた金網砥石は、主軸の角度を変えずに主軸の軸方向制御とテーブル上の被削材に対する相対位置制御により、直線及び任意曲線切断加工ができる。
【0060】
更に、微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法は、微振動工具ホルダで軸方向に揺動される金網砥石の振幅幅1mm以内とし、1ジグザグにおける金網砥石の送りピッチ0.1mm以内とすることで金網砥石のジグザグ溝即ち波状溝に加工スジを残存させない高精度な溝加工が実施できる。
【0061】
更に、微振動工具ホルダに備えた金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法において、金網砥石をパラボラ駆動アーバー20に取り付けると、上記金網砥石をお椀状に撓ませ時には被削材に対して上向き方向の湾曲加工乃至湾曲切断ができる。また、上記金網砥石を逆お椀状に撓ませ時には、被削材に対して下向き方向の湾曲加工乃至湾曲切断が可能となる。
【0062】
更に、パラボラ駆動アーバー20に取り付けた微振動工具ホルダ金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法において、上記金網砥石を上下方向に撓ませ金網砥石の湾曲半径の調節制御を行うことで、湾曲加工乃至湾曲切断の曲線加工の湾曲度を可変にでき、各種多彩な曲線加工の湾曲度が得られる上に効率の良い切断加工が得られる。
【0063】
更に、金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法において、微振動工具ホルダに備えた金網砥石は、金網の縦金網と横金網の交点を電着前にマスキングし該交点が固着しない柔軟性のある特性とすれば、多種多様な直線及び任意曲線切断加工等の多様性を発揮する柔軟な被削材(例えば、具体的な一つの対象手段は、炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他合成樹脂板、金属薄板等々の柔らかい素材を直線加工及び任意溝幅加工及び任意曲線に切断可能とする加工方法)の加工処理が一つの金網砥石で柔軟な切断加工が可能となる。
【0064】
更に、金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法は、上記記載の金網砥石による直線及び任意曲線切断加工方法において、微振動工具ホルダに備えた金網砥石は、金網の縦金属線と横金属線の交点を電着して固着した硬い時には、高剛度な被削材に対して、切削加工処理ができる。
【0065】
以上の如く、詳細説明した「金網砥石による直線及び任意曲線切断方法」によると、加工精度を問題にしなければ、三次元ロボットの手首に、金網砥石を備えた微動工具ホルダを取り付ければ、同様の三次元加工が発展的実施出来る。
【0066】
追記事項として、図3において、メタルソーMSは、外周面に切刃を設けたものであるが、この左右側面の全面に単なる下ろし金状の無数の刃片群を付設又は隆起させた「側刃付きメタルソー」への設計変更のアイデアが思考される。しかし、単なる側刃では金網砥石1,4とは異なり、ダイヤモンド砥粒のような耐磨耗性が無く、側刃の損耗が激しい上に、切削屑の排出処理や側面の冷却効果等々に対する対策が施されていないと言う、問題が起きる可能性があり、期待できる程の作用・効果は全く得られないと、推測される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、その対象物を、例えば、航空機の機体となる炭素繊維強化プラスチック積層板やジュラルミン板、その他合成樹脂板、金属薄板等々の被加工物を対象として説明したが、様々な製品装置における板状・素材の被加工物を加工対象としての適用が可能である。
具体的には、航空機の主翼他を切断摘出する装置において、本発明の金網砥石1,4を備えた微振動工具ホルダ他を搬送手段(図示無し)の主軸(図示無し)に取付け、大型飛行機の数十メートルの主翼等の非常に長い加工物の全長に渡り、直線及び曲線切断や切断面の研削加工が高精度にして高効率に実施可能である。
【符号の説明】
【0068】
1,4 金網砥石
2,3 金属線
1a,4a 外周加工面せ
1b,4b 両側加工面
5 締付リング
10 ジグザグ駆動工具(ジグザグ駆動アーバー,微振動工具ホルダ)
20 パララ駆動アーバー
15 皿ばね(外周拘束輪)
50 NC制御装置
60 流体供給器
70 流体圧成部(油圧制御部)
100 チョッピング加工制御機器
C クーラント液
D ダイヤモンド砥粒
E1 直線加工
E2 ジグザグ加工
E3 曲線加工
E4 直線加工
E5 円弧軌跡加工
E6 任意曲線切断加工
M4,M5 永久磁石
S 主軸
S1 回転軸
MS メタルソー
V1,V2 流体脈動圧(流体圧脈動)
W,W1,W2 被削材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図8
図7
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24