(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】水電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 13/08 20060101AFI20240805BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20240805BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20240805BHJP
【FI】
C25B13/08 301
C25B9/00 A
C25B11/052
(21)【出願番号】P 2020062650
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「水素利用等先導研究開発事業/水電解水素製造技術高度化のための基盤技術研究開発/高性能・高耐久な固体高分子形および固体アルカリ水電解の材料・セルの設計開発」委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】317006683
【氏名又は名称】地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】山口 猛央
(72)【発明者】
【氏名】ソニ ロビー
(72)【発明者】
【氏名】黒木 秀記
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135487(JP,A)
【文献】特開2018-188701(JP,A)
【文献】特表2023-505051(JP,A)
【文献】特開2019-114620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105457511(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106147197(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極と、陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に配置されたアニオン伝導膜と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、
前記陰極又は陽極の少なくとも一方に、水又はアルカリ水溶液を供給する水供給部と、を備え、
前記アニオン伝導膜が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(A)を含む、
水電解装置。
【化1】
ただし、
Ar
1は、下記式(a1)~下記式(a9)より選択される基であり、
ただし、R
aは、各々独立に、水素原子、アニオン交換基を有する基、または、炭素数1~12の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基や、ハロゲノ基であり、各環に複数あるR
aのうち、少なくとも1つは、アニオン交換基を有する基であり、波線は、Ar
2との結合手であり、
Ar
2は、下記式(
d1)~下記式(
d9)より選択される基であり、
ただし、R
dは、各々独立に、水素原子、ハロゲノ基、または、ハロゲノ基を有していてもよい炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、波線は、Ar
1との結合手である。
【請求項2】
前記陰極が、炭素上に担持した金属粒子と、前記ポリマー(A)とを含むカソード触媒層を有する、請求項1に記載の水電解装置。
【請求項3】
前記陽極が、金属粒子連結体と、前記ポリマー(A)とを含むアノード触媒層を有する、請求項1又は2に記載の水電解装置。
【請求項4】
前記陽極が、アノード触媒層と、第1の拡散層とを有し、
前記陰極が、カソード触媒層と、第2の拡散層とを有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の水電解装置。
【請求項5】
前記陽極上に第1の主電極を有し、
前記陰極上に第2の主電極を有し、
前記電源が、前記第1の主電極と、前記第2の主電極に接続されて、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解(水電解)は、二酸化炭素を発生することなく電力から水素に変換できるので、再生可能エネルギーを水素エネルギーとして貯蔵する電力-水素貯蔵システムとして注目を集めている。水電解方式には、アルカリ水電解、固体高分子形水電解等がある。アルカリ水溶液を用いたアルカリ水電解は、出力が変動する再生可能エネルギーの出力変動に追随できない欠点があった。プロトン伝導膜を用いたプロトン型の固体高分子形水電解では耐食性の点から白金などの貴金属を使用する必要があり、装置製造コストが増大するという課題があった。
【0003】
そこで、アニオン伝導膜を用いた固体アルカリ水電解が検討されている(例えば、特許文献1)。固体アルカリ水電解によれば、電極等に貴金属を使用する必要がなく、装置コストの抑制が可能となる。
アニオン伝導膜については、種々の提案がなされている(例えば、非特許文献1~14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Pavel, C. C. et al. Highly efficient platinum group metal free based membrane-electrode assembly for anion exchange membrane water electrolysis. Angew. Chemie - Int. Ed. 53, 1378-1381 (2014).
【文献】Kraglund, M. R. et al. Zero-Gap Alkaline Water Electrolysis Using Ion-Solvating Polymer Electrolyte Membranes at Reduced KOH Concentrations. J. Electrochem. Soc. 163, F3125-F3131 (2016).
【文献】Aili, D. et al. Towards a stable ion-solvating polymer electrolyte for advanced alkaline water electrolysis. J. Mater. Chem. A 5, 5055-5066 (2017).
【文献】Diaz, L. A. et al. Alkali-doped polyvinyl alcohol - Polybenzimidazole membranes for alkaline water electrolysis. J. Memb. Sci. 535, 45-55 (2017).
【文献】Cho, M. K. et al. Alkaline anion exchange membrane water electrolysis: Effects of electrolyte feed method and electrode binder content. J. Power Sources 382, 22-29 (2018).
【文献】Ito, H. et al. Experimental investigation of electrolytic solution for anion exchange membrane water electrolysis. Int. J. Hydrogen Energy 43, 17030-17039 (2018).
【文献】Konovalova, A. et al. Blend membranes of polybenzimidazole and an anion exchange ionomer (FAA3) for alkaline water electrolysis: Improved alkaline stability and conductivity. J. Memb. Sci. 564, 653-662 (2018).
【文献】Ito, H., Kawaguchi, N., Someya, S. & Munakata, T. Pressurized operation of anion exchange membrane water electrolysis. Electrochim. Acta 297, 188-196 (2019).
【文献】Su, X. et al. Novel piperidinium functionalized anionic membrane for alkaline polymer electrolysis with excellent electrochemical properties. J. Memb. Sci. 581, 283-292 (2019).
【文献】Tham, D. D. & Kim, D. C2 and N3 substituted imidazolium functionalized poly(arylene ether ketone) anion exchange membrane for water electrolysis with improved chemical stability. J. Memb. Sci. 581, 139-149 (2019).
【文献】Park, J. E. et al. High-performance anion-exchange membrane water electrolysis. Electrochim. Acta 295, 99-106 (2019).
【文献】Leng, Y. et al. Solid-State Water Electrolysis with an Alkaline Membrane. J. Am. Chem. Soc. 134, 9054-9057 (2012)
【文献】Borisov, G. et al. Alkaline water electrolysis facilitated via non-precious monometallic catalysts combined with highly KOH doped polybenzimidazole membrane. Materials Letters, 240, 144-146 (2019)
【文献】Park, E. J. et al. Chemically durable polymer electrolytes for solid-state alkaline water electrolysis. J. Power Sources, 375, 367-372 (2018)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固体アルカリ水電解のアニオン伝導膜には、アニオン伝導性に優れることが求められている。また、装置の長寿命化の点からアニオン伝導膜の高耐久性が求められている。
【0007】
本発明は、高電流でも水電解効率に優れ、耐久性に優れた水電解装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、アニオン伝導膜として下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(A)を用いることで、上記の課題を解決した。
即ち、本発明に係る水電解装置は、
陽極と、陰極と、
前記陽極と前記陰極との間に配置されたアニオン伝導膜と、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する電源と、
前記陰極又は陽極の少なくとも一方に、水又はアルカリ水溶液を供給する水供給部と、を備え、
前記アニオン伝導膜が、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(A)を含む。
【0009】
【化1】
ただし、
Ar
1は、アニオン交換基を有する芳香族基、又はアニオン交換基を有する2以上の芳香環が単結合を介して連結した基であって、複数あるAr
1は同一であっても異なっていてもよく、
Ar
2は、アニオン交換基を有しない芳香族基、もしくは、アニオン交換基を有しない2以上の芳香族環が、単結合、又はスピロ原子を介して連結した基であって、複数あるAr
2は同一であっても異なっていてもよく、
Ar
1が有する芳香環と、Ar
2が有する芳香環とは、単結合を介して連結している。
【0010】
上記水電解装置の一実施形態は、前記陰極が、炭素上に担持した金属粒子と、前記ポリマー(A)とを含むカソード触媒層を有する。
【0011】
上記水電解装置の一実施形態は、前記陽極が、金属粒子連結体と、前記ポリマー(A)とを含むアノード触媒層を有する。
【0012】
上記水電解装置の一実施形態は、
前記陽極が、アノード触媒層と、第1の拡散層とを有し、
前記陰極が、カソード触媒層と、第2の拡散層とを有する。
【0013】
上記水電解装置の一実施形態は、
前記陽極上に第1の主電極を有し、
前記陰極上に第2の主電極を有し、
前記電源が、前記第1の主電極と、前記第2の主電極に接続されて、
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、高電流でも水電解効率に優れ、耐久性に優れた水電解装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】水電解装置の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】実施例1のポリマーの合成経路を示すスキームである。
【
図3】実施例における固体アルカリ水電解用膜電極接合体(MEA)の構成を示す概略図である。
【
図4】実施例1~3のMEAの固体アルカリ水電解性能を示すグラフ(電流電圧曲線)である。
【
図5】実施例1~3及び比較例1~11のMEAの固体アルカリ水電解性能を示すグラフである。
【
図6】実施例2のMEAの安定性評価結果を示すグラフである。
【
図7】実施例1~3のMEAの固体アルカリ水電解性能を示すグラフである。
【
図8】実施例1~3及び比較例11~14のMEAの固体アルカリ水電解性能を示すグラフである。
【
図9】実施例3のMEAの安定性評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る水電解装置(以下、単に本水電解装置ともいう)の構成について説明する。
なお数値範囲を示す「~」はその上限値及び下限値を含むものとする。また、説明を明確にするため、以下の記載および図面は、適宜、簡略化されている。また、本明細書において特に言及していない本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
【0017】
まず
図1を参照して本水電解装置について概説する。
図1は、水電解装置の一例を示す模式的な断面図である。
図1の例に示される水電解装置は、陽極10と、陰極20と、前記陽極10と前記陰極20との間に配置されたアニオン伝導膜5と、陽極10と及び陰極20に接続する電源7と、前記陰極20に水又はアルカリ水溶液を供給する水供給部とを備えている。陽極10は、アノード触媒層11、第1の拡散層12がアニオン伝導膜5側からこの順に配置され、陰極20は、カソード触媒層21、第2の拡散層22がアニオン伝導膜5側からこの順に配置されている。
図1の例では更に陽極10及び陰極20の外側にそれぞれセパレータ13、23を備えるセル6を構成している。本水電解装置1は単数のセル6であってもよく、複数のセル6をスタックしたものであってもよい。なお、水供給部は陰極又は陽極の少なくとも一方に水を供給すればよい。
【0018】
本水電解装置は、固体アルカリ水電解方式の装置であり、電解質膜としてアニオン伝導膜5を用いる。陰極20側に水又はアルカリ水溶液を供給しながら、両電極に電圧を印加すると、陰極20側では下記の反応が起こり、水素ガスが発生する。
2H2O+2e-→2OH-+H2
水酸化物イオン(OH-)は、アニオン伝導膜5を透過して陽極10に移動する。陽極10では下記の反応が起こり、酸素ガスが発生する。
2OH-→H2O+1/2O2+2e-
発生した水素及び酸素は、各々セパレータ13及び23に設けられたガス流路14、24を通じてセル6から排出される。ガス流路は、例えば、図示しない気液分離器を介して貯蔵用タンク等に接続され、水素及び酸素は、各々、気液分離器で水が分離された後、貯蔵用タンク等に収容される。
【0019】
本水電解装置において供給する水は、純水であってもよく、アルカリ水溶液であってもよい。アルカリ水溶液を用いることで、純水と比較して水電解を高効率で行うことができる。一方、本水電解装置はアニオン伝導膜5として後述する一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(A)(単に、ポリマー(A)ということもある)を含むものを用いるため、純水であっても優れた効率で水分解を行うことができる。なお、アルカリ水溶液中の溶質は特に限定されず、例えば、1Mの水酸化カリウム等とすることができる。
アニオン伝導膜の厚みは特に限定されないが、例えば1~100μmの範囲で適宜調整すればよく、2~80μmが好ましい。
【0020】
陽極10は少なくともアノード触媒層11を有し、更に第1の拡散層12を有していてもよい。アノード触媒層11の触媒は、公知のもの中から適宜選択でき、例えば、白金、コバルト、ニッケル、パラジウム、鉄、銀、金、銅、イリジウム、モリブデン、ロジウム、クロム、タングステン、マンガン、ルテニウム、これらの金属化合物、金属酸化物、およびこれらの金属の2種以上を含む合金からなる微粒子が挙げられる。アノード触媒層11は水との接触面積や、水やガスの拡散の点から、多孔質であることが好ましい。多孔質の触媒層は、例えば、触媒となる上記金属の粒子を融着した金属粒子連結体などが挙げられる。アノード触媒層11は、更に後述するポリマー(A)を有することが好ましい。アノード触媒層11が後述するポリマー(A)を含むことにより水酸化物イオンが触媒に供給されやすくなり、水電解効率が向上する。
【0021】
ポリマー(A)を含むアノード触媒層の製造方法は、例えば、特開2018-188701号公報などを参照することができる。
アノード触媒層中のポリマー(A)の割合は、水電解効率に優れる範囲で適宜調整すればよい。例えば、アノード触媒層全量100質量%に対して、80質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
アノード触媒層11の厚みは特に限定されないが、例えば、0.01~100μmとすることができ、0.01~10μmが好ましい。
【0022】
陽極10は、必要に応じて第1の拡散層12を有していてもよい。第1の拡散層12は前記アノード触媒層11を支持するためなどに用いられる。第1の拡散層12は公知のガス拡散層の中から適宜選択することができ、例えばニッケルフォームなどの発泡金属層や多孔質カーボン層などが挙げられる。
【0023】
陰極20は少なくともカソード触媒層21を有し、更に第2の拡散層22を有していてもよい。
カソード触媒層21の触媒は、前記アノード触媒層11と同様のものが挙げられる。カソード触媒層21は水との接触面積や水やガスの拡散の点から、カーボン粒子に触媒となる金属粒子を担持させたものが好ましい。カソード触媒層21は、ポリマー(A)を有することが好ましい。カソード触媒層21が後述するポリマー(A)を含むことにより水酸化物イオンがアノード触媒に供給されやすくなり、水電解効率が向上する。
【0024】
ポリマー(A)を含むカソード触媒層の製造方法は、例えば、特開2018-188701号公報などを参照することができる。
カソード触媒層中のポリマー(A)の割合は、水電解効率に優れる範囲で適宜調整すればよい。例えば、カソード触媒層全量100質量%に対して、80質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
カソード触媒層21の厚みは特に限定されないが、例えば、0.01~100μmとすることができ、0.01~10μmが好ましい。
【0025】
陰極20は、必要に応じて第2の拡散層22を有していてもよい。第2の拡散層22は前記カソード触媒層21を支持するためなどに用いられる。第2の拡散層22は前記第1の拡散層12と同様のものを用いることができる。
【0026】
本水電解装置は、陽極10及び陰極20の外側に、それぞれセパレータ13、23を有していてもよい。セパレータの材質は白金コート等する必要はなく、カーボン製、ステンレス製など、適宜選択して用いることができる。セパレータ13、23が導電性を備える場合、セパレータ13を第1の主電極、セパレータ23を第2の主電極として、電源7を当該第1の主電極及び第2の主電極に接続して、陽極と陰極に電圧を印加してもよい。
【0027】
セパレータ13、23は、ガス流路14、24を有していてもよい。陽極10で発生した酸素、及び陰極20で発生した水素は各々ガス流路14、24を通じて排出され、貯蔵用タンクなどに収容される。
【0028】
電源7は、特に限定されず、公知の直流電源の中から適宜選択できる。本水電解装置は、入力電力に対する応答に優れることから、変動が大きい太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーであっても好適に用いることができる。
【0029】
次に、本水電解装置において、アニオン伝導膜5に用いられ、アノード触媒層11及びカソード触媒層21に好適に用いられるポリマー(A)について説明する。
【0030】
ポリマー(A)は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(以下、構成単位(1)ともいう)を有する。
【0031】
【化2】
ただし、
Ar
1は、アニオン交換基を有する芳香族基、又はアニオン交換基を有する2以上の芳香環が単結合を介して連結した基であって、複数あるAr
1は同一であっても異なっていてもよく、
Ar
2は、アニオン交換基を有しない芳香族基、もしくは、アニオン交換基を有しない2以上の芳香族環が、単結合、又はスピロ原子を介して連結した基であって、複数あるAr
2は同一であっても異なっていてもよく、
Ar
1が有する芳香環と、Ar
2が有する芳香環とは、単結合を介して連結している。
【0032】
ポリマー(A)は、上記構成単位(1)を2個以上有するポリマーであり、アニオン交換基を有するAr1と、アニオン交換基を有しないAr2が、交互に配置された構造を有する。主鎖を構成するAr1及びAr2がそれぞれ芳香族基を有し、主鎖骨格にエーテル結合(-O-)、スルホニル基(-S(=O)2-)、カルボニル基(-C(=O)-)を有しないため、化学的耐久性に優れている。
【0033】
Ar1は、アニオン交換基を有する芳香族基、又はアニオン交換基を有する2以上の芳香環が単結合を介して連結した基である。
本明細書において、アニオン交換基とは、解離性を有しアニオン交換が可能な官能基であり、ポリマー(A)のアニオン伝導に寄与する。Ar1におけるアニオン交換基は、このような官能基の中から用途に応じて適宜選択することができる。アニオン交換基としては、4級アンモニウム基、イミダゾリウム基などがあげられ、4級アンモニウム基が好ましい。前記4級アンモニウム基は、さらに、アルカリ耐久性の観点から、4級アルキルアンモニウム基が好ましい。なお、当該4級アルキルアンモニウム基は、窒素原子に結合するアルキル基同士が結合して環構造を形成しているものを含むものであり、例えば、アザアダマンチル基、キヌクリジニウム基などであってもよい。
4級アンモニウム基の好ましい具体例としては、下記式(b1)~式(b3)が挙げられる。また、イミダゾリウム基の好ましい具体例としては、下記式(b4)が挙げられる。なお各式中の波線は、Ar1が有する芳香環または後述する連結基への結合手を示す。
【0034】
【化3】
ただし、R
11は、各々独立に、炭素数が1以上6以下の、直鎖状、分岐状または複数のR
11が連結した環状のアルキル基であり、
R
12は、各々独立に、水素原子、炭素数1以上4以下の直鎖状または分岐状のアルキル基、もしくは、置換基としてアルキル基を有していてもよい芳香族基であり、
A
-は、1価または2価以上のアニオンである。
【0035】
ここで、上記R11におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R12におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、R12における芳香族基としては、フェニル基、3,5-ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0036】
A-は、カウンターアニオンであり、無機アニオンが好ましく、具体的には、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)、炭酸水素イオン(HCO3
-)、炭酸イオン(CO3
2-)、水酸化物イオン(OH-)などが挙げられる。
【0037】
上記アニオン交換基は、芳香環に直接結合してもよく、有機基(連結基ともいう)を介して結合していてもよい。化学的耐久性の点から連結基を有することが好ましい。アニオン交換基と芳香環とを結合する連結基としては、置換基を有していてもよいアルキレン基が挙げられる。当該アルキレン基の炭素数はポリマー(A)に求められる物性に応じて適宜調整できる。例えば、前記アルキレン基の炭素数を20以下、好ましくは16以下、より好ましくは12以下とすることで、ポリマー(A)のアニオン交換基容量が増大する。一方、前記アルキレン基の炭素数を1以上、好ましくは2以上、より好ましくは4以上とすることで、溶解性及び膨潤耐性に優れたポリマー(A)が得られる。また当該アルキレン基が有していてもよい置換基としては、フッ素原子、アルキル基などが挙げられる。なお本明細書ではアニオン交換基とこれに結合する連結基をまとめて、アニオン交換基を有する基ということがある。Ar1は各環が少なくとも1つのアニオン交換基を有すればよく、アニオン交換基及び他の置換基の位置及び数は特に限定されない。
【0038】
Ar1が有する芳香環は、ポリマー(A)の主鎖を構成する。当該芳香環としては、ベンゼン環のほか、ナフタレン環、アントランセン環、フルオレン環等の縮合環であってもよく、また、酸素原子(O)、窒素原子(N)、硫黄原子(S)を含む複素環(例えば、チオフェン等)であってもよい。
また、Ar1は、アニオン交換基を有する2以上の芳香環が単結合を介して連結した基であってもよい。複数の環が単結合で連結した構造としては、例えば、ビフェニル、ターフェニルなどが挙げられる。
【0039】
Ar1における芳香環は、アニオン交換基以外の他の置換基(アニオン交換基を有しない基)を有していてもよい。他の置換基としては、例えば、炭素数1~12の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基や、ハロゲノ基等が挙げられる。当該炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基が挙げられ、更に、これらの基が他の置換基(例えばハロゲノ基)を有していてもよい。また、当該Ar1は、上記置換基である炭化水素基同士が連結した芳香族基の一部を含む環構造を有してもよい。また、前記ハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などが挙げられる。
【0040】
ポリマー(A)は、イオン伝導性及び成膜性に優れ、化学的耐久性及び膜強度に優れた電解質膜が形成可能な点から、前記Ar1が、下記式(a1)~下記式(a9)より選択される1種以上が好ましい。なお波線は、Ar2との結合手を示す。
【0041】
【化4】
ただし、R
aは、各々独立に、水素原子、アニオン交換基を有する基、または、アニオン交換基を有しない基であり、各環に複数あるR
aのうち、少なくとも1つは、アニオン交換基を有する基である。
【0042】
Ar2が有する芳香環は、ポリマー(A)の主鎖を構成する。当該芳香環としては、前記Ar1と同様のものが挙げられる。また、Ar2における芳香環はアニオン交換基以外の他の置換基を有していてもよい。他の置換基としては、前記Ar1と同様のものが挙げられる。
Ar2における2以上の芳香族環がスピロ原子を介して連結した基としては、例えば、下記式(c1)で表される基が挙げられる。また、2以上の芳香族環が単結合を介して連結した基としては、例えば、下記式(c2)~式(c4)で表される基が挙げられる。なお波線は、Ar1との結合手を示す。
【0043】
【化5】
ただし、R
Cは、各々独立に、水素原子、ハロゲノ基または有機基である。
【0044】
ポリマー(A)の重量平均分子量は、適宜調整することができ、例えば、1万~100万の範囲とすることができるが、成膜性及び膜強度等の観点から、3万以上であることが好ましく、10万以上であることがより好ましい。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算の数値である。
【0045】
ポリマー(A)は、構成単位(1)のみからなるものであってもよく、また他の構成単位を有していてもよい。他の構成単位としては、例えば、構成単位(1)のAr2にアニオン交換基が導入されない構造などが挙げられる。また、合成上生じ得るその他の構造を含んでいてもよい。
【0046】
ポリマー(A)は、中でも、下記ポリマー(A1)~(A4)が好ましい。以下これらのポリマーについて詳述する。
【0047】
・ポリマー(A1)
ポリマー(A1)は、下記一般式(1-1)で表される繰り返し単位を有する。
【0048】
【化6】
ただし、R
1~R
10は、各々独立に、水素原子、炭素数が1~4のアルキル基、又は、フェニル基であり、Ar
1は前記式(1)におけるものと同様であり、好ましい形態も同様である。
【0049】
R1~R10における炭素数が1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基などが挙げられる。ポリマー(A1)においては、溶解性向上の観点から、R1及びR10の少なくとも一方が、アルキル基であることが好ましく、R1及びR10がアルキル基であることがより好ましく、更に、R1及びR10がtert-ブチル基であることがより好ましい。R1及びR10の少なくとも一方に嵩高い置換基を有することにより、π-πスタッキングなどによるポリマーの凝集が抑制されて、溶媒への溶解性が向上する。一方、R1~R8は、各々独立に、水素原子又はメチル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
【0050】
ポリマー(A1)は、アニオン交換基を有するAr1と、スピロビフルオレン骨格とが交互に繰り返された構造を有している。当該ポリマー(A1)は、主鎖骨格を構成する各元素が芳香族環に属するか、又は、水素原子を有しないスピロ原子であり、主鎖骨格がエーテル結合を有しないため、アルカリやラジカル存在下での分解が抑制され、化学的な耐久性に優れている。また、スピロビフルオレン骨格は、スピロ原子を介して2つのフルオレンがほぼ直角にねじれた構造をしており、当該フルオレン骨格が主鎖を構成することにより、主鎖全体が多数の折れ曲がりをもった状態となっている。そのため、主鎖の平面性が低下するため、π-πスタッキングが阻害され、溶媒への溶解性にも優れ、成膜時の取り扱い性に優れている。
【0051】
ポリマー(A1)の合成方法は特に限定されないが、好適な一例として、下記スキームA1の方法が挙げられる。
【0052】
【化7】
スキームA1中、R
aはアニオン交換基を表し、R
bは、一般式(1-1)中の、R
1及びR
10に相当する置換基を表す。
【0053】
上記スキームA1の例では、所望の置換基Rbを有する化合物(B)から、臭素化されたスピロビフルオレン骨格を有する化合物(C)を合成する(ステップ(i)~ステップ(vii))。これとは別に、所望の芳香族環(スキームA1の例ではベンゼン環)を有する臭素化物(D)にビス(ピナコラート)ジボランを反応させて一般式(1-1)におけるAr1の前駆体となる化合物(E)を合成する(ステップ(viii))。前記化合物(C)と前記化合物(E)とを重合させた後、所望のアニオン交換基を導入することにより、一般式(1-1)で表されるポリマーが得られる(ステップ(ix)~ステップ(xi))。なお、上記各ステップの反応条件は、公知の反応を参照して決定すればよい。
【0054】
・ポリマー(A2)
ポリマー(A2)は、下記一般式(1-2)で表される繰り返し単位を有する。
【0055】
【化8】
ただし、R
aは、アニオン交換基を有する基であり、Ar
2は前記一般式(1)におけるものと同様である。
【0056】
ポリマー(A2)は、上記構成単位(1-2)を2個以上有するポリマーであり、主鎖が全芳香族の化合物である。ポリマー(A2)はこのような構造を有するためアルカリやラジカルなどに対する耐久性に優れている。
【0057】
ポリマー(A2)におけるAr2は、中でも、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基が好ましく、p-フェニレン基(下式(Ar-1))、4,4’-ビフェニレン基(下式(Ar-2))、又は、4,4’’-ターフェニレン基(下式(Ar-3))がより好ましい。
【0058】
【化9】
ただし、RはAr
2が有していてもよい置換基であり、rは0~4の整数であり、複数あるR及びrは同一であっても異なっていてもよい。
【0059】
Ar2がp-フェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、又は、4,4’’-ターフェニレン基の場合、第1の化合物は下式のような主鎖骨格がジグザグ状の配置を取りやすい。下式は代表して、Ar2がp-フェニレン基の場合を示しているが、4,4’-ビフェニレン基、又は、4,4’’-ターフェニレン基も同様である。下式に示されるように、ポリマー(A2)は、主鎖骨格がジグザグ状の配置を取りやすく、更に各Raは当該骨格の折り返しの外側に配置されやすい。そのため、主鎖の折り返しなどによる分子内の凝集が抑制されている。これらの結果、イオン伝導性に優れた電解質膜を形成しうるポリマーとなる。
【0060】
【0061】
ポリマー(A2)におけるアニオン交換基を有する基Raは、中でも、下式(Ra-1)で表される基が好ましい。
【0062】
【化11】
ただし、R
b2は、アニオン交換基であり、p2は1以上20以下の整数である。また、波線はベンゼン環との結合手を示す。
【0063】
上式(Ra-1)で表される基は、主鎖を構成するベンゼン環に隣接する炭素原子が4級炭素となっている。そのため、ポリマー(A2)間のπ-πスタッキングが抑制される。その結果、ポリマー(A2)の凝集が抑制されて、溶媒に溶解しやすくなり、成膜時などにおけるハンドリング性に優れている。
p2は{(Rb2から4級炭素までの炭素数)-1}を表し、1以上20以下の範囲で適宜調整すればよい。中でも1~15が好ましく、1~12がより好ましく、1~6が更に好ましい。
【0064】
ポリマー(A2)の合成方法は特に限定されないが、好適な一例として、下記スキームA2の方法が挙げられる。
【0065】
【化12】
ただし、X、X
1はハロゲン原子を表し、Ar
2、及びp2は前述のとおりである。X
1のハロゲン原子としてはBrが好ましい。
【0066】
上記スキームA2の例では、まず、化合物(H)と、所望のAr2を有する化合物(I)を準備し、当該化合物(H)と化合物(I)とを重合させて(J)で表される構成単位を有するポリマーを得る。次いで、ポリマー(J)に所望のアニオン交換基を導入することにより、ポリマー(A2)が得られる。上記スキームA2では、4級アンモニウムを導入しているが、他のイオン官能基もこれに準じて導入できる。なお、上記各ステップの反応条件は、公知の反応を参照して決定すればよい。
【0067】
・ポリマー(A3)
ポリマー(A3)は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位において、Ar2が下記式(2)で表される部分構造を両末端に有する。言い換えると、当該Ar2は、末端の炭素原子のα位にフルオロ基(-F)を有する芳香環を含む2価の基である。ここでAr2の末端とは、Ar1と結合する炭素原子をいう。なお、波線はAr1との結合手を表し、点線は芳香環の一部を省略していることを示す。
【0068】
【0069】
ポリマー(A3)は、アニオン交換基を有するAr1と、フルオロ基(-F)を含む部分構造(2)を有するAr2が、交互に配置された構造を有する。主鎖を構成するAr1及びAr2がそれぞれ芳香族基を有し、更に少なくともAr2がフッ素原子を含むため、アルカリやラジカル等に対する化学的な耐久性に優れる。また、本ポリマーは、イオン交換基を有するAr1とイオン交換基を有しないAr2とが交互に配置している。このような構造を有するため、溶媒への溶解性、成膜性及びイオン伝導性に優れ、さらに、当該ポリマーを用いて形成した電解質膜は、機械的強度に優れている。また、部分構造(2)を有するAr2と、後述する式(4)で表される化合物の反応性が高く、より高分子量のポリマーを製造し得る。高分子量の本ポリマーを用いることで、より優れた機械的強度を有する膜を形成することも可能となる。
【0070】
Ar2は、例えば、後述の式(b-1)のように、1つの環構造(例えば、ベンゼン環)に部分構造(2)を2つ有してもよいし、また、後述の式(b-2)のように、1つのC-F結合が、2つの部分構造(2)を構成してもよい。さらに、上記鎖状多環式炭化水素の場合、鎖状多環式炭化水素が有する2つの環構造に部分構造(2)を1つずつ有し、それらの環が直接または上記連結基を介して連結してもよいし、複数の環構造のうちの1つに部分構造(2)を2つ有してもよい。
【0071】
本ポリマーにおいては、イオン伝導性及び成膜性に優れ、化学的耐久性及び膜強度に優れた電解質膜が形成可能な点から、前記Ar2が、下記式(d1)~下記式(d9)より選択される1種以上であることが好ましい。なお波線は、Ar1との結合手を示す。
【0072】
【化14】
ただし、R
dは、各々独立に、水素原子、ハロゲノ基または有機基である。
【0073】
上記Rdにおけるハロゲノ基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、これらの中でも、フルオロ基が好ましい。
また、上記Rdにおける有機基としては、例えば、置換基(例えばハロゲノ基)を有していてもよい(置換基の炭素数を含まない)炭素数1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基が挙げられる。
【0074】
製造の容易性の点から、上記Ar2は、下式(d10)~(d14)が好ましい。なお波線は、Ar1との結合手を示す。
【0075】
【0076】
ポリマー(A3)の合成方法は特に限定されないが、好適な一例として、下記スキームA3の方法が挙げられる。
【0077】
【化16】
ただし、X
1は、各々独立に、BrまたはIであり、Ar
3は、ハロゲノ基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、カルボン酸エステル基、イミダゾール基およびアミノ基より選択される官能基を有する芳香族基であり、Ar
2は、ポリマー(A3)におけるものと同様である。
【0078】
化合物(4)のX1と、化合物(5)のAr2が有する下記部分構造(5a)の水素原子の反応性に優れているため、高分子量(例えば重量平均分子量が10万以上)のイオン電導性ポリマーを比較的容易に合成することができる。
【0079】
【0080】
上記スキームA3では、まず、所望のAr3を有する化合物(4)と、所望のAr2を有する化合物(5)を準備する。そして、これらの化合物を、例えば、溶媒中、Pd錯体、リガンド、カルボン酸(RCO2H)及び塩基の存在下、80~140℃で1~48hr反応させることで構成単位(3)を有するポリマーが得られる。
【0081】
次いで、構成単位(3)を有するポリマーに所望のイオン交換基を導入することにより、ポリマー(A3)が得られる。このようにポリマー(A3)は、化合物(4)と化合物(5)を原料とすることで、極めて少ない合成ステップで容易に製造することができる。
【0082】
・ポリマー(A4)
ポリマー(A4)は、下記一般式(1-4)で表される繰り返し単位を有する。
【0083】
【化18】
ただし、環Ar
11及び環Ar
12はベンゼン環に縮合する環であり、全体として芳香属性を有する3環以上の縮合環であり、Ar
1は前記一般式(1)におけるものと同様である。
【0084】
下のように推定される。
ポリマー(A4)は、アニオン交換基を有するAr1と、3環以上の縮合環から構成されるAr2とが交互に繰り返された構造を有している。一般にイオン交換基を多く含むポリマーは膨潤しやすい傾向があるが、ポリマー(A4)は、Ar1とAr2とが交互に繰り返し、且つ、3環以上の縮合環がπ-πスタッキングすることにより、膨潤耐性に優れている。
【0085】
環Ar11及び環Ar12はヘテロ原子を有してもよい芳香族環である。当該へテロ原子としては、N(窒素原子)、O(酸素原子)、S(硫黄原子)が挙げられる。環Ar11及び環Ar12を含む縮合環は、膨潤耐性の観点から3環以上の縮合環が好ましい。一方、ポリマー(A4)のイオン交換容量を高める観点からは、5環以下の縮合環が好ましく、4環以下の縮合環がより好ましい。
当該縮合環の好ましい具体例としては、以下のものが挙げられる。なお波線は、Ar1との結合手を示す。また、水素原子は前記アニオン交換基を有しない基に置換されていてもよい。
【0086】
【0087】
ポリマー(A4)は、下記一般式(1-5)で表される繰り返し単位を有する前駆体(1-5)を準備し、成膜時に置換基(TL)を脱離することにより合成することが好ましい。
【0088】
【化20】
ただし、LTは、一般式(LT1)~(LT3)で表される基であり、R
11は各々独立に炭素数1~6のアルキル基であり、R
12は炭素数1~6のアルキル基、又は、フェニル基であり、Ar
1、Ar
11、Ar
12は前記一般式(1-4)におけるものと同様である。
R
11及びR
12における、炭素数1~6のアルキル基は、直鎖又は分岐を有するアルキル基のいずれでもよい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0089】
ポリマー(A4)は、前述の通り膨潤耐性に優れている。そのため、種々の有機溶媒に溶解しにくく、加工時のハンドリング性が悪いという問題がある。上記前駆体は、ポリマー(A4)の縮合環に対応する部位に、嵩高く、且つ、熱又は光の作用により比較的容易に脱離可能な、上記一般式(LT1)~(LT3)で表される置換基(TL)が導入されている。本発明の前駆体は、当該置換基によって疎水部のπ-πスタッキングが阻害され、種々の有機溶媒への溶解性が向上する。そのため、上記前駆体は、基材への塗布やスプレー照射などのハンドリング性に優れ、ポリマー(A4)では困難であった成膜などを容易に行うことができる。なお置換基(TL)は加熱又は光照射により除去することが可能である。
【0090】
前記前駆体の合成方法は特に限定されないが、好適な具体例として、下記スキームA4の方法が挙げられる。
【0091】
【0092】
上記スキームA4の各ステップの一例を説明する。
ステップ(i):上記化合物(1)のトルエン溶液を準備し、アゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)を加えて加熱還流することにより上記化合物(2)を得る。
ステップ(ii):これとは別に上記化合物(3)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を準備し、ビス(ピナコレート)ジボランと、酢酸カリウム(KOAc)と、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(Pd(dppf)Cl2)を加えて90℃に加熱することにより、上記化合物(4)を得る。
ステップ(iii):得られた上記化合物(2)と上記化合物(4)のトルエン溶液に、リン酸三カリウム(K3PO4)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Pd(PPH3)4)を加えて100℃に加熱することにより重合化して、上記化合物(5)を得る。
ステップ(iv)クロロベンゼン中に、得られた化合物(5)と、N-ブロモスクシンイミド(NBS)と、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を加えて混合し、110℃に加熱することにより上記化合物(6)を得る。
ステップ(v):得られた化合物(6)をDMF/THF(テトラヒドロフラン)混合溶媒中で、50℃に加熱することにより、上記化学式(7)で表される前駆体が得られる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、これらの記載により本発明を制限するものではなく、本発明は、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0094】
(合成例1)
図2に示すスキーム1に従って、ポリマー(A)を合成した。なお、以下では、例えばスキーム1のステップ(i)をステップ(1-i)と記載し、他のステップもこれに順ずる。なお、スキーム1及び後述の各ポリマー中に示すnは、各構成単位の繰り返し単位数を意味する。
【0095】
<ステップ(1-i):化合物Iの合成>
2口フラスコに、水酸化ナトリウム(200g)水溶液(600mL)と、n-テトラブチルアンモニウムクロリド(556mg)とを加え、窒素下にて撹拌した。次いで、別途、1,6-ジクロロヘキサン(31.0g,200mmol)に、2,7-ジブロモフルオレン(6.48g,20mmol)を加熱しながら溶解させて調製した溶液を、この2つ口フラスコに、シリンジにて加えた。
そして、90℃、窒素下にて、90分間、反応させた後、得られた反応液を室温(25℃)まで冷却させた。冷却した反応液中の有機相を分液ロートにてジクロロメタン(300mL)で抽出し、1Mの塩酸(50mL)と、水(200mL×2)とで洗浄した。得られた有機相中のジクロロメタンをエバポレーターにて除去し、さらに、減圧下、90℃にて、未反応の1,6-ジクロロヘキサンを除去した。得られた残渣をシリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン:クロロホルム=9:1)にかけることで、目的の化合物I(7.63g,13.6mmol)を得た。
化合物Iの1H-NMRスペクトル
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.52 (2H, d), δ 7.47-7.43 (4H, m), δ 3.42 (4H, t), δ 1.93 (4H,m), δ 1.60 (4H, m), δ 1.19 (4H, m), δ 1.08 (4H, m), δ 0.58 (4H, m)
【0096】
【0097】
<ステップ(1-ii):ポリマーI-Clの合成>
2口フラスコに、化合物I(1121mg,2mmol)、炭酸セシウム(1.96g,6mmol)、ピバル酸(204mg,2mmol)、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン(14mg)およびPd
2(dba)
3・CHCl
3錯体(10.4mg)を加え、更に、脱水テトラヒドロフラン(3mL)を加えて、窒素下にて撹拌した。続いて、別途、テトラフルオロフェニレン(309mg,2.06mmol)をテトラヒドロフラン(1mL)に溶解させて調製した溶液を、シリンジにて空気がなるべく入らないように、2口フラスコに加えた。これらの混合液を、窒素下、室温(25℃)にて45分反応させた後、95℃にて24時間反応させた。
得られた反応物(固形分)に、1M塩酸及びクロロホルムを加え、12時間、40℃で撹拌した後、分液ロートにて有機相を抽出した。抽出した有機相を水で洗浄した後、得られた有機相中の液体分をエバポレーターにて除去し、乾固させた。得られた残渣をクロロホルムに溶解させ、メタノール中で再沈殿させた。得られた沈殿物を濾過して液体分を除去したのち、固形分をヘキサンで洗浄した。更に、得られた固形分を真空乾燥させることで、目的のポリマーI-Cl(930mg)を得た。ポリマーI-Clの
1H-NMRスペクトルを
図3に示す。また、ポリマーI-Clに対して、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析を行い、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)も測定した。
ポリマーI-Clの
1H-NMRスペクトル
1H-NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 7.92 (2H, d), δ 7.57 (4H, m), δ 3.44 (4H, t), δ 2.06 (4H,m), δ 1.64 (4H, m), δ 1.27 (4H, m), δ 1.15 (4H, m),δ 0.80 (4H, m)
19F-NMR (400 MHz, CDCl
3) δ-144.1
GPC (CHCl
3): Mw=178000, Mw/Mn=5.91
【0098】
【0099】
<ステップ(1-iii):ポリマーI-TMAの合成>
ポリマーI-Cl(200mg)をクロロベンゼン(20mL)に溶解させた。なお、不溶性成分がある場合は、あらかじめ濾過して除いておいた。得られた溶液に、25質量%トリメチルアミンメタノール溶液(2mL)を加え、100℃にて3時間撹拌した。その後、ジメチルスルホキシド(10mL)を加え、さらに3時間撹拌した。エバポレーターにて反応液中の大部分のクロロベンゼンを除去した後、ジメチルスルホキシド(20mL)及び25質量%トリメチルアミンメタノール溶液(3mL)を加え、100℃にて2時間撹拌し、反応を完結させた。得られた反応液中のジメチルスルホキシドを、70℃にて、エバポレーターで除去し、乾固させた。乾固した残渣に水を加え、濾過し、得られた固形分に水を加え、80℃にて撹拌した。その後、室温(25℃)に冷却し、濾過を行い、得られた固形分を真空乾燥させることで、目的のポリマーPFOTFPh-C6(203mg)を得た。
ポリマーPFOTFPh-C6のNMRスペクトル
1H-NMR (400 MHz, CD3OD ): δ 8.07 (2H, d), δ 7.67 (4H, m), δ 3.25 (4H, br), δ 3.08 (9H, s), δ 2.21 (4H, br), δ 1.65 (4H, br), δ 1.23 (8H, br), δ 0.79 (4H, br)
19F-NMR (400 MHz, CD3OD): δ -146.1
【0100】
【0101】
(合成例2)
前記合成例1のステップ(1-i)において、1,6-ジクロロヘキサンの代わりに、1,8-ジクロロオクタン200mmolを用いた以外は、実施例1と同様にして、目的のポリマーPFOTFPh-C8を得た。
ポリマーPFOTFPh-C8のNMRスペクトル
1H-NMR (CD3OD, 400MHz): δ 8.06 (2H, d), δ 7.67 (4H, m), δ 3.29 (4H, t), δ 3.19 (18H, s), δ 2.18 (4H, br), δ 1.71 (4H, m), δ 1.27 (8H, m), δ 1.16 (4H, m), δ 0.74 (4H, br)
19F-NMR (CDCl3, 400MHz): δ-146.1
【0102】
【0103】
(合成例3)
前記合成例1のステップ(1-i)において、1,6-ジクロロヘキサンの代わりに、1,10-ジクロロデカン200mmolを用いた以外は、合成例1と同様にして、目的のポリマーPFOTFPh-C10を得た。
ポリマーPFOTFPh-C8のNMRスペクトル
1H-NMR (400MHz, CD3OD): δ 8.05 (2H, m), δ 7.67 (4H, m), δ 3.29 (4H, t), δ 3.11 (18H, t), δ 2.16 (4H, m), δ 1.74 (4H, m), δ 1.32-1.14 (24H, m), δ 0.72 (4H, m) 19F-NMR (CD3OD, 400MHz): δ-146.1
【0104】
【0105】
合成例1~3で得られた、PFOTFPh-Cx(xは6、8又は10)の重量平均分子量、及びイオン交換基容量(IEC)を下表1に示す。
【0106】
【0107】
<キャスト膜の作製>
90mgのPFOTFPh-Cxポリマーを4mLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。得られたポリマー溶液をペトリディッシュ(φ7mm)に入れ、65℃のホットプレート上で溶媒を揮発させた。その後、60℃、真空乾燥器中で1時間乾燥させ、PFOTFPh-Cxのキャスト膜を得た。各キャスト膜の膜厚を表2に示す。
【0108】
【0109】
<固体アルカリ水電解用膜電極接合体(MEA)の作製>
電極触媒とPFOTFPh-Cxポリマーをアルコール/水溶媒中に混合・分散させた触媒スラリーを調製した。電極触媒は、カソードに市販Pt/C(Pt=46.5wt%、TEC10E50E、田中貴金属工業製)を、アノードに市販IrO
2(Alfa Aesar製)を用いた。触媒スラリーの組成は表3、4に示す。PFOTFPh-Cxポリマー(アイオノマー)量は、触媒層(Pt/CまたはIrO
2 + アイオノマー)の25wt%になるように調整した。また、アイオノマーはキャスト膜と同じPFOTFPh-Cxポリマーを用いた(PFOTFPh-C6キャスト膜の場合、アイオノマーにPFOTFPh-C6を使用)。Pt/C触媒スラリーの分散はボールミル(150rpm、1時間)を用い、IrO
2触媒スラリーの分散は超音波処理(1時間)を行った。分散処理後の触媒スラリーを、パルススプレー法により、PFOTFPh-Cxキャスト膜上に塗布し触媒層を形成し実施例1~3のMEAを得た。得られたMEAの構成を
図3に示す。
【0110】
【0111】
【0112】
作製した触媒層の構成を表5に示す。アノード触媒層のIrO2導入量は1.2mg・cm
-2、カソードのPt導入量は約0.3mg・cm
-2とした。得られた触媒コート膜を拡散層で挟み、膜電極接合体(MEA、MEAの模式図は
図2参照)とし、単セル(JARI標準セル、電極面積 5cm
2、サーペンタインフロー流路)にセットした。アノード拡散層はNi form(厚み200μm)、カソード拡散層はカーボンペーパー(厚み190μm、29AA、SGL製)を使用した。
【0113】
【0114】
<固体アルカリ水電解セルの性能および安定性評価>
(1)1M KOH水溶液をアノードに供給した水電解試験
セル温度80℃、アノード側に1M KOH水溶液(流量 5mL・min
-1)を供給し、固体アルカリ水電解セルの性能評価を行った。セル評価には、充放電装置(HJ1010SD8、北斗電工製)を用いた。PFOTFPh-C6,PFOTFPh-C8,PFOTFPh-C10を電解質膜および触媒層アイオノマーに用いたMEAの固体アルカリ水電解性能を
図4(電流電圧曲線)および表6に示す。
PFOTFPh-Cxを用いた実施例1~3のMEAはいずれも高い水電解性能を示した。IECの高いPFOTFPh-C6,PFOTFPh-C8を用いたMEAは、PFOTFPh-C10のMEAよりも僅かに高い性能を示した。続いて、1.5Vにおけるセル抵抗を電気化学インピーダンス測定(インピーダンスアナライザー Solartron 1260, ポテンショ/ガルバノスタットSorlartron 1287, Solartron Analytical製)から評価した。表6に示すように、PFOTFPh-C6, PFOTFPh-C8を用いたMEAのセル抵抗は、酸型PEFC(ナフィオン膜+Pt/C触媒層のMEAのセル抵抗 50-100mΩ・cm
2)と同程度の低い値を示した。PFOTFPh-C10のMEAは、PFOTFPh-C6,PFOTFPh-C8に比べ、僅かに高い値であった。
【0115】
【0116】
前記非特許文献1~11に開示されたアニオン伝導膜を用いたMEAの構成を表7に示す(この順番に比較例1~11とする)。また、当該比較例1~11の固体アルカリ水電解性能を表7及び
図5に示す。
図5から、PFOTFPh-Cxポリマーを用いたMEAは、比較例1~11のMEAと比べても、高い水電解性能であることが確認された。
【0117】
【0118】
続いて、固体アルカリ水電解運転に対するMEAの安定性を評価した。セル温度80℃、アノード側に1M KOH水溶液(流量 5mL・min
-1)を供給し、0.2Acm
-2の一定電流密度で水電解運転を行い、電圧変化をモニターした。ここでは高い水電解性能を示したPFOTFPh-C8のMEAに関して評価を行った。結果を
図6に示す。
図6から分かるように、100時間運転を行っても電圧はほぼ変化しなかった。このことから、高温(80℃)アルカリ環境で動作する固体アルカリ水電解運転に対してPFOTFPh-Cxを用いたMEAは高い安定性を有することが示された。
【0119】
以上の結果から、PFOTFPh-Cxを用いた実施例1~3のMEAは、80℃高温での固体アルカリ水電解運転に対して安定で、且つ優れた水電解性能を示すことが実証された。
【0120】
なお、比較例のアニオン伝導膜に用いられているポリマーは以下のとおりである。
・比較例1、5、6及び8:Tokuyama A201(市販品)
・比較例11:Fumasep FAA-3-50(市販品)
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【化30】
Fumion FAA3 ionomerは市販品である。
【0125】
【0126】
(2)水をアノードに供給した水電解試験
ここでは、アノード側に純水を供給し、固体アルカリ水電解セルの性能評価を行った。アノード側に水を供給する以外は、上記の1M KOH水溶液を供給した試験と同様の条件で実験を行った。また、前記非特許文献11~14に開示されたアニオン伝導膜(非特許文献14は3種)を用いたMEA及びその水電解性能を表9に示す(この順番に比較例11(2)、12、13、14(1)~(3)とする)。
PFOTFPh-Cxを用いたMEAに関して、セル温度80℃、アノード側に水(流量5mL・min
-1)を供給し、固体アルカリ水電解試験を行った結果を
図7と表8に示す。水を供給した場合、PFOTFPh-CxのMEAは、1M KOH水溶液供給と比べて、少し性能が下がるものの、未だに高い水電解性能を示した。特に、より高いOH
-伝導性を有するPFOTFPh-C6,-C8を用いたMEAは、PFOTFPh-C10のMEAよりも高い性能を示した。さらに、水を供給し固体アルカリ水電解試験を行った比較例11(2)、12、13、14(1)~14(3)の結果(
図8)から、実施例1~3のMEAは優れた水電解性能であることが確認された。また、表8に示すセル抵抗値は、1M KOH供給の2倍程度で十分低い値である。このことから、高いOH
-伝導性を有するPFOTFPh-Cxを用いることで、KOHを供給しなくてもMEA内のOH
-伝導が確保され、高い水電解性能を発現することが示された。
【0127】
【0128】
以上の結果から、PFOTFPh-Cxを用いたMEAは、固体アルカリ水電解運転において、80℃の高温でも安定に動作し、アルカリ供給、水供給の両者において、先行研究と比べて、優れた水電解性能であることを実証した。
【0129】
【0130】
なお、比較例のアニオン伝導膜に用いられているポリマーは以下のとおりである。
・比較例11:Fumasep FAA-3-50(市販品)
・比較例12:Tokuyama A201(市販品)
【0131】
【0132】
【0133】
(水を供給した水電解試験におけるMEAの安定性評価)
セル温度80℃、アノード側に水(流量 5mLmin
-1)を供給し、0.2Acm
-2の一定電流密度で固体アルカリ水電解運転を行い、MEAの安定性を評価した。ここではPFOTFPh-C10を用いたMEAに関して評価を行った。結果を
図9に示す。
図9から分かるように、100時間運転を行っても電圧は増加しなかった。このことから、水を供給した場合においても、PFOTFPh-Cxを用いたMEAは高い安定性を有することが示された。
【符号の説明】
【0134】
1:水電解装置、5:アニオン伝導膜、6:セル、7:電源、8:膜電極接合体、10:陽極(アノード電極)、11:アノード触媒層、12:第1の拡散層、13:セパレータ、14:ガス流路、20:陰極(カソード電極)、21:カソード触媒層、22:第2の拡散層、23:セパレータ、24:ガス流路