(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】複合材成形装置及び複合材成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/20 20060101AFI20240805BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20240805BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240805BHJP
H05B 6/14 20060101ALI20240805BHJP
H05B 6/36 20060101ALN20240805BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240805BHJP
【FI】
B29C70/20
B29C70/54
H05B6/10 331
H05B6/14
H05B6/36 Z
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2020152996
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 信幸
(72)【発明者】
【氏名】加茂 宗太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 清嘉
(72)【発明者】
【氏名】石川 直元
(72)【発明者】
【氏名】村岡 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 征弘
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-121441(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0248093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
H05B 6/10
H05B 6/14
H05B 6/36
B29K 105/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と導電性を有する強化繊維とを含む複合材を成形する複合材成形装置であって、
前記強化繊維の繊維方向の両端部に架け渡されるように、前記複合材の表面上に配置される導電性を有する導通治具と、
前記導通治具に電流を発生させる電流発生部と、を備え、
前記複合材の表面上に配置された前記導通治具と前記強化繊維とは、前記複合材の表面に対して交差するように、前記電流が流れる閉ループを形成する複合材成形装置。
【請求項2】
前記電流発生部は、磁場発生装置を含み、
前記磁場発生装置は、前記閉ループにより形成される内部空間に対して磁場を印加することで、前記導通治具に誘導電流を発生させる請求項1に記載の複合材成形装置。
【請求項3】
前記磁場発生装置は、磁場コイルと、前記磁場コイルに電流を印加する電流印加部とを有する請求項2に記載の複合材成形装置。
【請求項4】
前記磁場を印加する印加方向に直交する面内において、前記閉ループにより形成される前記内部空間の断面積は、前記磁場コイルの断面積よりも大きい請求項3に記載の複合材成形装置。
【請求項5】
前記磁場発生装置は、一次コイルと、前記一次コイルと二次コイルとして機能する前記閉ループとを磁気的に接続する磁性体と、前記一次コイルに電流を印加する電流印加部とを有する請求項2に記載の複合材成形装置。
【請求項6】
前記電流発生部は、前記導通治具に電流を印加する電流印加装置である請求項1に記載の複合材成形装置。
【請求項7】
前記導通治具は、前記複合材の表面上に配置された状態において、前記強化繊維と接触する請求項1から6のいずれか1項に記載の複合材成形装置。
【請求項8】
前記導通治具は、
前記強化繊維の繊維方向の両端部に対向して設けられる一対のフランジと、
一対の前記フランジに架け渡される治具本体と、を有し、
一対の前記フランジと前記強化繊維の繊維方向の両端部とは、前記導通治具が前記複合材の表面上に配置された状態において、前記樹脂を介して非接触となっている請求項1から6のいずれか1項に記載の複合材成形装置。
【請求項9】
前記複合材は、前記強化繊維の繊維方向を一方向に引き揃えた一方向材である請求項1から8のいずれか1項に記載の複合材成形装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の複合材成形装置を用いて、前記複合材を成形する複合材成形方法であって、
前記複合材の表面上に前記導通治具を配置して、前記閉ループを形成するステップと、
前記電流発生部により前記導通治具に電流を発生させて、前記閉ループを構成する前記強化繊維を加熱するステップと、を実行する複合材成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材成形装置及び複合材成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複合材成形装置として、被加熱物に高周波を印加して加熱する高周波加熱装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この高周波加熱装置では、被加熱物として、炭素繊維複合材料を加熱している。炭素繊維複合材料は、絶縁性樹脂マトリクス中に導電性の強化材を分散させており、高周波加熱装置は、高周波を印加して強化材を加熱させることで、被加熱物を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、高周波加熱を行う場合、絶縁性樹脂マトリクス中に導電性の強化材を分散させる必要がある。このため、強化材を含まない複合材に対しては、適切に加熱を行うことが困難である。ここで、複合材に含まれる炭素繊維は導電性を有することから、炭素繊維を誘導加熱して、複合材を加熱することが考えられる。複合材を誘導加熱より加熱する場合、複合材において導電経路を形成する必要があることから、複合材としては、炭素繊維の繊維方向を複数の方向に重ねたものが適用される。一方で、複合材として、例えば、炭素繊維の繊維方向を一方向に引き揃えた一方向(UD:UniDerection)材がある。UD材を用いる場合、炭素繊維の繊維方向が一方向に引き揃えられていることから、誘導加熱を行うための導電経路を形成することができず、誘導加熱を行うことが困難である。
【0005】
そこで、本発明は、複合材を適切に加熱することができる複合材成形装置及び複合材成形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の複合材成形装置は、樹脂と導電性を有する強化繊維とを含む複合材を成形する複合材成形装置であって、前記強化繊維の繊維方向の両端部に架け渡されるように、前記複合材の表面上に配置される導電性を有する導通治具と、前記導通治具に電流を発生させる電流発生部と、を備え、前記複合材の表面上に配置された前記導通治具と前記強化繊維とは、前記複合材の表面に対して交差するように、前記電流が流れる閉ループを形成する。
【0007】
本発明の複合材成形方法は、上記の複合材成形装置を用いて、前記複合材を成形する複合材成形方法であって、前記複合材の表面上に前記導通治具を配置して、前記閉ループを形成するステップと、前記電流発生部により前記導通治具に電流を発生させて、前記閉ループを構成する前記強化繊維を加熱するステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複合材がUD材であっても、複合材を適切に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る複合材成形装置を磁場の印加方向から見たときの図である。
【
図3】
図3は、実施形態2に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る複合材成形装置を磁場の印加方向から見たときの図である。
【
図5】
図5は、実施形態3に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【
図6】
図6は、実施形態4に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【
図7】
図7は、実施形態5に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1に係る複合材成形装置10は、樹脂を含浸させた強化繊維を加熱し硬化させて複合材20を成形する装置である。複合材成形装置10の説明に先立ち、複合材20について説明する。
図1は、実施形態1に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【0012】
複合材成形装置10の加熱対象となる複合材20は、硬化前の樹脂と、導電性を有する強化繊維とを含むものであり、例えば、樹脂と炭素繊維と含むプリプレグである。この複合材20は、炭素繊維の繊維方向が一方向(
図1のX方向)に引き揃えられた一方向材(UD材ともいう)であり、シート状に形成されている。複合材20は、一層ずつ硬化させながら積層されることで積層体となる。
図1では、複合材20として、XY面内において平面となるシート形状を例示している。なお、複合材20は、シート形状に限定されず、曲線を有する形状であったり、凹凸を有する形状であったりしてもよく、何れの形状であってもよい。
【0013】
強化繊維は、上記のように炭素繊維を適用したが、特に限定されず、導電性を有するものであれば、何れの強化繊維、例えば、金属繊維等であってもよい。樹脂は、強化繊維に含浸されている。樹脂としては、加熱することで硬化する熱硬化性樹脂が適用される。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリエステル樹脂及びビニルエステル樹脂が例示される。なお、樹脂は、熱硬化性樹脂に限定されず、熱可塑性樹脂であってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、及びポリフェニレンサルファイド(PPS)等が例示される。ただし、樹脂14は、これらに限定されず、その他の樹脂でもよい。
【0014】
次に、
図1を参照して、複合材成形装置10について説明する。複合材成形装置10は、導通治具15と、電流発生部16と、を備える。
【0015】
導通治具15は、導電性を有しており、硬化前の複合材20の表面上に配置される。導通治具15は、強化繊維の繊維方向(X方向)に延在しており、強化繊維の繊維方向の両端部に架け渡される形状となっている。具体的に、導通治具15は、複合材20の表面に対向して設けられる平板部15aと、平板部15aのX方向の両端部に設けられる一対の側板部15bと、を有している。導通治具15は、平板部15aと一対の側板部15bとにより凹形状に形成されている。平板部15aは、XY面内において平面となる平板形状となっており、X方向が長手方向となっている。一対の側板部15bは、平板部15aのX方向の両端部からZY面内において平面となる平板形状となっている。平板部15aと各側板部15bとの接続部分は屈曲部となっており、屈曲部は、例えば、90°となっている。導通治具15は、例えば、金属製の平板の両端部を屈曲させることで、平板部15aと一対の側板部15bとを形成する。
【0016】
導通治具15は、複合材20に対して、一対の側板部15bが、強化繊維の繊維方向の両端部にそれぞれ位置するように配置される。複合材20の表面上に配置された導通治具15と強化繊維とは、複合材20の表面に交差する面において、電流が流れる閉ループを形成する。複合材20の表面に交差する面は、
図1において、例えば、XZ面内となっており、複合材20の表面に対して直交する面となっている。つまり、閉ループは、一対の側板部15bの間の強化繊維と、一対の側板部15bと、平板部15aとにより形成されている。
【0017】
なお、実施形態1では、導通治具15を凹字状に形成したが、強化繊維の繊維方向の両端部に架け渡される形状であれば、何れの形状であってもよく、例えば、アーチ等の湾曲形状であってもよい。
【0018】
電流発生部16は、磁場発生装置である。磁場発生装置は、閉ループにより形成される内部空間に対して磁場を印加することで、導通治具15に誘導電流を発生させる。電流発生部16は、磁場コイル17と、磁場コイル17に電流を印加する電流印加部18とを有する。
【0019】
磁場コイル17は、Y方向を軸として、つまり、複合材20の表面(XY面)内において繊維方向(X方向)に直交する方向を軸として、導線が巻かれたものである。磁場コイル17は、電流が印加されることで、Y方向に磁場を印加する。磁場コイル17は、閉ループにより形成される内部空間に磁場を印加することで、閉ループを形成する導通治具15と強化繊維とに誘導電流を生じさせる。
【0020】
また、
図2に示すように、磁場を印加する印加方向に直交する面内において、閉ループにより形成される内部空間の断面積は、磁場コイル17の断面積よりも大きくなっている。このため、磁場コイル17から発生する磁場は、閉ループの内部空間から漏れ出ることなく、閉ループの内部空間内に印加される。さらに、磁場コイル17は、Y方向において、導通治具15に近接して設けられる。つまり、磁場コイル17は、Y方向において、閉ループにより形成される内部空間に挿入されておらず、内部空間の外側に配置されている。
【0021】
電流印加部18は、磁場コイル17に電気的に接続されており、磁場コイル17に対して、高周波の電流を印加する。
【0022】
以上のような複合材成形装置10は、電流印加部18から磁場コイル17に高周波電流が印加されることで、磁場コイル17において高周波磁場が誘起され、磁場コイル17から閉ループへ向けて高周波磁場が印加される。閉ループに高周波磁場が印加されると、閉ループにおいて高周波の誘導電流が生じる。そして、発生した高周波の誘導電流が強化繊維に流れることで、強化繊維が誘導加熱され、複合材20が加熱される。複合材20は、加熱されることで硬化する。
【0023】
次に、複合材成形装置10を用いた複合材成形方法について説明する。先ず、硬化前の複合材20の表面上に導通治具15を配置して、閉ループを形成するステップを実行する。このステップでは、導通治具15の一対の側板部15bが、複合材20の強化繊維に接触する(導通させる)ように配置する。なお、強化繊維が樹脂によって被膜されている場合、強化繊維を露出させる処理を事前に行ってもよい。
【0024】
続いて、閉ループを形成するステップの実行後、電流発生部16により導通治具15に高周波電流を印加して、閉ループを構成する強化繊維を加熱するステップを実行する。このステップを実行することで、誘導加熱された強化繊維により、複合材20に含まれる樹脂を熱硬化させ、複合材20を成形する。
【0025】
以上のように、実施形態1によれば、導通治具15を複合材20の表面上に配置することで、複合材20が一方向材である場合であっても、表面に交差する面において、閉ループを形成することができる。そして、この閉ループに電流を印加することで、複合材20を好適に加熱することができる。
【0026】
また、実施形態1によれば、電流発生部16を磁場発生装置とすることで、導通治具15に高周波の誘導電流を発生させることができる。
【0027】
また、実施形態1によれば、電流発生部16を、磁場コイル17と電流印加部18とで構成することができるため、簡易な構成とすることができる。
【0028】
また、実施形態1によれば、磁場の印加方向において、閉ループの内部空間の断面積を、磁場コイル17の断面積よりも大きくできるため、閉ループの内部空間から磁場が漏れ出ることを抑制でき、閉ループにおいて誘導電流を好適に発生させることができる。
【0029】
また、実施形態1によれば、導通治具15を複合材20の表面上に配置することで、複合材20の強化繊維に導通治具15を簡単に接触させることができるため、導通治具15と強化繊維との導通を容易にとることができる。
【0030】
[実施形態2]
次に、
図3及び
図4を参照して、実施形態2に係る複合材成形装置30について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図3は、実施形態2に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
図4は、実施形態2に係る複合材成形装置を磁場の印加方向から見たときの図である。
【0031】
実施形態2の複合材成形装置30は、実施形態1の導通治具15に、一対のフランジ15cを設けたものとなっている。
図3及び
図4に示すように、一対のフランジ15cは、一対の側板部15bの複合材20側の端部にそれぞれ設けられている。各フランジ15cは、各側板部15bに対して外側に突出するように設けられている。一対のフランジ15cは、平板形状となっており、平板部15aと平行に設けられている。つまり、一対のフランジ15cは、XY面内に設けられ、複合材20の表面と対向するように設けられる。
【0032】
次に、実施形態2の複合材成形装置30を用いた複合材成形方法について説明する。先ず、硬化前の複合材20の表面上に導通治具15を配置して、閉ループを形成するステップを実行する。このステップでは、導通治具15の一対のフランジ15cが、複合材20の表面と対向するように配置される。このとき、一対のフランジ15cは、強化繊維に対して非接触となるように配置する。つまり、樹脂が絶縁材として機能することで、各フランジ15cと強化繊維とが非接触状態となり、これによって、各フランジ15cと強化繊維とがコンデンサの両極として機能する。よって、導通治具15と一対のフランジ15cとは静電結合することで、閉ループを形成する。なお、閉ループにおいて電流を流れ易くする場合には、静電容量を大きくすればよいため、各フランジ15cの複合材20と対向する面積を大きくする。また、強化繊維が露出して導通治具15と接触する場合、強化繊維を樹脂で被覆する処理を事前に行ってもよい。
【0033】
続いて、閉ループを形成するステップの実行後、電流発生部16により導通治具15に高周波電流を印加して、閉ループを構成する強化繊維を加熱するステップを実行する。このステップを実行することで、誘導加熱された強化繊維により、複合材20に含まれる樹脂を熱硬化させ、複合材20を成形する。
【0034】
以上のように、実施形態2によれば、導通治具15を複合材20の表面上に配置することで、複合材20が一方向材である場合であっても、表面に交差する面において、閉ループを形成することができる。そして、この閉ループに電流を印加することで、複合材20を好適に加熱することができる。
【0035】
また、実施形態2によれば、強化繊維には樹脂が含浸されているため、強化繊維を露出させる必要がなく、導通治具15を複合材20の表面上に配置するだけで、容易に閉ループを形成することができる。
【0036】
[実施形態3]
次に、
図5を参照して、実施形態3に係る複合材成形装置40について説明する。なお、実施形態3でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図5は、実施形態3に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【0037】
実施形態3の複合材成形装置40は、実施形態1の電流発生部16に代えて、相互誘導方式の電流発生部41となっている。具体的に、電流発生部41は、一次コイル42と、磁性体43と、電流印加部44とを有する。
【0038】
磁性体43は、導通治具15の平板部15aを取り囲む方形枠状に形成されており、一辺の部位が、導通治具15と強化繊維とにより形成される閉ループの内部空間内に配置される。閉ループの内部空間内に配置される一辺の部位は、Y方向に伸びて設けられている。磁性体43は、一次コイル42から生じる磁場を伝達している。
【0039】
一次コイル42は、閉ループの内部空間内に配置される一辺の部位と対向する一辺の部位に導線が巻かれたものである。一次コイル42が設けられた一辺の部位は、Y方向に伸びて設けられている。一次コイル42は、電流が印加されることで、Y方向に磁場を印加する。一次コイル42により印加した磁場は、磁性体43により、閉ループの内部空間に伝達される。磁性体43は、閉ループにより形成される内部空間に磁場を印加することで、閉ループを形成する導通治具15と強化繊維とに誘導電流を生じさせる。つまり、閉ループは、二次コイルとして機能する。
【0040】
電流印加部44は、一次コイル42に電気的に接続されており、一次コイル42に対して、高周波の電流を印加する。
【0041】
以上のような複合材成形装置10は、電流印加部44から一次コイル42に高周波電流が印加されることで、一次コイル42において高周波磁場が誘起され、磁性体43を介して一次コイル42から閉ループへ向けて高周波磁場が印加される。閉ループに高周波磁場が印加されると、閉ループにおいて高周波の誘導電流が生じる。そして、発生した高周波の誘導電流が強化繊維に流れることで、強化繊維が誘導加熱され、複合材20が加熱される。複合材20は、加熱されることで硬化する。
【0042】
以上のように、実施形態3によれば、磁性体43を介して閉ループに高周波磁場を印加することができるため、磁場が漏れることなく、閉ループにおける誘導電流への変換効率のロスを小さくすることができる。また、電流印加部44側のインピーダンスと、閉ループ側のインピーダンスとの整合をとり易い構成とすることができるため、電流発生部41の装置構成を簡易なものとすることができる。
【0043】
[実施形態4]
次に、
図6を参照して、実施形態4に係る複合材成形装置50について説明する。なお、実施形態4では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から3と異なる部分について説明し、実施形態1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図6は、実施形態4に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【0044】
実施形態4の複合材成形装置50は、
図6に示すように、実施形態3の導通治具15に、一対のフランジ15cを設けたものとなっている。なお、一対のフランジ15cは、実施形態2の一対のフランジ15cと同様の構成であるため、説明を省略する。
【0045】
実施形態4によれば、実施形態2と同様に、導通治具15を複合材20の表面上に配置することで、複合材20が一方向材である場合であっても、表面に交差する面において、閉ループを形成することができる。そして、この閉ループに電流を印加することで、複合材20を好適に加熱することができる。
【0046】
また、実施形態4によれば、強化繊維には樹脂が含浸されているため、強化繊維を露出させる必要がなく、導通治具15を複合材20の表面上に配置するだけで、容易に閉ループを形成することができる。
【0047】
[実施形態5]
次に、
図7を参照して、実施形態5に係る複合材成形装置60について説明する。なお、実施形態5では、重複した記載を避けるべく、実施形態1から4と異なる部分について説明し、実施形態1から4と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図7は、実施形態5に係る複合材成形装置を模式的に表した斜視図である。
【0048】
実施形態5の複合材成形装置60は、電流発生部61が、実施形態2の電流発生部16に代えて、導通治具15に対して直接的に電流を印加する電流印加装置となっている。実施形態5の複合材成形装置60は、導通治具15として、一対のフランジ15cを有する導通治具15が適用されている。電流発生部61は、導通治具15に電気的に接続されており、導通治具15に対して、高周波の電流を印加する。電流発生部61は、例えば、平板部15aのY方向の中央に設けられている。
【0049】
実施形態5によれば、導通治具15に直接電流を印加することができるため、装置構成を簡易なものとすることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 複合材成形装置
15 導通治具
15a 平板部
15b 側板部
15c フランジ
16 電流発生部
17 磁場コイル
18 電流印加部
20 複合材
30 複合材成形装置(実施形態2)
40 複合材成形装置(実施形態3)
41 電流発生部
42 一次コイル
43 磁性体
44 電流印加部
50 複合材成形装置(実施形態4)
60 複合材成形装置(実施形態5)
61 電流発生部