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  • 特許-通気構造体を用いた防水工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】通気構造体を用いた防水工法
(51)【国際特許分類】
   E04D 11/00 20060101AFI20240805BHJP
   E04D 5/06 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E04D11/00 M
E04D5/06 A
E04D5/06 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020216212
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101862
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303059576
【氏名又は名称】有限会社エムテー工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】生村 公徳
(72)【発明者】
【氏名】末岐 和史
(72)【発明者】
【氏名】谷本 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 邦憲
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-174008(JP,A)
【文献】特開2015-148104(JP,A)
【文献】国際公開第2018/146760(WO,A1)
【文献】特開昭51-111724(JP,A)
【文献】特開2019-078085(JP,A)
【文献】特開平06-226923(JP,A)
【文献】特開2001-182237(JP,A)
【文献】特開2019-044530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 11/00
E04D 5/06
E04D 5/12
E04D 5/10
E04D 13/16
E04B 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水シートの屋根側面に配置される通気構造体と、防水シートと、を用いた防水工法であって、
前記通気構造体は、ゴム層と、
織布と、を有しており、
前記ゴム層は、前記織布よりも防水シート側に配置されており、
屋根側に屋根側保護シートを有し、
防水シート側に防水シート側保護シートを有しており、
前記屋根側保護シートの剛性は、前記防水シート側保護シートの剛性よりも高く、
前記通気構造体の少なくとも一部の前記屋根側保護シートを剥離する工程と、
前記通気構造体を屋根に配置する工程と、
前記通気構造体の上に前記防水シートを配置する工程と、
前記通気構造体の前記防水シート側保護シートを剥離する工程と、を順次行うことを特徴とする防水工法
【請求項2】
前記織布を構成する糸は、第1の糸と第2の糸を含んでおり、
前記第1の糸は、前記第2の糸よりも太い請求項1に記載の防水工法
【請求項3】
前記織布を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、複数の糸が平行に引き揃えられている引き揃え糸を含んでいる請求項1または2に記載の防水工法
【請求項4】
前記織布は、複数の前記引き揃え糸と、複数の単糸とを有しており、
前記引き揃え糸と、該引き揃え糸と隣接する前記引き揃え糸との間隔は、前記単糸と、該単糸と隣接する前記単糸との間隔よりも大きい請求項3に記載の防水工法
【請求項5】
前記引き揃え糸を構成する糸の本数は、5本以上50本以下である請求項3または4に記載の防水工法
【請求項6】
前記ゴム層は、ブチルゴムを含んでいる請求項1~5のいずれか一項に記載の防水工法
【請求項7】
前記屋根側保護シートを構成する材料は、紙であり、
前記防水シート側保護シートを構成する材料は、合成樹脂フィルムである請求項1~6のいずれか一項に記載の防水工法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水シートを用いた防水工法の際に、防水シートの屋根側面に配置される通気構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋上等の防水工法として、屋根部分に防水シートを貼付して防水構造体を形成するシート防水工法、屋根部分に防水塗料を塗布して防水構造体を形成する塗膜防水工法等がある。
【0003】
中でも、シート防水工法は、塗膜防水工法等の他の防水工法と比較して、施工が簡便であるという利点を有している。シート防水工法は、建物の屋根部分にクロロプレンゴム系等の接着剤を塗布し、接着剤を乾燥させてから防水シートを屋根部分へ貼り付けることによって防水構造体を構成する(例えば、特許文献1および2参照)。また、シート防水工法は、建物の屋根部分に防水シートを配置し、固定具を用いて防水シートを固定することによって防水構造体を構成することもある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-270148号公報
【文献】特開2005-146633号公報
【文献】特開2001-241118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防水工法を施した後の建築物の屋根部分から水蒸気等の気体が発生することがある。例えば、建築物の屋上等に敷設される下地コンクリートは、夏場は約60℃、冬場は約-20℃という激しい温度変化にさらされる。そのため、温度が高くなると、コンクリートに含有される水蒸気等の気体が大量に外部へ放出される。
【0006】
特許文献1~3のような防水構造体では、屋根部分から発生した水蒸気等の気体を外部に放出することができず、防水シートに膨れが発生することや、防水シートが破断することがあるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、屋根部分から発生する水蒸気等の気体を防水シートの平面方向に通気させることができる通気構造体、および通気構造体を配置する工程を有する防水工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明の通気構造体は、防水シートの屋根側面に配置される通気構造体であって、ゴム層と、織布と、を有していることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の通気構造体において、織布を構成する糸は、第1の糸と第2の糸を含んでおり、第1の糸は、第2の糸よりも太いことが好ましい。
【0010】
本発明の通気構造体において、織布を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、複数の糸が平行に引き揃えられている引き揃え糸を含んでいることが好ましい。
【0011】
本発明の通気構造体において、織布は、複数の引き揃え糸と、複数の単糸とを有しており、引き揃え糸と、該引き揃え糸と隣接する引き揃え糸との間隔は、単糸と、該単糸と隣接する単糸との間隔よりも大きいことが好ましい。
【0012】
本発明の通気構造体において、引き揃え糸を構成する糸の本数は、5本以上50本以下であることが好ましい。
【0013】
本発明の通気構造体において、ゴム層は、ブチルゴムを含んでいることが好ましい。
【0014】
本発明の通気構造体において、屋根面側に屋根側保護シートを有し、防水シート側に防水シート側保護シートを有しており、屋根側保護シートの剛性は、防水シート側保護シートの剛性よりも高いことが好ましい。
【0015】
本発明の通気構造体において、屋根側保護シートを構成する材料は、紙であり、防水シート側保護シートを構成する材料は、合成樹脂フィルムであることが好ましい。
【0016】
前記課題を解決することができた本発明の防水工法は、本発明の通気構造体と、防水シートと、を用いた防水工法であって、通気構造体の少なくとも一部の屋根側保護シートを剥離する工程と、通気構造体を屋根に配置する工程と、通気構造体の上に防水シートを配置する工程と、通気構造体の防水シート側保護シートを剥離する工程と、を順次行うことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の通気構造体は、ゴム層と、織布と、を有していることにより、防水シートの屋根側面に通気のための空間を設けることができ、屋根部分から発生する水蒸気等の気体を防水シートの平面方向に通気させることが可能となる。また、本発明の防水工法は、通気構造体を用いることによって防水シートの屋根側面に通気空間を設けて屋根部分から発生する気体を防水シートの平面方向に通気させることができ、さらに、通気構造体の少なくとも一部の屋根側保護シートを剥離する工程と、通気構造体を屋根に配置する工程と、通気構造体の上に防水シートを配置する工程と、通気構造体の防水シート側保護シートを剥離する工程とを順次行うことにより、防水シートを意図した位置に美麗に貼付しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態における通気構造体の上面図を表す。
図2図1に示した通気構造体のII-II断面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る防水構造体に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0020】
建築物の屋上等の屋根部分へ防水シートを用いて防水構造体を形成する防水工法において、本発明の通気構造体は、防水シートの屋根側面に配置され、防水シートと屋根部分との間に通気のための空間を形成する。つまり、通気構造体を防水シートの屋根側面に配置することにより、建築物の屋根部分から放出された水蒸気等の気体を防水シートの平面方向に通気させることが可能となる。
【0021】
図1は本発明に係る通気構造体1を上から見た図である上面図を表しており、図2は通気構造体1の断面図を表している。図1および図2に示すように、本発明の実施の形態に係る通気構造体1は、ゴム層10と、織布20と、を有している。通気構造体1がゴム層10と織布20とを有していることにより、通気構造体1を屋根に配置した状態において、ゴム層10が織布20を保護し、織布20が気体の流通路となって、防水シートと屋根部分との間において屋根部分から放出された気体を防水シートの平面方向に通過させることができる。図示していないが、防水構造体に脱気筒を設けることにより、屋根部分から放出された気体を防水シートの平面方向に通過させ、脱気筒を介して外部に放出させることが可能である。そのため、屋根部分から水蒸気等の気体が放出されても防水シートに膨れや破断が発生しにくくなる。なお、図2において、図面の上側が防水シートの配置される側であり、図面の下側が屋根側である。
【0022】
防水シートは、建築物の屋根部分に防水性を付与するために用いられるシート状物である。防水シートを構成する材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)等の合成ゴム、塩化ビニル等の合成樹脂等が挙げられる。
【0023】
図1および図2に示すように、ゴム層10は、織布20よりも屋根側に配置されていてもよいが、防水シート側に配置されていることが好ましい。ゴム層10が織布20よりも防水シート側に配置されていることにより、通気構造体1が防水シートに沿いやすく、通気構造体1と防水シートとが接触する面積を増やすことができ、通気構造体1と防水シートとを十分に固定することができる。
【0024】
ゴム層10を構成する材料としては、例えば、ポリイソブチレン系ゴム、クロロプレン系ゴム、フッ素系ゴム等が挙げられる。中でも、ゴム層10は、ブチルゴム(イソブチレン・イソプレン共重合体)を含んでいることが好ましい。また、ゴム層10を構成する材料は、ブチルゴムであることがより好ましい。ゴム層10がブチルゴムを含んでいることにより、ゴム層10に適度な柔軟性を付与し、防水シートの屋根側面に通気構造体1を配置する際に通気構造体1が建物の屋根部分の表面に沿いやすくなって配置が行いやすくなる。
【0025】
通気構造体1が有しているゴム層10は、1つであってもよく、通気構造体1の厚み方向に複数であってもよいが、通気構造体1の幅方向と長さ方向の少なくとも一方に複数あることが好ましい。つまり、ゴム層10は、通気構造体1の幅方向と長さ方向の少なくとも一方に複数配置されていることが好ましい。ゴム層10が通気構造体1の幅方向と長さ方向の少なくとも一方に複数あることにより、通気構造体1が幅方向や長さ方向に屈曲しやすくなって、通気構造体1を屋根に配置しやすく、かつ屋根に通気構造体1が密着しやすくなる。
【0026】
織布20の種類としては、例えば、平織、綾織、朱子織等の織物が挙げられる。中でも、織布20は、平織であることが好ましい。織布20が平織であることにより、織布20が丈夫なものとなり、例えば、通気構造体1をロールに巻いた状態としておき、ロール状の通気構造体1を引っ張りながら屋根部分に通気構造体1を配置した場合でも織布20の過度な伸張や破損が起こりにくく、通気構造体1を配置する工程の作業性を向上させることができる。
【0027】
織布20を構成する繊維は、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ナイロンなどの合成繊維、綿、麻等の天然繊維、ガラス繊維等が挙げられる。中でも、織布20を構成する繊維は、合成繊維であることが好ましく、ポリエステルであることがより好ましい。織布20を構成する繊維が合成繊維であることにより、織布20の強度や耐久性を高めることが可能となる。
【0028】
図1および図2に示すように、織布20を構成する糸は、第1の糸21と第2の糸22を含んでおり、第1の糸21は、第2の糸22よりも太いことが好ましい。織布20が第2の糸22と、第2の糸22よりも太い第1の糸21を含んでいることにより、太い糸である第1の糸21が配置されている部分の通気性を高めることができ、通気構造体1の通気性能を向上させることができる。
【0029】
第1の糸21の太さは、第2の糸22の太さよりも太いことが好ましく、第1の糸21と第2の糸22の太さを番手で表した場合、第1の糸21の番手は、第2の糸22の番手よりも小さいことが好ましい。第1の糸21および第2の糸22の具体的な太さについては、次の通りである。第1の糸21の番手は、3番手以上であることが好ましく、5番手以上であることがより好ましく、8番手以上であることがさらに好ましい。第2の糸22の番手は、40番手以上であることが好ましく、45番手以上であることがより好ましく、50番手以上であることがさらに好ましい。第1の糸21および第2の糸22の番手の下限値を上記の範囲に設定することにより、織布20が有している第1の糸21および第2の糸22が過度に太くなることを妨げ、通気構造体1の重量が重くなることや、通気構造体1の剛性が高まりすぎて通気構造体1をロール状にすることが困難になること等を防ぎ、通気構造体1が取り扱いやすいものとなる。また、第1の糸21の番手は、30番手以下であることが好ましく、25番手以下であることがより好ましく、20番手以下であることがさらに好ましい。第2の糸22の番手は、80番手以下であることが好ましく、75番手以下であることがより好ましく、70番手以下であることがさらに好ましい。第1の糸21および第2の糸22の番手の上限値を上記の範囲に設定することにより、織布20の強度を高めることができ、さらに織布20による通気構造体1の通気空間を十分確保することができる。
【0030】
図1および図2に示すように、織布20を構成する経糸および緯糸の少なくとも一方は、複数の糸が平行に引き揃えられている引き揃え糸40を含んでいることが好ましい。織布20が引き揃え糸40を含んでいることにより、引き揃え糸40の部分の通気性が高まり、通気構造体1の通気の性能を向上させることが可能となる。
【0031】
図1に示すように、織布20は、複数の引き揃え糸40と、複数の単糸50とを有しており、引き揃え糸40と、該引き揃え糸40と隣接する引き揃え糸40との間隔D1は、単糸50と、該単糸50と隣接する単糸50との間隔D2よりも大きいことが好ましい。織布20において、隣接する2つの引き揃え糸40の間隔D1が隣接する2つの単糸50の間隔D2よりも大きいことにより、織布20が有している引き揃え糸40の数量が適切なものとなり、通気構造体1の通気性能を確保しながら、通気構造体1の柔軟性も保つことができる。
【0032】
引き揃え糸40と該引き揃え糸40と隣接する引き揃え糸40との間隔D1は、単糸50と該単糸50と隣接する単糸50との間隔D2の10倍以上であることが好ましく、15倍以上であることが好ましく、20倍以上であることがさらに好ましい。隣接する2つの引き揃え糸40の間隔D1と隣接する2つの単糸50の間隔D2との比の下限値を上記の範囲に設定することにより、織布20における引き揃え糸40の割合を適切にし、通気構造体1を柔軟なものとして、通気構造体1を配置する工程等において作業性を向上させることができる。また、引き揃え糸40と該引き揃え糸40と隣接する引き揃え糸40との間隔D1は、単糸50と該単糸50と隣接する単糸50との間隔D2の50倍以下であることが好ましく、45倍以下であることがより好ましく、40倍以下であることがさらに好ましい。隣接する2つの引き揃え糸40の間隔D1と隣接する2つの単糸50の間隔D2との比の上限値を上記の範囲に設定することにより、引き揃え糸40を通気構造体1へ十分に設けることができ、通気構造体1の通気性能を確保することが可能となる。
【0033】
引き揃え糸40を構成する糸の太さは、単糸50の太さよりも太いことが好ましい。引き揃え糸40を構成する糸の太さが単糸50の太さよりも太いことにより、引き揃え糸40の部分の通気性を高めることができ、通気構造体1の通気の性能を向上させることができる。
【0034】
引き揃え糸40を構成する糸と単糸50の太さを番手で表した場合、引き揃え糸40を構成する糸の番手は、単糸50の番手よりも小さいことが好ましい。具体的には、引き揃え糸40を構成する糸の番手は、3番手以上であることが好ましく、5番手以上であることがより好ましく、8番手以上であることがさらに好ましい。単糸50の番手は、40番手以上であることが好ましく、45番手以上であることがより好ましく、50番手以上であることがさらに好ましい。引き揃え糸40を構成する糸の番手および単糸50の番手の下限値を上記の範囲に設定することにより、織布20を構成している引き揃え糸40や単糸50等の糸が太くなりすぎることを防止し、織布20の重量が増すことによって通気構造体1の重量が重くなることや、織布20の剛性が高まることによって通気構造体1の剛性が過度に高まり、通気構造体1をロール状にすることが困難になること等を防ぎ、通気構造体1を取り扱いやすくすることができる。また、引き揃え糸40を構成する糸の番手は、30番手以下であることが好ましく、25番手以下であることがより好ましく、20番手以下であることがさらに好ましい。単糸50の番手は、80番手以下であることが好ましく、75番手以下であることがより好ましく、70番手以下であることがさらに好ましい。引き揃え糸40を構成する糸および単糸50の番手の上限値を上記の範囲に設定することにより、織布20の強度が高まり、かつ織布20が通気性を有することによって、通気構造体1の通気性能を向上させることが可能となる。
【0035】
引き揃え糸40を構成する糸の本数は、5本以上50本以下であることが好ましい。引き揃え糸40が5本以上50本以下の糸から構成されていることにより、織布20の引き揃え糸40の部分に十分な通気空間を設けることができ、通気構造体1の通気性を高めることができる。
【0036】
引き揃え糸40を構成する糸の本数は、5本以上であることが好ましく、10本以上であることがより好ましく、15本以上であることがさらに好ましい。引き揃え糸40を構成する糸の本数の下限値を上記の範囲に設定することにより、引き揃え糸40の部分の通気性を十分なものとすることができる。また、引き揃え糸40を構成する糸の本数は、50本以下であることが好ましく、45本以下であることがより好ましく、40本以下であることがさらに好ましい。引き揃え糸40を構成する糸の本数の上限値を上記の範囲に設定することにより、織布20における引き揃え糸40の割合が適切となって、通気構造体1の柔軟性を保つことが可能となる。
【0037】
図1および図2に示すように、通気構造体1は、屋根側に屋根側保護シート31を有し、防水シート側に防水シート側保護シート32を有しており、屋根側保護シート31の剛性は、防水シート側保護シート32の剛性よりも高いことが好ましい。通気構造体1が屋根側保護シート31と防水シート側保護シート32とを有していることにより、通気構造体1の使用時まで屋根側面および防水シート側面を保護することができ、ゴム層10や織布20等を傷つきにくくすることができる。また、屋根側保護シート31の剛性が防水シート側保護シート32の剛性よりも高いことにより、通気構造体1の配置の際に、屋根部分に接するために防水シート側面よりも傷つきやすい屋根側面を強固に保護することができる。さらに、通気構造体1の一方側の面に他方側の面よりも剛性の高い保護シートを配置していることによって通気構造体1全体の剛性が適度に高まり、通気構造体1を配置する際等に通気構造体1が取り扱いやすく、作業性を高めることができる。
【0038】
屋根側保護シート31の剛性を防水シート側保護シート32の剛性よりも高くするには、例えば、屋根側保護シート31を構成する材料を、防水シート側保護シート32を構成する材料よりも高剛性のものとする、屋根側保護シート31の厚みを防水シート側保護シート32の厚みよりも厚くする、防水シート側保護シート32のみ穴やスリットを有する構成とすること等が挙げられる。
【0039】
中でも、屋根側保護シート31を構成する材料は、紙であり、防水シート側保護シート32を構成する材料は、合成樹脂フィルムであることが好ましい。屋根側保護シート31を構成する材料が紙であり、防水シート側保護シート32を構成する材料が合成樹脂フィルムであることにより、屋根側保護シート31の剛性を防水シート側保護シート32の剛性よりも容易に高くすることができ、また、通気構造体1全体においても適度な剛性とすることができる。
【0040】
屋根側保護シート31を構成する紙材としては、例えば、クラフト紙、ラグ質原紙、板紙等が挙げられる。中でも、屋根側保護シート31を構成する紙材は、クラフト紙であることが好ましい。屋根側保護シート31を構成する紙材がクラフト紙であることにより、屋根側保護シート31の剛性が適度なものとなり、また、屋根側保護シート31の取り扱いが容易となるため、通気構造体1から屋根側保護シート31を剥離する工程における作業性がよくなる。
【0041】
防水シート側保護シート32を構成する合成樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。中でも、防水シート側保護シート32を構成する合成樹脂は、ポリプロピレンであることが好ましい。防水シート側保護シート32を構成する合成樹脂がポリプロピレンであることにより、屋根側保護シート31よりも低い剛性でありつつ、防水シート側保護シート32の取り扱い性が高まるため、通気構造体1から防水シート側保護シート32を剥離する工程等における作業が行いやすくなる。
【0042】
本発明の防水工法は、屋根側面に屋根側保護シート31と、防水シート側面に防水シート側保護シート32と、を有する通気構造体1と、防水シートと、を用いた防水工法であって、通気構造体1の少なくとも一部の屋根側保護シート31を剥離する工程と、通気構造体1を屋根に配置する工程と、通気構造体1の上に防水シートを配置する工程と、通気構造体1の防水シート側保護シート32を剥離する工程と、を順次行う。少なくとも一部の屋根側保護シート31を剥離して通気構造体1を屋根に配置し、通気構造体1の上に防水シートを配置した後に防水シート側保護シート32を剥離することにより、屋根と通気構造体1、および通気構造体1と防水シートを意図した位置に配置しやすくなり、防水工法の作業時間を短縮することができ、かつ美麗な仕上りとすることができる。
【0043】
防水工法の各工程について、以下に説明する。防水工法では、屋根側面に屋根側保護シート31と、防水シート側面に防水シート側保護シート32と、を有する通気構造体1と、防水シートと、を用いる。なお、下記の防水工法の説明において、上記の通気構造体1の説明と重複する部分は説明を省略する。
【0044】
まず、通気構造体1の少なくとも一部の屋根側保護シート31を剥離する。通気構造体1から屋根側保護シート31を取り除くことにより通気構造体1の屋根側面が露出し、次の工程である通気構造体1を屋根に配置する工程が行いやすくなる。
【0045】
通気構造体1の屋根側保護シート31を剥離する工程の前に、屋根にプライマーを塗布する工程を有していることが好ましい。屋根にプライマーを塗布することにより、屋根に通気構造体1を十分に固定することができる。
【0046】
通気構造体1の屋根側保護シート31を剥離する工程の次に、通気構造体1を屋根に配置する。通気構造体1を屋根に配置することにより、屋根と防水シートとの間に通気のための空間を設けて屋根部分から発生した水蒸気等の気体を防水シートの平面方向に通気させることができ、防水シートへの膨れの発生や破断を起こりにくくすることができる。なお、通気構造体1と屋根との固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤等を用いることができる。
【0047】
通気構造体1の屋根側保護シート31を剥離する工程および通気構造体1を屋根に配置する工程において、通気構造体1の端部の屋根側保護シート31を剥離し、屋根側保護シート31を剥離させた通気構造体1の端部を屋根に接触させ、残りの屋根側保護シート31を剥離しながら通気構造体1を屋根に配置することが好ましい。屋根側保護シート31が剥離した通気構造体1の端部を屋根に接触させて、残りの屋根側保護シート31を剥離しながら通気構造体1を屋根に配置することにより、屋根側保護シート31が剥離した通気構造体1の屋根側面をすぐに屋根に配置することができるため、通気構造体1の屋根側面の表面に傷がつくことや塵や埃等が付着することを防止でき、通気構造体1の屋根への固定力を高めることができる。
【0048】
通気構造体1を屋根に配置する工程の次に、通気構造体1の上に防水シートを配置する。通気構造体1の上に防水シートを配置する工程において、通気構造体1の防水シート側保護シート32は剥離していない状態である。つまり、通気構造体1の防水シート側面に防水シート側保護シート32があり、防水シート側保護シート32の上に防水シートが配置されている。通気構造体1の上に防水シートを配置する工程において、通気構造体1の防水シート側保護シート32は剥離していない状態であることにより、防水シートが通気構造体1に固定されず、防水シートの位置の微調整等を行うことができ、防水工法の作業性を高めることが可能となる。
【0049】
通気構造体1の上に防水シートを配置する工程の次に、通気構造体1の防水シート側保護シート32を剥離する。具体的には、通気構造体1の防水シート側保護シート32を剥離する工程において、通気構造体1の端部の防水シート側保護シート32を剥離させてから、通気構造体1と防水シートとの間から防水シート側保護シート32を横引きして、防水シート側保護シート32を剥離させ、防水シートを通気構造体1に固定する。なお、通気構造体1と防水シートとの固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤等を用いることができる。
【0050】
以上のように、通気構造体は、防水シートの屋根側面に配置される通気構造体であって、ゴム層と、織布と、を有している。通気構造体は、ゴム層と、織布と、を有していることにより、防水シートの屋根側面に通気のための空間を設けることができ、屋根部分から発生する水蒸気等の気体を防水シートの平面方向に通気させることが可能となる。
【0051】
また、以上のように、防水工法は、屋根側面に屋根側保護シートと、防水シート側面に防水シート側保護シートと、を有する通気構造体と、防水シートと、を用いた防水工法であって、通気構造体の少なくとも一部の屋根側保護シートを剥離する工程と、通気構造体を屋根に配置する工程と、通気構造体の上に防水シートを配置する工程と、通気構造体の防水シート側保護シートを剥離する工程と、を順次行う。防水工法は、通気構造体を用いることによって防水シートの屋根側面に通気空間を設けて屋根部分から発生する気体を防水シートの平面方向に通気させることができ、さらに、通気構造体の少なくとも一部の屋根側保護シートを剥離する工程と、通気構造体を屋根に配置する工程と、通気構造体の上に防水シートを配置する工程と、通気構造体の防水シート側保護シートを剥離する工程とを順次行うことにより、防水シートを意図した位置に美麗に貼付しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0052】
1:通気構造体
10:ゴム層
20:織布
21:第1の糸
22:第2の糸
31:屋根側保護シート
32:防水シート側保護シート
40:引き揃え糸
50:単糸
D1:引き揃え糸と、該引き揃え糸と隣接する引き揃え糸との間隔
D2:単糸と、該単糸と隣接する単糸との間隔
図1
図2