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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020024038
(22)【出願日】2020-02-17
(65)【公開番号】P2021128111
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】592056687
【氏名又は名称】株式会社マイクロ・テクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(72)【発明者】
【氏名】千田 貴憲
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-275187(JP,A)
【文献】特開2001-238053(JP,A)
【文献】特開2009-036747(JP,A)
【文献】特開2011-137657(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0286472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する検査装置であって、
前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含み、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することにより、少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を繰り返し出力するイメージセンサと、
処理回路と、
を備え、
前記処理回路は、
前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、
前記平均値の経時変化に基づいて前記対象物の周期性を判断し、
前記周期性がある場合、前記平均値の経時変化を示すマスタデータであって、前記対象物の検査時に参照されるマスタデータを記録媒体に記録し、
前記周期性がない場合、前記平均値を所定時間にわたって平均化した値を前記検査時に参照される基準値として前記記録媒体に記録する、
検査装置。
【請求項2】
前記処理回路は、前記周期性がある場合に、前記画素値の平均値の2周期分以上の経時変化を示すデータを前記マスタデータとして前記記録媒体に記録する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記処理回路は、前記マスタデータを生成するとき、前記対象物の検査時に使用される閾値を決定して前記マスタデータとともに前記記録媒体に記録する、請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記処理回路は、前記マスタデータを記録した後、前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化が、前記マスタデータにおける前記平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置に信号を出力する、請求項1から3のいずれかに記載の検査装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記基準値を記録した後、前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値が前記基準値と乖離している場合に、外部の装置に信号を出力する、請求項1から4のいずれかに記載の検査装置。
【請求項6】
搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する検査装置であって、
前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含み、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することにより、少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を繰り返し出力するイメージセンサと、
処理回路と、
を備え、
前記処理回路は、
前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、
前記平均値の経時変化に基づいて前記対象物の周期性を判断し、
前記対象物に周期性がある場合、前記平均値の経時変化が、予め記録されたマスタデータにおける前記平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置に信号を出力し、
前記対象物に周期性がない場合、前記平均値が、予め記録された基準値と乖離している場合に、前記外部の装置に信号を出力する、
検査装置。
【請求項7】
前記処理回路は、前記複数の画素値の平均値と前記マスタデータにおける前記画素値の平均値との差が、閾値を上回る状態が所定時間以上または所定距離以上継続した場合に、前記外部の装置に前記信号を出力する、請求項4または6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記イメージセンサにおける前記複数の光検出セルの各々は、赤、緑、および青のそれぞれの色の光を検出することが可能であり、
前記画像信号は、赤、緑、および青のそれぞれの色についての一次元の画像情報を含み、
前記処理回路は、前記画像信号における赤、緑、および青の少なくとも1つの色についての画素値の平均値の経時変化が、前記マスタデータにおける前記少なくとも1つの色についての前記平均値の経時変化と乖離している場合に、前記外部の装置に前記信号を出力する、
請求項4、6、および7のいずれかに記載の検査装置。
【請求項9】
前記イメージセンサは、リニアイメージセンサである、請求項1から8のいずれかに記載の検査装置。
【請求項10】
前記リニアイメージセンサは、前記複数の光検出セルによって検出された光の量に応じた一次元画像信号を一定時間ごとに出力し、
前記処理回路は、前記リニアイメージセンサから出力された複数の一次元画像信号から、2次元画像信号を生成して出力する、
請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の検査装置と、
前記搬送装置と、
を備える、検査システム。
【請求項12】
搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する方法であって、
前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含むイメージセンサが、搬送中の前記対象物の一部を一定時間ごとに撮像することによって生成した少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を取得するステップと、
前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算するステップと、
前記平均値の経時変化に基づいて前記対象物の周期性を判断するステップと、
前記周期性がある場合、前記平均値の経時変化を示すマスタデータであって、前記対象物の検査時に参照されるマスタデータを記録媒体に記録するステップと、
前記周期性がない場合、前記平均値を所定時間にわたって平均化した値を前記検査時に参照される基準値として前記記録媒体に記録するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する方法であって、
前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含むイメージセンサが、搬送中の前記対象物の一部を一定時間ごとに撮像することによって生成した少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を取得するステップと、
前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算するステップと、
前記平均値の経時変化に基づいて前記対象物の周期性を判断するステップと、
前記対象物に周期性がある場合、前記平均値の経時変化が、予め記録されたマスタデータにおける前記平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置に通知するステップと、
前記対象物に周期性がない場合、前記平均値が、予め記録された基準値と乖離している場合に、前記外部の装置に信号を出力する、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート状またはフィルム状の検査対象を検査する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムまたは紙などのシート状の対象物に異物または欠陥などの異常がないかを検査する種々の方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1は、シート状の被検査物の表面を撮像することによって被検査物の欠陥を検査する検査装置を開示している。特許文献1の検査装置は、リニア撮像素子と、リニア撮像素子のセル列に沿った方向に配列された複数の発光領域を有する線状の照明装置とを備える。複数の発光領域の点灯が、リニア撮像素子のデータ転送動作ごとに行われる。この検査装置は、リニア撮像素子によって生成された複数の画像に基づいて被検査物の欠陥を検査する。
【0004】
特許文献2は、被検査物であるシートに表側から光を照射する2つの表側光源と、裏側から光を照射する1つの裏側光源と、カメラとを備えた検査装置を開示している。カメラは、2つの表側光源が発光している状態で検査領域の明視野像を取得し、裏側光源が発光している状態で検査領域の暗視野像を取得する。明視野像を得るか暗視野像を得るかは、シートの性状に応じて、検査に適した一方または双方が選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-163771号公報
【文献】特開2000-108316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、シート状対象物のつなぎ目または欠陥などの特徴的部分を検出するための新規な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る検査装置は、搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する検査装置であって、前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含み、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することにより、少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を繰り返し出力するイメージセンサと、前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化を示すマスタデータであって、前記対象物の検査時に参照されるマスタデータを記録媒体に記録する処理回路と、を備える。
【0008】
本開示の他の態様に係る検査装置は、搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する検査装置であって、前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含み、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することにより、少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を繰り返し出力するイメージセンサと、前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化が、予め記録されたマスタデータにおける前記平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置に信号を出力する処理回路と、を備える。
【0009】
本開示の包括的または具体的な態様は、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または記録媒体で実現され得る。あるいは、装置、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム、および記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態によれば、例えば周期的なパターンを有するシート状対象物のつなぎ目または欠陥などの特徴的部分を高い精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の例示的な実施形態による検査システムの構成の概略を模式的に示す図である。
図2】撮像装置におけるイメージセンサの一部の構造の例を模式的に示す断面図である。
図3】処理装置の機能を説明するための図である。
図4】処理装置のプロセッサによって実行される処理の概略を示すフローチャートである。
図5】登録処理および検査処理の詳細な例を示すフローチャートである。
図6A】パターンに周期性がない対象物10のR、G、Bのそれぞれの画素値の1ライン分の平均値の経時変化の例を示す図である。
図6B】周期性のあるパターンを有する対象物10のR、G、Bのそれぞれの画素値の1ライン分の平均値の経時変化の例を示す図である。
図7A】登録工程において学習された画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値の時間変化を示す波形の例とを示す図である。
図7B】検査工程において検査される対象物の撮像画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値と登録された基準値との差分の時間変化を示す波形の例とを示す図である。
図8A】登録工程において学習された画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値の時間変化を示す波形の例と、マスタデータとして登録される波形の例とを示す図である。
図8B】検査工程において検査される対象物の撮像画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値とマスタデータにおける対応する値との差分の時間変化を示す波形の例とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
【0013】
ロール状に巻かれた長尺の連続用紙またはフィルムなどの検査対象物において、つなぎ目のテープやその他の欠陥などの特徴的部分が存在することがある。このような特徴的部分を検出するために、例えばラインセンサカメラまたはコンタクトイメージセンサなどの、一次元の画像を取得可能な撮像装置が使用され得る。そのような撮像装置を用いて、搬送されたシート状対象物の表面を連続的に撮像することで検査を行うことができる。このような検査は、例えば製造ラインにおける検査工程の一つとして行われ得る。
【0014】
一方で、一つの製造ラインにおいて複数の品種が取り扱われる場合がある。それらの品種の中には、無地のもの、周期的な絵柄が存在するものなどがあり、柄の種類や周期は多様であり得る。従来の検査装置では、それらの品種ごとに、検出閾値や背景絵柄の種類、周期などのパラメータを個別に設定する必要があった。
【0015】
しかし、これらのパラメータの設定は煩雑で時間とコストを要する。品種が多くなるにつれて記録や選択の負荷が大きくなる。また、これらの操作は主に手動に頼る部分が多いため、誤りが発生するおそれがある。その場合、正常な検査が行われないことになる。
【0016】
上記の課題を解決するため、本開示のある実施形態による検査装置は、検査対象物の表面のパターンを自動的に判別し、検出閾値などの検査パラメータを適切に設定する機能を有する。これらの機能により、品種の誤選択などの問題を回避することができる。
【0017】
以下、本開示の実施形態の概要を説明する。
【0018】
本開示の一実施形態による検査装置は、搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する用途に用いられる。前記検査装置は、イメージセンサと、処理回路とを備える。前記イメージセンサは、前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含み、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することにより、少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を繰り返し出力する。前記処理回路は、前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化を示すマスタデータであって、前記対象物の検査時に参照されるマスタデータを記録媒体に記録する。
【0019】
ここで、イメージセンサは、例えばラインセンサまたはコンタクトイメージセンサなどの、リニアイメージセンサであり得る。その場合、イメージセンサは、一次元の画像信号を出力する。イメージセンサは、二次元の画像信号を生成するように構成されていてもよい。その場合、イメージセンサは、二次元的に配列された複数の光検出セルを備える。
【0020】
イメージセンサの各光検出セルは、入射光の強度に応じた電気信号を出力する。画像信号は、複数の光検出セルから出力される電気信号の集合である。ここで、各光検出セルは、例えば赤(R)、緑(G)、および青(B)のそれぞれの色の光を検出する3種類のサブ画素を含んでいてもよい。赤色の光を検出するサブ画素には赤色の光を主に透過させるカラーフィルタが対向して配置され得る。緑色の光を検出するサブ画素には緑色の光を主に透過させるカラーフィルタが対向して配置され得る。青色の光を検出するサブ画素には青色の光を主に透過させるカラーフィルタが対向して配置され得る。あるいは、イメージセンサは、モノクロの画像信号を出力するように構成されていてもよい。イメージセンサは、可視光の画像信号に限らず、紫外線または赤外線の画像信号を出力するように構成されていてもよい。
【0021】
イメージセンサは、搬送中の対象物の一部を、例えば一定距離ごとに撮像するように制御され得る。対象物の搬送速度が一定の場合は、一定時間ごとに撮像してもよい。これにより、イメージセンサから、少なくとも一次元の画像信号が、一定距離ごと(速度一定の場合は一定時間ごと)に出力される。
【0022】
処理回路は、イメージセンサから出力された画像信号における複数の画素値の平均値を計算する。そして、当該平均値の所定の時間長(または所定の搬送距離)に亘る経時変化を示すマスタデータを記録する。ここで、「画素値」は、画像信号における画素の輝度値、またはR、G、Bの少なくとも1つの値を含み得る。画像信号が各画素の輝度値の値を含む場合、処理回路は、ラインごとに輝度値の平均値を計算する。画像信号が画素ごとにR、G、Bのそれぞれの値を含む場合、処理回路は、ラインごとに、R、G、Bの少なくとも1つの値についての平均値を計算する。当該平均値の経時変化を示すデータが、マスタデータとして記録される。
【0023】
上記の構成によれば、対象物の検査時に参照されるマスタデータを手動によらず記録することができる。このため、対象物の品種が多岐にわたる場合であっても、検査をより簡便に行うことができる。
【0024】
前記処理回路は、前記画素値の平均値の経時変化に基づいて、前記対象物の周期性を判断し、前記周期性がある場合に、前記マスタデータを前記記録媒体に記録してもよい。
【0025】
周期性がない場合には、処理回路は、例えば前記画素値の平均値を所定の時間長にわたって平均化した値を、検査時に参照される参照値として記録してもよい。
【0026】
前記処理回路は、前記周期性がある場合に、例えば前記画素値の平均値の2周期分以上の経時変化を示すデータを前記マスタデータとして前記記録媒体に記録してもよい。
【0027】
前記処理回路は、前記マスタデータを生成するとき、前記対象物の検査時に使用される閾値を決定して前記マスタデータとともに前記記録媒体に記録してもよい。閾値をマスタデータとともに自動で記録することにより、閾値の設定に要する作業を削減することができる。
【0028】
前記処理装置は、前記マスタデータを記録した後、前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化が、前記マスタデータにおける前記平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置に信号を出力してもよい。
【0029】
本開示の他の実施形態による検査装置は、搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する用途に用いられる。前記検査装置は、イメージセンサと、処理回路とを備える。前記イメージセンサは、前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含み、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することにより、少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を繰り返し出力する。前記処理回路は、前記イメージセンサから前記画像信号が出力される度に、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化が、予め記録されたマスタデータにおける前記平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置に信号を出力する。
【0030】
処理回路は、イメージセンサから出力された画像信号における複数の画素値の平均値を計算する。そして、当該平均値の経時変化が、予め記録されたマスタデータにおける平均値の経時変化と乖離している場合、外部の装置に通知する。画像信号が各画素の輝度値の値を含む場合、処理回路は、ラインごとに輝度値の平均値を、予め記録されたマスタデータにおける対応する値と比較する。画像信号が画素ごとにR、G、Bのそれぞれの値を含む場合、処理回路は、ラインごとに、R、G、Bの少なくとも1つの値についての平均値をマスタデータにおける対応する値と比較する。当該平均値の経時変化が、マスタデータにおける平均値の経時変化と乖離しているか否かは、例えば、当該平均値とマスタデータにおける対応する値との差が、予め設定された閾値を上回っているかに基づいて決定され得る。
【0031】
出力される信号は、対象物の表面に、通常とは異なる部分が存在することを示す。例えば、対象物が、複数のシートをテープでつなぎ合わせたものである場合、上記処理により、つなぎ目のテープが検出され、その旨を示す信号が外部の装置に送信される。対象物に印刷の欠陥、汚れ、または異物が存在する場合は、それらが検出され、外部の装置に信号が送信される。これにより、外部の装置は、対象物の表面に通常とは異なる部分が存在することを表示したり、搬送装置に停止の指示を送ったりすることができる。外部の装置は、処理回路に有線または無線で接続された任意の電子機器であり得る。外部の装置は、例えば、ディスプレイ、携帯情報端末、パーソナルコンピュータなどの機器であり得る。
【0032】
前記処理回路は、前記対象物の検査時において、前記画素値の平均値と前記マスタデータにおける前記画素値の平均値との差が、前記閾値を上回る状態が所定時間以上(または所定の搬送距離以上)継続した場合に、前記外部の装置に前記信号を出力してもよい。
【0033】
前記イメージセンサにおける前記複数の光検出セルの各々は、赤、緑、および青のそれぞれの色の光を検出することが可能であってもよい。その場合、前記画像信号は、赤、緑、および青のそれぞれの色についての一次元の画像情報を含み得る。前記処理回路は、前記画像信号における赤、緑、および青の少なくとも1つの色についての画素値の平均値の経時変化が、前記マスタデータにおける前記少なくとも1つの色についての前記平均値の経時変化と乖離している場合に、前記外部の装置に通知してもよい。
【0034】
前記イメージセンサは、リニアイメージセンサであってもよい。前記リニアイメージセンサは、コンタクトイメージセンサであってもよい。前記リニアイメージセンサは、前記複数の光検出セルによって検出された光の量に応じた一次元画像信号を前記一定時間ごとに出力する。前記処理回路は、前記リニアイメージセンサから出力された複数の一次元画像信号から、2次元画像信号を生成して出力してもよい。
【0035】
本開示の他の実施形態による検査システムは、上記のいずれかに記載の検査装置と、前記搬送装置とを備える。
【0036】
本開示の他の実施形態による検査方法は、搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する方法であって、前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含むイメージセンサが、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することによって生成した少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を取得するステップと、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化を示すマスタデータであって、前記対象物の検査時に参照されるマスタデータを記録媒体に記録するステップと、を含む。
【0037】
本開示の他の実施形態による検査方法は、搬送装置によって第1の方向に搬送されるシート状の対象物を検査する方法であって、前記第1の方向に交差する第2の方向に配列された複数の光検出セルを含むイメージセンサが、搬送中の前記対象物の一部を繰り返し撮像することによって生成した少なくとも一次元の画像情報を含む画像信号を取得するステップと、前記画像信号における複数の画素値の平均値を計算し、前記平均値の経時変化が、予め記録されたマスタデータにおける前記平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置に通知するステップと、を含む。
【0038】
以下、本開示の例示的な実施形態をより詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。本明細書においては、同一のまたは類似する構成要素には、同一の参照符号を付している。
【0039】
(実施形態)
図1は、本開示の例示的な実施形態による検査システムの構成の概略を模式的に示す図である。この検査システムは、搬送装置100と、検査装置200とを備える。図1には、搬送装置100および検査装置200に接続されたコンピュータ300も示されている。コンピュータ300は、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC)、または携帯端末などの汎用の情報処理装置であり得る。コンピュータ300は、検査システムに含まれていてもよいし、検査システムの外部の要素であってもよい。
【0040】
搬送装置100は、コントローラ110と、搬送機130とを備える。搬送機130は、用紙またはフィルムなどのシート状の対象物10を搬送する。コントローラ110は、搬送装置100の全体の動作を制御する回路である。コントローラ110は、コンピュータ300から入力された指示を受けて、搬送機130を駆動する。これにより、搬送装置100は、対象物10を搬送する。
【0041】
検査装置200は、搬送装置100と連動して動作し、対象物10の表面の模様または絵柄の正常性を検査する。検査装置200は、搬送装置100およびコンピュータ300に接続されている。検査装置200は、撮像装置220と、処理装置210とを備える。
【0042】
撮像装置220は、所定の模様または絵柄を有する対象物10の搬送経路上に配置される。撮像装置220は、対象物10の搬送方向に交差(典型的には直交)する線状の領域を撮影する。撮像装置220は、対象物10の一部を一定距離ごとに撮像し、画像信号を出力する。対象物10が一定の速度で搬送されている場合、撮像装置220は、対象物10の一部を一定時間ごとに撮像し、画像信号を出力する。撮像装置220は、イメージセンサと、レンズなどの光学系とを備える。対象物10から撮像装置220に入射した光は、光学系によって集束され、イメージセンサの撮像面に入射する。イメージセンサは、リニアイメージセンサ(「ラインセンサ」とも称する)であり、入射した光に基づく一次元の画像信号を、例えば一定距離ごと(速度一定の場合は一定時間ごと)に繰り返し生成する。
【0043】
図2は、撮像装置220におけるイメージセンサの一部の構造の例を模式的に示す断面図である。この例におけるイメージセンサは、半導体基板221と、半導体基板221の表面に一次元的に配列された複数の光検出セル227a、227b、227c、・・・とを備えている。半導体基板221の表面には、光検出セル227a、227b、227c、・・・を不図示の駆動回路に接続する配線層225が形成されている。イメージセンサは、さらに、光検出セル227a、227b、227c、・・・に集光する複数のマイクロレンズのアレイ223を備えている。光検出セル227a、227b、227c、・・・は、対象物10の搬送方向(第1の方向)に交差する第2の方向に配列されている。各光検出セルは、例えばフォトダイオードなどの光電変換素子を含む。各光検出セルは、入射光量に応じた信号電荷を発生させる。各光検出セルが蓄積した電荷は一定時間ごとに読み出され、一次元画像信号として出力される。このような構造により、イメージセンサは、対象物10の一部を、例えば一定距離ごと(速度一定の場合は一定時間ごと)に撮像する。
【0044】
イメージセンサは、図2に示す構成に限らず、任意のリニアイメージセンサを利用できる。リニアイメージセンサは、例えばCOMS型でもCCD型でもよい。リニアイメージセンサは、コンタクトイメージセンサであってもよい。一次元のイメージセンサに限らず、二次元の画像信号を出力するイメージセンサを使用してもよい。その場合、二次元の画像信号の中から抽出された特定のラインの信号について、後述する処理が行われ得る。
【0045】
イメージセンサにおける複数の光検出セルの各々は、赤、緑、および青のそれぞれの色の光を検出するように構成されていてもよい。この場合、各光検出セルは、赤、緑、および青のそれぞれの色の光を検出する3種類のサブ画素を含む。赤色の光を検出するサブ画素には赤色の光を主に透過させるカラーフィルタが対向して配置され得る。緑色の光を検出するサブ画素には緑色の光を主に透過させるカラーフィルタが対向して配置され得る。青色の光を検出するサブ画素には青色の光を主に透過させるカラーフィルタが対向して配置され得る。この場合、イメージセンサから出力される画像信号は、赤、緑、および青のそれぞれの色についての一次元または二次元の画像情報を含む。
【0046】
再び図1を参照する。処理装置210は、プロセッサ212と、記憶媒体であるRAM214およびROM216と、入出力インターフェース(IF)218とを備える。プロセッサ212は、例えばCPUまたはGPUなどの処理回路を含む。ROM216は、プロセッサ212によって実行されるコンピュータプログラムを格納する。当該プログラムは、例えば後述するフローチャートによって示される処理、またはその一部を、プロセッサ212に実行させるための命令群を含む。RAM214は、プロセッサ212がプログラムを実行するにあたって、当該プログラムを展開するためのワークメモリである。処理装置210のプロセッサ212は、インターフェース218を介して、コンピュータ300、コントローラ110、および撮像装置220に接続される。
【0047】
図3は、処理装置210の機能を説明するための図である。図4は、処理装置210のプロセッサ212によって実行される処理の概略を示すフローチャートである。プロセッサ212は、登録処理(ステップS100)と、検査処理(ステップS200)とを実行する。登録処理は、1水平ライン平均化、標準偏差演算、周期性判別、平均値登録(周期性がない場合)、パターン登録(周期性がある場合)等の処理を含む。検査処理は、1水平ライン平均化およびつなぎ目検出等の処理を含む。
【0048】
登録処理は、検査対象の対象物10と同種の対象物について、検査処理の際に参照されるマスタデータを生成して記録する処理である。プロセッサ212は、撮像装置220から繰り返し出力される画像信号における複数の画素値の平均値の経時変化を示すデータをマスタデータとして記録媒体(例えばRAM214)に記録する。このとき、プロセッサ212は、画素値の平均値の経時変化に基づいて、対象物10の周期性を判断し、周期性がある場合に、画素値の平均値の経時変化を示すデータをマスタデータとして生成して記録媒体に記録する。一方、周期性がない場合には、プロセッサ212は、画素値の平均値を所定の時間(例えば周期の整数倍)または所定の搬送距離にわたって平均化した値を記録する。プロセッサ212は、マスタデータまたは平均値の記録の際に、検査処理において参照されるそれぞれの閾値も記録する。
【0049】
検査処理は、登録された平均値またはマスタデータに基づいて、対象物10の表面のパターンを検査する処理である。この処理では、シート状の対象物10におけるつなぎ目のテープ12、およびその他の欠陥が検出される。
【0050】
図5は、登録処理(ステップS100)および検査処理(ステップS200)の詳細を示すフローチャートである。登録処理は、図5に示すステップS101からS107を含む。検査処理は、図5に示すステップS211からS214(周期性がない場合)、およびステップS221からS224(周期性がある場合)を含む。以下、各ステップの処理を説明する。
【0051】
<登録処理>
ステップS101において、プロセッサ212は、撮像装置220から出力された1ライン分の画像信号を取得する。ステップS102において、プロセッサ212は、取得した画像信号における複数の画素値の平均値をR、G、Bの各色について計算し、各色の平均値をRAM214に記録する。続くステップS103において、プロセッサ212は、これまでに計算した平均値の標準偏差を色ごとに計算する。ここで、標準偏差は、初回の計算時にはゼロであり、ステップS101~S105のループがある程度繰り返されることで、次第に増加する。ステップS104において、プロセッサ212は、標準偏差の値に基づいて、対象物10の表面のパターンに周期性があるか否かを判定する。
【0052】
図6Aおよび図6Bは、ステップS104における周期性の判定方法を説明するための図である。図6Aは、パターンに周期性がない対象物10のR、G、Bのそれぞれの画素値の1ライン分の平均値の経時変化の例を示している。図6Bは、周期性のあるパターンを有する対象物10のR、G、Bのそれぞれの画素値の1ライン分の平均値の経時変化の例を示している。図示されるように、R、G、Bのそれぞれの画素値を横方向について平均化し、その平均値の時間変化を示す波形を生成する。そして、それぞれの波形から標準偏差を計算し、その標準偏差の大きさに基づいて周期性の有無を判定できる。例えば、十分に長い所定の時間長にわたって取得した各色の画素値の平均値のデータから、各色の標準偏差を計算し、3つの色の少なくとも1つについて、閾値を超えている場合には、周期性があると判断してもよい。なお、本実施形態では、R、G、Bの画素値の平均値の標準偏差に基づいて周期性の有無が判断されるが、他の方法によって周期性の有無を判断してもよい。例えば、R、G、Bの少なくとも1つの画素値の平均値の波形に対して周波数解析を行うことによって周期性を検出してもよい。
【0053】
周期性は、対象物10の搬送を開始してから最低2周期分の搬送が行われてから検出される。それまでは、ステップS104において周期性が検出されず、ステップS105に進む。ステップS105において、プロセッサ212は、動作を開始してから、予め設定された周期の上限値(以下、「周期上限」と称する。)の2倍の時間が経過したか否かを判定する。周期上限は、想定される対象物10の周期よりも十分に長い時間に設定される。この判定がNoである場合、ステップS101に戻る。以後、ステップS104において周期性が検出されるか、ステップS105において、動作の開始時点から周期上限の2倍の時間が経過したと判定されるまで、ステップS101からS105の動作が繰り返される。
【0054】
ステップS104において周期性が検出されず、さらにステップS105において周期上限の2倍の時間が経過した場合、対象物10の表面のパターンに周期性がないと判断される。この場合、プロセッサ212は、それまでに記録した各色の画素値の平均値を基準値としてRAM214に記録する(ステップS106)。その後、プロセッサ212は、検査工程におけるステップS211からS214の処理を実行する。
【0055】
動作開始から周期上限の2倍の時間が経過する前に、ステップS104において周期性が検出されると、プロセッサ212は、ステップS107において、2周期分の平均値のパターンを示す波形のデータをマスタデータとしてRAM214に記録する(ステップS107)。その後、プロセッサ212は、検査工程におけるステップS221からS224の処理を実行する。
【0056】
<検査処理>
対象物10の表面のパターンに周期性がない場合、プロセッサ212は、ステップS211において、1ライン分の画像信号をイメージセンサから再度取得する。次に、ステップS212において、プロセッサ212は、取得した画像信号における複数の画素値の平均値をR、G、Bの各色について計算する。ステップS211およびS212の動作は、それぞれ、ステップS101およびS102の動作と同じである。続くステップS213において、プロセッサ212は、計算した各色の平均値と、ステップS106において記録した基準値とを比較し、それらの差が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、ステップS106において決定されてもよいし、動作開始前に予め設定されていてもよい。ステップS213においてNoと判定された場合、ステップS211に戻る。以後、ステップS213においてYesと判定されるまで、ステップS211からS213の動作が繰り返される。ステップS213においてYesと判定された場合、対象物10のパターンが、登録されたパターンとは異なることを意味する。その場合、プロセッサ212は、エラーを示す信号を出力または記録する(ステップS214)。その後、ステップS211に戻り、前述の動作が繰り返される。
【0057】
プロセッサ212は、エラーを示す信号をコンピュータ300などの外部の装置に送信してもよい。プロセッサ212は、ステップS214の動作を所定回数以上実行した段階で、エラーを示す信号をコンピュータ300に送信してもよい。コンピュータ300は、この信号を受信したとき、例えば不図示のディスプレイに、エラーを示す画像を表示させてもよい。あるいは、コンピュータ300は、当該信号を受信したとき、搬送装置100のコントローラ110に動作の停止を指示してもよい。
【0058】
図7Aおよび図7Bは、対象物10のパターンに周期性が存在しない品種である場合における検査の例を示す図である。図7Aは、登録工程において登録(「学習」とも称する)された画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値の時間変化を示す波形の例とを示している。図7Bは、検査工程において検査される対象物10の撮像画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値と登録された基準値との差分の時間変化を示す波形の例とを示している。周期性が存在しない場合、プロセッサ212は、RGBの各画素値の1ライン分の平均値を所定の時間長にわたって平均化した値と、当該平均値の標準偏差とに基づいて、閾値を決定する。図7Bの例では、つなぎ目のテープ12が撮像されたタイミングで、RGBの少なくとも1つの画素値の1ライン分の平均値と基準値との差が閾値を超えている。このような場合、ステップS213においてYesと判定される。
【0059】
次に、対象物10の表面のパターンに周期性がある場合の検査処理を説明する。
【0060】
対象物10の表面のパターンに周期性がある場合、プロセッサ212は、ステップS221において、1ライン分の画像信号をイメージセンサから再度取得する。次に、ステップS222において、プロセッサ212は、取得した画像信号における複数の画素値の平均値をR、G、Bの各色について計算する。ステップS221およびS222の動作は、それぞれ、ステップS101およびS102の動作と同じである。続くステップS223において、プロセッサ212は、計算した各色の平均値と、ステップS107において記録したマスタデータにおける対応する値とを比較し、それらの差が予め設定された閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、ステップS107において決定されてもよいし、動作開始前に予め設定されていてもよい。ステップS223においてNoと判定された場合、ステップS221に戻る。以後、ステップS223においてYesと判定されるまで、ステップS221からS223の動作が繰り返される。ステップS223においてYesと判定された場合、対象物10のパターンが、登録されたパターンとは異なることを意味する。その場合、プロセッサ212は、エラーを示す信号を出力または記録する(ステップS224)。その後、ステップS221に戻り、前述の動作が繰り返される。
【0061】
プロセッサ212は、エラーを示す信号をコンピュータ300などの外部の装置に送信してもよい。プロセッサ212は、ステップS224の動作を所定回数以上実行した段階で、エラーを示す信号をコンピュータ300に送信してもよい。コンピュータ300は、この信号を受信したとき、例えば不図示のディスプレイに、エラーを示す画像を表示させてもよい。あるいは、コンピュータ300は、当該信号を受信したとき、搬送装置100のコントローラ110に動作の停止を指示してもよい。
【0062】
図8Aおよび図8Bは、対象物10が周期性のある柄を有する品種である場合における検査の例を示す図である。図8Aは、登録工程において学習された画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値の時間変化を示す波形の例と、マスタデータとして登録される波形の例とを示している。図8Bは、検査工程において検査される対象物10の撮像画像の例と、そのRGBの各画素値の1ライン分の平均値とマスタデータにおける対応する値との差分の時間変化を示す波形の例とを示している。この例のように周期性が存在する場合、プロセッサ212は、登録されたマスタ波形と、RGBの各画素値の1ライン分の平均値の波形との比較を行う。図8Bの例では、つなぎ目のテープ12が撮像されたタイミングで、RGBの少なくとも1つの画素値の1ライン分の平均値と、マスタ波形における対応する値との差が閾値を超えている。このような場合、ステップS223においてYesと判定される。
【0063】
以上のように、本実施形態における処理装置210は、撮像装置220から画像信号を一定時間ごとに取得する度に、画像信号における複数の画素値の平均値を計算する。そして、当該平均値の経時変化が、予め記録されたマスタデータにおける当該平均値の経時変化と乖離している場合に、外部の装置(この例ではコンピュータ300)に信号を出力する。このような動作により、従来検出が難しかったつなぎ目のテープなどの異物または欠陥を高い精度で検出することができる。
【0064】
本実施形態によれば、多品種の対象物を扱う場合でも、手動による品種選択を行わずに検査を行うことができる。また、検査に用いられる閾値などのパラメータの設定を最小限に抑えることができる。さらに、画像データそのものでなく、ラインごとに平均化されたデータを使用するため、メモリや演算回路(またはソフトウエア)を小規模にすることができる。同様に、扱うデータ量が小さいため、高速で搬送される対象に適用しやすい。
【0065】
本実施形態によれば、幅方向に平均化されたデータを使用するため、幅方向に大きさのあるテープなどの異物を高い精度で検出することができる。このため、長尺の用紙またはフィルムなどのつなぎ目に張られるテープなどを検知する用途に好適に利用することができる。
【0066】
なお、幅方向に大きさのない対象物を検知する用途では、本実施形態の構成に2次元画像データを記憶するメモリおよび2次元画像の演算が付加され得る。そのような構成により、自動的な品種切り替え機能や、周期検出の機能を生かしたまま、2次元的な画像処理を行うように発展させることができる。また、汚れの検知、欠陥の検知など、幅方向に大きさのない対象物の検査に応用する場合でも手動による切り替え、設定を削減することが可能である。
【0067】
従来の検査機では、一般的に周期の有無、周期長、検出レベルなどのパラメータを手動で設定する必要があった。これに対し、本実施形態の検査装置は、これらのパラメータを自動で設定することができる。
【0068】
本実施形態では、動作開始時に、検査対象の種類(例えば周期性の有無)を自動的に判別するフェーズ(ステップS100)があり、想定される最大周期の2倍程度の長さが経過した後、テープ等の異物の有無の検査を行うフェーズ(ステップS200)に移行する。この構成において、開始時の速度ムラなどに起因してデータが安定しない場合、判別フェーズをさらに延長してもよい。
【0069】
上記の実施形態では、プロセッサ212は、対象物の模様または柄に周期性がある場合に、画素値の平均値の2周期分の経時変化を示すデータをマスタデータとして記録する。マスタデータは、2周期分のデータに限らず、2周期よりも長い時間長にわたる波形データであってもよい。
【0070】
図5の例では、登録工程(ステップS100)の直後に検査工程(ステップS200)が行われるが、登録工程と検査工程との間に比較的長いタイムラグがあってもよい。また、本開示における検査方法は、登録工程と検査工程の一方のみを含んでいてもよい。
【0071】
上記の構成および動作は例示にすぎず、本開示の技術は上記の態様に限定されない。上記の構成および動作を適宜改変した検査装置、検査システム、および検査方法も、本開示の範囲に含まれる。
【0072】
例えば、「シート状の対象物」は、紙およびフィルムに限らず、検査のために搬送される物であればよい。例えば、シートに封入された錠剤または食品であってもよい。錠剤または食品の凹凸、色、または品質などを検査する用途に本開示の技術を適用することができる。
【0073】
また、検査装置は、対象物を照射する光を出射する光源を備えていてもよい。光源は、例えば落射照明、遮光照明、または透過照明などの、どのような照明方式であってもよい。
【0074】
搬送装置100は、ローラーとモータによって対象物10を搬送する機構に限らず、電動式の可動ベルトのような装置でもよい。その場合、可動ベルトの上に載せられた製品自体が、シート状の構造を有している必要はない。シート状ではない製品がベルト上を搬送される形態では、ベルトと製品との組み合わせが「シート状の対象物」であるものと解釈する。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の技術は、工場または倉庫などにおける製品の検査などの用途に利用できる。
【符号の説明】
【0076】
10 対象物
100 搬送装置
110 コントローラ
130 搬送機
200 検査装置
210 処理装置
212 プロセッサ
214 RAM
216 ROM
220 撮像装置
300 コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B