(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】浚渫装置及びそれを用いた浚渫方法
(51)【国際特許分類】
E02F 3/92 20060101AFI20240805BHJP
【FI】
E02F3/92 C
(21)【出願番号】P 2020144380
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500497652
【氏名又は名称】株式会社渋谷潜水工業
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】積田 悠汰
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】渕上 佳之
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 正信
(72)【発明者】
【氏名】小野 寿久
(72)【発明者】
【氏名】辻本 渉
(72)【発明者】
【氏名】芳村 浩明
(72)【発明者】
【氏名】大和 裕弥
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-220725(JP,A)
【文献】特開2019-157420(JP,A)
【文献】特開2019-060221(JP,A)
【文献】実開昭59-151965(JP,U)
【文献】特開平10-121512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/92
E02F 3/88
E02F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中バックホウと、当該水中バックホウのアーム先端に取り付けられた回転切削部と、
当該回転切削部の周囲を覆うように設けられたカバー本体と、当該カバー本体に設けられたサクションマウスと、を備える浚渫装置であって、
前記カバー本体は、
前記回転切削部の上方に設けられたカバー上部、
前記回転切削部の前方に設けられたカバー前部、
前記回転切削部の後方に設けられたカバー後部、
前記回転切削部の左右両側に設けられたカバー端部、及び
前記カバー後部の下端に設けられた導入部
により構成され、
前記カバー前部の下端から前記導入部の下端までの範囲に亘って開口部が形成され、
前記カバー後部には、前記サクションマウスが設けられ、
前記カバー上部は、前記アーム先端に取り付けられ
、
前記回転切削部の回転軸に直交する垂直断面において、前記カバー前部の長さは、前記カバー後部の長さ、及び前記回転切削部の直径の何れの長さよりも短く、
前記導入部は、前記カバー後部の下端から前方かつ下方に傾斜して設けられ、
前記回転切削部の下端は、前記導入部の下端よりも前方に設けられ、
前記回転切削部は、前記開口部から露出されること
を特徴とする浚渫装置。
【請求項2】
前記回転切削部の回転軸に直交する垂直断面において、
前記カバー後部の前記カバー上部に対する接合角度は、前記カバー前部の前記カバー上部に対する接合角度よりも大きいこと、
を特徴とする請求項
1記載の浚渫装置。
【請求項3】
前記回転切削部の回転軸に直交する垂直断面において、
前記導入部の前記カバー後部に対する接合角度は、前記カバー前部の前記カバー上部に対する接合角度よりも大きいこと、
を特徴とする請求項
2記載の浚渫装置。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1項に記載の浚渫装置を用いる浚渫方法であって、
前記水中バックホウを水底面に配置し、当該水中バックホウの前記アーム先端に取り付けられた前記回転切削部を用いて、前記水底面に堆積した堆積物を切削する切削工程と、
前記カバー本体における前記カバー後部に設けられた前記サクションマウスに回収ダクトを接続し、当該サクションマウス及び前記回収ダクトを介して、前記切削工程において切削された前記堆積物を回収する回収工程と、
を備えること、
を特徴とする浚渫方法。
【請求項5】
前記切削工程において切削された前記堆積物は、前記回収工程において前記カバー後部の下端に設けられた前記導入部を介して、当該カバー後部に設けられた前記サクションマウス中に引き込まれること、
を特徴とする請求項
4記載の浚渫方法。
【請求項6】
さらに、前記回収工程における前記回収ダクトを地上に設けられた分粒装置に接続し、
当該分粒装置を用いて前記回収工程において回収された前記堆積物中に含まれる硬質堆積
物を分離する分離工程を備えること、
を特徴とする請求項
4又は5記載の浚渫方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浚渫装置及びそれを用いた浚渫方法に関する。
【0002】
従来、海底や川底等の水底面の浚渫や掘削を行うとき、例えば特許文献1、2のような装置が提案されている。
【0003】
特許文献1では、水中バックホウアームにチルト装置を介してツインヘッダ式カッタヘッドを装着して、カッタヘッドを掘削法面に対応して傾斜可能にする旨が開示されている。特許文献1の開示技術では、例えばツインヘッダ式カッタヘッドによる海底掘削時において、凹凸の多い複雑な海底面の掘削にも対応でき、左右のカッタヘッドの中央部の掘削残しをなくすると共に、掘削時の作業海域周辺の海水の濁りを防止できる。
【0004】
特許文献2の開示技術では、掘削用ティース付きバケットをもつバケットホイールの回転に伴い、水底の堆積物を掘削し掬い上げた掘削物を、バケットホイールと共に旋回する旋回棒と固定スリット部材との微小隙間に挟み込んで破砕してから、水と共にサクションマウスへ吸引して、ラダーに沿う配管を通じ搬送する。バケットホイールはカバーで上方から覆われており、同カバー下端から下方へ形成されるウォーターカーテンと相まって、付近の水中への汚濁拡散が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-220725号公報
【文献】特開平10-114966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、水底面の堆積物のうち比較的大きい貝殻や、硬化した泥等を対象とした浚渫を行う場合、カッタヘッド等の回転切削部では粉々に粉砕することが難しい。このため、回転切削部によって切削された上記堆積物は、粉砕された細かい堆積物に比べて固形状を留めており、効率的に撤去(回収)し難いという事情がある。
【0007】
この点、特許文献1では、掘削片を回収するために吸込み装置を配設する技術が開示されている。しかしながら、特許文献1に開示された吸込み装置の配設位置は、アームに沿う位置が開示されており、切削する位置と、吸込み装置との間の距離が大きい。このため、上述した比較的大きい貝殻や、硬化した泥等を対象とした堆積物を吸い込む場合、カッタヘッドを用いてラバー上部まで堆積物を持ち上げる必要があり、効率的に堆積物を吸い込むことが難しい。
【0008】
また、特許文献2では、サクションマウスの吸入口にスクリーンを備え、粗大物を排除することを前提としている。このため、特許文献1と同様に、上述した比較的大きい貝殻や、硬化した泥等を対象とした堆積物を吸い込むことを前提としておらず、効率的に堆積物を吸い込むことが難しい。
【0009】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであって、その目的とするところは、効率的に堆積物を回収することができる浚渫装置及びそれを用いた浚渫方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明に係る浚渫装置は、水中バックホウと、当該水中バックホウのアーム先端に取り付けられた回転切削部と、当該回転切削部の周囲を覆うように設けられたカバー本体と、当該カバー本体に設けられたサクションマウスと、を備える浚渫装置であって、前記カバー本体は、前記回転切削部の上方に設けられたカバー上部、前記回転切削部の前方に設けられたカバー前部、前記回転切削部の後方に設けられたカバー後部、前記回転切削部の左右両側に設けられたカバー端部、及び前記カバー後部の下端に設けられた導入部により構成され、前記カバー前部の下端から前記導入部の下端までの範囲に亘って開口部が形成され、前記カバー後部には、前記サクションマウスが設けられ、前記カバー上部は、前記アーム先端に取り付けられ、前記回転切削部の回転軸に直交する垂直断面において、前記カバー前部の長さは、前記カバー後部の長さ、及び前記回転切削部の直径の何れの長さよりも短く、前記導入部は、前記カバー後部の下端から前方かつ下方に傾斜して設けられ、前記回転切削部の下端は、前記導入部の下端よりも前方に設けられ、前記回転切削部は、前記開口部から露出されることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る浚渫装置は、第1発明において、前記回転切削部の回転軸に直交する垂直断面において、前記カバー後部の前記カバー上部に対する接合角度は、前記カバー前部の前記カバー上部に対する接合角度よりも大きいこと、を特徴とする。
【0013】
第3発明に係る浚渫装置は、第2発明において、前記回転切削部の回転軸に直交する垂直断面において、前記導入部の前記カバー後部に対する接合角度は、前記カバー前部の前記カバー上部に対する接合角度よりも大きいこと、を特徴とする。
【0014】
第4発明に係る浚渫方法は、第1発明~第3発明の何れかにおける浚渫装置を用いる浚渫方法であって、前記水中バックホウを水底面に配置し、当該水中バックホウの前記アーム先端に取り付けられた前記回転切削部を用いて、前記水底面に堆積した堆積物を切削する切削工程と、前記カバー本体における前記カバー後部に設けられた前記サクションマウスに回収ダクトを接続し、当該サクションマウス及び前記回収ダクトを介して、前記切削工程において切削された前記堆積物を回収する回収工程と、を備えること、を特徴とする。
【0015】
第5発明に係る浚渫方法は、第4発明において、前記切削工程において切削された前記堆積物は、前記回収工程において前記カバー後部の下端に設けられた前記導入部を介して、当該カバー後部に設けられた前記サクションマウス中に引き込まれること、を特徴とする。
【0016】
第6発明に係る浚渫方法は、第4発明又は第5発明において、さらに、前記回収工程における前記回収ダクトを地上に設けられた分粒装置に接続し、当該分粒装置を用いて前記回収工程において回収された前記堆積物中に含まれる硬質堆積物を分離する分離工程を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1発明~第6発明によれば、サクションマウスは、カバー後部に設けられる。このため、回転切削部により切削された堆積物を、カバー本体内へ引込んだ直後に吸い込むことができる。これにより、効率的に堆積物を回収することが可能となる。
【0018】
特に、第1発明によれば、カバー前部の長さは、カバー後部の長さ、及び回転切削部の直径の何れの長さよりも短い。このため、カバー本体の前方には回転切削部が露出する部分(開口部)が形成され、回転切削部と堆積物との接触面積を大きくすることができる。これにより、回転切削部を用いて堆積物を切削し易くすることが可能となる。また、開口部が形成されることで、水をカバー本体内に引き込み易くすることができる。これにより、サクションマウスから堆積物を吸引する際、水を適度に吸引することができ、吸引効率の劣化を抑制することができる。従って、堆積物を回収する効率をさらに向上させることが可能となる。
【0019】
特に、第2発明によれば、カバー後部のカバー上部に対する接合角度は、カバー前部のカバー上部に対する接合角度よりも大きい。このため、カバー本体内においてサクションマウスの周辺の体積を、大きくすることができる。これにより、カバー本体内に引き込まれた堆積物を、吸い込み易くすることが可能となる。
【0020】
特に、第3発明によれば、導入部のカバー後部に対する接合角度は、カバー前部のカバー上部に対する接合角度よりも大きい。このため、導入部と、回転切削部との間の体積を、カバー前部と、回転切削部との間の体積よりも大きく形成することができる。これにより、回転切削部を用いて切削された堆積物を、カバー本体内に引き込み易くすることが可能となる。
【0021】
特に、第4発明によれば、切削工程は、水中バックホウを水底面に配置し、水中バックホウのアーム先端に取り付けられた回転切削部を用いて、水底面に堆積した堆積物を切削する。このため、例えば流速が大きくなる場合においても、水中バックホウに作用する負荷と、回転切削部に作用する負荷との差が変化し難い。これにより、回転切削部の操作性が低下することを抑制できる。従って、作業効率の低下を抑制することが可能となる。
【0022】
特に、第5発明によれば、切削工程において切削された堆積物は、回収工程においてカバー後部の下端に設けられた導入部を介して、カバー後部に設けられたサクションマウス中に引き込まれる。このため、回転切削部により切削された堆積物を、導入部を介してサクションマウスまで誘導し易くすることができる。これにより、サクションマウスから堆積物を吸引する効率を向上させることが可能となる。
【0023】
特に、第6発明によれば、分離工程は、回収工程における回収ダクトを地上に設けられた分粒装置に接続し、分粒装置を用いて回収工程において回収された堆積物中に含まれる硬質堆積物を分離する。このため、堆積物のうち硬質堆積物のみを容易に処理することができる。これにより、堆積物から硬質堆積物のみを効率良く分離し、投棄することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態における浚渫装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるカバー本体の一例を示す模式斜視図である。
【
図3】
図3(a)は、本実施形態におけるカバー本体の一例を示す模式正面図であり、
図3(b)は、
図3(a)の3B-3B線に対応し、回転切削部の端部側から見た模式断面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における保護部の一例を示す模式斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における浚渫方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を適用した浚渫装置及びそれを用いた浚渫方法を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
本実施形態における浚渫方法は、例えば
図1に示す浚渫装置1を用いて行われる。浚渫方法は、例えば流速の大きい環境(例えば1ノット以上のほか、例えば1ノット以上3ノット以下を示す)で行われる。浚渫方法は、例えば取水路のような狭い場所で行われてもよい。
【0027】
(浚渫装置1)
浚渫装置1は、例えば
図1に示すように、水中8の水底面9に堆積した堆積物91に対して浚渫作業を行うために用いられる。特に、浚渫装置1は、貝殻や硬化した泥等を対象とした浚渫においても、効率的に堆積物91を回収することができる。また、浚渫装置1は、流速の大きい場所のほか、取水路のような狭い場所においても、効率的に堆積物91を回収することができる。
【0028】
浚渫装置1は、水中バックホウ2と、回転切削部3と、カバー本体4と、サクションマウス5とを備える。浚渫装置1を用いた浚渫作業は、例えば水中バックホウ2の操縦席に作業者が搭乗して行われる。
【0029】
<水中バックホウ2>
水中バックホウ2は、本体部2mと、アーム2aとを有する。本体部2mには、作業者が搭乗する操縦席等が設けられる。アーム2aは、本体部2mから延在し、本体部2m側を旋回内側Riとして任意に旋回する(
図1に示す矢印R1)。
【0030】
水中バックホウ2として、例えば水中8で利用可能な油圧ショベル、バックホウ等の公知のものを用いることができ、作業環境に応じて任意に選択することができる。水中バックホウ2を用いることで、地上99に配置すべき装置等(例えば支援ユニット2b等)を、浚渫作業位置から離れた場所に設けることができる。即ち、浚渫作業近辺の地上99や水上に配置する装置等を必要としないため、取水路のような狭い場所においても、浚渫作業を容易に実施することが可能となる。
【0031】
水中バックホウ2の性能は、例えば水中重量が11.7t程度、水中走行速度が5.0km/h程度、水中走行駆動力が91kN程度、水中登坂能力が、70%(35°)程度、接地圧が39kPa程度である。この場合、流速が大きい場所においても、水中バックホウ2の転倒等を抑制することができ、浚渫作業の安全性を図ることが可能となる。
【0032】
水中バックホウ2は、例えばケーブル2c(例えば油圧ホース)を介して、支援ユニット2bに接続される。支援ユニット2bは、ケーブル2cを介して水中バックホウ2の電源モータを動かすために用いられる。
【0033】
<回転切削部3>
回転切削部3は、アーム2aの先端(アーム先端2as)に取り付けられる。回転切削部3として、例えばツインヘッダが用いられる。ツインヘッダとして、例えばドラム径が500~900mm程度、ドラム幅が950~1,800mm程度であり、公知のものが用いられる。
【0034】
回転切削部3は、例えばアーム2aの旋回外側Roから水底面9を経由してアーム2aの旋回内側Riへ回転する(
図1に示す矢印R2)。このため、回転切削部3により切削された堆積物91は、水中バックホウ2の本体部2m側に引き込まれる。
【0035】
<カバー本体4>
カバー本体4は、例えば
図2及び
図3に示すように、回転切削部3の周囲を覆うように設けられ、例えば回転切削部3の上部及び側面を覆う。カバー本体4を設けることで、回転切削部3により切削された堆積物91を、カバー本体4内に引き込むことができる。このため、切削された堆積物91が水中8に拡散することを抑制することができる。これにより、例えば切削された堆積物91が、浚渫作業箇所よりも下流に堆積することを抑制することが可能となる。
【0036】
カバー本体4は、カバー後部41、カバー前部42、カバー上部43、導入部44、及びカバー端部45a、45bにより構成される。カバー本体4には、回転切削部3の下側に開口部4sが形成される。
【0037】
カバー後部41は、回転切削部3の後方に設けられ、アーム2aの旋回内側Riに設けられる。カバー前部42は、回転切削部3の前方に設けられ、アーム2aの旋回外側Roに設けられる。カバー上部43は、回転切削部3の上方に設けられる。カバー上部43は、カバー前部42及びカバー後部41と接合され、アーム先端2asに取り付けられる。導入部44は、カバー後部41の下端に設けられる。導入部44は、カバー後部41と接合され、アーム先端2asと離間する。カバー端部45a、45bは、それぞれ回転切削部3の左右両側(端部側)に設けられ、カバー後部41、カバー前部42、カバー上部43、及び導入部44と接合される。開口部4sは、カバー前部42の下端から導入部44の下端までの範囲に亘って形成される。
【0038】
カバー本体4は、例えば回転切削部3よりも全体的に大きく、接触しない程度の大きさで形成される。例えば回転切削部3のドラム径が600mm程度、及びドラム幅が1,100mm程度の場合、カバー本体4の高さが700~750mm程度、及び幅が1,200~1,250mm程度である。カバー本体4を形成する材料として、例えば鋼板が用いられる。カバー本体4の各構成は、ボルト及びナットを用いるほか、例えば溶接接合を用いて、それぞれ接合される。
【0039】
<サクションマウス5>
サクションマウス5は、回転切削部3に近接して設けられ、例えばカバー本体4に設けられる。サクションマウス5は、例えばカバー後部41に設けられる。
【0040】
この場合、回転切削部3を用いて水底面9上の堆積物91を切削する際、切削された堆積物91が、カバー後部41に向かってカバー本体4内に引き込まれる。これにより、堆積物91をカバー本体4内へ引込んだ直後に、サクションマウス5を用いて吸い込むことができる。これにより、効率的に堆積物91を回収することが可能となる。
【0041】
サクションマウス5として、例えば直径300~400mm程度のSUS製フランジが用いられる。サクションマウス5は、例えばボルト及びナットを用いて、カバー後部41に固定される。サクションマウス5は、例えば
図1に示すように、回収ダクト7a及びポンプ7bを介して、地上99に設けられた分粒装置7cに接続される。分粒装置7cは、堆積物91を分類し、例えば堆積物91に含まれる硬質堆積物91aとそれ以外に分類する。分粒装置7cは、例えば車両上に配置されてもよい。なお、「硬質堆積物」とは、例えば回転切削部3による粉砕が難しい物質を示し、例えば貝殻のほか、例えば流木、鉄、ネット、ゴミ、魚等を示す。
【0042】
例えば
図3(b)に示すように、回転切削部3の回転軸に直交する垂直断面において(回転切削部3の端部側(水中バックホウ2の側面)から見て)、カバー前部42の長さL2は、カバー後部41の長さL1、及び回転切削部3の直径L3の何れの長さよりも短い。この場合、回転切削部3は、カバー前部42の下側に形成された開口部4sから露出し、回転切削部3と堆積物91との接触面積を大きくすることができる。また、開口部4sが形成されることで、水をカバー本体4内に引き込み易くすることができる。
【0043】
例えば回転切削部3の回転軸に直交する垂直断面において、カバー後部41のカバー上部43に対する接合角度θ1(カバー後部41と、カバー上部43との間の角度)は、カバー前部42のカバー上部43に対する接合角度θ2(カバー前部42と、カバー上部43との間の角度)よりも大きい。このため、カバー後部41と、回転切削部3との間の空間(体積)を、カバー前部42と、回転切削部3との間の体積よりも大きく形成することができる。また、カバー前部42と、回転切削部3との間の体積を小さく形成することで、カバー前部42から引き込まれる水の流速を大きくすることができ、サクションマウス5に吸引される水の量を一定に保ち易くすることができる。
【0044】
例えば回転切削部3の回転軸に直交する垂直断面において、導入部44のカバー後部41に対する接合角度θ3(カバー後部41と、導入部44との間の角度)は、カバー前部42のカバー上部43に対する接合角度θ2(カバー前部42と、カバー上部43との間の角度)よりも大きい。このため、導入部44と、回転切削部3との間の体積を、カバー前部42と、回転切削部3との間の体積よりも大きく形成することができる。これにより、回転切削部3を用いて切削された堆積物91を、カバー本体4内に引き込み易くすることが可能となる。
【0045】
<保護部6>
浚渫装置1は、例えば
図1に示すように、保護部6を備えてもよい。保護部6は、水中バックホウ2の操縦席の正面及び側面に連続して取り付けられる。
【0046】
保護部6は、例えば
図4に示すように、固定部6aと、保護板6bとを有する。固定部6aは、操縦席のフレームに沿って設けられ、保護板6bを固定する。保護板6bは、操縦席の正面及び側面に設けられる。保護板6bは、操縦席の上面、背面、及び下面には設けられず、保護部6には、開口部6sa、6sb、6scが形成される。
【0047】
固定部6aとして、例えば鋼板が用いられる。保護板6bとして、衝撃強度に優れた透明プラスチック板が用いられ、例えばポリカーボネート板が用いられる。保護板6bは、例えばボルト及びナットを用いて固定部6aに固定される。
【0048】
浚渫装置1は、保護部6を備えることで、例えば流速の大きい場所での浚渫作業においても、作業者等の安全を確保した状態で、作業を進めることができる。特に、開口部6saを設けることで、作業者が容易に操縦席に搭乗することができる。
【0049】
(浚渫方法)
次に、本実施形態における浚渫方法の一例について説明する。
図5は、本実施形態における浚渫方法の一例を示す模式図である。
【0050】
浚渫方法は、切削工程S110と、回収工程S120とを備え、例えば分離工程S130を備えてもよい。
【0051】
<切削工程S110>
切削工程S110は、水底面9に配置された水中バックホウ2、及び回転切削部3を用いて、水底面9に堆積した堆積物91を切削する。切削工程S110は、例えば水中8における下流から上流に向けて実施する(
図5に示す破線矢印の向き)。このため、例えば上流から下流に向けて流れる堆積物91を、サクションマウス5に誘導し易くすることができる。これにより、堆積物91を回収する効率を、さらに向上させることが可能となる。
【0052】
切削工程S110は、例えば
図2等に示したカバー本体4の中に、切削された堆積物91を引き込むほか、例えば導入部44を介して、切削された堆積物91をカバー本体4の中に引き込んでもよい。このため、回転切削部3により切削された堆積物91を、導入部44を介してサクションマウス5まで誘導し易くすることができる。これにより、サクションマウス5を用いて堆積物91を吸引する効率を向上させることが可能となる。また、切削された堆積物91が水中8に拡散することを抑制することができる。
【0053】
切削工程S110は、例えば開口部4sから、回転切削部3を用いて堆積物91切削してもよい。この場合、回転切削部3と堆積物91との接触面積を大きくすることができる。
【0054】
切削工程S110は、例えば
図4に示した保護部6を取り付けた状態で、堆積物91を切削してもよい。この場合、流速の大きい環境での浚渫作業においても、水中バックホウ2を運転する作業者の安全を確保した状態で、作業を進めることができる。
【0055】
<回収工程S120>
回収工程S120は、回転切削部3に近接して設けられたサクションマウス5、及びサクションマウス5に接続された回収ダクト7aを介し、切削された堆積物91を回収する。即ち、回収工程S120は、カバー本体4におけるカバー後部41に設けられたサクションマウス5に回収ダクト7aを接続し、サクションマウス5及び回収ダクト7aを介して、切削工程S110において切削された堆積物91を回収する。回収工程S120では、例えば地上99に設けられたポンプ7bを用いて、サクションマウス5から堆積物91を吸引して回収する。ポンプ7bとして、例えば横型真空ポンプ、及びブースターポンプの少なくとも何れかが用いられる。
【0056】
回収工程S120は、例えば
図2等に示すように、カバー後部41に設けられたサクションマウス5から、カバー本体4の中に引き込まれた堆積物91を回収する。この場合、回転切削部3により切削された堆積物91を、カバー本体4内へ引き込んだ直後に吸い込むことができる。これにより、効率的に堆積物91を回収することが可能となる。例えば切削工程S110において切削された堆積物91は、回収工程S120においてカバー後部41の下端に設けられた導入部44を介して、カバー後部41に設けられたサクションマウス5中に引き込まれる。これにより、切削された堆積物91が水中8に拡散することを抑制することができる。
【0057】
<分離工程S130>
分離工程S130は、回収工程120における回収ダクト7aを地上99に設けられた分粒装置7cに接続し、分粒装置7cを用いて回収工程S120において回収された堆積物91中に含まれる硬質堆積物91aを分離する。分離工程S130は、例えば回収工程S120のあと、回収ダクト7aに接続されて地上99に設けられた分粒装置7cを用いて、回収された堆積物91に含まれる硬質堆積物91a(例えば貝殻)を分離する。このため、堆積物91のうち硬質堆積物91aのみを容易に処理することができる。これにより、堆積物91から硬質堆積物91aのみを効率良く分離し、投棄することが可能となる。
【0058】
上述した各工程S110~S130を実施することにより、本実施形態における浚渫方法が終了する。
【0059】
なお、従来の浚渫方法では、例えば地上から延在したアームを用いて、水中の破砕機付水中ポンプを制御する。ここで、浚渫作業を実施する際、水中の流速が大きくなるにつれて、水中における浚渫装置の回転切削部やアームに作用する負荷が増大する。このため、従来の開示技術では、流速が大きくなるにつれて、地上のアームに作用する負荷と、水中の破砕機付水中ポンプに作用する負荷との差が大きくなる傾向に変化する。これにより、破砕機付水中ポンプの操作性が低下し、作業効率が低下するという事情がある。
【0060】
これに対し、本実施形態によれば、切削工程S110は、水中バックホウ2を水底面9に配置し、水中バックホウ2のアーム先端2asに取り付けられた回転切削部3を用いて、水底面9に堆積した堆積物91を切削する。このため、例えば流速が大きくなる場合においても、水中バックホウ2に作用する負荷と、回転切削部3に作用する負荷との差が変化し難い。これにより、回転切削部3の操作性が低下することを抑制できる。従って、作業効率の低下を抑制することが可能となる。
【0061】
本実施形態によれば、サクションマウス5は、カバー後部41に設けられる。このため、回転切削部3により切削された堆積物91を、カバー本体4内へ引込んだ直後に吸い込むことができる。これにより、効率的に堆積物91を回収することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態によれば、回転切削部3は、水中バックホウ2におけるアーム2aのアーム先端2asに取り付けられ、水底面9に堆積された堆積物91を切削するためのものである。このため、例えば流速が大きくなる場合においても、水中バックホウ2に作用する負荷と、回転切削部3に作用する負荷との差が変化し難い。これにより、回転切削部3の操作性が低下することを抑制できる。従って、作業効率の低下を抑制することが可能となる。
【0063】
また、本実施形態によれば、カバー前部42の長さL2は、カバー後部41の長さL1、及び回転切削部3の直径L3の何れの長さよりも短い。このため、カバー本体4の前方には回転切削部3が露出する部分(開口部4s)が形成され、回転切削部3と堆積物91との接触面積を大きくすることができる。これにより、回転切削部3を用いて堆積物91を切削し易くすることが可能となる。また、開口部4sが形成されることで、水をカバー本体4内に引き込み易くすることができる。これにより、サクションマウス5から堆積物91を吸引する際、水を適度に吸引することができ、吸引効率の劣化を抑制することができる。従って、堆積物91を回収する効率をさらに向上させることが可能となる。
【0064】
また、本実施形態によれば、カバー後部41のカバー上部43に対する接合角度θ1は、カバー前部42のカバー上部43に対する接合角度θ2よりも大きい。このため、カバー本体4内においてサクションマウス5の周辺の体積を、大きくすることができる。これにより、カバー本体4内に引き込まれた堆積物91を、吸い込み易くすることが可能となる。
【0065】
また、本実施形態によれば、導入部44のカバー後部41に対する接合角度θ3は、カバー前部42のカバー上部43に対する接合角度θ2よりも大きい。このため、導入部44と、回転切削部3との間の体積を、カバー前部42と、回転切削部3との間の体積よりも大きく形成することができる。これにより、回転切削部3を用いて切削された堆積物91を、カバー本体4内に引き込み易くすることが可能となる。
【0066】
また、本実施形態によれば、切削工程S110において切削された堆積物91は、回収工程S120においてカバー後部41の下端に設けられた導入部44を介して、カバー後部41に設けられたサクションマウス5中に引き込まれる。このため、回転切削部3により切削された堆積物91を、導入部44を介してサクションマウス5まで誘導し易くすることができる。これにより、サクションマウス5から堆積物91を吸引する効率を向上させることが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、分離工程S130は、回収工程S120における回収ダクト7aを地上99に設けられた分粒装置7cに接続し、分粒装置7cを用いて回収工程S120において回収された堆積物91中に含まれる硬質堆積物91aを分離する。このため、堆積物91のうち硬質堆積物91aのみを容易に処理することができる。これにより、堆積物91から硬質堆積物91aのみを効率良く分離し、投棄することが可能となる。
【0068】
また、本実施形態によれば、例えば切削工程S110は、水中バックホウ2の操縦席の正面及び側面に保護部6を取り付けた状態で、堆積物91を切削することを含む。この場合、流速の大きい環境での浚渫作業においても、水中バックホウ2を運転する作業者の安全を確保した状態で、作業を進めることができる。これにより、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0069】
また、本実施形態によれば、回転切削部3は、水中バックホウ2におけるアーム2aのアーム先端2asに取り付けられ、水底面9に堆積された堆積物91を切削するためのものである。このため、例えば流速が大きくなる場合においても、水中バックホウ2に作用する負荷と、回転切削部3に作用する負荷との差が変化し難い。これにより、回転切削部3の操作性が低下することを抑制できる。従って、作業効率の低下を抑制することが可能となる。
【0070】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明したが、上述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0071】
1 :浚渫装置
2 :水中バックホウ
2a :アーム
2as :アーム先端
2b :支援ユニット
2c :ケーブル
2m :本体部
3 :回転切削部
4 :カバー本体
4s :開口部
41 :カバー後部
42 :カバー前部
43 :カバー上部
44 :導入部
45a :カバー端部
45b :カバー端部
5 :サクションマウス
6 :保護部
6a :固定部
6b :保護板
6sa :開口部
6sb :開口部
6sc :開口部
7a :回収ダクト
7b :ポンプ
7c :分粒装置
8 :水中
9 :水底面
91 :堆積物
91a :硬質堆積物
99 :地上
Ri :旋回内側
Ro :旋回外側
S110 :切削工程
S120 :回収工程
S130 :分離工程