(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】電気電子機器のリード線保持構造、及びその構造を備えるLVDT
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20240805BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240805BHJP
G01D 5/22 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
H05K7/00 L
H01F30/10 L
H01F30/10 S
G01D5/22 A
(21)【出願番号】P 2020152855
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100212657
【氏名又は名称】塚原 一久
(72)【発明者】
【氏名】江塚 幸司
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-101105(JP,A)
【文献】特開2017-150971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H01F 30/10
G01D 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部(1c)を有するケース(1)と、
前記開口部(1c)に固定され、リード線(11)が通されているリード線引き出し部(2c)を有するケースカバー(2)と、
前記ケース(1)の内部に配置され、リード線(11)が接続されているリード線接続部材(4)と、
複数設けられているとともに、一端部(11a)が前記リード線接続部材(4)にそれぞれ接続され、他端部(11b)が前記リード線引き出し部(2c)から前記ケース(1)の外部にそれぞれ引き出されている複数のリード線(11)と、
前記ケース(1)の内部で、前記ケースカバー(2)側に設けられ、前記リード線(11)を保持している保持板(30)と、を備える電気電子機器において、
前記保持板(30)には、前記リード線(11)を1本ずつ保持するリード線保持部(42)が複数設けられ
、前記各リード線保持部(42)には、前記リード線(11)を固定する充填材(21)が充填されている、電気電子機器のリード線保持構造。
【請求項2】
前記リード線保持部(42)は、前記保持板(30)の外周面に設けられた凹部(42)である、請求項1に記載された、電気電子機器のリード線保持構造。
【請求項3】
前記保持板(30)には、前記リード線(11)が通されていない中心穴(41)が設けられている、請求項1、又は2に記載された、電気電子機器のリード線保持構造。
【請求項4】
前記保持板(30)の前記リード線保持部(42)を画定するそれぞれの面に接する角部には、第1角処理部(34)、又は第2角処理部(34,38)の内の少なくとも1つが設けられている、請求項1~3の何れか一項に記載された、電気電子機器のリード線保持構造。
【請求項5】
前記保持板(30)は硬質樹脂材で形成されている、請求項1~4の何れか一項に記載された、電気電子機器のリード線保持構造。
【請求項6】
前記保持板(30)は軟質樹脂材で形成されている、請求項1~4の何れか一項に記載された、電気電子機器のリード線保持構造。
【請求項7】
前記リード線接続部材(4)は、前記ケース(1)の内部に、前記ケース(1)の中心軸方向Lに沿って配置されている中空筒状のボビン(3)の外面に形成されているステータコイル(4)であり、
前記ステータコイル(4)はLVDT(100)に設けられている、請求項1~6の何れか一項に記載された、電気電子機器のリード線保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リード線保持構造を備える電気電子機器に関し、特に新規なリード線保持構造を備えたLVDTに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気電子機器において、ケースの内部からリード線を開口部を通して外部に引き出す構造が用いられている。そのような構造を備える装置として、例えば、特許文献1に記載された、直線方向位置を検出するLVDTを挙げることができる。LVDTは、筒状のケースと、ケースの内部に収容された筒状のボビンと、ボビンの外周に絶縁材を介して設けられたステータコイルと、ステータコイルに接続されている複数のリード線とを備えている。ステータコイルは、供給電圧が印加される励磁用の一次コイルと、出力用の二次コイルとを有している。複数のリード線は、各リード線の一端部がステータコイルの対応するぞれぞれの接続部に接続されている。リード線はケース端部に挿入されている部材(基台7)の中心穴を通って、ケース外に引き出されている。ケース内の各部材、及び、リード線は、充填材が充填されて固定されている。筒状のボビン内には、プローブの一端部に設けられたコアを含むロッド部が、直線移動自在に配置されている。
【0003】
プローブに設けられた磁性体であるコアがステータコイルの中を往復移動すると、出力用の二次コイルにコアの位置に応じて電圧が発生する。すなわち、コアの移動ストローク上の任意の位置における発生電圧を検出することができる。この原理により、LVDTは直線方向の位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ケース外に引き出されている複数のリード線は、部材(基台7)の中心穴をまとめて通されており、その状態で充填材の充填作業が行われていた。複数のリード線がまとめて穴に通されていたため、リード線同士の間に充填材が入り込みにくく、各々のリード線を充填材で完全に固定できない恐れがあった。そのため、リード線同士の間に隙間が生じて、リード線を完全に封止できずに水が浸入する可能性があった。また、充填材を複数のリード線を通した穴から注入していたため、充填作業は容易ではなく、ケース内の各部に充填材を充填するのが困難であった。そのような状況下で充填するため、充填材が固化した時の吹き出し、及びボイドが発生しやすかった。さらに、一方端がステータコイルに接続された状態で、長いリード線の他方端をそれぞれ穴に通してLVDTを組み立てていたため、作業性が悪かった。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、リード線周辺部の水侵入の恐れを低減させ、組立作業性を向上させた電気電子機器のリード線保持構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電気電子機器のリード線保持構造では、リード線接続部材に接続されており、ケースの外部にそれぞれ引き出されている複数のリード線は、保持板の複数のリード線保持部に1本ずつ保持されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数のリード線が保持板に1本ずつ保持されているために、それぞれのリード線を隙間なく確実に充填材で固定できる。よって、リード線周辺部の水侵入の恐れを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るLVDTの一端部における長手方向に沿った部分断面図である。
【
図3】
図1においてケースカバーのみを示した断面図である。
【
図4】
図3のケースカバーを右側から見たケースカバーの右側面図である。
【
図5】
図1の保持板を右側から見た保持板の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の電気電子機器のリード線保持構造をLVDTに適用した実施の形態を説明する。本発明は、開口部を有するケースと、開口部に固定され、リード線引き出し部を有する少なくとも1つのケースカバーと、ケースの内部に配置された、例えばステータコイル等からなるリード線接続部材と、複数設けられているとともにそれぞれの一方端がリード線接続部材に接続され、それぞれの他方端が前記リード線引き出し部からケースの外部に引き出されている複数のリード線と、を備える電気電子機器であれば、本発明は、LVDT以外の電気電子機器にも適用可能である。例えば、各種センサ類、アクチュエータ類である。センサ類は、速度センサ、加速度センサ、磁気センサ、温度センサ、音センサ、光線線センサ、気体濃度等を検知したり液体組成を検知する化学センサ、などが挙げられる。また、アクチュエータ類は、モータ、磁気ソレノイド等を内蔵したアクチュエータが挙げられる。LVDT以外の電気電子機器に適用した場合でも、本発明の効果を同様に得ることができる。
【0011】
実施の形態
本発明の実施の形態に係るLVDT100を説明する。
図1は、LVDT100の一方端1aにおいて、LVDT100の中心軸L方向に沿った断面を示す部分断面図である。
図2は、
図1におけるA-A断面図であり、LVDTの中心軸に垂直な断面図である。また、
図3は、本実施の形態に係る保持板30を示した正面図である。また、
図4は、
図3におけるB-B断面図である。
【0012】
図1と
図2とを参照しながら、LVDT100の構造を説明する。LVDT100は、中空筒状に形成されたケース1と、ケース1の一方端1aに固定されたケースカバー2と、ケース1の内部に設けられているボビン3と、ボビン3の外面に設けられているステータコイル4と、ステータコイル4に接続されている複数のリード線11と、リード線11をケース1内で保持している保持板30と、ケース1の内部に充填されている充填
材21と、ケースカバー2のリード線引き出し部2cを封止しているシール材22と、を備えている。また、図示していないが、周知のように、ボビン3の内部にはコアを備えたプローブが摺動自在に配置されている。
【0013】
図1は、LVDT100の一方端側を示した断面図である。中空筒状に形成されたケース1は、一方端1aを有している。一方端1aは、開口部1cを有している。一方端1aから複数のリード線11がケース1の外に引き出されている。また、ケース1の一方端1aと反対側の他方端には、図示はされていないが、プローブが貫通している閉塞部材が溶接固定されており、その閉塞部材からプローブの一方端が突出している。ケース1は、SUS304等の金属で形成されている。なお、LVDT100の中心軸Lと、ケース1の中心軸とは同軸であるため、ケース1の中心軸も中心軸Lと表記する。
【0014】
図3~
図4を参照しながら、ケースカバー2を説明する。一方端1aの開口部1cにはケースカバー2が固定されて閉塞されている。ケースカバー2は、リング部2aと、円筒部2bとを有している。リング部2aと、円筒部2bとのそれぞれの中心を通るケースカバー2の中心軸Mを、ケース1の中心軸Lと同軸にして配置されている。ケースカバー2は、一方端1aの開口部1cに、円筒部2bを挿入された状態で、ケース1と溶接されて固定されている。
【0015】
リング部2aは、中央部付近にリード線引き出し部2cを有するとともに、LVDT100の中心軸L方向の厚さが一定に形成されているリング状部材である。本発明の実施の形態に係るLVDT100において、リード線引き出し部2cは、リード線が通される穴である。円筒部2bの外径は、ケース1の開口部1cの内径より若干小さい一定の外径に形成されている。円筒部2bの内径は、リング部2aに接続されている一端部から離れるにつれて徐々に大きくなるテーパ状に形成されている。したがって、円筒部2bは、
図3に示されているように、断面テーパ形状の円筒状部材である。ケースカバー2は、リング部2aの一方端1aが接する面に、円筒部2bがそれぞれの中心軸を一致させて固定されて形成されている。ケースカバー2は、SUS304等の金属で一体的に形成されている。
【0016】
ボビン3は、中空円筒状の部材であり、ボビン3の中心軸をケース1の中心軸Lと同軸にしてケース1内に配置されている。ボビン3は、SUS304等の金属で形成されている。ボビン3の外面には、図示しない絶縁材が巻回されている。絶縁材は、テフロン(登録商標)樹脂等の樹脂材で形成されている。絶縁材は、例えば、一定幅で長尺に形成されており、ボビン3の外面にテープを巻くように巻回される。他の実施例として、ボビン3を合成樹脂等の絶縁材料で形成することで、絶縁材を省略することができる。その場合は、ボビン3の外面上に、リード線接続部材であるステータコイル4が直接形成される。
【0017】
ステータコイル4は、ボビン3の外面に絶縁材を介して、導線が巻回されて形成されている。本発明の実施の形態に係るLVDT100において、リード線11が接続されているリード線接続部材4は、ステータコイル4である。ステータコイル4を形成する導線には、絶縁被覆された円形断面の連続銅線が用いられている。周知のように、ステータコイル4は、図示しない、励磁用の一次コイルと出力用の二次コイルとを有している。
【0018】
ステータコイル4には、複数のリード線11の一端部11aがそれぞれ接続されている。本実施の形態に係るLVDT100では、励磁用の一次コイルに2本、及び、出力用の二次コイルに3本の合計5本が接続されている。周知のように、励磁用の一次コイルに電圧が加えられると、プローブのコアの位置に応じて出力用の二次コイルに電圧が発生する。
【0019】
リード線11の他端部11bは、保持板30に形成されている複数のリード線保持部42のそれぞれに1本ずつ通され、ケースカバー2の穴2cに通されて、ケース1の外部に引き出されている。ケース1の外部に引き出された複数のリード線11は、樹脂チューブ12でまとめて被覆されている。樹脂チューブ12は、例えば、熱収縮チューブである。
【0020】
保持板30は、複数のリード線11を保持している部材である。保持板30は、ケース1の内部の、ステータコイル4と、ケースカバー2との間に配置されて、複数のリード線11を1本ずつ保持している。
【0021】
図5~
図6を参照しながら保持板30を説明する。保持板30は、中央に中心穴41が設けられているとともに、一定の厚さに形成されているリング状部材である。保持板30は、外周端から中心穴41の間際まで、複数のリード線保持部42が形成されている。本発明の実施の形態に係るLVDT100において、リード線保持部42は凹部42である。凹部42は、保持するリード線11の本数以上の数が形成されている。LVDT100では凹部42は、保持するリード線11の数と同じ5つの凹部42が、周方向等間隔に形成されている。隣接する2つの凹部42の間には、扇状の大径部31が形成されている。中心穴41は、リード線11が通されていない穴である。後述するように、ケース1の内部に充填材21を充填する作業において、充填材充填機器の充填用先端部を挿入するための穴である。中心穴41に、リード線11が通されていないことにより、充填作業がやりやすく、充填作業性を向上させることができる。
【0022】
大径部31は、大径部外周面33と、径方向面32と、第1角処理部34と、内周面35とを有している。径方向面32を画定する、径方向に平行な2本の外形線を含んで構成されているそれぞれの角部は、第1角処理部34が設けられている。第1角処理部34は、角部を面取りとした面取り形状部、又は角部をR形状とした角R形状部である。第1角処理部34が設けられていることにより、凹部42を通されているリード線11が角当たりすることがなくなり、リード線11の破損を低減することができる。
【0023】
凹部42の中心穴41側には、小径部36が設けられている。小径部36は、小径部外周面37と、第2角処理部38と、内周面35とを有している。小径部外周面37を画定する周接線方向に平行な2本の外形線を含んで構成されているそれぞれの角部は、第2角処理部38が設けられている。第2角処理部38が設けられていることにより、凹部42を通されているリード線11の角当たりがなくなり、リード線11の破損を低減することができる。
【0024】
隣接する大径部31の互いに対向する2つの径方向面32と、その2つの径方向面32の間に位置する小径部36の小径部外周面37との3つの面により、凹部42が画定されている。すなわち、凹部42は、保持板30の外周面に設けられている。それぞれの凹部42は、各1本のリード線11を保持した状態で、充填材21が充填されている。なお、大径部31と、小径部36とが有する内周面35は、同じ周面上の面である。また、
図2~
図3に示されているように、内周面35を画定する2つの円周線を含む角部には、大径部31、及び、小径部36と同じように、角処理部が形成されていている。それにより、ケース1の内部に充填材21を充填する充填材充填機器の先端部を穴2c内に挿入しやすくなっている。
【0025】
図2、及び
図5における、凹部42の大径部31の大径部外周面33を通る周面の径方向位置からの中心方向への長さ、すなわち凹部42の深さと、中心穴41の半径と、保持板30の半径との関係は、次のとおりである。保持板30の中央に、保持板30の半径のおよそ半分の長さの半径の中心穴41が形成されている。中心穴41のすぐ外周側には、わずかな半径方向長さの小径部36が形成され、保持板30の半径のおよそ半分の半径方向位置から、保持板30の外周端まで、凹部42が形成されている。凹部42の溝状の深さを画定する小径部外周面37の半径方向位置と、中心穴41の半径と、保持板30の半径は、組み込むLVDTに合わせて、適宜決定可能である。例えば、中心穴41の半径は、保持板30の半径のおよそ75%、50%、25%等とすることができる。また、凹部42の溝状の深さを画定する小径部外周面37の半径方向位置は、保持板30の半径のおよそ75%、50%、25%等とすることができる。これらを適宜組み合わせて、又は他の数値を適宜採用して凹部42の形状を決定する。
【0026】
凹部42の溝状の深さを画定する小径部外周面37の半径方向位置と、中心穴41の半径と、保持板30の半径は、適宜決定し得る。しかし中心穴41と、凹部42とは、次の点に留意して決定すると好都合である。中心穴41は、充填材21を充填するのに利用されるため、中心穴41の半径は、ある程度大きい方がよい。また、保持板30の凹部42の溝状の深さについては、次のとおりである。ステータコイル4のリード線11との接続部は、ケース1の外径側より、比較的中心軸L寄りに位置している。また、複数のリード線11は、ケース1の外部に出ると、樹脂材でまとめられる。すなわち、複数のリード線11のそれぞれのケース1における半径方向位置は、保持板30の両側において、ケース1の比較的中心軸L寄りの経路である。したがって、凹部42の溝状の深さは、リード線11をケース1の中心軸L寄りの経路となるように、深め、すなわち、凹部42の溝状の深さを画定する小径部外周面37の半径方向位置はできるだけ中心軸L寄りにした方が、リード線11の経路を自然に形成しやすい。
【0027】
保持板30は、樹脂材で形成されている。保持板30を形成する樹脂材は、保持板30としての形状が維持でき、LVDT100の内部に充填される充填材21との密着性が良い材料であれば使用することができる。前者の特性は、LVDT100を組み立てられ、LVDT100の使用において保持板30の変形が避けられる。また、後者の特性は、保持板30と硬化した充填材21とが隙間なく密着して、LVDT100の内部へ水が浸入することを防ぐことができる。保持板30を形成する樹脂材は、上記要件を備える硬質樹脂材、又は軟質樹脂材が用いられる。硬質樹脂材は、例えば、PBT樹脂、PEEK樹脂、PPS樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂等から選択できる。また、軟質樹脂材は、ゴム材が挙げられる。上記要件を満たせば、上記材料以外でも使用可能である。
【0028】
LVDT100の内部には、上記の構成部品を備えた状態で、充填材21が充填されている。充填材21は、ケース1と、ステータコイル4、リード線11、保持板30等の各部材との間、各リード線11の間、保持板30のリード線保持部42、等、ケース1内の隙間空間に充填され、各部材を固定している。充填材21は、樹脂材、例えばエポキシ樹脂である。
【0029】
充填材21の充填後、ケースカバー2の穴2cには、シール材が塗布され、穴2cが閉塞される。
【0030】
次に、LVDT100の製造方法の概略を説明する。まず、ボビン3に絶縁体を被覆し、絶縁体に導線を巻回してステータコイル4を組み立てる。次に、複数のリード線11をステータコイル4の対応する接続部に接続する。その後、複数のリード線11を保持板30の各凹部42にそれぞれはめ込む。その状態の組立品をケース1の内部に収容して適切な位置に保持し、ケースカバー2をケース1に溶接して固定する。その状態で、ケースカバー2の穴2c、及び、保持板30の中心穴41を通して充填材充填機器の充填用先端部を挿入し、ケース内の隙間に充填材21を十分充填して充填材21を乾燥させ、ケース1の内部の構成部品を固定する。充填材21の乾燥後、複数のリード線11を樹脂チューブ12である熱収縮チューブに通して加熱し、複数のリード線11をまとめる。ケースカバー2の穴2cにシール材を塗布して、穴2cを密封する。以上が、LVDT100の概略の製造方法である。
【0031】
本発明の電気電子機器100のリード線保持構造では、リード線接続部材4に接続されており、ケースの外部にそれぞれ引き出されている複数のリード線は、保持板30の複数のリード線保持部42に1本ずつ保持されている。
【0032】
本発明の上記構成によれば、複数のリード線11が保持板30に1本ずつ保持されているために、それぞれのリード線11が隙間なく確実に充填材21で固定できる。よって、リード線11周辺の水侵入の恐れを低減させることができる。
【0033】
また、本実施の電気電子機器のリード線保持構造では、リード線保持部42が保持板30の外周面に設けられた凹部42である。
【0034】
本発明の上記構成によれば、複数のリード線11の一端部11aがステータコイル4に接続された状態でも、複数のリード線11を保持板30のリード線保持部42に容易に通すことができる。よって、組み立て性が向上する。
【0035】
本発明の電気電子機器100のリード線保持構造の保持板30では、複数のリード線11は保持板30の外周面33の凹部42に保持され、リード線11が通されていない穴41が設けられている。
【0036】
本発明の上記構成によれば、リード線11が通されていない中心穴41から充填材21を容易に充填することができる。よって、容易に充填作業を行うことができる。また、容易に充填作業ができることにより、充填材固化時の吹き出し、及びボイドの発生を低減することができる。
【0037】
本発明の電気電子機器100のリード線保持構造の保持板30では、凹部42を画定するそれぞれの面に接する角部の少なくとも1つは、角処理部34、38が設けられている。
【0038】
本発明の上記構成によれば、凹部42周辺におけるリード線11の角当たりを防ぐことができる。よって、リード線11の破損を低減することができる。
【0039】
本発明の電気電子機器100のリード線保持構造の保持板30は硬質樹脂材、又は軟質樹脂材で形成されている。
【0040】
本発明の上記構成によれば、充填材21の充填時の保持板30の形状維持を容易にすることができる。また、充填材21の保持板30への密着性を向上させることができる。よって、水侵入の恐れを低減させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、ケースを有し、ケース内部に収容されたリード線接続部材に接続されている複数のリード線を有する電気電子機器のリード線保持構造に適用することができる。電気電子機器とは、例えば、LVDTである。また、LVDT以外の電気電子機器にも適用可能である。例えば、各種センサ類、アクチュエータ類である。本発明は、速度センサ、加速度センサ、磁気センサ、温度センサ、音センサ、光線線センサ、気体濃度等を検知したり液体組成を検知する化学センサ、などに適用可能である。また、アクチュエータ類では、モータ、磁気ソレノイド等に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ケース、1a 一端部、1b 他端部、1c 開口部、2 ケースカバー、
2c リード線引き出し部(穴)、3 ボビン、4 リード線接続部材(ステータコイル)、11 リード線、11a 一端部、11b 他端部、30 保持板、33 外周面、34,38 第1,第2角処理部、41 中心穴、42 リード線保持部(凹部)、100 電気電子機器(LVDT)