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特許7531874支保の設置に用いるピッチ表示器及びその設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】支保の設置に用いるピッチ表示器及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20240805BHJP
   E03F 3/06 20060101ALI20240805BHJP
   F16L 1/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/06
F16L1/00 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023170404
(22)【出願日】2023-09-29
【審査請求日】2024-01-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508100055
【氏名又は名称】日本ノーディッグテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】中村 忠臣
(72)【発明者】
【氏名】川口 芳男
(72)【発明者】
【氏名】山根 歩
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-067057(JP,A)
【文献】特開2022-143527(JP,A)
【文献】特開2023-134303(JP,A)
【文献】特開平10-121565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00
E03F 3/06
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管と更生管との間に裏込め材を充填する際に、前記更生管の変形防止に用いられる複数の棒状の腹起し材と、変形防止枠と、皿部材を有したボルトとを備えた支保の設置時に用いられ、
前記皿部材の設置位置を示すために、少なくとも一部が供用水の水面よりも上に現れる棒状の表示具を備え、前記腹起し材上に配置される把持部を備えた、変形防止枠のピッチ表示器。
【請求項2】
前記把持部に着脱自在に取り付けられる表示具が備えられている請求項1に記載のピッチ表示器。
【請求項3】
前記把持部は、前記更生管の内壁面の周方向に間隔をおいて互いに平行に並べられた複数の腹起し材に配置され得るよう少なくとも二つ備えられ、連結部によって各把持部間が互いに連結している請求項2に記載のピッチ表示器。
【請求項4】
前記連結部の少なくとも一部は、把持部上面との間で段差部となっており、又は、連結部上若しくは把持部上には段差が設けられ、
前記段差部は、前記変形防止枠又はこの変形防止枠を運搬する台車を当てさせるストッパーを構成している請求項3に記載のピッチ表示器。
【請求項5】
前記連結部には、前記表示具を取り付け可能な係止部が形成され、
前記係止部は、前記表示具の端部を螺合させて保持する雌螺子孔であり、
前記表示具は、全体として棒状で前記雌螺子孔に螺合させる雄螺子部が端部に形成されている請求項4に記載のピッチ表示器。
【請求項6】
前記連結部は、前記更生管の内壁面の形状に合わせて変形可能な請求項3に記載のピッチ表示器。
【請求項7】
前記更生管の内壁面の周方向に間隔をおいて互いに平行に並べられた複数の腹起し材のそれぞれの端部に配置されるとともに前記周方向に互いに連結し、前記周方向に隣り合う前記腹起し材同士の位置関係を固定する皿部材ピッチ保持具を構成する2以上の皿部材を有している請求項1から6のいずれか一項に記載のピッチ表示器。
【請求項8】
既設管内に形成した更生管の内部に支保を設置するにあたり、
腹起し材を前記更生管の管軸方向に配置する腹起し材設置工程と、
前記腹起し材の端部に前記腹起し材を押さえる皿部材を配置する位置若しくは前記皿部材を配置する位置に隣接するように、請求項1から6のいずれか一項に記載のピッチ表示器を配置するピッチ表示器設置工程と、
表示具に変形防止枠を近接させた後、前記変形防止枠の少なくとも一部を前記皿部材の上方に配置する変形防止枠移動工程と、
前記腹起し部材と前記変形防止枠との間を固定具で固定する変形防止枠設置工程とを有している支保の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管と更生管との間に裏込め材を充填する際に使用する支保の設置に用いるピッチ表示器及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管を更生する方法として、既設管内に硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の更生管を製管した後、既設管と更生管との間隙に裏込め材を注入して硬化させる方法が広く採用されている。裏込め材の注入においては、裏込め材の荷重や注入圧力によって更生管が座屈変形したり、浮力により更生管の既設管に対する位置が所定の位置からずれたりするのを防止するため、更生管の内部に管軸方向に間隔を空けて支保が設置されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
支保の設置は、更生管内に供用水を流しながら行われることがある。供用水の水深高は、数cm~約60cmになることもある。そのような中で、支保の設置は、腹起し材を更生管の内壁面に設置した上で、多角形状で更生管の内壁の形状に概ね沿わせたフレーム(本願明細書では「変形防止枠」と称する)の構成部材を更生管内に搬入し、変形防止枠を腹起し材上で組み立て、固定し、若しくは、組み上がったものを固定する。
【0004】
具体的には、更生管の内底面に、鋼材からなる所定の長さ寸法を有する棒状の腹起し材を、内底面の幅方向に間隔を空けて複数本配置するとともに、それぞれ更生管の管軸方向にも延びるように連設させる。設置した腹起し材の両端部には、腹起し材と変形防止枠との間隔を調整しつつ固定する固定具(腹起し材押圧用の皿部材押し当てジャッキボルト)及び変形防止枠を取り付けていく。
【0005】
皿部材押し当てジャッキボルトと変形防止枠の取り付けにあたっては、管軸方向に連設している腹起し材の端部間に跨って皿部材を嵌合させた状態で、変形防止枠の底フレームを皿部材の真上に位置させる。そして、ジャッキボルトを変形防止枠の雌螺子付き挿通孔に螺合してその先端を皿部材に押し当て、腹起し材と変形防止枠とを所定の間隔に調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-256854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、更生管内に供用水を流していると、供用水が濁っていて底部が見え難いことから、内底面に配した腹起し材上の皿部材の位置を目視にて把握することが困難なことがある。供用水が高水位(60cm程度まで)となるときはとりわけ、皿部材が配された位置を特定するのに時間と手間がかかり、作業効率が悪くなる。
そこで、本発明は、更生管の内部に供用水を流しながら支保を設置する場合にも変形防止枠を作業効率よく設置することができるピッチ表示器及び支保の設置方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のピッチ表示器は、既設管と更生管との間に裏込め材を充填する際に、前記更生管の変形防止に用いられる複数の棒状の腹起し材と、変形防止枠と、皿部材を有したボルトとを備えた支保の設置時に用いられ、前記皿部材の設置位置を示すために、前記腹起し材上に配置される把持部を備えている。
本発明は、皿部材の設置予定位置に隣接させて配置することにより皿部材の位置を容易に示すことができる。
【0009】
本発明のピッチ表示器の前記把持部に着脱自在に取り付けられる表示具が備えられていてもよい。
この構成によれば、表示具により、皿部材の設置予定位置がより分かりやすくなる。特に、把持部を更生管の内底面の腹起し材に配置する場合に、皿部材の設置予定位置がより分かりやすくなる。
【0010】
本発明のピッチ表示器の前記把持部は、前記更生管の内壁面の周方向に間隔をおいて互いに平行に並べられた複数の腹起し材に配置され得るよう少なくとも二つ備えられ、連結部によって各把持部間が互いに連結していてもよい。
この構成によれば、複数の腹起し材上に把持部をまとめて設置することができる。また、この構成によれば、腹起し材同士の周方向の間隔を保持することができる。
【0011】
本発明のピッチ表示器の前記連結部の少なくとも一部は、把持部上面との間で段差部となっており、又は、連結部上若しくは把持部上に段差部が設けられ、前記段差部は、前記変形防止枠又はこの変形防止枠を運搬する台車を当てさせるストッパーを構成していてもよい。
この構成によれば、段差部に変形防止枠又は変形防止枠を運搬する台車を当てさせることで、変形防止枠の設置位置がより分かりやすくなる。
【0012】
本発明のピッチ表示器の前記連結部には、前記表示具を取り付け可能な係止部が形成され、
前記係止部は、前記表示具の端部を螺合させて保持する雌螺子孔であり、前記表示具は、全体として棒状で前記雌螺子部に螺合させる雄螺子部が端部に形成されていてもよい。
この構成によれば、表示具を容易かつ安定的に把持部に固定することができる。
【0013】
本発明のピッチ表示器の前記連結部は、前記更生管の内壁面の形状に合わせて変形可能であってもよい。
この構成によれば、更生管の内壁面に配される腹起し材の向きに合わせて嵌合部材を適切に設置することができる。
【0014】
本発明のピッチ表示器は、前記更生管の内壁面の周方向に間隔をおいて互いに平行に並べられた複数の腹起し材のそれぞれの端部に配置されるとともに前記周方向に互いに連結し、前記周方向に隣り合う前記腹起し材同士の位置関係を固定する皿部材ピッチ保持具を構成する2以上の皿部材を有していてもよい。
この構成によれば、連結させた皿部材により、周方向に隣り合う腹起し材同士の間隔を固定することができる。
【0015】
本発明の支保の設置方法は、既設管内に形成した更生管の内部に支保を設置するにあたり、
腹起し材を前記更生管の管軸方向に配置する腹起し材設置工程と、前記腹起し材の端部に前記腹起し材を押さえる皿部材を配置する位置若しくは前記皿部材を配置する位置に隣接するように、前記いずれかに記載のピッチ表示器を配置するピッチ表示器設置工程と、表示具に変形防止枠を近接させた後、前記変形防止枠の少なくとも一部を前記皿部材の上方に配置する変形防止枠移動工程と、前記腹起し部材と前記変形防止枠との間を固定具で固定する変形防止枠設置工程とを有している。
この構成によれば、変形防止枠の設置が容易となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、更生管の内部に供用水を流しながら支保を設置する場合にも変形防止枠を作業効率よく設置することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を適用する支保を管軸方向視で示した模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を構成する皿部材ピッチ保持具を例示した斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を示した斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を用いて支保を設置する方法における腹起し材設置工程を管軸方向に示した概要図である。
図5】(a)本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を用いて支保を設置する方法における腹起し材設置工程を平面視した概要図である。(b)本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を用いて支保を設置する方法におけるピッチ表示器設置工程を平面視した概要図である。(c)本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を用いて支保を設置する方法における皿部材設置工程及び変形防止枠移動工程を平面視した概要図である。
図6】従来の支保を設置する方法を平面視した概要図である。
図7】本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を用いて支保を設置する方法における変形防止枠移動工程及び変形防止枠設置工程を管軸方向に示した概要図である。
図8】本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を用いて支保を設置する方法において、新たに設置された腹起し材にピッチ表示器を設置する繰返し作業を平面視で示した概要図である。
図9】本発明の一実施形態に係るピッチ表示器を用いて支保を設置する方法により変形防止枠の設置が完了した状態を管軸方向に示した概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明で用いる図の各部分の寸法は実際のものと同一とは限らず、適宜変更することができる。
まず、本発明のピッチ表示器が適用される支保について説明する。
図1に示すように、支保1は、多角形状の変形防止枠2、腹起し材3、固定具(皿部材4a及びジャッキボルト4b)5を主として有している。
【0019】
変形防止枠2は、角鋼材等のフレーム材を枠状に組み立てて形成される部材である。本実施形態では、変形防止枠2は八角形に形成される。これにより変形防止枠2は、更生管Xと既設管(更生管Xの外側に隙間を空けて存在する管。不図示。以下同様)との間に充填される裏込め材の重み等で形状が崩れやすい更生管Xの内壁の四方、すなわち天面X1、内底面X2、左右側面X3,X3及びコーナー部分X4を押さえられるようになっている。
【0020】
腹起し材3は、所定の長さ寸法を有した角鋼材等により棒状に形成されている。
腹起し材3は、天面X1、内底面X2、左右側面X3のそれぞれの幅W方向(すなわち更生管Xの周方向)に間隔をおいて複数平行に配されるとともに、更生管Xの管軸L方向にも腹起し材3が連設して延びるように配される。本実施形態では、コーナー部分X4は幅が狭いため、1本の腹起し材3のみが管軸L方向に連設するように配される。
【0021】
幅W方向に間隔を空けて互いに平行に配される複数の腹起し材3は、図5(a)に示すように、それぞれの両端が管軸L方向に略揃うように配置される(但し多少のずれが生じることはある)。これによって、変形防止枠2を更生管X内に配置した際に、管軸L方向に同じ領域で配置された腹起し材3毎に端部をまとめて押圧できるようになっている。
【0022】
腹起し材3の長手方向の寸法は、特に限定されないが、1500mmから3000mm程度、好ましくは2000mm程度に設定されている。腹起し材3は、同じ長さ寸法で形成され、更生管Xの管軸L方向に連続して配置されるよう、長手方向にほぼ隙間なく配置される。腹起し材3の高さ寸法は、特に限定されないが、例えば高さ100mm程度、幅寸法は50mm程度に形成されている。
【0023】
図1に示す固定具5は、腹起し材3と変形防止枠2との間で突っ張らせて用いられるものである。固定具5として、皿部材4a及びジャッキボルト4bが好適に用いられる。
ジャッキボルト4bの先端側は、腹起し材3の端部をホールドして押圧する皿部材4aを押さえつけられるようになっている。
【0024】
図2に示すように、皿部材4aは、図1に示す腹起し材3の突出頂面(すなわち更生管Xに腹起し材3を配した際に更生管X内側に向く面)3a及び両側面を被って腹起し材3を把持できるように薄型鋼板等により浅いU字形に形成されている。なお、皿部材4aは、腹起し材3の側面をしっかり被っていてもよいが、完全に触れてなくてもよい。
【0025】
皿部材4aの長手方向(すなわち腹起し材3の延在方向に沿わせる寸法。以下同様)は、腹起し材3の両端をしっかりと押さえて腹起し材3の更生管Xとの接触面で更生管Xの内壁面を押圧できる程度で設定されている。皿部材4aの長手方向の具体的な寸法は、限定されないが、200mm~400mm程度とすることができる。
【0026】
腹起し材3の突出頂面3aを被う皿部材4aの上板部6の長手方向及び短手方向のほぼ中央には、ジャッキボルト4bを押し当てさせる穴を形成している押し当て部7が突出している。押し当て部7の内部は、有底の穴となっている。
【0027】
本実施形態では、図1に示す更生管Xの内壁面X1~X3のそれぞれに配置する皿部材4aは、幅W方向に間隔を空けて配される複数の腹起し材3,3,3の間に跨って一括で配置できるよう、連結部材8により連結されている(以下、連結部材8により連結した皿部材4aの全体を「皿部材ピッチ保持具4」と称する)。
連結部材8は、長尺な薄型鋼板により形成されており、複数の皿部材4aを間隔を空けて互いに平行に並べた状態にして、皿部材4a間に跨って延び、皿部材4aの上板部6に溶接されている。
【0028】
連結部材8の上板部6における溶接位置は、限定されないが、上板部6の長手方向の中央部分であることが好ましい。
以上の構成を有する皿部材ピッチ保持具4の皿部材4aは、U字形の開口を同方向に向け、U字形の長手方向に直交する方向に間隔を空け、U字形で現れる把長手方向の両端面を皿部材4a間で同一面上に揃えて連結されている。
【0029】
この皿部材ピッチ保持具4の皿部材4aは、図5(a)-(c)に示す幅W方向に隣り合う複数の腹起し材3同士の間隔を固定する部材として、ピッチ表示器10の一部としても用いられる。
【0030】
次に、上記支保の設置時に用いられる本発明のピッチ表示器10について説明する。
図3に示すように、ピッチ表示器10は、腹起し材3に取り付ける嵌合部材11及び表示具12(表示具12は上方部分を省略して示している)を備えている。
嵌合部材11は、把持部13と連結部14とを備えている。
【0031】
把持部13は、皿部材4aとほぼ同様に形成されている。具体的には、把持部13は、腹起し材3の両側面及び突出頂面3aを被って腹起し材3を把持できるようにほぼU字状に折れ曲がった鋼板により形成されている。把持部13は、腹起し材3をしっかりと把持して容易に外れてしまわないよう、長手方向(すなわち腹起し材3の延在方向に沿わせる寸法。以下同様)に一定寸法延びている。
把持部13の長手方向の具体的な寸法は、限定されないが、200mm~400mm程度とすることができる。
【0032】
連結部14は、把持部13の上面との間で段差部hを形成できる厚さのある鋼板又は偏平な角鋼材により形成されている。連結部14の上壁部14aには、表示具12を挿入して固定する挿入壁部(係止部)15が突出している。挿入壁部15は、連結部14と下方の把持部13との上下の重なり領域のほぼ中央に設けられている。挿入壁部15の内部は、棒状の表示具12等を挿入してしっかりと保持できるようになっていればその形状は特に限定されない。挿入壁部15の形状の例としては、これに挿入する表示具12の先端の形状に合わせた多角形又は雌螺子部が形成された円周面で、表示具12の端部を螺合させることができる形状などが挙げられる。
【0033】
把持部13は、複数を同じ姿勢で(すなわち同じ向きにして)互いに間隔を空けて平行に並べた状態で、連結部14により連結されている。すなわち、把持部13は、U字形の開口を同方向に向け、U字形の長手方向に直交する方向に間隔を空け、U字形で現れる把長手方向の両端面を把持部13間で同一面上に揃えて、互いに平行に並べた状態で連結部14により連結されている。
【0034】
本実施形態では、把持部13は、更生管Xの内壁面の幅Wに間隔を空けて互いに平行に配される腹起し材3の数と同数が連結部14により連結されている。
また、複数の把持部13は、複数の腹起し材3同士の配置間隔に合わせて、本実施形態では等間隔で配置される腹起し材3の間隔と同じ間隔で連結されている。
【0035】
連結部14は、長手方向の両端部及び中央部の3カ所において、把持部13と溶接されている。
連結部14の高さ方向の上部は、把持部13から1~数cm突出し段差部hとなっている。
【0036】
表示具12は、挿入壁部15の内部形状にフィットするように形成されている。表示具12は、本実施形態では、一端部の周面に螺子が切られており雄螺子部となった断面円形の棒部材により形成されている。
表示具12は、供用水の水面から突出し得るような長さであればよい。表示具12の長さとしては、例えば1000mm~1500mm程度とすることができる。
また、表示具12は、供用水の水圧を極力避けられるよう、ある程度小径に形成されていることが好ましい。
【0037】
一方、連結部14の挿入壁部15の内径は、皿部材4aの挿入壁部15の内径と同径に形成され、表示具12の雄螺子部は、ジャッキボルト4bの雄螺子部と同径で螺合できるように形成されているとよい。これにより、嵌合部材11を皿部材ピッチ保持具4と共有することもできる。
【0038】
皿部材4aと嵌合部材11とを後述するように腹起し材3に設置した際の押し当て部7と挿入壁部15との間の管軸L方向の寸法は、表示具12に対して変形防止枠2又は後述する台車を所定位置まで近接させた又は段差部hに台車を接触させた際に、図5(c)に示す変形防止枠2の挿通孔2hが押し当て部7と上下方向に一致するように設定されている。
【0039】
支保1の設置は、本発明のピッチ表示器10を用いて次のようにして効率的に行うことができる。
<腹起し材設置工程>
図4及び図5(a)に示すように、まず、更生管Xの内底面X2の幅W方向に所定数(本実施形態では3本)の腹起し材3-(1)を配置する。
【0040】
<ピッチ表示器設置工程>
従来より、腹起し材3,3が管軸L方向に突き合わされた端部間3eには、例えば図6に示すように、この端部間3eに跨るように皿部材4aを配置していた。ここで、腹起し材3-(1)の端部は、図5(a)に示すように、幅W方向に間隔を空けて配された複数の腹起し材3間でほぼ揃えられるが、完全に幅W方向に延びる一直線上にあるわけではなく、多少(数cm程度)ずれることもある。そのような中で、皿部材4aは、腹起し材3,3の端部間3e(すなわち連設部分)を極力皿部材4aの長手方向の中央に位置させるように覆って端部をしっかりと押圧できるようにするとともに、押し当て部7が幅W方向に略直線上に並ぶように配置する必要がある。
【0041】
しかし、更生管X内に供用水を流しながらの作業は、濁った供用水により、図6に示すように、幅W方向に並べられた腹起し材3の全ての端部間3eを確実に覆うとともに、各皿部材4aの押し当て部7が一直線上にあることを確認し難かった。したがって、皿部材4aの配置に徒に時間を要していた。
【0042】
これに対し、本願のピッチ表示器10を用いた支保の設置方法では、以下のようにして確実かつ効率的に支保の設置が行われる。
なお、本明細書では、変形防止枠2は、その搬入方向(図5(a)-(c)の右から左の方向)の奥側から手前側へと設置される例で説明する。したがって、ピッチ表示器10を用いた支保の設置は、図5においては、左側から右側へと順次進められるという前提で示している。また、図5(a)-(c)及び図8において、腹起し材3-(1)の左側端部には、既に変形防止枠2が設置されていることになるが、図示を省略している。
【0043】
図5(b)において既に配置されている腹起し材3-(1)に次の腹起し材3-(2)を管軸L方向に連設する前に、複数の腹起し材3-(1)のいずれかの先端から、図5(c)に示す皿部材4aの長手寸法の約半分の寸法d1を空けて、嵌合部材11-(1)の把持部13を腹起し材3-(1)に配置する。この際、寸法d1(例えば150mm~200mm前後)は、厳密であることは要求されない(数十mm程度の相違は許容される)ので、腹起し材3の先端から手のひら等で簡便に測ることができる。
【0044】
上述のとおり嵌合部材11-(1)を配置したら、幅W方向に並べられた各腹起し材3間に亘って端面が揃った把持部13が配置されていわゆる大きな定規が敷かれたような状態となる。この嵌合部材11-(1)の挿入壁部15に棒部材からなる表示具12を設置する。
この状態にして次の腹起し材3-(2)を更生管Xの手前側に連設する。これにより、腹起し材3-(1)と腹起し材3-(2)との端部間3e(連結部分)がピッチ表示器10のすぐ手前側(図5(c)において右側)にあることが、供用水の水面より上で一見して分かる状態になる。
【0045】
そこで、図5(c)に示すように、皿部材ピッチ保持具4-(2)の皿部材4aを、腹起し材3,3の端部間3eに跨るように嵌合部材11-(1)よりも前記搬入方向手前側に嵌合させるとともに嵌合部材11に密接させる。
【0046】
このように、腹起し材3上の皿部材4aの設置予定箇所に隣接させてピッチ表示器10を配置すると、表示具12が供用水の水面から突出し、各表示具12の手前に皿部材4aを設置すればよいことが視認により容易に把握できる。
また、皿部材4aを嵌合部材11に隣接配置することによって、皿部材4aの押し当て部7を容易に幅W方向に直線上に並べられる。
【0047】
また、幅W方向に置く複数の皿部材4aを、図5(c)に示すように連結させて皿部材ピッチ保持具4-(2)としているので、複数の皿部材4aを一括して置くことができる。更に、皿部材ピッチ保持具4-(2)は、新たに配された(図5(c)では右側の)腹起し材3-(2)同士の間隔を先に置いた(左側の)腹起し材3-(1)と同じ間隔で確実に固定することができる。
【0048】
<変形防止枠移動工程>
ピッチ表示器10を設置しておいた状態で図1に示す変形防止枠2の底フレーム2xを含む一部又は変形防止枠2の全体を例えば図7に示すような台車20(図5(c)では省略)に載せた状態で、ピッチ表示器10の表示具12に向けて移動する。
【0049】
この際、台車20の載置台は、少なくとも変形防止枠2の底フレーム2xのジャッキボルト4bを扱う部分で開口し、かつ、腹起し材3に嵌合させた皿部材4a上を通過できる高さを有している変形防止枠2運搬専用のものを用いるとよい。
【0050】
<変形防止枠設置工程>
図7(この図では、図の見やすさを考慮して、奥側の皿部材4a上に既に設置されている変形防止枠2は省略している)に例示する表示具12に対して所定の位置で台車20を止めると、変形防止枠2の底フレーム2xの挿通孔2hが、皿部材4aの押し当て部7と上下方向に一致する。そこで、底フレーム2xの挿通孔2hにジャッキボルト4bを螺合させつつ、押し当て部7に螺合させる。この際、変形防止枠2の底フレーム2xのみを皿部材4a上に移動させ、この上で変形防止枠2を組み立てても良いし、既に別の場所で組み上げた変形防止枠2の全体を設置すべき腹起し材3上の皿部材4a上に運搬し、ジャッキボルトで固定するだけの場合もある。
【0051】
図8に示すように、皿部材ピッチ保持具4-(2)上の変形防止枠2の設置が完了したら、奥側のピッチ表示器10-(1)から腹起し材3の1本分d2の距離を測るか、又は最端の腹起し材3-(2)の端部から前記寸法d1を空け、新たなピッチ表示器10-(2)を設置する。
【0052】
新たなピッチ表示器10-(2)が設置されたら、奥側のピッチ表示器10-(1)は役割りを終えるので、更に新たな支保の設置に用いるべく取り外しておく。奥側のピッチ表示器10-(1)の取り外しの前又は後のタイミングで、更に新たな腹起し材3-(3)を設置する。
そして、ピッチ表示器10-(2)に従ってそのすぐ手前に不図示の皿部材ピッチ保持具4を設置し、次の変形防止枠2を設置する、・・・という手順を繰り返して支保1の設置を進めて行く。
以上の方法を用いることで図9に示すように支保1を設置していくことができる。
【0053】
以上のとおり、本発明のピッチ表示器10及び支保の設置方法によれば、供用水面下で視認し難い状態であっても、時間をかけて供用水中の皿部材4aの位置を手探りで見つけることを回避して容易に特定することができる。
【0054】
したがって、本発明のピッチ表示器10は、管軸L方向に連設した腹起し材3,3の端部間3eに跨って皿部材4aを設置すること及び変形防止枠2の底フレーム2xと皿部材4aとの位置合わせを非常に容易にし、ジャッキボルト4bでの固定を速やかに進めることができる。よって、本願のピッチ表示器10及び支保の設置方法は、供用水を流しながらの変形防止枠2の設置作業を極めて効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0055】
上記実施形態では、嵌合部材11は、隣り合って互いに平行に配置する腹起し材3と同数の把持部13を連結させた構成を例示したが、把持部13の連結数は腹起し材3の本数よりも少なくてもかまわない。把持部13の連結数を腹起し材3の数以下とすることで、更生管Xの内壁面の湾曲形状等に適宜合わせて配置しやすくなるという効果を奏する。
【0056】
また、ピッチ表示器10は、内底面X2だけでなく、内側面X3に用いてもよい。この場合、ピッチ表示器10としては、表示具12を必ずしも用いなくてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、皿部材4a同士を連結させた構成を例示したが、皿部材4aは複数連結させたものでなく、一つずつ用いるものであってもよい。
【0058】
また、嵌合部材11の段差部を変形防止枠2又は台車20の一部に接触させた際に、変形防止枠2の挿通孔2hと皿部材4aの押し当て部7とが上下に一致するように、皿部材4a又は皿部材ピッチ保持具4と、ピッチ表示器10との位置関係を設定してもよい。
このような構成とすることで、変形防止枠2の設置位置をより正確に示すことができ、支保1の設置効率を上げることができるという効果を奏する。
【0059】
また、嵌合部材11の連結部14を変形可能な薄型鋼板で形成し、折り曲げ可能に形成してもよい。このように嵌合部材11を構成することで、更生管Xの内壁面(特に内底面X2)の形状ないし腹起し材3の突出頂面3a向きに合わせて、嵌合部材11の形状を調整することができるという効果を奏する。なお、その場合、挿入壁部15は、連結部14から突出するよう適宜設計調整するとよい。
【0060】
また、ピッチ表示器10は、最端に配された腹起し材3の端部に皿部材4aのための隙間を設けずに一旦配置し、皿部材4a又は皿部材ピッチ保持具4を配置する直前にピッチ表示器10と皿部材4a又は皿部材ピッチ保持具4と置き換えて用いてもよい。
また、嵌合部材11に形成する段差部hは、薄板の連結部14上に部分的に設けられていてもよく、又は、把持部13上に直接形成されていてもよい。また、段差部hは、連結部14上又は把持部13上に板部材を部分的に立設して設けたものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 支保
2 変形防止枠
3 腹起し材
4a 皿部材
4b ジャッキボルト
5 固定具
6 上板部
7 押し当て部
8 連結部材
10 ピッチ表示器
11 嵌合部材
12 表示具
13 把持部
14 連結部
15 挿入壁部
20 台車
h 段差部
X 更生管

【要約】
【課題】本発明は、更生管の内部に供用水を流しながら支保を設置する場合にも変形防止枠を作業効率よく設置することができるピッチ表示器及び支保の設置方法を提供する。
【解決手段】既設管と更生管Xとの間に裏込め材を充填する際に、更生管Xの変形防止に用いられる複数の棒状の腹起し材3と、変形防止枠と、皿部材4aを有したボルトとを備えた支保の設置時に用いられ、皿部材4aに隣接して腹起し材3上に配置される把持部13と、把持部13に取り付けられる表示具12とを備えたピッチ表示器10に関する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9