(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】焼き菓子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 3/34 20060101AFI20240805BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20240805BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240805BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A23G3/34 102
A21D2/16
A23D9/00 502
A21D2/36
(21)【出願番号】P 2020126519
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502312096
【氏名又は名称】有限会社 エコ・ライス新潟
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】菅原 正義
(72)【発明者】
【氏名】高頭 英俊
(72)【発明者】
【氏名】豊永 有
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-068649(JP,A)
【文献】特開2019-076049(JP,A)
【文献】材料5つ。米粉と米ぬかのサクサククッキー(グルテンフリー),Nadia [online],2020年06月15日,https://oceans-nadia.com/user/90062/recipe/383905 検索日2024.04.24
【文献】オーガニック トランスファットフリーショートニング / 680g 富澤商店 ショートニング,Amazon.co.jp [online],2016年11月16日,https://amzn.asia/d/8wbZErT 検索日2024.04.24
【文献】米粉のスパイスクッキー,クックパッド [online],2020年06月15日,https://cookpad.com/recipe/4675719 検索日2024.04.24
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D
A23D
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレルギー物資を含有しない焼き菓子であって、米粉、
パームオイル及び米糠を主成分とすることを特徴とする焼き菓子。
【請求項2】
請求項
1記載の焼き菓子において、前記米粉、前記
パームオイル及び前記米糠の配合比は、米粉:
パームオイル:米糠=25wt%~45wt%:20wt%~40wt%:8wt%~20wt%であることを特徴とする焼き菓子。
【請求項3】
アレルギー物資を含有しない焼き菓子の製造方法であって、米粉、
パームオイル及び米糠を撹拌混合して生地を得、この生地を焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法。
【請求項4】
請求項
3記載の焼き菓子の製造方法において、前記米糠は、炒られた米
糠であることを特徴とする焼き菓子の製造方法。
【請求項5】
請求項
3記載の焼き菓子において、前記米糠は、湿熱処理された米糠であることを特徴とする焼き菓子の製造方法。
【請求項6】
請求項
3,5いずれか1項に記載の焼き菓子の製造方法において、生の米糠を0.1MPa~0.3MPa、120℃~144℃の水蒸気で10分以上湿熱処理し、この湿熱処理した米糠と、前記米粉及と、前記
パームオイルとを、配合比が米粉:
パームオイル:米糠=25wt%~45wt%:20wt%~40wt%:8wt%~20wt%となるように配合した後、混合撹拌して生地を作成し、この生地を冷蔵保管した後、適宜な厚さに伸ばし、この伸ばした生地を再び冷蔵保管した後、焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー物資を含有しない焼き菓子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地震、台風、水害などの自然災害が多く発生しており、そのたびに多くの人々が避難所での避難生活を強いられている。
【0003】
このような自然災害の多発化に伴い、各自治体において食料や水等の災害時に必要な備蓄品の整備が進められている。
【0004】
また、避難者の中には食物アレルギー有病者もいることから、食物アレルギーに配慮した備蓄を行っている自治体も増えてきている。
【0005】
ところで、この食物アレルギー有病者に関し、近年、乳児で5~10%、幼児で5%、学童期以降で1.5~3%と推測され、小児においては年々、増加の傾向にあり、特に4歳以下の乳幼児の割合が多くなっている。
【0006】
しかしながら、食物アレルギーに配慮した備蓄品の中にはこのような乳幼児が食するようなお菓子などは殆ど準備されていない。
【0007】
食物アレルギーに関与する食品のうち、特に発症者数や症状の重症度が高く、表示する必要性の高い食品7品目(えび、かに、小麦、そば、卵、乳成分、落花生)が「特定原材料」として定められ、表示が義務付けられている。また、20品目(あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン)を「特定原材料に準ずるもの」として定められ、表示が推奨されている。
【0008】
従来、これらの原材料を使用しないクッキー等のお菓子が提案されているが、これらの殆どは一般的なものと比較すると食感が硬かったりおいしさが劣るものとなっている。
【0009】
そこで、出願人は非特許文献1に示す食感もおいしさも一般的なクッキーと遜色ない、食物アレルギー有病者向けの米粉クッキーを提案し、近年、災害用非常食として多くの自治体に利用されるようになってきている。
【0010】
この米粉クッキーは、小麦粉の代わりに米粉、バターの代わりにショートニングを使用し、また、油分を含んだアーモンド粉(アーモンドパウダーやアーモンドプードル)やココナッツ粉を添加して、おいしさを向上させると共に、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感を有するものとなっていて、食物アレルギーを有する小児に好適なものとなっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】エコ・ライス新潟ホームページ、商品案内/災害食(非常食)/お米のクッキー ナッツあり、[2020年7月14日検索]、インターネット<URL:https://eco-rice.jp/products/products-top/survival-food/94.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、2019年9月にアーモンドが「特定原材料に準ずるもの」として追加されたため、新たに、アーモンドやココナッツといったナッツ類を使用せずに、おいしさやサクサク、ほろほろとした食感を出さなければならなくなった。
【0013】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、食物アレルギーに関与する特定原材料等28品目を使用することなく、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感を有し、食物アレルギー有病者が安心且つおいしく食することができる焼き菓子及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0015】
アレルギー物資を含有しない焼き菓子であって、米粉、パームオイル及び米糠を主成分とすることを特徴とする焼き菓子に係るものである。
【0016】
また、請求項1記載の焼き菓子において、前記米粉、前記パームオイル及び前記米糠の配合比は、米粉:パームオイル:米糠=25wt%~45wt%:20wt%~40wt%:8wt%~20wt%であることを特徴とする焼き菓子に係るものである。
【0017】
また、アレルギー物資を含有しない焼き菓子の製造方法であって、米粉、パームオイル及び米糠を撹拌混合して生地を得、この生地を焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法に係るものである。
【0018】
また、請求項3記載の焼き菓子の製造方法において、前記米糠は、炒られた米糠であることを特徴とする焼き菓子の製造方法に係るものである。
【0019】
また、請求項3記載の焼き菓子において、前記米糠は、湿熱処理された米糠であることを特徴とする焼き菓子の製造方法に係るものである。
【0020】
また、請求項3,5いずれか1項に記載の焼き菓子の製造方法において、生の米糠を0.1MPa~0.3MPa、120℃~144℃の水蒸気で10分以上湿熱処理し、この湿熱処理した米糠と、前記米粉及と、前記パームオイルとを、配合比が米粉:パームオイル:米糠=25wt%~45wt%:20wt%~40wt%:8wt%~20wt%となるように配合した後、混合撹拌して生地を作成し、この生地を冷蔵保管した後、適宜な厚さに伸ばし、この伸ばした生地を再び冷蔵保管した後、焼成することを特徴とする焼き菓子の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上述のように構成したから、食物アレルギーに関与する特定原材料等28品目を使用することなく、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感を有し、食物アレルギー有病者が安心且つおいしく食することができる焼き菓子及びその製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施例の湿熱処理米糠の効果を裏付ける評価実験(スプレッドファクター評価)の結果を示す表である。
【
図2】本実施例の湿熱処理米糠の効果を裏付ける評価実験(かたさ及びもろさ評価)の結果を示す表である。
【
図3】本実施例の湿熱処理米糠の効果を裏付ける評価実験(色彩評価)の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0024】
本発明は、食物アレルギーを引き起こす原材料(使用したことの表示が義務付けられている特定原材料:卵、乳、小麦、落花生、えび、そば及びかに、使用した旨の表示を推奨している特定原材料に準ずるもの:いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、まつたけ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉及びアーモンドの計28品目)を含有しない焼き菓子であり、小麦粉の代わりに米粉、バターの代わりにトランス脂肪酸非含有油を原材料とするものである。
【0025】
また、本発明は、油分を含んだアーモンド粉(アーモンドパウダーやアーモンドプードル)やココナッツ粉の代わりとして米糠を原材料に使用しており、この米糠により、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感を有するものになっている。
【0026】
このように、本発明は、食物アレルギーに関与する特定原材料等28品目が含まれていないから、食物アレルギー有病者が安心して食することができ、しかも、米糠により、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感になると共においしさも向上し、小児、特に乳幼児でも容易に且つおいしく食することができる焼き菓子及びその製造方法となる。
【実施例】
【0027】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0028】
本実施例はアレルギー物資を含有しない焼き菓子であり、具体的には、食物アレルギーを引き起こすとされる特定原材料等の卵、乳、小麦、落花生、えび、そば、かに、いくら、キウイフルーツ、くるみ、大豆、バナナ、やまいも、カシューナッツ、もも、ごま、さば、さけ、いか、鶏肉、りんご、まつたけ、あわび、オレンジ、牛肉、ゼラチン、豚肉及びアーモンドの計28品目を使用せず、小麦粉の代わりに米粉、バターの代わりにトランス脂肪酸非含有油を使用した米粉クッキーに係るものである。
【0029】
より具体的には、本実施例の米粉クッキーは、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感を出すためにアーモンド粉の代わりに米糠を使用した米糠入り米粉クッキーである。
【0030】
まず、本実施例の原材料及びその配合比について説明する。
【0031】
本実施例の原材料は、米粉、トランス脂肪酸非含有油、砂糖及び米糠であり、また、これらの配合比は、米粉:25wt%~45wt%(好ましくは35wt%~40wt%)、トランス脂肪酸非含有油:20wt%~40wt%(好ましくは30wt%~35wt%)、砂糖:10wt%~20wt%(好ましくは15wt%程度)、米糠:8wt%~20wt%(好ましくは10wt%~15wt%)である。
【0032】
また、トランス脂肪酸非含有油としてパームオイルを使用し、米糠は湿熱処理されたもの(以下、湿熱処理米糠という。)を使用している。
【0033】
この湿熱処理米糠は、未処理状態の米糠を0.5MPa以下の水蒸気で湿熱処理した米糠であり、本実施例においては、0.1MPa~0.3MPaの水蒸気で5分以上湿熱処理された米糠を使用している。
【0034】
具体的には、本実施例においては、0.1MPa,120℃の水蒸気で10分間湿熱処理された米糠、0.2MPa,134℃の水蒸気で10分間湿熱処理された米糠、0.3MPa,144℃の水蒸気で10分間湿熱処理された米糠のいずれかの湿熱処理米糠を使用している。
【0035】
このような湿熱処理米糠を使用することで、生(未処理)の米糠を用いた場合に比べて、糠臭さが低減され、さらに、下表1に示すように、室温放置での酸度変化(酸度上昇)が抑制され、糠中の脂質の変敗防止効果が得られ、品質の向上が図られることとなる。
【0036】
【0037】
また、この湿熱処理米糠の米粉との配合比は、米粉:米糠=14:1~8:7が好ましい。
【0038】
なお、本実施例は上述したように米糠として湿熱処理米糠が用いられているが、この湿熱処理米糠よりも糠臭さは残るが焙煎処理した炒り米糠を用いても硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感を有するものとなり、また、上表に示すように、湿熱処理米糠と同様、脂質の変敗防止効果も得られる。
【0039】
また、本実施例は、上記のように室温での酸度変化が抑制される変敗防止効果を有するから、脱酸素剤と共に密閉性の高い包装袋(例えば、光・酸素バリア性を有するアルミ蒸着包装袋)に収納することで長期保存(3年若しくはそれ以上)が可能なものとなり、災害時の食料に好適な非常食となるように構成されている。
【0040】
次に、本実施例の製造方法の一例を説明する。
【0041】
1.材料として、米粉:120g、トランス脂肪酸非含有油(本実施例ではパームオイルを使用):100g、米糠(本実施例では0.1MPa、120℃で10分間、湿熱処理した米糠を使用):30g、粉糖(予め篩いにかけたもの):40g、バニラエキス:少々を準備し、これらの全材料をフードプロセッサーに入れ、全体が黄色くなり大きな固まりがゴロゴロできるまで撹拌する。
【0042】
2.上記で得た生地を30分間冷蔵庫で保管した後、麺棒などを用いて適宜な厚さに伸ばし、この伸ばした生地を、ラップをした状態で2時間冷蔵庫で保管する。
【0043】
3.冷蔵庫から取り出した生地を型抜きし、ベーキングシート上に並べ、180℃であ5分間焼成する。
【0044】
このように、小麦粉の代わりに米粉、バターの代わりにトランス脂肪酸非含有油(パームオイル)、アーモンド粉の代わりに湿熱処理米糠を使用し製造される本実施例は、サクサク感、ほろほろ感があり食味にも優れる小麦粉、バター、アーモンド粉を使用したクッキーと同様の食感、食味の近いクッキーとなり、アレルギー有病者の小児が安心且つおいしく食することができる米粉クッキーとなる。
【0045】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0046】
本実施例は、食物アレルギーに関与する特定原材料等28品目を使用していないから、アレルギー有病者が安心して食することができる。
【0047】
しかも、湿熱処理米糠が使用されることで糠臭さを感じることなく、アーモンド粉を使用した場合と同様に、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感となり、小児でも容易においしく食することができる。なお、従来、玄米粉と未処理の米糠を使用したクッキーがあるが、この従来品は米糠臭さが強く、また、サクサク、ほろほろ感もなく、非特許文献1に示したアーモンド粉を使用した米粉クッキーに比べて食感、食味共に劣るものであるが、本実施例は、玄米粉ではなく米粉を使用し、また米糠には湿熱処理米糠を使用しているから、前述のとおり、米糠の糠臭さを殆ど感じず、食感もサクサク、ほろほろしたものとなり、非特許文献1に示したアーモンド粉を使用したクッキーと同様のおいしさが感じられるものとなる。
【0048】
さらに、本実施例は、室温での酸度変化が抑制され、脱酸素剤と共に密閉性の高い包装袋(例えば、光・酸素バリア性を有するアルミ蒸着包装袋)に収納することで長期保存(3年若しくはそれ以上)が可能なものとなり、災害時の食料に好適な非常食となる。
【0049】
次に、上述した本実施例の湿熱処理米糠の効果を裏付ける評価実験について説明する。
【0050】
<実験方法>
図1に示す、粉、油脂、添加粉の条件が異なる19種のクッキーを作り、それぞれの物性を測定し、比較した。なお、本実験では図中のNo.10,11,12が本実施例に相当するものである。また、図中のショートニングはトランス脂肪酸非含有油を示す。
【0051】
また、本実験では、No.5のクッキー(アーモンド添加バタークッキー)を基本クッキーとし、このNo.5のレシピ(小麦粉:120g(薄力粉40g+強力粉80g)、バター:100g、アーモンド粉:30g、粉糖:40g、バニラエキス:適量を混合、撹拌して生地を作り、これを180℃、5分の条件で焼成)を対照として、各クッキーを調製し、スプレッドファクター評価、かたさ及びもろさ評価、色彩評価の3つの評価を行った。
【0052】
具体的には、スプレッドファクター評価は、焼成前のスプレッドファクターが4.5となるように作った各クッキーを、焼成、放置冷却した後、ノギスを用いて、直径及び厚さを測定し、この直径/厚さで示されるスプレッドファクターを算出した。
【0053】
また、かたさ及びもろさ評価は、焼成後、放置冷却したクッキーを、物性測定器を用いて、破断応力及び破断エネルギー測定し、この破断応力及び破断エネルギーからかたさ評価SH及びもろさ評価SBを算出した。
【0054】
また、色彩評価は、焼成後、放置冷却したクッキーを、分光測色計を用いて、L*a*b*表色法による色彩及び白色度を測定した。
【0055】
<実験結果>
1.スプレッドファクター評価結果
図1は各クッキーの直径及び厚さの測定結果と、これらより算出したスプレッドファクターを示すものである。このスプレッドファクターは主にクッキーの形状を評価する際に用いられるものであり、一般的に、焼成時に生地が横に広がるとスプレッドファクターが大きくなり、柔らかく砕けやすいショートネスに富むクッキーになるといわれている。
【0056】
本実験においては、小麦粉では、バターに比べてショートニング(トランス脂肪酸非含有油)の方が直径が大きくなり、厚さはほとんど差がないため、ショートニングの方がスプレッドファクターが大きくなる結果となった(No.1,2)。
【0057】
一方、米粉では、ショートニングに比べてバターの方が直径が大きくなり、厚さはショートニングの方が厚くなったため、バターの方がスプレッドファクターが大きくなる結果となった(No.3,4)。
【0058】
また、アーモンド粉を添加した場合、小麦粉ではバター、ショートニング共に直径が大きくなり、厚さが薄くなったため、アーモンド粉無しに比べてスプレッドファクターが大きくなった(No.5,6)が、米粉では、バターの方は顕著に直径が大きくなり、スプレッドファクターが大きくなったが、ショートニングはやや直径が大きくなるもののスプレッドファクターに顕著な変化は見られない結果となった(No.7,8)。
【0059】
また、米粉・ショートニングクッキーにおいて、アーモンド粉の代わりに米糠、具体的には、生(未処理)の米糠(生(未処理)米糠)、湿熱処理した米糠(湿熱処理米糠)、炒った米糠(炒り米糠)のそれぞれを添加しても、アーモンド粉を添加した場合と比べてスプレッドファクターに大きな変化は見られない結果となった(No.9~19)。
【0060】
また、湿熱処理米糠に関しては、湿熱処理の条件を異ならせても条件差による顕著な差は見られない結果となった(No.10~12)。
【0061】
一方、炒り米糠に関しては、添加量(10g~70g)による直径の差は殆ど見られないが、厚さに関しては添加量の増加に伴い薄くなる傾向が見られ、その結果、添加量の増加に伴いスプレッドファクターが大きくなる傾向が見られる結果となった(No.13~19)。
【0062】
2.かたさ及びもろさ評価
図2は各クッキーの破断応力及び破断エネルギーの測定値から算出した「かたさ評価(S
H)」及び「もろさ評価(S
B)」を示すものである。このかたさ評価は、数値が大きいほど硬いことを示し、もろさ評価は数値が大きいほど脆いことを示している。
【0063】
本実験においては、小麦粉では、バターとショートニングとではかたさ評価に差は見られなかったが、もろさ評価においてショートニングの方が数値が高い結果となった(No.1,2)。
【0064】
一方、米粉では、かたさ評価においてバターの方が数値が高く、もろさ評価においてショートニングの方が数値が高い結果となった(No.3,4)。
【0065】
また、小麦粉と米粉のクッキーを比較すると、バターでは、かたさ評価においては差が見られなかったが、もろさ評価において小麦粉の方が数値が高い結果となり(No.1,3)、ショートニングでは、かたさ評価において小麦粉の方が数値が高く、もろさ評価において米粉の方が数値が高い結果となった(No.2,4)。
【0066】
また、アーモンド粉を添加した場合、小麦粉では、かたさ評価においては、バター、ショートニング共にアーモンド粉を添加しない場合に比べて顕著に数値が低くなり、もろさ評価においては、バターは数値が高くなり、ショートニングは数値が低くなる結果となった(No.5,6)。
【0067】
一方、米粉では、バターはかたさ評価の数値が低くなり、もろさ評価の数値が高くなる結果となったが、ショートニングはかたさ評価、もろさ評価共に殆ど数値の変化が見られない結果となった(No.7,8)。
【0068】
また、米粉・ショートニングクッキーにおいて、アーモンド粉の代わりに米糠、具体的には、生(未処理)の米糠(生(未処理)米糠)、湿熱処理した米糠(湿熱処理米糠)、炒った米糠(炒り米糠)のそれぞれを添加した場合、生(未処理)米糠では、アーモンド粉を添加した場合に比べて、かたさ評価、もろさ評価共に数値が低くなり、特にもろさ評価においては顕著に数値が低くなる結果となった(No.9)。
【0069】
また、湿熱処理米糠では、アーモンド粉を添加した場合に比べて、かたさ評価の数値が著しく低くなり、もろさ評価の数値も低くなる結果となった(No.10~12)。
【0070】
また、この湿熱処理米糠に関しては、湿熱処理の処理蒸気圧力が高いものほどもろさ評価の数値が低くなる傾向が見られ、また、処理蒸気圧力0.1MPaのもの(No.10)がベンチマークとした小麦粉にアーモンド粉を添加したクッキー(No.5)のかたさ評価の数値、もろさ評価の数値に最も近い数値を示す結果となった。
【0071】
また、炒り米糠では、もろさ評価においては添加量による数値の変化の傾向は見られなかったが、かたさ評価において、添加量が多くなるに連れて数値が低くなる傾向が見られる結果となった(No.13~19)。
【0072】
3.色彩評価
図3は各クッキーの明度(L
*)、色度(a
*:赤方向、b
*:黄色方向)、WI(白色度)の測定値を示すものである。
【0073】
本実験においては、添加粉(アーモンド粉若しくは米糠)を添加しない場合、小麦粉に比べて米粉の方が白色度が高く、色も薄くなる結果となった。また、小麦粉・米粉共にバターに比べてショートニングの方が白色度が高く、赤味・黄色味が低下する結果となった(No.1~4)。
【0074】
また、アーモンド粉を添加した場合も、上記と同様の傾向を示す結果となった(No.5~8)。
【0075】
また、米粉・ショートニングクッキーにおいて、アーモンド粉の代わりに米糠、具体的には、生(未処理)の米糠(生(未処理)米糠)、湿熱処理した米糠(湿熱処理米糠)、炒った米糠(炒り米糠)のそれぞれを添加した場合、全体的に白色度が低下し、赤味が強くなる結果となった(No.9~19)。
【0076】
また、この米糠添加条件においては、生(未処理)米糠を添加した場合よりも湿熱処理米糠を添加した場合の方がより白色度が低下し赤味が強くなり、また、炒り米糠を添加した場合は、湿熱処理米糠を添加した場合よりもさらに白色度が低下すると共に、赤味の差はないが、黄色味が強くなる結果となった。
【0077】
また、この湿熱処理米糠に関しては、処理蒸気圧が高いほど白色度が低下し、赤味が強くなる傾向が見られ、炒り米糠に関しては、添加量が多くなるに連れ、白色度が低下し黄色味が強くなる結果となった(No.10~12)。
【0078】
以上の評価結果から、焼成後の形状や色合い等の見た目においては差があるものの、湿熱処理米糠をアーモンド粉の代わりに添加することで、小麦粉とバターを使用せず米粉とトランス脂肪酸非含有油を使用したクッキーでもアーモンド粉を使用した場合と同様に、硬くなりすぎず、サクサク、ほろほろとした食感となり、さらに糠臭さも抑えられ、アレルギー有病者の小児でも安心して、おいしく食することができるクッキーとすることができることが確認された。
【0079】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。