(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】寿司の調理方法と調理システム及び食品の調理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/12 20120101AFI20240805BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20240805BHJP
【FI】
G06Q50/12
A23L7/10 F
(21)【出願番号】P 2021034954
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】599024540
【氏名又は名称】株式会社ブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】100086830
【氏名又は名称】塩入 明
(74)【代理人】
【識別番号】100096046
【氏名又は名称】塩入 みか
(72)【発明者】
【氏名】原 進之介
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016322(JP,A)
【文献】特開2020-170482(JP,A)
【文献】特開2004-234439(JP,A)
【文献】特開2003-281245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
A23L 7/00- 7/104
B65B 5/00- 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の注文に基づき、トレイの種類、シャリ玉の総数、ネタの種類とネタ毎の個数、及び付属品の数と配置に関するデータを、サーバにより記憶すると共に、
記憶した上記データに基づき、シャリ玉の配置と、シャリ玉に載せるネタの配置、及びトレイ内での付属品の配置を表す作業指示データを、
前記サーバにより生成し、
調理者が装着する端末に、
現実世界のトレイ上のシャリ玉に重ね、かつ現実のネタと区別できるように、作業指示データに基づくネタの配置を表示すると共に、
作業指示データに基づくトレイ内での付属品の配置を、現実の付属品と区別できるように表示し、
前記調理者は、前記端末の表示に従って、ネタをシャリ玉に載せると共に、付属品をトレイ内に配置する、寿司の調理方法。
【請求項2】
前記端末はカメラを備え、前記サーバまたは前記端末は画像認識手段を備え、
カメラからの調理した寿司の画像を画像認識手段により画像認識することにより、作業指示データと調理した寿司が一致するか確認すると共に、
調理した寿司の画像をメモリに保存することを特徴とする、請求項1の寿司の調理方法。
【請求項3】
配置済みのネタと付属品を前記画像認識手段により画像認識し、
配置済みのネタと付属品を除く、未配置のネタの配置と未配置の付属品の配置を前記端末に表示することを特徴とする、請求項2の寿司の調理方法。
【請求項4】
顧客の注文に基づき、トレイの種類、シャリ玉の総数、ネタの種類とネタ毎の個数、及び付属品の数と配置に関するデータを記憶すると共に、記憶した上記データに基づき、シャリ玉の配置と、シャリ玉に載せるネタの配置、及びトレイ内での付属品の配置を表す作業指示データを生成するサーバと、
調理者が装着する端末であって、
現実世界のトレイ上のシャリ玉に重ね、かつ現実のネタと区別できるように、作業指示データに基づくネタの配置を表示すると共に、
作業指示データに基づくトレイ内での付属品の配置を、現実の付属品と区別できるように表示するもの、
とを備えている、寿司の調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はデリバリー寿司等の調理方法と調理システムに関する。この発明は、例えば寿司、ピザ、ハンバーガーなどの調理に関し、特にシャリ玉、パイ生地などの下地の上に、寿司ネタやチーズ、ハム、海産物、野菜、パテなどのトッピングなどを載せて調理することに関する。
【背景技術】
【0002】
デリバリー寿司では、シャリ玉の上にネタを載せ、指示通りに寿司を作成する。ネタの種類が多く、シャリ玉の個数も様々なため、指示と異なる寿司を調理してしまうことがある。この点に関し、実用新案登録2559837は、トレイに寿司の配置を書いた下書きを載せ、下書きに沿って寿司を調理することを提案している。しかしこれでは下書きが顧客の目にとまる。また下書きの有る寿司しか提供できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、寿司あるいは他の食品を、指示通りに調理できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明の寿司の調理方法では、
顧客の注文に基づき、シャリ玉に載せるネタの配置とトレイ内での付属品の配置を表す作業指示データを、サーバにより生成し、
調理者が装着する端末に、
現実世界のトレイ上のシャリ玉に重ね、かつ現実のネタと区別できるように、作業指示データに基づくネタの配置を表示すると共に、
作業指示データに基づくトレイ内での付属品の配置を、現実の付属品と区別できるように表示し、
調理者は、端末の表示に従って、ネタをシャリ玉に載せると共に、付属品をトレイ内に配置する。
【0006】
この発明の寿司の調理システムは、
顧客の注文に基づき、シャリ玉に載せるネタの配置とトレイ内での付属品の配置を表す作業指示データを生成するサーバと、
調理者が装着する端末であって、
現実世界のトレイ上のシャリ玉に重ね、かつ現実のネタと区別できるように、作業指示データに基づくネタの配置を表示すると共に、
作業指示データに基づくトレイ内での付属品の配置を、現実の付属品と区別できるように表示するもの、とを備えている。
【0007】
この発明では、任意の構成の寿司を下書きを用いずに顧客の注文に従って調理できる。調理者は、トレイ内のシャリ玉、ネタ、付属品を見るだけで、注文通りの寿司を調理できる。また現実のネタと付属品を、データ上のネタと付属品と区別できるので、これらを混同することはない。
【0008】
この発明の食品の調理方法では、
顧客の注文に基づき、下地に載せるトッピングの配置を表す作業指示データを、サーバにより生成し、
作業指示データに基づくトッピングの配置を表す画像と、現実世界の画像を合成表示する、端末を調理者が装着し、
調理者は、端末の表示に従って、トッピングを下地に載せる。
【0009】
このようにすると、ピザ、ハンバーガー、サンドイッチなどを、顧客の注文通りに容易に調理できる。
【0010】
好ましくは、端末はカメラを備え、サーバまたは端末は画像認識手段を備え、カメラからの調理した寿司の画像を画像認識手段により画像認識することにより、作業指示データと調理した寿司が一致するか確認すると共に、調理した寿司の画像をメモリに保存する。作業指示データと一致する寿司を調理したか確認でき、かつ寿司の画像を保存するので、顧客とのトラブルを防止できる。
【0011】
好ましくは、配置済みのネタと付属品を画像認識手段により画像認識し、配置済みのネタと付属品を除く、未配置のネタの配置と未配置の付属品の配置を端末に表示する。このようにすると、どこまで調理が進行したのか調理者に一目瞭然になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例のデリバリー寿司の調理システムのブロック図
【
図4】実施例での寿司の調理方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0014】
図1~
図4に、実施例を示す。
図1において、2はサーバ、4は複合現実端末で、例えば複数用意されており、6はWebを通じて寿司の注文を受付けるWeb端末、8は人が注文を入力するためのヒューマンインターフェースである。実施例ではデリバリー用の寿司を作成するが、持ち帰り用の寿司でも同じである。また寿司に変えて、ピザ、ハンバーガー、サンドイッチ等でも良い。これらの中で、寿司はシャリ玉の個数が多数あり、ネタの種類も多いので、この発明に特に適している。
【0015】
図2はサーバ2の構成を示し、注文管理部10は注文とその内容(トレイの種類、シャリ玉の総数、ネタの種類とネタ毎の個数、イナリ、海苔巻き、ワサビ、ショーガ、バラン、醤油などの付属品の数と配置など)を記憶する。作業指示データ生成部11は、注文内容に応じたシャリ玉の配置とネタの配置及び付属品の配置に関するデータ(作業指示データ)を生成する。作業指示データでは、白身のネタと甘いタレの付いたネタとを離すなど、寿司の慣習に従って、ネタを配置する。
【0016】
シャリ玉画像生成部12は、トレイ上のシャリ玉(ネタを載せる前の寿司米の玉)の配置を指示する画像を生成する。ネタ画像生成部13は、シャリ玉に対する、のネタの配置を指示する画像を生成する。付属品画像生成部14は、トレイ上への付属品の配置を指示する画像を生成する。これらの画像は2D画像(例えば左右片眼に対してのみ表示)でも、3D画像(左右両眼に対して異なる画像を表示)でも良い。またこれらの指示画像は、現実のシャリ玉、ネタ、付属品と区別できるように例えばシルエットで表示し、あるいは「エビ」等の文字やその他の符号で表示する。ヒラメの切身とエンガワのように画像では区別しにくいものもあり、このような場合、文字あるいは符号により指示の方が明確である。実施例では、どのシャリ玉にどのネタを載せるかが直ちに分かり、現実のネタと混合しないことが重要である。またどの付属品を何個どの位置に配置するかが分かり、配置済みの付属品と混同しないことが重要である。
【0017】
シャリ玉、ネタ、付属品の指示画像は、寿司の調理の進行に応じて変化させる。例えばシャリ玉、ネタ、付属品を配置すると、配置済みのシャリ玉、ネタ、付属品への指示画像の表示を停止する。
【0018】
実施例では、シャリ玉、ネタ、付属品を全て人手で配置するが、例えばシャリ玉をロボットで配置することもできる。その場合、シャリ玉画像生成部12は不要である。画像生成部12~14は、人手で配置するものの指示画像のみを生成すれば良い。
【0019】
画像検査部15は、例えば複合現実端末4に内蔵のカメラからの画像を用い、調理した寿司が作業指示データと一致するかどうかを検査し、一致しない場合、複合現実端末4に不一致の内容を表示する。また調理した寿司の画像をメモリ16に保存する。
【0020】
図3は複合現実端末4の構成を示す。端末4はコンピュータと画像の表示装置を備え、外観はメガネあるいはゴーグルであり、現実世界の画像とコンピュータが生成した画像を重ね合わせて見ることができる。端末4は右側のカメラ21と右目用の表示部22,及び左側のカメラ23と左目用の表示部24とを備え、カメラ21,23により外界の画像を取得する。端末4は、カメラ21,23からの画像により、端末4を基準とする座標系での外界の物体の座標を取得する。複数のカメラ21,23の代わりに、1個のカメラと1個の距離画像用赤外線カメラ等を用いても良い。表示部22,24は、メガネのレンズに画像を投影しあるいはホログラフィックな画像を生成する。左右の表示部22,24により立体感の有る画像を表示する。なお端末4の位置と姿勢を、図示しない調理台などに配置したセンサにより検出しても良い。
【0021】
画像認識部25は、カメラ21,23からの画像により、寿司のトレイの位置と形状、シャリ玉の配置、ネタの配置、付属品の配置等を認識する。カメラ21,23からの画像内にトレイが一定以上のサイズで現れると、あるいは端末4とトレイとの距離が所定値以下に低下すると、調理を開始するものとし、指示画像を表示する。またトレイの4周(長方形のトレイの場合)の柄、4周のマーク、トレイの形状等を認識することにより、トレイ位置と向きを検出する。そして調理の間、トレイの位置と向きを検出し続け、トレイの位置と向き等に合わせて、指示画像を表示する。トレイ上のシャリ玉等を画像認識すると、トレイでの寿司の調理の進行状況が明らかになる。これらのデータを通信インターフェース26を介してサーバ2に送信する。シャリ玉の指示画像は、トレイの形状が決まり、作業指示データが決まれば生成できる。ネタの指示画像は、現実のシャリ玉の配置を認識できれば、作業指示データから生成できる。付属品の指示画像は、ネタを載せた寿司の配置を認識できれば、作業指示データから生成できる。なお画像認識は、サーバ2で行っても良い。
【0022】
現実のトレイの画像及び現実のシャリ玉の画像と位置合わせした上で、配置すべきネタ及び配置すべき付属品の指示画像を、表示部22,24により表示する。例えばシャリ玉を握り配置する際には、配置すべきシャリ玉の指示画像を生成し表示する。ネタを載せる際には、現実のシャリ玉の画像に重ね、ネタの指示画像(実物と区別できるネタの画像、あるいはネタの種類を示す文字(「エビ」など)、符号など)を表示する。付属品を詰め合わせる際には、配置すべき付属品の指示画像(実物と区別できる付属品の画像、あるいは付属品の種類を示す文字、符号など)を表示する。
【0023】
調理が完了すると、カメラ21,23によりトレイ内の画像を撮像し、画像認識部25により画像認識する。認識したシャリ玉、ネタ、付属品の数と位置及び種類等のデータをサーバ2へ送信し、画像検査部15により作業指示データと一致するかどうか検査する。不一致な場合、表示部22,24により不一致の内容を表示し、作業者は表示に従って修正する。完成した寿司の画像をサーバ2へ送信し、メモリ16に記憶する。
【0024】
図4に、寿司の調理手順を示す。ステップ1で、作業指示データを生成し、用いるトレイを決定し、トレイ上のシャリ玉の配置、ネタの配置、付属品の配置を決定する。ステップ2で、トレイが所定のサイズ以上で端末の視野内に現れたこと、あるいはトレイと端末との距離が所定値以下であることから、トレイを検出する。またトレイの4周の柄、4周の頂点付近などに設けたマーク、トレイの形状等を用いて、トレイの位置と姿勢(向き)をトラッキングする。円形のトレイの場合、円周の柄、マーク、トレイの円周上部の円の位置などを用いて、トラッキングする。さらに調理者の眼前のトレイが指示通りのトレイか検査し、指示に合わないトレイであれば、複合現実端末4に表示する。
【0025】
ステップ3で、シャリ玉の指示画像を空のトレイ上に配置する。この時、現実のシャリ玉と区別できるように、データ上のシャリ玉(指示画像でのシャリ玉)はシルエットなどで表示する。なおシャリ玉をロボットにより配置する場合、ステップ3は不要である。
【0026】
ステップ4で、現実のシャリ玉に重ね載せるべきネタの指示画像(ネタの画像、文字、符号等)を表示する。指示画像でのネタと、実際に載せたネタを混同しないようにする。例えば指示画像でのネタは、現物よりも暗いシルエット画像として表示する。また画像だけでは区別しにくいネタがある場合、(ヒラメの切り身とエンガワなど)、文字または符号による指示、あるいは文字または符号と画像を併用した指示がが好ましい。
【0027】
ステップ5で、イナリ、海苔巻き、バラン、醤油、ワサビ、ショウガ等の付属品の画像、あるいは文字、符号等を、指示画像として表示する。ここでも現実の付属品とこれから詰め合わせる付属品とを区別できるように表示し、ネタの画像を表示する場合、例えばシルエット表示により実物よりも暗く表示する。
【0028】
寿司の調理(ネタを載せたシャリ玉と付属品を指示データ通りに配置すること)が完了すると、寿司の画像を画像認識し、作業指示データと一致するかどうか検査する。また寿司の画像をメモリに保存する。
【0029】
実施例の指示画像では、個々のシャリ玉、ネタ、付属品を表示した。個々のシャリ玉等を表示する代わりに、それらの個数と配置する範囲、種類などを表示しても良い。例えば40個のシャリ玉の指示画像の代わりに、矩形の枠と(シャリ玉の配置範囲)、「横8×縦5」等の文字(5行8列にシャリ玉を40個配置すること)、符号等を表示しても良い。またマグロをネタとして5個配置する場合、シャリ玉5個分の枠内に「マグロ」等の文字、符号を配置しても良い。付属品として、例えばイナリを5個配置する場合、イナリ5個分の枠内に「イナリ」等の文字、符号を表示しても良い。
【0030】
実施例では、多様な寿司を作業指示通りに作ることができる。作業指示に一致しなければ修正でき、寿司の画像を保存するので、顧客とのトラブルに対応しやすい。調理者が顔に付ける複合現実端末4を用い、現実世界の画像と作業指示に基づく指示画像とを重ねて表示し、何個のシャリ玉をどのように配置するのか、どのネタをどのシャリ玉に載せるのか、どの位置にどの付属品を配置するのかを指示する。
【0031】
複合現実端末4では、現実のシャリ玉等に位置合わせして、ネタ等の指示画像を表示する。また左右で画像を変えることにより、立体感のある画像を表示する。調理者の姿勢は寿司を調理する間に絶えず変化する。端末4はトレイの位置と向きを絶えず認識し、調理者を基準とするトレイの位置と向きに合わせて、シャリ玉及びネタ等の画像を表示する。なお複合現実端末4の代わりに、AR端末(拡張現実端末)を用いても良い。この場合、作業指示に基づく指示画像の位置合わせ精度が低下し、立体的な表示には不向きなので、ネタ、付属品の指示画像には、文字、符号などが適している。
【0032】
実施例ではデリバリー寿司の調理を説明したが、持ち帰り寿司でも全く同じである。寿司に限らず、下地の上にトッピングを載せて作業指示通りの食品を調理すること一般に、実施例を適用できる。
【符号の説明】
【0033】
2 サーバ
4 複合現実端末
6 Web端末
8 ヒューマンインターフェース
10 注文管理部
11 作業指示データ生成部
12 シャリ玉画像生成部
13 ネタ画像生成部
14 付属品画像生成部
15 画像検査部
16 メモリ
21,23 カメラ
22,24 表示部
25 画像認識部
26 通信インターフェース