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  • 特許-筐体 図1
  • 特許-筐体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】筐体
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/36 20060101AFI20240805BHJP
   G21F 5/005 20060101ALI20240805BHJP
   G21F 1/08 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G21F9/36 501F
G21F5/005
G21F9/36 501A
G21F9/36 501H
G21F1/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021042703
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142508
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】509105721
【氏名又は名称】シオヤ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小野 行彦
(72)【発明者】
【氏名】木田 博光
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3178714(JP,U)
【文献】登録実用新案第3191073(JP,U)
【文献】登録実用新案第3177979(JP,U)
【文献】特開2019-105025(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1391189(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F
B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属部材からなる直方体形状の筐体であって、
内面側において各金属部材の接続部を被覆するシート状部材と、
該シート状部材から露出する各金属部材の表面及び該シート状部材の表面を被覆するポリウレア層とを備えることを特徴とする筐体。
【請求項2】
請求項1記載の筐体において、前記シート状部材は、シーラントテープ、不燃布、不織布、布、ブルーシート、プラスチックシート、発泡スチロール、紙からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなることを特徴とする筐体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の筐体において、蓋部材を備え、該蓋部材は内面側を被覆するポリウレア層を備えることを特徴とする筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所等の事故等により放射性物質に汚染された地域では、放射性物質を含む土壌、側溝の汚泥、草木、落ち葉等(以下、土壌等という)を取り除く除染が行われる。前記除染により取り除かれた放射性物質を含む土壌等は所定の容器に収容されて、仮置場、除染現場で一時的に保管された後、中間貯蔵施設に搬送されて保管され、さらに最終処分施設に搬送されて処分される。
【0003】
前記放射性物質を含む土壌等を収容し、保管又は搬送するための容器として、例えば海上輸送用コンテナ等を使用することが検討されている。前記海上輸送用コンテナとしては、例えば、形鋼からなる各1対の前方柱、後方柱、上部桁、下部桁、上部梁及び下部梁を備える骨格と、該骨格に装着される底面部材、前壁部材、1対の側壁部材、開閉自在の1対の端部扉を備える後壁部材とからなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-222289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の海上輸送用コンテナは、前記骨格と、該骨格に装着される部材との複数の金属部材からなるので、放射性物質を含む土壌等を収容したときに、保管又は搬送中に前記複数の金属部材同士の接続部に存する間隙から、放射性物質を含む水等が漏出する虞があるという不都合がある。
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、放射性物質を含む土壌等を収容したときに、放射性物質を含む水等が漏出することなく、該土壌等を安全に保管又は搬送することができる筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の筐体は、複数の金属部材からなる直方体形状の筐体であって、内面側において各金属部材の接続部を被覆するシート状部材と、該シート状部材から露出する各金属部材の表面及び該シート状部材の表面を被覆するポリウレア層とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の筐体によれば、内面側において前記複数の金属部材の接続部が前記シート状部材に被覆されることにより目張りされており、さらに前記シート状部材から露出する各金属部材の表面及び該シート状部材の表面が前記ポリウレア層により被覆されている。従って、本発明の筐体によれば、放射性物質を含む土壌等を収容したときに、前記複数の金属部材同士の接続部に存する間隙から、放射性物質を含む水等が漏出することを確実に防止することができ、前記土壌等を安全に保管又は搬送することができる。
【0009】
本発明の筐体において、前記シート状部材は、前記複数の金属部材の接続部を被覆して目張りすることができるものであれば、どのような材料からなるものであってもよいが、例えば、シーラントテープ、不燃布、不織布、布、ブルーシート、プラスチックシート、発泡スチロール、紙からなる群から選択される少なくとも1種の材料からなるものを用いることができる。
【0010】
また、本発明の筐体は、蓋部材を備え、該蓋部材は内面側を被覆するポリウレア層を備えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の筐体の一実施形態を示す斜視図。
図2図1に示す筐体の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0013】
本実施形態の筐体1は、例えば、図1に示す海上輸送用コンテナ1を用いて製造することができる。海上輸送用コンテナ1は複数の金属部材からなる直方体形状であり、前記複数の金属部材として、それぞれ形鋼からなる各1対の前方柱2、後方柱3、上部桁4、下部桁5、上部梁6及び下部梁7からなる骨格と、該骨格に取り付けられた前壁8、1対の側壁9、底板10、後壁11とを備えている。
【0014】
前壁8及び1対の側壁9は平板であってもよいが、波板鋼板やエンボス鋼板等からなることにより、垂直方向に複数の海上輸送用コンテナ1を積み重ねたときに、垂直方向の荷重に対して優れた強度を得ることができる。また、後壁11は、ロックシャフト12とロックシャフト12を操作するロックレバー13とを備え、観音開き状に開閉自在の1対の端部扉14により構成されている。
【0015】
本実施形態の筐体1は、図2に示すように、内面側において各金属部材の接続部15を被覆するシート状部材21を備え、シート状部材21は、接着剤層22を介して海上輸送用コンテナ1の内面側に接着されている。また、本実施形態の筐体1は、シート状部材21から露出する各金属部材の表面及びシート状部材21の表面を被覆するポリウレア用プライマー層23を備え、ポリウレア用プライマー層23上にポリウレア層24を備えている。
【0016】
シート状部材21は、各接続部15を被覆して目張りすることができる幅と長さとを備えていればどのような材料からなるものであってもよいが、例えば、シーラントテープ、不燃布、不織布、布、ブルーシート、プラスチックシート、発泡スチロール、紙からなる群から選択される1種の材料からなるものを用いることができる。前記シーラントテープとしては、例えば、デンカエラストリューション株式会社製シーラントテープST(商品名)を用いることができ、該シーラントテープを海上輸送用コンテナ1の内面側に接着する接着剤層22としては、例えば、コニシ株式会社製G10(商品名)を用いることができる。また、ポリウレア用プライマー層23としては、例えば、イフスジャパン株式会社製エポキシプライマー(商品名)を用いることができる。
【0017】
図2では、接続部15は、上部桁4と側壁9との間、下部桁5と側壁9又は底板10との間に存在するものとして示しているが、さらに、前方柱2と前壁8又は側壁9との間、後方柱3と側壁9又は端部扉14との間、上部梁6と前壁8又は端部扉14との間、下部梁7と前壁8、底板10又は端部扉14との間、端部扉14、14の間にも接続部15が存在する。
【0018】
シート状部材21は、筐体1の底部の下部桁5及び下部梁7に沿う部分における接続部15(図2では下部桁5と側壁9又は底板10との間に存在する接続部15)に対しては、接続部15からそれぞれ30mmの範囲を被覆している。また、ポリウレア層24は筐体1の底部の下部桁5及び下部梁7に沿う部分では、1辺の長さが30mmの二等辺三角形状の断面形状となるように塗布されており、それ以外の部分では、1~2mmの範囲の厚さとなるように塗布されて、筐体1の内面側の全面を被覆している。
【0019】
前記ポリウレアは、そのままで、あるいは、溶剤に溶解した状態で塗布することができ、性能を損なわない範囲で、顔料、染料、充填剤等の添加剤を含んでいてもよい。前記塗布は、スプレーガン等により人力で行ってもよく、機械式塗布什器(例えば、グラコ株式会社製、商品名:E-XP2(電動式)、H-XP3(油圧式))により機械的に行ってもよい。
【0020】
筐体1は、内面側の全面がポリウレア層24で被覆されているので、海上輸送用コンテナ1としての端部扉14は開閉不能となる。そこで、前記放射性物質を含む土壌等を筐体1に収容し、又は筐体1から排出する操作は、上部桁4と上部梁6とにより囲まれる開放部を介して行われる。
【0021】
前記ポリウレアは、イソシアネートとポリアミンとの共重合体であり、防水性、柔軟性、耐薬品性、防食性に優れており、さらに放射性物質による劣化耐性にも優れている。そこで、本実施形態の筐体1は、放射性物質を含む土壌等を収容したときに、放射性物質を含む水等が漏出することなく、該土壌等を安全に保管又は搬送することができる。
【0022】
また、筐体1は、前記土壌等を保管又は搬送する際に、上部桁4と上部梁6とにより囲まれる開放部を密閉するために、図示しない蓋部材を備えていてもよく、該蓋部材は内面側を被覆するポリウレア層を備えている。
【0023】
筐体1は、垂直方向に複数積み重ねることもでき、この場合、垂直方向に隣接する筐体1、1の間はブルーシート等のシートで密封し、隣接する筐体1、1はボルトで固定する。また、垂直方向の最上層の筐体1は前記蓋部材により前記開放部を密閉する。垂直方向に隣接する筐体1、1の間の密封は、ブルーシート等のシートに限定されず、筐体1、1の間を密封できるものであればどのようなものにより行ってもよく、前記蓋部材を筐体1、1の間に介在させてもよい。
【0024】
尚、筐体1は、汚染水等の漏出により不都合を生じる産業廃棄物等を収容して保管又は搬送する用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
1…筐体(海上輸送用コンテナ)、 21…シート状部材、 24…ポリウレア層。
図1
図2