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特許75319104軸差動モジュール及びそれを利用した移動装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】4軸差動モジュール及びそれを利用した移動装置
(51)【国際特許分類】
   B62B 3/00 20060101AFI20240805BHJP
   F16H 1/08 20060101ALI20240805BHJP
   F16H 1/14 20060101ALI20240805BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
B62B3/00 B
F16H1/08
F16H1/14
B25J5/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021087317
(22)【出願日】2021-05-25
(65)【公開番号】P2022180697
(43)【公開日】2022-12-07
【審査請求日】2024-01-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2020年5月27日、ロボティクス・メカトロニクス講演会2020 in Kanazawaの予稿集において、芦澤 怜史が発明した4軸差動モジュール及びそれを利用した移動装置に関する研究について公開した。 2020年5月28日、ロボティクス・メカトロニクス講演会2020 in Kanazawaにて、芦澤 怜史が発明した4軸差動モジュール及びそれを利用した移動装置に関する研究について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 怜史
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0064813(KR,A)
【文献】独国特許出願公開第19949351(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0398882(US,A1)
【文献】特開2019-181624(JP,A)
【文献】特開2016-049921(JP,A)
【文献】特開平09-041983(JP,A)
【文献】特開平07-285498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
F16H 1/08
F16H 1/14
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二対の回転駆動部、一対のはすば機構、及び差動機構を備えており、
各前記はすば機構は、
対である前記回転駆動部の夫々の回転に伴って個別に回転し、ねじれ方向が異なる一対のはすば歯車と、
一対の前記はすば歯車の夫々にかみ合わされた両切はすば歯車と、
を有しており、
前記差動機構は、
前記一対のはすば機構の夫々の両切はすば歯車の回転に伴って個別に回転し、同一直線上に回転軸が配置され、歯数が等しい一対の第1かさ歯車と、
前記一対の第1かさ歯車にかみ合わされ、回転軸が前記第1かさ歯車の回転軸に直交した第2かさ歯車と、
を有している4軸差動モジュール。
【請求項2】
自在継手を介して各前記回転駆動部を連結した基部と、
一端を前記基部に自在継手を介して連結し、他端を前記差動機構に連結した連結具と、
を備えている請求項1に記載の4軸差動モジュール。
【請求項3】
車体と、
前記車体を支持する3個以上の請求項1に記載の4軸差動モジュールと、
各前記4軸差動モジュールに設けられ、前記第2かさ歯車の回転軸の回転に伴って回転し、前記第2かさ歯車の前記第1かさ歯車の回転軸周りの回転に伴って向きを変える車輪と、
を備えている移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4軸差動モジュール及びそれを利用した移動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の移動装置を開示している。この移動装置は、機体、左右の脚体、左右の後側走行部、及び左右の前側走行部を備えている。左右の脚体は、後側走行部及び前側走行部と機体とを連結して機体を支持している。左右の脚体は複数の関節部を有している。各関節部は個別に折り曲げ角度を変化させることができる。左右の脚体は、各関節部の折り曲げ角度を変化させるための油圧シリンダを関節部毎に有している。この移動装置は、関節部毎に設けられた油圧シリンダを個別に駆動制御することによって、左右の脚体の各関節部の折り曲げ角度を変化させて、機体の姿勢を制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-12928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の移動装置は、脚体の関節部毎に折り曲げに必要な力等が異なるため、出力や大きさの異なる油圧シリンダを関節部毎に設けている。各油圧シリンダは、対応する一つの関節部の折り曲げ角度の変化のみに利用されるものである。このため、この移動装置は、大型化し、油圧シリンダの出力を無駄にするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、小型化、及び省エネルギー化を図ることができる4軸差動モジュール及びそれを利用した移動装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の4軸差動モジュールは、
二対の回転駆動部、一対のはすば機構、及び差動機構を備えており、
各前記はすば機構は、
対である前記回転駆動部の夫々の回転に伴って個別に回転し、ねじれ方向が異なる一対のはすば歯車と、
一対の前記はすば歯車の夫々にかみ合わされた両切はすば歯車と、
を有しており、
前記差動機構は、
前記一対のはすば機構の夫々の両切はすば歯車の回転に伴って個別に回転し、同一直線上に回転軸が配置され、歯数が等しい一対の第1かさ歯車と、
前記一対の第1かさ歯車にかみ合わされ、回転軸が前記第1かさ歯車の回転軸に直交した第2かさ歯車と、
を有している。
【0007】
本発明の4軸差動モジュールは、各はすば機構において、一対のはすば歯車の夫々が同じ回転方向に回転すると、両切はすば歯車が回転し、一対のはすば歯車の夫々が逆方向に回転すると、両切はすば歯車が回転軸方向に移動する。つまり、この4軸差動モジュールは、各はすば機構に対応する一対の回転駆動部の夫々の回転に伴って、両切はすば歯車の両方向の回転と、両切はすば歯車の回転軸方向の両方向の移動とを行うことができる。ここで、両切はすば歯車とは、円筒状の車の周りにねじれ方向が異なる斜め向きの2つの歯を刻んだ歯車のことである。
【0008】
また、この4軸差動モジュールは、差動機構において、一対の第1かさ歯車の夫々が同じ回転方向に回転すると、第2かさ歯車が各第1かさ歯車の回転軸周りに公転し、一対の第1かさ歯車の夫々が逆方向に回転すると、第2かさ歯車が回転する。つまり、この4軸差動モジュールは、一対の両切はすば歯車の回転に伴って、第2かさ歯車の各第1かさ歯車の回転軸周りの両方向の公転と、第2かさ歯車の両方向の回転とを行うことができる。ここで、回転軸とは、歯車の回転運動の中心となる一定直線のことであり、歯車の回転とは、その歯車の回転軸周りの回転のことである。
【0009】
このように、この4軸差動モジュールは、二対である計4個の回転駆動部のトルクを一対の両切はすば歯車の回転及び回転軸方向の移動、第2かさ歯車の各第1かさ歯車の回転軸周りの公転、及び第2かさ歯車の回転に分配して動作する。
【0010】
したがって、本発明の4軸差動モジュールは、小型化、及び省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
本発明の移動装置は、
車体と、
前記車体を支持する3個以上の請求項1に記載の4軸差動モジュールと、
各前記4軸差動モジュールに設けられ、前記第2かさ歯車の回転に伴って回転し、前記第2かさ歯車の前記第1かさ歯車の回転軸周りの公転に伴って向きを変える車輪と、
を備えている。
【0012】
本発明の移動装置の各4軸差動モジュールは、一対のはすば機構の各両切はすば歯車の回転軸が鉛直方向に延びた状態において、各両切はすば歯車が回転軸方向に移動する直動動作を行うことによって、車体と車輪との間隔を変化させることができる。この移動装置は、各4軸差動モジュールを直動動作させることによって、路面の高さ変化に対応し、路面に倣うことにより車体の振動を制御し、車体を水平に保つことができる。
【0013】
また、この移動装置の各4軸差動モジュールは、一対のはすば機構の各両切はすば歯車が回転軸方向に異なる移動をする傾き動作を行うことによって、各両切はすば歯車の回転軸の傾きを変化させることができる。この移動装置は、各4軸差動モジュールを傾き動作させることによって、平坦な道から坂や凹凸に変わる際に発生する不連続点において、速度は保ったまま、はすば歯車の回転軸を進行方向とは逆に傾斜させて時間遅れを作り、回転軸に必要な加速度を低減して不連続点を滑らかに上ることができる。さらに、この移動装置は、段差に車輪を押し付けることによって速度を落とさずに段差を上ることができる。
【0014】
この移動装置の各4軸差動モジュールは、差動機構の第2かさ歯車が回転する駆動動作を行うことによって、車輪を回転させて走行することができる。この移動装置の各4軸差動モジュールは、差動機構の第2かさ歯車が第1かさ歯車の回転軸周りに公転する操舵動作を行うことによって、車輪の向きを変えて移動装置の移動方向を変更することができる。
【0015】
このように、この移動装置は、二対の回転駆動部のトルクを、各4軸差動モジュールの直動動作、傾き動作、駆動動作、及び操舵動作の4軸に分配し、安定して作業しながら不整地を移動することができる。
【0016】
したがって、本発明の4軸差動モジュールを利用した移動装置は、小型化、及び省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1の移動装置の4軸差動モジュールの動作イメージを示す概略図である。
図2】実施例1の移動装置の4軸差動モジュール及び走行部の側面図である。
図3】実施例1の移動装置の4軸差動モジュール及び走行部の正面図である。
図4】実施例1の4軸差動モジュールのはすば機構において、両切はすば歯車の回転軸方向の移動を示す概略図である。
図5】実施例1の4軸差動モジュールのはすば機構において、両切はすば歯車の回転を示す概略図である。
図6】実施例1の4軸差動モジュールの差動機構において、第2かさ歯車の公転を示す概略図である。
図7】実施例1の4軸差動モジュールの差動機構において、第2かさ歯車の回転を示す概略図である。
図8】実施例1の4軸差動モジュールの各動作を示す概略図である。
図9】実施例1の移動装置の4軸差動モジュール及び走行部の各動作を示す概略図である。
図10】実施例2の4軸差動モジュールの第1動作を示す正面図である。
図11】実施例2の4軸差動モジュールの第2動作を示す側面図である。
図12】実施例2の4軸差動モジュールの第3動作を示す側面図である。
図13】実施例2の4軸差動モジュールの第4動作を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0019】
本発明の4軸差動モジュールにおいて、自在継手を介して各前記回転駆動部を連結した基部と、一端を前記基部に自在継手を介して連結し、他端を前記差動機構に連結した連結具と、を備え得る。
【0020】
この4軸差動モジュールはロボット関節等に適用することができる。
【0021】
<実施例1>
次に、本発明の4軸差動モジュール100を利用した移動装置1を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
実施例1の移動装置1は、図1図3に示すように、車体3、4個の4軸差動モジュール100、及び各4軸差動モジュール100の夫々に設けられた走行部200を備えている。各走行部200は車輪210を有している。この移動装置1は、図2及び図3に示すように、各4軸差動モジュール100のはすば機構110の一対のはすば歯車111の夫々の回転軸、両切はすば歯車113の回転軸、及び差動機構130の第1かさ歯車131の回転軸が鉛直方向に延びた状態において、4個の車輪210が前後左右に2個ずつ並ぶように配置されている。この移動装置1の4軸差動モジュール100は、車輪210を回転させる駆動動作(図1(A)参照)、車輪210の向きを変える操舵動作(図1(B)参照)、4軸差動モジュール100の長さを変える直動動作(図1(C)参照)、及び車体3に対する4軸差動モジュール100の傾きを変える傾き動作(図1(D)参照)を行うことができる。
【0023】
各4軸差動モジュール100は、図2及び図3に示すように、二対である計4個の回転駆動部120、一対のはすば機構110、ギアボックス150、及び差動機構130を備えている。各回転駆動部120は車体3に取り付けられている。各回転駆動部120は、モータ121、及びモータ121の回転速度を減速する減速機123を有している。各回転駆動部120の回転速度は減速機123によって減速される。各回転駆動部120の回転軸を中心にして延びる棒状の回転軸部120Jは、はすば機構110の各はすば歯車111の回転軸を中心にして延びる棒状の回転軸部111Jに連結されている。各回転駆動部120の回転軸、及び各はすば歯車111の回転軸は、同一直線上に延びている。各回転駆動部120、各回転駆動部120の回転軸部120J、及び各はすば歯車111の回転軸部111Jは、前後方向に延びて車体3に取り付けられたリニアスライドレール5によって、前後方向に揺動することができる。
【0024】
各4軸差動モジュール100に備えられた一対のはすば機構110の夫々は、一対のはすば歯車111、一対のはすば歯車111の夫々にかみ合わされた両切はすば歯車113、及びガイド部材115を有している。一対のはすば歯車111は両切はすば歯車113を中心にして左右に並んでいる。各はすば機構110の一対のはすば歯車111の夫々の回転軸及び両切はすば歯車113の回転軸の夫々は平行に延びている。各はすば歯車111は回転軸部111Jの下端部に取り付けられている。各はすば歯車111の回転軸部111Jの上端部は左右に並んだ一対の回転駆動部120の夫々の回転軸部120Jの下端部に連結している。一方のはすば歯車111は右ねじれ方向の歯が刻まれており、他方のはすば歯車111は左ねじれ方向の歯が刻まれている。各はすば歯車111の歯数、及びモジュールは同じである。両切はすば歯車113は、右ねじれ方向の歯と、左ねじれ方向の歯とが刻まれている。両切はすば歯車113の左右ねじれ方向の歯の夫々の歯数、及びモジュールは同じである。両切はすば歯車113の回転軸を中心にして延びる棒状の回転軸部113Jは、両切はすば歯車113を貫通している。
【0025】
各はすば機構110は、図4に示すように、一対のはすば歯車111を逆方向に回転させると、両切はすば歯車113が回転軸方向の一方向に移動する。各はすば機構110は、一対のはすば歯車111の逆方向の回転を逆転させると、両切はすば歯車113が回転軸方向の他方向に移動する。各はすば機構110は、図5に示すように、一対のはすば歯車111を同じ方向に回転させると、両切はすば歯車113が一方向に回転する。各はすば機構110は、一対のはすば歯車111の同じ方向の回転を逆転させると、両切はすば歯車113が逆方向に回転する。
【0026】
ガイド部材115は、図2及び図3に示すように、両切はすば歯車113の上軸部を回転軸方向に移動自在に挿入している。ガイド部材115は、後述するギアボックス150の上面から両切はすば歯車113の回転軸に平行に延びている案内棒115Bを軸方向に移動自在に挿入している。ガイド部材115は、両切はすば歯車113及びギアボックス150を両切はすば歯車113の回転軸方向に移動自在に案内している。
【0027】
ギアボックス150は、図2に示すように、各はすば機構110よりも下方に配置されている。ギアボックス150は、ボックス本体151、2個の第1平歯車153、及び2個の第2平歯車155を有している。ボックス本体151は、各第1平歯車153、及び各第2平歯車155を収納している。各第1平歯車153、及び各第2平歯車155の歯数、及びモジュールは同じである。各第1平歯車153は、各はすば機構110の両切はすば歯車113の回転軸部113Jに取り付けられ、両切はすば歯車113の回転に伴って個別に回転する。各第2平歯車155は、第1平歯車153の夫々にかみ合わされ、各第1平歯車153の回転に伴って個別に回転する。各第2平歯車155の回転軸は、同一直線上に配置されている。各第2平歯車155の回転軸を中心に延びる棒状の回転軸部155Jは、一方の回転軸部155J内を他方の回転軸部155Jが貫通している。各第2平歯車155の回転軸部155Jは下端部に後述する差動機構130の一対の第1かさ歯車131の夫々が取り付けられている。各第2平歯車155の回転軸部155Jは各第1かさ歯車131の回転軸部131Jでもある。ギアボックス150は、一対のはすば機構110の夫々の両切はすば歯車113の回転を差動機構130の一対の第1かさ歯車131に伝達する。
【0028】
差動機構130は、図2及び図3に示すように、一対の第1かさ歯車131、これら第1かさ歯車131にかみ合わされた第2かさ歯車133、及び第1かさ歯車131及び第2かさ歯車133の夫々を回転自在に支持する枠体135を有している。各第1かさ歯車131及び第2かさ歯車133は、歯数、及びモジュールが同じである。各第1かさ歯車131の回転軸と各第2平歯車155の回転軸とは同一直線上に延びている。各第1かさ歯車131の回転軸は同一直線上に延びている。各第1かさ歯車131は、ギアボックス150に収納された各第2平歯車155の回転に伴って、個別に回転する。第2かさ歯車133の回転軸は各第1かさ歯車131の回転軸に直交している。枠体135は、一対の第1かさ歯車131の夫々の回転軸部131Jを回転自在に支持している。枠体135は、第2かさ歯車133の回転軸を中心にして延びる棒状の回転軸部133Jを回転自在に支持している。枠体135は第2かさ歯車133と共に第1かさ歯車131の回転軸周りを回転する。
【0029】
差動機構130は、図6に示すように、一対のはすば機構110の夫々の両切はすば歯車113が同じ方向に回転すると、ギアボックス150の第1平歯車153及び第2平歯車155を介して一対の第1かさ歯車131の夫々が同じ方向に回転し、第1かさ歯車131の回転軸周りに第2かさ歯車133が一方向に公転すると共に枠体135が第2かさ歯車133と共に一方向に回転する。差動機構130は、一対のはすば機構110の夫々の両切はすば歯車113の同じ方向の回転を逆転させると、ギアボックス150内の第1平歯車153及び第2平歯車155を介して一対の第1かさ歯車131の夫々の回転が逆転し、第1かさ歯車131の回転軸周りの第2かさ歯車133が逆方向に公転すると共に枠体135が第2かさ歯車133と共に逆方向に回転する。
【0030】
差動機構130は、図7に示すように、一対のはすば機構110の夫々の両切はすば歯車113が逆方向に回転すると、ギアボックス150内の第1平歯車153及び第2平歯車155を介して一対の第1かさ歯車131の夫々が逆方向に回転し、第2かさ歯車133が一方向に回転する。差動機構130は、一対のはすば機構110の夫々の両切はすば歯車113の逆方向の回転を逆転させると、ギアボックス150内の第1平歯車153及び第2平歯車155を介して一対の第1かさ歯車131の夫々の逆方向の回転が逆転し、第2かさ歯車133が他方向に回転する。
【0031】
二対の回転駆動部120、一対のはすば機構110、ギアボックス150、及び差動機構130を備えた4軸差動モジュール100は、図8に示すように、各回転駆動部120の各モータ121を回転させることによって、各はすば機構110の両切はすば歯車113の回転軸方向の移動、両切はすば歯車113の回転、差動機構130の第2かさ歯車133の第1かさ歯車131の回転軸周りの公転、及び第2かさ歯車133の回転を行うことができる。4軸差動モジュール100は、各はすば機構110の両切はすば歯車113の回転軸方向の移動距離を異ならせることによって、各両切はすば歯車113の回転軸を任意の角度に傾斜した状態に変更することができる。
【0032】
このように、この4軸差動モジュール100は、二対である計4個の回転駆動部120のトルクを一対の両切はすば歯車113の回転及び回転軸方向の移動、第2かさ歯車133の各第1かさ歯車131の回転軸周りの公転、及び第2かさ歯車133の回転に分配して動作する。
【0033】
したがって、実施例1の移動装置1に備えられた4軸差動モジュール100は、小型化、及び省エネルギー化を図ることができる。
【0034】
走行部200は、図2及び図3に示すように、支持部230、車輪210、及び駆動ベルト250を有している。支持部230は、上板部231と、上板部231の両端から下方に垂下した2枚の側板部233とを具備している。上板部231は中央にギアボックス150から延びる各第2平歯車155の回転軸部155Jを挿通している。上板部231は、各第2平歯車155の回転軸周りに回転自在である。一方の側板部233は、差動機構130の第2かさ歯車133の回転軸部133Jを回転自在に軸支している。
【0035】
車輪210は、差動機構130の下方に配置され、車軸211が支持部230の2枚の側板部233に回転自在に軸支されている。車軸211は一方の側板部233に回転軸部133Jが軸支された第2かさ歯車133の回転軸に平行である。駆動ベルト250は、一方の側板部233と差動機構130の枠体135との間に延びた第2かさ歯車133の回転軸部133Jと車軸211との間に掛けられている。駆動ベルト250は、第2かさ歯車133の回転を車軸211に伝達する。
【0036】
移動装置1に備えられた各4軸差動モジュール100は、図9(A)に示すように、二対の回転駆動部120の各モータ121を回転させて、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113を逆方向に回転させ、第2かさ歯車133の回転軸部133Jが回転する駆動動作を行う。移動装置1は、各4軸差動モジュール100が駆動動作を行うことによって、走行部200の車輪210が回転して走行することができる。
【0037】
移動装置1に備えられた各4軸差動モジュール100は、図9(B)に示すように、二対の回転駆動部120の各モータ121を回転させて、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113を同じ方向に回転させ、第2かさ歯車133が第1かさ歯車131の回転軸周りに公転する操舵動作を行う。移動装置1は、各4軸差動モジュール100が操舵動作を行うことによって、走行部200の車輪210の向きを変えて移動方向を変更することができる。
【0038】
移動装置1に備えられた各4軸差動モジュール100は、図9(C)に示すように、二対の回転駆動部120の各モータ121を回転させて、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113を回転軸方向に移動させる直動動作を行う。移動装置1は、各4軸差動モジュール100が直動動作を行うことによって、路面の高さ変化に対応し、路面に倣うことにより車体3の振動を制御し、車体3を水平に保つことができる。
【0039】
移動装置1に備えられた各4軸差動モジュール100は、図9(D)に示すように、二対の回転駆動部120の各モータ121を回転させて、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113を回転軸方向に異なる移動をする傾き動作を行う。移動装置1は、各4軸作動モジュールが傾き動作を行うことによって、平坦な道から坂や凹凸に変わる際に発生する不連続点において、速度は保ったまま両切はすば歯車113の回転軸を進行方向とは逆に傾斜させて時間遅れを作り、回転軸に必要な加速度を低減して不連続点を滑らかに上ることができる。また、図示しないが、移動装置1は、各4軸作動モジュールが傾き動作を行い段差に車輪210を押し付けることによって、速度を落とさずに段差を上ることができる。
【0040】
以上説明したように、実施例1の移動装置1は、二対の回転駆動部120のトルクを、各4軸差動モジュール100の直動動作、傾き動作、駆動動作、及び操舵動作の4軸に分配し、車体3を水平に保って安定して作業をしながら不整地を移動することができる。
【0041】
したがって、実施例1の4軸差動モジュール100を利用した移動装置1は、小型化、及び省エネルギー化を図ることができる。
【0042】
<実施例2>
次に、本発明の4軸差動モジュール300を具体化した実施例2について図面を参照しつつ説明する。実施例2の4軸差動モジュール300は、ロボット関節等に適用されるものであり、図10図13に示すように、基部310に対して取り付けられる点等が実施例1の4軸差動モジュール100と相違する。実施例1の4軸差動モジュール100と同じ構成は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0043】
実施例2の4軸差動モジュール300は、基部310、二対である計4個の回転駆動部120、一対のはすば機構110、2個のギアボックス350、差動機構130、及び連結具370を備えている。基部310は平板状である。基部310は、後述する一対の回転駆動部120を保持するケース120Kを連結する2個の第1連結部311と、連結具370の下端部を連結する第2連結部313とを有している。2個の第1連結部311は左右に離れた位置に設けられている。左右方向は、各第1連結部311が並んだ方向であり、図10図13に示すX軸の正方向が左方向である。第2連結部313は、図10及び図13に示すように、正面視において、2個の第1連結部311の左右中央であり、図11及び図12に示すように、側面視において2個の第1連結部311よりも後方に配置されている。後方向は、側面視において、第1連結部311から第2連結部313の方向であり、図10図13に示すY軸の負方向が後方向である。
【0044】
各回転駆動部120は一対ごとにケース120K内に保持されている。各ケース120Kの下端面は基部310の各第1連結部311に自在継手311Uを介して連結されている。各ケース120K内に保持された一対の回転駆動部120の回転軸部120Jは、各ケース120Kの上端面から上方に向けて延びている。上下方向は、図10及び図11に示すように、各はすば機構110の一対のはすば歯車111の回転軸、及び両切はすば歯車113の回転軸が鉛直方向に延びた状態において、基部310から差動機構130側に向けた方向が上方向であり、図10図13に示すZ軸の正方向が上方向である。各ケース120Kは、上端面の中央に開口が形成され、はすば機構110の両切はすば歯車113の一部が挿入されている。各両切はすば歯車113は、一部をケース120K内に挿入しつつ軸方向に移動自在である。
【0045】
はすば機構110の一対のはすば歯車111の回転軸の夫々は、上下方向に平行に延びている。一対のはすば歯車111の夫々の回転軸部111Jは、上端部にはすば歯車111を取り付けている。一対のはすば歯車111の回転軸の夫々と、これらはすば歯車111にかみ合わされた両切はすば歯車113の回転軸とは、平行に延びている。一対のはすば機構110の各両切はすば歯車113の回転軸は平行に延びている。両切はすば歯車113の回転軸部113Jは、両切はすば歯車113の上端から上方に延びている。
【0046】
2個のギアボックス350は、後述する差動機構130の枠体135の左右両側に配置されている。各ギアボックス350は、ボックス本体351、第3かさ歯車353、及び第3かさ歯車353にかみ合わされた第4かさ歯車355を有している。各ボックス本体351は、第3かさ歯車353、及び第4かさ歯車355を収納している。第3かさ歯車353は、各ギアボックス350を回転自在に貫通した両切はすば歯車113の回転軸部113Jの先端部に取り付けられている。各両切はすば歯車113の回転軸部224Jは各第3かさ歯車353の回転軸部でもある。各第4かさ歯車355は、差動機構130の枠体135及び各ギアボックス350に回転自在に貫通して、左右外方向に延びる一対の第1かさ歯車131の夫々の回転軸部131Jに取り付けられている。各第1かさ歯車131の回転軸部131Jは各第4かさ歯車の回転軸部でもある。
【0047】
差動機構130の枠体135に回転自在に支持された一対の第1かさ歯車131の夫々の回転軸部131Jは、左右逆方向であって枠体135の左右外方向に延びている。一対の第1かさ歯車131の回転軸は同一直線上に延びている。差動機構130は、一対の第1かさ歯車131の回転軸部131Jの夫々に挿入し、各第1かさ歯車131の間に配置された連結軸390を有している。一対の第1かさ歯車131の回転軸と、連結軸390の中心軸とは同一直線上に延びている。一対の第1かさ歯車131は連結軸390に対して回転自在である。連結軸390は後述する連結具370の上端部を回転自在に貫通している。一対の第1かさ歯車131にかみ合わされた第2かさ歯車133の上方に向けて延びる回転軸部133Jは枠体135を回転自在に貫通している。
【0048】
連結具370は棒状である。連結具370の下端部は基部310の第2連結部313に自在継手313Uを介して連結されている。連結具370は、図11に示すように、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113の回転軸が鉛直方向に延びている状態において、上方から下方に向けて斜め後方に傾斜して、差動機構130の連結軸390と基部310の第2連結部313とを連結している。
【0049】
この4軸差動モジュールは、図10に示すように、二対の回転駆動部120の各モータ121を回転させて、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113を同じ方向に回転させると、第1かさ歯車131が逆方向に回転し、第2かさ歯車133の回転軸部133Jが回転する第1動作を行う。
【0050】
この4軸差動モジュールは、図11に示すように、二対の回転駆動部120の各モータ121を回転させて、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113を逆方向に回転させると、第1かさ歯車131が同じ方向に回転し、第2かさ歯車133が第1かさ歯車131の回転軸周りに公転する第2動作を行う。
【0051】
この4軸差動モジュールは、図12及び図13に示すように、二対の回転駆動部120の各モータ121を回転させて、一対のはすば機構110の両切はすば歯車113を回転軸方向に移動させると、差動機構130が連結具370の下端部を中心にして連結具370を半径にした円弧上を前後左右方向に移動する第3動作及び第4動作を行う。
【0052】
以上説明したように、実施例2の4軸差動モジュール300は、二対の回転駆動部120のトルクを、第1動作~第4動作の4軸に分配して動作する。
【0053】
したがって、実施例2の4軸差動モジュール300は、小型化、及び省エネルギー化を図ることができる。
【0054】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1の移動装置は、4個の4軸差動モジュールを備えたが、4軸差動モジュールを3個以上備えていればよい。
(2)実施例1の移動装置は、駆動ベルトによって第2かさ歯車の回転を車軸に伝達したが、他の構造によって第2かさ歯車の回転を車軸に伝達してもよい。
(3)実施例1及び2において、ギアボックスによって一対のはすば機構の夫々の両切はすば歯車の回転を差動機構の一対の第1かさ歯車に伝達したが、他の構造によって両切はすば歯車の回転を第1かさ歯車に伝達してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…移動装置
3…車体
100,300…4軸差動モジュール
110…はすば機構
111…はすば歯車
115…両切はすば歯車
120…回転駆動部
130…差動機構
131…第1かさ歯車
133…第2かさ歯車
210…車輪
310…基部
313U…自在継手
370…連結具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図13