(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】歩行補助装置、及び歩行補助システム
(51)【国際特許分類】
A61H 1/02 20060101AFI20240805BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
A61H1/02 R
A61H3/00 Z
(21)【出願番号】P 2021101019
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-11-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、「大学発新産業創出プログラム 社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型」研究成果展開事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】矢野 博明
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/192861(WO,A1)
【文献】特開2005-040286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行改善に用いられる歩行補助装置であって、
ユーザの足を支持する足置機構と、
前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記足置機構と接続された接続機構と、
前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記接続機構を介して前記足置機構を歩行方向に移動させる駆動機構と、
を備え、
前記足置機構は、互いに離間して設けられた右足置部及び左足置部を含み、
前記接続機構は、
前記右足置部と接続され
、リンク構造を示す右側接続部と、
前記右側接続部と離間し、前記左足置部と接続され
、リンク構造を示す左側接続部と、
を含み、
前記駆動機構は、
前記右側接続部に対し、それぞれ独立して前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに前記右足置部を移動させる一対の右側駆動部と、
前記左側接続部に対し、それぞれ独立して前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び前記高さ方向の少なくとも何れかに前記左足置部を移動させる一対の左側駆動部と、
前記リンク構造は、
前記駆動機構から与えられる負荷に伴い高さが変化し、それぞれ異なる位置で前記足置機構、及び前記駆動機構と接続された第1支持部及び第2支持部と、
幅方向に延在し、前記第1支持部及び前記第2支持部と接続された回動軸と、
を含み、
前記足置機構の前記高さ方向における位置は、前記回動軸を中心として、前記第1支持部と前記第2支持部との間の角度に伴い変化する構造と、
を含むこと
を特徴とする歩行補助装置。
【請求項2】
前記歩行方向から見て、
前記右側接続部は、前記右足置部の両側面よりも内側に設けられ、
前記左側接続部は、前記左足置部の両側面よりも内側に設けられること
を特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項3】
前記接続機構は、前記足置機構及び前記回動軸と接続され、前記歩行方向に沿った軸で回動するリンク機構を含み、
前記高さ方向から見て、前記リンク機構と前記足置機構との接続位置は、前記リンク機構と前記回動軸との接続位置に重なること
を特徴とする請求項
1記載の歩行補助装置。
【請求項4】
前記右足置部及び前記左足置部は、
前記第1支持部の先端部を内挿し、前記歩行方向に延在する第1孔部と、
前記第2支持部の先端部を内挿し、前記第1孔部と離間して前記歩行方向に延在する第2孔部と、
を含むこと
を特徴とする請求項
1記載の歩行補助装置。
【請求項5】
一対の前記右側駆動部、及び一対の前記左側駆動部の少なくとも何れかは、
前記接続機構と接続され、前記歩行方向に延在する無端ベルトと、
前記無端ベルトを介して、前記接続機構に対して前記歩行方向に負荷を与えるモータと、
を含むこと
を特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項6】
前記右側接続部と接続され、前記歩行方向に沿って床面に固定された右側レールと、
前記左側接続部と接続され、前記歩行方向に沿って前記床面に固定された左側レールと、
をさらに備え、
前記歩行方向から見て、
前記右側レールは、前記右足置部の両側面よりも内側に設けられ、
前記左側レールは、前記左足置部の両側面よりも内側に設けられること
を特徴とする請求項1記載の歩行補助装置。
【請求項7】
歩行改善に用いられる歩行補助システムであって、
歩行補助装置と、
前記歩行補助装置を制御する制御装置と、
を備え、
前記歩行補助装置は、
ユーザの足を支持する足置機構と、
前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記足置機構と接続された接続機構と、
前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記接続機構を介して前記足置機構を歩行方向に移動させる駆動機構と、
を含み、
前記足置機構は、互いに離間して設けられた右足置部及び左足置部を含み、
前記接続機構は、
前記右足置部と接続された右側接続部と、
前記右側接続部と離間し、前記左足置部と接続された左側接続部と、
を含み、
前記駆動機構は、
前記右側接続部に対し、前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに前記右足置部を移動させる一対の右側駆動部と、
前記左側接続部に対し、前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び前記高さ方向の少なくとも何れかに前記左足置部を移動させる一対の左側駆動部と、
を含み、
前記制御装置は、一対の前記右側駆動部、及び一対の左側駆動部に対し、それぞれ独立して制御し、
前記足置機構は、
歩行補助者が直接負荷を与えるための補助治具と、
前記補助治具を介して作用した負荷を検出する検出部と、
を含み、
前記制御装置は、前記検出部の検出結果に基づき、前記駆動機構を制御すること
を特徴とする歩行補助システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩行補助装置、及び歩行補助システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リハビリテーションや身体機能の向上等を目的として、歩行改善の補助に関する技術が注目を集めており、例えば特許文献1に開示された歩容訓練機や、特許文献2に開示された没入歩行感覚呈示装置等が提案されている。
【0003】
特許文献1に開示された歩容訓練機は、基座、駆動モジュール、センサーモジュール、コントローラーおよび信号処理モジュールを備える。駆動モジュールは駆動回路、駆動モータおよび二つの移動平台を有する。センサーモジュールは左ペダル、右ペダル、複数の圧力センサおよび位置センサを有する。コントローラーは駆動回路、複数の圧力センサおよび位置センサに電気的に接続される。信号処理モジュールはコントローラーに配置され、歩容検知ユニットおよび歩容判断ユニットを有する。歩容判断ユニットには重心計算論理および歩容判断論理が保存してある。上述した技術特徴により、歩容訓練機は左ペダルおよび右ペダルに載せた重量と、左ペダルおよび右ペダルの重心位置とが正確であるか否かを判断することによって、使用者に歩容訓練中の足首関節運動や身体重心などの状況を把握および調整させ、健康的な歩き方および姿勢を覚えさせることができる。
【0004】
特許文献2に開示された没入歩行感覚呈示装置では、没入ディスプレイ装置と歩行感覚呈示装置を組合わせ、没入ディスプレイ装置は、ユーザの視野範囲をカバーする水平270度、垂直60度のスクリーンと、投影装置とを備える。歩行感覚呈示装置は、ユーザの足に対して足の動作軌跡を呈示するものであり、足裏を置くフットパッドを有する足載せ具を備えており、この足載せ具は、前後及び上下方向に可動して足の歩行動作軌跡に沿って移動するとともに、体重などで足裏に加わる力を検出する力センサを備え、この力センサによりユーザの歩行状態を検出して、この検出に基づき足の歩行動作軌跡を制御可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6771075号公報
【文献】特開2008-220580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、歩行改善に用いられる補助装置として、実際の歩行時に近い動きを実現できる機能が望まれている。このため、補助装置には、歩行方向の移動と、高さ方向の移動とを組合わせた動きを実現できる機能が要求される。しかしながら、上記機能を備えた従来の装置では、駆動箇所の増加等により大型化する傾向がある。
【0007】
また、歩行改善は、ユーザ単独で実施することは難しく、医学療法士やトレーナー等の歩行補助者の指導に基づき実施される場合がある。この場合、大型の補助装置を用いると、歩行補助者がユーザに接して直接指導することが難しい上、装置の駆動部等に巻き込まれる危険性が懸念として挙げられる。
【0008】
この点、特許文献1では、歩行方向の移動と、高さ方向の移動とを組合わせた動きを実現できる機能については想定しておらず、実際の歩行時に近い動きを実現することができない。
【0009】
また、特許文献2では、足載せ具よりも高い位置に、リンク機構や昇降機構が設けられる。このため、歩行補助者がユーザに接して直接指導することが難しい上、装置の駆動部等に巻き込まれる可能性が高い点が懸念として挙げられる。従って、ユーザへの直接指導に適した環境の実現が望まれている。
【0010】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ユーザへの直接指導に適した環境を実現できる歩行補助装置、及び歩行補助システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1発明に係る歩行補助装置は、歩行改善に用いられる歩行補助装置であって、ユーザの足を支持する足置機構と、前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記足置機構と接続された接続機構と、前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記接続機構を介して前記足置機構を歩行方向に移動させる駆動機構と、を備え、前記足置機構は、互いに離間して設けられた右足置部及び左足置部を含み、前記接続機構は、前記右足置部と接続され、リンク構造を示す右側接続部と、前記右側接続部と離間し、前記左足置部と接続され、リンク構造を示す左側接続部と、を含み、前記駆動機構は、前記右側接続部に対し、それぞれ独立して前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに前記右足置部を移動させる一対の右側駆動部と、前記左側接続部に対し、それぞれ独立して前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び前記高さ方向の少なくとも何れかに前記左足置部を移動させる一対の左側駆動部と、前記リンク構造は、前記駆動機構から与えられる負荷に伴い高さが変化し、それぞれ異なる位置で前記足置機構、及び前記駆動機構と接続された第1支持部及び第2支持部と、幅方向に延在し、前記第1支持部及び前記第2支持部と接続された回動軸と、を含み、前記足置機構の前記高さ方向における位置は、前記回動軸を中心として、前記第1支持部と前記第2支持部との間の角度に伴い変化する構造と、を含むことを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る歩行補助装置は、第1発明において、前記歩行方向から見て、前記右側接続部は、前記右足置部の両側面よりも内側に設けられ、前記左側接続部は、前記左足置部の両側面よりも内側に設けられることを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る歩行補助装置は、第1発明において、前記接続機構は、前記足置機構及び前記回動軸と接続され、前記歩行方向に沿った軸で回動するリンク機構を含み、前記高さ方向から見て、前記リンク機構と前記足置機構との接続位置は、前記リンク機構と前記回動軸との接続位置に重なることを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る歩行補助装置は、第1発明において、前記右足置部及び前記左足置部は、前記第1支持部の先端部を内挿し、前記歩行方向に延在する第1孔部と、前記第2支持部の先端部を内挿し、前記第1孔部と離間して前記歩行方向に延在する第2孔部と、を含むことを特徴とする。
【0018】
第5発明に係る歩行補助装置は、第1発明において、一対の前記右側駆動部、及び一対の前記左側駆動部の少なくとも何れかは、前記接続機構と接続され、前記歩行方向に延在する無端ベルトと、前記無端ベルトを介して、前記接続機構に対して前記歩行方向に負荷を与えるモータと、を含むことを特徴とする。
【0019】
第6発明に係る歩行補助装置は、第1発明において、前記右側接続部と接続され、前記歩行方向に沿って床面に固定された右側レールと、前記左側接続部と接続され、前記歩行方向に沿って前記床面に固定された左側レールと、をさらに備え、前記歩行方向から見て、前記右側レールは、前記右足置部の両側面よりも内側に設けられ、前記左側レールは、前記左足置部の両側面よりも内側に設けられることを特徴とする。
【0020】
第7発明に係る歩行補助システムは、歩行改善に用いられる歩行補助システムであって、歩行補助装置と、前記歩行補助装置を制御する制御装置と、を備え、前記歩行補助装置は、ユーザの足を支持する足置機構と、前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記足置機構と接続された接続機構と、前記足置機構よりも下の位置に設けられ、前記接続機構を介して前記足置機構を歩行方向に移動させる駆動機構と、を含み、前記足置機構は、互いに離間して設けられた右足置部及び左足置部を含み、前記接続機構は、前記右足置部と接続された右側接続部と、前記右側接続部と離間し、前記左足置部と接続された左側接続部と、を含み、前記駆動機構は、前記右側接続部に対し、前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに前記右足置部を移動させる一対の右側駆動部と、前記左側接続部に対し、前記歩行方向に負荷を与えることで、前記歩行方向、及び前記高さ方向の少なくとも何れかに前記左足置部を移動させる一対の左側駆動部と、を含み、前記制御装置は、一対の前記右側駆動部、及び一対の左側駆動部に対し、それぞれ独立して制御し、前記足置機構は、歩行補助者が直接負荷を与えるための補助治具と、前記補助治具を介して作用した負荷を検出する検出部と、を含み、前記制御装置は、前記検出部の検出結果に基づき、前記駆動機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1発明~第6発明によれば、接続機構及び駆動機構は、足置機構よりも下の位置に設けられる。即ち、足置機構よりも上の位置には、足置機構を移動させるための機構が設けられない。このため、歩行補助者は、ユーザに接して直接指導し易くすることができる上、駆動機構等に巻き込まれることを防ぐことができる。これにより、ユーザへの直接指導に適した環境を実現することが可能となる。
【0023】
また、第1発明~第6発明によれば、一対の右側駆動部は、右側接続部に対し、それぞれ独立して歩行方向に負荷を与えることで、歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに右足置部を移動させる。また、一対の左側駆動部は、左側接続部に対し、それぞれ独立して歩行方向に負荷を与えることで、歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに左足置部を移動させる。即ち、一対の駆動部を用いて同一の方向(歩行方向)に沿って各接続部に負荷を与えることで、各足置部の歩行方向及び高さ方向の移動が実現される。このため、足置機構の制御に必要な構成を削減することができる。これにより、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0024】
特に、第2発明によれば、歩行方向から見て、右側接続部は、右足置部の両側面よりも内側に設けられ、左側接続部は、左足置部の両側面よりも内側に設けられる。このため、歩行補助者がユーザの側方から直接指導する際、接続機構との接触を抑制することができる。これにより、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0025】
特に、第1発明によれば、リンク構造は、駆動機構から与えられる負荷に伴い高さが変化する構造を有する。このため、接続機構の構造を簡素化することができる。これにより、装置のさらなる小型化を実現することが可能となる。
【0026】
特に、第1発明によれば、足置機構の高さ方向における位置は、回動軸を中心として、第1支持部と、第2支持部との間の角度に伴い変化する。このため、高さ方向に直接負荷を与えて足置機構の位置を変化させる場合に比べて、位置制御を高精度に設定することができる。これにより、ユーザに適した歩行条件を高精度に設定することが可能となる。
【0027】
特に、第3発明によれば、高さ方向から見て、リンク機構と足置機構との接続位置は、リンク機構と回動軸との接続位置に重なる。このため、足置機構を制御する際、床面に対する傾きを抑制することができる。これにより、稼動時の安定性を向上させることが可能となる。
【0028】
特に、第4発明によれば、右足置部及び左足置部は、第1孔部と、第2孔部とを含む。このため、各足置部の上面を、床面に対して平行に制御し易くすることができる。これにより、ユーザに適した歩行条件を、さらに高精度に設定することが可能となる。
【0030】
特に、第5発明によれば、一対の右側駆動部、及び一対の左側駆動部の少なくとも何れかは、無端ベルトと、モータとを含む。このため、足置機構の歩行方向に対する移動範囲を、無端ベルトの延在する範囲内に収めることができる。これにより、足置機構の移動範囲を容易に制御することが可能となる。
【0031】
特に、第6発明によれば、右側レールは、右足置部の両側面よりも内側に設けられ、左側レールは、左足置部の両側面よりも内側に設けられる。このため、歩行補助者がユーザの側方から直接指導する際、各レールとの接触を抑制することができる。これにより、安全性の向上を図ることが可能となる。また、接続機構が歩行方向に移動する際、幅方向への変動を抑制することができる。これにより、稼働時の安定性を向上させることが可能となる。
【0032】
第7発明によれば、接続機構及び駆動機構は、足置機構よりも下の位置に設けられる。即ち、足置機構よりも上の位置には、足置機構を移動させるための機構が設けられない。このため、歩行補助者は、ユーザに接して直接指導し易くすることができる上、駆動機構等に巻き込まれることを防ぐことができる。これにより、ユーザへの直接指導に適した環境を実現することが可能となる。
【0033】
また、第7発明によれば、制御装置は、一対の右側駆動部、及び一対の左側駆動部に対し、それぞれ独立して制御する。この際、一対の右側駆動部は、右側接続部に対し、それぞれ独立して歩行方向に負荷を与えることで、歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに右足置部を移動させる。また、一対の左側駆動部は、左側接続部に対し、それぞれ独立して歩行方向に負荷を与えることで、歩行方向、及び高さ方向の少なくとも何れかに左足置部を移動させる。即ち、一対の駆動部を用いて同一の方向(歩行方向)に沿って各接続部に負荷を与えることで、各足置部の歩行方向及び高さ方向の移動が実現される。このため、足置機構の制御に必要な構成を削減することができる。これにより、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0034】
特に、第7発明によれば、足置機構は、補助治具を介して作用した負荷を検出する検出部を含む。また、制御装置は、検出部の検出結果に基づき、駆動機構を制御する。このため、ユーザの状態を踏まえ、歩行補助者が補助治具を用いて駆動機構の制御を実現することができる。これにより、装置の動作を容易に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本実施形態における歩行補助システム及び歩行補助装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2(a)は、本実施形態における歩行補助装置の一例を示す模式上面図であり、
図2(b)は、本実施形態における歩行補助装置の一例を示す模式側面図であり、
図2(c)は、本実施形態における歩行補助装置の一例を示す模式背面図である。
【
図3】
図3(a)は、本実施形態における右側接続部の一例を示す模式斜視図であり、
図3(b)は、第1右側支持部の一例を示す模式斜視図であり、
図3(c)は、第2右側支持部の一例を示す模式斜視図であり、
図3(d)は、右側回動軸の一例を示す模式斜視図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、第1接続点を示す模式図であり、
図4(c)及び
図4(d)は、第2接続点を示す模式図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、右側接続部の一例を示す模式側面図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(c)は、リンク機構の一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、クロススライダ構造及びバネの一例を示す模式図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(c)は、レールの一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、補助治具の一例を示す模式側面図である。
【
図10】
図10(a)は、制御装置の構成の一例を示す模式図であり、
図10(b)は、制御装置の機能の一例を示す模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態における歩行補助システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態としての歩行補助装置、及び歩行補助システムの一例について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において、ユーザの足を前後に移動させる方向を歩行方向Xとし、ユーザの足を上下に移動させる方向を高さ方向Zとし、歩行方向X及び高さ方向Zと交わる方向を幅方向Yとする。また、各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0037】
(実施形態:歩行補助システム100、歩行補助装置1)
図1は、本実施形態における歩行補助システム100、及び歩行補助装置1の一例を示す模式図である。
図2(a)は、本実施形態における歩行補助装置1の一例を示す模式上面図であり、
図2(b)は、本実施形態における歩行補助装置1の一例を示す模式側面図であり、
図2(c)は、本実施形態における歩行補助装置1の一例を示す模式背面図である。
【0038】
(歩行補助システム100)
歩行補助システム100は、例えば
図1に示すように、ユーザ9の歩行改善に用いられる。歩行補助システム100は、歩行補助装置1と、制御装置50とを備える。
【0039】
歩行補助装置1は、例えば制御装置50から送信された制御情報に基づき、歩行補助に必要な動作を実行する。制御装置50は、例えば歩行補助装置1を介して、歩行補助者等により与えられた負荷に関する情報を取得し、取得した情報に基づき歩行補助装置1の制御条件を設定してもよい。
【0040】
(歩行補助装置1)
歩行補助装置1は、足置機構10と、接続機構20と、駆動機構30とを備える。足置機構10は、ユーザ9の足を支持する。接続機構20は、足置機構10よりも下の位置に設けられ、足置機構10及び駆動機構30と接続される。駆動機構30は、足置機構10よりも下の位置に設けられ、接続機構20を介して足置機構10を歩行方向Xに移動させる。
【0041】
上記の通り、接続機構20及び駆動機構30は、高さ方向Zにおいて足置機構10よりも下の位置に設けられる。即ち、足置機構10よりも上の位置には、足置機構10を移動させるための機構が設けられない。このため、歩行補助者は、ユーザ9に接して直接指導することができる上、駆動機構30等に巻き込まれることを防ぐことができる。これにより、ユーザ9への直接指導に適した環境を実現することが可能となる。
【0042】
なお、歩行補助装置1は、例えばセーフティフレーム80や、体重免荷装置90等のような公知の補助機構を備えてもよい。歩行補助装置1は、例えば駆動機構30の一部を床面8に固定させ、接続機構20を歩行方向Xに移動可能な状態で用いられる。
【0043】
足置機構10は、例えば
図2(a)~
図2(c)に示すように、右足置部11及び左足置部12を含む。右足置部11及び左足置部12は、互いに離間して設けられる。
【0044】
接続機構20は、足置機構10を高さ方向Zに移動させる。接続機構20は、例えば歩行方向Xに沿って与えられた負荷に基づき、高さ方向Zに変位する構造が用いられる。接続機構20として、例えばパンタグラフ構造や、レージトング構造等のようなリンク構造が用いられるほか、板カム構造や直動カム構造のようなカム構造が用いられてもよい。なお、「リンク構造」は、「パンタグラフ構造」を含むものである。
【0045】
接続機構20は、右側接続部21と、左側接続部22とを含む。右側接続部21は、右足置部11と接続され、左足置部12と離間する。左側接続部22は、左足置部12と接続され、右足置部11及び右側接続部21と離間する。各接続部21、22として、それぞれ独立したリンク構造やカム構造等が用いられる。
【0046】
駆動機構30は、接続機構20を歩行方向Xに移動させる。駆動機構30は、例えば無端ベルトと、モータとを含む。この場合、駆動機構30は、無端ベルトを介して、モータから接続機構20に対してX方向に移動させるための負荷を与える。駆動機構30は、例えば油圧シリンダやエアシリンダ等のようなシリンダを含んでもよい。
【0047】
駆動機構30は、一対の右側駆動部31と、一対の左側駆動部32とを含む。一対の右側駆動部31及び一対の左側駆動部32は、それぞれ離間して設けられる。
【0048】
一対の右側駆動部31は、右側接続部21に対し、それぞれ独立して歩行方向Xに負荷を与えることで、歩行方向X、及び高さ方向Zの少なくとも何れかに右足置部11を移動させる。一対の左側駆動部32は、左側接続部22に対し、それぞれ独立して歩行方向Xに負荷を与えることで、歩行方向X、及び高さ方向Zの少なくとも何れかに左足置部12を移動させる。
【0049】
例えば、一対の右側駆動部31のうち、一方の右側駆動部31のみが右側接続部21に対して負荷を与える場合、右足置部11は高さ方向Zに移動する。また、一対の右側駆動部31が、右側接続部21に対して同じ大きさの負荷を与える場合、右足置部11は歩行方向Xに移動する。また、一対の右側駆動部31が、右側接続部21に対してそれぞれ異なる大きさの負荷を与える場合、右足置部11は歩行方向X及び高さ方向Zに移動する。なお、一対の左側駆動部32も、一対の右側駆動部31と同様の特徴を示すため、説明を省略する。
【0050】
上記の通り、一対の右側駆動部31は、右側接続部21に対し、それぞれ独立して歩行方向Xに負荷を与えることで、歩行方向X、及び高さ方向Zの少なくとも何れかに右足置部11を移動させる。また、一対の左側駆動部32は、左側接続部22に対し、それぞれ独立して歩行方向Xに負荷を与えることで、歩行方向X、及び高さ方向Zの少なくとも何れかに左足置部12を移動させる。即ち、一対の駆動部31、32を用いて同一の方向(歩行方向X)に沿って各接続部21、22に負荷を与えることで、各足置部11、12の歩行方向X及び高さ方向Zの移動が実現される。このため、足置機構10の制御に必要な構成を削減することができる。これにより、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0051】
以下、各構成についての詳細を説明する。
【0052】
<足置機構10>
各足置部11、12は、例えば幅方向Yに沿って、ユーザ9の肩幅程度に離間する。各足置部11、12の形状は、例えば板状であり、ユーザ9の足裏を置くことが可能な形状であれば任意である。なお、例えばユーザ9の足を固定する公知の構成が、各足置部11、12の上面に設けられてもよく、ユーザ9の足が各足置部11、12の上面から離間した状態で支持されてもよい。
【0053】
足置機構10は、例えば歩行方向Xに延在する孔部を含んでもよい。この場合、孔部に対して接続機構20の一部が接続される。例えば各足置部11、12は、それぞれ歩行方向Xに離間した第1孔部11a、12a及び第2孔部11b、12bを含んでもよい。各孔部11a、11b、12a、12bは、例えば
図2(b)に示すように、各足置部11、12の歩行方向Xに沿った側面に設けられ、例えば両側面11s、12sに設けられてもよい。
【0054】
<接続機構20>
接続機構20は、例えば
図2(a)に示すように、高さ方向Zから見て、足置機構10と重なる。接続機構20は、例えば
図2(b)に示すように、床面8に接して歩行方向Xに移動する。
【0055】
例えば
図2(c)に示すように、歩行方向Xから見て、右側接続部21は、右足置部11の両側面11sよりも内側に設けられる。また、歩行方向Xから見て、左側接続部22は、左足置部12の両側面12sよりも内側に設けられる。この場合、歩行補助者がユーザ9の側方から直接指導する際、接続機構20との接触を抑制することができる。これにより、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0056】
右側接続部21及び左側接続部22は、例えばパンタグラフ構造等のようなリンク構造を示す。リンク構造は、駆動機構30から与えられる負荷に伴い、高さが変化する構造を有する。
【0057】
例えば右側接続部21及び左側接続部22は、幅方向Yに併設された一対のパンタグラフ構造を示す。この場合、一対のパンタグラフ構造の回動は、互いに同じ動きで幅方向Yを軸として回動する。このため、幅方向Yに対する各足置部11、12の変動バラつきを、一対のパンタグラフ構造を介して抑制することができる。これにより、稼動時の安定性を向上させることが可能となる。
【0058】
リンク構造を示す各接続部21、22は、例えば複数の支持部と、回動軸とを含む。例えば各接続部21、22に含まれる支持部の数、及び回動軸の数は、等しい。以下、主に右側接続部21について説明をするが、左側接続部22についても同様の構成及び効果を得ることができるため、適宜説明を省略する。
【0059】
右側接続部21は、例えば
図3(a)に示すように、第1右側支持部21aと、第2右側支持部21bと、右側回動軸21cとを含む。第1右側支持部21a及び第2右側支持部21bは、右足置部11を支持する。
【0060】
第1右側支持部21aは、右足置部11、及び一対の右側駆動部31の一方と接続される。第1右側支持部21aは、例えば
図3(b)に示すように、一対の第1リンク21aaと、第1軸部21abとを含む。一対の第1リンク21aaは、互いに平行して設けられ、第1軸部21abを介して接続される。第1軸部21abは、例えば各第1リンク21aaにおける一端側に設けられる。
【0061】
第1右側支持部21aは、例えば車輪部21ac、挿通部21ad、及び第1先端部21aeの少なくとも何れかを含んでもよい。車輪部21ac、挿通部21ad、及び第1先端部21aeは、例えば一対の第1リンク21aaのそれぞれに設けられる。
【0062】
車輪部21acは、第1軸部21abの両端側に1つずつ設けられるほか、例えば端部毎に複数設けられてもよい。車輪部21acを設けることで、右側接続部21を円滑に移動させることができる。
【0063】
挿通部21adは、例えば第1リンク21aaの重心付近に設けられる。挿通部21adは、後述する右側回動軸21cを挿通し、第1リンク21aaが回動する際の中心として用いられる。
【0064】
第1先端部21aeは、右足置部11の接続箇所として設けられる。第1先端部21aeは、例えば第1軸部21abとは離間した端部(他端)側に設けられる。
【0065】
第1先端部21aeは、例えば第1孔部11aに内挿される。この際、第1右側支持部21aの回動に伴い、第1先端部21aeが第1孔部11aに沿って移動することで、右足置部11と第1右側支持部21aとの接続位置が変わる。このため、右足置部11と、右側接続部21との接続箇所が固定された場合に比べて、右足置部11の高さ方向Zにおける移動を制御し易くすることができる。
【0066】
第2右側支持部21bは、右足置部11、及び一対の右側駆動部31の他方と接続される。第2右側支持部21bは、例えば
図3(c)に示すように、一対の第2リンク21baと、第2軸部21bbとを含み、例えば車輪部21bc、挿通部21bd、及び第2先端部21beの少なくとも何れかを含んでもよい。
【0067】
第2右側支持部21bの詳細は、上述した第1右側支持部21aの詳細と同様のため、適宜説明を省略する。なお、第2先端部21beは、例えば第2孔部11bに内挿される。
【0068】
例えば
図3(a)に示すように、第1先端部21aeが第1孔部11aに内挿され、第2先端部21beが第2孔部11bに内挿される。この際、各右側支持部21a、21bの回動に伴い、各先端部21ae、21beが各孔部11a、11bに沿って移動することで、右足置部11と、右側接続部21との接続位置が変わる。このため、右足置部11の高さ方向Zの位置に関わらず、右足置部11から各右側支持部21a、21bに作用する荷重を均等にすることができる。これにより、右足置部11の上面を、床面8に対して平行に制御し易くすることができる。
【0069】
なお、例えば各先端部21ae、21be及び各孔部11a、11bは、幅方向Yに沿ってそれぞれ一対設けられてもよい。この場合、幅方向Yの安定性を向上させることが可能となる。
【0070】
右側回動軸21cは、幅方向Yに延在する。右側回動軸21cは、幅方向Yと交わる面における回動の中心として、第1右側支持部21a及び第2右側支持部21bと接続される。右側回動軸21cは、各右側支持部21a、21bに設けられた挿通部21ad、21bdに挿通される。
【0071】
各右側支持部21a、21bは、それぞれ異なる一対の右側駆動部31と接続される。第1右側支持部21aは、例えば
図4(a)及び
図4(b)に示すように、一方の右側駆動部31aと接続される第1接続点21fを有する。第1接続点21fは、例えば第1軸部21ab上に設けられるほか、第1右側支持部21aを歩行方向Xに沿って移動させることができる位置であれば任意である。
【0072】
第2右側支持部21bは、例えば
図4(c)及び
図4(d)に示すように、他方の右側駆動部31bと接続される第2接続点21sを有する。第2接続点21sは、例えば第2軸部21bb上に設けられ、幅方向Yにおいて第1接続点21fと離間する位置に設けられる。なお、第2接続点21sは、第2右側支持部21bを歩行方向Xに沿って移動させることができる位置であれば任意である。
【0073】
上述した各右側支持部21a、21b及び右側回動軸21cを用いる場合、例えば
図5(a)及び
図5(b)に示すように、右足置部11の高さ方向Zにおける位置(例えばH1、H2)は、右側回動軸21cを中心として、第1右側支持部21aと、第2右側支持部21bとの間の角度(例えばθ1、θ2)に伴い変化する。
【0074】
例えば各右側支持部21a、21bの回動に伴い、角度θ1から角度θ2に変化した場合、右足置部11の位置は、高さH1から高さH2に変化する。この際、各右側支持部21a、21bには歩行方向Xに負荷を与えるため、高さ方向Zに直接負荷を与える場合に比べて、自重等の影響を抑制することができる。このため、高さ方向Zに直接負荷を与えて位置を変化させる場合に比べて、位置制御を高精度に設定することができる。これにより、ユーザ9に適した歩行条件を高精度に設定することが可能となる。なお、上述した角度は、例えば右足置部11と右側回動軸21cとの間に形成される角度を示す。
【0075】
なお、接続機構20、
図3(a)等に示したパンタグラフ構造のほか、公知のリンク構造を含んでもよい。例えば右側接続部21は、各右側支持部21a、21bを複数接続したレージトング構造を示してもよい。この場合においても、パンタグラフ構造と同様に、ユーザ9に適した歩行条件を高精度に設定することが可能となる。
【0076】
接続機構20は、例えば
図6(a)~
図6(c)に示すように、リンク機構20gを含んでもよい。リンク機構20gは、足置機構10及び回動軸と接続され、歩行方向Xに沿った軸で回動する。
【0077】
リンク機構20gは、右側リンク機構21gと、左側リンク機構22gとを含み、各接続部21、22に独立して設けられる。右側リンク機構21gは、右足置部11及び右側回動軸21cと接続される。左側リンク機構22gは、左足置部12及び左側回動軸22cと接続される。
【0078】
高さ方向から見て、右側リンク機構21gと右足置部11との接続位置は、右側リンク機構21gと右側回動軸21cとの接続位置に重なる(
図6(c)の高さ方向Zに延在した矢印参照)。高さ方向から見て、左側リンク機構22gと左足置部12との接続位置は、左側リンク機構22gと左側回動軸22cとの接続位置に重なる。このため、足置機構10を制御する際、床面8に対する傾きを抑制することができる。これにより、稼動時の安全性をさらに向上させることが可能となる。
【0079】
接続機構20は、例えば
図7に示すように、バネ26を含んでもよい。バネ26は、駆動機構30からの負荷に対する足置機構10の高さ方向Zにおける変化量を増大させるために用いられる。
【0080】
例えばバネ26は、例えば第1右側支持部21a及び第2右側支持部21bに接続され、歩行方向Xに沿って伸縮する。例えば、第1右側支持部21a及び第2右側支持部21bを接近させる向きにバネ26が作用した場合、右足置部11を上に移動させる負荷を軽減することができる。このため、接続機構20がバネ26を含むことで、足置機構10を高さ方向Zに移動させる際、駆動機構30から作用する負荷量を低減することができる。これにより、駆動機構30の小型化を実現することが可能となる。
【0081】
なお、上述した接続機構20は、例えばバネ26の代わりに、クロススライダ構造25を含んでもよく、例えばバネ26とクロススライダ構造25とを含んでもよい。クロススライダ構造25は、バネ26と同様に、駆動機構30からの負荷に対する足置機構10の高さ方向Zにおける変化量を増大させるために用いられる。このため、接続機構20がバネ26及びクロススライダ構造25の少なくとも何れかを含むことで、足置機構10を高さ方向Zに移動させる際、駆動機構30から作用する負荷量を低減することができる。これにより、駆動機構30の小型化を実現することが可能となる。なお、バネ26及びクロススライダ構造25として、公知のものを用いることができる。
【0082】
<駆動機構30>
駆動機構30は、無端ベルト及びモータを一組として、接続機構20に負荷を与える。この場合、一対の右側駆動部31及び一対の左側駆動部32として、それぞれ独立した無端ベルト及びモータが用いられる。駆動機構30は、例えば無端ベルトを含まずに、接続機構20に負荷を与えてもよい。この場合、一対の右側駆動部31及び一対の左側駆動部32の少なくとも1つには、接続機構20に直接接続されたモータが用いられる。無端ベルトを含まないことで、駆動箇所の削減に伴う安全性の向上や、装置全体の小型化を図ることができる。
【0083】
<レール40>
歩行補助装置1は、例えば床面8に固定されたレール40をさらに備えてもよい。レール40は、例えば
図8(a)に示すように、右側レール41と、左側レール42とを含む。各レール41、42は、それぞれ独立して設けられる。
【0084】
右側レール41は、右側接続部21と接続され、歩行方向Xに沿って床面8に固定される。歩行方向Xから見て、右側レール41は、右足置部11の両側面11sよりも内側に設けられる。左側レール42は、左側接続部22と接続され、歩行方向Xに沿って床面8に固定される。歩行方向Xから見て、左側レール42は、左足置部12の両側面12sよりも内側に設けられる。
【0085】
各レール41、42は、例えば
図8(b)及び
図8(c)に示すように、各接続部21、22において幅方向Yに延在する軸部21ab、22ab等から突出した突起部21h、22hと嵌合する。この場合、各接続部21、22が歩行方向Xに移動する際、幅方向Yへの変動を抑制することができる。これにより、稼働時の安全性を向上させることが可能となる。
【0086】
<補助治具15>
足置機構10は、例えば
図9に示すように、補助治具15を含んでもよい。補助治具15は、歩行補助者が直接負荷を与えるために用いられる。
【0087】
補助治具15は、例えば右側補助治具15aと、左側補助治具15bとを含む。各補助治具15a、15bは、例えば各足置部11、12における外側の側面にそれぞれ設けられる。補助治具15を設けることで、歩行補助者は、足置機構10を任意の位置へ移動させることができる。
【0088】
なお、足置機構10は、例えば検出部を含んでもよい。検出部は、補助治具15を介して作用する負荷を検出し、例えば制御装置50に検出結果を送信する。検出部は、例えば補助治具15内に設けられる。検出部として、例えば公知の力センサ等が用いられる。
【0089】
(制御装置50)
制御装置50は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)や、タブレット型端末等のような電子機器を示し、例えば歩行補助者等が操作してもよい。なお、制御装置50の少なくとも一部が、例えば歩行補助装置1に内蔵されてもよい。
【0090】
図10(a)は、制御装置50の構成の一例を示す模式図であり、
図10(b)は、制御装置50の機能の一例を示す模式図である。
【0091】
制御装置50は、例えば
図10(a)に示すように、筐体51と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。各構成101~107は、内部バス110により接続される。
【0092】
CPU101は、制御装置50全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104には、歩行補助装置1の制御パラメータ等のような各種情報が記憶される。保存部104として、例えばHDD(Hard Disk Drive)のほか、SSD(Solid State Drive)等のデータ保存装置が用いられる。
【0093】
I/F105は、歩行補助装置1等との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部108として、例えばキーボードが用いられ、歩行補助者等は、入力部108を介して、歩行補助装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、表示部109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部109は、保存部104に保存された各種情報を表示する。表示部109として、ディスプレイが用いられる。
【0094】
図10(b)は、制御装置50の機能の一例を示す模式図である。制御装置50は、取得部111と、算出部112と、出力部113と、記憶部114とを備える。なお、
図10(b)に示した各機能は、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0095】
取得部111は、歩行補助装置1を介して検出された各種情報を取得する。取得部111は、例えば足置機構10に与えられた負荷の情報を取得する。この場合、取得部111は、例えば歩行補助装置1の足置機構10に設けられた検出部から、負荷の情報を取得する。
【0096】
算出部112は、取得部111により取得された各種情報に基づき、歩行補助装置1の制御条件を算出する。算出部112は、例えば保存部104に保存された過去のデータ等を用いて、駆動機構30の駆動条件を算出する。
【0097】
出力部113は、算出部112により算出された制御条件を、歩行補助装置1等に出力する。記憶部114は、各種情報を保存部104に保存する。記憶部114は、例えば取得部111により取得された検出結果や、算出部112により算出された制御条件を、保存部104に保存する。
【0098】
(実施形態:歩行補助システム100の動作)
次に、本実施形態における歩行補助システム100の動作の一例について説明する。
図11は、本実施形態における歩行補助システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0099】
歩行補助システム100は、取得ステップS110と、制御ステップS120とを備える。
【0100】
<取得ステップS110>
取得ステップS110は、歩行補助者が与えた負荷に対象とした検出結果を取得する。例えば取得部111は、検出部の検出結果を取得する。なお、取得部111が検出結果を取得するタイミングや、検出結果の容量は、任意に設定することができる。
【0101】
<制御ステップS120>
制御ステップS120は、検出結果に基づき駆動機構30を制御する。例えば算出部112は、検出結果に基づき、駆動機構30の駆動条件を算出する。駆動条件は、例えば歩行補助者が補助治具15を介して与えた負荷を再現するために必要な、一対の右側駆動部31及び一対の左側駆動部32のそれぞれに対するパラメータを含む。
【0102】
その後、出力部113は、例えば駆動機構30の駆動条件を歩行補助装置1に出力する。これにより、歩行補助装置1では、駆動機構30が制御される。例えば駆動機構30の制御により、接続機構20に負荷を与えることができ、これに伴い足置機構10が歩行方向X及び高さ方向Zに移動する。
【0103】
上述した各ステップを実施することで、歩行補助システム100の動作が終了する。
【0104】
本実施形態によれば、接続機構20及び駆動機構30は、足置機構10よりも下の位置に設けられる。即ち、足置機構10よりも上の位置には、足置機構10を移動させるための機構が設けられない。このため、歩行補助者は、ユーザ9に接して直接指導し易くすることができる上、駆動機構30等に巻き込まれることを防ぐことができる。これにより、ユーザ9への直接指導に適した環境を実現することが可能となる。
【0105】
また、本実施形態によれば、一対の右側駆動部31は、右側接続部21に対し、それぞれ独立して歩行方向Xに負荷を与えることで、歩行方向X、及び高さ方向Zの少なくとも何れかに右足置部11を移動させる。また、一対の左側駆動部32は、左側接続部22に対し、それぞれ独立して歩行方向Xに負荷を与えることで、歩行方向X、及び高さ方向Zの少なくとも何れかに左足置部12を移動させる。即ち、一対の駆動部31、32を用いて同一の方向(歩行方向X)に沿って各接続部21、22に負荷を与えることで、各足置部11、12の歩行方向X及び高さ方向Zの移動が実現される。このため、足置機構10の制御に必要な構成を削減することができる。これにより、装置の小型化を実現することが可能となる。
【0106】
また、本実施形態によれば、歩行方向Xから見て、右側接続部21は、右足置部11の両側面11sよりも内側に設けられ、左側接続部22は、左足置部12の両側面12sよりも内側に設けられる。このため、歩行補助者がユーザ9の側方から直接指導する際、接続機構20との接触を抑制することができる。これにより、安全性の向上を図ることが可能となる。
【0107】
また、本実施形態によれば、リンク構造は、駆動機構30から与えられる負荷に伴い高さが変化する構造を有する。このため、接続機構20の構造を簡素化することができる。これにより、装置のさらなる小型化を実現することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態によれば、足置機構10の高さ方向Zにおける位置は、回動軸21c、22cを中心として、第1支持部と、第2支持部との間の角度に伴い変化する。このため、高さ方向Zに直接負荷を与えて足置機構10の位置を変化させる場合に比べて、位置制御を高精度に設定することができる。これにより、ユーザ9に適した歩行条件を高精度に設定することが可能となる。
【0109】
また、本実施形態によれば、高さ方向Zから見て、リンク機構20gと足置機構10との接続位置は、リンク機構20gと回動軸21c、22cとの接続位置に重なる。このため、足置機構10を制御する際、床面8に対する傾きを抑制することができる。これにより、稼動時の安定性を向上させることが可能となる。
【0110】
また、本実施形態によれば、右足置部11及び左足置部12は、第1支持部の先端部を内挿し、歩行方向Xに延在する第1孔部11a、12aと、第2支持部の先端部を内挿し、第1孔部11a、12aと離間して歩行方向Xに延在する第2孔部11b、12bと、を含む。このため、各足置部11、12の上面を、床面8に対して平行に制御し易くすることができる。これにより、ユーザ9に適した歩行条件を、さらに高精度に設定することが可能となる。
【0111】
また、本実施形態によれば、接続機構20は、クロススライダ構造25、及びバネ26の少なくとも何れかを含む。このため、足置機構10を高さ方向Zに移動させる際、駆動機構30から作用する負荷量を低減することができる。これにより、駆動機構30の小型化を実現することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態によれば、一対の右側駆動部31、及び一対の左側駆動部32の少なくとも何れかは、無端ベルトと、モータとを含む。このため、足置機構10の歩行方向Xに対する移動範囲を、無端ベルトの延在する範囲内に収めることができる。これにより、足置機構10の移動範囲を容易に制御することが可能となる。
【0113】
また、本実施形態によれば、右側レール41は、右足置部11の両側面11sよりも内側に設けられ、左側レール42は、左足置部12の両側面12sよりも内側に設けられる。このため、歩行補助者がユーザ9の側方から直接指導する際、各レール41、42との接触を抑制することができる。これにより、安全性の向上を図ることが可能となる。また、接続機構20が歩行方向Xに移動する際、幅方向Yへの変動を抑制することができる。これにより、稼働時の安定性を向上させることが可能となる。
【0114】
また、本実施形態によれば、足置機構10は、補助治具15を介して作用した負荷を検出する検出部を含む。また、制御装置50は、検出部の検出結果に基づき、駆動機構30を制御する。このため、ユーザ9の状態を踏まえ、歩行補助者が補助治具15を用いて駆動機構30の制御を実現することができる。これにより、装置の動作を容易に制御することが可能となる。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1 :歩行補助装置
10 :足置機構
11 :右足置部
11a、12a :第1孔部
11b、12b :第2孔部
11s、12s :側面
12 :左足置部
15 :補助治具
20 :接続機構
20g :リンク機構
21 :右側接続部
21a :第1右側支持部
21b :第2右側支持部
21c :右側回動軸
21f :第1接続点
21s :第2接続点
22 :左側接続部
25 :クロススライダ構造
26 :バネ
30 :駆動機構
31 :右側駆動部
32 :左側駆動部
40 :レール
50 :制御装置
8 :床面
80 :セーフティフレーム
9 :ユーザ
90 :体重免荷装置
100 :歩行補助システム
S110 :取得ステップ
S120 :制御ステップ
X :歩行方向
Y :幅方向
Z :高さ方向