(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】高分解能多重化システム
(51)【国際特許分類】
G01J 1/44 20060101AFI20240805BHJP
G01J 3/44 20060101ALI20240805BHJP
G01T 3/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
G01J1/44 L
G01J3/44
G01T3/00 H
(21)【出願番号】P 2021525154
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 CA2019051625
(87)【国際公開番号】W WO2020097732
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521196729
【氏名又は名称】11093568 カナダ エルティーディー.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】プリストパ,デイビッド アラン
(72)【発明者】
【氏名】パカク,ジョン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ネル,ピーター コンディ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-307425(JP,A)
【文献】特開2004-294107(JP,A)
【文献】特表2014-532853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0213531(US,A1)
【文献】特開2016-213826(JP,A)
【文献】特表2009-544242(JP,A)
【文献】特開平08-194013(JP,A)
【文献】特許第2694200(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-11/00
G01T 1/00-7/12
G01N 21/00-21/958
G01N 23/00-23/2276
H03M 1/00-1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した粒子束の振幅を測定するための方法であって、該方法は、
入射した粒子束を受け取る工程と、
N個の時間間隔にわたって、各時間間隔に入射した粒子束を集束する工程と、
粒子束を調節器に方向付ける工程であって、調節器は、各々が入射した粒子束の入力粒子束の振幅に比例した振幅を持つN個の調節された粒子束を、N個の異なる経路に沿ってN個の各前記経路上のそれぞれのゲート装置に出力し、各前記ゲート装置は、各前記ゲート装置に特有の符号列に従って、粒子束を、各時間間隔に少なくとも2個の異なるゲート経路のうちの1個に沿って方向付けるように作動する、工程と、
粒子束を各ゲート経路に沿ってd個の積分器に方向付ける工程であって、d個の各前記積分器は、N個の時間間隔にわたって積分した粒子束に比例した出力粒子束を生成するように作動する、工程と、
N個の時間間隔にわたって入射した粒子束の振幅に関する情報を取得するために、Nd個の前記出力粒子束を処理装置を用いて解析する工程と、を含み、
ここで、各特有の符号列は長さNであり、少なくとも2個の異なるゲート経路を特定する少なくとも2個の異なる要素を有し、dは1以上である、方法。
【請求項2】
入射した粒子束は、光子、電子、中性子、および帯電粒子から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
調節器は、N個の経路すべてにわたって合計された粒子束の振幅の合計を、入力粒子束の振幅よりも大きい振幅に増やすように作動する増幅段階を含むことを特徴とする、請求項1~2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
調節器は、入力粒子束の振幅の少なくとも一部を拒絶するように作動するフィルタ装置を含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
調節器は、入力粒子束の振幅を、入力粒子束の振幅に比例した電気信号に変換するように作動するトランスデューサ装置を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
調節器は、各時間間隔k毎に反転した電気信号をさらに生成し、反転した前記電気信号を時間間隔k+Nの間出力に加えることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
調節器は、入力粒子束の振幅を、入力粒子束の振幅に比例した光子束の振幅に変換するように作動するトランスデューサ装置を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ゲート装置は、電子MUX、電気光学偏向器、平行平板偏向器、およびブラッググレーティングから選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ゲート装置は、粒子束を、異なる時間に少なくとも2個の異なる方向に方向付けるように作動し、方向付けられた前記
粒子束は、d個の前記積分器のうちの少なくとも1個を含む平面に入射することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
方向付けられた粒子束は、閉ループの周りに配置された複数の積分器を含む平面上に投影され、方向付けられた前記粒子束は、異なる時間に前記閉ループの異なる部分に入射することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各ゲート装置は、粒子束を、N個の積分間隔の第1の集合の間d個の前記積分器の第1の集合に方向付け、N個の積分間隔の第2の集合の間d個の前記積分器の第2の集合に方向付けることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
各ゲート装置で作動することができる特有の符号列は、擬似乱数系列であることを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
各ゲート装置で作動することができる特有の符号列は、1個以上の基となる擬似乱数系列の巡回置換から引き出されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基となる擬似乱数系列のうちの少なくとも1個は、アダマール系列であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
d個の各前記積分器は、入射した粒子束を、入射した粒子束の振幅に比例した電気信号に変換するように作動するトランスデューサを含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
d個の各前記積分器は、入射した粒子束を、入射した粒子束の振幅に比例した光子束に変換するように作動するトランスデューサを含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
各前記積分器からの積分された粒子束は、少なくとも1個の時間間隔の間バッファ装置に転送され、前記バッファ装置は、積分された前記粒子束を維持するように作動することを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
積分された粒子束の線形結合は、処理装置によって演算され、前記線形結合は、各ゲート装置で作動することができる符号列から決定されることを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
d個の前記積分器からの電気信号は、アナログ-デジタル変換器によって、積分された流束の振幅に比例した数値に変換され、前記数値は、解析されて、粒子束に関する情報を提供することを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
各時間間隔毎の時間値は、積分された信号値の線形結合であることを特徴とする、請求項1~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
積分された信号値は、アナログ-デジタル変換器を用いてデジタル形式に変換され、各時間間隔毎の時間値は、デジタル値の線形結合であることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アナログ回路によって、積分された信号値の線形結合を構成するさらなる工程を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
アナログ回路の出力は、アナログ-デジタル変換器によってデジタル値に変換されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アナログ回路の出力は、閾値と比較され、閾値条件を満たす場合は、アナログ回路の出力は、デジタル値に変換されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
時間列は、B=HYとして演算され、Hは、上記明細書に規定された通りであることを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
第1のアナログ信号は、ゲート装置で、第2のアナログ信号に対して1個のクロック期間未満位相シフトされることを特徴とする、請求項1~25のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時変動する粒子束を、時間分解能と信号対雑音比を向上させて測定するための方法および装置に関する。粒子は、光子、中性子、電子、帯電粒子であってもよい。
【背景技術】
【0002】
粒子束の振幅は、従来は、粒子束を集束し、粒子束をトランスデューサに方向付け、このトランスデューサによって、粒子束に比例した振幅を持つ電気信号(電圧または電流)を生成し、電気信号を条件付けし、電気信号と標準電気信号の集合を比較して、粒子束の振幅に数値を割り当てることによって測定される。最後の工程は、従来は、アナログ-デジタル変換器(ADC)を用いて行われる。
【0003】
アナログ-デジタル変換器は、計測器からレーダ、通信に至る用途において、アナログ電気信号とデジタル演算器の間のインターフェースとして機能する。ADCの性能を特定するために、Hzで表されるサンプリングレートと精度の2個の主な指標が使用される。ADCの精度は、dBや有効ビット数(ENOB)で様々に表される。一般に、サンプリングレートが大きくなるにつれて、ADCの精度が低くなり、それゆえ、粒子束の測定の精度も低くなる。本発明は、高サンプリングレートの粒子束の測定の精度を上げることを概して目的とする。本発明は、短い時間間隔にわたって粒子束が変動するのを解消できるように、実現可能な最大サンプリングレートを大きくすることをさらなる重要な目的とする。
【0004】
先行技術では、高周波ADC(>1GHz)は、典型的には、2つ以上の低レートADCの積み重ねからなり、これらのADCは、低レートADCの精度に近い精度を実現するために、時間インターリーブされる。これらの設計は、積み重ねた状態の各ADCに向かって順に入力信号の経路決定を行うタイミング回路に依存する。タイミング信号にはジッタが存在するので、誤差が導入される。本発明は、タイミング信号のジッタによって生じる誤差を減らすことを目的とする。さらなる誤差が導入され、これは、インターリーブされる積み重ねた状態のADCの間で異なる。具体的には、オフセット誤差とゲイン誤差がある。本発明は、ゲイン誤差とオフセット誤差の影響を減らすことを目的とする。
【0005】
本発明は、高速データ転送速度と高精度・正確度の両方を必要とするレーダ、通信、測定器などの用途に使用することができる。本発明の例示的な用途として、マルチGHzシグナルアナライザ(以下、GSAという)がある。例示的なGSAは、光信号または電子信号を入力として利用する。GSAは、本発明の概念の例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、粒子束の時間依存性を測定するための多重化方法を提供する。粒子は、電子、イオン、中性子、または光子であってもよい。下記の説明の文脈では、流束という用語は、進行方向に垂直な平面を通過する単位時間当たりの粒子数、または前記粒子によって運ばれる、単位時間当たりのエネルギーを指す。
【0007】
本発明は、電子構成部品および/または光学構成部品の集合と、入力束をN倍に時間多重するアルゴリズムの集合とを含むシステムである。入力束は、電子、光子、イオン、または中性子であってもよい。本システムは、トランスデューサを使用して、流束を互換性のある形式に変換することによって、他の種類の流束を測定するのに使用することができる。例えば、本システムは、シンチレータなどのトランスデューサを含んでもよく、シンチレータは、入射した粒子束を、粒子束の振幅に比例した光子束に変換するように作動する。本発明は、当業者に公知の多重化方法、例えばアダマール法、フーリエ法と共に使用することができる。
【0008】
好ましくは、しかし必須ではないが、本発明は、本出願人によって2018年5月23日に出願された米国特許出願第15/987,279(2018年11月29日にWO2018/213923として公開されているPCT出願第PCT/CA2018/050599に対応)に記載の高効率多重化(HEMX)と共に使用される。当該文献の開示は、参照によって本明細書に組み込まれる。HEMSは、粒子束の測定の信号対雑音比(SNR)を向上させるための方法である。下記は、HEMSへの言及を含むが、これらは例示に過ぎず、本明細書の発明は他の方法と共に使用してもよいことを理解されたい。
【0009】
入力束Φは、信号調節器に接続される。信号調節器は効果がなくてもよく、または、信号調節器は増幅器であってもよく、または、信号調節器は入力束を他の流束に加えるものであってもよい。信号調節器からの出力は、N個の実質的に等しい部分に分割され、流束φ=Φ/Nである各部分は、異なる経路に沿って異なるゲート装置に方向付けられる。各ゲート装置は、少なくとも1個の積分器に接続される。HEMSの実施形態では、積分器がd個存在し、dは1より大きい整数である。ゲート装置は、流束φを遮断するように機能するか、長さNの所定の符号列に基づいて、d個の積分器のうちの1個にすべての流束を方向付けるように機能する。積分器は、ゲート装置から受信した積分された流束に比例した電気信号を生成するように機能する。符号列の各要素は、時間間隔τの間ゲート装置によって講じられた動作を特定する。好ましくは、時間間隔は等しく、積分時間の合計はT=Nτである。本明細書の構成は、時間間隔が等しくなくても作動し、その場合は、積分時間の合計はT=Στiである。各積分期間Tの終わりに、各積分器は、積分された流束に比例した電気信号を随意のバッファ装置に転送するか、従来設計のADCに直接転送する。バッファ装置は、積分器からの電気信号を蓄積し、この電気信号は、少なくとも2T、好ましくはNTよりも長い期間の間実質的に変動することはない。バッファ装置に蓄積された積分された信号は、随意に、アナログ回路を用いて処理され、各時間間隔τi中の平均流束Φiに比例したアナログ量aiを生成する。
【0010】
随意に、アナログ量aiは、アナログ閾値と比較され、入射束に関する情報を生成する。
【0011】
随意に、恐らくは随意に行われたアナログ比較に基づいて、アナログ量aiは、従来型ADCに転送され、デジタル形式に変換される。
【0012】
随意に、バッファ装置にあるNd個の積分された信号の集合は、1個以上の従来設計のADCに転送され、デジタル値に変換される。デジタル値はその後、デジタル処理装置を用いて処理され、各時間間隔τi中の平均流束Φiに比例した数値を出す。
【0013】
積分器は、信号を合計する、当技術分野で公知の任意の装置である。積分器は、例えばコンデンサであってもよい。バッファは、信号を実質的に変動せずに蓄積する、当技術分野で公知の任意の装置である。バッファは、例えば電荷を蓄積するコンデンサであってもよい。ゲートは、信号を1個の経路から2個以上の代替経路に切り替える、当技術分野で公知の任意の装置である。ここでは、「信号」という用語は、電子量や電圧量などのアナログ量を指す。好ましくは、入力信号と切換信号は、比例定数で関連付けられる。理想的には、比例定数は1である。ゲートは、例えば電子MUXであってもよい。先行技術の標準的なMUXは、本発明の高周波用途においては時間応答性が十分ではない場合もある。いくつかの実施形態では、本明細書の構成は、以下にさらに記載されるような遅延線を含み、ADCシステム全体として、ゲート素子の時間分解能よりよい時間分解能を実現する。いくつかの実施形態では、本発明は、以下にさらに詳細に記載されるような電気光学切替機構を含み、ゲート素子の時間分解能よりよい時間分解能を実現する。
【0014】
ある実施形態では、構成は、
各時間間隔に入射した粒子束を集束する工程と、
粒子束を調節器に方向付ける工程であって、調節器は、入射した粒子束に比例した振幅を持つN個の調節された粒子束を、N個の異なる経路に沿ってN個の各前記経路上のゲート装置に出力し、
各前記ゲート装置は、各前記ゲート装置に特有の符号列に従って、各時間間隔に少なくとも2個の異なるゲート経路のうちの1個に沿って粒子束を方向付けるように作動する、工程と、
粒子束を各ゲート経路に沿ってそれぞれの積分器に方向付ける工程であって(しかし、2個の経路のうちの1個は行き止まりの経路であってもよく、この場合は、経路のうちの1個のみが積分する経路になる)、
d個の各前記積分器は、N個の時間間隔にわたって積分された粒子束に比例した電気信号を生成するように作動する、工程と、
N個の時間間隔にわたって入射した粒子束の振幅に関する情報を取得するために、Nd個の前記電気信号を解析する工程と、を設け、
ここで、各特有の符号列は長さNであり、少なくとも2個の異なるゲート経路を特定する少なくとも2個の異なる素子を有し、dは1以上である。
【0015】
すなわち、d=1であるとき、経路の1個は行き止まりの経路であり、使用されない。
【0016】
随意に、工程は、各電気信号をバッファ装置に方向付けることを含み、バッファ装置は、前記電気信号を蓄積するように作動する。
【0017】
ADCによって解析が行なわれる構成では、工程は、
各前記電気信号を、電気信号に比例したデジタル値を生成するように作動するアナログ-デジタル変換器に方向付けることと、
Nd個の前記デジタル値をデジタル演算器に方向付けることと、を含む。
【0018】
ADCによって解析が行なわれ、時系列d=1が生成される場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、電気信号に比例したデジタル値を生成するように作動するアナログ-デジタル変換器に方向付けることと、
N個の前記デジタル値をデジタル演算器に方向付けることと、
N個の前記デジタル値を並べて、データベクトルYにすることと、
前記データベクトルYに行列Hを乗算して、N個の時間間隔にわたって入射した粒子束の振幅に関する情報を取得することと、を含み、
ここで、dは1に等しく、行列Hは行列Zの逆行列であり、Zは長さNのN個の行を有し、各々は1個のゲート装置に対応し、Zの各行は1個のゲート装置に特有の符号列である。
【0019】
ADCによって解析が行なわれ、時系列アダマールが生成される場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、電気信号に比例したデジタル値を生成するように作動するアナログ-デジタル変換器に方向付けることと、
N個の前記デジタル値をデジタル演算器に方向付けることと、
N個の前記デジタル値を並べて、データベクトルYにすることと、
前記データベクトルYに行列Hを乗算して、N個の時間間隔にわたって入射した粒子束の振幅に関する情報を取得することと、を含み、
ここで、dは1に等しく、行列Hは行列Zの逆行列であり、Zは長さNのN個の行を有し、各々は1個のゲート装置に対応し、Zの各行は1個のゲート装置に特有の符号列であり、Zの各行は1個のゲート装置に特有の符号列であり、ここで、特有の符号列はアダマール系列の巡回置換である。
【0020】
ADCによって解析が行なわれ、時系列HEMSが生成される場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、電気信号に比例したデジタル値を生成するように作動するアナログ-デジタル変換器に方向付けることと、
N個の前記デジタル値をデジタル演算器に方向付けることと、
N個の前記デジタル値を並べて、データベクトルYにすることと、
前記データベクトルYに行列Hを乗算して、N個の時間間隔にわたって入射した粒子束の振幅に関する情報を取得することと、を含み、
ここで、dは1より大きく、行列Hは(ZTZ)-1ZTであり、ZはdN個の行を有し、Zの各行は1個のゲート装置に特有の符号列であり、ここで、特有の符号列は擬似乱数系列である。
【0021】
ハードウェアによって解析が行われる一般的な場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、前記電気信号の組み合わせを生成するように作動するハードウェアプロセッサに方向付けることと、
少なくとも1個の前記組み合わせと閾値電気信号値を比較して、情報を取得することと、を含む。
【0022】
ハードウェアPCAによって解析が行なわれる場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、少なくとも1個の主要構成要素上に前記電気信号の投影を生成するように作動するハードウェアプロセッサに方向付けることと、
主要構成要素上の少なくとも1個の前記投影と閾値電気信号値を比較して、入力に関する情報を取得することと、を含む。
【0023】
ハードウェアで解析が行なわれ、ADCが追従する一般的な場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、前記電気信号の組み合わせを生成するように作動するハードウェアプロセッサに方向付けることと、
少なくとも1個の前記組み合わせと閾値電気信号値を比較して、情報を取得することと、
前記情報に少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1個の前記電気信号をアナログ-デジタル変換器に方向付けて、デジタル値に変換することと、
少なくとも1個のデジタル値を解析して、入力信号に関する情報を取得することと、を含む。
【0024】
ハードウェアで解析が行なわれ、ADCが時系列に追従する一般的な場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、前記電気信号の組み合わせを生成するように作動するハードウェアプロセッサに方向付けることと、
少なくとも1個の前記組み合わせと閾値電気信号値を比較して、情報を取得することと、
前記情報に少なくとも部分的に基づいて、N個の電気信号を方向付けることと、
各前記電気信号を、電気信号に比例したデジタル値を生成するように作動するアナログ-デジタル変換器に方向付けることと、
Nd個の前記デジタル値をデジタル演算器に方向付けることと、
Nd個の前記デジタル値を並べて、データベクトルYにすることと、
前記データベクトルYに行列Hを乗算して、N個の時間間隔にわたって入射した粒子束の振幅に関する情報を取得することと、を含み、
ここで、dは1に等しく、行列Hは行列Zの逆行列であり、Zは長さNのN個の行を有し、各々は1個のゲート装置に対応し、Zの各行は1個のゲート装置に特有の符号列であり、ここで、特有の符号列はアダマール系列の巡回置換である。
【0025】
ハードウェアで解析が行なわれ、ADCが時系列に追従する一般的な場合の他の実施形態では、工程は、
各前記電気信号を、前記電気信号の組み合わせを生成するように作動するハードウェアプロセッサに方向付けることと、
少なくとも1個の前記組み合わせと閾値電気信号値を比較して、情報を取得することと、
前記情報に少なくとも部分的に基づいて、少なくとも1個の前記電気信号を方向付けることと、
各前記電気信号を、電気信号に比例したデジタル値を生成するように作動するアナログ-デジタル変換器に方向付けることと、
Nd個の前記デジタル値をデジタル演算器に方向付けることと、
Nd個の前記デジタル値を並べて、データベクトルYにすることと、
前記データベクトルYに行列Hを乗算して、N個の時間間隔にわたって入射した粒子束の振幅に関する情報を取得することと、を含み、
ここで、dは1より大きく、行列Hは(ZTZ)-1ZTであり、ZはdN個の行を有し、Zの各行は1個のゲート装置に特有の符号列であり、ここで、特有の符号列は擬似乱数系列である。
【0026】
いくつかの実施形態では、信号調節器は、周期的な信号列の始まりを検出し、開始信号を生成する構成要素を含む。次いで開始信号は、前記開始信号に対して一定の時間遅延で各ゲート装置に符号列を開始させる。例えば、始まりを検出する構成要素は、コンパレータであってもよい。さらに、この実施形態は、測定の対象の信号より前に開始信号がゲート装置に到着するように、信号源からゲート装置までに遅延経路を含んでもよい。
【0027】
各ゲート装置の長さNの符号列は、少なくとも2個の異なる値を含む。すなわち、N個の間隔の集合のうちの少なくとも1個の間隔の間は、ゲート装置は、第1の間隔の宛先とは異なる宛先に流束φを伝える。好ましくは、符号列は、各宛先にほぼ同数の間隔を割り当てる。いくつかの実施形態では、符号列はアダマール系列である。いくつかの実施形態では、符号列は擬似乱数である。各符号要素は、1個の間隔τの間にいずれの積分器を使用するか(または、積分器を使用しないか)を特定する。例えば、d=4であり、符号要素は3である場合は、流束は3個目の積分器に方向付けられる。
【0028】
ある重要な実施形態では、各ゲート装置は、2個以上の積分器の集合に接続され、符号列は、各積分期間T毎に1個の集合のみに作動する。コンデンサなどの実用的な積分器はリセットする期間が必要なので、この特徴は有益である。この実施形態では、1個の集合が積分し、それと同時に、他の集合が積分された信号を転送し、0にリセットする。
【0029】
いくつかの実施形態では、信号調節器は、入射束Φを2個の等しい部分に分割する。1個目の部分は、変更されない。2個目の部分は、反転され、遅延Tをもたらす経路に送られる。2個目の部分は、1個目の部分と再結合され、結合された流束は、N個の部分に分割され、上記に記載されるように経路に沿ってN個のゲート装置に方向付けられる。この実施形態では、各積分器は、前のN個の間隔にわたって積分された信号を含む。すなわち、加えられた各信号毎に、期間T後に、同じ信号が引かれる。この実施形態では、各間隔τ後に、積分された信号の新しい集合が利用可能になると、遅延時間Tが省かれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、各ゲート装置に接続された積分器が1個あり、符号列が取り得る状態は、積分器に接続される状態か、もしくは接続されない状態である。この実施形態は、先行技術のインターリーブされたシステムと同様の全体処理能力を有するが、多重化の利点が加わって、SNRが向上する。
【0031】
いくつかの実施形態では、d=1であり、符号列がアダマール系列である。この実施形態では、
Y=ZB+ε (1)
ここで、Yは測定されたパラメータのベクトルであり、Bは粒子束Φを記述したベクトルであり、Bの連続した各行は、連続した期間τ中の平均流束に対応し、Zは係数行列であり、係数行列は、流束場の各値からどれだけの粒子束が、観測されたパラメータYの各測定に行くのかを記述するものであり、εは誤差である。積分間隔τが等しくない場合は、補うために、Z行列の係数は実際の値によって重み付けされる。方程式(1)は、次の解をもつ。
B=Z-1Y (2)
【0032】
アダマールの実施形態は、先行技術の方式の順次インターリーブされたシステムと同数の測定を行なうが、ある瞬間における瞬時値ではなく、期間τにわたって平均値が演算されるので、タイミングジッタによる誤差は低減される。さらに、多重化方法は、N-1/2に比例して電子に作成される無相関雑音を低減する。本発明の入力段階の前に信号に入る雑音は、1個のイベントの間に忠実に再生成される。信号が繰り返す場合は、多重化方法はまた、入力段階の前に信号に入る無相関雑音を低減する。
【0033】
好ましい実施形態では、d>1であり、符号列は、測定誤差を最小にするために選択された擬似乱数系列の巡回置換である。HEMS用途で説明されるように、この場合の方程式(1)は、最小二乗法の解を持つ。
B=(ZTZ)-1ZTY (3)
H=(ZTZ)-1ZT (4)
【0034】
上記のアダマールの実施形態でされた、雑音の低減に関する解説はすべて、この実施形態にも適用される。ただし、SNRの振幅はより大きいので、それゆえ、この実施形態の方が好ましい。この実施形態は、先行技術の高速ADCシステムのサンプル処理能力のd倍を必要とする。この実施形態の利点は、信号対雑音比(SNR)がより高く、したがって、同じサンプリングレートでより高いビット深度が実現できることである。他の統計方法が使用されてもよい。測定された値の不確定性が等しい場合には、方程式(2)および方程式(3)が適用され、不確定性が等しくない場合には、他の形式が引き出されたことを、当業者は理解されたい。ニューラルネットワークなどの他の方法を使用してもよく、測定されたパラメータYの不確定性が等しくない場合には、特に有益である。
【0035】
d>1である、いくつかの実施形態では、流束Φは、経路の間で不均等に分割され、各経路に沿った積分された信号は、校正定数で乗算され、それにより、校正定数で乗算された経路上の積分器dすべてにわたって積分された信号の合計が、N個の経路すべてと同じである。
【0036】
いくつかの実施形態では、Yのアナログ値は、従来型ADCに伝えられてデジタル化され、時系列B=HYは、デジタル処理装置によって演算される。
【0037】
いくつかの実施形態では、Yのアナログ値は従来型ADCに伝えられて、第1のビット分解能でデジタル化され、Yのデジタル表現は、デジタル処理装置によって解析されて、第1の情報が取得され、そして第1の情報に少なくとも部分的に基づいて、同じYのアナログ値を第2のビット分解能を有した従来設計のADCで処理するかどうかが決定される。この実施形態は、対象となるデータがスパースである用途に有益である。例えば、レーダ用途は、高速8ビットADCを用いて、Yのベクトルすべてを処理してもよく、解析結果に基づいて、Yのベクトルの一部をバッファ装置から低速24ビットADCに伝え、対象となる信号をより高い分解能で解析してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、アナログ回路によって行列乗算HYが行われ、その結果は、アナログ形式でバッファ装置に蓄積される。
【0039】
いくつかの実施形態では、Bのアナログ値は閾値アナログ値と比較され、その比較結果に少なくとも部分的に基づいて、動作が講じられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、Yのアナログ値の線形結合は、アナログ回路によって演算され、少なくとも1個の線形結合は、少なくとも1個の閾値と比較され、その比較結果に少なくとも部分的に基づいて、動作が講じられる。この特徴は、例えば主成分解析(PCA)によるパターン認識に有益である。この例では、主成分上に投影されたものは、データベクトルYの線形結合である。最初にBを演算した場合は、より多くの演算が必要とされるものの、同一の結果が見出されることに留意されたい。レーダ用途では、アナログ比較を使用して、背景騒音から対象となる信号を振り分け、その後、対象となる信号のみをデジタル化してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、各積分期間の積分されたNd個のアナログ信号をバッファし、1個の従来型ADCのみが、バッファ装置から順次読み取ったNd個のアナログ値をすべて処理する。1個のサンプリング期間Tに対応するN個の流束値のブロック内で、オフセット誤差とゲイン誤差が無くなることを、当業者は認識するであろう。無論、1個のADCによってNd個のサンプルが処理されるのにかかる時間中に取得されたブロックを処理するには、更なるADCが必要となり、異なるADCによって処理されたブロックの間には、オフセット誤差とゲイン誤差が存在する。この実施形態は、誤差は単なる予測可能な間隔Tのレベルシフトであり、デジタル・ドメインで容易に修正されるという利点がある。
【0042】
いくつかの実施形態では、バッファ装置の配列は、少なくとも2種類のADC要素、AとBに接続される。種類AのADCは、速度f/Nで作動し、ビット深度baのデジタル化した結果を出力することができる。種類BのADCは、f/Nより低速度で作動し、ビット深度bb>baのデジタル化した結果を出力する。例えば、500MHzのADCを備えた4GHzの仮想システムでは、種類Aは、8ビットの結果を出力する500MHzのADCであり、種類Bは、24ビットの結果を出力する4MHzのADCである。作動中は、本システムは、以下のように機能する。種類AのADCは、サンプル空間内のサンプルをすべてデジタル化し、ハードウェアプロセッサまたはソフトウェアプロセッサは、時系列を、背景がある領域と対象となる特徴がある領域とに分ける。対象となる特徴に対応するバッファは、種類BのADCによって読み取られ、より高い分解能の結果を解析して、対象となる特徴に関する情報を取得する。
【0043】
いくつかの用途では、所望の時間分解能δは、採用するハードウェアのゲート切替時間τより小さい。最短のゲート切替時間と所望の時間分解能の間の速度は、p=τ/δとする。さらに、pは、整数で四捨五入する。例えば、MUXの最短の切替時間は5nsであり、必要とされるδは50psである場合は、p=100である。ゲートの機能は、単により高い分解能の信号を畳み込むだけなので、ゲート切替時間は、それ自体が制限要因になることはない。ゲートの機能は公知であるので、逆畳み込みによって、より高い分解能の信号を回復することができる。極限時間分解能は、ゲート期間に左右されず、むしろゲート期間の始まりに対する可能な限り小さなオフセットに左右される。ゲート期間の始まりに対するオフセットは、例えばFPGAで作成することができる。代わりに、ゲート装置までの制御線の長さは、異なる長さであってもよく、それにより、より長い線に沿って伝搬する制御信号は後で到着する。電子がc/3で走行する経路を1ミクロン変動させた場合は、到着時間の差は10fsである。遅延線のインクリメントは、好ましくは、等しい長さであるが、これは必須ではない。必要なのは、インクリメントが互いにδのおよそ整数倍異なることと、インクリメントの長さが知られていることだけである。詳述すると、本方法によって、積分の実際の時間間隔中の平均流束を見出すが、演算された結果は、測定時間間隔を反映した不等時間間隔であることを理解されたい。内挿によって、等しい時間間隔の結果を取得することができる。例示するために、以下に、逆畳み込みを使用した2個の方法の概略を説明する。
【0044】
1個目の数学的な手法は、あるものを、δによって、隣接するものからオフセットした長さの合計がTであるp個の時系列の集合として測定をモデル化するものである。各時系列は、Bn=HYnとして別々に決定され、ここで、nは1からpまで実行する。この場合は、HはN個の行を有する。各時系列の分解能は、ゲートによってτに制限される。長さNのp個の時系列は、インターリーブされて、ポイント間隔δをとる長さpNの結合系列をもたらす。結果として生じる時系列は、ゲート期間τの信号の畳み込みである。τと、恐らくτの形とは公知であるので、例えばフーリエ逆畳み込みなど、当業者に公知である標準的な逆畳み込み方法によって、信号を回復することができる。
【0045】
2個目の数学的な手法は、HEMS用途で説明するテプリッツの場合などのシステムをモデル化するものである。この場合は、Zの程度は、p倍に増える。好ましい実施形態では、Zは、異なる長さの少なくとも2つのブロックサイズsとtを含み、これらのブロックサイズは、公約数を持たない。さらに、sとtは、最小ブロックサイズp以上の整数である。また、好ましくは、sとtは素数である。最も好ましい実施形態では、3個以上のブロック長があり、ブロック長は素数である。多重系列Zの選択の数は非常に大きく、いくつかの選択は、他の選択よりよい信号対雑音比(SNR)をもたらす。
【0046】
静的空間マスクについては、テプリッツの場合では、行列(ZTZ)-1は非正則であり、それゆえ、変換行列H=(ZTZ)-1ZTは有効ではない。しかし、測定中の空間マスクの動きによる畳み込みによって、(ZTZ)-1は正則となり、名目上より高い分解能のデータポイントは、HEMS用途で説明するように演算できる。実現可能な信号対雑音比(SNR)は、畳み込みの詳細に左右される。同様に、ゲートの有限の遷移時間によって、(ZTZ)-1が正則となる時間畳み込みを生成する。具体的には、流束は、切替時間中に異なる積分器に分割されて、必要とされる畳み込みを実現する。信号は、B=HYとして直接演算される。それゆえ、上記に記載される空間分解能に関する方法によって、SNRは低下するものの、変調器素子の幅より細かい時間分解能を実現することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、入射束Φは、Np個の等しい部分に分割され、各部分は、ゲートに方向付けられ、各ゲート装置は、流束を長さNpの符号列によって特定された積分器に方向付け、積分器は、信号を積分し、積分された信号は解析され、入力束の時間依存性が決定され、ここで、符号列は、p以上の長さの部分系列からなる。この実施形態は、HEMS用途に記載されるテプリッツの場合に対応する。
【0048】
いくつかの実施形態では、ゲート装置は、1個以上の電気光学装置で構成され、この電気光学装置は、制御信号に応じて、入射した光子束を異なる積分器に迂回させる。好ましい実施形態では、2個の連続した電気光学装置は、入射した光子束を、閉経路に沿って配置された積分器に迂回させ、ここで、積分器は、符号列を実行するように形作られる。好ましくは、積分器は、光子束が積分器に入射するときに光電効果によって生成された光電子を積分する。
【0049】
いくつかの実施形態では、ゲート装置は、1個以上の電気偏向装置で構成され、この電気偏向装置は、制御信号に応じて、入射した電子束を異なる積分器に迂回させる。好ましい実施形態では、2個の連続した電気偏向装置が、入射した電子束を、閉経路に沿って配置された積分器に迂回させ、ここで、積分器は、符号列を実行するように形作られる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】1秒当たり周波数fのサンプルで作動する、先行技術の高速インターリーブ方式のADCの概略である。
【
図1A】入力信号(303)と一連のクロック信号を含む、
図1のADCの信号の図である。
【
図3】7個のゲート装置を使用した、
図2の実施形態で使用するための多重積分ユニットの概略図を示す。
【
図4】積分間隔の始まりを1個のクロック期間未満シフトさせるために遅延線によって作成された、時間的にシフトされた信号を含む、一連の例示的な波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1は、先行技術による高速アナログ-デジタル変換システムの概略図を示す。アナログ入力(1)は、増幅され(2)、結果として生じるアナログ信号(303)は、タイミング制御(141)に接続されたスイッチ(11)に送信される。高周波fの各クロック間隔では、タイミング制御(141)は、積み重ねた状態のADCのアドレスをインクリメントし、アナログのサイクルに結び付け、最後のアドレスが接続された後に、最初のアドレスにリセットする。図示の例では、積み重ねた状態のADCは、繰り返し系列で接続される(81)、(82)、(83)、(84)。クロック入力は(304)で表され、ADC(81)、(82)、(83)、(84)の波形はそれぞれ、(121)、(122)、(123)、(124)で表される。入力信号(303)の値は、各ADCのタイミングパルスの立ち上がりエッジで取り込まれる。すなわち、ADC(81)、(82)、(83)、(84)はそれぞれ、(221)、(221)、(223)、(224)で表されている瞬間に信号を読み取る。積み重ねた状態の各ADCは、周波数f/N(図示の例ではf/4)で、デジタル結果をインターリーバ(121)に出力し、デジタル値の順序付けられた系列を通過し、演算装置(151)に向かう。演算装置(151)は、オフセット誤差、ゲイン誤差、タイミング誤差の影響を減らすために、積み重ねられたADCの未加工の出力を処理する。各サンプル間隔とそれに対応するADCの間には、1対1の関係が存在する。
【0052】
図2は、本発明の一般的な概略を示す。粒子束は集束され、アナログ信号として(1)でシステムに入力される。アナログ信号は、増幅器(3)と分割素子(4)とを含む調節器(2)に入力される。調節器(2)は、フィルタ(3A)を含んでもよく、フィルタ(3A)は、入力粒子束の振幅の少なくとも一部を拒絶するように作動する。分割素子(4)と増幅器(3)は、協働し、それにより、アナログ信号(1)の振幅に比例した時間の各瞬間に、振幅を持つアナログ信号(1)(あるいは、同じことであるが粒子束)のN個のクローンを生成する。クローンされたN個のアナログ信号は、(7)で示され、概して列(10)で表されるN個のゲート装置に方向付けられる。各ゲート装置に到着する信号が、他のゲートすべてに到着する信号と位相が一致するように、経路(7)が配置される。ゲート装置(10)の動作は、タイミング制御(141)によって調整され、タイミング制御(141)は、タイミング信号(5)と制御信号(6)を各ゲート装置(10)に方向付ける。随意に、入力信号(1)は、閾値(111)と比較され、閾値条件を満たす場合は、信号(8)は、タイミング制御(141)に送信される。クローンされた信号(7)の伝搬遅延が閾値信号(8)とタイミング信号(5)と制御信号(6)の伝搬遅延以上となるように、信号線が配置される。閾値(111)と比較され、例えば、過渡信号の始まりを検出したり、後発データ取得を同期させたりするために使用することができる。これにより、本明細書の構成は、入力信号と、同閾値に対する基準信号を比較することができる。ゲート装置(10)は、符号列に従ってmd個の経路のうちの1個を選択し、クローンされた信号(7)を、選択された経路に沿って、概して列(30)に表される積分器に方向付ける。積分器は、N個の積分間隔の間に入射したクローンされた信号を積分する。
【0053】
図3によりよく示されるように、信号線(7)のクローンされた波形(303)は、ゲート装置(11)に入射し、ゲート装置(11)は、符号列に従って波形を積分器(31)に方向付けるか、積分器(32)に方向付ける。
図3に図示された例では、N=7であり、d=2である。ゲート装置(11)、(13)、(15)、(17)、(19)、(21)、(23)は、サンプル制御波形を持つ2個の関連した積分器と共に図示されている。各ゲート装置は、名目上は、同じ入力信号(7)を受信し、したがって、N個の積分間隔におけるmd個の積分器からなる各集合にわたる合計は、同じになるべきである。しかし、構成要素の部品の小さな違いにより、合計は変わり得る。この差は、以上で参照したHEMS用途で説明したように、各集合を合計し、各集合の各値を合計で除算することによって、デジタルプロセッサ(151)で修正することができる。先行技術とは対照に、時間間隔と積分器の間には、1対Nの関係が存在する。この例では、波形は、長さ7のアダマール系列とそれぞれの補集合を巡回置換するものである。積分器(31)、(32)の波形はそれぞれ、(331)、(332)として図示されている。参考のために、上にはクロック信号(304)が図示される。波形(331)が高い場合は、ゲート装置(11)は、線(7)のアナログ波形(303)を積分器(31)に方向付ける。波形(332)が高い場合は、ゲート装置(11)は、線(7)のアナログ波形(303)を積分器(32)に方向付ける。積分器(31)、(32)の波形(303)の積分された部分はそれぞれ、波形(431)、(432)の濃く塗られた領域として図示されている。
図3の例では、符号列の終わりで、アナログ波形は、(3m)で表された他の一対の積分器に方向付けられ、この他の一対の積分器は、次のN個の積分間隔において、あらゆる点で積分器(31)、(32)の代わりとなる。一方、積分器(31)、(32)で積分された信号はそれぞれ、バッファ装置(51)、(52)に転送される。バッファ装置(51)、(52)は、
図2に示されるように、バッファ制御(152)によってバッファ装置の配列から選択される。バッファ制御(152)は、バッファ装置(51)、(52)内に蓄積された積分された信号がそれぞれ、後で信号線(71)、(72)で処理可能にするように作動する。積分された信号がバッファ(51)、(52)に転送された後は、積分器(31)、(32)はリセットされて、他の積分サイクルを開始する準備が行われる。各ゲート装置に関連した少なくとも1個の積分器の集合がアナログ信号を積分することが可能であり、それと同時に、他の集合が転送動作とリセット動作を実行するように、多重度mが選択される。各ゲート装置に関連したm個の積分器の集合を備えた構成では、入力粒子束を連続して測定することができる。サンプリングを連続して行う必要がない場合は、1個の積分器の集合(m=1)で十分である。
【0054】
図2に戻ると、バッファ制御(152)によって、概して列(50)で表されるバッファの配列から選択されるバッファ装置に、積分された信号が蓄積される。バッファ制御(152)は、1個の積分サイクルに対応したバッファの配列内のNd個のこれらのバッファ装置の内容を、概して列(70)で表される信号線で利用可能にするように作動する。信号線(70)は、データベクトルYをアナログ表示したものであって、ハードウェアプロセッサ(80)や、種類(91)、(92)を含む従来設計のADCのバンク(90)に接続される。ハードウェアプロセッサ(80)は、データベクトルYに作動し、データベクトルYに少なくとも部分的に基づいて、アナログ信号をADCバンク(90)に送信してもよい。ハードウェアプロセッサは、データベクトルYに作動し、データベクトルYに少なくとも部分的に基づいて、論理値をデジタルプロセッサ(151)に送信してもよい。ADCバンクは、データベクトルYに作動し、Yの各要素のデジタル表現をデジタルプロセッサ(151)に転送してもよい。デジタルプロセッサは、(あるいは、ハードウェアプロセッサは、前述の論理値を介して)信号を作成することができ、この信号によって、バッファ制御は、バッファに蓄積されたNd個の積分された信号のいかなる集合をも信号線(70)で利用可能することができる。
【0055】
従来型ADCの配列は、(91)、(92)で表された、異なる速度や異なるENOBの仕様を持つ複数の種類を含む。ハードウェアプロセッサ(80)は、信号の振幅を表すアナログ値を作成し、パターンマッチングを表すアナログ値を作成し、これらのアナログ値とアナログ閾値を比較するように作動することができる。ハードウェアプロセッサは、従来型ADCの配列(90)にリンクされ、それにより、ハードウェアプロセッサによって作成され、引き出されたアナログ値はいずれも、デジタル形式に変換することができる。ハードウェアプロセッサ(80)と従来型ADCの配列はどちらも、デジタルプロセッサ(151)に接続され、デジタルプロセッサ(151)は、バッファ制御器(152)とも通信する。
【0056】
いくつかの実施形態では、データベクトルYは、従来型ADCの配列(90)に方向付けられ、ADCの種類(91)によって、高速変換され、データベクトルYを低ビット分解能のデジタル表現が生成される。Yのデジタル表現は、デジタルプロセッサ(151)に転送され、入力粒子束の低い分解能の表現は、d=1の場合は方程式(2)によって、d>1の場合は方程式(3)によって演算される。デジタルプロセッサは、入力粒子束の低い分解能のデジタル表現について、さらなる解析を行う。さらなる解析には、相関、パターンマッチング、閾値、または、N個の時間間隔の系列に作動する他の機能、N個の時間間隔の複数の系列に作動する他の機能が含まれてもよい。さらなる解析に基づいて、デジタルプロセッサは、対象となる特徴を持った系列を特定し、論理値を作成し、それにより、バッファ制御器(152)は、対象となる系列からの積分された信号を高分解能ADC(92)で利用可能にする。高分解能ADCは、系列の高ビット分解能の表現を作成し、デジタルプロセッサは、高い分解能の系列についてさらに解析を行なう。この実施形態は、入力粒子束が、対象となる信号を含む空間間隔を持ったほとんど関心を引かない背景である用途に好適である。信号は、低い分解能でフィルタされ、対象となる信号のみ、高い分解能のデジタル表現に変換され、それゆえ、高い分解能に変換しなければならない回数を減らし、関連したハードウェアコストを削減する。
【0057】
いくつかの実施形態では、データベクトルYは、ハードウェアプロセッサ(80)に方向付けられ、ハードウェアプロセッサは、入力アナログデータベクトルYのアナログ値に少なくとも部分的に基づいて、1個以上のアナログ信号からなる集合を作成する。各入力データベクトルYは、N個の時間間隔に関するアナログ情報を含む。いくつかの実施形態では、ハードウェアプロセッサは、N個の時間間隔より大きい時系列に対応した複数の入力データベクトルYに少なくとも部分的に基づいて、1個以上のアナログ信号からなる集合を作成する。ハードウェアプロセッサは、例えば、Yの要素の組み合わせとアナログ閾値を比較することによって、相関またはパターンマッチングを実行してもよい。閾値が満たされる場合は、論理信号がデジタルプロセッサ(151)に送られてもよい。閾値が満たされる場合は、組み合わせのアナログ表現がADCバンク(90)に方向付けられ、デジタル値に変換され、さらにデジタルプロセッサ(151)によって処理されてもよい。ハードウェアプロセッサは、方程式(2)または方程式(3)に従ってアナログ出力を生成し、前記アナログ出力をADCバンク(90)に転送し、デジタル表現に変換し、さらにデジタルプロセッサ(151)によって処理してもよい。この機能は、d>1である実施形態において、ADCが変換しなければならない回数を減らすのに有益である。
【0058】
図4は、積分間隔の始まりを1個のクロック期間未満シフトさせるために遅延線によって作成された、一連の例示的な波形を示す。すなわち、
図4に示されるように、第1のアナログ信号は、ゲート装置で、第2のアナログ信号に対して1個のクロック期間未満位相シフトされる。入力アナログ波形は、(303)で概略的に示され、クロック信号は、(304)で示される。例示的な積分波形(331)は、
図3の(331)と同一である。積分波形(431)、(531)、(631)、(731)は、クロック期間q/pシフトされ、この例では、p=5、qは5未満の整数である。あるハードウェアの実施形態では、各積分器の波形が、異なるゲート装置に適用される。
図3では、ゲート装置は7個存在する。
図4の例では、ゲート装置は35個存在し、各々は、
図3で示されているような積分器の集合を持つ。方程式(3)の目的で、Nは、ゲート装置の数であり、この例では35である。本明細書の構成の時間分解能は、クロック周波数の時間分解能によってではなく、端数のクロック遅延期間の分解能によって設定される。
【0059】
図5Aは、高速切替方法の概略を示す。経時変動する振幅(303)を持つアナログビームは、z方向に伝搬する。アナログビームは光子または電子などの帯電粒子で構成されてもよい。ビームは、第1の偏向器(171)に入射し、第1の偏向器(171)は、伝搬方向のベクトルに、電源(161)によって印加された電圧に比例して、x方向にベクトル成分を加える。ビームは、第2の偏向器(172)に入射し、第2の偏向器(172)は、伝搬方向のベクトルに、電源(162)によって印加された電圧に比例して、y方向にベクトル成分を加える。ビームが帯電粒子で構成されている場合は、平行導体板の間に電圧を印加することによって、(171)、(172)で偏向を実現することができる。ビームが光子で構成されている場合は、印加した電圧に応じて屈折率を変動させる(電気光学効果)光学素子に電圧を印加することによって、偏向を実現することができる。電圧源(161)、(162)は、位相のずれた周期的波形を生成するように調整され、それにより、ビームによって取られた方向は、閉ループに続く。
図5Aに示される実施例において、電圧源(161)、(162)は、90度位相のずれた正弦波形を出力し、直錐の表面の周りを回るビーム路程を生成する。積分器の配列が、z方向に垂直な平面に配置され、ビームが、概して(180)で示される円形リングの平面と交差する。
図5bで示されているように、リングの周りには、積分器(31)、(32)が配置される。積分器(31)に接続された領域は濃く塗られ、積分器(32)に接続された領域は白である。同じように濃く塗られた積分はすべて、共通の積分器に接続される。
図5Bに示されている実施例には、N=23個のゾーンがあり、それゆえ、時間分解能はNfであり、ここで、fは電圧源(161)、(162)の周波数である。fは数GHz、Nは1000以上となり得るので、
図5A、
図5Bに示されている実施形態で、THz範囲の時間分解能が可能である。
【0060】
図5A、
図5Bに示されている構成は、飛行時間(TOF)型ラマン分光法を行うために使用することができる。従来設計では、デューティ比が1%よりはるかに小さいパルスレーザを使用して、サンプルからラマンスペクトルを励起することができる。ラマン散乱線は集束され、屈折率が波長によって異なる分散を持った光ファイバに沿って伝送される。分散により、異なるラマン散乱波長が異なる速度で移動し、一時的に外に配列される。系列に到着した各波形で、時間信号が測定される。スペクトル分解は、レーザーパルスの長さと光ファイバの長さによって制御される。時間スペクトルは、レーザーパルスと時間ラマンスペクトルの畳み込みである。光ファイバが長ければ、信号減衰が大きくなるのを犠牲にして、ラマンスペクトルの波長成分の時間的分離が大きくなる。本発明の構成では、レーザー照明は連続的であり、デューティ比を100倍以上増やしてもよい。さらに、連続照明の強度を調整し、パルス源のパルス強度特性において5%のばらつきが生じるのを回避することができる。デューティ比を大きくすることと、励起照明源の安定性を向上することとの両方によって、信号対雑音比が向上する。
図5A、
図5Bに示されている構成では、EO素子(171)、(172)は、ラマン散乱光子の連続的な流束をとり、その流束を、エンコーダリング(180)内で、非常に短い空間間隔に分割する。領域の各種類(31)、(32)は、長さLの光ファイバなど、分散性媒質を通り抜け、その後、各種類は、ゲートによって方向付けられ、N個の期間の間積分される。この実施形態では、EO装置は、
図3のゲート装置であり、符号列は、ループ(180)のパターンとしてハードコードされる。EO装置は、各積分期間の始まりを1区間遅延させるか、または進めることによって実現される、ベースパターンのN個の巡回順列を生成するように作動する。N個の積分系列が終了すると、方程式(3)によって、ラマンスペクトルが演算される。この方法によって実現された非常に短い有効パルス長は、より短い長さLの分散性媒質が必要とされるので、吸収損失を減らすことによって、スペクトル分解能とSNRの両方を向上する。関連した実施形態では、各区分に入射されるラマン散乱信号は、
図2の粒子束入力(1)になる。関連した実施形態では、高スペクトル分解能と高時間分解能を組み合わせる。記載される本方法は、ラマン分光法に限定されるものではなく、他のスペクトル源を解析するのに使用することができる。
【0061】
上記に記載されるTOF方法は、他の種類のスペクトル測定に適用することができる。