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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-02
(45)【発行日】2024-08-13
(54)【発明の名称】CXCR2拮抗剤の結晶形及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20240805BHJP
   A61K 31/4523 20060101ALI20240805BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240805BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240805BHJP
【FI】
C07D405/12 CSP
A61K31/4523
A61P11/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 47
(21)【出願番号】P 2022500827
(86)(22)【出願日】2020-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2020101352
(87)【国際公開番号】W WO2021004531
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】201910626168.6
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522008311
【氏名又は名称】シンゼン オプティマム バイオロジカル テクノロジー カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高峰
(72)【発明者】
【氏名】陳遠
(72)【発明者】
【氏名】張鵬
(72)【発明者】
【氏名】羅云富
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-510164(JP,A)
【文献】特表2009-534421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線粉末回折パターンが、4.02±0.20°、15.95±0.20°と18.59±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物1のA結晶形。
【化1】
【請求項2】
X線粉末回折パターンが、4.02±0.20°、14.54±0.2°、15.95±0.2°、16.56±0.2°、17.14±0.2°、18.59±0.2°、19.98±0.2°と20.67±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項1に記載の化合物1のA結晶形。
【請求項3】
X線粉末回折パターンが、4.02°、8.14°、9.38°、12.37°、14.54°、15.95°、16.56°、17.14°、17.64°、18.59°、18.83°、19.31°、19.98°、20.67°、23.29°、25.30°と28.96°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項2に記載の化合物1のA結晶形。
【請求項4】
XRPDパターンは、下記図1に示す通りである、請求項3に記載の化合物1のA結晶形。
図1

【請求項5】
示差走査熱量曲線は、218.8℃±3℃で吸熱ピークの開始点を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の化合物1のA結晶形。
【請求項6】
DSCパターンは、下記図2に示す通りである、請求項5に記載の化合物1のA結晶形。
図2

【請求項7】
熱重量分析曲線は、150.0℃±3℃で3.24%の重量損失を有する、請求項1~4の何れか1項に記載の化合物1のA結晶形。
【請求項8】
TGAパターンは、下記図3に示す通りである、請求項7に記載の化合物1のA結晶形。
図3

【請求項9】
X線粉末回折パターンが、7.88±0.20°、8.69±0.20°と16.45±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物1のB結晶形。
【化2】
【請求項10】
X線粉末回折パターンが、7.88±0.20°、8.69±0.20°、11.37±0.20°、12.47±0.20°、15.32±0.20°、16.45±0.20°、17.49±0.20°と22.90±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項9に記載の化合物1のB結晶形。
【請求項11】
X線粉末回折パターンが、7.88°、8.69°、11.37°、12.47°、15.32°、16.45°、17.49°、20.04°、21.24°、22.90°、23.71°、24.14°と24.90°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項10に記載の化合物1のB結晶形。
【請求項12】
XRPDパターンは、下記図4に示す通りである、請求項11に記載の化合物1のB結晶形。
図4

【請求項13】
X線粉末回折パターンは、7.81±0.20°、8.31±0.20°と11.21±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物1のC結晶形。
【化3】
【請求項14】
X線粉末回折パターンは、7.81±0.20°、8.31±0.20°、11.21±0.20°、14.58±0.20°、16.37±0.20°、17.92±0.20°、23.48±0.20°と24.18±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項13に記載の化合物1のC結晶形。
【請求項15】
XRPDパターンは、下記図5に示す通りである、請求項14に記載の化合物1のC結晶形。
図5

【請求項16】
X線粉末回折パターンは、8.86±0.20°、12.77±0.20°と22.89±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物1のD結晶形。
【化4】
【請求項17】
X線粉末回折パターンは、7.63±0.20°、8.86±0.20°、10.12±0.20°、11.53±0.20°、12.77±0.20°、18.02±0.20°と22.89±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項16に記載の化合物1のD結晶形。
【請求項18】
XRPDパターンは、下記図6に示す通りである、請求項17に記載の化合物1のD結晶形。
図6

【請求項19】
X線粉末回折パターンは、8.22±0.20°、11.45±0.20°と16.66±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物1のE結晶形。
【化5】
【請求項20】
X線粉末回折パターンは、8.22±0.20°、8.84±0.20°、11.45±0.20°、12.23±0.20°、13.16±0.20°、16.66±0.20°、18.57±0.20°と24.48±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項19に記載の化合物1のE結晶形。
【請求項21】
XRPDパターンは、下記図7に示す通りである、請求項20に記載の化合物1のE結晶形。
図7

【請求項22】
X線粉末回折パターンは、12.20±0.20°、16.21±0.20°と17.24±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物1のF結晶形。
【化6】
【請求項23】
X線粉末回折パターンは、7.62±0.20°、11.11±0.20°、12.20±0.20°、15.07±0.20°、16.21±0.20°、16.70±0.20°、17.24±0.20°と19.81±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項22に記載の化合物1のF結晶形。
【請求項24】
X線粉末回折パターンは、7.62°、8.44°、9.61°、11.11°、12.20°、12.76°、14.82°、15.07°、16.21°、16.70°、17.24°、18.32°、19.81°、20.99°、21.69°、22.69°、23.51°、23.89°、24.34°、24.69°、25.32°、25.99°、27.06°、27.54°、28.65°、30.57°、33.43°と34.16°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項23に記載の化合物1のF結晶形。
【請求項25】
XRPDパターンは、下記図8に示す通りである、請求項24に記載の化合物1のF結晶形。
図8

【請求項26】
X線粉末回折パターンは、14.75±0.20°、16.64±0.20°と18.94±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物1のG結晶形。
【化7】
【請求項27】
X線粉末回折パターンは、3.74±0.20°、8.56±0.20°、14.75±0.20°、16.64±0.20°、17.10±0.20°、18.94±0.20°、20.10±0.20°と20.98±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項26に記載の化合物1のG結晶形。
【請求項28】
X線粉末回折パターンは、3.74°、8.56°、11.08°、13.06°、13.47°、14.75°、15.13°、15.87°、16.64°、17.10°、17.39°、18.45°、18.94°、19.61°、20.10°、20.98°、22.41°、22.93°、23.49°、24.27°、25.63°、28.22°、29.66°、32.10°と34.43°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項27に記載の化合物1のG結晶形。
【請求項29】
XRPDパターンは、下記図9に示す通りである、請求項28に記載の化合物1のG結晶形。
図9

【請求項30】
【化8】

ここで、前記化合物1は、
【化9】

であり、
ここで、yは0.9~1.1、好ましくは0.91、1又は1.1である、化合物2。
【請求項31】
X線粉末回折パターンは、17.11±0.20°、18.69±0.20°と20.74±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物2のH結晶形。
【化10】

(ここで、前記化合物1は、
【化11】

である。)
【請求項32】
X線粉末回折パターンは、11.33±0.20°、12.46±0.20°、14.04±0.20°、14.99±0.20°、17.11±0.20°、18.69±0.20°、20.74±0.20°と22.75±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項31に記載の化合物2のH結晶形。
【請求項33】
XRPDパターンは、下記図10に示す通りである、請求項32に記載の化合物2のH結晶形。
図10

【請求項34】
【化12】

ここで、前記化合物1は、
【化13】

であり、
ここで、mは0.98~1.0、好ましくは0.98又は1.0である、化合物3。
【請求項35】
X線粉末回折パターンは、7.19±0.20°、11.64±0.20°と12.87±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物3のJ結晶形。
【化14】

(ここで、前記化合物1は、
【化15】

である。)
【請求項36】
X線粉末回折パターンは、7.19±0.20°、8.34±0.20°、9.69±0.20°、11.64±0.20°、12.87±0.20°、14.97±0.20°、18.42±0.20°と21.08±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項35に記載の化合物3のJ結晶形。
【請求項37】
X線粉末回折パターンは、7.19°、8.34°、9.69°、11.64°、12.87°、13.53°、13.85°、14.97°、15.49°、15.91°、16.25°、16.75°、17.51°、18.02°、18.42°、18.57°、19.40°、19.82°、20.60°、21.08°、22.32°、22.75°、24.63°、25.00°、26.49°、27.18°、27.86°、32.61°と33.97°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項36に記載の化合物3のJ結晶形。
【請求項38】
XRPDパターンは、下記図11に示す通りである、請求項37に記載の化合物3のJ結晶形。
図11

【請求項39】
【化16】

ここで、前記化合物1は、
【化17】

であり、
ここで、nは0.95~1.0、好ましくは0.95又は1.0である、化合物4。
【請求項40】
X線粉末回折パターンは、5.67±0.20°、11.34±0.20°と19.14±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、化合物4のK結晶形。
【化18】

(ここで、前記化合物1は、
【化19】

である。)
【請求項41】
X線粉末回折パターンは、5.67±0.20°、11.34±0.20°、13.07±0.20°、14.07±0.20°、19.14±0.20°、20.35±0.20°、21.95±0.20°と23.55±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項40に記載の化合物4のK結晶形。
【請求項42】
X線粉末回折パターンは、5.67°、10.20°、11.34°、13.07°、14.07°、14.49°、17.08°、18.11°、19.14°、20.35°、21.95°、23.55°、25.00°、26.56°と28.08°の2θ角に特徴的回折ピークを有する、請求項41に記載の化合物4のK結晶形。
【請求項43】
XRPDパターンは、下記図12に示す通りである、請求項42に記載の化合物4のK結晶形。
図12

【請求項44】
化合物1をメタノール、エタノール、水又はアルコール系溶媒と水の混合溶媒に入れて、再結晶又はパルプ化して得ることを含む、化合物1のA結晶形の調製方法。
【化20】
【請求項45】
前記アルコール系溶媒は、メタノールである、請求項44に記載の調製方法。
【請求項46】
前記アルコール系溶媒と水との体積比は、1:0~1.5から選ばれる、請求項45に記載の調製方法。
【請求項47】
CXCR2関連疾患を治療する薬物の調製における、請求項1~43の何れか1項に記載のA、B、C、D、E、F、G、H、J又はK結晶形の使用
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔優先権の主張〕
本願は2019年07月11日に出願され、出願番号がCN201910626168.6である特許の優先権を主張する。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、CXCR2拮抗剤の結晶形、及びCXCR2関連疾患を治療する薬物の調製におけるその応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、人を衰弱させる疾患の一つであり、慢性気道炎症による進行性気流制限を特徴とする。通常、有害な粒子とガスを吸い込むことにより引き起こされ、このような粒子とガスは主に喫煙及び大気汚染に由来する。その症状は、粘液性分泌物が多すぎること、気道が狭くなること、線維化及び肺胞の損失を含む。更に、平均体重の減少、骨粗しょう症、心血管疾患と精神的ダメージにつながる可能性がある。中等度から重度の慢性閉塞性肺疾患に対する現在の治療は相対的に無効であり、疾患の悪化又は死亡を顕著に低減できる利用可能な薬物が未だにない。慢性閉塞性肺疾患のためのグローバルイニシアティブ(GOLD)は、中等度から重度のCOPD患者に対して長時間作用型気管支拡張(LABAとLAMA)を第1選択の維持療法として使用するように勧めている。これらの薬物は、有効な気管支拡張を生じさせることができるが、慢性閉塞性肺疾患患者の潜在的な炎症を治療することができない。吸入コルチコステロイド(ICS)は、ぜんそく患者に対して一定の効果があるが、慢性閉塞性肺疾患に対してほとんど効果がない。従って、気管支拡張剤が患者に無効になる場合に、吸入コルチコステロイド(ICS)を含む付加的な治療法は、慎重にしか使用することができない。
【0004】
COPDは慢性炎症性疾患の一つであり、これは、有効な抗炎症療法が現在、慢性閉塞性肺疾患分野において満たされていない最も強い治療要求であることを示している。ロフルミラストは経口のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害剤の一つであり、慢性閉塞性肺疾患を治療する最初に承認された経口抗炎症薬である。しかし、ロフルミラストはその強い副作用によって使用が制限されているので、慢性閉塞性肺疾患を治療するために、他の新規の抗炎症標的を開発しなければならない。
【0005】
インターロイキン8(IL-8又はCXCL8)は、72個のアミノ酸残基を含むタンパク質であり、炎症部位の白血球動員と移転を制御する肝心な因子である。インターロイキン8はその受容体と結合することによって機能するものであり、その受容体は、CXCケモカイン受容体に属し、CXCR1とCXCR2を含むGタンパク質共役受容体である。CXCR2はヒト好中球表面に高度に発現されるものであり、インターロイキン8が好中球表面のCXCR2と結合すると、カルシウム流量変動、脱顆粒作用及び後続の走化性を含む細胞内の一連の反応を引き起こすことになる。インターロイキン8は、例えば関節炎、ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患などの複数種の炎症疾患において含有量が高くなり、それとその受容体との相互作用を遮断すれば、これらの疾患に有益であることが示唆されている。
【0006】
WO2007124424は、関連疾患の治療におけるCXCR2拮抗剤Danirixinの応用を開示している。
【0007】
【化1】
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、X線粉末回折パターンが、4.02±0.20°、15.95±0.20°と18.59±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のA結晶形を提供する。
【0009】
【化2】
【0010】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のA結晶形のX線粉末回折パターンは、4.02±0.20°、14.54±0.2°、15.95±0.2°、16.56±0.2°、17.14±0.2°、18.59±0.2°、19.98±0.2°と20.67±0.2°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0011】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のA結晶形のX線粉末回折パターンは、4.02°、8.14°、9.38°、12.37°、14.54°、15.95°、16.56°、17.14°、17.64°、18.59°、18.83°、19.31°、19.98°、20.67°、23.29°、25.30°と28.96°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0012】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のA結晶形は、そのXRPDパターンが図1に示す通りである。
【0013】
本発明の一部の実施形態において、前記A結晶形のXRPDパターン解析データは、表1に示す通りである。
【0014】
【表1】
【0015】
本発明の一部の実施形態において、前記A結晶形の示差走査熱量曲線は、218.8℃±3℃で吸熱ピークの開始点を有する。
【0016】
本発明の一部の実施形態において、前記A結晶形のDSCパターンは、図2に示す通りである。
【0017】
本発明の一部の実施形態において、前記A結晶形の熱重量分析曲線は150.0℃±3℃で3.24%の重量損失を有する。
【0018】
本発明の一部の実施形態において、前記A結晶形のTGAパターンは、図3に示す通りである。
【0019】
本発明は、X線粉末回折パターンが、7.88±0.20°、8.69±0.20°と16.45±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のB結晶形を更に提供する。
【0020】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のB結晶形のX線粉末回折パターンは、7.88±0.20°、8.69±0.20°、11.37±0.20°、12.47±0.20°、15.32±0.20°、16.45±0.20°、17.49±0.20°と22.90±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0021】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のB結晶形のX線粉末回折パターンは、7.88°、8.69°、11.37°、12.47°、15.32°、16.45°、17.49°、20.04°、21.24°、22.90°、23.71°、24.14°と24.90°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0022】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のB結晶形は、そのXRPDパターンが図4に示す通りである。
【0023】
本発明の一部の実施形態において、前記B結晶形のXRPDパターン解析データは、表2に示す通りである。
【0024】
【表2】
【0025】
本発明の一部の実施形態において、前記B結晶形の示差走査熱量曲線は、156.1±3℃と207.3±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有し、168.6±3℃で1つの放熱ピークのピーク値を有する。
【0026】
本発明の一部の実施形態において、前記B結晶形のDSCパターンは、図5に示す通りである。
【0027】
本発明の一部の実施形態において、前記B結晶形の熱重量分析曲線は、115.0±3℃で9.8%の重量損失を有し、170.0±3℃で更に1.84%の重量損失を有する。
【0028】
本発明の一部の実施形態において、前記B結晶形のTGAパターンは、図6に示す通りである。
【0029】
本発明は、X線粉末回折パターンが、7.81±0.20°、8.31±0.20°と11.21±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のC結晶形を更に提供する。
【0030】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のC結晶形のX線粉末回折パターンは、7.81±0.20°、8.31±0.20°、11.21±0.20°、14.58±0.20°、16.37±0.20°、17.92±0.20°、23.48±0.20°と24.18±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0031】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のC結晶形は、そのXRPDパターンが図7に示す通りである。
【0032】
本発明の一部の実施形態において、前記C結晶形のXRPDパターン解析データは、表3に示す通りである。
【0033】
【表3】
【0034】
本発明の一部の実施形態において、前記C結晶形の示差走査熱量曲線は、129.6±3℃と197.1±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有し、149.7±3℃で1つの放熱ピークのピーク値を有する。
【0035】
本発明の一部の実施形態において、前記C結晶形のDSCパターンは、図8に示す通りである。
【0036】
本発明の一部の実施形態において、前記C結晶形の熱重量分析曲線は170.0℃±3℃で13.05%の重量損失を有する。
【0037】
本発明の一部の実施形態において、前記C結晶形のTGAパターンは、図9に示す通りである。
【0038】
本発明は、X線粉末回折パターンが、8.86±0.20°、12.77±0.20°と22.89±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のD結晶形を更に提供する。
【0039】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のD結晶形のX線粉末回折パターンは、7.63±0.20°、8.86±0.20°、10.12±0.20°、11.53±0.20°、12.77±0.20°、18.02±0.20°と22.89±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0040】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のD結晶形は、そのXRPDパターンが図10に示す通りである。
【0041】
本発明の一部の実施形態において、前記D結晶形のXRPDパターン解析データは、表4に示す通りである。
【0042】
【表4】
【0043】
本発明の一部の実施形態において、前記D結晶形の示差走査熱量曲線は、142.6±3℃と197.2±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有し、168.4±3℃で1つの放熱ピークのピーク値を有する。
【0044】
本発明の一部の実施形態において、前記D結晶形のDSCパターンは、図11に示す通りである。
【0045】
本発明の一部の実施形態において、前記D結晶形の熱重量分析曲線は、115.0±3℃で3.00%の重量損失を有し、170.0±3℃で更に4.14%の重量損失を有する。
【0046】
本発明の一部の実施形態において、前記D結晶形のTGAパターンは、図12に示す通りである。
【0047】
本発明は、X線粉末回折パターンが、8.22±0.20°、11.45±0.20°と16.66±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のE結晶形を更に提供する。
【0048】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のE結晶形のX線粉末回折パターンは、8.22±0.20°、8.84±0.20°、11.45±0.20°、12.23±0.20°、13.16±0.20°、16.66±0.20°、18.57±0.20°と24.48±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0049】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のE結晶形は、そのXRPDパターンが図13に示す通りである。
【0050】
本発明の一部の実施形態において、前記E結晶形のXRPDパターン解析データは、表5に示す通りである。
【0051】
【表5】
【0052】
本発明の一部の実施形態において、前記E結晶形の示差走査熱量曲線は、161.1±3℃と209.3±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有し、168.9±3℃で1つの放熱ピークのピーク値を有する。
【0053】
本発明の一部の実施形態において、前記E結晶形のDSCパターンは、図14に示す通りである。
【0054】
本発明の一部の実施形態において、前記E結晶形の熱重量分析曲線は、115.0±3℃で8.91%の重量損失を有し、170.0±3℃で更に1.41%の重量損失を有する。
【0055】
本発明の一部の実施形態において、前記E結晶形のTGAパターンは、図15に示す通りである。
【0056】
本発明は、X線粉末回折パターンが、12.20±0.20°、16.21±0.20°と17.24±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のF結晶形を更に提供する。
【0057】
本発明は、X線粉末回折パターンが、16.21±0.20°、16.70±0.20°と17.24±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のF結晶形を更に提供する。
【0058】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のF結晶形のX線粉末回折パターンは、7.62±0.20°、11.11±0.20°、12.20±0.20°、15.07±0.20°、16.21±0.20°、16.70±0.20°、17.24±0.20°と19.81±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0059】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のF結晶形のX線粉末回折パターンは、7.62°、8.44°、9.61°、11.11°、12.20°、12.76°、14.82°、15.07°、16.21°、16.70°、17.24°、18.32°、19.81°、20.99°、21.69°、22.69°、23.51°、23.89°、24.34°、24.69°、25.32°、25.99°、27.06°、27.54°、28.65°、30.57°、33.43°と34.16°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0060】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のF結晶形は、そのXRPDパターンが図16に示す通りである。
【0061】
本発明の一部の実施形態において、前記F結晶形のXRPDパターン解析データは、表6に示す通りである。
【0062】
【表6】
【0063】
本発明の一部の実施形態において、前記F結晶形の示差走査熱量曲線は、158.9±3℃と209.0±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有し、169.2±3℃で1つの放熱ピークのピーク値を有する。
【0064】
本発明の一部の実施形態において、前記F結晶形のDSCパターンは、図17に示す通りである。
【0065】
本発明の一部の実施形態において、前記F結晶形の熱重量分析曲線は、115.0±3℃で4.61%の重量損失を有し、170.0±3℃で更に1.26%の重量損失を有する。
【0066】
本発明の一部の実施形態において、前記F結晶形のTGAパターンは、図18に示す通りである。
【0067】
本発明は、X線粉末回折パターンが、14.75±0.20°、16.64±0.20°と18.94±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物1のG結晶形を更に提供する。
【0068】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のG結晶形のX線粉末回折パターンは、3.74±0.20°、8.56±0.20°、14.75±0.20°、16.64±0.20°、17.10±0.20°、18.94±0.20°、20.10±0.20°と20.98±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0069】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のG結晶形のX線粉末回折パターンは、3.74°、8.56°、11.08°、13.06°、13.47°、14.75°、15.13°、15.87°、16.64°、17.10°、17.39°、18.45°、18.94°、19.61°、20.10°、20.98°、22.41°、22.93°、23.49°、24.27°、25.63°、28.22°、29.66°、32.10°と34.43°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0070】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物1のG結晶形は、そのXRPDパターンが図19に示す通りである。
【0071】
本発明の一部の実施形態において、前記G結晶形のXRPDパターン解析データは、表7に示す通りである。
【0072】
【表7】
【0073】
本発明の一部の実施形態において、前記G結晶形の示差走査熱量曲線は、92.3±3℃と217.6±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有する。
【0074】
本発明の一部の実施形態において、前記G結晶形のDSCパターンは、図20に示す通りである。
【0075】
本発明の一部の実施形態において、前記G結晶形の熱重量分析曲線は、170.0℃±3℃で3.32%の重量損失を有する。
【0076】
本発明の一部の実施形態において、前記G結晶形のTGAパターンは、図21に示す通りである。
【0077】
本発明は、化合物2を更に提供する。
【0078】
【化3】
【0079】
ここで、yは0.9~1.1であり、好ましくは0.91、1又は1.1である。
【0080】
本発明は、X線粉末回折パターンが、17.11±0.20°、18.69±0.20°と20.74±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物2のH結晶形を更に提供する。
【0081】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物2のH結晶形のX線粉末回折パターンは、11.33±0.20°、12.46±0.20°、14.04±0.20°、14.99±0.20°、17.11±0.20°、18.69±0.20°、20.74±0.20°と22.75±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0082】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物2のH結晶形は、そのXRPDパターンが図22に示す通りである。
【0083】
本発明の一部の実施形態において、前記H結晶形のXRPDパターン解析データは、表8に示す通りである。
【0084】
【表8】
【0085】
本発明の一部の実施形態において、前記H結晶形の示差走査熱量曲線は、77.7±3℃、147.7±3℃と158.4±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有する。
【0086】
本発明の一部の実施形態において、前記H結晶形のDSCパターンは、図23に示す通りである。
【0087】
本発明の一部の実施形態において、前記H結晶形の熱重量分析曲線は、75.0±3℃で2.09%の重量損失を有し、175.0±3℃で更に9.01%の重量損失を有する。
【0088】
本発明の一部の実施形態において、前記H結晶形のTGAパターンは、図24に示す通りである。
【0089】
本発明は、化合物3を更に提供する。
【0090】
【化4】
【0091】
ここで、mは0.98~1.0であり、好ましくは0.98又は1.0である。
【0092】
本発明は、X線粉末回折パターンが、7.19±0.20°、11.64±0.20°と12.87±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物3のJ結晶形を更に提供する。
【0093】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物3のJ結晶形のX線粉末回折パターンは、7.19±0.20°、8.34±0.20°、9.69±0.20°、11.64±0.20°、12.87±0.20°、14.97±0.20°、18.42±0.20°と21.08±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0094】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物3のJ結晶形のX線粉末回折パターンは、7.19°、8.34°、9.69°、11.64°、12.87°、13.53°、13.85°、14.97°、15.49°、15.91°、16.25°、16.75°、17.51°、18.02°、18.42°、18.57°、19.40°、19.82°、20.60°、21.08°、22.32°、22.75°、24.63°、25.00°、26.49°、27.18°、27.86°、32.61°と33.97°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0095】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物3のJ結晶形は、そのXRPDパターンが図25に示す通りである。
【0096】
本発明の一部の実施形態において、前記J結晶形のXRPDパターン解析データは、表9に示す通りである。
【0097】
【表9】
【0098】
本発明の一部の実施形態において、前記J結晶形の示差走査熱量曲線は、151.1±3℃と169.6±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有する。
【0099】
本発明の一部の実施形態において、前記J結晶形のDSCパターンは、図26に示す通りである。
【0100】
本発明の一部の実施形態において、前記J結晶形の熱重量分析曲線は130.0±3℃で3.00%の重量損失を有する。
【0101】
本発明の一部の実施形態において、前記J結晶形のTGAパターンは、図27に示す通りである。
【0102】
本発明は、化合物4を更に提供する。
【0103】
【化5】
【0104】
ここで、nは0.95~1.0であり、好ましくは0.95又は1.0である。
【0105】
本発明は、X線粉末回折パターンが、5.67±0.20°、11.34±0.20°と19.14±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する化合物4のK結晶形を更に提供する。
【0106】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物4のK結晶形のX線粉末回折パターンは、5.67±0.20°、11.34±0.20°、13.07±0.20°、14.07±0.20°、19.14±0.20°、20.35±0.20°、21.95±0.20°と23.55±0.20°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0107】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物4のK結晶形のX線粉末回折パターンは、5.67°、10.20°、11.34°、13.07°、14.07°、14.49°、17.08°、18.11°、19.14°、20.35°、21.95°、23.55°、25.00°、26.56°と28.08°の2θ角に特徴的回折ピークを有する。
【0108】
本発明の一部の実施形態において、前記化合物4のK結晶形は、そのXRPDパターンが図28に示す通りである。
【0109】
本発明の一部の実施形態において、前記K結晶形のXRPDパターン解析データは、表10に示す通りである。
【0110】
【表10】
【0111】
本発明の一部の実施形態において、前記K結晶形の示差走査熱量曲線は、114.6±3℃と158.4±3℃でそれぞれ吸熱ピークの開始点を有する。
【0112】
本発明の一部の実施形態において、前記K結晶形のDSCパターンは、図29に示す通りである。
【0113】
本発明の一部の実施形態において、前記K結晶形の熱重量分析曲線は、150.0±3℃で4.76%の重量損失を有する。
【0114】
本発明の一部の実施形態において、前記K結晶形のTGAパターンは、図30に示す通りである。
【0115】
本発明は、化合物1をメタノール、エタノール、水又はアルコール類と水の混合溶媒に入れて、再結晶又はパルプ化して得ることを含むA結晶形の調製方法を更に提供する。
【0116】
本発明の一部の実施形態において、前記アルコール系溶媒はメタノールから選ばれる。
【0117】
本発明の一部の実施形態において、前記アルコール系溶媒と水の混合溶媒において、アルコール系溶媒と水の体積比は1:0 ~1.5から選ばれる。
【0118】
本発明は、CXCR2関連疾患を治療する薬物の調製における前記各結晶形の応用を更に提供する。
【0119】
〔発明の効果〕
本発明の化合物1のA結晶形は、安定性が良くて創薬可能性が高く、CXCR2受容体への阻害作用が明らかであり、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)舌後点滴注入法により構築されたラットCOPD(慢性閉塞性肺疾患)モデルにおいて、化合物1のA結晶形は、好中球数を顕著に低減することができると共に、肺機能を顕著に改善することができる。
【0120】
〔定義及び説明〕
特に断りのない限り、本願に用いられる下記用語及び語句は、下記意味を有することを意図する。特定の語句又は用語は、特に定義されていない場合、不明確又は不明瞭であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解すべきである。本願に商品名が記載されている場合、その対応する商品又はその活性成分を示すことを意図する。
【0121】
本発明に係る中間体化合物は当業者に周知の様々な合成方法により調製可能であり、以下に挙げられる具体的な実施形態、その他の化学合成法と組み合わせることにより形成される実施形態、及び当業者に周知の同等の代替方法が含まれ、好ましい実施形態は本発明の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0122】
本発明の具体的な実施形態の化学反応は適当な溶媒において完成され、前記溶媒は、本発明の化学変化及びその必要な試薬と材料に適しなければならない。本発明の化合物を得るために、当業者は、既存の実施形態に基づいて合成工程又は反応プロセスを修正し又は選択する必要がある場合がある。
【0123】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0124】
本発明に用いられる全ての溶媒は市販されるものであり、更に精製することなく使用することができる。
【0125】
本発明に用いられる溶媒は、市販により入手可能である。本発明は以下の略語を使用する。DMSOはジメチルスルホキシドを、PEG400はポリエチレングリコール400を、HP-β-CDはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを、PPEはブタ膵臓エラスターゼを表す。
【0126】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕化合物1のA結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図2〕化合物1のA結晶形のDSCパターンである。
図3〕化合物1のA結晶形のTGAパターンである。
図4〕化合物1のB結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図5〕化合物1のB結晶形のDSCパターンである。
図6〕化合物1のB結晶形のTGAパターンである。
図7〕化合物1のC結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図8〕化合物1のC結晶形のDSCパターンである。
図9〕化合物1のC結晶形のTGAパターンである。
図10〕化合物1のD結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図11〕化合物1のD結晶形のDSCパターンである。
図12〕化合物1のD結晶形のTGAパターンである。
図13〕化合物1のE結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図14〕化合物1のE結晶形のDSCパターンである。
図15〕化合物1のE結晶形のTGAパターンである。
図16〕化合物1のF結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図17〕化合物1のF結晶形のDSCパターンである。
図18〕化合物1のF結晶形のTGAパターンである。
図19〕化合物1のG結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図20〕化合物1のG結晶形のDSCパターンである。
図21〕化合物1のG結晶形のTGAパターンである。
図22〕化合物2のH結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図23〕化合物2のH結晶形のDSCパターンである。
図24〕化合物2のH結晶形のTGAパターンである。
図25〕化合物3のJ結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図26〕化合物3のJ結晶形のDSCパターンである。
図27〕化合物3のJ結晶形のTGAパターンである。
図28〕化合物4のK結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図29〕化合物4のK結晶形のDSCパターンである。
図30〕化合物4のK結晶形のTGAパターンである。
図31〕各動物群の肺組織における各種類の免疫細胞分類計数と化合物用量との関係であり、注記:### p<0.001 vs 溶媒群、*p<0.05 vs モデル群、***p<0.001 vs モデル群。
図32〕各動物群の動肺コンプライアンスと化合物用量との関係であり、注記:***p<0.001 vs モデル群。
図33〕各動物群の肺気道抵抗と化合物用量との関係であり、注記:***p<0.001 vs モデル群、### p<0.001 vs 化合物1 10 mpk群。
図34〕化合物1の分子立体構造楕円グラフである。
図35〕a軸方向に沿う結晶細胞積み上げグラフである。
図36〕メタコリンにより誘導された肺機能測定であり、ここで、Aは肺抵抗であり、Bは肺コンプライアンスである。
図37〕肺胞洗浄液(BALF)の各パラメータ試験であり、ここで、Aは総白血球数であり、Bはマクロファージ計数であり、Cはリンパ球計数であり、Dは好中球計数である。
図38〕肺組織の病理学的スコアである。
図39〕ここで、39Aの肺組織はミエロペルオキシダーゼ(MPO)の濃度試験であり、39Bの肺組織はマトリクスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)の濃度試験である。
【0127】
〔本発明のX線粉末回折(X-ray powder diffractometer、XRPD)方法〕
試験方法:約10~20 mgの試料をXRPD検出に用いる。
【0128】
詳細なXRPDパラメータは以下の通りである。
【0129】
線源:Cu、kα(Kα1=1.540598 Å、Kα2=1.544426Å、Kα2/Kα1強度比:0.5)
ライトチューブ電圧:45 kV、ライトチューブ電流:40 mA
発散スリット:固定1/8 deg
第1のソーラースリット:0.04 rad、第2のソーラースリット:0.04 rad
受光スリット:無し、散乱防止スリット:7.5 mm
測定時間:5 min
走査角度範囲:3~40 deg
ステップ幅角度:0.0263 deg
ステップ長:46.665 秒
試料盤回転速度:15 rpm
〔本発明の示差走査熱量(Differential Scanning Calorimeter、DSC)方法〕
機器型番:TA Q200/Q2000/2500示差走査熱量計
試験方法:試料(約1~5 mg)をDSCアルミニウム盤に置いて試験を行い、50 mL/min N2の条件下、10℃/minの昇温速度で、試料を25℃(室温)から試料分解まで加熱する。
【0130】
〔本発明の熱重量分析(Thermal Gravimetric Analyzer、TGA)方法〕
機器型番:TA Q5000/5500熱重量分析計
試験方法:試料(約1~5 mg)をTGAアルミニウム盤に置いて試験を行い、10 mL/min N2の条件下、10℃/minの昇温速度で、試料を室温から350℃まで加熱する。
【0131】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の内容をより良く理解するために、以下、具体的な実施例に合わせて詳しく説明するが、具体的な実施形態は、本発明の内容を制限するものではない。
【0132】
実施例1:化合物1の調製
【0133】
【化6】
【0134】
ステップ1
化合物1a(20.00 g、146.90 mmol)を1,2-ジクロロエタン(300 mL)に溶解し、1-トリフルオロメチル-1,2-ベンジオドキソール-3(H)-オン(51.06 g、161.59 mmol)、ヨウ化第一銅(41.97 g、220.35 mmol)を加えた。反応液を60℃で14時間撹拌しながら反応させた。反応液をろ過し、ろ液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(200 mLx2)で撹拌し、更にろ過し、ろ液をジクロロメタン(100 mLx2)で抽出した。有機相を合わせて、飽和食塩水で洗い(200 mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製(溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル、100:1~5:1)して、化合物1bを得た。
【0135】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ : 6.80(s, 1H), 2.83-2.79(m, 2H), 2.65-2.61 (m, 2H), 2.24-2.17 (m, 2H).
ステップ2
化合物1b(8.50 g、41.64 mmol)を無水トルエン(150 mL)に溶解し、(R)-(-)-2-メチル-2-プロパンスルフィンアミド(7.57 g、62.46 mmol)とチタン酸テトラエチル(28.49 g、124.91 mmol)を加えた。反応液を90℃で3時間撹拌しながら反応させた。反応液に水(100 mL)と酢酸エチル(100 mL)を加え、十分撹拌してからろ過し、ろ液を酢酸エチル(60 mLx2)で抽出した。有機相を合わせて、飽和食塩水で洗い(100 mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製(溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル、10:1~1:1)して、化合物1cを得た。
【0136】
MS-ESI計算値[M + H]+308、実測値308であった。
【0137】
ステップ3
化合物1c(8.30 g、27.01 mmol)をテトラヒドロフラン(150 mL)に溶解し、窒素ガス保護で、0℃で水素化ジイソブチルアルミニウム溶液(1 Mのトルエン溶液、41 mL、40.5 mmol)を徐々に滴下した。反応液を0℃で1時間撹拌しながら反応させた。反応液に水(200 mL)を入れて反応をクエンチし、十分撹拌してからろ過し、ろ液を酢酸エチル(100 mLx2)で抽出した。有機相を合わせて、飽和食塩水で洗い(100 mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製(溶離剤:石油エーテル/酢酸エチル、10:1~1:1)して、化合物1dを得た。
【0138】
MS-ESI計算値[M + H]+310、実測値310であった。
【0139】
ステップ4
化合物1d(6.20 g、20.04 mmol)を無水テトラヒドロフラン(60 mL)に溶解し、0℃の条件で、濃塩酸(8 mL、12 N)を滴下した。反応液を0℃の条件下で1時間撹拌しながら反応させた。固体炭酸ナトリウム水溶液で反応液をPH=8~9に調整し、ろ過し、ろ液を減圧濃縮し、残留物に水(30 mL)を加え、ジクロロメタン(40 mLx2)で抽出した。有機相を合わせて、飽和食塩水で洗い(100 mL)、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮して、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離精製(溶離剤:ジクロロメタン/メタノール、100:1~10:1)して、化合物1eを得た。
【0140】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ : 6.58(s, 1H), 3.40-3.98(m, 1H), 2.47-2.41 (m, 2H), 2.15-2.11 (m, 1H) , 1.89-1.86 (m, 1H) , 1.74-1.65 (m, 2H).
ステップ5
化合物1e(300 mg、1.46 mmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、それぞれ炭酸ナトリウム(232.46 mg、2.19 mmol)と4-ニトロクロロギ酸ベンジル(265.25 mg、1.32 mmol)を加えた。混合物を20℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液をジクロロメタン(40 mL)で希釈し、水(50 mL)で洗った。有機相を飽和食塩水(50 mL)で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、乾固まで減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで分離精製(溶離剤:酢酸エチル/石油エーテル=0~20%)して化合物中間体1fを得た。
【0141】
ステップ6
化合物1g(225 mg、575.62 μmol)をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、それぞれトリエチルアミン(174.74 mg、1.73 mmol)と化合物中間体1f(333.47 mg、690.75 μmol)を加え、混合物を10~20℃で16時間撹拌した。反応終了後、反応液をジクロロメタン(40 mL)で希釈し、水(50 mL)で洗った。有機相を飽和食塩水(50 mLx2)で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、乾固まで減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をフラッシュクロマトグラフィーで分離精製(溶離剤:酢酸エチル/石油エーテル=1/0~2/1)して化合物1hを得た。
【0142】
MS-ESI計算値[M + H]+622、実測値[M+Na]+:644.1であった。
【0143】
ステップ7
化合物1h(460 mg、739.49 μmol)を超臨界流体クロマトグラフィー(分離条件:カラム、DAICEL CHIRALPAK AS-H 250 mm×30 mm、5 μm;移動相、A:二酸化炭素B:エタノール(0.1%のアンモニア水);勾配、B%:25%~25%)により分離してキラル異性体化合物1iを取得し、その保留時間が3.045 min(第2のピーク)であった。
【0144】
分析条件:カラム:ChiralPak AS-3 150×4.6 mm I.D.、3 μm;移動相、A:二酸化炭素B:エタノール(0.05%のジエチルアミン);勾配、移動相B 5分間で5%から40%に、0.5分間で40%から5%にし、1.5分間5%に保つ;流速:2.5 mL/min;カラム温度:35℃;検出波長:220 nm
ステップ8
化合物1i(305 mg、490.31 μmol)を酢酸エチル(5 mL)に溶解し、酢酸エチル塩酸塩(4 M、6.13 mL)を加え、反応液を20℃で1時間撹拌した。反応終了後、反応液をそのまま乾固まで減圧濃縮し、更にジクロロメタンに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を入れてpHを7~8に調整した。有機相を飽和食塩水(10 mL)で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、乾固まで減圧濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をアセトニトリル(2 mL)で精製して1を得た。
【0145】
1H NMR (400MHz, METHANOL-d4) δ : 7.91 (d, J=8.4 Hz, 1H), 6.76 (s, 1H), 6.53 (d, J=8.4 Hz, 1H), 4.94 (brs, 1H), 4.41 (br s, 1H), 3.72 (br d, J=10.8 Hz, 1H), 3.21 - 3.05 (m, 2H), 2.88 - 2.76 (m, 1H), 2.57 - 2.39 (m, 2H), 2.09 - 1.95 (m, 2H), 1.94 - 1.78 (m, 6H).
MS-ESI計算値[M + H]+:522、実測値:522.0であった。
【0146】
ステップ9:化合物1の単結晶の調製と絶対配置の確定
化合物1の単結晶育成過程:試料約5 mgを2 mLの茶色の試料瓶に置き、アセトン200 μLを入れて、5日間後、長い角柱状の無色の結晶が生成されてきた。回折用結晶のサイズは0.06×0.12×0.14 mmであり、結晶は三斜晶系に属し、空間群はP1であり、結晶細胞パラメータは、a=10.6397(7)、b=11.7976(8)、c=12.0726(8)Å、α=79.751(3)、β=70.745(3)、γ=84.453(3)°、結晶細胞体積V=1406.61(16)Å3、結晶細胞内非対称単位数Z=1であった。
【0147】
Bruker D8 venture回折計により回折強度データを採集し、光源はCuKα放射であり、走査方式はφ/ω走査、採集された総回折点数は15938個、独立した回折点数は9049個、観察可能な点数(I/sigma≧2)は6590個であった。
【0148】
直接法(Shelxs97)により結晶構造を解析し、全70個の非水素原子位置を取得し、最小二乗法で構造パラメータを修正して原子の種類を判別し、幾何学的計算法と差分Fourier法で全ての水素原子位置を取得し、トリミングした後、
【0149】
【数1】
【0150】
となった。
【0151】
単結晶の結果から分かるように、結晶状態で分子配列は第1種の空間群に属するものであり、化合物は光学活性を有するべきであり、Flack係数が0.129(14)で、結晶における化合物の絶対配置を確定することができる。結晶状態で分子間に水素結合関係が存在し、分子間はファンデルワールス力と水素結合により空間におけるその安定的な配列を維持している。
【0152】
結果は図34~35に示すように、順に化合物1の分子立体構造楕円グラフ、a軸方向に沿う結晶細胞積み上げグラフである。
【0153】
実施例2:化合物1のA結晶形の調製
化合物1(1.4 g)をメタノール(10 mL)/水(5 mL)により60℃で2時間パルプ化した。20℃まで冷却してから引き続き1時間攪拌し、吸引ろ過して、白い固体を得て、50℃で18時間真空乾燥した。この純品の結晶形はA結晶形である。
【0154】
実験例3:化合物1の多結晶の選別
化合物1は、以下の条件で複数種の遊離状態の結晶形を得ることができる。
【0155】
B結晶形:化合物1約15 mgを秤量してHPLCバイアル瓶に入れ、瓶に酢酸エチル0.2 mLを加え、室温で約2日間懸濁撹拌し、遠心分離してB結晶形を得た。
【0156】
C結晶形:化合物1約15 mgを秤量してHPLCバイアル瓶に入れ、瓶にアセトニトリル0.2 mLを加え、室温で約3日間懸濁撹拌し、遠心分離して、得られた固体を50℃で2時間真空乾燥し、C結晶形を得た。
【0157】
D結晶形:化合物1約15 mgを秤量してHPLCバイアル瓶に入れ、瓶に0.2 mLのテトラヒドロフラン/水(19:1、v:v)を加え、室温で約3日間懸濁撹拌して清澄な溶液を得て、-20℃に移転して約1日間攪拌し、遠心分離して、得られた固体を50℃で2時間真空乾燥し、D結晶形を得た。
【0158】
E結晶形:化合物1約15 mgを秤量してHPLCバイアル瓶に入れ、瓶にアセトニトリル0.2 mLを加え、室温で約2日間懸濁撹拌し、遠心分離してE結晶形を得た。
【0159】
F結晶形:化合物1約15 mgを秤量してHPLCバイアル瓶に入れ、瓶にアセトニトリル0.2 mLを加え、室温で約2日間懸濁撹拌し、遠心分離して、固体を50℃で2時間真空乾燥してF結晶形を得た。
【0160】
G結晶形:化合物1約40 mgを秤量してエタノール/水(0.28 mL/0.12 mL)溶媒(濃度100 mg/mL)に入れ、20℃で4日間撹拌し、溶液を遠心分離して沈殿物を取り、50℃で16時間真空乾燥してG結晶形を得た。
【0161】
実験例4:化合物1の塩型多結晶の選別
化合物1は、以下の条件で複数種の塩型結晶形を得ることができる。
【0162】
K結晶形:化合物1約15 mgを秤量して酢酸エチル0.2 mLが入ったHPLCバイアル瓶に溶解し、瓶に馬尿酸約5.3 mgを加え、室温で約5日間懸濁撹拌し、遠心分離して固体を得て、固体を50℃で2時間真空乾燥した後、化合物4のK結晶形を得た。遊離状態と酸リガンドとのモル比は1:0.95であった。
【0163】
H結晶形:化合物1約15 mgを秤量してアセトニトリル0.2 mLが入ったHPLCバイアル瓶に溶解し、瓶に濃リン酸(15 M)2.14 μLを加え、室温で約5日間懸濁撹拌し、遠心分離して固体を得て、固体を50℃で2時間真空乾燥した後、化合物2のH結晶形を得た。その遊離状態と酸リガンドとのモル比は1:0.91であった。
【0164】
J結晶形:化合物1約15 mgを秤量してアセトニトリル0.2 mLが入ったHPLCバイアル瓶に溶解し、瓶にマレイン酸約3.5 mgを加え、室温で約5日間懸濁撹拌し、遠心分離して固体を得て、固体を50℃で2時間真空乾燥した後、化合物3のJ結晶形を得た。その遊離状態と酸リガンドとのモル比は1:0.98であった。
【0165】
実験例5:A結晶形の高温・高湿・高温高湿・光照明条件での固体安定性試験
1部あたり約20~30 mgになるように、A結晶形6部を平行秤量し、HPLCバイアル瓶の底部に置き、薄く一層敷いた。それぞれ高温(60℃)、高湿(92.5%の湿度、25℃)、高温高湿(60℃/75%の湿度)と光照明(遮光対照を含む)安定性条件で置いた。60℃/75%の恒温恒湿箱及び92.5%RHの乾燥器に置かれた試料は、封止フィルムにより瓶口が封止され、且つ、試料が外気と十分に接触できるように5つの小穴を開けた。60℃で置かれた、光照明及び遮光条件での試料は、瓶の蓋がしっかり閉められた(ここで、遮光条件での試料はアルミ箔により包まれた)。高湿(92.5%の湿度)条件で置かれた試料は10日目、高温(60℃)条件で置かれた試料は5、10日目に取り出されて検出され、高温高湿(60℃/75%の湿度)条件で置かれた試料は10、30日目に取り出されて検出され、光明射条件で置かれた試料は10日目に取り出されて検出され、検出結果は0日目の初期検出結果と比較され、試験の結果は以下の表11、12、13、14に示されている。
【0166】
【表11】
【0167】
【表12】
【0168】
【表13】
【0169】
【表14】
【0170】
実験の結論:本発明の化合物1のA結晶形は安定性が良く、創薬可能性が高い。
【0171】
実験例6:化合物1のA結晶形の溶媒の水分活性による結晶形安定性の研究
化合物1のA結晶形を対応する溶媒において(濃度100 mg/ mL)、20℃で4日間撹拌し、溶液を遠心分離して沈殿物を取り、50℃で真空乾燥した後XRPD検出を行い、結果は以下の表15に示す通りである。
【0172】
【表15】
【0173】
上記の表から分かるように、前記溶媒条件下で、化合物1のA結晶形は安定である。
【0174】
実験例7:化合物のインビトロ活性試験
PathHunter(登録商標)のCXCR2 β-arrestin細胞(DiscoverX)を標準条件下で成長させ、白い壁の384ウェルのマイクロプレートに、1ウェルあたり20 μLで接種した。試験する前に、細胞を37℃で適当な期間にインキュベートした。試験化合物をDMSOにおいて3倍の希釈係数で一連の希釈を行い、継続的に希釈された8つの濃度の試験化合物を得た。試験する直前に、前記継続的に希釈された試験化合物を、試験緩衝液によりさらに試験濃度の5倍に希釈した。さらに希釈された試験化合物5 μLを細胞に加え、37℃で30分間インキュベートした。溶媒濃度は1%であった。そして、6X EC80アゴニスト(CXCL8)の緩衝液5 μLを細胞に加え、37℃で90分間インキュベートした。15 μL(50%v/v)のPathHunter検出混合液試薬を一括加入してから、1時間インキュベートしたことにより、測定信号を生成した。PerkinElmer EnvisionTM機器の化学発光信号により、マイクロプレートを読み取った。試験化合物の生物活性は、CBISデータ分析セット(ChemInnovation、CA)により分析され、IC50値で示された。実験の結果は、表16に示す通りである。
【0175】
【表16】
【0176】
結論:化合物1は、CXCR2受容体に対して強い拮抗作用を有する。
【0177】
実験例8:化合物1の薬物動態評価
血漿薬物動態実験は、雄のレビスラット4匹を使用し、ランダムに2群に分け、1群に動物2匹がいた。第1群の動物は被検薬2 mg/kgが静注投与され、第2群は被検薬10 mg/kgが胃内投与された。製剤溶媒には1%のDMSO/20%のPEG400/79%(HP-b-CD)の水溶液配合が使用され、得られた静脈又は胃内製剤(pH2.78に調整された)は何れも、清澄な溶液であった。静脈群は投与してから0.0830、0.25、0.5、1、2、4、6、8及び24時間した時に、胃内群動物は投与してから0.25、0.5、1、2、4、6、8及び24時間した時に、伏在静脈で採血され、それぞれの時点では3つの試料であった。胃内投与して採集された血漿試料は-80℃で冷凍保存され、LC-MS/MS試料分析前に解凍された。解凍後の血漿試料には、一定の比率で内部標準が含まれたアセトニトリルを入れてタンパク質を沈殿させ、遠心分離した後に上清液を得てLC-MS/MS試料注入を行った。分析機器としてAPI4000又は5500が使用され、カラムはACQUITY UPLC BEH C18(2.1×50 mm、1.7 μm)とされ、ESI陽又は陰イオン源を採用して被検化合物をイオン化した。それぞれの分析バッチには、8つの濃度の標準試料が含まれ、内部標準(IS)ピーク面積に対する被検化合物のピーク面積の比をYとし、被検化合物の血漿試料における濃度をXとし、1/x2を加重係数として線形回帰を行い、応答と濃度を測定する回帰方程式を得た。それぞれの分析バッチには、対応する品質管理試料も含まれた。Phoenix 6.3 WinNonlin(登録商標)によりデータ処理を行い、対応するPKパラメータを得た。試験の結果は表17に示す通りである。
【0178】
【表17】
【0179】
結論:化合物1は、ラットにおいて優れた薬物動態特性を有する。
【0180】
実験例9:化合物のPPEにより誘導されたCOPDモデルへの治療作用
実験の目的:
化合物のPPEにより誘導されたSDラットCOPDモデルへの治療作用効果を試験する。
【0181】
実験材料:
動物:SDラット(雄、160~180 g、6週齢)
薬物:ブタ膵臓エラスターゼ(sigma、0.068 U/μL)、Danirixin、化合物1。
【0182】
【表18】
【0183】
実験操作:
1.モデル構築方式:舌後点滴注入PPEである。
【0184】
2.投与方式:1%のDMSO/20%のPEG400/79%の(HP-b-CD)の水溶液を溶媒として、投与体積2 mL/匹で胃内投与し、毎日投与し、合計4週間投与した。
【0185】
3.実験の評価項目:29日目に、ラット肺機能を検出し、サンプルを採集し、肺胞洗浄液における炎症細胞を計数した。
【0186】
肺胞洗浄細胞:マウスを殺し、頸部の解剖を行い、気管を暴露させて気管挿管を行った。4℃で冷却された硫酸塩緩衝液1 mLにより洗浄し、3回洗浄し、洗浄液を合併した。1200回転/分で5分間遠心分離し、上清液を除去し、細胞懸濁液を採集した。
【0187】
実験データの結果は図31、32、33に示す通りである。
【0188】
得られた結論:PPEにより誘導されたラットCOPDモデルにおいて、本発明の化合物1とDanirixinは高用量(30 mpk)で、肺胞洗浄液における好中球、マクロファージ、リンパ球などの免疫炎症細胞の計数を顕著に低減する作用を有し、炎症への良い阻害作用を示した。また、本発明の化合物は低用量(10 mpk)でも、抗炎症作用効果をかなり果たすことができる。肺機能検査は、慢性閉塞性肺疾患を診断する「究極の判断基準」とされており、本発明の化合物1は、低用量(10 mpk)でも、肺機能を顕著かつ効果的に向上させることができる。
【0189】
実験例10:化合物1のA結晶形がリポ多糖を合併した喫煙により誘導されたラットCOPDモデルに対する急性抗炎症性の薬効学的評価
実験の目的:
本研究は、LPSを合併した喫煙により誘導されたラット急性炎症をもって、化合物1のA結晶形がリポ多糖を合併した喫煙により誘導されたラットCOPDモデルに対する初期段階の抗炎症作用効果を主に調べた。
【0190】
実験材料:
動物:SDラット(雄、180~220 g、8~10週齢)
モデル構築剤及び薬物:リポ多糖(LPS)(sigma)、巻きたばこ(市販のマルボロ巻きたばこ);Danirixin、化合物1のA結晶形。
【0191】
【表19】
【0192】
実験操作:
1.モデル構築方式:たばこの煙で全身を毎日1回、合計14日間暴露させる方法により動物モデルを作成し、ここで、毎日煙で合計90 min燻し、2回に分けて行い、その間に10 min休憩させ、1回ごとに18本のマルボロ(タール含有量11 mg)たばこを投与した。同時に、LPSを200μg/匹で気道を介して滴下してモデルを構築し、滴下頻度は週に1回とし、滴下は煙に暴露させてから6、13日目に行われた(LPS気道滴下当日に、煙に暴露させず、LPS滴下のみでモデルを構築した)。
【0193】
2.投与方式:1%のDMSO/20%のPEG400/79%の(HP-b-CD)の水溶液を溶媒として、投与体積5 mL/kgで胃内投与し、毎日投与し、合計2週間投与した
3.実験の評価項目:15日目に、ラット肺機能を検出し、サンプルを採集し、肺胞洗浄液における炎症細胞を計数し、病理学的に分析し、肺組織のMPOとMMP9を測定した。
【0194】
肺機能検出操作:
最終回の喫煙によるモデル構築が終了してから2日目に、各群の動物に対して肺機能を検出し、異なる用量の塩化メタコリンの刺激での肺抵抗と肺コンプライアンスを測定した。動物の腹腔内に25% 1.5 mg/kgのウラタン(Ulatan)を注射して麻酔させ、動物が深麻酔に入った後、気道を分離して気道挿管を行うと共に、頸静脈を分離した。動物の呼吸が穏やかになった後、体積追跡箱に入れて、分離した頸静脈に、薬投与用の管を挿入し、動物を1~2分間休ませて、動物の呼吸曲線が穏やかになったことを確認した後、検出実験を始めた。頸静脈挿管により、ラットに用量がそれぞれ0、0.0083、0.025、0.075、0.225、0.675 mg/kgである塩化メタコリンを投与し、毎回投与した後、気道抵抗の向上と肺コンプライアンスの低下を観察し、1~2分間待って、それが1つ前の濃度の塩化メタコリン注射基線の近くに戻った時、次の濃度の塩化メタコリンを注射した。検出終了後、動物に対して後続の肺胞洗浄と採取操作を行った。
【0195】
安楽死及び肺胞洗浄液の採集操作:
肺機能の測定が終了した後、頸椎脱臼によりラットを殺した。動物の死亡を確認した後、両肺を丁寧に分離し、洗浄針を主気管に挿入し、2-0絹糸で固定すると共に、右肺を結紮した。洗浄針により低温の生理食塩水5 mLを徐々に注入し、生理食塩水が左肺に注入されたことを確認した後、生理食塩水を徐々に抽出し、2回繰り返し、3回洗浄し、合計15 mL注入して洗浄を行った。取得されたBALFを15 mLの遠心管に注入し、4℃の保存ボックスに置いて後続のBALF細胞計数に備えた。
【0196】
BALFを採集した後、未洗浄の右肺を取り出し、重さを量り、両上葉を冷凍保存管に入れ、後で使用するために-80℃の冷蔵庫に置いて冷凍保存し、下葉の肺組織をホルマリン溶液に置いて固定した。
【0197】
肺胞洗浄液(BALF)における炎症細胞計数及び分類計数操作:
採集されたBALFを十分均一に混合した後、1 mLを吸い取り、1%の氷酢酸生理食塩水溶液1 mLを加入し、血球計算板により計数し、残った洗浄液1500 r/minで4℃で10分間低温遠心分離し、細胞塊を取得し、そして生理食塩水200 μLで細胞を再懸濁し、均一にスライドグラスに塗ってから、ライトギームザ染色を行い、顕微鏡でマクロファージ、好中球とリンパ球を計数したところ、合計200個であり、各種類の細胞の比率を算出した。洗浄液を採集する操作において、洗浄液操作が失敗した動物は、統計から除外した。
【0198】
肺組織の病理学的分析:
本実験室標準SOPに従って、ホルマリンで固定された肺組織全体をパラフィン組織ブロックに調製し、4 μm厚くスライスし、H&E染色を行った。作製された切片は、急性炎症性病理学的変化の分析とスコアが行われるように城市学院病理教研室へ送られた。細気管支炎症のスコアレベルは0~4点とされた;0点=炎症細胞浸潤がないこと、1点=少量の炎症細胞が浸潤し、肺胞に分散的に分布すること、2点=多量の炎症細胞が浸潤し、肺胞に拡散的に分布し、軽度の肺水腫を伴うこと、3点=大量の炎症細胞が浸潤し、肺胞に斑状に分布し、かつ肺胞の構造が侵食され、局所的な炎症性病巣が形成され、中等度の肺水腫を伴うこと、4点=大量の炎症細胞が浸潤し、肺胞に拡散的に分布し、かつ広い炎症細胞領域が見られ、肺胞の構造が深刻に侵食され、重度の肺水腫現象を伴うこと。
【0199】
MPOとMMP9測定操作:
冷凍保存された肺組織を正確に秤量して2 mLのEP管に入れ、生理食塩水1 mLを加えて急速にホモジネートした。それぞれホモジネート液とホモジネート液上清を取ってMPOとMMP9含有量の検出を行ったが、具体的な操作方法は、試薬キットの説明書を参照する。
【0200】
実験データの結果は、図36、37、38、39に示す通りである。
【0201】
得られた結論:リポ多糖を合併した喫煙により誘導されたラットCOPD急性炎症モデルにおいて、
1)図36に示されるメタコリンにより誘導された肺機能の測定では、0.025 mg/kgのメタコリンによる誘導で、モデル群は陰性対照群に比べて、肺抵抗が顕著に向上し、肺コンプライアンスが顕著に低下した。化合物1のA結晶形は3と10 mg/kgの用量で、肺抵抗への改善作用が顕著で、Danirixin-30 mg/kgの効果に相当し、化合物1のA結晶形は10 mg/kgの用量で、肺コンプライアンスへの改善作用が顕著で、Danirixin-30 mg/kgの効果に相当する。
【0202】
2)図37に示される肺胞洗浄液(BALF)における白血球数と好中球数試験では、モデル群は陰性対照群に比べて、白血球数と好中球数が何れも顕著に向上した。化合物1のA結晶形の各用量は何れも、白血球数を顕著に低減することができ、化合物1のA結晶形-10 mg/kgは、Danirixin-30 mg/kgの効果に相当する。化合物1のA結晶形は、用量依存的に好中球数を低減し、3 mg/kgのみで顕著な作用が現れ、化合物のA結晶形-10 mg/kgは、Danirixin-30 mg/kgの効果に相当する。
【0203】
3)図39Aに示される肺組織におけるミエロペルオキシダーゼ(MPO)試験では、モデル群は陰性対照群に比べて、含有量が顕著に向上した。化合物1のA結晶形の各用量は何れも、肺組織のMPO濃度を顕著に低減することができ、化合物1のA結晶形-3 mg/kgは、Danirixin-30 mg/kgの効果に相当する。
【0204】
4)図39Bに示される肺組織におけるマトリクスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)試験では、モデル群は陰性対照群に比べて、含有量が顕著に向上した。化合物1のA結晶形は、用量依存的に肺組織のMMP9濃度を低減し、10 mg/kgのみで顕著な作用が現れ、且つDanirixin-30 mg/kgの効果に相当し、化合物1のA結晶形-30 mg/kgの効果は、Danirixin-30 mg/kgより優れる。
【0205】
5)図38の肺組織病理学的スコアに示されるように、モデル群は陰性対照群に比べて、スコアが顕著に向上した。化合物1のA結晶形は、用量依存的に病理学的スコアを改善し、10 mg/kgのみで顕著な作用が現れ、且つDanirixin-30 mg/kgの効果に相当し、化合物1のA結晶形-30 mg/kgの効果は、Danirixin-30 mg/kgより優れる。
【0206】
まとめ:本実験において、化合物1のA結晶形及び参照する薬物Danirixinは何れも、顕著な抗炎症作用を示したが、化合物1のA結晶形は、3 mg/kgの用量のみで顕著な肺機能改善と抗炎症効果を示した。化合物1のA結晶形はDanirixinに比べて、より低い用量では薬効が同等で、同じ用量では薬効がより優れる。上述したように、化合物1のA結晶形のCOPDへの薬効は、さらに深く研究を進める価値がある。
【図面の簡単な説明】
【0207】
図1】化合物1のA結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図2】化合物1のA結晶形のDSCパターンである。
図3】化合物1のA結晶形のTGAパターンである。
図4】化合物1のB結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図5】化合物1のB結晶形のDSCパターンである。
図6】化合物1のB結晶形のTGAパターンである。
図7】化合物1のC結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図8】化合物1のC結晶形のDSCパターンである。
図9】化合物1のC結晶形のTGAパターンである。
図10】化合物1のD結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図11】化合物1のD結晶形のDSCパターンである。
図12】化合物1のD結晶形のTGAパターンである。
図13】化合物1のE結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図14】化合物1のE結晶形のDSCパターンである。
図15】化合物1のE結晶形のTGAパターンである。
図16】化合物1のF結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図17】化合物1のF結晶形のDSCパターンである。
図18】化合物1のF結晶形のTGAパターンである。
図19】化合物1のG結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図20】化合物1のG結晶形のDSCパターンである。
図21】化合物1のG結晶形のTGAパターンである。
図22】化合物2のH結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図23】化合物2のH結晶形のDSCパターンである。
図24】化合物2のH結晶形のTGAパターンである。
図25】化合物3のJ結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図26】化合物3のJ結晶形のDSCパターンである。
図27】化合物3のJ結晶形のTGAパターンである。
図28】化合物4のK結晶形のCu-Kα放射のXRPDパターンである。
図29】化合物4のK結晶形のDSCパターンである。
図30】化合物4のK結晶形のTGAパターンである。
図31】各動物群の肺組織における各種類の免疫細胞分類計数と化合物用量との関係であり、注記:### p<0.001 vs 溶媒群、*p<0.05 vs モデル群、***p<0.001 vs モデル群。
図32】各動物群の動肺コンプライアンスと化合物用量との関係であり、注記:***p<0.001 vs モデル群。
図33】各動物群の肺気道抵抗と化合物用量との関係であり、注記:***p<0.001 vs モデル群、### p<0.001 vs 化合物1 10 mpk群。
図34】化合物1の分子立体構造楕円グラフである。
図35】a軸方向に沿う結晶細胞積み上げグラフである。
図36】メタコリンにより誘導された肺機能測定であり、ここで、Aは肺抵抗であり、Bは肺コンプライアンスである。
図37】肺胞洗浄液(BALF)の各パラメータ試験であり、ここで、Aは総白血球数であり、Bはマクロファージ計数であり、Cはリンパ球計数であり、Dは好中球計数である。
図38】肺組織の病理学的スコアである。
図39】ここで、39Aの肺組織はミエロペルオキシダーゼ(MPO)の濃度試験であり、39Bの肺組織はマトリクスメタロプロテイナーゼ9(MMP9)の濃度試験である。
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